説明

循環型再生水利用方法

【課題】野菜など食品の温室栽培等においては人工化学品による溶液栽培により農産物の安全確保が課題となっている。また同様に高級なスッポン等の水生生物の養殖においては、養殖対象の食物や排泄物で水槽が汚染され、臭気発生や病気による死滅があり、抗生物質の投与などにより対応しているため薬品代がかかり、また衛生面や食の安全性確保においても課題がある。
【解決手段】有用微生物を含む再生水、光等を屋内型植物栽培施設、または屋内型養殖施設へ供給し、且つ該施設からの排水を再利用することを特徴とする、循環型植物栽培方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生活系及び有機系排水処理施設により製造される有用微生物を多量に含む再生水を透明材で出来た屋根を有する植物栽培施設に施肥し、再生水製造施設のばっ気槽から排出される炭酸ガスを多く含んだ排気や近隣の燃焼施設を有する工場等から排出される炭酸ガスを多く含んだ空気、及び太陽光又はLED照明等の人工照明を該屋内型植物栽培施設に供給することによる、循環型植物栽培方法を提供することに関する。更に本発明は、上記有用微生物を多量に含む再生水を水生生物、又はスッポン等の屋内養殖施設に供給し、そして太陽光又はLED照明等の人工照明を該屋内養殖施設に供給することによる、循環型養殖方法を提供することに関する。また更に該循環型植物栽培方法と、該循環型養殖方法を組合せた循環型再生水利用方法にも関する。いずれの方法も施設内から排出される排水を同一系内で再利用することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
従来の循環型施設栽培方法は、図1に示す通り、植物工場1で植物を栽培する栽培工程と、栽培工程において発生する栽培残渣をメタン発酵設備3でメタン発酵されるメタン発酵工程と、メタン発酵工程で生成するバイオガスを燃料として熱併給型発電装置5に供給して発電する発電工程もしくはバイオガスを燃料としてボイラーに供給して燃焼させる燃焼工程を有し、発電工程もしくは燃焼工程で発生する電気、熱、炭酸ガスのうちで少なくとも何れかを栽培工程で消費する資源として植物工場1へ供給する、というものである。
【0003】
特開平07−15164「光放射測定器」(松下電器産業(株))では、人工光源のもとで植物栽培を行う場合に使用する光源のもとで植物栽培を行う場合に使用する光源の植物生育の効率を定量的に評価できる光放射測定器について開示している。特開平06−245651「植物栽培装置」(ダイキン工業(株))では、光合成作用実現のための照明器具を効率よく冷却し得るとともに同時に植物の生育に必要な湿度への加湿機能を得る植物工場用の植物栽培装置について開示している。更に特開2003−23887「循環型施設栽培方法」((株))クボタ)では、生ごみ、家畜糞尿、施設栽培の栽培残渣等の有機性廃棄物を施設栽培に必要な資源として利用する循環型施設栽培方法について開示している。
【0004】
また水生生物の養殖に目を向けると、例えば、従来のスッポン養殖方法は、親亀が産卵した有精卵を孵化場で孵化させ、約15gの孵化した稚亀を冬眠しない温度である20℃〜30℃に温度管理された透明ビニールハウス養殖池で養殖する。当該養殖池は飼育効率と経済性から、ある程度高密度状態で飼育されるので、その衛生環境並びに消毒剤及び抗生物質等の使用による食の安全性確保が問題となっている。
【0005】
特開平7−222540号「浄化処理済みの畜産排水を利用した魚介類の養殖方法」(東洋電化工業株式会社)では、処理済みの畜産排水が海水乃至汽水に近い塩類含有組成を示すという特性を利用して、畜産業と海水性乃至汽水性の魚介類の養殖を複合的に行う魚介類の養殖方法ついて開示している。更に特開平10−249366「完全汚水処理法とその処理法で得られる有用液」(株式会社プリオ)では、各種汚水の完全処理が可能な高効率の微生物学的汚水処理法とその処理法で得られる有用液について開示している。
【0006】
【特許文献1】特開平07−15164号公報
【特許文献2】特開平06−245651号公報
【特許文献3】特開2003−23887号公報
【特許文献4】特開平7−222540号公報
