説明

微小ワイヤ、方法及びその製造、及びそれを使用して作られた製品

直径ほぼ1ミル(25ミクロン)の大きさの絶縁された導電性ファイバすなわち微小ワイヤは、例えばヤーン又は多微小ワイヤバンドルに処理するのに適しているように、コンフォーマブル布製品に組み込むために、又は着用可能な電子回路として使用するために、より高い融点の重合体のシースの中でより低い融点の金属のコアを共通処理することによって作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年12月1日に出願された特許文献1及び2007年10月22日に出願された特許文献2に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、導電性コア及び絶縁性シースを備える新規な高導電性ファイバすなわち「微小ワイヤ」に関し、この微小ワイヤは、繊維スレッド(thread)又はヤーン(yarn)を形成するように処理することができるように十分に小さくかつ可撓性を有し、この繊維スレッド又はヤーンは、次いで、織られ、編まれ、撚り合わされ、又は別の方法で処理されて、例えば様々な有用な製品を製作するために使用される布地類を生成することができる。本発明は、また、これらのファイバを作るいくつかの異なる方法、及びこれらの製品を使用して作ることができる様々な種類の製品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術は、長年、軍用と商用との両方の様々な所望の用途のために導電性ファイバ又はスレッドを布に組み込もうと努めてきた。基本的に望ましいものは、直径が0.0004〜0.004インチすなわち10〜100ミクロンの絶縁された導電性ファイバすなわち「微小ワイヤ」である。理想的には、微小ワイヤの直径は、25ミクロン未満、すなわち0.001インチ以下である。さらに望ましい特性は、単位長さ当たりのファイバの導電性部品の抵抗が、適切な電気性能を保証するために、銅の抵抗のせいぜい約5倍であること、中心導体の直径が全ファイバ直径の約60%であること、及び微小ワイヤが着用可能な繊維製品に処理されるのに好適に可撓性を有し、かつ衣服の通常使用に耐えるのに十分に耐久性があることである。そのような微小ワイヤが、加熱電流を伝えること、データを伝送すること、電磁遮蔽を提供すること、アンテナ及びセンサ製作、衣服の布に固定された電子部品を接続するために、並びに他の用途のために検討される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/861,951号
【特許文献2】米国特許出願第11/976,196号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
「微小ワイヤ」、すなわち前述のような導電性絶縁ファイバの2つの密接に関連した製造方法が本明細書で開示される。前述のように、本発明は、また、そのように製造されたファイバ、並びに、そのファイバから作られたスレッド又はヤーン、及びそれらから製造された全ての種類の製品を含む。
【0006】
本発明に従ったファイバ製造の両方の方法では、より低融点の高導電性金属中心部材が、より高融点の材料の重合体シースと一緒に共通処理されて、長い長さの細い絶縁ワイヤを形成する。すなわち、最初に固体金属導体又はマルチフィラメントストランドが適切な大きさに線引きされ、引き続いて、その上に重合体絶縁シースを形成することによって、例えば押出し成形によって絶縁される、絶縁ワイヤを作るより一般的な方法に対して、本発明に従えば、金属導体及び絶縁シースは、単一の共通作業工程で製造される。実際には、コアの金属は、線引きを可能にするだけ十分に軟化された重合体シース中に閉じ込められている間に融解され、その結果、コア及びシース材料が共通線引きされるときにシース中の毛管現象によって、金属コアがシースで絶縁された細長い連続した導電性部材を形成するようになる。
【0007】
より具体的には、また以下でより完全に述べられるように、本発明の実施に適した金属には、インジウム、インジウム/銀のようなインジウム合金、及び錫/銀/銅又は錫/鉛のような他の低融点高導電性金属合金がある。適切な重合体には、Bayer Macrolon3103又は6457ポリカーボネート又はEastman Chemical Eastarコポリエステル(PETG)GN007、並びに同様なレオロジーを有する他の重合体がある。これらの重合体は、約500°F以上の温度で融解し申し分なく線引きされ、一方で、言及されたインジウム及び他の合金は、かなり低い温度で融解する。例えば、純粋なインジウムは314°Fで融解する。
【0008】
本発明に従ったファイバを製造する第1の方法は、「プリフォーム」又は「ロッドインチューブ」法と呼ばれる。この技術の研究室規模の試験では、金属コアの上に外側重合体の0.080〜0.120”(2〜3mm)の層を形成するために、所望の重合体の円筒形チューブの中に配置された直径ほぼ30ミル(0.030”、およそ750ミクロン、すなわち0.75mm)の例えばインジウムのコアを含む円柱状「プリフォーム」が最初に作られた。プリフォームは、管状炉の中に配置されて加熱された。細いバイコンポーネント絶縁ワイヤを、プリフォームの先端部から、管状炉の出口の外へ線引きすることができた。
【0009】
想像されることであるが、最終製品中での重合体に対する金属の比をさらに進んで制御するために、複数の金属コアワイヤが単一重合体チューブ中に配置され、その全体が共通線引きされうる。さらに他の代替え物では、一体化された絶縁シース中に複数の導電性ワイヤを含んだ単一ストランドを生じさせるために、各々絶縁性重合体チューブ中に導電性コアを含んだ複数のプリフォームが、管状炉中に配置され、同様に共通処理されてもよい。
【0010】
本発明に従ったファイバを製造する第2の関連した方法は、「二重るつぼ」法と呼ばれる。微小ワイヤの導電性コアを形成するように意図された金属は、絶縁シースを形成するように意図された重合体材料を含んだ同軸外側るつぼによって囲繞された内側るつぼの中で融解される。同軸るつぼは、それらの出口オリフィスが下の端にある状態で縦向きにされ、その結果、重力がそれぞれの溶融又は半溶融材料を、るつぼ先端部に形成された同軸出口オリフィスを通過させように手助けするようになる。導体及びシースの安定した形成を手助けするために、圧力又は真空が、るつぼのどちらか又は両方に加えられることがあり、さらにより良好な制御のために、金属及び重合体は、一緒に又は別々に加熱されることがある。適切な製品特性を実現するために、内側及び外側るつぼの先端部の大きさは、注意深く選ばれなければならないし、さらにそれらの相対的な軸方向位置が注意深く制御されなければならない。二重るつぼを出るバイコンポーネントファイバは、その全体的な直径を減少させるようにさらに線引きされることがある。
【0011】
両方法には、有利点がある。以下でより完全に説明されるように、ロッドインチューブ法には、コアワイヤの直径と絶縁体の厚さの間に非常に正確な関係を維持することができるという利点がある。さらに、所望の断面形状を持ったファイバが、所望の形状のプリフォームから始めることによって作られてよい。例えば、六角形プリフォームを、断面が六角形の微小ワイヤを作るために使用することができ、次に、多ワイヤのヤーンを形成するために、この微小ワイヤが密集されて密バンドルになりうる。しかし、プリフォームのコアとして適している大きさのインジウムワイヤの価格は、1ポンド当たりおよそ11,000ドルである。比較して、二重るつぼ法に適しているようなインゴットの形のインジウム金属の価格は、1ポンド当たりたった約650ドルであり、非常に大きな節約になる。この出願の提出時点では、ロッドインチューブ法と二重るつぼ法の両方が、概念実証の点で試験されていた。
【0012】
本発明の他の態様及び利点は、以下の検討が進むに従い明らかとなるであろう。
【0013】
添付の図面を参照すると、本発明はより適切に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ロッドインチューブプリフォームから共通線引きされた金属コアと重合体シースを備えるフィラメントを製造するための装置の断面図を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)〜(f)を含み、比較的大きな直径の金属コアが、比較的薄壁の重合体シェル中で共通線引きされるとき起こることがある「くびれ」問題を示す図であり、また、1つの可能な解決策を図示する。
【図3】プリフォームの金属と重合体を別々に加熱する1つの可能な構成を示す、図1と同様な図である。
【図4】異なる加熱構成を示す図3と同様な図である。
【図5】重合体シース中に共通線引き金属コアを備えるフィラメントを製造するための、本発明に従った装置の二重るつぼ実施形態を示す模式的な断面図である。
【図6】図5の一部を示す拡大図である。
【図7(a)】本発明に従ったフィラメントを大量製造するためのタワー構成を模式的に示す図であり、ロッドインチューブ代替方法が示されている。
【図7(b)】本発明に従ったフィラメントを大量製造するためのタワー構成を模式的に示す図であり、二重るつぼ代替方法が示されている。
