説明

後端部にリブを有すトレイを備えたディスク装置

【課題】 トレイにディスクをセットして搬入し、ディスク再生位置にて上昇するターンテーブルに搬入されたディスクを載置すると共にクランパーにてクランプするディスク装置であって、トレイ後端部中央の強度を高めることが出来る一方で、寸法拡大を招くことのないディスク装置の提供。
【解決手段】 トレイ11の後端部中央には前後方向に延びる2本のリブ17a,17bを所定の距離をおいて起立して設けると共に該リブ17a,17bの前後端には傾斜面19a,19bを形成している。リブ17a,17bがクランパー22の位置を通過する際には該クランパー22を押上げることが出来ると共にクランパー支持部29に当たらないようにクランパー22の押え板外周部に係合可能とし、そしてディスク交換位置へ搬出された状態では上記リブ17a,17bがクランパー22から離れることが出来るトレイ長さとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレイを備えたディスク装置に関し、特にディスクを搬送するトレイが変形/破壊する危険性を緩和する為の補強を備えたディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置ではディスクをターンテーブルに装着して回転することで、記録・再生が行われるが、上記ターンテーブルへの装着手段には色々ある。最も代表的な装着手段は、トレイを用いる方法であり、装置の正面に設けた開口から出入りするトレイにディスクをセットして装置内へ搬入し、上記ターンテーブルに装着される。すなわち、トレイに載置したディスクは装置内に搬入され、ターンテーブルとクランパーとの間に挟まれて回転し、回転と共に光ピックアップが移動して記録情報の再生が行われる。
【0003】
又、装置正面に設けた開口からディスクを直接挿入することで、装置内に設けている引き込み装置によりディスクを引き込んでターンテーブルに装着することも出来る。この引き込み装置にも色々あり、開口奥の両側にベルトを取付けてディスクを挟み、該ベルトの走行と共にディスクを引き込むことが出来る。一方、回転ローラーを装着してディスクを挟み、該ローラーの回転と共に装置内へ引き込むように構成したディスク装置も知られている。
【0004】
ところで、ターンテーブルへの何れの装着手段であっても、ディスクが装置内へ搬入される場合に、該ターンテーブルが中央に位置していたのではディスクが該ターンテーブルと干渉してしまう。従って、ターンテーブル及びターンテーブルを回転駆動するスピンドルモータ、ディスクの記録信号情報を読み取るピックアップユニットはトラバースユニットに装着され、該トラバースユニットは後方を支点として揺動できるように取付けられ、装置内に搬入されたディスクが所定の位置に達したところで、トラバースユニットは揺動・上昇してディスクをクランパーとの間で挟み込んで装着することが出来る。
【0005】
ところで、本発明が対象とするディスク装置はトレイを装着した型式であるが、該トレイを装着することでディスク装置の寸法、特に厚さ寸法(高さ寸法)が大きく成ってしまう。そこで、トレイの厚さを出来る限り薄くするような形態としている。しかし、薄く成り過ぎたのではトレイの強度並びに剛性が低下してしまうことから、厚さ寸法は強度並びに剛性とのバランスを考慮して決められている。特に、トレイ後端部中央はトレイの搬送に際してクランパー及びターンテーブルに干渉しないように薄く成っている。
【0006】
図7は従来のトレイを表している。該トレイ1は概略長方形を成して、上面側にはディスクがセットされる円形凹部2a,2bが同心を成して形成され、そして中央部には概略長方形の開口3を有している。又、下面両側にはガイド溝4a,4bが前後方向に沿設され、下面にはピニオンギアに噛合うラックギア5が設けられている。そして、トレイ後端部中央は薄く成っていると共に上面を低くする為に段差が形成されている。
【0007】
これは、トレイが搬送される際に、ターンテーブルとでディスクを挟み込んで回転するクランパーと干渉しない為に段差をもって上面の位置を下げている。トレイ後端部中央はこのように段差を形成しているが、上側にはクランパーが位置し、下側にはターンテーブルが位置することで補強用のリブを設けることは出来ない。従って、トレイの他の部分の強度並びに剛性が十分であっても、後端部中央での強度が低い為に、トレイ全体の強度は低く成ってしまい、該トレイに反りが発生する。
