説明

微小試料台集合体の製造方法、微小試料台の製造方法および試料ホルダの製造方法

【課題】微小試料台の個片化作業が容易な微小試料台集合体を提供すること。
【解決手段】シリコンウエハには、複数本の梁部30が平行して配列され、各梁部30の側面には、所定間隔で接続部20を介して微小試料台10が一つずつ保持されている。微小試料台10は、接続部20を折るようにして梁部30から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察などに供するための微小試料を固定する微小試料台の製造方法および試料ホルダの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや半導体デバイスから採取した薄片状の微小試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するには、微小試料の電子線照射領域(観察領域)を極力薄くする必要がある。このような薄片化技術としては、平板状の試料台を立設して、その上面に微小試料片を立てて固定し、微小試料片の表面にほぼ平行に、つまり試料台の上面にほぼ垂直に、集束イオンビームを照射して微小試料片を薄くする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、シリコンウエハの面内で複数の微小試料台を互いに連結させて2次元的に配列させた微小試料台集合体が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−35682号公報
【特許文献2】特開2007−33376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の微小試料台集合体では、複数の微小試料台が互いに連結されているため、微小試料台を分離する作業が複雑である。そのため、分離作業時に微小試料台を破損することもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明は、加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、基部となる第1段と、微小試料が固定される固定部となる最上段とが多段形状とされた複数の微小試料台を平板状の基板内に形成した微小試料台集合体の製造方法において、両端を基板の周縁部に接続した複数本の梁部を基板内に並べて形成する梁部形成工程と、複数本の梁部の側面に、所定間隔で接続部を複数個設ける接続部形成工程と、複数本の梁部の側面には、各接続部に接続される一つの微小試料台を複数個設ける微小試料台形成工程とを備え、梁部と、接続部と、微小試料台とを除いた領域には基板が存在しない隙間空間が形成され、梁部形成工程、接続部形成工程および微小試料台形成工程を並行して行うことを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の微小試料台集合体の製造方法において、複数の微小試料台は、基板の面内に2次元的に配設されることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載の微小試料台集合体の製造方法において、複数本の梁部は互いに平行に配設され、複数の微小試料台は梁部に直交して配設されることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法において、接続部は、基部の高さよりも薄く形成されることを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法において、基板はシリコンウエハであり、基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、微小試料台の各々はフォトリソグラフィーとエッチングにより多段形状に形成されることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項5に記載の微小試料台集合体の製造方法において、梁部形成工程は、シリコンウエハの表面側に梁部となる原型を形成する第1原型形成工程、および梁部を残してシリコンウエハを厚さ方向に除去する第1除去工程を含み、接続部形成工程は、シリコンウエハの表面側に接続部となる原型を形成する第2原型形成工程、および接続部を残してシリコンウエハを厚さ方向に除去する第2除去工程を含み、微小試料台形成工程は、シリコンウエハの裏面側に基部となる原型を形成する第3原型形成工程、および微小試料台を残してシリコンウエハを厚さ方向に除去する第3除去工程を含み、さらに製造方法は、第1〜第3原型形成工程と第1〜第3除去工程の間に、シリコンウエハの裏面側にベース基板を貼着する貼着工程と、第1〜第3除去工程の後に、梁部、接続部および微小試料台が形成されたシリコンウエハからベース基板を剥離する剥離工程とを備えることを特徴とする。
