説明

往復運動機構及びピックアンドプレイス装置

【課題】装置のコンパクト化、構成の簡素化と製造コストの低減ができ、位置決め精度を高めることができる往復運動機構及びピックアンドプレイス装置を提供すること。
【解決手段】移動体10の移動を案内する第1移動ガイド21及び第2移動ガイド22を備える二次元運動ガイド部20と、移動体10から軸状に突起した形態に設けられた軸状突起部12と、軸状突起部12の先端側が嵌るように溝状に設けられ、移動体10が所定の軌跡に倣って移動するように案内する案内溝30と、案内溝30に並設され、その案内溝30の全体を覆う大きさの円形に設けられ、軸状突起部12が前記円形の径方向へ移動可能に挿通される連携孔45を備え、回動駆動されることで軸状突起部12を介して移動体10を駆動させる回動円形部材40と、回動円形部材40の外周部42へ動力を伝達して、回動円形部材40を駆動させる駆動手段50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動機構、及びその機構を利用したピックアンドプレイス装置に関する。ピックアンドプレイス装置は、ワークを保持して持ち上げ、所定の場所まで移動させて位置させる作業を行う装置である。例えば、組み立て、搬送、検査等の自動化装置として多用されている。
【背景技術】
【0002】
従来、ピックアンドプレイス装置等に用いられる往復運動機構としては、アームロボット装置のように、複数の駆動装置(電動モータ等)が用いられるものがある。これによれば、複数の駆動装置による動作を合成して所定の運動軌跡を得るものであり、運動軌跡を自由に設定することができるため、汎用性がある。しかし、複数の駆動装置を要するため、装置が複雑化、大型化するデメリットがある。
【0003】
これに対して、カム機構を利用して、一つの駆動装置によって所定の運動軌跡を得る往復運動が考案されている。
例えば、支え部に支持された軸受ホルダーと、軸受ホルダーにZ軸軸受を介して取り付けられたZ軸と、支え部に固定された、溝を持つ溝カム板と、溝にはめ込まれた第1のカムフォロアーと、Z軸に固定されたローラブロックと、ローラブロックに固定され、第1のカムフォロアーに挿通されたピンと、軸に取り付けられ軸を中心に回転可能に取り付けたレバーと、第1のカムフォロアーとともにピンの長さ方向に並設され、レバーの他端に摺動可能に取り付けられた第2のカムフォロアーと、レバーを駆動させる駆動機構とを有することを特徴とするピックアンドプレイスユニットが開示されている。
【特許文献1】実開平03−126522号公報(図1等)
【0004】
このようなピックアンドプレイスユニットでは、レバーを介して、移動体であるローラブロックを移動させている。レバーは、軸(回動軸)を介して駆動機構によって回動するもので、回動軸に駆動機構が直結されている。これによれば、回動軸と駆動機構が軸線方向に直列されて大きくなる構造となっている。また、回動軸と駆動機構の動力装置との間にラックとピニオンから成る特別の減速機構を介在させており、複雑な構成となっている。
さらに、レバーを介して移動体を駆動する場合、小径の回動軸による角度変位によって移動体の位置が決定されることになり、移動体の位置決め精度を高めることが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
往復運動機構及びピックアンドプレイス装置に関して解決しようとする問題点は、装置の全体形態が厚くなり、構成が複雑になって製造コストが高くなり易い点にある。また、移動体の位置決め精度を高めることが難しいという課題もある。
そこで、本発明の目的は、装置のコンパクト化、構成の簡素化、及び製造コストの低減ができ、移動体の位置決め精度を高めることができる往復運動機構及びピックアンドプレイス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、移動体を所定の軌跡に倣って往復移動させる運動機構であって、前記移動体にかかる第1の直線方向及び第2の直線方向への移動を案内する第1移動ガイド及び第2移動ガイドを備える二次元運動ガイド部と、前記移動体から軸状に突起した形態に設けられた軸状突起部と、前記軸状突起部の先端側が嵌るように溝状に設けられ、前記移動体が所定の軌跡に倣って移動するように案内する案内溝と、該案内溝に並設され、該案内溝の全体を覆う大きさの円形に設けられ、前記軸状突起部が前記円形の径方向へ移動可能に挿通される連携孔を備え、回動駆動されることで前記軸状突起部を介して前記移動体を駆動させる回動円形部材と、前記回動円形部材の外周部へ動力を伝達して、該回動円形部材を駆動させる駆動手段とを具備する。