【特許文献5】特開平10−249366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、排水処理施設から排出される処理水は河川や湖沼等に放流すると、その処理水の窒素、リン等が蓄積して富栄養化が進み、アオコ発生等の原因となっている。従って、それを防止するための排水処理施設は窒素、リンを除去するために高価な膜分離処理等により高度処理をして放流している。一方、野菜など食品のハウス栽培、温室栽培においては人工化学品による溶液栽培により農産物の安全確保が課題となっている。また同様に高級な水生生物、又はスッポン等の養殖においては、養殖対象の食物や排泄物で水槽が汚染され、臭気の発生や病気による死滅があり、抗生物質の投与などにより対応しているため薬品代がかかり、また衛生面や食の安全性確保においても課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生活系汚水と食料生産施設の排水等を原料とし、再生水製造施設にて有用微生物培養槽で培養した有用微生物群の添加により、多くの嫌気性菌、好気性菌の働きにより再生水を製造し、該再生水を屋内型植物栽培施設に供給し、ばっ気槽からの炭酸ガス(CO2)と太陽光もしくは人工光により炭酸同化作用を促進させ野菜等の栽培を促進させる方法、及び/又は該再生水と太陽光もしくは人工光を屋内型養殖施設に提供し、水質浄化作用を促進させ水生生物又はスッポン等の成長を促進させる方法を提供する。更に本発明は該屋内型植物栽培施設と屋内型養殖施設を組合せ、各々の施設から排出される高濃度の酸素(O2)と炭酸ガス(CO2)を相互にやり取りして排気ガスを系外に排出しない方法を提供する。尚、いずれの方法も施設内から排出される排水を同一系内で再利用することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する為、具体的には本発明は下記の構成を採用する。
[1] 有用微生物を含む再生水、光、及び炭酸ガスを含む空気を屋内型植物栽培施設へ供給し、且つ該屋内型植物栽培施設からの排水を該再生水の生成のために再利用することを特徴とする、循環型植物栽培方法。
[2] 前記再生水が、有用微生物培養槽、撹拌槽、ばっ気槽、沈殿槽、及び汚泥貯槽から成る再生水製造施設において、生活系汚水を栄養源として、腐植土を充填した該有用微生物培養槽において培養した有用微生物の作用により生成することを特徴とする、[1]に記載の循環型植物栽培方法。
[3] 前記有用微生物が、光合成細菌、放線菌、糸状菌、乳酸菌及び枯草菌から成る群から選定されることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の循環型植物栽培方法。
[4] 前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群からの代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)活性化した珪酸分を多量に含む物質、c)有機物を含んで成ることを特徴とする、[2]に記載の循環型植物栽培方法。
[5] 前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群から産出されたフェノール及び/又はフェノール露出基のある代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)タンパク質又は炭水化物、或いはタンパク質、炭水化物及び脂肪の組合せを、含んで成ることを特徴とする、[2]に記載の循環型植物栽培方法。
[6] 前記炭酸ガスを、前記再生水の製造処理施設内のばっ気槽から排出されて前記屋内型植物栽培施設へ供給し、該屋内型植物栽培施設から排出される排水を、該再生水の製造処理施設内の撹拌槽へ還流し系外に排出せずに再利用することを特徴とする、[1]に記載の循環型植物栽培方法。
[7] 有用微生物を含む再生水、及び光を屋内型養殖施設へ供給し、且つ該屋内型養殖施設からの排水を該再生水の生成のために再利用することを特徴とする、水生生物の循環型養殖方法。
[8] 前記水生生物がスッポンである、[7]に記載の方法。
[9] 前記再生水が、生活系汚水を栄養源として、有用微生物培養槽、撹拌槽、ばっ気槽、沈殿槽、及び汚泥貯槽から成る再生水製造施設において、腐植土を充填した該有用微生物培養槽において培養した有用微生物の作用により生成することを特徴とする、[7]又は[8]に記載の循環型養殖方法。
[10] 前記有用微生物が、光合成細菌、放線菌、糸状菌、乳酸菌及び枯草菌から成る群から選定されることを特徴とする、[7]〜[9]のいずれか1項に記載の循環型養殖方法。
[11] 前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群からの代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)活性化した珪酸分を多量に含む物質、c)有機物を含んで成ることを特徴とする、[9]に記載の循環型養殖方法。
