説明

徐放組成物

本明細書中に開示される組成物は、多岐にわたる疾患の処置のための徐放治療法として用いるためのものである。特に、上記組成物は、水溶性生理活性物質、有機イオンおよびポリマーを提供し、ここでその生理活性物質が、最小限の分解産物と共に長時間にわたって効果的に放出される。生じた徐放組成物は、高薬物含有量、および放出後における非分解性生理活性物質の優勢によって、用量容積を減少した投与を可能にする。さらに、本発明の組成物は、長期の持続性放出が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、水溶性生理活性物質、有機イオンおよびポリマーを含む徐放組成物に関連し、その生理活性物質の含有量は、有機イオンの非存在下より約2倍〜4倍高い。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
現在、種々の生理活性物質(例えば、GnRH類似物、ヒト成長ホルモン、リスペリドン、および酢酸オクトレオチドを例とするソマトスタチン類似物)を含む市場において、多くの徐放処方物が存在する。そのような処方物は、医師および獣医師、ならびに彼らの患者に好まれる。なぜなら、そのような処方物は、複数回の注射の必要性を減少するからである。不幸にも、多くの一般的な生理活性物質がその実質的な水溶性に起因して、徐放組成物に適した候補ではないという、徐放組成物についての処方物に関連する多くの問題が存在する。高い溶解性の生理活性物質の使用は、低薬物含有量、および水溶液との接触(例えば、患者への投与によってか、または生理的媒体への導入による)における生理活性物質の好ましくない「破裂」を生じ得、多くの場合、そのことは、実施において達成可能な生理活性物質の使用可能な含有量を制限する。
【0003】
水溶性の問題を解決する種々の方法が、いくつかの成功を伴って考案されてきた。そのような試みの1つは、Orsoliniらによる特許文献1に開示される。Orsoliniは、水溶性ペプチドを、持続性放出組成物におけるそれらのカプセル化の前に、そのペプチドの、パモ酸、タンニン酸またはステアリン酸の非水溶性付加塩に変換した。次いで、ポリマーマトリックス内のカプセル化は、ポリマー溶液中の非水溶性ペプチドの分散、および押出法または扱いにくいコアセルベーション法のいずれかを介する徐放組成物の形成によって行われる。このアプローチの不都合な点の1つは、ポリマーマトリックス内のカプセル化の前に、非水溶性付加塩を得る必要があることである。さらに、本研究において、マイクロ粒子を形成するエマルジョンプロセスに、予備形成された付加塩が利用される場合、水性生理的緩衝液中に置いた上記組成物からの、改変したペプチドまたは分解したペプチドの相当な量の放出を生じることが見出された。改変は、生理活性物質の好ましくないアシル化の形態であった。
【特許文献1】米国特許第5,776,885号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高薬物負荷、投与上での低破裂効果、および生理活性物質の最小限の分解を有する徐放組成物は、ヒトの治療または獣医学上の治療としての組成物のそれらの型の利益を実現するために、非常に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
ここに、活性物質を長時間放出する、濃縮した低用量容積形態で投与可能な徐放組成物が、最初に生理活性物質を水溶性形態に変換しない水溶性生理活性物質から生じ得ることが見出された。この発見は、水溶性生理活性物質が、持続性放出組成物を形成する前に何らかの方法で操作される(例えば、その生理活性物質に水溶性を与える)必要があることを示唆した、この分野における先の研究と、正反対である。さらに、先の組成物において必要とされる変換プロセスは、高い割合の上記生理活性物質の分解を生じるのに対し、本発明の組成物は、分解を減少する方法の理解によって調製される。生理的に関連する形態にある上記生理活性物質の存在は、先に調製された組成物に関して、増加した核負荷(core load)を引き起こし、このことは生理活性物質の顕著な分解を生じやすい。減少した分解は、増加した非改変生理活性物質の放出に形を変え、従って、より小さい注射容積で、同じ用量の生理活性物質の送達を可能とする。本発明の組成物は、減少した用量容積を使用し、長時間にわたって比較的分解していない生理活性物質を送達する方法を提供することにおいて、先の発明を超える大きな改良点を提供する。
【0006】
1つの実施形態において、上記徐放組成物は、マイクロ粒子およびナノ粒子である。特定の実施形態において、上記マイクロ粒子および上記ナノ粒子は生分解性である。別の特定の実施形態において、上記ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーからなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0007】
別の実施形態において、上記生理活性物質は、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチド、低分子の薬学的物質、免疫原、細胞および組織の成長および生存を促進可能な代謝前駆体、抗腫瘍薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬、心血管薬、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系薬、麻薬拮抗物質などからなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0008】
特定の実施形態において、上記有機イオンは、アニオン性物質およびカチオン性物質からなる群より選択される。特定の実施形態において、上記有機イオンは、パモエート、トリフルオロメチル−p−トルアート、コール酸塩、2−ナフタレンスルホナート、2,3−ナフタレンジカルボキシラート、1−ヒドロキシ−2−ナフトアート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、2−ナフトアート、およびサリチルサリチラートからなる群より選択される。
【0009】
別の実施形態において、分解としては、上記生理活性物質のアシル化、または上記ポリマーの溶解が挙げられる。特定の実施形態において、上記アシル化反応は、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)のようなポリエステルのカルボニル炭素に対する、生理活性物質のアミノ基の求核攻撃を包含する。上記生理活性物質の分解が、本組成物中で、潜在的な求核物質(例えば、アミノ基)の促進されたプロトン化によって、防がれまたは減少され、従って、その求核物質が、PLGAポリマー骨格またはそれらのフラグメントと一緒にアシル化反応に加わり難くすることが仮定される。
【0010】
別の実施形態において、上記有機イオンに対する上記生理活性物質のモル化学量論は、約0.5〜2.0の範囲である。特定の実施形態において、上記有機イオンに対する上記生理活性物質のモル化学量論は、約1.0〜1.5の範囲である。
【0011】
別の特定の実施形態において、本発明は、有機イオンを伴う複合体の形態である、ポリマーおよび生理活性物質を含む徐放組成物を提供する。そのような複合体は、有機イオンおよび生理活性物質が、近い物理的関連性を形成する場合に形成され得る。
【0012】
別の実施形態において、上記生理活性物質含有量は、有機イオンの非存在下で、本発明の方法によって調製される組成物の生理活性物質含有量に比例して増加され得る。
【0013】
特定の実施形態において、上記生理活性物質は、酢酸オクトレオチドであり、そして上記有機イオンは、パモエートである。別の特定の実施形態において、上記生理活性物質は、水溶性である。
【0014】
別の実施形態において、上記生理活性物質含有量は、先に調製された組成物の生理活性物質含有量に比例して増加され得る。
【0015】
別の実施形態において、本組成物の核負荷は約9%を超え、そして/または分解産物の割合は約25%以下である。
【0016】
本発明のさらなる利点は、以下の説明に部分的に示され、そしてその説明から部分的に明らかであるか、または本発明の実施によって知られ得る。本発明の利点は、特許請求の範囲に特に示される、要素および組み合わせによって、実現され、そして達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両者は、例示および説明のみのためであり、そして特許請求した本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【0017】
(例示的な実施形態の説明)
(定義)
本発明の意図に関して、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0018】
本発明の意図に関して、用語「生分解性」は、特定の治療状況下で受容可能な時間内に、インビボで、溶解または分解するポリマーを称する。そのような溶解産物または分解産物としては、低分子の化学種が挙げられ得る。分解は、例えば、酵素的プロセス、化学的プロセスおよび/または物理的プロセスによって生じ得る。生分解は代表的に、生理的pHおよび生理的温度(例えば、6〜9の範囲のpH、および22℃〜38℃の範囲の温度)への曝露後、5年未満、そして通常は1年未満必要とする。
【0019】
本発明の意図に関して、用語「有機相」は、本発明の方法において生成され、次いで、本発明の徐放組成物を生成するために水相と接触される、溶媒、ポリマーおよび生理活性物質の溶液を称する。
【0020】
本発明の意図に関して、用語「分解」は、上記生理活性物質に対する任意の望まれない改変(例えば、アシル化)、またはポリマーの改変(例えば、溶解)を称する。
【0021】
本発明の意図に関して、用語「水相」は、本発明の方法において生成され、次いで、本発明の徐放組成物を生成するために有機相と接触される、水および有機イオン物質の溶液を称する。
【0022】
本発明の意図に関して、用語「混合する」は、2以上の物質を一緒に加える方法のいずれかを称する。そのような方法としては、混合(mixing)、混合(blending)、混合(commingling)、調合(concocting)、ホモジナイズ、取り込み、混合(intermingling)、融合(fusing)、結合、組換え、攪拌、合体、統合、混同(confounding)、連結、ユニット化などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の意図に関して、範囲は、本明細書中で、「約(about)」もしくは「約(approximately)」である1つの特定の値から、および/または「約」もしくは「およそ」である別の特定の値までとして示され得る。そのような範囲が示される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用によって近似値として示される場合、特定の値が、別の実施形態を形成することは理解される。それぞれの範囲の終末点が、他の終末点に対して両方とも有意であり、他の終末点から独立していることは、さらに理解される。
