説明

形状検出装置

【課題】スコープ形状を精度良く検出するのに好適な形状検出装置を提供すること。
【解決手段】形状検出装置を、スコープ挿入部の基端から先端に亘って複数配置され、配置箇所におけるスコープ挿入部の屈曲角度を検出する屈曲角度検出センサと、隣接する屈曲角度検出センサ間の距離の変化量を検出する距離変化検出センサと、検出された変化量を距離の初期値に加算して、隣接する屈曲角度検出センサ間の実距離を計算する実距離計算手段と、計算された各屈曲角度検出センサ間の実距離と、検出された各配置箇所における屈曲角度とを用いて、スコープ挿入部の基端から先端に至る挿入形状を計算する形状計算手段と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体腔内に挿入された医療用スコープの形状を検出する形状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
術者が患者の体腔内を診断する際に使用する医療機器として、ファイバスコープや電子スコープが一般的に知られている。例えば、電子スコープを使用する術者は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入して、挿入部先端に備えられた先端部を被写体近傍に導く。術者は、電子スコープ等の操作部を必要に応じて操作して、光源装置から放射された照明光によって被写体を照明する。術者は、照明された被写体の反射光像を先端部に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子によって撮像する。術者は、撮像された被写体の映像をモニタを通じて観察し診断や施術等を行う。
【0003】
医療用スコープを用いて検査される対象には、大腸等の下部消化管がある。一般に、下部消化管内部は形状が複雑に入り組んでいるため、医療用スコープを下部消化管内部に円滑に挿入するのは難しい。そこで、体腔内への挿入操作を補助する機能を有した装置が種々提案されている。一例として、体腔内に挿入されたスコープ形状を検出する機能を有した形状検出装置が知られている。この種の形状検出装置の具体的構成例は、特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の形状検出装置は、姿勢を検知する3軸ジャイロセンサを電子スコープの挿入部先端から挿入部基端に亘って所定の間隔毎に埋設している。形状検出装置は、各ポイントに埋設された3軸ジャイロセンサから姿勢データを収集する。形状検出装置は、収集された姿勢データを用いて演算を行い、挿入形状データを生成する。生成された挿入形状データは、体腔内に挿入されたスコープ形状として画像化される。術者は、画像化されたスコープ形状から挿入部の湾曲状態を確認したり、消化管内部における先端部の大凡の位置を推定したりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3910688号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の形状検出装置は、センサの配置間隔が常に一定である前提でスコープ形状を計算している。しかし、センサの配置間隔は、センサを実装する基板等の経年変化や機械的特性に応じて初期的な値からずれることがある。特許文献1に記載の形状検出装置では、各検出ポイントの検出結果を累積してスコープ形状を計算するため、スコープ形状の計算過程でセンサの配置間隔の誤差が累積して、スコープ形状の計算精度が低下する問題が指摘される。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スコープ形状を精度良く検出するのに好適な形状検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る形状検出装置は、スコープ挿入部の基端から先端に亘って複数配置され、配置箇所におけるスコープ挿入部の屈曲角度を検出する屈曲角度検出センサと、隣接する屈曲角度検出センサ間の距離の変化量を検出する距離変化検出センサと、検出された変化量を距離の初期値に加算して、隣接する屈曲角度検出センサ間の実距離を計算する実距離計算手段と、計算された各屈曲角度検出センサ間の実距離と、検出された各配置箇所における屈曲角度とを用いて、スコープ挿入部の基端から先端に至る挿入形状を計算する形状計算手段とを有したことを特徴とした装置である。
【0009】
本発明に係る形状検出装置によれば、距離変化検出センサを用いて各屈曲角度検出センサの相対位置を管理することにより、センサを実装する部品の経年変化や屈曲時の機械的特性等によって該相対位置が変化して挿入形状の検出精度が低下するという問題が好適に解消される。
【0010】
ここで、屈曲角度検出センサ及び距離変化検出センサが配置される個数は、屈曲することが多いスコープ挿入部の先端側の方が、屈曲することが少ない基端側より多くてもよい。かかる構成によれば、屈曲角度検出センサ及び距離変化検出センサを先端側で密に配置することによって形状検出の精度を高めつつ、基端側で疎に配置することによって形状計算手段の処理負担を軽減するという効果が得られる。
【0011】
屈曲角度検出センサは、例えば、配置箇所におけるスコープ挿入部の屈曲に伴って変形して、該変形に応じた電圧を発生する圧電センサである。
【0012】
距離変化検出センサは、例えば、ゲージベースの一端が隣接する屈曲角度検出センサの一方に、該ゲージベースの他端が該隣接する屈曲角度検出センサの他方に、それぞれ接着固定された歪みゲージである。
【0013】
スコープ挿入部は、外皮部材と、該外皮部材に覆われた、スコープ挿入部の内蔵部品を保護する管状部品とを有する構成としてもよい。この場合、屈曲角度検出センサ及び距離変化検出センサは、例えば管状部品に設けられてもよい。
【0014】
