説明

往復動エンジン

【課題】ピストンリングのオイルリングへの干渉をなくすことができて、所望の側圧を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることのできる往復動エンジンを提供する。
【解決手段】往復動エンジン1は、ピストンリング5と、ピストンリング5との間で環状ガス室6を規定していると共に、環状ガス室6でのピストン3の側面8の受圧面積がピストン3の反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、ピストンリング5に隣接しているピストンリング7と、環状ガス室6を燃焼室2に連通させるガス通路15とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いる往復動エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の往復動エンジンとしては、爆発行程(燃焼行程)で、コンロッドが傾くことにより増大するピストン側面とシリンダの内面との摺動摩擦抵抗を低減するために第一のピストンリング(トップリング)に隣接する第二のピストンリング(セカンドリング)を第一のピストンリングに対して傾斜させると共に、燃焼室と第一及び第二のピストンリング間の環状ガス室とを一つのガス通路を介して連通するようになっている往復動エンジンが特開平5−180069号公報において提案されており、斯かる往復動エンジンは、環状ガス室のガス圧に基づいて生じるスラスト側におけるピストン支持(ガス圧支持)を、第二のピストンリングを傾斜させることで増大させ、ピストン側圧によるシリンダの内面とピストンリングの側面及びピストン側面との摺動摩擦抵抗を低減させるようになっている。
【0003】
また、この種の他の往復動エンジンとしては、ピストンの往復動でのシリンダの内面とピストン側面との間の摺動摩擦抵抗を低減するため、第一のピストンリング(トップリング)に隣接する第二のピストンリング(セカンドリング)を第一のピストンリングに対して傾斜させた往復動エンジンが特開平5−5459号公報において提案されており、斯かる往復動エンジンは、燃焼ガスに基づいて生じるスラスト側における側圧を、第二のピストンリングを傾斜させることで増大させ、燃焼室内の燃焼ガスのピストンに対するガス圧等に基づいて増大し得るスラスト側におけるシリンダの内面とピストンリングの側面及びピストン側面との摺動摩擦抵抗を低減させるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かる往復動エンジンでは、ピストン側圧に抗するガス圧を生じさせてピストンをガス圧支持すべく第二のピストンリングを傾斜させると、第一及び第二のピストンリングにより規定される環状ガス室のスラスト側における容積が反スラスト側の容積に比べて大きくなるために、燃焼室内の燃焼ガスを一つのガス通路を介して環状ガス室に必要量を速やかに導入し得ず、従って、所望の支持力を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることが困難である。第二のピストンリングが大きく傾斜されている場合や往復動エンジンの高速回転により一往復動当たりの燃焼室と環状ガス室との連通時間が短くなる場合には、燃焼室内の燃焼ガスを環状ガス室に必要量を速やかに導入することは更に困難となり得る。
【0005】
また、斯かる他の往復動エンジンでは、スラスト側で大きな側圧を生じさせるべく第二のピストンリングを大きく傾斜させると、傾斜させた第二のピストンリングがオイルリングに干渉してしまう虞があり、従って、所望の側圧を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることが困難である。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、爆発行程において、ピストン降下始期に、燃焼室内のガスを環状ガス室に必要量を必要な力で速やかに導入・作用させることができて、所望のガス圧支持力を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることのできる往復動エンジンを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的とするところは、ピストンリングのオイルリングへの干渉をなくすことができて、所望の側圧を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることのできる往復動エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様の往復動エンジンは、燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積が反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備している。
【0009】
第一の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、例えば、爆発行程において、ピストン降下始期に燃焼室内の燃焼ガスをシリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されている複数のガス通路を介して環状ガス室に必要量を速やかに導入、作用させることができ、このようにして得られた環状ガス室内のガス圧に基づいて所望の支持力を生じさせてピストンをシリンダの内面からガス圧支持させて、ピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることができる。
【0010】
本発明の第二の態様の往復動エンジンでは、第一の態様の往復動エンジンにおいて、複数のガス通路は、シリンダの内面であってピストンが上死点又は上死点からの降下始期に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている凹所を夫々具備している。
【0011】
第二の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、例えば、爆発行程において、上死点からのピストン降下始期に、燃焼ガスを複数の凹所を介して環状ガス室に勢いよく広範囲に平均して導入作用させることができ、従って、環状ガス室内のガス圧を高めることができ、このガス圧を保持したままピストンを降下(往動)させることができて、特に爆発行程において、ピストンをピストン側圧に抗して好適にガス圧支持することができる。
【0012】
本発明の第三の態様の往復動エンジンでは、第二の態様の往復動エンジンにおいて、複数の凹所は、環状ガス室のみを燃焼室に夫々連通させるようになっている。
【0013】
本発明の第四の態様の往復動エンジンでは、第二又は第三の態様の往復動エンジンにおいて、複数のガス通路は、シリンダの内面であってピストンの上死点からの降下始期に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている。
【0014】
本発明の第五の態様の往復動エンジンでは、第二から第四のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所は、シリンダの内面であってピストンが上死点に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている。
【0015】
本発明の第六の態様の往復動エンジンでは、第二から第五のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所は、往復動方向に関して他の凹所よりもシリンダヘッドから離れて配されている。
【0016】
第四から第六のいずれかの態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、燃焼室から環状ガス室に燃焼ガスを長時間にわたって十分に導入し得る。
【0017】
本発明の第七の態様の往復動エンジンでは、第二から第六のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、ピストンの反スラスト側の部位から最も離反している少なくとも一つの凹所は、往復動方向に関して他の凹所よりもシリンダヘッドから離れて配されている。
【0018】
本発明の第八の態様の往復動エンジンでは、第二から第七のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面の中心部は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向並びに往復動方向に直交する方向に関してピストンの中心部に対向して配されている。
