説明

微小気泡局所形成方法、強化超音波の使用によるキャビテーション効果制御および加熱効果制御

本発明は、媒体中の特定の位置で局所的に気泡を形成し、前記形成と、前記位置で起こるキャビテーション効果および加熱効果とを制御するために、前記位置に焦点を合わせた超音波を使用する方法である。本発明の方法によると、前記形成と制御は、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するように、前記位置に焦点を合わせた複数の変換器のパラメータの範囲を選択することにより達成される。好適には、前記特定の波形が有効な強度で展開する全変換器の焦点ゾーン内の領域は、おおむね非常に小さい。本発明はまた、前記方法を実行するためのシステムである。本発明の方法およびシステムは、様々な治療的処置を行うために使用できる。かかる処置の例としては、拡張蛇行静脈の閉塞がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波技術分野に関する。本発明は特に超音波を発生させ、ある位置へ集束させるための、および超音波の波形を制御してその位置に気泡を局所的に発生させるための、また、その結果前記焦点領域に起こるキャビテーション効果もしくは加熱効果、または前記ふたつの効果の組み合わせを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的診断および治療用に超音波を使用することはよく知られている。診断技術は人体への超音波の生成および送信、ならびに走査された領域からの散乱反響波の検知に基づいている。治療方法は一般的に、超音波エネルギーの集束ビームを使用して強力な機械的エネルギーを生成し、圧縮波によって引き起こされる熱または切除(ablation)により治療対象を崩壊させることに基づく。血液等の体液中や生体組織内の細胞間液中では、超音波エネルギーが印加されると気泡がしばしば発生し、かかる気泡は整流拡散(rectified diffusion)として知られる過程により体積が増えて最終的に内破し、大量のエネルギーを放出し、非常に短い時間で局所的な高温および高圧の部位を作り出す。
【0003】
従来の超音波信号は、図1に示されるような正弦波形を有するように操作された変換器により生成される。横軸はマイクロ秒で計測された時間を示し、縦軸は変換器に印加された電圧を示す。印加された電気信号が変換器の周波数帯域幅の周波数範囲にあり、前記信号が少なくとも数サイクルの長さのとき、前記変換器によって生成された前記圧力波は同じような形状である。前記変換器から発せられる波は、図1に示される波形の正の部分および負の部分に対応した、交互に現れる圧縮領域と復元領域を有するたて波(通常横波は非常に早く減衰するのでここでは無視する)として媒体内を進行する。前記波が流体を通過するとき、流体中の粉塵等の粒子の中や流体を収容している領域の壁の上に捕捉されている気体が前記流体から取り出されて小さな気泡を形成する。もし音響出力密度が小さいなら気泡は比較的一定な動径で振動する。この過程は安定的キャビテーションとして知られている。もし出力密度が大きければ、音波の復元半周期中に気体が気泡中に拡散し、圧縮半周期中に前記気泡から出て拡散する。拡散率は気泡の半径に比例するので、気泡中への拡散(復元段階に気泡が拡張した時に起こる)の率は、気泡から出る拡散(気泡が圧縮されたときに起こる)の率よりも大きい。これにより、気泡が振動すれば気泡の半径は大きくなると結論付けられる。この過程は整流拡散として知られている。気泡の半径の臨界値は超音波エネルギーのパワーおよび周波数に依存するが、気泡の半径がその臨界値に達してしまうと安定的ではなくなり、次の圧縮半周期によって引き起こされる圧力が気泡を内破させる、すなわち気泡近辺の流体は気泡が壊れて小さな断片になるような振幅で振動することになる。
【0004】
医療用では、整流拡散過程での気泡の内破により発散されるエネルギーを、付近の細胞を破壊するために使用する。所望の位置にキャビテーションを起こすための方法として、様々な方法が知られている。例えば、米国特許第5,219,401号(特許文献1)は比較的パワーの小さい超音波エネルギーを使用して安定的なキャビテーションを起こし、ある位置で気泡群を発生させ、別の周波数とより大きいパワーを有する第二の信号を印加して前記気泡を内破させることを教示している。米国特許第6,413,216号(特許文献2)は、低い周波数で作動する非集束変換器を使用して患者の治療部分に気泡を発生させ、その後前記治療部分中の特定領域に対して異なる周波数の集束超音波ビームを使用してキャビテーションを起こし、それによって所望の位置を傷つけることを教示している。米国特許第5,827,204号(特許文献3)は、小さな限定された領域に揮発性の大きなキャビテーション気泡を作るための方法を教示している。前記方法は気泡群を作り出すためのキャビテーション閾値よりも小さい振幅を有する低周波信号を生成する工程と、その信号に高周波信号を重畳する工程を含んでいる。その結果得られた変調信号の振幅は変調ビームの焦点でキャビテーション閾値よりも大きくなる。
【0005】
組織切除または壊死を引き起こす急速発熱療法(rapid hyperthermia)は、例えば癌組織を殺すためなどの有効な治療法であることが証明されている。この方法は、単独の高出力変換器によって、または、数個の変換器からのエネルギーを同じ位置に集中させることにより作り出される超音波の高強度集束ビームの使用に基づいている。高強度集束超音波(HIFU)の臨床的使用は、最低限の侵襲性の方法(高周波アブレーション(RF ablation)またはレーザーアブレーション(laser ablation))にとってかわる将来的な非侵襲性の理学療法の選択肢として予見されている。超音波(US)エネルギーを特定の位置に集束させ、近辺の組織による吸収、変換器とその位置のあいだの組織による吸収、その位置の向こうの組織による吸収を最小限にすることがどの程度可能であるかが、この技術を限定する要因である。
【0006】
治療用の強度では、発熱療法はしばしば泡活性化(bubble activity)を伴う。試験管内での実験も生体内での実験も一様に、泡活性化が所定の条件下で加熱速度の倍速化を引き起こしうることを示す(MRI-guided gas bubble enhanced ultrasound heating in in-vivo rabbit thigh(ウサギの生体大腿部におけるMRI誘導気泡強化超音波加熱)、Sokka, S. D., King, R., Hynynen, K., Phys. Med. Biol. 48号, 223−241頁, 2003年)(非特許文献1)。他に、キャビテーション抑制技術を使用して微小気泡形成を低減し正確な切除を行うものもある(Kentaro Tasaki, Takehide Asano, Kazuo Watanabe, Hiroshi Yamamoto, Division of Surgery, Chiba Cancer Center(千葉癌センター、外科), Chiba, Japan.「Therapeutic Ultrasound(治療的超音波)」、the 2nd International symposium on Therapeutic Ultrasound(第二回治療用超音波国際シンポジウム)(ISTU 2002)予稿集)(非特許文献2)。しかし、より正確には、アルブネックス(Albunex)造影剤(CA)を投与した場合には、投与しない場合の数倍の体積の組織がHIFUによって犬の前立腺中で凝固したことが最近報告されている。脱気食塩水中で腎臓を3.2MHzのHIFUに被曝させ、CA、オプチゾン(Optison)を0.2ml/kg投与した場合、HIFU被曝により誘発された温度上昇は倍以上であった。(造影剤が微小気泡0.1億個/kg以下で組織に添加される場合、組織超音波吸収が倍になるという効果が理論的には予測されていた。S Uemura, K Kawabata, K Sasaki, 「Enhancement of sonodynamic tissue damage production by second-harmonic superposition: Theoretical analysis and its mechanisms(第二高調波重畳による音波力学的組織損傷発生の強化:理論的分析とそのメカニズム)」IEEE−TUFFC、43巻、1054〜1062頁、1996年。これはR. Glynn Holt, Ronald A. Roy(非特許文献3)により、実験で証明された。「Measurements of bubble-enhanced heating from focused, mhz-frequency ultrasound in a tissue-mimicking material(模擬組織物質における集束メガヘルツ周波数超音波による気泡強化加熱の測定)」Ultrasound in Medicine & Biology、27巻、10号、1399〜1412頁、2001年(非特許文献4)。
【0007】
