弾性難燃性被覆を伴っているエラストマー本体
防振及び懸架の為に適したエラストマー本体(1)が開示されている。弾性本体(1)は、本体(1)の少なくとも一部分を覆っている弾性及び柔軟性難燃性被覆(4,5,6)の少なくとも一層を備えている。難燃性被覆(4,5,6)の少なくとも一層は、ハロゲン化されておらず、そして、難燃性物質及び弾性結合材料を備えている。難燃性物質は、発泡性黒鉛を備えている。被覆(4,5,6)の少なくとも一層は、20%以上の弾性を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振及び懸架の為に適しているエラストマー本体に関係している。エラストマー本体は、弾性難燃性被覆(elastic fire retardant coating)の少なくとも一層を備えている。この発明はまた、このエラストマー本体を備えている車両,船,そして固定されている機械に関係している。
【背景技術】
【0002】
種々の懸架及び防振適用物におけるエラストマー製品の使用は、当該技術において普通であり、そして良く知られている。
【0003】
通常使用されている懸架製品の一種は、エラストマーばねである。エラストマーばねは、車両の種々の種類において最も良い可能な乗車快適性を達成する為に一般的に使用されている。エラストマーばねは一般的に所望の減衰特性(damping characteristic)を発揮する為に形作られているエラストマー本体から成る。
【0004】
通常使用されている懸架製品の他の一つの種類は、ダイヤフラムである。ダイヤフラムは、空気で充たされている袋又は蛇腹(bellow)である。空気蛇腹の形状及び寸法は、減衰特性を適用させる為に異ならせることが出来る。また、空気蛇腹中の圧力は、減衰特性を変更させる為に変更されることが出来る。
【0005】
通常の防振製品の一例は防振マウント(anti-vibration mount)である。防振マウントは一般的に、それらの間に配置されたエラストマー本体を伴っている剛性板又はブラケット(bracket)から成る。剛性板又はブラケットの1つは次に一般的には、振動元、例えば機関に、そして他は振動から隔離しなければならない環境、例えば車両又は船に、固定されている。
【0006】
上述した懸架及び防振製品に関係している1つの問題は、好ましくない燃焼特性(burning characteristic)である。製品のエラストマー本体は一般的には、補強物質を備えている人工ポリイソプレン(polyisoprene)及び天然ポリイソプレンから製造されている。人工及び天然ポリイソプレンは、補強物質、例えばカーボンブラック,鉱物油又は他の有機薬品(organic chemicals)、の幾つかと同様に易燃性(flammable)である。これは、火災に対する本来の抵抗の無い弾性本体となる。
【0007】
イソプレン配合物(compound)は比較的容易に着火し、そして急速に激しい火災(hot fire)を導く。火災はエラストマー本体の小さな部分でさえ焼き尽くすことが出来る。火災の間、ひどい煤だらけの黒煙が大量に放出される。これは、火災又は煙の放出が人々及び/又は機器に対し重大な損傷を生じさせることが出来る適用においては特に問題である。製品が、地下鉄及び船の機関室のような、限られた仕切り区画において使用された時、煙の放出及び放熱は重大な問題であり、避難の為に有効に使用することが出来る時間を縮める。
【0008】
イソプレン及び天然ゴムエラストマー製品をハロゲン化された炎抑制剤(halogenated flame retardant)により改質することが知られている。この手法が、しかしながら、製品の炎抑制特性(flame retardant)を改良するかは疑問であり、しかしまた幾つかの欠点を有する。ハロゲン化された炎抑制剤は例えば製品の毒性(toxicity)を増大させる。多くのハロゲン化された炎抑制剤はまた、環境問題の故に、使用が禁止されている。
【0009】
もう1つの知られている手法は、イソプレン及び天然ゴムエラストマー製品をハロゲン化されていない炎抑制剤(non-halogenated flame retardant)により改質することである。この場合には、難燃性特質(fire retardant characteristic)を改良する為にアルミニウム三価水和物(aluminium trihydride)及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)を使用することが普通である。これらの物質は、しかしながら、有効になる為には、重量の50%を越える、高いパーセンテージでエラストマー材料中に配合されなければならない。このような程度に炎抑制材料を組み込むことにより、エラストマー材料は、圧縮残留歪(compression set),動的弾性率(dynamic modulus),そしてクリープ(creep)の如きその基本特性(key characteristic)を失い始める。
【0010】
エラストマー製品の火災に関係している危険を避けることを試みる時のさらにもう1つの手法は、もう1つの材料でエラストマー製品を単に製造することである。一つの可能な解決法は、改良された難燃性特性を伴った製品を創出する為にハロゲン化されたポリマーを使用することである。しかしながら、この場合においてもまた、その材料は有毒であり好ましくない。ハロゲン化されていないポリマー、例えばシリコーン(silicone)を使用することも可能である。これらのポリマーは、しかしながら、より高価であり、低い物理的強度になる。
【0011】
標準的なエラストマー製品を使用することが出来る為には、製品を建設工業において使用されているものの如き標準的な発泡性防炎塗料(intumescent coating)で被覆することが提案されている。これらの被覆は、しかしながら、製品がしばしばそして連続的に表面延び(surface elongation)にさらされた時に、エラストマー製品上に残留する為に十分に弾性的ではないという事実の故に、エラストマー製品の為に不適切である。
【発明の概要】
【0012】
上述した従来技術の改良を提供することがこの発明の目的である。
【0013】
特定の目的は、防振及び懸架の為の、弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体を提供することである。
【0014】
これらの及び他の目的は、この発明の以下の記載から明らかになる利点とともに、弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体,弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体を備えている車両,船,そして固定されている機械により達成される。好適な実施形態は従属請求項において規定されている。
【0015】
それ故に、防振及び懸架の為に適したエラストマー本体が提供されている。エラストマー本体は、弾性及び柔軟性難燃性被覆の少なくとも一層を備えている。弾性及び柔軟性難燃性被覆は本体の少なくとも一部分を覆っている。難燃性被覆の少なくとも一層は、ハロゲン化されておらず(non-halogenated)、そして、難燃性物質(fire retardant substance)及び弾性結合材料(elastic binder material)を備えている。難燃性物質は発泡性黒鉛(expandable graphite)を備えている。被覆は20%以上の弾性(elasticity)を有している。
【0016】
発明のエラストマー本体は、それに弾性難燃性被覆の少なくとも一層が設けられていて、その弾性性質を維持している間に本体を難燃性にする、ということにおいて優れている。
【0017】
エラストマー本体は、エラストマー本体の少なくとも一部分上に適用されエラストマー本体の少なくとも一部分を覆う第1層と、そして、第1層の少なくとも一部分の表面上に適用され第1層の少なくとも一部分を覆う第2層と、を備えていて良い。このことは、接着及び難燃性性質を最適にする為に層の性質を調整することが出来るということにおいて優れている。
【0018】
難燃性被覆の第1層が難燃性被覆の第2層よりも大きな弾性を有していて良く、このことは、難燃性被覆がエラストマー本体の表面延びにより良く耐えることが出来ることにおいて優れている。
【0019】
難燃性被覆の第1層が第1難燃性物質を備えていて良く、そして、第2層が第2難燃性物質を備えていて良い。このことは、難燃性被覆の難燃性性質を最適にし、そして、同時に、それが使用されるべき適用物の為にその被覆を調整することを可能にすることを意味している。
【0020】
第1層が第1弾性結合材料(first elastic binder material)を備えて良く、そして、第2層が第2弾性結合材料(second elastic binder material)を備えて良い。このことは、難燃性被覆の接着(adhesion)及び耐久性(durability)を最適にすることを可能にすることを意味している。
【0021】
難燃性被覆の第1層及び第2層が第1難燃性物質を備えていて良く、このことは、2つの層の難燃性性質及び弾性が適用されることが出来ることにおいて優れている。
【0022】
難燃性被覆の第1層及び第2層が第1結合材料を備えていて良く、このことは、2つの層間の接着を強力にすることにおいて優れている。
【0023】
難燃性被覆の少なくとも一層が、第2層の少なくとも一部分の表面上に適用され第2層の少なくとも一部分を覆う第3層を備えていて良い。このことは、エラストマー本体を覆う層の表面特性(surface property)を調整することを可能にすることを意味する。
【0024】
難燃性被覆の第3層が赤外線輻射(infrared radiation)に対し反射可能であって良く、このことは、エラストマー本体を輻射熱源(radiant heat source)に対し敏感でなくすることにおいて優れている。
【0025】
難燃性被覆の少なくとも一層の少なくとも1つの難燃性物質が発泡性グラファイト(expandable graphite)であって良い。このことは、効果的な弾性難燃性被覆を毒性ガスの排出を増加させること無しで妥当な値段(reasonable price)で達成させることが出来ることにおいて優れている。
【0026】
