説明

弾性表面波装置、弾性表面波フィルタ及びデュプレクサ

【課題】小型・低挿入損失の音響結合型SAWデバイスで設計の自由度を高める。
【解決手段】互いに音響結合する第一交差指状電極(IDT)と第二IDTとを含むSAW装置で、第一IDTは、少なくとも音響結合される側の端部において第一交差幅を有し、第二IDTは、少なくとも音響結合される側の端部において第一交差幅より小さい第二交差幅を有し、第二IDTの開口長を、音響結合される側の端部において第一交差幅以上とした。第二IDTは、一方のバスバーから延びる交差電極指に対向するように他方のバスバーから当該交差電極指に向け延び且つ第二IDTの開口長を第一交差幅以上にした拡張部分に延在して第一IDTの交差幅と第二IDTの交差幅との差分領域内に侵入する長さ寸法を有する非交差電極指を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置、弾性表面波フィルタ及びデュプレクサに係り、特に複数の交差指状電極を音響結合させた共振器を含む音響結合型の弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWということがある)を利用したSAWデバイスは、小型軽量で信頼性に優れることから、携帯電話機の送受信フィルタやアンテナデュプレクサなどに近年広く使用されている。
【0003】
かかるSAWデバイスは、一般に、弾性表面波を励振する複数の交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTということがある)と、このIDTで励起される弾性表面波を閉じ込める反射器とを圧電基板上に形成して複数の共振器を構成し、これらの共振器を電気的にあるいは音響的に接続することにより構成される。
【0004】
共振器の接続構造としては、梯子形に複数の共振器を接続するラダー型構造(例えば下記特許文献1,2)や、複数の共振器を弾性表面波の伝搬経路内に配して音響的に結合させる音響結合型構造(例えば下記特許文献3,4)が知られている。また、各共振器のパラメータ(例えばIDTの電極周期、対数、交差幅等の幾何学形状)を様々に変更することによって電気特性を改善する試みがなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−249841号公報
【特許文献2】特開平10−242799号公報
【特許文献3】特表平9−505974号公報
【特許文献4】特開平8−242140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SAWデバイスの設計にあたってデバイス内の個々の共振器のパラメータを変更する場合、各共振器を電気的にのみ接続するラダー型構造によれば、音響的な結合を考慮することなく各共振器を独立して設計することが出来るから、この点で設計の自由度が大きい。
【0007】
しかしながら、ラダー型構造は、音響結合型構造に較べ、一般に反射器の配設数が多く、また共振器同士を繋ぐ配線も長くなることから、小型化の点では不利であり、同時に反射器内や配線抵抗によるロスが生じて挿入損失が大きくなりやすい。特に、電子機器の小型・高性能化の進展から、SAWデバイスのより一層の小型・低損失化の強い要請があり、その解決が望まれる。
【0008】
一方、音響結合型構造では、上記ラダー型構造と較べ、小型化および挿入損失の低減の点で有利である。
【0009】
ところが、従来の音響結合型構造では、上記特許文献3および4の構造も含め、音響結合させる共振器同士は交差幅を一定に揃える必要があり、この点でラダー型構造より設計の自由度が低い難がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、かかる従来の音響結合型構造の難点を解消することにあり、小型・低挿入損失の音響結合型SAWデバイス構造において設計の自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し目的を達成するため、本発明の第一のSAW(弾性表面波)装置は、互いに音響結合する第一の交差指状電極と第二の交差指状電極とを含む弾性表面波装置であって、前記第一の交差指状電極は、少なくとも音響結合される側の端部において第一の交差幅を有する一方、前記第二の交差指状電極は、少なくとも音響結合される側の端部において前記第一の交差幅より小さい第二の交差幅を有し、前記第二の交差指状電極の開口長を、音響結合される側の端部において前記第一の交差幅以上とした。
【0012】
本発明の第一のSAW装置では、2つの交差指状電極(以下、IDTという)を音響結合させる場合に、相対的に交差幅の小さな第二の交差幅(以下、狭交差幅という)を有する第二の交差指状電極(以下、狭交差IDTという)の開口長を、音響結合される側の端部において、相対的に大きな第一の交差幅(以下、広交差幅という)を有する第一の交差指状電極(以下、広交差IDTという)の当該広交差幅(第一の交差幅)以上となるように拡張する。これにより、電気特性(IDT間の弾性表面波の伝搬・反射特性)を劣化させることなく、交差幅の異なるIDT同士を音響結合させることができ、音響結合型SAWデバイスの設計の自由度を従来より向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の上記構成によれば、ラダー型構造と同等の設計自由度を確保しつつ、同時に挿入損失が小さくかつ小型のSAWデバイスを形成することが出来る。さらに本発明では、交差幅の小さい狭交差IDTの全体について開口長を広げるのではなく、その一部のみを広げるから、デバイスの面積増加を最小限に抑えながら、交差幅の異なるIDT同士を音響結合させることが出来る利点をも有する。