【0024】
本発明の意図に関して、用語「生理活性物質」は、インビボまたはインビトロのいずれかにおいて生物学的活性を有する任意の物質を称し、ここで生物学的活性は、個体の全体的な健康指標もしくは個体の少なくとも1つの健康指標(即ち、症状)における、観察可能な変化として、関連する代わりの生物学的指標における変化として、または生理学的に関連する分子の、化学的構造またはコンホメーションにおける変化として検出され得る。
【0025】
本発明の意図に関して、用語「有機イオン」は、カチオン性物質またはアニオン性物質を称する。有機イオンは、それらの塩また酸の形態で存在し得る。例示的な有機イオンとしては、パモエート、ナフトアート、コール酸塩などが挙げられる。
【0026】
本発明の意図に関して、「徐放組成物」は、ネイティブな生理活性物質に比べて異なる放出プロフィールを有する任意の処方物を称する。代表的な放出プロフィールとしては、少なくとも1週間の期間、少なくとも1ヵ月の期間、少なくとも45日間、または45日間より長い期間にわたる、生理活性物質の生理学的に検出可能な濃度が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の意図に関して、用語「a」存在物または「an」存在物は、1つ以上のその存在物を称する。例えば、「タンパク質(a protein)」または「ペプチド(a peptide)」は、1つ以上のそれらの化合物、または少なくとも1つの化合物を称する。従って、用語「a」または「an」、「1つ以上(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書中で交換可能に使用され得る。用語「含む(comprising)」、用語「含む(including)」、および用語「有する(having)」が、交換可能に使用され得ることもまた注意されるべきである。さらに「からなる群より選択される(selected from the group consisting of)」化合物は、後続するリスト中の1つ以上の化合物を称し、それは、2つ以上の化合物の混合物(即ち、組み合わせ)を含む。本発明によって、単離された生理活性物質、または生物学的に純粋な化合物は、その天然の環境から取り出された化合物である。従って、「単離された(isolated)」および「生物学的に純粋な(biologically pure)」は、化合物が精製された程度を必ずしも反映するわけではない。本発明の単離された化合物は、その天然の供給源から入手され得るか、分子生物学的技術を使用して生成され得るか、または化学合成によって生成され得る。
【0028】
ここで、参照は、本発明の特定の実施形態に対して詳細になされ、その実施形態の実施例は、添付の実施例の節中に例示される。
【0029】
本発明の徐放組成物は、以下に開示される成分を含む。これらの物質および他の物質は、本明細書中に開示され、そしてこれらの物質の、組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示される場合、種々の個体のそれぞれの特定指示、およびこれらの化合物の全体的な順列は明確に開示され得ないが、それぞれは本明細書中で、具体的に企図され、そして具体的に記載されることが理解される。例えば、多くの生理活性物質が、開示され、かつ議論される場合、議論され、具体的に検討された生理活性物質を含む、多くの分子を作成し得る多くの改変は、生理活性物質の、組み合わせおよび順列のそれぞれ、ならびに組み合わせ毎および順列毎、そして相反することを特に示さない限り可能であるその改変である。従って、分子の分類である、A、B、およびCが開示され、ならびに分子の分類であるD、E、およびF、そして組み合わせ分子の例であるA−Dが開示される場合、その後、たとえ個別に列挙されない場合であっても、それぞれは、個別にまたは集合的に、組み合わせを意味して企図され、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fが考慮され、開示される。さらに、これらの任意の部分集合、またはこれら任意の組み合わせもまた、開示される。従って、例えば、A−E、B−F、およびC−Eの、サブグループが考慮され、開示される。この概念は、本発明を構成し、および使用する方法における工程を含むが、これに限定されないこの出願のあらゆる局面に適用する。
【0030】
(生理活性物質)
本発明の1つの実施形態において、上記生理活性物質は、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチドまたは低分子の薬学的物質からなる群より選択される。本発明において使用するタンパク質としては、抗体、治療的タンパク質、ヒト成長ホルモン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インスリン、カルシトニン、インターロイキン−1、インターロイキン−2などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用する核酸としては、DNA、RNA、化学的に改変されたDNAおよび化学的に改変されたRNA、アプタマー、アンチセンス、RNA干渉、および低分子RNA干渉が挙げられる。炭水化物としては、ヘパリン、低分子量ヘパリンなどが挙げられる。ペプチドとしては、LHRHアゴニストおよびそれらの合成類似物、ソマトスタチンおよびそれらの合成類似物、ホルモン、オクトレオチド、グルカゴン様ペプチド、オキシトシンなどが挙げられる。低分子の薬学的物質としては、抗感染薬、細胞傷害薬、高血圧治療薬、抗真菌薬、抗精神病薬、抗糖尿病薬、免疫賦活薬、免疫抑制薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、心血管作動薬、抗凝血薬、ホルモン、抗マラリア薬、鎮痛薬、麻酔薬、ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症薬、制吐薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
別の実施形態において、上記生理活性物質は、免疫原である。そのような免疫原は、肝炎、インフルエンザ、麻疹、風疹、破傷風、ポリオ、狂犬病などに対する抗体を刺激するための免疫原からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0032】
別の実施形態において、上記生理活性物質は、細胞および組織の成長および生存を促進可能、または細胞の機能を増強可能な、物質もしくは代謝前駆体である。そのような物質または代謝前駆体は、神経成長促進物質(例えば、ガングリオシド、神経成長因子など);硬組織成長促進物質または軟組織成長促進物質(例えば、フィブロネクチン、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、骨形成タンパク質、血小板由来成長因子、インスリン由来成長因子、トランスフォーミング成長因子−α、トランスフォーミング成長因子−β、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、インターロイキン−1、血管内皮細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子、乾燥骨物質(dried bone material)など)からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態において、上記生理活性物質は、抗腫瘍薬である。特定の実施形態において、上記抗腫瘍薬は、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、毒素に結合した腫瘍特異的抗体、腫瘍壊死因子などからなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0034】
他の実施形態において、上記生理活性物質は、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミンなど);心血管作動薬(例えば、パプベリン(papverine)、ストレプトキナーゼなどのような線維素溶解薬など);抗潰瘍薬(例えば、ヨウ化イソプロパミドなど);気管支拡張薬(例えば、硫酸メタプロテレノール、アミノフィリンなど);血管拡張薬(例えば、テオフィリン、ナイアシン、ミノキシジルなど);中枢神経系薬(例えば、トランキライザー、抗β−アドレナリン作用薬、ドーパミンなど);抗精神病薬(例えば、リスペリドン、麻薬拮抗薬(例えば、ナルトレキソン、ナロキソン、ブプレノルフィン));および他の物質からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0035】
特定の実施形態において、上記生理活性物質は、それが適用される生物系において、局所的または全身的な、生物学的効果、生理学的効果、もしくは治療的効果を提供することが可能である。例えば、上記物質は、とりわけ、感染または炎症を制御し、細胞増殖および組織再生を増強し、腫瘍の成長を制御し、骨成長を増強するように作用し得る。
【0036】
別の実施形態において、徐放組成物は、2つ以上の生理活性物質の組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、徐放組成物は、5つ以下の生理活性物質を含む。別の特定の実施形態において、徐放組成物は、1つの生理活性物質を含む。
【0037】
別の実施形態において、生理活性物質の「薬学的等価物」は、その生理活性物質自体に対して、類似のインビトロ活性、またはより優れたインビトロ活性を有する任意の化合物である。特定の実施例において、薬学的等価物は、その生理活性物質に対して類似の化学構造を有するか、その生理活性物質の生物学的活性部位のみを含むか、またはその生理活性物質の合成類似物である。
【0038】
別の実施形態において、本発明の生理活性物質としては、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール)との共有結合を含む、種々の塩形態および誘導体が挙げられ得る。
【0039】
特定の実施形態において、上記生理活性物質は、少なくとも1つの、正電荷もしくは負電荷、または正電荷および負電荷の両方を示す能力を有する。
【0040】
特定の実施形態において、上記生理活性物質は、水溶性である。
【0041】