難燃性被覆の少なくとも一層の少なくとも1つの難燃性物質が窒素−燐を基にしていて(nitrogen-phosphorous based)良い。このことは、効果的で高い弾性の難燃性被覆が達成できることを意味している。
【0027】
難燃性被覆の少なくとも一層の難燃性物質が、硼酸亜鉛(zinc borate),アルミニウム三価水和物(aluminium trihydrate),発泡性黒鉛(expandable graphite),ポリ燐酸塩アンモニウム(ammonium polyphosphate),水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide),モントモリロナイトクレー(montmorillonite clay),そして赤色燐(red phosphorus)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んでいて良い。これは、それをそれが使用される適用物に適するようにするよう被覆の難燃性性質を調整することを可能にすることを意味している。
【0028】
難燃性被覆の少なくとも一層の結合材料がエラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane)であって良い。このことは、長寿命の高い柔軟性の難燃性被覆が達成できることにおいて優れている。
【0029】
難燃性被覆の少なくとも一層の結合材料が、天然ゴム(natural rubber),エチレンアクリルゴム(ethylene acrylic rubber),エポキシ化天然ゴム(epoxidised natural rubber),スチレンブタジエン(styrene butadiene),エラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane),エチレンプロピレンジエン改質ゴム(ethylene propylene diene modified rubber),アクリロニトリルブタジエン(acrylonitrile butadiene),そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(hydrogenated acrylonitrile butadiene rubber)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んで良い。このことは、難燃性被覆の弾性動作(elastic behaviour)及び特性(characteristic)を調整することが可能であることを意味している。
【0030】
難燃性被覆の少なくとも1つの層はハロゲン化されていなく(non-halogenated)て良く、これは、被覆が有毒でなく環境に対する影響がほんのわずかであるか又は全くないことにおいて優れている。
【0031】
エラストマー本体が熱硬化性エラストマー(thermosetting elastomer)で形成されていて良く、これは、耐久性が良く長寿命のエラストマー本体を妥当な値段で達成できることにおいて優れている。
【0032】
エラストマー本体が天然又は人工ポリイソプレン(natural or synthetic polyisoprene)で形成されていて良く、これは、懸架及び防振の為に適した性質を伴ったエラストマー本体を達成できることを意味している。
【0033】
エラストマー本体が、ポリイソプレン(polyisoprene),天然ゴム(natural rubber),人工ゴム(synthetic rubber),エチレンアクリルゴム(ethylene acrylic rubber),スチレンブタジエン(styrene butadiene),エラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane),エチレンプロピレンジエン改質ゴム(ethylene propylene diene modified rubber),アクリロニトリルブタジエン(acrylonitrile butadiene),ポリクロロプレン(polychloroprene),水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(hydrogenated acrylonitrile butadiene rubber),そしてエポキシ化天然ゴム(epoxidised natural rubber)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んで良い。これは、それが使用される適用物にそれを適用させるようエラストマー本体の性質を調整することを可能にすることを意味している。
【0034】
エラストマー本体は、特に火災(fire),煙,そして毒性(toxicity)が関係している、懸架構成要素(suspension component)及び防振構成要素(anti-vibration component)において好ましく使用されることができる。
【0035】
エラストマー本体は、車両,船,又は固定されている機械、特に鉄道車両(railway vehicle)及び海用船(marine vessel)、において好ましく使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
この発明は異なった実施形態に基づいた例示として添付の概略図を参照しながら以下に記載され、ここにおいて、
【図1a】図1aは、弾性及び難燃性被覆の一層を伴っているエラストマー本体の横断面図であり、
【図1b】図1bは、弾性及び難燃性被覆の二層を伴っているエラストマー本体の横断面図であり、
【図2】図2は、エラストマーばねの形状における懸架製品の斜視図であり、
【図3】図3は、防振マウントの形状における耐震製品の斜視図であり、
【図4】図4は、エラストマーばねを含んでいるボギー台車を有している列車の斜視図であり、
【図5】図5は、防振マウント上に設けられた船用機関の斜視図であり、
【図6】図6は、防振マウント上に設けられた2つの船用機関の部分図であり、
【図7】図7は、実験の期間中の一酸化炭素放出を示している概略図であり、
【図8】図8は、実験の期間中の二酸化炭素放出を示している概略図であり、
【図9】図9は、実験の期間中の煤煙放出を示している概略図であり、
【図10】図10は、実験の期間中の熱放出率の比較を示している概略図であり、
【図11】図11は、実験の期間中の残留パーセンテージ質量損失を示している概略図であり、そして、
【図12】図12は、実験の期間中の熱放出の平均率を示している概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
第1実施形態に従っているエラストマー本体は図1a中に示されている。エラストマー本体1はゴムから型成形されて(moulded)いる。エラストマー本体1は、専用接合接着剤(proprietary bonding adhesive)の使用により加硫工程(vulcanisation)の間、2つの金属板2,3に取り付けられている。金属板2,3は、如何なる種類の適用物において使用された時、周囲の物に対しエラストマー本体を固定するのに使用される。一方の金属板2は次に、例えば鉄道車両の客車本体に、他の金属板3は、例えば鉄道車両のボギー(bogie)に固定される。さらに、エラストマー本体はエラストマー難燃性被覆4の一層により覆われている。その層の厚さは80μmである。エラストマー難燃性被覆4は、発泡性グラファイトの形態である難燃性物質を含む。さらに、エラストマー難燃性被覆4は、ポリウレタンの形態である結合材料を含む。発泡性グラファイトは被覆の40%を構成している。エラストマー難燃性被覆4の残り、即ち60%、は、ポリウレタンにより構成されている。被覆4は100%を越える弾性を有している。さらに、被覆4はハロゲン化されていない。
【0038】
被覆4をエラストマー本体1に適用する時、難燃性物質及び結合材料は有機溶剤を使用した溶液中に混合される。溶液は次に、スプレーガン(spray gun)又は如何なる他の適切な装置を使用して、エラストマー本体1上に適用され、難燃性被覆4を形成する。これは、エラストマー本体1が如何なる種類の適用物中に設置された時に現場で、又はエラストマー本体が製造された時以前に、被覆4を適用することが可能である、ことを意味している。有機溶剤は被覆4の加硫(curing)の間に蒸発し、難燃性物質及び結合材料のみが被覆4中に残る。
【0039】
第2実施形態に従っているエラストマー本体が図1b中に示されている。この実施形態においてもまた、エラストマー本体1はゴムから型成形されていて、2つの板2,3に取り付けられている。金属板2,3はまた、この実施形態において、エラストマー本体1を固定する為に使用されている。
【0040】
エラストマー本体1はエラストマー難燃性被覆の第1層5により覆われている。第1層5は次に、エラストマー難燃性被覆の第2層6により覆われている。
【0041】
第1層5は、窒素−燐を基にしている難燃性物質及びポリウレタンの形態をした結合材料を含んでいる。窒素−燐を基にしている難燃性物質は、被覆の50%を構成している。エラストマー難燃性被覆の第1層5の残り、即ち50%、は、ポリウレタンにより構成されている。第1層5の厚さは70μmである。第1層5は200%を越える弾性を有している。
【0042】
エラストマー難燃性被覆の第2層6は、発泡性グラファイトの形態にある難燃性物質と、ポリウレタンの形態の結合材料と、を含んでいる。発泡性グラファイトは被覆の40%を構成している。エラストマー難燃性被覆4の残り、即ち60%、はポリウレタンにより構成されている。第2層6の厚さは80μmである。第2層6は100%を越える弾性を有している。
【0043】
さらに、第1層5及び第2層6はハロゲン化されていない。
【0044】
被覆の第1層5及び第2層6をエラストマー本体1に適用する時には、個々の層5,6の難燃性物質及び結合材料は有機溶剤を使用している溶液中に混合される。個々の溶液は次に、スプレーガン(spray gun)又は如何なる他の適切な装置を使用して、エラストマー本体1上に適用され、難燃性被覆の第1層5及び第2層6を形成する。第1層5及び第2層6の加硫の間に有機溶剤は蒸発し、難燃性被覆の第1層5及び第2層6中に難燃性物質及び結合材料のみが残る。第1層5が最初に適用され、そして、第2層6が第1層5の表面上に適用される以前には、加硫されない。
【0045】