【図7(c)】本発明に従ったフィラメントを大量製造するためのタワー構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概念的に、また図1に示されるように、微小ワイヤ、すなわち絶縁シース中に金属コアを含む細いファイバを製造する本発明の方法はあまり複雑でないが、この方法は、絶縁電線の製造方法を最適化することに費やされた数百年及びおそらく数千のマンアワーの慣例に反している。すなわち、本発明者等が知っている全ての従来技術では、金属ワイヤ又はフィラメントを所望の程度の細さに形成し、撚りワイヤが要求される場合にはいくつかの個々のフィラメントからワイヤヤーンを随意に作り、さらに、一般に、前に形成された金属導体又はヤーンを覆って重合体コーティングを押出し成形することによって導体を絶縁して、絶縁ワイヤは作られていた。
【0016】
比較すると、本発明によれば、金属導体は絶縁シースと同時に形成される。重合体及び金属が、ロッドインチューブ前駆物質からか、二重るつぼ構成を使用するかのどちらかで共通線引きされるときに、重合体シースは、基本的に、溶融金属導体材料から連続フィラメントを形成する「ダイ」を形成する。実際は、より高融点の重合体シースの中で低融点金属を同時に共通処理することによって、極細絶縁微小ワイヤを形成する他の方法が存在する可能性がある。これらの追加の方法は、また、この出願の特許請求の範囲で明確に除外されない限り、本発明の範囲内と考えられるべきである。
【0017】
上で述べたように、溶融金属を閉込め重合体シースと共に共通線引きすることを可能とするために、金属は、重合体シースよりも低温で融解しなければならない。出願者等は、より低融点の金属導体がより高融点の重合体シースで絶縁されたことがこれまでないと言うことはできないが、このことが以前に行われたということを知らないし、間違いなくこの構成はワイヤ製造技術の膨大な経験に反している。
【0018】
したがって、図1に示されるように、本発明に従って、良好な導電率を持ち、さらに良好な半田付け性、高疲労耐性、及び実質的な可撓性を示す相対的により低融点の金属材料のロッド10が、相対的により高融点の重合体材料のチューブ12の中に配置される。この「プリフォーム」14は、次に、16で示されるように、管状炉18又は他のソースからの熱にさらされる。プリフォーム14の構成要素が適切に加熱されたとき、プリフォームの先端部をただ単に掴んで、重合体シースすなわち「クラッド」中に金属コアを含む細いフィラメント20を引っ張り出すことができる。全て図7に関連して以下で述べられるように、このように形成された細いフィラメント20は、次に、ローラの上へ、検査デバイスを通過して、さらに巻取スプールへ導かれることも考えられる。
【0019】
一般に、プリフォームは、直径が0.200〜0.375”である。フィラメント20は、例えば0.010〜0.030”の初期直径でプリフォームから線引きされ、さらに、巻取スプール及び関連した装置によって伸ばされるときに、例えば0.0004〜0.004”の最終直径まで線引きされるが、一方で、金属導体と絶縁シースの相対的な比は一定のままである。したがって、所定の直径の初期フィラメントがプリフォームから線引きされることから始まって、初期フィラメントの伸びの程度、したがってフィラメント20の最終的な直径は、伸びたフィラメントがスプールに巻かれる速度によって制御されることがある。当業者には明らかなように、伸びの全てとは言えないにしてもほとんどは、金属コア及び重合体シースが比較的高温のままである間の、プリフォームからのフィラメントの動きの最初の数インチで起こる。
【0020】
上で述べたように、所望の断面形状のプリフォームを使用して同じ形状のフィラメントを形成することは、本発明の範囲内にある。例えば、六角形の外形の重合体外被中の円筒形の穴の中に配置された円柱状金属ロッドを線引きして、六角形断面のフィラメントを形成することができる。多数のそのようなフィラメントは、円形断面のフィラメントよりも効率よく束ねることができ、このことは、多くの微小ワイヤフィラメントを含むヤーンの製造において有用でありうる。さらに、多数のそのような六角形断面微小ワイヤを、おそらく重合体被覆管中で一緒に束にし、さらに共通線引きして、重合体マトリックスで包んだずっと細い導電性フィラメントを形成することが考えられる。
【0021】
当業者には明らかになることであろうが、金属コア材料と重合体シース材料の相対的な温度を適切に制御することが、本発明の実施の成功にとって重要である。本発明の初期試験で使用された図1の実施形態において、管状炉18は、2つの400ワットのバンドヒータで加熱される金属チューブを備えていた。この管状炉は、直径が0.34”の重合体ロッド中に形成された0.032”中心穴の中に配置された直径0.030”で長さ1インチの「Indalloy」インジウム合金(以下でさらに詳述される)ロッドを加熱するのに十分であった。この構成では、金属ロッドと重合体シース材料の両方が同じソースで加熱されるので、これらの加熱を独立に制御することはできない。このことは、今日まで行われた概念実証研究のためには十分であったが、大規模製造業務には十分でないものと思われる。
【0022】
より具体的には、本発明の実施の「ロッドインチューブ」法又は「プリフォーム」法を試験する際に、プリフォームは、上で説明されたように縦型管状炉で加熱され、続いてフィラメントが手で線引きされた。この試験で使用された重合体はおよそ525°Fで融解し、金属はおよそ244〜460°Fで融解した。留意されたいことであるが、使用された重合体は、非晶質重合体であり、したがって、固体から液体に変化する特定の温度ではなく、柔らかくなって「引っ張る」ことができる所定の範囲の溶融温度を示す。図1の構成において、金属を融解するために、熱は、重合体によって管状炉からロッドに伝導されなければならない。絶縁性重合体は、一様にではないとしても一般に熱の不良導体であるということは、これが金属ロッドを加熱する最適方法でないことを意味する。融解温度の実質的な違いのために、重合体から金属への比較的効率の悪い熱伝達でも金属を融解するのに十分であった。明らかに、最適な実施は、重合体の強度が無くなる温度まで重合体を加熱することなしに、金属の融解を可能にする。
【0023】
さらにより具体的には、重合体と金属コアの両方が単一ステップで加熱されるようになっていれば、金属を融解するための処理のために、重合体温度は、それの最適温度よりも高く上げる必要がない。重合体強度は、温度が上昇するにつれて低下し、結果として、金属を「引っ張る」のに不十分な重合体の強度となる。このことは、今度は、以下で図2に関連して詳細に説明されるくびれ問題、又は重合体シース内での金属コアの断絶をもたらすことがある他の破壊メカニズムにつながることがある。さらに、過熱された重合体は金属よりも著しく伸びるので、金属が、重合体に遅れないでついて行くだけ十分な速度で流れず、結果として、再び金属を含まないファイバの部分が生じるという危険がある。
【0024】
図2(a)〜(f)を含む図2は、このくびれ問題及び1つの可能な解決策を示す。くびれ問題は、図2に示されるように、およそ150ミルの直径及び96ミルの穴サイズを有する密閉端重合体チューブ92の中に530ミルの金属ワイヤ90を配置することによって重合体クラッドに対するコア金属の比を大きくしようとしたとき、最初に、くびれ問題に遭遇した。このプリフォームから微小ワイヤを線引きしようとした最初の試みは不成功であった。2つの条件がこれに寄与したと考えられる。プリフォームの中心穴が比較的大きい(直径全体の50%を超える)とき、重合体壁は比較的薄い。十分な熱が金属ワイヤを融解するように加えられたとき、重合体は、薄い壁がファイバ線引き力を支えるだけ十分に強くなくなる点まで軟化させる。さらに、個々のワイヤ間にはスペースがあるので、金属が完全に溶融したとき、図2(b)のように、金属は、ワイヤの占めていた全スペースを満たさず、中空プリフォーム部分が生じる。薄さと加熱のために壁強度の減少した中空プリフォームは、線引き力が加えられたとき、図2(c)に示されるように、「くびれた部分」を容易に形成することがあり、チューブ壁の破壊が溶融金属の上で始まることがある。重合体壁が崩壊したとき、金属は、くびれ点より下に閉じ込められ、金属が閉じ込められた点より上から金属コアのない重合体が引き続き線引きされて、結果として、図2(d)に示された大きなコアのプリフォームの破壊モードになる。
【0025】
この問題を解決するために2つのステップを使用して、微小ワイヤファイバを首尾よく引っ張ることができた。第1は、くびれが起きた弱い領域を支えるために、図2(e)に示されるように、溶融材料96の直ぐ上に固体金属バー94を挿入して重合体部材の穴の開いた端に栓をすることであった。しかし、金属バー94と溶融金属96は実際には結合されていないので、これら2つの間の接合部に依然として弱い箇所が潜在的に存在した。これに対処するために、図2(e)に98で示されるように、重合体チューブの周りに円周方向の溝を切って重合体チューブに切り込みを入れ、すなわち「予めくびれさせた」。このように重合体チューブの周りに脆弱化リングを形成することで、くびれが、制御された方法で起こること、すなわち溶融金属96を含む領域で始まることを保証した。予め形成されたくびれ98があれば、図2(f)に示されるように、プリフォームの下の端に加えられた線引き力によって、プリフォームはくびれから線引きされ始めるようになり、遂にはファイバを形成する。ファイバは、金属を含む重合体チューブの点から始まって線引きされるので、線引きされたファイバ中に金属が存在することが保証された。これらの試験は、クラッドに対するコアの比の大きなファイバの製造において成功した。