【0014】
尚、本発明において、交差幅とは、対向する各バスバーから延びる電極指同士が交差する長さ寸法をいう(後述する図1の符号Wa,Wb参照)。また、開口長とは、互いに対向するバスバーの対向縁と対向縁との間の距離(図1の符号Aa,Ab1,Ab0参照)をいう。
【0015】
本発明の第二のSAW装置は、上記第一のSAW装置において、狭交差IDTが、一方のバスバーから延びる交差電極指に対向するように他方のバスバーから当該交差電極指に向け延び且つ前記狭交差IDTの開口長を広交差幅(第一の交差幅)以上にした拡張部分に延在して前記広交差IDTの交差幅と狭交差IDTの交差幅との差分領域内に侵入する長さ寸法を有する非交差電極指を備える。
【0016】
前記第一のSAW装置では、狭交差IDTの開口長を広げる結果として、広交差IDTから狭交差IDTを見た場合に、当該開口長を広げたことによって狭交差IDTのバスバー間に生じる領域に、一方のバスバーから延びる電極指が存在せず、狭交差IDTの電極周期が広交差IDTの電極周期に較べて大幅に異なる部分が生じ得る。このように電極周期が大幅に変わることは、この領域における弾性表面波の伝搬または反射において損失が生じやすくなる点で好ましくない。
【0017】
そこで本発明の第二のSAW装置では、かかる差分領域(後述の図1符号D1参照)に、交差電極指と同様にバスバーから延びるが、対向するバスバーから延びる電極指と交差することがなく弾性表面波の励振に寄与しない非交差電極指を設け、広交差IDTから狭交差IDTに亘って電極周期が急激に変わることを防ぐ。これにより、交差幅の異なるIDT同士を音響結合させた場合に、両IDT間の弾性表面波の伝搬または反射ロスを抑えて低挿入損失のSAWデバイスを構成することが可能となる。
【0018】
尚、上記第一および第二のSAW装置、並びに後述の各SAW装置も含め、本発明に基づいて音響結合させるIDTの数は2つに限定されるものではなく、3つ以上のIDTを並列にまたは音響軌道に沿って直列に結合させることも可能である。一例を挙げれば、前記広交差IDTの両側に前記狭交差IDTが配置され、または前記狭交差IDTの両側に前記広交差IDTが配置されてこれらが音響結合されていても良い。
【0019】
また、上記広交差IDTおよび狭交差IDTのうちのいずれか一方または双方が2以上の交差指状電極部(以下、IDT部という)からなっていても良い。これらのIDT部は、電気的に直列に接続され、かつ、上記広交差IDTと狭交差IDTとの結合方向に略直交する方向に配列されて音響結合の相手方のIDTにそれぞれ音響結合される。このような構造によれば、交差幅が極端に異なるIDT同士(広交差IDT又は狭交差IDTと、上記各IDT部)を音響結合させることが可能となる。
【0020】
尚、IDTをかかる2以上のIDT部により形成する構造では、当該2以上のIDT部からなるIDTは、IDT部の配列方向(IDTの結合方向に略直交する方向)に並ぶ2以上の(例えば2つまたは3つ以上の)電極指交差部(交差幅)を有することとなる。この場合、当該IDTの交差幅とは、当該2以上の電極指交差部の幅の合計ではなく、当該2以上の電極指交差部のうち、IDT部の配列方向に関し両外縁に位置する2つの電極指交差部の外縁同士の間隔をいうものとする(後述の図24,図25の符号W23参照)。
【0021】
また本発明において、広交差IDTと狭交差IDTの間には、電極格子を設けても良い。この構造によれば、特に広交差IDTと狭交差IDTの電極周期が大きく異なる場合にこれらの電極周期を調整し、両IDT間における弾性表面波の伝搬・反射ロスを抑えて当該SAW装置の挿入損失を低減することが出来る。
【0022】
さらに本発明に基づいて音響結合させるIDTの回路上の配置位置は、特に問わない。例えば、上記広交差IDTおよび狭交差IDTが、共に入力信号端子と出力信号端子間の伝送路上に直列に挿入されていても良いし、入力信号端子と出力信号端子との間から分岐された分岐路(例えば基準電位への分岐路)上に上記広交差IDTおよび狭交差IDTが共に配されていても構わない。また、広交差IDTおよび狭交差IDTのうちの一方が入力信号端子と出力信号端子との間の伝送路上に直列に挿入され、他方が入力信号端子と出力信号端子との間から分岐された分岐路上に配されていても良い。
【0023】
一方、上記広交差幅(第一の交差幅)と狭交差幅(第二の交差幅)との関係は、狭交差幅(Wb)の広交差幅(Wa)に対する比(Wb/Wa)が、0.6以上1未満の範囲内にあることが望ましい。この範囲内であれば、ラダー型構造と比較した場合に挿入損失の改善効果が得られるからである。尚、この効果については、後の実施形態の説明において実験結果に基づいて述べる。また、同様の理由から、非交差電極指を備えた上記第二のSAW装置では、狭交差幅の広交差幅に対する比が、0.25以上1未満の範囲内にあることが望ましい。
【0024】
