循環ポンプ
【課題】設備構築費用を低減可能な正立式とし、この正立式で生じる水の置換現象による問題を解消する。
【解決手段】回転軸36の回転により、インペラ39を回転させて熱水をポンプケーシング32内に吸い込んで吐出する一方、モータケーシング10内の冷却水を循環冷却機構45によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、下端がヒートバリア21の軸貫通部24と連通し上端がモータケーシング10を越えて上方に延びる第1配管部51と、上端が第1配管部51の上端に連通し下端がモータケーシング10の上端に連通する第2配管部52と、この第2配管部52に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、ヒートバリア21の軸貫通部24内に位置する熱水または軸貫通部24に流入する熱水を熱交換器で冷却してモータケーシング10の上端に循環注水する循環冷却注水機構50を設けた構成としている。
【解決手段】回転軸36の回転により、インペラ39を回転させて熱水をポンプケーシング32内に吸い込んで吐出する一方、モータケーシング10内の冷却水を循環冷却機構45によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、下端がヒートバリア21の軸貫通部24と連通し上端がモータケーシング10を越えて上方に延びる第1配管部51と、上端が第1配管部51の上端に連通し下端がモータケーシング10の上端に連通する第2配管部52と、この第2配管部52に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、ヒートバリア21の軸貫通部24内に位置する熱水または軸貫通部24に流入する熱水を熱交換器で冷却してモータケーシング10の上端に循環注水する循環冷却注水機構50を設けた構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備や原子力発電設備などにおいてボイラに熱水を循環供給するための循環ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の循環ポンプは、上部にポンプケーシングが設けられ、下部にモータケーシングが設けられている。これらケーシングには1本の回転軸が貫通され、ポンプケーシング内に位置する上端にインペラが配設されている。そして、循環ポンプは、回転軸が回転されることにより、熱水をポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する。また、モータケーシング内では、回転軸の回転による熱を冷却するための冷却水が、循環冷却機構によって冷却されながら循環される(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この循環ポンプは、ポンプケーシングの配設スペースの下部に、モータケーシングを配設するためのスペースと、循環冷却機構を配設するためのスペースとが更に必要である。そのため、設備の構築費用が極めて高くなるうえ、メンテナンス作業も極めて煩雑である。即ち、ポンプケーシングを地面上に位置するように設置する場合には、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するためのスペースを確保するために、機場を大きく掘り起こす必要がある。逆に、モータケーシングおよび循環冷却機構を地面上に位置するように設置する場合には、モータケーシングおよびモータケーシングに接続する接続管等を地上の高い位置に設置するための基礎や建屋を設ける必要がある。そのため、設備の構築費用が極めて高くなる。
【0004】
この問題を解消するには、ポンプケーシングがモータケーシングの下側に位置するように設置(正立式)することが考えられる。このようにすれば、大掛かりな基礎や建屋が不要となるため、構築費用を低減できる。
【0005】
しかしながら、循環ポンプを正立配置した場合には、回転軸の回転を停止した暖待機中に、下方のポンプケーシング内の熱水と、上方のモータケーシング内の冷却水が、中間に位置するヒートバリアの軸貫通部を通して自然対流する。これにより、モータケーシング内にはポンプケーシング側の熱水が浸入する一方、ポンプケーシング内にはモータケーシング側の冷却水が浸入する。その結果、この水の置換現象により、モータケーシング内の冷却水の水温が上昇し、モータ機構が過熱されるという問題(モータ絶縁物の熱的損傷)が生じる。また、ポンプケーシング内の熱水(缶水)が冷却されるという問題(ボイラ熱量の損失)が生じる。なお、この問題は、ポンプケーシングをモータケーシングの上部に位置させて倒立配置した場合には生じない。また、正立式および倒立式のいずれでも、回転軸を回転させた稼働中には、循環冷却機構によって冷却水が循環される水流により生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−338287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、設備構築費用を低減可能な正立式とし、この正立式で生じる水の置換現象による問題を解消できる循環ポンプを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の循環ポンプは、上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、下端が前記ヒートバリアの軸貫通部と連通し上端が前記モータケーシングを越えて上方に延びる第1配管部と、上端が前記第1配管部の上端に連通し下端が前記モータケーシングの上端に連通する第2配管部と、この第2配管部に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、前記ヒートバリアの軸貫通部内に位置する熱水または軸貫通部に流入する熱水を前記熱交換器で冷却して前記モータケーシングの上端に循環注水する循環冷却注水機構を設けた構成としている。
【0009】
この循環ポンプは、モータケーシングの下部にポンプケーシングを位置させた正立式のものである。そのため、設備の構築時には、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するための大掛かりな基礎や建屋が不要であるため、設備構築費用を低減できる。また、ヒートバリアの軸貫通部と連通する第1配管部と、熱交換器を配設した第2配管部とを備えた循環冷却注水機構により、暖待機中にヒートバリアの軸貫通部中の昇温水を冷却してモータケーシングの上部に循環注水する水流を付与できる。
【0010】
具体的には、第1配管部の下端には、モータケーシング内を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング内の熱水により昇温した昇温水が位置し、この昇温水が第1および第2配管部内に充満される。そして、第2配管部内の昇温水からなる第2水柱は、熱交換器により冷却されるため、第1配管部に形成された第1水柱より密度が高くなる。そのため、これらの水柱は、同一水頭であるが静的圧力が異なる。よって、この圧力差が駆動力となって、ヒートバリアの軸貫通部内からモータケーシングの上端へ向かう水流を付与できる。これにより、ヒートバリアの軸貫通部を通してポンプケーシングからモータケーシングへ流入しようとする昇温水は、この循環冷却注水機構により十分に冷却された冷却水としてモータケーシングの上端に注入される。
【0011】
このように、本発明の循環ポンプは、循環冷却注水機構によって暖待機中にもモータケーシングの下端から上端へ冷却水を循環供給する水流を形成できる。よって、ヒートバリアの軸貫通部を通して、ポンプケーシング内の熱水がモータケーシング内に流入することはないうえ、モータケーシング内の冷却水がポンプケーシング内に流入することはない。その結果、モータケーシング内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0012】
この循環ポンプでは、下端が前記第1配管部の上端に連通し、上端が前記ポンプケーシングの吸込部へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管に連通する第3配管部を更に備えることが好ましい。このようにすれば、モータケーシング内にて、経時的に自然発生する可能性がある気体の1つである溶解ガスをモータケーシングの外部に排出できるため、回転軸が空運転状態となることによる損傷を防止できる。
この場合、前記第3配管部に、前記モータケーシング内の気体または前記注水配管内の気体を外部に排出するガス抜き弁を配設することが好ましい。
【0013】
また、前記第2配管部に、前記モータケーシング内へ液体を供給するポンプを配設することが好ましい。このようにすれば、予期せぬ圧力変動が生じても確実にヒートバリアの軸貫通部からモータケーシングの上端へ向かう水流を付与できるとともに、モータケーシング内の冷却水が外部に流出することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の循環ポンプは、モータケーシングの下部にポンプケーシングを位置させた正立式のものであるため、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するために大掛かりな基礎や建屋が不要であり、設備構築費用を低減できる。また、循環冷却注水機構により、ヒートバリアの軸貫通部から昇温した昇温水を冷却してモータケーシングの上端へ供給するため、ポンプケーシング内の熱水がモータケーシング内に流入することを抑制できるとともに、モータケーシング内の冷却水がポンプケーシング内に流入することを抑制できる。よって、モータケーシング内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できるうえ、ポンプケーシング内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2の要部断面図である。
【図4】第1実施形態の循環ポンプの稼働中の水流および圧力分布を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の循環ポンプの暖待機中の水流、温度分布および密度分布を示す断面図である。
【図6】第2実施形態の循環ポンプを示す要部拡大断面図である。
【図7】第3実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【図8】図7の要部断面図である。
【図9】第3実施形態の循環ポンプの稼働中の水流および圧力分布を示す断面図である。
