説明

微小試料台集合体

【課題】 複数個の微小試料台を保管したり運搬する際の取り扱いを簡便とすること。
【解決手段】 微小試料台10の集合体である微小試料台集合体50は、複数の微小試料台10がX方向に直線状に規則正しく配列され、このような列がZ方向に突き抜けた空間SPを挟んでY方向に並列に規則正しく配置されている。微小試料台10同士は、連結リブ60を介して直列に連結され、各列において最も外側にある微小試料台10の一端が接続リブ80を介して外枠70の突起部70aに接続されている。微小試料台10、連結リブ60、外枠70および接続リブ80は、全てシリコン製であり、単結晶シリコンウエハ101から一体で作製される。微小試料台10を分離するときは、連結リブ60、接続リブ80を折って切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察などに供するための微小試料片を固定する微小試料台を複数備える微小試料台集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや半導体デバイスから採取した微小試料片を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するには、微小試料片の電子線照射領域(観察領域)を極力薄くする必要がある。このような薄片化技術としては、平板状の試料台を立設して、その上面に微小試料片を立てて固定し、微小試料片の表面にほぼ平行に、つまり試料台の上面にほぼ垂直に、集束イオンビームを照射して微小試料片を薄くする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−35682号公報(第5頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薄片化のための作業台として使用される微小試料台は、一般に、一度使用すると再使用はしない消耗品である。そのため、同じ品質のものを大量に生産できるとともに、微小試料台を使用する直前までは複数個をまとめて保管したり運搬する方が望ましい。しかし、従来は、複数個の微小試料台をまとめて保管したり運搬するということに配慮されておらず、取り扱いが煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明による微小試料台集合体は、加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、基部となる第1段と、微小試料が固定される固定部となる最上段とが多段形状とされた微小試料台を複数、平板状の素材の面内で2次元的に配列して互いに連結されていることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の微小試料台集合体において、平板状の素材はシリコンウエハであり、基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、微小試料台の各々はマイクロマシニング技術により多段形状に形成されていることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の微小試料台集合体において、複数の微小試料台を列状に連結して成る列状体を複数本備え、各列状体の間にはシリコンウエハが存在しない隙間空間を形成し、各列の両端部はシリコンウエハの周縁部と接続されていることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3に記載の微小試料台集合体において、各列状体の間の隙間空間は、シリコンウエハに対して厚さ方向にダイシング処理した後、形成された溝をエッチング処理により除去して形成されることを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項3または4に記載の微小試料台集合体において、列状体をなす各微小試料台の間を接続する連結部におけるシリコンウエハの厚さ方向の厚みと、列状体をシリコンウエハの周縁部に接続する接続部におけるシリコンウエハの厚さ方向の厚みとは、シリコンウエハに対して、ダイシング処理とエッチング処理を施して制御されていることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の微小試料台集合体において、連結部および接続部は、基部の高さよりも薄く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の微小試料台集合体によれば、複数の微小試料台が平板状の素材の面内で2次元的に配列されて互いに連結されているので、保管上、運搬上の利便性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態による微小試料台および微小試料台集合体について図1〜15を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態による微小試料台を台座メッシュに貼り付けた状態を模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。図1では、XYZ直交座標で方向を表す。図1に示されるように、微小試料台10は、ほぼ半円板形状の台座メッシュ100の表面に貼着されている。微小試料台10は、半導体ウエハや半導体デバイスから採取した平板状の微小試料片Sを保持して、透過型電子顕微鏡(TEM)観察あるいはオージェ電子分光(AES)等に供するために、微小試料片Sの薄片化調製を行う作業台として用いられる。そして、微小試料台10は、顕微鏡観察あるいは分光分析の際には、薄片化された微小試料片Sを保持したまま顕微鏡装置あるいは分光装置にセットされる。
