説明

形状保持剤および形状保持方法

【課題】 クリーニングにおける衣類の型崩れを防止し、光沢を保ち、柔軟性を維持あるいは回復する、さらには劣化を抑え、防汚効果を有する衣類の形状保持方法およびそれに用いる形状保持剤の提供を目的とする。
【解決手段】 少なくとも一種の熱可塑性樹脂、および少なくとも一種の非水溶剤を含有した形状保持剤を繊維製品、紙製品、皮革製品等に付着させた後、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の熱を加える形状保持方法および形状保持剤による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーニングにおける衣類の型くずれ、光沢喪失を回復し、あるいは衣類の劣化を抑え防汚効果を有する形状保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライクリーニング、水洗い、家庭洗濯(これらをクリーニングと称する)における衣類の型崩れは大きな問題になっている。
例えばドライクリーニングの欠点として、ドライクリーニング溶剤が脱脂性、あるいは油脂分解性溶剤であるため、柔軟性、光沢、艶を与えている衣類等に含まれている油脂成分、高分子成分等を除去し、これらの柔軟性、光沢、艶を失うことが挙げられる。また、衣類等の樹脂、繊維加工剤がドライクリーニング溶剤で除去され、ハリ、コシを失い、型くずれが生じることが挙げられる。さらに、ドライクリーニング後に溶剤を乾燥する目的で回転式乾燥機(タンブラー乾燥)により処理する際の加熱と回転によるダメージがあり、シワ、型くずれ、ハリ、コシ等も失われることが挙げられる。
また、水洗い、家庭洗濯の欠点としては、洗剤に用いられる界面活性剤により、衣類等が脱脂され、油脂が分解されることにより、さらには脱水時に力が加わることにより型くずれやシワが非常に発生し易いことが挙げられる。
これらのクリーニングにおける衣類の型崩れは、大きな問題になっている。例えば、上衣、コート、シャツ、ブラウスをクリーニングした場合に衿の形や、前身ごろ、肩の型がくずれて、ハリ、コシが無くなる。表地と芯地が剥離し、気泡状になる。ズボンやヒダスカートの折目が消えやすい。シワが取れにくい。柔軟性が無くなる。新品時のハリ、コシ、艶、光沢も失われると言った問題はクリーニング業界の大きな問題である。
【0003】
さらに、絹、レーヨン等のデリケートな繊維や、和装衣類の留袖、紋服、袴、帯、打掛け、十二単衣等はハリ、コシ、艶が無くなる、色の深みが無くなると言った問題もある。又、雨や湿度の高いとき、繊維、紙等は元来(新品時)のハリ、コシが失われ、型くずれ、折目が取れる。中でもデリケートな衣類、特に高価な衣類の型くずれ、光沢、感触(風合い)の喪失は大きな問題であり、解決が待たれていた。
これらの問題を防ぐことを目的とした、ドライクリーニング専用の糊加工剤は今までにも存在したが、ハリ、コシ、硬さは実現できているが柔軟性、艶、光沢、色の深み、感触が付与されず、ハリ、コシ、艶、光沢、感触、柔軟性の加工はそれぞれ別々に加工が必要と言う欠点があった。
これらの問題を防ぐことを目的としたドライクリーニング専用の糊加工剤は今までにも存在しが、生地がゴワゴワになり、ハリやコシがなくなり、光沢や風合いも戻らないというデメリットが大きかった。水溶液にて使用する糊剤としては、澱粉粉、コーンスターチ、化学繊維糊(エチレン酢酸ビニール)等が一般に使用されているが、水を用いても構わない被加工材に使用が限定されることと、柔軟性に欠けるため使用範囲が限られていた。さらに、水溶液のため乾燥に時間がかかり速乾性の加工は不可能であった。これらのハリ、コシ、艶、光沢、感触、柔軟性の喪失、型くずれを防止する、あるいは回復させる技術が待ち望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーニングにおける衣類の型崩れを防止し、光沢を保ち、柔軟性を維持あるいは回復する衣類の形状保持方法の提供を目的とする。また、衣類の劣化を抑え防汚効果を有する形状保持方法および形状保持剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)少なくとも一種の熱可塑性樹脂、および少なくとも一種の非水溶剤を含有した形状保持剤を繊維製品、紙製品、皮革、獣毛製品等に付着させた後、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の熱を加える形状保持方法による。
本発明で言うところの形状保持とは、被加工物の形状そのものの保持は勿論、一旦失われた形状の回復、さらには、はり、こし、艶等の回復、あるいは被加工物の当初の状態よりこれらの性質を改善する、さらには劣化を防止すると言った事を意味する。
(2)該形状保持剤が柔軟剤として、シリコン系高分子、カチオン系界面活性剤、スコアラン等の天然加脂剤、および天然潤滑剤からなる化合物群の内の少なくとも一種を含有する(1)に記載の形状保持方法による。
なお、本発明の柔軟剤の効果は所謂柔軟性付与に加え、繊維間のすべり性を付与する作用も含む。衣服等の柔軟効果はシリコン系高分子、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、スコアラン等の天然加脂剤から付与され、天然潤滑剤は繊維間のすべりを良くする。天然繊維、毛皮、皮革には元来から有する油脂分が在るが、ドライクリーニング溶剤は油脂溶解の性質がある為に、又水洗いでも界面活性効果のある洗剤を用いている為洗い流されてしまい元来の柔軟性を損ってしまう。この為、潤滑性、低摩擦性を付与これらの柔軟剤を形状保持剤に含有することが好ましい。
(3)該形状保持剤が少なくとも一種のノニオン系界面活性剤および/あるいは少なくとも一種のアニオン系界面活性剤を含有する(1)に記載の形状保持方法による。
【0006】
(4)該熱可塑性樹脂がロジン樹脂である(1)に記載の形状保持方法による。