微小気泡は治療領域を遮蔽し患者を危険な状況に陥らせる可能性があるのでキャビテーション効果と加熱効果を分離させていた以前の研究を鑑みると、気泡の存在が熱治療によい影響を与えるという事実はどちらかと言えば予測不可能である。(Bailey MR, Couret LN, Sapozhnikov OA, Khokhlova VA, ter Haar G, Vaezy S, Shi X, Martin R, およびCrum LA, 「Use of overpressure to assess the role of bubbles in focused ultrasound lesion shape in vitro(試験管内での集束超音波損傷形状における気泡の役割を調査するための過剰圧力の使用)」、Ultrasound Med Biol、27(5)、695〜708頁(2001年))(非特許文献5)。米国特許第5,601,526号(特許文献4)は、たとえば、熱効果を得るために集束音響パワーを印加するときにキャビテーションの存在により焦点領域の内外両方で望ましくない組織破壊がいかに起こるかを述べている。この特許は温度波とキャビテーション波を別々に、または一緒に印加して相互作用を低減する方法および装置を教示している。米国特許第5,573,497号(特許文献5)はキャビテーションを低減または防止しつつ最大の熱エネルギーを組織に供給する方法および装置を教示している。
【0008】
高強度超音波の生体組織に与えるキャビテーション効果からその熱効果を分離するためにこれまでに研究がなされてきたが、前記引用の報告では、超音波被曝時に効果的な治療作業をするために気泡のエネルギー集中効果を利用することの難しさと重要性が証言されている。主要な加熱メカニズムは気泡サイズ、媒体ずり粘度、および周波数依存音響減衰に依存し、気泡サイズ分布はというと、音響(insonation)制御パラメータ(音響圧、パルス幅)、媒体特性(特に溶解気体濃度)、および不安定性を助長する気泡形状不規則性に依存する。
【0009】
超音波技術は様々な種類の良性および悪性の腫瘍の治療、静脈瘤への作用、胆嚢および腎臓の結石の破砕、食道やふさがっていない血管の治療などの様々な医学的症状に対して治療用に使用されてきた。
【0010】
超音波使用によって治療されうる医学的症状の実例には、拡張蛇行静脈および毛細管拡張症(クモ状血管)がある。このような静脈は、隠れている静脈不全症候群の可視的発現である。弁は正常な静脈では血液を心臓のほうへ移動させ続けるが、それが正常に機能せず、血液を送ることができず、逆に静脈中に停滞させる。すると静脈は高まった静脈圧の影響を受けて拡張する。静脈不全症候群は静脈血を正常な流路から流出させ、逆方向に、すでにうっ血している脚部へと流れさせる。静脈不全症候群の患者の大半が疼痛、うずき、焼け付くような痛み、うずくような痛み、ずきずきする痛み、痙攣、筋肉疲労、「不穏下肢」、および醜い外観などの自覚症状を訴えている。慢性的な静脈不全は時がたつにつれて、極度の消耗を起こしかねない皮膚や軟組織の破壊を引き起こす。
【0011】
拡張蛇行静脈の現在の治療法には以下のようなものがある:圧縮ストッキング、硬化療法(化学物質溶液を注射し、静脈を閉塞させる瘢痕組織を生じさせる)、管内(endoluminal)高周波(RF)カテーテルおよびダイオードレーザー(静脈を凝固させるために高周波またはレーザーエネルギーを使用する)、静脈切除(phlebectomy)(小さく切開し静脈切除鉤を使用して静脈を摘出する)、切除(stripping)(伏在静脈全体の除去を伴う、一般的な麻酔のもとに行われる手術)、および結紮(弁のほとんどが健康であるときに選択可能である、伏在静脈を縛る外科的方法)。米国特許第6,436,061号(特許文献6)は、集束超音波エネルギーを印加して局所加熱し、静脈の内皮組織を損傷させてその治癒組織の瘢痕により静脈中の血流が少なくとも部分的に遮断されるようにする方法を教示している。
【特許文献1】米国特許第5,219,401号明細書
【特許文献2】米国特許第6,413,216号明細書
【特許文献3】米国特許第5,827,204号明細書
【特許文献4】米国特許第5,601,526号明細書
【特許文献5】米国特許第5,573,497号明細書
【特許文献6】米国特許第6,436,061号明細書
【非特許文献1】Sokka, S. D., King, R., Hynynen 、「MRI-guided gas bubble enhanced ultrasound heating in in-vivo rabbit thigh(ウサギの生体大腿部におけるMRI誘導気泡強化超音波加熱)」、K., Phys. Med. Biol. 2003年、48号, 223−241頁
【非特許文献2】Kentaro Tasaki, Takehide Asano, Kazuo Watanabe, Hiroshi Yamamoto, Division of Surgery, Chiba Cancer Center(千葉癌センター、外科), Chiba, Japan.「Therapeutic Ultrasound(治療的超音波)」、the 2nd International symposium on Therapeutic Ultrasound(第二回治療用超音波国際シンポジウム)(ISTU 2002)予稿集
【非特許文献3】S Uemura, K Kawabata, K Sasaki, 「Enhancement of sonodynamic tissue damage production by second-harmonic superposition: Theoretical analysis and its mechanisms(第二高調波重畳による音波力学的組織損傷発生の強化:理論的分析とそのメカニズム)」IEEE−TUFFC、1996年、43巻、1054〜1062頁
【非特許文献4】「Measurements of bubble-enhanced heating from focused, mhz-frequency ultrasound in a tissue-mimicking material(模擬組織物質における集束メガヘルツ周波数超音波による気泡強化加熱の測定)」Ultrasound in Medicine & Biology、2001年、27巻、10号、1399〜1412頁
【非特許文献5】Bailey MR, Couret LN, Sapozhnikov OA, Khokhlova VA, ter Haar G, Vaezy S, Shi X, Martin R, およびCrum LA, 「Use of overpressure to assess the role of bubbles in focused ultrasound lesion shape in vitro(試験管内での集束超音波損傷形状における気泡の役割を調査するための過剰圧力の使用)」、Ultrasound Med Biol、2001年、27(5)、695〜708頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、温度を大きく変化させることなくキャビテーションを起こすように変更可能な波形、キャビテーションを最小限におさえて温度上昇のみを起こすように変更可能な波形、キャビテーションを抑制するように変更可能な波形、または、これらの効果の組み合わせを起こすように変更可能な波形を焦点で有する集束超音波を提供する装置および方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、温度を大きく変化させることの無いキャビテーション効果による超音波治療、キャビテーションを最小限におさえた温度上昇のみによる超音波治療、キャビテーションの抑制による超音波治療、またはこれらの効果の組み合わせによる超音波治療を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的および利点は以下の記載により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第一の様態において本発明は、媒体中の特定の位置で局所的に気泡を形成し、前記気泡形成と、前記位置で起こるキャビテーション効果および加熱効果とを制御するために、前記位置に焦点を合わせた超音波を使用する方法である。本発明の方法によると、
‐大きな負ピークと小さな正ピークを有し、無数の微小気泡の形成を促進する波形と、
‐熱の発生と、前記微小気泡の成長および起こりうる内破の制限とを促進する波形と、
‐大きな負ピークと小さな正ピークを有する一つの波形と大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する第二の波形の二つの波形が、空間的および/または時間的に結合したものを有し、微小気泡のサイズ分布およびその分布の経時変化の制御を可能にする結合波形と、
からなる群から選択される波形の一つを生成するために、前記形成および制御が、前記位置に焦点を合わせた複数の変換器のパラメータの範囲を選択することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記熱の生成を促進する波形は、大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する波形や、正弦波形など、様々な形状を取りうる。前記大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する波形は前記微小気泡のサイズの縮小を促進することができる。
【0017】
好適な実施形態においては、本発明の方法を実行するために使用される前記変換器の数は3つである。前記微小気泡の半径は、おおむね数分の一ミクロンから100ミクロン以上の範囲であり、好適には前記半径は約3ミクロンから5ミクロンのあいだである。
【0018】