【0007】
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記回動円形部材がタイミングプーリであり、前記駆動手段が電動モータとタイミングベルトによって構成されていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記回動円形部材が歯車であり、前記駆動手段が電動モータとピニオンギヤによって構成されていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記案内溝の中間部に直線部が設けられ、前記移動体の一方向への移動長さを調整できるように、前記直線部が伸縮可能に設けられていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記二次元運動ガイド部の少なくとも一方の移動ガイドが複数の直線ガイドを備え、該直線ガイドが、前記回動円形部材の回動軸芯を挟んで両側に配されていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記直線ガイドが一対設けられて他方の移動ガイドによるガイド方向にスパンを大きくとって配置され、該直線ガイドのそれぞれに沿って移動する各ベース移動板が設けられると共に、該一対のベース移動板に他方の移動ガイドを介して差し渡された長尺の移動体が設けられ、該移動体の一方の移動ガイドによるガイド方向について同期機構を備えていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる往復運動機構の一形態によれば、前記第1の直線方向が実質的に上下方向で、前記第2の直線方向が実質的に水平方向であって、前記移動体が、上昇方向、水平方向及び下降方向へ移動できるように、前記案内溝が逆U字状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかるピックアンドプレイス装置の一形態によれば、上記の往復運動機構の前記移動体に、ワークを保持する保持装置部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る往復運動機構及びピックアンドプレイス装置によれば、装置のコンパクト化、構成の簡素化、及び製造コストの低減ができ、移動体の位置決め精度を高めることができるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るピックアンドプレイス装置として用いられる往復運動機構の最良の形態例を添付図面(図1〜8)と共に詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る往復運動機構を示す一部断面を含む側面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A矢視図である。図2は、図1(a)のA−A線から図1(b)とは反対側を見た説明図であり、図3は、図1(a)のB−B矢視図である。図4は、図1の形態例の平面図であり、図5は、図1の形態例の上から見た断面図である。図6は、保持装置部が取り付けられる移動体部分の側から見た側面図であり、図7は、図1(b)のC−C矢視図である。また、図8(a)〜(c)は、移動体の作動状態を説明する正面図である。
この往復運動機構は、移動体10を所定の軌跡に倣って往復移動させる運動機構である。そして、その往復運動機構の移動体10に、ワークを保持する保持装置部60(図2参照)が設けられることで、ピックアンドプレイス装置が構成される。
【0012】
20は二次元運動ガイド部であり、移動体10にかかる第1の直線方向Z及び第2の直線方向Xへの移動を案内する第1移動ガイド21及び第2移動ガイド22を備える(図2参照)。
本形態例の第1移動ガイド21は、上下方向であるZ方向に平行に延設されて基部11に固定された一対の直線ガイド21z、21zによって構成されている。各直線ガイド21zには、一対の直線移動部材23z、23zが摺動可能に装着されている。これにより、いわゆる直動ガイドが形成されている。そして、4個の直線移動部材23zがベース移動板25に固定されている。これにより、ベース移動板25が、上下方向へスムースに移動することができる。
【0013】
