微生物における産物の生産を向上させるための方法および組成物
微生物におけるエタノールなどの燃料産物などの産物の生産を向上させるための方法および組成物を提供する。特に、クロストリジウム・フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子を利用してエタノール生産を向上させるための方法および組成物を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年7月28日に出願された米国仮特許出願第61/084,233号、2009年7月13日に出願された米国仮特許出願第61/225,184号、および2009年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/228,922号からの優先権の恩典を主張し、上記の全ての全容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、微生物学、分子生物学およびバイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本発明は微生物におけるエタノールおよび水素などの産物の生産を向上させるための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
再生可能かつ持続可能なバイオマス資源から使用可能なエネルギーを生産するための方法および組成物の開発に関心が払われている。炭水化物の形態のエネルギーは、廃棄バイオマス、および専用エネルギー作物、例えばトウモロコシもしくは小麦などの穀物またはスイッチグラスなどの草で見出される。
【0004】
現在の課題は、炭水化物を使用可能なエネルギー形態に変換するための実行可能で経済的な戦略を開発することである。炭水化物から有用なエネルギーを得るための戦略は、エタノールおよび他のアルコールの生産、炭水化物から水素への変換、ならびに燃料電池を介した炭水化物から電気エネルギーへの直接変換を含む。バイオマスからエタノールを得るための戦略例は、DiPardo, Journal of Outlook for Biomass Ethanol Production and Demand (EIA Forecasts), 2002(非特許文献1); Sheehan, Biotechnology Progress, 15:8179, 1999(非特許文献2); Martin, Enzyme Microbes Technology, 31:274, 2002(非特許文献3); Greer, BioCycle, 61-65, April 2005(非特許文献4); Lynd, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 66:3, 506-577, 2002(非特許文献5);およびLynd et al. in "Consolidated Bioprocessing of Cellulosic Biomass: An Update", Current Opinion in Biotechnology, 16:577-583, 2005(非特許文献6)により記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DiPardo, Journal of Outlook for Biomass Ethanol Production and Demand (EIA Forecasts), 2002
【非特許文献2】Sheehan, Biotechnology Progress, 15:8179, 1999
【非特許文献3】Martin, Enzyme Microbes Technology, 31:274, 2002
【非特許文献4】Greer, BioCycle, 61-65, April 2005
【非特許文献5】Lynd, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 66:3, 506-577, 2002
【非特許文献6】Lynd et al. in "Consolidated Bioprocessing of Cellulosic Biomass: An Update", Current Opinion in Biotechnology, 16:577-583, 2005
【発明の概要】
【0006】
概要
本出願は、例えばエタノールや水素の燃料などの産物の生産に有用な基質上での増殖に関与すると予測される産物をコードするクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)遺伝子の同定に特に基づくものである。本明細書で同定される遺伝子は他の微生物において異種発現させ、新規なまたは強化された機能を提供し得る。また、該遺伝子は、外来導入された核酸から、例えばC.フィトフェルメンタンスで発現させ、強化された機能を提供し得る。
【0007】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、該単離核酸は表6から選択され得る。具体的な態様において、該ヒドロラーゼは、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0430、Cphy3854、Cphy0857、Cphy0694、およびCphy1929からなる群より選択される。Cphy3367の記号表示はJGI番号を表し、それはC.フィトフェルメンタンスについてのGenBank記録上の米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)遺伝子座タグを参照する。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、ヒドロラーゼをコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0008】
幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つのATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、単離核酸は表7から選択され得る。具体的な態様において、ABC輸送体は、Cphy3854、Cphy3855、Cphy3857、Cphy3858、Cphy3859、Cphy3860、Cphy3861およびCphy3862からなる群より選択される。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、ABC輸送体をコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0009】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、単離核酸は表8から選択され得る。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、転写調節因子をコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0010】
幾つかの態様は、本明細書に記載するヒドロラーゼ、ABC輸送体、および転写調節因子をコードする核酸の任意の組み合わせを含むポリヌクレオチド・カセットを含む。一態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸および少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸を含み得る。他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。更なる他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸、および少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸、および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。
【0011】
幾つかの態様は、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチドを含む発現カセットおよび該ポリヌクレオチド・カセットに機能的に連結された調節配列を含む。
【0012】
幾つかの態様は、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、および/または発現カセットを含む組み換え微生物を含む。具体的な態様において、組み換え微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・セルロリティキュム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・サーモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)、クロストリジウム・パピロソルベンス(Clostridium papyrosolvens)、クロストリジウム・セロビオパルム(Clostridium cellobioparum)、クロストリジウム・フンガテイ(Clostridium hungatei)、クロストリジウム・セルロシ(Clostridium cellulosi)、クロストリジウム・ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジウム・テルミティディス(Clostridium termitidis)、クロストリジウム・サーモコプリエ(Clostridium thermocopriae)、クロストリジウム・セレレクレセンス(Clostridium celerecrescens)、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム(Clostridium polysaccharolyticum)、クロストリジウム・ポプレティ(Clostridium populeti)、クロストリジウム・レントセルム(Clostridium lentocellum)、クロストリジウム・チャルタタビデュム(Clostridium chartatabidum)、クロストリジウム・アルドリチ(Clostridium aldrichii)、クロストリジウム・ヘルビヴォランス(Clostridium herbivorans)、アセチヴィブリオ・セルロリティクス(Acetivibrio cellulolyticus)、バクテロイデス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens)、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム(Caldicellulosiruptor saccharolyticum)、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、フィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)、イウバクテリウム・セルロソルベンス(Eubacterium cellulosolvens)、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、アナエロセルム・サーモフィルム(Anaerocellum thermophilum)、ハロセラ・セルロリティカ(Halocella cellulolytica)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)およびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)からなる群より選択され得る。
【0013】
幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする単離タンパク質を含む。幾つかの態様において、エタノールを生産する方法が提供される。このような方法は、微生物を培養する段階、基質を供給する段階、および本明細書に記載する任意の単離タンパク質を供給する段階を含む。
【0014】
幾つかの態様は、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼをコードする配列、C.フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする配列、およびC.フィトフェルメンタンス転写調節因子をコードする配列の一つまたは複数、2つ以上、または3つ全てを含む単離ポリヌクレオチド・カセットを含む。幾つかの態様において、該ヒドロラーゼは、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該ABC輸送体は、
からなる群より選択される。
【0015】
幾つかの態様は、本明細書に開示する核酸、例えばクロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼをコードする外来性核酸、C.フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする外来性核酸、およびC.フィトフェルメンタンス転写調節因子をコードする外来性核酸の一つまたは複数、2つ以上、または3つ全てを含む組み換え微生物を含む。幾つかの態様において、該ヒドロラーゼは、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該ABC輸送体は、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクター・スクシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、ハロセラ・セルロリティカ、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムおよびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムからなる群より選択される。
【0016】
幾つかの態様は、本明細書に記載する少なくとも一つの組み換え微生物を培養する段階を含むエタノール生産方法を含む。このような態様は微生物に基質を供給する段階も含み得る。具体的な態様において、該基質は、おがくず、木粉、木材パルプ、紙パルプ、紙パルプ廃棄蒸気、スイッチグラスなどの草、ハマナなどのバイオマス植物および作物、藻類、もみ殻、バガス、ジュート、葉、マクロ藻類物質、微細藻類物質、刈り取った草、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ粉、発酵滓、およびペクチンからなる群より選択され得る。ある態様において、基質はペクチンであり得る。
【0017】
幾つかの態様は、ヒドロラーゼの基質を処理する方法であって、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼを外因的に発現する微生物を提供する段階、および基質が処理され産物を形成するように微生物にヒドロラーゼの基質を供給する段階を含む方法を含む。幾つかの態様において、微生物は産物を輸送する(例えば取り込むまたは運び出す)クロストリジウム・フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体を外因的に発現する。
【0018】
幾つかの態様は、リグノセルロース系バイオマスならびに該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物を含むバイオ燃料を生産するための製品を含み、微生物は、一つまたは複数のセルラーゼ(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の強化された活性を提供するために改変される。幾つかの態様において、微生物は5炭糖および6炭糖の直接発酵ができる。幾つかの態様において、微生物は細菌であり、例えばクロストリジウム属の種、例えばクロストリジウム・フィトフェルメンタンスである。幾つかの態様において、微生物は、一つまたは複数のセルラーゼの活性を強化する一つまたは複数の異種ポリヌクレオチドを含む。
【0019】
幾つかの態様は、炭素質バイオマスならびに該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物を含むバイオ燃料を生産するための製品を含み、該微生物は、一つまたは複数のセルラーゼ(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の強化された活性を提供するために改変される。幾つかの態様において、微生物は発酵最終産物を生産できる。幾つかの態様において、発酵最終産物の大部分はエタノールである。幾つかの態様において、発酵最終産物は、乳酸、酢酸、および/またはギ酸を含む。幾つかの態様において、微生物は一つまたは複数の複合炭水化物を取り込むことができる。幾つかの態様において、バイオマスは、単量体の炭水化物と比べて、より高濃度のオリゴマーの炭水化物を有する。
【0020】
幾つかの態様は、(a)炭素質バイオマスと該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物とを接触させる段階であって、微生物が、一つまたは複数のセルラーゼ酵素(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の活性を強化するために改変される、段階;ならびに、(b)バイオ燃料を生産するために該加水分解および発酵のための時間を十分に取る段階を含むバイオ燃料の生産工程を含む。幾つかの態様において、微生物は一つまたは複数の複合炭水化物を取り込むことができる。幾つかの態様において、バイオマスは単量体の炭水化物と比べてより高濃度のオリゴマーの炭水化物を有する。幾つかの態様において、加水分解は、単量体の炭水化物と比べて、より高濃度のセロビオースおよび/またはより大きなオリゴマーをもたらす。
【0021】
本明細書で用いられる節の見出しは、ただ構成目的のためだけであり、決して記載対象を限定するものと解釈されない。特許、特許出願、記事、本、論文、およびインターネット・ウェブページを含むがこれらに限定されず、全ての文献および本出願で引用される同種題材は、いかなる目的にでも全体として参照により明確に組み入れられる。組み入れられる参照文献の用語の定義が本教示で与えられる定義と異なるようである場合、本教示で与えられる定義に統制される。僅かで非実質的な偏差は本明細書の本教示の範囲内であるとして、本教示で論じられる温度、濃度および時間などの測定値の前に「約」が含意されると理解されたい。この出願において、単数形の使用は、特に別段の記載がない限り、複数形も含む。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、限定することを意図しない。前述の概要も下記の詳細な説明もただの例示および説明にすぎず発明を制限するものではない。「a」および「an」の冠詞は、該冠詞の文法上の目的語の一つまたは2以上(即ち、少なくとも一つ)を言及するために本明細書で用いられる。例として、「要素(an element)」は一つの要素または1より多い要素を意味する。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書に記載する本発明と関連して用いられる科学用語および専門用語は当業者により通常理解される意味を有する。さらに、他に文脈から必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。一般に、細胞培養および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質化学およびオリゴヌクレオチド化学またはポリヌクレオチド化学ならびに本明細書に記載するハイブリダイゼーションと関連して活用される命名法、ならびに上記の技術は当技術分野において周知であり通常使用される。例えば、核酸の精製および調製、化学分析、組み換え核酸、ならびにオリゴヌクレオチド合成のために標準的な技術が用いられる。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野において通常遂行されるように、または本明細書に記載するように実施される。本明細書に記載する技術および手順は、一般に、当技術分野において周知の従来法に従って、ならびに本明細書にわたって引用および論議される種々の一般参照文献およびより特定の参照文献に記載されるように、実施される。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 2000)を参照のこと。関連して活用される命名法、ならびに本明細書に記載の実験手順および技術は、当技術分野において周知であり通常用いられる。
【0023】
本明細書で提供される態様に従って利用されるように、下記の用語は、別段の指示がない限り、下記の意味を有すると理解される。
【0024】
「ヌクレオチド」とは、モノマー単位としてまたは核酸内のヌクレオシドのリン酸エステルを指す。「ヌクレオチド5'-三リン酸」は、5'位の三リン酸エステル基をもつヌクレオチドを指し、特にリボース糖の構造特徴を指摘するために「NTP」または「dNTP」および「ddNTP」と表示されることもある。三リン酸エステル基は、種々の酸素の硫黄置換、例えばα-チオ-ヌクレオチド5'-トリホスフェートを含み得る。核酸化学の概説について、Shabarova, Z. and Bogdanov, A. Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, VCH, New York, 1994を参照のこと。
【0025】
「核酸」および「核酸分子」という用語は、DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)などの天然核酸配列、人工核酸、上記の類似体、または上記の組み合わせを指す。
【0026】
本明細書で用いられるように、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、相互に交換可能に用いられ、ヌクレオチド・モノマーの一本鎖および二本鎖の高分子(核酸)を意味し、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合により結合する2'-デオキシリボヌクレオチド(核酸)およびリボヌクレオチド(RNA)、例えば3'-5'および2'-5'逆転結合、例えば5'-5'分岐構造、または類似核酸を含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、H+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などの関連する対イオンを有する。ポリヌクレオチドは、全てデオキシリボヌクレオチド、全てリボヌクレオチド、またはそのキメラ混合物からなり得る。ポリヌクレオチドは核酸塩基および糖類似体を含み得る。ポリヌクレオチドは、通常、少数のモノマー単位から、例えば、より一般に頻繁に当技術分野においてオリゴヌクレオチドと称される場合は5〜40から、数千のモノマー・ヌクレオチド単位までの大きさに及ぶ。別段の表示がない限り、ポリヌクレオチド配列が示されている場合はいつでも、ヌクレオチドは左から右へ5'から3'の順であり、且つ「A」はデオキシアデノシンを表示し、「C」はデオキシシチジンを表示し、「G」はデオキシグアノシンを表示し、および「T」はチミジンを表示することが理解されよう。
【0027】
「燃料および/または他の化学物質」は、炭化水素、水素、メタン、アルコールなどのヒドロキシ化合物(例えば、エタノール、ブタノール、プロパノール、メタノールなど)、アルデヒドおよびケトンなどのカルボニル化合物(例えば、アセトン、ホルムアルデヒド、1-プロパナールなど)、有機酸、エステルなどの有機酸の誘導体(例えば、ろうエステル、グリセリドなど)、ならびにセルラーゼ、ポリサッカラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、リグニナーゼ、およびヘミセルラーゼなどの酵素により産生される1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、乳酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、およびピルビン酸を含むがこれらに限定されない他の官能基を含む化合物を含むがこれらに限定されない液体または気体の燃料として適切な化合物を指すために本明細書で用いられる。
【0028】
「プラスミド」という用語は環状の核酸ベクターを指す。一般に、プラスミドは、宿主細胞DNA内にプラスミドが組み込まれることなく、細菌(または時には真核)細胞でプラスミドの多数のコピーが産生される複製起点を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「構築物」という用語は、特定のヌクレオチド配列の発現目的で生成した、または他の組み換えヌクレオチド配列の構築において使用されるべき、組み換えヌクレオチド配列、一般に組み換え核酸分子を指す。一般に、「構築物」とは組み換え核酸分子を指すために本明細書で用いられる。
【0030】
「発現カセット」とは、宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を可能にする一式のポリヌクレオチド要素を指す。通常、発現カセットはプロモーターおよび転写される異種または天然のポリヌクレオチド配列を含む。発現カセットまたは構築物は、例えば転写終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサー要素も含み得る。
【0031】
「発現ベクター」は細胞内でポリヌクレオチドの発現を可能にするベクターを意味する。ポリヌクレオチドの発現は転写および/または転写後の事象を含む。「発現構築物」とは、発現ベクターに存在する発現配列と機能的に連結される位置付けであるような様式で対象のヌクレオチド配列が挿入された発現ベクターである。
【0032】
「オペロン」とはメッセンジャーRNA(mRNA)を産生する一式のポリヌクレオチド要素を指す。通常、オペロンはプロモーターおよび一つまたは複数の構造遺伝子を含む。通常、オペロンは、一つのポリシストロン性mRNA、即ち2以上のタンパク質をコードする唯一つのmRNA分子に転写される一つまたは複数の構造遺伝子を含む。幾つかの態様において、オペロンは、オペロンの構造遺伝子の活性を調節するオペレーターも含み得る。
【0033】
本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語は、本発明の方法および組成物を用いて形質転換される細胞を指す。一般に、本明細書で用いられる宿主細胞は、対象の核酸が導入される微生物細胞を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「形質転換」という用語は、永続的なまたは一時的な遺伝子変化を指し、例えば宿主以外の核酸配列の組み込み後に細胞に誘導される永続的な遺伝子変化を指す。
【0035】
本明細書で用いられる「形質転換細胞」という用語は、組み換え核酸技術によって、対象となる遺伝子産物、例えばRNAおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子が導入された(またはその祖先に導入された)細胞を指す。
【0036】
本明細書で用いられる「遺伝子」という用語は、宿主ゲノムの任意および全ての不連続なコード領域、または機能的RNAのみ(例えば、tRNA、rRNA、リボザイムなどの調節RNA)をコードする領域を指し、関連する非コード領域および調節領域を含む。「遺伝子」という用語は、特定のポリペプチドをコードするオープン・リーディング・フレーム、イントロン、および発現の調節に関与する隣接の5'および3'非コード・ヌクレオチド配列をその範囲内に含む。この点で、遺伝子は、天然で所定の遺伝子と関連するプロモーター、エンハンサー、および/または終結シグナルなどの制御シグナル、または異種の制御シグナルをさらに含み得る。遺伝子配列は、cDNAまたはゲノム核酸またはその断片であり得る。遺伝子は、染色体外維持のため、または宿主への組み込みのため、適切なベクターに導入され得る。
【0037】
本明細書で用いられる「対象となる遺伝子」、「対象となるヌクレオチド配列」、「対象となるポリヌクレオチド」、または「対象となる核酸」という用語は、宿主細胞での発現(例えば、標的細胞におけるタンパク質または他の生体分子(例えばRNA産物)の産生)に望ましいタンパク質または他の分子をコードする任意のヌクレオチドまたは核酸配列を指す。対象となるヌクレオチド配列は、発現を促進する他の配列、例えばプロモーターと機能的に連結され得る。
【0038】
本明細書で用いられる「プロモーター」という用語は、機能的に連結される核酸配列の直接転写に十分な最小核酸配列を指す。本明細書で用いられる「誘導プロモーター」という用語は、転写アクチベーターと結合した場合に転写活性のあるプロモーターを指し、該アクチベーターは次いで、例えば特定の化学シグナルの存在、または誘導プロモーターと転写アクチベーターとの結合に作用するおよび/もしくは転写アクチベーター自体の機能に作用する化学シグナルの組み合わせなど、特定条件の下で活性化される。
【0039】
本明細書で用いられる「オペレーター」、「制御配列」、または「調節配列」という用語は、特定の宿主生物において機能的に連結されるコード配列の発現を調節する核酸配列を指す。原核生物に適した制御配列は、例えばプロモーター、任意でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。
【0040】
「機能的に接続され」または「機能的に連結され」などは、機能的関係におけるポリヌクレオチド要素の連結を意味する。核酸配列は、他の核酸配列と機能的関係に置かれた場合に「機能的に連結され」ている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に作用する場合、コード配列に機能的に連結される。幾つかの態様において、機能的に連結されるとは、連結される核酸配列が通常隣接することを意味し、2つのタンパク質コード領域をつなぐことが必要な場合には隣接し且つリーディング・フレーム内であることを意味する。RNAポリメラーゼが2つのコード配列を一つのmRNAに転写する場合、コード配列は他のコード配列と「機能的に連結され」ており、該mRNAは次いで両コード配列から誘導されるアミノ酸を有する一つのポリペプチドに翻訳される。発現配列が最終的にプロセシングされ所望のタンパク質を産生する限り、コード配列は互いに隣接する必要はない。
【0041】
プロモーターを転写可能なポリヌクレオチドに「機能的に接続する」とは、転写可能なポリヌクレオチドをプロモーターの調節制御下に置くことを意味し、該プロモーターは次いで転写および任意でポリヌクレオチドの翻訳を制御する。異種のプロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、プロモーターまたはその変異体を転写可能なポリヌクレオチドの転写開始部位から隔てて配置することが通常であり、プロモーターと、該プロモーターがその自然環境で制御する遺伝子、即ち該プロモーターが由来する遺伝子との間の距離とほぼ同じである。当技術分野において知られるように、この距離の幾つかの変異は機能を喪失することなく適応し得る。同様に、オペレーター、エンハンサーなどの調節配列要素の典型的な位置決めは、その制御下に置かれるべき転写可能なポリヌクレオチドに関して、その自然環境における該要素の位置決めにより、即ち該要素が由来する遺伝子に規定される。
【0042】
「培養する」とは、細胞または生物が全部ではないが幾つかの生物学的過程を実施し得る条件下で細胞または生物をインキュベーションすることを表す。例えば、培養される細胞は増殖または生殖し得る、または生存能力はないが複製、転写、翻訳などの生物学的および/または生化学的な過程を依然実施し得る。
【0043】
「トランスジェニック生物」は、その細胞の一部に存在する、またはその生殖系核酸内に安定して組み込まれる、非内因性(即ち異種の)核酸配列を有するヒト以外の生物(例えば単細胞生物(例えば微生物)、哺乳動物、非哺乳動物(例えば線虫またはショウジョウバエ(Drosophila)))を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる「バイオマス」という用語は、生体物質または生物物質の集団を指し、より広範に天然および加工物の両方、ならびに天然有機物を含む。
【0045】
「組み換え」とは、合成されたまたはインビトロで別の方法で操作されたポリヌクレオチド(「組み換えポリヌクレオチド」)、および細胞または他の生体系において該ポリヌクレオチドによりコードされる遺伝子産物を生産するために組み換えポリヌクレオチドを用いる方法を指す。例えば、クローニングされたポリヌクレオチドは細菌プラスミドなどの適切な発現ベクター内に挿入され、プラスミドは適切な宿主細胞を形質転換するために用いられ得る。組み換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組み換え宿主細胞」または「組み換え細菌」と呼ばれる。遺伝子は次いで組み換え宿主細胞で発現し、例えば「組み換えタンパク質」を産生する。さらに、組み換えポリヌクレオチドは、非コード機能、例えばプロモーター、複製起点、またはリボソーム結合部位に役立ち得る。
【0046】
「相同組み換え」という用語は、核酸配列の類似性に基づく2つの核酸分子間の組み換え過程を指す。該用語は相互および非相互の組み換え(遺伝子変換とも呼ばれる)の両方を包含する。その上、組み換えは等価または非等価な交差事象の結果であり得る。等価な交差は2つの等価な配列間または染色体領域間で起きる一方、非等価な交差は非等価な配列または染色体領域の同一な(または実質的に同一な)分節間で起きる。不等交差は通常遺伝子の重複および欠失をもたらす。相同組み換えに関与する酵素および機構の記載については、Watson et al., Molecular Biology of the Gene pp 313-327, The Benjamin/Cummings Publishing Co. 4th ed. (1987)を参照のこと。
【0047】
「非相同または無作為な組み込み」という用語は、核酸が相同組み換えに関与しないゲノム内に組み込まれる任意の過程を指す。それは取り込みが多数の遺伝子位置のいずれかで起き得る無作為の過程のように見える。
【0048】
「異種ポリヌクレオチド配列」または「異種核酸」は、2つのポリヌクレオチド配列が互いに自然界と同じ関係で配列されていないような様式で、プロモーター配列などの他のポリヌクレオチドと機能的に関連するポリヌクレオチドを指す相対的な語である。異種ポリヌクレオチド配列は、例えば異種核酸と機能的に連結されたプロモーター、および組み換え宿主細胞内への形質転換のために異種ベクター内に挿入されるその天然プロモーターを含むポリヌクレオチドを含む。異種ポリヌクレオチド配列は、形質転換技術によって宿主細胞に導入されるため、外因性とみなされる。しかしながら、異種ポリヌクレオチドは外来起源または同起源から生じ得る。異種ポリヌクレオチド配列の修飾は、例えばポリヌクレオチドを制限酵素で処理し調節要素と機能的に連結され得るポリヌクレオチド配列を生成することにより、生じ得る。修飾は部位特異的突然変異誘発などの技術によっても生じ得る。
【0049】
「内因性発現した」という用語は、宿主細胞原産であり且つ宿主細胞で天然に発現するポリヌクレオチドを指す。
【0050】
「発現能力のある」とは、内因性および/または外因性のポリヌクレオチド発現に十分な細胞環境を提供する宿主細胞を指す。
【0051】