(7)請求項7の発明による微小試料台の製造方法は、請求項1乃至6項のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法により製造された微小試料台集合体から、接続部を破断して微小試料台の各々を分離する分離工程を備えることを特徴とする。
(8)請求項8の発明による試料ホルダの製造方法は、請求項7に記載の製造方法により製造された微小試料台を金属製の台座に接合する接合工程を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微小試料台の一つ一つが接続部を介して梁部に接続されるので、接続部を折損するだけでひとつの微小試料台を容易に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態による微小試料台および微小試料台集合体について図1〜21を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態による微小試料台を金属製台座メッシュに貼り付けた状態を模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。図1では、XYZ直交座標で方向を表す。図1に示されるように、微小試料台10は、ほぼ半円板形状の金属製の台座メッシュ100の表面に貼着されている。微小試料台10は、半導体ウエハや半導体デバイスから採取した平板状の微小試料片Sを保持して、透過型電子顕微鏡(TEM)観察あるいはオージェ電子分光(AES)等に供するために、微小試料片Sの薄片化調製を行う作業台として用いられる。そして、微小試料台10は、顕微鏡観察あるいは分光分析の際には、薄片化された微小試料片Sを保持したまま顕微鏡装置あるいは分光装置にセットされる。
【0009】
図1を参照しながら微小試料台10について詳しく説明する。微小試料台10はシリコン製であり、X方向に延在する直方体形状の基部11と、基部11の上面に立設された複数の固定部12とを有する。基部11は、X方向に延設された第1段11aと第2段11bの2段構成であり、5つの固定部12の各々も、第1段12aと第2段12bの2段構成である。基部11及び固定部12の段数は、1段でもよいし、3段以上でもよい。5つの固定部12は、X方向に所定間隔で配列されており、高さ(Z方向の長さ)は一律であるが、幅(X方向の長さ)及び厚さ(Y方向の長さ)は微小試料片Sの寸法などに応じて任意に形成することができる。例えば、第2段12bの厚さを5μmとし、幅を5〜500μmの範囲で任意に変えることができる。微小試料片Sは、その表面、すなわち薄片化調製が行われる平面がXZ面に平行となるように、固定部12の第2段12b上に立てて固定される。
【0010】
図2は、本実施の形態による微小試料台集合体の構造を模式的に示す平面図である。図3は、図2の一部分を拡大して示す図であり、図3(a)は部分平面図、図3(b)は部分立面図、図3(c)は部分側面図である。図3のXYZ直交座標は図1の座標と対応している。
【0011】
図2に示されるように、微小試料台集合体10Aは、複数の微小試料台10の集合体であり、1枚の単結晶シリコンウエハ101に形成されている。図2では、シリコンウエハ101のY方向に梁部30が延在して形成され、梁部30の両側面からX方向に多数の微小試料台10が延設されている。すなわち、複数の微小試料台10は、シリコンウエハ101のX−Y面(水平面)に沿った面内で2次元分布している。なお、梁部30のY方向の端部はシリコンウエハ101の外周縁部とそれぞれ接続されている。
【0012】
図3(a)、図3(b)に示されるように、各々の微小試料台10は、基部11の短辺の側面に突設された接続リブ20を介して梁部30と結合している。接続リブ20の厚さ(Z方向の長さ)については後述する。
【0013】
図3(b)、図3(c)に示されるように、梁部30の厚さ(Z方向の長さ)および微小試料台10の高さ(Z方向の長さ)は、シリコンウエハ101の厚さと同じである。梁部30の厚さまたは微小試料台10の高さは、シリコンウエハ101の厚さより薄く(低く)形成してもよい。また、図3(a)に示されるように、微小試料台10、接続リブ20および梁部30の間は隙間空間SPであり、シリコンは存在しない。
【0014】
