説明

微孔質材料およびその製造方法

【課題】大幅に改良された寸法安定性と物理的性質とを有する微孔質シート材料を提供する。
【解決手段】超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と充填剤を、充填剤対UHMWPEが重量で約(1:9)から約(15:1)までの範囲にある混合比になるようにし、その混合物に加工用可塑剤を添加し、押出し加工して、混合物からシートを形成させ、そのシートをカレンダー加工した後、そのシートから加工用可塑剤を抽出して、UHMWPEとマトリックス全体に分散された充填剤とを含むマトリックスを製造する。その微孔質マトリックスを、少なくとも一つの方向に少なくとも約1.5の延伸比で延伸させて、延伸された微孔質マトリックスを製造し、それに続けて、その延伸された微孔質マトリックスをカレンダー加工して、延伸された微孔質マトリックスに比較して、改良された物理的性質および寸法安定性を示す微孔質材料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、同時係属中の米国特許出願番号第11/006,333号(出願日:2004年12月7日)の一部継続出願である。
【0002】
本出願は、微孔質膜およびそれを製造するための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
極めて高い分子量のポリオレフィンおよび不活性な充填剤物質を含む微孔質膜は、米国特許第3,351,495号明細書(ラーセン(Larsen))に教示がある。米国特許第3,351,495号明細書における一般的な原理と手順は、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0004】
米国特許第4,600,633号明細書(コーノ(Kono)ら)には、ポリエチレンの超薄膜およびそれを製造するためのプロセスが教示されている。そのプロセスにおいては、超高分子量ポリエチレン(以後UHMWPEと表す)を溶媒に溶解させ、次いで押出し成形をしてゲルシートを形成させている。次いでそのゲルシートを第一の抽出工程にかけて、溶媒を除去する。その第一の抽出の後に、そのシートを加熱して延伸させる。次いでその延伸したシートを第二の抽出工程にかけて溶媒を除去する。得られた生成物を次いで、80℃〜140℃の温度で圧縮処理する。この引用文献では、そのUHMWPEの中では充填剤を使用していない。そのゲルシートは、溶媒抽出の前にはカレンダー加工されていない。得られた生成物は、少なくとも2000kg/cmの引張モジュラスと、少なくとも500kg/cmの破壊強度を有する薄膜であって、実質的には細孔を全く有していない。
【0005】
米国特許第4,833,172号明細書(シュワルツ(Schwarz)ら)には、延伸させた微孔質材料の教示がある。そのプロセスにおいては、UHMWPEおよびケイ酸系充填剤を可塑剤の中に溶解させてから、押出し加工をしてゲルシートを形成させている。そのプロセスにおいては、ゲルシートは、場合によっては、溶媒抽出の前にカレンダー加工されてもよい。次いでそのゲルシートを、溶媒抽出にかけて可塑剤を除去する。抽出をした後で、シートを延伸加工する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
微孔質材料を製造するための方法であって、以下の工程を含む:超高分子量ポリエチレン(以後UHMWPEと呼ぶ)を用意する工程;粒子状充填剤を用意する工程;そして、加工用可塑剤(この加工用可塑剤は典型的には、室温において液状物である)を用意する工程。充填剤およびUHMWPEおよび加工用可塑剤を混合し、得られる混合物は、充填剤対UHMWPEを重量で約(1:9)から約(15:1)となっていてよい。次いでそうして得られた混合物を、押出し、ただちに(カレンダー法、インフレーション法、またはキャスト法のいずれかで)加工して、シートを形成する。次いでその形成されたシートを、抽出工程にかけ、そこで可塑剤を部分的に(または全面的に)除去する。得られるシートは、UHMWPE、オイル(完全に抽出されなかった場合)、および充填剤を含むマトリックスである。抽出工程によって、このマトリックスは微孔質となっている。充填剤はこの微孔質マトリックス全体に分散されていて、この充填剤が微孔質マトリックスの5パーセント〜95重量パーセントを占めている。この微孔質マトリックスは、相互に連通している細孔のネットワークであって、微孔質マトリックス全体が連結されている。それらの細孔が、微孔質マトリックスの容積の25パーセント〜90パーセントを占めている。次いで、この微孔質マトリックスを延伸させる。これによって、延伸された微孔質マトリックスが得られるが、このものは高温において寸法的に極めて安定しているものではない。次いでその延伸された微孔質マトリックスをカレンダー加工にかけると、大幅に改良された寸法安定性と物理的性質とを有する、最終的な微孔質材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来技術の教示に従って製造した、延伸前の微孔質マトリックスにおける細孔直径と細孔容積との関係をプロットした、水銀ポロシメーターを用いて得られたデータのグラフである。
【図2】従来技術の教示に従って製造し、その延伸が縦方向の1軸である材料における、細孔直径と細孔容積との関係をプロットした、水銀ポロシメーターを用いて得られたデータのグラフである。
【図3】従来技術の教示に従って製造し、その延伸が2軸延伸である材料における、細孔直径と細孔容積との関係をプロットした、水銀ポロシメーターを用いて得られたデータのグラフである。
【図4】本発明のプロセスにより製造し、中程度の圧力で延伸後カレンダー加工を実施した膜における、細孔直径と細孔容積との関係をプロットした、水銀ポロシメーターを用いて得られたデータのグラフである。
【図5】本発明のプロセスにより製造し、より高い圧縮圧力で延伸後カレンダー加工を実施した膜における、細孔直径と細孔容積との関係をプロットした、水銀ポロシメーターを用いて得られたデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、その精神および本質的特性から外れることなく、他の形態で具体化することが可能であり、従って、本発明の範囲を示すものとしては、ここまでの明細書よりは、添付された特許請求項を参照するべきである。
【0009】
微孔質材料を製造するための方法であって、以下の工程を含む:超高分子量ポリエチレン(以後UHMWPEと呼ぶ)を用意する工程;粒子状充填剤を用意する工程;そして、加工用可塑剤(この加工用可塑剤は、室温において液状物である)を用意する工程。UHMWPE、充填剤、および可塑剤についてはすべて、以下においてさらに詳しく説明する。UHMWPE、充填剤、および可塑剤を互いに混合して、混合物を形成させる。その混合物を、ダイ(たとえば、スロットダイまたはインフレーションダイ)を通して押出し加工して、シートを形成させる。そのシートは、冷却ローラー上へのキャスト法、カレンダー法、またはインフレーション法によって、さらに加工してもよい。そのキャスト法またはカレンダー法で処理されたシートを次いで、抽出工程にかけて部分的(または全面的)に可塑剤を除去し、それにより微孔質マトリックスを形成させる。そのマトリックスには、UHMWPE、可塑剤(完全に抽出されなかった場合)、およびマトリックス全体に分散された粒子状充填剤が含まれる。その充填剤は、微孔質マトリックスの5パーセント〜95重量パーセントを占めている。この微孔質マトリックスは、相互に連通している細孔のネットワークであって、微孔質マトリックス全体が連結されている。それらの細孔が、微孔質マトリックスの容積の25パーセント〜90パーセントを占めている。その微孔質マトリックスを延伸させる。その延伸プロセスについては、以下においてさらに詳しく説明する。その延伸された微孔質マトリックスは、高温では寸法的に安定でない。次いでその延伸された微孔質マトリックスをカレンダー加工して最終的な微孔質材料を製造すると、そのものは高温においても、寸法的に安定である。
【0010】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、少なくとも約18デシリットル/グラムの固有粘度を有するポリエチレンと定義することができる。多くの場合、その固有粘度は少なくとも約19デシリットル/グラムである。固有粘度の上限に関して特別な制限が存在する訳ではないが、固有粘度は多くの場合、約18〜約39デシリットル/グラムの範囲内である。固有粘度が約18〜約32デシリットル/グラムの範囲となるのが、最も一般的である。
【0011】
