説明

形状測定方法および形状測定装置

【課題】測定精度を向上させた形状測定方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る形状測定方法は、被検物に対して所定形状の投影パターンを投影し、被検物で反射した投影パターンの像を検出パターンとして検出するステップ(S101〜S102)と、前記ステップで検出した検出パターンに基づいて、検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように投影パターンに対して前記所定形状の補正を行ったニアネットパターンを作成する第2のステップ(S103)と、前記ステップで作成したニアネットパターンを被検物に対して投影して、被検物で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、形状分布がほぼ一様となった検出パターンに基づいて被検物の表面の高さを算出するステップ(S104〜S106)とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の表面形状(三次元形状)を測定する形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の物体の表面形状を測定する技術は従来から種々提案されており、その一つに光学式の三次元形状測定装置がある。光学式三次元形状測定装置も種々の方式、構成のものがあるが、被検物に所定の投影パターン(縞模様や、格子模様)を投影して被検物を撮像し、その撮像画像から各画像位置(各画素)での縞の位相を求めて各画像位置の高さを算出し、被検物の三次元形状を測定するものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような装置においては、例えば、被検物(測定対象物)の表面に縞パターンからなる投影パターンを投影し、投影方向と異なる角度から被検物に投影された縞パターンを撮像し、三角測量の原理等を用いて縞パターンの位相分布を算出し、被検物表面の三次元形状を求めるように構成されている。
【0004】
その構成例を図8に示しており、光源51からの光が縞模様の投影パターンマスク52および投影レンズ53を通して被検物54の表面に投影される。被検物54の表面に投影された投影パターンマスク52の縞模様は、被検物54の表面三次元形状に応じて変形され、このように変形された被検物54の表面のパターンを、投影方向と異なる角度から撮像レンズ55を介して撮像装置(例えば、CCDセンサ)により撮像されて、演算処理装置57に送られ、ここで撮像画像データの演算処理が行われる。演算処理装置57においては、このように撮像された被検物表面の撮像画像データを三角測量の原理等を用いて縞パターンの位相分布を算出し、被検物表面の三次元形状を求める演算処理が行われる。
【特許文献1】特開2000−9444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被検物の表面三次元形状に応じて被検物の表面の縞パターンが変形して観測されるため、被検物の傾斜によっては縞パターンの間隔が極端に狭くなって、撮像された縞パターンが十分に解像されない場合や、画素間の補間が十分にできなくなる場合があり、測定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、測定精度を向上させた形状測定方法および形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る形状測定方法は、被検物に所定のパターンを第1の方向から投影し、被検物に投影されたパターンを第1の方向とは異なる第2の方向から観察し、観察されたパターンから被検物の形状を測定する形状測定方法であって、被検物の形状に基づいて、直線状のパターンを被検物に投影したときに観察される像よりも投影されたパターンの変化が小さくなる形状を有するパターンを用いることを特徴とする。
【0008】
なお、上述の発明において、所定のパターンは、当該所定のパターンとは異なる基準パターンを第1の方向から被検物に投影し、第2の方向から観察した情報に基づいて設定されることが好ましい。
【0009】
また、第2の本発明に係る形状測定方法は、被検物に対して所定形状の投影パターンを投影し、被検物で反射した投影パターンの像を検出パターンとして検出する第1のステップと、第1のステップで検出した検出パターンに基づいて、検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように投影パターンに対して前記所定形状の補正を行ったニアネットパターンを作成する第2のステップと、第2のステップで作成したニアネットパターンを被検物に対して投影して、被検物で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、形状分布がほぼ一様となった検出パターンに基づいて被検物の形状を算出する第3のステップとを有している。
【0010】