別の特定の実施形態において、上記生理活性物質は、必要に応じて共溶媒を含む有機溶媒中に可溶化される。上記生理活性物質は、水もしくは有機溶媒、またはその両方に可溶性であり得る。
【0042】
特定の事例において利用する生理活性物質の実際の量が、利用される特定の化合物、処方された特定の組成物、適用の様式、および処置される特定の、位置および患者によって変動することは、当業者によって理解される。所定の宿主に対する投薬量は、通常の検討材料(例えば、対象化合物および公知の生理活性物質の異なる活性の通例の比較によって、例えば、適切な通常の薬学的プロトコルによって)を使用して決定され得る。医師および処方者(薬学的化合物の用量を決定する分野の当業者である)は、標準的な推奨による用量を決定するのに問題を有さない。
【0043】
(有機イオン)
本発明において使用する有機イオンとしては、アニオン性物質およびカチオン性物質が挙げられる。アニオン性物質としては、以下の有機酸:パモ酸の、ドデシル硫酸の、コール酸の、トリフルオロメチル−p−トルエン酸の、2−ナフタレン硫酸の、2,3−ナフタレンジカルボン酸の、1−ヒドロキシ−2−ナフト酸の、3−ヒドロキシ−2−ナフト酸の、2−ナフト酸の、およびサリチルサリチル酸の、酸ならびにそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性物質の塩形態としては、ナトリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられ得る。
【0044】
カチオン性分子としては、アンモニウム基もしくはグアニジニウム基、または置換したアンモニウム基を有する分子が挙げられるが、これらに限定されない。有機アニオン性物質は、正電荷(例えば、アンモニウム基またはグアニジニウム基)を有するか、または導入可能な、1つ以上の官能基を有する生理活性物質と一緒に使用され得る。有機カチオン性物質は、負電荷(例えば、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基またはホスホン酸基)を有するか、または導入可能な、1つ以上の官能基を有する生理活性物質と一緒に使用され得る。
【0045】
本発明において使用する有機イオン物質は、薬物装填およびカプセル化効率を上昇するのに必要な程度に、水中および有機相中に可溶性であり得る。特定の実施形態において、水相中の有機イオン物質の濃度は、約0.5mM〜100mMの範囲である。別の特定の実施形態において、上記有機イオンの濃度は、約5mM〜50mMの範囲である。
【0046】
(生分解性マイクロ粒子)
特定の実施形態において、上記徐放組成物は、マイクロ粒子である。
【0047】
特定の実施形態において、生理活性物質は、マイクロ粒子形態にある生分解性ポリマーに関連する。特定の実施形態において、マイクロ粒子は、1.0mm未満の直径を有し、そして代表的に1.0ミクロンと200.0ミクロンとの間の直径を有する。マイクロ粒子は、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルの両方を含み、そしてほぼ球状であり得るか、または他の幾何学的様式を有する。マイクロスフェアは代表的に、組成物においてほぼ均一であり、そしてマイクロカプセルは、周囲の殻と区別される組成物の核を含む。この開示の目的のために、用語マイクロスフェア、用語マイクロ粒子および用語マイクロカプセルは、交換可能に使用される。
【0048】
特定の実施形態において、マイクロ粒子は、多様な生分解性ポリマーを用いて作製され得る。適切な生体適合性の生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールと、ポリラクチドまたはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーが挙げられる。
【0049】
特定の実施形態において、上記マイクロ粒子は、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)から作製される。PLGAは、生理的pHに曝されて分解し、そして加水分解して乳酸およびグリコール酸を形成し、それらは、細胞代謝の通常の副生物である。PLGAポリマーの分解速度は、ポリマー分子量、ポリマー鎖中のラクチドモノマーのグリコールモノマーに対する比率、およびモノマーサブユニットの立体規則性に依存して変化する。ポリマー結晶性を破裂する、L立体異性体およびD立体異性体の混合物は、ポリマー分解速度を上昇する。さらに、マイクロスフェアは、2つ以上の、異なる分子量および/または異なるモノマー比率の生分解性ポリマーの混合物を含み得る。
【0050】
他の代替的な実施形態において、PLGAに結合した親水性ポリマーを含む誘導体化された生分解性ポリマーは、マイクロスフェアを形成するのに使用され得る。特定の実施形態において、上記親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ならびにポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーからなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0051】
(生分解性ナノ粒子)
特定の実施形態において、徐放組成物は、ナノ粒子である。
【0052】
特定の実施形態において、結合した親水性ポリマーを伴うか、または伴わない生理活性物質は、その生理活性物質の徐放のための生分解性サブミクロン粒子と関連する。ナノ粒子は、20.0ナノメートルから約2.0ミクロンの範囲の直径を有し、そしてそれは、代表的に100.0ナノメートルと1.0ミクロンとの間である。
【0053】
ナノ粒子は、高速混合または均質化が、ポリマー/生理活性物質エマルジョンの大きさを2.0ミクロン未満、そして代表的に1.0ミクロン以下に減少するために使用されることを除いて、マイクロ粒子と同じ様式で生成され得る。ナノ粒子生成のための代替的な方法は、当該分野で公知であり、そしてそれは、本発明のために利用され得る。
【0054】
(徐放組成物の生成)
本発明の徐放組成物は、当該分野で公知のエマルジョンプロセスのいずれかによって作製され得る。
【0055】
1つの実施形態において、1つ以上の、溶媒、生理活性物質、およびポリマーを含む有機相は、有機イオンを含む水相と接触される。特定の実施形態において、上記有機相はさらに、共溶媒を含む。別の特定の実施形態において、上記水相はさらに、乳化剤を含む。
【0056】
特定の実施形態において、上記有機相は、水相と接触されてエマルジョンを形成し、そのエマルジョンは、その水相中に分散した有機相の液滴を含む。その後、溶媒は、硬化したマイクロ粒子を形成するためにエマルジョン液滴から除去される。その後、上記硬化したマイクロ粒子は、上記水相から除去され得、そして乾燥され得る。
【0057】
1つの実施形態において、上記有機相は、溶媒を含み得、これらの溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸、プロピレンカーボネート、および上記生分解性ポリマーが溶解し得る他の溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記有機相の溶媒は、酢酸エチルおよび塩化メチレンからなる群より選択され得る。
【0058】
1つの実施形態において、上記水相は、溶媒を含み得、これらの溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、水、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、および上記生理活性物質が溶解し得る他の溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
別の実施形態において、共溶媒は、上記有機相に添加され得る。共溶媒は必要に応じて、上記有機相の生理活性物質の溶解性を促進するために使用される。特定の実施形態において、共溶媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、PEG200、PEG400、およびベンジルアルコールからなる群より選択されるが、これらに限定されない。別の特定の実施形態において、上記共溶媒は、上記有機相の溶媒の、約0重量%と90重量%との間で存在し得る。別の特定の実施形態において、上記共溶媒は、上記有機相の溶媒の、約0重量%と50重量%との間で存在する。上記生理活性物質は、最初に適切な容量の上記共溶媒に溶解され得、その共溶媒はその後、上記有機相の溶媒に添加され、その有機相は、好ましくは有機相のあらゆる成分の溶液を形成するために、その中に溶解した生分解性ポリマーを有する。当業者は、生理活性物質および生分解性ポリマーの好ましい溶液を得るために、添加の容量および添加の順序を調節し得る。特定の実施形態において、上記生理活性物質は、上記有機相中に、約1重量%〜20重量%の濃度で存在する。特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、上記有機相中に、約2重量%〜40重量%の濃度で存在する。別の特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、上記有機相中に、約5重量%〜20重量%の濃度で存在する。
【0060】
有機イオンは、上記水相中に溶解される。特定の実施形態において、有機イオンは、約0.1mMと1000mMとの間の濃度で溶解される。特定の実施形態において、有機イオンは、約1mMから100mMの間の濃度で溶解される。上記濃度は、所望の薬物装填および所望のカプセル化効率を得るために、特定の有機イオン物質および特定の生理活性物質のそれぞれについて調節され得る。
【0061】
1つ以上の乳化剤は、エマルジョンを安定化するために上記水相に添加され得る。乳化剤は、ポリビニルアルコール、アルブミン、レシチン、ビタミンE TPGS、およびポリソルビン酸からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。上記乳化剤は、上記水相中に、0重量%と10重量%との間の濃度で存在する。特定の実施形態において、乳化剤は、0.5重量%から5重量%の間の濃度で存在する。
【0062】
(薬学的処方物)
血管内注射または筋肉内注射などの非経口投与を目的として処方された化合物に加えて、本発明の他の代替的な投与方法もまた使用され得、その投与方法としては、皮内投与、肺投与、舌下投与、経皮的投与および経粘膜的投与(transmucosal administration)が挙げられるが、これらに限定されない。経粘膜的投与としては、眼投与、膣投与、直腸投与、および鼻腔内投与が挙げられ得るが、これらに限定されない。そのような投与方法の全ては、当該分野で周知である。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の徐放組成物は、例えば、点鼻液または点鼻スプレー、噴霧剤または吸入剤を用いて、経鼻的に投与され得る。点鼻液は多くの場合、液滴またはスプレーで鼻腔に投与されるように設計された水溶液である。点鼻液は、多くの点で鼻汁に類似するように調製される。従って、水性点鼻液は多くの場合、等張性であり、そして5.5から6.5のpHを維持するために、僅かに緩衝化される。