【0019】
第七又は第八の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、環状ガス室の反スラスト側の部位よりも容積の大きい環状ガス室のスラスト側の部位に燃焼ガスを広範に導入、作用させることができ、従って、環状ガス室内のガス圧をより速やかに高めることができる。
【0020】
本発明の第九の態様の往復動エンジンでは、第六又は第七の態様の往復動エンジンにおいて、シリンダヘッドから離れて配されている凹所のシリンダの内面に連接している連接部であってシリンダヘッド側に位置する部位は、他の凹所のシリンダの内面に連接している連接部であってシリンダヘッド側に位置する部位に往復動方向で対向する部位よりもシリンダヘッド側に配されている。
【0021】
本発明の第十の態様の往復動エンジンでは、第二から第九のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、複数の凹所の夫々に規定される空間の開口面の一部は、夫々互いに円周方向に伸びる線上に位置している。
【0022】
第九又は第十の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、複数の凹所により燃焼室から環状ガス室に燃焼ガスを長時間平均して導入、作用させることができる。
【0023】
本発明の第十一の態様の往復動エンジンは、第二から第十のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向に関して互いに対向する一対の凹所を具備しており、シリンダヘッドから一方の凹所までの往復動方向における距離とシリンダヘッドから他方の凹所までの往復動方向における距離とは、互いに等しい。
【0024】
第十一の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、一対の凹所による燃焼室と環状ガス室との連通を同時的に開始又は終了させ得て、環状ガス室に圧縮ガスや燃焼ガスをより速やかに導入することができる。
【0025】
本発明の第十二の態様の往復動エンジンでは、第二から第十一のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、複数の凹所は、部分凹球面状面を夫々具備している。
【0026】
第十二の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、燃焼ガスの流入に抵抗がなく平均した良好な導入作用を得ることができる。
【0027】
本発明の第十三の態様の往復動エンジンでは、第二から第十二のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部に対する接線と往復動方向に伸びる線との交差角は、鈍角である。
【0028】
本発明の第十四の態様の往復動エンジンでは、第二から第十三のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位に対する接線は、当該両部位よりもピストンから離反した位置で互いに交わる。
【0029】
第十三又は第十四の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、広範囲から平均して燃焼ガスの導入、作用が行われる。
【0030】
本発明の第十五の態様の往復動エンジンでは、第二から第十二のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部に対する接線と往復動方向に伸びる線とは、互いに直交する。
【0031】
本発明の第十六の態様の往復動エンジンでは、第二から第十五のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所は、円周方向で当該凹所に隣接する凹所と異なる深さを有している。
【0032】
本発明の第十七の態様の往復動エンジンでは、第二から第十六のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向並びに往復動方向に直交する方向に関して当該凹所に対して反スラスト側に位置する他の凹所よりも深い。
【0033】
本発明の第十八の態様の往復動エンジンでは、第二から第十七のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所は、円周方向で当該凹所に隣接する凹所と等しい深さを有している。
【0034】
第十六から第十八のいずれかの態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、各凹所による燃焼室と環状ガス室との連通状態を適宜調整し得る。ここで、複数の凹所は、その曲率と深さとの関連において夫々設計されてシリンダの内面に配設されることにより各凹所による燃焼室と環状ガス室との連通状態をより好ましく調整し得る。
【0035】
本発明の第十九の態様の往復動エンジンは、第二から第十八のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向で互いに対向する一対の凹所を具備しており、一方の凹所に規定される空間の開口面の中心部及びピストンの中心部を結ぶ線並びに軸方向に伸びる線の交差角と他方の凹所に規定される空間の開口面の中心部及びピストンの中心部を結ぶ線並びに軸方向に伸びる線の交差角とは、互いに等しい。
【0036】
本発明の第二十の態様の往復動エンジンでは、第十九の態様の往復動エンジンにおいて、一対の凹所は、夫々互いに同形状である。
【0037】
第十九又は第二十の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、連結軸の軸方向に関する環状ガス室の一方側及び他方側に均等に燃焼ガスを導入作用させ得る。
【0038】
本発明の第二十一の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、シリンダの内面に連接する複数の凹所の夫々の連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位の間隔は、第一のピストンリングの厚みよりも大きい。
【0039】
本発明の第二十二の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十一のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、シリンダの内面に連接する複数の凹所の夫々の連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位間の距離は、環状ガス室を規定する第一のピストンリングの規定面のスラスト側の部位から環状ガス室を規定する第二のピストンリングの規定面のスラスト側の部位までの往復動方向における距離よりも短い。
【0040】
本発明の第二十三の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十二のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、他の凹所に規定される空間の開口面と異なる径を有している。
【0041】
本発明の第二十四の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十三のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向及び往復動方向に関して当該凹所に対して反スラスト側に位置する凹所に規定される空間の開口面よりも長い径を有している。
【0042】
本発明の第二十五の態様の往復動エンジンは、第二から第二十四のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向で互いに対向する一対の凹所を具備しており、一対の凹所の夫々に規定される空間の開口面の径と円周方向で当該一対の凹所に隣接する他の凹所に規定される空間の開口面の径とは、夫々互いに異なる。
【0043】
本発明の第二十六の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十五のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、他の凹所に規定される空間の開口面と等しい径を有している。
【0044】
第二十三から第二十六のいずれかの態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、各凹所による燃焼室と環状ガス室との連通状態及び連通の開始若しくは終了の順序を適宜調整し得る。