[12] 前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群から産出されたフェノール及び/又はフェノール露出基のある代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)タンパク質又は炭水化物、或いはタンパク質、炭水化物及び脂肪の組合せを、含んで成ることを特徴とする、[9]に記載の循環型養殖方法。
[13] 前記屋内型養殖施設から排出される排水を、前記再生水の製造処理施設内の撹拌槽へ還流し系外に排出せずに再利用することを特徴とする、[7]又は[8]に記載の循環型養殖方法。
[14] 前記[1]に記載の循環型植物栽培方法と、[7]に記載の循環型養殖方法とを組合せることを特徴とする循環型再生水利用方法であって、該栽培方法における屋内型植物施設から排出される酸素及び該養殖方法における屋内型養殖施設から排出される二酸化炭素を相互に利用することを含んで成る、循環型再生水利用方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義:
本明細書における用語、「生活系汚水」とは、家庭のトイレから排出される汚水と洗面、浴室、台所、洗濯等から排出される雑排水を合流させた排水で有害物質を含まないで、且つ有機質成分の濃度が高い排水を言う。
【0011】
本明細書における用語、「攪拌槽」とは、溶存酸素濃度を低く制御した環境で嫌気性菌を主体とした活性汚泥と生活系排水を攪拌、混合させて、微生物により有機質を主に発酵、還元により分解処理するための水槽を言う。
【0012】
本明細書における用語、「ばっ気槽」とは、ブロアーなどで圧縮空気を送り、溶存酸素濃度を高くした環境で好気性菌を主体として活性汚泥の好気性微生物が有機物を分解しながら増殖してきて、綿状の浮遊物(活性汚泥)を形成するための水槽を言う。
【0013】
本明細書における用語、「沈殿槽」とは、活性汚泥を静置すると凝集・沈殿する性質を利用して、活性汚泥と上澄水を分離するための水槽を言う。
【0014】
本明細書における用語、「汚泥貯槽」とは、沈殿槽で分離した活性汚泥を貯留する水槽を言う。
【0015】
本明細書における用語、「有用微生物培養槽」とは、天然の腐植土をペレット状に充填し、適度な酸素を供給し、活性汚泥と接触させて有用微生物を繁殖させる水槽であって、一種のバイオリアクターを言う。
【0016】
本明細書における用語、「コンポスト」とは、有機物を微生物等の力を借りて分解すること、又はその分解されてできた堆肥を言う。
【0017】
本明細書における用語、「ヒートポンプ」とは、大気中等に低レベルで大量に存在する排熱等を有効利用するための熱のポンプであって、圧縮機(コンプレッサ)と膨張弁を利用して冷媒を気化したり液化して、効率よく汲み上げ、移動させることにより冷却や加熱を行うポンプを言う。
【0018】
本明細書における用語、「水生生物」とは、海水、淡水を問わず、魚類、海草類、貝類、海老及び蟹、鰻、亀等を含む。
【0019】
本明細書における用語、「屋内型植物栽培施設」とは、自然光を取り入れるための透明な材料による屋根と、人工光源による照明装置、再生水供給装置、炭酸ガス供給装置、栽培施設内環境制御装置から構成される、植物を栽培するための施設を言う。
【0020】
本明細書における用語、「屋内型養殖施設」とは、自然光を取り入れるための透明な材料による屋根と、人工光源による照明装置、再生水供給装置、養殖施設内環境制御装置から構成される、水生生物又はスッポン等を養殖するための施設を言う。
【0021】
本発明の一の態様は、生活系汚水を原料とし、再生水製造施設にて有用微生物培養槽で培養した有用微生物群の添加により、多くの嫌気性菌、好気性菌の働きにより再生水を製造し、該再生水を屋内型植物栽培施設に供給し、ばっ気槽からの炭酸ガス(CO2)と太陽光もしくは人工光により炭酸同化作用を促進させ野菜等の栽培を促進させ、屋内型植物栽培施設から排出する排水は再生水製造施設に還流させる、循環型植物栽培方法である。
【0022】
本態様は図2に示す通り、主に施設周辺の住宅から排出される生活系の排水と当該栽培施設から排出される排水を栄養源として有用微生物培養槽(バイオリアクター)で後述の腐植土を用いて特殊培養した有用菌により、酸化分解処理を行う。有用菌は攪拌槽、ばっ気槽で予め訓養されている活性汚泥と接触させて、ばっ気量の調整により嫌気状態、好気状態を各槽内につくり、その槽の状態に適合した各種有用微生物の作用により排水の汚濁成分を酸化、発酵、還元、分解処理し、次工程の沈殿槽にて固液分離され、上澄水を再生水(液肥)として屋内型植物栽培施設に供給する。沈殿槽で分離された余剰汚泥は別に設けたコンポスト施設で発酵分解させて固体肥料として主に土耕の植物栽培施設に供給する。