【0064】
必要な場合、抗菌的保存料(眼科的調製物に使用されるものと同様である)、および適切な薬物安定剤は、任意の処方物中に含まれ得る。保存料および他の添加物は、抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどからなる群より選択され得るが、これらに限定されない。種々の市販の点鼻調製物は、公知であり、そして例えば、抗生物質および抗ヒスタミン薬を含み、そして喘息予防のために使用される。
【0065】
別の実施形態において、本発明の徐放組成物は、局所的に適用される。そのような徐放組成物としては、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤、および散剤が挙げられるが、これらに限定されない。通常の薬学的キャリア、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤などは、必要とされ得るか、または好まれ得る。
【0066】
(賦形剤、キャリアおよび希釈剤)
本発明の徐放組成物は、生物系または生物学的存在が許容し得る任意の賦形剤中に処方され得る。そのような賦形剤の例としては、水、生理食塩水、Ringer溶液、デキストロース溶液、Hank溶液、および他の水性の生理的に平衡化された塩溶液が挙げられる。非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステル)もまた、使用され得る。他の有用な処方物としては、粘度増強剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン)を含む懸濁液が挙げられる。
【0067】
賦形剤はまた、少量の添加物(例えば、等張性および化学的安定性を向上させる物質)を含み得る。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、炭酸水素緩衝液およびTris緩衝液が挙げられ、一方、保存料の例としては、チメロソール、クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。
【0068】
本発明の徐放組成物のための薬学的キャリアは、当業者に公知である。代表的に利用される薬学的キャリアの大部分は、溶液(例えば、滅菌水、生理食塩水、および生理的pHに緩衝化された溶液)を含む、ヒトへの投与における標準的なキャリアであることが適当である。
【0069】
本発明の徐放組成物は、任意の水溶液中、または処置が必要な、ヒト患者もしくは動物患者における注射のための他の希釈剤中に懸濁され得る。水性希釈溶液はさらに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スクロース、マンニトール、デキストロース、トレハロース、および他の生体適合性粘度増強剤からなる群より選択される、粘度増強剤を含み得る。上記粘度は、2センチポイズ(cp)と100cpとの間の値、好ましくは4cpと40cpとの間の値に調節され得る。
【0070】
特定の実施形態において、界面活性剤は、上記徐放組成物の懸濁能力を向上させるために、希釈剤中に含まれ得る。界面活性剤は、ポリソルベート、および他の生体適合性界面活性剤からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。界面活性剤は、0重量%と5重量%との間の濃度、好ましくは0.1重量%と1重量%との間の濃度で使用される。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれる。代表的な技術に続く本実施例中に開示される技術が、本発明者らによって、本発明の実施において良好に機能することが見出され、従って、その発明の実施のために特定の形態を構成することが考慮され得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、多くの改変が特定の実施形態においてなされ、その実施形態は、開示され、そしてさらに、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得ることを、理解すべきである。
【0072】
(実施例1)
(これまでに使用された方法による共溶媒を使用する、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マイクロ粒子中にカプセル化された酢酸オクトレオチドの従来の調製)
酢酸オクトレオチドマイクロ粒子処方物を、有機相中の異なる共溶媒の効果を調査するために調製した。水中油型のエマルジョン/溶媒抽出技術を使用して調製した、処方物A〜処方物Fを、表1に要約する。PLGAポリマー(50:50 ラクチド/グリコリド、分子量24,000、180mg)を、酢酸エチル(EtOAc、900μL)中に溶解し、そして共溶媒(表1)中に溶解した酢酸オクトレオチド(20mg)を、そのポリマー溶液に添加した。生じた均一な有機相を、1%ポリビニルアルコール(PVA)を含む水相(2mL)に添加し、そしてその混合物を、15秒間〜30秒間ボルテックスした。上記エマルジョンを、溶媒抽出溶液(10mMリン酸ナトリウム、pH8.0、150mL)中に注ぎ、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。粒子を濾過によって単離し、水で洗浄し、そして一晩風乾した。上記処方物を、粒子サイズ、走査型電子顕微鏡(SEM)、形態学、オクトレオチド核負荷、およびインビトロ放出プロフィールによって特徴付けした。
【0073】
処方物Dを、酢酸オクトレオチド(20mg)、MeOH(100μL)、PLGAポリマー(50:50 ラクチド/グリコリド、分子量24,000、180mg)、および1% PVA水相(4mL)を有するEtOAc(1.9mL)からなる均質の有機相(2mL)を組み合わせた、乳化デバイス(例えば、PCT出願番号PCT/US04/11485に開示される)を使用して再び調製した。その後、上記エマルジョンを、溶媒抽出溶液に添加し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。このプロセスで処方物D2(表1)を生成した。
【0074】
調査した共溶媒は、粒子サイズおよび核負荷に、小さい影響を有した。粒子サイズは、高粘度ポリエチレングリコール(PEG)共溶媒によって、より大きくなった。反対に、核負荷は、メタノール(MeOH)およびPEG共溶媒ついて類似していた(処方物A〜処方物C)。最も高い核負荷を、pH8に緩衝化されたエマルジョン工程を有するMeOH共溶媒(処方物D2)について、およびジメチルスルホキシド(DMSO)共溶媒(処方物F)について得た。
【0075】
インビトロ放出動態を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.2、37℃)または100mM酢酸ナトリウム(NaOAc、pH4.0、37℃)のいずれかにおいて測定した。例を、表2に示す(処方物D2)。上記PEG共溶媒系は、最も高い初期のペプチド破裂(8%〜10%)を示したが、残りの処方物は、2%〜3%の範囲の初期の破裂を有した。上記処方物の全ては、少なくとも6週間にわたりペプチドを放出した。その他の処方物に対して、より低いペプチドの全放出を生じる、極性非プロトン性溶媒を用いて調製した処方物(処方物E〜処方物F)の、相対的放出速度における減少が存在した。
【0076】
遊離型ペプチドとしての酢酸オクトレオチドを、放出媒体(PBS、pH7.2、37℃)中で49日後にインキュベートした後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、95%がインタクトであると測定した。反対に、酢酸オクトレオチドPLGAマイクロ粒子処方物のインキュベーションは、放出媒体(PBS、pH7.2、37℃、表2)中で70日後に、55%の改変されたペプチド化学種を生成した。HPLC分析は、上記新しいペプチド存在物が、ネイティブな酢酸オクトレオチドよりも、より親水性であることを示した。HPLC/MS分析は、PLGAポリマーによる親ペプチドのアシル化と一致する質量を示した。観察された質量は、無作為なアシル化(例えば、ペプチドへの、1つまたは2つの、グリコール酸モノマーまたは乳酸モノマーの、任意の組み合わせでの付加)と一致した。アシル化産物は、オクトレオチド中の求核部分による、PLGAフラグメントまたはポリマー骨格に対する攻撃に起因するものであり得る。より低いpHにおけるそれらの部分はプロトン化され、それらの求核性を減少し、そして結果的にアシル化産物の量を減少するようである。100mM酢酸ナトリウム(NaOAc、pH4.0)緩衝液中でインキュベートした酢酸オクトレオチドPLGAマイクロ粒子についてのアシル化副生物の処方物が、PBS緩衝液における結果(55%)とは全く逆に、49日間で1.25%に減少したことが観察された。
【0077】
(表1.PLGAマイクロ粒子中の酢酸オクトレオチドカプセル化)
【0078】
【表1】

表2.処方物D2および処方物AGのインビトロ放出。NaOAc緩衝液は、100mM NaOAc(pH4.0)、0.02% Tween−20、および0.05% NaNを含む。PBSは、0.02% Tween−20、および0.05% NaNを含むリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.2)である。サンプルを、振動する(150Hz)水浴インキュベーターにおいて37℃でインキュベートした。ペプチド放出値およびアシル化ペプチド放出値を、放出した累積パーセントとして列挙した。
【0079】
【表2−1】

【0080】
【表2−2】

【0081】
【表2−3】

(実施例2)
(オクトレオチドの非水溶性有機酸塩(複合体)の生成、およびこれまでに使用された方法によるPLGAマイクロ粒子中へのカプセル化)
有機イオン物質を調査し、その有機イオンを、最初に酢酸オクトレオチドと複合体化して非水溶性塩を形成し、後にPLGAマイクロ粒子中にカプセル化した。