また、本発明に係るSAWフィルタは、上記いずれかのSAW装置を1つ以上含むものである。さらに本発明に係るデュプレクサは、アンテナに接続される共通端子と、この共通端子に接続された送信側フィルタと受信側フィルタとを備え、当該送信側フィルタおよび受信側フィルタのいずれか一方または双方を上記SAWフィルタとしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小型・低挿入損失の音響結合型SAWデバイス構造において、設計の自由度を向上させることが可能となる。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明するが、まず本発明に基づくSAW装置の基本的な構成について述べ、その後にこの基本構成を利用した各種の実施形態について説明する。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【0028】
〔基本構成〕
本実施形態では、図1に示すように対向する2本のバスバーB1,B2と、これらのバスバーB1,B2から各々対向するバスバーに向って延びて互い違いに交差する電極指Fとを備えた交差指状電極(IDT)11a,11bを図2に示すように弾性表面波の伝搬方向に沿って近接して配置することにより音響的に結合させるものであるが、これら音響結合させるIDT同士の交差幅が異なる。具体的には、第一の交差指状電極(広交差IDT)11aの交差幅Waに較べて第二の交差指状電極(狭交差IDT)11bの交差幅Wbが小さい。
【0029】
そして、小さな交差幅Wbを有する狭交差IDT11bについて、音響結合させる側の端部(以下、結合端部という)の開口長を広げ(開口長Ab0から開口長Ab1にする)、当該開口長Ab0を広交差IDT11aの交差幅Waと同じか又はそれ以上に設定する。これにより、広交差IDT11aの電極交差部で励振された弾性表面波を狭交差IDT11bのバスバーB1,B2間に良好に捕捉することができ、また逆に、狭交差IDT11bの電極交差部で励振された弾性表面波は大きな交差幅Waを有する広交差IDT11aによって捕捉されることなり、交差幅の異なる2つのIDTを良好に音響結合させることが可能となる。
【0030】
一方、狭交差IDT11bの開口長を単純に広げると、当該狭交差IDT11bには、各交差指電極Fの先端と対向側のバスバーB1又はB2との間隔が広がり、当該交差指電極Fの先端と対向側のバスバーB1又はB2との間に、電極が存在しない空間部分が生じて当該空間部分について狭交差IDT11bの電極周期が大幅に(図示の例では2倍に)大きくなってしまう。そしてこのような電極周期の急激な変化が存在することは、広狭両交差IDT11a,11b間の結合性(弾性表面波の伝搬・反射特性)を劣化させることとなる。
【0031】
そこで、本実施形態では、この空間部分に電極(非交差電極指)F1を設ける。この電極F1は、対向するバスバーB1,B2から延びる電極指Fと交差することはなく、弾性表面波の励振に寄与するものではないが、広交差IDT11aから狭交差IDT11bを見た場合に電極指Fの周期をほぼ一定に保ち、両IDT11a,11b間の弾性表面波の伝搬・反射特性を良好にする機能を果たす。この機能から当該非交差電極指F1は、広交差IDT11aの交差幅Waと狭交差IDT11bの交差幅Wbとの差分領域D1内にまで突出する長さ寸法を有するように(交差電極指Fの先端至近位置まで延びるように)形成することが好ましい。
【0032】
尚、図示の例では、広交差IDT11a、並びに狭交差IDT11bの上記開口長の拡張部分E1以外の部分E0にも、各バスバーB1,B2から対向するバスバーB2,B1に向けそれぞれ延び、交差することのない小さな電極F0を設けてあるが、これらの電極F0は、電極交差部で励振された弾性表面波をIDT11a,11b内に閉じ込める際等に用いられるもの(所謂ダミー電極)で、本発明ないし本実施形態が備える上記非交差電極指F1とは異なるものである。これらのダミー電極F0は、省略することも可能である(後述の各実施形態においても同様)。
【0033】
また、狭交差IDT11bの開口長を結合端部で拡張する場合に、前記図1および図2に示した例では、階段状に(不連続的に)拡張を行ったが、図3に示すように連続的に(徐々に)広げるようにすることも出来るし、多段的に(段階的に)広げるようすることも可能である。さらに拡張するのは、必ずしも両側(両方のバスバーB1,B2)について対称的に拡張する必要はなく、非対称にあるいは一方側(一方のバスバーB1又はB2)についてのみ拡張するようにしても良い(後述の図14,図19等参照)。
【0034】
〔実施形態1〕
図4は、本発明の第一の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示す概念図である。同図に示すようにこのSAWフィルタは、信号入力端子1と信号出力端子2との間に直列に挿入された4つの直列共振器を構成するIDT21,22,23,24と、信号入力端子1と信号出力端子2との間の伝送路から基準電位3へ分岐する分岐路上に接続された並列共振器31,32,33,34とを備えている。
【0035】
直列共振器を構成する各IDT21〜24は、弾性表面波の伝搬方向に沿って一列に配列されており、これらを入力端子1側から出力端子2側に向け順に、第一IDT、第二IDT、第三IDTおよび第四IDTと称した場合に、第二IDT22と第三IDT23は、相対的に大きな交差幅Ws2を有し(前記図1の広交差IDT11aに相当する)、第一IDT21と第四IDT24は、それぞれ相対的に小さな交差幅Ws1,Ws3を有する(前記図1の狭交差IDT11bに相当する)。
【0036】