【0045】
本発明の第二十七の態様の往復動エンジンでは、第一から第二十六のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、燃焼室を規定する第一のピストンリングの規定面は、往復動方向に直交する面と平行となるように配されている。
【0046】
本発明の第二十八の態様の往復動エンジンでは、第二から第二十七のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面の径は、当該凹所の深さよりも大きい。
【0047】
本発明の第二十九の態様の往復動エンジンでは、第一から第二十八のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、第二のピストンリングは、往復動方向に対して傾斜して配されている。
【0048】
本発明の第三十の態様の往復動エンジンは、第一から第二十九のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、第二のピストンリングを間にして第一のピストンリングに対向してピストンに配されているオイルリングを具備しており、オイルリングのスラスト側の部位は、往復動方向に関してピストンとコンロッドとを連結するピストンピンに対向するオイルリングの部位よりも第一のピストンリングから離れている。
【0049】
第三十の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、オイルリングをピストン及びコンロッドを連結している連結軸に干渉させないで第一のピストンリングから離れさせて配置することができて、第二のピストンリングを、オイルリングに干渉させることなく、特にスラスト側で第一のピストンリングから離れさせて配置することができる。ここで、当該往復動エンジンでは、オイルリングと共に第二のピストンリングを往復動方向に対して大きく傾斜させた場合でも、ピストンをガスフロートさせるのに十分な量の燃焼ガスを燃焼室から上述のような複数のガス通路を介して環状ガス室に満遍なく速やかに導入作用させることができる。
【0050】
本発明の第三十一の態様の往復動エンジンでは、第三十の態様の往復動エンジンにおいて、オイルリングのスラスト側の部位は、当該オイルリングの反スラスト側の部位よりも第一のピストンリングから離れている。
【0051】
本発明の第三十二の態様の往復動エンジンでは、第二十九の態様の往復動エンジンにおいて、第二のピストンリングを間にして第一のピストンリングに対向してピストンに配されているオイルリングを具備しており、オイルリングは、往復動方向に対して傾斜して配されている。
【0052】
本発明の第三十三の態様の往復動エンジンでは、第三十二の態様の往復動エンジンにおいて、オイルリング及び第二のピストンリングは、夫々互いに等しい角度をもって往復動方向に対して傾斜して配されている。
【0053】
本発明の第三十四の態様の往復動エンジンでは、第一から第三十三のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンは、反スラスト側に偏心している。
【0054】
本発明の第三十五の態様の往復動エンジンは、燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積がピストンの一方の揺動側面部位よりもこの揺動側面部位に対向する他方の揺動側面部位の方で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、一方及び他方の揺動側面部位間の略中間よりも他方の揺動側面部位の方で第一のピストンリングから離れているオイルリングと、ピストン及びシリンダの内面のうちの少なくとも一方に形成されており、環状ガス室を燃焼室に連通させるガス通路とを具備している。
【0055】
第三十五の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、オイルリングをピストン及びコンロッドを連結している連結軸に干渉させないで第一のピストンリングから離れさせて配置することができて、第二のピストンリングを、オイルリングに干渉させることなく、特に他方の揺動側面部位側で第一のピストンリングから離れさせて配置することができ、而して、所望の側圧を生じさせてピストンをシリンダの内面から浮上(ガスフロート)させて、ピストンリングとシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることができる。
【0056】
本発明の第三十六の態様の往復動エンジンでは、第三十五の態様の往復動エンジンにおいて、第二のピストンリングは、ピストンの往復動方向に対して傾斜して配されている。
【0057】
本発明の第三十七の態様の往復動エンジンでは、第三十五又は第三十六の態様の往復動エンジンにおいて、オイルリングは、ピストンの往復動方向に対して傾斜して配されている。
【0058】
本発明の第三十八の態様の往復動エンジンでは、第三十五から第三十七のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、一方の揺動側面部位は、反スラスト側に位置しており、他方の揺動側面部位は、スラスト側に位置している。
【0059】
第三十八の態様の往復動エンジンによれば、上述の構成を具備しているために、燃焼行程で大きく生じ得るスラスト側におけるピストンリングとシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることができて、ピストンをスムーズに往復動させ得る。
【0060】
本発明の第三十九の態様の往復動エンジンでは、第三十五から第三十八のいずれかの態様の往復動エンジンにおいて、少なくとも一のガス通路は、シリンダの内面であってピストンが上死点近傍に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配された凹所からなる。
【0061】
尚、上述のような態様の往復動エンジンは、4サイクルガソリンエンジン又はディーゼルエンジンであってもよく、いずれのエンジンでも本発明による効果を好適に発揮し得る。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、爆発行程において、ピストン降下始期に、燃焼室内のガスを環状ガス室に必要量を必要な力で速やかに導入・作用させることができて、所望のガス圧支持力を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることのできる往復動エンジンを提供し得る。
【0063】
また、本発明によれば、ピストンリングのオイルリングへの干渉をなくすことができて、所望の側圧を生じさせてピストンリング及びピストン側面とシリンダとの摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることのできる往復動エンジンを提供し得る。
【0064】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の例の縦断面説明図である。
【図2】図2は、図7に示す例のII−II線断面矢視説明図である。
【図3】図3は、図7に示す例のIII−III線断面矢視説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の主に凹所の縦断面拡大説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の動作説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の動作説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の動作説明図である。
【図8】図8の(a)、(b)及び(c)は、図1に示す例の一部拡大動作説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の他の例の説明図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態の他の例の説明図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態の他の例の説明図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態の他の例の縦断面説明図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態の更に他の例の縦断面説明図である。