【0008】
図2は、実施の形態による微小試料台集合体が形成された単結晶シリコンウエハを模式的に示す斜視図である。図2のXYZ直交座標は図1の座標と対応している。微小試料台集合体50は、図1に示した微小試料台10の集合体であるが、図2では便宜上突起部の数を3つに省略して示している。図2に示されるように、複数の微小試料台10がX方向に直線状に規則正しく配列された列状体をなし、このような列がZ方向に突き抜けた空間SPを挟んでY方向に並列に規則正しく配置されている。すなわち、複数の微小試料台10は、単結晶シリコンウエハのX−Y面(水平面)に沿った面内で互いに連結され、2次元分布している。
【0009】
微小試料台10同士は、連結リブ60を介して直列に連結され、各列において最も外側にある微小試料台10の一端が接続リブ80を介して外枠70の突起部70aに接続されている。したがって、微小試料台集合体50は、外枠70で支持された状態となっている。微小試料台10、連結リブ60、外枠70および接続リブ80は、全てシリコン製であり、後述する単結晶シリコンウエハから一体で作製される。なお、後に詳述するが、Y方向に平行な溝Y1は、連結リブ60を形成するためのダイシングによるものであり、Y方向に平行な外側の溝Y2は、接続リブ80を形成するためのダイシングによるものである。
【0010】
図3は、実施の形態による微小試料台集合体の構造を模式的に示す部分斜視図である。図3のXYZ直交座標も図1、図2の座標と対応している。図3に示されるように、微小試料台10が連結リブ60を介して直列に連結されている。図1(b)に示されるように中心線SPに対して左右対称であり、上下方向(Z方向)に4段を有する多段構造であり、上方の段ほど厚さ(Y方向の長さ)が薄い。また、微小試料台10をY方向に見ると、微小試料台10の第1段11と第2段12はX方向に延設されているが、第3段と第4段とから成る2段は、5つに分離しており、第3段13〜53と第4段14〜54とからそれぞれ構成される5つの突状部分は、X方向に配列して第2段12の上面からZ方向に突設されている。第3段と第4段とから成る突状部分1〜5は、高さ(Z方向の長さ)及び厚さ(Y方向の長さ)は一律であるが、幅(X方向の長さ)は微小試料片Sの寸法などに応じて任意に形成することができる。例えば、第4段14〜54の厚さを5μm一定とし、幅を5〜500μmの範囲で任意に変えることができる。連結リブ60および接続リブ80の厚さ(Z方向の長さ)は、微小試料台10の第1段11の高さよりも薄く作製されている。
【0011】
図15は、図3に示される微小試料台10の縦断面図であり、その断面は、突状部分1の中央を通ってY−Z面に平行である。図15は、段差による傾斜角度を示している。図15(a)は、第4段14のエッジ14eと第3段13のエッジ13eとの傾斜角度θ1、図15(b)は、第4段14のエッジ14eと第2段12のエッジ12eとの傾斜角度θ2、図15(c)は、第4段14のエッジ14eと第1段11のエッジ11eとの傾斜角度θ3を表す。傾斜角度θ1は、5〜30°に入るように、第4段14の厚さと高さおよび第3段13の厚さが調整されている。なお、傾斜角度θ1、θ2、θ3のすべてが5〜30°であることが望ましい。
【0012】
図1の状態で微小試料台10を使用するときは、先ず、図2、図3に示したシリコンウエハ101から連結リブ60および接続リブ80を破断することにより微小試料台10を分離する。分離の手順は後述する。次に、平板上の微小試料片Sの板面がXZ面と平行となるように、第4段14〜54の固定部のいずれかの上面(頂面)に微小試料片Sを立設する。設置の際には、半導体ウエハや半導体デバイスから採取した微小試料片Sを、例えばナノピンセットで挟持し、第4段14〜54の頂面上で位置および角度を合わせた後に、例えば接着剤で固定し、最後にナノピンセットを開いて微小試料片Sを解放する。
【0013】
続いて、微小試料片Sの薄片化調製を行う。薄片化調製には、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で加工する方法が用いられる。FIB加工法では、例えば細く絞ったGaビームを−Z方向に向けて微小試料片Sへ照射することにより、0.1μmレベルに薄片化する。このとき、最上段の第4段14も同時に薄く加工される。このFIB加工段階では、微小試料片S表面にGaビームの照射による加工変質層や付着物などが存在するため、これらを除去する必要がある。その仕上げ加工には、図1(b)に示されるように、例えばArビームをYZ面に対して低角度で、微小試料台10の下方から微小試料片Sへ照射するイオンミリングの手法が用いられる。その後に微小試料片SのTEM観察あるいはAES微小分析等を行う。例えばTEM観察の際、FIB加工とイオンミリングにより薄片化調製された微小試料片Sを図1(a)のようにセットした場合、TEMの電子線の向きはY方向である。