本明細書および特許請求項で使用するとき、固有粘度は、UHMWPEの数種の希釈溶液の還元粘度またはインヘレント粘度を濃度ゼロに外挿することによって求められるが、ここでその溶液では、溶媒がフレッシュに蒸留したデカヒドロナフタレンであって、それに0.2重量パーセントの、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸ネオペンタンテトライルエステル[CAS登録番号6683−19−8]を予め加えておいたものである。UHMWPEの還元粘度または固有粘度は、ASTM D4020−81の一般的手順に従って、ウベローデ(Ubbelohde)No.1粘度計を使用して135℃で得られる相対粘度から求めることができるが、ただし、濃度が異なる数種類の希釈溶液を使用する。ASTM D4020−81の全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0012】
微孔質材料に対してその性質を発揮させるためには、マトリックス中に充分な量のUHMWPEを存在させなければならない。マトリックスの中に他の熱可塑性有機ポリマーを存在させることもできるが、ただし、それらの存在が、その微孔質材料の性質に悪い方向での材料的な影響を与えないようにしなければならない。存在させてもよい、他の熱可塑性ポリマーの量は、そのようなポリマーの性質に依存する。一般的には、他の熱可塑性有機ポリマーが、その分子構造に、分岐をほとんど含まず、長い側鎖がほとんどなく、そしてバルキーな側基がほとんどない場合の方が、分岐の量が多く、長い側鎖が多く、あるいはバルキーな側基が多い場合よりは、より大量に使用することができる。この理由に基づいて、UHMWPEと混合することが可能な熱可塑性有機ポリマーの例をとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、エチレンのコポリマーたとえば、エチレン−ブテンまたはエチレン−ヘキセン、プロピレンのコポリマー、エチレンとアクリル酸とのコポリマー、およびエチレンとメタクリル酸とのコポリマーなどが挙げられる。所望により、カルボキシル含有コポリマーのカルボキシル基の全部または一部を、ナトリウム、亜鉛などを用いて中和してもよい。通常は、マトリックスの重量を基準にして、少なくとも約70パーセントのUHMWPE(または、70パーセントのUHMWPEプラス他の熱可塑性有機ポリマー)とすると、微孔質材料に所望の性質を付与することができるであろう。
【0013】
粒子状充填剤は、究極の粒子(ultimate particle)、究極の粒子のアグリゲート、またはその両者の組合せの形態とすることができる。ほとんどの場合では、その充填剤の少なくとも約90重量パーセントが、約5〜約40マイクロメートルの範囲に入るグロス粒径を有している。使用される充填剤が二酸化チタン(TiO)である場合、そのグロス粒径は0.005〜45マイクロメートルの範囲とすることができる。充填剤として二酸化チタン(TiO)を使用するまた別な実施態様においては、そのグロス粒径は0.1〜5マイクロメートルの範囲である。また別なケースにおいては、充填剤の少なくとも約90重量パーセントが、約10〜約30マイクロメートルの範囲のグロス粒径を有する。内部成分を加工する間に、充填剤のアグロメレートが減少するであろうと、予想される。したがって、微孔質材料におけるグロス粒径の分布は、原料の充填剤そのものよりは、狭くなる可能性がある。粒径は、ASTM C690−80に従って、コールター・エレクトロニクス・インコーポレーテッド(Coulter Electronics,Inc.)製のモデル・TAII・コールター・カウンター(Model TAII Coulter counter)を使用して測定するが、ただし、カーティン・マテソン・サイエンティフィック・インコーポレーテッド(Curtin Matheson Scientific,Inc.)製のアイソトン・II(Isoton II)電解質中で、4枚羽根、直径4.445センチメートルのプロペラ攪拌機を使用して、10分間その充填剤を撹拌するように変更する。ASTM C690−80の全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0014】
粒子状充填剤は、平均して、究極粒径(究極の粒子がアグロメレートされているか否かに関係なく)を有するが、それは、透過型電子顕微鏡によって測定すると約30マイクロメートル未満である。多くの場合、平均究極粒径は約0.05マイクロメートル未満である。一つの実施態様においては、充填剤の平均究極粒径は、(沈降シリカ使用の場合)約20マイクロメートルである。
【0015】
ポリマーマトリックスにおける充填剤の使用に関しては、多くの文献がある。一般的には、好適な充填剤の例としては、たとえば以下のようなケイ酸系充填剤が挙げられる:シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、セメント、カルシウムシリケート、クレー、アルミニウムシリケート、ナトリウムアルミニウムシリケート、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、およびガラス粒子。ケイ酸系充填剤に加えて、他の、粒子状で実質的に水不溶性の充填剤を使用してもよい。そのような任意の充填剤の例としては、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、木炭、グラファイト、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉛、タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0016】
シリカおよびクレーが、最も有用なケイ酸系充填剤である。シリカの中でも、沈降シリカ、シリカゲル、またはヒュームドシリカが使用されることが最も多い。
【0017】
機能が充分に発揮されることが確認された粒子状充填剤は、沈降シリカである。沈降シリカをシリカゲルから区別することが重要であるが、その理由は、それら異なった物質は、異なった性質を有しているからである。このことに関しては、R.K.イラー(R.K.Iler)『ザ・ケミストリー・オブ・シリカ(The Chemistry of Silica)』(ジョン・ワイリー・アンド・ソンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(New York)、1979、)、米国議会図書館カタログNo.QD181.S6144)を参照されたい。この文献の全体を参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。特に、p.15〜29,172〜176、218〜233、364〜365、462〜465、554〜564、および578〜579を参考にされたい。シリカゲルは、通常商業的には、低pHで、可溶性金属シリケート、典型的にはナトリウムシリケートの水溶液を、酸を用いて酸性化することによって、製造されている。使用される酸は一般的には、強い鉱酸たとえば、硫酸または塩酸であるが、二酸化炭素も場合によっては使用される。粘度が低く、ゲル相とそれを取り囲む液相との間の密度差が実質的に無いので、ゲル相が沈降することはない(すなわち、沈殿しない)。したがって、シリカゲルは、コロイド状非晶質シリカの近接した粒子の、沈殿しない、凝集性の、剛直な、三次元ネットワークであると表現することができる。細分状態が、大きな固体物質から顕微鏡で見えない程の粒子まで、そして水和の程度がほとんど無水のシリカからシリカ重量で1部のシリカあたり100部の桁の水を含む柔らかなゼラチン状の物質までと広い範囲にわたっているが、高度に水和された形態が本発明において使用されることは、極めて希れである。
【0018】
その一方で、沈降シリカは商業的には通常、可溶性金属シリケート、通常はアルカリ金属シリケートたとえばナトリウムシリケートの水溶液を酸と組み合わせて、それにより、コロイド粒子が弱いアルカリ性の溶液中で成長して、生成する可溶性アルカリ金属塩のアルカリ金属イオンによって、コアギュレートされるようにする。鉱酸を含めて、各種の酸を使用することができるが、好ましい原料は二酸化炭素である。コアギュラントが存在しないと、どのようなpHにしても、シリカは沈降しない。沈降に効果を発揮させるために使用するコアギュラントは、コロイド状シリカ粒子を形成させる際に生成する可溶性のアルカリ金属塩であってもよいので、可溶性無機または有機塩のような電解質を添加してもよいし、あるいは、それらの組合せであってもよい。したがって、沈降シリカは、コロイド状非晶質シリカの究極の粒子の沈降アグリゲートとして表すことが可能であり、それは、調製の過程では、いかなる時点においても肉眼で観察できるようなゲルとして存在しない。そのアグリゲートのサイズと、水和の程度は広い範囲で変化させることができる。
【0019】
沈降シリカ粉末は、それらは、微粉砕するとよりオープンな構造、すなわちより高い細孔比容積を有するようになるという点において、シリカゲルとは異なっている。しかしながら、吸着質として窒素を用いた、ブルナウアー‐エメット‐テラー(Brunauer,Emmett,Teller)(BET)法により測定した沈降シリカの比表面積は、多くの場合、シリカゲルのそれよりも低い。
【0020】