この出願は、2008年2月27日に出願された米国仮出願第61/032,048号;2009年2月27日に出願された国際出願第PCT/US2009/35597号;2009年4月6日に出願された米国出願第12/419,211号;2008年6月11日に出願された米国仮出願第61/060,620号;および2009年6月11日に出願された米国出願第12/483,118号に関し、上記のそれぞれは目的に応じて全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
下記の図面、記載、および実施例は、本発明のある態様を詳細に説明する。当業者はその範囲に包含される多数の変形および修飾が存在することを認識するであろう。従って、ある態様の記載が本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1はポリヌクレオチドについての遺伝子組み合わせの一連の例図である。Rは転写調節配列を表し;A、BおよびCはATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする配列を表し;GHはグリコシド・ヒドロラーゼをコードする配列を表し;ならびにSはシグナル配列を表す。
【図2】図2はC.フィトフェルメンタンスにおける遺伝子組み合わせの一連の具体例図である。数字はC.フィトフェルメンタンスの染色体上における特定配列の位置を表す。
【図3】図3はC.フィトフェルメンタンスのAffymetrix社マイクロアレイ設計の図である。ダッシュ記号はマイクロアレイ上で合成される24塩基のプローブを表す。ボックス記号は、予測されるオープン・リーディング・フレーム、例えばタンパク質コード領域を表す。11の24塩基プローブはオープン・リーディング・フレーム(ORF)ごとのレベルを測定するために使用される。遺伝子間領域は一つのDNA塩基により分離される24塩基プローブによりDNAの両側においてカバーされる。
【図4】図4はmRNA転写産物境界の決定方法の図である。仮想mRNA転写産物は対応する予測ORFの5'および3'に伸びる非コード領域を含む。プローブはダッシュ記号により表される。この例において、ORFの左(5')の3つのプローブおよびORFの右(3')の2つのプローブはmRNA転写産物の境界を示唆する。
【図5】図5はC.フィトフェルメンタンスの染色体を表現したものである。
【図6】図6はC.フィトフェルメンタンスのゲノムに沿った距離に応じた1kbゲノム分節のGC含量を示す図である。GC含量が>50%の6つのゲノム島は番号が付けられている。これらの6つの領域は合計16の1kb領域からなる。
【図7】図7は、C.フィトフェルメンタンス株の近隣結合樹形図および16S rRNA遺伝子配列に基づくクロストリジウム綱内の関連分類群である。クラスターIは疾病を惹起するクロストリジウムを含み、クラスターIIIはセルロース分解性のクロストリジウムを含み、ならびにクラスターXIVは腸微生物を含み、メタゲノム配列はクロストリジウム属の中にある。結節の数字は1000の再サンプリングされたデータセットの近隣結合分析に基づくブートストラップ・サポートのレベル(百分率)である。枯草菌(Bacillus subtilis)は外集団として使用された。バー、位置ごとの4ヌクレオチド置換。
【図8】図8はクロストリジウム綱の他の配列決定された細菌ゲノムにおけるクロストリジウム・フィトフェルメンタンスISDg CDSのベスト・マッチ(0.01のe値カットオフ)の数を示す円グラフである。
【図9】図9Aおよび9BはBLASTPを用いたグリコシド・ヒドロラーゼ(GH)をコードする遺伝子(9A)および異なる生物の全遺伝子(9B)の比較を示す円グラフである。
【図10】図10はグリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリーGH9ドメインの分子系統学を示す近隣結合樹形図である。
【図11】図11はグリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリーGH5ドメインの分子系統学を示す近隣結合樹形図である。
【図12】図12は推定ヒドロラーゼの例を示す概略図である。幾つかのヒドロラーゼは細胞外または膜結合であり得る。GH:グリコシド・ヒドロラーゼ;CBM:炭水化物結合ドメイン。
【図13】図13はC.フィトフェルメンタンスにおけるキシロースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図14】図14はC.フィトフェルメンタンスにおけるフコースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図15】図15はC.フィトフェルメンタンスにおけるラムノースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図16】図16はC.フィトフェルメンタンスにおけるラミナリンの調節、取り込みおよび代謝の描写である。
【図17】図17はC.フィトフェルメンタンスにおけるセロビオースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図18】図18はpIMP-Cphyについてのプラスミドマップの描写である。
【図19】図19はpCphyP3510-3367についてのプラスミドマップの描写である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本明細書に開示する種々の態様は、一般に、様々な発酵条件下で増殖する場合に燃料を生産できる組み換え微生物を作製するための組成物および方法に向けられる。一般に、組み換え微生物は効率良く且つ安定してエタノールなどの燃料および関連化合物を生産でき、その結果、高収率の燃料がセルロースなどの比較的安価な生バイオマス物質から提供される。幾つかの態様において、組み換え微生物はリグノセルロースなどの安価な生バイオマス物質の変換を効率良く且つ安定して触媒し、糖および多糖、ならびに関連化合物を産生し得る。
【0055】
現在、燃料を生産できる組み換え生物を利用する技術は数に限りがある。種々の技術は、大抵、低燃料収率、高額、および望ましくない副産物をもたらし得る課題を有する。例えば、幾つかの公知技術は原料としてトウモロコシ穀粒および他の穀類を利用する。しかしながら、穀物供給および価格に関する飼料および食料需要の競合は最終的にトウモロコシおよび他の穀類からのエタノール生産の拡大を制限し得る。他の原料源は糖化および発酵によってエタノールが生産され得るリグノセルロースを含む(Lynd, L. R., Cushman, J. H., Nichols, R. J. & Wyman, C. E. Fuel ethanol from cellulosic biomass,"Science 251, 1318-1323 (1991))。リグノセルロースはバイオマスの主成分であり地球上で最も豊富な生体物質であるため、リグノセルロース系バイオマスに由来する燃料は、従って、世界的に経済、エネルギー、および環境を持続するための潜在力を有する再生可能なエネルギー代替物である。しかしながら、従来のリグノセルロース系エタノール生産は、外因性糖分解酵素を用いたリグノセルロース系物質の生産および前処理、前処理されたバイオマスに存在する多糖の加水分解、ならびにヘキソースおよびペントース糖の別個の発酵を含む、高額で且つ複雑な多段階工程を要する。
【0056】
一態様において、本発明の方法および組成物は、セルラーゼを含むがこれに限定されない一つまたは複数の酵素の酵素活性を強化するために微生物を遺伝的に改変または操作する段階を含む。このような改変例は、一つまたは複数の酵素の発現を増大させるために内因性核酸調節要素を改変する段階(例えば、標的酵素をコードする遺伝子を強力なプロモーターと機能的に連結する段階)、強化された酵素活性を提供するために核酸分子の追加コピーを微生物に導入する段階、一つまたは複数の酵素をコードする遺伝子を誘導プロモーターまたはその組み合わせと機能的に連結する段階を含む。
【0057】
本発明の種々の微生物は一つまたは複数のセルラーゼまたはセルロース処理に関連する酵素の活性を強化するために改変され得る。セルラーゼの分類は、通常、類似または同一の活性をもつファミリーを結成する酵素を一つにまとめることに基づくが、同一の基質特異性である必要はない。これらの分類の一つはCAZYシステム(CAZYは炭水化物に活性な酵素(Carbohydrate-Active enZymes)を表す)であり、例えば列挙する115の異なるグリコシド・ヒドロラーゼ(GH)が存在する場合、GH1からGH155まで命名される。異なるタンパク質ファミリーのそれぞれは、通常、対応する酵素活性を有する。このデータベースはセルロースにもヘミセルラーゼにも活性な酵素を含む。さらに、クロストリジウム・フィトフェルメンタンスの全注釈付きのゲノムはwww.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrezのWorld Wide Webで入手できる。
【0058】
本明細書に記載する幾つかの態様は、リグノセルロース系バイオマスが一段階でエタノールに発酵され得る方法および組成物を提供することによりリグノセルロース系エタノール生産の従来の多段階工程を簡略化する。これは統合バイオプロセシング(CBP)として知られる。CBPは全変換工程を合理化し経費およびエネルギーの浪費を減らすため、唯一の経済的および環境的に持続可能なセルロース系エタノール・バイオプロセスとして予測される。
【0059】
幾つかの態様において、効率的な燃料生産システムのためのポリヌクレオチドおよび発現カセットが提供される。ポリヌクレオチドおよび発現カセットは微生物を形質転換するための発現ベクターを調製するために用いられ、燃料などの産物を有用な量で効率的に生産する能力を形質転換された微生物に与え得る。
【0060】
幾つかの態様において、微生物の代謝は種々の遺伝子を導入し発現することにより改変され得る。本発明の幾つかの態様に従って、組み換え微生物は、例えばセルロースからエタノールおよび水素などの燃料への変換を強化するための生体触媒としてクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(ISDgT、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394T)由来の遺伝子を使用できる。
【0061】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394T)は培養株ISDgTの表現型および遺伝子型の特徴に基づいて定義され得る(Warnick et al, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 52:1155-60, 2002)。クロストリジウム・フィトフェルメンタンスの全注釈付きのゲノムはwww.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrezのWorld Wide Webで入手できる。種々の態様は、一般に、システム、ならびにC.フィトフェルメンタンス種のISDgT株および/または任意の他の株を伴う燃料および/または他の有用な有機産物を生産するための方法および組成物に関し、該種はISDgT株に由来し得るまたは個別に単離され得る。種は標準的な分類学的考察を用いて定義され得る(Stackebrandt and Goebel, International Journal of Systematic Bacteriology, 44:846-9, 1994)。標準株(ISDgT)と比較して97%以上の16S rRNA配列相同性値をもつ株は、70%未満のDNA再結合値を有すると示されない限り、C.フィトフェルメンタンスの株とみなされる。70%以上のDNA再結合値を有する微生物はまた少なくとも96%のDNA配列同一性を有し且つ種を規定する表現型形質を共有することを示すかなりの証拠が存在する。C.フィトフェルメンタンスISDgT株のゲノム配列の分析は、植物の多糖発酵の機構および経路に関与するらしい多数の遺伝子および遺伝子座の存在を示し、この微生物の独特の発酵性質につながる。上記の分類学的考察に基づいて、C.フィトフェルメンタンス種の全株はこれらの発酵性質の全てまたはほぼ全ても所有し得る。C.フィトフェルメンタンスの株は天然の分離株または遺伝的に改変された株であり得る。
【0062】
種々の発現ベクターは、形質転換された微生物が種々の発酵条件で多量の燃料を生産できるように、宿主微生物内に導入され得る。組み換え微生物は、例えばセルロースを含む培地上で増殖する場合に燃料が高収率で安定して生産されるように改変され得る。
【0063】
C.フィトフェルメンタンスは、単独でまたは一つまたは複数の他の微生物と組み合わせて、セルロース系バイオマス物質を大規模にエタノール、プロパノール、および/または水素などの可燃性バイオ燃料に発酵し得る(例えば米国特許出願第2007/0178569号;Warnick et. al, Int J Syst Evol Microbiol (2002), 52 1155-1160を参照、上記のそれぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられる)。
【0064】
本明細書で開示するポリヌクレオチド、発現カセット、および発現ベクターはエタノールおよび水素などの燃料生産のために多数の異なる宿主微生物とともに使用され得る。例えば、クロストリジウム・フィトフェルメンタンスに加えて、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクレル・スシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、およびハロセラ・セルロリティカなどのセルロース分解性微生物は、セルロースを加水分解できるため、特に興味をひく宿主である。使用され得る他の微生物は、例えばサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムおよびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムなどの糖分解性微生物を含む。さらなる潜在的な宿主は、他の細菌、酵母、藻類、菌類、および真核細胞を含む。
【0065】
種々の態様において、本明細書で開示するポリヌクレオチド、発現カセット、および発現ベクターは、エタノールおよび水素などの燃料生産を増大するためにC.フィトフェルメンタンスまたは他のクロストリジウム種とともに使用され得る。
【0066】
当業者に理解されるように、燃料を生産し得る組み換え生物を生産する能力は、特に効率的で、費用効率が高く、環境に優しい燃料生産のために多大な利点を有し得る。
【0067】
例示的態様
下記の記載および実施例は本発明の幾つかの態様を詳細に説明する。当業者は、その範囲に包含される多数の変形および修飾が存在することを認識するであろう。従って、好ましい態様の記載は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。
【0068】
本発明の種々の態様は、組み換え微生物を用いて燃料生産に関する利点を提供する。燃料生産の最適化のためのポリヌクレオチド、発現カセット、発現ベクターおよび組み換え微生物は、本発明の幾つかの態様に従って開示される。
【0069】
ヒドロラーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、ヒドロラーゼをコードするとしてC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ヒドロラーゼをコードするとしてC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用する燃料生産方法に関する。ヒドロラーゼをコードする核酸を利用する利点は、例えば多糖およびポリペプチドなどの高分子を加水分解する微生物の能力および性能の改良を含む。
【0070】
ヒドロラーゼは、二糖、三糖および多糖、ポリペプチド、ならびにタンパク質などの高分子を分解する酵素を含み得る。高分子は、例えばセルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン、およびプロテオグリカンも含み得る。多糖を分解する酵素および酵素活性の例は、グリコシド・ヒドロラーゼ(GH)、グリコシル・トランスフェラーゼ(GT)、多糖リアーゼ(PL)、炭水化物エステラーゼ(CE)、および炭水化物結合モジュール(CBM)を含むタンパク質を含み得るがこれらに限定されない("cazy.org"のWorld Wide Webで入手可能;Coutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999) Carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach. In "Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,」 H.J. Gilbert, G. Davies, B. Henrissat and B. Svensson eds., The Royal Society of Chemistry, Cambridge, pp. 3-12)。
【0071】
幾つかの態様において、GH、GT、PL、CEおよびCMBは異なる活性をもつ別個の酵素であり得る。他の態様において、GH、GT、PL、CEおよびCMBは特定の触媒活性をもつ酵素ドメインであり得る。例えば、多数の活性をもつ酵素は、例えばGH、GT、PL、CEおよび/またはCBM触媒ドメインを含む多数の酵素ドメインを有し得る。
【0072】
O-グリコシル・ヒドロラーゼは、2つ以上の炭水化物間、または一つの炭水化物と一つの非炭水化物部分との間でグリコシド結合を加水分解する広範な酵素群である。配列類似性に基づくグリコシル・ヒドロラーゼの分類システムは、85の異なるファミリーPUBMED: 7624375、PUBMED:8535779、PUBMEDの定義に至った。この分類はCAZy(炭水化物に活性な酵素(CArbohydrate-Active EnZymes))ウェブ・サイトPUBMEDで入手できる。タンパク質の折り畳みは配列より良く保存されるため、ファミリーの幾つかは「一族(clan)」に分類され得る。
【0073】
グリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリー9はエンドグルカナーゼおよびセロビオヒドロラーゼなどの幾つかの公知の活性をもつ酵素を含む。C.フィトフェルメンタンスにおいて、例示的なGH9セルラーゼはABX43720である。
【0074】
ヒドロラーゼは本発明の製品および工程における利用のためC.フィトフェルメンタンスの注釈付きゲノムから選択され得る。例として、一つまたは複数のエンドグルカナーゼ、キチナーゼ、セロビオヒドロラーゼまたはエンドプロセッシブ(endo-processive)セルラーゼ(還元末端または非還元末端のいずれかで)などの酵素を含む。
【0075】
さらに、C.フィトフェルメンタンスなどの微生物は一つまたは複数のセルラーゼもしくはヒドロラーゼ酵素の産生を強化するために改変され、または一つまたは複数の該酵素は異なる宿主(例えば他の細菌または酵母)で異種発現し得る。異種発現用に、細菌または酵母は組み換え技術を通して改変され得る(例えば、Brat et al. Appl. Env. Microbiol. 29; 75:2304-2311, disclosing expression of xylose isomerase in Saccharomyces cerevisiae)。
【0076】
本発明の組み換え微生物における最終生産物(例えばエタノール)の生産を強化するために他の修飾が為され得る。例えば、宿主は更なる異種DNA分節をさらに含み得、その発現産物は組み換え宿主への単糖および/またはオリゴ糖の輸送に関与するタンパク質である。同様に、糖分解経路からの追加遺伝子は宿主に組み込まれ得る。このような方法で、エタノール生産速度の強化が達成され得る。
【0077】
C.フィトフェルメンタンス・ゲノムの最も顕著で予期しない特徴の一つは、炭水化物に活性な酵素をコードする遺伝子の数および多様性である。この多様性はC.フィトフェルメンタンスに関連する生物では例を見ない。表1は他の生物との関連で炭水化物遺伝子の多様性を説明する。
【0078】
(表1)炭水化物に活性な遺伝子の数および多様性
【0079】
C.フィトフェルメンタンス・ゲノムは、本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて予測される広範囲の推定機能をもつ様々な範囲のGH、PL、CE、およびCBM遺伝子を含む。表2〜表5は、それぞれC.フィトフェルメンタンスに存在すると予測されるGH、PL、CE、およびCBMファミリー・メンバーの幾つかの公知活性の幾つかの例を示す。公知の活性は生化学および分子生物学国際連合により決定される活性および対応するEC番号により列挙する。
【0080】
(表2)グリコシドヒドロラーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0081】
(表3)多糖リアーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0082】
(表4)炭水化物エステラーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0083】
(表5)炭水化物結合モジュールファミリーメンバーの公知の活性
【0084】
幾つかの態様は表6に示されるヒドロラーゼをコードする遺伝子を含む。JGIナンバーはGenBank記録上のNCBI遺伝子座のタグに言及する。
【0085】
(表6)C.フィトフェルメンタンスの予測ヒドロラーゼ
【0086】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、セルロースを分解する酵素、即ちセルラーゼを含み得る。エンドセルラーゼ(EC3.2.1.4)およびエキソセルラーゼ(EC3.2.1.91)を含む幾つかのセルラーゼはβ-1,4-グルコシド結合を加水分解する。
【0087】
C.フィトフェルメンタンスの予測エンドセルラーゼの例は、Cphy3368、Cphy1163、およびCphy2058などのGH5ファミリー;Cphy3207などのGH8ファミリー;ならびにCphy3367などのGH9ファミリー内の遺伝子を含み得る。C.フィトフェルメンタンスの予測エキソセルラーゼの例は、Cphy3368などのGH48ファミリー内の遺伝子を含み得る。幾つかのエキソセルラーゼは多糖を加水分解しグルコースの2から4単位のオリゴ糖を産生し、セロデキストリン(cellodextrin)二糖(セロビオース)、三糖(セロトリオース(cellotriose))、または四糖(セロテトラオース(cellotetraose))をもたらす。GH5、GH9およびGH48ファミリーのメンバーはエキソおよびエンドの両セルラーゼ活性を有し得る。
【0088】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、ヘミセルロースを分解する能力を有する酵素、即ちヘミセルラーゼを含み得る(Leschine, S. B. in Handbook on Clostridia(ed. Durre, P.)(CRC Press, Boca Raton, 2005))。ヘミセルロースは、植物バイオマスの主成分であり、ペントースとヘキソースの混合物、例えばD-キシロピラノース、L-アラビノフラノース、D-マンノピラノース、D-グルコピラノース、D-ガラクトピラノース、D-グルコピラノシルウロン酸および他の糖を含み得る(Aspinall, G. O. The Biochemistry of Plants 473, 1980; Han, J. S. & Rowell, J. S. in Paper and composites from agro-based resources 83, 1997)。ある態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定された予測ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースの直鎖骨格上で活性な酵素、例えばGH5、GH10、GH11、およびGH43のファミリー・メンバーなどのエンド-β-1,4-D-キシラナーゼ(EC3.2.1.8);GH30、GH43、およびGH3のファミリー・メンバーなどの1,4-β-D-キシロシド・キシロヒドロラーゼ(EC3.2.1.37);およびGH26ファミリー・メンバーなどのβ-マンナナーゼ(EC3.2.1.78)を含み得る(表6を参照)。
【0089】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定された予測ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースの側鎖および置換基に活性な酵素、例えば、GH3、GH43、およびGH51ファミリー・メンバーなどのα-L-アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55);GH31ファミリー・メンバーなどのα-キシロシダーゼ;GH95およびGH29ファミリー・メンバーなどのα-フコシダーゼ(EC3.2.1.51);GH1、GH2、GH4、GH36、GH43ファミリー・メンバーなどのガラクトシダーゼ;ならびにCE2およびCE4などのアセチル-キシラン・エステラーゼ(EC3.1.1.72)を含み得る(表6を参照)。
【0090】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、ペクチンを分解する能力を有する酵素、即ちペクチナーゼを含み得る。植物細胞壁において、架橋したセルロース・ネットワークは、キシログルカンおよびある構造タンパク質に共有結合で架橋し得るペクチンの基質に埋め込まれ得る。ペクチンはホモガラクツロナン(homogalacturonan)(HG)またはラムノガラクツロナン(rhamnogalacturonan)(RH)を含み得る。
【0091】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたペクチナーゼはHGを加水分解し得る。HGはD-ガラクツロン酸(D-galA)単位からなり得、該単位はアセチル化およびメチル化され得る。HGを加水分解する酵素は、例えばPL1、PL9、およびPL11のファミリー・メンバーなどの1,4-α-Dガラクツロナンリアーゼ(EC4.2.2.2);GH88およびGH105のファミリー・メンバーなどのグルクロニル・ヒドロラーゼ;CE12ファミリー・メンバーなどのペクチン・アセチルエステラーゼ;ならびにCE8ファミリー・メンバーなどのペクチン・メチルエステラーゼを含み得る(表6参照)。
【0092】
さらに幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されるペクチナーゼはRHを加水分解し得る。RHは交互の1,2-α-L-ラムノース(L-Rha)および1,4-α-D-ガラクツロン残基からなる骨格であり得る(Lau, J. M., McNeil M., Darvill A. G. & Albersheim P. Structure of the backbone of rhamnogalacturonan I, a pectic polysaccharide in the primary cell walls of plants. Carbohydrate research 137, 111 (1985))。骨格のラムノース残基は側鎖としてC4に結合したガラクタン、アラビナン、またはアラビノガラクタンを有し得る。HGを加水分解する酵素は、例えばGH28ファミリー・メンバーなどのエンドラムノガラクツロナーゼ;およびPL11ファミリー・メンバーなどのラムノガラクツロナン・リアーゼを含み得る(表6を参照)。
【0093】
幾つかの態様はデンプンを加水分解し得る酵素を含む。C.フィトフェルメンタンスはデンプンおよびキチンを分解し得る(Warnick, T. A., Methe, B. A. & Leschine, S. B. Clostridium phytofermentans sp. nov., a cellulolytic mesophile from forest soil. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 52, 1155-1160 (2002); Leschine, S. B. in Handbook on Clostridia (ed Durre, P.) (CRC Press, Boca Raton, 2005); Reguera, G. & Leschine, S. B. Chitin degradation by cellulolytic anaerobes and facultative aerobes from soils and sediments. FEMS Microbiol. Lett. 204, 367-374 (2001))。デンプンを加水分解する酵素は、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-アミラーゼ、エキソ-α-1,4-グルカナーゼ、およびプルラナーゼを含む。デンプン加水分解に関与するC.フィトフェルメンタンスで同定された予測酵素の例はGH13ファミリー・メンバーを含む(表6を参照)。
【0094】
他の態様において、ヒドロラーゼはキチンを加水分解する酵素を含み得る。キチンを加水分解し得る酵素の例はGH18およびGH19のファミリー・メンバーを含む(表6を参照)。
【0095】
さらなる幾つかの態様において、ヒドロラーゼは地衣類を加水分解する酵素、即ちリチェナーゼ(lichenase)、例えばCphy3388などのGH16ファミリー・メンバーを含み得る。
【0096】
幾つかの態様において、ヒドロラーゼはCBMファミリーメンバーを含み得る。いずれかの一理論に束縛されることを望むことなく、CBMドメインは酵素複合体を特定の基質に局在化するために機能し得る。セルロースに結合し得るC.フィトフェルメンタンスで同定された予測CBMファミリーの例は、CBM2、CBM3、CBM4、CBM6、およびCBM46ファミリーメンバーを含む。キシランに結合し得るC.フィトフェルメンタンスで同定された予測CBMファミリーの例は、CBM2、CBM4、CBM6、CBM13、CBM22、CBM35、およびCBM36ファミリーメンバーを含む(表6を参照)。他の態様において、CBMドメインファミリーメンバーは酵素複合体を安定化するために機能し得る。
【0097】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つの予測ヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0098】
ATP結合カセット輸送体
本明細書に記載する幾つかの態様は、ATP結合カセット輸送体(ABC輸送体)をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含む、これらのポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ABC輸送体をコードする核酸を利用する利点は、生物内へ化合物を輸送し且つ生化学経路において該化合物を利用して燃料を生産する形質転換生物の能力を増大させることを含み、従って燃料生産を向上する。該化合物の例は高分子加水分解の産物を含む。
【0099】
ABC輸送体タンパク質は原形質膜を横切って多種多様な物質を輸送するためにATP加水分解を利用する。このような物質は糖およびアミノ酸を含み得る。ABC輸送体は本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。ABC輸送体は、少なくとも2種類のドメインである膜貫通ドメインおよびヌクレオチド(例えばATP)結合ドメインを含む。幾つかのABC輸送体は溶質輸送の媒介に助力する溶質結合ドメインも含む。これらのドメインは同一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖に存在し得る。ABC輸送体ファミリーの幾つかのメンバーはABC_tran(pfam00005)ドメインを含む。ABC輸送体ファミリーのより多くのメンバーは、長い荷電領域と高度に疎水性の分節とにより結び付けられる2つの対称的な半分内に4つのドメインを含み得る(Hyde et al, Nature, 346:362-365 (1990); Luciani et al, Genomics, 21 : 150-159 (1994))。
【0100】
より例示的な態様において、ABC輸送体を含むポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物はC.フィトフェルメンタンスで同定される。このような遺伝子クラスターは本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。幾つかの態様において、遺伝子および遺伝子クラスターは、タンパク質のオーソロガス群のクラスター(COG)間で相同性の程度により同定され得る。このような遺伝子および遺伝子クラスターはカセットに含まれ得る即ち共に発現し得る。例として、表7に示す予測ABC輸送体およびABC輸送体ドメインを含み得る。縦列の「No.」は推定クラスターを表す。ABC輸送体ドメインはシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0101】
(表7)C.フィトフェルメンタンスにおける予測ABC輸送体および他のタンパク質/ドメイン
【0102】
ある態様は、高分子加水分解の任意の産物を輸送する予測ABC輸送体をコードする核酸の使用を含む。このような加水分解産物は、単糖、例えばグルコース、マンノース、フコース、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、およびキシロース;二糖、例えばトレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース;キシロビオース(xylobiose)、ならびにオリゴ糖、例えばセロトリオース、セロテトラオース(cellotetraose)、キシロトリオース、キシロテトラオース、イヌリン、ラフィノース、およびメレジトースを含み得る。
【0103】
ある態様は、セロビオースを輸送する予測ABC輸送体、例えばCphy2464、Cphy2465、およびCphy2466によりコードされる予測ABC輸送体を含む。
【0104】
転写調節因子
本明細書に記載する幾つかの態様は、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0105】
C.フィトフェルメンタンスで同定された転写調節因子はAraCおよびPurRファミリーのメンバーを含む。AraC調節因子は炭素代謝に関与する遺伝子の転写アクチベーターを含み得る(Gallegos M. T. et al. AraC/XylS Family of Transcriptional Regulators. Microbiol. MoI. Biol. Rev. 61, 393-410 (1997))。PurR調節因子はラクトース・リプレッサー・ファミリーのメンバーを含み得る(Ramos, J. L. et al. The TetR family of transcriptional repressors. Microbiol. MoI. Biol. Rev. 69, 326-356 (2005))。
【0106】
幾つかの態様は表8に示す予測転写調節因子を含む。
【0107】
(表8)C.フィトフェルメンタンスにおける予測転写調節因子
【0108】
ある態様はCphy2467によりコードされる予測転写調節因子を含む。
【0109】
組み合わせ