【0014】
次に、本実施の形態の微小試料台10の製造工程について、図4〜図11に示す工程Aから工程Uまでを詳しく説明する。図4〜図11でも、図1〜3に対応させたXYZ直交座標で方向を表す。
本実施の形態の微小試料台10は、表面が(001)面の単結晶シリコンウエハを材料として作製され、微小試料台10の上下方向(Z方向)が単結晶シリコンウエハの厚さ方向となるように形成される。
【0015】
図4は、微小試料台10の製造工程A〜Dを説明する図であり、図4(a1)〜(a4)は微小試料台10が形成される単結晶シリコンウエハの部分平面図、図4(b1)〜(b4)は、それぞれ図4(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
工程Aでは、単結晶シリコンウエハ101を酸化炉中で熱酸化することにより、単結晶シリコンウエハ101の表裏両面にSiO層102a,102bを形成する。なお、シリコンウエハ101の表面は、単結晶Siの主面(100)を選ぶ。
工程Bでは、SiO層102の表面にスピンコータによりレジストを塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。
工程Cでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト103のパターン露光と現像を行う。図4(a3)に示すように、X方向に形成された5個のパターンを含む領域が1つの微小試料台10を構成する単位となるので、図4(a3)には3つの単位C1,C2,C3が示されている。
工程Dでは、レジスト103をマスクとしてSiO層102aをバッファード弗酸でウエットエッチングする。裏面全面に形成されていたSiO層102bは、ウエットエッチングにより除去される。
【0016】
図5は、微小試料台10の製造工程E〜Hを説明する図であり、図5(a1)〜(a4)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図5(b1)〜(b4)は、それぞれ図5(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
工程Eでは、残存するレジスト103をリムーバでウエットエッチングすることで除去する。
工程Fでは、シリコンウエハ101のSiO層102aが形成された面にスパッタリングによりAl膜104を成膜する。
工程Gでは、Al膜104の表面にスピンコータによりレジストを塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。
工程Hでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト105のパターン露光を行う。
【0017】
図6は、微小試料台10の製造工程I、Jを説明する図であり、図6(a1)、(a2)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図6(b1)、(b2)は、それぞれ図6(a1)、(a2)のII−II線に沿った部分断面図である。
工程Iでは、レジスト105をマスクとしてAl膜104を混酸P液でウエットエッチングする。SiO層102a、Al膜104およびレジスト105からなる3層がパターン状に残る。
工程Jでは、残存するレジスト105をリムーバでウエットエッチングすることで除去する。
【0018】
図7は、微小試料台10の製造工程Kを説明する図であり、図7(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図7(b)は、図7(a)のII−II線に沿った部分断面図、図7(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。図7(a)の部分平面図は、図7(c)の斜線部Cに対応する。この斜線部Cは図4(a3)に示したC1+C2+C3に相当する。
工程Kでは、図7(a)、(c)のY方向にダイシングを行い、シリコンウエハ101の厚さの途中までの深さd1の溝Y1とY2を形成する。溝Y1は、シリコンウエハ101中央部のみに形成するのに対し、溝Y2は、シリコンウエハ101の表面の端から端まで形成する。
【0019】
図8は、微小試料台10の製造工程Lを説明する図であり、図8(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図8(b)は、図8(a)のII−II線に沿った部分断面図、図8(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。図8(a)の部分平面図は、図8(c)の斜線部Cに対応する。
工程Lでは、図8(a)、(c)のX方向にダイシングを行い、シリコンウエハ101の厚さの途中までの深さd2(<d1)の溝X1〜X4を形成する。
【0020】
図9は、微小試料台10の製造工程Mを説明する図であり、図9(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図9(b)は、図9(a)のII−II線に沿った部分断面図、図9(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。図9(a)の部分平面図は、図9(c)の斜線部Cに対応する。