各種多くの沈降シリカを本発明において使用することができるが、好適な沈降シリカは、適切な酸たとえば硫酸または塩酸を使用してナトリウムシリケートの水溶液から沈降させて得られるものである。二酸化炭素を使用して、シリカを沈降させることも可能である。そのような沈降シリカは公知であって、それらを製造するためのプロセスは米国特許第2,940,830号明細書に詳しく記載されている(沈降シリカを製造するためのプロセスおよびその生成物の性質も含めて、この特許のすべての開示を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0021】
微孔質マトリックスを製造するための連続プロセスにおいて、実質的に水不溶性の充填剤が大量の加工用可塑剤を有していると、押出し加工およびカレンダー加工が容易となる。加工用可塑剤を吸収し保持する充填剤粒子の性能は、その充填剤の表面積の関数である。したがって、充填剤が高い表面積を有しているのが好ましい。高表面積の充填剤は、粒径が極めて小さな物質、高い多孔度を有する物質、またはその両方の特性を示す物質である。充填剤そのものの表面積は通常、約20〜約400平方メートル/グラムの範囲であるが、この数値は、ASTM C819−77に従って、吸着質として窒素を用いた、ブルナウアー‐エメット‐テラー(Brunauer,Emmett,Teller)(BET)法によるが、ただし、系とサンプルを130℃で1時間脱気するよう修正して測定したものである。表面積が約25〜約350平方メートル/グラムの範囲であれば、好ましい。ASTM C819−77の全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。微孔質マトリックスシートの中に充填剤を実質的に保持するのが望ましいのであるから、微孔質マトリックスシートを上述のプロセスにより製造する場合には、その実質的に水不溶性の充填剤が、加工用可塑剤の中に実質的に不溶性であり、また有機抽出液体に実質的に不溶性であるのが好ましい。
【0022】
加工用可塑剤は典型的には、室温で液体であり、通常それは、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、または芳香族系オイルのような、加工用オイルである。好適な加工用オイルとしては、ASTM D2226−82、タイプ103および104の要件を満たすものが挙げられる。ASTM D97−66(再承認1978)に従って22℃未満の流動点を有するオイルが効果があることが見出された。10℃未満の流動点を有するオイルもまた効果がある。好適なオイルの例としては、ナフテン系クルードオイルから溶媒精製および水素化処理をした、シェルフレックス(Shellflex,登録商標)412およびシェルフレックス(Shellflex,登録商標)371オイル(シェル・オイル・カンパニー(Shell Oil Co.))などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ASTM D2226−82およびASTM D97−66(再承認1978)の全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。フタル酸エステル可塑剤たとえばフタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジトリデシルおよびワックスなども含めて、その他の物質も、加工用可塑剤として充分な機能を発揮するであろうと予想される。加工用可塑剤は、60℃では熱可塑性有機ポリマーに対する溶媒和作用がほとんどなく、約100℃程度の高温ではほんの中程度の溶媒和作用を有し、約200℃程度の高温になると顕著な溶媒和作用を示す。
【0023】
場合によっては、加工において使用されるその他の物質たとえば潤滑剤、有機抽出液体、界面活性剤、水などが少量、通常は約5重量パーセント未満で存在していてもよい。特定の目的のための導入されるさらに他の物質が、微孔質材料中に、少量、通常は約15重量パーセント未満の量で、場合によっては存在していてもよい。そのような物質の例としては、抗酸化剤、紫外光吸収剤、難燃剤、補強繊維たとえば炭素繊維またはチョップトガラス繊維ストランド、染料、顔料などが挙げられる。充填剤および一つまたは複数の特殊な目的のために加えられた各種成分を除いた、微孔質材料の残りの部分は、実質的に熱可塑性有機ポリマーおよび可塑剤(完全に抽出されなかった場合)である。
【0024】
次いで、充填剤、熱可塑性有機ポリマー粉末、加工用可塑剤、および添加剤を混合して、実質的に均質な混合物を得る。その均質な混合物には、他の添加剤たとえば、少量の潤滑剤や抗酸化剤が含まれていてもよい。その混合物を形成させるために使用される、充填剤対ポリマー粉末の重量比は、製造される延伸微孔質材料における重量比と実質的には同じである。この混合物における、充填剤対UHMWPEの混合比は、充填剤対UHMWPEが重量で約(1:9)から約(15:1)までの範囲である。粒子状充填剤は、その微孔質材料の約5パーセント〜約95重量パーセントを占める。多くの場合、そのような充填剤は、微孔質材料の約45パーセント〜約90重量パーセントを占める。本発明の実施態様の一つにおいては、約55パーセント〜約80重量パーセントが使用される。UHMWPE対加工用可塑剤の比率は、重量で(1:30)から(3:2)までである。充填剤対加工用可塑剤の比率は、重量で(1:15)から(3:1)までである。
【0025】
押出し加工およびカレンダー加工プロセスにおいては、その混合物を、追加の加工用可塑剤と共に、スクリュー押出機の加熱したバレルに導入する。押出機にはシート押出しダイを取り付ける。ダイで成形された連続シートを、延伸することなく、協同的に動作している1対の加熱されたカレンダーロールの中に進めて、ダイから出てきた連続シートよりは厚みが薄い連続シートを形成する。
【0026】
その連続シートを抽出工程にかけて、そこで、加工用可塑剤を部分的または全面的に、それから除去する。その抽出工程は、1ステップであっても、複数のステップを含んでいてもよい。たとえば、カレンダーからの連続シートを次に、第一の抽出ゾーンに通し、そこで、加工用可塑剤に対しては良溶媒であり、有機ポリマーに対しては貧溶媒であり、そして加工用可塑剤よりは揮発性の高い有機液体を用いた抽出によって、加工用可塑剤を実質的に除去する。通常は(必須という訳ではない)、加工用可塑剤と有機抽出液体のいずれもが、水とは実質的に非混和性である。使用可能な有機抽出液体は多い。好適な有機抽出液体の例としては、各種の鎖長のアルカン、1,1,2−トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテル、およびアセトンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。次いでその連続シートを第二の抽出ゾーンに送り、そこで、加熱、スチームおよび/または水を用いて、残っている有機抽出液体を実質的に除去する。次いで連続シートを強制空気乾燥機に通して、残っている水分および残っている残存有機抽出液体を実質的に除去する。乾燥機から、微孔質マトリックスである、連続シートを引取りロールに送る。
【0027】
微孔質マトリックスには、延伸された微孔質マトリックスに関連して先に説明したのと実質的に同じ重量比で、充填剤、UHMWPE、および任意成分の物質が含まれている。そのマトリックスには、完全には抽出されなかった場合には、可塑剤がいくぶんか含まれているかもしれない。残存加工用可塑剤含量は通常、微孔質マトリックスの20重量パーセント未満であるが、これは、同一または別の有機抽出液体を使用して追加の抽出を行えば、さらに減らすことは可能である。
【0028】
微孔質マトリックスにおいて、細孔が容積の約25〜約90パーセントを占める。多くの場合、細孔が、微孔質マトリックスの容積の約30〜約80パーセントを占める。一つの実施態様では、微孔質マトリックスの容積の50〜75パーセントが細孔である。微孔質マトリックスの多孔度は、容積パーセントとして表される。含浸をしなければ、延伸された微孔質マトリックスの多孔度は、延伸前の微孔質マトリックスの多孔度よりも高い。
【0029】
本明細書および特許請求項で使用するとき、容積パーセントとして表される、微孔質材料の多孔度(ボイド容量とも呼ばれる)は、次式によって求められる:
多孔度=100[1−d/d
ここで、dは、サンプル重量と、サンプル寸法の測定から確認されたサンプル容積とから求められたサンプルの密度であり、そしてdは、サンプル重量と、サンプルの固形部分の容積とから求められたサンプルの固形分の密度である。サンプルの固形部分の容積は、クォンタクローム・コーポレーション(Quantachrome Corp.)製のクォンタクローム・ステレオピクノメーター(Quantachrome stereopycnometer)を使用し、添付の取扱説明書に従って測定することができる。
【0030】
