説明

循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びに燃料循環システム

【課題】比較的弱い力で燃料噴射部へ挿入することができる循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びに燃料循環システムを提供する。
【解決手段】燃料噴射部を備えた内燃機関における、燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに使用され、燃料噴射部と燃料循環用ホースとの間に介在するとともに、燃料噴射部に対して接合される循環用コネクタであって、燃料噴射部の連結部に挿入された状態で連結部に設けられた第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有するとともに、テーパ部における、第2の溝部に近い側の、挿入方向に対する傾斜角度を、第2の溝部から遠い側の、挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びに燃料循環システムに関する。特に、内燃機関の燃料噴射部に対して容易に挿入することができる循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びにそのような循環用コネクタを用いた燃料循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のコモンレールシステムに用いられる燃料噴射弁は、コモンレールから圧送されてくる高圧の燃料を燃料噴射弁内に導入した後、弁体によって先端部の噴射孔を開閉させることにより、内燃機関に対して燃料を噴射している。
ここで、圧送されてくる高圧の燃料は、一旦、燃料噴射弁における圧力制御室に流入した後、その一部を放出することにより弁体を制御して噴射孔を開放し噴射されるが、このとき放出された余剰の燃料や潤滑油として使用された燃料については、燃料循環用ホースを介して、燃料タンクに還流されるように構成されている。
【0003】
このような燃料循環システムにおいては、燃料噴射弁と燃料循環用ホースとを、燃料噴射弁に接合して固定される循環用コネクタを介して接続することにより、燃料を還流させる通路が形成されている。この循環用コネクタと燃料噴射弁又は燃料循環用ホースとの接続が不充分な場合には、内燃機関の振動等によってそれらが外れてしまい、燃料が漏れてしまうおそれがある。このような燃料漏れはエンジン火災の原因にもなるために、それらの接続信頼性を確保する必要がある。
【0004】
そこで、燃料噴射弁から循環用コネクタが外れないようにするために、循環用コネクタを燃料噴射弁に固定するために、バネ力の大きなブラケットを用いる一方で、循環用コネクタを燃料噴射弁に押し込むときの挿入荷重を小さくしたエレメント結合装置が提案されている。
より具体的には、図8に示すように、ポート部材421の周壁に一対の保持開口443を形成し、ここにU字形のクリップ部材444の一対の脚部446を貫通させておき、コネクタ部材431をポート部材421内に押し込んだときに脚部446が一旦押し広げられ、脚部446における突部が保持溝441に係入することによって所要のエレメント結合が達成されるように構成されたエレメント結合装置404において、突部の各曲面をなす円弧の中心同士を結んだ線が保持溝441の円周面441Aの径の中心から所定長さだけずれるようにしてクリップ部材441をポート部材421に取り付けたエレメント結合装置404である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−329184号公報 (図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたエレメント結合装置は、クリップ部材を押し広げながらコネクタ部材をポート部材に挿入する接続構造であり、コネクタ部材を押し込むに連れ、次第にクリップ部材のバネ力が大きくなり、挿入抵抗が大きくなる。すなわち、クリップ部材におけるテーパ状の部分によって、クリップ部材を徐々に押し広げていくにつれ、バネ力が次第に増すため、最終的に押し込むためには、強い力が必要とされる。