本明細書に記載する幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された1よりも多い、例えば2つ以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物に関する。幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された1よりも多い、例えば2つ以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0110】
組み合わせはC.フィトフェルメンタンスで同定された2以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド・カセットを含み得る。このような態様において、本明細書に記載する任意の遺伝子は本明細書に記載する任意の他の遺伝子と組み合わせて利用され得る。例えば、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。さらなる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸は、キシロース輸送体をコードする核酸と組み合わされたキシラナーゼをコードする核酸など、C.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント(cognizant)ABC輸送体をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0111】
本明細書で用いるように、コグニザントは特定の生化学経路と関連する少なくとも2つの遺伝子を言及し得る。例えば、コグニザントは、第一遺伝子の産物が第二遺伝子の基質などであり得る少なくとも2つの遺伝子を言及し得る。コグニザント遺伝子を利用する利点は、例えばヒドロラーゼを含むポリヌクレオチド・カセットで形質転換された生物など、ポリヌクレオチド・カセットによりコードされる複数の活性をもつ組み換え生物を生み出す能力を含み、コグニザントABC輸送体は、ヒドロラーゼの特定の基質高分子を加水分解し、コグニザントABC輸送体を介して細胞内に加水分解産物を輸送し得る。当業者は本明細書に記載するコグニザント遺伝子の例を同定し得る。
【0112】
他の態様において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸はC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0113】
具体的な態様において、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたABC輸送体をコードする任意の核酸はC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0114】
幾つかの態様において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸はABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸および転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸は、C.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザントABC輸送体をコードする任意の核酸およびC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする任意の核酸と組み合わせて利用され得る。
【0115】
幾つかの態様において、組み合わせはC.フィトフェルメンタンスで同定された2以上の遺伝子の連続使用を含み得る。例えば、生物は本明細書に記載する任意の遺伝子を含むポリヌクレオチドで形質転換され、続いて本明細書に記載する少なくとも一つの異なる遺伝子で形質転換され得る。
【0116】
少なくとも2つの遺伝子の組み合わせを含むまたは本質的に該組み合わせからなるポリヌクレオチド・カセットの例示的態様を図1に示す。一態様において、Cphy2276によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy2272、Cphy2273、およびCphy2274によりコードされる予測コグニザントABC輸送体ドメインと組み合わされ得る。他の態様において、Cphy3207によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy3210、Cphy3209、およびCphy3208によりコードされる予測コグニザントABC輸送体ドメイン、ならびにCphy3211によりコードされる予測コグニザント転写調節因子、ならびにCphy3212によりコードされる予測コグニザントシグナル伝達タンパク質と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy0862、Cphy0861、およびCphy0860によりコードされる予測ABC輸送体ドメインは、Cphy0864によりコードされる予測転写調節因子、ならびにCphy0863によりコードされる予測シグナル伝達タンパク質と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy2466、Cphy2465、およびCphy2464によりコードされる予測ABC輸送体ドメインは、Cphy2467によりコードされる予測転写調節因子と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy1877によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy1876によりコードされる予測転写調節因子と組み合わされ得る。
【0117】
より例示的な態様において、2以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物はC.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスターを含み得る。このような遺伝子クラスターは本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。幾つかの態様において、遺伝子および遺伝子クラスターはタンパク質のオーソロガス群のクラスター(COG)間の相同性の程度により同定され得る。このような遺伝子および遺伝子クラスターは共にカセットに含められ得るまたは発現し得る。C.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスターの例を表9に示す。
【0118】
(表9)C.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスター
【0119】
キシロース同化に関与する酵素
本明細書に記載する幾つかの態様は、キシロース同化に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、キシロース同化に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0120】
本明細書で用いられるように、キシロース同化に関与する遺伝子は、例えば、高分子からキシロースへの加水分解のためのヒドロラーゼ、細胞内へのキシロースの輸送のためのABC輸送体、ヒドロラーゼおよび/またはABC輸送体をコードするこれらの遺伝子の調節のための転写調節因子、ならびにキシロースなどのペントース糖からアルコールへの発酵に関する酵素をコードする遺伝子を含み得る。C.フィトフェルメンタンスがキシロース上で増殖した際に上方調節したとして同定された遺伝子は、Cphy3419、Cphy1219、およびCphy1585、Cphy1586、およびCphy1587(図13を参照)を含む。
【0121】
多数のクロストリジウムの種はヘミセルロースを分解し得る一方で、大半の種はこのような加水分解に起因するペントース糖を発酵できない。珍しいことに、C.フィトフェルメンタンスはヘミセルロースをペントース糖に加水分解しペントース糖からアルコールに発酵できる。C.フィトフェルメンタンスはペントースをオリゴ糖としてまたは単糖として細胞内に輸送し得る。C.フィトフェルメンタンスのゲノムは、ペントースからヘキソースへの変換に関する非酸化的ペントース・リン酸経路の酵素を含む、キシロース同化の酵素をコードする遺伝子を含む。ペントースの発酵能と一致して、キシラン上で増殖する細胞の発現データは、ペントース・リン酸経路の重要な酵素、即ちトランスアルドラーゼ((EC 2.2.1.1、Cphy0013)およびトランスケトラーゼ(transketolase)(EC 2.2.1.1、Cphy0014)が最も豊富な転写産物の一つであることを示した。ペントース・リン酸経路および解糖のプライミング反応と解糖のエネルギー収穫段階とを接続するグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.12、Cphy2879)は、キシラン、セルロース、セロビオース、およびグルコース上で強力に誘導される。キシラン上の増殖中に上方調節される他の遺伝子は、
を含む。
【0122】
ヘキソースおよびペントースの発酵は、NAD(P)依存性アセトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(Ald)およびNAD依存性アルコール・デヒドロゲナーゼ(Adh)を含む酵素により触媒されるアセチルcoAからエタノールへの還元で終結する。C.フィトフェルメンタンスのゲノムは、少なくとも7つのAld(ドメインPutA)、および少なくとも6つのAdh、例えばAldおよびAdhのドメインを含むCphy3925でコードされる推定タンパク質をコードする推定遺伝子を含む。4つのAldおよび3つのAdhは3つのクラスターの遺伝子:Cphy1173-1183;Cphy1411-1430;およびCphy2634-2650によりコードされる。
【0123】
プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する酵素
本明細書に記載する幾つかの態様は、プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0124】
C.フィトフェルメンタンスは、C.セルロリティキュム、C.サーモセルム、C.アセトブティリキュム(C. acetobutylicum)、およびC.ベイジンリンキ(C. beijinrincki)など、他の類似のバイオテクノロジー対象の細菌で見出されないタンパク質様の微小区画(「PMC」)を含む。これらの微小区画は電子顕微鏡法により観察されてきた。炭水化物からアルコールへの変換に関与する特定の酵素はこれらの微小区画に局在し、特定経路の区画化およびより高い代謝効率を示唆する(Conrado, R. J., Mansell, T. J., Varner, J. D. & DeLisa, M. P. Stochastic reaction-diffusion simulation of enzyme compartmentalization reveals improved catalytic efficiency for a synthetic metabolic pathway. Metab. Eng. 9, 355-363 (2007))。
【0125】
C.フィトフェルメンタンスの3つの遺伝子座はタンパク質様区画に局在するタンパク質をコードする。これらのタンパク質様区画は二酸化炭素固定ならびに他の生物で見出されるエタノールアミンおよびプロパンジオールの利用に関与するタンパク質様区画に類似する。それぞれの遺伝子座は5炭糖およびアルコール・デヒドロゲナーゼから第一級アルコールに変換する酵素を含む。
【0126】
C.フィトフェルメンタンスで同定された7つのAldおよび6つのAdhのうち、4つのAldおよび3つのAdhはタンパク質様微小区画に局在する。タンパク質様微小区画に局在するAdhは、Fe-AdhまたはZn-Adhに対する配列同一性を示し、3つのクラスター、即ちCphy1173-1183、Cphy1411-1430、およびCphy2634-2650の遺伝子によりコードされる。
【0127】
タンパク質様微小区画に局在するより多くの酵素はフコースからプロパノールへの経路ならびにエタノールアミンおよびプロパンジオールの代謝に関与し得る。例えば、Cphy2634-2650のクラスターはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のエタノールアミン代謝に関与する遺伝子のオルソログを含み、Cphy1411-1430のクラスターはネズミチフス菌のプロパンジオール利用オペロンに機能的に関連し得る産物をコードする遺伝子を含む。
【0128】
その上、Cphy1173-1187のクラスターはロセブリア・イヌリノボランス(Roseburia inulinovorans)で見出される微小区画と相同な遺伝子(Scott, K. P., Martin, J. C, Campbell, G., Mayer, C. D. & Flint, H. J. Whole-genome transcription profiling reveals genes up-regulated by growth on fucose in the human gut bacterium Roseburia inulinivorans. J. Bacteriol. 188, 4340-4349 (2006))ならびにフコースおよびラムノースの利用に関与する推定酵素をコードする遺伝子を含む(図14および15を参照)。フコース上の増殖中に上方調節されると同定された追加遺伝子またはフコースの利用に関与すると予測される他の遺伝子は、Cphy3153、Cphy3154、Cphy3155、Cphy2010、Cphy2011、およびCphy2012を含む(図14)。ラムノース上の増殖中に上方調節されると同定された追加遺伝子またはラムノースの利用に関与すると予測される他の遺伝子は、Cphy0578、Cphy0579、Cphy0580、Cphy0581、Cphy0582、Cphy0583、Cphy0584、Cphy1146、Cphy1147、Cphy1148、Cphy1149を含む(図15)。
【0129】
水素生産
本明細書に記載する幾つかの態様は、水素生産に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、水素生産に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0130】
水素は様々な糖の発酵から生産され得る。幾つかの態様において、ポリヌクレオチドはC.フィトフェルメンタンスで同定されたフェレドキシン・ヒドロゲナーゼをコードする核酸を含み得る。C.フィトフェルメンタンスで同定されたフェレドキシン・ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の例は、Cphy0087、Cphy0090、Cphy0092、Cphy2056、Cphy3805、Cphy3798を含む。
【0131】
マルチモジュール多糖リアーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードする遺伝子の例は遺伝子座Cphy1612の遺伝子を含み得る。Cphy1612遺伝子座は予測PL1およびPL9のドメインをコードする。PL1は、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2);エキソ-ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.9);およびペクチン・リアーゼ(EC 4.2.2.10)のドメインを含む。PL9はペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)およびエキソポリガラクツロン酸リアーゼ(EC 4.2.2.9)ドメインを含む。
【0132】
マルチモジュール・キシラナーゼおよびエステラーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードする遺伝子の例はCphy3862遺伝子座の遺伝子を含み得る。Cphy3862遺伝子座は、3つの予測ドメイン、即ち、2つのGH10ドメインおよびCE15ドメインを含み、下記の活性を有する:キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)活性をもつGH10;エンド-1,3-キシラナーゼ(EC 3.2.1.32)活性をもつGH10、ならびにグルクロニル・エステラーゼ(EC 3.1.1.-)および4-O-メチル-グルクロニル・エステラーゼ(EC 3.1.1.-)の活性をもつCE15。
【0133】
ラミナリンの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、ラミナリンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ラミナリンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ラミナリンは褐藻類で見出される貯蔵グルカン(グルコースの多糖)である。ラミナリン上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、Cphy0857、Cphy0858、Cphy0859、Cphy0860、Cphy0861、Cphy0862、Cphy0863、Cphy0864、Cphy0865、およびCphy3388を含む(図16参照)。
【0134】
セロビオースの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、セロビオースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、セロビオースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。セロビオースはβ(1→4)結合で結合される2つのグルコース分子の縮合から誘導される二糖である。セロビオース上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、Cphy0430、Cphy2464、Cphy2465、Cphy2466、およびCphy2467を含む(図17参照)。
【0135】
セルロースの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、セルロースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、セルロースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。セルロース上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子またはセルロースの利用に関与すると予測される他の遺伝子の例は、
を含む。
【0136】
ペクチンの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、ペクチンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、ペクチンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ペクチン上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、
を含む。
【0137】
ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子およびラムノガラクツロナン-Iのアラビノガラクタン側鎖の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy3585、Cphy3586、Cphy3587、Cphy3588、Cphy3589、およびCphy3590を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子およびラムノガラクツロナン-Iまたはラムノガラクツロナン-IIの側鎖の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy2262、Cphy2263、Cphy2264、Cphy2265、Cphy2266、Cphy2267、Cphy2268、Cphy2269、Cphy2272、Cphy2273、Cphy2274、Cphy2275、Cphy2276、Cphy1714、Cphy1715、Cphy1716、Cphy1717、Cphy1718、Cphy1719、およびCphy1720を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および糖輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy2464、Cphy2465、Cphy2466、およびCphy2467を含む。ポリガラクツロン酸の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0288、Cphy0289、Cphy0290、Cphy0291、Cphy0292、およびCphy0293を含む。ラムノガラクツロナン溶解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0339、Cphy0340、Cphy0341、Cphy0342、Cphy0343を含む。ラムノースの輸送および分解に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0578、Cphy0579、Cphy0580、Cphy0581、Cphy0582、Cphy0583、Cphy0584、Cphy1146、Cphy1147、Cphy1148、およびCphy1149を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および/またはフコースの輸送および分解に関与すると予測される遺伝子は、Cphy3153、Cphy3154、Cphy3155、Cphy2010、Cphy2011、およびCphy2012を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子ならびに/またはフコースおよびラムノースの代謝に関与すると予測される遺伝子は、Cphy1174、Cphy1175、Cphy1176、Cphy1177、Cphy1178、Cphy1179、Cphy1180、Cphy1181、Cphy1182、Cphy1183、Cphy1184、Cphy1185、Cphy1186、およびCphy1187を含む。
【0138】
ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および/またはポリガラクツロン酸の利用に関与すると予測される遺伝子は、
を含む。
【0139】
C.フィトフェルメンタンスの核酸配列の同定
本明細書に記載する幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定する方法に関する。このような方法は、コード配列、非コード配列、調節配列、遺伝子間配列、遺伝子のオペロンまたはクラスターを含む核酸配列を同定する段階を含み得る。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定する方法はゲノム分析および/またはマイクロアレイ分析を含み得る。
【0140】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子は他の配列に対する遺伝子の類似性により同定され得る。類似性はポリヌクレオチド配列間またはポリペプチド配列間で決定され得る。幾つかの態様において、他の配列は他の生物に存在する配列であり得る。他の生物例は、C.ベイジェリンキ(C. beijerinckii)もしくはC.アセトブティリキュムなど、クロストリジウムの異なる種の生物;または枯草菌などの異なる属の生物を含み得る。
【0141】
幾つかの態様において、類似性は百分率の同一性として測定され得る。百分率の同一性は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列を比較することにより決定されるように、該配列間の関係であり得る。さらなる態様において、配列の同一性は、場合によっては、一連のポリペプチド配列間またはポリヌクレオチド配列間の一致により決定されるように、このような配列間の配列関連度であり得る。典型的には、配列同一性および配列類似性は、Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, New York (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, New York (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, New Jersey (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., ed.) Academic Press (1987); and Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY (1991)に記載されるものを含むがこれらに限定されない、公知の方法により容易に計算され得る。配列同一性を決定する方法は、試験される配列間のベストマッチを生じるように設計され得る。配列同一性および配列類似性を決定する幾つかの方法は、公的に入手可能なコンピュータ・プログラムで体系化されている。配列アラインメントおよび百分率同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイート(DNASTAR Inc., Madison, Wis.)のMegalignプログラムを用いて実施され得る。配列の多重アラインメントは、デフォルト・パラメータ(GAP PENALTY=10, GAP LENGTH PENALTY=10)とともにアラインメントのClustal法(Higgins and Sharp (1989) CABIOS. 5:151-153)を用いて実施され得る。Clustal法を用いた一対アラインメントのデフォルト・パラメータは、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WIND0W=5およびDIAGONALS SAVED=5であった。
【0142】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子は、当技術分野において周知のアルゴリズムを用いて核酸配列および/または推定翻訳ポリペプチド配列の遺伝子の存在を予測することにより同定され得る。例えば、GeneMark(商標)(Besemer, J., and M. Borodovsky. 2005. GeneMark: web software for gene finding in prokaryotes, eukaryotes and viruses. Nucleic Acids Res 33:W451-4)およびGlimmer(Delcher, A. L., K. A. Bratke, E. C. Powers, and S. L. Salzberg. 2007. Identifying bacterial genes and endosymbiont DNA with Glimmer. Bioinformatics 23:673-9)などのプログラムのコンピュータ・アルゴリズムが使用できる。
【0143】
幾つかの態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列はコンピュータ・アルゴリズムまたはソフトウェア・プログラムを用いて分析され得る。関連する態様において、配列分析ソフトウェアは市販されまたは独力で開発され得る。配列分析ソフトウェアの例は、プログラムBLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al, J. MoI. Biol. 215:403-410 (1990))、およびDNASTAR(DNASTAR, Inc. 1228 S. Park St. Madison, Wis. 53715 USA)のGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wis.)、ならびにSmith-Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W. R. Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994), Meeting Date 1992, 111-20. Editor(s): Suhai, Sandor. Publisher: Plenum, New York, N.Y.)を含む。典型的には、プログラムのデフォルト値、例えば最初に初期化する場合にソフトウェアとともに元々ロードされる一式の値またはパラメータ、が使用され得る。
【0144】
他の態様において、保存タンパク質ドメインおよびタンパク質ファミリーのデータベースがC.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定するために用いられ得る。例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の保存ドメイン・データベース(CDD)は、監督されたNCBI保存ドメイン、SMART(smart.embl-heidelberg.de/SMART)、PFAM(sanger.ac.uk/Software/Pfam/PFAMのWorld Wide Webで入手可能)、およびCOGS(完全ゲノムでコードされるタンパク質の系統発生的分類)を含む幾つかのデータベースを含む。
【0145】
幾つかの態様において、遺伝子が同定され、該遺伝子によりコードされる推定タンパク質の代謝経路が予測され得る。このような態様において、代謝経路のデータベースが使用できる。例えば、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)であり、KEGG Automatic Annotation Server(genome.jp/kegg/kaas/のWorld Wide Webで入手可能)はKEGG GENESデータベースと対照したBLAST比較を用いて同定遺伝子の機能注解を提供し得る。
【0146】
C.フィトフェルメンタンスからの核酸配列の単離
核酸配列は、当技術分野において周知の技術を用いてC.フィトフェルメンタンスのゲノムからクローニングされ得る。例えば、利用され得る組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989);およびSilhavy, T. J., Bennan, M. L. and Enquist, L. W., Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor, N.Y. (1984);およびAusubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, published by Greene Publishing Assoc, and Wiley-Interscience (1987)に記載されている。さらに、配列依存性プロトコルを用いて相同遺伝子またはオーソロガス遺伝子を単離する方法は当技術分野において周知である。配列依存性プロトコルの例は、核酸ハイブリダイゼーション法、ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR; Mullis et al., U.S. Pat. 4,683,202)、リガーゼ連鎖反応(LCR; Tabor, S. et al., Proc. Acad. Sci. USA 82, 1074, (1985))、または鎖置換増幅(SDA; Walker, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 392, (1992))など、種々の核酸増幅技術の使用により例示されるようなDNAおよびRNAの増幅法を含むがこれらに限定されない。
【0147】
通常、PCR型増幅技術において、プライマーは異なる配列を有し互いに相補的ではない。所望する試験条件に応じて、プライマーの配列は標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するために設計されるべきである。PCRプライマーの設計方法は当技術分野において普及しており周知である(Thein and Wallace, "The use of oligonucleotide as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorder", in Human Genetic Diseases: A Practical Approach, K. E. Davis Ed., (1986) pp. 33-50 IRL Press, Herndon, Va.; Rychlik, W.(1993) In White, B. A. (ed.), Methods in Molecular Biology, Vol. 15, pages 31-39, PCR Protocols: Current Methods and Applications. Humania Press, Inc., Totowa, N.J.)。
【0148】
一般に、同定配列の2つの短い分節が、DNAまたはRNAから相同な遺伝子をコードする、より長い核酸断片を増幅するためにPCRプロトコルで使用され得る。PCRはクローニングされた核酸断片のライブラリーで実施され得る。一方のプライマー配列は同定核酸配列に由来し、他方のプライマー配列は微生物の遺伝子をコードするmRNA前駆体の特徴的なポリアデニル酸域3'に由来する。あるいは、第二プライマー配列はクローニング・ベクターに由来する配列に基づき得る。例えば、RACEプロトコル(Frohman et al., PNAS USA 85:8998 (1988))は、転写産物の単一点と3'または5'末端との間の領域のコピーを増幅するためにPCRを用いてcDNAを生成する手段を提供する。3'および5'方向に向けられたプライマーは同定配列から設計され得る。市販の3'RACEまたは5'RACEシステム(BRL)を用いて、特異的な3'または5'cDNA断片が単離され得る(Ohara et al., PNAS USA 86:5673 (1989); Loh et al., Science 243:217 (1989))。
【0149】
幾つかの態様において、同定された核酸配列はDNAハイブリダイゼーション・プローブとして同定核酸の部分を用いてC.フィトフェルメンタンスDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。プローブの例は、ランダム・プライマーDNA標識、ニック翻訳、または末端標識技術などの方法により標識されるDNAプローブ、およびインビトロ転写系などの方法により産生されるRNAプローブを含み得る。その上、本配列の一部または完全長を増幅するために、特異的なオリゴヌクレオチドが設計され使用され得る。得られる増幅産物は、増幅反応中に直接標識され、または増幅反応後に標識され、適切なストリンジェンシーの条件下で完全長DNA断片を単離するためにプローブとして使用され得る。
【0150】