(5)形状保持方法を施した後にドライクリーニング処理により形状保持剤を除去できる(1)に記載の形状保持方法による。
(6)該付着方法がエアゾール方式である(1)に記載の形状保持方法による。
(7)少なくとも一種の熱可塑性樹脂、および少なくとも一種の非水溶剤を含有した形状保持剤を繊維製品、紙製品、皮革製品等に付着させた後、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の熱を加える形状保持方法に用いる形状保持剤による。
【0007】
本発明においてドライクリーニング処理とは、洗浄媒体として石油系溶剤、CFC−113、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、代替フロンであるHCFC−225、HCFC−141b等の非水溶剤が使用され、さらに洗浄性や再汚染防止性、衣料への柔軟性付与、水の可溶化などを目的として界面活性剤が添加された洗浄液で衣類等のクリーニングを行う洗浄方法を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の形状保持方法により、衣類等の繊維製品、装飾品等の紙製品、衣類、婦人雑貨等の皮革、獣毛製品などの製品が、クリーニング時、あるいは水に濡れた時に型崩れし、光沢を失い、ハリ、コシを失う等の欠陥の発生を防止する、あるいはこれらの欠陥が発生した後に回復させることができる。つまり新品同様のはり、こし、艶のある風合いを蘇らすことができる。また、これらの劣化を抑え、防汚効果も発揮できる。これにより高価な衣類が1回のクリーニングでくたびれた様になり、価値を失うことを防ぐことができる。さらに、エアゾール化が可能であり、速乾性の加工を可能にし、簡便で短時間の処理で上記の効果が得られるようになった。しかも、これらの形状保持方法を施した後に、ドライクリーニングすることにより容易に形状保持剤を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】
本発明で好ましく用いられる形状保持方法の処理工程としては、通常のドライクリーニング処理終了後に、本発明の形状保持剤を衣類等に付着せしめ、その後40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の温度に保つ方法が好ましい。
【0011】
本発明で好ましく用いられる形状保持剤は熱可塑性樹脂、非水系溶剤、界面活性剤、柔軟剤、粘度低下剤を含有することが好ましい。
【0012】
本発明で形状保持剤を付着せしめる方法としては、衣類等の被加工物を形状保持剤溶液に浸す方法、形状保持剤をエアゾールの形で吹き付ける方法、刷毛、ローラー等で形状保持剤を被加工物に塗布する方法が好ましい。これらの中ではエアゾール法が簡便で短時間で処理が可能なため最も好ましい。
【0013】
本発明で用いられる熱処理としては、アイロン等の高温物体を圧着する方法、ファンヒーター等で熱風を吹き付ける方法、加熱された容器、部屋に収納し暖める方法、マイクロ波加熱法が好ましい。
温度は対象となる衣類等の材質に依存するが、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃が最も好ましい。
【0014】
本発明の形状保持剤に用いられる熱可塑性樹脂は水に溶解せず、非水溶剤に溶解する物が好ましい。合成樹脂、天然樹脂のいずれも好ましいが、天然樹脂の方がより好ましい。天然樹脂の中では、ロジン樹脂が最も好ましい。これらの樹脂を単独、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
本発明の形状保持剤に用いられる熱可塑性合成樹脂としては、例えばフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ABS樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸およびポリスチレン樹脂等がある。
【0016】
また天然系の樹脂としてロジン樹脂、テルペン樹脂等がある。これらの中ではロジン樹脂がより好ましい。
ロジン樹脂としてトールロジン樹脂、ガムロジン樹脂、ウッドロジン樹脂あるいはこれらの変性ロジン樹脂のいずれも好ましく用いられる。これらの好ましく用いられる変性ロジン樹脂としては、アビエチン酸のカルボキシル基を酸素含有基で置換した変成ロジン樹脂、水素化ロジン樹脂、ロジンエステル類およびその誘導体、ロジン−マレイン酸樹脂、ロジン酸ナトリウムあるいはカリウム等のアルカリ金属塩、強化脱カルボキシル化ロジン樹脂、水添ロジンイソステアリン酸グリセリル、フリーの水酸基を有する変性ロジン樹脂、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル樹脂等が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0017】
本発明の形状保持剤に用いられる非水系溶剤としては、石油系溶剤、シリコン系溶剤、ハロゲン系溶剤、および代替フロン溶剤が好ましい。これらの中では安全性の観点から石油系溶剤、シリコン系溶剤がより好ましく。樹脂を溶解し易いことと、低価格であることから石油系溶剤が最も好ましい。石油系溶剤の中では石油系芳香族炭化水素溶剤が最も好ましい。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0018】
石油系溶剤、としては、例えば、パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、キシレン、ジエチルベンゼンが挙げられる。石油系芳香族炭化水素溶剤としてはナフテン、キシレン、ジエチルベンゼンが挙げられる。