本発明の方法の好適な実施形態によると、制御システムが、組織内の変化または気泡の大きさを測定し、それに基づいて前記波形を調整して前記波形がより多くの負ピークを含む、より多くの正ピークを含む、またはより多くの同じ大きさの波を含むようにする。本発明の方法は、前記測定された温度に基づいて前記変換器の出力を変更する温度制御システムを使用できる。また、超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、所望の位置の微小気泡の発生を監視するために治療領域を観測および監視して、以下の一つ以上を目的としてシステムを制御するために使用できる。
【0019】
‐微小気泡の数が設定されたようになる、
‐前記対象位置に集束ビームの照準を合わせる、および
‐ビームを別の位置に再調整する。
‐加熱の効果、
‐前記効果の期間、
‐前記対象領域中に発生した微小気泡の数、および
‐前記対象領域中に発生した前記微小気泡の三次元的拡散、
の一つ以上を測定するために、前記発信周波数の半高調波またはより高次の高調波での応答が、前記超音波映像システムまたは前記超音波非映像システムにより利用される。
【0020】
本発明の方法の好適な実施形態によると、複数の変換器が、アレイ状に配置され、それらの機構的焦点とそれら自体の焦点とが、空間の同一点で結合するように構成されている。好適には、前記空間の同一点は、アレイ全体を移動するか、個々の変換器の位置を変更するか、または、励起パルスの位相をずらすことにより移動できる。前記好適な実施形態において、個別の変換器により送信された超音波は、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するよう構成されている。好適には、前記特定の波形が有効な強度で展開する全変換器の焦点ゾーンの領域は、おおむね非常に小さい。前記好適な実施形態において、前記波形の振幅は、おおむね前記最大振幅の位置から水平方向に1mm未満の距離、軸方向に1.5mm未満の距離のところで、最大振幅の−3DB未満である。前記特定の波形は、
‐温度に大きな変化をもたらすことなくキャビテーションを起こす、
‐キャビテーションを最小限におさえて温度を上昇させる、
‐キャビテーションを抑制する、および
‐これら効果の組み合わせを起こす、
という効果のうちの1つを生じさせるように変更可能である。
【0021】
本発明の方法は、治療目的のために使用できる。このような場合、前記アレイは、おおむね生体外で、治療すべき臓器に近接して、前記超音波変換器とそれおよび前記臓器の間の空間とを超音波ゲルまたは水が取り囲む状態で設置される。前記治療は、
‐拡張蛇行静脈および拡張した毛細管の閉塞、
‐治療的な応答または損傷を起こす、局所的な圧力または剪断応力(shear force)による、体内の細胞(例えば内皮細胞)のプロセスの活性化、
‐キャビテーション損傷および/または急速発熱療法によってアポトーシス、組織切除(tissue ablation)、または壊死を起こすことによる、癌性組織の治療、
‐キャビテーションおよび/または急速発熱療法により腫瘍に血液を供給する動脈を凝固させて供給および排出の血管構造を損傷および閉塞させることによる癌性組織の治療、
‐心臓の壁部、主に心室の壁部内の異所性の病巣または再入ループの切除(ablation)、
‐閉塞または半閉塞状態となった、たとえば冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、抹消動脈などの動脈の血栓崩壊、
‐微小気泡の崩壊のメカニズムにより、および/または発熱療法により、脂肪の堆積をアポトーシスさせるか排出することによる、脂肪分解や、その他の脂肪細胞崩壊方法、
‐体内の内出血の血液凝固、および
‐傷口に沿って細胞を崩壊させることによる、内部組織および臓器の非侵襲性手術、
からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の方法は、
a)複数の変換器を準備する工程と、
b)前記静脈中の同一位置に前記複数の変換器の焦点を合わせる工程と、
c)前記複数の変換器の変数の範囲を選択して、無数の微小気泡の発生を促進する、大きい負ピークと小さい正ピークを含む波形を生成する工程と、
d)前記キャビテーションにより前記位置で細胞破壊が起こり前記組織の瘢痕形成が開始するまで、前記波形の生成を継続する工程と、
e)前記静脈中の別の位置に前記変換器の焦点を合わせる工程と、
f)十分な瘢痕形成がなされて前記静脈の閉塞を起こすまで、前記工程(c)、(d)、および(e)を繰り返す工程とによって、拡張蛇行静脈および拡張した毛細管を閉塞するために使用できる。もし必要であれば、前記工程(d)および(e)の間に、
g)前記複数の変換器のパラメータの範囲を変更して、前記位置で熱の発生を促進する加熱波形を生成する工程と、
h)加熱により前記位置で細胞破壊が起こり前記組織の瘢痕形成が開始するまで、前記波形の生成を継続する工程と、
の2つの工程がさらに追加される。
【0023】
本発明の方法は、局所的薬物送達、遺伝子治療、脈管形成からなる群から選択される、治療的な反応または損傷を引き起こすための、体内の細胞プロセスの活性化のために使用できる。
【0024】
本発明の方法は、冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、および抹消動脈中の閉塞または半閉塞状態の動脈の血栓崩壊のために使用できる。
【0025】
別の様態において、本発明は、超音波を生成し、媒体中の特定の位置で局所的に気泡を形成するために前記位置に前記超音波の焦点を合わせるシステムである。本発明のシステムは、前記超音波の生成と、生じるキャビテーション効果および加熱効果とを制御することができる。本発明のシステムは、
‐3つ以上の任意波形信号発信機と、
‐3つ以上の広帯域パワー増幅器と、
‐3つ以上の変換器と、
‐1つのワークステーションとを備えている。
【0026】
本発明のシステムの好適な実施形態において、前記3つ以上の変換器が、アレイ状に配置され、それらの機構的焦点とそれら自体の焦点とが空間の同一点で結合するように構成されている。好適には、前記空間の同一点は、アレイ全体を移動するか、個々の変換器の位置を変更するか、または、励起パルスの位相をずらすことにより移動できる。本発明の前記システムの前記3つ以上の変換器により送信された超音波は、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するよう構成されている。前記特定の波形が有効な強度で展開し、かつ前記波形の振幅が最大振幅の−3DB未満である全変換器の焦点ゾーン内の領域が、おおむね前記最大振幅の位置より水平方向に25mm未満、好適には1mm未満の距離であり、軸方向に10mm未満、好適には1.5mm未満の距離である。本発明のシステムの好適な実施形態において、前記特定の波形は、
‐温度に大きな変化をもたらすことなくキャビテーションを起こす、
‐キャビテーションを最小限におさえて温度を上昇させる、
‐キャビテーションを抑制する、および
‐これら効果の組み合わせを起こす、
という効果のうちの1つを生じさせるように変更可能である。
【0027】
本発明のシステムは、超音波映像システムまたは超音波非映像システムと、制御ボックスとをさらに含んでもよい。好適には、前記超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、制御ボックスを介して接続されているワークステーションによって制御され、所望の位置の微小気泡の発生を監視するために治療領域を観測および監視して、以下の一つ以上を目的としてシステムを制御するために使用可能である。
‐微小気泡の数が設定されたようになる、
‐対象位置に集束ビームの照準を合わせる、および
‐ビームを別の位置に再調整する。
【0028】
本発明のシステムの好適な形態において、
‐加熱の効果、
‐前記効果の期間、
‐前記対象領域中に発生した微小気泡の数、および
‐前記対象領域中に発生した前記微小気泡の三次元的拡散、
の一つ以上を測定するために、発信周波数の半高調波またはより高次の高調波での応答が前記超音波映像システムまたは前記超音波非映像システムにより利用される。
【0029】
本発明の好適な実施形態において、前記超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、組織内の変化または気泡の大きさを測定し、それに基づいて前記制御ボックスおよびワークステーションが前記波形を調整して前記波形がより多くの負ピーク、正ピーク、または同じ大きさの波を含むようにする。
【0030】
本発明のシステムは、温度測定システムをさらに含んでもよい。前記温度測定システムは1つ以上の熱電対を含んでもよく、好適には測定された温度に基づいて前記変換器の出力を変更するために使用される。
【0031】
本発明のシステムは治療的処置に使用されてもよく、前記アレイは、生体外で、治療すべき臓器に近接して、前記超音波変換器とそれおよび前記臓器の間の空間とを超音波ゲルまたは水が取り囲む状態で設置される。本発明のシステムは、
‐拡張蛇行静脈および拡張した毛細管の閉塞、
‐治療的な応答または損傷を起こす、局所的な圧力または剪断応力による、体内の細胞(例えば内皮細胞)プロセスの活性化、
‐キャビテーション損傷および/または急速発熱療法によってアポトーシス、組織切除、または壊死を起こすことによる、癌性組織の治療、
‐キャビテーションおよび/または急速発熱療法により腫瘍に血液を供給する動脈を凝固させて供給および排出の血管構造を損傷および閉塞させることによる癌性組織の治療、