【0026】
予想されることであるが、本発明の好ましい実施では、重合体及び金属は、別々に制御される加熱デバイスによって加熱されるので、その結果、各材料を最適処理温度に加熱することができるようになり、より優れた温度制御が実現され、プロセスの最適化を可能にする。より具体的には、図3及び4は、重合体及び金属コアを別々に加熱して、より良好な制御を実現することができる、より高度な構成を示す。各々において、プリフォーム14はオーブン15中に配置され、重合体12は、縦型管状炉18によって図1の実施形態のように融解することができる。しかし、コアを形成するように意図された金属のロッド10を別個に加熱するために、別個の加熱デバイスが追加されている。これは、いくつかの方法で行うことができる。ここに図示されたそのように行う2つの方法では、コアの上端部に加えられた熱が、その先端部を加熱する。
【0027】
図3では、非導電性重合体は誘導加熱器によって放射される電磁エネルギーの影響を受けないので、誘導加熱器22が、重合体を加熱することなしに金属を選択的に加熱するように縦型管状炉の上に設けられる。図4では、カートリッジヒータ30が設けられ、このヒータは、銅ロッドのような良好な熱伝導率の部材28を加熱する。部材28は、金属ロッド10に対して良好な熱伝達関係で配置されており、したがって重合体シース材料12とは別にロッド10を加熱する。プリフォームは金属チューブ24によって支持され、止めネジ27がプリフォームをチューブ中に保っている。セラミック絶縁体26が、カートリッジヒータ30によるチューブ24の直接加熱を防ぐことが証明された。金属と重合体を別々に加熱する他の手段が、当業者には想到可能であろう。さらに進んだ改善では、例えばカートリッジヒータ(図示されない)によって加熱された金属円錐形部品17が、プリフォーム先端部に対して選択的加熱を行う。これによって、プリフォーム本体に加えられる熱量の減少が可能になり、図2に関連して述べられたような問題が起こるのを防ぐ。
【0028】
重合体12とは別に金属10を加熱することによって、金属が完全に溶融した状態にすることができ、一方で、重合体の温度は、重合体が「線引き可能」であるように軟化されながら金属を「引っ張る」のに十分な強度を保持するようにされている。本発明をこの特定の動作理論に限定することなく、重合体材料が引き抜かれるときに、重合体材料が細いチューブを効果的に形成することが明らかである。次に、毛管現象によって溶融金属がこのチューブを満たし、非常に細いフィラメントを形成する。金属及び重合体の温度を別々に制御することで、金属を流動点まで加熱することができるようになり、毛管現象を促進し、さらに金属が重合体内を流れることができるようにし、これら両方が、首尾一貫した一様な金属コアを得るために重要である。
【0029】
また、理解されるべきことであるが、本発明のプロセスを参照して使用されるような用語「融解された(melted)」及びこれの同語源の語、例えば「溶融した(molten)」は、状況判断して読まれるべきである。すなわち、重合体によって形成されたチューブ内を流れるために、金属は必ずより完全に液体状態に変えられ、比較して重合体は軟化されるが液体状態に達しない。
【0030】
様々な化学製品を加えることによって金属の流動特性を変えることは、本発明の範囲内である。例えば、金属の「流動」特性は、金属ワイヤを重合体プリフォーム中に挿入する前に、金属線に適切なフラックス、例えば半田フラックスをコーティングすることによって劇的に改善されうる。しかし、フラックスが重合体と共存可能でなければ、より弱い金属/重合体界面が生じる可能性がある。
【0031】
本発明者等は、また、初期試験を行い、図5及び6に示されるように「二重るつぼ」方式を使用して金属中心導体と重合体シースを共通線引きすることもできることを示した。本発明のこの実施形態では、導電性コアになるように意図された金属10は、内側るつぼ40で融解されるが、一方で、重合体12は外側るつぼ42で融解される。互いに間隔を開けて配置された内側リングと外側リングを各々含んだ上部部材44及び下部部材46を場合に応じて備える位置合せデバイスが、内側るつぼ及び外側るつぼを位置合せされた状態に維持する。内側るつぼ40及びそれに関連した導体になる金属10は、内側るつぼ40と接触したバンドヒータ48によって加熱することができる。
【0032】
望ましくない合金間化合物の形成を妨げながら金属10への効率のよい熱伝達を保証するために、良好な熱伝導体であり、重合体シース又はインジウムコア金属よりも高い融点を持ち、かつインジウムと反応しない材料、例えば、グラファイト、白金、又は、必要に応じて、金又はテフロン(登録商標)コーティングされた鋼から、内側るつぼ40を作ることができる。(るつぼ自体を加熱することによらないで、例えば誘導加熱によって金属が加熱される場合、内側るつぼは、熱の良導体である必要がない。その場合には、セラミック材料が有用でありうる。)コストの問題は別として、白金は、良好な最初の選択でありうる。重合体は金属10よりも高融点であるので、重合体が内側るつぼの外面に接触していることには、何ら問題がない。
【0033】
重合体12(一般に、外側るつぼの上端に都合よく流し込めるように粒状の形で供給される)は、外側るつぼ42と良好に熱接触した第2のバンドヒータ50で加熱することができ、この外側るつぼ42は、アルミナ、ステンレス鋼、又は他の都合のよい金属から作ることができる。重合体ペレットに加えられる熱は、本発明の実施に適したタールのようなコンシステンシを持った濃い液体が形成されるように制御される。
【0034】
金属先端部52は、一般に、内側るつぼ40の下の開口の上に設けられる。先端部52は、好ましくは、容易に交換可能に作られて、プロセスパラメータを望み通りに容易に調節することができる。再び、プロセスを最適化するためにプロセスパラメータを容易に調節できるようにするために、外側るつぼ42は、また、交換可能な先端部59によって終端されることがある。第3のバンドヒータ54が設けられて、先端部59の近くの重合体の加熱を別個に制御することを可能にすることができる。
【0035】
両方向矢印56によって指し示されるように、圧縮空気、他のガス、又は真空を内側るつぼ40の内部に供給することが望ましい場合があり、この目的のために内側るつぼ40は60において蓋をされている。圧縮空気の供給は、溶融金属の流れを制御する際に有用である。しかし、溶融インジウムは、酸素が存在する状態で酸化することがあることを考慮すると、窒素のようなパージガスを供給することが好ましいと考えられる。真空を加えることは、金属の流れを遅くすることになる。例えば、重合体の線引きを最初に始め、事実上細長い非常に小さな直径のチューブの安定した線引きを確立し、次に、圧縮ガスを56から加えて溶融金属の流れを引き起こすことによって、長い製造操業を始めることを容易に想像することができる。次に、圧縮ガス又は真空が加えられて、例えば、図7に関連して述べられる下流監視デバイスによって与えられる制御信号に応答して、金属流の速度を制御することができる。圧縮ガス又は真空は、また、同様に重合体の流れを制御する際にも有用である。
【0036】
図6は、図5の二重るつぼ構成の先端領域の拡大図を示す。A、B、及びCとラベル表示された3つの相対的な位置が示されており、これらの位置で、内側るつぼ中の溶融金属が、外側るつぼから線引きされる軟化重合体の流れの中へ導入することができる。この場所は、62で模式的に示されるように、外側るつぼに対する内側るつぼ40の相対的な動きを可能にすることによって制御することができ、支持部材66にねじ込まれる調節ネジ64が内側るつぼ40の軸方向位置を制御する。例えば、図6に示されるように、外側るつぼのオリフィス57の内側(位置A)であって、外側るつぼのオリフィス57の外側(位置C)において、又はオリフィス57のほぼ最小開口(位置B)において、溶融金属が重合体シースに導入されるように、内側るつぼのオリフィス53を位置付けすることができる。
【0037】
内側るつぼのオリフィス53と外側るつぼのオリフィス57の相対的な直径及び相対的な位置は、微小ワイヤの全直径に対するコアの直径の所望の比が達成されるようにコア及びシースの相対的な寸法を制御するために、注意深く選ばれなければならないことは明らかである。
【0038】
より具体的には、金属が外側るつぼの中に放出された場合(すなわち、オリフィスが相対的位置Aにある場合)、金属が放出される重合体は比較的熱い。この位置は、例えば56からの圧縮ガスによって外力を加えることなしに、軟化重合体シースへの溶融金属の安定した流れ込みを可能にすると考えられる。しかし、重合体が柔らかすぎると、重合体は、溶融金属柱を支持することができない場合があり、金属の大部分が制御不可能に放出される。内側るつぼ先端部のオリフィス53が外側るつぼのオリフィス57の外側(位置C)にある場合には、金属は、重合体溶融物強度が溶融金属を引き伸ばすのに十分であるように部分的に硬化された重合体マトリックス中へ放出され得る。しかし、重合体が硬すぎると、引き続いて重合体/金属システムを非常に小さな直径まで引き伸ばすことに問題が生じ得る。両方の先端部が互いに実質的に整列された場合(位置B)に、良好な妥協が見出されうる。最適な相対的位置は、再び、これらに関する実験並びに他の関連したプロセスパラメータによって決定される。