屈曲角度検出センサ及び距離変化検出センサは、例えば、内蔵部品を覆う螺旋管、該螺旋管を覆う網状管、処置具が挿入されて通される鉗子チャンネル用パイプの何れか一つの管状部品に設けられる。
【0015】
本発明に係る形状検出装置は、形状計算手段によって計算された挿入形状を画像化する挿入形状画像化手段を更に有する構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る形状検出装置は、ダミーのスコープ挿入部と、該ダミーのスコープ挿入部を変形させる変形手段と、計算された挿入形状が該ダミーのスコープ挿入部で再現されるように、形状計算手段による計算結果に従って変形手段を制御して、該ダミーのスコープ挿入部を変形させる変形制御手段とを更に有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スコープ形状を精度良く検出するのに好適な形状検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の医療用観察システムの外観図である。
【図2】本発明の実施形態の医療用観察システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の電子スコープが有する可撓管の内部構造を模式的に示す図である。
【図4】図3の領域Aを拡大して示す図である。
【図5】本発明の実施形態のプロセッサが有する形状検出回路によって実行される形状検出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の形状検出処理を説明するための図である。
【図7】別の実施形態において用いられる挿入形状再現装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の医療用観察システムについて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の医療用観察システム1の外観図である。図1に示されるように、医療用観察システム1は、被写体を撮影するための電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓性を有するシース(外皮)11aによって外装された可撓管11を備えている。可撓管11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された先端部12が連結されている。可撓管11と先端部12との連結箇所にある湾曲部14は、可撓管11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作(具体的には、湾曲操作ノブ13aの回転操作)によって屈曲自在に構成されている。この屈曲機構は、一般的な電子スコープに組み込まれている周知の機構であり、湾曲操作ノブ13aの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部14を屈曲させるように構成されている。先端部12の方向が上記操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
【0021】
図1に示されるように、医療用観察システム1は、プロセッサ200を有している。プロセッサ200は、電子スコープ100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置を別体で構成してもよい。
【0022】
プロセッサ200には、電子スコープ100の基端に設けられたコネクタ部10に対応するコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20は、コネクタ部10に対応する連結構造を有し、電子スコープ100とプロセッサ200とを電気的にかつ光学的に接続するように構成されている。
【0023】
図2は、医療用観察システム1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、医療用観察システム1は、所定のケーブルを介してプロセッサ200に接続されたモニタ300を有している。なお、図1においては、図面を簡略化するため、本発明に係る特徴的構成を有さないモニタ300を図示省略している。
【0024】
図2に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、医療用観察システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを医療用観察システム1内の各種回路に出力する。
【0025】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ210によって集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、LCB(light carrying bundle)102の入射端に入射する。
【0026】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤなどの伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作されて開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0027】
LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102の内部を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102を伝播した照明光は、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端から射出する。LCB102の射出端から射出した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0028】