‐心臓の壁部、主に心室の壁部内の異所性の病巣または再入ループの切除、
‐閉塞または半閉塞状態となった、たとえば冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、抹消動脈などの動脈の血栓崩壊、
‐微小気泡の崩壊のメカニズムにより、および/または発熱療法により、脂肪の堆積をアポトーシスさせるか排出することによる、脂肪分解や、その他の脂肪細胞崩壊方法、
‐体内の内出血の血液凝固、および
‐傷口に沿って細胞を崩壊させることによる、内部組織および臓器の非侵襲性手術、
からなる、前記治療的処置の群のうちのいずれの用途に適用してもよい。
【0032】
前記およびその他の本発明の特徴および利点はすべて、添付の図面参照により下記の好適な実施形態の記載から理解されるであろう。ただし下記実施形態は例であり本発明を限定するものではない。
【0033】
本発明は、超音波を生成し液体中を進行させるシステムと、超音波の波形を制御して液体中に気泡を局所的に生じさせ、その結果おこるキャビテーションと加熱の効果を制御する方法とに関する。本発明は特に、治療目的で気泡を局所的に形成するための超音波の使用に適している。この治療は、最小限の加熱を伴う、および/または気泡が形成された場所の気泡誘導加熱を伴う、キャビテーション効果に基づく。
【0034】
本発明は、流体中を進行する超音波による流体中に形成された気泡の形成および成長の比率が、超音波の波形にかなり依存するという認識に基づいている。整流拡散を起こすために通常使用される正弦波形のかわりに、本発明は複数の変換器の周波数、位相、振幅などのパラメータの範囲を選択して対象領域に2つの基本波形を生じさせる。第1の波形は大きい負ピークと小さい正ピークを含み、無数の微小気泡の発生を促進する。第2の波形は熱を生じさせる波形であり、かかる波形はたとえば正弦波形、大きい正ピークとほんの小さい負ピークを含む波形などのいくつかの形状がある。前記第2の波形は、好適には、微小気泡を小さく(たとえば、半径約3〜5ミクロンより小さく)保つことにより、その微小気泡で超音波エネルギーが拡散されるよりも吸収されるようにする制御パラメータの範囲を有する。
【0035】
本発明の波形を生じさせるために、少なくとも3つの独立した高出力集束超音波変換器が使用され、それらが同じ焦点を結ぶような構造の中に収容される。各変換器はそれぞれ専用の増幅器から電源が供給される。前記増幅器は、通常異なる周波数に切り替えられる一つの発信機により駆動される。本発明の任意部分としては、その方法とシステムが組織内の変化または気泡の大きさを測定し、それに基づいて波形を調整してより多くの負ピーク、正ピーク、または同じ大きさの波を含むようにする制御システムを含んでもよい。
【0036】
本発明を行うための制御駆動システムの一つの実施形態を図2に概略的に示す。本実施形態では、制御駆動システム200は、3つの広帯域パワー増幅器204と接続し、さらにインピーダンス整合を介して3つの変換器206と接続している3つの任意波形信号発信機202を備えている。少なくともひとつのワークステーション208では、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)が各任意波形信号発信機202の駆動タイミングと振幅を、各信号発信機用の異なるプロトコルと個別のケーブルにより制御する。ワークステーション208は、たとえば熱電対などで温度を測定し記録する温度測定システム210も制御し、測定された温度に応じて治療を変更してもよい。それに加え、またはその代わりに、超音波映像システムまたは超音波非映像システム212は、治療領域(対象領域)を観測および監視して微小気泡の数が設定されたようになるように所望の位置の微小気泡の発生を監視しシステムを制御するために使用されてもよく、および/または、対象領域に集束ビームの照準を合わせるために、および/またはビームを別の位置に再調整するために使用されてもよい。キャビテーション効果は当業者に公知の様々な技術によって検出できる。例えば:アレイの変換器の一つの周波数の1/2、1/3、1/4などで作動する単独の変換器を検出器として使用する;1.5倍、2.5倍、3.5倍などの高調波で作動する単独の変換器を使用する;「ホワイトノイズ」検出器を使用する;継続的に作動する一組の変換器を、一組の変換器−受信機として使用する;または反射信号の送信および受信の両方を行う単独の変換器を使用する、などである。それに加え、またはその代わりに、超音波映像システム212を、発信周波数の二次高調波または半高調波での応答を利用することにより、加熱効果、効果の期間、治療領域中に発生した微小気泡の数および三次元的拡散を測定して、温度上昇中に治療を監視するために使用してもよい。超音波システムの監視システム212は、制御ボックス214を介して接続されているワークステーション208により制御されてもよい。
【0037】
制御駆動システム200は、診断または治療目的のための超音波の使用に詳しい者にはよく知られている標準的な部品からなる。制御駆動システム200に使用するのに適した市販されている部品の一般的な例(本発明を限定するものではない)としては以下のようなものがある:
任意波形信号発信機202 − テイバー・エレクトロニクス社(Tabor Electronics Ltd.)、8025型;
広帯域10kHz〜100MHzパワー増幅器204 − アコースティックリサーチ社(Acoustic Research)、150A100B型;
変換器206 − イマソニック社(Imasonic)、型番T3035A101、T3034A101、T2336A101;
ワークステーション208 − ヒューレット・パッカード−コンパック(HP-Compaq)製パーソナルコンピュータ;
温度測定システム210 − オメガ(Omega)製熱電対、型番TGC150-CPSS-150-SMP-MUK270502、ナショナルインストルメンツ(National Instruments)製温度測定ボード、型番NI-4351、温度I/Oボックス、型番TC-2190、およびナショナル・ラブビュー(National Labview)ソフトウェア;
超音波映像システム212 − GEヘルスケア(GE Healthcare)、VIVID III型;および
制御ボックス214 − ナショナルインストルメンツ製ラブビュー(Labview)ソフトウェアを実行させたヒューレット・パッカード−コンパック(HP-Compaq)製パーソナルコンピュータ、ナショナルインストルメンツ製I/Oボックス、型番BNC-2090、およびナショナルインストルメンツ製DAQボード、型番PC-LPM-16。
【0038】
パワー変換器206はアレイ状に配置され、それらの機構的焦点とそれら自体の焦点とが空間の同一点で結合するように設計されている。空間のこの点は、アレイ全体を移動する、個々の変換器の位置を変更する、または励起パルスの位相をずらすことによって移動できる。個別の変換器により送信された超音波は、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するよう構成されている。これら特定の波形は、温度に大きな変化をもたらすことなくキャビテーションを起こす、またはキャビテーションを最小限におさえて温度上昇を起こす、またはキャビテーションを抑制する、またはこれら効果の組み合わせを起こすように変更可能である。前記特定の波形が有効な強度で展開する領域、すなわち、全変換器の焦点ゾーン内の領域は通常は非常に小さく、そこでは振幅が最大値の−3DB以下であるが、その領域はおおむね最大値の位置より水平方向に1mm未満、軸方向に1.5mm未満の距離である。
【0039】
本発明での使用に適した円筒状パワー変換器を使用した変換器アレイ300の実施形態を図3Aおよび3Bに示す。環状変換器を使用した別の実施形態は図15A〜15Dを参照して以下に記載する。図3Aは上側から見たアレイ300を示す写真である。アレイ300はプレキシグラスまたはその他の適した材料からなる円筒形状ホルダー306に搭載されている。図示された本実施形態では、ホルダー306はホルダー306の対称軸と同軸の中央内腔304と、6つの他の内腔302を備えている。前記内腔302は、内腔304の周りに対称に配置され前記対称軸に対して傾けられている。変換器アレイ300はしたがって、同じ一つの焦点に物理的に照準が合うように内腔302に挿入することが可能な、6つ以下の円筒状パワー変換器206を備えることが可能である。超音波変換器アレイ300の焦点は、超音波が伝達される媒体に関する、その他の要因に依存する。アレイ300の水中での焦点距離の例としては、変換器ホルダーの底面より6cmである。この焦点距離は、ゲルにおける5cmおよび肝臓組織における4cmに相当する。中央内腔304は映像システム212に接続される映像プローブ用に使用されてもよいし、温度測定システム210の部品である熱電対を挿入するために使用されてもよい。図3Bはホルダー306の平らな底面上の内腔302および304の配置を概略的に示している。
【0040】
ホルダー306は、生体外で、治療すべき臓器に近接して、前記超音波変換器とそれおよび前記臓器の間の空間とを超音波ゲルまたは水が取り囲む状態でアレイ300が設置できるように設計されている。
【0041】