【0082】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)。オクトレオチド−SDS複合体を、HO(500μL)中に酢酸オクトレオチド(100mg)を溶解することによって調製した。水(500μL)に溶解したSDS(1.5等量、43.2mg)を、上記酢酸オクトレオチド溶液に、室温でボルテックスしながら、滴下するように添加した。即座に沈殿物が形成した。そのサンプルを、10,000rpmで1分間遠心分離し、そしてその上清を、ピペットで除去した。上記沈殿物を、冷水で洗浄し、そして凍結乾燥してオクトレオチド−SDS複合体(95.3mg)を得た。RP−HPLC分析は、オクトレオチド/SDS複合体の形成を示すはっきりしたブロードなオクトレオチドピークを示した。処方物G〜処方物Iを水中油型のエマルジョン/溶媒抽出技術を使用して調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、180mg)を、EtOAc(900μL)中に溶解した。オクトレオチド/SDS複合体を、MeOH(100μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加した。このことにより、不均一な有機相を生じた。処方物I(表3)の場合、さらなるMeOH(100μL)のアリコートを添加して均一な有機相を生成した。生じた有機相を、1% PVAを含む水相(2mL)に添加し、そしてその混合物を、15秒間〜30秒間ボルテックスした。そのエマルジョンを溶媒抽出溶液(10mMリン酸ナトリウム、pH8.0、150mL)中に注ぎ、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。粒子を濾過によって単離し、水で洗浄し、そして一晩風乾した。その処方物を、粒子サイズ、SEM形態学、オクトレオチド核負荷、およびインビトロ放出プロフィールによって特徴付けした。
【0083】
オクトレオチド−SDS複合体から調製した、処方物G〜処方物Iについて測定した核負荷は、それぞれ低く、0.6%〜2.6%の間であった(表3)。また、粒子サイズの中央値は、酢酸オクトレオチドを用いて調製した処方物(A〜F)に対して約40%減少した。
【0084】
PBS中の処方物G〜処方物Iのインビトロ放出プロフィールは、全く同様であった。それぞれの処方物は、約20%の初期の破裂を有し、1.5%(放出/週)で3週間放出した。3週間後、放出の速度は、約7.0%(放出/週)に上昇し、9週間で、約80%全ペプチド放出で頂点に達した。
【0085】
これらの処方物を用いたインビトロPBS放出アッセイは、酢酸オクトレオチド(処方物A〜処方物F)と比較して、同様の量のアシル化されたペプチドと同様の量の放出(40%〜55%)および全ペプチドを生じた。。
【0086】
(表3.有機相中のオクトレオチド−SDS複合体)
【0087】
【表3】

安息香酸:処方物(J〜M)を、PLGAと一緒に、上記有機相中に共溶解した1等量〜10等量の安息香酸を使用して調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、180mg)および安息香酸(2.4mg〜24mg)を、EtOAc(900μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチドを、MeOH(100μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、1% PVAを含む水相(2mL)に添加し、そしてその混合物を、15秒間〜30秒間ボルテックスした。そのエマルジョンを、溶媒抽出溶液(10mMリン酸ナトリウム、pH8.0、150mL)中に注ぎ、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。粒子を濾過によって単離し、水で洗浄し、そして一晩風乾した。その核負荷を、等量の酢酸オクトレオチド毎に添加した安息香酸の、1等量〜10等量の範囲にわたって、0.88%〜1.67%の間と測定した(表4)。
【0088】
パモ酸:オクトレオチド−パモエート複合体を、0.2N NaOH(500μL)中にパモ酸(19.4mg、0.05mmol)を溶解することによって調製し、パモ酸ナトリウム塩を得た。酢酸オクトレオチド(100mg、0.10mmol)を、脱イオン水(100μL)中に溶解し、そしてそれを上記パモ酸ナトリウム塩溶液に、穏やかにボルテックスしながら、滴下するように添加した。このことによって綿状の淡黄色沈殿物を生成した。その沈殿物を、遠心分離によってペレット状にし、そしてその上清を、ピペットによって除去した。そのペレットを、水(1.0mL)で洗浄し、水中に再懸濁し、そして淡黄色粉末(113mg)に凍結乾燥した。この調製物のオクトレオチド/パモエート比率は、RP−HPLCによって測定した場合、1.71であった。
【0089】
第2のオクトレオチド−パモエート複合体を、0.4N NaOH(250μL)およびジオキサン(250μL)に、パモ酸(19.4mg、0.05mmol)を溶解することによって調製し、ジオキサン/水(1:1)におけるパモ酸ナトリウムの溶液を得た。酢酸オクトレオチド(50mg、0.05mmol)を、ジオキサン/水(1:1、200μL)に溶解した。その酢酸オクトレオチド溶液を、上記パモ酸ナトリウムに、混合しながら、滴下するように添加して淡黄色の、均一な溶液を得た。この物質を、乾燥するまで凍結乾燥して、淡黄色粉末を得た(65mg)。この調製物のオクトレオチド/パモ酸比率は、RP−HPLCによって測定した場合、1.02であった。これらの2つの調製物を使用して、新しいPLGAマイクロ粒子処方物を調製した。
【0090】
(表4.有機相中の、安息香酸および酢酸オクトレオチド)
【0091】
【表4】

マイクロ粒子処方物(表5、Q〜W)を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法によって調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、180mg)を、EtOAc(1000μL)中に溶解した。パモ酸オクトレオチド(20mgまたは40mg)を、ベンジルアルコール(BnOH、1000μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、1% PVA水相と、1:2の割合で混合して、エマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に、直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。
【0092】
処方物の特徴付け(表5)は、1.7の初期オクトレオチド/パモエート比率は、1.02のオクトレオチド/パモエート比率で調製した処方物に対して、カプセル化効率および核負荷にほとんど影響しないことを示した。反対に、共溶媒をベンジルアルコールに変換すると、カプセル化効率が、メタノールに対して約60%上昇した(例えば、処方物Sを、処方物Tと比較した)。
【0093】
PBS中のこれらの処方物のインビトロ放出プロフィールは、放出した全ペプチド(79%〜92%、表5 Q〜T)が、従来の方法によって作製されたPLGA酢酸オクトレオチドマイクロ粒子(処方物D、処方物F、表1)に匹敵するが、放出したアシル化ペプチドの量(28%〜40%、表5 Q〜T)は、従来の処方物に対して僅かに減少すること(44%〜55%、表1、A〜D)を実証した。
【0094】
1:1のオクトレオチド/パモエート比率によって調製した処方物は、上述の1.7の比率の処方物と同程度の、共溶媒の性質に対する、カプセル化効率および核負荷の強い依存性を示さなかった。上記共溶媒中に異なるオクトレオチド/パモエート比率を有する複合体についての溶解性の違いは、この観察に対する説明として提唱される。より高いオクトレオチド/パモエート比率の物質は、メタノールに対して、ベンジルアルコールにおける高い溶解性を有し、より高いカプセル化効率を生じた。反対に、上記1:1オクトレオチド/パモエート複合体に関して、メタノール対ベンジルアルコールにおける溶解性の顕著な違いが存在しないことを見出した。このことは、共溶媒とは無関係の、同様のカプセル化効率および同様の核負荷を生じた。
【0095】
これらの1:1処方物(U〜W)のインビトロ放出プロフィールは、上で議論したのと同様な傾向を示した。即ち、放出したペプチドの合計パーセント(85%〜110%、表5 U〜W)は、再び従来の処方物(実施例1)(約85%、表2)に匹敵するが、放出したアシル化産物の量(35%〜44% 表5 U〜W)は、従来の処方物に対して、やや減少する(44%〜55%、表1、A〜D2)。
【0096】
最終オクトレオチド/パモエートモル比率の分析は、試験した処方物(表5)の間で、2.1:1(処方物W)から200:1を超える(処方物R)範囲の幅広いばらつきを示した。全ての場合において、上記比率は、出発ペプチド塩複合体のオクトレオチド/パモエート比率の2倍より大きい。従って、上記ペプチドオクトレオチドの予備形成したパモ酸塩の使用は、最終の持続性放出処方物において、高度に多様なオクトレオチド/パモエートモル比率を生じた。
【0097】
(表5.予備形成複合体を使用して調製したオクトレオチド−パモエートマイクロ粒子)
【0098】
【表5】

(実施例3)
(本発明による水性エマルジョン相における、有機酸塩を使用するPLGAマイクロスフェア中の酢酸オクトレオチドカプセル化)
意外にも、上記エマルジョンプロセスの水相における有機酸塩の使用が、水溶性ペプチドの使用を可能にし、そして上記処方物を調製する前に、独立の工程における複合体化した化学種の調製の必要性を排除することを見出した。本発明は、別の利点(例えば、増加した薬物核負荷、一貫したオクトレオチド/有機イオン比率、およびインビトロ放出間の減少したペプチドの分解)を提供した。
【0099】
マイクロ粒子処方物を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法によって調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、140mg〜180mg)を、EtOAc(1000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(20mg〜60mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、10mM〜50mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。このことは、RP−HPLCによって測定した場合、上記マイクロ粒子処方物中の約1〜1.5の最終オクトレオチド/パモエート比率を生じた(表6)。
【0100】