したがって、作業性が悪く、また、指先に負担がかかるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは鋭意努力し、循環用コネクタのテーパ形状を所定形状とすることにより、上述した問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、燃料噴射弁への挿入を容易かつ効率的に行うことができる循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びにそのような循環用コネクタを用いた燃料循環システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、燃料噴射部を備えた内燃機関における、燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに使用され、燃料噴射部と燃料循環用ホースとの間に介在するとともに、燃料噴射部に対して接合される循環用コネクタであって、燃料噴射部の連結部に挿入された状態で連結部に設けられた第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有するとともに、テーパ部における、第2の溝部に近い側の、挿入方向に対する傾斜角度を、第2の溝部から遠い側の、挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする循環用コネクタが提供され、上述した問題を解決することができる。
【0008】
また、本発明の循環用コネクタを構成するにあたり、テーパ部は、傾斜角度を段階的に変化させてあることが好ましい。
【0009】
また、本発明の循環用コネクタを構成するにあたり、テーパ部の挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状が曲線状であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の循環用コネクタを構成するにあたり、テーパ部の挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状が、曲線部と直線部とが連続した形状であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の循環用コネクタを構成するにあたり、第2の溝部とテーパ部とが連続することが好ましい。
【0012】
また、本発明の循環用コネクタを構成するにあたり、第2の溝部に近い側の傾斜角度を1〜20°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の別の態様は、燃料噴射部を備えた内燃機関における、燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに備えられ、燃料噴射部に対して循環用コネクタを接合するための循環用コネクタの接続構造であって、燃料噴射部は、循環用コネクタが連結される連結部を備え、当該連結部は第1の溝部を有し、循環用コネクタは、連結部に挿入された状態で燃料噴射部の第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、当該第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有し、テーパ部における、第2の溝部に近い側の前記挿入方向に対する傾斜角度を、第2の溝部から遠い側の挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする循環用コネクタの接続構造である。
【0014】
また、本発明のさらに別の態様は、燃料噴射部を備えた内燃機関における、燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムであって、燃料噴射部と燃料循環用ホースとの間に介在し、燃料噴射部に対して接合される循環用コネクタを接合するための循環用コネクタの接続構造を備え、燃料噴射部は、循環用コネクタが連結される連結部を備え、当該連結部は第1の溝部を有し、循環用コネクタは、燃料噴射部の連結部に挿入された状態で連結部に設けられた第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有するとともに、テーパ部における、第2の溝部に近い側の、挿入方向に対する傾斜角度を、第2の溝部から遠い側の、挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする燃料循環システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びに循環用コネクタを用いた燃料循環システムによれば、循環用コネクタが所定形状のテーパ部を備えることにより、燃料噴射部に対して、クリップ部材を比較的弱い力で押し広げながら、容易にかつ効率的に挿入することができるようになった。したがって、作業性が向上するとともに、指先への負担も少なくすることができた。
また、テーパ部の部位によって傾斜角度を異ならせたテーパ部とすることにより、単に傾斜角度を変更した場合のように、燃料噴射部の連結部や循環用コネクタの長さを変更する必要がなくなることから、比較的簡易な構成で、循環用コネクタの挿入を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明にかかる循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造並びに燃料循環システムの実施の形態について詳細に説明する。ただし、かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0017】