前記のように、超音波システム200は映像システムであっても非映像システムであってもよく、本発明の好適な実施形態では、微小気泡の数や三次元的位置、および三次元的気泡群分布(spatial population distribution)を測定するために使用される。これら測定はプロセスのいかなる段階で行われてもよく、たとえばキャビテーション段階、加熱段階、または微小気泡の大きさおよび/または数を減少または増大させるのに望ましい段階で気泡を発生させた時に行われてもよい。図4は、本発明の方法の実施中に発生した微小気泡の有無、数、大きさ、位置、および三次元的分布を測定し表示するために使用される標準的なデータ処理方法の一例の一連の操作を示すフローチャートである。図4のフローチャートに示されている工程は超音波信号を処理するための従来の工程であるが、これらは、データ処理方法について特に説明を必要としない当業者によく知られている設備およびソフトウエアを使用して、大概は自動的に実行されるものである。図4に概略が示された方法、または当業者に公知の同等の方法を使用してなされる測定は、微小気泡の数や大きさを増加、減少、またはシフトするようにシステムの操作を変更するために使用されてもよい。変更は手動で行ってもよいし、またはワークステーション208、超音波システムの監視システム212、および/または制御ボックス214を使用しソフトウエアを利用して自動で行ってもよい。
【0042】
本発明の目的は、対象領域で所望の波形を生じさせるために複数の変換器の各々の周波数、位相、振幅等のパラメータの範囲を選択することにより、達成される。本発明の方法を使用すると、気泡は数分の一ミクロンから100ミクロン以上の範囲であり、下記に論じる治療にとって好ましい範囲としては気泡は約3〜5ミクロンの大きさである。同様に、焦点領域の大きさは、おおむね水平方向の半径25mm未満、好適には1mm未満、かつ軸方向の長さ10mm未満、好適には1.5mm未満のスポットの間で変更可能である。焦点領域長さがおおむね10mmと20mmのあいだの範囲である従来の方法と比較すると、本発明の方法および装置を使用することによってかかる小さな軸方向焦点領域長さを達成したことは、様々な症状の局所的治療を可能にするという点で大幅な改良をもたらしている。治療領域の最小サイズは焦点領域の最小サイズ程度であり、また、結合ビームおよび/または変換器アレイを電気的または機械的に走査すれば治療領域の最大サイズは無制限となる。
【0043】
図5は、大きい負ピークと小さい正ピークを有する波形を示す。このタイプの波形は、音響波の圧縮部分の振幅に対する非圧縮部分の振幅の比率を大きくすることにより、無数の微小気泡の発生を促す。図5では、横軸が時間(μ秒)を表し、縦軸が焦点における信号の振幅(ボルト)を表している。図5に示された信号は、図2に示されたシステムおよび3つの変換器を備えた図3Aに示されたアレイを使用し、その位置での音響圧を正確にボルトに変換する水中マイクロホンを使用して発生された。図5に示される波形を発生させるために制御駆動システムは、表1に示される周波数、位相、および振幅で作動した。
【0044】
【表1】

【0045】
図6は、正ピークとほんの小さな負ピークを有する波形を示している。このタイプの波形は、音響波の圧縮部分の振幅に対する非圧縮部分の振幅の比率を小さくすることにより、微小気泡を小さく維持する傾向にあり、それによって超音波エネルギーが拡散するよりも吸収されるようにして、熱を発生させる。図6では、横軸が時間(μ秒)を表し、縦軸が焦点における信号の振幅(ボルト)を表している。図6に示された信号は、図2に示されたシステムおよび3つの変換器を備えた図3Aに示されたアレイを使用し、その位置での音響圧を正確にボルトに変換する水中マイクロホンを使用して発生された。図6に示される波形を発生させるために、制御駆動システムは、表2に示される周波数、位相、および振幅で作動した。
【0046】
【表2】

【0047】
図7〜図11は、異なるパワーレベルでのキャビテーション波形および加熱波形の印加の影響、ならびに加熱波形の印加時間の温度に対する影響を測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。この実験は人工模擬ゲル中でおこなわれた。前記人工模擬ゲルは以下のように調整された。ビーカーに体積比1.3:1の比率で蒸留水により希釈されたエチレングリコール0.8リットルを入れ、70℃に加熱した。前記溶液を絶えずかき混ぜながらゼラチンパウダー85mgを徐々に加えた。前記溶液がゲル化したときに気泡を排除するために遠心機にかけ、ホルムアルデヒド170mlを加えた。前記混合物をガラス容器に注いだ。このゲルは120℃でも液化しない。実験は上記のように記載されたシステムを使用して超音波波形を発生させて行った。簡潔にするために、加熱段階では波形発信機の振幅のみを変更し、その位相は変えなかった。これにより音響圧波形を、図6に示す波形ではなく、図1のような正弦波に似せた。加熱時間中に使用された(図7〜図11に示された実験すべてで使用された)パラメータを表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
図7〜図11は、キャビテーション期間中に使用された3つの異なるパワーレベルについて焦点領域に設置された熱電対で測定された温度(摂氏度、縦軸)と時間(秒、横軸)を示している。第一段階、キャビテーション期間中では、実験は3つの異なるパワーレベルで行われ、そのパラメータは表4に示されている。第二段階、加熱期間中では、パワーレベルとパラメータ(表3に示される)は、常に一定に保たれた。
【0050】
【表4】

【0051】
図7では、図5に示された波形が30秒間発信され、その後さらに30秒間加熱波形が発信された。図8では、図5に示された波形が30秒間発信され、その後さらに60秒間加熱波形が発信された。図7および8に示された線は5回の実験の平均値である。線702および802はキャビテーション期間中に使用された最大パワーレベルでの結果であり、線704および804は中間パワーレベルの、線706および806は最小パワーレベルの結果である。どの場合も、図5の波形が印加された30秒間のキャビテーション期間中はほとんど熱は発生しなかった。加熱波形が印加された期間中は、予想通り温度が上昇し、超音波信号発生停止と同時に温度は急激に下降した。キャビテーション段階でパワーレベルが上がるにつれて、焦点で発生した気泡の数は増加する。この効果はグラフから理解できる。グラフは、加熱期間中に送られたエネルギーが同じであったにもかかわらず、キャビテーション段階中のパワーの増強が原因となって最高温度の上昇が起こっていることを示している。
【0052】
加熱期間の長さの違いの影響は、低、中、高パワーレベルについてそれぞれ図9、10、11に示されている。これらグラフより、加熱期間が長くなると温度を幾分さらに上昇させることがわかる。
【0053】
前記と同様の実験において図5の波形を発生させず、図6または図1のいずれかの波形を60秒の期間中に媒体中で集束させたとき、平均最高温度は36.88℃であった。
【0054】
図4のフローチャートに概略が示されている一連の操作の結果の一例の、スクリーン上に表示された像を図12A〜12Dに示す。ゲルから反響波を得た超音波変換器により、また、図4のフローチャートに示されるような生データの制御ボックス214によるオフライン処理により生成されるように、生データの獲得により、像が生成される。これらの図に示される結果は、高温で溶解しない前記の特別に設計された模擬ゲルと中間パワーレベルとを使用することによりなされた測定の結果である。ゲルは脱ガス水中で調製され、溶解ガスと微小気泡を最低限に減少させるため遠心分離機にかけたものである。
【0055】
図12Aの像は、2秒のキャビテーション期間(図5の波形)の操作後に得られ、気泡は確認されなかった(直線はRF(高周波)線を捕捉したため現れた線である)。図12Bの図からわかるように、微小気泡は16秒のキャビテーション期間の操作の後に形成された。図12Cは、30秒のキャビテーション期間の操作後の結果を示す。気泡の数は、共通に観察されるように、変換器の方へ移動(translation)することなく増加した。図12Dの像は、さらに30秒加熱した後に得られたものであり、このとき微小気泡の数は減少していた。
【0056】
前記と同じ実験を、新鮮な肝臓をファントム(phantom)として使用して試験管内で行った。肝臓は室温(22℃)の食塩水中に保存され、変換器アレイは組織の特定の点に照準をあてた。いくつかの実験は、前記システムを下記の期間作動させて行った。
‐キャビテーション30秒の後、加熱30秒
‐キャビテーション30秒の後、加熱60秒
‐キャビテーション60秒の後、加熱30秒
‐キャビテーション60秒の後、加熱60秒
‐キャビテーション60秒のみ
‐加熱60秒のみ
‐キャビテーション無し60秒の後、加熱無し60秒
図13の棒グラフは、前記のようにキャビテーションおよび加熱をそれぞれの期間行った後の温度(℃)を縦軸に示している。図13では、白いバーがキャビテーション(図5の波形)のみを示し、黒いバーが加熱(図6の波形)のみを示し、灰色のバーがキャビテーション後に加熱を行ったものを示す。左側の白いバーは環境温度を示している。
【0057】
キャビテーション後に加熱を行った肝臓組織切片を検査すると、処理領域の中央に、傷の中の変性した小さな領域があるのが明瞭に判明した。
【0058】
キャビテーション効果のみを起こす本発明の方法を使用して生物材料中に局所的な損傷を起こすことが可能であるかどうかを示すために行われた実験の結果を、図14に示す。この図には、図5の波形を動脈の小さな領域に焦点を合わせて照射した後の、その領域の断面が示されている。左上の薄い色の領域は、血液の流れる動脈の中空中心部である。右下は動脈壁の縁である。前記処理の結果、内皮層は全く無くなっている。中皮層にもかなり損傷した領域が見られ、そこでは組織化された平滑筋繊維が複数箇所で破壊されている。