図1に示す状態で、微小試料台10を使用するときは、先ず、図2、図3に示したシリコンウエハ101から接続リブ20を破断することにより微小試料台10を分離する。分離の手順は後述する。次に、平板上の微小試料片Sの板面がXZ面と平行となるように、固定部12の第2段12bの上面(頂面)に微小試料片Sを立設する。設置の際には、半導体ウエハや半導体デバイスから採取した微小試料片Sを、例えばナノピンセットで挟持し、第2段12bの頂面上で位置および角度を合わせた後に、例えば接着剤で固定し、最後にナノピンセットを開いて微小試料片Sを解放する。
【0015】
続いて、微小試料片Sの薄片化調製を行う。薄片化調製には、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で加工する方法が用いられる。FIB加工法では、例えば細く絞ったGaビームを−Z方向に向けて微小試料片Sへ照射することにより、微小試料片Sを0.1μmレベルに薄片化する。このとき、最上段の第2段12bも同時に薄く加工される。このFIB加工段階では、微小試料片S表面にGaビームの照射による加工変質層や付着物などが存在するため、これらを除去する必要がある。その仕上げ加工には、図1(b)に示されるように、例えばArビームをXZ面に対して低角度で、微小試料台10の下方から微小試料片Sへ照射するイオンミリングの手法が用いられる。その後に微小試料片SのTEM観察あるいはAES微小分析等を行う。例えばTEM観察の際、FIB加工とイオンミリングにより薄片化調製された微小試料片Sを図1(a)のように微小試料台10にセットした場合、TEMの電子線の向きはY方向である。
【0016】
次に、本実施の形態の微小試料台集合体10Aの製造工程について、図4〜図18に示す工程Aから工程Oまでを詳しく説明する。図4〜図18では、部分平面図(a)、部分平面図(a)をI−I線(Y方向)に沿って切断したI−I線断面図(b)、II−II線(X方向)に沿って切断したII−II線断面図(c)の3つの図面を同じ配置で示す。なお、図4〜図18では、部分平面図(a)とII−II線断面図(c)については、微小試料台10の1個分の領域を示し、I−I線断面図(b)については、微小試料台10の3個分の領域を示す。図4〜図18でも、XYZ方向は図1〜3に対応している。
【0017】
本実施の形態の微小試料台集合体10Aは、単結晶シリコンウエハを材料としてリソグラフィーとエッチングのプロセスによって作製され、微小試料台10の上下方向(Z方向)が単結晶シリコンウエハの厚さ方向となるように形成される。
【0018】
図4および図5は、微小試料台集合体10Aの製造工程A、Bを説明する図である。
工程Aでは、シリコンウエハ101の裏面側にスピンコータによりレジスト102を塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。A1は、上述したように、微小試料台10の1個分の領域を示す。
【0019】
工程Bでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト102のパターン露光と現像を行う。現像によりパターン外の不要なレジスト層を除去すると、部分平面図に示すレジストパターン102が形成される。レジストパターン102は、後に微小試料台10が形成される領域A2と、接続リブ20が形成される領域A3と、梁部30が形成される領域A4とから形成されている。レジストパターン102をマスクとしてICP−RIE(inductively coupled plasma - reactive ion etching)により、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。その結果、シリコンウエハ101に段差B1が形成される。
【0020】
図6および7は、微小試料台集合体10Aの製造工程C、Dを説明する図である。
工程Cでは、残存するレジストパターン102を湿式型のリムーバーで除去した後、シリコンウエハ101を表裏反転させ、表面側にスパッタリングによりSiO膜103を成膜する。
工程Dでは、SiO膜103の上にレジストを塗布し、パターン露光と現像を行い、後に微小試料台10の最上段12bが形成される領域104aを含むレジストパターン104を形成する。
【0021】
図8および9は、微小試料台集合体10Aの製造工程E、Fを説明する図である。
工程Eでは、レジストパターン104をマスクとしてSiO膜103をバッファード弗酸でウエットエッチングし、後に微小試料台10の最上段12bが形成される領域103aを形成する。