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCDであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた信号に変換する。変換された信号は、プリアンプ110によって増幅されてドライバ信号処理回路112に入力する。
【0029】
ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ204のクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。メモリ114には、電子スコープ100の固有情報(例えば固体撮像素子108の画素数や感度、対応可能なレート、或いは型番など)が格納されている。ドライバ信号処理回路112は、メモリ114にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。
【0030】
ドライバ信号処理回路112は、メモリ114から読み出された固有情報をシステムコントローラ202に、固体撮像素子108の出力信号を信号処理回路220に、それぞれ出力する。ドライバ信号処理回路112とシステムコントローラ202又は信号処理回路220との間には、フォトカップラなどを使用した絶縁回路(不図示)が配置されている。すなわち、電子スコープ100とプロセッサ200は、電気的に絶縁されている。
【0031】
システムコントローラ202は、ドライバ信号処理回路112から出力された上記固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。なお、システムコントローラ202は、電子スコープの型番と、この型番の電子スコープに適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。この場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0032】
信号処理回路220は、ドライバ信号処理回路112を介して出力された固体撮像素子108の出力信号に、クランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)、AD変換等の所定の信号処理を施して、図示省略されたフレームメモリにフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、タイミングコントローラ204によって制御されたタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ300に順次入力することにより、モニタ300に、被写体のカラー画像が表示される。
【0033】
次に、体腔内に挿入された電子スコープ100の形状を検出する形状検出処理について説明する。電子スコープ100は、可撓管11から先端部12に至る部分が体腔内に挿入される。このうち、先端部12は、前述したように、硬質性を有する樹脂製筐体であるため、体腔内に挿入されても実質的に形状が変わらない(すなわち、形状が既知である)。また、湾曲部14の湾曲量(別の言い方をすると、先端部12の向き)は、湾曲操作ノブ13aの回転操作量から既知である。よって、未知である可撓管11の形状を検出することができれば、可撓管11から先端部12に至る挿入部分全体の形状検出が達成される。
【0034】
図3は、可撓管11の内部構造を模式的に示す図である。図3に示されるように、可撓管11は、内蔵物を保護するための多層構造を有している。内蔵物には、例えば、LCB102や、処置具が挿入されて通される鉗子チャンネル用パイプ、ポンプから掃き出された空気又はタンクから噴出された洗浄水が送り出される送気送水用パイプ、固体撮像素子108用の駆動信号や固体撮像素子108の出力信号を伝送する信号ケーブル等がある。この多層構造は、内蔵物を収容する二重の螺旋管(内螺旋管11bと外螺旋管11c)を備えている。二重の螺旋管は、内螺旋管11bの外面と外螺旋管11cの内面とが密接するように同軸に配置されている。外螺旋管11cの外面には、例えばステンレス鋼細線材を編組して構成された網状管11dが被覆されている。網状管11dの外面(可撓管11の最外装部分)には、例えばポリエチレン樹脂やフッ素樹脂等からなるチューブ状のシース11aが被覆されている。
【0035】
図4は、図3の領域Aを拡大して示す図である。図4に示されるように、網状管11dには、圧電センサPZT(図4中、黒丸図形)が複数埋め込まれている。隣接する全ての圧電センサPZTの間に、歪みゲージSG(図4中、コイル状図形)が配置されている。歪みゲージSGを構成するゲージベースの一端は、二つの圧電センサPZTの一方に、ゲージベースの他端は、二つの圧電センサPZTの他方に、それぞれ接着固定されている。圧電センサPZTは、網状管11dを構成する網の交差部分に埋め込んでもよく、又は非交差部分(例えば隣接する交差部分の中間位置付近)に埋め込んでもよい。圧電センサPZTの埋設間隔は、要求される性能(例えば電子スコープ100の形状検出精度)とリソース(例えばプロセッサ200の演算処理能力、メモリサイズ)とを考慮して適宜設定される。圧電センサPZTの埋設間隔を短く設定するほど(埋設数を増やすほど)電子スコープ100の形状検出精度が向上する。圧電センサPZTの埋設間隔を長く設定するほど(埋設数を減らすほど)形状検出処理に費やすリソースが削減する。
【0036】
図5は、プロセッサ200が有する形状検出回路222によって実行される形状検出処理を示すフローチャートである。なお、以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0037】