エラストマーばね10の形態をした懸架製品が図2中に示されている。エラストマーばねは、エラストマー本体1と、2つの金属板2,3と、を備えている。先に記載されている如く、金属板2,3はエラストマー本体1を周囲の物体に固定する為に使用されている。エラストマー本体1は、図示されていないエラストマー難燃性被覆により覆われている。
【0046】
今度は図3を参照すると、防振マウント(anti-vibration mount)15の形態をした懸架製品が示されている。防振マウントは2つの金属板2,3を有している。第1金属板2は振動源に固定されている。振動源は、例えば海用船(naval vessel)又は路上車両(road vehicle)の機関であることが出来る。第2金属板3は、防振マウントを周囲の物体に、例えば海用船上の機関室の床又は車両の機関区画の支持部材に、固定する為に使用されている。防振マウントは、図示されていないエラストマー難燃性被覆により覆われているエラストマー本体1を有している。
【0047】
図4は、ボギー21を有している列車ユニット20を示している。ボギーには、エラストマーばね10を含んでいる懸架システムが設けられている。ばね10はボギー21の振動を減衰させる為に使用されていて、列車ユニット20の乗車快適性を増大させている。一般的な解決は空気ダイヤフラムとの組み合わせでエラストマーばね10を使用することである。この場合においては、エラストマーばねは典型的に大きな振幅(amplitude)を有している低周波の動きを減衰させ、そして、空気ばねは典型的に小さな振幅を有している高周波の動きを減衰させる。いうまでもなく、この場合には、エラストマーばね及びダイヤフラムの両方が難燃性被覆により覆われている。
【0048】
図5は、多数の防振マウント15上に設置されている海用機関(naval engine)25を示している。海用機関(naval engine)の全重量は防振マウント15により支持されている。これは、機関25により発生された振動を周囲の物体26、即ち海用船(naval vessel)の機関室の床、に伝達させない。
【0049】
今度は図6を参照すると、2つの海用機関が部分的に示されている。両方の機関25は防振マウント15上に設置されている。防振マウントは、海用船の機関室の床26及び海用機関25に固定されている。
【0050】
当該技術分野に習熟している人は、この発明のここに記載された実施形態の変形例の数多くを添付の特許請求の範囲中に規定されているこの発明の範囲内で考えることが出来ることを理解するだろう。
【0051】
例えば、難燃性被覆4の厚さは、単一層の場合には、必要に応じて変化させることが出来る。燃性被覆の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは50〜110μmの範囲内,そして最も好ましくは略80μmである。
【0052】
例えば、2重層の場合には、難燃性被覆の第1層5及び第2層6の厚さは、必要に応じて変えることが出来る。第1層5の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは40〜100μmの範囲内,そして最も好ましくは略70μmである。第2層6の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは50〜110μmの範囲内,そして最も好ましくは略80μmである。
【0053】
また、単一層及び二重層の場合における層4,5,6の材料は、必要に応じて変えることが出来る。例えば、異なった結合材料とともに異なった難燃性物質を使用することが出来る。
【0054】
例えば、硼酸亜鉛,アルミニウム三価水和物,発泡性黒鉛,ポリ燐酸塩アンモニウム,水酸化マグネシウム,モントモリロナイトクレー,そして赤色燐を、難燃性被覆4,5,6中で難燃性物質として使用することが出来る。
【0055】
例えば、天然ゴム,エチレンアクリルゴム,エポキシ化天然ゴム,スチレンブタジエン(SBR),エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム(EPDM),アクリロニトリルブタジエン(NBR),そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)を、難燃性被覆4,5,6中で結合材料として好ましく使用出来る。
【0056】
例えば、上述した難燃性物質及び結合材料の如何なる組み合わせを使用することが出来る。また、異なった性質を達成する為に、上記物質及び上記材料を混合することが出来る。言い換えると、異なった難燃性物質及び物質の混合を異なった層4,5,6において使用することが出来、そして、異なった結合材料及び材料の混合を異なった層4,5,6において使用することが出来る。
【0057】
また、エラストマー本体1の材料を変更することが出来る。例えば、天然ポリイソプレン,人工ポリイソプレン,天然ゴム,人工ゴム,エチレンアクリルゴム,スチレンブタジエン(SBR),エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム(EPDM),アクリロニトリルブタジエン(NBR),ポリクロロプレン(CR),水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR),そしてエポキシ化天然ゴムを、本体1中で好ましく使用することが出来る。また、エラストマー本体1の為の適切な配合物(composition)を達成する為に種々の材料を混合することが出来る。
【0058】
層4,5,6の数は変更することが出来る。例えば、3層システムを使用することが出来る。この場合には、上述された2重層システムを2つの第1層5,6として好ましく使用することが出来る。第3層を次に第2層6の表面に適用することが出来る。第3層は例えば、10〜40%の濃度の窒素−燐を基にしている難燃性物質を備えることが出来る。またこの場合には、エラストマーポリウレタンを結合剤(binder material)として使用することが出来る。濃度は好ましくは50〜70%の範囲内にすることが出来る。例えば1〜20%の範囲内の濃度で顔料(pigment)を添加することにより、難燃性被覆4,5,6は赤外線輻射をより反射することが出来るようになり、そして従って輻射熱源(radiant heat source)に対しより敏感でなくなる。第3層において上述した配合物が使用されたならば、第3層は200%を越える弾性を有する。第3層の為の典型的な厚さは略50μmである。第3層に関連して述べられた上述した値の全てはもちろん問題の適用物に適合するよう変更できる。
【0059】
また、金属板2,3は、複合材料(composite),プラスチック,その他の如き、如何なる他の適切な剛性(rigid)又は柔軟(flexible)な材料から使用されることが出来る。金属板2,3はまた省略されることが出来、エラストマー本体1が周囲の物体に直接固定されることができるか又は全く固定されないかを意味している。
【0060】
上述した記載においては、エラストマー本体はエラストマー材料の固体本体であるが、エラストマー本体はまた、例えばダイヤフラム,中空体,幾つかのエラストマー材料から成る本体,幾つかの部位から成る本体,その他、であることが出来る。
【0061】
難燃性被覆の能力を定める実験が行われた。実験の間、被覆されたそして被覆されていないゴムが円錐カロリーメータ(cone calorimeter)において輻射熱源(radiant heat source)に対し露出された。これは、ISO5660 part1 及びISO5660 part2 により推奨されている標準手順である。
【0062】
実験の間、試験される試料は一定の熱輻射にさらされる。熱輻射は試料の近傍に配置された円錐電気ヒーターにより発生される。典型的には、ヒーターから放出された熱は10〜100Kw/m2の範囲内である。実験は典型的には良く換気された状況の下で行われ、そして種々のガスの試料が、組み付けられているフード(instrumented hood)において上記試料の上方で採取された。また、しかしながら、酸素の無い状況の下で試料を試験することが可能である。実験の間に試験試料から発せられた可燃性ガスに着火する為に火花が使用された。
【0063】
円錐カロリーメータ(cone calorimeter)は、酸素消費測熱法(oxygen consumption calorimetry)を基に熱放出を測定する。これは、多くの天然及び人工プラスチック,ゴム,そして織物を含んでいる多くの可燃性材料から出力される熱は殆ど常に、消費された酸素のグラム当たり一定の13.6kJである、という事実に基づいている。一酸化炭素(carbon monoxide)及び二酸化炭素(carbon dioxide)濃度の如き他のガスの測定は、煤煙密度(smoke density)の測定とともに、行われた。
【0064】
実験の間、出力データは、時間の関数としての質量損失(mass loss),酸素濃度,一酸化炭素濃度,二酸化炭素濃度,煤煙密度,そして火災流出流れ(fire effluent flow)の為に記録された。生データは処理され、そして、熱放出率(heat release rate)及び燃焼の有効熱(effective heat)が、酸素消費測熱法(oxygen consumption calorimetry)により計算された平均化されたデータとともに、計算された。試料燃焼のグラム当たりの火災ガス(fire gas)及び煤煙取量(smoke yield)もまた計算された。
【0065】
図7乃至12は、100mmx100mmx6mm厚さの標準ゴム、即ち被覆されていないゴム及び被覆されているゴム、が前述された円錐カロリーメータ中で35kW/m2の輻射熱(radiant heat)にさらされている実験の間の、異なった測定及び計算された値を示している図である。被覆されているゴムは、前述されていた単一層実施形態に従っている被覆により被覆されている。
【0066】
図7は、一酸化炭素放出対時間を示している。この図から明らかなように、最初の4分間の一酸化炭素放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0067】
図8は、二酸化炭素放出対時間を示している。最初の5分間の二酸化炭素放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0068】