幾つかの態様において、単離核酸はベクターにクローニングされる。通常、ベクターは宿主微生物で複製する能力を有する。例えば、バクテリオファージ、プラスミド、ウイルス、または上記のハイブリッドなど、多数のベクターが公知である。ベクターは選択された宿主細胞におけるクローニング・ベクターまたは発現ベクターとして機能的であり得る。通常、ベクターは、単離核酸、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体組み込みを可能にする配列を含む。さらなる態様は、単離核酸の発現を促進するプロモーター配列、エンハンサー、または終結配列を含み得る。他の態様において、ベクターは、ベクター配列の染色体DNA内への組み込み後に配列の切除を可能にする配列を含み得る。例にはloxP配列またはFRT配列を含み、これらの配列はそれぞれCREリコンビナーゼおよびFLPリコンビナーゼに応答する。
【0151】
ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクター
本明細書に記載する幾つかの態様は、組み換え微生物における燃料または他の産物の生産に有用なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクターに関する。
【0152】
ポリヌクレオチド・カセットは少なくとも一つの対象となるポリヌクレオチドを含み得る。幾つかの態様において、ポリヌクレオチド・カセットは2以上の対象となるポリヌクレオチドを含み得る。例えば、ポリヌクレオチド・カセットは、本明細書に記載する対象となる2以上、3以上、または任意の数の遺伝子および/またはポリヌクレオチドを含み得る。
【0153】
幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドはC.フィトフェルメンタンスで同定された本明細書に記載の1または複数の核酸を含み得る。幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドは、C.フィトフェルメンタンスで同定された1または複数の遺伝子と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%の同一性を有し得る。他の態様において、対象となるポリヌクレオチドは、野生型タンパク質への同類置換を含む1または複数のタンパク質をコードし得る。さらなる態様において、対象となるポリヌクレオチドは燃料生産のためのタンパク質の効率を改変する置換を含む1または複数のタンパク質をコードし得る。例えば、酵素をコードするタンパク質はより効率的な触媒反応を為し得る。
【0154】
本明細書で用いられるように、発現カセットは、プロモーターなどの調節配列と機能的に連結された対象となるポリヌクレオチドであり得る。本発明に適したプロモーターは、対象となるポリヌクレオチド発現用の任意のプロモーターを含む。幾つかの態様において、プロモーターはC.フィトフェルメンタンスで同定されたプロモーター配列であり得る。幾つかの態様において、プロモーターは宿主生物で同定されたプロモーター配列であり得る。幾つかの態様において、プロモーターは、例えば、光誘導プロモーターまたは温度感受性プロモーターなどの誘導プロモーターであり得る。他の態様において、プロモーターは構成的プロモーターであり得る。幾つかの態様において、プロモーターは、宿主微生物における対象となるポリヌクレオチドの所望の発現レベルに基づいて選択され得る。幾つかの態様において、プロモーターは、その天然環境の転写開始部位からであるため、異種の転写開始部位からほぼ同じ距離で位置し得る。当技術分野において公知なように、この距離の幾らかの変動はプロモーター機能を喪失することなく適応し得る。他の態様において、発現カセットはエンハンサーおよび/または終結配列などの調節配列をさらに含み得る。
【0155】
プロモーター要素はベクター(例えばpIMPCphy)において選択され動員され得る。例えば、転写調節配列は、(例えば発現構築物において)対象となる遺伝子と機能的に連結される。プロモーターは、下流遺伝子の転写を調節するために細胞転写因子と特異的に相互作用するDNA配列の任意のアレイであり得る。特定のプロモーターの選択は、対象となるタンパク質を発現するためにどの細胞型が使用されるかに依存する。一般に、有用な転写調節配列は宿主微生物からのものである。種々の態様において、構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが宿主細胞における使用に選択される。宿主細胞に応じて、公知で且つ宿主細胞の機能を操作し得る何百もの構成的プロモーターおよび誘導プロモーターが潜在的に存在する。
【0156】
プロモーターは、下流遺伝子の転写を調節するために細胞転写因子と特異的に相互作用するDNA配列の任意のアレイであり得る。特定のプロモーターの選択は、対象となるタンパク質を発現するためにどの細胞型が使用されるかに依存する。転写調節配列は宿主微生物からのものであり得る。種々の態様において、構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが宿主細胞における使用に選択される。宿主細胞に応じて、公知で且つ宿主細胞の機能を操作し得る何百もの構成的プロモーターおよび誘導プロモーターが潜在的に存在する。
【0157】
幾つかの事例において、組み換え技術で広く利用されるプロモーター、例えば大腸菌(Escherichia coli)のlacおよびtrpオペロン、tacプロモーター、バクテリオファージpLプロモーター、バクテリオファージT7およびSP6プロモーター、β-アクチン・プロモーター、インスリン・プロモーター、バキュロウイルス・ポリヘドリンおよびp10プロモーターが利用され得る。
【0158】
他の事例において、構成的プロモーターが利用され得る。構成的プロモーターの非限定的な例は、バクテリオファージ・ラムダのintプロモーター、pBR322のβ-ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、クロストリジウムのhydAまたはthlA、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)hrdB、またはwhiE、pPR325のクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーター、ブドウ球菌(Staphylococcal)構成的プロモーターblaZなどを含む。
【0159】
本発明に有用なプロモーターは、特定の細胞培養条件下などの制御様式で下流遺伝子の発現を調節する誘導プロモーターでもあり得る。原核生物誘導プロモーターの例は、バクテリオファージの主要な右および左プロモーターのtrp、recA、lacZ、AraC、および大腸菌のgalプロモーター、枯草菌のα-アミラーゼ(Ulmanen Ett at., J. Bacteriol. 162:176-182, 1985)およびσ-D特異的プロモーター(Gilman et al., Gene sequence 32:11-20 (1984))、バチルスのバクテリオファージのプロモーター(Gryczan, In: The Molecular Biology of the Bacilli, Academic Press, Inc., NY (1982))、ストレプトマイセスのプロモーター(Ward et at., MoI. Gen. Genet. 203:468-478, 1986)などを含む。例示的な原核生物プロモーターは、Glick(J. Ind. Microtiot. 1 :277-282, 1987);Cenatiempo(Biochimie 68:505-516, 1986);およびGottesrnan(Ann. Rev. Genet. 18:415-442, 1984)に概説される。
【0160】
ある培養条件下で構成的に活性なプロモーターは、他の条件で不活性であり得る。例えば、クロストリジウム・アセトブティリキュムからのhydA遺伝子のプロモーターでは、環境pHにより発現が調節されることが知られている。さらに、温度調節プロモーターも公知であり利用され得る。従って、幾つかの態様において、所望の宿主細胞に応じて、pH調節または温度調節のプロモーターは本発明の発現構築物とともに利用され得る。米国特許出願第2002-0137140号で開示されるように、乳酸細菌で機能するP170など、他のpH調節可能なプロモーターが知られている。
【0161】
一般に、効率良く所望の遺伝子/ヌクレオチド配列を発現するために、例えば、遺伝子の本来のプロモーター、例えばTn5のカナマイシン耐性遺伝子、pBR322のアンピシリン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子のプロモーター、およびラムダ・ファージのプロモーター、および宿主細胞において機能的であり得る任意のプロモーターなど、種々のプロモーターが使用され得る。発現用に、他の調節要素、例えば宿主細胞で操作可能な天然および合成の配列を含むShine-Dalgarno(SD)配列ならびに(コード配列が導入され本発明の組み換え細胞を提供する)宿主細胞で操作可能な転写終結因子(任意の天然および合成の配列を含む逆位反復構造)などが上述のプロモーターとともに使用され得る。
【0162】
本発明の製品および工程で利用され得るプロモーターの例は、下記の特許文献で開示されるものを含む:US 2004/0171824、US 6,410,317、WO 2005/024019。lac(D. V. Goeddel et al., "Expression in Escherichia coli of Chemically Synthesized Genes for Human Insulin," Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 76:106-110 (1979));trp(J. D. Windass et al. "The Construction of a Synthetic Escherichia coli Trp Promoter and Its Use In the Expression of a Synthetic Interferon Gene", Nucl. Acids. Res., 10:6639-57 (1982))およびλ PLオペロン(R. Crowl et al., "Versatile Expression Vectors for High-Level Synthesis of Cloned Gene Products in Escherichia coli", Gene, 38:31-38 (1985))など、幾つかのプロモーター-オペレーター系は、大腸菌に存在し、組み換え細胞における遺伝子発現の調節用に使用されてきた。対応する調節因子は、それぞれlacリプレッサー、trpR、およびcIリプレッサーである。
【0163】
リプレッサーは特定のオペロンに特異的に結合するタンパク質分子である。例えば、lacリプレッサー分子はlacプロモーター-オペレーター系のオペレーターに結合する一方、croリプレッサーはλPRプロモーターのオペレーターに結合する。リプレッサーとオペレーターとの他の組み合わせは当技術分野において公知である。例えば、J. D. Watson et al., Molecular Biology Of The Gene, p. 373 (4th ed. 1987)を参照のこと。リプレッサーおよびオペレーターにより形成される構造は、RNAポリメラーゼと関連プロモーターの生産的相互作用を遮断することにより、転写を妨げる。誘導因子と呼ばれる他の分子はリプレッサーに結合することにより、リプレッサーがそのオペレーターに結合することを妨げる。従って、リプレッサー分子によるタンパク質発現の抑制は、リプレッサー濃度を減じることにより、またはリプレッサーを誘導因子で中和することにより、覆され得る。
【0164】
類似のプロモーター-オペレーター系および誘導因子は他の微生物で知られている。酵母では、GAL10およびGAL1プロモーターが細胞外グルコースにより抑制され、誘導因子のガラクトースの添加により活性化される。GAL80タンパク質は該系のリプレッサーであり、GAL4は転写活性因子である。ガラクトースへのGAL80の結合はGAL80のGAL4への結合を妨げる。次いで、GAL4は転写を活性化する上流活性化配列(UAS)に結合し得る。Y. Oshima, "Regulatory Circuits for Gene Expression: The Metabolisms Of Galactose And Phosphat" in The Molecular Biology Of The Yeast Sacharomyces, Metabolism And Gene Expression, J. N. Strathern et al. eds. (1982)を参照のこと。
【0165】
PHO5プロモーターの制御下での転写は、細胞外無機リン酸塩により抑制され、リン酸塩が枯渇する場合に高レベルまで誘導される。R. A. Kramer and N. Andersen, "Isolation of Yeast Genes with mRNA Levels Controlled By Phosphate Concentration,」 Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 77:6451-6545 (1980)。リン酸塩調節に関与する幾つかを含む、PHO5発現用の幾つかの調節遺伝子が同定されている。
【0166】
Matα2は酵母の温度調節プロモーター系である。リプレッサー・タンパク質、オペレーター、およびプロモーターの部位はこの系で同定されている。A. Z. Sledziewski et al., "Construction Of Temperature-Regulated Yeast Promoters Using The Matα2 Repression System,」 Bio/Technology, 6:411-16 (1988)。
【0167】
酵母におけるリプレッサー系の他の例はCUP1プロモーターであり、Cu2+イオンにより誘導され得る。CUP1プロモーターはメタロチオニン(metallothionine)タンパク質により調節される。J. A. Gorman et al., "Regulation of The Yeast Metallothionine Gene,」 Gene, 48:13-22 (1986)。
【0168】
同様に、所望の1または複数のセルラーゼ発現を得るために、高コピー数プラスミドが本発明の製品または工程で利用され得る。構築物は所望の遺伝子の染色体組み込み用に調製され得る。外来遺伝子の染色体組み込みはプラスミド系構築物に対して幾つかの利点を提供し得る。後者は商業過程に一定の制限を有する。エタノール生産遺伝子は大腸菌Bで染色体組み込みされている。Ohta et al. (1991) Appl. Environ. Microbiol. 57:893-9を参照のこと。一般に、これは、(1)抗生物質耐性遺伝子より上流の所望遺伝子および(2)標的微生物からの相同なDNA断片を含むDNA断片の精製により達成される。このDNAは連結されレプリコン無しで環を形成し形質転換用に使用され得る。従って、対象となる遺伝子は大腸菌などの異種宿主に導入され、短いランダム断片が単離され、標的遺伝子(例えば、セルラーゼ酵素をコードする遺伝子)と機能的に連結され、相同組み換えを促進し得る。
【0169】
発現ベクター
発現ベクターは、本明細書に記載する任意の発現カセットを含み、通常、宿主細胞における1または複数の対象となるポリヌクレオチドの発現に必要な全ての要素を含み得る。幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドはベクター内に導入され、組み換え微生物における燃料生産のための宿主細胞の形質転換に適切な組み換え発現ベクターを生み出す。他の態様において、発現カセットはベクター内に導入され、宿主細胞の形質転換に適した組み換え発現ベクターを生み出し得る。幾つかの態様において、1または複数の発現カセットを含む発現ベクターが提供される。
【0170】
発現ベクターは自律的に複製し得る、または宿主細胞のゲノム内に挿入されることにより複製し得る。幾つかの態様において、発現カセットは宿主細胞ゲノム内に相同的に組み込まれ得る。他の態様において、遺伝子は宿主細胞ゲノム内に非相同的に組み込まれ得る。幾つかの態様において、発現カセットは二重相同組み換えを介して所望の遺伝子座内に組み込まれ得る。
【0171】
幾つかの態様において、2以上の宿主細胞で使用可能なベクターが望ましい。例えば、ベクターは大腸菌でのクローニングおよびクロストリジウム種での発現に使用され得る。このようなベクターは、通常、大腸菌の複製起点およびクロストリジウムまたは他のグラム陽性細菌に適合する起点を含む。幾つかの大腸菌およびグラム陽性のプラスミド複製起点が知られている。ベクターの追加要素は、例えば、カナマイシン耐性またはアンピシリン耐性など、所望のポリヌクレオチド配列で形質転換される細胞の検出および/または選別を可能にする選択可能なマーカーを含み得る。例示的なクロストリジウムのシャトル・ベクターは、Mauchline et al. (1999) In: Clostridia: Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology, AL Demain and JE Davies, ed. (ASM Press), pp. 475-492;およびHeap et al., J. Microbiol .Methods, 78:79-85(2009)に記載されている。
【0172】
幾つかの態様において、発現ベクターは、1または複数の遺伝子の存在および/または発現が宿主細胞の耐性を経済上関連のあるエタノール濃度まで可能にする遺伝子を含み得る。例えば、omrA、lmrA、およびlmrCDが発現ベクターに含まれ得る。ワイン乳酸菌オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)由来のOmrAおよび乳酸連鎖球菌(Lactococcus lactis)由来のそのホモログLmrAは、100倍から10,000倍までtolC(-)大腸菌の相対的耐性を増大させることが示された(Bourdineaud et al., A bacterial gene homologous to ABC transporters protect Oenococcus oeni from ethanol and other stress factors in wine. Int. J. Food Microbiol. 2004 Apr 1;92(1):1-14)。従って、宿主細胞のエタノール耐性を増大させるために、omrA、lmrA、および他のホモログを組み込むことは有益であり得る。
【0173】
幾つかの態様において、本明細書で提供するベクターは宿主生物ゲノム内への標的組み込みを促進するための1または複数のゲノム核酸分節を含み得る。標的組み込み用のゲノム核酸分節は約10ヌクレオチドから約20,000ヌクレオチドまでの長さであり得る。幾つかの態様において、標的組み込み用のゲノム核酸分節は、約1,000ヌクレオチドから約10,000ヌクレオチドまでの長さであり得る。他の態様において、標的組み込み用のゲノム核酸分節は、約1kbから約2kbの間の長さである。幾つかの態様において、核ゲノム核酸の「隣接」片は、対象となる遺伝子が隣接DNAの非コード領域内にクローニングされる場合、2つの隣接片に分割され得る。これは、二重交叉型組み換えによる細菌染色体内への介在核酸領域の組み込みを可能にする。他の態様において、隣接片は、互いに隣接していない核核酸配列の分節を含み得る。幾つかの態様において、第一隣接ゲノム核酸分節は核ゲノムの第二隣接ゲノム核酸分節から約0から約10,000塩基対離れて位置する。
【0174】
幾つかの態様において、ゲノム核酸分節は、ベクター内に導入され、本明細書に開示する任意の発現カセットを宿主生物の核ゲノム内へ標的組み込みするための骨格発現ベクターを生成し得る。核酸配列を導入するための当技術分野において知られる種々の方法のいずれかが用いられ得る。例えば、核酸分節は適切なプライマーおよびPCRを用いて単離された核ゲノム核酸から増幅され得る。次いで、増幅産物は、例えば連結により種々の適切なクローニング・ベクターのいずれかに導入され得る。幾つかの有用なベクターは、例えばpGEM13z、pGEMTおよびpGEMTEasy(Promega, Madison, WI);pSTBluel(EMD Chemicals Inc. San Diego, CA);ならびにpcDNA3.1、pCR4-TOPO、pCR-TOPO-II、pCRBlunt-II-TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、核由来の少なくとも一つの核酸分節がベクターに導入される。他の態様において、核由来の2以上の核酸分節がベクターに導入される。幾つかの態様において、2つの核酸分節はベクターで互いに隣接し得る。幾つかの態様において、ベクターに導入される2つの核酸分節は、例えば約1塩基対から30塩基対の間で離れ得る。幾つかの態様において、2つの核酸分節を隔てる配列は少なくとも一つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
【0175】
種々の態様において、調節配列が本発明のベクターに含まれ得る。幾つかの態様において、調節配列は、核ゲノムに導入される遺伝子(例えば対象となる遺伝子)の発現を調節するための核酸配列を含む。種々の態様において、調節配列は骨格発現ベクターに導入され得る。例えば、種々の調節配列が宿主微生物ゲノムから同定され得る。調節配列は、例えば核遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロン、エクソン、5'UTR、3'UTR、または前記のいずれかの任意部分を含み得る。標準的な分子生物学技術を用いて、調節配列が所望のベクターに導入され得る。幾つかの態様において、ベクターはクローニング・ベクターまたは標的組み込み用の核酸分節を含むベクターを含む。
【0176】
幾つかの態様において、核ゲノムに導入される遺伝子の発現を調節する核酸配列は、5'UTR、3'UTR、プロモーターおよび/もしくはエンハンサー、またはその部分、1または複数の核遺伝子のPCR増幅によりベクター内に導入され得る。適切なPCRサイクル条件を用いて、増幅されるべき配列に隣接するプライマーが調節配列を増幅するために使用される。幾つかの態様において、プライマーは種々の制限酵素のいずれかの認識配列を含み得ることにより、PCR増幅産物に該認識配列を導入する。PCR産物は適切な制限酵素で消化されベクターの対応部位に導入され得る。
【0177】
他の態様において、発現されるべき1または複数の遺伝子は市販のシステムまたは類似の方法を用いて微生物のゲノムに組み込まれ得る。クロストリジウムへのこれらの方法の適用性は、クロストリジウム細胞における外来遺伝子の組み込みおよび発現を含めて、証明されている(例えば、Heap et al. (2007). J. Microbiol. Methods. 70:452-464; Chen et al. (2007). Plasmid. 58:182-189を参照のこと)。
【0178】
微生物宿主
幾つかの態様は、本明細書に記載するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、または発現ベクターのいずれかを含む微生物に関する。宿主細胞は、動物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、および酵母などの真核細胞、ならびに細菌などの原核細胞を含み得るがこれらに限定されない。幾つかの態様において、宿主はC.フィトフェルメンタンスである。幾つかの態様において、潜在的な宿主生物は組み換え生物を含み得る。
【0179】
幾つかの態様において、組み換え微生物は、セルロース分解または糖分解性の微生物であり得る。ある態様において、微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクター・スクシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、ハロセラ・セルロリティカ、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムまたはサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムであり得る。
【0180】
幾つかの態様において、宿主微生物は、例えば、キサントモナス(Xanthomonas)種などのグラム陰性細菌、ならびにB.プミルス(B. pumilus)、枯草菌およびB.コアグランス(B. coagulans)などのバチルス属;例えばC.アセトブティリキュム、C.アエロトレランス(C. aerotolerans)、C.サーモセルム、C.サーモヒドロスルフリキュム(C. thermohydrosulfuricum)、およびC.サーモサッカロリティキュムなどのクロストリジウム;セルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda)などのセルロモナス種;およびブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンスのメンバーを含むグラム陽性細菌のより広範なカテゴリーから選択され得る。大腸菌に加えて、例えば、E.クリサンゼミ(E. chrysanthemi)などのエルヴィニア属;ならびにK.プランチコラ(K. planticola)およびK.オキシトカ(K. oxytoca)などのクレブシエラ(Klebsiella)の他の腸内細菌が用いられ得る。幾つかの態様において、宿主微生物はザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)であり得る。同様に許容される宿主生物は種々の酵母であり、Cr.アルビジュス(Cr. albidus)などのクリプトコッカス種、モニラ(Monilia)、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)およびプルラリア・プルランス(Pullularia pullulans)の種、および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae);ならびにバクテロイデス・スシノゲネス(Bacteroides succinogenes)、T.エタノリキュス(T. ethanolicus)などのサーモアナエロバクテル種、T.ブロキイ(T. brockii)などのサーモアナエロビウム(Thermoanaerobium)種、T.アセトエチリキュスなどのサーモバクテロイデス種、およびルミノコッカス(例えば、R.フラベファシエンス(R. flavefaciens))、サーモノスポラ(Thermonospora)(T.フスカ(T. fusca)など)およびアセチヴィブリオ(例えばA.セルロリティキュス(A. cellulolyticus))の属の種を含むがこれらに限定されない他のオリゴ糖代謝細菌により例示される。幾つかの態様において、宿主生物は、例えばアモフォラ(Amphora)、アナバエナ(Anabaena)、アニクストロデスミス(Anikstrodesmis)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、チャエトセロス(Chaetoceros)、クロレラ(Chlorella)、クロロコッカム(Chlorococcum)、シクロテラ(Cyclotella)、シリンドロゼカ(Cylindrotheca)、デュナリエラ(Dunaliella)、ユーグレナ(Euglena)、ヘマトコッカス(Hematococcus)、イソクリシス(Isochrysis)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannnochloropsis)、ナヴィキュラ(Navicula)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、ノデュラリア(Nodularia)、ノストク(Nostoc)、オオクロモナス(Oochromonas)、オオシスティス(Oocystis)、オスシラルトリア(Oscillartoria)、パヴロヴァ(Pavlova)、ファエオダクティルム(Phaeodactylum)、プレイトモナス(Playtmonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、ポリラ(Porhyra)、シュードアナバエナ(Pseudoanabaena)、ピラミモナス(Pyramimonas)、スティココッカス(Stichococcus)、シネココッカス(Synechococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、ザラシオシラ(Thalassiosira)、トリコデスミウム(Trichodesmium)などの藻類から選択され得る。本基準を満たす微生物に関する文献は、例えばBiely, Trends in Biotech. 3: 286-90 (1985)、Robsen et al., Enzyme Microb. Technol. 11 : 626-44 (1989)およびBeguin Ann. Rev. Microbiol. 44: 219-48 (1990)に示されており、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられる。適切な形質転換方法論は、これらの異なる種類の宿主のそれぞれで利用でき、以下に詳細に記載する。例えば、出芽酵母におけるキシロース・イソメラーゼの発現を開示するBrat et al. Appl. Env. Microbiol. 29; 75:2304-2311も参照のこと。
【0181】
幾つかの態様において、宿主微生物は、例えばオリゴ糖を細胞内に輸送するのに必要なタンパク質を産生する能力、および該オリゴ糖を代謝する酵素の細胞内濃度により選択され得る。このような微生物の例は、E.クリサンゼミおよび他のエルヴィニア、ならびに天然でβ-キシロシダーゼを産生するK.オキシトカおよびK.プランチコラなどのクレブシエラ種などの腸内細菌を含む。ある大腸菌は、セロビオース、マルトースおよび/またはマルトトリオースを輸送および代謝するため、魅力ある宿主である。例えば、Hall et al., J. Bacteriol. 169: 2713-17 (1987)を参照のこと。
【0182】
幾つかの態様において、宿主微生物は、試験微生物がオリゴ糖を輸送および代謝するか否かを決定するためのスクリーニングにより選別され得る。このようなスクリーニングは種々の方法で達成され得る。例えば、微生物は、いずれが適切なオリゴ糖基質上で増殖するかを決定するためにスクリーニングされ得る。スクリーニングは細胞内に単量体のみを輸送しない微生物を選別するよう設計される。例えば、前出のHall et al.(1987)を参照のこと。あるいは、微生物は、適切な細胞内酵素活性、例えばβ-キシロシダーゼ活性について検定され得る。潜在的な宿主微生物の増殖は、エタノール耐性、塩耐性、および温度耐性について更にスクリーニングされ得る。Alterhum et al., Appl. Environ. Microbiol. 55: 1943-48 (1989); Beall et al., Biotechnol. & Bioeng. 38: 296-303 (1991)を参照のこと。
【0183】
幾つかの態様において、宿主微生物は一つまたは複数の下記の特徴を示し得る:1%エタノールを超えるエタノール濃度で増殖する能力、例えば0.3モルの塩濃度に耐える能力、例えば0.2モルの酢酸塩濃度に耐える能力、および例えば40℃の温度に耐える能力、ならびに最小のプロテアーゼ活性でセルロース、ヘミセルロースおよびペクチンの脱重合に有用な高濃度の酵素を産生する能力。幾つかの態様において、宿主微生物は天然のキシラナーゼまたはセルラーゼも含み得る。幾つかの態様において、燃料生産のための発現ベクターの導入後、宿主は上記の1または複数の有用な特徴を保持しつつ90%を上回る理論的収率で試験される種々の糖からエタノールを生産し得る。
【0184】
宿主細胞の形質転換
幾つかの態様は、宿主微生物の細胞内に本明細書に記載するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクターのいずれかを導入する方法に関する。それにより、このような態様は、種々の発酵条件下で培養される場合に燃料を生産できる組み換え微生物を産生する。細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、電気穿孔法、リポフェクション、トランスフェクション、接合、化学形質転換、注入、粒子流入銃射撃(particle infloe gun bombardment)、および磁気泳動(magnetophoresis)を含み得る。磁気泳動は、細胞内に核酸を導入するために磁気泳動およびマイクロサイズ線形磁石のナノ技術製造を用いる(Kuehnle et al., U.S. Patent No. 6,706,394; 2004; Kuehnle et al., U.S. Patent No. 5,516,670; 1996)。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス内へのメチル化プラスミドの電気形質転換は、Mermelsteinにより開発されたプロトコルに従って実施され得る(Mermelstein, et al. Bio/Technology 10:190-195 (1992))。より多くの方法は接合による形質転換を含み得る。他の態様において、陽性の形質転換体は適切な抗生物質が補足された寒天で固めたCGM上で単離され得る。
【0185】
種々の態様において、形質転換法は、1または複数の微生物への核酸導入の可視化または定量化のための1または複数の方法と併用され得る。さらに、これは、例えば増殖、蛍光、炭素代謝、イソプレノイド流動、または脂肪酸含量において、未改変表現型と統計的差異を示す任意系列の同定と併用され得ることが教示される。形質転換法は導入核酸の発現に起因する産物の可視化または定量化とも併用され得る。
【0186】
通常、C.フィトフェルメンタンスへの形質転換前に、プラスミドDNAを含むベクターはクロストリジウムのエンドヌクレアーゼによる制限を防ぐためにメチル化され得る(Mermelstein and Papoutsakis. Appl. Environ. Microbiol. 59: 1077-1081 (1993))。幾つかの態様において、メチル化はphi3TIメチルトランスフェラーゼにより達成され得る。更なる態様において、プラスミドDNAは、phi3TIメチルトランスフェラーゼ遺伝子の活性コピーを運ぶpDHKMベクターを含むDH10β大腸菌内に形質転換され得る(Zhao, et al. Appl. Environ. Microbiol. 69: 2831-41 (2003))。
【0187】
一般に、C.フィトフェルメンタンス株は、40μg/mlエリスロマイシン/クロラムフェニコールまたは25μg/mlチアンフェニコールなどの適切な抗生物質を補足した37℃のクロストリジウム増殖培地(CGM)で嫌気的に増殖し得る(Hartmanis and Gatenbeck. Appl. Environ. Microbiol. 47: 1277-83 (1984))。加えて、C.フィトフェルメンタンス株は、FORMA SCIENTIFIC(商標)嫌気性チャンバー(THERMO FORMA(商標)、オハイオ州マリエッタ)において37℃で適切な抗生物質を補足した100ml CGMのクローズド・キャップ・バッチ発酵で培養され得る。