【図10】第3実施形態の循環ポンプの暖待機中の水流、温度分布および密度分布を示す断面図である。
【図11】第4実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1乃至図5は、本発明の第1実施形態に係る循環ポンプを示す。この循環ポンプは、上側に位置するモータケーシング10と、モータケーシング10の下部に位置するヒートバリア21と、ヒートバリア21の下部に位置するポンプケーシング32とを備えている。そして、これらの内部には回転軸36が回転可能に支持され、その下端にインペラ39が配設されるとともに、上端に冷却水循環用インペラ44が配設されている。また、モータケーシング10には、内部の冷却水を冷却して循環させる循環冷却機構45が接続されている。そして、本実施形態では、ヒートバリア21に、昇温した冷却水を冷却してモータケーシング10の上端に循環注水する循環冷却注水機構50を更に設けたものである。
【0018】
モータケーシング10は、略円筒状をなすモータケーシング本体11の上端を冷却水用インペラケース15によって塞いたものである。モータケーシング本体11は、上端閉塞部の中心に軸方向に沿って貫通する回転軸支持部12が設けられている。この回転軸支持部12は、モータケーシング本体11内に向けて延びる円筒状をなし、その内周部には上側スリーブ13が配設されている。また、モータケーシング本体11には、内部中間位置にモータステータ14が配設されている。このモータステータ14は、コアの周囲にコイルが巻回されたものである。
【0019】
冷却水用インペラケース15は略円錐筒形状をなし、その下端開口部に冷却水用インペラ配設部16が形成されている。この冷却水用インペラ配設部16の上部には、略円柱状をなす空間からなる注水ポケット17が形成されている。この注水ポケット17の外周部には、循環冷却機構45の接続管46を接続する第1注水口18が設けられている。この冷却水用インペラケース15の上端開口は、モータカバー19により塞がれている。このモータカバー19には、循環冷却注水機構50の第2配管部52を接続する第2注水口20が設けられている。
【0020】
ヒートバリア21は、モータケーシング10の下部に水密状態で配設されている。図2に示すように、ヒートバリア21は、内部に断熱空間部22を備えている。この断熱空間部22は、外周部から径方向内向きに窪む凹部からなり、その外周の開口部がカバー23により閉塞されている。ヒートバリア21には、中心に位置するように軸方向に貫通する孔からなる軸貫通部24が設けられている。この軸貫通部24の上部は、拡径された回転軸支持部25とされている。この回転軸支持部25の内部には、回転軸36の下部を回転可能に支持する下側スリーブ26が配設されている。また、ヒートバリア21には、外周部から回転軸支持部25にかけて径方向に貫通する高圧冷却水路27が設けられている。この高圧冷却水路27の外側端部は、循環冷却機構45の接続管46を接続する注出口を構成する。
【0021】
さらに、ヒートバリア21には、断熱空間部22の上側に位置するように、低圧冷却水路28が設けられている。この低圧冷却水路28は、図3に示すように、軸貫通部24および高圧冷却水路27と交差することなく、軸貫通部24の外周に位置するように穿設した複数(本実施形態では4本)の直線的な貫通孔29a〜29dにより構成される。例えば、第1の貫通孔29aの一端を流入口とし、他端を閉塞する。また、第1の貫通孔29aと交差するように第2の貫通孔29bを形成し、その両端を閉塞する。さらに、第2の貫通孔29bと交差するように第3の貫通孔29cを形成し、その両端を閉塞する。そして、第3の貫通孔29cと交差するように第4の貫通孔29dを形成し、その一端を閉塞し、他端を流出口とする。これにより、第1の貫通孔29aの一端の流入口から第4の貫通孔29dの他端の流出口にかけて連通した水路を形成する。そして、この水路に図示しない低圧冷却水供給機構からの低圧冷却水を通水することにより、モータケーシング10の側とポンプケーシング32の側との遮熱を図る構成としている。なお、図1および図2は、高圧冷却水路27および低圧冷却水路28を図示するために、形式的に対向位置に配置したものである。
【0022】
そして、本実施形態のヒートバリア21には、図2に示すように、インペラ39との間に軸貫通部24と連通するバランス室42を形成するための第1バランスリング30が円環状をなすように設けられている。また、ヒートバリア21には、断熱空間部22から第1バランスリング30内に貫通する注出孔31が設けられている。
【0023】
ポンプケーシング32は、略半球形状をなす中空状のもので、ヒートバリア21の下部に水密状態で配設されている。このポンプケーシング32には、モータケーシング10の軸方向に沿って突出する円筒状の吸込部33が設けられるとともに、この吸込部33の軸方向に対して交差するように径方向外向きに突出する円筒状の吐出部34が設けられている。ポンプケーシング32の内部は、吸込部33から吸い込んだ熱水を吐出部34へ案内するためのガイドベーン35により区画されている。
【0024】
回転軸36は、中空状をなすモータケーシング10内からポンプケーシング32内にかけて、ヒートバリア21の軸貫通部24を貫通させて配設されたものである。本実施形態では、モータケーシング本体11内に配設される回転軸本体37と、ポンプケーシング32内に配設されるインペラ39に形成した軸部39aと、冷却水用インペラケース15内に配設される冷却水循環用インペラ44に形成した軸部44aとを、一体的に連結することにより1本の回転軸36を構成している。回転軸本体37の下部には、ヒートバリア21の軸貫通部24を貫通する貫通軸部37aが設けられ、その下端にインペラ39を貫通して固定する固定軸部37bが設けられている。なお、インペラ39および冷却水循環用インペラ44の軸部39a,44aは、回転軸本体37と一体成形することも可能である。
【0025】
この回転軸36は、上側スリーブ13とモータステータ14と下側スリーブ26とで、回転可能に支持されている。また、回転軸36には、モータステータ14に対して径方向内側に位置するようにモータロータ38が設けられている。このモータロータ38は、磁石(図示せず)を内蔵しており、モータケーシング10の外部に位置する磁石(図示せず)の回転により、回転軸36を一体的に回転させるものである。
【0026】
インペラ39は、ポンプケーシング32のガイドベーン35内に配設されている。このインペラ39には、円板状をなす主板から回転軸本体37に連結される軸部39aが突設されるとともに、固定軸部37aを貫通する貫通孔が設けられている。インペラ39の主板の下面側にはインペラ羽根40が設けられ、このインペラ羽根40により、ポンプケーシング32の吸込部33から吸い込んだ熱水を吐出部34から吐出する。そして、本実施形態のインペラ39には、主板の上端面から環状をなすように上向きに突出し、ヒートバリア21の第1バランスリング30の内面に摺接する第2バランスリング41が設けられている。これにより、ヒートバリア21とインペラ39との間には、軸貫通部24と連通するバランス室42が形成される。また、インペラ39の主板には、インペラ羽根40を設けた下側面から第2バランスリング41内(バランス室42内)に位置するように上端面にかけて貫通する熱水通水孔43が設けられている。
【0027】
冷却水循環用インペラ44は、回転軸36を回転させた稼働中に、モータケーシング10内の冷却水を循環供給する循環冷却機構45の一部を構成するもので、図1に示すように、モータケーシング10の冷却水用インペラケース15内に配設されている。この冷却水循環用インペラ44には、円板状をなす主板から回転軸本体37に連結される軸部44aが突設されている。この冷却水循環用インペラ44は、注水ポケット17内を臨むように開口した吸込流路と、この吸込流路の下端から放射状をなすように径方向外向きに延びる吐出流路とが形成されている。この流路により冷却水循環用インペラ44は、上方の注水ポケット17内の冷却水を下向きに吸い込んで径方向外向きに吐出することにより、回転軸支持部12を通してモータケーシング本体11内で下向きの水流を付与する。
【0028】
循環冷却機構45は、モータケーシング10の上部である注水ポケット17の第1注水口18と、モータケーシング10の下部であるヒートバリア21の注出口とを、迂回するように接続する接続管46を備えている。この接続管46には、上向きに延びる部分にモータクーラ47が配設されている。このモータクーラ47は、低圧冷却水入口48と低圧冷却水出口49を備え、図示しない低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が供給されることにより、接続管46内を流動する昇温した冷却水を冷却する熱交換器である。
【0029】
循環冷却注水機構50は、モータケーシング10を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温した冷却水(以下「昇温水」という。)を、圧力差によってモータケーシング10の上端に自然循環(自己注水)するものである。この循環冷却注水機構50は、モータケーシング10の外側で上下方向に延びるように配管される第1配管部51を備えている。この第1配管部51は、下端がヒートバリア21の断熱空間部22のカバー23を貫通し、内部に位置する注出孔31に接続される。これにより第1配管部51は、注出孔31およびバランス室42を介して軸貫通部24に連通する。また、第1配管部51は、その上端がモータケーシング10の上端を越えて上方に位置するように延びている。この第1配管部51の上端には、モータケーシング10に循環注水するための第2配管部52が接続されている。この第2配管部52は、上端が第1配管部51に接続(連通)され、モータケーシング10の上方に向けて下向きに傾斜する傾斜管部53と、この傾斜部から垂下するように屈曲して下端がモータケーシング10の第2注水口20に接続(連通)される垂直管部54とを備えている。
【0030】
そして、この第2配管部52の垂直管部54には、注水クーラ55とオリフィス58とが配設されている。注水クーラ55は、循環冷却機構45のモータクーラ47と同様に、低圧冷却水入口56と低圧冷却水出口57を備え、図示しない低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が供給されることにより、第2配管部52内の昇温水を冷却する熱交換器である。オリフィス58は、第2配管部52からモータケーシング10内へ注水する流体量を安定的に微量に維持するものである。
【0031】