工程Mでは、工程Lで形成された溝X1〜X4の底面中央にダイシングにより溝X1a〜X4aを入れて段差を形成する。溝X1a〜X4aの深さd3は、シリコンウエハ101の裏面までは達しないが、溝Y1の深さd1より深く、溝X1a〜X4aの幅は溝X1〜X4よりも狭い。
【0021】
ここで、工程K〜Mで用いられるダイシングについて説明する。
図12は、図9に示す工程Mにおける微小試料台10を、溝X1、X1aを通るX−Z面で切断して見た部分側面図である。図示されるように、溝X1は、ダイシング装置の回転刃DB1の高さ位置をa1として回転刃DB1を+X方向に送ることにより形成される。同様に、溝X1aは、刃厚がDB1より薄い回転刃DB2の高さ位置をa2(<a1)として回転刃DB2を+X方向に送ることにより形成される。溝Y1は、回転刃の送り方向がY方向となり、同様に形成される。なお、シリコンウエハ101の厚さはtで表している。
【0022】
上記の溝加工は、図13に示す方法で行われる。図13は、ダイシングによる溝加工を概念的に説明する斜視図である。図2に示したように、溝Y2はシリコンウエハ101表面の端から端までダイシングして形成するが、溝Y1はシリコンウエハ101の中央部のみにダイシングする。このようなカットをチョッパー・トラバースカットと言う。溝Y1の形成では、位置b1で回転刃DBをシリコンウエハ101表面から深さd2だけ下降させ、回転刃DBを水平に送りながらカットする。位置b2で回転刃DBをシリコンウエハ101から上昇させてカットを終了する。2回目のチョッパー・トラバースカットを行うときは、回転刃DBを位置b2から別の位置に移動させる。2回目のカットでは、回転刃DBの送り方向は1回目と同じ方向でもよいし、逆方向でもよいが、同じ方向とするのがカット条件を設定する上で簡便である。
【0023】
図10は、微小試料台10の工程Mに続く製造工程N〜Qを説明する図であり、図10(a1)〜(a4)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図10(b1)〜(b4)は、それぞれ図10(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
工程Nでは、Al膜104のパターンをマスクとしてICP−RIE(inductively coupled plasma - reactive ion etching)により、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。このドライエッチングにより、シリコンウエハ101のAl膜104のパターンが存在しない領域は一様に厚さを減じ、溝Y1、溝X1〜X4、溝X1a〜X4aも一様に深くなるが、最も深い溝X1a〜X4aがシリコンウエハ101の裏面までは達しないようにエッチングを制御する。この工程で、図10(b2)に示されるように、多段状の微小試料台の原型となる3段のステップが形成される。
工程Oでは、Al膜104のパターンを混酸P液でウエットエッチングして除去する。
【0024】
工程Pでは、露出したSiO層102aのパターンをマスクとしてICP−RIEによりシリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。このドライエッチングにより、シリコンウエハ101のSiO層102aのパターンが存在しない領域は一様に厚さを減じる。溝Y1、溝X1〜X4、溝X1a〜X4aも一様に深くなるが、最も深い溝X1a〜X4aがシリコンウエハ101の裏面までは達しないようにエッチングを制御する。そして、3段のステップがそれぞれ掘り下げられるとともに、SiO層102aのパターンによる最上段のステップが新たに形成され、図10(b3)に示されるように、4段のステップが形成される。
工程Qでは、SiO層102aのパターンをバッファード弗酸でウエットエッチングして除去する。
【0025】
図11は、微小試料台10の製造工程R〜Uを説明する図であり、図11(a1)〜(a4)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図11(b1)〜(b4)は、それぞれ図11(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
工程Rでは、微小試料台10の構造が形成されつつあるシリコンウエハ101の熱酸化を行い、全面に熱酸化膜106を形成する。熱酸化膜106は、以後のウエットエッチングに対する保護膜となる。
工程Sでは、RIEによりシリコンウエハ101の裏面101Aに形成された熱酸化膜106をエッチング除去する。
工程Tでは、ウエットエッチングによりシリコンウエハ101の裏面側の層を除去する。このエッチングは、溝X1a〜X4aの底面に形成されている熱酸化膜106に到達した時点で中止する。
工程Uでは、シリコンウエハ101の表面に残っている熱酸化膜106をエッチング除去する。溝X1a〜X4aは、シリコンウエハ101の裏面側に突き抜け、微小試料台10同士の間にはX方向に延在する空間(図2に示す空間SPに同じ)が形成される。この段階で、溝Y1はシリコンウエハ101の裏面まで達していない。
【0026】