【0059】
前記実験、およびその他の数々の実験により、本発明に関して下記の結論が導き出される:
‐キャビテーションによる局所的損傷は、本発明の方法およびシステムによってのみ生じさせることができる。
‐キャビテーションの局所的発生は、組織の切除または凝固を起こすための効果的な発熱療法を行うためにも使用することができる。二段階のプロセスは、キャビテーションと加熱のいずれかだけを行うよりも効果的であり、キャビテーションによる気泡形成の第一段階と、それに続く加熱の第二段階とを含む。
‐本発明の装置と方法は、気泡形成の位置を視覚化することが可能であり、治療の継続または中断、または位置変更についての決断を可能にする。
‐緩やかな温度上昇が焦点位置で起こり、数ミリはなれたところでは温度変化が観察されない。この結果は、熱電対が温度を測定して経過を証明するために使用されて判明した。
‐キャビテーション中のパワーレベルの変化は、温度上昇と気泡形成に影響するが、治療の継続期間にはほとんど影響を与えない;すなわち、パワーレベルの上昇は気泡形成の促進および温度上昇をもたらす。
‐高パワーレベルの使用を制限するのは、過剰な気泡が形成された場合にその制御が難しく、意図する治療対象領域外で損傷が起こりかねないからである。
‐加熱時間の変化は温度上昇のみならず治療の継続期間にも影響を与えることが、結果により示されている。しかし、加熱段階中の気泡形成には影響を与えない。すなわち、加熱領域は、キャビテーション期間中に対象として限定した領域内に収めることができるのである。
【0060】
本発明の方法を行うために使用できる変換器アレイの別の実施形態を、図15A〜15Dに示す。図15Aは、アレイ900の円筒形状ホルダー908の外側の特徴を示す側面図、図15Bはその斜視図である。これらの図には、3つの変換器のための電源ケーブル用の3つのコネクタ910と、熱電対用の3つのコネクタ912が示されている。アレイ900の熱電対は、アレイの動作(development)段階中の性能を監視するように、アレイの各変換器の裏面に配置されている。これらは市販のアレイに必須の特徴ではない。ホルダー908の上面に示されるのは空気流入口914と空気排出口916であり、これらは変換器の背面に空気を通してホルダー908中の熱を除去するために設けられている。
【0061】
図3Aおよび3Bに示されている、円筒形状変換器206を備えたアレイ300とは対照的に、アレイ900は3つの環状変換器902、904、906からなる。前記3つの変換器はその前面が、変換器からのエネルギーをすべてホルダー底面下の同一点に集束させる球面作用領域918を形成するように配置される。共通焦点(図5Cのf)は、ホルダー908の垂直対称に位置し、球面作用領域918の曲率中心となっている。
【0062】
図15Cは3つの変換器の配列を示す断面図である。線a、b、cはそれぞれ変換器902、904、906の底端である。変換器902の底面および変換器904、906の内側側面により、球面作用領域918が画定される。線cはまた、ホルダー908の底端を表し、したがってアレイが治療中に患者の身体上に置かれたときの「皮膚面」を表す。皮膚面から焦点fまでの距離は、記号dにより示される。図15Dは、作用面918上の変換器902、904、および906の位置を示す、アレイ底面側から見た図である。
【0063】
静脈の治療用に設計されたアレイ900の寸法の一例(本発明を限定するものではない)としては、ホルダー908の高さおよび直径がそれぞれ65mmと88mmであり、球面作用領域918の曲率半径が45mm、距離dが27mmのものがある。アレイ中の変換器の周波数は、350KHZ、700KHZ、および1050KHZである。これら周波数の比率は1:2:3であることに注意されたい。これは、前述され前記の実験で使用されたアレイ300の比率の1:2:4とは異なる。これは本発明が特定の周波数に限定されず、またそのために、3つの変換器を使用するということに限定されないことを示している。変換器等のシステムの部品の数、周波数、およびその他のパラメータを選択する際には、目的とする結果を達成するためにアレイによって生成されるべき信号の波形を主眼とする。
【0064】
本発明は、細胞や組織の局所的治療または損傷をもたらすように構成された様々な非侵襲性(または最低限の侵襲性)手法に使用できる。前記治療は、微小気泡およびキャビテーション効果を得るメカニズムに基づいて、微小気泡の存在に基づく発熱療法のメカニズムに基づいて、または両メカニズムに基づいている。前記手法は、超音波映像法(またはその他の映像法)の誘導および制御のもとで実施されてもよいし、事前設定パラメータを使用することにより、かかる誘導および制御無しで実施されてもよい。前記手法は短時間で行われる。2段階の手法の一例は、例えば10〜30秒のキャビテーション段階と、それに続く例えば30〜90秒の加熱段階とを含む。前記手法は、より大きな領域を治療すべき場合は繰り返し行われなければならない。
【0065】
本発明の方法および装置を使用して行われる医療的処置の例(本発明を限定するものではない)としては、次のようなものがある:
‐拡張蛇行静脈の閉塞。この処置は、本発明の方法により生成された超音波を使用することに基づき、それにより拡張蛇行静脈に瘢痕を形成させ閉塞させる。本発明は、企業等の顧問医師が非侵襲性の処置を行えるようにし、また、診断および治療の両処置に使用できる。この方法は静脈の構造や幅に制限されない。治療および像のモニタリングが同時に、同じプローブを使用して行うことができ、したがって高価な付属品がさらに必要になることが無い。
【0066】
拡張蛇行静脈の治療手法の好適な実施形態は、キャビテーション損傷のみを利用するものであり、したがってレーザー治療や高強度集束超音波(HIFU)に基づく治療の結果しばしば起こりがちな不快感や瘢痕形成を制限する。キャビテーション損傷のみであると望ましい結果をもたらさない状況では、短期間の気泡形成およびキャビテーションののちに急速発熱をおこす波形に変更するという、前述した2段階手法が使用される。第3の選択肢としては、気泡形成という前段階無しに、加熱波形のみを使用して発熱を起こす方法がある。本発明の方法は、従来技術に対していくつかの利点がある。そのうち最も重要なものは、無数の気泡が熱吸収を補助するという効率性である。これにより従来のHIFU治療よりも低強度ビームの使用と短い曝露時間を可能にする。同様に重要であるのは、治療領域を、静脈中に位置する非常に小さい容積部分に制限でき、したがって近傍の組織や臓器の損傷を制限できることである。後者の利点は、本発明の方法において超音波エネルギーが高度に集束され、キャビテーションを起こす特定の波形が焦点領域内の特定の容積に制限され、気泡の形成が組織内よりも流体内でより起こりやすいことに基づいている。たとえば、前述の米国特許第6,436,061号において、無数の気泡は存在しない。このことが集束超音波の印加の制御を困難にしていると考えられる。なぜなら、ビームの焦点は血液に合わせられているが、血液は周囲の組織よりも吸収性が低いからである。本発明は、HIFUとはまったく異なる拡張蛇行静脈治療メカニズムに基づいている。HIFUでは、超音波エネルギーの組織または血液成分による吸収が必要である。本発明の好適な実施形態によると、治療は局所的な圧力の変更のみによって起こされた気泡形成のメカニズムに基づいている。
‐局所的な圧力または剪断応力により治療的な反応または損傷を起こすことによる、体内の細胞(例えば内皮細胞)プロセスの活性化。たとえば、局所的薬物送達、遺伝子治療、脈管形成など。
‐キャビテーション損傷および/または急速発熱療法によってアポトーシス、組織切除、または壊死を起こすことによる、癌性組織の治療。
‐キャビテーションおよび/または急速発熱療法により腫瘍に血液を供給する動脈を凝固させて供給および排出の血管構造を損傷および閉塞させることによる癌性組織の治療。
‐心臓の壁部、主に心室の壁部内の異所性の病巣、または再入ループの切除。
‐閉塞または半閉塞状態となった、たとえば冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、抹消動脈などの動脈の血栓崩壊。
‐微小気泡の崩壊のメカニズムにより、および/または発熱療法により、脂肪の堆積をアポトーシスさせるか排出することによる、脂肪分解や、その他の脂肪細胞崩壊方法。
‐体内の内出血の血液凝固。
‐発生された微小気泡を介した視覚化および制御により、傷口に沿って細胞を崩壊させることによる、内部組織および臓器の非侵襲性手術。
【0067】
本発明はそれを利用して行うことができる医療的な手法に関して提示されたが、当業者は本発明の方法およびシステムが、必要に応じて変更を加えて、たとえば超音波洗浄など工業的および商業的な様々な用途に容易にかつ有効に適用可能であることを、容易に理解するであろう。
【0068】
また、十分な微小気泡群がその場で形成できないような状況では、加熱波形からのエネルギーの吸収の効率化を図るために、焦点領域に造影剤を導入してもよいことに注意されたい。
【0069】
本発明の実施形態を例として述べたが、本発明は、その精神から離れることなく、また特許請求の範囲を超えることなく、様々な変更、改良、応用により実施することができるものであることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、正弦波形を有する超音波信号を示す。
