説明

後部車体構造

【課題】 車体重量の増加を最小限に抑え、効果的にテールゲート取付開口部の周縁の強度剛性を高めることができる後部車体構造を提供する。
【解決手段】 テールゲート取付開口部1の周縁を全周に渡って閉断面構造に形成し、この閉断面構造部とルーフサイドインナ40とをつなぐ連結部材41を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、バン型車両のバックドアであるテールゲートの取付開口部の周縁の強度剛性を高めることができる後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からバン型車両においては、車体後部のテールゲート取付部に強度剛性上不利な比較的大きい開口部が形成されるため、このテールゲート取付開口部の周縁を変形し難くした構造が知られている。
例えば、テールゲート取付開口部の周縁部の上辺部から側辺部にかけて、また、側辺部から下辺部にかけて閉断面構造部を形成して、接続部の剛性を高めるようにしつつテールゲート取付開口部の周縁の剛性を全体として高めている。
【特許文献1】特開2003−104239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで近年、車室内での快適性を高めるべく、車体振動、こもり音発生をより確実に防止するために、車体剛性の更なる向上が要求されてきている。とりわけ、前記テールゲート取付開口部の周縁には、テールゲートが電動で開閉するような構造が提案されるようになってきていることもあり、より一層の強度剛性向上が要求されている。しかしながら、単純に板厚を増加させるなどの対策では、テールゲート回りの重量が増加しその結果燃費向上に逆行するという問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、車体重量の増加を最小限に抑え、効果的にテールゲート取付開口部周縁の強度剛性を高めることができる後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、テールゲート取付開口部(例えば、実施形態におけるテールゲート取付開口部1)の周縁を全周に渡って閉断面構造に形成し、この閉断面構造部(例えば、実施形態における上部閉断面構造部H、左右閉断面構造部L,R、下部閉断面構造部U)とルーフサイド(例えば、実施形態におけるルーフサイドインナ40)とをつなぐ連結部材(例えば、実施形態における連結部材41)を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、テールゲート取付開口部に作用するテールゲートからの荷重を連結部材を介して車体側部の骨格部であるルーフサイドに荷重分担させることが可能となる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記連結部材にテールゲートヒンジ(例えば、実施形態におけるテールゲートヒンジ4)の取付部(例えば、実施形態における取付孔3,3)を設定したことを特徴とする。
このように構成することで、前記テールゲートヒンジから作用する荷重をルーフサイドに分担させる連結部材をテールゲートヒンジの取付部材として有効利用できる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記テールゲートヒンジの取付部を前記閉断面構造部と連結部材の重合部(例えば、実施形態における重合部RA)に設けたことを特徴とする。
このように構成することで、前記テールゲートヒンジに支持されるテールゲートからの荷重を連結部材と閉断面構造部とに偏りなく作用させることができる。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記連結部材はルーフ(例えば、実施形態におけるルーフ35)後部にルーフサイドインナ(例えば、実施形態におけるルーフサイドインナ40)との間に連結閉断面構造部(例えば、実施形態における連結閉断面構造部X)を形成し、この連結閉断面構造部を前記閉断面構造部の側辺部(例えば、実施形態における左右閉断面構造部L,R)に沿うようにしてルーフサイドに接続したことを特徴とする。
このように構成することで、前記閉断面構造部の側辺部から入力された荷重を前記閉断面構造部の上辺部と前記連結閉断面構造部とに振り分けて伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、テールゲート取付開口部の周縁に作用するテールゲートからの荷重を連結部材を介して車体側部の骨格部であるルーフサイドに荷重分担させることが可能となるため、テールゲート回りの車体剛性の向上を図ることができる効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明は、前記テールゲートヒンジから作用する荷重をルーフサイドに分担させる連結部材をテールゲートヒンジの取付部材として有効利用できるため、別途ヒンジブラケットを設ける必要がなくなり、車体重量の増加を抑え燃費向上を図ることができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、前記テールゲートヒンジに支持されるテールゲートからの荷重を連結部材と閉断面構造部とに偏りなく作用させることができることができるため、上記荷重をルーフサイドとテールゲート取付開口部の周縁へ均等に伝達することができる。
【0012】