屋内型植物栽培施設では、ばっ気槽から発生する炭酸ガス(CO2)を収集して、植物栽培施設に供給し、植物の炭酸同化作用の促進をはかる。また、植物栽培施設は透明ガラス等による屋根とし、日中は自然の太陽光、夜間はLED等の人工照明により、野菜などの植物の生産効率を高める。冬期室内を加温する必要がある場合は、再生水製造施設のばっ気槽で生物反応により生じる排熱をヒートポンプで汲み上げて、栽培施設内の加温を行う。夏期で冷却を必要とする場合には、当該ヒートポンプを利用している栽培施設内の温熱を汲み上げて、給湯に利用する。このように、系内から発生する排水や炭酸ガス、温熱を系外に排出することなく系内で利用し、外部に排出する環境負荷の発生しない環境循環系を提供する。
【0023】
上述の通り、該再生水は、生活系汚水を栄養源として、腐植土を充填した有用微生物培養槽において培養した有用微生物の作用により生成する。該有用微生物は、光合成細菌、放線菌、糸状菌、乳酸菌及び枯草菌等から成る群から選定される。前記腐植土は(A)代謝産物(好気性細菌または/及び通性嫌気性細菌の細菌群からの分泌物で、例えば汚泥、汚泥状物質)若しくは代謝産物を多量に含む物質、(B)活性化した珪酸分を多量に含む物質(例えば、溶紋岩質の軽石等)、(C)有機物(例えば、動植物のタンパク質、炭水化物)を、好ましくは成分C100(重量比)に対して成分Aを代謝産物自体のときは0.1以上、汚泥若しくは汚泥状物質のときは5以上、成分Bを成分AとCの重量合計の5〜40%の割合で混合して緩速攪拌した後、20日以上成熟させることにより得られる。或いは前記腐食土は、通性嫌気性細菌群または好気性細菌群の共存する細菌群から選ばれた細菌群の代謝作用を通じて産出されたフェノールまたは/及びフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物またはその代謝産物を含む物質を、タンパク質、炭水化物の何れか、或いはタンパク質、炭水化物及び脂肪の組合せよりなり、且つ脂肪分が有機質量の10%以下である有機混合物及び活性化された珪酸分を多量に含む物質に混合し、オートクレーブ中で、温度、全ガス圧、水蒸気圧、水素イオン濃度を一定条件に保ちながら攪拌することによって腐食化反応を進展させた後、嫌気状態で成熟させることにより、短時間で大量に得られる。尚、当該再生水は図10に示す通りのミネラル成分の構成となっており、(財)日本肥糧検定協会によりその安全性が証明されている。
【0024】
本発明の他の態様は、上記再生水を製造し、水生生物又はスッポン等の屋内養殖施設に供給し、そして太陽光又はLED照明等の人工照明を該屋内養殖施設に供給することにより、養殖施設の衛生環境の向上を図り、水生生物又はスッポン等の生育を促進させ、養殖施設で発生する動物の排泄物や排水は再生水製造施設に還流させる、循環型の水生生物、又はスッポン等の養殖方法である。
【0025】
本態様は図3に示す通り再生水の製造工程までは上記循環型植物栽培方法と同じであり、当該再生水を養殖施設中の養殖池に供給する。養殖池では魚類や、スッポン等の主に稚魚、稚亀を養殖し、当該再生水の添加により稚魚の成育を促進させ、病原菌の発生や水質悪化による臭気の発生を抑え、適正な養殖施設の環境を提供する。養殖施設中の養殖池で発生した餌や飼育対象の排泄物による汚濁排水は、再生水製造施設の攪拌槽に返送され、有用微生物により浄化され、再度再生水として利用することができる。
【0026】
更に本発明の他の態様は、前記循環型植物栽培方法と、前記循環型水生生物、又はスッポン等の養殖方法とを組合せることを特徴とする循環型再生水利用方法であって、該栽培方法において排出される酸素及び該養殖方法において排出される二酸化炭素を相互に利用することを含んで成る循環型再生水利用方法である。
【0027】
本態様は図4に示す通り、屋内型植物栽培施設と屋内型養殖施設を隣接させ、該屋内型植物栽培施設で発生する酸素濃度の高い空気を該屋内型養殖施設に供給し、更に該屋内型養殖施設で発生する炭酸ガス(CO2)を該屋内型植物栽培施設に供給し、各々の施設内の効果を高めることができる。該屋内型植物栽培施設、及び該屋内型養殖施設はそれぞれ気密性の高いドームで覆われ、空気を一方から送り、反対側から排気し、空気の流れを一方通行として酸素濃度の高い該屋内型植物栽培施設の排気を該屋内型養殖施設に供給し、反対に炭酸ガス濃度の高い該屋内型養殖施設の排気を該屋内型植物栽培施設に送るものとする。該屋内型植物栽培施設と該屋内型養殖施設を同一のドーム内に設置し、空気の循環機構を設けることもできる。
【実施例1】
【0028】
野菜の水耕栽培:
農業集落からの排水(汚水、雑排水)を再生水製造施設に供給した。再生水製造施設では有用微生物培養槽で培養された有用微生物の働きにより再生水が製造される。製造された再生水は有用微生物の働きにより殺菌作用があり、図5に示す通り有害な大腸菌や一般細菌が殆ど無くなり、塩素剤の添加など滅菌装置を設けることなく、そのまま屋内型植物栽培施設に供給することができる。製造された再生水を透明材料で出来た温室の水耕栽培池に適宜供給し、野菜等の栽培を行った。該屋内型植物栽培施設には昼間は太陽光で、夜間太陽光が不足すると、センサーでハウス内照度を自動探知し、発光ダイオード(LED)などの人工照明で必要な照度を確保した。投入した再生水はその投入量分を排水する必要があり、その余剰分の排水は再生水製造施設にポンプで返送し循環利用した。
【0029】
その再生水の効果は、佐賀市の元相応地区の農業集落排水処理施設で製造した再生水を農家で野菜栽培に使用した結果、以下のような効果があった。佐賀の苺「さがほのか」のハウス栽培では、糖度は通常は12〜14度で、平均13度でも充分甘いとされているが、該再生水を使用した場合、糖度は平均15〜16度となり、色艶も良く良質の苺が出来て商品化率も向上している。また、従来は栽培に農薬は切り離せないものであったが、該再生水を使用することにより土壌消毒の必要がなくなった。同様に、ミニトマトの栽培農家では、該再生水を使用することにより、無農薬で病気が全く発生せず、収穫量が大幅に増加し、糖度が高くなったことが報告されている。また、キャベツの栽培農家では、該再生水を使用することにより土壌の団粒化が促進され、保水能力が向上し、有機堆肥などの発酵分解能力を向上させ、図6に示す通りキャベツの大きさ(重さ)が従来の約2倍に成長し、高品質となり、収穫量が大幅に増加したことが報告されている。更に臭気の脱臭効果に関しては、図7に示す通り、元相応地区の農業集落排水処理施設の臭気濃度と臭気指数データからも明らかなように、従来の処理場内臭気指数40〜25であったものが、20〜15に減少し、その効果は明らかなものである。ハウス栽培においても従来発生していたハウス特有の臭気が減少した。
【実施例2】
【0030】
スッポン養殖:
ここでは実施例1で使用した再生水と同じものを使用した。本発明は気密性のあるガラスやビニール、ポリカーボネートなどの透明な屋根材によるハウス内にコンクリート製の池を1系統2〜4槽設置し、その中で成長段階ごとに分けられた稚亀を入れて飼育を行った。各槽に1月あたり水槽1m3に対して10〜20l(リットル)の再生水製造施設で製造された再生水を投入した。その結果、約一ヶ月経過すると水槽の水は茶色で濁っていたものの透明度が増し、赤色に変化した。これは槽内に光合成細菌(紅色細菌)が繁殖した結果であり、これにより、ハウス内の臭気が大幅に消滅し、ハウス環境が大幅に改善された。また、従来腐敗防止のため槽に消毒剤を投入していたものが、再生水投入後はその必要がなくなり、抗生物質の費用は1月あたり80万円が削減された。更にスッポンの死滅が無くなり、従来に比べて成長速度が速くなり、出荷生産量が4倍となった。スッポンの食材としての品質は、スッポンの色艶がよくなり、以前あった肉の臭気がなくなり、その結果、抗生物質等を使用せずに安全性が確保され、高級品として出荷されるようになった。槽からの排水及び低質(ヘドロ)は排水処理施設にポンプで返送され、有用微生物の働きで処理され循環利用された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の循環型施設における植物栽培方法について説明する。
【図2】本発明に係る循環型植物栽培方法について説明する。
【図3】本発明に係る循環型養殖方法について説明する。
【図4】本発明に係る循環型植物栽培方法と循環型養殖方法について説明する。
【図5】山ノ内町水質浄化センター処理水中の一般細菌数と大腸菌数ついて説明する。
【図6】再生水を使用して栽培したキャベツと再生水を使用しないで栽培したキャベツとの比較ついて説明する。
【図7】再生水製造施設内と対照施設内での臭気濃度及び臭気指数の比較。
【図8】再生水製造施設内と対照施設内での臭気濃度及び臭気指数の比較(7月)。
【図9】再生水製造施設内と対照施設内での臭気濃度及び臭気指数の比較(8月)。
【図10】(財)日本肥糧検定協会による本発明にかかる再生水の安全性の証明書。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用微生物を含む再生水、光、及び炭酸ガスを含む空気を屋内型植物栽培施設へ供給し、且つ該屋内型植物栽培施設からの排水を該再生水の生成のために再利用することを特徴とする、循環型植物栽培方法。
【請求項2】
前記再生水が、有用微生物培養槽、撹拌槽、ばっ気槽、沈殿槽、及び汚泥貯槽から成る再生水製造施設において、生活系汚水を栄養源として、腐植土を充填した該有用微生物培養槽において培養した有用微生物の作用により生成することを特徴とする、請求項1に記載の循環型植物栽培方法。