図9は、煤煙放出の割合(RSR:rate of smoke release)対時間を示している。この図から明らかなように、最初の4分間の煤煙放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0069】
図10は、被覆されていないゴムと被覆されているゴムとの間の熱放出率(HRR:heat release rate)の比較である。この図は、最初の5分間は、熱放出が被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い、ことを明確に示している。
【0070】
図11は、質量損失残留パーセンテージ(mass loss remaining percentage)対時間を示している。この図から見ることが出来るように、試料の残留質量(remaining mass)は、燃焼の期間、被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも高い。
【0071】
図12は、熱放出の平均率(ARHE:average rate of heat emission)対時間を示している。図から明確な如く、熱放出の平均率は、実験を通して、被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0072】
一般的な観察では、図7〜12中に示されているガス放出,煤煙放出,そして熱放出の全ては被覆されているゴムが遅い。異なった排出の全てのこれらの好ましい遅れを要約した時、難燃性被覆4,5,6は効果的であり、そして火災拡大を遅らせる、ことが容易に理解されることが出来る。難燃性被覆4,5,6が火災を開始させることを全く阻止することが出来ることもまた理解されることが出来る。また、被覆されているゴムの質量損失が上に提示された実験の間に減少されている。
【0073】
被覆されているゴムと被覆されていないゴムとの間の差の要約を、以下の表1中に発見することが出来る。試験は、35kW/m2の負荷熱量(imposed heat flux)で、ISO5660 part 1及び2 に従い、円錐カロリーメータ上で行われた。
【表1】
【0074】
エラストマー本体1が限定された空間中で使用された時、火災拡大の遅れは人々の避難の期間において非常に重要であることが出来る。例えば、列車ユニット20がトンネル内で火災にさらされたとすると、空気があまりにも有毒になり、そして、視界があまりにも低くなる以前に、乗客の避難の為により多くの時間が入手可能になる。たとえ火災が数分間遅くなるだけでも、幾つかの生命が実際には助かることができる。
【0075】
海用船の機関室において火災が発生した時も同じ状況が生じ、火災を遅らせる可能性はこの場合にもまた非常に重要であることを意味する。
【0076】
被覆されているゴム及び被覆されていないゴムはまた、限定されている酸素指数(limiting oxygen index)の為に試験された。この場合には、上に従っている単一層実施形態及び二重層実施形態の両方が、ISO4589−2−酸素指数試験(Oxygen Index Test)に従い試験された。これらの試験の結果は以下の表2中に提示されている。
【表2】
【0077】
表2中に提示されている数字から見ることが出来る如く、被覆されているゴムはより高い限定されている酸素指数(limiting oxygen index)を発揮していて、進行してる火災を維持するにはより多くの酸素を必要としていることを意味している。これは実際には、被覆されているゴム,単一及び二重層、が、被覆されていないゴムよりもより耐火性があることを意味する。
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振及び懸架の為に適しているエラストマー本体に関係している。エラストマー本体は、弾性難燃性被覆(elastic fire retardant coating)の少なくとも一層を備えている。この発明はまた、このエラストマー本体を備えている車両,船,そして固定されている機械に関係している。
【背景技術】
【0002】
種々の懸架及び防振適用物におけるエラストマー製品の使用は、当該技術において普通であり、そして良く知られている。
【0003】
通常使用されている懸架製品の一種は、エラストマーばねである。エラストマーばねは、車両の種々の種類において最も良い可能な乗車快適性を達成する為に一般的に使用されている。エラストマーばねは一般的に所望の減衰特性(damping characteristic)を発揮する為に形作られているエラストマー本体から成る。
【0004】
通常使用されている懸架製品の他の一つの種類は、ダイヤフラムである。ダイヤフラムは、空気で充たされている袋又は蛇腹(bellow)である。空気蛇腹の形状及び寸法は、減衰特性を適用させる為に異ならせることが出来る。また、空気蛇腹中の圧力は、減衰特性を変更させる為に変更されることが出来る。
【0005】
通常の防振製品の一例は防振マウント(anti-vibration mount)である。防振マウントは一般的に、それらの間に配置されたエラストマー本体を伴っている剛性板又はブラケット(bracket)から成る。剛性板又はブラケットの1つは次に一般的には、振動元、例えば機関に、そして他は振動から隔離しなければならない環境、例えば車両又は船に、固定されている。
【0006】
上述した懸架及び防振製品に関係している1つの問題は、好ましくない燃焼特性(burning characteristic)である。製品のエラストマー本体は一般的には、補強物質を備えている人工ポリイソプレン(polyisoprene)及び天然ポリイソプレンから製造されている。人工及び天然ポリイソプレンは、補強物質、例えばカーボンブラック,鉱物油又は他の有機薬品(organic chemicals)、の幾つかと同様に易燃性(flammable)である。これは、火災に対する本来の抵抗の無い弾性本体となる。
【0007】
イソプレン配合物(compound)は比較的容易に着火し、そして急速に激しい火災(hot fire)を導く。火災はエラストマー本体の小さな部分でさえ焼き尽くすことが出来る。火災の間、ひどい煤だらけの黒煙が大量に放出される。これは、火災又は煙の放出が人々及び/又は機器に対し重大な損傷を生じさせることが出来る適用においては特に問題である。製品が、地下鉄及び船の機関室のような、限られた仕切り区画において使用された時、煙の放出及び放熱は重大な問題であり、避難の為に有効に使用することが出来る時間を縮める。
【0008】
イソプレン及び天然ゴムエラストマー製品をハロゲン化された炎抑制剤(halogenated flame retardant)により改質することが知られている。この手法が、しかしながら、製品の炎抑制特性(flame retardant)を改良するかは疑問であり、しかしまた幾つかの欠点を有する。ハロゲン化された炎抑制剤は例えば製品の毒性(toxicity)を増大させる。多くのハロゲン化された炎抑制剤はまた、環境問題の故に、使用が禁止されている。
【0009】
もう1つの知られている手法は、イソプレン及び天然ゴムエラストマー製品をハロゲン化されていない炎抑制剤(non-halogenated flame retardant)により改質することである。この場合には、難燃性特質(fire retardant characteristic)を改良する為にアルミニウム三価水和物(aluminium trihydride)及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)を使用することが普通である。これらの物質は、しかしながら、有効になる為には、重量の50%を越える、高いパーセンテージでエラストマー材料中に配合されなければならない。このような程度に炎抑制材料を組み込むことにより、エラストマー材料は、圧縮残留歪(compression set),動的弾性率(dynamic modulus),そしてクリープ(creep)の如きその基本特性(key characteristic)を失い始める。
【0010】
エラストマー製品の火災に関係している危険を避けることを試みる時のさらにもう1つの手法は、もう1つの材料でエラストマー製品を単に製造することである。一つの可能な解決法は、改良された難燃性特性を伴った製品を創出する為にハロゲン化されたポリマーを使用することである。しかしながら、この場合においてもまた、その材料は有毒であり好ましくない。ハロゲン化されていないポリマー、例えばシリコーン(silicone)を使用することも可能である。これらのポリマーは、しかしながら、より高価であり、低い物理的強度になる。
【0011】
標準的なエラストマー製品を使用することが出来る為には、製品を建設工業において使用されているものの如き標準的な発泡性防炎塗料(intumescent coating)で被覆することが提案されている。これらの被覆は、しかしながら、製品がしばしばそして連続的に表面延び(surface elongation)にさらされた時に、エラストマー製品上に残留する為に十分に弾性的ではないという事実の故に、エラストマー製品の為に不適切である。
【発明の概要】
【0012】
上述した従来技術の改良を提供することがこの発明の目的である。
【0013】
特定の目的は、防振及び懸架の為の、弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体を提供することである。
【0014】
これらの及び他の目的は、この発明の以下の記載から明らかになる利点とともに、弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体,弾性難燃性被覆の少なくとも一層を備えているエラストマー本体を備えている車両,船,そして固定されている機械により達成される。好適な実施形態は従属請求項において規定されている。
【0015】
それ故に、防振及び懸架の為に適したエラストマー本体が提供されている。エラストマー本体は、弾性及び柔軟性難燃性被覆の少なくとも一層を備えている。弾性及び柔軟性難燃性被覆は本体の少なくとも一部分を覆っている。難燃性被覆の少なくとも一層は、ハロゲン化されておらず(non-halogenated)、そして、難燃性物質(fire retardant substance)及び弾性結合材料(elastic binder material)を備えている。難燃性物質は発泡性黒鉛(expandable graphite)を備えている。被覆は20%以上の弾性(elasticity)を有している。