本発明にかかる実施の形態は、燃料噴射部を備えた内燃機関における、燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに備えられ、燃料噴射部に対して循環用コネクタ(以下、単にコネクタと称する場合がある)を接合するための循環用コネクタの接続構造である。
かかる循環用コネクタの接続構造において、燃料噴射部は、循環用コネクタが連結される連結部を備え、当該連結部は第1の溝部を有し、循環用コネクタは、燃料噴射部の第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、当該第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有し、テーパ部における、第2の溝部に近い側の挿入方向に対する傾斜角度を、第2の溝部から遠い側の挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしてあることを特徴とする。
【0018】
1.内燃機関
内燃機関としては、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンが典型的であるが、燃料の噴射タイミングや噴射量、圧力等を精密に制御するためのコモンレールシステムを備えるとともに、より高圧の燃料が必要とされるディーゼルエンジンを対象とすることが適している。
【0019】
2.燃料循環システム
図1に、本実施形態にかかる循環用コネクタの接続構造を用いた内燃機関の燃料循環システムの一例を示す。
この図1に例示されるように、燃料循環システム80は、燃料タンク82と、かかる燃料タンク82の燃料を供給するためのフィードポンプ(低圧ポンプ)84と、燃料供給用ポンプ(高圧ポンプ)83と、かかる燃料供給用ポンプ83から圧送された燃料を蓄圧するための蓄圧器としてのコモンレール86と、コモンレール86から圧送されてくる燃料を内燃機関の気筒内に噴射する複数の燃料噴射部(インジェクタ)11と、を含んで構成されている。
【0020】
フィードポンプ84は、燃料タンク82内の燃料(軽油)を燃料供給用ポンプ83に圧送する部位であり、フィードポンプ84と、燃料供給用ポンプ83との間にはフィルター85が介在していることが好ましい。そして、このフィードポンプ84は、一例ではあるが、ギヤポンプ構造を有し、カムの端部に取付け、ギヤの駆動を介して、カム軸と直結又は適当なギヤ比を介して駆動されている。
【0021】
また、フィードポンプ84から、フィルター85を介して圧送された燃料は、噴射量調整を行う比例制御弁90をさらに経由して、燃料供給用ポンプ83に供給される。
さらに、フィードポンプ84から供給された燃料は、比例制御弁90及び燃料供給用ポンプ83に対して圧送される他、かかる比例制御弁90と並列的に設けられたオーバーフローバルブ(OFV)91を介して、燃料タンク82に還流されるように構成されている。そして、一部の燃料は、オーバーフローバルブに取付けられたオリフィス(図示せず)を介して、燃料供給用ポンプ83のカム室(図示せず)に圧送され、カム室の燃料潤滑油として使用される。
【0022】
また、コモンレール86は、燃料供給用ポンプから供給される燃料を一旦蓄え、高圧状態にした上で、各インジェクタ11に対して、噴射タイミングを調整しつつ均一な圧力で圧送する部位である。かかるコモンレール86の構成は特に制限されるものではなく、公知のものであれば使用することができる。
ここで、コモンレール86内の圧力を調整すべく、例えば、コモンレール86内の圧力を低下させる場合には、一部の燃料が、燃料循環用ホース94を介して燃料タンク82に還流される。
【0023】
また、コモンレール86には、複数のインジェクタ11が接続されている。そして、コモンレール86で高圧に蓄圧された燃料が各インジェクタ11に圧送され、インジェクタ11内の圧力制御室(図示せず)に流入する。この圧力制御室に流入した高圧燃料によって、弁体が、噴射孔13を閉じる方向に付勢されており、圧力制御室内の高圧燃料の一部を放出することにより弁体の付勢力を弱めて、噴射孔13から内燃機関の気筒内に燃料を噴射することができる。これによって、エンジンの回転数の変動に噴射圧が影響されることなく、回転数に見合った噴射圧で、インジェクタ11を介して内燃機関に燃料噴射することができる。
このとき、噴射孔13を開放するために、圧力制御室から放出された燃料の一部は、インジェクタ11に接続された循環用コネクタ30及び循環用コネクタ30に接続された燃料循環用ホース93を介して、燃料タンク82に還流される。
【0024】
3.循環用コネクタの接続構造
次に、図2を参照して、本発明の循環用コネクタ及びその接続構造について説明する。