【図14】図14は、図13に示す更に他の例の一部の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1から図8において、本例の往復動エンジンとしての4サイクルガソリンエンジン1は、燃焼室2を規定しているピストン3のトップ面(頭部端面)4に隣接しているピストンリング(トップリング)5と、ピストンリング5との間で環状ガス室6を規定していると共に環状ガス室6でのピストン3の側面8の受圧面積がピストン3の反スラスト側9よりもスラスト側10で大きくなるように、ピストンリング5に隣接しているピストンリング7と、シリンダ13の内面14の円周方向Xに関して並んでシリンダ13の内面14に配されていると共にスラスト側10で環状ガス室6を燃焼室2に連通させる複数のガス通路15と、ピストン3の往復動方向Yでピストンリング7を間にしてピストンリング5に対向して配されているオイルリング16とを具備している。
【0067】
ピストン3のトップ面4に連接している側面8には、ピストンリング5及び7並びにオイルリング16の夫々に対応して配置されたリング溝が形成されており、各リング溝にはピストンリング5及び7並びにオイルリング16が夫々嵌着されている。トップ面4は、往復動方向Yに直交する面と平行となるようにピストン3に形成されている。側面8は、往復動方向Yと平行となるようにピストン3に形成されている。
【0068】
ピストン3にピストンピン21を介して回転自在に連結されている小端部22a及びクランクシャフトが回転自在に連結されている大端部を有しているコンロッド22は、本例では、図1及び図7に示すようにピストン3が方向Y1に向かって往動される際に大端部が小端部22aよりも反スラスト側9に配されるようになっている。
【0069】
シリンダ13は、内面14によって規定されたシリンダボア(空間)25を有しており、シリンダボア25には、ピストン3が往復動方向Yで往復動自在となるように配されている。シリンダヘッド13aには、点火プラグ26、吸気弁27及び排気弁28が設けられている。内面14は、往復動方向Yと平行となるようにシリンダ13に形成されている。
【0070】
ピストンリング5は、通常は、燃焼室2を規定しているピストン3のトップ面4と平行となるように、ピストン3のリング溝に嵌着されている。ピストンリング5は、燃焼室2を規定する環状規定面5aと、環状ガス室6を規定する環状規定面5bと、環状規定面5a及び5bに連接していると共にシリンダ13の内面14に摺動する摺動側面5cとを具備している。環状規定面5a及び5bは、往復動方向Yに直交する面と平行となるように配されている。摺動側面5cは、往復動方向Yと平行となるようにピストンリング5に形成されている。ピストンリング5は、本例では、燃焼室2と環状ガス室6とを画成することができるように肉薄に形成されている。
【0071】
ピストンリング7は、反スラスト側9からスラスト側10に向かうに従ってピストンリング5から漸次離れるように、往復動方向Yに対して傾斜してピストン3のリング溝に嵌着されている。ピストンリング7は、ピストンリング5側に配されていると共に環状ガス室6を規定している環状規定面7aと、オイルリング16側に配されていると共に環状規定面7aに対向する環状面7bと、シリンダ13の内面14に摺動する摺動側面7cとを具備している。環状規定面7a及び環状面7bは、その反スラスト側9の部位よりもスラスト側10の部位で環状規定面5bから離反するように往復動方向Yに対して傾斜している。環状規定面5bのスラスト側10の部位から環状規定面7aのスラスト側10の部位までの往復動方向Yにおける距離は、環状規定面5bの反スラスト側9の部位から環状規定面7aの反スラスト側9の部位までの往復動方向Yにおける距離よりも長い。
【0072】
環状ガス室6は、ピストン3の側面8、シリンダ13の内面14並びにピストンリング5及び7によって規定されてなる。ここで、環状ガス室6の容積は、ピストンリング7が上述のように傾斜して配されているために、スラスト側10で大きくなっている一方、反スラスト側9で小さくなっている。
【0073】
オイルリング16は、本例では、ピストンリング(トップリング)5と平行となるようにピストン3のリング溝に装着されている。オイルリング16は、環状面7bに対向するピストンリング7側の環状面16aと、往復動方向Yで環状面16aに対向するピストンピン21側の環状面16bと、環状面16a及び16bに連接していると共に内面14に摺動する摺動側面16cとを具備している。環状面16a及び16bは、本例では、往復動方向Yに直交する面と平行となるように配されている。摺動側面16cは、往復動方向Yと平行となるようにオイルリング16に形成されている。
【0074】
ガス通路15は、本例では、シリンダ13の内面14に三つ設けられている。三つのガス通路15の夫々は、シリンダ13の内面14であってピストン3が上死点近傍に位置する際に環状ガス室6を燃焼室2に連通させる位置に配されている凹所17a、17b及び17cを具備している。凹所17a、17b及び17cは、本例では、爆発行程(燃焼行程)において、往復動方向Yに関してピストン3がクランク角度で略6度から略37度に相当する位置に存在する場合に環状ガス室6のみを燃焼室2に夫々同時的に連通させるように、側面8に対面する内面14に夫々形成されている。
【0075】
凹所17a及び17cは、円周方向Xで凹所17bを間にしていると共に、ピストンピン21の軸方向Aで互いに対向している。凹所17a及び17bの円周方向Xにおける間隔と凹所17b及び17cの円周方向Xにおける間隔とは、互いに略々等しい。凹所17a、17b及び17cは、本例では、夫々互いに略々同形状である。シリンダヘッド13aから凹所17aまでの往復動方向Yにおける距離、シリンダヘッド13aから凹所17bまでの往復動方向Yにおける距離及びシリンダヘッド13aから凹所17cまでの往復動方向Yにおける距離は、本例では、夫々互いに略々等しい。
【0076】
凹所17bに規定される空間30bの円形の開口面31bの中心部C2は、本例では、図3に示すように、軸方向A及び往復動方向Yに直交する方向Zに関してピストン3の中心部Oに対向して配されている。凹所17bは、凹所17a及び17cよりも反スラスト側9から離れている。
【0077】
凹所17aに規定される空間30aの開口面31aの中心部C1及びピストン3の中心部Oを結ぶ線32並びに軸方向Aに伸びる線80の交差角35と、凹所17cに規定される空間30cの開口面31cの中心部C3及びピストン3の中心部Oを結ぶ線36並びに線80の交差角37とは、互いに略々等しい。
【0078】
凹所17aは、本例では、シリンダ13の内面14に連接している連接部40aを有する部分凹球面状面41aを具備している。部分凹球面状面41aは、円形の開口面31aを有する空間30aを規定している。凹所17bは、本例では、シリンダ13の内面14に連接している連接部40bを有する部分凹球面状面41bを具備している。部分凹球面状面41bは、円形の開口面31bを有する空間30bを規定している。凹所17cは、本例では、シリンダ13の内面14に連接している連接部40cを有する部分凹球面状面41cを具備している。部分凹球面状面41cは、円形の開口面31cを有する空間30cを規定している。尚、凹所17a、17b及び17cは、部分凹球面状面41a、41b及び41cに代えて、角を有した面を夫々具備していてもよい。また、連接部40a、40b及び40cの夫々には、糸面取りが施されていてもよい。
【0079】
部分凹球面状面41a、41b及び41cは、本例では、夫々互いに等しい曲率及び往復動方向Yに直交する方向における深さを有している。円形の開口面31a、31b及び31cは、本例では、夫々互いに等しい径を有している。
【0080】
凹所17bは、本例では、図4に示すように、連接部40bに対する接線42と往復動方向Yに伸びる線43との交差角44が鈍角となるように、内面14に設けられている。往復動方向Yで互いに対向する連接部40bの部位45及び46に対する接線42は、本例では、往復動方向Yに直交する方向で当該部位45及び46よりもピストン3から離反した位置に存する交点Pで互いに交わっている。往復動方向Yにおける部位45及び46間の距離L1は、環状規定面5aから環状規定面5bまでの往復動方向Yにおける距離L2よりも長く、換言すれば、当該部位45及び46の間隔は、ピストンリング5の厚みよりも大きい。距離L1は、図8の(b)に示すように、環状規定面5bのスラスト側10の部位から環状規定面7aのスラスト側10の部位までの往復動方向Yにおける距離L3よりも短い。凹所17bに規定される空間30bの開口面31bの径は、当該凹所17bの往復動方向Yに直交する方向における深さよりも大きい。尚、本例では、連接部40a及び40cについても連接部40bと同様に構成されているので、これらについての詳細な説明を省略する。