【図2】図2は、本発明を実施するための制御駆動システムを概略的に示す。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明での使用に適切な変換器アレイの実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明の方法の実施中に発生する微小気泡の有無、数、大きさ、位置、および三次元的分布を測定し表示するために使用される一般的なデータ処理方式の一例における一連の操作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、振幅の大きい負ピークと振幅の小さい正ピークを備えた波形を示す。
【図6】図6は、振幅の大きい正ピークと振幅のほんの小さい負ピークを備えた波形を示す。
【図7】図7〜図11は、それぞれ異なるパワーレベルでキャビテーション波形および加熱波形を印加した影響と、加熱波形を印加した期間の温度に対する影響とを測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。
【図8】図7〜図11は、それぞれ異なるパワーレベルでキャビテーション波形および加熱波形を印加した影響と、加熱波形を印加した期間の温度に対する影響とを測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。
【図9】図7〜図11は、それぞれ異なるパワーレベルでキャビテーション波形および加熱波形を印加した影響と、加熱波形を印加した期間の温度に対する影響とを測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。
【図10】図7〜図11は、それぞれ異なるパワーレベルでキャビテーション波形および加熱波形を印加した影響と、加熱波形を印加した期間の温度に対する影響とを測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。
【図11】図7〜図11は、それぞれ異なるパワーレベルでキャビテーション波形および加熱波形を印加した影響と、加熱波形を印加した期間の温度に対する影響とを測定するために行われた一連の実験の結果を示すグラフである。
【図12A】図12A〜図12Dは、図4のフローチャートに概略が示された一連の操作の一例の結果がスクリーンに表示された状態を示す。
【図12B】図12A〜図12Dは、図4のフローチャートに概略が示された一連の操作の一例の結果がスクリーンに表示された状態を示す。
【図12C】図12A〜図12Dは、図4のフローチャートに概略が示された一連の操作の一例の結果がスクリーンに表示された状態を示す。
【図12D】図12A〜図12Dは、図4のフローチャートに概略が示された一連の操作の一例の結果がスクリーンに表示された状態を示す。
【図13】図13は、切り出された肝臓組織中にキャビテーションおよび加熱を異なる期間生じさせた後の温度値を示す棒グラフである。
【図14】図14は、キャビテーション効果のみを生じさせるための本発明の方法を使用することにより生じた生物材料の局所的破壊を示す。
【図15A】図15A〜図15Dは、環状変換器を備えた変換器アレイの実施形態を示す。
【図15B】図15A〜図15Dは、環状変換器を備えた変換器アレイの実施形態を示す。
【図15C】図15A〜図15Dは、環状変換器を備えた変換器アレイの実施形態を示す。
【図15D】図15A〜図15Dは、環状変換器を備えた変換器アレイの実施形態を示す。
【符号の説明】
【0071】
200 制御駆動システム
202 任意波形信号発信機
204 広帯域パワー増幅器
206 変換器
208 ワークステーション
210 温度測定システム
212 超音波映像システムまたは超音波非映像システム、超音波システムの監視システム、映像システム
214 制御ボックス
300 変換器アレイ
302 内腔
304 中央内腔
306 円筒形状ホルダー
900 アレイ
902、904、906 環状変換器
908 円筒形状ホルダー
910、912 コネクタ
914 空気流入口
916 空気排出口
918 球面作用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体中の特定の位置で局所的に気泡を形成し、前記形成を制御し、前記位置で起こるキャビテーション効果および加熱効果を制御するために、前記位置に焦点を合わせた超音波を使用する方法であって、
‐大きな負ピークと小さな正ピークを有し、無数の微小気泡の形成を促進する波形と、
‐熱の発生と、前記微小気泡の成長および起こりうる内破の制限とを促進する波形と、
‐大きな負ピークと小さな正ピークを有する一つの波形と大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する第二の波形の二つの波形が、空間的および/または時間的に結合したものを有し、微小気泡のサイズ分布およびその分布の経時変化の制御を可能にする結合波形と、
からなる群から選択される波形の一つを生成するために、前記形成および制御が、前記位置に焦点を合わせた複数の変換器のパラメータの範囲を選択することにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱の生成を促進する波形が、
‐大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する波形と、
‐正弦波形と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大きな正ピークとほんの小さな負ピークを有する波形が、前記微小気泡のサイズの縮小を促進する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変換器の数が3つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微小気泡の半径が、数分の一ミクロンから100ミクロン以上の範囲であり、好適には約3ミクロンから5ミクロンのあいだである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
制御システムが、組織内の変化または気泡の大きさを測定し、それに基づいて前記波形を調整して前記波形がより多くの負ピークを含む、より多くの正ピークを含む、またはより多くの同じ大きさの波を含むようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
温度制御システムが、前記測定された温度に基づいて前記変換器の出力を変更するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、所望の位置での微小気泡の発生を監視するために治療領域を観測および監視して、以下の一つ以上を目的としてシステムを制御するために使用される、請求項1に記載の方法。
‐微小気泡の数が設定されたようになる、
‐前記対象位置に集束ビームの照準を合わせる、および
‐ビームを別の位置に再調整する。
【請求項9】
‐加熱の効果、
‐前記効果の期間、
‐前記対象領域中に発生した微小気泡の数、および
‐前記対象領域中に発生した前記微小気泡の三次元的拡散、
の一つ以上を測定するために、前記発信周波数の半高調波またはより高次の高調波での応答が、前記超音波映像システムまたは前記超音波非映像システムにより利用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の変換器が、アレイ状に配置され、それらの機構的焦点とそれら自体の焦点とが、空間の同一点で結合するように設計されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記空間の同一点を、アレイ全体を移動するか、個々の変換器の位置を変更するか、または、励起パルスの位相をずらすことにより移動できる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
個別の変換器により送信された超音波が、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するよう構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記特定の波形が、
‐温度に大きな変化をもたらすことなくキャビテーションを起こす、
‐キャビテーションを最小限におさえて温度を上昇させる、
‐キャビテーションを抑制する、および
‐これら効果の組み合わせを起こす、
という効果のうちの1つを生じさせるように変更可能である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特定の波形が有効な強度で展開し、かつ前記波形の振幅が最大振幅の−3DB未満である全変換器の焦点ゾーン内の領域が、おおむね前記最大振幅の位置から水平方向に25mm未満、好適には1mm未満の距離であり、軸方向に10mm未満、好適には1.5mm未満の距離である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記位置での局所的気泡形成、ならびに、前記位置で起こるキャビテーション効果および加熱効果の制御が、治療を目的とするものである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アレイが、生体外で、治療すべき臓器に近接して、前記超音波変換器とそれおよび前記臓器の間の空間とを超音波ゲルまたは水が取り囲む状態で設置される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記治療が、