シリコン系溶剤としては、ポリジメチルシロキサンとして、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等、メチルフェニルポリシロキサンとして、オクタメチルジフェニルシロキサン等、環状ポリシロキサンとして、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
また、ハロゲン系溶剤としては、CFC−113、テトラクロルエチレン、トリクロロエチレン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、や代替フロン溶剤である1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−モノフルオロエタン、HCFC−225、HCFC−141bなどが挙げられる。
【0019】
さらに本発明で用いることができる非水溶剤としては以下のものを挙げられる。
炭化水素類としては、炭素数5〜15の鎖状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素類が好ましく、例えば、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−ノネン、1−デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、パラメンタン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、ガソリン、灯油等が挙げられる。
【0020】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0021】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0022】
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、イソ吉草酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0023】
塩素化炭化水素類としては、例えば、塩化メチレン、1,1−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエタン、1,1−ジクロルエチレン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレンが挙げられる。
【0024】
本発明の形状保持剤に粘度を低下する目的でメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチルセロソルブ等の多価アルコールエステル、低級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン等を用いることも好ましい。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0025】
本発明の形状保持剤には樹脂等の溶解性を上げること、および形状保持加工後の加工品の柔軟性を上げる目的で界面活性剤を用いることができる。溶解性および浸透性を上げる目的でアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0026】
本発明の形状保持剤に用いられるアニオン系界面活性剤としては、たとえば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩およびリン酸エステル塩等を挙げることができる。前記カルボン酸塩としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数が12〜18の脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩である脂肪酸石鹸、あるいはアルキルエーテルカルボン酸塩等を挙げることができる。前記スルホン酸塩としては、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩等を挙げることができる。前記硫酸エステル塩としては、たとえば、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。前記リン酸エステル塩としては、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。前記各種のアニオン系界面活性剤の中でも、脂肪酸石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が好ましい。
【0027】
本発明の形状保持剤に用いられるノニオン系界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が好ましい。
【0028】
本発明の形状保持剤には柔軟剤としてシリコン系高分子、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、スコアラン等の天然加脂剤、および天然潤滑剤を用いることが好ましい。これらの中では特にスコアラン等の天然加脂剤、および天然潤滑剤が好ましい。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0029】
柔軟剤として用いることができる天然加脂剤、および天然潤滑剤としてはスコアラン、牛脂由来のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、あるいはこれの誘導体、また天然層状珪酸塩(スメクタイト)が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0030】