【0039】
前述のように、金属が重合体流中へ導入される最適点を調査することに加えて、調査されるべき第2のパラメータは、外側及び内側るつぼの出口開口の相対的な大きさである。このパラメータは、内側るつぼに対する外側るつぼの相対的配置と共に、コア/クラッド比の制御を手助けするように、すなわち、全フィラメント直径に対する金属導体の直径の所望の比を達成するように作用する。
【0040】
調査されるべき第3のパラメータは、金属及び重合体の個々の温度だけでなく金属と重合体の温度差であり、この温度差は、それぞれの流速、したがって互いの流速の比に影響を及ぼす場合がある。
【0041】
調査されるべきさらに他のパラメータは、絞り率、すなわち、オリフィスを出るファイバ前駆物質が、高速度でスプールに巻かれることによって下方に線引きされて直径が減少する程度である。
【0042】
最適処理条件を確定する際に金属温度の最適化が重要であるように溶融金属の粘度は温度でかなり変わることは、当業者によって理解されることであ。しかし、過度に温度を上げることは、金属の酸化につながることがあり、これによって、今度は、制御された雰囲気中での処理が必要になる場合がある。溶融金属の表面張力を制御することが望ましい場合があり、フラックス剤の供給によって行うことも可能である、このフラックス剤が、今度は、例えば金属コアと重合体シースの間に形成される密着を妨げて、ファイバの機械的特性に影響を及ぼす場合がある。
【0043】
重要なプロセス変数、例えば、オリフィスの相対的な大きさ及び間隔、温度、加えられる圧力又は真空、絞り率、及び他のパラメータを最適化するように意図された実験が、本出願の提出時点で進行中である。直径10から125ミルの内側るつぼオリフィス53が試験された。予備結果は、内側るつぼの50〜75ミルのオリフィスが適切であることを示している。外側るつぼのオリフィスの直径は、それほど重要でないように思われ、重要なのは、主として、得られるべき重合体の厚さに関するパラメータである。成功した試験は、相対的位置Bのオリフィスで、すなわちオリフィスが互いに実質的に整列された状態で、0.332”の外側オリフィス直径及び0.057”の内側オリフィス直径を使用して行われた。これらのパラメータを使用して、最終直径2〜4ミルのファイバが、毎分140〜200フィートの巻き速度で首尾よく線引きされた。ファイバは、金属コアとしてのIndalloy290と共に、重合体としてPC6457とPETG GN007の両方を使用して首尾よく線引きされた。これらの試験中、バンドヒータは500〜525度Fに設定された。これらの試験中、重合体及び金属の温度は、直接測定されなかった。しかし、取り外された内側るつぼ及び重合体を一杯に満たされた外側るつぼに関する予備試験は、出口オリフィスの温度が一般にバンドヒータ54の温度よりも約75度F低いことを示した。
【0044】
金属と重合体の温度を別々に制御すること、及び圧縮ガス流又は真空を内側及び/又は外側るつぼに加えて溶融金属及び重合体の放出量を増加又は減少させることとを含む、上記のような最適処理技術及び条件を確定するためのさらに進んだ実験が、当業者によって考慮されている。
【0045】
金属/重合体フィラメントを高温に保って、フィラメントが周囲空気によって実質的に直ちに冷却される場合に可能であるよりも伸びによる直径のなおいっそうの減少を可能にするために、例えば管状オーブンを通してフィラメントを引っ張ることによって初期形成後にフィラメントに熱を加えることもまた、本発明の範囲内である。
【0046】
このように行われた研究室の仕事を製造規模の作業まで拡大することは、応用可能である場合には光ファイバの製造で知られている装置及び技術を使用してファイバ線引き塔70を建設することによって、最適に達成されることが考えられる。図7(c)は、そのような塔のために現在想到される基本的な構成要素を模式的に示す。図示されるように、図7(a)に示されたロッドインチューブ法か、図7(b)に示された二重るつぼ構成かのどちらかを、ファイバ形成のために使用し、続いて、監視及び制御機器一式及び、スプーラ及び同様なものなどの材料取扱い装置を用することができる。
【0047】
ワイヤ品質は、ファイバ線引き塔70の一部分として4つの主要な機器を設けることによって、効果的に連続的に監視することができることが想到される。第1は、ファイバの直径が所望の大きさ、例えば25ミクロンで一定のままであることを保証する微小ワイヤ直径監視装置72である。この監視装置は、巻取ローラ組立品74に情報を供給し、この巻取ローラ組立品74がプロセスの速度を制御する。すなわち、前述のように、巻取ローラ組立品74によって加えられる張力のために、重合体/金属システムのかなりの伸び及び対応する直径の減少が、初期形成後に起こる。また、ワイヤ直径監視装置72は、コンピュータ化されたプリフォーム供給装置76に情報を供給して、ロッドインチューブ法が使用される場合には、追加の金属及び重合体をるつぼに供給し、又は78で示されるように圧縮空気又は真空を内側るつぼと外側るつぼとのどちらか又は両方に加え、二重るつぼ法が使用される場合には、線引きの速度に依存して供給を増加又は減少させる。
【0048】
第2、第3、及び第4の機器は、機械の他の部分を制御するようには必ずしも使用されないことがあるが、プロセスが許容可能公差限界を超えて動いたとき警報を出すように使用することができる。第2の機器、金属コア連続性検出装置80は、金属コアのどんな断絶でも検出する。第3の機器は、所望のコア/クラッド比が適切に維持されているかどうかを決定するためのコア/クラッド比検出装置82である。第4の機器は、ファイバが円形でかつ絶縁シースが申し分なく一様であることを保証するためのコア/クラッド同心性監視装置84である。最後に、張力監視装置86によって、ファイバの張力が監視され制御される。
【0049】
適切な微小ワイヤ直径監視装置72を決定することは、簡単な仕事である。光ファイバ産業で使用されるようなこの型の装置を入手し評価することができる多くの会社がある。
【0050】
金属コア連続性検出装置80は、線引きされるファイバが首尾一貫した金属コアを含むことを保証するために必要である。現在、金属コア検出の3つの方法が考えられる。すなわち、レーザ走査、キャパシタンス測定、及び超低周波パルス誘導のような磁気特性及びうなり周波数発振に基づいた方法である。最善の方法を選ぶために、これらの方法の各々を使用して動作する装置を入手し、試作品ヤーンを使用して様々な速度で試験を行ってこれらの能力を評価することが必要である。
【0051】
コア/クラッド比検出装置82を実現する2つの可能な方法を、現在、検討中である。第1のものは、ファイバにレーザビームを当て、ビームの通過をCCDカメラ又は同様なものを用いて監視することを含む。微小ワイヤの絶縁シースに好ましい重合体は透明であるから、金属コアの光学的検査は効果的であるはずである。レーザは、ファイバのレーザと反対の側にある光検出装置が導電性コアの像を作ることができるような具合に、重合体を通してコアまで「見る」ことができる。そのようなデバイスは、ファイバ直径検出装置センサを製造する同じ会社から入手することができる。第2の方法は、再びCCDカメラによって反射光を測定する。有用と思われるデバイスは、商用マシンビジョンシステムの製造業者、例えばElbert Vision System及びSystronicsから入手することができる。
【0052】
コア/クラッド同心性監視装置84は、コア/クラッド比検出装置に関して上で説明されたのと同じ技術であり、すなわちレーザとCCDカメラの組合せに基づいて動作することができる。両方の場合に、レーザはファイバを照らし、CCDカメラはデータを取り込み、さらにコンピュータソフトウェアが使用されて、このデータをコア/クラッド比及びコア/クラッド同心性情報に変換する。機器82及び84の機能は、また、単一機器で行われてもよい。
【0053】
上で述べられたように、本発明の微小ワイヤは、望まれる最終製品に応じて様々な方法で使用することができる。マルチフィラメントヤーンは、微小ワイヤファイバを使用して作ることができる。マルチフィラメントヤーンは、単一フィラメントヤーンよりも大きな電流を伝え、さらにまたコネクタとの高信頼性インタフェースを作ることを容易にする。撚り合せ及びコア−ラッピングは、本発明に従った微小ワイヤファイバを使用してマルチフィラメントヤーンを製造する2つの可能な方法である。
【0054】
本発明の微小ワイヤは、望み通りに他のマルチフィラメントと組み合わせて、所望のヤーン特性、例えばモジュラス、引っ張り強度、及びバルクを生成し、かつ微小ワイヤを隠し保護することができる。マルチフィラメント撚りヤーンは、望ましくは、100%微小ワイヤファイバからか、微小ワイヤファイバと繊維等級重合体ファイバのある混合物、おそらく50%微小ワイヤファイバと50%ポリエステルの混合物からかのどちらかで作られることがある。ポリエステル/微小ワイヤ混合ヤーンは、微小ワイヤファイバだけから成るヤーンに比べて、織ることに含まれる要件をより適切に満たすと予想される。100%微小ワイヤヤーンを作るために、微小ワイヤファイバの30本のエンド(個々のファイバ)が使用することができる。50/50混合物では、微小ワイヤファイバの15本のエンドを、70デニールのマルチフィラメントポリエステルヤーンの1本のエンドと撚り合わすことができる。100%微小ワイヤヤーンは、混合物と比較したとき同じ大きさのヤーンについてより高い導電率を持つと予想され、さらに、コネクタを取り付けるときには、金属コアに接続する確率がより高くなる。他方で、混合物は、より耐久性があり、かつより満足な繊維処理特性を備えていると予想できる。