このベース移動板25の面上に、一対の直線移動部材24x、24xが、水平方向であるX方向へ直列に固定されている。その一対の直線移動部材24x、24xに、直線ガイド22xが、X方向へスムースに移動できるように嵌っている。そして、この直線ガイド22xは、移動体10の一面に固定されている。従って、ここでは、一対の直線移動部材24x、24xが相対的に第2移動ガイド22を構成しており、直線ガイド22xが移動体10と一体化された構成となっている。
以上のように構成された二次元運動ガイド部20によれば、Z方向とX方向への運動を合成することで、移動体10を所定の平面内で二次元運動させることができる。なお、本発明の往復運動機構にかかる運動平面は、本形態例のZ方向とX方向の合成に限定されず、他の方向の合成による場合が含まれるのは勿論である。すなわち、移動体10の運動方向は、限定されるものではない。
【0014】
12は軸状突起部であり、移動体10から軸状に突起した形態に設けられている。この軸状突起部は、図1(a)に示すように、移動体10の移動平面に対して直交する方向であって、上記の二次元運動ガイド部20が設けられた側とは反対側へ突起している。軸芯部13が移動体10と一体的に固定状態に設けられ、その軸芯部13にカムフォロアーとして機能する第1ベアリング14及び第2ベアリング15が軸方向に並んで嵌っている。
【0015】
30は案内溝であり、軸状突起部12の先端側12aが嵌るように溝状に設けられ、この軸状突起部12を介して、移動体10が所定の軌跡に倣って移動するように案内する。この案内溝30は、移動体10に対面して基部11に設けられている。なお、本形態例の軸状突起部12の先端側12aは、軸芯部13に第1ベアリング14が嵌った形態に構成されている。このため、軸状突起部12は、案内溝30内をスムースに移動できる。このように軸状突起部12が案内溝30に沿って移動するため、移動体10を高速で運動させることができる。
そして、本形態例では、案内溝30の中間部に直線部33が設けられ、移動体10の一方向(X方向)への移動長さを調整できるように、その直線部33が伸縮可能に設けられている。また、前述したように第1の直線方向Zが実質的に上下方向で第2の直線方向Xが実質的に水平方向であって、移動体10が、上昇方向Z、水平方向X及び下降方向Zへ移動できるように、案内溝30が逆U字状に設けられている。
【0016】
案内溝30の水平方向への長さ調整の構造は、図3及び図5に示すように左右に分割された状態に設けられた2枚の溝プレート37、38によって構成されている。各溝プレート37、38の案内溝30の直線部33が設けられた部分において、それぞれが半分の板厚に設けられ、すり合わされた状態に重なり合っている。従って、各溝プレート37、38を適宜X方向へずらして基部11に固定することによって、両者が重なり合う範囲で、案内溝30の水平方向への長さ調整ができる。
なお、39はボルトであり、溝プレート37、38を基部11に固定する。このボルト39は、基部11に設けられた長孔17に挿入され、緩めた状態で溝プレート37、38の位置調整ができるように設けられている。また、18はピンであり、長溝19に嵌って溝プレート37、38の水平方向への変位をガイドする。さらに、70は調整用のネジであって、基部の側壁11aから、各溝プレート37、38の側面へ螺合している。このネジ70を回すことで、溝プレート37、38を水平方向へ変位させる。
【0017】
40は回動円形部材であり、案内溝30に並設されている。本形態例では、案内溝30と移動体10を案内する二次元運動ガイド部20との間に配されている。この回動円形部材40は、その全体形状が対面する案内溝30の全体を覆う大きさの円形に設けられている。また、軸状突起部12が前記円形の径方向へ移動可能に挿通される連携孔45を備え、回動駆動されることで軸状突起部12を介して移動体10を駆動させる。本形態例の連携孔45は径方向に長い長孔に形成され、この連携孔45において回動円形部材40による駆動力が軸状突起部12へ伝達され、移動体10が駆動される。なお、連携孔45は、少なくとも軸芯41aから案内溝30の各部までの距離の最大差分について、軸状突起部12の変位を許容する長さの長孔に設けられている。また、回動円形部材40の形状は、その外周部42によって回動駆動のための動力が伝達されるように、実質的に円形であればよい。
【0018】