図6は、図5の形状検出処理を説明するための図である。本実施形態の医療用観察システム1が検出する形状は、可撓管11の三次元形状であるが、図6を用いた説明では、便宜上、可撓管11の二次元形状に置き換える。当該説明において、網状管11dには、n個の圧電センサPZT(i=1〜n)とm(m=n−1)個の歪みゲージSG(j=1〜m)が網状管11dの長手方向に線状にだけ配置されているものとする。また、圧電センサPZT、歪みゲージSGは、i、jの数字が小さいほど可撓管11の基端側に配置され、i、jの数字が大きいほど可撓管11の先端側に配置されているものとする。
【0038】
図5の形状検出処理は、例えばフロントパネル218の操作によって実行が開始される。形状検出回路222は、図5の形状検出処理の実行開始と共に、パラメータの初期化(i、j=1)を行う(S1)。
【0039】
電子スコープ100が体腔内に挿入されて可撓管11が屈曲すると、可撓管11の内部に配置された網状管11dも同様に屈曲する。各圧電センサPZTは、網状管11dの屈曲に伴って変形して、変形に応じた電圧を発生する。形状検出回路222は、各圧電センサPZTが発生した電圧値を検知して、メモリ224に格納する(S2)。
【0040】
網状管11dは、可撓性が担保されるように材料の選択又は形状の設計がされている。このため、網状管11dは、可撓管11の屈曲に伴って、網自体が僅かに伸縮したり、網目の形が変わる(交差する網同士の相対位置が変わり、図4中菱形の網目が例えば縦方向又は横方向若しくは斜め方向に潰れたり、菱形が全体的に拡大し又は縮小する)ように変形することがある。このような網状管11dの変形に伴って、隣接する圧電センサPZT間の距離は変化する。形状検出回路222は、圧電センサPZT間の距離変化に応じた各歪みゲージSGの抵抗値変化を検知して、メモリ224に格納する(S3)。なお、図2においては、図面を明瞭にする便宜上、形状検出回路222と圧電センサPZT又は歪みゲージSGとの結線を図示省略している。
【0041】
形状検出回路222は、圧電センサPZTの変形量(屈曲角度)と発生電圧値との関係を示す第一の関数を保持している。また、歪みゲージSGの抵抗変化量と歪み量との関係を示す第二の関数を保持している。形状検出回路222は、以降の処理において、メモリ224に格納されている各圧電センサPZTの発生電圧値データ、各歪みゲージSGの抵抗変化量データを用いて、第一、第二の関数を計算して、体腔内に挿入された電子スコープ100の形状を検出する。
【0042】
具体的には、形状検出回路222は、可撓管11の最も基端側に埋設された圧電素子PZTの位置(x、θ)を所定の基準位置に設定する(S4)。形状検出回路222は、第一の関数を用いて、圧電素子PZTの発生電圧値データから、圧電素子PZTの埋設箇所の網状管11dの屈曲角度を計算する(S5)。形状検出回路222は、次いで、第二の関数を用いて、圧電素子PZTに接着固定された歪みゲージSGの抵抗変化量データから、圧電素子PZTからPZTまでの距離Dを計算する(S6)。距離Dは、圧電素子PZTとPZTとの初期的な距離(すなわち、歪みゲージSGに歪みが生じていない状態の距離)に、抵抗変化量データから計算される歪み量を加算した値である。形状検出回路222は、位置(x、θ)と距離Dから、圧電素子PZTの位置(x、θ)を計算する(S7)。
【0043】
形状検出回路222は、i=nであるか否かを判定する(S8)。i≠nである場合は(S8:NO)、i、jが共に1だけインクリメントされて(S9)、S5〜S8の処理が繰り返し実行される。i=nである場合は(S8:YES)、図6に示されるような、圧電素子PZTの埋設箇所から圧電素子PZTの埋設箇所までの網状管11dの形状を表現する網状管形状データが計算されたため、処理はS10に進む。
【0044】
湾曲操作ノブ13aの回転操作量は、例えば図示省略された光学式エンコーダによって検出される。また、形状検出回路222は、湾曲操作ノブ13aの回転操作量と湾曲部14の湾曲量との関係を示す第三の関数を保持している。S10の処理では、形状検出回路222は、第三の関数を用いて、湾曲操作ノブ13aの回転操作量から湾曲部14の湾曲量を計算する。
【0045】
S11の処理では、形状検出回路222は、シース11aのテクスチャを網状管形状データで表現される線画に貼り付けて、可撓管11の形状モデルを生成する。形状検出回路222は、更に、可撓管11の形状モデルの先端に、湾曲部14の湾曲量に応じた方向に向いた先端部12のテクスチャモデルを足し合わせる。形状検出回路222は、このように復元された挿入形状画像のデータを信号処理回路220に出力して(S12)、図5の形状検出処理を終了させる。信号処理回路220は、挿入形状画像のデータを用いて、挿入形状画像が観察画像と並列に又は小画面でモニタ300に表示されるように画像処理を行う。なお、図5の形状検出処理は、モニタ300に表示される挿入形状画像を更新するため、例えば所定のタイミング後に再度実行される。
【0046】
本実施形態の医療用観察システム1によれば、歪みゲージSGを用いて各圧電センサPZTの相対位置を管理することにより、センサを実装する部品の経年変化や屈曲時の機械的特性等によって該相対位置が変化して挿入形状の検出精度が低下するという問題が好適に解消される。術者は、高精度に検出された挿入形状画像をモニタ300越しに確認することによって、挿入部分の湾曲状態や体腔内における位置を正確に把握して、電子スコープ100を大腸等の下部消化管に円滑に挿入させることができる。
【0047】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば圧電センサPZT及び歪みゲージSGは、鉗子チャンネル用パイプや内螺旋管11b、外螺旋管11c等の可撓性を有する他の管状部品に実装されてもよい。
【0048】