上述した工程A〜Uにより、図2に示したように、溝Y1の下方部分が連結リブ60となり、微小試料台10は、連結リブ60を介してX方向に一列に連なる。また、溝Y2も溝Y1と同様にシリコンウエハ101の裏面までは達せず、溝Y2の下方部分が接続リブ80となり、微小試料台10の列が、接続リブ80を介してX方向で外枠70に接続される。すなわち、本実施の形態の微小試料台集合体50は、外枠70で支持された構造となる。
【0027】
図14は、図2に示す微小試料台集合体50が形成されたシリコンウエハ101から個々の微小試料台10を分離する手順を説明する図である。
図14(a)は、図11の工程Uが終了した時のシリコンウエハ101であり、溝Y1,Y2、溝X1〜X4が形成されている。図14(b1)と図14(b1)の側面図である図14(b2)に示されるように、図中、上下2本の溝Y2の間隔にほぼ等しい幅の平板上の2枚の治具201でシリコンウエハ101を挟み込む。図14(c1)と図14(c1)の側面図である図14(c2)に示されるように、治具201を当接していない外枠70の上下部分71を溝Y2に沿って折って切り離す。上下部分71の切り離しにより、図14(d)に示される外枠70の左右部分72も分離する。最後に、図14(e)の側面図に示される連結リブ60を、例えばピンセットを使用して切り離すことにより、各微小試料台10を分離する。このような分離作業は、ユーザーが簡便に行うことができる。
【0028】
上記の製造工程A〜Uでは、3個の微小試料台10についての一連の作製手順を説明したが、実際の製造工程は、シリコンウエハ単位で行われる、いわゆるバッチ処理である。このバッチ処理では、フォトリソグラフィーやダイシングなどを用いるマイクロマシニングにより、1枚のシリコンウエハから多数の微小試料台10を一括で作製することができ、大幅な製造コストの削減が期待できるものである。さらに、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるように加工するので、材料を無駄なく使用できる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態の微小試料台10、微小試料台集合体50は、下記(1)〜(3)の作用効果を奏する。
(1)微小試料台10の分離作業は、ユーザーが使用直前に簡便に行うことができるので、微小試料台集合体50としてまとめて保管あるいは運搬でき、取り扱い上の利便性に優れる。
(2)マイクロマシニング技術によりシリコンウエハから微小試料台10を一体で多数同時に作製できるので、1個当りの製造コストを大幅に削減できる。また、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるので、材料取りに有利である。
(3)厚さ方向に対称形状を呈するので、厚さを薄く形成してもバランスが保たれ、FIB加工中や加工後の形状安定性が高い。さらに、対称構造であるので、非対称のものと比べて製造プロセスを単純化できる。
【0030】
上記の実施の形態による微小試料台10、微小試料台集合体50には様々な変形が考えられる。例えば、連結リブ60、接続リブ80の厚さは、それぞれ溝Y1、Y2の切り込み深さを変えることによって調整できる。リブの厚さが厚いほど、分離し難いが、微小試料台集合体50としての強度的な安定性は向上する。
【0031】
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。例えば、材料としてはシリコンウエハに限らず、各種の平板状素材を使用することができる。また、ダイシング処理を行わず、エッチング処理のみで溝や隙間空間を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る微小試料台を台座メッシュに貼り付けた状態を模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る微小試料台集合体が形成された単結晶シリコンウエハを模式的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る微小試料台集合体の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】実施の形態に係る微小試料台の製造工程A〜Dを説明する図であり、図4(a1)〜(a4)は材料であるシリコンウエハ101の部分平面図、図4(b1)〜(b4)はII−II線に沿った部分断面図である。
【図5】実施の形態に係る微小試料台の製造工程E〜Hを説明する図であり、図5(a1)〜(a4)は材料であるシリコンウエハ101の部分平面図、図5(b1)〜(b4)はII−II線に沿った部分断面図である。
【図6】実施の形態に係る微小試料台の製造工程I、Jを説明する図であり、図6(a1)、(a2)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図6(b1)、(b2)は、それぞれ図6(a1)、(a2)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図7】実施の形態に係る微小試料台の製造工程Kを説明する図であり、図7(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図7(b)は、図7(a)のII−II線に沿った部分断面図、図7(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。