また、本実施形態の循環ポンプには、モータケーシング10の内部で発生した気体、および、循環冷却注水機構50内またはバランス室42内で発生した気体を、外部に排出するためのガス排出機構59が更に設けられている。このガス排出機構59は、第1配管部51の上端に、下端を接続(連通)した第3配管部60を備えている。即ち、本実施形態では、第1配管部51の上端に、第2配管部52と第3配管部60とが略T字形状をなすように分岐接続されている。そして、第2配管部52は、昇温水を冷却してモータケーシング10内に冷却水を循環注水するための注水管と、モータケーシング10内のガスを排出するための排出管の役割をなす。第3配管部60は、第1配管部51の上端から更に上向きに傾斜して延び、その上端がポンプケーシング32の吸込部33へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管63に接続(連通)されている。そして、この第3配管部60には、ガス抜き弁61とオリフィス62とが介設されている。ガス抜き弁61は、常時全閉とした仕切弁であり、モータケーシング10への初期冷却水充填時や、使用によってモータケーシング10内にガスが滞留した際に、一時的に微開状態とすることにより、ガスを外部に排出するものである。オリフィス62は、第3配管部60内を流動する流体量が微量になるように抵抗を付与し、吸込側ボイラ配管63内の熱水がモータケーシング10内へ直接流入することを防止するものである。
【0032】
このように構成した循環ポンプは、ポンプケーシング32の吸込部33に吸込側ボイラ配管63が接続され、ポンプケーシング32の吐出部34に吐出側ボイラ配管64が接続される。なお、吸込側ボイラ配管63は、上端が循環ポンプの上端を越えて上方に延びるように配管されている。本実施形態の循環ポンプの使用例の1つである発電設備では、吐出側ボイラ配管64が水を過熱して蒸気を生成するボイラに接続され、吸込側ボイラ配管63が蒸気を高温の熱水とする復水器に接続される。そして、発電設備は、ボイラで生成された蒸気で、発電機に連結したタービンを回転させる。タービンを回転させた蒸気は、復水器によって高温の熱水に戻される。この熱水を本実施形態の循環ポンプにより循環供給する。
【0033】
次に、第1実施形態の循環ポンプの動作について具体的に説明する。
【0034】
まず、ヒートバリア21の低圧冷却水路28、循環冷却機構45のモータクーラ47、および、循環冷却注水機構50の注水クーラ55には、低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が常に供給されている。
【0035】
そして、稼働中には、回転軸36の回転により、インペラ39と冷却水循環用インペラ44が回転する。これにより、ポンプケーシング32では、インペラ39の回転により、吸込側ボイラ配管63を介して復水器から熱水を吸い込んで、ボイラへ循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ44の回転により、冷却水がモータケーシング10内で下向きに流動する水流が付与される。そして、モータケーシング10の下部の冷却水は、冷却水循環用インペラ44による送水作用により接続管46に吸い込まれ、モータクーラ47にて冷却されて注水ポケット17に循環供給される。
【0036】
この際、循環冷却注水機構50では、冷却水循環用インペラ44の送水作用によって、昇温した昇温水を冷却してモータケーシング10の上端に注水する。即ち、この循環ポンプでは、冷却水循環用インペラ44が回転すると、その送水作用によって循環冷却注水機構50のバランス室42の内圧が、注水ポケット17の内圧およびポンプケーシング32の内圧より高くなる。これにより、モータケーシング10内を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温したバランス室42内の昇温水が、第1配管部51および第2配管部52を通り、注水クーラ55にて冷却されてモータケーシング10の上端の注水ポケット17に注水される。その結果、ポンプケーシング32内の熱水がバランス室42内に流入することを防止できる。また、オリフィス58によりモータケーシング10内への注入量を調整できるため、バランス室42内の昇温水がポンプケーシング32内に流入することを抑制できる。
【0037】
具体的には、図4に実線で示すように、冷却水循環用インペラ44を通過したポンプケーシング32内では、出口であるヒートバリア21の軸貫通部24の容積(開口面積)が小さいため、圧力が急激に高くなる。その後、軸貫通部24より容積が大きいバランス室42に至るまでに、徐々に圧力が低下する。そして、循環冷却機構45では、破線で示すように、接続管46を通して上方の注水ポケット17に向かうに従って更に圧力が徐々に低くなる。一方、循環冷却注水機構50では、軸貫通部24を通過してバランス室42に至ると、モータケーシング10内より急勾配で圧力が低下する。しかし、注出孔31の開口部では、注水ポケット17より高圧となるように構成されている。そして、第1配管部51では、上方に進むにつれて徐々に圧力が低くなる。但し、この状態での圧力は、バランス室42内の圧力より低い。その後、第2配管部52の注水クーラ55を通過する間に圧力が徐々に低下し、注水クーラ55の通過後にはオリフィス58を通過するまで略定圧に維持される。オリフィス58を通過して容積が大きい注水ポケット17に至ると、急激に圧力が低下した後、冷却水循環用インペラ44を通過する。なお、第1配管部51の上端より更に上方に延びる第3配管部60では、オリフィス62を通過するまで更に圧力が徐々に低下し、オリフィス62を通過すると急激に低下する。
【0038】
このように、循環ポンプの稼働中には、循環冷却機構45および循環冷却注水機構50によって、モータケーシング10内の冷却水を下部から上部へ循環供給することができる。そのため、インペラ39の熱水通水孔43を通してバランス室42内に流入しようとする熱水は、その通水作用によってバランス室42内への流入が防止される。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0039】
一方、暖待機中には、回転軸36が停止されるため、インペラ39と冷却水循環用インペラ44が停止している。これにより、ポンプケーシング32では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ44による冷却水の水流(循環)が停止される。よって、従来では、この暖待機状態でモータケーシング10およびポンプケーシング32の間で水の置換現象が生じる。しかし、本実施形態では、暖待機中にも循環冷却注水機構50によって循環注水が行われるため、水の置換現象を防止できる。
【0040】
即ち、この暖待機中には、モータケーシング10内の通過により昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温したバランス室42内の昇温水が、第1配管部51の上端の分岐点まで充満している。同様に、分岐点より下流側の第2配管部52内にも昇温水が充満するが、この第2配管部52では昇温水が注水クーラ55にて冷却される。そのため、第1配管部51内の第1水柱の密度と第2配管部52内(垂直管部54内)の第2水柱の密度とを比較すると、第2水柱の密度が高くなる。よって、これらの水柱は、同一水頭であっても静的圧力が異なる。その結果、この圧力差が駆動力となって、ヒートバリア21の軸貫通部24内から下方に降り、バランス室42を通って第1配管部51を上昇し、モータケーシング10の上端へ向かう水流(自然循環流)が付与される。
【0041】
具体的には、図5に示すように、第1配管部51から第2配管部52の注水クーラ55の低圧冷却水入口56に至るまでの水温は同一であり、密度も同一である。一方、注水クーラ55に流入した昇温水は、低圧冷却水によって徐々にかつ十分に冷却され、それに伴って密度が徐々に高くなる。このような両水柱の熱的各平衡における各温度分布の相違に基づく静的圧力差が、循環回路の注水の流れによる総圧力損失と平衡するような自然循環流(流体の密度流)を形成する。そして、モータケーシング10内に第2水柱を構成する冷却水が注入されると、モータケーシング10内および循環冷却機構45の接続管46内を下向きに流動する。ついで、出口であるヒートバリア21の軸貫通部24に至ると、熱水との置換作用によりバランス室42に至るまでに水温が徐々に上がり、それに従って密度が徐々に低下する。その結果、バランス室42内の昇温水が、モータケーシング10の上端からの注入作用により、第1配管部51内を介して、第2配管部52の注水クーラ55に流入して冷却される自己注水流を形成する。
【0042】
このように、本発明の循環ポンプでは、暖待機中においても循環冷却注水機構50によって、モータケーシング10内の冷却水を下部へ降ろして第1配管部51を介してモータケーシング10の上部へ循環供給することができる。そのため、インペラ39の熱水通水孔43を通してバランス室42内に流入しようとする熱水は、その通水作用によってバランス室42内への流入が防止される。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0043】
なお、モータケーシング10内では、気体の1つである溶解ガスが経時的に自然発生することがある。そして、このガスは、稼働時に回転軸36を空運転現象を生じさせる。このモータケーシング10内で発生したガスは、モータケーシング10の上端である注水ポケット17に溜まる。しかし、本実施形態では、モータケーシング10の上端に第2配管部52を接続している。そのため、稼働中および暖待機中のいずれの状態でも、ガス抜き弁61を一時的に開放することにより、高圧なモータケーシング10内のガスを外部に排出することができる。
【0044】
具体的には、稼働中には、冷却水循環用インペラ44の回転により、ポンプケーシング32の内圧よりバランス室42の内圧が高い。同様に、吸込側ボイラ配管63の流れによる圧力損失は小さいため、吸込側ボイラ配管63と第3配管部60との分岐接続部の圧力より、バランス室42の圧力が高くなる。したがって、この稼働中にガス抜き弁61を一時的に開操作した場合は、圧力差によって第1配管部51を経由して、バランス室42の熱水が、吸込側ボイラ配管63に流出する。この熱水の流出に伴い、配管部51,52,60内やモータケーシング10の上部に溜まったガスを吸込側ボイラ配管63へ排出できる。
【0045】
一方、暖待機中には、熱水の循環供給による流れがないため、ポンプケーシング32内とバランス室42は同一圧力である。また、吸込側ボイラ配管63でも流れが無いため、吸込側ボイラ配管63と第3配管部60の分岐接続点とバランス室42も同一圧力である。この状態で、ガス抜き弁61を一時的に開操作すると、配管部51,52,60内やモータケーシング10の上部に溜まったガスが、吸込側ボイラ配管63に向かって移動する。但し、暖待機状態でのガス抜きは、注水クーラ55およびモータクーラ47で構成される冷水柱と、これに相当する高さの吸込側ボイラ配管63の熱水柱の間で、吸込側ボイラ配管63からモータケーシング10へ向けた水流が発生する。しかし、その流速は極めて小さく、モータケーシング10内のガスが連続的または気泡状に吸込側ボイラ配管側へ逃げ去ることを妨げるものでない。