本形態例の回動円形部材40は、ホイール状に設けられ、図7に明らかなようにベアリング44を介して軸芯41a(回動軸41)を中心に回動自在に、基部11に軸着されている。さらに具体的には、この回動円形部材40は、タイミングプーリであり、案内溝30に対応してその中心部に位置するよう基部11に軸着されている。
なお、回動円形部材40の支持構造は、本形態例のような回動軸41による構成に限定されるものではない。例えば、回動円形部材40の外周部に3個以上のローラーを接触させて配することで、回動円形部材40を回転自在に支持することができる。
【0019】
また、50は駆動手段であり、回動円形部材40の外周部42へ動力を伝達して、その回動円形部材40を駆動させるものである。
本形態例では、この駆動手段50が、電動モータ52とタイミングベルト55によって構成されている。電動モータ52が基部11に固定され、電動モータ52の出力軸53に固定されたタイミングプーリ54と、回動円形部材40を構成するタイミングプーリとの間にタイミングベルト55が掛け回されている。
なお、電動モータ52は、サーボモータやパルスモータを用いることができ、その電動モータ52を制御するだけで、移動体10の運動を好適に制御できる。また、動力装置としては、電動モータに限定されず、シリンダ装置等を採用できるのは勿論である。
また、ロータリーエンコーダ等の角度位置センサーを回動円形部材40の回転軸41側に設けることで、より精度の高い制御を行うこともできる。
【0020】
ところで、回動円形部材40と駆動手段50の構成はこれに限らず、回動円形部材40の外周部42へ直に動力を伝達する機構であれば、他の構成を用いても良い。例えば、回動円形部材40が歯車であり、駆動手段50が電動モータとピニオンギヤによって構成されていてもよい。また、スチールベルトやチェーンと、スプロケットとによる動力伝達手段を採用することも可能である。
【0021】
このように回動円形部材40の外周部42へ直に動力を伝達する機構によれば、回動円形部材40の大きな外径寸法を利用して、回動角速度を好適に減速することができる。従って、別に減速機構を設ける必要がなく、装置の構成を簡素化でき、製造コストを低減できる。また、回動軸41へ動力を伝達して回動させる機構ではなく、回動軸41に駆動機構が直結される構成にはならない。このため、装置全体をコンパクトに形成することができる。
【0022】
また、回動円形部材40の大径の外周部42における回動距離によって、移動体10の位置が管理できるため、移動体10の位置決め精度を容易に高めることができる。さらに、タイミングベルト55等による回動円形部材40の外周部42における位置決め寸法精度に対して、それより内側に位置する部分の位置決め寸法精度は、相似形状的に高いことになる。本発明においては、回動円形部材40の外形に対して、案内溝30によってガイドされる移動体10の移動範囲は狭く、その位置決め寸法精度は相似形状的に高まる。
【0023】
次に、各構成同士の連携形態等、各構成の形態例について、その詳細を説明する。
先ず、軸状突起部12が回動円形部材40と連携される連携孔45の詳細について説明する。
回動円形部材40は、慣性力の影響を低減させて高速運動ができるように軽量化されている。本形態例では、軽量な材質であるアルミニウムが用いられ、リング状の外周部42を除いて肉厚を削ったホイール状に設計されている。
そして、軸状突起部12が挿通される連携孔45は、第2ベアリング15が接触する内側縁45aに、補強材46が取付けられて補強されている。
なお、連携孔45の内側縁45aに接触する第2ベアリング15に換えて、内側縁45aに沿って回動円形部材40の径方向へ往復摺動できるスリッパー、又は直動ガイドを用い、そのスリッパー又は直動ガイドに軸状突起部12の軸芯部13を回動自在に軸着してもよい。
【0024】
また、本形態例では、直線方向への移動を案内する二つの移動ガイド21、22が積み重ねられて配されることで、二次元運動ガイド部20が設けられている。
そして、その二次元運動ガイド部20と、回動円形部材40及び案内溝30によって構成される駆動機構部とが対面する位置に配され、その間に移動体10が移動可能に連携されて配されている。
これによれば、移動体10が、二次元運動ガイド部20と前記駆動機構部との両者によって挟まれた状態で支持されるため、安定的に運転できる。このため、比較的簡単に構築できる構造であるが、高荷重の高速運転にも好適に対応して高精度の位置決めができる。
【0025】
次に、軸状突起部12の案内溝30に対する機械的遊びを除去し、位置決め精度を向上させる手段について説明する。