また、上述の発明において、形状が既知である校正用部材に対して第2のステップで作成したニアネットパターンを投影して、校正用部材で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、検出パターンに基づいて校正用部材の形状を算出する第4のステップと、既知である実際の校正用部材の形状と第4のステップで算出された校正用部材の形状との誤差を算出する第5のステップとを有し、第3のステップにおいて、第5のステップで算出された誤差に応じて、算出する被検物の形状を補正することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る形状測定装置は、被検物の表面の高さを算出して被検物の表面形状を測定する形状測定装置であって、被検物に対して所定形状の投影パターンを投影するパターン投影系と、被検物で反射した投影パターンの像を検出パターンとして検出するパターン検出部と、パターン検出部により検出された検出パターンに基づいて被検物の形状を算出する演算処理部とを備え、パターン検出部により検出された検出パターンに基づいて、検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように投影パターンに対して前記所定形状の補正を行ったニアネットパターンを作成するニアネットパターン作成部が設けられ、パターン投影系が、ニアネットパターン作成部により作成されたニアネットパターンを被検物に対して投影し、パターン検出部が、被検物で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、演算処理部が、形状分布がほぼ一様となった検出パターンに基づいて被検物の形状を算出することを特徴とする。
【0012】
また、上述の発明において、パターン投影系に形状が既知である校正用部材に対してニアネットパターンを投影させ、パターン検出部に校正用部材で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして検出させて、検出パターンに基づいて校正用部材の形状を算出する校正用演算部と、既知である実際の校正用部材の形状と校正用演算部により算出された校正用部材の形状との誤差を算出する誤差算出部とを有し、演算処理部が、誤差算出部により算出された誤差に応じて、算出する被検物の形状を補正することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。第一実施形態に係る形状測定方法が用いられる三次元形状測定装置の概略構成を図1に示しており、まず、この形状測定装置について、図1を参照しながら説明する。なお、図1において、図1(a)および図1(b)にそれぞれ形状測定装置M1を示しているが、これは同一のものであり、説明の便宜上、投影パターンマスク2に等間隔の縞模様を有する投影パターンPP1が形成されたものを図1(a)に示し、投影パターンマスク2にニアネットパターンNP1が形成されたものを図1(b)に示している。
【0015】
この形状測定装置M1は、光源1と、光源1からの光に縞模様を与えるための投影パターンマスク2と、投影パターンマスク2を通過した光源1からの光を被検物10の表面に投影させる投影レンズ3とからなるパターン投影系MA1と、被検物10からの反射光を撮像レンズ6を介して撮像する撮像装置7からなる撮像光学系MB1とを有して構成される。
【0016】
パターン投影系MA1において、投影パターンマスク2は、液晶素子等により構成され、液晶素子と電気的に接続された表示制御部8からの制御信号を受けて、任意の形状およびピッチのパターン(例えば、輝度分布が正弦波関数となる縞模様パターンや、格子状パターン等)を形成することができるようになっている。これにより、光源1からの光をこの投影パターンマスク2に通過させ、投影レンズ3により集光させることで、投影パターンマスク2により形成された所望の投影パターンを被検物10の表面に投影させることができる。
【0017】
撮像光学系MB1において、撮像装置7は、被検物10からの光を受けて被検物10を撮像するCCDカメラ等から構成され、被検物10で反射した投影パターンの像を検出パターンとして検出できるようになっている。また、撮像装置7により撮像された被検物10の画像データは、演算処理装置9に送られ、ここで所定の画像演算処理がなされて被検物10の表面の高さが算出され、被検物10の三次元形状(表面形状)が求められる。
【0018】
次に、以上のように構成された形状測定装置M1による被検物10の形状測定方法について、図2に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。まず、ステップS101において、光源1からの光を投影パターンマスク2および投影レンズ3を介して被検物10に照射させ、被検物10の表面に等間隔の縞模様を有する投影パターンPP1(図1(a)を参照)を投影する。なお、投影パターンPP1のピッチ(縞模様の間隔)は比較的広くなっており、測定精度が比較的粗くなっている。このように投影されて被検物10から反射する光は、撮像レンズ6を介して集光されて撮像装置7に入射する。
【0019】