工程Fでは、残存するレジストパターン104をリムーバーで除去した後、SiO膜103のパターンが形成された面にスパッタリングによりAl膜105を成膜する。
【0022】
図10および11は、微小試料台集合体10Aの製造工程G、Hを説明する図である。
工程Gでは、Al膜105の上にレジストを塗布し、パターン露光と現像を行い、後に微小試料台10の固定部の第1段12aが形成される領域106aを含むレジストパターン106を形成する。
【0023】
工程Hでは、レジストパターン106をマスクとしてAl膜105を混酸P液でウエットエッチングし、レジストパターン106で覆われていないAl膜105を除去する。その結果、図示のように、シリコンウエハ101上に、SiO膜103、Al膜105およびレジスト106からなる3層のパターンが形成される。
【0024】
図12および13は、微小試料台集合体10Aの製造工程I、Jを説明する図である。
工程Iでは、残存するレジストパターン106をリムーバーで除去した後、再びレジストを塗布し、パターン露光と現像を行い、後に微小試料台10の基部第2段11bが形成される領域107aを含むレジストパターン107を形成する。
【0025】
工程Jでは、シリコンウエハ101の裏面側にベース基板108をペースト、レジストまたは真空オイルなどの接合剤109により貼着する。ベース基板108は、製造工程終盤で多数の微小試料台10が分離しないようにするためのものであり、製造プロセスに支障がなければどのような材料を用いてもよいが、シリコンウエハ101と同一のもの、あるいは熱膨張率の差が小さい材料を用いるのが好ましい。ベース基板108は、例えば、厚さ1mmのシリコン平板である。接合剤109は、熱伝導率の高いものが好ましい。
【0026】
図14および15は、微小試料台集合体10Aの製造工程K、Lを説明する図である。
工程Kでは、レジストパターン107をマスクとしてICP−RIEにより、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。その結果、シリコンウエハ101に段差B2が形成される。ドライエッチングでは、シリコンウエハ101の厚さ方向に貫通しないように、101aの部分の厚さを確保する必要がある。
工程Lでは、残存するレジストパターン107をリムーバーまたはRIE(reactive ion etching)を用いたOアッシングで除去する。これにより、Al膜パターン105が露出する。
【0027】
図16および17は、微小試料台集合体10Aの製造工程M、Nを説明する図である。
工程Mでは、Al膜パターン105をマスクとしてICP−RIEにより、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。段差B3が形成される。なお、シリコンウエハ101へのベース基板108の貼着は、工程Jに限らず、工程K〜Mのいずれの工程で行ってもよい。
【0028】
工程Nでは、残存するAl膜パターン105を混酸P液でウエットエッチングして除去した後、露出したSiO膜パターン103をマスクとしてICP−RIEにより、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。このドライエッチングによりシリコンウエハ101の残存部101aが完全に除去され、微小試料台10同士は直接には接続されていない状態となる。各々の微小試料台10は、接続リブ20で梁部30と結合されるとともに、微小試料台10の底面(シリコンウエハ101の裏面)がベース基板108に貼着されているため、シリコンウエハ101から離脱することを防止できる。
【0029】
図18は、微小試料台集合体10Aの製造工程Oを説明する図である。
工程Oでは、先ず、SiO膜パターン103をバッファード弗酸でウエットエッチングして除去する。その後で、ベース基板108をシリコンウエハ101から剥離する。この工程で微小試料台集合体10Aが完成する。図18の平面図で明らかなように、微小試料台10は、接続リブ20で梁部30と一体に結合されているため、シリコンウエハ101から離脱することはなく、安定的に微小試料台集合体10Aを構成している。
【0030】
ここで、工程K、M、Nで行われたICP−RIEによるドライエッチングについて詳述する。
図19は、本実施の形態による微小試料台集合体の製造工程で用いられるICP−RIE時のシリコンウエハ周辺を模式的に示す図であり、図19(a)は平面図であり、図19(b)は、図19(a)のIII−III線断面図である。