請求項4に記載した発明は、前記閉断面構造部の側辺部から入力された荷重を前記閉断面構造部の上辺部と前記連結閉断面構造部とに振り分けて伝達することが可能となるため、各部にかかる負担が軽減され、テールゲート回りの車体剛性の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施形態のバン型車両の後部車体構造を示すものである。
同図において、車体後部にはテールゲート取付開口部1が形成され、ここにバックドアであるテールゲート2が後述する連結部材41の取付孔3に取り付けられたテールゲートヒンジ4を中心にして上下方向に開閉可能に取り付けられている。
【0014】
前記テールゲート取付開口部1の周縁は全周に渡って閉断面構造に形成され、車体後部の強度剛性を高めると共にテールゲート2の支持剛性を確保している。
具体的に説明すると、テールゲート取付開口部1の下辺部では、図2に示すように、L型断面形状に形成されたリヤスティフナ5とリヤパネル6とで下部閉断面構造部Uが形成されている。このリヤスティフナ5の後縁フランジ部7と下縁フランジ部8とにリヤパネル6の後縁フランジ部9と下壁部10とを接合して下部閉断面構造部Uが形成されている。尚、リヤパネル6の下壁部10の下縁11にはフロアパネル12の後縁フランジ部13が接合されている。
【0015】
そして、前記テールゲート取付開口部1の下辺部は、左右の端部で上方に立ち上がり、例えば、図3に示すようにテールゲート取付開口部1の左側の側辺部の左閉断面構造部Lに連続形成されている。
【0016】
即ち、図3に示す下部閉断面構造部Uと左閉断面構造部Lとの接続部15においては、左閉断面構造部Lを構成するリヤインナ16の下縁と下部閉断面構造部Uを構成するリヤスティフナ5の側縁とを接合すると共に左閉断面構造部Lを構成するリヤピラースティフナ17の下縁と下部閉断面構造部Uを構成するリヤパネル6の側縁とを接合して、左閉断面構造部Lと下部閉断面構造部Uとが連続して接合されている。ここで、左閉断面構造部Lの外側壁は車体後部側壁を構成するアウターパネル18で形成されている。尚、テールゲート取付開口部1の右側の側辺部にも左閉断面構造部Lと同様の構成の右閉断面構造部Rが形成され、この右閉断面構造部Rにも同様に下部閉断面構造部Uの右側部が接合されているが、左右逆である以外は同様の構造であるので説明は省略する(以下同様)。
【0017】
テールゲート取付開口部1の左側の側辺部では、図4に示すように、リヤインナ16には上部からリヤピラースティフナ17の両側縁フランジ部19,20をリヤインナ16の車幅方向中央部と内側縁21とに接合し、これらリヤインナ16とリヤピラースティフナ17により左閉断面構造部Lが形成されている。この左閉断面構造部Lが前記下部閉断面構造部Uと連続しているのである。また、リヤピラースティフナ17の内側縁フランジ部20にはリヤガータ22の内側縁フランジ部23が接合され、このリヤガータ22の外側縁部24は立ち上げ形成され、ここにアウターパネル18の内側縁フランジ部25が接合されている。そして、このアウターパネル18の外側縁フランジ部26にはリヤインナ16の外側縁フランジ部27が接合されている。
【0018】
そして、このように構成された左閉断面構造部Lがその上部で内側に湾曲して、図5に示すようにリヤレールロア30とリヤレールアッパ31とで形成された上部閉断面構造部Hに連続形成されている。具体的にはリヤレールロア30の後縁部32にハット型断面形状のリヤレールアッパ31の後縁フランジ部33を接合し、リヤレールロア30の前後方向略中央部にリヤレールアッパ31の前縁フランジ部34を接合して上部閉断面構造部Hが形成されている。
【0019】
ここで、図6に示すように、前記リヤピラースティフナ17は前記左閉断面構造部Lから上部閉断面構造部Hに至るコーナー部分では内側に湾曲した形状に形成され、スムーズに前記左閉断面構造部Lから上部閉断面構造部Hに移行できるようになっている。尚、リヤピラースティフナ17は前記コーナー部分では分割構成されて上記上部閉断面構造部Hに接続されている。そして、図5において、ルーフ35の後部を構成するリヤレールロア30の後縁部32とリヤレールアッパ31の後縁フランジ部33とにはルーフ35の後縁フランジ部36が接合されている。
【0020】
図6に示すように、前記左閉断面構造部Lのコーナー部分にはルーフサイドインナ40に至る部位をつなぐ連結部材41が設けられている。尚、このルーフサイドインナ40は、前記ルーフ35の後部に回り込むようにして形成され、図6に示す境界部分で前記リヤレールロア30に接続される部材である。具体的には連結部材41はハット型断面形状に形成された部材(断面形状を鎖線で示す)で、外側フランジ部42をルーフサイドインナ40に溶接接合され、車室外側の縦壁43を前記ルーフサイドインナ40の縦壁44とリヤピラースティフナ17の縦壁45に沿って形成し、上壁46の前縁47はルーフサイドインナ40の前側縁フランジ部48に接合されている。また、車室内側の縦壁49にはルーフサイドインナ40の縦壁50及び底壁51に接合されるフランジ部52が設けられている。したがって、この連結部材41とルーフサイドインナ40の底壁51との間に前記左閉断面構造部Lのコーナー部分から分岐するようにして前記左閉断面構造部Lに連なる連結閉断面構造部Xが形成されることとなる。
【0021】
そして、前記連結部材41の上壁46にテールゲートヒンジ4の取付孔3,3が形成されている。ここで、前記取付孔3,3のうち下側の取付孔3はリヤピラースティフナ17の上壁53との重合部RA(ハッチングで示す)に形成されている。また、前記連結部材41の上壁46には前記取付孔3,3の周囲がやや高くなった、取付座54が形成されている。
【0022】