【0055】
微小ワイヤファイバの多数のエンド(ほぼ15本のエンド)を備える「バンドル」は、また、40デニールのマルチフィラメントポリエステルヤーンの2本のエンドでラップ又はクロスラップすることができる。ラッピングは、より簡単でより安価なプロセスであるが、クロス−ラッピングは微小ワイヤバンドルに対してより大きな被覆率を、したがってより高い保護を実現することになる。撚りヤーンをコア−ラップヤーンと対比すると、撚りヤーンは、ヤーン製造の高速で経済的な方法であるが、コア−ラップヤーンは、より耐性の高いヤーンを製造し、かつコネクタに接続するとき電流移動と信頼性の両方を最適化することが期待される。
【0056】
いったん最適導電性ヤーン(単一エンド又は複数エンド)が特定されると、そのヤーンは、織ることによって、又は編むことによって布に一体化することができる。例えば、織物を作るために、150デニールポリエステルヤーンが縦糸として使用されてもよいし、微小ワイヤヤーン又はヤーン混合物が横糸として使用されてもよい。編物では、単一編目編み法を、微小ワイヤヤーン又はヤーン混合物を布に組み込むために利用することができる。この編み方は、布全体を通して連続した導電性ファイバを生成する。
【0057】
所定範囲の軍用及び商用用途に対処するために、織物と編物の両方を製造することができる。織布は、軍用用途又はより高耐性用途のためにより適切であり、一方、編物は、熱手袋及び肌着のような民生用製品により適切である場合がある。
【0058】
金属コア及び重合体シースの材料を適切に選ぶことは、本発明の実施の成功のために重要であることは自明である。本出願の完全性のために、選択プロセスがここに十分にまとめられている。もちろん、本発明は、行われる又は考えられる作用によって限定されるべきでなく、また本明細書で言及される材料に限定されるべきでない。
【0059】
重合体選択は、特定の最終製品及び処理要件を満たすように注意深く行われなければならない。
・重合体は繊維用途に適しているか。
・選択された重合体は、繰返し繊維洗浄サイクルに耐えることができるか。
・重合体は、ロッドインチューブ法又は二重るつぼ法での使用を可能にするように、適切な温度で必要な溶融物挙動を示すか。
・重合体の重合体レオロジー、特に適切な圧力及び温度での「溶融物フローインデックス」は微小ファイバ線引きに適しているか。6から14の「溶融物フローインデックス」(この用語は、当技術分野で一般に使用されている)がファイバ線引きのために推奨される。
・重合体は、コア連続性の光学的検査を可能にするように透明であるか。(そうでなければ、X線又は高エネルギー電磁ビーム法がファイバ検査のために使用されてもよい。)
【0060】
一連の重合体が融解され、微小ファイバを形成する能力を試験された。初期調査は、以下の重合体を含み、各々が融解され、溶融槽からファイバが線引きされた。
・ポリカーボネート(Bayer Macrolonシリーズ3100、3103、6457)
・アクリル樹脂(Autofina−AltuglasVO52、DR101、MI7)
・ポリエステル及び改質ポリエステル(Eastman chemical PCTG,Provista,GN007、PETG6763、及び熱安定剤を含むPETG )
・ポリウレタン(Dow Pellethane 2102〜90AE及び2102 65D)
・ナイロン(EMS Grilamid L20GHS)
・Bayerポリエーテル、PE
・Inomers(Bayer Texin 990、DuPont Surlyn 8920、DuPont Engage 8440)
【0061】
使い易さ及び最終用途適合性に焦点を当てて、2つの重合体類がさらに進んだ試験をするために選ばれた。すなわち、ポリカーボネートとグリコール−改質ポリエチレンテレフタレート(PETG)である。数百ヤードの連続したファイバが、R&D規模の装置を使用して線引きされた。大量製造適合性を保証するために、数千ヤードの単一重合体が商用装置で線引きされた。
【0062】
ポリカーボネートは、高い強度、靭性、熱耐性、化学的耐性及び優れた物理特性安定性を実証する。また、物理特性を著しく損なうことなしにポリカーボネートに難燃剤を加えることができる。
【0063】
2つの異なる等級のBayerポリカーボネート製品、すなわちBayer Macrolon3103及びBayer Macrolon6457が、その優れた溶融物特性、強度、及び透明度のために、及びそのファイバを形成する能力のために選ばれた。これらの重合体の化学的構造は似ているが、最終製品に特有の特性を与える異なる添加物を含んでいる。他のポリカーボネートも有用でありうるが、特定のポリカーボネートは、熱水に耐えることができず、ポリカーボネートから作られた衣服に関して検討すべき湿式処理問題を起こす可能性があることに留意すべきである。
【0064】
ポリカーボネートは、炭酸と、ビスフェノールAなどの二価フェノールとから成る長鎖線状ポリエステルである。分子鎖のフェニル基及び2つのメチル側基の存在が、分子強度に寄与している。さらに、異なる分子間のフェニル基の引力は、個々の分子の移動度不足の一因であり、本発明のプロセスに必要な良好な熱耐性及び比較的高い粘度(すなわち、低溶融物流動性)をもたらす。移動度不足は、また、ポリカーボネートが顕著な結晶構造を作るのを妨げる。
【0065】
また、グリコール−改質ポリエチレンテレフタレート、すなわちPETGが、繊維環境における適切な溶融物挙動及び適応性のために検討された。PETGは、コポリエステル、すなわち90%の光透過率を有する透明な非晶質熱可塑性物質である。PETGは40年以上も前から知られており、軍用繊維を含んで繊維産業での有用性は証明されている。PETG重合体は、熱安定剤などの様々な添加物を含んだ多くの形態に分類される。これらの改質重合体システムは、少し高価であるが、所望の工学的特性を提供する。グリコール改質剤を組み込むことで、ポリエチレンテレフタレート(PET)の脆弱性が最小限になり、コンフォーマブル布に織ることができる可撓性ファイバが生成される。無応力PETGは、鉱酸、塩基、塩、及びせっけんの薄い水溶液に対して良好な耐性を示す。PETGは、また、脂肪族炭化水素、アルコール、及び様々な油に対しても良好な耐性を持っている。ハロゲン化炭化水素、低分子量ケトン、及び芳香族炭化水素は、この重合体を溶解するか、膨潤させる。PETGは、同様な温度耐性及び耐久性を持ったPVCに似た多くの特徴を有している。PETGは、「環境」にやさしい製品を製造するために顧客が注目する市場を見出した。コスト及び全体的な性能を考えて、2つのEastman Chemicalのポリエチレンテレフタレート(PETG)重合体、PETG6763及びPETG GN007を使用して試験が行われた。
【0066】
試験によって、Macralon3103、Macralon6457及びPETG GN007は、比較的線引きし易く、非常に小さな直径に線引きすることができ、さらに、検討される他の特性に関して、ファイバ製造の許容可能限界内に含まれることがはっきり実証された。したがって、これら3つの重合体が初期試験のために選ばれた。
【0067】
本発明の微小ワイヤの導体を形成するために使用されるべき金属は、同様に、特定の基準を満たさなければならない。大抵の金属は、重合体融点よりも遥かに高い1000°Fを超える温度で融解するので、ほんの限られた数の金属だけがこの仕事に利用可能である。この限られた数は、電気的要件及び結晶構造要件によってさらに狭められる。したがって、金属は、金属特性と最終製品の物理特性の両方を完全に理解して選ばれなければならない。以下の問題が金属選択中に検討された。
・金属は十分な導電率を有しているか(最大抵抗率9マイクロオーム−cm)。
・金属は、重合体融解/線引き温度よりも遥かに低い温度で融解するか。
・金属の結晶構造は、低温で高延性を実現するように十分な数のすべり面を含むか。
・溶融金属の表面張力特性は、重合体/金属界面で適切な流れ特性及びぬれ特性を実現するようなものであるか。
・金属−重合体システムは、重合体/金属界面の接触角を修正するために界面活性剤を必要とするか。
・選ばれた金属は、良好な歪み/繰返し疲労耐性を有しているか。
・金属は容易に半田付けされるか。
・金属は、電子部品を保持するだけ十分に強い接続を形成することができるか。
・金属は、鉛又はカドミウムのような有毒材料を含まず、使う人にやさしいか。
・金属は、入手可能であるか。
【0068】