例えば、圧電センサPZTの配置間隔は、一定間隔に限らない。圧電センサPZTは、例えば湾曲部14近傍(先端側)の比較的屈曲しやすい箇所では検出精度を高めるために密に配置され、屈曲が比較的少ない基端側ではプロセッサ200の処理負担を軽減するために疎に配置されてもよい。
【0049】
圧電センサPZT及び歪みゲージSGによる測定値は、無線(例えばRFID:Radio Frequency IDentification)によって検知できるようにしてもよい。
【0050】
電子スコープ100の挿入形状は、本実施形態では表示画面内で仮想的に再現しているが、別の実施形態では物理的に再現してもよい。図7は、別の実施形態において用いられる、電子スコープ100の挿入形状を物理的に再現する挿入形状再現装置400の構成を模式的に示す図である。
【0051】
図7に示されるように、挿入形状再現装置400は、可撓管11から先端部12に至る挿入部分に近似した形状のダミースコープ410を有している。ダミースコープ410は、例えばシース11aと同質の材料で構成されており、可撓性を有している。ダミースコープ410の基端から先端に至る上側面及び下側面には、複数の当て付け部材420がダミースコープ410に当て付いた位置で支持されている。当て付け部材420は、ダミースコープ410の上側面又は下側面を押すことによってダミースコープ410を変形させるように、上下動自在に構成されている。
【0052】
形状検出回路222は、図5のS11及びS12の処理の代わりに、各当て付け部材420を制御してダミースコープ410を変形させる。すなわち、形状検出回路222は、網状管形状データ又は湾曲部14の湾曲量を基に各当て付け部材420の移動量を計算する。各当て付け部材420は、計算結果に従って上下動してダミースコープ410を変形させる。これにより、網状管形状データ及び湾曲部14の湾曲量に対応する形状がダミースコープ410によって再現される。
【0053】
当て付け部材420の代替として、ダミースコープ410の内部をER(Electrorheological Fluid)流体やMR(Magnetorheological Fluid)流体等で充填してもよい。この場合、外部電圧が流体に印加されると流体の粘度が高くなり、半固体化した流体がダミースコープ410を網状管形状データに対応する形状で保持することとなる。
【符号の説明】
【0054】
1 医療用観察システム
11 可撓管
11d 網状管
100 電子スコープ
200 プロセッサ
222 形状検出回路
PZT 圧電センサ
SG 歪みゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコープ挿入部の基端から先端に亘って複数配置され、配置箇所における該スコープ挿入部の屈曲角度を検出する屈曲角度検出センサと、
隣接する前記屈曲角度検出センサ間の距離の変化量を検出する距離変化検出センサと、
検出された前記変化量を前記距離の初期値に加算して、前記隣接する屈曲角度検出センサ間の実距離を計算する実距離計算手段と、
計算された各前記屈曲角度検出センサ間の実距離と、検出された各前記配置箇所における前記屈曲角度とを用いて、前記スコープ挿入部の前記基端から前記先端に至る挿入形状を計算する形状計算手段と、
を有することを特徴とする形状検出装置。
【請求項2】
前記屈曲角度検出センサ及び前記距離変化検出センサが配置される個数は、前記スコープ挿入部の前記先端側の方が前記基端側より多いことを特徴とする、請求項1に記載の形状検出装置。
【請求項3】
前記屈曲角度検出センサは、前記配置箇所における前記スコープ挿入部の屈曲に伴って変形して、該変形に応じた電圧を発生する圧電センサであることを特徴とする、請求項1又は請求項2の何れかに記載の形状検出装置。
【請求項4】
前記距離変化検出センサは、ゲージベースの一端が前記隣接する屈曲角度検出センサの一方に、該ゲージベースの他端が該隣接する屈曲角度検出センサの他方に、それぞれ接着固定された歪みゲージであることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の形状検出装置。
【請求項5】
前記スコープ挿入部は、
外皮部材と、
前記外皮部材に覆われた、前記スコープ挿入部の内蔵部品を保護する管状部品と、
を有し、
前記屈曲角度検出センサ及び前記距離変化検出センサは、前記管状部品に設けられたことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の形状検出装置。
【請求項6】
前記屈曲角度検出センサ及び前記距離変化検出センサは、前記内蔵部品を覆う螺旋管、該螺旋管を覆う網状管、処置具が挿入されて通される鉗子チャンネル用パイプの何れか一つの管状部品に設けられることを特徴とする、請求項5に記載の形状検出装置。
【請求項7】
計算された前記挿入形状を画像化する挿入形状画像化手段、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の形状検出装置。
【請求項8】
ダミーのスコープ挿入部と、
前記ダミーのスコープ挿入部を変形させる変形手段と、
計算された前記挿入形状が前記ダミーのスコープ挿入部で再現されるように、前記形状計算手段による計算結果に従って前記変形手段を制御して、該ダミーのスコープ挿入部を変形させる変形制御手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の形状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62291(P2011−62291A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214390(P2009−214390)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】