【請求項3】
前記有用微生物が、光合成細菌、放線菌、糸状菌、乳酸菌及び枯草菌から成る群から選定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の循環型植物栽培方法。
【請求項4】
前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群からの代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)活性化した珪酸分を多量に含む物質、c)有機物を含んで成ることを特徴とする、請求項2に記載の循環型植物栽培方法。
【請求項5】
前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群から産出されたフェノール及び/又はフェノール露出基のある代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)タンパク質又は炭水化物、或いはタンパク質、炭水化物及び脂肪の組合せを、含んで成ることを特徴とする、請求項2に記載の循環型植物栽培方法。
【請求項6】
前記炭酸ガスを、前記再生水の製造処理施設内のばっ気槽から排出されて前記屋内型植物栽培施設へ供給し、該屋内型植物栽培施設から排出される排水を、該再生水の製造処理施設内の撹拌槽へ還流し系外に排出せずに再利用することを特徴とする、請求項1に記載の循環型植物栽培方法。
【請求項7】
有用微生物を含む再生水、及び光を屋内型養殖施設へ供給し、且つ該屋内型養殖施設からの排水を該再生水の生成のために再利用することを特徴とする、水生生物の循環型養殖方法。
【請求項8】
前記水生生物がスッポンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記再生水が、生活系汚水を栄養源として、有用微生物培養槽、撹拌槽、ばっ気槽、沈殿槽、及び汚泥貯槽から成る再生水製造施設において、腐植土を充填した該有用微生物培養槽において培養した有用微生物の作用により生成することを特徴とする、請求項7又は8に記載の循環型養殖方法。
【請求項10】
前記有用微生物が、光合成細菌、放線菌、糸状菌、乳酸菌及び枯草菌から成る群から選定されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の循環型養殖方法。
【請求項11】
前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群からの代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)活性化した珪酸分を多量に含む物質、c)有機物を含んで成ることを特徴とする、請求項9に記載の循環型養殖方法。
【請求項12】
前記腐植土が、a)好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌の細菌群から産出されたフェノール及び/又はフェノール露出基のある代謝産物、或いは当該代謝産物を含む物質、b)タンパク質又は炭水化物、或いはタンパク質、炭水化物及び脂肪の組合せを、含んで成ることを特徴とする、請求項9に記載の循環型養殖方法。
【請求項13】
前記屋内型養殖施設から排出される排水を、前記再生水の製造処理施設内の撹拌槽へ還流し系外に排出せずに再利用することを特徴とする、請求項7又は8に記載の循環型養殖方法。
【請求項14】
前記請求項1に記載の循環型植物栽培方法と、前記請求項7に記載の循環型養殖方法とを組合せることを特徴とする循環型再生水利用方法であって、該栽培方法における屋内型植物施設から排出される酸素及び該養殖方法における屋内型養殖施設から排出される二酸化炭素を相互に利用することを含んで成る、循環型再生水利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−11814(P2008−11814A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188379(P2006−188379)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(506192766)ユニコン・エンジニアリング株式会社 (1)
【出願人】(506025442)株式会社水環境研究所 (4)
【出願人】(503275129)りんかい日産建設株式会社 (9)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】