【0046】
そして、これら稼働中および暖待機中のガス抜きによる双方向の流体移動量は、オリフィス62による流体抵抗を調整することで調整できる。なお、使用中にモータケーシング10内にガスが溜まると、上部が気相となるため、注水クーラ55の冷却機能が不足する。よって、このガスの発生状況は、モータケーシング10内の冷却水温度を検出するための温度センサを配設することにより、検出することができる。そのため、温度センサの検出値が、予め設定したしきい値を越えると、ガス抜き弁61を短時間開操作することにより、ガス排出処理を手動または自動で実行するように構成することが好ましい。
【0047】
このように、本発明の循環ポンプでは、ヒートバリア21の軸貫通部24と連通する第1配管部51と、注水クーラ55を配設した第2配管部52とを備えた循環冷却注水機構50により、稼働中および暖待機中のいずれの状態でも、ヒートバリア21の軸貫通部中の昇温水を冷却してモータケーシング10の上部に循環注水する水流を付与できる。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0048】
また、循環冷却注水機構50による自己注水量は、第2配管部52に介設したオリフィス58により調整できる。即ち、このオリフィス58による流体抵抗を調整することにより、循環冷却注水機構50による強制循環量を調整(削減)できる。その結果、稼働中には、冷却水循環用インペラ44の軸動力を削減し、注水クーラ55での昇温水の熱除去(熱損失)を削減できる。また、暖待機中には、自己注水量に比例するポンプケーシング32内の熱水の熱量損失を削減し、注水クーラ55での除去熱量を削減できる。そして、冷却水から熱水までの温度範囲に対して、適切な自己注水量を調整および設定することにより、ヒートバリア21の軸貫通部24の隙間に一定の下向き流速を与え、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に浸入することを効果的に防止できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、第1配管部51の上端に吸込側ボイラ配管63に連通する第3配管部60を更に設けるとともに、第3配管部60にガス抜き弁61を介設しているため、モータケーシング10内にて、経時的に自然発生した気体をモータケーシング10の外部に排出できる。よって、稼働中に回転軸36が空運転状態となることによる損傷を防止できる。
【0050】
そして、本発明の循環ポンプは、モータケーシング10の下部にポンプケーシング32を位置させた正立式のものであるため、設備の構築時には、モータケーシング10および循環冷却機構45を配設するための大掛かりな基礎や建屋が不要であるため、設備構築費用を低減できる。
【0051】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の循環ポンプを示す。この第2実施形態では、第1配管部51を軸貫通部24の中間位置に接続した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第2実施形態では、ヒートバリア21における軸貫通部24の下部に、径方向外向きに広がったバッファ室65が設けられている。そして、ヒートバリア21には、このバッファ室65内に開口するように、第1配管部51を接続する注出孔31が設けられている。
【0052】
また、バッファ室65には、バランス室42の側に連通する下端開口部にスロットルブッシュ66が設けられている。また、回転軸36を構成する回転軸本体37の貫通軸部37aには、スロットルブッシュ66の径方向内側に位置するようにスロットルリング67が配設されている。そして、これらスロットルブッシュ66とスロットルリング67の間の隙間の設定により、モータケーシング10からバッファ室65内に流入する冷却水量、および、ポンプケーシング32からモータケーシング10へ流入しようとする熱水量を調整している。
【0053】
このように構成した第2実施形態の循環ポンプは、回転軸36を回転させた稼働中、および、回転軸36の回転を停止した暖待機中のいずれの状態でも、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図7乃至図10は第3実施形態の循環ポンプを示す。この第3実施形態では、図7に示すように、第1配管部51を軸貫通部24の上部に接続した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第3実施形態では、図8に示すように、高圧冷却水路27と平行に位置するように、注出孔31を設け、この注出孔31、軸貫通部24および高圧冷却水路27と交差しないように、低圧冷却水路28を構成する貫通孔29a〜29dを形成している。なお、図7,9,10では、高圧冷却水路27および注出孔31を図示するために、形式的に対向位置に配置したものである。
【0055】
このように構成した第3実施形態では、循環冷却注水機構50は、第1実施形態と比較してヒートバリア21の軸貫通部24を通過する前に、モータケーシング10へ冷却水を循環供給する。そのため、図9に示すように、ヒートバリア21の軸貫通部24およびバランス室42を通過することによる圧力変動を削減できる。よって、稼働時の循環冷却注水機構50による自己循環流を容易に設定できる。
【0056】
また、暖待機中には、図10に示すように、冷却水がポンプケーシング32内の熱水で昇温することを抑制できる。そのため、モータケーシング10内の冷却水として使用可能な温度帯まで冷却する温度差が小さいため、注水クーラ55での除熱冷却量が小さくなり、熱水の熱量損失も小さくできる。また、モータケーシング10内の冷却水の水質は、熱水と比較してマグネタイト粒子やスケール成分が少ないため、上側スリーブ13、モータステータ14および下側スリーブ26などの軸受けや合成樹脂絶縁物などの摩耗を抑制できる。
【0057】
(第4実施形態)
図11は第4実施形態の循環ポンプを示す。この第4実施形態では、第2配管部52に、注水クーラ55によって冷却した冷却水をモータケーシング10内へ強制的に供給するポンプ68を配設した点で、第1実施形態と相違している。このポンプ68は、循環冷却注水機構50の第2配管部52において、注水クーラ55の下流側に介設したキャンドモータ式ポンプからなる。このキャンドモータ式のポンプ68は、モータのコイルを缶(キャン)に収めて防水し、水中でも使用できるようにしたものである。
【0058】
このように構成した第4実施形態は、回転軸36を回転させた稼働中には、冷却水循環用インペラ44の駆動により、注出孔31での圧力が第2注水口20の圧力より高くなることはない。よって、ポンプ68を駆動しなくても確実に循環冷却注水機構50による循環注水流を形成することができる。よって、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0059】
一方、回転軸36の回転を停止した暖待機中には、ガス抜き弁61の一時的な開操作時や、この循環ポンプを接続した設備の予期しない故障時などに、吸込側ボイラ配管63内の圧力や、水温に急激な変動が生じた場合、自己注入(密度)流が減少、中断または逆流する可能性がある。しかし、本実施形態では、暖待機中にポンプ68を駆動させることにより、予期せぬ圧力変動などが生じても確実にヒートバリア21の軸貫通部24からモータケーシング10の上端へ向かう水流を付与できるとともに、モータケーシング10内の冷却水が外部に流出することを防止できる。よって、確実にモータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。
【0060】
また、モータケーシング10内のガスを排出する際には、ポンプ68を停止した状態でガス抜き弁61を一時的に開操作することにより、各実施形態と同様に、ガスを排出できる。
【0061】
なお、本発明の循環ポンプは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、各実施形態では、稼働中に循環冷却機構45と循環冷却注水機構50の2つの閉回路にて冷却水を循環供給する構成としたが、稼働中は循環冷却機構45による循環冷却作用で十分な機能を果たすことができる。よって、循環冷却注水機構50の第1配管部51または第2配管部52に閉止弁を配設し、暖待機中のみ開状態として循環注水作用を行うようにしてもよい。
【0063】
また、第4実施形態では、ポンプ68を第2配管部52に介設したが、第1配管部51に介設してもよい。また、第4実施形態では、第1実施形態に示す循環ポンプに強制循環用のポンプ68を配設したが、第2または第3実施形態に示す循環ポンプに強制循環用のポンプ68を配設してもよい。
【0064】
そして、前記実施形態では、本発明の循環ポンプを発電設備に使用する例を挙げて説明したが、使用用途は発電設備に限られるものではない。
【符号の説明】
【0065】
10…モータケーシング
17…注水ポケット
21…ヒートバリア
24…軸貫通部
31…注出孔
32…ポンプケーシング
33…吸込部
34…吐出部
36…回転軸
39…インペラ
42…バランス室
44…冷却水循環用インペラ
45…循環冷却機構
46…接続管
47…モータクーラ
50…循環冷却注水機構
51…第1配管部
52…第2配管部
55…注水クーラ
58…オリフィス
59…ガス排出機構
60…第3配管部
61…ガス抜き弁
63…吸込側ボイラ配管
64…吐出側ボイラ配管
65…バッファ室