【0008】
特開平10−275390号に係る「ディスクトレイを備えたディスク駆動装置」は、ディスクトレイの強度を十分に高め、反りを防止することが可能な形態としている。すなわち、ディスクが載置されるディスク載置部を有すディスクトレイに、ディスク再生位置からディスク着脱位置に移動する際にディスククランパと接触して、ディスククランパを上方に変位させてディスクトレイの移動の障害にならないようにするディスククランパ変位手段を設けている。
【0009】
上記ディスククランパ変位手段は傾斜面と水平な補強部から成って、トレイ上面から突出している為に、ディスクトレイの後端部中央の強度は高くなる。しかも、該補強部は傾斜面を形成している為にディスクトレイの移動に伴ってディスククランパは持ち上げられる為に、該ディスクトレイの搬出移動には何ら障害とならない。
【0010】
しかし、該ディスク駆動装置の場合、ディスククランパはその下面がディスククランパ変位手段に当たって大きく押上げられることから、ディスク駆動装置の高さ寸法はその分だけ大きく成ってしまう。又、ディスクトレイがディスク交換位置まで搬出された状態では、ディスククランパがディスククランパ変位手段の水平な補強部に載っており、すなわちトレイ後端部はディスククランパから離れないように該ディスクトレイは長く成っている。その結果ディスク駆動装置全体の長さ寸法(奥行き寸法)が大きく成ってしまい、コンパクトなディスク駆動装置とは成り得ない。
【特許文献1】特開平10−275390号に係る「ディスクトレイを備えたディスク駆動装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように従来のディスク装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、トレイ後端部中央の強度を高めることが出来る一方で、寸法拡大を招くことのないディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るディスク装置はディスクを載置して搬入・搬出するトレイを備え、該トレイの往復スライド運動に伴ってトラバースユニットが上下動することが出来るように構成している。そして、トレイの後端部中央には所定の間隔をおいて前後方向に延びてクランパーを押上げる2本のリブを起立している。その為にトレイの後端部に薄肉の段差を設ける必要がなくなり、トレイ自体の強度は高くなる。そこで、該トレイが移動する場合、クランパーの押え板外周部に干渉して該クランパーを押上げることが出来る。
【0013】
本発明では、クランパーが大きく持ち上げることがないように、所定の距離を隔てて設けた2本のリブを設け、該リブはクランパーの押え板外周部だけ干渉することが出来る。すなわち、押え板中央部に形成している凸部には干渉しない構造としている。しかも、リブの前後端は傾斜していてクランパーの押え板外周部に干渉して押上げ易くしている。そして、本発明ではトレイがディスク交換位置まで搬出された場合、トレイ後端部のリブはクランパーから離れてしまう寸法と成っている。従って、クランパーは降下するが、トレイが後退する際には傾斜面に沿って再び押上げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るディスク装置では、そのトレイ後端部中央に2本のリブを起立して設けている為に、該トレイ後端部に薄肉の段差を設ける必要がなく、トレイ自体の強度は高くなる。従って、トレイ全体の強度バランスが保たれる為にトレイの反りは防止される。このように、本発明ではトレイ後端部に2本のリブを起立するが、ディスク装置としての寸法拡大をもたらすことはない。すなわち、2本のリブは所定の距離を隔てて設けられ、トレイが移動する際にはリブがクランパーの押え板外周部に干渉して該クランパーを僅かに持ち上げることが出来る。しかも、リブの前後端には傾斜面が形成されることで、クランパーの押え板外周部がリブの傾斜面に当たることでスムーズに押上げられ、リブが通過すればクランパーの自重により降下する。
【実施例】
【0015】