本実施形態の循環用コネクタの接続構造に用いられる燃料噴射部としては、例えば、図2に示すようなインジェクタ11を用いることができる。このインジェクタは、圧力制御室15と、弁体19と、燃料通路17と、噴射孔13とを含み、コモンレール等から圧送され、圧力制御室15に流入してきた高圧の燃料によって弁体19が噴射孔13を閉じる方向に付勢される。そして、燃料を噴射する際には、圧力制御室15内の燃料の一部を放出することにより、弁体19の付勢力を弱めて、噴射孔13を開放することにより、内燃機関の燃焼室内に噴射させることができる。
【0025】
また、図2に示すインジェクタ11は、噴射孔13とは反対側の端部位置に、コネクタ30が接合される円筒状の連結部21を備えている。また、コネクタ30は、インジェクタ11の連結部21に挿入される挿入部31と、この挿入部31と連続する頭部33とを備えている。そして、インジェクタ11の連結部21とコネクタ30の挿入部31が同軸的に連結され、噴射時に噴射孔13を開放するために放出された一部の燃料や潤滑油として使用された燃料が、コネクタ30を介して燃料循環用ホース93に流入し、燃料タンクに還流される。
より具体的には、インジェクタ11の連結部21は第1の溝部23を有し、コネクタ30の挿入部31は第2の溝部32を有し、コネクタ30の挿入部31をインジェクタ11の連結部21に挿入するとともに、第1の溝部23及び第2の溝部32の双方を、同時にクリップ部材27によって押さえ込むことにより、容易に外れないようにして固定されている。
また、コネクタ30における、インジェクタ11の連結部21内に挿入される挿入部31にはOリング37を備え、インジェクタ11の連結部21の内周面と挿入部31との間をシールすることにより、燃料が外部に漏れることを防止している。
【0026】
ここで、図3に示すように、本実施形態で使用される循環用コネクタ30における挿入部31には、第2の溝部32から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部34を有している。かかるテーパ部34は、第2の溝部32に近い側の、挿入方向に対する傾斜角度θ1を、第2の溝部32から遠い側の傾斜角度θ2よりも小さくしてあることを特徴とする。すなわち、クリップ部材27が第1の溝部23に係止されたインジェクタに対して、コネクタ30を、過度な負担を要せず、比較的弱い力で迅速にかつ効率的に挿入できるようにすることができる。また、テーパ部の部位によって、傾斜角度を異ならせて構成することにより、テーパ部分の長さを変える必要がないために、従来使用していたインジェクタやコネクタの設計を大きく変更する必要もなくなる。
【0027】
より具体的には、従来の傾斜角度が変化しないテーパ状のテーパ部を有するコネクタでは、コネクタをインジェクタの連結部に挿入していくにしたがって、クリップ部材が徐々に大きく押し広げられ、バネ力が大きくなるために、第2の溝部にクリップ部材を係止させるためには比較的大きな力を必要とする。したがって、作業効率が低下するとともに、指先等に負担がかかってしまう。
そこで、本発明の循環用コネクタ及び循環用コネクタの接続構造において、コネクタのテーパ部を所定形状とすることにより、コネクタをインジェクタの連結部に挿入する初期の段階においては、クリップ部材は大きく押し広げられていることがないため、比較的弱い力であっても押し入れていくことができるとともに、クリップ部材が大きく押し広げられた状態においては、挿入方向に対する傾斜角度が小さくなっているために、やはり、比較的弱い力での挿入が可能となる。
【0028】
このようなコネクタのテーパ部の例としては、図3〜図5に示すような構成とすることができる。図3は、テーパ部34を、角度を二段階で変化させた二段テーパ状とした例であり、図4は、テーパ部34の挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状を、曲線状とした例である。また、図5は、テーパ部34の挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状を、曲線部と直線部とが連続する形状とした例である。
このように例示される形状のテーパ部34を備えることにより、コネクタ30をインジェクタ11の連結部21に挿入する際に、挿入初期段階ではクリップ部材をクリップ部材27のバネ力に反して、過度な負担を要せず容易に挿入させることができる。
【0029】
また、これらのテーパ部を備える場合に、図6に示すように、第2の溝部32とテーパ部34とが連続することが好ましい。
この理由は、図3〜6に示すように、第2の溝部32とテーパ部34との間に平坦な部位36が存在する場合と比較した場合に、コネクタ30の全体長さを変更することなくテーパ部34の長さを長くして、テーパ部34における第2の溝部に近い側の傾斜角度θ1をより小さくすることができるためである。
【0030】