そして、第一IDT21の第二IDT22との結合端部E1について、並びに第四IDT24の第三IDT23との結合端部E1について、前記図1および図2に示した基本構成に基づいて開口長をそれぞれ広げ、第二IDT22および第三IDT23の交差幅Ws2以上にした。また、当該開口長の拡張部E1には、前記非交差電極指F1を設けた。これにより、交差幅の異なる4つのIDT21〜24を良好に音響結合することが出来る。尚、第一IDT21および第四IDT24の両側(結合側でない端部)には、反射器Rを設ける。
【0037】
各IDT21〜24および反射器Rの電極指の数については、図面(前記図1,2を含む各図において同様)は簡略化して示しており、実際には図示したよりその数が多い。また、狭交差IDTである第一IDT21と第四IDT24は、この実施形態では異なる交差幅Ws1,Ws3を有するが、同一の交差幅を有していても良い。また、狭交差IDT(第一IDT21,第四IDT24)の開口長拡張部E1の長さは、弾性表面波をバスバー間に閉じ込めるのに必要な長さとする。この具体的長さは、圧電基板の種類等によっても異なり一定値に限定することは出来ないが、一例を挙げれば、リチウムタンタレート(LiTaO3)基板を使用する場合、電極指が23本配列された長さに相当する長さ以上とすることが望ましい。
【0038】
広交差幅IDTと狭交差幅IDTとの配置順序あるいは各個数は、この例のほかにも様々な組み合わせが可能であり、本実施形態あるいは後述の実施形態のほかにも本発明は様々な態様を含む。並列共振器31〜34は、図5に示すようにIDT11の両側に反射器を設けた一端子対型共振器により構成する。
【0039】
〔挿入損失の測定〕
上記実施形態1の構造を有するSAWフィルタを形成し、ラダー型SAWフィルタとの比較において挿入損失を測定する実験を行った。実験に使用した実施形態1に基づくフィルタの詳細な構成は次のとおりである。
【0040】
39°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、膜厚158nmのアルミニウム(Al)により各電極が形成されるようにSAWフィルタのパターン形成を行った後、ダイシングにより個片に分割し、これをフリップチップボンディングにより樹脂ベース基板上に搭載し、パッケージングされたものの周波数特性を測定した。
【0041】
直列共振器(IDT21〜24)の電極周期(λs)は1.798μm、第一から第四の各IDT21〜24の交差幅はそれぞれ16λs、26λs、26λs、18λs、電極対数はそれぞれ125対、85対、85対、110対である。また、反射器Rを構成する電極本数は50本で、各IDT21〜24間の距離、並びにIDT21,24と反射器R間の距離は、共に0.5λsである。さらに電極指先端からバスバーまで又はダミー電極までの距離は全て0.4μm、狭交差IDT21,24の開口長拡張部E1に設けた非交差電極指の数は40本である。
【0042】
また、並列共振器31〜34の電極周期(λp)は1.89μm、交差幅は14λp、電極対数は66対、反射器Rの電極本数は50本、IDT11と反射器R間の距離は0.5λpである。尚、これらの詳細仕様は、W−CDMAの受信用フィルタを想定したものである。
【0043】
一方、上記実施形態1のSAWフィルタに対応するラダー型SAWフィルタを比較対照として構成した。このラダー型フィルタは、図6に示すように入出力端子1,2間に直列に接続された4つの直列共振器41,42,43,44と基準電位3への分岐路上に配した4つの並列共振器31〜34とを備える。各直列共振器41〜44は、IDTの両側に反射器を有する一端子対型共振器であり、入力端子1から出力端子2に向け順に接続された第一IDT41i、第二IDT42i、第三IDT43iおよび第四IDT44iの各交差幅Ws1,Ws2,Ws3は、上記実施形態1に基づくSAWフィルタと同一であり、他の条件(電極対数、電極周期、IDTと反射器の距離等)についても同一とした。
【0044】
図7および図8はそれぞれ、これらSAWフィルタの周波数特性を示す線図、並びに2140MHz付近の拡大図であり、太線が上記実施形態1に基づく音響結合型フィルタの特性を、細線が上記ラダー型フィルタの特性を示している。これらの図に示すように、上記実施形態1に基づくフィルタ構造によれば、ラダー型構造に較べて2140MHzで挿入損失を0.05dB改善することが出来た。
【0045】
〔交差幅の差と挿入損失改善量との関係〕
さらに、本発明に基づいて音響結合させるIDTの交差幅の差と、挿入損失の改善量との関係を検討した。
【0046】
図9は異なる交差幅Ws1,Ws2を有する2つの直列共振器(IDT51,52)をラダー型に接続した構成を示すものであるが、これら2つの直列共振器(広交差IDT51と狭交差IDT52)を図10および図11に示すように本発明に基づいて音響結合させ、狭交差IDT52の交差幅Ws2を様々に変えた場合の挿入損失の改善量を測定した。尚、図10の例は、交差幅の小さな狭交差IDT52の結合端部の開口長を拡張して当該拡張部に非交差電極指を設けたものであり、図11の例は、非交差電極指を設けないものである。
【0047】