【0188】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスは、Hungateの技術に従って培養され得る(Hungate, R. E. (1969). A roll tube method for cultivation of strict anaerobes. Methods Microbiol 3B, 117-132)。GS-2C培地は、C.フィトフェルメンタンス株の濃縮、単離およびルーチン培養に使用でき、ならびにJohnson et alのGS-2から得られ得る(Johnson, E. A., Madia, A. & Demain, A. L. (1981). Chemically defined minimal medium for growth of the anaerobic cellulolytic thermophile Clostridium thermocellum. Appl Environ Microbiol 41, 1060-1062)。GS-2Cは下記を含み得る:6.0 g/lボールミル粉砕セルロース(Leschine, S. B. & Canale-Parola, E. (1983). Mesophilic cellulolytic Clostridia from freshwater environments. Appl Environ Microbiol 46, 728-737);6.0g/l酵母抽出物;2.1g/l尿素;2.9g/l K2HPO4;1.5g/l KH2PO4;10.0g/l MOPS;3.0g/lクエン酸三ナトリウム二水和物;2.0g/l塩酸システイン;0.001g/lレザズリン;pHを7.0に調整。ブロス培養は30℃でO2を含まないN2の環境でインキュベートされ得る。寒天培地のプレート上での培養は嫌気性チャンバー(Coy Laboratory Products)のN 2/CO2/H2 (83:10:7)の環境において室温でインキュベートされ得る。
【0189】
増殖、発現および燃料生産
幾つかの態様は本明細書に記載する任意の組み換え微生物を利用した燃料生産に関する。幾つかの態様において、1または複数の異なる組み換え微生物が燃料を生産するために組み合わせて用いられ得る。このような組み合わせは単一発酵反応において2以上の異なる種類の組み換え微生物を含み得る。他の組み合わせは、バイオマスから燃料を生産する工程の逐次段階で用いられる1または複数の異なる種類の組み換え微生物を含み得る。幾つかの態様において、一つの組み換え微生物がバイオマスから燃料を生産するために用いられ得る。幾つかの態様において、組み換え微生物は、リグノセルロースおよび他の基質から糖および多糖などの産物の生産を触媒するために用いられ得る。
【0190】
幾つかの態様において、組み換え微生物はその中に含まれる発現カセットから遺伝子発現に適した条件下で燃料生産用に培養され得る。ある態様において、インキュベーション条件は用いられる宿主微生物に応じて変化し得る。幾つかの態様において、インキュベーション条件は発現カセットに関連し得る調節要素の種類に従って変化し得る。例えば、核酸に連結される誘導プロモーターを含む発現カセットを含む組み換え生物は、核酸発現用の培養培地への特定剤の添加を必要とし得る。
【0191】
他の態様において、組み換え微生物は、2008年2月28日に出願された同時係属中の米国特許出願第2007/0178569号および米国仮特許出願第61/032,048号に記載するように、高い効率で広域スペクトルの物質を燃料に発酵するために利用されるC.フィトフェルメンタンスの株であり得る。両参照文献は本明細書により全体として明確に組み入れられる。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394Tであり得る。
【0192】
幾つかの態様において、基質(例えば、リグノセルロース原料)を発酵させるために利用される工程は、(1)植物多糖を含む前処理されたバイオマス由来物質を提供する段階(前処理は、切断、細断、粉砕などであり得る);(2)酸素の存在下でセルロース分解性嫌気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第一培養物を前処理されたバイオマス由来物質に植菌し好気性ブロスを生成する段階であって、嫌気性微生物が少なくとも部分的に植物多糖を加水分解できる段階;および(3)植物多糖の一部がエタノールに変換されるまで植菌された嫌気性ブロスを発酵させる段階を含み得る。他の態様において、基質を発酵させるために利用される工程は、(1)植物多糖を含む前処理されたバイオマス由来物質を提供する段階(前処理は、切断、細断、粉砕などであり得る);(2)酸素の存在下でセルロース分解性好気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第一培養物を前処理されたバイオマス由来物質に植菌し好気性ブロスを生成する段階であって、好気性微生物が少なくとも部分的に植物多糖を加水分解できる段階;(3)セルロース分解性好気性微生物が少なくとも一部の酸素を消費し少なくとも一部の植物多糖を加水分解するまで好気性ブロスをインキュベートすることにより、好気性ブロスを、発酵性糖を含む加水分解物を含む嫌気性ブロスに変換する段階;(4)発酵性糖をエタノールに変換できる嫌気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第二培養物を嫌気性ブロスに植菌する段階;および(5)発酵性糖の一部がエタノールに変換されるまで植菌された嫌気性ブロスを発酵させる段階を含み得る。
【0193】
発酵効率は種々の方法で測定され、例えば効率変化は野生型生物と比較して測定され得る。また、効率変化は、組み換え生物と野生型生物間の単位時間当たりのセルロースなどの基質からの燃料生産の割合として測定され得る。幾つかの態様において、組み換え生物と野生型生物間の効率変化は、1%よりも大きく、5%よりも大きく、10%よりも大きく、15%よりも大きく、20%よりも大きく、25%よりも大きく、30%よりも大きく、35%よりも大きく、40%よりも大きく、45%よりも大きく、50%よりも大きく、55%よりも大きく、60%よりも大きく、65%よりも大きく、70%よりも大きく、75%よりも大きく、80%よりも大きく、85%よりも大きく、90%よりも大きく、95%よりも大きく、100%よりも大きく、および200%よりも大きくあり得る。
【0194】
種々の微生物を増殖するための様々な培地が当技術分野において公知である。増殖培地は最小および/もしくは規定、または完全および/もしくは複合であり得る。発酵炭素源は、おがくず、木粉、木材パルプ、紙パルプ、紙パルプ廃棄蒸気、スイッチグラスなどの草、ハマナなどのバイオマス植物および作物、藻類、もみ殻、バガス、ジュート、葉、刈り取った草、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ粉、蒸留粒、およびペクチンなどのセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグノセルロース物質を含む前処理または未処理の原料を含み得る。
【0195】
アミノ酸、タンパク質、加水分解されたタンパク質、アンモニア、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、大豆、大豆誘導体、カゼイン、カゼイン誘導体、粉乳、牛乳誘導体、乳清、酵母抽出物、加水分解酵母、自己消化酵母、トウモロコシ浸出液、トウモロコシ浸出固体、グルタミン酸ナトリウムなどの窒素含有化合物、および/または他の発酵窒素源、ビタミン、および/またはミネラル補給剤を含む、さらなる栄養素が発酵反応において存在し得る。幾つかの態様において、グルコース、スクロース、マルトース、コーンシロップ、乳酸などの1または複数の更なる低分子量炭素源が添加または存在し得る。幾つかの態様において、増殖培地の可能な一形態は、Miller J. H. (1992)により記載される改変Luria-Bertani(LB)ブロス(1リットル当たり10g Difcoトリプトン、5g Difco酵母抽出物、および5g塩化ナトリウム)であり得る。
【0196】
燃料を生産する能力がある宿主細胞が本明細書に記載する発現ベクターで形質転換され、組み換え微生物が適切な条件下で増殖した後に、燃料の生産増加が観察され得る。燃料の生産増加は当業者に知られる標準的方法により観察され得る。
【0197】
幾つかの態様において、本明細書に開示する組み換え微生物の増殖および生産は、標準的なバッチ発酵、流加バッチ発酵または連続発酵で実施され得る。ある態様において、ある宿主に関しては還元酸素下または嫌気性条件下で発酵を実施することが望ましい。他の態様において、燃料生産は、好気性生物が増殖するのに十分な酸素濃度で、および任意でエアリフト(air-lift)もしくは等価な発酵槽を用いて実施され得る。幾つかの態様において、組み換え微生物はバッチ培養を用いて増殖する。幾つかの態様において、組み換え微生物はバイオリアクター発酵を用いて増殖する。幾つかの態様において、組み換え微生物が増殖する増殖培地は交換されることにより、燃料生産のレベルを増大し得る。培地交換の数は変化し得る。
【0198】
発酵のpHは増殖および宿主による燃料生産に十分な高さであり得る。発酵ブロスのpHの調整は炭酸カルシウムまたは水酸化物などの中和剤を用いて実施され得る。上記発酵方法のいずれかの選択および取り込みは利用する宿主の株および下流工程に極めて依存する。
【0199】
幾つかの態様において、有機溶媒は種々の手段によりC.フィトフェルメンタンスを用いて発酵させたバイオマスから精製され得る。ある態様において、有機溶媒は蒸留により精製される。例示的態様において、約96%のエタノールが発酵混合物から蒸留され得る。さらなる態様において、燃料用エタノール、即ち約99〜100%のエタノールが、約96%エタノールの共沸蒸留により得られ得る。共沸蒸留は、約96%エタノールにベンゼンを添加後、混合物を再蒸留することにより達成され得る。あるいは、約96%エタノールは水を取り除くため分子篩を通過し得る。
【0200】
幾つかの態様において、燃料を生産する方法は、本明細書に記載する任意の微生物を培養する段階、および本明細書に記載するC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子をコードする任意の核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクターにより発現するタンパク質を培養培地に供給する段階を含み得る。特定の態様において、核酸はヒドロラーゼをコードし得る。ある態様において、単離タンパク質が培養培地に供給され得る。
【0201】
下記の実施例は説明目的であって限定目的ではない。
【実施例】
【0202】
実施例1:C.フィトフェルメンタンスのDNA配列の同定
挿入ライブラリーの構築、単離および配列決定
ゲノムDNAは従来の全ゲノム・ショットガン戦略を用いて配列決定した。簡潔には、2〜3kbのランダムなDNA断片が機械的剪断後に単離された。これらのゲル抽出断片を濃縮し、末端修復し、pUC18にクローニングした。両端プラスミド配列決定反応はPE BigDye(商標)Terminator chemistry (Perkin Elmer)を用いて実施し、配列決定ラダーはPE 3700自動DNAシーケンサーで決定した。一回(xリード)の小挿入ライブラリー配列決定が行われ、x倍の冗長性を生じた。
【0203】
配列組み立ておよびギャップ埋め
配列トレースは、Phrap(P. Green, University of Washington, Seattle, Washington, USA)を用いた組み立ておよびConsed45を用いた可視化の前に、ベース呼び出しおよびデータ品質の評価のためPhred43、44を用いて処理した。
【0204】
配列分析および注釈
遺伝子モデリングは、Critica47、Glimmer48およびGeneration(compbio.ornl.gov/generation/index.shtml)モデリング・パッケージを用いて行い、結果をまとめ、GenBank非冗長データベース(NR)と対比した翻訳のベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール・フォ・プロテインズ(BLASTP)調査を行った。最良NRマッチと対比した各遺伝子モデルのN末端のアラインメントは遺伝子モデルを選定するために使用した。BLASTマッチが選出されなかった場合、Criticaモデルが留保された。それらの長さの10%よりも多く重複する遺伝子モデルは通知され、BLASTマッチで遺伝子に優先度を与えた。修正された遺伝子/タンパク質セットは、BLASTP対NRに加えて、KEGG GENES、InterPro(incorporating Pfam, TIGRFams, SmartHMM, PROSITE, PRINTS and ProDom)およびクラスターズ・オブ・オーソロガス・グループス・オブ・プロテインズ(COG)データベースに対して調査した。これらの結果から、カテゴリー化はKEGGおよびCOGの階層を用いて開発された。自動機能割当の初期基準は、パターン法またはプロファイル法からの符合する証拠に加えて、BLASTPアラインメントの一致する長さの80%を超える最小50%残基同一性を要した。推定割当は、長さの80%を上回って30%まで下がった同一性について為された。
【0205】
BLASTPを用いて、C.フィトフェルメンタンスの各遺伝子を配列決定ゲノムからの全遺伝子と対照して調査し、各予測タンパク質の第一ブラストが抽出された。理論上の細胞内局在性およびシグナルペプチド切断部位の分析はPSORT(psort.hgc.jp/form.html)を用いて実施した。CAZyドメインはCAzy(炭水化物活性酵素、www.cazy.org)により注釈が施された。輸送体はTransportDB(www.membranetransport.org)を用いて注釈が施された。C.フィトフェルメンタンスの完全配列は2007年8月に入手可能となった(アクセッション番号NC_010001)。
【0206】
実施例2:C.フィトフェルメンタンスにおけるDNA配列の発現分析
マイクロアレイ設計
C.フィトフェルメンタンスのカスタムAffymetrixマイクロアレイ設計(図3)は、全ての同定されたオープン・リーディング・フレーム(ORF)の発現レベルの測定、mRNAの5'および3'非翻訳領域の推定、オペロンの決定、tRNAの発見、ならびに代替遺伝子モデル間の識別(主に開始コドンの選択において異なる)を可能にする。
【0207】
推定タンパク質をコードする配列は、GeneMark(商標)(Besemer, J., and M. Borodovsky. 2005. GeneMark: web software for gene finding in prokaryotes, eukaryotes and viruses. Nucleic Acids Res 33:W451-4)およびGlimmer(Delcher, A. L., K. A. Bratke, E. C. Powers, and S. L. Salzberg. 2007. Identifying bacterial genes and endosymbiont DNA with Glimmer. Bioinformatics 23:673-9)の予測プログラムを用いて同定した。これらの2つの予測の和集合を発現セットとして用いた。2つのタンパク質がそれらのN末端領域で異なった場合、2つのタンパク質の小さい方を転写分析に使用したが、伸長領域は実際のN末端を規定するためにプローブによって表した。このアレイ設計は、GenBank記録に表された全タンパク質を包含し、GenBank記録で見出されない更なるORFを含んだ。クロス・ハイブリダイゼーションを最小限にするため、各プローブが固有であることを保証する標準的なAffymetrixアレイ設計プロトコルに従った。アレイ設計は11μ機能を備えた49-5241フォーマットAffymetrix GeneChip(商標)アレイで実行した。
【0208】
細胞培養増殖およびRNA単離
C.フィトフェルメンタンスは、14の特定炭素源(グルコース;キシラン;セロビオース;セルロース;D-アラビノース;L-アラビノース;フコース;ガラクトース;ラミナリン;マンノース;ペクチン;ラムノース;キシロース;または酵母抽出物)の一つと0.3%(wt/vol)で補足されたGS2培地において100% N2下30℃で管または500ml Erlenmeyerフラスコで培養した。増殖は660nmで光学密度の変化を観測することにより分光光度法で測定した。
【0209】
RNAを中間指数期の培養物(OD660=0.5)から精製した。1mlの試料を液体窒素に浸漬することにより急速冷凍した。4℃で5分間8,000rpmで遠心分離することにより細胞を収集し、Qiagen RNeasy(商標)Mini Kitを用いて全RNAを単離し、RNAseを含まないDNase Iで処理した。RNA濃度はNanodrop(商標)分光光度計を用いて260/280nmの吸光度により決定した。
【0210】
マイクロアレイ処理
cDNA合成、アレイ・ハイブリダイゼーションおよび画像化は、マサチューセッツ大学医療センターのゲノム核施設で実施した。各試料からの10μgの全RNAを鋳型として使用しAffymetrix GeneChip(商標)DNA Labeling Reagent Kitsを用いて標識cDNAを合成した。標識cDNA試料は、Affymetrix社のガイドラインに従って、Affymetrix GeneChip(商標)Arraysとハイブリダイズした。ハイブリダイズしたアレイはGeneChip(商標)Scanner 3000でスキャンした。得られる未処理の点画像データファイルは、Microarray Suite version 5.0(MAS 5.0)を用いてピボット、品質報告、および正規化プローブ強度ファイルに処理した。発現値はGCRMA法を実装するカスタム・ソフトウェア・パッケージを用いて計算した。
【0211】
マイクロアレイ・データの品質は、BioConductor(Gentleman, R. C, V. J. Carey, D. M. Bates, B. Bolstad, M. Dettling, S. Dudoit, B. Ellis, L. Gautier, Y. Ge, J. Gentry, K. Hornik, T. Hothorn, W. Huber, S. Iacus, R. Irizarry, F. Leisch, C. Li, M. Maechler, A. J. Rossini, G. Sawitzki, C. Smith, G. Smyth, L. Tierney, J. Y. Yang, and J. Zhang. 2004. Bioconductor: open software development for computational biology and bioinformatics. Genome Biol 5: R80)のaffyPLMパッケージ(Bolstad, B. M., F. Collin, J. Brettschneider, K. Simpson, L. Cope, R. Irizarray, and T. P. Speed. 2005. Quality Assessment of Affymetrix GeneChip Data, p. 33-47. In R. Gentleman, V. Carey, W. Huber, and S. Dutoit (ed.), Bioinformatics and Computational Biology Solutions Using R and Bioconductor. Springer, Heidelberg.)により提供されるプローブ-レベル・モデリング手順を用いて分析した。アレイの製造または処理による画像アーチファクトは観察されなかった。34(グルコース)、32(セロビオース)、30(キシロース)および34(セルロース)のマイクロアレイ・バックグラウンド値はAffymetrixアレイについての典型的な20〜100平均バックグラウンド値内であった。C.フィトフェルメンタンスにおける使用に適合させた手順の品質管理チェック、即ち、RNA精製、cDNA合成、標識およびハイブリダイゼーションは高品質のデータを示した。
【0212】
mRNA転写産物境界の推定
推定プロモーター配列を同定するために、mRNA転写産物の長さは+/-24塩基の誤差で試算した。ORFに隣接する遺伝子間領域およびORF内の領域の発現レベルは特異的プローブを用いて比較した(図4)。1000A.U.を超える示度数は、特異的プローブが発現領域の一部を表すことを示した。逆に、250A.U.未満の示度数は、プローブと発現領域との間に特異的なハイブリダイゼーションはないことを示した。推定発現領域を示すプローブは、平均(遺伝子1)-stdev(遺伝子1)または平均(遺伝子2)-stdev(遺伝子2)より大きい示度数を有した。
【0213】
単一プローブからの誤差を回避するために、少なくとも2つの連続プローブからの示度数を用いて発現領域を示した。しかしながら、幾つかのプローブは無反応にさせる性質を有し得るため、無反応なプローブの上流および下流の連続プローブが基準を満たす場合、閾値未満の示度数の単一プローブはマッピング発現領域に含まれた。これは、低い発現レベルの遺伝子の転写産物境界のより優れた定量化を可能にし、隣接発現した遺伝子間領域の需要を確固たるものとした。
【0214】
BLASTは、C.フィトフェルメンタンスのゲノムと対照して全ての検出されたプローブについてBLASTを実行することにより、潜在的なクロス-ハイブリダイゼーション源を同定するために使用した。0.01より低いE値の任意のマッチについて、BLASTマッチに対応するアレイ上のプローブについて強度を測定した。マッチのいずれかが問題のプローブより高い発現値を示した場合、プローブはクロス-ハイブリダイゼーションの可能な源として標識された。それぞれの推定発現領域について、陽性プローブの数および可能なクロス-ハイブリダイゼーションであると見なされるこれらの陽性プローブの数が報告された。それぞれの予測グリコシド・ヒドロラーゼ関連タンパク質および推定アルコール・デヒドロゲナーゼについての転写産物境界が報告された。
【0215】
グルコース上の増殖と比較してD-アラビノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表10に提示される。
【0216】
(表10)D-アラビノース上の発現
【0217】
グルコース上の増殖と比較してL-アラビノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表11に提示される。
【0218】
(表11)L-アラビノース上の発現
【0219】
グルコース上の増殖と比較してセロビオース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表12に提示される。
【0220】
(表12)セロビオース上の発現
【0221】
グルコース上の増殖と比較してセルロース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表13に提示される。
【0222】
(表13)セルロース上の発現
【0223】
グルコース上の増殖と比較してフコース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表14に提示される。
【0224】
(表14)フコース上の発現
【0225】
グルコース上の増殖と比較してガラクトース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表15に提示される。
【0226】
(表15)ガラクトース上の発現
【0227】
グルコース上の増殖と比較してラミナリン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表16に提示される。
【0228】
(表16)ラミナリン上の発現
【0229】
グルコース上の増殖と比較してマンノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表17に提示される。
【0230】
(表17)マンノース上の発現
【0231】
グルコース上の増殖と比較してペクチン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表18に提示される。
【0232】
(表18)ペクチン上の発現
【0233】
グルコース上の増殖と比較してラムノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表19に提示される。
【0234】
(表19)ラムノース上の発現
【0235】
グルコース上の増殖と比較してキシラン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表20に提示される。
【0236】
(表20)キシラン上の発現
【0237】
グルコース上の増殖と比較してキシロース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表21に提示される。
【0238】
(表21)キシロース上の発現
【0239】
グルコース上の増殖と比較して酵母抽出物上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表22に提示される。
【0240】
(表22)酵母抽出物上の発現
【0241】
実施例3:C.フィトフェルメンタンス・ゲノムのゲノム精査
ゲノム構成
C.フィトフェルメンタンスのISDg ATCC700394は、4,847,594bpの単環状染色体を有し、プラスミドを保有しない。染色体の複製起点はGCスキューの転移点の位置および特徴的な複製タンパク質dnaAの存在を用いて規定した(図5)。G+C含量は35.3%である。ゲノムの位置関数として1kbウィンドウのG+C含量をプロットすることにより(図6)、より高いG+C含量を有する幾つかの単離されたゲノム島を示す。6つの具体的な島の位置は平均G+C含量>50%の1kb領域として規定され、図6に示した。これらのゲノム島におけるいずれかの遺伝子または該島のそれぞれを取り囲む遺伝子が同定された(表23)。
【0242】
(表23)C.フィトフェルメンタンスのゲノムの一般的特徴
【0243】
概して、これらの高G+C島は低い遺伝子密度を有するようである。6ゲノム島を構成するG+C含量>50%を有する16個の1Kb領域のうち、12個の領域が遺伝子を含まない。高G+C島内で見出される遺伝子は、2つの要素系(ヒスチジン・キナーゼおよび応答調節因子)および推定コラーゲン三重らせん反復を有するタンパク質のみである。これらの高G+C領域を取り囲む遺伝子の大半は未知機能である。領域Vに隣接する遺伝子の一つはファージ・タンパク質をコードする(図6)。ゲノムは3,926の予測コード配列(CDS)をコードする(表23)。
【0244】
クロストリジウムのゲノムは通常強力なコード・バイアスを示すが、C.フィトフェルメンタンスにおいては、CDSはリーディング(52%)鎖およびラギング(48%)鎖に等しくコードされる(Seedorf, H. et al. The genome of Clostridium kluyveri, a strict anaerobe with unique metabolic features. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 105, 2128-2133 (2008))。CDSの73パーセントは推定機能を割り当てられた一方、11%は未知機能の遺伝子に類似性を有し、16%はC.フィトフェルメンタンスに固有のものであった。
【0245】
61のtRNA遺伝子が20のアミノ酸を網羅するゲノムで予測される(表23、表24)。
【0246】
(表24)C.フィトフェルメンタンスのtRNA遺伝子
【0247】
8つのリボソーム・オペロンは、その内3つがリーディング鎖上に置かれ5つがラギング鎖上に置かれており、一般に複製起点に近接してクラスター化されている(表23)。C.フィトフェルメンタンスに豊富なrRNAオペロンは、より多くの数のオペロンをもつ細菌に好ましい増殖条件に迅速に応答する能力の強化により示唆されるように、進化的適応であり、変動増殖条件を経験する生物に有利であり得る(Schmidt, T. M. in Bacterial genomes: physical structure and analysis. 221 (Chapman and Hall Co., New York, N.Y., 1997); Klappenbach, J. A., Dunbar, J. M. & Schmidt, T. M. rRNA operon copy number reflects ecological strategies of bacteria. Appl. Environ. Microbiol. 66, 1328-1333 (2000); Condon, C., Liveris, D., Squires, C., Schwartz, I. & Squires, C. L. rRNA operon multiplicity in Escherichia coli and the physiological implications of rrn inactivation. J. Bacteriol. 177, 4152-4156 (1995))。
【0248】
クラスター化されたファージ関連遺伝子の存在により示されるゲノムにおいて、推定プロファージが存在するようである。ファージ-クラスターは約39kbに及び40個の遺伝子を含む(Cphy2953〜2993)。頭部および尾部の構造要素ならびにアセンブリーに関与する15個の遺伝子は、クロストリジウム・ディフィシレ(difficile)ファージΦC2の遺伝子に相同である(Goh, S., Ong, P. F., Song, K. P., Riley, T. V. & Chang, B. J. The complete genome sequence of Clostridium difficile phage phiC2 and comparisons to phiCD119 and inducible prophages of CD630. Microbiology 153, 676-685 (2007))。ファージが、その生活環、即ち、DNAパッケージング、尾部組み立て、細胞溶解、溶原性制御ならびにDNAの複製、組み換え、および修飾を完了するために必要な機能的に等価な遺伝子がゲノムに存在するか否か不明である(Id)。近縁のゲノムより少ない27個の挿入配列に関連する遺伝子(トランスポゼース)が存在する(表25)。
【0249】
(表25)クロストリジウム・ゲノムの比較
【0250】
C.フィトフェルメンタンスは植物リターに関連する土壌微生物と進化的に関係する
C.フィトフェルメンタンスと未配列決定ゲノムを含むクロストリジウム綱の他のメンバーとの系統発生関係を解明するために、分離株および最も近縁のメンバーの16S rRNA遺伝子配列(1,611bp)を近隣結合分析に用いた。ISDg株はヒト/ラット/ニワトリの腸内微生物の大半から成るクラスターXIVaのメンバーであり、且つ多数の病原菌およびソルベントジェニック(solventogenic)のクロストリジウム・アセトブティリキュムを含むクラスターI、ならびにクロストリジウム・セルロリティキュムおよびクロストリジウム・サーモセルムなどのセルロース分解性細菌を含むクラスターIIIと遠縁でしかないことを系統発生により確認した(図7)(Warnick, T. A., Methe, B. A. & Leschine, S. B. Clostridium phytofermentans sp. nov., a cellulolytic mesophile from forest soil. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 52, 1155-1160 (2002); Collins, M. D. et al. The phylogeny of the genus Clostridium: proposal of five new genera and eleven new species combinations. Int. J. Syst. Bacteriol. 44, 812-826 (1994))。クラスターXIVa内で、C.フィトフェルメンタンスは、無酸素性水田土壌、メタン生成埋め立て浸出液のバイオリアクター(93.7〜93.8%類似性)(Burrell, P. C., O'Sullivan, C., Song, H., Clarke, W. P. & Blackall, L. L. Identification, detection, and spatial resolution of Clostridium populations responsible for cellulose degradation in a methanogenic landfill leachate bioreactor. Appl. Environ. Microbiol. 70, 2414-2419 (2004); Hengstmann, U., Chin, K. J., Janssen, P. H. & Liesack, W. Comparative phylogenetic assignment of environmental sequences of genes encoding 16S rRNA and numerically abundant culturable bacteria from an anoxic rice paddy soil. Appl. Environ. Microbiol. 65, 5050-5058 (1999))、クロストリジウム・アミノヴァレリキュム(aminovalericum)種(92.4%類似性)、および腸内微生物分岐群(89.7%類似性)から分岐したクロストリジウム・ジェジュエンセ(jejuense)(92.2%類似性)、のからのメタゲノム分析から導き出された未培養細菌を含む分岐群の一部である(図7)。
【0251】
rRNA分析に基づくクロストリジウム綱内のC.フィトフェルメンタンスの分類は、BLASTPを用いて他の完全配列決定されたゲノムの遺伝子に対する類似性に従ってCDS C.フィトフェルメンタンス遺伝子の全体分布と一致する。CDSの38パーセントはXIVaクラスターに最も類似し、続いて10%がIクラスター、7%がIIIクラスターであった(図8)。しかしながら、有意な割合のCDS(14%)がクロストリジウム綱で明らかな相同性を有さず、系統発生学的に遠い株でCDSに最高レベルの類似性を示した。これは、C.フィトフェルメンタンスのゲノムが水平遺伝子伝播により獲得された多数の遺伝子を含み得ることを示唆する。これらの散在する遺伝子の起源は、クロストリジウム属の異質性および配列決定されたゲノム間でC.フィトフェルメンタンスの特有性を強調する。
【0252】
多様な起源に由来するGHの固有なセットの組み立て
C.フィトフェルメンタンスなどの単一ゲノムにおけるこのような無数の機能とグリコシル・ヒドロラーゼ(GH)との同時存在は注目に値する。多糖利用のための微生物系の組織的多様性にもかかわらず、基本構成要素は顕著な均一性を示す。多糖を分解する酵素で見出される触媒ドメインは、それらの一次配列および折り畳みトポロジーによりファミリーに体系化され得る。これらのファミリーの代表は多数の多様な細菌および真核微生物の間で見出され得る。他の細菌のGH触媒ドメインにおける類似性または差異ならびに遺伝子からゲノム・レベルへの組織化を定量化することにより、本発明者らはそれらの機能をより良く理解しまたはC.フィトフェルメンタンスの特有性を測定しようと努める。
【0253】
BLASTPを用いて他の配列決定された細菌の酵素と比較する場合、C.フィトフェルメンタンスのGHは幅広い多様な細菌と類似し、6つの門および46の種を表す。C.フィトフェルメンタンスにおける全遺伝子の分布から予測されるより多く遠縁の細菌に類似するGH遺伝子が存在する(カイ二乗検定、P=0.0004998)(図9)。予測の14%と比較してGHの約50%がクロストリジウム綱外の種とより類似する(図9)。GHの約18%がバチルスとより類似し、続いて17%がセルロース分解性細菌のクラスターIIIとより類似する(図9)。これは、水平遺伝子伝播がC.フィトフェルメンタンスの植物分解能の進化および非常に異なる起源からのGHの固有なセットの組み立てにおいて重要な役割を果たしたことを示唆する。