したがって、図6(鎖線で示す)及び図7〜図10に示すように、ルーフサイドインナ40からリヤピラースティフナ17に渡る部位にアウターパネル18が接合されると、図7に示すようにルーフサイドインナ40とアウターパネル18とで形成された部位と、図8に示すようにリヤインナ16と連結部材41の縦壁43とアウターパネル18とで形成された部位と、図9に示すようにリヤインナ16とリヤピラースティフナ17の縦壁45とリヤガータ22とアウターパネル18とで形成された部位とに渡って、閉断面構造部Yが形成される。その結果、この閉断面構造部Yに沿うようにして前記左閉断面構造部Lとこれに連なる前記連結閉断面構造部Xとが隣接して重合配置されることとなる。
【0023】
上記実施形態によれば、テールゲート取付開口部1の周縁を上部閉断面構造部Hと両側部の左右閉断面構造部L,Rと下部閉断面構造部Uとで連続的に全周に渡って閉断面構造に形成してテールゲート取付開口部1の周縁の強度剛性を高めることができると共に、前記左右閉断面構造部L,Rの上部コーナー部分をルーフサイドインナ40につなぐ連結部材41を設けたことにより、テールゲート取付開口部1に作用するテールゲート2からの荷重を連結部材41を介して車体側部の骨格部であるルーフサイドの閉断面構造部Yに荷重分担させることができる。その結果、テールゲート2回りの車体剛性の向上を図ることができる。
【0024】
また、前記連結部材41にはテールゲートヒンジ4の取付孔3,3が設定されているため、前記テールゲートヒンジ4から作用する荷重をルーフサイドに分担させる連結部材41をテールゲートヒンジ4の取付部材として有効利用でき、したがって、別途ヒンジブラケットを設ける必要がなくなり、その分だけ車体重量を軽減できる。
【0025】
そして、前記テールゲートヒンジ4の取付孔3のうち下側の取付孔3を左右閉断面構造部L,Rと連結部材41の重合部RAに設けたことにより、前記テールゲートヒンジ4に支持されるテールゲート2からの荷重を連結閉断面構造部Xと左右閉断面構造部L,Rとに偏りなく作用させることができる。よって、上記荷重をルーフサイドの閉断面構造部Yとテールゲート取付開口部1の周縁の閉断面構造部へ均等に伝達することができ車体の強度剛性上有利となる。
【0026】
更に、前記連結部材41はルーフ35の後部に車幅方向に設けたルーフサイドインナ40との間に連結閉断面構造部Xを形成し、この連結閉断面構造部Xを前記左右閉断面構造部L,Rに沿うようにしてルーフサイドインナ40に接続したことで、前記左右閉断面構造部L,Rから入力された荷重を前記上部閉断面構造部Hと前記連結閉断面構造部Xとに振り分けて伝達することが可能となる。よって、各部にかかる負担が軽減され、テールゲート2回りの車体剛性の向上を図ることができる。とりわけ、前記連結閉断面構造部Xを前記左右閉断面構造部L,Rとは、ルーフサイド部分から後方に向かう閉断面構造部Yに隣接して重合されるため、この閉断面構造部Yにも確実に荷重分担されることもあり、テールゲート2回りの車体剛性の向上を図ることができる。
【0027】
そして、前記テールゲートヒンジ4はアウターパネル18の取付基準となる連結部材41に取り付けるようにしたため、例えば、リヤレールロア30、リヤレールアッパ31等のように、後において取り付けられ累積誤差を含みやすいルーフ35にテールゲートヒンジ4を取り付けた場合に比較して、アウターパネル18との誤差が殆どなくなり、したがって、建て付け精度を高め組み付け容易性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施形態の車両後部の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】左下の接続部を車室内側から見た図である。
【図4】図1の4−4線に沿う断面図である。
【図5】図1の5−5線に沿う断面図である。
【図6】テールゲート取付開口部の左上の斜視図である。
【図7】図6の7−7線に沿う断面図である。
【図8】図6の8−8線に沿う断面図である。
【図9】図6の9−9線に沿う断面図である。
【図10】図1の10−10線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 テールゲート取付開口部
3 取付孔(取付部)
4 テールゲートヒンジ
35 ルーフ
40 ルーフサイドインナ(ルーフサイド)
41 連結部材
RA 重合部
H 上部閉断面構造部
L,R 左右閉断面構造部
U 下部閉断面構造部
X 連結閉断面構造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テールゲート取付開口部の周縁を全周に渡って閉断面構造に形成し、この閉断面構造部とルーフサイドとをつなぐ連結部材を設けたことを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
前記連結部材にテールゲートヒンジの取付部を設定したことを特徴とする請求項1記載の後部車体構造。
【請求項3】
前記テールゲートヒンジの取付部を閉断面構造部と連結部材の重合部に設けたことを特徴とする請求項2記載の後部車体構造。
【請求項4】
前記連結部材はルーフ後部にルーフサイドインナとの間に連結閉断面構造部を形成し、この連結閉断面構造部を前記閉断面構造部の側辺部に沿うようにしてルーフサイドに接続したことを特徴とする請求項1記載の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−15904(P2006−15904A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196654(P2004−196654)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】