微孔質シートの細孔の容積平均直径は、クォンタクローム・コーポレーション(Quantachrome Corp.)製のオートスキャン・マーキュリー・ポロシメーター(Autoscan mercury porosimeter)を用いた、水銀ポロシメーター法により求めることができる。水銀の圧入/抜出は、厳密に調節された圧力下で、水銀(非濡れ液体)を強制的に多孔質構造の中へ入れることを原理としている。水銀はほとんどの物質を濡らすことなく、また毛細管現象で自発的に細孔の中に貫入することもないので、外部からの圧力を加えることによって、サンプルのボイドの中に強制的に入れなければならない。ボイドを充満させるのに必要な圧力は、細孔の大きさに逆比例する。大きなボイドに充満させるには、ほんの少しの力すなわち圧力しか必要としないが、それに対して、極めて小さな細孔のボイドに充満させるにははるかに大きな圧力が必要である。
【0031】
ポロシメーターを操作する際には、高圧範囲でスキャンする(約138絶対キロパスカルから、約227絶対メガパスカルまで)。その高圧範囲の低い方の端(約138〜約250絶対キロパスカル)で全浸入容積の約2パーセント以下が起きた場合には、その容積平均細孔直径は、ポロシメーターによって求めた容積平均細孔半径の2倍とする。そうでない場合には、低圧範囲(約7〜約165絶対キロパスカル)でさらにスキャンを行い、その容積平均細孔直径を次式に従って計算する:
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、dは容積平均細孔直径であり、vは高圧範囲において圧入された水銀の全容積であり、vは低圧範囲において圧入された水銀の全容積であり、rは高圧スキャンから求められた容積平均細孔半径であり、rは低圧スキャンから求められた容積平均細孔半径であり、wは高圧スキャンにかけたサンプルの重量であり、wは低圧スキャンにかけたサンプルの重量である。
【0034】
大きな細孔では、その細孔容積内に水銀を圧入するのに低い圧力しか必要としないが、それに対して、小さな細孔では、その細孔容積内に圧入するにはより高い圧力を必要とする。図1においては、細孔の約20%が、0.02マイクロメートルよりも小さい。DV/logdは、細孔直径を対数変化させたときの、細孔容積における変化を表している。図1に見られるように、約0.016マイクロメートルの直径を有する細孔が大量に存在しており、そのピーク高さは、他のいずれのピークよりも数倍高い。この表示法においては、ピーク面積とピーク高さは、細孔直径の対数に対応する、細孔の相対的な数を表している。
【0035】
図1に見られるように、前駆体微孔質マトリックスの細孔の容積平均直径は通常、約0.01〜約1.0マイクロメートルの分布を有している。その前駆体物質を延伸させることによって、サイズが1マイクロメートルを超える細孔を得ることができる。この延伸された物質で得られる細孔分布は、図2および3に見ることができる。延伸の程度に応じて、20〜30マイクロメートルよりも大きい細孔を得ることが可能である。次いで、その後のカレンダー工程を通すことにより、孔径を、その拡大された細孔分布から選択的に減らすことが可能である。細孔の平均直径の分布をこのように修正する一つの例では、延伸加工およびカレンダー加工されて得られた微孔質材料において、約0.01〜約0.8マイクロメートルの範囲となる。また別な実施態様においては、図4に見られるように、得られた微孔質材料が、約0.01〜約0.6マイクロメートルの細孔平均直径分布を有している。微孔質マトリックスの細孔容積平均直径は、水銀ポロシメーター法によって求める。
【0036】
延伸された微孔質マトリックスは、微孔質マトリックスを少なくとも一つの延伸方向に、少なくとも約1.5の延伸比で延伸させることによって製造することができる。多くの場合、その延伸比は少なくとも約1.7である。また別な実施態様においては、それが少なくとも約2である。多くの場合、その延伸比は約1.5〜約15の範囲である。その延伸比を約1.7〜約10の範囲とすることが多い。また別な実施態様においては、その延伸比が約2〜約6の範囲である。本明細書および特許請求項で使用するとき、延伸比は次式によって求める:
S=L/L
ここで、Sは延伸比であり、Lは、微孔質マトリックスに位置し、延伸方向と平行な線の上にある二つの基準点の間の距離であり、そしてLは、延伸させた微孔質材料の上に位置する同一の二つの基準点の間の距離である。二つの方向に延伸させた場合には、その二つの方向への延伸は、順次に行ってもよいし、あるいは同時に行ってもよい。
【0037】
延伸を実施する際の温度は、広い範囲で変化させることができる。ほぼ周囲室温で延伸を実施することも可能ではあるが、通常は高温を用いる。微孔質マトリックスは、広く各種の方法のいずれかを用いて、延伸前、延伸中、および/または延伸後に加熱することができる。それらの方法の例としては、以下のものが挙げられる:電気加熱またはガスだき赤外線ヒーターにより得られる輻射加熱、加熱空気の再循環により得られる対流加熱、そして、加熱ロールへの接触により得られる伝熱加熱。温度調節を目的として測定される温度は、使用される装置および個人的な好みによって、変化してもよい。たとえば、温度測定装置は以下のものの温度を確認できる場所に設置すればよい:赤外線ヒーターの表面の温度、赤外線ヒーターの内部の温度、赤外線ヒーターと微孔質マトリックスとの間の地点における温度、装置の中の位置での循環加熱空気の温度、装置に出入りする加熱空気の温度、延伸プロセスにおいて使用されるロールの表面の温度、そのようなロールに出入りする伝熱流体の温度、またはフィルム表面の温度。一般的に、単一または複数の温度を調節して、微孔質マトリックスがほぼ均等に延伸されるようにし、それにより、延伸された微孔質マトリックスのフィルムの厚みの変化(もし、存在するならば)が、許容される限度内であり、そのような限度から外れるような延伸された微孔質マトリックスの量が受容可能な程に低くなるようにする。調節を目的として使用される温度が、微孔質マトリックスそのものの温度に近くても、近くなくてもよいことが明らかであるが、その理由は、それらは、使用される装置の性質、温度測定装置の位置、その温度を測定される物質または対象物の素性などに依存するからである。
【0038】
延伸の際に通常使用される加熱装置の配置およびライン速度から考えると、微孔質マトリックスの厚み方向に、変化している温度勾配が存在するかもしれないし、存在しないかもしれない。さらに、そのようなライン速度が原因で、そのような温度勾配を測定することは実際的でない。変化する温度勾配が存在すると、そのようなことが起きたときには、単一のフィルム温度を参照することが合理性に欠ける。したがって、フィルムの表面温度は、測定することが可能であり、微孔質マトリックスの熱的環境を特徴づけるのにそれを使用するのがベストである。それらの温度は通常、延伸の際の微孔質マトリックスの幅全体にほぼ同一であるが、ただし、それを意図的に変化させて、シートの横方向で、くさび形の断面を有する微孔質マトリックスを補償することも可能である。シートの長さ方向でのフィルムの表面温度はほぼ同じであってもよいし、あるいは延伸の間に変化してもよい。
【0039】
延伸を実施する際のフィルムの表面温度は、広い範囲で変化させることができるが、一般的には、先に説明したように、微孔質マトリックスがほぼ均等に延伸されるようにする。多くの場合においては、延伸の際のフィルムの表面温度は、約20℃〜約220℃の範囲である。そのような温度が、約50℃〜約200℃の範囲であることが多い。約75℃〜約180℃が、この実施態様における別な範囲である。
【0040】
延伸は、先に説明したように、単一のステップで実施しても、あるいは複数のステップで実施してもよい。たとえば、微孔質マトリックスを一つの方向に延伸(1軸延伸)させるときには、その延伸は、単一の延伸ステップで実施してもよいし、あるいは、一連の延伸ステップを実施して、所望の最終延伸比に達するようにしてもよい。同様にして、微孔質マトリックスを二つの方向に延伸(2軸延伸)させるときには、その延伸は、単一の2軸延伸ステップで実施してもよいし、あるいは一連の2軸延伸ステップを実施して、所望の最終延伸比に達するようにしてもよい。2軸延伸は、一つの方向への1段または複数の1軸延伸ステップと、他の方向への1段または複数の1軸延伸ステップとの連続で、実施してもよい。微孔質マトリックスを二つの方向に同時に延伸させる2軸延伸ステップと、1軸延伸ステップとを、どのような順序であってもよいが、連続で実施してもよい。三つ以上の方向への延伸も、考慮の対象に入っている。ステップの各種入れ替えは無数に可能であることは理解されるであろう。所望に応じて、その他の工程、たとえば冷却、加熱、焼結、アニリーング、リーリング、アンリーリングなどを、全体のプロセスの中に任意に取り入れることができる。
【0041】