図19に示されるように、ベース基板108が貼着されたシリコンウエハ101を、円筒状の治具54の端面にOリング55を介して水平に載置し、クランプ用治具50により上方から押圧する。クランプ用治具50は、支柱51、円環52および複数の押さえ板53を有し、押さえ板53のばね性によりシリコンウエハ101を固定することができる。この状態で、ベース基板108の下方からHeガスを吹き付けて冷却しながら、シリコンウエハ101の上方から反応性ガス(例えば、SF)のラジカルとイオンを供給してエッチングを行う。上述したように、シリコンウエハ101とベース基板108の貼着に熱伝導の良い接合剤を用いているので、Heガスによる冷却効果は高い。このようにして、微小試料台10の基部11と固定部12の各段の側面が形成される。
【0031】
基部11と固定部12の側面の形成には、ボッシュプロセス(Bosch process)と呼ばれるドライエッチング手法を用いることができる。ボッシュプロセスは、保護膜形成ステップとドライエッチングステップの繰り返しからなるサイクル工程であり、保護膜形成には、CVD用の反応性ガスとしてCを用い、ドライエッチングには、反応性ガスとしてSFを用いる。ドライエッチング(ICP−RIE)で生じたスキャロップと称する周期的な凹凸パターンは、等方性ドライエッチングにより平滑化することができる。
【0032】
工程A〜Oにより完成した微小試料台集合体10Aから個々の微小試料台10を分離する個片化工程について説明する。上述したように、各々の微小試料台10は、接続リブ20で梁部30と一体化されており、接続リブ20を破断するだけで個片化は完了する。接続リブ20の破断には、例えば、微小試料台10の底面に小型のピンセットや針を当接して微小試料台10の高さ方向(+Z方向)に負荷をかける。接続リブ20の高さは微小試料台10の基部11よりも低いので、接続リブ20に応力集中が生じ、この部分で破断する。当接位置(力点)を接続リブ20から離すことにより生じる大きな曲げモーメントを利用すれば、小さな負荷で接続リブ20を破断することができる。個片化された微小試料台10の基部11には、接続リブ20と結合していた部分に破断面が残る。なお、梁部30の高さはシリコンウエハ101の厚さに等しく、梁部30の幅も接続リブ20の幅に比べて十分広く設定しているので、微小試料台10を梁部30から確実に破断することができる。
【0033】
上記の製造工程では、3個の微小試料台10についての一連の作製手順を説明したが、実際の製造工程は、シリコンウエハ単位で行われる、いわゆるバッチ処理である。このバッチ処理では、フォトリソグラフィーとエッチングにより1枚のシリコンウエハから多数の微小試料台10を一括で作製することができ、大幅な製造コストの削減が期待できるものである。さらに、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるように加工するので、材料を無駄なく使用できる。
【0034】
個々に分離された微小試料台10は、図1に示されるように、台座メッシュ100の表面に貼着固定され、試料ホルダ1が完成する。微小試料片Sを固定部12の頂部である上面に立てて固定し、試料ホルダ1を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいはオージェ電子分光(AES)装置にセットする。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態の微小試料台集合体10Aおよび微小試料台10は、下記(1)〜(5)の作用効果を奏する。
(1)フォトリソグラフィーとエッチングのみによりシリコンウエハの微細加工を行い、他の加工プロセスを使用しないので、製造設備の種類が少なくて済み、製造工程の単純化を図ることができる。
(2)フォトリソグラフィーとエッチングのみにより微細加工を行うので、微小試料台10の配置などのデザイン上の自由度が高い。
(3)微小試料台10を一体で多数同時に作製できるので、品質のばらつきがなく、1個当りの製造コストを大幅に削減できる。また、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるので、材料取りに有利である。
(4)微小試料台10の分離作業は、ユーザーが使用直前に簡便に行うことができるので、微小試料台集合体10Aとしてまとめて保管あるいは運搬でき、取り扱い上の利便性に優れる。
(5)各々の微小試料台10が接続リブ20を介して強度の大きい梁部30に接続されているので、個片化作業が容易であり、個片化作業中、微小試料台の破損を防止することができる。
【0036】