【0016】
発明のエラストマー本体は、それに弾性難燃性被覆の少なくとも一層が設けられていて、その弾性性質を維持している間に本体を難燃性にする、ということにおいて優れている。
【0017】
エラストマー本体は、エラストマー本体の少なくとも一部分上に適用されエラストマー本体の少なくとも一部分を覆う第1層と、そして、第1層の少なくとも一部分の表面上に適用され第1層の少なくとも一部分を覆う第2層と、を備えていて良い。このことは、接着及び難燃性性質を最適にする為に層の性質を調整することが出来るということにおいて優れている。
【0018】
難燃性被覆の第1層が難燃性被覆の第2層よりも大きな弾性を有していて良く、このことは、難燃性被覆がエラストマー本体の表面延びにより良く耐えることが出来ることにおいて優れている。
【0019】
難燃性被覆の第1層が第1難燃性物質を備えていて良く、そして、第2層が第2難燃性物質を備えていて良い。このことは、難燃性被覆の難燃性性質を最適にし、そして、同時に、それが使用されるべき適用物の為にその被覆を調整することを可能にすることを意味している。
【0020】
第1層が第1弾性結合材料(first elastic binder material)を備えて良く、そして、第2層が第2弾性結合材料(second elastic binder material)を備えて良い。このことは、難燃性被覆の接着(adhesion)及び耐久性(durability)を最適にすることを可能にすることを意味している。
【0021】
難燃性被覆の第1層及び第2層が第1難燃性物質を備えていて良く、このことは、2つの層の難燃性性質及び弾性が適用されることが出来ることにおいて優れている。
【0022】
難燃性被覆の第1層及び第2層が第1結合材料を備えていて良く、このことは、2つの層間の接着を強力にすることにおいて優れている。
【0023】
難燃性被覆の少なくとも一層が、第2層の少なくとも一部分の表面上に適用され第2層の少なくとも一部分を覆う第3層を備えていて良い。このことは、エラストマー本体を覆う層の表面特性(surface property)を調整することを可能にすることを意味する。
【0024】
難燃性被覆の第3層が赤外線輻射(infrared radiation)に対し反射可能であって良く、このことは、エラストマー本体を輻射熱源(radiant heat source)に対し敏感でなくすることにおいて優れている。
【0025】
難燃性被覆の少なくとも一層の少なくとも1つの難燃性物質が発泡性グラファイト(expandable graphite)であって良い。このことは、効果的な弾性難燃性被覆を毒性ガスの排出を増加させること無しで妥当な値段(reasonable price)で達成させることが出来ることにおいて優れている。
【0026】
難燃性被覆の少なくとも一層の少なくとも1つの難燃性物質が窒素−燐を基にしていて(nitrogen-phosphorous based)良い。このことは、効果的で高い弾性の難燃性被覆が達成できることを意味している。
【0027】
難燃性被覆の少なくとも一層の難燃性物質が、硼酸亜鉛(zinc borate),アルミニウム三価水和物(aluminium trihydrate),発泡性黒鉛(expandable graphite),ポリ燐酸塩アンモニウム(ammonium polyphosphate),水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide),モントモリロナイトクレー(montmorillonite clay),そして赤色燐(red phosphorus)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んでいて良い。これは、それをそれが使用される適用物に適するようにするよう被覆の難燃性性質を調整することを可能にすることを意味している。
【0028】
難燃性被覆の少なくとも一層の結合材料がエラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane)であって良い。このことは、長寿命の高い柔軟性の難燃性被覆が達成できることにおいて優れている。
【0029】
難燃性被覆の少なくとも一層の結合材料が、天然ゴム(natural rubber),エチレンアクリルゴム(ethylene acrylic rubber),エポキシ化天然ゴム(epoxidised natural rubber),スチレンブタジエン(styrene butadiene),エラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane),エチレンプロピレンジエン改質ゴム(ethylene propylene diene modified rubber),アクリロニトリルブタジエン(acrylonitrile butadiene),そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(hydrogenated acrylonitrile butadiene rubber)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んで良い。このことは、難燃性被覆の弾性動作(elastic behaviour)及び特性(characteristic)を調整することが可能であることを意味している。
【0030】
難燃性被覆の少なくとも1つの層はハロゲン化されていなく(non-halogenated)て良く、これは、被覆が有毒でなく環境に対する影響がほんのわずかであるか又は全くないことにおいて優れている。
【0031】
エラストマー本体が熱硬化性エラストマー(thermosetting elastomer)で形成されていて良く、これは、耐久性が良く長寿命のエラストマー本体を妥当な値段で達成できることにおいて優れている。
【0032】
エラストマー本体が天然又は人工ポリイソプレン(natural or synthetic polyisoprene)で形成されていて良く、これは、懸架及び防振の為に適した性質を伴ったエラストマー本体を達成できることを意味している。
【0033】
エラストマー本体が、ポリイソプレン(polyisoprene),天然ゴム(natural rubber),人工ゴム(synthetic rubber),エチレンアクリルゴム(ethylene acrylic rubber),スチレンブタジエン(styrene butadiene),エラストマーポリウレタン(elastomeric polyurethane),エチレンプロピレンジエン改質ゴム(ethylene propylene diene modified rubber),アクリロニトリルブタジエン(acrylonitrile butadiene),ポリクロロプレン(polychloroprene),水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(hydrogenated acrylonitrile butadiene rubber),そしてエポキシ化天然ゴム(epoxidised natural rubber)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んで良い。これは、それが使用される適用物にそれを適用させるようエラストマー本体の性質を調整することを可能にすることを意味している。
【0034】
エラストマー本体は、特に火災(fire),煙,そして毒性(toxicity)が関係している、懸架構成要素(suspension component)及び防振構成要素(anti-vibration component)において好ましく使用されることができる。
【0035】
エラストマー本体は、車両,船,又は固定されている機械、特に鉄道車両(railway vehicle)及び海用船(marine vessel)、において好ましく使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
この発明は異なった実施形態に基づいた例示として添付の概略図を参照しながら以下に記載され、ここにおいて、
【図1a】図1aは、弾性及び難燃性被覆の一層を伴っているエラストマー本体の横断面図であり、
【図1b】図1bは、弾性及び難燃性被覆の二層を伴っているエラストマー本体の横断面図であり、
【図2】図2は、エラストマーばねの形状における懸架製品の斜視図であり、
【図3】図3は、防振マウントの形状における耐震製品の斜視図であり、
【図4】図4は、エラストマーばねを含んでいるボギー台車を有している列車の斜視図であり、
【図5】図5は、防振マウント上に設けられた船用機関の斜視図であり、
【図6】図6は、防振マウント上に設けられた2つの船用機関の部分図であり、
【図7】図7は、実験の期間中の一酸化炭素放出を示している概略図であり、
【図8】図8は、実験の期間中の二酸化炭素放出を示している概略図であり、
【図9】図9は、実験の期間中の煤煙放出を示している概略図であり、
【図10】図10は、実験の期間中の熱放出率の比較を示している概略図であり、
【図11】図11は、実験の期間中の残留パーセンテージ質量損失を示している概略図であり、そして、
【図12】図12は、実験の期間中の熱放出の平均率を示している概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
第1実施形態に従っているエラストマー本体は図1a中に示されている。エラストマー本体1はゴムから型成形されて(moulded)いる。エラストマー本体1は、専用接合接着剤(proprietary bonding adhesive)の使用により加硫工程(vulcanisation)の間、2つの金属板2,3に取り付けられている。金属板2,3は、如何なる種類の適用物において使用された時、周囲の物に対しエラストマー本体を固定するのに使用される。一方の金属板2は次に、例えば鉄道車両の客車本体に、他の金属板3は、例えば鉄道車両のボギー(bogie)に固定される。さらに、エラストマー本体はエラストマー難燃性被覆4の一層により覆われている。その層の厚さは80μmである。エラストマー難燃性被覆4は、発泡性グラファイトの形態である難燃性物質を含む。さらに、エラストマー難燃性被覆4は、ポリウレタンの形態である結合材料を含む。発泡性グラファイトは被覆の40%を構成している。エラストマー難燃性被覆4の残り、即ち60%、は、ポリウレタンにより構成されている。被覆4は100%を越える弾性を有している。さらに、被覆4はハロゲン化されていない。