【0254】
ゲノム上にクラスター化されたデンプン分解遺伝子を除いて(Cphy2304〜2352)、概して、ヘミセルラーゼまたはセルラーゼの遺伝子の共局在化はほとんどない。これは、後者が独立した水平遺伝子伝播を通して獲得したという仮説を支持する。しかしながら、関連機能を備える遺伝子のタンデム例は、β-グルコシダーゼCphy3009(GH3)、エンド-キシラナーゼCphy3010(GH10)およびアラビノフラノシダーゼCphy3011(GH43)を備えたキシランを分解するクラスターである。このタンデムはC.フィトフェルメンタンスに固有のように見える。さらに、2つの主要なセルラーゼをコードする遺伝子であるCphy3367(GH9)およびCphy3368(GH48)はゲノム上で連続している。これは、細菌においてこれまで知られる全てのセルラーゼ酵素系に存在する細菌セルラーゼGH48およびGH9で観察された高い相乗効果と一致する(Riedel, K., Ritter, J. & Bronnenmeier, K. Synergistic interaction of the Clostridium stercorarium cellulases Avicelase I (CeIZ) and Avicelase II (CeIY) in the degradation of microcrystalline cellulose. FEMS Microbiol. Lett. 147, 239 (1997))。
【0255】
分子系統発生において、C.フィトフェルメンタンスの触媒ドメインであるGH9およびGH48(図10および11を参照)は、好熱性のセルロース分解性およびキシナロリティック(xynalolytic)のクロストリジウム・ステルコラリウムから得られるエンドグルカナーゼZ前駆体(アヴィセラーゼI(Avicelase I))(Jauris, S. et al. Sequence analysis of the Clostridium stercorarium celZ gene encoding a thermoactive cellulase (Avicelase I): identification of catalytic and cellulose-binding domains. MoI. Gen. Genet. 223, 258-267 (1990))およびセロデキストリノヒドロラーゼ(アヴィセラーゼII)(Bronnenmeier, K., Rucknagel, K. P. & Staudenbauer, W. L. Purification and properties of a novel type of exo-1,4-beta-glucanase (avicelase II) from the cellulolytic thermophile Clostridium stercorarium . Eur. J. Biochem. 200, 379-385 (1991))にそれぞれ最も類似する。C.ステルコラリウムにおいて、GH9およびGH48は近接でもある(Schwarz, W. H., Zverlov, V. V. & Bahl, H. Extracellular glycosyl hydrolases from Clostridia. Adv. Appl. Microbiol. 56, 215-261 (2004))。これは好熱性C.サッカロリティキュス(saccharolyticus)で更により極端であり、GH9およびGH48がC.フィトフェルメンタンスおよびC.ステルコラリウムのそれらと高度に類似する場合、単一のタンパク質に融合される。これらの観察は、これら3つの細菌におけるこれらの重要な酵素の共通起源および相乗的機能を示唆する。
【0256】
所与のGHファミリーは非常に広範囲の公知な活性をもつ酵素を含むため、ファミリーの余剰性は機能の余剰性を反映するのか、または触媒ドメインの特異性の欠如を反映するのかが問われ得る。植物細胞壁分解についての対象となるGHファミリーのより詳細な分子研究は、これらの関連するが同一でない遺伝子の配列において頻繁に変異が存在することを示す。傑出した数のGH9(16)、GH48(2)、GH5(11)セルラーゼをもち、そのセルロース分解の特化を反映するセルロース専門のC.サーモセルムと比べて、C.フィトフェルメンタンスは、概して、1ファミリー当たりの余剰性に乏しいが、そのより多面的な生態を反映する広範囲のGHファミリーを有することに言及すべきである(図9)。それでもなお、C.フィトフェルメンタンスの幾つかのGHファミリーは依然かなりの数の遺伝子を含む。これは、GH3グルコシダーゼ、GH5セルラーゼ、およびGH10、GH26、GH43のキシラン分解酵素の例である。C.フィトフェルメンタンスから得られるGH5セルラーゼ(pfam00150)の分子系統発生は、それらが多様であり、2つのサブクラスターに分類されることを示した(図11)。クラスターBは真菌のセルラーゼを含む。この例は、水平遺伝子伝播がどのようにしてGHの進化に影響を及ぼしたかを強固にする。より具体的には、異なる界に属する微生物間の遺伝子伝播の重要性を強調し、更により重要な界内の遺伝子伝播の役割を憶測する。C.フィトフェルメンタンスの6つのGH10ドメインの系統発生は、C.フィトフェルメンタンスにおける広範囲の変動性および恐らく機能を示唆する。Cphy2108(GH10)はC.ステルコラリウムXyn10Cのマルチモジュール・キシラナーゼ、熱安定性細胞結合性でセルロースおよびキシラン結合性のタンパク質に非常に類似し、従って、細胞を基質に結合する(Ali, M. K., Kimura, T., Sakka, K. & Ohmiya, K. The multidomain xylanase XynlOB as a cellulose-binding protein in Clostridium stercorarium. FEMS Microbiol. Lett. 198, 79-83 (2001))。2つの固有だが近縁のGH10ドメインが、CEドメインと融合した単一酵素で見出され、重複事象後の融合および分岐を示唆する。単一タンパク質上での触媒機能のこの特異的な配置はC.フィトフェルメンタンスに固有である。
【0257】
重複、続いて融合および再配置、ならびに配列分岐は、C.フィトフェルメンタンスのマルチモジュール酵素の基質特異性および動態特性において変動する該酵素の膨大なアレイを生じた。しかし、概して、C.フィトフェルメンタンスの顕著な特徴は、ニッチ群落の他のメンバーからこのような複雑な遺伝子のアレイおよび遺伝子クラスターの獲得を認めた水平遺伝子伝播の重要性である。
【0258】
セルロゾームを用いない植物細胞壁分解
C.フィトフェルメンタンスはセルロゾームを産生する細菌と類似する生態を共有する。しかしながら、この細菌においてセルロゾームの産生について生化学的にも遺伝学的にも証拠が存在しない(ドッケリン(dockerin)、コヒーシン、またはアンカリン・ドメインはない)。セルロゾーム複合体は、植物細胞壁多糖の種々の結合を切断するために必要な基質特異性のアレイを表す高濃度タンパク質の保留用に細菌細胞表面機構を提供するため;異なる酵素触媒特異性と結合特異性との間の化学量論および相乗効果を潜在的に最小限にするため;ならびに細胞膜と基質との間に特殊な環境を提供することにより細胞から離れて分解産物の拡散を制限する助けになり得るため、植物細胞壁の分解に関与すると信じられている(Flint, H. J., Bayer, E. A., Rincon, M. T., Lamed, R. & White, B. A. Polysaccharide utilization by gut bacteria: potential for new insights from genomic analysis. Nat. Rev. Microbiol. 6, 121-131 (2008))。C.フィトフェルメンタンスがセルロゾームなしで植物細胞壁の効率的な分解および産物の取り込みに従事する戦略は不明である。
【0259】
第一に、全てのセルラーゼのGH5、GH9およびGH48について、セルロゾームへのタンパク質の所属に従った系統樹の分類が存在しないことは驚くべきことである。これは、複合体にタンパク質を固定するドッケリン・ドメインが失われたか独立して何度も獲得されたかを示唆する(図10および11)。GH、CE、PLおよび炭水化物結合モジュール(CBM)の多様なファミリーから得られる多重ドメインが単一のタンパク質上で融合するセルロゾーム・タンパク質の顕著なマルチモジュール特性は、C.フィトフェルメンタンスで保存されている。C.フィトフェルメンタンスは19のモジュールGHタンパク質を有し、全GHの約17%を表す。非セルロース分解性細菌において、対応するGHは主に単一ドメイン・ポリペプチド上で見出される(Flint, H. J., Bayer, E. A., Rincon, M. T., Lamed, R. & White, B. A. Polysaccharide utilization by gut bacteria: potential for new insights from genomic analysis. Nat. Rev. Microbiol. 6, 121-131 (2008))。これは、遺伝子産物の異なる細胞位置、およびより小さな可溶性炭水化物基質に作用するという事実を反映し得る(Id)。この仮説に従って、セルロース分解性の種から得られる酵素に特徴的であるように見えるマルチモジュール機構は、主として植物細胞壁などの異種不溶性基質の細胞外プロセシングについて保存され得る(Id)。
【0260】
セルロゾームの不存在下において、CBMは植物細胞壁に酵素を堅く固定しうるため、それらの基質の近辺に保つことができる。15のCAZyファミリーを表す35の推定CBMが同定された(表5)。CBM2、CBM3、CBM4、CBM6およびCBM46はセルロースに結合することを示した(表5)。CBM2、CBM4、CBM6、CBM13、CBM22、CBM35およびCBM36はキシランに結合することが証明された(表5)。触媒ドメインの特異性と一致しない特異性をもつCBMドメインの種々の組み合わせの存在は、複数の多糖の種類が架橋する植物細胞壁の異なるトポロジーに対する作用に利点を与え得る。セルロースに結合するCBMとキシラナーゼは、C.フィトフェルメンタンスがセルロース線維に付着するのを助ける一方で架橋したキシランを分解し得る。触媒ドメインと無関係なCBMの存在は、一部の例では示されてきた熱安定作用によっても説明され得る。他の種類のX2ドメインは、触媒ドメインとCBMドメインとの間で、またはC.フィトフェルメンタンスの一つのマンナナーゼおよび3つのセルラーゼのCBMドメイン間で見出され得る(表6)。細菌の細胞外酵素におけるX2の機能については、ほとんど情報が入手できない。それらは、タンパク質-タンパク質相互作用のため、または潜在的な炭水化物結合ドメインとして、触媒モジュールと基質結合モジュールとの間で最適に相互作用できるスペーサーまたはリンカーとして役立つことを前提とし得る。
【0261】
多糖との結合に加えて、幾つかの酵素は細胞結合性であるらしく、細胞がその基質の近くに留まる。分泌されると予測される(シグナルペプチドを有するおよび/または細胞外と予測される)31のGH酵素の内、膜貫通らせん、TonBボックス(COG0810およびPS00430)、SORTドメインおよび/または細胞壁結合の再予測は、これらの酵素が膜または細胞壁と結合し得ることを示唆する(表6)。これらのタンパク質の内、8つのGH酵素は、分解された基質への細胞の物理的近接を潜在的に達成するため、CBMも細胞付着能も有することが予測される。最後に、特異な遺伝子のCphy1775(SLH-GH*-CBM32-CBM32)は、細胞壁に固定するための、また2つの免疫グロブリン様折り畳み(CBM32)のための予測SLHドメイン(pfam00395)と一致し、細胞をその基質に結合するCBMドメインの様に振る舞い得る。他のGH酵素は依然他の未知の機構により細胞表面に固定され得る。細胞はpfam07705(CARDB、細菌の細胞接着ドメイン)およびpfam01391(コラーゲン、コラーゲン三重らせん反復)などの異なるドメインを通して共に接着し得る。バイオフィルム形成は植物細胞壁多糖の分解の編成にも役割を果たし得る。
【0262】
取り込みと連動した分解および広範囲の誘導性ABC輸送体によるリン酸化反応
一つのホスホエノールピルビン酸(PEP)依存性ホスホトランスフェラーゼ系がゲノムで見出されたが、予備発現プロファイル・データは、細胞がキシラン、セルロース、セロビオース、またはグルコースなどの植物細胞壁の主要な要素のいずれかで増殖させた場合に該系は発現し得ないことを示唆する。むしろ、ゲノムにABC_tran(pfam00005)ドメインをもつ著しい数(137)のタンパク質は、ATP結合カセット(ABC)輸送体を介した炭水化物の取り込みと一致する。クロストリジウム綱内のその近縁と比較して(表25)、C.フィトフェルメンタンスは一貫して非常に多い数(21)の溶質結合ドメイン(SBP_bac_1, pfam01547)を有し、該ドメインは典型的には取り込みABC輸送体と関連し、異なる溶質の特異的結合を可能にする。これは、様々な種類の溶質に対する親和性の必要性を示唆し、C.フィトフェルメンタンスが種々のオリゴ糖を取り込むことができるという仮説と一致する。最後に、多糖ABC輸送体Lplb(COG4209)ドメイン、幾つかのABC輸送体のサブ要素パーミアーゼ型は、クロストリジウム綱の他の細菌と比較して、C.フィトフェルメンタンスで過剰表現される(20)(表25)。
【0263】
このドメインの数および多様性は広範囲のオリゴ糖の取り込みを可能にし得る(表25)。C.フィトフェルメンタンスがこの機能に専念するその遺伝子の0.5%を有する一方で、多面的でもあるC.サッカロリティキュスは0.2%しか有さず、C.サッカロリティキュスがより均一な種類の糖を取り込むことを示唆する。他の顕著な特徴は、調節因子と共に41のABC型輸送体に隣接するGH(109のうち53)の存在であり、連動する取り込みおよび分解ならびに特異的調節を示唆する(表7)。GH94(セロビオース・ホスホリラーゼ/セロデキストリン・ホスホリラーゼ)およびGH65(マルトース・ホスホリラーゼ)(表25)の傑出した数および多様性は、広範囲のオリゴ糖の種類が細胞に入るという仮説と一致する。ABC輸送体に隣接する5つのセロビオース/セロデキストリン・ホスホリラーゼGH94膜結合タンパク質のうち4つの存在がABCタンパク質を介するセロビオースおよびセロデキストリンの輸送と一致し、これはC.セルロリティキュムの事例でもある(Desvaux, M., Guedon, E. & Petitdemange, H. Cellulose catabolism by Clostridium cellulolyticum growing in batch culture on defined medium. Appl. Environ. Microbiol. 66, 2461-2470 (2000))。
【0264】
セロビオースまたはキシロビオースに対して活性を有し得る多数のβ-グルコシダーゼ(8つのGH3)も存在する。C.フィトフェルメンタンスは、セロビオース/セロデキストリン・ホスホリラーゼを介したエネルギー的に起こりやすいリン酸化により、またはエネルギーを浪費する加水分解β-グルコシダーゼ作用により、オリゴ糖をその異化に供給し得る。セロデキストリン濃度および他の増殖基質(例えば、セルロースまたはセロビオース)の可用性は、セロデキストリン密度、ならびに加リン酸分解および加水分解切断の相対的重要性を決定するのに関与するらしい。セルロース分解性微生物におけるセロデキストリン代謝のための加リン酸分解経路および加水分解経路の広範な存在を鑑みると、この明白な余剰性が淘汰値である可能性がある。これらの2経路を介する相対的流動の調節は、微生物が環境因子(例えば基質の可用性)に応答してATPの割合を調整することを可能にし得る。C.フィトフェルメンタンスは、9つのXylFの存在により証明されるように、キシロースなどの単糖を取り込むこともでき、キシロースを取り込むことも予測される(表25)。
【0265】
炭水化物代謝の微細に調整された調節
クロストリジウムの近縁と比較して、C.フィトフェルメンタンスは豊富なAraC(70)およびPurR(23)転写調節因子を有する(表25)。原核転写調節因子は配列類似性ならびに構造的および機能的基準に基づいてファミリーに分類される。AraC調節因子は、通常、炭素代謝、ストレス応答および病因に関与する遺伝子の転写を活性化する(Ramos, J. L. et al., "The TetR family of transcriptional repressors,) Microbiol. Mol. Biol. Rev. 69, 326-356 (2005))。PurRはラクトース・リプレッサー・ファミリー(lac)に属し、該遺伝子産物は、生理学的濃度のリガンドがPurR-DNA複合体の解離を惹起する場合に通常リプレッサーとして作用する(Id)。豊富なこれらの調節因子は多種多様な基質利用および複雑な調節ネットワークと一致する。
【0266】
PurRに有意な類似性を有する23の遺伝子のうち、8つがGH酵素でクラスター化されたABC輸送体に隣接する。AraCに有意な類似性を有する70遺伝子のうち、20はGH酵素にクラスター化されたABC輸送体に近接することが見出される。GH酵素でクラスター化されることが見出される41のABC輸送体のうち、20は一つのAraCに隣接し、8つはPurRに近接する。これらの観察に基づいて、本発明者らは、それらがそれぞれのゲノム領域の発現を調節するという仮説を立てる(表7)。
【0267】
実施例4:ヒドロラーゼ活性の試験
予測ヒドロラーゼの生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、予測ヒドロラーゼの基質を形質転換された微生物に供給し、基質の枯渇および加水分解産物の増加を測定し、ならびにこの活性レベルを未形質転換対照微生物の活性と比較することにより測定される。幾つかの態様において、発現ベクターは予測ヒドロラーゼの細胞外発現用に設計される。基質の加水分解の増加は予測ヒドロラーゼが実際にヒドロラーゼであることを示し得る。
【0268】
実施例5:ABC輸送体の活性の試験
予測ABC輸送体の生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、予測ABC輸送体の基質を形質転換された微生物に供給し、基質の細胞内への輸送を測定し、ならびにこの取り込みレベルを未形質転換対照微生物の取り込みと比較することにより測定される。取り込みの増加は予測ABC輸送体がABC輸送体であることを示し得る。
【0269】
実施例6:転写調節因子の活性の試験
予測転写調節の生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、転写調節因子およびリポーター遺伝子の標的ヌクレオチド配列を含むプラスミドを用いて形質転換された生物を共トランスフェクションすることにより測定される。リポーター遺伝子の活性が測定され、対照微生物における同一リポーター遺伝子の活性レベルと比較される。リポーター遺伝子活性の増加は予測転写調節因子が転写調節因子であり得ることを示す。
【0270】
実施例7:大腸菌におけるセロビオース利用の操作
大腸菌の大半の実験室株および天然分離株はセロビオース利用の機能遺伝子を発現しないが、典型的には染色体上に潜在性のセロビオース利用遺伝子を含む(Hall et al., J Bacteriol., 1987 June; 169: 2713-2717)。大腸菌は、ABC輸送体をコードするCphy2464〜2466、ならびにセロビオースをグルコースおよびグルコース-1-リン酸に変換するセロビオース・ホスホリラーゼをコードするCphy0430の発現により、セロビオースを利用するように操作される。Cphy2464〜2466およびCphy0430遺伝子はプラスミド上の構成的プロモーターから発現する。Cphy2466のシグナル配列は、ペリプラズムにおけるタンパク質の発現を指令するために、内因性の大腸菌ABC輸送体ペリプラズム結合タンパク質のシグナル配列と置換される。操作された大腸菌は唯一の炭素源としてセロビオースを用いて増殖できる。
【0271】
実施例8:出芽酵母における改良されたペクチン分解の操作
Cphy1714、Cphy1720、およびCphy3586は、大腸菌-出芽酵母シャトル・ベクターにクローニングし、出芽酵母のプラスミドから異種発現する。遺伝子産物の分泌を可能にするために、シグナル配列は出芽酵母タンパク質由来のシグナル配列と置換される。操作された酵母は改良されたペクチン分解を示す。
【0272】
実施例9:微生物の改変
pIMPCphy
pIMPCphyベクターはC.フィトフェルメンタンス用のシャトル・ベクターとして構築された。大腸菌の選別および複製のためにアンピシリン耐性カセットおよび複製起点(ori)を有する。C.フィトフェルメンタンスでプラスミドの複製を可能にするグラム陽性複製起点を含む。プラスミドの存在を選定するために、pIMPCphyベクターはCphy1029遺伝子のC.フィトフェルメンタンス・プロモーターの制御下でエリスロマイシン耐性の遺伝子を運ぶ。このプラスミドは、例えばpRK2030などの可動化プラスミドを有する大腸菌株を用いて、電気穿孔法により、またはトランスコンジュゲーション(transconjugation)により、C.フィトフェルメンタンスに移入される。pIMPCphyのプラスミドマップは図18に描かれる。
【0273】
構成的プロモーター
第一段階において、全ての増殖段階でおよび異なる基質上で対応する遺伝子の高い発現を示すC.フィトフェルメンタンスから得られる幾つかのプロモーターが選択された。プロモーター要素は、構成的経路に必ず関与し得る重要な遺伝子(例えば、リボソーム遺伝子、またはエタノール生産用にアルコール・デヒドロゲナーゼ遺伝子)を選定することにより選択され得る。このような遺伝子からのプロモーターの例は、
Cphy_1029:鉄含有アルコール・デヒドロゲナーゼ
Cphy_3510:Igドメインを含むタンパク質
Cphy_3925:二官能性アセトアルデヒド-CoA/アルコール・デヒドロゲナーゼ
を含むがこれらに限定されない。
【0274】
プロモーターのクローニング
遺伝子の上流領域における異なるプロモーターはPCRにより増幅した。このPCR反応用のプライマーは、プロモーター領域を含むが下流遺伝子のリボソーム結合部位を含まない方法で選択された。プライマーは、pIMPCphyの多重クローニング部位に存在するが他の方法でそれ自体プロモーター領域に存在しない制限部位、例えばSalI、BamHI、XmaI、SmaI、EcoRIなどをプロモーター断片の末端に導入するよう設計された。
【0275】
PCR反応は、市販のPCRキットであるGoTaq(商標) Green Master Mix (Promega)を用いて、製造業者の条件に従って実施した。反応は、熱循環装置のGene Amp System 24 (Perkin Elmer)で行った。PCR産物はGenElute(商標) PCR Clean-Up Kit (Sigma)で精製した。次いで精製PCR産物もpIMPCphyプラスミドも製造業者の条件に従って適量で対応する酵素で消化した(New England Biolabs and Promegaの制限酵素)。次いでPCR産物およびプラスミドを分析し、Recovery FlashGel(商標)(Lonza)でゲル精製した。その後、PCR産物は、Quick Ligation Kit (New England Biolabs)を用いてプラスミドに連結され、大腸菌のコンピテント細胞(DH5α)は連結混合物で形質転換され、1μg/mlアンピシリンを含むLBプレート上に播種される。プレートは37℃で一晩インキュベートする。
【0276】
アンピシリン耐性大腸菌コロニーをプレートから選別し、新しい選択プレート上に再度画線付けした。37℃で増殖後、1μg/mlアンピシリンを含む液体LB培地を単一コロニーで植菌して37℃で一晩増殖させた。プラスミドはGene Elute Plasmid単離キットを用いて液体培養から単離した。
【0277】
少量調製キット
プラスミドは、PCR反応および制限消化により、それぞれ適切なプライマーを用いておよび制限酵素により、正しい挿入物について確認した。配列完全性を保証するために、挿入物はこの段階で配列決定される。
【0278】
セルラーゼ遺伝子のクローニング
1または複数のセルラーゼ遺伝子は、各遺伝子自体のリボソーム結合部位を含み得、PCRにより増幅され、続いて「プロモーターのクローニング」で前述したように適切な酵素で消化される。得られるプラスミドも対応する制限酵素で処理され、増幅遺伝子は標準的な連結を通してプラスミドに動員される。pCphyP3510-3367プラスミド(図19;SEQ ID NO:1)はCphy_3510プロモーターの下流でCphy_3367を連結することにより創出される。大腸菌はプラスミドで形質転換され、正しい挿入物は選択プレート上で選別された形質転換体から検証される。
【0279】
トランスコンジュゲーション
pRK2030ヘルパー・プラスミドとともにDH5α大腸菌は上記で論議した異なるプラスミドを用いて形質転換する。前述のプラスミドの両方を用いた大腸菌コロニーは、37℃で一晩培養後、1μg/mlアンピシリンおよび50μg/mlカナマイシンを含むLBプレート上で選別する。37℃で選択プレート上に再度画線付け後、単一コロニーが得られる。大腸菌用の培養培地(例えば、LBまたは1%グルコースおよび1%セロビオースで補足されたLB)を単一コロニーで植菌し、37℃で好気的に或いは35℃で嫌気的に一晩増殖させる。新鮮な増殖培地を、一晩培養した培養物と1:1で接種し、中間対数期まで増殖させる。C.フィトフェルメンタンス株も中間対数まで同じ培地で増殖させる。
【0280】
次いで、pRK2030およびプラスミドの一つを有するC.フィトフェルメンタンスおよび大腸菌の2つの異なる培養物は、異なる割合で、例えば1:10、1:1、1:10、1:1、10:1、1:1、10:1で混合される。接合は、液体培地で、プレート上で、または25 mm Nucleopore(商標) Track-Etch Membrane (Whatman)上のいずれかで35℃で実施される。時間は2時間から24時間の間で変更し、接合培地は接合前に培養物が増殖する同じ増殖培地である。接合手順の後、細菌混合物は、プレート上に直接塗るかまたはまず液体培地で6時間から18時間増殖させた後プレートに広げる。プレートは、C.フィトフェルメンタンスの選択剤としての10μg/mlエリスロマイシン、ならびに大腸菌の対抗選択媒質としての10μg/mlトリメトプリム、150μg/mlシクロスポリン、および1μg/mlナリジクス酸を含む。
【0281】
35℃で3日から5日インキュベーション後、エリスロマイシン耐性コロニーをプレートから選別し、新鮮な選択プレート上に再度画線付けする。単一コロニーを選別し、プラスミドの存在をPCR反応により確認する。
【0282】
セルラーゼ遺伝子の発現
次いで、異なるプラスミド上のセルラーゼ遺伝子の発現を、染色体遺伝子座から対応遺伝子がほとんどまたは全く発現しない条件下で試験する。陽性候補はクローニングされたセルラーゼの構成的発現を示す。
【0283】
SEQ ID NO:1
プラスミドpCphyP3510-3367
【0284】
他の態様
上記記載は本発明の幾つかの方法および物質を開示する。この発明は、方法および物質の改良、ならびに製造方法および設備の変更を受け入れる余地がある。このような改良は、この開示の熟考または本明細書に開示する本発明の実践から当業者に明白になるであろう。その結果として、この発明が本明細書に開示する特定の態様に限られることを意図しないが、添付の特許請求の範囲に具現化されるような本発明の範囲および精神に入る全ての改良および代替手段を網羅する。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年7月28日に出願された米国仮特許出願第61/084,233号、2009年7月13日に出願された米国仮特許出願第61/225,184号、および2009年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/228,922号からの優先権の恩典を主張し、上記の全ての全容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、微生物学、分子生物学およびバイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本発明は微生物におけるエタノールおよび水素などの産物の生産を向上させるための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
再生可能かつ持続可能なバイオマス資源から使用可能なエネルギーを生産するための方法および組成物の開発に関心が払われている。炭水化物の形態のエネルギーは、廃棄バイオマス、および専用エネルギー作物、例えばトウモロコシもしくは小麦などの穀物またはスイッチグラスなどの草で見出される。
【0004】
現在の課題は、炭水化物を使用可能なエネルギー形態に変換するための実行可能で経済的な戦略を開発することである。炭水化物から有用なエネルギーを得るための戦略は、エタノールおよび他のアルコールの生産、炭水化物から水素への変換、ならびに燃料電池を介した炭水化物から電気エネルギーへの直接変換を含む。バイオマスからエタノールを得るための戦略例は、DiPardo, Journal of Outlook for Biomass Ethanol Production and Demand (EIA Forecasts), 2002(非特許文献1); Sheehan, Biotechnology Progress, 15:8179, 1999(非特許文献2); Martin, Enzyme Microbes Technology, 31:274, 2002(非特許文献3); Greer, BioCycle, 61-65, April 2005(非特許文献4); Lynd, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 66:3, 506-577, 2002(非特許文献5);およびLynd et al. in "Consolidated Bioprocessing of Cellulosic Biomass: An Update", Current Opinion in Biotechnology, 16:577-583, 2005(非特許文献6)により記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DiPardo, Journal of Outlook for Biomass Ethanol Production and Demand (EIA Forecasts), 2002
【非特許文献2】Sheehan, Biotechnology Progress, 15:8179, 1999
【非特許文献3】Martin, Enzyme Microbes Technology, 31:274, 2002
【非特許文献4】Greer, BioCycle, 61-65, April 2005
【非特許文献5】Lynd, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 66:3, 506-577, 2002
【非特許文献6】Lynd et al. in "Consolidated Bioprocessing of Cellulosic Biomass: An Update", Current Opinion in Biotechnology, 16:577-583, 2005
【発明の概要】
【0006】
概要
本出願は、例えばエタノールや水素の燃料などの産物の生産に有用な基質上での増殖に関与すると予測される産物をコードするクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)遺伝子の同定に特に基づくものである。本明細書で同定される遺伝子は他の微生物において異種発現させ、新規なまたは強化された機能を提供し得る。また、該遺伝子は、外来導入された核酸から、例えばC.フィトフェルメンタンスで発現させ、強化された機能を提供し得る。
【0007】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、該単離核酸は表6から選択され得る。具体的な態様において、該ヒドロラーゼは、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0430、Cphy3854、Cphy0857、Cphy0694、およびCphy1929からなる群より選択される。Cphy3367の記号表示はJGI番号を表し、それはC.フィトフェルメンタンスについてのGenBank記録上の米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)遺伝子座タグを参照する。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、ヒドロラーゼをコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0008】
幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つのATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、単離核酸は表7から選択され得る。具体的な態様において、ABC輸送体は、Cphy3854、Cphy3855、Cphy3857、Cphy3858、Cphy3859、Cphy3860、Cphy3861およびCphy3862からなる群より選択される。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、ABC輸送体をコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0009】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含むポリヌクレオチドを含む。このような態様において、単離核酸は表8から選択され得る。さらなる態様において、該ポリヌクレオチドは、転写調節因子をコードする単離核酸と機能的に連結される調節配列を含み得る。
【0010】
幾つかの態様は、本明細書に記載するヒドロラーゼ、ABC輸送体、および転写調節因子をコードする核酸の任意の組み合わせを含むポリヌクレオチド・カセットを含む。一態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸および少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸を含み得る。他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。更なる他の態様において、ポリヌクレオチド・カセットは、少なくとも一つのヒドロラーゼをコードする単離核酸、および少なくとも一つのABC輸送体をコードする単離核酸、および少なくとも一つの転写調節因子をコードする単離核酸を含み得る。
【0011】
幾つかの態様は、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチドを含む発現カセットおよび該ポリヌクレオチド・カセットに機能的に連結された調節配列を含む。
【0012】