65はコイルスプリングであり、軸状突起部12と回動円形部材40との間に弾性部材の一例として装着されている。一端が軸状突起部12の軸芯部13の根元部に掛けられ、他方が回動円形部材40に設けられた取付け部47に掛けられている。なお、取り付け部47は、実質的に、連携孔45と回動円形部材40の軸芯41aとを結ぶ径方向の線上に配されている。軸状突起部12は、移動しても、コイルスプリング65によって常に回動円形部材40の軸芯41aの方向へ付勢される。
これによれば、軸状突起部12を案内溝30の中心寄りの面36へ常に当接させるように付勢することができ、機械的遊びを除去し、位置決め精度を向上できる。
【0026】
なお、本形態例では、コイルスプリング65の引っ張り力を利用して軸状突起部12を一方へ付勢したが、これに限定されるものではない。弾性部材の圧縮力を利用して軸状突起部12を一方へ付勢することで、機械的遊びを除去してもよい。
さらにまた、Z方向とX方向(2方向)のそれぞれについて機械的遊びを除去する手段を設けてもよい。例えば、コイルスプリングの一端を基部11に取り付け、他端をベース移動板25に取り付けてZ方向の機械的遊びを除去し、他のコイルスプリングの一端をベース移動板25に取り付け、他端を移動体10に取り付けてX方向の機械的遊びを除去する。このように機械的遊びを除去することで、位置決め精度をより向上できる。
【0027】
次に、移動体10の運動中の振動の発生を防止し、高速運転が可能となる運動軌跡(案内溝30の形状)について説明する。
本形態例の案内溝30においては、Z軸方向(上下方向)の直線部31、35からX軸方向(水平方向)の直線部33へ連続させる曲線部32、34の形状が、等加速度曲線となっている(図3参照)。つまり、この案内溝30の曲線部32、34によれば、一定の駆動負荷が回動円形部材40から軸状突起部12に連続して伝達される形態となっている。
このため、駆動負荷の変動に起因する振動が発生することを防止でき、好適に高速運転を行うことができる。なお、直線部31、33、35と曲線部32、34とが滑らかなRで連続しており、移動体10はスムースに運動できる。
さらに、運動曲線は、上述した等加速度曲線に限らず、種々の仕様に対応させて他のカム曲線を用いることもできるのは勿論である。
【0028】
また、本形態例の案内溝30においては、回動円形部材40の軸芯41aからの距離について、Z軸方向の直線部31、35よりもX軸方向の直線部33の方が短くなるように設けられている。
これによれば、電動モータ52の特性上、回転数が高くなったところでトルクが低下することを補う効果がある。つまり、X軸方向の直線部33は、移動体10の運動の中間部に対応し、軸状突起部12が最も速く移動する部分であるため、これに対応して電動モータ52の回転速度が速くなる。このため、トルクが低下するが、回動円形部材40の軸芯41aからの距離が短いことで、これを補う作用がある。
このようにトルク特性を補うことで、高荷重に耐えて、移動体10を運動させることができる。従って、より大きな重量がかかるピックアンドプレイス装置にも適用できる。
【0029】
次に、図8に基づいて本発明にかかる往復運動機構の作動状態について説明する。
図8(a)は、移動体10が一方の下降位置に停止した状態を示す正面図である。この状態から、回動円形部材40の回動駆動(右回転)に伴って、軸状突起部12が、案内溝30に案内させて移動される。すると、移動体10は、図8(b)の状態を経由して図8(c)に示す他方の下降位置へ移動して停止する。そして、回動円形部材40を反対方向へ回動駆動(左回転)すれば、移動体10を、案内溝30に案内させて図8(a)の位置へ戻すことができる。
これによれば、上昇移動、水平移動、下降移動の順に移動体10が作動し、ピックアンドプレイスの動作が行われたことになる。
また、この往復運動機構によれば、以上に説明した構成を備えるため、移動体を高速で運動でき、且つその移動体の位置決め精度を向上できる。
【実施例1】
【0030】
次に、本発明に係る往復運動機構の他の形態例(実施例1)について図9に基づいて以下に説明する。図9は、実施例1の往復運動機構を示す正面図(a)及び平面図(b)である。なお、以上に説明した形態例の構成と同等の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