【図8】実施の形態に係る微小試料台の製造工程Lを説明する図であり、図8(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図8(b)は、図8(a)のII−II線に沿った部分断面図、図8(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。
【図9】実施の形態に係る微小試料台の製造工程Mを説明する図であり、図9(a)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図9(b)は、図9(a)のII−II線に沿った部分断面図、図9(c)は、単結晶シリコンウエハの平面図である。
【図10】実施の形態に係る微小試料台の工程Mに続く製造工程N〜Qを説明する図であり、図10(a1)〜(a4)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図10(b1)〜(b4)は、それぞれ図10(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図11】実施の形態に係る微小試料台の製造工程R〜Uを説明する図であり、図11(a1)〜(a4)は単結晶シリコンウエハの部分平面図、図11(b1)〜(b4)は、それぞれ図11(a1)〜(a4)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図12】微小試料台10を溝X1、X1aを通るX−Z面で切断して見た部分側面断面図である。
【図13】ダイシングによる溝加工を概念的に説明する斜視図である。
【図14】図2に示す微小試料台集合体50が形成されたシリコンウエハ101から個々の微小試料台10を分離する手順を説明する図である。
【図15】図3に示される微小試料台10の縦断面図であり、段差による傾斜角度を示す。
【符号の説明】
【0033】
1〜5:突状部分 10:微小試料台
11:第1段 12:第2段
13,23,33,43,53:第3段
14,24,34,44,54:第4段
50:微小試料台集合体 60:連結リブ
70:外枠 80:接続リブ
100:台座メッシュ 101:シリコンウエハ
102:SiO層 103,105:レジスト
104:Al膜 106:熱酸化膜
DB,DB1,DB2:回転刃 S:微小試料片
X1〜X4、X1a〜X4a、Y1,Y2:溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、基部となる第1段と、前記微小試料が固定される固定部となる最上段とが多段形状とされた微小試料台を複数、平板状の素材の面内で2次元的に配列して互いに連結されていることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の微小試料台集合体において、
前記平板状の素材はシリコンウエハであり、前記基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、前記微小試料台の各々はマイクロマシニング技術により多段形状に形成されていることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項3】
請求項2に記載の微小試料台集合体において、
複数の微小試料台を列状に連結して成る列状体を複数本備え、各列状体の間にはシリコンウエハが存在しない隙間空間を形成し、各列の両端部は前記シリコンウエハの周縁部と接続されていることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項4】
請求項3に記載の微小試料台集合体において、
前記各列状体の間の前記隙間空間は、前記シリコンウエハに対して厚さ方向にダイシング処理した後、形成された溝をエッチング処理により除去して形成されることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項5】
請求項3または4に記載の微小試料台集合体において、
前記列状体をなす各微小試料台の間を接続する連結部における前記シリコンウエハの厚さ方向の厚みと、前記列状体を前記シリコンウエハの周縁部に接続する接続部における前記シリコンウエハの厚さ方向の厚みとは、前記シリコンウエハに対して、ダイシング処理とエッチング処理を施して制御されていることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の微小試料台集合体において、
前記連結部および接続部は、前記基部の高さよりも薄く形成されていることを特徴とする微小試料台集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−33376(P2007−33376A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220512(P2005−220512)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】