金属選択プロセス中に、4つの主要な特性について特別に検討された。すなわち、溶融物温度(液相線温度Tm,lと固相線温度Tm,sの両方を検討する)、延展性(極限引っ張り強度での%伸び)、抵抗率(銅に対する%抵抗率)、及び金属融解の熱力学(相図で示されるような)。注意深い文献調査の後で、本発明者等は、最初に下に列挙される金属を提案した。これらの金属は、上で言及された全ての問題を満足させる。これらの金属の全ては、Indium Corporation of America(ICA)から購入され、本明細書では、合金の組成を示す数が後に付いたICAの製品識別子「Indalloy」によって識別されている。実際の構成成分は、度Fの単位の液相線及び固相線融点Tm,l及びTm,sと共に下にそれぞれ列挙される。評価された2つの製品(Indalloy121及びIndalloy241)が実際にはインジウムを含まないにもかかわらず、またIndalloy4は実際には純粋なインジウムであるが、ICAの金属の全てはIndalloyと呼ばれることに留意されたい。さらに、下に与えられた構成成分の百分率は、全て、重量百分率を意味することに留意されたい。
Indalloy4−純粋インジウム(Tm,s−314F、Tm,l−314F)
Indalloy290−97%インジウム、3%銀(Tm,s−290F、Tm,l−290F)
Indalloy3−90%インジウム、10%銀(Tm,s−289F、Tm,l−459F)
Indalloy1E−52%インジウム、48%錫(Tm,s−244F、Tm,l−244F)
Indalloy121−96.5%錫、3.5%銀(Tm,s−430F、Tm,l−430F)
Indalloy241−95.5%錫、3.8%銀、0.7%銅(Tm,s−423F、Tm,l−428F)
【0069】
金属と重合体の様々な組合せを試験するために、図1のロッドインチューブ法が使用された。試験手順は、基本的に次の通りであった。直径0.34”の重合体ロッドが縦型パイプ押出し成形機で準備され、長さ約1インチに切断され、高速ボール盤で32ミルのドリルビットを使用して穴開けされた。30ミルIndalloyワイヤは、金属の外側層を5〜10%塩化水素酸で1〜5分間溶解し次に金属をアセトンで洗うことによって、洗浄された。次に、ワイヤは、重合体ロッドの中心穴の中に挿入されて、金属中心重合体プリフォームを形成した。次に、これらのプリフォームは、2個の400Wバンドヒータを備える縦型金属オーブン中に配置され、先端部が融点に達するまで加熱された。先端部が融点に達したとき、先端部が下方に線引きされて、微小ワイヤが生成された。
【0070】
より具体的には、たとえ正方形終端プリフォームから始めても、融解が始まったとき、プリフォームは、図1に示されるように先が尖った状態になる。例えば、図4の円錐形ヒータ17によって先端部の近くのプリフォームを加熱することが有用であることが明らかになった。いったん重合体が融解し始めると、重合体は流れる用意ができており、ペンチを用いてプリフォームの尖った先端部を掴み、巻取スプール74(図7)まで引っ張って、微小ワイヤの線引きを始めることができる。金属の存在を保証するために、図2(e)の98のようにプリフォームに予め切り込みが入れられてもよい。
【0071】
重合体と金属合金の共存可能性を理解するために、3つの異なる重合体を使用して一連の試作が行われ、また金属合金の選択が行われた。試作のために選ばれた重合体は、Macrolon3103、Macrolon6457、及びPETG GN007であった。上に列挙された6つの金属から、Indalloy4(100%インジウム)、Indalloy290(97%インジウム/3%銀)、Indalloy3(90%インジウム/10%銀)、及びIndalloy121(96.5%錫/3.5%銀)が、評価用の初期金属として選ばれた。これらの試作の観察及びコメントが以下に列挙される。
【0072】
Indalloy121(さらに進んだ試験からは削除された)
・比較的高温(430+°F)で融解し、
・液相線温度と固相線温度の両方が同じ、すなわち、430°Fより下には液相がなく、
・金属が軟化する比較的高温で、強い重合体が、軟化された金属を引き伸ばしてリボン状ワイヤを形成することができる。
・重合体が融解するがコア金属は硬いままである適度の温度で、金属ワイヤは、その周りの重合体を固定する傾向がある。これによって、結果的に、プリフォーム直径が著しく減少する外皮引っ張りが金属ワイヤの周りで生じる。また、金属を含まない最終製品が生じる。
・先端部温度が高くなければ、ファイバは未溶融金属先端部で破断する傾向がある。
・最適温度の選択は難しく、いっそうの注意を必要とする。
・非常に高温の重合体を考慮に入れないと、金属は、線引きするのが容易でない。Indalloy121は、このプロジェクトで使用されるべき最善の金属組成でない可能性がある。
・ 低導電率(16%のCu)及び高溶融物温度のためにさらに進んだ試験から削除される。
【0073】
Indalloy3(さらに進んだ試験からは削除された)
・非常に広い液相線−固相線窓(Tm,s−289F、Tm,l−459F)を持つ。広い窓は、重合体処理条件に依存して有利であることもあり、不利であることもある。
・500°〜600°Fの処理温度で、コアワイヤ温度は液相線温度(459°F)より下のままであり、プリフォームワイヤは半固体状態のままであった。
・ファイバ線引きプロセス中に、金属の溶融部分は具合よく伸びる傾向があるが、溶融していない金属は引伸しに抵抗する傾向があり、太い部分と細い部分を生じる。
・600°Fより上では、重合体は非常に速く融解し、コアワイヤ温度はそれの液相線温度に達するか、近づく。しかし、ワイヤ温度は、依然として、液相線より下のままである。この温度では、重合体は溶融物強度を失い、線引きの効果が減少する。
・最終製品は、許容できない多くの太い部分と細い部分を有している。
・可能な金属のリストから削除される。
しかし、コア金属が初期試験から削除されるというこの可能な選択の原因となる技術的な障害のいくつかは、図3及び4に関連して説明されたように金属コアを重合体ボディと無関係に加熱することによって、又は二重るつぼ法を使用することによって、解決されうる。
【0074】
Indalloy290(さらに進んだ試験のために選ばれた)
・非常に容易に融解する。(Tm,s−290F、Tm,l−290F)
・500°Fより上の処理温度で、金属ワイヤは融解し、まさしく液体のままである。液体段階では、金属は、球になって、その表面自由エネルギーを減少させる傾向がある。ファイバ線引き中に、液体金属は、重合体と共に非常に具合よく流れる。
・毛管現象が、重合体を線引きすることによって形成されたチューブの中心を通して溶融金属を強制的に進めるように思われ、一様な金属コアを生成する。
・まさしく首尾一貫した一様なコア(太い部分及び細い部分のない)。
・500°Fより上の処理温度で非常に良いサンプルを生成した。(ポリカーボネートでは、525〜540°Fが最適と思われるが、一方で、PETGでは、500〜525°Fが最適である。)
・電気繊維を製造するための全ての要求基準を満たす。
・プリフォーム線引きと二重るつぼ法の両方でさらに追究する価値がある。
・コストは1グラム当たり23.36ドルであり、最小注文は50グラムである。
【0075】
Indalloy4(純粋インジウム)(さらに進んだ試験のために選ばれた)
・非常に低い重合体処理温度で融解する。
・3つの選ばれた重合体(Macrolon3103、Macrolon6457、及びPETG)全てと一緒に使用することができる。
・500°Fより上の処理温度で、金属は融解し、重合体中心を非常に具合よく流れる。
・非常に一様なコアを持った細いワイヤを製造することができる。
・プリフォーム法と二重るつぼ法の両方で追究する価値がある。
・コストは1グラム当たり25.95ドルであり、最小注文は50グラムである。
【0076】
示されたように、Indalloy121の導電率は、このプロジェクトの要求導電率値よりもいくらか低い。さらに、Indalloy121は、比較的高温で融解し、選ばれた重合体と共存し難い。したがって、Indalloy121は、さらに進んだ検討から削除された。
【0077】
同様に、Indalloy3は、非常に広い液相線−固相線窓を実証する。したがって、低処理温度で、金属の未溶融部分が、線引き製品に太い箇所と細い箇所を形成する傾向がある。処理条件を劇的に変えなければ(例えば、おそらく、図4に示されるように、プリフォームの先端部に強烈な熱を選択的に加えることによって、又は、独立したヒータを使用してコアを加熱することによって)、この合金は本発明の実施に適していない。したがって、Indalloy3は、さらに進んだ試験から削除された。
【0078】
金属特性に加えて実験的な観察によって、これまで試験された少なくとも2つの金属(Indalloy290及びIndalloy4)は使用者にやさしく対象の微小ワイヤを製造するために利用できることが示された。Indalloy4(100%インジウム)とIndalloy290(共晶インジウム−銀)の両方は、非常に低い温度(315°Fより下)で融解し、重合体処理温度で融解され得る。これらの2つの合金は、また、この仕事のために必要とされる導電率要件も満たす。これらの合金は、選ばれた重合体と比較的共存可能であるので、容易に線引きすることができる。金属が重合体プリフォーム中に封入され、かつ加熱されるとき、溶融金属は、中心穴の形に従う。重合体が小さな直径のファイバに線引きされるとき、金属は中心穴中に閉じ込められたままであり、非常に一様な導電性中心コアとなる。
【0079】
所望の微小ワイヤの大量製造にとって最も大事なのは、下に選ばれた重合体と金属の組み合わされた性能である。いくつかの試作の後に、初期の組の重合体/金属組合せは、3つの可能な重合体(Macrolon3103、Macrolon6457及びPETG GN007)と2つのインジウム合金(Indalloy290及びIndalloy4)の組合せに減少した。様々な金属と組み合わせたこれら3の重合体の性能は、次の通りに要約することができる。