幾つかの態様は、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、および/または発現カセットを含む組み換え微生物を含む。具体的な態様において、組み換え微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・セルロリティキュム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・サーモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)、クロストリジウム・パピロソルベンス(Clostridium papyrosolvens)、クロストリジウム・セロビオパルム(Clostridium cellobioparum)、クロストリジウム・フンガテイ(Clostridium hungatei)、クロストリジウム・セルロシ(Clostridium cellulosi)、クロストリジウム・ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジウム・テルミティディス(Clostridium termitidis)、クロストリジウム・サーモコプリエ(Clostridium thermocopriae)、クロストリジウム・セレレクレセンス(Clostridium celerecrescens)、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム(Clostridium polysaccharolyticum)、クロストリジウム・ポプレティ(Clostridium populeti)、クロストリジウム・レントセルム(Clostridium lentocellum)、クロストリジウム・チャルタタビデュム(Clostridium chartatabidum)、クロストリジウム・アルドリチ(Clostridium aldrichii)、クロストリジウム・ヘルビヴォランス(Clostridium herbivorans)、アセチヴィブリオ・セルロリティクス(Acetivibrio cellulolyticus)、バクテロイデス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens)、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム(Caldicellulosiruptor saccharolyticum)、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、フィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)、イウバクテリウム・セルロソルベンス(Eubacterium cellulosolvens)、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、アナエロセルム・サーモフィルム(Anaerocellum thermophilum)、ハロセラ・セルロリティカ(Halocella cellulolytica)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)およびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)からなる群より選択され得る。
【0013】
幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする単離タンパク質を含む。幾つかの態様において、エタノールを生産する方法が提供される。このような方法は、微生物を培養する段階、基質を供給する段階、および本明細書に記載する任意の単離タンパク質を供給する段階を含む。
【0014】
幾つかの態様は、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼをコードする配列、C.フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする配列、およびC.フィトフェルメンタンス転写調節因子をコードする配列の一つまたは複数、2つ以上、または3つ全てを含む単離ポリヌクレオチド・カセットを含む。幾つかの態様において、該ヒドロラーゼは、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該ABC輸送体は、
からなる群より選択される。
【0015】
幾つかの態様は、本明細書に開示する核酸、例えばクロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼをコードする外来性核酸、C.フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする外来性核酸、およびC.フィトフェルメンタンス転写調節因子をコードする外来性核酸の一つまたは複数、2つ以上、または3つ全てを含む組み換え微生物を含む。幾つかの態様において、該ヒドロラーゼは、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該ABC輸送体は、
からなる群より選択される。幾つかの態様において、該微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクター・スクシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、ハロセラ・セルロリティカ、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムおよびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムからなる群より選択される。
【0016】
幾つかの態様は、本明細書に記載する少なくとも一つの組み換え微生物を培養する段階を含むエタノール生産方法を含む。このような態様は微生物に基質を供給する段階も含み得る。具体的な態様において、該基質は、おがくず、木粉、木材パルプ、紙パルプ、紙パルプ廃棄蒸気、スイッチグラスなどの草、ハマナなどのバイオマス植物および作物、藻類、もみ殻、バガス、ジュート、葉、マクロ藻類物質、微細藻類物質、刈り取った草、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ粉、発酵滓、およびペクチンからなる群より選択され得る。ある態様において、基質はペクチンであり得る。
【0017】
幾つかの態様は、ヒドロラーゼの基質を処理する方法であって、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス・ヒドロラーゼを外因的に発現する微生物を提供する段階、および基質が処理され産物を形成するように微生物にヒドロラーゼの基質を供給する段階を含む方法を含む。幾つかの態様において、微生物は産物を輸送する(例えば取り込むまたは運び出す)クロストリジウム・フィトフェルメンタンスATP結合カセット(ABC)輸送体を外因的に発現する。
【0018】
幾つかの態様は、リグノセルロース系バイオマスならびに該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物を含むバイオ燃料を生産するための製品を含み、微生物は、一つまたは複数のセルラーゼ(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の強化された活性を提供するために改変される。幾つかの態様において、微生物は5炭糖および6炭糖の直接発酵ができる。幾つかの態様において、微生物は細菌であり、例えばクロストリジウム属の種、例えばクロストリジウム・フィトフェルメンタンスである。幾つかの態様において、微生物は、一つまたは複数のセルラーゼの活性を強化する一つまたは複数の異種ポリヌクレオチドを含む。
【0019】
幾つかの態様は、炭素質バイオマスならびに該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物を含むバイオ燃料を生産するための製品を含み、該微生物は、一つまたは複数のセルラーゼ(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の強化された活性を提供するために改変される。幾つかの態様において、微生物は発酵最終産物を生産できる。幾つかの態様において、発酵最終産物の大部分はエタノールである。幾つかの態様において、発酵最終産物は、乳酸、酢酸、および/またはギ酸を含む。幾つかの態様において、微生物は一つまたは複数の複合炭水化物を取り込むことができる。幾つかの態様において、バイオマスは、単量体の炭水化物と比べて、より高濃度のオリゴマーの炭水化物を有する。
【0020】
幾つかの態様は、(a)炭素質バイオマスと該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物とを接触させる段階であって、微生物が、一つまたは複数のセルラーゼ酵素(例えば、本明細書に開示する一つまたは複数のセルラーゼ、例えばCphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163)の活性を強化するために改変される、段階;ならびに、(b)バイオ燃料を生産するために該加水分解および発酵のための時間を十分に取る段階を含むバイオ燃料の生産工程を含む。幾つかの態様において、微生物は一つまたは複数の複合炭水化物を取り込むことができる。幾つかの態様において、バイオマスは単量体の炭水化物と比べてより高濃度のオリゴマーの炭水化物を有する。幾つかの態様において、加水分解は、単量体の炭水化物と比べて、より高濃度のセロビオースおよび/またはより大きなオリゴマーをもたらす。
【0021】
本明細書で用いられる節の見出しは、ただ構成目的のためだけであり、決して記載対象を限定するものと解釈されない。特許、特許出願、記事、本、論文、およびインターネット・ウェブページを含むがこれらに限定されず、全ての文献および本出願で引用される同種題材は、いかなる目的にでも全体として参照により明確に組み入れられる。組み入れられる参照文献の用語の定義が本教示で与えられる定義と異なるようである場合、本教示で与えられる定義に統制される。僅かで非実質的な偏差は本明細書の本教示の範囲内であるとして、本教示で論じられる温度、濃度および時間などの測定値の前に「約」が含意されると理解されたい。この出願において、単数形の使用は、特に別段の記載がない限り、複数形も含む。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、限定することを意図しない。前述の概要も下記の詳細な説明もただの例示および説明にすぎず発明を制限するものではない。「a」および「an」の冠詞は、該冠詞の文法上の目的語の一つまたは2以上(即ち、少なくとも一つ)を言及するために本明細書で用いられる。例として、「要素(an element)」は一つの要素または1より多い要素を意味する。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書に記載する本発明と関連して用いられる科学用語および専門用語は当業者により通常理解される意味を有する。さらに、他に文脈から必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。一般に、細胞培養および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質化学およびオリゴヌクレオチド化学またはポリヌクレオチド化学ならびに本明細書に記載するハイブリダイゼーションと関連して活用される命名法、ならびに上記の技術は当技術分野において周知であり通常使用される。例えば、核酸の精製および調製、化学分析、組み換え核酸、ならびにオリゴヌクレオチド合成のために標準的な技術が用いられる。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野において通常遂行されるように、または本明細書に記載するように実施される。本明細書に記載する技術および手順は、一般に、当技術分野において周知の従来法に従って、ならびに本明細書にわたって引用および論議される種々の一般参照文献およびより特定の参照文献に記載されるように、実施される。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 2000)を参照のこと。関連して活用される命名法、ならびに本明細書に記載の実験手順および技術は、当技術分野において周知であり通常用いられる。
【0023】
本明細書で提供される態様に従って利用されるように、下記の用語は、別段の指示がない限り、下記の意味を有すると理解される。
【0024】
「ヌクレオチド」とは、モノマー単位としてまたは核酸内のヌクレオシドのリン酸エステルを指す。「ヌクレオチド5'-三リン酸」は、5'位の三リン酸エステル基をもつヌクレオチドを指し、特にリボース糖の構造特徴を指摘するために「NTP」または「dNTP」および「ddNTP」と表示されることもある。三リン酸エステル基は、種々の酸素の硫黄置換、例えばα-チオ-ヌクレオチド5'-トリホスフェートを含み得る。核酸化学の概説について、Shabarova, Z. and Bogdanov, A. Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, VCH, New York, 1994を参照のこと。
【0025】
「核酸」および「核酸分子」という用語は、DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)などの天然核酸配列、人工核酸、上記の類似体、または上記の組み合わせを指す。
【0026】
本明細書で用いられるように、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、相互に交換可能に用いられ、ヌクレオチド・モノマーの一本鎖および二本鎖の高分子(核酸)を意味し、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合により結合する2'-デオキシリボヌクレオチド(核酸)およびリボヌクレオチド(RNA)、例えば3'-5'および2'-5'逆転結合、例えば5'-5'分岐構造、または類似核酸を含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、H+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などの関連する対イオンを有する。ポリヌクレオチドは、全てデオキシリボヌクレオチド、全てリボヌクレオチド、またはそのキメラ混合物からなり得る。ポリヌクレオチドは核酸塩基および糖類似体を含み得る。ポリヌクレオチドは、通常、少数のモノマー単位から、例えば、より一般に頻繁に当技術分野においてオリゴヌクレオチドと称される場合は5〜40から、数千のモノマー・ヌクレオチド単位までの大きさに及ぶ。別段の表示がない限り、ポリヌクレオチド配列が示されている場合はいつでも、ヌクレオチドは左から右へ5'から3'の順であり、且つ「A」はデオキシアデノシンを表示し、「C」はデオキシシチジンを表示し、「G」はデオキシグアノシンを表示し、および「T」はチミジンを表示することが理解されよう。
【0027】
「燃料および/または他の化学物質」は、炭化水素、水素、メタン、アルコールなどのヒドロキシ化合物(例えば、エタノール、ブタノール、プロパノール、メタノールなど)、アルデヒドおよびケトンなどのカルボニル化合物(例えば、アセトン、ホルムアルデヒド、1-プロパナールなど)、有機酸、エステルなどの有機酸の誘導体(例えば、ろうエステル、グリセリドなど)、ならびにセルラーゼ、ポリサッカラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、リグニナーゼ、およびヘミセルラーゼなどの酵素により産生される1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、乳酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、およびピルビン酸を含むがこれらに限定されない他の官能基を含む化合物を含むがこれらに限定されない液体または気体の燃料として適切な化合物を指すために本明細書で用いられる。
【0028】
「プラスミド」という用語は環状の核酸ベクターを指す。一般に、プラスミドは、宿主細胞DNA内にプラスミドが組み込まれることなく、細菌(または時には真核)細胞でプラスミドの多数のコピーが産生される複製起点を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「構築物」という用語は、特定のヌクレオチド配列の発現目的で生成した、または他の組み換えヌクレオチド配列の構築において使用されるべき、組み換えヌクレオチド配列、一般に組み換え核酸分子を指す。一般に、「構築物」とは組み換え核酸分子を指すために本明細書で用いられる。
【0030】
「発現カセット」とは、宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を可能にする一式のポリヌクレオチド要素を指す。通常、発現カセットはプロモーターおよび転写される異種または天然のポリヌクレオチド配列を含む。発現カセットまたは構築物は、例えば転写終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサー要素も含み得る。
【0031】
「発現ベクター」は細胞内でポリヌクレオチドの発現を可能にするベクターを意味する。ポリヌクレオチドの発現は転写および/または転写後の事象を含む。「発現構築物」とは、発現ベクターに存在する発現配列と機能的に連結される位置付けであるような様式で対象のヌクレオチド配列が挿入された発現ベクターである。
【0032】
「オペロン」とはメッセンジャーRNA(mRNA)を産生する一式のポリヌクレオチド要素を指す。通常、オペロンはプロモーターおよび一つまたは複数の構造遺伝子を含む。通常、オペロンは、一つのポリシストロン性mRNA、即ち2以上のタンパク質をコードする唯一つのmRNA分子に転写される一つまたは複数の構造遺伝子を含む。幾つかの態様において、オペロンは、オペロンの構造遺伝子の活性を調節するオペレーターも含み得る。
【0033】
本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語は、本発明の方法および組成物を用いて形質転換される細胞を指す。一般に、本明細書で用いられる宿主細胞は、対象の核酸が導入される微生物細胞を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「形質転換」という用語は、永続的なまたは一時的な遺伝子変化を指し、例えば宿主以外の核酸配列の組み込み後に細胞に誘導される永続的な遺伝子変化を指す。
【0035】
本明細書で用いられる「形質転換細胞」という用語は、組み換え核酸技術によって、対象となる遺伝子産物、例えばRNAおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子が導入された(またはその祖先に導入された)細胞を指す。
【0036】
本明細書で用いられる「遺伝子」という用語は、宿主ゲノムの任意および全ての不連続なコード領域、または機能的RNAのみ(例えば、tRNA、rRNA、リボザイムなどの調節RNA)をコードする領域を指し、関連する非コード領域および調節領域を含む。「遺伝子」という用語は、特定のポリペプチドをコードするオープン・リーディング・フレーム、イントロン、および発現の調節に関与する隣接の5'および3'非コード・ヌクレオチド配列をその範囲内に含む。この点で、遺伝子は、天然で所定の遺伝子と関連するプロモーター、エンハンサー、および/または終結シグナルなどの制御シグナル、または異種の制御シグナルをさらに含み得る。遺伝子配列は、cDNAまたはゲノム核酸またはその断片であり得る。遺伝子は、染色体外維持のため、または宿主への組み込みのため、適切なベクターに導入され得る。
【0037】
本明細書で用いられる「対象となる遺伝子」、「対象となるヌクレオチド配列」、「対象となるポリヌクレオチド」、または「対象となる核酸」という用語は、宿主細胞での発現(例えば、標的細胞におけるタンパク質または他の生体分子(例えばRNA産物)の産生)に望ましいタンパク質または他の分子をコードする任意のヌクレオチドまたは核酸配列を指す。対象となるヌクレオチド配列は、発現を促進する他の配列、例えばプロモーターと機能的に連結され得る。
【0038】
本明細書で用いられる「プロモーター」という用語は、機能的に連結される核酸配列の直接転写に十分な最小核酸配列を指す。本明細書で用いられる「誘導プロモーター」という用語は、転写アクチベーターと結合した場合に転写活性のあるプロモーターを指し、該アクチベーターは次いで、例えば特定の化学シグナルの存在、または誘導プロモーターと転写アクチベーターとの結合に作用するおよび/もしくは転写アクチベーター自体の機能に作用する化学シグナルの組み合わせなど、特定条件の下で活性化される。
【0039】
本明細書で用いられる「オペレーター」、「制御配列」、または「調節配列」という用語は、特定の宿主生物において機能的に連結されるコード配列の発現を調節する核酸配列を指す。原核生物に適した制御配列は、例えばプロモーター、任意でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。
【0040】
「機能的に接続され」または「機能的に連結され」などは、機能的関係におけるポリヌクレオチド要素の連結を意味する。核酸配列は、他の核酸配列と機能的関係に置かれた場合に「機能的に連結され」ている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に作用する場合、コード配列に機能的に連結される。幾つかの態様において、機能的に連結されるとは、連結される核酸配列が通常隣接することを意味し、2つのタンパク質コード領域をつなぐことが必要な場合には隣接し且つリーディング・フレーム内であることを意味する。RNAポリメラーゼが2つのコード配列を一つのmRNAに転写する場合、コード配列は他のコード配列と「機能的に連結され」ており、該mRNAは次いで両コード配列から誘導されるアミノ酸を有する一つのポリペプチドに翻訳される。発現配列が最終的にプロセシングされ所望のタンパク質を産生する限り、コード配列は互いに隣接する必要はない。
【0041】
プロモーターを転写可能なポリヌクレオチドに「機能的に接続する」とは、転写可能なポリヌクレオチドをプロモーターの調節制御下に置くことを意味し、該プロモーターは次いで転写および任意でポリヌクレオチドの翻訳を制御する。異種のプロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、プロモーターまたはその変異体を転写可能なポリヌクレオチドの転写開始部位から隔てて配置することが通常であり、プロモーターと、該プロモーターがその自然環境で制御する遺伝子、即ち該プロモーターが由来する遺伝子との間の距離とほぼ同じである。当技術分野において知られるように、この距離の幾つかの変異は機能を喪失することなく適応し得る。同様に、オペレーター、エンハンサーなどの調節配列要素の典型的な位置決めは、その制御下に置かれるべき転写可能なポリヌクレオチドに関して、その自然環境における該要素の位置決めにより、即ち該要素が由来する遺伝子に規定される。
【0042】
「培養する」とは、細胞または生物が全部ではないが幾つかの生物学的過程を実施し得る条件下で細胞または生物をインキュベーションすることを表す。例えば、培養される細胞は増殖または生殖し得る、または生存能力はないが複製、転写、翻訳などの生物学的および/または生化学的な過程を依然実施し得る。
【0043】
「トランスジェニック生物」は、その細胞の一部に存在する、またはその生殖系核酸内に安定して組み込まれる、非内因性(即ち異種の)核酸配列を有するヒト以外の生物(例えば単細胞生物(例えば微生物)、哺乳動物、非哺乳動物(例えば線虫またはショウジョウバエ(Drosophila)))を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる「バイオマス」という用語は、生体物質または生物物質の集団を指し、より広範に天然および加工物の両方、ならびに天然有機物を含む。
【0045】
「組み換え」とは、合成されたまたはインビトロで別の方法で操作されたポリヌクレオチド(「組み換えポリヌクレオチド」)、および細胞または他の生体系において該ポリヌクレオチドによりコードされる遺伝子産物を生産するために組み換えポリヌクレオチドを用いる方法を指す。例えば、クローニングされたポリヌクレオチドは細菌プラスミドなどの適切な発現ベクター内に挿入され、プラスミドは適切な宿主細胞を形質転換するために用いられ得る。組み換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組み換え宿主細胞」または「組み換え細菌」と呼ばれる。遺伝子は次いで組み換え宿主細胞で発現し、例えば「組み換えタンパク質」を産生する。さらに、組み換えポリヌクレオチドは、非コード機能、例えばプロモーター、複製起点、またはリボソーム結合部位に役立ち得る。
【0046】
「相同組み換え」という用語は、核酸配列の類似性に基づく2つの核酸分子間の組み換え過程を指す。該用語は相互および非相互の組み換え(遺伝子変換とも呼ばれる)の両方を包含する。その上、組み換えは等価または非等価な交差事象の結果であり得る。等価な交差は2つの等価な配列間または染色体領域間で起きる一方、非等価な交差は非等価な配列または染色体領域の同一な(または実質的に同一な)分節間で起きる。不等交差は通常遺伝子の重複および欠失をもたらす。相同組み換えに関与する酵素および機構の記載については、Watson et al., Molecular Biology of the Gene pp 313-327, The Benjamin/Cummings Publishing Co. 4th ed. (1987)を参照のこと。
【0047】
「非相同または無作為な組み込み」という用語は、核酸が相同組み換えに関与しないゲノム内に組み込まれる任意の過程を指す。それは取り込みが多数の遺伝子位置のいずれかで起き得る無作為の過程のように見える。
【0048】
「異種ポリヌクレオチド配列」または「異種核酸」は、2つのポリヌクレオチド配列が互いに自然界と同じ関係で配列されていないような様式で、プロモーター配列などの他のポリヌクレオチドと機能的に関連するポリヌクレオチドを指す相対的な語である。異種ポリヌクレオチド配列は、例えば異種核酸と機能的に連結されたプロモーター、および組み換え宿主細胞内への形質転換のために異種ベクター内に挿入されるその天然プロモーターを含むポリヌクレオチドを含む。異種ポリヌクレオチド配列は、形質転換技術によって宿主細胞に導入されるため、外因性とみなされる。しかしながら、異種ポリヌクレオチドは外来起源または同起源から生じ得る。異種ポリヌクレオチド配列の修飾は、例えばポリヌクレオチドを制限酵素で処理し調節要素と機能的に連結され得るポリヌクレオチド配列を生成することにより、生じ得る。修飾は部位特異的突然変異誘発などの技術によっても生じ得る。
【0049】
「内因性発現した」という用語は、宿主細胞原産であり且つ宿主細胞で天然に発現するポリヌクレオチドを指す。
【0050】
「発現能力のある」とは、内因性および/または外因性のポリヌクレオチド発現に十分な細胞環境を提供する宿主細胞を指す。
【0051】
この出願は、2008年2月27日に出願された米国仮出願第61/032,048号;2009年2月27日に出願された国際出願第PCT/US2009/35597号;2009年4月6日に出願された米国出願第12/419,211号;2008年6月11日に出願された米国仮出願第61/060,620号;および2009年6月11日に出願された米国出願第12/483,118号に関し、上記のそれぞれは目的に応じて全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
下記の図面、記載、および実施例は、本発明のある態様を詳細に説明する。当業者はその範囲に包含される多数の変形および修飾が存在することを認識するであろう。従って、ある態様の記載が本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1はポリヌクレオチドについての遺伝子組み合わせの一連の例図である。Rは転写調節配列を表し;A、BおよびCはATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする配列を表し;GHはグリコシド・ヒドロラーゼをコードする配列を表し;ならびにSはシグナル配列を表す。
【図2】図2はC.フィトフェルメンタンスにおける遺伝子組み合わせの一連の具体例図である。数字はC.フィトフェルメンタンスの染色体上における特定配列の位置を表す。
【図3】図3はC.フィトフェルメンタンスのAffymetrix社マイクロアレイ設計の図である。ダッシュ記号はマイクロアレイ上で合成される24塩基のプローブを表す。ボックス記号は、予測されるオープン・リーディング・フレーム、例えばタンパク質コード領域を表す。11の24塩基プローブはオープン・リーディング・フレーム(ORF)ごとのレベルを測定するために使用される。遺伝子間領域は一つのDNA塩基により分離される24塩基プローブによりDNAの両側においてカバーされる。
【図4】図4はmRNA転写産物境界の決定方法の図である。仮想mRNA転写産物は対応する予測ORFの5'および3'に伸びる非コード領域を含む。プローブはダッシュ記号により表される。この例において、ORFの左(5')の3つのプローブおよびORFの右(3')の2つのプローブはmRNA転写産物の境界を示唆する。
【図5】図5はC.フィトフェルメンタンスの染色体を表現したものである。
【図6】図6はC.フィトフェルメンタンスのゲノムに沿った距離に応じた1kbゲノム分節のGC含量を示す図である。GC含量が>50%の6つのゲノム島は番号が付けられている。これらの6つの領域は合計16の1kb領域からなる。
【図7】図7は、C.フィトフェルメンタンス株の近隣結合樹形図および16S rRNA遺伝子配列に基づくクロストリジウム綱内の関連分類群である。クラスターIは疾病を惹起するクロストリジウムを含み、クラスターIIIはセルロース分解性のクロストリジウムを含み、ならびにクラスターXIVは腸微生物を含み、メタゲノム配列はクロストリジウム属の中にある。結節の数字は1000の再サンプリングされたデータセットの近隣結合分析に基づくブートストラップ・サポートのレベル(百分率)である。枯草菌(Bacillus subtilis)は外集団として使用された。バー、位置ごとの4ヌクレオチド置換。
【図8】図8はクロストリジウム綱の他の配列決定された細菌ゲノムにおけるクロストリジウム・フィトフェルメンタンスISDg CDSのベスト・マッチ(0.01のe値カットオフ)の数を示す円グラフである。
【図9】図9Aおよび9BはBLASTPを用いたグリコシド・ヒドロラーゼ(GH)をコードする遺伝子(9A)および異なる生物の全遺伝子(9B)の比較を示す円グラフである。
【図10】図10はグリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリーGH9ドメインの分子系統学を示す近隣結合樹形図である。
【図11】図11はグリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリーGH5ドメインの分子系統学を示す近隣結合樹形図である。
【図12】図12は推定ヒドロラーゼの例を示す概略図である。幾つかのヒドロラーゼは細胞外または膜結合であり得る。GH:グリコシド・ヒドロラーゼ;CBM:炭水化物結合ドメイン。
【図13】図13はC.フィトフェルメンタンスにおけるキシロースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図14】図14はC.フィトフェルメンタンスにおけるフコースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図15】図15はC.フィトフェルメンタンスにおけるラムノースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図16】図16はC.フィトフェルメンタンスにおけるラミナリンの調節、取り込みおよび代謝の描写である。
【図17】図17はC.フィトフェルメンタンスにおけるセロビオースの取り込みおよび代謝の描写である。
【図18】図18はpIMP-Cphyについてのプラスミドマップの描写である。
【図19】図19はpCphyP3510-3367についてのプラスミドマップの描写である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本明細書に開示する種々の態様は、一般に、様々な発酵条件下で増殖する場合に燃料を生産できる組み換え微生物を作製するための組成物および方法に向けられる。一般に、組み換え微生物は効率良く且つ安定してエタノールなどの燃料および関連化合物を生産でき、その結果、高収率の燃料がセルロースなどの比較的安価な生バイオマス物質から提供される。幾つかの態様において、組み換え微生物はリグノセルロースなどの安価な生バイオマス物質の変換を効率良く且つ安定して触媒し、糖および多糖、ならびに関連化合物を産生し得る。
【0055】
現在、燃料を生産できる組み換え生物を利用する技術は数に限りがある。種々の技術は、大抵、低燃料収率、高額、および望ましくない副産物をもたらし得る課題を有する。例えば、幾つかの公知技術は原料としてトウモロコシ穀粒および他の穀類を利用する。しかしながら、穀物供給および価格に関する飼料および食料需要の競合は最終的にトウモロコシおよび他の穀類からのエタノール生産の拡大を制限し得る。他の原料源は糖化および発酵によってエタノールが生産され得るリグノセルロースを含む(Lynd, L. R., Cushman, J. H., Nichols, R. J. & Wyman, C. E. Fuel ethanol from cellulosic biomass,"Science 251, 1318-1323 (1991))。リグノセルロースはバイオマスの主成分であり地球上で最も豊富な生体物質であるため、リグノセルロース系バイオマスに由来する燃料は、従って、世界的に経済、エネルギー、および環境を持続するための潜在力を有する再生可能なエネルギー代替物である。しかしながら、従来のリグノセルロース系エタノール生産は、外因性糖分解酵素を用いたリグノセルロース系物質の生産および前処理、前処理されたバイオマスに存在する多糖の加水分解、ならびにヘキソースおよびペントース糖の別個の発酵を含む、高額で且つ複雑な多段階工程を要する。
【0056】
一態様において、本発明の方法および組成物は、セルラーゼを含むがこれに限定されない一つまたは複数の酵素の酵素活性を強化するために微生物を遺伝的に改変または操作する段階を含む。このような改変例は、一つまたは複数の酵素の発現を増大させるために内因性核酸調節要素を改変する段階(例えば、標的酵素をコードする遺伝子を強力なプロモーターと機能的に連結する段階)、強化された酵素活性を提供するために核酸分子の追加コピーを微生物に導入する段階、一つまたは複数の酵素をコードする遺伝子を誘導プロモーターまたはその組み合わせと機能的に連結する段階を含む。
【0057】
本発明の種々の微生物は一つまたは複数のセルラーゼまたはセルロース処理に関連する酵素の活性を強化するために改変され得る。セルラーゼの分類は、通常、類似または同一の活性をもつファミリーを結成する酵素を一つにまとめることに基づくが、同一の基質特異性である必要はない。これらの分類の一つはCAZYシステム(CAZYは炭水化物に活性な酵素(Carbohydrate-Active enZymes)を表す)であり、例えば列挙する115の異なるグリコシド・ヒドロラーゼ(GH)が存在する場合、GH1からGH155まで命名される。異なるタンパク質ファミリーのそれぞれは、通常、対応する酵素活性を有する。このデータベースはセルロースにもヘミセルラーゼにも活性な酵素を含む。さらに、クロストリジウム・フィトフェルメンタンスの全注釈付きのゲノムはwww.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrezのWorld Wide Webで入手できる。