各種のタイプの延伸装置が公知であり、本発明による微孔質マトリックスの延伸を実施するのに使用できる。1軸延伸は通常、二つのローラーの間での延伸で実施されるが、ここで、第二すなわち下流側のローラーを、第一すなわち上流側のローラーよりも大きな周速で回転させる。1軸延伸はさらに、標準的な幅出し機上で実施することも可能である。2軸延伸は、幅出し機上で、二つの異なった方向へ同時に延伸させることにより実施できる。しかしながら、より一般的には、2軸延伸は、先に説明したように二つの異なった回転速度のローラーの間で第一の1軸延伸を実施し、それに続けて、幅出し機を使用して別な方向に1軸延伸させるか、または幅出し機を使用して2軸延伸させるかのいずれかを実施する。最も一般的なタイプの2軸延伸は、その二つの延伸方向を、互いにほぼ直角とするものである。連続シートを延伸させるほとんどの場合においては、一つの延伸方向がシートの長さ軸(縦方向)に少なくともほとんど平行であり、もう一つの延伸方向が縦方向とは少なくともほとんど直角の方向であって、シートの面の中(横方向)である。
【0042】
微孔質マトリックスを1軸または2軸のいずれかで延伸させた後で、その延伸された微孔質マトリックスをもう一度カレンダー加工する。延伸された微孔質マトリックスを、協同して作動している一対の加熱したカレンダーロールに送り、延伸装置から出てきた微孔質マトリックスよりは薄い膜を形成させる。温度と共に、それらのカレンダーロールによってかかる圧力を調節することによって、最終的な膜の孔径を望むままに調節することが可能である。これによって、従来は不可能であった調節の程度で、平均孔径を製造業者が調節することが可能となる。最終的な孔径は、他の性質たとえば膜のガーレー(Gurley)値に影響し、さらには20℃〜25℃の室温よりも高い温度における膜の寸法安定性を改良する。
【0043】
図に示しているのは、水銀ポロシメーター法により得られたデータのプロットである。図1は、スロットダイを通して押出し加工し、カレンダー加工し、次いで可塑剤を部分的に抽出した前駆体膜における細孔直径(単位:マイクロメートル)を示したグラフである。得られた微孔質マトリックスは延伸加工およびその後のカレンダー加工はしていない。図2は、縦方向に400%の1軸延伸させた膜における細孔直径(単位:マイクロメートル)を示すグラフである。図3は、2軸延伸させた膜における細孔直径(単位:マイクロメートル)を示すグラフである。図4は、2軸延伸させ、次いでギャップ25マイクロメートルでカレンダー加工した膜における細孔直径(単位:マイクロメートル)を示すグラフである。図5は、2軸延伸させ、次いで最小限のギャップを通して高い圧縮圧でカレンダー加工した膜における細孔直径(単位:マイクロメートル)を示すグラフである。これらの図から、圧縮によって、物質の中に存在している孔径分布が実質的に変化することが判る。さらに、圧縮条件を調節することによって、孔径分布を調節することが可能である。
【0044】
最終的な膜は、前駆体物質を延伸させ、次いでそれを圧縮してその延伸させた前駆体物質(先に微孔質マトリックスと定義されたもの)の厚みを少なくとも5%低下させた結果である。この微孔質材料は、微孔質材料の中全体に分散された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および粒子状充填剤から実質的になる(または、含む)が、ここで、その充填剤が、微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めている。微孔質材料は、相互に連通している細孔のネットワークを有し、それが微孔質材料全体を連結しているが、その細孔は、微孔質材料の少なくとも25容積パーセントを占めている。この微孔質材料は、縦方向(MD)に20N/mmよりも大の引張強さを有しており、さらにその微孔質材料は、充填剤としてシリカを使用した場合には、180秒未満のウェットアウト時間を有している。この微孔質材料が、130mohm/mm未満の電気抵抗を有することも見出された。
【0045】
微孔質材料であって、この微孔質材料は、微孔質材料の中全体に分散された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および粒子状充填剤から実質的になる(または、含む)が、ここで、その充填剤が、微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めている。微孔質材料は、相互に連通している細孔のネットワークを有し、それが微孔質材料全体を連結しているが、その細孔は、微孔質材料の少なくとも25容積パーセントを占めている。この微孔質材料は、サイズが1.0マイクロメートルを超える細孔は有しておらず、そしてここで、その微孔質材料の細孔における、容積変化をlogdで割り算をした数字が、2cc/g未満である。
【0046】
延伸加工とカレンダー加工の両方を行って得られた微孔質材料は、10%未満の縦方向の収縮を示し、25N/mmより大の縦方向(MD)の引張強さを有している。
【0047】
上述の微孔質材料にはさらに、第二のポリマーを含むことができる。UHMWPEを高密度(HD)ポリエチレンと混合して、ポリオレフィン混合物を得るが、ここでそのポリオレフィン混合物は、重量で少なくとも50%のUHMWPEを含む。このポリオレフィン混合物と共に使用する充填剤は、充填剤対ポリオレフィン混合物の重量比が、約(1:9)から約(15:1)の範囲にある。得られたマトリックスは、UHMWPEおよびHDポリエチレンおよびマトリックス全体にわたって分散された粒子状充填剤から実質的になる(または、を含む)。この微孔質材料は、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する。
【0048】
延伸の後に高圧縮をかけると、得られる微孔質材料は、微孔質材料の中全体に分散された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および粒子状充填剤から実質的になる(または、含む)が、ここで、その充填剤が、微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めている。微孔質材料は、相互に連通している細孔のネットワークを有し、それが微孔質材料全体を連結しているが、その細孔は、微孔質材料の少なくとも25容積パーセントを占めている。圧縮圧力が、得られる孔径分布を決めるので、その細孔構造の調整性が高い。たとえば、図4におけるこの微孔質材料は、0.50マイクロメートルより大きなサイズの細孔を有していない。中央孔径は、0.01に等しいか、または0.01と0.3マイクロメートルの間であり、細孔のサイズは、±0.2マイクロメートルで変化する。
【0049】
延伸加工とカレンダー加工の両方を行って得られた微孔質材料は、10%未満の縦方向の収縮を示し、25N/mmより大の縦方向(MD)の引張強さを有している。
【0050】
上述の微孔質材料にはさらに、第二のポリマーを含むことができる。UHMWPEを高密度(HD)ポリエチレンと混合して、ポリオレフィン混合物を得るが、ここでそのポリオレフィン混合物は、重量で少なくとも50%のUHMWPEを含む。このポリオレフィン混合物と共に使用する充填剤は、充填剤対ポリオレフィン混合物の重量比が、約(1:9)から約(15:1)の範囲にある。得られたマトリックスは、UHMWPEおよびHDポリエチレンおよびマトリックス全体にわたって分散された粒子状充填剤を含む(または、から実質的になる)。この微孔質材料は、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する。
【0051】
未コーティングの微孔質膜のウェットアウト時間を改良するためのプロセスが開発されたが、それに含まれるのは:超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用意する工程;粒子状シリカ充填剤を用意する工程;加工用可塑剤を用意する工程(ここで前記加工用可塑剤は、室温において液状物であってよい);である。次いで、UHMWPE、充填剤、および加工用可塑剤を共に混合して、充填剤対UHMWPEの重量比が、(1:9)から(15:1)まで(重量基準)である、混合物を形成させる。次いで、その混合物を押出し加工してシートを形成する。次いでそのシートを加工するが、その加工は、カレンダー法、キャスト法またはインフレーション法からなる群より選択される。次いでその加工したシートを、抽出工程にかけて、加工用可塑剤の全部または一部をシートから抽出して、UHMWPEおよび粒子状充填剤を含む微孔質マトリックスシートを製造する。このマトリックスの中では、充填剤がマトリックス全体に分散されている。次いでその微孔質マトリックスシートをカレンダー加工して、厚みが少なくとも5%低下させた微孔質膜を製造する。得られる微孔質膜は、典型的には、化学的表面コーティング処理を一切使用しなかった前記微孔質マトリックスシートよりも、50%以上短縮されたウェットアウト時間を示す。
【0052】