68…ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備や原子力発電設備などにおいてボイラに熱水を循環供給するための循環ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の循環ポンプは、上部にポンプケーシングが設けられ、下部にモータケーシングが設けられている。これらケーシングには1本の回転軸が貫通され、ポンプケーシング内に位置する上端にインペラが配設されている。そして、循環ポンプは、回転軸が回転されることにより、熱水をポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する。また、モータケーシング内では、回転軸の回転による熱を冷却するための冷却水が、循環冷却機構によって冷却されながら循環される(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この循環ポンプは、ポンプケーシングの配設スペースの下部に、モータケーシングを配設するためのスペースと、循環冷却機構を配設するためのスペースとが更に必要である。そのため、設備の構築費用が極めて高くなるうえ、メンテナンス作業も極めて煩雑である。即ち、ポンプケーシングを地面上に位置するように設置する場合には、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するためのスペースを確保するために、機場を大きく掘り起こす必要がある。逆に、モータケーシングおよび循環冷却機構を地面上に位置するように設置する場合には、モータケーシングおよびモータケーシングに接続する接続管等を地上の高い位置に設置するための基礎や建屋を設ける必要がある。そのため、設備の構築費用が極めて高くなる。
【0004】
この問題を解消するには、ポンプケーシングがモータケーシングの下側に位置するように設置(正立式)することが考えられる。このようにすれば、大掛かりな基礎や建屋が不要となるため、構築費用を低減できる。
【0005】
しかしながら、循環ポンプを正立配置した場合には、回転軸の回転を停止した暖待機中に、下方のポンプケーシング内の熱水と、上方のモータケーシング内の冷却水が、中間に位置するヒートバリアの軸貫通部を通して自然対流する。これにより、モータケーシング内にはポンプケーシング側の熱水が浸入する一方、ポンプケーシング内にはモータケーシング側の冷却水が浸入する。その結果、この水の置換現象により、モータケーシング内の冷却水の水温が上昇し、モータ機構が過熱されるという問題(モータ絶縁物の熱的損傷)が生じる。また、ポンプケーシング内の熱水(缶水)が冷却されるという問題(ボイラ熱量の損失)が生じる。なお、この問題は、ポンプケーシングをモータケーシングの上部に位置させて倒立配置した場合には生じない。また、正立式および倒立式のいずれでも、回転軸を回転させた稼働中には、循環冷却機構によって冷却水が循環される水流により生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−338287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、設備構築費用を低減可能な正立式とし、この正立式で生じる水の置換現象による問題を解消できる循環ポンプを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の循環ポンプは、上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、下端が前記ヒートバリアの軸貫通部と連通し上端が前記モータケーシングを越えて上方に延びる第1配管部と、上端が前記第1配管部の上端に連通し下端が前記モータケーシングの上端に連通する第2配管部と、この第2配管部に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、前記ヒートバリアの軸貫通部内に位置する熱水または軸貫通部に流入する熱水を前記熱交換器で冷却して前記モータケーシングの上端に循環注水する循環冷却注水機構を設けた構成としている。
【0009】
この循環ポンプは、モータケーシングの下部にポンプケーシングを位置させた正立式のものである。そのため、設備の構築時には、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するための大掛かりな基礎や建屋が不要であるため、設備構築費用を低減できる。また、ヒートバリアの軸貫通部と連通する第1配管部と、熱交換器を配設した第2配管部とを備えた循環冷却注水機構により、暖待機中にヒートバリアの軸貫通部中の昇温水を冷却してモータケーシングの上部に循環注水する水流を付与できる。
【0010】
具体的には、第1配管部の下端には、モータケーシング内を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング内の熱水により昇温した昇温水が位置し、この昇温水が第1および第2配管部内に充満される。そして、第2配管部内の昇温水からなる第2水柱は、熱交換器により冷却されるため、第1配管部に形成された第1水柱より密度が高くなる。そのため、これらの水柱は、同一水頭であるが静的圧力が異なる。よって、この圧力差が駆動力となって、ヒートバリアの軸貫通部内からモータケーシングの上端へ向かう水流を付与できる。これにより、ヒートバリアの軸貫通部を通してポンプケーシングからモータケーシングへ流入しようとする昇温水は、この循環冷却注水機構により十分に冷却された冷却水としてモータケーシングの上端に注入される。
【0011】
このように、本発明の循環ポンプは、循環冷却注水機構によって暖待機中にもモータケーシングの下端から上端へ冷却水を循環供給する水流を形成できる。よって、ヒートバリアの軸貫通部を通して、ポンプケーシング内の熱水がモータケーシング内に流入することはないうえ、モータケーシング内の冷却水がポンプケーシング内に流入することはない。その結果、モータケーシング内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0012】
この循環ポンプでは、下端が前記第1配管部の上端に連通し、上端が前記ポンプケーシングの吸込部へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管に連通する第3配管部を更に備えることが好ましい。このようにすれば、モータケーシング内にて、経時的に自然発生する可能性がある気体の1つである溶解ガスをモータケーシングの外部に排出できるため、回転軸が空運転状態となることによる損傷を防止できる。
この場合、前記第3配管部に、前記モータケーシング内の気体または前記注水配管内の気体を外部に排出するガス抜き弁を配設することが好ましい。
【0013】
また、前記第2配管部に、前記モータケーシング内へ液体を供給するポンプを配設することが好ましい。このようにすれば、予期せぬ圧力変動が生じても確実にヒートバリアの軸貫通部からモータケーシングの上端へ向かう水流を付与できるとともに、モータケーシング内の冷却水が外部に流出することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の循環ポンプは、モータケーシングの下部にポンプケーシングを位置させた正立式のものであるため、モータケーシングおよび循環冷却機構を配設するために大掛かりな基礎や建屋が不要であり、設備構築費用を低減できる。また、循環冷却注水機構により、ヒートバリアの軸貫通部から昇温した昇温水を冷却してモータケーシングの上端へ供給するため、ポンプケーシング内の熱水がモータケーシング内に流入することを抑制できるとともに、モータケーシング内の冷却水がポンプケーシング内に流入することを抑制できる。よって、モータケーシング内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できるうえ、ポンプケーシング内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2の要部断面図である。
【図4】第1実施形態の循環ポンプの稼働中の水流および圧力分布を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の循環ポンプの暖待機中の水流、温度分布および密度分布を示す断面図である。
【図6】第2実施形態の循環ポンプを示す要部拡大断面図である。
【図7】第3実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【図8】図7の要部断面図である。
【図9】第3実施形態の循環ポンプの稼働中の水流および圧力分布を示す断面図である。
【図10】第3実施形態の循環ポンプの暖待機中の水流、温度分布および密度分布を示す断面図である。
【図11】第4実施形態の循環ポンプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1乃至図5は、本発明の第1実施形態に係る循環ポンプを示す。この循環ポンプは、上側に位置するモータケーシング10と、モータケーシング10の下部に位置するヒートバリア21と、ヒートバリア21の下部に位置するポンプケーシング32とを備えている。そして、これらの内部には回転軸36が回転可能に支持され、その下端にインペラ39が配設されるとともに、上端に冷却水循環用インペラ44が配設されている。また、モータケーシング10には、内部の冷却水を冷却して循環させる循環冷却機構45が接続されている。そして、本実施形態では、ヒートバリア21に、昇温した冷却水を冷却してモータケーシング10の上端に循環注水する循環冷却注水機構50を更に設けたものである。
【0018】
モータケーシング10は、略円筒状をなすモータケーシング本体11の上端を冷却水用インペラケース15によって塞いたものである。モータケーシング本体11は、上端閉塞部の中心に軸方向に沿って貫通する回転軸支持部12が設けられている。この回転軸支持部12は、モータケーシング本体11内に向けて延びる円筒状をなし、その内周部には上側スリーブ13が配設されている。また、モータケーシング本体11には、内部中間位置にモータステータ14が配設されている。このモータステータ14は、コアの周囲にコイルが巻回されたものである。
【0019】
冷却水用インペラケース15は略円錐筒形状をなし、その下端開口部に冷却水用インペラ配設部16が形成されている。この冷却水用インペラ配設部16の上部には、略円柱状をなす空間からなる注水ポケット17が形成されている。この注水ポケット17の外周部には、循環冷却機構45の接続管46を接続する第1注水口18が設けられている。この冷却水用インペラケース15の上端開口は、モータカバー19により塞がれている。このモータカバー19には、循環冷却注水機構50の第2配管部52を接続する第2注水口20が設けられている。
【0020】
ヒートバリア21は、モータケーシング10の下部に水密状態で配設されている。図2に示すように、ヒートバリア21は、内部に断熱空間部22を備えている。この断熱空間部22は、外周部から径方向内向きに窪む凹部からなり、その外周の開口部がカバー23により閉塞されている。ヒートバリア21には、中心に位置するように軸方向に貫通する孔からなる軸貫通部24が設けられている。この軸貫通部24の上部は、拡径された回転軸支持部25とされている。この回転軸支持部25の内部には、回転軸36の下部を回転可能に支持する下側スリーブ26が配設されている。また、ヒートバリア21には、外周部から回転軸支持部25にかけて径方向に貫通する高圧冷却水路27が設けられている。この高圧冷却水路27の外側端部は、循環冷却機構45の接続管46を接続する注出口を構成する。