【0081】
本例の往復動エンジン1の動作について説明すると、圧縮行程において、図5及び図8の(a)に示すように、ピストン3が上死点近傍に位置すると共に上死点に到達する前にピストンリング5の環状規定面5bが凹所17bのシリンダヘッド13a側の部位45に対向するピストンピン21側の部位46よりもシリンダヘッド13a側に位置した際に、燃焼室2が環状ガス室6に凹所17bを介して連通し、燃焼室2から環状ガス室6に低圧の圧縮ガスが入り始める。ここで、燃焼室2は、ピストンリング5がトップ面4と平行となるように配されているために、空間30bを介する環状ガス室6の連通と同時的に円周方向Xで凹所17bに対して並んで配されている凹所17a及び17cに規定される空間30a及び30cをも介して環状ガス室6に連通される結果、スラスト側10の複数の部位から低圧の圧縮ガスが環状ガス室6内に入る。
【0082】
次に、図1、図6及び図8の(c)に示す爆発行程(燃焼行程)において、ピストン3の降下始期、即ち、ピストン3が上死点近傍を降下する時に、燃焼室2内の燃焼ガス51を凹所17a、17b及び17cを介して環状ガス室6に導入し、導入した燃焼ガス51のガス圧により環状ガス室6内のガス圧を高め、当該ガス圧に基づいてガス圧支持されるピストン3が下死点に向かって降下する。ここで、環状ガス室6内で保持されているガス圧によってガス圧支持されながら往動するピストン3から、往復動方向Yに対して傾斜しているコンロッド22に方向Y1に向かう往動力が与えられることによってピストン3にスラスト側10に向かう側圧力B1が与えられるが、当該側圧力B1に抗して、環状ガス室6内に十分に供給されたガス圧によりピストン3に反スラスト側9に向かう支持力B2を与えて、当該ピストン3をガス圧支持させる。尚、ピストン3が図6に示すように上死点に位置する場合には、本例では、特に図8の(b)に示すように、凹所17a、17b及び17cを介する燃焼室2と環状ガス室6との連通は止めるが、連通させてもよい。
【0083】
以上のように構成された往復動エンジン1では、燃焼時には凹所17a、17b及び17cを介して燃焼室2と環状ガス室6とが連通される位置にピストン3がもたらされているため、燃焼行程で燃焼室2で燃焼して発生したガス圧は、凹所17a、17b及び17cを介して環状ガス室6に満遍なく速やかに導入される。この導入されたガス圧に基づき環状ガス室6の偏倚した圧力を受けてピストン3は、その往復動では内面14、特に内面14のスラスト側10の部位でガス圧支持される。ガス圧により支持されたピストン3は、極めて低い摺動摩擦抵抗をもって往復動する。また、斯かる往復動において、ピストン3はピストンピン21を中心として軸方向Aに直交する面内で揺動(首振り)されようとするが、当該揺動は、上述の環状ガス室6のガス圧によって阻止される。ピストン3は、極めて低い摺動摩擦抵抗をもって往復動し得ることとなり、往復動エンジン1の燃費の改善等を図り得る。
【0084】
本例の往復動エンジン1によれば、燃焼室2を規定しているピストン3のトップ面4に隣接しているピストンリング5と、ピストンリング5との間で環状ガス室6を規定していると共に環状ガス室6でのピストン3の側面8の受圧面積が反スラスト側9よりもスラスト側10で大きくなるように、ピストンリング5に隣接しているピストンリング7と、シリンダ13の内面14の円周方向Xに関して並んで内面14に配されていると共にスラスト側10で環状ガス室6を燃焼室2に連通させる複数のガス通路15とを具備しているために、燃焼室2内の燃焼ガス51を複数のガス通路15を介して環状ガス室6に満遍なく速やかに導入作用させることができ、このようにして導入作用させた環状ガス室6内の燃焼ガス51に基づいて所望の支持力を生じさせてピストン3を内面14からガス圧支持させて、ピストンリング5の摺動側面5c及びピストン3の側面8とシリンダ13の内面14との摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることができ、複数のガス通路15が、内面14であって上死点近傍でピストン3を降下させる際に環状ガス室6を燃焼室2に連通させる位置に配されている凹所17a、17b及び17cを夫々具備しているために、上死点近傍で燃焼ガス51を凹所17a、17b及び17cを介して環状ガス室6に勢いよく導入作用させることができ、更に、環状ガス室6内のガス圧を高めることができ、このガス圧を保持したままピストン3を降下(往動)させることができて、特に爆発行程において、ピストン3をピストン側圧に抗して好適にガス圧支持することができ、凹所17bに規定される空間30bの開口面31bの中心部C2が方向Zに関してピストン3の中心部Oに対向して配されているために、環状ガス室6の反スラスト側9の部位よりも容積の大きい環状ガス室6のスラスト側10の部位から先行して圧縮ガスを導入することができ、従って、環状ガス室6内に燃焼ガス51をより満遍なく速やかに導入作用させることができ、シリンダヘッド13aから凹所17aまでの往復動方向Yにおける距離とシリンダヘッド13aから凹所17cまでの距離とが互いに等しいために、一対の凹所17a及び17cによる燃焼室2と環状ガス室6との連通を同時的に且つ広範囲に開始又は終了させ得て、環状ガス室6に燃焼ガス51をより速やかに且つ広範囲に導入作用させることができ、凹所17a、17b及び17cが部分凹球面状面41a、41b及び41cを夫々具備しているために、燃焼ガス51の流入に抵抗がなく平均した良好な導入作用を得ることができ、凹所17bの内面14に連接する部分凹球面状面41bの連接部40bに対する接線42と往復動方向Yに伸びる線43との交差角44が鈍角であり、また、連接部40bであって往復動方向Yで互いに対向する部位45及び46に対する接線42が往復動方向Yに直交する方向で部位45及び46よりもピストン3から離反した位置で互いに交わっており、更に、凹所17a及び17cについても凹所17bと同様に構成されているために、燃焼ガス51を広範囲に導入し得、凹所17bが、円周方向Xで当該凹所17bに隣接する凹所17a及び17cと夫々互いに等しい曲率を有しており、また、凹所17bが、円周方向Xで当該凹所17bに隣接する凹所17a及び17cと等しい深さを有しているために、凹所17a、17b及び17cが曲率及び深さとの関連において夫々設計されて内面14に配設されることで各凹所17a、17b及び17cにより燃焼室2と環状ガス室6とを夫々同様に連通させ得、凹所17aに規定される空間30aの開口面31aの中心部C1及びピストン3の中心部Oを結ぶ線32並びに軸方向Aに伸びる線80の交差角35と凹所17cに規定される空間30cの開口面31cの中心部C3及びピストン3の中心部Oを結ぶ線36並びに線80の交差角37とが互いに等しく、更に、凹所17a及び17cは、夫々互いに同形状であるために、軸方向Aに関する環状ガス室6の一方側及び他方側に均等に燃焼ガス51を導入し得、凹所17bに規定される空間30bの開口面31bは、他の凹所17a及び17cに規定される空間30a及び30cの開口面31a及び31cと略々等しい径を有しているために、凹所17a、17b及び17cにより燃焼室2と環状ガス室6とを同様な状態で連通させ得ると共に当該連通を同時的に開始又は終了させ得、環状規定面5aが往復動方向Yに直交する面と平行となるように配されており、また、環状規定面5bが往復動方向Yに直交する面と平行となるように配されているために、円周方向Xで互いに並んで配されている凹所17a、17b及び17cによる燃焼室2及び環状ガス室6の連通を同時的に開始又は終了し得る。
【0085】
尚、本例の往復動エンジン1は、図9に示すように、例えば凹所17bに代えて、ピストン3の反スラスト側9の部位から最も離反していると共に往復動方向Yに関して他の凹所17a及び17cよりもシリンダヘッド13aから離れて配されている凹所52を具備していてもよく、斯かる凹所52により凹所17a及び17cに先行して環状ガス室6の反スラスト側9の部位に対して容積の大きい環状ガス室6のスラスト側10の部位からガスを導入することができ、従って、環状ガス室6内に燃焼ガス51をより満遍なく速やかに導入することができる。尚、凹所52は、凹所17a、17b及び17cの少なくとも一つに代えて又は凹所17a、17b及び17cに加えて、シリンダ13の内面14に配されてもよく、斯かる凹所52の配設により凹所17a、17b、17c及び52の夫々が燃焼室2と環状ガス室6とを連通させる順序を適宜調整し得る。ここで、図9に示すように、往復動方向Yでシリンダヘッド13aから離れて配されている凹所52の内面14に連接している連接部40dであってシリンダヘッド13a側に位置する部位45は、連接部40a及び40cであってシリンダヘッド13a側に位置する部位45に往復動方向Yで対向する部位46よりもシリンダヘッド13a側に配されてもよく、凹所17a、17c及び52の夫々に規定される空間30a、30c及び30dの開口面31a、31c及び31dの一部は、夫々互いに円周方向Xに伸びる線53上に位置してもよく、また、例えば、凹所17a及び17cの開口面31a及び31cの中心部C1及びC3は、連接部40dの部位45を通る円周方向Xに伸びる線54上に位置してもよく、このように凹所17a、17c及び52が配されている場合には、これらの凹所17a、17c及び52により燃焼室2から環状ガス室6に燃焼ガス51を断続させることなく連続的に導入することができる。