さらに、未コーティングの微孔質膜のウェットアウト時間を改良するためのプロセスであって、それに含まれるのは:超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用意する工程;粒子状シリカ充填剤を用意する工程;加工用可塑剤を用意する工程(ここで前記加工用可塑剤は、室温において液状物であってよい);である。次いで、UHMWPE、充填剤、および加工用可塑剤を共に混合して、充填剤対UHMWPEの重量比が、(1:9)から(15:1)まで(重量基準)である、混合物を形成させる。次いで、その混合物を押出し加工してシートを形成する。次いでそのシートを加工するが、その加工は、カレンダー法、キャスト法またはインフレーション法からなる群より選択される。次いでその加工したシートを、抽出工程にかけて、加工用可塑剤の全部または一部をシートから抽出して、UHMWPEおよび粒子状充填剤を含む微孔質マトリックスシートを製造する。このマトリックスの中では、充填剤がマトリックス全体に分散されている。次いでその微孔質マトリックスシートを、少なくとも一つの延伸方向に少なくとも約1.5の延伸比で延伸させて、延伸された微孔質マトリックスシートを製造する。次いでこの延伸された微孔質マトリックスシートをカレンダー加工して、厚みが少なくとも5%低下させた微孔質膜を製造する。得られる微孔質膜は、典型的には、化学的表面コーティング処理を一切使用しなかった微孔質マトリックスシートよりも、50%以上短縮されたウェットアウト時間を示す。
【0053】
本発明の微孔質膜は、電気化学電池において使用される隔離板としての用途に適している。電気化学電池は、emf(起電力)の化学的発生器である。電気化学電池には一般に、陽極、陰極、隔離板、電解液、および場合によってはハウジングが含まれる。電気化学電池は、電池(battry)と燃料電池(fuel cell)の二つのタイプに分けられる。電池は、電荷を貯蔵する装置である。電池は、一次電池と二次電池のいずれかである。一次電池は容易に再充電することができないが、それに対して、二次電池は放電の後に電気的に再充電して元の状態に戻すことができる。その中で本発明を使用することが可能な電池のいくつかの例を挙げれば、以下のものがある(これらに限定される訳ではない):鉛蓄電池、エジソン電池、ニッケルカドミウム電池、亜鉛電池、ニッケル水素電池、酸化銀電池、ルクランシェ電池、マグネシウム電池、アルカリ電池、水銀電池、メルカド電池、リチウム一次電池、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池、およびナトリウム塩化ニッケル電池。
【0054】
燃料電池も作用としては電池に似ているが、ただし、反応剤の一方または両方が、電気化学電池の中に恒久的には含まれない。燃料電池の場合、電力が必要となったときに、反応剤の一方または両方を外部から供給する。燃料電池のための燃料は通常、気体または液体であり、酸素または空気が酸化剤である。燃料電池のための燃料として重要なのは、水素とメタノールである。燃料電池用途においては、電池においては微孔質膜と呼ばれている材料が、「プロトン交換膜(PEM)」または「ポリマー電解質膜(PEM)」または給湿膜または多孔質スペーサー膜と呼ばれる。単純化のために、本明細書においては、燃料電池における、PEMまたは給湿膜または多孔質スペーサー膜は、微孔質膜と呼ぶことにするので、注意されたい。
【0055】
本明細書で使用するとき、電池隔離板とは、電池の電極の間に置かれる、薄い微孔質膜を指す。典型的には、それが電極を物理的に分離して、その接触を妨げ、放電および充電の際にはイオンをその細孔の中を通過させ、電解液のための貯蔵所としての機能を果たし、そして、「停止(shut down)」機能を有していてもよい。
【0056】
ここで使用されるリチウム電池には、リチウム一次電池を含むが、このものは、リチウム金属またはリチウム合金電池とも呼ばれる。リチウム電池にはさらに、リチウム二次電池も含まれる。各種のタイプのリチウム二次電池が存在し、たとえば、液状有機電解液電池、ポリマー電解液電池、リチウムイオン電池、無機電解液電池、およびリチウム合金電池などが挙げられる。液状有機電解液電池は、陰極のためのインターカレーション化合物、液状有機電解液、および金属陽極を使用した、固体陰極電池である。液状有機電解液電池のいくつかの例としては以下のものが挙げられる:Li/MoS、Li/MnO、Li/TiS、Li/NbSe、Li/V、Li/LiCoO、Li/LiNiO。ポリマー電解液電池は、ポリマー電解液、陰極のためのインターカレーション化合物、および陽極のためのリチウム金属を使用した電池である。ポリマー電解液電池のいくつかの例としては以下のものが挙げられる:Li/PEO−LiClO/V13。リチウムイオン電池は、陽極および陰極の両方のためのインターカレーション化合物、および液状有機電解液またはポリマー電解液を使用した電池である。リチウムイオン電池のいくつかの例としては以下のものが挙げられる:LiC/LiCoO、LiC/LiNiO、LiC/LiMn。無機電解液電池は、電解液溶媒としても機能する無機陰極物質を用いた液状陰極電池である。無機電解液電池のいくつかの例としては以下のものが挙げられる:Li/SO、Li/CuCl。リチウム合金電池は、リチウム合金陽極、液状有機電解液、および各種の陰極を用いた電池である。リチウム合金電池のいくつかの例としては以下のものが挙げられる:LiAl/MnO、LiAl/V、LiAl/C、LiC/V、LiAl/ポリマー。
【0057】
本発明からのメリットを大いに受ける可能性があると考えられる一つの電池は、たとえば、負電極(陽極)としてリチウム金属(Li)、リチウム合金(LiSi、LiSn、LiAlなど)、またはリチウム炭素物質(Li、ここでx<1)、またはインターカレーション化合物(または遷移金属化合物)を有する、再充電可能なリチウム電池である。そのようなインターカレーション化合物としては、LiWO、LiMoO、LiTiS、およびLiTiなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。それらの再充電可能なリチウム電池は、リチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池とも呼ばれる。そのような電池のための、陰極、電解液、およびハウジングは、周知であって、慣用されている。それによって本明細書で説明した改良が得られる、隔離板については、以下にさらに詳しく説明する。
【0058】
本発明からのメリットを大いに受ける可能性があると考えられるまた別な電池は、鉛蓄電池である。鉛蓄電池の一般的な概要の中においては、これらの隔離板は、シールド鉛蓄電池(SLA)の中、またはバルブ調節型鉛蓄電池(VRLA)と使用して機能を発揮すると考えられるが、ここで、その電池の電解液は、吸収されるか、またはゲル化されるかのいずれかによって固定されている。
【0059】
試験手順
厚み:膜の厚みの値は、マイクロメートル(μm)の単位で表され、ASTM D374を用いて測定した。
破壊強度:破壊強度の単位はニュートンであり、その試験手順はASTM D3763であった。
引張強さ:引張強さはASTM D882を使用して測定したが、その単位はN/mmである。
電気抵抗:電気抵抗の単位はmohm−cmである。
収縮試験:MD収縮値およびTD収縮値のいずれも、ASTM D4802の修正版を使用して測定した。サンプルを5インチ(12.7cm)平方に切断し、100℃のオーブンに10分間入れた。その単位は、元の寸法からの変化のパーセントである。
基本重量:基本重量はASTM D3776を用いて測定したが、その単位はグラム/平方メートルである。
Hg多孔度:これは、Hg圧入ポロシメーター法を使用して測定した。
ガーレー(Gurley):その単位は秒/10ccであり、TAPPI T536法により測定した。
ウェットアウト時間:視覚的方法であって、サンプルを水の表面にそっと置いて(浸漬するのではない)、その膜が黒くなり始めるまでにかかった時間(単位:秒)をウェットアウト時間と呼ぶ。
装置:この試験に用いたカレンダーロールは、8インチ(20.3センチメートル)の直径を有するスタックロールであった。
【0060】
以下の実施例から判るように、延伸加工してからカレンダー加工をして得られた微孔質材料は、延伸加工しただけの膜に比較して、改良された寸法安定性を示す。
【0061】
実施例
実施例Aは、以下のものを含む膜である。
【0062】

【0063】
ここで、実施例Aからの材料を取り出して、幅出しフレーム装置を用いて、追加のサンプルを調整した。この装置では、1軸延伸、2軸延伸のいずれも可能である。それらのサンプルを製造するために、以下のパラメーターを使用した:
【0064】
【表1】

【0065】
A−18およびA−19のサンプルは、2軸延伸させたが、順次延伸装置を使用して製造した。その他のサンプルは、MD方向だけに(1軸)延伸させた膜である。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
カレンダー加工をしていないA−16、A−17、A−18およびA−19のウェットアウト時間は得られなかったが、10分よりはるかに長いことが見出された。
【0070】