核負荷に対する種々の実験的パラメータの、水相に対する有機相の割合、共溶媒の性質、および共溶媒の容量を含む効果を調査した。BnOHが、MeOHより適切な共溶媒であることを見出した。MeOHが、上記有機相においてポリマー沈殿を誘発した場合、BnOHを、MeOHより大きい容量で使用することが可能であった。BnOHはまた、MeOHに対して、核負荷の小さい上昇を導いた(処方物Y、処方物AB、表6)。しかし、上記水相における有機イオンを伴わないBnOHの使用は、高い核負荷、または高いカプセル化効率を提供しなかった(処方物AI、表6)。BnOHを、上記共溶媒として使用した場合、水相に対する有機相の比率の減少が、上記カプセル化効率を僅かに向上させることもまた見出した(処方物AE、処方物AF、表6)。全ての場合において、パモエートに対するオクトレオチドのモル比率は、約1.0と1.5との間でしっかりとグループ分けされ、反対に、予備形成したオクトレオチド/パモ酸複合体を使用した実施例2の処方物(表5)は、2.1から200を超える、最終オクトレオチド/パモエート比率の大きいばらつきを導いた。
【0101】
意味深いことに、予測可能でありかつ上昇した、5%〜17.5%の範囲の薬物核負荷を有する生成物は、本発明の方法によって形成され得(処方物AD、処方物AG、処方物AH、表6)反対に、実施例1および実施例2の先行技術の方法で達成された最大の薬物核負荷は、約8%(表5、処方物S)で、核負荷の平均値は2%〜6%の範囲であった(表1〜表5)。さらに、本発明の組成物は、有機イオンに対する生理活性物質のモル比率に一致する化学量論を有する(表6)。このことは、これまでの方法を使用して作製した組成物とは対照的である(表5)。さらに、相対的アシル化ペプチドの生成は、予備形成したオクトレオチド−パモエート(表5)、または酢酸オクトレオチド(表2)の使用によって作製したマイクロ粒子においてより、上記水相中の有機イオン(表6)によって作製したマイクロ粒子におけるほうが、より低い。
【0102】
(表6.インサイチュプロセスによるオクトレオチド−パモエート複合体マイクロ粒子)
【0103】
【表6】

上記水相中の有機酸濃度の効果を、最適な生産パラメータを決定するために検討した。PLGAポリマー(分子量24,000、160mg)を、EtOAc(1000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(40mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、20mMまたは50mMのパモ酸ナトリウムを含む、1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。処方物AJ〜処方物ALは、20mMパモ酸二ナトリウムまたは50mMパモ酸二ナトリウムが、10mMパモ酸二ナトリウムに対して、核負荷における効果を有さないことを示す(表7)。しかし、上記水相中のパモ酸二ナトリウム濃度は、「第1日」インビトロPBS放出に対して、測定可能な効果を有した。50mMパモ酸二ナトリウムを使用して調製した処方物は、20mM有機イオンを用いて調製した処方物における4%未満の破裂(処方物AJ、処方物AK、表7)に比べて、15%の破裂(処方物AL、表7)を生じた。このことは、上記水相中の過剰な有機イオンが、その処方物のインビトロ放出性能に対して有害であることを示唆する。
【0104】
(表7.オクトレオチド−パモエートマイクロ粒子の処方物に対する有機イオン濃度の効果)
【0105】
【表7】

パモエートへの添加における代替的な有機イオンを、本発明の一般的な利用を検討するために調査した。マイクロ粒子処方物を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法によって調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、160mg)を、EtOAc(1000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(40mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、ナトリウム塩として10mM〜20mMの、有機酸を含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。このことにより、RP−HPLCによって測定した場合、6.8%と15.3%との間のオクトレオチド核負荷を有する、マイクロ粒子処方物を生じた(表8)。核負荷に対する試験した有機イオンの効果が示されている。処方物AM〜処方物APは、パモ酸ナトリウムを含むコントロールに対して、測定された核負荷の上昇を示さない(処方物AT、処方物AU、処方物AY、表8)。反対に、コール酸から二環性芳香族化合物の範囲の有機酸を利用した、処方物AQ〜処方物AS、処方物AV〜処方物AX、および処方物AZ〜処方物BBは、パモ酸に匹敵するペプチド核負荷を提供した(表8)。これらの結果は、適切な生理化学的特性を有する有機酸が、匹敵するマイクロ粒子処方物を生成するのに、パモ酸の代わりになり得ることを意味する。
【0106】
(表8.オクトレオチド−複合体マイクロ粒子の処方物に対する水相中の種々の有機酸(ナトリウム塩)の効果)
【0107】
【表8】

(実施例4)
(本発明による水性エマルジョン相中の有機酸塩を使用するPLGAマイクロスフェア中のさらなるペプチドのカプセル化)
酢酸オキシトシンおよび酢酸ロイプロリドを、以下の実施例に記載されるように、本発明に従ってPLGAマイクロ粒子中に処方した。これらの調査の結果は、従来の方法論に対して、上昇した核負荷および上昇したカプセル化効率(処方物BI対処方物BJ〜処方物BK、および処方物BL対処方物BM)に対する本発明の利用を、実証する(表9)。
【0108】
処方物BI(ロイプロリド)−従来のカプセル化方法:PLGAポリマー(分子量24,000、160mg)を、CHCl(1000μL)中に溶解した。酢酸ロイプロリド(40mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を産生する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。このことにより、50.1μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BI(140mg、収率70.0%)を提供した。その核負荷(1.99%)、そのカプセル化効率(9.95%)、およびそのインビトロ破裂(1.63%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0109】
処方物BJ(ロイプロリド)−有機イオン補助的カプセル化方法:PLGAポリマー(分子量24,000、160mg)を、CHCl(1000μL)中に溶解した。酢酸ロイプロリド(40mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を産生する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(100mL)中に直接収集し、そしてそれを、10分間攪拌した。2%イソプロパノール(200mL)からなる第2の抽出溶液を添加して、そしてそれを、さらに4時間攪拌した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、54.0μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BJ(157mg、収率78.5%)を提供した。その核負荷(9.4%)、そのカプセル化効率(47.0%)、およびそのインビトロ破裂(5.31%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0110】
処方物BK(ロイプロリド)−有機イオン補助的方法:マイクロ粒子処方物を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法によって調製した。PLGAポリマー(分子量24,000、160mg)を、CHCl(1000μL)中に溶解した。酢酸ロイプロリド(40mg)を、BnOH(1000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、50mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(100mL)中に直接収集し、そしてそれを、10分間攪拌した。2%イソプロパノール(200mL)からなる第2の抽出溶液を添加して、そしてそれを、さらに4時間攪拌した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、43.1μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BK(120mg、収率60.0%)を提供した。その核負荷(10.6%)、そのカプセル化効率(53.0%)、およびそのインビトロ破裂(21.1%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0111】
処方物BL(オキシトシン)−従来のカプセル化方法:PLGAポリマー(分子量13,000、180mg)を、EtOAc(900μL)中に溶解した。酢酸オキシトシン(20mg)を、MeOH(100μL)に溶解し、そしてそれを、上記有機相としての乳状懸濁液を生成するポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、5%EtOAcを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、10mMリン酸ナトリウム(pH8.0、150mL)溶媒抽出溶液中に直接収集し、そしてそれを、室温まで温めながら4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。このことは、44.0μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BL(143mg、収率71.5%)を提供した。その核負荷(1.67%)、そのカプセル化効率(16.7%)、およびそのインビトロ破裂(46.3%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0112】
処方物BM(オキシトシン)−有機イオン補助的カプセル化方法:PLGAポリマー(分子量24,000、180mg)を、EtOAc(1800μL)中に溶解した。酢酸オキシトシン(40mg)を、MeOH(200μL)中に溶解し、そしてそれを、上記有機相としての乳状懸濁液を産生するポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(150mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、144μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BM(158mg、収率79.0%)を提供した。その核負荷(8.9%)、そのカプセル化効率(44.5%)、およびそのインビトロ破裂(21.1%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0113】