【0086】
また、本例の往復動エンジン1は、三つのガス通路15に代えて、シリンダ13の内面14に配された二つのガス通路15を具備していてもよく、また、図10及び図11に示すように、三つ以上のガス通路(四つ又は五つのガス通路等)15を具備していてもよく、このようにして、往復動エンジン1の種々の態様に応じて環状ガス室6に燃焼ガス51を満遍なく、広範囲に且つ速やかに導入することができるように、ガス通路15の個数を適宜設定することができる。ここで、例えば、図10に示すように、四つのガス通路15を具備している場合には、凹所56に規定される空間30eの開口面31eの中心部C4及びピストン3の中心部Oを結ぶ線60並びに線80の交差角64と、軸方向Aで凹所56に対向する凹所59に規定される空間30hの開口面31hの中心部C7及び中心部Oを結ぶ線63並びに線80の交差角67とが互いに等しい角度となっている一方、円周方向Xで凹所56に隣接している凹所57に規定される空間30fの開口面31fの中心部C5及び中心部Oを結ぶ線61並びに線80の交差角65と、軸方向Aで凹所57に対向すると共に円周方向Xで凹所59に隣接している凹所58に規定される空間30gの開口面31gの中心部C6及び中心部Oを結ぶ線62並びに線80の交差角66とが夫々互いに等しい角度となっているのが好ましく、斯かる場合には、軸方向Aに関する環状ガス室6の一方側及び他方側に均等に燃焼ガス51を導入、作用し得る。
【0087】
更に、本例の往復動エンジン1は、図11に示すように、凹所17a、17b及び17cに代えて、往復動方向Yに直交する方向における深さが夫々互いに異なる凹所56、57、58及び59並びに方向Zでピストン3の中心部Oに対向する凹所70を具備してもよく、好ましくは、最もスラスト側10に位置する凹所70は、方向Zに関して当該凹所70に対して反スラスト側9に位置する凹所56、57、58及び59よりも深くなるように構成され、凹所57及び58は、凹所56及び59よりも深くなるように構成される。また、夫々互いに曲率の異なる凹所56、57、58、59及び70を具備してもよく、好ましくは、最もスラスト側10に位置する凹所70は、方向Zに関して当該凹所70に対して反スラスト側9に位置する凹所56、57、58及び59よりも小さい曲率を有しており、凹所57及び58は、凹所56及び59よりも小さい曲率を有している。更に、凹所56、57、58、59及び70に夫々規定される空間30e、30f、30g、30h及び30iの開口面31e、31g、31f、31h及び31iの半径又は直径は、夫々互いに異なっていてもよく、好ましくは、最もスラスト側10に位置する凹所70における開口面31iは、方向Zに関して当該凹所70に対して反スラスト側9に位置する凹所56、57、58及び59における開口面31e、31f、31g及び31hよりも長い半径又は直径を有しており、凹所57及び58における開口面31f及び31gは凹所56及び59における開口面31e及び31hよりも長い半径又は直径を有している。上記のような深さ、曲率及び径(半径、直径を含む)を夫々有する凹所56、57、58、59及び70を構成することにより、燃焼室2と環状ガス室6との連通状態及び連通の開始若しくは終了の順序を適宜調整し得、特に上記の曲率と深さとの関連において夫々設計されてシリンダ13の内面14に配設されることにより各凹所56、57、58、59及び70による燃焼室2と環状ガス室6との連通状態をより好ましく調整し得る。
【0088】
更にまた、本例の往復動エンジン1は、図12に示すように、オイルリング16に代えて、ピストンリング7を間にしてピストンリング5に対向してピストン3に配されていると共に、スラスト側10の部位71が往復動方向Yに関してピストン3及びコンロッド22を連結するピストンピン21に対向する部位72及び反スラスト側9の部位73よりもピストンリング5から離れるように、往復動方向Yに対して傾斜しているオイルリング75を具備していてもよく、斯かる場合には、ピストンリング7は、オイルリング75の傾斜角と等しい角度をもって往復動方向Yに対して傾斜していてもよい。オイルリング75を具備する往復動エンジン1によれば、オイルリング75をピストンピン21に干渉させないでピストンリング5から離れさせて配置することができて、ピストンリング7を、オイルリング75に干渉させることなく、特にスラスト側10でピストンリング5から離れさせて配置することができる。ここで、当該往復動エンジン1では、オイルリング75と共にピストンリング7を往復動方向Yに対して大きく傾斜させた場合でも、ピストン3をガス圧支持させるのに十分な量の燃焼ガス51を燃焼室2から上述のような複数のガス通路15を介して環状ガス室6に満遍なく速やかに導入作用してガス圧を高める。
【0089】
加えて、本例の往復動エンジン1は、ピストンピン21に代えて、反スラスト側9に偏心しているピストンピンを具備していてもよい。
【0090】
尚、複数のガス通路15は、本例では、ピストン3が図6に示すように上死点に位置する場合に、燃焼室2と環状ガス室6との連通が一旦解除されるように上死点近傍に配された凹所17a、17b及び17cを夫々具備しているが、凹所17a、17b及び17cの少なくとも一つに代えて又はこれらに加えて、ピストン3が上死点に位置する場合においても、燃焼室2及び環状ガス室6を連通させるように配された凹所を具備していてもよい。また、複数のガス通路15は、凹所17a、17b及び17cの少なくとも一つに代えて又はこれらに加えて、シリンダ13の内面14に連接する連接部40a、40b及び40cの夫々に対する接線42と往復動方向Yに伸びる線43とが直交するように、シリンダ13の内面14に設けられた凹所を夫々具備していてもよい。
【0091】
図13及び図14において、本例の往復動エンジンとしての他の4サイクルガソリンエンジン1Kは、燃焼室2を規定しているピストン3のトップ面4に隣接しているピストンリング(トップリング)5と、ピストンリング5との間で環状ガス室6を規定していると共に環状ガス室6でのピストン3の側面8の受圧面積がピストン3の反スラスト側に位置する揺動側面部位9Kよりも揺動側面部位9Kに対向するスラスト側に位置する揺動側面部位10Kの方で大きくなるように、ピストンリング5に隣接しているピストンリング(セカンドリング)7と、揺動側面部位9K及び10K間の略中間よりも揺動側面部位10Kの方でピストンリング5から離れているオイルリング16と、シリンダ13の内面14であってピストン3が上死点近傍に位置する際に環状ガス室6を燃焼室2に連通させる位置に配されたガス通路としての凹所15Kとを具備している。
【0092】
ピストン3の側面8には、ピストンリング5及び7並びにオイルリング16の夫々に対応して配置されたリング溝が形成されており、各リング溝にはピストンリング5及び7並びにオイルリング16が夫々嵌着されている。
【0093】
コンロッド22は、その小端部で連結軸(ピストンピン)21を介してピストン3に回動自在に連結されている。コンロッド22の大端部には、クランクシャフトが回動自在に連結されている。
【0094】
シリンダ13は、その内面によって規定されたシリンダボア(空間)25を有しており、シリンダボア25には、ピストン3が往復動方向Yで往復動自在となるように配されている。シリンダ13には、点火プラグ26、吸気弁及び排気弁27Kが設けられている。
【0095】
ピストンリング5は、燃焼室2を規定しているピストン3のトップ面(頭部端面)4と実質的に平行となるように、ピストン3のリング溝に嵌着されている。
【0096】
ピストンリング7は、揺動側面部位9Kから揺動側面部位10Kに向うに従ってピストン3から漸次離れるように、往復動方向Y及びピストンリング5に対して傾斜してピストン3のリング溝に嵌着されている。揺動側面部位10K側におけるピストンリング5からピストンリング7までの距離は、揺動側面部位9K側におけるピストンリング5からピストンリング7までの距離よりも長い。