また、これらのテーパ部を設ける場合に、第2の溝部32に近い側の傾斜角度θ1を1〜20°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、クリップ部材27を押し広げながらコネクタ30を挿入する際に、挿入量が大きくなるにつれクリップ部材27のバネ力も大きくなるため、その範囲におけるバネ力による抵抗を緩和させることができるからである。
なお、テーパ部を段状の傾斜部とする場合には、当該角度を10〜20°の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、傾斜角度を段階的に変化させる場合に、傾斜角度が過度に小さいと、テーパ部の全体長さが長くなってしまい、コネクタの接続構造の構成に制約を受ける場合があるためである。
【0031】
ここで、表1及び図7を参照して、インジェクタの連結部にコネクタを挿入する場合の、押し込み量(ストローク量)と押圧力との関係について説明する。
表1及び図7中、コネクタAは図3に示す二段テーパ状のテーパ部であって、第2の溝部に近い側の傾斜角度θ1が17.5°、遠い側の傾斜角度θ2が30°であるテーパ部を有する本発明のコネクタ(θ1=17.5°<θ2=30°)を用いた例である。また、コネクタBは傾斜角度が変化しないテーパ部であって、第2の溝部とテーパ部とが連続し、傾斜角度が20°であるテーパ部を有するコネクタ(θ1=θ2=20°)を用いた例である。さらに、コネクタCは同じく傾斜角度が変化しないテーパ部であって、第2の溝部とテーパ部とが連続しておらず、傾斜角度が30°であるテーパ部を有するコネクタ(θ1=θ2=30°)を用いた例である。
【0032】
まず、表1は、ケース1では、コネクタ側にのみ潤滑油としての軽油を塗布し、ケース2では、コネクタ側及び連結部側に潤滑油としての軽油を塗布し、ケース3では、コネクタ側及び連結部側に、より潤滑性に優れたオイルを塗布し、それぞれのコネクタをインジェクタの連結部に挿入した場合の押圧力のピーク値を示している。かかる表1では、それぞれの押圧力のピーク値を、コネクタA(θ1<θ2)のケース1での押圧力のピーク値を1とした相対値で示している。
この表1に示すように、コネクタ側にのみ軽油を塗布したケース1では、コネクタB(θ1=θ2)の押圧力のピークが最も低くなっているものの、コネクタ側及び連結部側の双方に潤滑油を塗布したケース2及び3においては、本発明にかかるコネクタA(θ1<θ2)の押圧力のピークが著しく低くなっている。
【0033】
【表1】

【0034】
また、図7は、コネクタと連結部の両方に潤滑油を塗布した状態で、連結部内にコネクタを挿入した場合の、ストローク量と押圧力との関係を示している。図7の横軸はインジェクタの連結部内へのコネクタのストローク量(mm)を示し、縦軸は押圧力(相対値)を示している。図中、実線Aは上述の本発明のコネクタA(θ1<θ2)を挿入した場合の圧力の推移を示している。また、破線Bは上述のコネクタB(θ1=θ2)を挿入した場合の圧力の推移を示している。さらに、点線CはコネクタC(θ1=θ2)を挿入した場合の圧力の推移を示している。
この図7に示すように、コネクタA(θ1<θ2)は、傾斜角度が変化しないテーパ部を有するコネクタB(θ1=θ2)やコネクタC(θ1=θ2)と比較して、挿入初期の段階では若干押圧力が高くなっているものの、クリップ部材が押し広げられた状態での押圧力のピークは、低く抑えられている。
したがって、表1及び図7から、コネクタのテーパ部を、第2の溝部に近い側の傾斜角度を小さくすることにより、連結部及びコネクタの長さを変更することなく、比較的弱い力で、コネクタをインジェクタの連結部に挿入することができることが理解される。
【0035】
以上のように、燃料噴射部に挿入する循環用コネクタのテーパ部を所定形状とすることにより、燃料噴射部の連結部や循環用コネクタの長さを変更することなく、比較的弱い力で押し込むことができるようになった。したがって、作業効率が向上するとともに、指先等への負担も軽減させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる燃料循環システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の循環用コネクタの接続構造を説明するために供する図である。
【図3】傾斜角度が段階的に変化したテーパ部を有する循環用コネクタの構成例を示す図である。
【図4】曲線状のテーパ部を有する循環用コネクタの構成例を示す図である。
【図5】曲線部と直線部とが連続するテーパ部を有する循環用コネクタの構成例を示す図である。
【図6】第2の溝部とテーパ部とが連続する循環用コネクタを示す図である。
【図7】循環用コネクタのストローク量と押圧力との関係を示す図である。
【図8】従来の循環用コネクタの接続構造の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