次に、ステップS102において、撮像装置7により、被検物10で反射した投影パターンの像(図1(a)を参照)を検出パターンとして撮像する。撮像により得られた画像データは、撮像装置7から演算処理装置9に送られる。なお、三角測量の原理を用いる場合、位相接続のため、撮像装置7による撮像は、投影パターンマスク2により投影パターンのピッチ(縞模様の間隔)を変えて複数回行われ、一組の画像データ群が取得される。
【0020】
このようにして画像データが送られると、ステップS103において、演算処理装置9で所定の演算処理を行うことにより、被検物10で反射した投影パターンの像、すなわちステップS102で撮像された検出パターンに基づいて、検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように、具体的には、検出パターンが等間隔の縞模様となるように投影パターンPP1に対して縞模様の形状補正を行ったニアネットパターンを作成する。
【0021】
このとき例えば、図1(a)に示すように、被検物10で反射した投影パターンの像(検出パターン)は、被検物10の表面形状に応じて曲がった縞模様となる。これに対し、例えば、輝度分布が正弦波関数となる縞パターンの場合、正弦波関数(輝度分布)の位相を変えることで、図1(b)に示すように、検出パターンがほぼ等間隔の縞模様となるように投影パターンPP1に対して縞模様の形状補正を行う。この場合、ニアネットパターンの形状は、検出パターンにおけるピッチ(縞模様の間隔)の大小関係を逆転させたようなパターン形状になる。このようにニアネットパターンが作成されると、演算処理装置9から表示制御部8にニアネットパターンのデータが送られ、表示制御部8からの制御信号を受けて、投影パターンマスク2にニアネットパターンNP1(図1(b)を参照)が形成される。
【0022】
次に、ステップS104において、光源1からの光を投影パターンマスク2および投影レンズ3を介して被検物10に照射させ、被検物10の表面にニアネットパターンNP1を投影する。このように投影されて被検物10から反射する光は、撮像レンズ6を介して集光されて撮像装置7に入射する。
【0023】
次に、ステップS105において、撮像装置7により、被検物10で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして撮像する。このとき、被検物10で反射したニアネットパターンの像(検出パターン)は、図1(b)に示すように、ほぼ等間隔の縞模様となる。撮像により得られた画像データは、撮像装置7から演算処理装置9に送られる。なお、三角測量の原理を用いる場合、位相接続のため、撮像装置7による撮像は、ピッチの異なる投影パターンに応じて作成された複数のニアネットパターンを用いて複数回行われ、一組の画像データ群が取得される。
【0024】
そして、ステップS106において、ステップS105で撮像された画像データ、すなわち、ほぼ等間隔の縞模様となった検出パターンに基づいて、三角測量の原理等を用いて被検物10の表面の高さを算出する。
【0025】
なお、ある測定地点における投影パターンに対する検出パターンのずれ量をa(例えば、図1(a)を参照)とすると、被検物の高さ方向に対し30°の角度をなす方向から投影パターンを投影し、投影方向とは逆に30°の角度をなす方向から検出パターンを撮像した場合、被検物の高さtは次の(1)式で表される。
【0026】
t=(a/2)/sin30° …(1)
【0027】
また、図3に示すように、パターン投影系の光軸と垂直な面に対する被検物10の傾斜部分の角度をθ1とし、撮像光学系の光軸に対する被検物10の傾斜部分の角度をθ2とし、投影パターンのピッチ(縞模様の間隔)をp1とすると、検出パターンのピッチp2は、次の(2)式で表される。
【0028】
p2=(sinθ2/cosθ1)×p1 …(2)
【0029】
(2)式からわかるように、θ2が零に近づくと、検出パターンのピッチp2が小さくなって撮像装置の画素サイズに近くなり、画素間の補間が十分にできなくなってしまう。
【0030】
これに対し、第1実施形態の形状測定方法および形状測定装置M1によれば、ニアネットパターンNP1を被検物10に投影し、ほぼ等間隔の縞模様となった検出パターンに基づいて被検物10の表面の高さを測定するため、検出パターンのピッチ(縞模様の間隔)を適切な値にすることが可能になることから、測定精度を向上させることができる。
【0031】
なお、上述の第1実施形態において、ステップS103の後、図4に示すように、ニアネットパターンNP1を用いて表面の高さが既知である校正用部材15の表面の高さを算出し、実際の校正用部材15の表面の高さと算出した校正用部材15の表面の高さとの誤差に応じて、ステップS104以降で算出する被検物10の表面の高さを補正するようにしてもよい。このようにすれば、測定精度をより向上させることができる。
【0032】