二次元運動ガイド部20の少なくとも一方の移動ガイドが複数の直線ガイドを備え、その直線ガイドが、回動円形部材40の回動軸芯41aを挟んで両側に配されている。本実施例では、第1移動ガイド21が、基部11に固定された一対の直線ガイド21z、21zを備えている。各直線ガイド21zは、上下方向に延設され、軸芯41aを挟んで左右にそれぞれ配設されている。
これによれば、移動体10について、荷重を分散させて安定的に案内できると共に、駆動力をよりバランスよく伝達することができる。従って、移動体10を高速で運動でき、且つその移動体の位置決め精度を向上できる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明に係る往復運動機構の他の形態例(実施例2)について図10〜12に基づいて以下に説明する。図10は、実施例2の往復運動機構を示す正面図(a)及び平面図(b)である。図11は、図10の中央部分で縦方向に破断した縦断面図である。また、図12は、図10の左側部分で縦方向に破断した縦断面図である。なお、以上に説明した形態例の構成と同等の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この往復運動機構は、直線ガイド21zが一対設けられて第2移動ガイド22によるガイド方向にスパンを大きくとって配置され、その直線ガイド21zのそれぞれに沿って移動する各ベース移動板25、25が設けられると共に、その一対のベース移動板25、25に第2移動ガイド22を介して差し渡された長尺の移動体10が設けられ、その移動体10の第1移動ガイド21によるガイド方向について同期機構80を備えている。
実施例2では、実施例1と比較して、一対の直線ガイド21z、21zの配置スパンを大きくとって、ベース移動板25が左右に分割されると共に長尺の移動体10が設けられ、その移動体10の左右の上下動について同期機構80を備えている点が異なる。
なお、実施例1では、各直線移動部材23zが固定されたベース移動板25が、一体的に形成されているため、実施例2のような同期機構を要しない。
【0032】
本実施例の同期機構80は、図に示すように、左右の基部11、11に差し渡されて、その左右の基部11、11に両端部81b、81bで軸芯81aを中心に回動自在に軸着されたシャフト81と、そのシャフト81の両端部81b、81b近傍にそれぞれ軸芯81aに直交する方向に延設された各レバー部82と、そのレバー部82と連携されるようにベース移動板25に設けられたフォーク状の各連携部25aとを備える。なお、シャフト81は、剛性が高いほど優れた同期性能を得られる。このため、直径の大きなパイプ状のシャフトを用いるとよい。
この同期機構80を備える往復運動機構によれば、左右に分割された一対のベース移動板25、25が、シャフト81と一対のレバー部82、82の相互の回動作用によって、上下に同期して移動される。つまり、一対のベース移動板25、25の上下の運動と、シャフト81と一対のレバー部82、82との回動運動が、常に相互に変換され、長尺の移動体10を常に水平に保つように作用する。従って、一対のベース移動板25は一体的に連結されていないが、移動体10は傾くことなく、スムースに上下動できる。これにより、ベース移動板25を軽量化できるため、長尺の移動体10を高速で運動でき、且つその移動体10の位置決め精度を向上できる。
【0033】
なお、同期機構はこれに限定されるものではなく、例えば、シャフト81と、その両端部81b、81b近傍に固定されたピニオンと、そのピニオンが噛合するように左右のベース移動板25、25に固定されたラックとから構成することもできる。また、このような同期機構は、リンク機構を用いて構成することもできる。
以上のような同期機構を備えた往復運動機構によれば、例えば、ワークを保持する保持装置部を長尺の移動体10に複数配設すれば、ワークを連続する複数の加工ステーションへ順次供給(排出)するワーク送り装置において、その往復運動機構として好適に用いることができる。なお、ワークを保持する保持装置部としては、例えば、チャック装置や吸引吸着装置を好適に用いることができる。
【0034】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る往復運動機構の形態例を示す一部断面を含む側面図である。
【図2】図1(a)のA−A線から二次元運動ガイド部側を見た説明図である。
【図3】図1(a)のB−B矢視図である。
【図4】図1の形態例の平面図である。
【図5】図1の形態例の上から見た断面図である。
