説明

弾性表面波装置

【課題】微小クラックが発生せず、低コストで複数の弾性表面波素子の間の相互干渉を制御することのできる弾性表面波装置を提供する
【解決手段】本発明に係る弾性表面波装置10は、基板11と、基板11の一方の主面上に形成され、くし型電極部と、一対のリフレクタと、を有する複数の弾性表面波素子21、22、23、24と、を備え、複数の弾性表面波素子21、22、23、24は、弾性表面波の伝搬方向と直交するように並べて配置され、一方の主面上の、複数の弾性表面波素子21、22、23、24の間の位置に、レーザーを照射することにより、基板11の材質が改質した改質部41、42、43をさらに備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波装置に関する。特に、基板と、基板の一方の主面上に形成されている複数の弾性表面波素子と、を備える弾性表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器等で用いられる弾性表面波装置では、所望の伝送特性を得るために、同一基板上に複数の弾性表面波素子を形成したものが用いられている。その際に、複数の弾性表面波素子の間の相互干渉を制御するために、様々な構造の弾性表面波装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図2のような弾性表面波装置100が記載されている。図2では、基板101の主面上に、くし型電極部102と、リフレクタ103と、を有する複数の弾性表面波素子104が形成されている。そして、複数の弾性表面波素子104の間には、溝105が設けられている。この溝105の存在により、複数の弾性表面波素子104の間の相互干渉を防ぐとしている。そして、溝105は、例えばエッチング又はダイシングマシーンにより形成可能と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−65910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、エッチングによる加工は、工程が複雑になり、製造コストが高いという問題が生じる。また、ダイシングマシーンによる加工では、部分的に溝を形成することが困難である。また、加工時に微小クラックが発生し、基板の強度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、微小クラックが発生せず、低コストで複数の弾性表面波素子の間の相互干渉を制御することのできる弾性表面波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性表面波装置は、基板と、前記基板の一方の主面上に形成され、くし型電極部と、一対のリフレクタと、を有する複数の弾性表面波素子と、を備え、前記複数の弾性表面波素子は、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に並べて配置され、前記一方の主面上の、前記複数の弾性表面波素子の間の位置に、レーザーを照射することにより、前記基板の材質が改質した改質部をさらに備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る弾性表面波装置では、前記改質部は直線状又は矩形状に形成されており、その長手方向が前記伝搬方向と平行に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、微小クラックが発生せず、低コストで複数の弾性表面波素子の間の相互干渉を制御することのできる弾性表面波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一の実施形態に係る弾性表面波装置を示す平面図である。
【図2】従来の弾性表面波装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一の実施形態に係る弾性表面波装置を示す平面図である。弾性表面波装置10は、基板11と、複数の弾性表面波素子21、22、23、24と、複数の端子31、32、33、34と、を備えている。基板11の材質の例としては、LiNbO3、LiTaO3が挙げられる。
【0013】
複数の弾性表面波素子21、22、23、24は、基板11の一方の主面上に形成されている。弾性表面波素子21は、くし型電極部21aと、一対のリフレクタ21b及び21cと、を有している。そして、一対のリフレクタ21b及び21cは、くし型電極部21aを挟み込むように弾性表面波の伝搬方向に沿って配置されている。同様に、弾性表面波素子22は、くし型電極部22aと、一対のリフレクタ22b及び22cと、を有している。そして、一対のリフレクタ22b及び22cは、くし型電極部22aを挟み込むように弾性表面波の伝搬方向に沿って配置されている。また、弾性表面波素子23は、くし型電極部23aと、一対のリフレクタ23b及び23cと、を有している。そして、一対のリフレクタ23b及び23cは、くし型電極部23aを挟み込むように弾性表面波の伝搬方向に沿って配置されている。また、弾性表面波素子24は、くし型電極部24aと、一対のリフレクタ24b及び24cと、を有している。そして、一対のリフレクタ24b及び24cは、くし型電極部24aを挟み込むように弾性表面波の伝搬方向に沿って配置されている。くし型電極部及びリフレクタの材質としては、AlやAl合金が挙げられる。
【0014】
複数の端子31、32、33、34は、基板11の一方の主面上に形成されている。複数の端子31、32、33、34の材質の例としては、AlやAl合金が挙げられる。端子31は、弾性表面波素子22のくし型電極部22aと配線を介して電気的に接続されている。また、端子32は、弾性表面波素子21のくし型電極部21aと配線を介して電気的に接続されている。また、端子33は、弾性表面波素子23のくし型電極部23a及び弾性表面波素子24のくし型電極部24aと配線を介して電気的に接続されている。また、端子34は、弾性表面波素子24のくし型電極部24aと配線を介して電気的に接続されている。
【0015】