【0080】
Macrolon−PC3103とインジウム合金
・非常に透明(透過率88%)な重合体で、光学顕微鏡によって金属コアを見ることができる。コア連続性を検出するのが容易である。
・供給されたままの粒状材料は、使用前に250Fで少なくとも4時間乾燥する必要があり、そうでなければ、溶融重合体槽中に泡が現れることがある。
・重合体が線引き中にコア金属を強制的に引き伸ばすことができるほど、重合体は高溶融物強度を示す。
・重合体は、コア金属が完全に融解され得る比較的高い温度で融解する。
・プリフォーム先端部が単独に加熱、又はプリフォームの残り部分より高く加熱されない場合、「外皮引っ張り」効果が問題になることがある。これは、プリフォームの中心部が引っ張られない間に軟化重合体が金属コアの周りから引っ張られる状態である。この現象は、高い重合体溶融物強度を含んだいくつかの要素によって引き起こされることがある。コア金属が融解されない場合、コア金属は、その周りの重合体を固定する傾向にあり、外皮引っ張り効果が顕著になる。前述のように、加熱を先端部に集中させることによって、外皮引っ張りを防ぐことができ、ファイバは首尾よく線引きされる。
・この重合体は、300℃、1.2Kgで6.6g/10秒の低MFIを持つことが報告されている。金属コアが完全に融解する約525°〜575°F(540°Fが最善)で、申し分なく融解し流れる。
・プリフォームが連続的にオーブン中に挿入される連続製造では、高熱が必要とされる。
・Indalloy4又はIndalloy290にPC3103を加えたものは、約2〜3ミル(50〜75ミクロン)の微小ワイヤを製造するための良い組合せである。
Macrolon−PC6457とインジウム合金
・重合体は湿度に非常に敏感であるので、供給されたままの粒状材料は、使用前に250°Fで4時間乾燥されなければならない。乾燥しなければ、泡が生じ、線引きされたファイバは比較的不透明で筋状になる。
・重合体は、500°Fより上の温度で流れるので、Indalloy4又はIndalloy290の融点より上で線引きすることができる。
・525°〜540°Fのファイバ線引き温度で中程度の溶融物強度を持つと報告されている。ファイバ線引き中に、プリフォーム外皮は、Macrolon3103ほど強く引っ張られず、より小さな外皮引っ張り効果になる。
・非常に小さな直径のファイバ(1〜2ミル)に線引きすることができる。
・研究の対象とすべき優れた重合体。この重合体は、溶融物温度、MFI、及び溶融物強度の均衡の取れた特性を有している。
・Indalloy4又はIndalloy290両方に対して優れた性能。
【0081】
PETG GN007とインジウム合金
・非常に透明な重合体(透過率90%)。光学顕微鏡によって金属コアを見ることができる。コア連続性を検出するのが容易。
・再び、粒状重合体材料は、例えば180°F6時間で、完全に乾燥する必要がある。
・重合体は、以前、主要な軍事契約業者によって軍用衣服産業のために選ばれた。
・より低い温度(500°Fより下)で融解する。
・約500°Fで非常に低い溶融物強度。重合体は、溶融物温度を高くするために熱安定化剤を必要とすることがある。
・低温で非常に満足に線引きすることができ、かつ非常に小さな直径のファイバ(0.5〜2ミル)に線引きすることができる。
・加熱ゾーンが適切に調節される場合、金属ワイヤとプリフォーム先端部(重合体)の両方が同時に融解されることがあり、良好なワイヤを線引きすることができる。
・加熱ゾーンが適切に調節されない場合、ファイバ線引きは非常に困難であることがある。プリフォームくびれ及びチャンキングが問題になることがある。
・Indalloy290に対して優れた性能。
【0082】
したがって、上記のように、本発明者等の実験的観察は、実験的試作に含まれた重合体システム(PC3103、PC6457、GN007)とインジウム合金(Indalloy4及びIndalloy290)のどんな組合せも、ロッドインチューブ法で非常に満足に機能することを、はっきり示している。また、これらの組合せのどれでも、又は全てを、二重るつぼ技術で満足に機能させることができる。選ばれた重合体/金属システムそれぞれは、異なる物理特性を提供するので、最終的な選択は、最終製品要件に従って行われなければならない。GN007又はPC6457重合体システムとIndalloy290又はIndalloy4の組合せは、初期商用化に適していることがわかった。これらの複合システムの各々は、非常に細いワイヤを形成するように処理するのが比較的容易である。もちろん、本発明は、このように限定されるべきでない。
【0083】
インジウムは比較的高価であり、インジウム又はインジウム合金のコストは、注文される量及び材料の物理的形状に依存する。30ミルのインジウムワイヤの値段は、1グラム当たりほぼ25ドルである(1キログラム当たり約25,000ドル又は1ポンド当たり11,350ドル)。このワイヤは、今日まで行われた試験で使用されたロッドインチューブプリフォームを作る際に使用された。しかし、インゴット形状のインジウム(厚さ14mm×幅29mm×長さ149mm)は、インジウムワイヤよりもかなり安く1グラム当たり1.45ドルであり(1キログラム当たり約1450ドル又は1ポンド当たり658ドル)、これは95%の価格低下である。大規模製造では、インジウムインゴットから容易に形成することができる大直径インジウムロッドを、大型化されたロッドインチューブプリフォームで使用することができる。さらに、金属の形は二重るつぼ法では役割を果たさないので、インゴット形状のインジウムを、この具体化で容易に使用することができる。どちらの実施においても、インジウムインゴットの使用は、最終製品のコストをかなり下げるために利用することができ、インジウムを使用することができる。
【0084】
他の点では好ましいインジウム合金よりも低コストで許容されうる材料を特定しようとするために、また、錫96.5%と銀3.5%の合金のIndalloy121を使用して実験が行われた。この材料は、上で説明されたように首尾よく処理された。したがって、この材料の導電率は、インジウム及びその合金に比べていくらか低いが(Indalloy121錫/銀合金は銅の6.2倍抵抗性であるが、一方で、インジウム合金は銅の4.2倍程度抵抗性であることがある)、材料のコストが非常に魅力的である。Indalloy121インゴットの値段は、1グラム当たり約0.06ドルである(1キログラム当たり60.50ドル又は1ポンド当たり27.50ドル)。
【0085】
したがって、インジウムインゴットの価格は成形ワイヤの価格よりも遥かに好都合であるが(ワイヤの1グラム当たり25ドルに対してインゴットの1グラム当たり1.45ドル)、さらに錫/銀合金は目標よりもいくらか低い導電率を示すが、錫/銀合金の価格は、非常に魅力的なので(インジウムインゴット金属の1グラム当たり1.45ドルに比べて1グラム当たり0.06ドル)、インジウム合金のコストだと製品を実現不可能なほど高価にする場合に、さらに銅よりも適度に高い電気抵抗が許容できる場合に、本発明に従ってIndalloy121錫/銀合金を使用することによって、本発明のワイヤの特定の最終用途が実現可能にすることができる。
【0086】
最終的には、本発明の微小ワイヤを様々な種類のデバイスに接続する方法がうまくいくことが、有用な着用可能電子機器を実現するために必要である。商業的に成り立つ接続技術の開発は、本発明をするプロジェクトの範囲内ではないが、本発明者等は、それにもかかわらず、微小ワイヤの導電率を評価し、さらにワイヤ中の金属コアの連続性の決定を手助けするために、測定デバイスへの接続を実現する必要があった。主な目標は、コアの損傷を引き起こすことなしに接続を可能にするようにコア金属を露出させる信頼性の高い方法を開発することであった。
【0087】
微小ワイヤの金属コアへの接続を達成する4つの方法が、今日まで検討された。すなわち、微小ピンシステム、エポキシシステム、及び重合体シースを除去する2つの方法、である。最初の2つの方法は、かなり高度であり、試験されなかったが、完璧のために以下で述べられる。重合体シースを除去する2つの方法は、以下で説明されるように試験された。
【0088】
重合体シース硬さ(又は、脆性)に依存して、本発明の微小ワイヤへの信頼性の高い接続は、より大きなワイヤが取り付けられたステープルと同類の、重合体コーティングを刺し通す微小ピンシステムによって実現される場合があるが、この接続は、比較的小さな(50ミクロン未満)ワイヤが使用されるときにますます困難になる。金属コアの直径が10ミクロン未満である場合、接続点での電気的故障の危険性を減少させるために、ピンシステムは、10ミクロンのコア直径よりも遥かに小さくなければならない。この要件を満たす微小ピンシステムは、まだ開発されていない。明らかに、本発明の微小ワイヤが多導体ヤーンに処理されると、微小ピンコネクタを使用して1つ又はいくつかのフィラメントに満足に接続する公算は、単一フィラメント導体と比較して劇的に高くなる。信号レベルの電流だけを伝えることが要求されるのであれば、本発明の微小ワイヤに接続するこの方法は申し分なく適切でありうる。
【0089】