各直列共振器で使用した圧電基板は、39°YカットX伝搬LiTaO3基板、IDT51,52および反射器Rを形成する電極は、膜厚158nmのアルミニウム(Al)膜、電極周期(λs)は1.81μm、両IDT51,52の電極対数は共に60対、反射器Rの電極本数は50本、両IDT51,52間の距離およびIDT51,52と反射器Rとの間の距離は共に0.5λs、各IDT51,52における電極指先端からバスバー又はダミー電極までの距離は全て0.4μm、開口長拡張部に設けた非交差電極指の本数は40本である。また、基準電位3への分岐路上に配した2つの並列共振器53は、電極周期(λp)が1.89μm、交差幅が40λp、IDTの電極対数が50対、IDTの両側に設けた反射器の電極本数が50本、IDTと反射器との間の距離が0.5λpである。
【0048】
そして、音響結合させかつ非交差電極指を設けたフィルタ(図10)と、音響結合させたのみで非交差電極指を設けないフィルタ(図11)について、直列共振器のうち交差幅の大きな広交差IDT51の交差幅を40λとする一方、狭交差IDT52の交差幅を、広交差IDT51の交差幅WS1と同じ40λ、広交差IDT51より小さい36λ、32λ、28λ、24λ、20λ、16λ、12λおよび10λに変え、ラダー型に接続した場合(図9)に対する挿入損失の改善量を測定した。
【0049】
尚、各フィルタは同一ウェハ上に作製し、高周波プローバにより、それぞれのフィルタのSパラメータを測定した。対数を一定にしたまま交差幅を変化させると、フィルタのインピーダンスが変化するが、図12に示すように得られたSパラメータを用いて入力端子側および出力端子側に整合回路54を挿入してシミュレーションすることにより、インピーダンスの不整合による影響を排除した時のそれぞれのフィルタの挿入損失を求めた。
【0050】
結果は、図13の線図に示すとおりである。この線図において、横軸は音響結合させた2つのIDTの交差幅の比kw(=Ws2/Ws1)を、縦軸はラダー型構造(図9)に対する挿入損失の改善量を表し、丸点が非交差電極指を設けた場合(図10)を、三角点が非交差電極指を設けない場合(図11)をそれぞれ示している。
【0051】
この線図から明らかなように、本発明に基づいて交差幅の異なるIDT同士を音響結合させかつ非交差電極指を設けた場合には、交差幅比kwが0.25以上で、また非交差電極指を設けない場合には、交差幅比kwが0.6以上でラダー型と比較して挿入損失の改善効果が得られることが分かる。
【0052】
さらに図14および図15は、上記第一実施形態の変形例を示すものである。すなわち、図14に示すように前記第一実施形態のフィルタ(後述の実施形態においても同様)では、音響結合させる狭交差IDT61,64について、対向するバスバーのうち一方のバスバーのみを広げることにより結合端部の開口長を拡張し、この拡張部分E1に非交差電極指F1を設けても良い。
【0053】
また、図15に示すように狭交差IDT61,64について、結合端部に位置する開口長拡張部E1と、結合端部とは反対側の端部(開口長を拡張しない部分)E0とを別体の交差指状電極部61a,61b,64a,64bによりそれぞれ構成し(バスバーを分離する)、これら交差指状電極部61aと交差指状電極部61b(並びに交差指状電極部64aと交差指状電極部64b)を電気的に並列に接続するようにしても上記実施形態1と同様の効果を得ることが出来る。
【0054】
圧電基板の材料は、上記LiTaO3以外にも、例えばリチウムナイオベート(LiNbO3)や水晶等の圧電単結晶、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスのような圧電セラミックスを使用しても良く、さらに絶縁基板上にZnO薄膜などの圧電薄膜を形成したものを用いることも可能であり、本発明では特に限定されない。また、IDTや反射器を形成する電極材料は、上記Alのほか、例えば他金属との合金(Al合金)や金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)およびタンタル(Ta)等の導電材料を使用することも可能である。また、複数種類の金属または合金膜を2層以上積層した積層導電膜により電極を形成しても良い。また、電極周期や間隔、電極本数、交差幅および開口長等の各数値は、例示した以外の値にも様々に設定することが出来る。
【0055】
〔実施形態2〕
図16は、本発明の第二の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、信号入力端子1と信号出力端子2との間に直列に挿入された4つの直列共振器31,32,33,34と、信号入力端子1と信号出力端子2間の伝送路から基準電位3へ分岐する分岐路上に接続された並列共振器とを備え、並列共振器として弾性表面波の伝搬方向に沿って一列に配列され音響結合された4つのIDT71,72,73,74とこれらの両側に配した反射器Rとを有する。
【0056】
並列共振器を構成する各IDT71〜74は、入力端子1に近い側から順に第一IDT、第二IDT、第三IDTおよび第四IDTと称したときに、第一IDT71から第四IDT74の交差幅Ws1,Ws2,Ws3,Ws4が順に大きくなっており、電極対数も異なる。そして、これら交差幅の異なり隣接する第一IDT71と第二IDT72との間、第二IDT72と第三IDT73との間、並びに第三IDT73と第四IDT74との間をそれぞれ前記本発明の基本構成に基づいて音響結合させる。
【0057】