(表9.インサイチュプロセスによるペプチド−パモエート複合体マイクロ粒子)
【0114】
【表9】

(実施例5)
(水性エマルジョン相における有機酸塩を使用するPLGAマイクロ粒子中のインスリンカプセル化)
ドデシル硫酸ナトリウム:マイクロ粒子処方物を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法を使用して調製した。PLGAポリマー(分子量11,800、150mg)およびPEG化インスリン(50mg)からなる有機相を、CHCl(2mL)中に溶解した。水相を、1% PVAおよび14mM SDSから構成した。上記均一な有機相および均一な水相を、1:5の割合で混合し、水相エマルジョン中に有機相エマルジョンを生成した。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(100mL)中に直接収集し、そしてそれを、100mL 2% IPAを添加する前に10分間攪拌した。その後、その溶媒抽出溶液を、さらに3時間攪拌してCHClを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして−20℃で保存した。生じたマイクロ粒子は、21%の核負荷(カプセル化効率84%)を有した。これらのマイクロ粒子を、37℃のPBS中の24時間での、50%の大きいインビトロ破裂によって特徴付けた。
【0115】
パモ酸二ナトリウム:マイクロ粒子処方物を、水中油型のエマルジョン/溶媒抽出法を使用して調製した。PLGAポリマー(分子量11,800、75mg)およびPEG化インスリン(25mg)からなる有機相を、CHCl(1mL)中に溶解した。水相を、1% PVAおよび10mMパモ酸二ナトリウムから構成した。上記均一な有機相および均一な水相を、1:5の割合で混合し、水相エマルジョン中に有機相エマルジョンを生成した。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(50mL)中に直接収集し、そしてそれを、水(100mL)を添加する前に10分間攪拌した。その後、その溶媒抽出溶液を、さらに3時間攪拌してCHClを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして−20℃で保存した。生じたマイクロ粒子は、18%の核負荷(カプセル化効率78%)、および1:2の最終PEG化インスリン/パモエート比率を有した。SDSを用いて作製したマイクロ粒子とは逆に、これらのマイクロ粒子は、37℃のPBS中で、5%の低いインビトロ破裂を有した。
【0116】
(実施例6)
(Sprague Dawleyラットへの投与後のPLGAマイクロ粒子中のオクトレオチドの薬物動態の評価)
血液血清レベルを、ラットの皮下に注射した、PLGAマイクロ粒子処方物から放出されたオクトレオチドについて測定した。動物(n=6/群)を、6つの異なるオクトレオチドPLGAマイクロ粒子処方物の、単一用量レベル(約8mg/kg〜10mg/kg)の皮下注射によって、1回処置した。1時間および6時間、ならびに1日、4日、7日、11日、14日、20日、28日、42日、および54日において、血清サンプルを、それぞれの動物から得てオクトレオチド薬物動態を評価した。血清濃度を、市販の非抽出型放射免疫アッセイキット(extraction−free radioimmunoassay kit)(#S−2211)(Peninsula Labs)によって測定した。そのアッセイの定量化の限界(LOQ)は、0.1ng/mLであった。それぞれの時点における平均オクトレオチド血清濃度を、表10に示す。試験したオクトレオチドPLGA処方物の調製は、以下に記載する。
【0117】
(表10.ラットにおける単回皮下処置後の平均オクトレオチド血清レベル(ng/mL))
【0118】
【表10】

(動物実験において使用したオクトレオチド処方物の、調製および特徴付け)
(処方物BC)
PLGAポリマー(分子量24,000、720mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(80mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。このことは、55.0μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BC(754mg、収率94%)を提供した。その核負荷(8.5%)、そのカプセル化効率(85.0%)、およびそのインビトロ破裂(7.4%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0119】
(処方物BD)
PLGAポリマー(分子量24,000、680mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(120mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、58.7μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BD(694mg、収率94%)を提供した。その核負荷(11.8%)、そのカプセル化効率(78.7%)、およびそのインビトロ破裂(4.1%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0120】
(処方物BE)
PLGAポリマー(分子量24,000、680mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(120mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、52.2μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BE(727mg、収率91%)を提供した。その核負荷(11.6%)、そのカプセル化効率(77.3%)、およびそのインビトロ破裂(2.75%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0121】
(処方物BF)
PLGAポリマー(分子量24,000、640mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(160mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、均一な有機相を生成する上記ポリマー溶液に添加した。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、47.7μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BF(766mg、収率95.8%)を提供した。その核負荷(14.7%)、そのカプセル化効率(73.5%)、およびそのインビトロ破裂(5.5%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0122】
(処方物BG)
PLGAポリマー(分子量28,000、640mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(160mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、48.7μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BG(715mg、収率89.3%)を提供した。その核負荷(11.9%)、そのカプセル化効率(59.5%)、およびそのインビトロ破裂(2.3%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0123】
(処方物BH)
PLGAポリマー(分子量14,000、560mg)を、EtOAc(4000μL)中に溶解した。酢酸オクトレオチド(240mg)を、BnOH(4000μL)中に溶解し、そしてそれを、上記ポリマー溶液に添加して均一な有機相を得た。生じた有機相を、10mMパモ酸二ナトリウムを含む1% PVA水相と混合してエマルジョンを得た。そのエマルジョンを、0.3% PVA溶媒抽出溶液(600mL)中に直接収集し、そしてそれを、4時間攪拌してEtOAcを抽出した。硬化したマイクロ粒子を、濾過によって収集し、水で洗浄し、風乾し、そして4℃で保存した。これにより、40.6μmの粒子サイズの中央値を有する、処方物BH(680mg、収率85.0%)を提供した。その核負荷(17.4%)、そのカプセル化効率(58.0%)、およびそのインビトロ破裂(6.8%)を、RP−HPLCアッセイによって決定した。
【0124】
本明細書中で開示され、そして特許請求された、全ての組成物および全ての方法は、本開示に照らして、過度の実験を伴わずになされ得、そして実行され得る。本発明の、組成物および方法は、特定の実施形態の点から記載されてきたが、本発明の、概念、精神、および範囲から逸脱することなく、変化が、本明細書中に記載された、組成物、ならびに方法、および方法中の工程または方法中の一連の工程に適用され得ることは、当業者にとって明らかである。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連した特定の物質は、本明細書中に記載された物質に代わり得るが、同じ結果または同様の結果が達成されることが明らかである。当業者にとって明らかな、このような類似した置換および改変の全ては、特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の、精神、範囲、および概念の範囲内であると判断される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、以下:
a)生理活性物質;
b)ポリマーまたは生理活性物質を分解から保護する、有機イオン;および
c)該生理活性物質および該有機イオンをカプセル化する、ポリマー
を含有する組成物。
【請求項2】