開発後に満足なものであると分かる可能性のある他の接続方法は、微小ワイヤの端部(又は、微小ワイヤバンドルの端部)をエポキシマトリックス中に封じ込め、それからエポキシ封じ込め端部を研磨して微小ワイヤを露出させることである。研磨されたエポキシ端部は、次に、金メッキされてもよく、接続ワイヤがこれに半田付けされて、ワイヤのコアに接続する。同等な技術は、走査型電子顕微鏡(SEM)で材料を調べるとき、冶金分野で一般的に使用される。
【0090】
重合体シースを金属コアから除去する最初の試みは熱を利用した。重合体シースを熱的に変形させようとして、加熱された半田ごての先端部を、微小ワイヤを横切って引きずった。この努力は成功しなかった。重合体は金属よりも高い温度で融解するので、加熱された先端部は、重合体が部分的に除去される前でさえ金属コアを損傷した。先端部が鋭すぎると、先端部は、重合体層を除去している間に、金属線を切断しがちである。関連した実験では、金属コアを損傷することなく金属コアに到達しようとして、加熱された金属バーを微小ワイヤに押し付けた。これもまた成功しなかった。バー直径が大きすぎると、金属コアと共に溶融重合体が押しのけられて、金属コアに接続することはほとんど不可能であった。
【0091】
重合体シースを除去する化学的方法、すなわち、重合体シースを溶解する化学的溶剤を使用しコアをもとのままの状態にしておくことが、よりうまくいくことが分かった。次に、接続は、半田付けによって行われてもよく、場合によっては、この前に、上で述べられたエポキシ封止及びメッキステップが行われる。3つの化学薬品(塩化メチレン、二塩化エチレン、及びN−メチルピロリドン)が最終的に使用されて、Macrolon3103、Macrolon6457、及びPETG GN007の各々から形成された外側コアシースを除去することに成功した。これらの化学薬品の攻撃性(aggressiveness)は、強から弱まで変化し、塩化メチレンが最も攻撃的でN−メチルピロリドンが最も攻撃的でない。微小ワイヤが2ミルより小さい場合には、洗浄は、最も攻撃的でない化学薬品を使用して行われた。
【0092】
本発明の本質的な精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及びこの方法によって製造された製品に対して数多くの追加及び改良が加えられることがありうることは、当業者によって認められることである。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態及び代替実施形態が詳細に開示されたが、本発明は、それよって限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0093】
10 金属材料ロッド
12 重合体シース材料
14 プリフォーム
15 オーブン
16 熱
17 金属円錐形部品
18 縦型管状炉
20 フィラメント
22 誘導加熱器
24 金属チューブ
26 セラミック絶縁体
28 良熱伝導率部材
30 カートリッジヒータ
40 内側るつぼ
42 外側るつぼ
44 上部部材
46 下部部材
48 バンドヒータ
50 バンドヒータ
52 金属先端部
53 内側るつぼのオリフィス
54 バンドヒータ
56 圧縮ガス又は真空
57 外側るつぼのオリフィス
59 外側るつぼの先端部
60 蓋
64 調節ネジ
66 支持部材
70 ファイバ線引き塔
72 微小ワイヤ直径監視装置
74 巻取ローラ組立品
76 プリフォーム供給装置
78 圧縮空気又は真空
80 金属コア連続性検出装置
82 コア/クラッド比検出装置
84 コア/クラッド同心性監視装置
90 金属ワイヤ
92 密閉端重合体チューブ
94 金属バー
96 溶融金属
A、B、C 溶融金属が軟化重合体流の中へ取り込まれる位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属コア及び絶縁性重合体シースを備える絶縁微小ワイヤを作る方法であって、
適切な高導電率及び比較的低融点の金属を選択するステップと、
比較的高融点の重合体を選択するステップと、
所定量の前記金属を、前記所定量の前記金属の周りに管状形に配置された所定量の前記重合体の中に配置するステップと、
前記金属及び前記重合体を、前記金属が実質的に液化されるが、一方で前記重合体が軟化されるように加熱するステップと、
前記重合体が、前記金属の連続したフィラメントを覆う細長いチューブを形成するように、前記重合体及び前記金属を同時に共通線引きするステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記金属が、インジウム、インジウムの合金、及び銀と錫の合金から成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合体が、ポリカーボネート及びグリコール−改質ポリエチレンテレフタレートから成るグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属の少なくとも1つの固体部材が、前記融解ステップより前に前記重合体の固体部材中の穴の中に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属の前記部材が、前記重合体の前記固体部材中の前記穴の中に配置された複数の前記金属のワイヤを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つの閉じた端を持った穴を形成するように前記重合体の固体部材に、貫通することなしに穴を開けることによって前記穴を形成するステップと、
その穴の中に前記金属の前記部材を配置するステップと、
前記穴の開いた端に蓋をするステップとを含み、前記共通線引きするステップと、
が、前記穴の前記閉じた端を含んだ前記固体部材の端部に張力を加えることによって開始される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記固体部材に張力を加えることによって前記固体部材の伸びが始まる点を制御するために、前記重合体の前記固体部材が弱くされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属及び前記重合体が、別々に加熱される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記量の前記金属が、第1の細長い内側るつぼの中に配置されている間に加熱され、前記重合体が、前記第1の内側るつぼと同心の第2の細長い外側るつぼ中に配置されている間に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2のるつぼが、出口オリフィスがそれらのるつぼの最下端にある状態で縦向きにされて、前記内側るつぼから線引きされる金属のフィラメントが、前記外側るつぼから線引きされる重合体の管状シースと一緒に共通線引きされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内側及び外側るつぼの前記出口オリフィスの相対的な軸方向位置が、互いに相対的に容易に調節可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記内側及び外側るつぼは、前記金属及び前記重合体の前記加熱の独立制御が前記内側及び外側るつぼにそれぞれ熱を加えることによって達成されるように、良好熱伝導率と前記金属又は前記重合体のどちらよりも高い融点とを持ったどちらとも反応しない材料から作られる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記るつぼのどちらか又は両方が、密閉されており、さらに、前記方法が、前記金属及び/又は重合体の制御のために、圧縮ガス又は真空をそのるつぼに加えるさらなるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって作られたフィラメント。
【請求項15】
このように作られた1つ又は複数の前記フィラメントをヤーン形成するように処理するさらなるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ヤーンが、さらに、所望の特性を前記ヤーンに与えるように選ばれた他の材料のエンドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法によって作られたヤーン。
【請求項18】
請求項15に記載のヤーンを使用して作られた製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7(a)−7(c)】
image rotate


【公表番号】特表2010−511799(P2010−511799A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539321(P2009−539321)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/024590
【国際公開番号】WO2008/069951
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509153777)パスカル・インダストリーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】