具体的に述べれば、第一IDT71と第二IDT72との間については、相対的に小さな交差幅Ws1を有する第一IDT71の結合端部の開口長を、相対的に大きな交差幅Ws2を有する第二IDT72の当該交差幅Ws2以上に拡張するとともに、当該開口長の拡張部に非交差電極指を設ける。同様に、第二IDT72と第三IDT73との間については、相対的に小さな交差幅Ws2を有する第二IDT72の結合端部の開口長を相対的に大きな交差幅Ws3を有する第三IDT73の交差幅Ws3以上に拡張するとともに、当該開口長の拡張部に非交差電極指を設ける。第三IDT73と第四IDT74との間についても、相対的に小さな交差幅Ws3を有する第三IDT73の結合端部の開口長を相対的に大きな交差幅Ws4を有する第四IDTの交差幅Ws4以上に拡張するとともに、当該開口長の拡張部に非交差電極指を設ける。
【0058】
尚、各直列共振器31〜34は、前記第一実施形態と同様にIDTの両側に反射器を設けた一端子対型共振器(図5)により構成する。
【0059】
〔挿入損失の測定〕
この第二実施形態についても、前記第一実施形態と同様に、ラダー型SAWフィルタとの比較において挿入損失を測定する実験を行った。実験に使用した第二実施形態に基づくフィルタの詳細な構成は次のとおりである。
【0060】
圧電基板として39°YカットX伝搬LiTaO3基板を使用し、各電極は膜厚158nmのAl電極とした。並列共振器については、電極周期(λp)が1.89μm、第一から第四の各IDT71〜74の交差幅はそれぞれ10λp、12λp、14λp、16λp、電極対数はそれぞれ93対、78対、66対、58対、反射器Rの電極本数が50本、各IDT71〜74間の距離並びにIDT71,74と反射器R間の距離は共に0.5λp、電極指先端からバスバーまで又はダミー電極までの距離は全て0.4μm、開口長拡張部に設けた非交差電極指の数は40本である。
【0061】
一方、直列共振器31〜34については、電極周期(λs)が1.798μm、交差幅が26λs、電極対数が80対、反射器の電極本数が50本、IDTと反射器間の距離が0.5λsである。尚、これらの仕様は、前記第一実施形態と同様にW−CDMAの受信用フィルタを想定したものである。
【0062】
図17および図18に示すように、第二実施形態に基づくフィルタ(図中太線)によっても、ラダー型構造(図中細線)に較べて2140MHzで挿入損失を0.05dB改善することが出来た。
【0063】
〔実施形態3〕
図19は、本発明の第三の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、信号入力端子1と信号出力端子2との間に直列に挿入された4つのIDT81,82,83,84と、信号入力端子1と信号出力端子2間の伝送路から基準電位3へ分岐する分岐路上に接続された4つのIDT85,86,87,88とを備え、直列に接続したIDT81,82,83,84(直列IDT)と並列に接続したIDT85,86,87,88(並列IDT)とをそれぞれ近接して配置して音響結合させたものである。
【0064】
また、直列IDT81〜84と並列IDT85〜88とは、交差幅が異なり(直列IDT81〜84の交差幅の方が並列IDT85〜88の交差幅より小さい)、前記基本構成に基づいて交差幅の小さな各直列IDT81〜84の結合端部について開口長を拡張し、非交差電極指を設ける。また、各音響結合させたIDTの両側には反射器Rを設ける一方、当該音響結合させたIDTの間には電極格子R1を設ける。
【0065】
この電極格子R1は、格子の配置間隔や、格子とIDTとの間の距離を適切にすることにより、音響結合させる両IDT(直列IDT81〜84と並列IDT85〜88)間の弾性表面波の伝搬・反射を調整する機能を果たすものであるが、電極の本数は、両IDT(直列IDT81〜84と並列IDT85〜88)を音響結合させるため、弾性表面波のエネルギーが閉じ込められる本数より少ない本数とする。具体的には、圧電基板としてLiTaO3基板を使用する場合には、例えば22本以下(例えば数本〜十数本)とする。尚、かかる電極格子は、省く(電極格子を設けない構成とする)ことも可能である。一方、各直列IDT81〜84の開口長拡張部E1に設ける上記非交差電極指の本数は、弾性表面波をIDT内に閉じ込めるため、23本以上とすることが望ましい。
【0066】
また、図20は上記第三実施形態に係るフィルタの基板上におけるパターン配置を示す図であり、図21は同様のフィルタをラダー型構造により形成した場合のパターン配置を示す図である。これらの図から明らかなように上記第三実施形態によれば、ラダー型構造(図21)に較べてフィルタ形状を大幅に小型化することが出来る。
【0067】
さらに図22は、上記第三実施形態に係るフィルタの変形例を示すものである。この例では、入出力端子1,2間に直列に接続した3つの直列IDT81a,82a,83aと1つの並列IDT86を弾性表面波の伝搬方向に順に一列に近接配置して音響結合させるとともに、残りの1つの直列IDT84aの両側に2つの並列IDT87,88をそれぞれ配置して音響結合させたものである。尚、最終段の直列IDT84aは、両側に交差幅の異なるIDT87,88を配置して音響結合させるため、両側に結合端部(開口長拡張部E1と非交差電極指F1)を有する。このように本発明では、両側に開口長の拡張部を設けて交差幅の異なるIDT同士を音響結合させることも可能である。
【0068】
図23は上記図22のフィルタの基板上でのパターン配置を示すものであるが、全体として正方形に近いコンパクトな形状に纏めることが可能となっている。
【0069】
〔実施形態4〕