以上説明した微小試料台集合体10Aの製造方法は、並行処理される梁部形成工程と、接続部形成工程と、微小試料台形成工程とを含む。梁部形成工程は、シリコンウエハ101の表面側に梁部30となる原型を形成する第1原型形成工程、および梁部30を残してシリコンウエハ101を厚さ方向に除去する第1除去工程を含む。接続部形成工程は、シリコンウエハ101の表面側に接続リブ20となる原型を形成する第2原型形成工程、および接続リブ20を残してシリコンウエハ101を厚さ方向に除去する第2除去工程を含む。微小試料台形成工程は、シリコンウエハ101の裏面側に基部11となる原型を形成する第3原型形成工程、および微小試料台10を残してシリコンウエハ101を厚さ方向に除去する第3除去工程を含む。さらに以上の製造方法は、第1〜第3原型形成工程と第1〜第3除去工程の間に、シリコンウエハ101の裏面側にベース基板108を貼着する貼着工程と、第1〜第3除去工程の後に、梁部30、接続リブ20および微小試料台10が形成されたシリコンウエハ101からベース基板108を剥離する剥離工程とを備える。
【0037】
本発明による微小試料台10の製造方法は、上記微小試料台集合体10Aの製造方法により製造された微小試料台集合体10Aから、接続リブ20を破断して微小試料台10の各々を分離する分離工程を備える。また、本発明による試料ホルダ1の製造方法は、このようにして製造された微小試料台10を金属製の台座メッシュ100に接合する接合工程を含む。
【0038】
本実施の形態の微小試料台集合体10Aの製造方法には様々な変形が考えられる。例えば、基部11と接続リブ20の相対的な寸法、或いは基部11と接続リブ20の結合部分の位置を任意に変えることができる。
【0039】
図20は、基部11と接続リブ20の関係を模式的に示す部分断面図であり、図20(a)は本実施の形態による部分断面図、図20(b)は本実施形態の変形例による部分断面図、図20(c)は本実施形態の他の変形例による部分断面図である。
図20(a)では、基部11の第1段11aと接続リブ20とはいずれも高さh1と等しい。但し、接続リブ20の幅は第1段11aの幅と同じか狭いものとする。接続リブ20は基部11よりも低く作製されているので、上述した個片化作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0040】
図20(b)の変形例では、基部11の第1段11aと接続リブ20Aとはいずれも高さh1と等しいが、結合部分の位置が図20(a)とは異なる。この変形例でも、図20(a)の場合と同様に、個片化作業を容易かつ確実に行うことができる。段差B4は、工程Bのマスクを用いたエッチングにて形成できる。
【0041】
図20(c)の変形例では、接続リブ20Bの高さh2は、第1段11aの高さh1よりも高い。その分だけ、接続リブ20Bの幅を第1段11aの幅よりさらに狭くすればよい。この場合、個片化作業時の負荷を接続リブ20Bの幅方向(Y方向)にかけて、破断すればよい。
【0042】
以上のように、接続リブを直方体形状とした場合、接続リブまたは結合部分で破断するように、接続リブの高さ、幅の少なくとも一方を基部11の高さ、幅よりも短くすることが要点である。例えば、図20(a)、図20(b)において接続リブの高さは、h1に限らず、h1よりも高くしても低くしてもよい。
【0043】
図21は、基部11と接続リブ20の結合位置を模式的に示す部分平面図であり、図21(a)は本実施の形態による部分平面図、図21(b)は本実施形態の変形例による部分平面図、図21(c)は本実施形態の他の変形例による部分平面図である。
図21(a)では、直方体形状の基部11の短辺の側面と接続リブ20とが結合されている。図21(b)では、直方体形状の基部11の側面が交差する角で接続リブ20Cが結合されている。図21(c)では、直方体形状の基部11の長辺の側面と接続リブ20Dとが結合されている。図21に示されるような形状は、工程Bのマスクを用いたエッチングにて任意に形成できる。
【0044】
本発明は、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。リソグラフィーとエッチングによりシリコンウエハを微細加工して作製される微小試料台集合体は様々な形状、構造が考えられる。さらに、基板はシリコンウエハに限定されず、平板状の種々の素材、例えば、酸化シリコン基板や、ガリウム−砒素などの化合物半導体基板を使用することができる。
【0045】