【0038】
被覆4をエラストマー本体1に適用する時、難燃性物質及び結合材料は有機溶剤を使用した溶液中に混合される。溶液は次に、スプレーガン(spray gun)又は如何なる他の適切な装置を使用して、エラストマー本体1上に適用され、難燃性被覆4を形成する。これは、エラストマー本体1が如何なる種類の適用物中に設置された時に現場で、又はエラストマー本体が製造された時以前に、被覆4を適用することが可能である、ことを意味している。有機溶剤は被覆4の加硫(curing)の間に蒸発し、難燃性物質及び結合材料のみが被覆4中に残る。
【0039】
第2実施形態に従っているエラストマー本体が図1b中に示されている。この実施形態においてもまた、エラストマー本体1はゴムから型成形されていて、2つの板2,3に取り付けられている。金属板2,3はまた、この実施形態において、エラストマー本体1を固定する為に使用されている。
【0040】
エラストマー本体1はエラストマー難燃性被覆の第1層5により覆われている。第1層5は次に、エラストマー難燃性被覆の第2層6により覆われている。
【0041】
第1層5は、窒素−燐を基にしている難燃性物質及びポリウレタンの形態をした結合材料を含んでいる。窒素−燐を基にしている難燃性物質は、被覆の50%を構成している。エラストマー難燃性被覆の第1層5の残り、即ち50%、は、ポリウレタンにより構成されている。第1層5の厚さは70μmである。第1層5は200%を越える弾性を有している。
【0042】
エラストマー難燃性被覆の第2層6は、発泡性グラファイトの形態にある難燃性物質と、ポリウレタンの形態の結合材料と、を含んでいる。発泡性グラファイトは被覆の40%を構成している。エラストマー難燃性被覆4の残り、即ち60%、はポリウレタンにより構成されている。第2層6の厚さは80μmである。第2層6は100%を越える弾性を有している。
【0043】
さらに、第1層5及び第2層6はハロゲン化されていない。
【0044】
被覆の第1層5及び第2層6をエラストマー本体1に適用する時には、個々の層5,6の難燃性物質及び結合材料は有機溶剤を使用している溶液中に混合される。個々の溶液は次に、スプレーガン(spray gun)又は如何なる他の適切な装置を使用して、エラストマー本体1上に適用され、難燃性被覆の第1層5及び第2層6を形成する。第1層5及び第2層6の加硫の間に有機溶剤は蒸発し、難燃性被覆の第1層5及び第2層6中に難燃性物質及び結合材料のみが残る。第1層5が最初に適用され、そして、第2層6が第1層5の表面上に適用される以前には、加硫されない。
【0045】
エラストマーばね10の形態をした懸架製品が図2中に示されている。エラストマーばねは、エラストマー本体1と、2つの金属板2,3と、を備えている。先に記載されている如く、金属板2,3はエラストマー本体1を周囲の物体に固定する為に使用されている。エラストマー本体1は、図示されていないエラストマー難燃性被覆により覆われている。
【0046】
今度は図3を参照すると、防振マウント(anti-vibration mount)15の形態をした懸架製品が示されている。防振マウントは2つの金属板2,3を有している。第1金属板2は振動源に固定されている。振動源は、例えば海用船(naval vessel)又は路上車両(road vehicle)の機関であることが出来る。第2金属板3は、防振マウントを周囲の物体に、例えば海用船上の機関室の床又は車両の機関区画の支持部材に、固定する為に使用されている。防振マウントは、図示されていないエラストマー難燃性被覆により覆われているエラストマー本体1を有している。
【0047】
図4は、ボギー21を有している列車ユニット20を示している。ボギーには、エラストマーばね10を含んでいる懸架システムが設けられている。ばね10はボギー21の振動を減衰させる為に使用されていて、列車ユニット20の乗車快適性を増大させている。一般的な解決は空気ダイヤフラムとの組み合わせでエラストマーばね10を使用することである。この場合においては、エラストマーばねは典型的に大きな振幅(amplitude)を有している低周波の動きを減衰させ、そして、空気ばねは典型的に小さな振幅を有している高周波の動きを減衰させる。いうまでもなく、この場合には、エラストマーばね及びダイヤフラムの両方が難燃性被覆により覆われている。
【0048】
図5は、多数の防振マウント15上に設置されている海用機関(naval engine)25を示している。海用機関(naval engine)の全重量は防振マウント15により支持されている。これは、機関25により発生された振動を周囲の物体26、即ち海用船(naval vessel)の機関室の床、に伝達させない。
【0049】
今度は図6を参照すると、2つの海用機関が部分的に示されている。両方の機関25は防振マウント15上に設置されている。防振マウントは、海用船の機関室の床26及び海用機関25に固定されている。
【0050】
当該技術分野に習熟している人は、この発明のここに記載された実施形態の変形例の数多くを添付の特許請求の範囲中に規定されているこの発明の範囲内で考えることが出来ることを理解するだろう。
【0051】
例えば、難燃性被覆4の厚さは、単一層の場合には、必要に応じて変化させることが出来る。燃性被覆の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは50〜110μmの範囲内,そして最も好ましくは略80μmである。
【0052】
例えば、2重層の場合には、難燃性被覆の第1層5及び第2層6の厚さは、必要に応じて変えることが出来る。第1層5の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは40〜100μmの範囲内,そして最も好ましくは略70μmである。第2層6の厚さは、好ましくは10〜500μmの範囲内,より好ましくは50〜110μmの範囲内,そして最も好ましくは略80μmである。
【0053】
また、単一層及び二重層の場合における層4,5,6の材料は、必要に応じて変えることが出来る。例えば、異なった結合材料とともに異なった難燃性物質を使用することが出来る。
【0054】
例えば、硼酸亜鉛,アルミニウム三価水和物,発泡性黒鉛,ポリ燐酸塩アンモニウム,水酸化マグネシウム,モントモリロナイトクレー,そして赤色燐を、難燃性被覆4,5,6中で難燃性物質として使用することが出来る。
【0055】
例えば、天然ゴム,エチレンアクリルゴム,エポキシ化天然ゴム,スチレンブタジエン(SBR),エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム(EPDM),アクリロニトリルブタジエン(NBR),そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)を、難燃性被覆4,5,6中で結合材料として好ましく使用出来る。
【0056】
例えば、上述した難燃性物質及び結合材料の如何なる組み合わせを使用することが出来る。また、異なった性質を達成する為に、上記物質及び上記材料を混合することが出来る。言い換えると、異なった難燃性物質及び物質の混合を異なった層4,5,6において使用することが出来、そして、異なった結合材料及び材料の混合を異なった層4,5,6において使用することが出来る。
【0057】
また、エラストマー本体1の材料を変更することが出来る。例えば、天然ポリイソプレン,人工ポリイソプレン,天然ゴム,人工ゴム,エチレンアクリルゴム,スチレンブタジエン(SBR),エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム(EPDM),アクリロニトリルブタジエン(NBR),ポリクロロプレン(CR),水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR),そしてエポキシ化天然ゴムを、本体1中で好ましく使用することが出来る。また、エラストマー本体1の為の適切な配合物(composition)を達成する為に種々の材料を混合することが出来る。
【0058】
層4,5,6の数は変更することが出来る。例えば、3層システムを使用することが出来る。この場合には、上述された2重層システムを2つの第1層5,6として好ましく使用することが出来る。第3層を次に第2層6の表面に適用することが出来る。第3層は例えば、10〜40%の濃度の窒素−燐を基にしている難燃性物質を備えることが出来る。またこの場合には、エラストマーポリウレタンを結合剤(binder material)として使用することが出来る。濃度は好ましくは50〜70%の範囲内にすることが出来る。例えば1〜20%の範囲内の濃度で顔料(pigment)を添加することにより、難燃性被覆4,5,6は赤外線輻射をより反射することが出来るようになり、そして従って輻射熱源(radiant heat source)に対しより敏感でなくなる。第3層において上述した配合物が使用されたならば、第3層は200%を越える弾性を有する。第3層の為の典型的な厚さは略50μmである。第3層に関連して述べられた上述した値の全てはもちろん問題の適用物に適合するよう変更できる。
【0059】
また、金属板2,3は、複合材料(composite),プラスチック,その他の如き、如何なる他の適切な剛性(rigid)又は柔軟(flexible)な材料から使用されることが出来る。金属板2,3はまた省略されることが出来、エラストマー本体1が周囲の物体に直接固定されることができるか又は全く固定されないかを意味している。
【0060】
上述した記載においては、エラストマー本体はエラストマー材料の固体本体であるが、エラストマー本体はまた、例えばダイヤフラム,中空体,幾つかのエラストマー材料から成る本体,幾つかの部位から成る本体,その他、であることが出来る。
【0061】