図24は、本発明の第四の実施形態に係るSAW共振器の音響結合構造を示すものである。この例は、音響結合させる2つのIDT91,92のうち一方のIDT92が電気的に直列に接続された2つの交差指状電極部(IDT部)92a,92bからなるもので、当該2つのIDT部92a,92bからなる一方のIDT(広交差IDT)92の交差幅W23(第一のIDT部92aと第二のIDT部92bとはそれぞれ交差幅W2およびW3を有するが、これらの交差幅W2,W3の合計ではなく、第一IDT部92aの電極交差部の外縁と、第二IDT部92bの電極交差部の外縁との間の幅W23をいう)が、他方のIDT(狭交差IDT)91の交差幅W1より大きい。このため、上記狭交差IDT91の結合端部の開口長を、上記広交差IDT92の交差幅W23より大きくし、この開口長拡張部E1に非交差電極指を設ける。
【0070】
このように本発明に基づいて音響結合させるIDTは、各々電極交差部を有する複数のIDT部からなるものであっても良く、特にこのような構成は、交差幅が非常に小さいIDT(IDT部)を交差幅の大きなIDTに音響結合させる場合に好適である。尚、IDTを構成する上記IDT部は、3つ以上であっても良い。
【0071】
さらに図25は、上記図24に示す例とは逆に、2つのIDT部からなるIDT92の交差幅W23の方が、前記他方のIDT91の交差幅W1より小さい例を示すものである。この場合には、交差幅の小さい2つのIDT部92a,92bからなるIDT92の結合端部の開口長を広げ、この拡張部E1に非交差電極指を設ければ良い。
【0072】
さらに図26に示すように、音響結合させる2つのIDT95,96の両方が複数の(この場合2つの)IDT部95a,95b,96a,96bからそれぞれなるものであっても良い。この場合、基本的には、交差幅W12,W34の小さなIDT95又は96の結合端部の開口長を交差幅の大きなIDT96又は95の交差幅以上に広げるが、図示の例のように音響結合させる両方のIDTの開口長を結合端部において相手方IDTの交差幅W12,W34以上となるように拡張しても良い。尚、各IDTを構成するIDT部の数は、3つ以上の任意の数の組み合わせとすることが出来る。
【0073】
〔実施形態5〕
図27および図28は、本発明の第五の実施形態に係るデュプレクサを示すものである。これらの図に示すようにこのデュプレクサ101は、共通端子Cに整合回路104を介し接続された送信用フィルタ102と受信用フィルタ103とを備え、これらのフィルタ102,103をベース基板105の表面に実装し、蓋体106により気密封止したものである。そして、送信用フィルタ102および受信用フィルタ103のいずれか一方または双方を前記実施形態のいずれかのSAWフィルタにより形成する。これにより、挿入損失が低く良好な通過特性を有し、しかも小型のデュプレクサを構成することが出来る。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことが出来ることは当業者において明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に基づいて音響結合させるIDTの基本構造を示す概念図である。
【図2】本発明に基づく音響結合の基本構造を示す概念図である。
【図3】前記図2に示した音響結合構造の変形例を示す概念図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示す概念図である。
【図5】前記第一実施形態に係るSAWフィルタで使用する並列共振器の構造を示す概念図である。
【図6】前記第一実施形態に係るSAWフィルタをラダー型構造により形成した例を示す概念図である。
【図7】前記第一実施形態に係るSAWフィルタの周波数特性をラダー型フィルタとの比較において示す線図である。
【図8】前記図7の2140MHz付近の拡大図である。
【図9】異なる交差幅を有する2つの直列共振器をラダー型に接続したSAWフィルタを示す概念図である。
【図10】前記図9のラダー型フィルタにおける直列共振器を本発明に基づいて互いに音響結合させた例を示す概念図である。
【図11】前記図9のラダー型フィルタにおける直列共振器を本発明に基づいて互いに音響結合させた別の例を示す概念図である。
【図12】前記第一実施形態のフィルタによる挿入損失の改善量を測定したときに使用した回路構成を示す図である。
【図13】本発明に基づいて音響結合するIDTの交差幅比と、挿入損失の改善量との関係を示す線図である。
【図14】前記第一実施形態の変形例を示す図である。
【図15】前記第一実施形態の別の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第二の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示す概念図である。
【図17】前記第二実施形態に係るSAWフィルタの周波数特性をラダー型フィルタとの比較において示す線図である。
【図18】前記図17の2140MHz付近の拡大図である。
【図19】本発明の第三の実施形態に係る音響結合型SAWフィルタを示す概念図である。
【図20】前記第三実施形態に係るフィルタの基板上におけるパターン配置を示す図である。
【図21】前記第三実施形態に相当するラダー型フィルタの基板上におけるパターン配置を示す図である。
【図22】前記第三実施形態に係るフィルタの変形例を示すものである。
【図23】前記図22に示したフィルタの基板上におけるパターン配置を示す図である。