【0097】
ピストンリング5及び7の夫々の両端突合せ部は、当該両端突合せ部を介してガスが漏出しないように密に当接又は嵌合されている。
【0098】
環状ガス室6は、ピストン3の側面8、シリンダ13の内面14並びにピストンリング5及び7によって規定されてなる。
【0099】
オイルリング16の揺動側面部位9K及び10K間の略中間における部位31Kは、往復動方向Yで連結軸21に接触しない範囲でピストンリング5から離れて配置されている。オイルリング16の揺動側面部位10K側における部位32Kは、往復動方向Yで部位31Kよりもピストンリング5から離れて配置されている。
【0100】
凹所15Kは、ピストン3が上死点の位置とクランク角度で略15度に相当する位置とに存在する場合に、環状ガス室6を燃焼室2に連通させるように、揺動側面部位10K側における側面8に対面する内面14に形成されている。
【0101】
本例の往復動エンジン1Kの動作について説明すると、圧縮行程の終了後に開始される燃料及び空気の混合気の燃焼行程において、ピストン3が当該ピストン3の上死点近傍に位置している間に点火プラグ26による点火を行い、燃焼室2内の燃焼ガスを凹所15Kを介して環状ガス室6に導入し、図1に示すように、ピストン3が当該ピストン3の上死点通過後であって上死点近傍に位置している間に最大に高まった燃焼ガスのガス圧をピストン3が受けることで下死点に向かって加速する。ここで、往動するピストン3から、往復動方向Yに対して傾斜しているコンロッド22に往動力が与えられることによってピストン3にスラスト側に向かう側圧力E1が与えられるが、当該側圧力E1に抗して、環状ガス室6内のガス圧によりピストン3に反スラスト側に向かう抗側圧力E2を与えて、当該ピストン3をガスフロートさせる。
【0102】
以上のように構成された往復動エンジン1Kでは、燃焼時には凹所15Kを介して燃焼室2と環状ガス室6とが連通される位置にピストン3がもたらされているため、燃焼行程で燃焼室2で燃焼して発生したガス圧は、凹所15Kを介して環状ガス室6に速やかに導入される。この導入されたガス圧に基づき環状ガス室6の偏倚した側圧を受けてピストン3は、その往復動では内面14、特に揺動側面部位10K側の内面14に対して浮上(ガスフロート)する。ガス圧に基づいて浮上されたピストン3は、極めて低い摺動摩擦抵抗をもって往復動する。また、斯かる往復動において、ピストン3は連結軸21を中心としてD方向に揺動(首振り)されようとするが、当該揺動は、上述の環状ガス室6の偏倚した側圧によって阻止される。ピストン3は、揺動側面部位9K及び10K側における側面8がシリンダ13の内面14に当接することなく、極めて低い摺動摩擦抵抗をもって往復動し得ることとなり、往復動エンジン1Kの燃費の改善等を図り得る。
【0103】
本例の往復動エンジン1Kによれば、揺動側面部位9K及び10K間の略中間よりも揺動側面部位10Kの方でピストンリング5から離れているオイルリング16を具備しているために、オイルリング16を、連結軸21の上方に位置する当該オイルリング16の部位31Kが連結軸21に干渉しない範囲でピストンリング5から離れるように且つスラスト側における当該オイルリング16の部位32Kが部位31Kよりもピストンリング5から離れるように、配置することができ、従って、ピストンリング7を、上記受圧面積が揺動側面部位9K側よりも揺動側面部位10K側の方でより大きくなるように、オイルリング16に干渉させることなく往復動方向Yに対して大きく傾斜させることができ、而して、所望の側圧を生じさせてピストン3をシリンダ13の内面14から浮上(ガスフロート)させて、ピストンリング5及び7とシリンダ13との摺動摩擦抵抗を大幅に低減させることができる。
【0104】
尚、上述の各実施例では、往復動エンジンを4サイクルガソリンエンジン1及び1Kとして実施したものであるが、本発明はこれらに限定されず、例えばディーゼルエンジンとして実施されても上記同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0105】
1 往復動エンジン
2 燃焼室
3 ピストン
4 トップ面
5、7 ピストンリング
6 環状ガス室
8 側面
9 反スラスト側
10 スラスト側
13 シリンダ
14 内面
15 ガス通路
16、75 オイルリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積が反スラスト側よりもスラスト側で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、シリンダの内面の円周方向に関して並んでシリンダの内面に配されていると共にスラスト側で環状ガス室を燃焼室に連通させる複数のガス通路とを具備している往復動エンジン。
【請求項2】
複数のガス通路は、シリンダの内面であってピストンが上死点又は上死点からの降下始期に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている凹所を夫々具備している請求の範囲1に記載の往復動エンジン。
【請求項3】
複数の凹所は、環状ガス室のみを燃焼室に夫々連通させるようになっている請求の範囲2に記載の往復動エンジン。
【請求項4】
複数のガス通路は、シリンダの内面であってピストンの上死点からの降下始期に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている請求の範囲2又は3に記載の往復動エンジン。
【請求項5】
少なくとも一つの凹所は、シリンダの内面であってピストンが上死点に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配されている請求の範囲2から4のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項6】
少なくとも一つの凹所は、往復動方向に関して他の凹所よりもシリンダヘッドから離れて配されている請求の範囲2から5のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項7】
ピストンの反スラスト側の部位から最も離反している少なくとも一つの凹所は、往復動方向に関して他の凹所よりもシリンダヘッドから離れて配されている請求の範囲2から6のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項8】
少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面の中心部は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向並びに往復動方向に直交する方向に関してピストンの中心部に対向して配されている請求の範囲2から7のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項9】
シリンダヘッドから離れて配されている凹所のシリンダの内面に連接している連接部であってシリンダヘッド側に位置する部位は、他の凹所のシリンダ内面に連接している連接部であってシリンダヘッド側に位置する部位に往復動方向で対向する部位よりもシリンダヘッド側に配されている請求の範囲6又は7に記載の往復動エンジン。
【請求項10】
複数の凹所の夫々に規定される空間の開口面の一部は、夫々互いに円周方向に伸びる線上に位置している請求の範囲2から9のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項11】
ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向に関して互いに対向する一対の凹所を具備しており、シリンダヘッドから一方の凹所までの往復動方向における距離とシリンダヘッドから他方の凹所までの往復動方向における距離とは、互いに等しい請求の範囲2から10のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項12】
複数の凹所は、部分凹球面状面を夫々具備している請求の範囲2から11のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項13】
少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部に対する接線と往復動方向に伸びる線との交差角は、鈍角である請求の範囲2から12のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項14】