具体的には、図5に示すように、まず、ステップS104と同様にして、表面の高さが既知である校正用部材15の表面にニアネットパターンNP1を投影する(ステップS151)。次に、ステップS105と同様にして、校正用部材15で反射したニアネットパターンの像を検出パターンとして撮像する(ステップS152)。次に、ステップS106と同様にして、撮像した検出パターンに基づいて校正用部材15の表面の高さを算出する(ステップS153)。次に、実際の校正用部材15の表面の高さと算出した校正用部材15の表面の高さとの誤差を算出する(ステップS154)。
【0033】
そして、ステップS154で算出した誤差に応じて、ステップS104以降で算出する被検物10の表面の高さを補正するようにすればよい。このとき例えば、誤差の割合に比例もしくは反比例する補正係数を、ステップS106で算出した被検物10の表面の高さ(算出値)に掛け合わせることにより、被検物10の表面の高さを補正することができる。なおこのとき、校正用部材15の表面の高さの算出および誤差の算出は、演算処理装置9により行われるが、校正用部材15の表面の高さの算出を行う校正用演算部および、誤差の算出を行う誤差算出部を、演算処理装置と別体に設けるようにしてもよい。また、量産品の検査のように被検物10の設計形状が分かる場合は、設計データからニアネットパターンNP1を求めることもできる。
【0034】
続いて、形状測定装置の第2実施形態について、図6を参照しながら説明する。なお、図6において、図6(a)および図6(b)にそれぞれ形状測定装置M2を示しているが、これは同一のものであり、説明の便宜上、投影パターンマスク23に投影パターンPP2が形成されたものを図6(a)に示し、投影パターンマスク23にニアネットパターンNP2が形成されたものを図6(b)に示している。
【0035】
第2実施形態の形状測定装置M2は、光源21と、光源21からの光を集光するコンデンサレンズ22と、光源21からの光に縞模様を与えるための投影パターンマスク23と、投影パターンマスク23を通過した光源21からの光を被検物30の表面に投影させる投影レンズ25とからなるパターン投影系MA2と、被検物30からの反射光をミラー24および撮像レンズ26を介して撮像する撮像装置27からなる撮像光学系MB2とを有して構成される。なお、被検物30は、所定の媒質32(例えば、着色された水)で満たされた透明の水槽31内に載置される。
【0036】
パターン投影系MA2において、投影パターンマスク23は、液晶素子等により構成され、液晶素子と電気的に接続された表示制御部28からの制御信号を受けて、任意の形状およびピッチのパターン(例えば、縞模様パターンや格子状パターン等)を形成することができるようになっている。これにより、コンデンサレンズ22を介して光源21からの光を投影パターンマスク23に通過させ、投影レンズ25により集光させることで、投影パターンマスク23により形成された所望の投影パターンを被検物30の表面に投影させることができる。
【0037】
撮像光学系MB2において、撮像装置27は、被検物30からの光を受けて被検物30を撮像するCCDカメラ等から構成され、被検物30で反射して媒質32を透過した投影パターンの像を検出パターンとして検出できるようになっている。また、撮像装置27により撮像された被検物30の画像データは、演算処理装置29に送られ、ここで所定の画像演算処理がなされて被検物30の表面の高さが算出され、被検物30の三次元形状(表面形状)が求められる。なお、ミラー24は、投影パターンマスク23と投影レンズ25との間に設けられ、投影パターンマスク23からの光を投影レンズ25および被検物30に向けて透過させるとともに、被検物30からの光を撮像レンズ26および撮像装置27に向けて反射させるようになっている。
【0038】
次に、第2実施形態の形状測定装置M2による被検物30の形状測定方法について、図7に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。まず、ステップS201において、光源21からの光を、コンデンサレンズ22、投影パターンマスク23、ミラー24、投影レンズ25、および媒質32を介して被検物30に照射させ、被検物30の表面に無模様の投影パターンPP2(図6(a)における円Aの内側を参照)を投影する。すなわち、投影パターンマスク23は光が全透過の状態になる。
【0039】
なおこのとき、光源21から射出される光の波長は、媒質32中における(被検物30で反射する)光(輝度)の減衰が1/100程度となるような波長を選択する。これにより、被検物30の全高の1/300程度まで特定することができる。このように投影されて被検物30から反射する光は、媒質32、投影レンズ25、ミラー24、および撮像レンズ26を介して撮像装置27に入射する。
【0040】
次に、ステップS202において、撮像装置27により、被検物30で反射して媒質32を透過した投影パターンの像を検出パターンとして撮像する。撮像により得られた画像データは、撮像装置27から演算処理装置29に送られる。
【0041】
このようにして画像データが送られると、ステップS203において、演算処理装置29で所定の演算処理を行うことにより、ステップS202で撮像された検出パターンに基づいて、検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように、具体的には、検出パターンの明るさ(輝度)がほぼ一様となるように投影パターンPP2の形状補正を行ったニアネットパターンを作成する。