【図24】本発明の第四の実施形態に係るSAW共振器の音響結合構造を示す概念図である。
【図25】前記第四実施形態に係る音響結合構造の別の例を示す概念図である。
【図26】前記第四実施形態に係る音響結合構造のさらに別の例を示す概念図である。
【図27】本発明の第五の実施形態に係るデュプレクサを示すブロック図である。
【図28】前記第五実施形態に係るデュプレクサを示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
Aa,Ab1,Ab0…開口長
B1,B2…バスバー
D1…差分領域
E0…開口長の非拡張部
E1…開口長の拡張部
F…交差電極指
F0…ダミー電極
F1…非交差電極指
R…反射器
R1…電極格子
Wa,Wb,Ws1,Ws2,Ws3,Ws4,W1,W2,W3,W4,W12,W23,W34…交差幅
1…信号入力端子
2…信号出力端子
3…基準電位
11a,11b,21〜24,41i〜44i,51,52,61〜64,71〜74,81〜88,81a〜84a,91,92,95,96…交差指状電極(IDT)
31,32,33,34,53…一端子対型共振器
54,104…整合回路
101…デュプレクサ
102…送信用フィルタ
103…受信用フィルタ
105…ベース基板
106…蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに音響結合する第一の交差指状電極と第二の交差指状電極とを含む弾性表面波装置であって、
前記第一の交差指状電極は、少なくとも音響結合される側の端部において第一の交差幅を有する一方、
前記第二の交差指状電極は、少なくとも音響結合される側の端部において前記第一の交差幅より小さい第二の交差幅を有し、
前記第二の交差指状電極の開口長を、音響結合される側の端部において前記第一の交差幅以上とした
ことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記第二の交差指状電極は、
一方のバスバーから延びる交差電極指に対向するように他方のバスバーから当該交差電極指に向け延び且つ前記第二の交差指状電極の開口長を第一の交差幅以上にした拡張部分に延在して前記第一の交差指状電極の交差幅と当該第二の交差指状電極の交差幅との差分領域内に侵入する長さ寸法を有する非交差電極指を備える
請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第二の交差幅の前記第一の交差幅に対する比が0.6以上1未満の範囲内にある
請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第二の交差幅の前記第一の交差幅に対する比が0.25以上1未満の範囲内にある
請求項2に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記第一の交差指状電極および前記第二の交差指状電極が、入力信号端子と出力信号端子との間に直列に挿入されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
前記第一の交差指状電極および前記第二の交差指状電極が、入力信号端子と出力信号端子との間から分岐された分岐路上に配されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項7】
前記第一の交差指状電極および第二の交差指状電極のうちの一方が、入力信号端子と出力信号端子との間に直列に挿入され、
前記第一の交差指状電極および第二の交差指状電極のうちの他方が、入力信号端子と出力信号端子との間から分岐された分岐路上に配されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記第一の交差指状電極と前記第二の交差指状電極の間に電極格子を備えた
請求項1から7のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
前記第一の交差指状電極および前記第二の交差指状電極のうちのいずれか一方または双方が2以上の交差指状電極部からなり、
これら交差指状電極部は、電気的に直列に接続され、かつ、前記第一の交差指状電極と前記第二の交差指状電極との結合方向に略直交する方向に配列されて前記音響結合の相手方の交差指状電極にそれぞれ音響結合される
請求項1から8のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項10】
前記請求項1から9のいずれか一項に記載の弾性表面波装置を1つ以上含む
弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
アンテナに接続される共通端子と、この共通端子に接続された送信側フィルタと受信側フィルタとを備えるデュプレクサであって、
前記送信側フィルタおよび受信側フィルタのいずれか一方または双方が、前記請求項10に記載の弾性表面波フィルタである
デュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−238167(P2006−238167A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51298(P2005−51298)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】