図1はディスク装置を示す外観図である。正面中央部にはディスクを載置して出し入れするトレイ11が突出し、また複数のプッシュボタン12a,12b・・が備わっている。ここで、上記プッシュボタン12a,12b・・の機能は特に限定することはないが、例えばディスク装置の場合、12aは再生ボタン、12bは早戻しボタン、12cは早送りボタン、12dはスキップボタン、12eはトレイオープン/クローズボタンとして機能させることが出来る。
【0016】
そして、これらプッシュボタン12a,12b・・の配置は自由であり、フロントパネルの外観要素の1つとしてデザインされる。ここで、ディスク装置の正面には化粧板13が貼着され、この化粧板13は同図に示しているようにキャビネット14と同じ大きさを成し、キャビネット14の縁が表面化しないことでディスク装置の正面意匠が向上するデザインとなっている。
【0017】
同図に示すトレイ11はディスク交換位置に突出しており、該トレイ11にディスクをセットして装置内へ搬入されるが、トレイ11の両側下面にはガイド溝が設けられると共に、該ガイド溝にフレーム本体から起立するボスが遊嵌することでトレイ11はボスをガイドとしてスライドすることが出来る。
【0018】
図2は本発明のディスク装置を構成するトレイを単独で表している。該トレイ11は概略長方形を成し、上面にはディスクがセットされる円形凹部15a,15bが形成され、中央には概略長方形の開口16を形成し、その基本形態は前記図7に示した従来のトレイと同じである。しかし、本発明のこの実施例で示すトレイ11は後端部中央に2本のリブ17a,17bを形成している。リブ17a,17bは開口16の縁18からトレイ後端まで前後方向に延び、2本のリブ17a、17bは所定の距離を隔てて設けられ、前後端には傾斜面19a,19a,19b,19bを有している。
【0019】
図3は上記トレイ11とトラバースユニットに設けられスピンドルモータ20及び該スピンドルモータ20の主軸に取着されているターンテーブル21、そしてフレーム本体に設けられているクランパー22を表示している。同図に示すクランパー22及びターンテーブル21とトレイ11との位置関係は、該トレイ11が搬出されてディスク交換位置にある場合である。このように、ディスク交換位置では、特開平10−275390号に係る「ディスクトレイを備えたディスク駆動装置」の場合とは異なり、トレイ後端部はクランパー22から離れてしまう。すなわち、クランパー22から離れてしまうトレイ長さとしている為に、ディスク装置の奥行き長さは短くなる。
【0020】
ターンテーブル21とクランパー22によって挟まれたディスクは、トラバースユニットが降下するならば、スピンドルモータ20と共にターンテーブル21は降下し、ターンテーブル21に載置されているディスクも降下してトレイ11に載せられる。そしてトレイ11に載ったディスクは該トレイ11によって同図に示すディスク交換位置へ搬出される。
【0021】
この状態でディスクをトレイ11から取外して別のディスクをトレイ11の円形凹部15a,15bにセットすることが出来、そしてトレイ11の先端を押圧するならばモーターが駆動してピニオンギアが回転し、ピニオンギアと噛合っているラックギアと共にトレイ11を装置内へ搬入する。
【0022】
この場合、トレイ11はターンテーブル21とクランパー22の間に残されている僅かな空間23を移動し、装置内の再生位置へ搬入されるが、トレイ11の搬入に際してクランパー22はトレイ後端部に起立して形成したリブ17a,17bに当たって押上げられる。図4はトレイ11が搬入動作を開始してトレイ後端部に起立して設けたリブ17a,17bによってクランパー22が押上げられた場合を示している。ここで、ターンテーブル21はトレイ底に干渉しないように降下している。
【0023】
リブ17a,17bの後方端は傾斜した傾斜面19a,19bを有している為に、クランパー22から離れたトレイ11が搬入する際には、クランパー22はこの傾斜面19a,19bに当たって押上げられ、リブ17a,17bが通過したところで、図5に示すように再び降下する。そしてディスク再生位置に達したところでトラバースユニットが上昇するならば、ターンテーブル21も上昇してディスクを載置すると共に、さらに上昇するならばクランパー22とでディスクが挟み込まれてクランプされる。