柔軟剤として用いることができるシリコンオイルとしてはジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、メチルハイドロジェンシリコンオイル、アミン変性シリコンオイル、エポキシ変性シリコンオイル、カルボキシ変性シリコンオイル、カルビノール変性シリコンオイル、メタクリル変性シリコンオイル、メルカプト変性シリコンオイル、フェノール変性シリコンオイル、ポリエーテル変性シリコンオイル、メチルスチリル変性シリコンオイル、アルキル変性シリコンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコンオイル、高級脂肪酸含有シリコンオイル、フッ素変成シリコンオイルが挙げられる。具体的には信越化学工業製のシリコンオイルが挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0031】
柔軟剤に用いることができるカチオン系界面活性剤としては、たとえば 脂肪族4級アンモニウム塩が特に好ましい。非エステル型4級アンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、カチオン化セルロース、イミダゾリン誘導体、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中では4級アンモニウム塩が好ましい。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
また、両性界面活性剤としては、たとえば、カルボキシベタイン型を挙げることができる。
【0032】
本発明の形状保持方法の被加工物としては、衣類等の繊維製品、装飾品等の紙製品、衣類、婦人雑貨等の皮革、獣毛製品などの製品が挙げられる。
対象の製品の素材としては、特に限定されないが下記の物が挙げられる。
毛、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート、レーヨン等の再生繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート−co−イソフタレート)等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、フッソ系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、PBO(ベンザゾール系ポリマー)、ポリ乳酸、セルロース系高分子がある。さらに、種々の動物の皮革、獣毛がある。また、紙、パルプ、竹、木材、不織布等が挙げられる。
【0033】
以下に本発明の具体例を説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
<本発明の形状保持剤の作製>
熱可塑性のロジン樹脂10部、ノニオン界面活性剤(ライオン社製、レオコン5030B、ポリアルキレングリコール系)1部を、4部のイソヘキサンおよび8部のキシレンに溶解し本発明の形状保持剤を作製した。この形状保持剤を液体天然ガスを用いたエアゾール缶に封入した。
<形状保持処理>
ウール製の紳士物スーツに、通常のドライクリーニング処理をした。スーツは型崩れし、かつ光沢を失った。これに、前記の本発明の形状保持剤をエアゾールの形で吹きつけた。その後、170℃の温度に加熱したアイロンを圧着した。
<効果の確認>
ウールの紳士物のスーツはドライクリーニング処理で失ったハリ、コシを取り戻し、型崩れが回復し好ましかった。さらに、光沢も深みを増しドライクリーニング後は勿論、ドライクリーニング前よりもむしろ艶を感じさせるようになり好ましかった。泥水で汚してみたが、ドライクリーニング処理をしたが、形状保持処理をしなかったスーツに比べ、汚れが落ちやすく好ましかった。
<形状保持剤の除去>
上記の形状保持方法を施したスーツを再度通常のドライクリーニング処理をしたところ、型崩れの程度、ハリ、コシの程度、光沢がドライクリーニング処理をしたが、形状保持処理をしなかった前記のスーツと同じになり、形状保持剤がドライクリーニング処理で除去できることを確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の熱可塑性樹脂、および少なくとも一種の非水溶剤を含有した形状保持剤を繊維製品、紙製品、皮革製品等に付着させた後、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の熱を加えることを特徴とする形状保持方法。
【請求項2】
該形状保持剤が柔軟剤として、シリコン系高分子、カチオン系界面活性剤、スコアラン等の天然加脂剤、および天然潤滑剤からなる化合物群の内の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の形状保持方法。
【請求項3】
該形状保持剤が少なくとも一種のノニオン系界面活性剤および/あるいは少なくとも一種のアニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の形状保持方法。
【請求項4】
該熱可塑性樹脂がロジン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の形状保持方法。
【請求項5】
形状保持方法を施した後、ドライクリーニング処理により形状保持剤を除去できることを特徴とする請求項1に記載の形状保持方法。
【請求項6】
該付着方法がエアゾール方式であることを特徴とする請求項1に記載の形状保持方法。
【請求項7】
少なくとも一種の熱可塑性樹脂、および少なくとも一種の非水溶剤を含有した形状保持剤を繊維製品、紙製品、皮革製品等に付着させた後、40℃から230℃、好ましくは40℃から210℃、さらに好ましくは80℃から200℃の範囲の熱を加えることを特徴とする形状保持方法に用いる形状保持剤。

【公開番号】特開2008−95250(P2008−95250A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279727(P2006−279727)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(502085215)株式会社モノリス (2)
【Fターム(参考)】