難燃性被覆の能力を定める実験が行われた。実験の間、被覆されたそして被覆されていないゴムが円錐カロリーメータ(cone calorimeter)において輻射熱源(radiant heat source)に対し露出された。これは、ISO5660 part1 及びISO5660 part2 により推奨されている標準手順である。
【0062】
実験の間、試験される試料は一定の熱輻射にさらされる。熱輻射は試料の近傍に配置された円錐電気ヒーターにより発生される。典型的には、ヒーターから放出された熱は10〜100Kw/m2の範囲内である。実験は典型的には良く換気された状況の下で行われ、そして種々のガスの試料が、組み付けられているフード(instrumented hood)において上記試料の上方で採取された。また、しかしながら、酸素の無い状況の下で試料を試験することが可能である。実験の間に試験試料から発せられた可燃性ガスに着火する為に火花が使用された。
【0063】
円錐カロリーメータ(cone calorimeter)は、酸素消費測熱法(oxygen consumption calorimetry)を基に熱放出を測定する。これは、多くの天然及び人工プラスチック,ゴム,そして織物を含んでいる多くの可燃性材料から出力される熱は殆ど常に、消費された酸素のグラム当たり一定の13.6kJである、という事実に基づいている。一酸化炭素(carbon monoxide)及び二酸化炭素(carbon dioxide)濃度の如き他のガスの測定は、煤煙密度(smoke density)の測定とともに、行われた。
【0064】
実験の間、出力データは、時間の関数としての質量損失(mass loss),酸素濃度,一酸化炭素濃度,二酸化炭素濃度,煤煙密度,そして火災流出流れ(fire effluent flow)の為に記録された。生データは処理され、そして、熱放出率(heat release rate)及び燃焼の有効熱(effective heat)が、酸素消費測熱法(oxygen consumption calorimetry)により計算された平均化されたデータとともに、計算された。試料燃焼のグラム当たりの火災ガス(fire gas)及び煤煙取量(smoke yield)もまた計算された。
【0065】
図7乃至12は、100mmx100mmx6mm厚さの標準ゴム、即ち被覆されていないゴム及び被覆されているゴム、が前述された円錐カロリーメータ中で35kW/m2の輻射熱(radiant heat)にさらされている実験の間の、異なった測定及び計算された値を示している図である。被覆されているゴムは、前述されていた単一層実施形態に従っている被覆により被覆されている。
【0066】
図7は、一酸化炭素放出対時間を示している。この図から明らかなように、最初の4分間の一酸化炭素放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0067】
図8は、二酸化炭素放出対時間を示している。最初の5分間の二酸化炭素放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0068】
図9は、煤煙放出の割合(RSR:rate of smoke release)対時間を示している。この図から明らかなように、最初の4分間の煤煙放出は被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0069】
図10は、被覆されていないゴムと被覆されているゴムとの間の熱放出率(HRR:heat release rate)の比較である。この図は、最初の5分間は、熱放出が被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い、ことを明確に示している。
【0070】
図11は、質量損失残留パーセンテージ(mass loss remaining percentage)対時間を示している。この図から見ることが出来るように、試料の残留質量(remaining mass)は、燃焼の期間、被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも高い。
【0071】
図12は、熱放出の平均率(ARHE:average rate of heat emission)対時間を示している。図から明確な如く、熱放出の平均率は、実験を通して、被覆されているゴムが被覆されていないゴムよりも低い。
【0072】
一般的な観察では、図7〜12中に示されているガス放出,煤煙放出,そして熱放出の全ては被覆されているゴムが遅い。異なった排出の全てのこれらの好ましい遅れを要約した時、難燃性被覆4,5,6は効果的であり、そして火災拡大を遅らせる、ことが容易に理解されることが出来る。難燃性被覆4,5,6が火災を開始させることを全く阻止することが出来ることもまた理解されることが出来る。また、被覆されているゴムの質量損失が上に提示された実験の間に減少されている。
【0073】
被覆されているゴムと被覆されていないゴムとの間の差の要約を、以下の表1中に発見することが出来る。試験は、35kW/m2の負荷熱量(imposed heat flux)で、ISO5660 part 1及び2 に従い、円錐カロリーメータ上で行われた。
【表1】
【0074】
エラストマー本体1が限定された空間中で使用された時、火災拡大の遅れは人々の避難の期間において非常に重要であることが出来る。例えば、列車ユニット20がトンネル内で火災にさらされたとすると、空気があまりにも有毒になり、そして、視界があまりにも低くなる以前に、乗客の避難の為により多くの時間が入手可能になる。たとえ火災が数分間遅くなるだけでも、幾つかの生命が実際には助かることができる。
【0075】
海用船の機関室において火災が発生した時も同じ状況が生じ、火災を遅らせる可能性はこの場合にもまた非常に重要であることを意味する。
【0076】
被覆されているゴム及び被覆されていないゴムはまた、限定されている酸素指数(limiting oxygen index)の為に試験された。この場合には、上に従っている単一層実施形態及び二重層実施形態の両方が、ISO4589−2−酸素指数試験(Oxygen Index Test)に従い試験された。これらの試験の結果は以下の表2中に提示されている。
【表2】
【0077】
表2中に提示されている数字から見ることが出来る如く、被覆されているゴムはより高い限定されている酸素指数(limiting oxygen index)を発揮していて、進行してる火災を維持するにはより多くの酸素を必要としていることを意味している。これは実際には、被覆されているゴム,単一及び二重層、が、被覆されていないゴムよりもより耐火性があることを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振及び懸架の為に適したエラストマー本体(1)であって、
エラストマー本体(1)が、本体(1)の少なくとも一部分を覆っている弾性及び柔軟性難燃性被覆(4,5,6)の少なくとも一層を備えており、難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層はハロゲン化されておらず、そして、難燃性物質及び弾性結合材料を備えており、難燃性物質は発泡性黒鉛を備えていて、被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層は20%以上の弾性を有している、ことを特徴とするエラストマー本体。
【請求項2】
難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層が、前記エラストマー本体(1)の少なくとも一部分上に適用され前記エラストマー本体(1)の少なくとも一部分を覆う第1層(5)と、そして、前記第1層(5)の少なくとも一部分の表面上に適用され前記第1層(5)の少なくとも一部分を覆う第2層(6)と、を備えている、請求項1に従っているエラストマー本体。
【請求項3】
前記第1層(5)が前記第2層(6)よりも大きな弾性を有している、請求項2に従っているエラストマー本体。
【請求項4】
前記第1層(5)が第1難燃性物質を備えていて、そして、前記第2層(6)が第2難燃性物質を備えている、請求項2又は3に従っているエラストマー本体。
【請求項5】
前記第1層(5)が第1弾性結合材料を備えていて、そして、前記第2層(6)が第2弾性結合材料を備えている、請求項2乃至4のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項6】
前記第1層(5)及び前記第2層(6)が第1難燃性物質を備えている、請求項2,3,又は5のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項7】
前記第1層(5)及び前記第2層(6)が第1結合材料を備えている、請求項2乃至4,又は6のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項8】
難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層が、前記第2層(6)の少なくとも一部分の表面上に適用され前記第2層(6)の少なくとも一部分を覆う第3層を備えている、請求項2乃至7のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項9】
前記第3層が赤外線輻射に対し反射可能である、請求項8に従っているエラストマー本体。
【請求項10】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の少なくとも1つの前記難燃性物質が、窒素−燐を基にしている、請求項1乃至9のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項11】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記難燃性物質が、硼酸亜鉛,アルミニウム三価水和物,発泡性黒鉛,ポリ燐酸塩アンモニウム,水酸化マグネシウム,モントモリロナイトクレー,そして赤色燐から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んでいる、請求項1乃至10のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項12】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記結合材料が、エラストマーポリウレタンである、請求項1乃至11のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項13】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記結合材料が、天然ゴム,エチレンアクリルゴム,エポキシ化天然ゴム,スチレンブタジエン,エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム,アクリロニトリルブタジエン,そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴムから成る群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項14】