少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位に対する接線は、当該両部位よりもピストンから離反した位置で互いに交わる請求の範囲2から13のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項15】
少なくとも一つの凹所のシリンダの内面に連接する連接部に対する接線と往復動方向に伸びる線とは、互いに直交する請求の範囲2から12のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項16】
少なくとも一つの凹所は、円周方向で当該凹所に隣接する凹所と異なる深さを有している請求の範囲2から15のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項17】
少なくとも一つの凹所は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向並びに往復動方向に直交する方向に関して当該凹所に対して反スラスト側に位置する他の凹所よりも深い請求の範囲2から16のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項18】
少なくとも一つの凹所は、円周方向で当該凹所に隣接する凹所と等しい深さを有している請求の範囲2から17のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項19】
ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向で互いに対向する一対の凹所を具備しており、一方の凹所に規定される空間の開口面の中心部及びピストンの中心部を結ぶ線並びに軸方向に伸びる線の交差角と他方の凹所に規定される空間の開口面の中心部及びピストンの中心部を結ぶ線並びに軸方向に伸びる線の交差角とは、互いに等しい請求の範囲2から18のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項20】
一対の凹所は、夫々互いに同形状である請求の範囲19に記載の往復動エンジン。
【請求項21】
シリンダの内面に連接する複数の凹所の夫々の連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位の間隔は、第一のピストンリングの厚みよりも大きい請求の範囲2から20のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項22】
シリンダの内面に連接する複数の凹所の夫々の連接部であって往復動方向で互いに対向する両部位間の距離は、環状ガス室を規定する第一のピストンリングの規定面のスラスト側の部位から環状ガス室を規定する第二のピストンリングの規定面のスラスト側の部位までの往復動方向における距離よりも短い請求の範囲2から21のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項23】
少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、他の凹所に規定される空間の開口面と異なる径を有している請求の範囲2から22のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項24】
少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向及び往復動方向に関して当該凹所に対して反スラスト側に位置する凹所に規定される空間の開口面よりも長い径を有している請求の範囲2から23のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項25】
ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンの軸方向で互いに対向する一対の凹所を具備しており、一対の凹所の夫々に規定される空間の開口面の径と円周方向で当該一対の凹所に隣接する他の凹所に規定される空間の開口面の径とは、夫々互いに異なる請求の範囲2から24のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項26】
少なくとも一つの凹所に規定される空間の開口面は、他の凹所に規定される空間の開口面と等しい径を有している請求の範囲2から25のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項27】
燃焼室を規定する第一のピストンリングの規定面は、往復動方向に直交する面と平行となるように配されている請求の範囲1から26のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項28】
少なくとも一つの凹所で規定される空間の開口面の径は、当該凹所の深さよりも大きい請求の範囲2から27のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項29】
第二のピストンリングは、往復動方向に対して傾斜して配されている請求の範囲1から28のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項30】
第二のピストンリングを間にして第一のピストンリングに対向してピストンに配されているオイルリングを具備しており、オイルリングのスラスト側の部位は、往復動方向に関してピストンとコンロッドとを連結するピストンピンに対向するオイルリングの部位よりも第一のピストンリングから離れている請求の範囲1から29のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項31】
オイルリングのスラスト側の部位は、当該オイルリングの反スラスト側の部位よりも第一のピストンリングから離れている請求の範囲30に記載の往復動エンジン。
【請求項32】
第二のピストンリングを間にして第一のピストンリングに対向してピストンに配されているオイルリングを具備しており、オイルリングは、往復動方向に対して傾斜して配されている請求の範囲29に記載の往復動エンジン。
【請求項33】
オイルリング及び第二のピストンリングは、夫々互いに等しい角度をもって往復動方向に対して傾斜して配されている請求の範囲32に記載の往復動エンジン。
【請求項34】
ピストンとコンロッドとを連結するピストンピンは、反スラスト側に偏心している請求の範囲1から33のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項35】
燃焼室を規定しているピストンのトップ面に隣接している第一のピストンリングと、第一のピストンリングとの間で環状ガス室を規定していると共にこの環状ガス室でのピストンの側面の受圧面積がピストンの一方の揺動側面部位よりもこの揺動側面部位に対向する他方の揺動側面部位の方で大きくなるように、第一のピストンリングに隣接している第二のピストンリングと、一方及び他方の揺動側面部位間の略中間よりも他方の揺動側面部位の方で第一のピストンリングから離れているオイルリングと、ピストン及びシリンダの内面のうちの少なくとも一方に形成されており、環状ガス室を燃焼室に連通させるガス通路とを具備している往復動エンジン。
【請求項36】
第二のピストンリングは、ピストンの往復動方向に対して傾斜して配されている請求の範囲35に記載の往復動エンジン。
【請求項37】
オイルリングは、ピストンの往復動方向に対して傾斜して配されている請求の範囲35又は36に記載の往復動エンジン。
【請求項38】
一方の揺動側面部位は、反スラスト側に位置しており、他方の揺動側面部位は、スラスト側に位置している請求の範囲35から37のいずれか一つに記載の往復動エンジン。
【請求項39】
ガス通路は、シリンダの内面であってピストンが上死点近傍に位置する際に環状ガス室を燃焼室に連通させる位置に配された凹所からなる請求の範囲35から38のいずれか一つに記載の往復動エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−36470(P2013−36470A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215252(P2012−215252)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2010−3425(P2010−3425)の分割
【原出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000174220)坂東機工株式会社 (51)
【Fターム(参考)】