【図6】保持装置部が取り付けられる移動体部分の側から見た側面図である。
【図7】図1(b)のC−C矢視図である。
【図8】移動体の作動状態を説明する正面図である。
【図9】実施例1の往復運動機構を示す正面図(a)及び平面図(b)である。
【図10】実施例2の往復運動機構を示す正面図(a)及び平面図(b)である。
【図11】図10の中央部分で縦方向に破断した縦断面図である。
【図12】図10の左側部分で縦方向に破断した縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 移動体
12 軸状突起部
12a 先端側
20 二次元運動ガイド部
21 第1移動ガイド
22 第2移動ガイド
30 案内溝
33 直線部
40 回動円形部材
42 外周部
45 連携孔
50 駆動手段
52 電動モータ
53 駆動軸
55 タイミングベルト
60 保持装置部
70 調整用のネジ
80 同期機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を所定の軌跡に倣って往復移動させる運動機構であって、
前記移動体にかかる第1の直線方向及び第2の直線方向への移動を案内する第1移動ガイド及び第2移動ガイドを備える二次元運動ガイド部と、
前記移動体から軸状に突起した形態に設けられた軸状突起部と、
前記軸状突起部の先端側が嵌るように溝状に設けられ、前記移動体が所定の軌跡に倣って移動するように案内する案内溝と、
該案内溝に並設され、該案内溝の全体を覆う大きさの円形に設けられ、前記軸状突起部が前記円形の径方向へ移動可能に挿通される連携孔を備え、回動駆動されることで前記軸状突起部を介して前記移動体を駆動させる回動円形部材と、
前記回動円形部材の外周部へ動力を伝達して、該回動円形部材を駆動させる駆動手段とを具備することを特徴とする往復運動機構。
【請求項2】
前記回動円形部材がタイミングプーリであり、前記駆動手段が電動モータとタイミングベルトによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の往復運動機構。
【請求項3】
前記回動円形部材が歯車であり、前記駆動手段が電動モータとピニオンギヤによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の往復運動機構。
【請求項4】
前記案内溝の中間部に直線部が設けられ、前記移動体の一方向への移動長さを調整できるように、前記直線部が伸縮可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の往復運動機構。
【請求項5】
前記二次元運動ガイド部の少なくとも一方の移動ガイドが複数の直線ガイドを備え、該直線ガイドが、前記回動円形部材の回動軸芯を挟んで両側に配されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の往復運動機構。
【請求項6】
前記直線ガイドが一対設けられて他方の移動ガイドによるガイド方向にスパンを大きくとって配置され、該直線ガイドのそれぞれに沿って移動する各ベース移動板が設けられると共に、該一対のベース移動板に他方の移動ガイドを介して差し渡された長尺の移動体が設けられ、該移動体の一方の移動ガイドによるガイド方向について同期機構を備えていることを特徴とする請求項5記載の往復運動機構。
【請求項7】
前記第1の直線方向が実質的に上下方向で、前記第2の直線方向が実質的に水平方向であって、前記移動体が、上昇方向、水平方向及び下降方向へ移動できるように、前記案内溝が逆U字状に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の往復運動機構。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の往復運動機構の前記移動体に、ワークを保持する保持装置部が設けられたことを特徴とするピックアンドプレイス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−24511(P2008−24511A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161915(P2007−161915)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(506054486)有限会社メック (8)
【Fターム(参考)】