‐拡張蛇行静脈および拡張した毛細管の閉塞、
‐治療的な応答または損傷を起こす、局所的な圧力または剪断応力による、体内の細胞(例えば内皮細胞)のプロセスの活性化、
‐キャビテーション損傷および/または急速発熱療法によってアポトーシス、組織切除、または壊死を起こすことによる、癌性組織の治療、
‐キャビテーションおよび/または急速発熱療法により腫瘍に血液を供給する動脈を凝固させて供給および排出の血管構造を損傷および閉塞させることによる癌性組織の治療、
‐心臓の壁部、主に心室の壁部内の異所性の病巣または再入ループの切除、
‐閉塞または半閉塞状態となった、たとえば冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、抹消動脈などの動脈の血栓崩壊、
‐微小気泡の崩壊のメカニズムにより、および/または発熱療法により、脂肪の堆積をアポトーシスさせるか排出することによる、脂肪分解や、その他の脂肪細胞崩壊方法、
‐体内の内出血の血液凝固、および
‐傷口に沿って細胞を崩壊させることによる、内部組織および臓器の非侵襲性手術、
からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a)複数の変換器を準備する工程と、
b)前記静脈中の同一位置に前記複数の変換器の焦点を合わせる工程と、
c)前記複数の変換器の変数の範囲を選択して、無数の微小気泡の発生を促進する、大きい負ピークと小さい正ピークを含む波形を生成する工程と、
d)前記キャビテーションにより前記位置で細胞破壊が起こり前記組織の瘢痕形成が開始するまで、前記波形の生成を継続する工程と、
e)前記静脈中の別の位置に前記変換器の焦点を合わせる工程と、
f)十分な瘢痕形成がなされて前記静脈の閉塞を起こすまで、前記工程(c)、(d)、および(e)を繰り返す工程とを含む、拡張蛇行静脈および拡張した毛細管の閉塞を行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(d)および(e)の間に、
g)前記複数の変換器のパラメータの範囲を変更して、前記位置で熱の発生を促進する加熱波形を生成する工程と、
h)加熱により前記位置で細胞破壊が起こり前記組織の瘢痕形成が開始するまで、前記波形の生成を継続する工程と、
の2つの工程がさらに追加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
体内の細胞プロセスを活性化することにより、局所的薬物送達、遺伝子治療、脈管形成からなる群から選択される、治療的な反応または損傷を引き起こす、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
閉塞または半閉塞状態の動脈の血栓崩壊が、冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、および抹消動脈からなる群から選択される動脈中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
‐3つ以上の任意波形信号発信機と、
‐3つ以上の広帯域パワー増幅器と、
‐3つ以上の変換器と、
‐1つのワークステーションとを備えた、請求項1に記載の方法を行うためのシステム。
【請求項23】
前記3つ以上の変換器が、アレイ状に配置され、それらの機構的焦点とそれら自体の焦点とが空間の同一点で結合するように設計されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記空間の同一点が、アレイ全体を移動するか、個々の変換器の位置を変更するか、または、励起パルスの位相をずらすことにより移動できる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記3つ以上の変換器により送信された超音波が、他の位置では生じない特定の波形を干渉により前記焦点で生成するよう構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記特定の波形が、
‐温度に大きな変化をもたらすことなくキャビテーションを起こす、
‐キャビテーションを最小限におさえて温度を上昇させる、
‐キャビテーションを抑制する、または
‐これら効果の組み合わせを起こす、
という効果の1つを生じさせるように変更可能である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記特定の波形が有効な強度で展開し、かつ前記波形の振幅が最大振幅の−3DB未満である全変換器の焦点ゾーン内の領域が、おおむね前記最大振幅の位置より水平方向に25mm未満、好適には1mm未満の距離であり、軸方向に10mm未満、好適には1.5mm未満の距離である、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
超音波映像システムまたは超音波非映像システムと、制御ボックスとをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
前記超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、所望の位置での微小気泡の発生を監視するために治療領域を観測および監視して、以下の一つ以上を目的としてシステムを制御するために使用される、請求項28に記載のシステム。
‐微小気泡の数が設定されたようになる、
‐対象位置に集束ビームの照準を合わせる、および
‐ビームを別の位置に再調整する。
【請求項30】
‐加熱の効果、
‐前記効果の期間、
‐前記対象領域中に発生した微小気泡の数、および
‐前記対象領域中に発生した前記微小気泡の三次元的拡散、
の一つ以上を測定するために、発信周波数の半高調波またはより高次の高調波での応答が超音波映像システムまたは超音波非映像システムにより利用される、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、前記制御ボックスを介して接続されるワークステーションによって制御される、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記超音波映像システムまたは超音波非映像システムが、組織内の変化または気泡の大きさを測定し、それに基づいて前記制御ボックスおよびワークステーションが前記波形を調整して前記波形がより多くの負ピーク、正ピーク、または同じ大きさの波を含むようにする、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
温度測定システムをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
前記温度測定システムが、1つ以上の熱電対を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記温度測定システムが、測定された温度に基づいて前記変換器の出力を変更するために使用される、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記アレイが、生体外で、治療すべき臓器に近接して、前記超音波変換器とそれおよび前記臓器の間の空間とを超音波ゲルまたは水が取り囲む状態で設置される、治療的処置に使用される請求項22に記載のシステム。
【請求項37】
前記治療的処置が、
‐拡張蛇行静脈および拡張した毛細管の閉塞、
‐治療的な応答または損傷を起こす、局所的な圧力または剪断応力による、体内の細胞(例えば内皮細胞)プロセスの活性化、
‐キャビテーション損傷および/または急速発熱療法によってアポトーシス、組織切除、または壊死を起こすことによる、癌性組織の治療、
‐キャビテーションおよび/または急速発熱療法により腫瘍に血液を供給する動脈を凝固させて供給および排出の血管構造を損傷および閉塞させることによる癌性組織の治療、
‐心臓の壁部、主に心室の壁部内の異所性の病巣または再入ループの切除、
‐閉塞または半閉塞状態となった、たとえば冠状動脈、頚動脈、大脳動脈、抹消動脈などの動脈の血栓崩壊、
‐微小気泡の崩壊のメカニズムにより、および/または発熱療法により、脂肪の堆積をアポトーシスさせるか排出することによる、脂肪分解や、その他の脂肪細胞崩壊方法、
‐体内の内出血の血液凝固、および
‐傷口に沿って細胞を崩壊させることによる、内部組織および臓器の非侵襲性手術、
からなる群から選択される、請求項36に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【公表番号】特表2007−520307(P2007−520307A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552004(P2006−552004)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000128
【国際公開番号】WO2005/074365
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(591141821)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミティド (5)
【Fターム(参考)】