本発明による製造方法で製作される微小試料台集合体10Aから分離される微小試料台10は、加工処理が施される微小試料片Sを固定するための微小試料台である。微小試料台10は、基部11となる第1段11aと、微小試料片Sが固定される固定部12となる最上段12bとを有する多段形状となっている。微小試料台集合体10Aは、複数の微小試料台10を平板状の基板内に形成したものである。本発明による製造方法は、両端をシリコンウエハなどの基板の周縁部に接続した複数本の梁部30を基板内に並べて形成する梁部形成工程と、複数本の梁部30の側面に、所定間隔で接続リブ20を複数個設ける接続部形成工程と、複数本の梁部30の側面には、各接続リブ20に接続される一つの微小試料台10を複数個設ける微小試料台形成工程とを備え、梁部30と、接続リブ20と、微小試料台10とを除いた領域では基板をくり抜いた隙間空間SPが形成され、梁部形成工程、接続部形成工程および微小試料台形成工程を並行して行うものである。
【0046】
また、本発明による製造方法で製作される微小試料台10を金属製の台座メッシュ100に貼り付ける場所については、図1に示した貼り付け位置の他に、図22で示す貼り付け位置も挙げられる。
図22は、微小試料台10を台座メッシュ100に貼り付ける位置を図1とは変えて模式的に示す図であり、図22(a)は正面図、図22(b)は、図22(a)のIV−IV線に沿って切断した断面図である。図22でもXYZ直交座標で方向を表す。
【0047】
試料ホルダ1Aは、微小試料台10を台座メッシュ100の切り欠き端面100Aに配置して接合することにより作製される。すなわち、基部11の第1段11aの底面が切り欠き端面100Aに対向配置されて接合される。基部11の厚さ(Y方向の長さ)は、台座メッシュ100の厚さ(Y方向の長さ)よりも厚く作製されている。微小試料片Sは、固定部12の第2段12bの上面に立てて固定される。微小試料台10と台座メッシュ100が上下に接合されているため、FIB加工段階でのGaビームの照射による逆スパッタを防止することができ、異物などが微小試料片Sに付着するのを防止することができる。このような試料ホルダ1Aの製造方法も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る微小試料台を台座メッシュに貼り付けた状態を模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本実施の形態に係る微小試料台集合体の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】図2の一部分を拡大して示す図であり、図2(a)は部分平面図、図2(b)は部分立面図、図2(c)は部分側面図である。
【図4】微小試料台集合体10Aの製造工程Aを説明する図であり、図4(a)は部分平面図(右上)、図4(b)はI−I線(Y方向)に沿って切断したI−I線断面図(左下)、図4(c)はII−II線(X方向)に沿って切断したII−II線断面図(右下)である。
【図5】微小試料台集合体10Aの製造工程Bを説明する図である。
【図6】微小試料台集合体10Aの製造工程Cを説明する図である。
【図7】微小試料台集合体10Aの製造工程Dを説明する図である。
【図8】微小試料台集合体10Aの製造工程Eを説明する図である。
【図9】微小試料台集合体10Aの製造工程Fを説明する図である。
【図10】微小試料台集合体10Aの製造工程Gを説明する図である。
【図11】微小試料台集合体10Aの製造工程Hを説明する図である。
【図12】微小試料台集合体10Aの製造工程Iを説明する図である。
【図13】微小試料台集合体10Aの製造工程Jを説明する図である。
【図14】微小試料台集合体10Aの製造工程Kを説明する図である。
【図15】微小試料台集合体10Aの製造工程Lを説明する図である。
【図16】微小試料台集合体10Aの製造工程Mを説明する図である。
【図17】微小試料台集合体10Aの製造工程Nを説明する図である。
【図18】微小試料台集合体10Aの製造工程Oを説明する図である。
【図19】本実施の形態に係る微小試料台集合体の製造工程で用いられるICP−RIE時のシリコンウエハ周辺を模式的に示す図であり、図19(a)は平面図であり、図19(b)は、図19(a)のIII−III線断面図である。
【図20】基部11と接続リブ20の関係を模式的に示す部分断面図であり、図20(a)は本実施の形態による部分断面図、図20(b)は本実施形態の変形例による部分断面図、図20(c)は本実施形態の他の変形例による部分断面図である。
【図21】基部11と接続リブ20の結合位置を模式的に示す部分平面図であり、図21(a)は本実施の形態による部分平面図、図21(b)は本実施形態の変形例による部分平面図、図21(c)は本実施形態の他の変形例による部分平面図である。