複数の弾性表面波素子21、22、23、24は、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に並べて配置されている。ただし、本実施形態では、弾性表面波素子21と22とは、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向にずれて配置されている。また、弾性表面波素子22と23とは、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向にずれて配置されている。また、弾性表面波素子23と24とは、弾性表面波の伝搬方向とずれて配置されている。
【0016】
3つの改質部41、42、43は、基板11の一方の主面上に形成されている。そして、3つの改質部41、42、43は、基板11にレーザーを照射して、基板11の材質が改質することにより形成される。その際、基板11の材質の結晶構造が変化し、レーザーを照射した部分の誘電率や音響インピーダンス等の物性が変化する。
【0017】
一般に、改質部の誘電率は、レーザーを照射すると小さくなる。したがって、レーザーの照射条件(波長、パワー、照射時間等)を選定することにより、改質部の誘電率を制御することが可能である。そこで、改質部の誘電率を制御して、弾性表面波素子間の静電的結合を制御する。それにより、弾性表面波素子間の静電的結合により決定される特性である、例えば弾性表面波装置の帯域外減衰量等を制御することが可能になる。
【0018】
また、改質部の音響インピーダンスは、誘電率と同様に、レーザーの照射条件を選定することにより、制御することが可能である。改質部の音響インピーダンスが変化すると、伝搬する表面波が改質部とそれ以外との境界で反射、屈折及び散乱する。その結果、伝搬する表面波のエネルギーを抑えることが可能になる。
【0019】
伝搬しない表面波のエネルギーは、伝搬方向以外の方向へ表面波として反射されるものと、表面波以外に変換されるものがある。表面波以外に変換されるものとしては、バルク波として、伝搬媒質である基板の深さ方向に伝搬するバルク波が大部分であり、音波として大気中に放射されるものは少ないと考えられる。
【0020】
また、レーザーの照射により、誘電率の変化と音響インピーダンスの変化が同時に起こっても良い。かかる場合でも、レーザーの照射条件を制御することにより、誘電率と音響インピーダンスを同時に制御することが可能である。
【0021】
本実施形態では、弾性表面波装置10は、3つの改質部41、42、43を備えている。改質部41は、弾性表面波素子21と22の間の位置に形成されている。また、改質部42は、弾性表面波素子22と23の間の位置に形成されている。また、改質部43は、弾性表面波素子23と24の間の位置に形成されている。
【0022】
また、本実施形態では、3つの改質部41、42、43は、上方から見て矩形状に形成されている。そして、その長手方向が弾性表面波の伝搬方向と平行に形成されていることが好ましい。この場合には、弾性表面波素子の間に改質部を効率的に形成することができる。同様に、3つの改質部41、42、43は、上方から見て直線状に形成されていても良い。
【0023】
また、本実施形態では、改質部41は、弾性表面波素子22において、隣接する弾性表面波素子21と対向する側を覆うように形成されている。また、改質部42は、弾性表面波素子22において、隣接する弾性表面波素子23と対向する側を覆うように形成されている。また、改質部43は、弾性表面波素子23において、隣接する弾性表面波素子24と対向する側を覆うように形成されている。
【0024】
本発明によれば、エッチングによる加工のようにマスキングを行う必要がなく、工程が簡単であり、低コストで製造することが可能である。また、マスク除去の工程も不要であるため、基板にダメージを与える心配がない。また、ダイシングマシーンによる加工のように微小なクラックが発生することがないため、基板の強度を低下させることがない。また、レーザーはダイシングマシーンと異なり、部分的な加工を容易に行うことができる。
【0025】
また、レーザーは微細な領域にも照射可能であるため、改質部を狭い領域に形成することができる。そのため、弾性表面波装置の更なる小型化が可能である。 また、改質部は基板の材質を改質した部分であり、改質部の表面は平坦のままである。したがって、改質部の上に配線等を断線せずに形成することが可能である。そのため、弾性表面波装置の更なる小型化が可能である。
【0026】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明に係る弾性表面波装置の効果を損なわない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 弾性表面波装置
11 基板
21、22、23、24 弾性表面波素子
21a、22a、23a、24a くし型電極部
21b、21c、22b、22c、23b、23c、24b、24c リフレクタ
31、32、33、34 端子
41、42、43 改質部
101 基板
102 くし型電極部
103 リフレクタ
104 弾性表面波素子
105 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面上に形成され、くし型電極部と、一対のリフレクタと、を有する複数の弾性表面波素子と、
を備え、
前記複数の弾性表面波素子は、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に並べて配置され、
前記一方の主面上の、前記複数の弾性表面波素子の間の位置に、レーザーを照射することにより、前記基板の材質が改質した改質部をさらに備える、弾性表面波装置。
【請求項2】
前記改質部は直線状又は矩形状に形成されており、その長手方向が前記伝搬方向と平行に形成されている、請求項1に記載の弾性表面波装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−60211(P2012−60211A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198578(P2010−198578)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】