【0021】
さらに、ヒートバリア21には、断熱空間部22の上側に位置するように、低圧冷却水路28が設けられている。この低圧冷却水路28は、図3に示すように、軸貫通部24および高圧冷却水路27と交差することなく、軸貫通部24の外周に位置するように穿設した複数(本実施形態では4本)の直線的な貫通孔29a〜29dにより構成される。例えば、第1の貫通孔29aの一端を流入口とし、他端を閉塞する。また、第1の貫通孔29aと交差するように第2の貫通孔29bを形成し、その両端を閉塞する。さらに、第2の貫通孔29bと交差するように第3の貫通孔29cを形成し、その両端を閉塞する。そして、第3の貫通孔29cと交差するように第4の貫通孔29dを形成し、その一端を閉塞し、他端を流出口とする。これにより、第1の貫通孔29aの一端の流入口から第4の貫通孔29dの他端の流出口にかけて連通した水路を形成する。そして、この水路に図示しない低圧冷却水供給機構からの低圧冷却水を通水することにより、モータケーシング10の側とポンプケーシング32の側との遮熱を図る構成としている。なお、図1および図2は、高圧冷却水路27および低圧冷却水路28を図示するために、形式的に対向位置に配置したものである。
【0022】
そして、本実施形態のヒートバリア21には、図2に示すように、インペラ39との間に軸貫通部24と連通するバランス室42を形成するための第1バランスリング30が円環状をなすように設けられている。また、ヒートバリア21には、断熱空間部22から第1バランスリング30内に貫通する注出孔31が設けられている。
【0023】
ポンプケーシング32は、略半球形状をなす中空状のもので、ヒートバリア21の下部に水密状態で配設されている。このポンプケーシング32には、モータケーシング10の軸方向に沿って突出する円筒状の吸込部33が設けられるとともに、この吸込部33の軸方向に対して交差するように径方向外向きに突出する円筒状の吐出部34が設けられている。ポンプケーシング32の内部は、吸込部33から吸い込んだ熱水を吐出部34へ案内するためのガイドベーン35により区画されている。
【0024】
回転軸36は、中空状をなすモータケーシング10内からポンプケーシング32内にかけて、ヒートバリア21の軸貫通部24を貫通させて配設されたものである。本実施形態では、モータケーシング本体11内に配設される回転軸本体37と、ポンプケーシング32内に配設されるインペラ39に形成した軸部39aと、冷却水用インペラケース15内に配設される冷却水循環用インペラ44に形成した軸部44aとを、一体的に連結することにより1本の回転軸36を構成している。回転軸本体37の下部には、ヒートバリア21の軸貫通部24を貫通する貫通軸部37aが設けられ、その下端にインペラ39を貫通して固定する固定軸部37bが設けられている。なお、インペラ39および冷却水循環用インペラ44の軸部39a,44aは、回転軸本体37と一体成形することも可能である。
【0025】
この回転軸36は、上側スリーブ13とモータステータ14と下側スリーブ26とで、回転可能に支持されている。また、回転軸36には、モータステータ14に対して径方向内側に位置するようにモータロータ38が設けられている。このモータロータ38は、磁石(図示せず)を内蔵しており、モータケーシング10の外部に位置する磁石(図示せず)の回転により、回転軸36を一体的に回転させるものである。
【0026】
インペラ39は、ポンプケーシング32のガイドベーン35内に配設されている。このインペラ39には、円板状をなす主板から回転軸本体37に連結される軸部39aが突設されるとともに、固定軸部37aを貫通する貫通孔が設けられている。インペラ39の主板の下面側にはインペラ羽根40が設けられ、このインペラ羽根40により、ポンプケーシング32の吸込部33から吸い込んだ熱水を吐出部34から吐出する。そして、本実施形態のインペラ39には、主板の上端面から環状をなすように上向きに突出し、ヒートバリア21の第1バランスリング30の内面に摺接する第2バランスリング41が設けられている。これにより、ヒートバリア21とインペラ39との間には、軸貫通部24と連通するバランス室42が形成される。また、インペラ39の主板には、インペラ羽根40を設けた下側面から第2バランスリング41内(バランス室42内)に位置するように上端面にかけて貫通する熱水通水孔43が設けられている。
【0027】
冷却水循環用インペラ44は、回転軸36を回転させた稼働中に、モータケーシング10内の冷却水を循環供給する循環冷却機構45の一部を構成するもので、図1に示すように、モータケーシング10の冷却水用インペラケース15内に配設されている。この冷却水循環用インペラ44には、円板状をなす主板から回転軸本体37に連結される軸部44aが突設されている。この冷却水循環用インペラ44は、注水ポケット17内を臨むように開口した吸込流路と、この吸込流路の下端から放射状をなすように径方向外向きに延びる吐出流路とが形成されている。この流路により冷却水循環用インペラ44は、上方の注水ポケット17内の冷却水を下向きに吸い込んで径方向外向きに吐出することにより、回転軸支持部12を通してモータケーシング本体11内で下向きの水流を付与する。
【0028】
循環冷却機構45は、モータケーシング10の上部である注水ポケット17の第1注水口18と、モータケーシング10の下部であるヒートバリア21の注出口とを、迂回するように接続する接続管46を備えている。この接続管46には、上向きに延びる部分にモータクーラ47が配設されている。このモータクーラ47は、低圧冷却水入口48と低圧冷却水出口49を備え、図示しない低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が供給されることにより、接続管46内を流動する昇温した冷却水を冷却する熱交換器である。
【0029】
循環冷却注水機構50は、モータケーシング10を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温した冷却水(以下「昇温水」という。)を、圧力差によってモータケーシング10の上端に自然循環(自己注水)するものである。この循環冷却注水機構50は、モータケーシング10の外側で上下方向に延びるように配管される第1配管部51を備えている。この第1配管部51は、下端がヒートバリア21の断熱空間部22のカバー23を貫通し、内部に位置する注出孔31に接続される。これにより第1配管部51は、注出孔31およびバランス室42を介して軸貫通部24に連通する。また、第1配管部51は、その上端がモータケーシング10の上端を越えて上方に位置するように延びている。この第1配管部51の上端には、モータケーシング10に循環注水するための第2配管部52が接続されている。この第2配管部52は、上端が第1配管部51に接続(連通)され、モータケーシング10の上方に向けて下向きに傾斜する傾斜管部53と、この傾斜部から垂下するように屈曲して下端がモータケーシング10の第2注水口20に接続(連通)される垂直管部54とを備えている。
【0030】
そして、この第2配管部52の垂直管部54には、注水クーラ55とオリフィス58とが配設されている。注水クーラ55は、循環冷却機構45のモータクーラ47と同様に、低圧冷却水入口56と低圧冷却水出口57を備え、図示しない低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が供給されることにより、第2配管部52内の昇温水を冷却する熱交換器である。オリフィス58は、第2配管部52からモータケーシング10内へ注水する流体量を安定的に微量に維持するものである。
【0031】
また、本実施形態の循環ポンプには、モータケーシング10の内部で発生した気体、および、循環冷却注水機構50内またはバランス室42内で発生した気体を、外部に排出するためのガス排出機構59が更に設けられている。このガス排出機構59は、第1配管部51の上端に、下端を接続(連通)した第3配管部60を備えている。即ち、本実施形態では、第1配管部51の上端に、第2配管部52と第3配管部60とが略T字形状をなすように分岐接続されている。そして、第2配管部52は、昇温水を冷却してモータケーシング10内に冷却水を循環注水するための注水管と、モータケーシング10内のガスを排出するための排出管の役割をなす。第3配管部60は、第1配管部51の上端から更に上向きに傾斜して延び、その上端がポンプケーシング32の吸込部33へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管63に接続(連通)されている。そして、この第3配管部60には、ガス抜き弁61とオリフィス62とが介設されている。ガス抜き弁61は、常時全閉とした仕切弁であり、モータケーシング10への初期冷却水充填時や、使用によってモータケーシング10内にガスが滞留した際に、一時的に微開状態とすることにより、ガスを外部に排出するものである。オリフィス62は、第3配管部60内を流動する流体量が微量になるように抵抗を付与し、吸込側ボイラ配管63内の熱水がモータケーシング10内へ直接流入することを防止するものである。
【0032】
このように構成した循環ポンプは、ポンプケーシング32の吸込部33に吸込側ボイラ配管63が接続され、ポンプケーシング32の吐出部34に吐出側ボイラ配管64が接続される。なお、吸込側ボイラ配管63は、上端が循環ポンプの上端を越えて上方に延びるように配管されている。本実施形態の循環ポンプの使用例の1つである発電設備では、吐出側ボイラ配管64が水を過熱して蒸気を生成するボイラに接続され、吸込側ボイラ配管63が蒸気を高温の熱水とする復水器に接続される。そして、発電設備は、ボイラで生成された蒸気で、発電機に連結したタービンを回転させる。タービンを回転させた蒸気は、復水器によって高温の熱水に戻される。この熱水を本実施形態の循環ポンプにより循環供給する。
【0033】
次に、第1実施形態の循環ポンプの動作について具体的に説明する。
【0034】
まず、ヒートバリア21の低圧冷却水路28、循環冷却機構45のモータクーラ47、および、循環冷却注水機構50の注水クーラ55には、低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が常に供給されている。
【0035】