【0042】
このとき、投影パターンPP2が無模様であるため、被検物30で反射して媒質32を透過した投影パターンの像(検出パターン)は、図6(a)における円Bの内側に示すように、被検物30の表面形状(凹凸)に応じて明暗が現れた模様となる(本実施形態においては、被検物30における上半分の高さが相対的に低くなっており、これに伴って検出パターンの上半分が相対的に暗くなっている)。これに対し、図6(b)における円Dの内側に示すように、検出パターンの明るさ(輝度)がほぼ一様となるように、検出パターンおける明暗の位置関係を逆転させたような(本実施形態においては、パターンの下半分を相対的に暗くした)パターン形状を有するニアネットパターンNP2(図6(b)における円Cの内側を参照)を作成する。このようにニアネットパターンが作成されると、演算処理装置29から表示制御部28にニアネットパターンのデータが送られ、表示制御部28からの制御信号を受けて、投影パターンマスク23にニアネットパターンNP2が形成される。
【0043】
次に、ステップS204において、光源21からの光を、コンデンサレンズ22、投影パターンマスク23、ミラー24、投影レンズ25、および媒質32を介して被検物30に照射させ、被検物30の表面にニアネットパターンNP2を投影する。なおこのとき、光源21から射出される光の波長は、媒質32中における(被検物30で反射する)光(輝度)の減衰が1/30000程度となるような波長を選択する。このように投影されて被検物30から反射する光は、媒質32、投影レンズ25、ミラー24、および撮像レンズ26を介して撮像装置27に入射する。
【0044】
次に、ステップS205において、撮像装置27により、被検物30で反射して媒質32を透過したニアネットパターンの像を検出パターンとして撮像する。このとき、被検物30で反射して媒質32を透過したニアネットパターンの像(検出パターン)は、図6(b)における円Dの内側に示すように、明るさ(輝度)がほぼ一様となる。撮像により得られた画像データは、撮像装置27から演算処理装置29に送られる。
【0045】
そして、ステップS206において、ステップS205で撮像された画像データ、すなわち、明るさ(輝度)がほぼ一様となった検出パターンに基づいて、被検物30の表面の高さを算出する。具体的には、まず、撮像光学系と被検物30との間の距離Lを求める。この距離Lは、媒質の吸収係数をaとし、検出パターンの輝度をBpとし、ニアネットパターンの輝度をIpとしたとき、Bp=Ip×aという関係式から算出される。そして、予め設定した撮像光学系と所定基準位置との間の距離と、算出した距離Lとの差から、被検物30の表面の高さを算出する。
【0046】
このように、媒質中を透過する光の減衰を利用して被検物の表面の高さを算出する場合、測定精度を上げるためには、検出光の輝度に対する(被検物の)高さの感度が高くなるように、光の減衰を大きくしなければならない。しかしながら、光の減衰を大きくすると、被検物の凹凸が大きい場合、高さの低い部分が極端に暗くなってこの部分のSN比が低下し、測定精度が低下してしまう。
【0047】
これに対し、第2実施形態の形状測定方法および形状測定装置M2によれば、ニアネットパターンNP2を被検物30に投影し、明るさ(輝度)がほぼ一様となった検出パターンに基づいて被検物30の表面の高さを測定するため、光の減衰を大きく(本実施形態において、1/30000程度に)しても、検出パターンの明るさ(輝度)がほぼ一様であるためSN比の低下が抑えられることから、測定精度を向上させることができる。
【0048】
なお、上述の第2実施形態において、ステップS203の後、第1実施形態の場合と同様に、ニアネットパターンを用いて表面の高さが既知である校正用部材の表面の高さを算出し、実際の校正用部材の表面の高さと算出した校正用部材の表面の高さとの誤差に応じて、ステップS204以降で算出する被検物30の表面の高さを補正するようにしてもよい。このようにすれば、測定精度をより向上させることができる。
【0049】
また、上述の各実施形態において、ニアネットパターンの作成が演算処理装置で行われているが、これに限られるものではなく、ニアネットパターンの作成を行うニアネットパターン作成部を演算処理装置と別体に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態の形状測定方法に用いられる形状測定装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の形状測定方法を示すフローチャートである。
【図3】被検物の傾斜部分を示す説明図である。
【図4】第1実施形態の変形例を示した形状測定装置の概略構成図である。
【図5】第1実施形態の変形例を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の形状測定方法に用いられる形状測定装置の概略構成図である。
【図7】第2実施形態の形状測定方法を示すフローチャートである。