前記エラストマー本体(1)が熱硬化性エラストマーで形成されている、請求項1乃至13のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項15】
前記エラストマー本体(1)が天然又は人工ポリイソプレンで形成されている、請求項14に従っているエラストマー本体。
【請求項16】
前記エラストマー本体(1)が、ポリイソプレン,天然ゴム,人工ゴム,エチレンアクリルゴム,スチレンブタジエン,エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム,アクリロニトリルブタジエン,ポリクロロプレン,水素化アクリロニトリルブタジエンゴム,そしてエポキシ化天然ゴムから成る群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1乃至15のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項17】
前記エラストマー本体(1)が懸架構成要素である、請求項1乃至16のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項18】
前記エラストマー本体(1)が防振構成要素である、請求項1乃至17のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている車両。
【請求項20】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている船。
【請求項21】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている固定されている機械。
【請求項1】
防振及び懸架の為に適したエラストマー本体(1)であって、
エラストマー本体(1)が、本体(1)の少なくとも一部分を覆っている弾性及び柔軟性難燃性被覆(4,5,6)の少なくとも一層を備えており、難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層はハロゲン化されておらず、そして、難燃性物質及び弾性結合材料を備えており、難燃性物質は発泡性黒鉛を備えていて、被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層は20%以上の弾性を有している、ことを特徴とするエラストマー本体。
【請求項2】
難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層が、前記エラストマー本体(1)の少なくとも一部分上に適用され前記エラストマー本体(1)の少なくとも一部分を覆う第1層(5)と、そして、前記第1層(5)の少なくとも一部分の表面上に適用され前記第1層(5)の少なくとも一部分を覆う第2層(6)と、を備えている、請求項1に従っているエラストマー本体。
【請求項3】
前記第1層(5)が前記第2層(6)よりも大きな弾性を有している、請求項2に従っているエラストマー本体。
【請求項4】
前記第1層(5)が第1難燃性物質を備えていて、そして、前記第2層(6)が第2難燃性物質を備えている、請求項2又は3に従っているエラストマー本体。
【請求項5】
前記第1層(5)が第1弾性結合材料を備えていて、そして、前記第2層(6)が第2弾性結合材料を備えている、請求項2乃至4のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項6】
前記第1層(5)及び前記第2層(6)が第1難燃性物質を備えている、請求項2,3,又は5のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項7】
前記第1層(5)及び前記第2層(6)が第1結合材料を備えている、請求項2乃至4,又は6のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項8】
難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層が、前記第2層(6)の少なくとも一部分の表面上に適用され前記第2層(6)の少なくとも一部分を覆う第3層を備えている、請求項2乃至7のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項9】
前記第3層が赤外線輻射に対し反射可能である、請求項8に従っているエラストマー本体。
【請求項10】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の少なくとも1つの前記難燃性物質が、窒素−燐を基にしている、請求項1乃至9のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項11】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記難燃性物質が、硼酸亜鉛,アルミニウム三価水和物,発泡性黒鉛,ポリ燐酸塩アンモニウム,水酸化マグネシウム,モントモリロナイトクレー,そして赤色燐から成る群から選択された少なくとも1つの材料を含んでいる、請求項1乃至10のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項12】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記結合材料が、エラストマーポリウレタンである、請求項1乃至11のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項13】
前記難燃性被覆(4,5,6)の前記少なくとも一層の前記結合材料が、天然ゴム,エチレンアクリルゴム,エポキシ化天然ゴム,スチレンブタジエン,エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム,アクリロニトリルブタジエン,そして水素化アクリロニトリルブタジエンゴムから成る群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項14】
前記エラストマー本体(1)が熱硬化性エラストマーで形成されている、請求項1乃至13のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項15】
前記エラストマー本体(1)が天然又は人工ポリイソプレンで形成されている、請求項14に従っているエラストマー本体。
【請求項16】
前記エラストマー本体(1)が、ポリイソプレン,天然ゴム,人工ゴム,エチレンアクリルゴム,スチレンブタジエン,エラストマーポリウレタン,エチレンプロピレンジエン改質ゴム,アクリロニトリルブタジエン,ポリクロロプレン,水素化アクリロニトリルブタジエンゴム,そしてエポキシ化天然ゴムから成る群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1乃至15のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項17】
前記エラストマー本体(1)が懸架構成要素である、請求項1乃至16のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項18】
前記エラストマー本体(1)が防振構成要素である、請求項1乃至17のいずれか1項に従っているエラストマー本体。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている車両。
【請求項20】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている船。
【請求項21】
請求項1乃至18のいずれか1項に従っているエラストマー本体(1)を備えている固定されている機械。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−512064(P2012−512064A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541339(P2011−541339)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066746
【国際公開番号】WO2010/069842
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(510038016)トレルボルグ・インダストリアル・プロダクツ・ユーケー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Industrial Products UK Ltd.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066746
【国際公開番号】WO2010/069842
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(510038016)トレルボルグ・インダストリアル・プロダクツ・ユーケー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Industrial Products UK Ltd.
【Fターム(参考)】
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