そして、稼働中には、回転軸36の回転により、インペラ39と冷却水循環用インペラ44が回転する。これにより、ポンプケーシング32では、インペラ39の回転により、吸込側ボイラ配管63を介して復水器から熱水を吸い込んで、ボイラへ循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ44の回転により、冷却水がモータケーシング10内で下向きに流動する水流が付与される。そして、モータケーシング10の下部の冷却水は、冷却水循環用インペラ44による送水作用により接続管46に吸い込まれ、モータクーラ47にて冷却されて注水ポケット17に循環供給される。
【0036】
この際、循環冷却注水機構50では、冷却水循環用インペラ44の送水作用によって、昇温した昇温水を冷却してモータケーシング10の上端に注水する。即ち、この循環ポンプでは、冷却水循環用インペラ44が回転すると、その送水作用によって循環冷却注水機構50のバランス室42の内圧が、注水ポケット17の内圧およびポンプケーシング32の内圧より高くなる。これにより、モータケーシング10内を通過することにより昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温したバランス室42内の昇温水が、第1配管部51および第2配管部52を通り、注水クーラ55にて冷却されてモータケーシング10の上端の注水ポケット17に注水される。その結果、ポンプケーシング32内の熱水がバランス室42内に流入することを防止できる。また、オリフィス58によりモータケーシング10内への注入量を調整できるため、バランス室42内の昇温水がポンプケーシング32内に流入することを抑制できる。
【0037】
具体的には、図4に実線で示すように、冷却水循環用インペラ44を通過したポンプケーシング32内では、出口であるヒートバリア21の軸貫通部24の容積(開口面積)が小さいため、圧力が急激に高くなる。その後、軸貫通部24より容積が大きいバランス室42に至るまでに、徐々に圧力が低下する。そして、循環冷却機構45では、破線で示すように、接続管46を通して上方の注水ポケット17に向かうに従って更に圧力が徐々に低くなる。一方、循環冷却注水機構50では、軸貫通部24を通過してバランス室42に至ると、モータケーシング10内より急勾配で圧力が低下する。しかし、注出孔31の開口部では、注水ポケット17より高圧となるように構成されている。そして、第1配管部51では、上方に進むにつれて徐々に圧力が低くなる。但し、この状態での圧力は、バランス室42内の圧力より低い。その後、第2配管部52の注水クーラ55を通過する間に圧力が徐々に低下し、注水クーラ55の通過後にはオリフィス58を通過するまで略定圧に維持される。オリフィス58を通過して容積が大きい注水ポケット17に至ると、急激に圧力が低下した後、冷却水循環用インペラ44を通過する。なお、第1配管部51の上端より更に上方に延びる第3配管部60では、オリフィス62を通過するまで更に圧力が徐々に低下し、オリフィス62を通過すると急激に低下する。
【0038】
このように、循環ポンプの稼働中には、循環冷却機構45および循環冷却注水機構50によって、モータケーシング10内の冷却水を下部から上部へ循環供給することができる。そのため、インペラ39の熱水通水孔43を通してバランス室42内に流入しようとする熱水は、その通水作用によってバランス室42内への流入が防止される。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0039】
一方、暖待機中には、回転軸36が停止されるため、インペラ39と冷却水循環用インペラ44が停止している。これにより、ポンプケーシング32では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ44による冷却水の水流(循環)が停止される。よって、従来では、この暖待機状態でモータケーシング10およびポンプケーシング32の間で水の置換現象が生じる。しかし、本実施形態では、暖待機中にも循環冷却注水機構50によって循環注水が行われるため、水の置換現象を防止できる。
【0040】
即ち、この暖待機中には、モータケーシング10内の通過により昇温するとともに、ポンプケーシング32内の熱水により昇温したバランス室42内の昇温水が、第1配管部51の上端の分岐点まで充満している。同様に、分岐点より下流側の第2配管部52内にも昇温水が充満するが、この第2配管部52では昇温水が注水クーラ55にて冷却される。そのため、第1配管部51内の第1水柱の密度と第2配管部52内(垂直管部54内)の第2水柱の密度とを比較すると、第2水柱の密度が高くなる。よって、これらの水柱は、同一水頭であっても静的圧力が異なる。その結果、この圧力差が駆動力となって、ヒートバリア21の軸貫通部24内から下方に降り、バランス室42を通って第1配管部51を上昇し、モータケーシング10の上端へ向かう水流(自然循環流)が付与される。
【0041】
具体的には、図5に示すように、第1配管部51から第2配管部52の注水クーラ55の低圧冷却水入口56に至るまでの水温は同一であり、密度も同一である。一方、注水クーラ55に流入した昇温水は、低圧冷却水によって徐々にかつ十分に冷却され、それに伴って密度が徐々に高くなる。このような両水柱の熱的各平衡における各温度分布の相違に基づく静的圧力差が、循環回路の注水の流れによる総圧力損失と平衡するような自然循環流(流体の密度流)を形成する。そして、モータケーシング10内に第2水柱を構成する冷却水が注入されると、モータケーシング10内および循環冷却機構45の接続管46内を下向きに流動する。ついで、出口であるヒートバリア21の軸貫通部24に至ると、熱水との置換作用によりバランス室42に至るまでに水温が徐々に上がり、それに従って密度が徐々に低下する。その結果、バランス室42内の昇温水が、モータケーシング10の上端からの注入作用により、第1配管部51内を介して、第2配管部52の注水クーラ55に流入して冷却される自己注水流を形成する。
【0042】
このように、本発明の循環ポンプでは、暖待機中においても循環冷却注水機構50によって、モータケーシング10内の冷却水を下部へ降ろして第1配管部51を介してモータケーシング10の上部へ循環供給することができる。そのため、インペラ39の熱水通水孔43を通してバランス室42内に流入しようとする熱水は、その通水作用によってバランス室42内への流入が防止される。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0043】
なお、モータケーシング10内では、気体の1つである溶解ガスが経時的に自然発生することがある。そして、このガスは、稼働時に回転軸36を空運転現象を生じさせる。このモータケーシング10内で発生したガスは、モータケーシング10の上端である注水ポケット17に溜まる。しかし、本実施形態では、モータケーシング10の上端に第2配管部52を接続している。そのため、稼働中および暖待機中のいずれの状態でも、ガス抜き弁61を一時的に開放することにより、高圧なモータケーシング10内のガスを外部に排出することができる。
【0044】
具体的には、稼働中には、冷却水循環用インペラ44の回転により、ポンプケーシング32の内圧よりバランス室42の内圧が高い。同様に、吸込側ボイラ配管63の流れによる圧力損失は小さいため、吸込側ボイラ配管63と第3配管部60との分岐接続部の圧力より、バランス室42の圧力が高くなる。したがって、この稼働中にガス抜き弁61を一時的に開操作した場合は、圧力差によって第1配管部51を経由して、バランス室42の熱水が、吸込側ボイラ配管63に流出する。この熱水の流出に伴い、配管部51,52,60内やモータケーシング10の上部に溜まったガスを吸込側ボイラ配管63へ排出できる。
【0045】
一方、暖待機中には、熱水の循環供給による流れがないため、ポンプケーシング32内とバランス室42は同一圧力である。また、吸込側ボイラ配管63でも流れが無いため、吸込側ボイラ配管63と第3配管部60の分岐接続点とバランス室42も同一圧力である。この状態で、ガス抜き弁61を一時的に開操作すると、配管部51,52,60内やモータケーシング10の上部に溜まったガスが、吸込側ボイラ配管63に向かって移動する。但し、暖待機状態でのガス抜きは、注水クーラ55およびモータクーラ47で構成される冷水柱と、これに相当する高さの吸込側ボイラ配管63の熱水柱の間で、吸込側ボイラ配管63からモータケーシング10へ向けた水流が発生する。しかし、その流速は極めて小さく、モータケーシング10内のガスが連続的または気泡状に吸込側ボイラ配管側へ逃げ去ることを妨げるものでない。
【0046】
そして、これら稼働中および暖待機中のガス抜きによる双方向の流体移動量は、オリフィス62による流体抵抗を調整することで調整できる。なお、使用中にモータケーシング10内にガスが溜まると、上部が気相となるため、注水クーラ55の冷却機能が不足する。よって、このガスの発生状況は、モータケーシング10内の冷却水温度を検出するための温度センサを配設することにより、検出することができる。そのため、温度センサの検出値が、予め設定したしきい値を越えると、ガス抜き弁61を短時間開操作することにより、ガス排出処理を手動または自動で実行するように構成することが好ましい。
【0047】
このように、本発明の循環ポンプでは、ヒートバリア21の軸貫通部24と連通する第1配管部51と、注水クーラ55を配設した第2配管部52とを備えた循環冷却注水機構50により、稼働中および暖待機中のいずれの状態でも、ヒートバリア21の軸貫通部中の昇温水を冷却してモータケーシング10の上部に循環注水する水流を付与できる。よって、ヒートバリア21の軸貫通部24を通して、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング32内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング32内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0048】
また、循環冷却注水機構50による自己注水量は、第2配管部52に介設したオリフィス58により調整できる。即ち、このオリフィス58による流体抵抗を調整することにより、循環冷却注水機構50による強制循環量を調整(削減)できる。その結果、稼働中には、冷却水循環用インペラ44の軸動力を削減し、注水クーラ55での昇温水の熱除去(熱損失)を削減できる。また、暖待機中には、自己注水量に比例するポンプケーシング32内の熱水の熱量損失を削減し、注水クーラ55での除去熱量を削減できる。そして、冷却水から熱水までの温度範囲に対して、適切な自己注水量を調整および設定することにより、ヒートバリア21の軸貫通部24の隙間に一定の下向き流速を与え、ポンプケーシング32内の熱水がモータケーシング10内に浸入することを効果的に防止できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、第1配管部51の上端に吸込側ボイラ配管63に連通する第3配管部60を更に設けるとともに、第3配管部60にガス抜き弁61を介設しているため、モータケーシング10内にて、経時的に自然発生した気体をモータケーシング10の外部に排出できる。よって、稼働中に回転軸36が空運転状態となることによる損傷を防止できる。