これらの表に示されたデータから、従来技術に比較して、本発明のプロセスのいくつかの利点を見ることができる。第一には、延伸加工をしてからカレンダー加工したフィルムは、高温においてさえも、改良された寸法安定性を有している。延伸プロセスのみによって達成することが可能な厚みには限度があり、より薄い膜は、延伸加工の後に膜をカレンダー加工することにより得られる。延伸加工された微孔質材料をカレンダー加工した後では、物理的な強さが大幅に改良される。最後になるが、カレンダープロセスによって孔径が小さくなり、カレンダー加工の程度を各種変更することによって、所望の孔径に調節することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔質材料を製造するための方法であって:
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用意する工程;
粒子状充填剤を用意する工程;
加工用可塑剤を用意する工程;
UHMWPE、充填剤、および加工用可塑剤を共に混合して、充填剤対UHMWPEの重量比が、(1:9)から(15:1)まで(重量基準)である、混合物を形成させる工程:
前記混合物を押出し加工してシートを形成させる工程;
前記シートを加工する工程であって、加工がカレンダー法、キャスト法、またはインフレーション法からなる群より選択される、工程;
前記シートから前記加工用可塑剤の全部または一部を抽出して、UHMWPEおよび前記粒子状充填剤を含むマトリックスを製造する工程であって、前記充填剤が、前記マトリックス全体に分散されて、微孔質マトリックスシートを形成している、工程;
前記微孔質マトリックスシートを、少なくとも一つの延伸方向に少なくとも約1.5の延伸比で延伸させて、延伸された微孔質マトリックスシートを製造する工程:および
前記延伸された微孔質マトリックスシートをカレンダー加工する工程;
を含む方法。
【請求項2】
請求項1の記載に従って、改良された物理的性質および寸法安定性を有する微孔質材料を製造するための方法であって、
前記抽出工程において、前記加工用可塑剤に対しては良溶媒であり、前記ポリマーに対しては貧溶媒であり、前記加工用可塑剤よりは揮発性の高い有機抽出液体を用いて、前記シートから前記加工用可塑剤を実質的に除去するが、ここで、残存しているすべての有機抽出液体を、加熱、スチームおよび/または水により実質的に除去し、そして前記微孔質マトリックスを延伸加工するより前に、すべての残存水分および残っている残存有機抽出液体を、乾燥により実質的に除去する、方法。
【請求項3】
前記充填剤が:シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、セメント、カルシウムシリケート、クレー、アルミニウムシリケート、ナトリウムアルミニウムシリケート、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、ガラス粒子、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、木炭、グラファイト、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉛、タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム、から実質的になる群より選択される、請求項1に記載の微孔質材料を製造するための方法。
【請求項4】
前記充填剤が:シリカ、沈降シリカ、シリカゲル、ヒュームドシリカ、マイカ、タルク、珪藻土、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、酸化チタン、および炭酸カルシウム、から実質的になる群より選択される、請求項3に記載の微孔質材料を製造するための方法。
【請求項5】
前記微孔質マトリックスシートを、いずれの延伸方向においても少なくとも約1.5の延伸比を有する、2軸延伸させる、請求項1に記載の微孔質材料を製造するための方法。
【請求項6】
前記抽出工程において、前記加工用可塑剤に対しては良溶媒であり、前記ポリマーに対しては貧溶媒であり、前記加工用可塑剤よりは揮発性の高い有機抽出液体を用いて、前記シートから前記加工用可塑剤を実質的に除去するが、ここで、残存しているすべての有機抽出液体を、加熱、スチームおよび/または水により実質的に除去し、そして前記微孔質マトリックスを延伸加工するより前に、すべての残存水分および残っている残存有機抽出液体を、乾燥により実質的に除去する、請求項5に記載の微孔質材料を製造するための方法。
【請求項7】
前記UHMWPEを高密度(HD)ポリエチレンと混合してポリオレフィン混合物を製造し;前記ポリオレフィン混合物が、前記ポリオレフィン混合物重量を基準にして少なくとも50%のUHMWPEを含み;前記ポリオレフィン混合物に対する前記充填剤が、充填剤対ポリオレフィン混合物の比率が、重量で、(1:9)から(15:1)までの範囲にあり、そして前記マトリックスが、UHMWPEおよびHDポリエチレンを含み、前記粒子状充填剤が前記マトリックスの全体にわたって分散されている、請求項1に記載の微孔質材料を製造するための方法。
【請求項8】
請求項1の方法によって製造された、製品。
【請求項9】
請求項5の方法によって製造された、製品。
【請求項10】
請求項7の方法によって製造された、製品。
【請求項11】
前駆体物質から製造される微孔質材料であって、
前記微孔質材料が、前記前駆体物質から5%以上減少した厚みを有し;
前記微孔質材料が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および前記微孔質材料の全体にわたって分散した粒子状シリカ充填剤を含み;
前記充填剤が、前記微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めており;
前記微孔質材料が、前記微孔質材料全体を連結している相互に連通している細孔のネットワークを有し、前記細孔が、前記微孔質材料の少なくとも45容積パーセントを占めており:
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有し;そして
前記微孔質材料が、180秒未満のウェットアウト時間を有する、微孔質材料。
【請求項12】
前記微孔質材料が、35N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項11に記載の微孔質材料。
【請求項13】
前記微孔質材料が、50N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項11に記載の微孔質材料。
【請求項14】
微孔質材料であって、
前記微孔質材料が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および前記微孔質材料の全体にわたって分散した粒子状充填剤を含み;
前記充填剤が、前記微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めており;
前記微孔質材料が、前記微孔質材料全体を連結している相互に連通している細孔のネットワークを有し、前記細孔が、前記微孔質材料の少なくとも25容積パーセントを占め、それらの細孔が細孔分布を作っており:
前記微孔質材料が、1.0マイクロメートルより大きいサイズの細孔を含まず;そして
その微孔質材料の細孔について容積の変化をlog dで割った値が、全細孔分布において、2cc/g未満である、微孔質材料。
【請求項15】
縦方向における収縮が10%未満である、請求項14に記載の微孔質材料。
【請求項16】
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項14に記載の微孔質材料。
【請求項17】
前記充填剤が、シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、セメント、カルシウムシリケート、クレー、アルミニウムシリケート、ナトリウムアルミニウムシリケート、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、ガラス粒子、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、木炭、グラファイト、酸化チタン、酸化鉛、タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム、から実質的になる群より選択される、請求項14に記載の微孔質材料。
【請求項18】
前記充填剤が、:シリカ、沈降シリカ、シリカゲル、ヒュームドシリカ、マイカ、タルク、珪藻土、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、酸化チタン、および炭酸カルシウム、から実質的になる群より選択される、請求項17に記載の微孔質材料。
【請求項19】