【図22】微小試料台10を台座メッシュ100に貼り付ける位置を図1とは変えて模式的に示す図であり、図22(a)は正面図、図22(b)は、図22(a)のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:試料ホルダ 10:微小試料台
10A:微小試料台集合体 11:基部
12:固定部 20:接続リブ
30:梁部 100:台座メッシュ
101:シリコンウエハ 108:ベース基板
S:微小試料片 SP:隙間空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、基部となる第1段と、前記微小試料が固定される固定部となる最上段とが多段形状とされた複数の微小試料台を平板状の基板内に形成した微小試料台集合体の製造方法において、
両端を前記基板の周縁部に接続した複数本の梁部を前記基板内に並べて形成する梁部形成工程と、
前記複数本の梁部の側面に、所定間隔で接続部を複数個設ける接続部形成工程と、
前記複数本の梁部の側面には、前記各接続部に接続される一つの微小試料台を複数個設ける微小試料台形成工程とを備え、
前記梁部と、前記接続部と、前記微小試料台とを除いた領域には前記基板が存在しない隙間空間が形成され、
前記梁部形成工程、接続部形成工程および微小試料台形成工程を並行して行うことを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微小試料台集合体の製造方法において、
前記複数の微小試料台は、前記基板の面内に2次元的に配設されることを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微小試料台集合体の製造方法において、
前記複数本の梁部は互いに平行に配設され、前記複数の微小試料台は前記梁部に直交して配設されることを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法において、
前記接続部は、前記基部の高さよりも薄く形成されることを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法において、
前記基板はシリコンウエハであり、前記基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、前記微小試料台の各々はフォトリソグラフィーとエッチングにより多段形状に形成されることを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の微小試料台集合体の製造方法において、
前記梁部形成工程は、前記シリコンウエハの表面側に前記梁部となる原型を形成する第1原型形成工程、および前記梁部を残して前記シリコンウエハを厚さ方向に除去する第1除去工程を含み、
前記接続部形成工程は、前記シリコンウエハの表面側に前記接続部となる原型を形成する第2原型形成工程、および前記接続部を残して前記シリコンウエハを厚さ方向に除去する第2除去工程を含み、
前記微小試料台形成工程は、前記シリコンウエハの裏面側に前記基部となる原型を形成する第3原型形成工程、および前記微小試料台を残して前記シリコンウエハを厚さ方向に除去する第3除去工程を含み、
さらに前記製造方法は、前記第1〜第3原型形成工程と前記第1〜第3除去工程の間に、前記シリコンウエハの裏面側にベース基板を貼着する貼着工程と、
前記第1〜第3除去工程の後に、前記梁部、接続部および微小試料台が形成された前記シリコンウエハから前記ベース基板を剥離する剥離工程とを備えることを特徴とする微小試料台集合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6項のいずれか1項に記載の微小試料台集合体の製造方法により製造された微小試料台集合体から、前記接続部を破断して前記微小試料台の各々を分離する分離工程を備えることを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により製造された微小試料台を金属製の台座に接合する接合工程を設けたことを特徴とする試料ホルダの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−156678(P2009−156678A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334177(P2007−334177)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】