11:インジェクタ、13:噴射孔、15:圧力制御室、17:燃料通路、19:弁体、21:連結部、23:第1の溝部、27:クリップ部材、30:循環用コネクタ、31:挿入部、32:第2の溝部、33:頭部、34:テーパ部、36:平坦部、37:Oリング、80:燃料循環システム、82:燃料タンク、83:燃料供給用ポンプ、84:フィードポンプ、86:コモンレール、88:増圧装置、93・94:燃料循環用ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射部を備えた内燃機関における、前記燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに使用され、前記燃料噴射部と燃料循環用ホースとの間に介在するとともに、前記燃料噴射部に対して接合される循環用コネクタであって、
前記燃料噴射部の連結部に挿入された状態で前記連結部に設けられた第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、
前記第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有するとともに、
前記テーパ部における、前記第2の溝部に近い側の、前記挿入方向に対する傾斜角度を、前記第2の溝部から遠い側の、前記挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする循環用コネクタ。
【請求項2】
前記テーパ部は、前記傾斜角度を段階的に変化させてあることを特徴とする請求項1に記載の循環用コネクタ。
【請求項3】
前記テーパ部の前記挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状が曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の循環用コネクタ。
【請求項4】
前記テーパ部の前記挿入方向に沿った方向に切断した場合の断面形状が、曲線部と直線部とが連続した形状であることを特徴とする請求項1に記載の循環用コネクタ。
【請求項5】
前記第2の溝部とテーパ部とが連続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の循環用コネクタ。
【請求項6】
前記第2の溝部に近い側の傾斜角度を1〜20°の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の循環用コネクタ。
【請求項7】
燃料噴射部を備えた内燃機関における、前記燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムに備えられ、前記燃料噴射部に対して循環用コネクタを接合するための循環用コネクタの接続構造であって、
前記燃料噴射部は、前記循環用コネクタが連結される連結部を備え、当該連結部は第1の溝部を有し、
前記循環用コネクタは、前記連結部に挿入された状態で前記燃料噴射部の第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、当該第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有し、
前記テーパ部における、前記第2の溝部に近い側の前記挿入方向に対する傾斜角度を、前記第2の溝部から遠い側の前記挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする循環用コネクタの接続構造。
【請求項8】
燃料噴射部を備えた内燃機関における、前記燃料噴射部から燃料を燃料タンクに還流させるための燃料循環システムであって、
前記燃料噴射部と燃料循環用ホースとの間に介在し、前記燃料噴射部に対して接合される循環用コネクタを接合するための循環用コネクタの接続構造を備え、
前記燃料噴射部は、前記循環用コネクタが連結される連結部を備え、当該連結部は第1の溝部を有し、
前記循環用コネクタは、前記燃料噴射部の連結部に挿入された状態で前記連結部に設けられた第1の溝部とともにクリップ部材によって係止される第2の溝部と、前記第2の溝部から挿入方向に向けて直径が小さくなるテーパ部と、を有するとともに、前記テーパ部における、前記第2の溝部に近い側の、前記挿入方向に対する傾斜角度を、前記第2の溝部から遠い側の、前記挿入方向に対する傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする燃料循環システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−132449(P2007−132449A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327307(P2005−327307)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】