【0050】
そして、本発明の循環ポンプは、モータケーシング10の下部にポンプケーシング32を位置させた正立式のものであるため、設備の構築時には、モータケーシング10および循環冷却機構45を配設するための大掛かりな基礎や建屋が不要であるため、設備構築費用を低減できる。
【0051】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の循環ポンプを示す。この第2実施形態では、第1配管部51を軸貫通部24の中間位置に接続した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第2実施形態では、ヒートバリア21における軸貫通部24の下部に、径方向外向きに広がったバッファ室65が設けられている。そして、ヒートバリア21には、このバッファ室65内に開口するように、第1配管部51を接続する注出孔31が設けられている。
【0052】
また、バッファ室65には、バランス室42の側に連通する下端開口部にスロットルブッシュ66が設けられている。また、回転軸36を構成する回転軸本体37の貫通軸部37aには、スロットルブッシュ66の径方向内側に位置するようにスロットルリング67が配設されている。そして、これらスロットルブッシュ66とスロットルリング67の間の隙間の設定により、モータケーシング10からバッファ室65内に流入する冷却水量、および、ポンプケーシング32からモータケーシング10へ流入しようとする熱水量を調整している。
【0053】
このように構成した第2実施形態の循環ポンプは、回転軸36を回転させた稼働中、および、回転軸36の回転を停止した暖待機中のいずれの状態でも、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図7乃至図10は第3実施形態の循環ポンプを示す。この第3実施形態では、図7に示すように、第1配管部51を軸貫通部24の上部に接続した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第3実施形態では、図8に示すように、高圧冷却水路27と平行に位置するように、注出孔31を設け、この注出孔31、軸貫通部24および高圧冷却水路27と交差しないように、低圧冷却水路28を構成する貫通孔29a〜29dを形成している。なお、図7,9,10では、高圧冷却水路27および注出孔31を図示するために、形式的に対向位置に配置したものである。
【0055】
このように構成した第3実施形態では、循環冷却注水機構50は、第1実施形態と比較してヒートバリア21の軸貫通部24を通過する前に、モータケーシング10へ冷却水を循環供給する。そのため、図9に示すように、ヒートバリア21の軸貫通部24およびバランス室42を通過することによる圧力変動を削減できる。よって、稼働時の循環冷却注水機構50による自己循環流を容易に設定できる。
【0056】
また、暖待機中には、図10に示すように、冷却水がポンプケーシング32内の熱水で昇温することを抑制できる。そのため、モータケーシング10内の冷却水として使用可能な温度帯まで冷却する温度差が小さいため、注水クーラ55での除熱冷却量が小さくなり、熱水の熱量損失も小さくできる。また、モータケーシング10内の冷却水の水質は、熱水と比較してマグネタイト粒子やスケール成分が少ないため、上側スリーブ13、モータステータ14および下側スリーブ26などの軸受けや合成樹脂絶縁物などの摩耗を抑制できる。
【0057】
(第4実施形態)
図11は第4実施形態の循環ポンプを示す。この第4実施形態では、第2配管部52に、注水クーラ55によって冷却した冷却水をモータケーシング10内へ強制的に供給するポンプ68を配設した点で、第1実施形態と相違している。このポンプ68は、循環冷却注水機構50の第2配管部52において、注水クーラ55の下流側に介設したキャンドモータ式ポンプからなる。このキャンドモータ式のポンプ68は、モータのコイルを缶(キャン)に収めて防水し、水中でも使用できるようにしたものである。
【0058】
このように構成した第4実施形態は、回転軸36を回転させた稼働中には、冷却水循環用インペラ44の駆動により、注出孔31での圧力が第2注水口20の圧力より高くなることはない。よって、ポンプ68を駆動しなくても確実に循環冷却注水機構50による循環注水流を形成することができる。よって、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0059】
一方、回転軸36の回転を停止した暖待機中には、ガス抜き弁61の一時的な開操作時や、この循環ポンプを接続した設備の予期しない故障時などに、吸込側ボイラ配管63内の圧力や、水温に急激な変動が生じた場合、自己注入(密度)流が減少、中断または逆流する可能性がある。しかし、本実施形態では、暖待機中にポンプ68を駆動させることにより、予期せぬ圧力変動などが生じても確実にヒートバリア21の軸貫通部24からモータケーシング10の上端へ向かう水流を付与できるとともに、モータケーシング10内の冷却水が外部に流出することを防止できる。よって、確実にモータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。
【0060】
また、モータケーシング10内のガスを排出する際には、ポンプ68を停止した状態でガス抜き弁61を一時的に開操作することにより、各実施形態と同様に、ガスを排出できる。
【0061】
なお、本発明の循環ポンプは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、各実施形態では、稼働中に循環冷却機構45と循環冷却注水機構50の2つの閉回路にて冷却水を循環供給する構成としたが、稼働中は循環冷却機構45による循環冷却作用で十分な機能を果たすことができる。よって、循環冷却注水機構50の第1配管部51または第2配管部52に閉止弁を配設し、暖待機中のみ開状態として循環注水作用を行うようにしてもよい。
【0063】
また、第4実施形態では、ポンプ68を第2配管部52に介設したが、第1配管部51に介設してもよい。また、第4実施形態では、第1実施形態に示す循環ポンプに強制循環用のポンプ68を配設したが、第2または第3実施形態に示す循環ポンプに強制循環用のポンプ68を配設してもよい。
【0064】
そして、前記実施形態では、本発明の循環ポンプを発電設備に使用する例を挙げて説明したが、使用用途は発電設備に限られるものではない。
【符号の説明】
【0065】
10…モータケーシング
17…注水ポケット
21…ヒートバリア
24…軸貫通部
31…注出孔
32…ポンプケーシング
33…吸込部
34…吐出部
36…回転軸
39…インペラ
42…バランス室
44…冷却水循環用インペラ
45…循環冷却機構
46…接続管
47…モータクーラ
50…循環冷却注水機構
51…第1配管部
52…第2配管部
55…注水クーラ
58…オリフィス
59…ガス排出機構
60…第3配管部
61…ガス抜き弁
63…吸込側ボイラ配管
64…吐出側ボイラ配管
65…バッファ室
68…ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、
下端が前記ヒートバリアの軸貫通部と連通し上端が前記モータケーシングを越えて上方に延びる第1配管部と、上端が前記第1配管部の上端に連通し下端が前記モータケーシングの上端に連通する第2配管部と、この第2配管部に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、前記ヒートバリアの軸貫通部内に位置する熱水または軸貫通部に流入する熱水を前記熱交換器で冷却して前記モータケーシングの上端に循環注水する循環冷却注水機構を設けたことを特徴とする循環ポンプ。
【請求項2】
下端が前記第1配管部の上端に連通し、上端が前記ポンプケーシングの吸込部へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管に連通する第3配管部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の循環ポンプ。
【請求項3】
前記第3配管部に、前記モータケーシング内の気体または前記注水配管内の気体を外部に排出するガス抜き弁を配設したことを特徴とする請求項2に記載の循環ポンプ。
【請求項4】
前記第2配管部に、前記モータケーシング内へ液体を供給するポンプを配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の循環ポンプ。
【請求項1】
上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、
下端が前記ヒートバリアの軸貫通部と連通し上端が前記モータケーシングを越えて上方に延びる第1配管部と、上端が前記第1配管部の上端に連通し下端が前記モータケーシングの上端に連通する第2配管部と、この第2配管部に介設され内部の熱水を冷却する熱交換器とを備え、前記ヒートバリアの軸貫通部内に位置する熱水または軸貫通部に流入する熱水を前記熱交換器で冷却して前記モータケーシングの上端に循環注水する循環冷却注水機構を設けたことを特徴とする循環ポンプ。
【請求項2】
下端が前記第1配管部の上端に連通し、上端が前記ポンプケーシングの吸込部へ熱水を供給する吸込側ボイラ配管に連通する第3配管部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の循環ポンプ。
【請求項3】
前記第3配管部に、前記モータケーシング内の気体または前記注水配管内の気体を外部に排出するガス抜き弁を配設したことを特徴とする請求項2に記載の循環ポンプ。
【請求項4】
前記第2配管部に、前記モータケーシング内へ液体を供給するポンプを配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の循環ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−153533(P2011−153533A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14207(P2010−14207)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】
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