【図8】従来における形状測定装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0051】
M1 形状測定装置(第1実施形態) M2 形状測定装置(第2実施形態)
MA1 パターン投影系(第1実施形態) MA2 パターン投影系(第2実施形態)
MB1 撮像光学系(第1実施形態) MB2 撮像光学系(第2実施形態)
PP1 投影パターン(第1実施形態) PP2 投影パターン(第2実施形態)
PN1 ニアネットパターン(第1実施形態)
PN2 ニアネットパターン(第2実施形態)
9 演算処理装置(第1実施形態) 10 被検物(第1実施形態)
29 演算処理装置(第2実施形態) 30 被検物(第2実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物に所定のパターンを第1の方向から投影し、前記被検物に投影された前記パターンを前記第1の方向とは異なる第2の方向から観察し、観察された前記パターンから前記被検物の形状を測定する形状測定方法であって、
前記被検物の形状に基づいて、直線状のパターンを前記被検物に前記投影したときに前記観察される像よりも前記投影されたパターンの変化が小さくなる形状を有するパターンを用いることを特徴とする形状測定方法。
【請求項2】
前記所定のパターンは、前記所定のパターンとは異なる基準パターンを前記第1の方向から前記被検物に投影し、前記第2の方向から観察した情報に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の形状測定方法。
【請求項3】
被検物に対して所定形状の投影パターンを投影し、前記被検物で反射した前記投影パターンの像を検出パターンとして検出する第1のステップと、
前記第1のステップで検出した前記検出パターンに基づいて、前記検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように前記投影パターンに対して前記所定形状の補正を行ったニアネットパターンを作成する第2のステップと、
前記第2のステップで作成した前記ニアネットパターンを前記被検物に対して投影して、前記被検物で反射した前記ニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、形状分布がほぼ一様となった前記検出パターンに基づいて前記被検物の形状を算出する第3のステップとを有することを特徴とする形状測定方法。
【請求項4】
形状が既知である校正用部材に対して前記第2のステップで作成した前記ニアネットパターンを投影して、前記校正用部材で反射した前記ニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、前記検出パターンに基づいて前記校正用部材の形状を算出する第4のステップと、
既知である実際の前記校正用部材の形状と前記第4のステップで算出された前記校正用部材の形状との誤差を算出する第5のステップとを有し、
前記第3のステップにおいて、前記第5のステップで算出された誤差に応じて、算出する前記被検物の形状を補正することを特徴とする請求項3に記載の形状測定方法。
【請求項5】
被検物の表面の高さを算出して前記被検物の表面形状を測定する形状測定装置であって、
前記被検物に対して所定形状の投影パターンを投影するパターン投影系と、
前記被検物で反射した前記投影パターンの像を検出パターンとして検出するパターン検出部と、
前記パターン検出部により検出された前記検出パターンに基づいて前記被検物の形状を算出する演算処理部とを備え、
前記パターン検出部により検出された前記検出パターンに基づいて、前記検出パターンの形状分布がほぼ一様となるように前記投影パターンに対して前記所定形状の補正を行ったニアネットパターンを作成するニアネットパターン作成部が設けられ、
前記パターン投影系が、ニアネットパターン作成部により作成された前記ニアネットパターンを前記被検物に対して投影し、
前記パターン検出部が、前記被検物で反射した前記ニアネットパターンの像を検出パターンとして検出し、
前記演算処理部が、形状分布がほぼ一様となった前記検出パターンに基づいて前記被検物の形状を算出することを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
前記パターン投影系に形状が既知である校正用部材に対して前記ニアネットパターンを投影させ、前記パターン検出部に前記校正用部材で反射した前記ニアネットパターンの像を検出パターンとして検出させて、前記検出パターンに基づいて前記校正用部材の形状を算出する校正用演算部と、
既知である実際の前記校正用部材の形状と前記校正用演算部により算出された前記校正用部材の形状との誤差を算出する誤差算出部とを有し、
前記演算処理部が、前記誤差算出部により算出された誤差に応じて、算出する前記被検物の形状を補正することを特徴とする請求項5に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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