【0024】
図6はクランパー22がリブ17a,17bによって押上げられている場合を示している。該クランパー22は円形の上板24と押え板25から成り、押え板25に設けているL形カギ26,26・・が上板24に形成している係止片27,27・・に係止して組み合わされている。そして、上板24と押え板25との間は所定空間28を有し、上板24はフレームのL形断面のクランパー支持部29に載って支えられる。しかも、L形断面のクランパー支持部29は上板24を拘束する位置決め効果も備えている。
【0025】
クランパー22の押え板25の中央部には凸部30が下方へ突出しているが、該凸部30の外周は傾斜していてターンテーブル21に載置されたディスクの穴に嵌って位置決めされる。そして、図6から明らかなように両リブ17a,17bには押え板25の外周部が載って支持され、中央凸部30には接していない。すなわち、前記特開平10−275390号に係る「ディスクトレイを備えたディスク駆動装置」に表したように凸部30の底を押上げるものではなく、クランパー22の上昇距離は大きくならない。その結果、ディスク装置の高さ寸法の拡大を抑制することが出来る。
【0026】
そして、トレイ11が移動してリブ17a,17bが通過した後ではクランパー22は降下して上板24の外周がクランパー支持部29に係止して支持される。又、ディスクを載置したターンテーブル21が上昇してクランパー22を押上げてクランプされた状態では、クランパー支持部29が上板24と押え板25との間の空間28に位置し、クランパー22がディスクと共に回転する際には該クランパー支持部29に接触しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ディスク装置の正面斜視図。
【図2】トレイの実施例。
【図3】トレイがディスク交換位置に搬出されている状態での、該トレイとターンテーブル及びクランパーの位置関係。
【図4】トレイ一部搬入されて、トレイ後端部のリブにてクランパーが押上げられた場合。
【図5】トレイがさらに搬入されて、クランパーがリブから離れた場合。
【図6】クランパーがトレイ後端部のリブに載っている場合。
【図7】従来のトレイを示す具体例。
【符号の説明】
【0028】
11 トレイ
12 プッシュボタン
13 化粧板
14 キャビネット
15 円形凹部
16 開口
17 リブ
18 縁
19 傾斜面
20 スピンドルモータ
21 ターンテーブル
22 クランパー
23 空間
24 上板
25 押え板
26 L形カギ
27 係止片
28 空間
29 クランパー支持部
30 凸部


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイにディスクを載置して搬入し、ディスク再生位置にて上昇するターンテーブルによってトレイと共に搬入されたディスクを持ち上げ、該ターンテーブルと対向して配置したクランパーと該ターンテーブルとでディスクを狭持する構成としたディスク装置において、トレイの後端部には前後方向に延びるリブを起立して設けると共に該リブの前後端には傾斜面を形成し、該リブがクランパーの位置を通過する際には該クランパーを押上げることを特徴とする後端部にリブを有すトレイを備えたディスク装置。
【請求項2】
上記トレイ後端部のリブは所定の距離をおいて2本形成し、該リブがクランパーの押え板外周部に当接可能とした請求項1に記載の後端部にリブを有すトレイを備えたディスク装置。
【請求項3】
上記トレイがディスク交換位置へ搬出された状態では該リブがクランパーから離れることが出来るトレイ長さとした請求項1、又は請求項2に記載の後端部にリブを有すトレイを備えたディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−155768(P2006−155768A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345805(P2004−345805)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(390001959)オリオン電機株式会社 (427)
【Fターム(参考)】