前記UHMWPEを高密度(HD)ポリエチレンと混合してポリオレフィン混合物を製造し;前記ポリオレフィン混合物が、前記ポリオレフィン混合物重量を基準にして少なくとも50%のUHMWPEを含み;前記ポリオレフィン混合物に対する前記充填剤が、充填剤対ポリオレフィン混合物の比率が、重量で、(1:9)から(15:1)までの範囲にあり、そして前記マトリックスが、UHMWPEおよびHDポリエチレンを含み、前記粒子状充填剤が前記マトリックスの全体にわたって分散されている、請求項14に記載の微孔質材料。
【請求項20】
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項19に記載の微孔質材料。
【請求項21】
微孔質材料であって、
前記微孔質材料が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および前記微孔質材料の全体にわたって分散した粒子状充填剤を含み;
前記充填剤が、前記微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めており;
前記微孔質材料が、前記微孔質材料全体を連結している相互に連通している細孔のネットワークを有し、前記細孔が、前記微孔質材料の少なくとも25容積パーセントを占めており:
前記微孔質材料が、0.50マイクロメートルより大きいサイズの細孔を含まず;そして
前記中央孔径が、0.01に等しいか、または0.01と0.3マイクロメートルの間であり、細孔のサイズが、±0.2マイクロメートル未満で変化する、微孔質材料。
【請求項22】
縦方向における収縮が10%未満である、請求項21に記載の微孔質材料。
【請求項23】
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項21に記載の微孔質材料。
【請求項24】
前記充填剤が、シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、セメント、カルシウムシリケート、クレー、アルミニウムシリケート、ナトリウムアルミニウムシリケート、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、ガラス粒子、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、木炭、グラファイト、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉛、タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム、から実質的になる群より選択される、請求項21に記載の微孔質材料。
【請求項25】
前記充填剤が、:シリカ、沈降シリカ、シリカゲル、ヒュームドシリカ、マイカ、タルク、珪藻土、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、酸化チタン、および炭酸カルシウム、から実質的になる群より選択される、請求項24に記載の微孔質材料。
【請求項26】
前記UHMWPEを高密度(HD)ポリエチレンと混合してポリオレフィン混合物を製造し;前記ポリオレフィン混合物が、前記ポリオレフィン混合物重量を基準にして少なくとも50%のUHMWPEを含み;前記ポリオレフィン混合物に対する前記充填剤が、充填剤対ポリオレフィン混合物の比率が、重量で、(1:9)から(15:1)までの範囲にあり、そして前記マトリックスが、UHMWPEおよびHDポリエチレンを含み、前記粒子状充填剤が前記マトリックスの全体にわたって分散されている、請求項21に記載の微孔質材料。
【請求項27】
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有する、請求項26に記載の微孔質材料。
【請求項28】
未コーティングの微孔質膜のウェットアウト時間を改良するためのプロセスであって:
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用意する工程;
粒子状シリカ充填剤を用意する工程;
加工用可塑剤を用意する工程;
UHMWPE、充填剤、および加工用可塑剤を共に混合して、充填剤対UHMWPEの重量比が、(1:9)から(15:1)まで(重量基準)である、混合物を形成させる工程:
前記混合物を押出し加工してシートを形成させる工程;
前記シートを加工する工程であって、加工がカレンダー法、キャスト法、またはインフレーション法からなる群より選択される、工程;
前記シートから前記加工用可塑剤の全部または一部を抽出して、UHMWPEおよび前記粒子状充填剤を含むマトリックスを製造する工程であって、前記充填剤が、前記マトリックス全体に分散されて、微孔質マトリックスシートを形成している、工程;および
前記微孔質マトリックスシートをカレンダー加工して、微孔質膜を製造する工程;を含み、
ここで、前記微孔質膜が、前記微孔質マトリックスシートよりも、50%またはそれ以上のウェットアウト時間の減少を示す、プロセス。
【請求項29】
カレンダー工程より前の、前記微孔質マトリックスシートを、少なくとも一つの延伸方向に少なくとも約1.5の延伸比で延伸させて、延伸された微孔質マトリックスシートを製造する工程:
前記延伸された微孔質マトリックスシートをカレンダー加工して、微孔質膜を製造する工程;をさらに含み、
ここで、前記微孔質膜が、前記延伸された微孔質マトリックスシートよりも、50%またはそれ以上のウェットアウト時間の減少を示す、
請求項28に記載の未コーティングの微孔質膜を製造するためのプロセス。
【請求項30】
電気化学電池であって:
陽極:
陰極;
電解液;
ハウジング;
隔離板を含み、
前記隔離板が前駆体物質から製造された微孔質材料であり、ここで前記微孔質材料が、前記前駆体物質から5%以上減少した厚みを有し;
前記微孔質材料が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および前記微孔質材料の全体にわたって分散した粒子状シリカ充填剤を含み;
前記充填剤が、前記微孔質材料の約5パーセント〜95重量パーセントを占めており;
前記微孔質材料が、前記微孔質材料全体を連結している相互に連通している細孔のネットワークを有し、前記細孔が、前記微孔質材料の少なくとも45容積パーセントを占めており:
前記微孔質材料が、25N/mmより大の縦方向(MD)引張強さを有し;そして
前記微孔質材料が、180秒未満のウェットアウト時間を有する、電気化学電池。
【請求項31】
前記電気化学電池が、鉛蓄電池、エジソン電池、ニッケルカドミウム電池、亜鉛電池、ニッケル水素電池、酸化銀電池、ルクランシェ電池、マグネシウム電池、アルカリ電池、水銀電池、メルカド電池、リチウム一次電池およびリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池、ナトリウム塩化ニッケル電池、ならびに燃料電池からなる群より選択される、請求項30に記載の電気化学電池。
【請求項32】
前記リチウム電池が、リチウム一次電池、リチウム二次電池、液状有機電解液電池、ポリマー電解液電池、リチウムイオン電池、無機電解液電池、リチウム合金電池からなる群より選択される、請求項31に記載のリチウム電池。
【請求項33】
前記鉛蓄電池が、バルブ調節型鉛蓄電池およびシールド鉛蓄電池を含む、請求項31に記載の鉛蓄電池。
【請求項34】
前記微孔質材料が、電気化学電池のための隔離板である、請求項21に記載の微孔質材料。
【請求項35】
前記電気化学電池が、鉛蓄電池、エジソン電池、ニッケルカドミウム電池、亜鉛電池、ニッケル水素電池、酸化銀電池、ルクランシェ電池、マグネシウム電池、アルカリ電池、水銀電池、メルカド電池、リチウム一次電池およびリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池、ナトリウム塩化ニッケル電池、ならびに燃料電池からなる群より選択される、請求項34に記載の隔離板。
【請求項36】
前記リチウム電池が、液状有機電解液電池、ポリマー電解液電池、リチウムイオン電池、無機電解液電池、リチウム合金電池からなる群より選択される、前記リチウム電池のための、請求項35に記載の隔離板。
【請求項37】
シールド鉛蓄電池およびバルブ調節型鉛蓄電池を含む前記鉛蓄電池のための、請求項35に記載の隔離板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−105947(P2011−105947A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−3549(P2011−3549)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2007−545500(P2007−545500)の分割
【原出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(505458359)ダラミック エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】