前記組成物が、マイクロ粒子およびナノ粒子からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子が、生分解性である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記生理活性物質が、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチド、LHRHアゴニスト、およびそれらの合成類似物、ロイプロリド、オキシトシン、ソマトスタチン、およびそれらの合成類似物、低分子の薬学的物質、免疫原、細胞および組織の成長および生存を促進可能な代謝前駆体、抗腫瘍薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬、心血管薬、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系薬および麻薬拮抗物質からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機イオンが、パモエート、トリフルオロメチル−p−トルアート、コール酸塩、2−ナフタレンスルホナート、2,3−ナフタレンジカルボキシラート、1−ヒドロキシ−2−ナフトアート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、2−ナフトアート、およびサリチルサリチラートからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機イオンに対する前記生理活性物質の化学量論が、約1.0から1.5の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記生理活性物質が、オクトレオチド、酢酸オクトレオチドおよびそれらの薬学的等価物からなる群より選択され、そして前記有機イオンが、パモエートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機イオンが、荷電した複合体または中性の複合体を形成するために、前記生理活性物質と相互作用する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
プロセスを通じて生成されるポリマー中に生理活性物質を含有する徐放マイクロ粒子組成物であって、該プロセスが、以下:
a)生分解性ポリマーと有機相とを混合する工程;
b)生理活性物質と該有機相とを混合する工程;
c)有機イオンと水相とを混合する工程;
d)該有機相と該水相とを、エマルジョンプロセスの使用を通じて接触させる工程;および
e)徐放組成物を生成するために、該マイクロ粒子を回収する工程
を包含する、徐放マイクロ粒子組成物。
【請求項11】
前記組成物が、マイクロ粒子およびナノ粒子からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子が、生分解性である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記生理活性物質が、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチド、LHRHアゴニスト、およびそれらの合成類似物、ロイプロリド、オキシトシン、ソマトスタチン、およびそれらの合成類似物、低分子の薬学的物質、免疫原、細胞および組織の成長および生存を促進可能な代謝前駆体、抗腫瘍薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬、心血管薬、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系薬および麻薬拮抗物質からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記有機イオンが、パモエート、トリフルオロメチル−p−トルアート、コール酸塩、2−ナフタレンスルホナート、2,3−ナフタレンジカルボキシラート、1−ヒドロキシ−2−ナフトアート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、2−ナフトアート、およびサリチルサリチラートからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記有機イオンに対する前記生理活性物質の化学量論が、約1.0から1.5の範囲である、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記生理活性物質が、オクトレオチド、酢酸オクトレオチドおよびそれらの薬学的等価物からなる群より選択され、そして前記有機イオンが、パモエートである、請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
前記有機イオンが、荷電した複合体または中性の複合体を形成するために、前記生理活性物質と相互作用する、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
組成物であって、以下:
a)生理活性物質;
b)有機イオン;ならびに
c)該生理活性物質および該有機イオンをカプセル化するポリマーであって、該生理活性物質の核負荷が約9%を超える、ポリマー
を含有する、組成物。
【請求項20】
前記組成物が、マイクロ粒子およびナノ粒子からなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子が、生分解性である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記生理活性物質が、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチド、LHRHアゴニスト、およびそれらの合成類似物、ロイプロリド、オキシトシン、ソマトスタチン、およびそれらの合成類似物、低分子の薬学的物質、免疫原、細胞および組織の成長および生存を促進可能な代謝前駆体、抗腫瘍薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬、心血管薬、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系薬および麻薬拮抗物質からなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記有機イオンが、パモエート、トリフルオロメチル−p−トルアート、コール酸塩、2−ナフタレンスルホナート、2,3−ナフタレンジカルボキシラート、1−ヒドロキシ−2−ナフトアート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、2−ナフトアート、およびサリチルサリチラートからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記有機イオンに対する前記生理活性物質の化学量論が、約1.0から1.5の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
前記生理活性物質が、オクトレオチド、酢酸オクトレオチドおよびそれらの薬学的等価物からなる群より選択され、そして前記有機イオンが、パモエートである、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記有機イオンが、荷電した複合体または中性の複合体を形成するために、前記生理活性物質と相互作用する、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
組成物であって、以下:
a)生理活性物質;
b)有機イオン;ならびに
c)該生理活性物質および該有機イオンをカプセル化するポリマーであって、該生理活性物質の約25%未満が、生理的媒体への該生理活性物質の放出の際に分解した形態である、ポリマー
を含有する、組成物。
【請求項29】
前記組成物が、マイクロ粒子およびナノ粒子からなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記マイクロ粒子および前記ナノ粒子が、生分解性である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリラート、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルキレンアルキラート、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびそれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記生理活性物質が、タンパク質、核酸、炭水化物、ペプチド、LHRHアゴニスト、およびそれらの合成類似物、ロイプロリド、オキシトシン、ソマトスタチン、およびそれらの合成類似物、低分子の薬学的物質、免疫原、細胞ならびに組織の成長および生存を促進可能な代謝前駆体、抗腫瘍薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬、心血管薬、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系薬および麻薬拮抗物質からなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記有機イオンが、パモエート、トリフルオロメチル−p−トルアート、コール酸塩、2−ナフタレンスルホナート、2,3−ナフタレンジカルボキシラート、1−ヒドロキシ−2−ナフトアート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、2−ナフトアート、およびサリチルサリチラートからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記有機イオンに対する前記生理活性物質の化学量論が、約1.0から1.5の範囲である、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記生理活性物質が、オクトレオチド、酢酸オクトレオチドおよびそれらの薬学的等価物からなる群より選択され、そして前記有機イオンが、パモエートである、請求項28に記載の組成物。
【請求項36】
前記有機イオンが、荷電した複合体または中性の複合体を形成するために、前記生理活性物質と相互作用する、請求項28に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−528179(P2006−528179A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521134(P2006−521134)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/022817
【国際公開番号】WO2005/009357
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(504405497)ピーアール ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】