【0058】
本明細書に記載する幾つかの態様は、リグノセルロース系バイオマスが一段階でエタノールに発酵され得る方法および組成物を提供することによりリグノセルロース系エタノール生産の従来の多段階工程を簡略化する。これは統合バイオプロセシング(CBP)として知られる。CBPは全変換工程を合理化し経費およびエネルギーの浪費を減らすため、唯一の経済的および環境的に持続可能なセルロース系エタノール・バイオプロセスとして予測される。
【0059】
幾つかの態様において、効率的な燃料生産システムのためのポリヌクレオチドおよび発現カセットが提供される。ポリヌクレオチドおよび発現カセットは微生物を形質転換するための発現ベクターを調製するために用いられ、燃料などの産物を有用な量で効率的に生産する能力を形質転換された微生物に与え得る。
【0060】
幾つかの態様において、微生物の代謝は種々の遺伝子を導入し発現することにより改変され得る。本発明の幾つかの態様に従って、組み換え微生物は、例えばセルロースからエタノールおよび水素などの燃料への変換を強化するための生体触媒としてクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(ISDgT、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394T)由来の遺伝子を使用できる。
【0061】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394T)は培養株ISDgTの表現型および遺伝子型の特徴に基づいて定義され得る(Warnick et al, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 52:1155-60, 2002)。クロストリジウム・フィトフェルメンタンスの全注釈付きのゲノムはwww.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrezのWorld Wide Webで入手できる。種々の態様は、一般に、システム、ならびにC.フィトフェルメンタンス種のISDgT株および/または任意の他の株を伴う燃料および/または他の有用な有機産物を生産するための方法および組成物に関し、該種はISDgT株に由来し得るまたは個別に単離され得る。種は標準的な分類学的考察を用いて定義され得る(Stackebrandt and Goebel, International Journal of Systematic Bacteriology, 44:846-9, 1994)。標準株(ISDgT)と比較して97%以上の16S rRNA配列相同性値をもつ株は、70%未満のDNA再結合値を有すると示されない限り、C.フィトフェルメンタンスの株とみなされる。70%以上のDNA再結合値を有する微生物はまた少なくとも96%のDNA配列同一性を有し且つ種を規定する表現型形質を共有することを示すかなりの証拠が存在する。C.フィトフェルメンタンスISDgT株のゲノム配列の分析は、植物の多糖発酵の機構および経路に関与するらしい多数の遺伝子および遺伝子座の存在を示し、この微生物の独特の発酵性質につながる。上記の分類学的考察に基づいて、C.フィトフェルメンタンス種の全株はこれらの発酵性質の全てまたはほぼ全ても所有し得る。C.フィトフェルメンタンスの株は天然の分離株または遺伝的に改変された株であり得る。
【0062】
種々の発現ベクターは、形質転換された微生物が種々の発酵条件で多量の燃料を生産できるように、宿主微生物内に導入され得る。組み換え微生物は、例えばセルロースを含む培地上で増殖する場合に燃料が高収率で安定して生産されるように改変され得る。
【0063】
C.フィトフェルメンタンスは、単独でまたは一つまたは複数の他の微生物と組み合わせて、セルロース系バイオマス物質を大規模にエタノール、プロパノール、および/または水素などの可燃性バイオ燃料に発酵し得る(例えば米国特許出願第2007/0178569号;Warnick et. al, Int J Syst Evol Microbiol (2002), 52 1155-1160を参照、上記のそれぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられる)。
【0064】
本明細書で開示するポリヌクレオチド、発現カセット、および発現ベクターはエタノールおよび水素などの燃料生産のために多数の異なる宿主微生物とともに使用され得る。例えば、クロストリジウム・フィトフェルメンタンスに加えて、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクレル・スシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、およびハロセラ・セルロリティカなどのセルロース分解性微生物は、セルロースを加水分解できるため、特に興味をひく宿主である。使用され得る他の微生物は、例えばサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムおよびサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムなどの糖分解性微生物を含む。さらなる潜在的な宿主は、他の細菌、酵母、藻類、菌類、および真核細胞を含む。
【0065】
種々の態様において、本明細書で開示するポリヌクレオチド、発現カセット、および発現ベクターは、エタノールおよび水素などの燃料生産を増大するためにC.フィトフェルメンタンスまたは他のクロストリジウム種とともに使用され得る。
【0066】
当業者に理解されるように、燃料を生産し得る組み換え生物を生産する能力は、特に効率的で、費用効率が高く、環境に優しい燃料生産のために多大な利点を有し得る。
【0067】
例示的態様
下記の記載および実施例は本発明の幾つかの態様を詳細に説明する。当業者は、その範囲に包含される多数の変形および修飾が存在することを認識するであろう。従って、好ましい態様の記載は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでない。
【0068】
本発明の種々の態様は、組み換え微生物を用いて燃料生産に関する利点を提供する。燃料生産の最適化のためのポリヌクレオチド、発現カセット、発現ベクターおよび組み換え微生物は、本発明の幾つかの態様に従って開示される。
【0069】
ヒドロラーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、ヒドロラーゼをコードするとしてC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ヒドロラーゼをコードするとしてC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用する燃料生産方法に関する。ヒドロラーゼをコードする核酸を利用する利点は、例えば多糖およびポリペプチドなどの高分子を加水分解する微生物の能力および性能の改良を含む。
【0070】
ヒドロラーゼは、二糖、三糖および多糖、ポリペプチド、ならびにタンパク質などの高分子を分解する酵素を含み得る。高分子は、例えばセルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン、およびプロテオグリカンも含み得る。多糖を分解する酵素および酵素活性の例は、グリコシド・ヒドロラーゼ(GH)、グリコシル・トランスフェラーゼ(GT)、多糖リアーゼ(PL)、炭水化物エステラーゼ(CE)、および炭水化物結合モジュール(CBM)を含むタンパク質を含み得るがこれらに限定されない("cazy.org"のWorld Wide Webで入手可能;Coutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999) Carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach. In "Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,」 H.J. Gilbert, G. Davies, B. Henrissat and B. Svensson eds., The Royal Society of Chemistry, Cambridge, pp. 3-12)。
【0071】
幾つかの態様において、GH、GT、PL、CEおよびCMBは異なる活性をもつ別個の酵素であり得る。他の態様において、GH、GT、PL、CEおよびCMBは特定の触媒活性をもつ酵素ドメインであり得る。例えば、多数の活性をもつ酵素は、例えばGH、GT、PL、CEおよび/またはCBM触媒ドメインを含む多数の酵素ドメインを有し得る。
【0072】
O-グリコシル・ヒドロラーゼは、2つ以上の炭水化物間、または一つの炭水化物と一つの非炭水化物部分との間でグリコシド結合を加水分解する広範な酵素群である。配列類似性に基づくグリコシル・ヒドロラーゼの分類システムは、85の異なるファミリーPUBMED: 7624375、PUBMED:8535779、PUBMEDの定義に至った。この分類はCAZy(炭水化物に活性な酵素(CArbohydrate-Active EnZymes))ウェブ・サイトPUBMEDで入手できる。タンパク質の折り畳みは配列より良く保存されるため、ファミリーの幾つかは「一族(clan)」に分類され得る。
【0073】
グリコシド・ヒドロラーゼ・ファミリー9はエンドグルカナーゼおよびセロビオヒドロラーゼなどの幾つかの公知の活性をもつ酵素を含む。C.フィトフェルメンタンスにおいて、例示的なGH9セルラーゼはABX43720である。
【0074】
ヒドロラーゼは本発明の製品および工程における利用のためC.フィトフェルメンタンスの注釈付きゲノムから選択され得る。例として、一つまたは複数のエンドグルカナーゼ、キチナーゼ、セロビオヒドロラーゼまたはエンドプロセッシブ(endo-processive)セルラーゼ(還元末端または非還元末端のいずれかで)などの酵素を含む。
【0075】
さらに、C.フィトフェルメンタンスなどの微生物は一つまたは複数のセルラーゼもしくはヒドロラーゼ酵素の産生を強化するために改変され、または一つまたは複数の該酵素は異なる宿主(例えば他の細菌または酵母)で異種発現し得る。異種発現用に、細菌または酵母は組み換え技術を通して改変され得る(例えば、Brat et al. Appl. Env. Microbiol. 29; 75:2304-2311, disclosing expression of xylose isomerase in Saccharomyces cerevisiae)。
【0076】
本発明の組み換え微生物における最終生産物(例えばエタノール)の生産を強化するために他の修飾が為され得る。例えば、宿主は更なる異種DNA分節をさらに含み得、その発現産物は組み換え宿主への単糖および/またはオリゴ糖の輸送に関与するタンパク質である。同様に、糖分解経路からの追加遺伝子は宿主に組み込まれ得る。このような方法で、エタノール生産速度の強化が達成され得る。
【0077】
C.フィトフェルメンタンス・ゲノムの最も顕著で予期しない特徴の一つは、炭水化物に活性な酵素をコードする遺伝子の数および多様性である。この多様性はC.フィトフェルメンタンスに関連する生物では例を見ない。表1は他の生物との関連で炭水化物遺伝子の多様性を説明する。
【0078】
(表1)炭水化物に活性な遺伝子の数および多様性
【0079】
C.フィトフェルメンタンス・ゲノムは、本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて予測される広範囲の推定機能をもつ様々な範囲のGH、PL、CE、およびCBM遺伝子を含む。表2〜表5は、それぞれC.フィトフェルメンタンスに存在すると予測されるGH、PL、CE、およびCBMファミリー・メンバーの幾つかの公知活性の幾つかの例を示す。公知の活性は生化学および分子生物学国際連合により決定される活性および対応するEC番号により列挙する。
【0080】
(表2)グリコシドヒドロラーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0081】
(表3)多糖リアーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0082】
(表4)炭水化物エステラーゼファミリーメンバーの公知の活性
【0083】
(表5)炭水化物結合モジュールファミリーメンバーの公知の活性
【0084】
幾つかの態様は表6に示されるヒドロラーゼをコードする遺伝子を含む。JGIナンバーはGenBank記録上のNCBI遺伝子座のタグに言及する。
【0085】
(表6)C.フィトフェルメンタンスの予測ヒドロラーゼ
【0086】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、セルロースを分解する酵素、即ちセルラーゼを含み得る。エンドセルラーゼ(EC3.2.1.4)およびエキソセルラーゼ(EC3.2.1.91)を含む幾つかのセルラーゼはβ-1,4-グルコシド結合を加水分解する。
【0087】
C.フィトフェルメンタンスの予測エンドセルラーゼの例は、Cphy3368、Cphy1163、およびCphy2058などのGH5ファミリー;Cphy3207などのGH8ファミリー;ならびにCphy3367などのGH9ファミリー内の遺伝子を含み得る。C.フィトフェルメンタンスの予測エキソセルラーゼの例は、Cphy3368などのGH48ファミリー内の遺伝子を含み得る。幾つかのエキソセルラーゼは多糖を加水分解しグルコースの2から4単位のオリゴ糖を産生し、セロデキストリン(cellodextrin)二糖(セロビオース)、三糖(セロトリオース(cellotriose))、または四糖(セロテトラオース(cellotetraose))をもたらす。GH5、GH9およびGH48ファミリーのメンバーはエキソおよびエンドの両セルラーゼ活性を有し得る。
【0088】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、ヘミセルロースを分解する能力を有する酵素、即ちヘミセルラーゼを含み得る(Leschine, S. B. in Handbook on Clostridia(ed. Durre, P.)(CRC Press, Boca Raton, 2005))。ヘミセルロースは、植物バイオマスの主成分であり、ペントースとヘキソースの混合物、例えばD-キシロピラノース、L-アラビノフラノース、D-マンノピラノース、D-グルコピラノース、D-ガラクトピラノース、D-グルコピラノシルウロン酸および他の糖を含み得る(Aspinall, G. O. The Biochemistry of Plants 473, 1980; Han, J. S. & Rowell, J. S. in Paper and composites from agro-based resources 83, 1997)。ある態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定された予測ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースの直鎖骨格上で活性な酵素、例えばGH5、GH10、GH11、およびGH43のファミリー・メンバーなどのエンド-β-1,4-D-キシラナーゼ(EC3.2.1.8);GH30、GH43、およびGH3のファミリー・メンバーなどの1,4-β-D-キシロシド・キシロヒドロラーゼ(EC3.2.1.37);およびGH26ファミリー・メンバーなどのβ-マンナナーゼ(EC3.2.1.78)を含み得る(表6を参照)。
【0089】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定された予測ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースの側鎖および置換基に活性な酵素、例えば、GH3、GH43、およびGH51ファミリー・メンバーなどのα-L-アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55);GH31ファミリー・メンバーなどのα-キシロシダーゼ;GH95およびGH29ファミリー・メンバーなどのα-フコシダーゼ(EC3.2.1.51);GH1、GH2、GH4、GH36、GH43ファミリー・メンバーなどのガラクトシダーゼ;ならびにCE2およびCE4などのアセチル-キシラン・エステラーゼ(EC3.1.1.72)を含み得る(表6を参照)。
【0090】
幾つかの態様において、多糖を分解する酵素は、ペクチンを分解する能力を有する酵素、即ちペクチナーゼを含み得る。植物細胞壁において、架橋したセルロース・ネットワークは、キシログルカンおよびある構造タンパク質に共有結合で架橋し得るペクチンの基質に埋め込まれ得る。ペクチンはホモガラクツロナン(homogalacturonan)(HG)またはラムノガラクツロナン(rhamnogalacturonan)(RH)を含み得る。
【0091】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたペクチナーゼはHGを加水分解し得る。HGはD-ガラクツロン酸(D-galA)単位からなり得、該単位はアセチル化およびメチル化され得る。HGを加水分解する酵素は、例えばPL1、PL9、およびPL11のファミリー・メンバーなどの1,4-α-Dガラクツロナンリアーゼ(EC4.2.2.2);GH88およびGH105のファミリー・メンバーなどのグルクロニル・ヒドロラーゼ;CE12ファミリー・メンバーなどのペクチン・アセチルエステラーゼ;ならびにCE8ファミリー・メンバーなどのペクチン・メチルエステラーゼを含み得る(表6参照)。
【0092】
さらに幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されるペクチナーゼはRHを加水分解し得る。RHは交互の1,2-α-L-ラムノース(L-Rha)および1,4-α-D-ガラクツロン残基からなる骨格であり得る(Lau, J. M., McNeil M., Darvill A. G. & Albersheim P. Structure of the backbone of rhamnogalacturonan I, a pectic polysaccharide in the primary cell walls of plants. Carbohydrate research 137, 111 (1985))。骨格のラムノース残基は側鎖としてC4に結合したガラクタン、アラビナン、またはアラビノガラクタンを有し得る。HGを加水分解する酵素は、例えばGH28ファミリー・メンバーなどのエンドラムノガラクツロナーゼ;およびPL11ファミリー・メンバーなどのラムノガラクツロナン・リアーゼを含み得る(表6を参照)。
【0093】
幾つかの態様はデンプンを加水分解し得る酵素を含む。C.フィトフェルメンタンスはデンプンおよびキチンを分解し得る(Warnick, T. A., Methe, B. A. & Leschine, S. B. Clostridium phytofermentans sp. nov., a cellulolytic mesophile from forest soil. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 52, 1155-1160 (2002); Leschine, S. B. in Handbook on Clostridia (ed Durre, P.) (CRC Press, Boca Raton, 2005); Reguera, G. & Leschine, S. B. Chitin degradation by cellulolytic anaerobes and facultative aerobes from soils and sediments. FEMS Microbiol. Lett. 204, 367-374 (2001))。デンプンを加水分解する酵素は、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-アミラーゼ、エキソ-α-1,4-グルカナーゼ、およびプルラナーゼを含む。デンプン加水分解に関与するC.フィトフェルメンタンスで同定された予測酵素の例はGH13ファミリー・メンバーを含む(表6を参照)。
【0094】
他の態様において、ヒドロラーゼはキチンを加水分解する酵素を含み得る。キチンを加水分解し得る酵素の例はGH18およびGH19のファミリー・メンバーを含む(表6を参照)。
【0095】
さらなる幾つかの態様において、ヒドロラーゼは地衣類を加水分解する酵素、即ちリチェナーゼ(lichenase)、例えばCphy3388などのGH16ファミリー・メンバーを含み得る。
【0096】
幾つかの態様において、ヒドロラーゼはCBMファミリーメンバーを含み得る。いずれかの一理論に束縛されることを望むことなく、CBMドメインは酵素複合体を特定の基質に局在化するために機能し得る。セルロースに結合し得るC.フィトフェルメンタンスで同定された予測CBMファミリーの例は、CBM2、CBM3、CBM4、CBM6、およびCBM46ファミリーメンバーを含む。キシランに結合し得るC.フィトフェルメンタンスで同定された予測CBMファミリーの例は、CBM2、CBM4、CBM6、CBM13、CBM22、CBM35、およびCBM36ファミリーメンバーを含む(表6を参照)。他の態様において、CBMドメインファミリーメンバーは酵素複合体を安定化するために機能し得る。
【0097】
幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された少なくとも一つの予測ヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0098】
ATP結合カセット輸送体
本明細書に記載する幾つかの態様は、ATP結合カセット輸送体(ABC輸送体)をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含む、これらのポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ABC輸送体をコードする核酸を利用する利点は、生物内へ化合物を輸送し且つ生化学経路において該化合物を利用して燃料を生産する形質転換生物の能力を増大させることを含み、従って燃料生産を向上する。該化合物の例は高分子加水分解の産物を含む。
【0099】
ABC輸送体タンパク質は原形質膜を横切って多種多様な物質を輸送するためにATP加水分解を利用する。このような物質は糖およびアミノ酸を含み得る。ABC輸送体は本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。ABC輸送体は、少なくとも2種類のドメインである膜貫通ドメインおよびヌクレオチド(例えばATP)結合ドメインを含む。幾つかのABC輸送体は溶質輸送の媒介に助力する溶質結合ドメインも含む。これらのドメインは同一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖に存在し得る。ABC輸送体ファミリーの幾つかのメンバーはABC_tran(pfam00005)ドメインを含む。ABC輸送体ファミリーのより多くのメンバーは、長い荷電領域と高度に疎水性の分節とにより結び付けられる2つの対称的な半分内に4つのドメインを含み得る(Hyde et al, Nature, 346:362-365 (1990); Luciani et al, Genomics, 21 : 150-159 (1994))。
【0100】
より例示的な態様において、ABC輸送体を含むポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物はC.フィトフェルメンタンスで同定される。このような遺伝子クラスターは本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。幾つかの態様において、遺伝子および遺伝子クラスターは、タンパク質のオーソロガス群のクラスター(COG)間で相同性の程度により同定され得る。このような遺伝子および遺伝子クラスターはカセットに含まれ得る即ち共に発現し得る。例として、表7に示す予測ABC輸送体およびABC輸送体ドメインを含み得る。縦列の「No.」は推定クラスターを表す。ABC輸送体ドメインはシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0101】
(表7)C.フィトフェルメンタンスにおける予測ABC輸送体および他のタンパク質/ドメイン
【0102】
ある態様は、高分子加水分解の任意の産物を輸送する予測ABC輸送体をコードする核酸の使用を含む。このような加水分解産物は、単糖、例えばグルコース、マンノース、フコース、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、およびキシロース;二糖、例えばトレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース;キシロビオース(xylobiose)、ならびにオリゴ糖、例えばセロトリオース、セロテトラオース(cellotetraose)、キシロトリオース、キシロテトラオース、イヌリン、ラフィノース、およびメレジトースを含み得る。
【0103】
ある態様は、セロビオースを輸送する予測ABC輸送体、例えばCphy2464、Cphy2465、およびCphy2466によりコードされる予測ABC輸送体を含む。
【0104】
転写調節因子
本明細書に記載する幾つかの態様は、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0105】
C.フィトフェルメンタンスで同定された転写調節因子はAraCおよびPurRファミリーのメンバーを含む。AraC調節因子は炭素代謝に関与する遺伝子の転写アクチベーターを含み得る(Gallegos M. T. et al. AraC/XylS Family of Transcriptional Regulators. Microbiol. MoI. Biol. Rev. 61, 393-410 (1997))。PurR調節因子はラクトース・リプレッサー・ファミリーのメンバーを含み得る(Ramos, J. L. et al. The TetR family of transcriptional repressors. Microbiol. MoI. Biol. Rev. 69, 326-356 (2005))。
【0106】
幾つかの態様は表8に示す予測転写調節因子を含む。
【0107】
(表8)C.フィトフェルメンタンスにおける予測転写調節因子
【0108】
ある態様はCphy2467によりコードされる予測転写調節因子を含む。
【0109】
組み合わせ
本明細書に記載する幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された1よりも多い、例えば2つ以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物に関する。幾つかの態様は、C.フィトフェルメンタンスで同定された1よりも多い、例えば2つ以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0110】
組み合わせはC.フィトフェルメンタンスで同定された2以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド・カセットを含み得る。このような態様において、本明細書に記載する任意の遺伝子は本明細書に記載する任意の他の遺伝子と組み合わせて利用され得る。例えば、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。さらなる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸は、キシロース輸送体をコードする核酸と組み合わされたキシラナーゼをコードする核酸など、C.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント(cognizant)ABC輸送体をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0111】
本明細書で用いるように、コグニザントは特定の生化学経路と関連する少なくとも2つの遺伝子を言及し得る。例えば、コグニザントは、第一遺伝子の産物が第二遺伝子の基質などであり得る少なくとも2つの遺伝子を言及し得る。コグニザント遺伝子を利用する利点は、例えばヒドロラーゼを含むポリヌクレオチド・カセットで形質転換された生物など、ポリヌクレオチド・カセットによりコードされる複数の活性をもつ組み換え生物を生み出す能力を含み、コグニザントABC輸送体は、ヒドロラーゼの特定の基質高分子を加水分解し、コグニザントABC輸送体を介して細胞内に加水分解産物を輸送し得る。当業者は本明細書に記載するコグニザント遺伝子の例を同定し得る。
【0112】
他の態様において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸はC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0113】
具体的な態様において、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸は転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたABC輸送体をコードする任意の核酸はC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする核酸と組み合わせて利用され得る。
【0114】
幾つかの態様において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸はABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸および転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された任意の核酸と組み合わせて利用され得る。更なる態様において、C.フィトフェルメンタンスで同定されたヒドロラーゼをコードする任意の核酸は、C.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザントABC輸送体をコードする任意の核酸およびC.フィトフェルメンタンスで同定されたコグニザント転写調節因子をコードする任意の核酸と組み合わせて利用され得る。
【0115】
幾つかの態様において、組み合わせはC.フィトフェルメンタンスで同定された2以上の遺伝子の連続使用を含み得る。例えば、生物は本明細書に記載する任意の遺伝子を含むポリヌクレオチドで形質転換され、続いて本明細書に記載する少なくとも一つの異なる遺伝子で形質転換され得る。
【0116】
少なくとも2つの遺伝子の組み合わせを含むまたは本質的に該組み合わせからなるポリヌクレオチド・カセットの例示的態様を図1に示す。一態様において、Cphy2276によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy2272、Cphy2273、およびCphy2274によりコードされる予測コグニザントABC輸送体ドメインと組み合わされ得る。他の態様において、Cphy3207によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy3210、Cphy3209、およびCphy3208によりコードされる予測コグニザントABC輸送体ドメイン、ならびにCphy3211によりコードされる予測コグニザント転写調節因子、ならびにCphy3212によりコードされる予測コグニザントシグナル伝達タンパク質と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy0862、Cphy0861、およびCphy0860によりコードされる予測ABC輸送体ドメインは、Cphy0864によりコードされる予測転写調節因子、ならびにCphy0863によりコードされる予測シグナル伝達タンパク質と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy2466、Cphy2465、およびCphy2464によりコードされる予測ABC輸送体ドメインは、Cphy2467によりコードされる予測転写調節因子と組み合わされ得る。他の態様において、Cphy1877によりコードされる予測ヒドロラーゼは、Cphy1876によりコードされる予測転写調節因子と組み合わされ得る。
【0117】
より例示的な態様において、2以上の遺伝子を含むポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および生物はC.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスターを含み得る。このような遺伝子クラスターは本明細書に記載する方法および当技術分野において周知の方法を用いて同定され得る。幾つかの態様において、遺伝子および遺伝子クラスターはタンパク質のオーソロガス群のクラスター(COG)間の相同性の程度により同定され得る。このような遺伝子および遺伝子クラスターは共にカセットに含められ得るまたは発現し得る。C.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスターの例を表9に示す。
【0118】
(表9)C.フィトフェルメンタンスで同定された遺伝子クラスター
【0119】
キシロース同化に関与する酵素
本明細書に記載する幾つかの態様は、キシロース同化に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、キシロース同化に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0120】
本明細書で用いられるように、キシロース同化に関与する遺伝子は、例えば、高分子からキシロースへの加水分解のためのヒドロラーゼ、細胞内へのキシロースの輸送のためのABC輸送体、ヒドロラーゼおよび/またはABC輸送体をコードするこれらの遺伝子の調節のための転写調節因子、ならびにキシロースなどのペントース糖からアルコールへの発酵に関する酵素をコードする遺伝子を含み得る。C.フィトフェルメンタンスがキシロース上で増殖した際に上方調節したとして同定された遺伝子は、Cphy3419、Cphy1219、およびCphy1585、Cphy1586、およびCphy1587(図13を参照)を含む。
【0121】
多数のクロストリジウムの種はヘミセルロースを分解し得る一方で、大半の種はこのような加水分解に起因するペントース糖を発酵できない。珍しいことに、C.フィトフェルメンタンスはヘミセルロースをペントース糖に加水分解しペントース糖からアルコールに発酵できる。C.フィトフェルメンタンスはペントースをオリゴ糖としてまたは単糖として細胞内に輸送し得る。C.フィトフェルメンタンスのゲノムは、ペントースからヘキソースへの変換に関する非酸化的ペントース・リン酸経路の酵素を含む、キシロース同化の酵素をコードする遺伝子を含む。ペントースの発酵能と一致して、キシラン上で増殖する細胞の発現データは、ペントース・リン酸経路の重要な酵素、即ちトランスアルドラーゼ((EC 2.2.1.1、Cphy0013)およびトランスケトラーゼ(transketolase)(EC 2.2.1.1、Cphy0014)が最も豊富な転写産物の一つであることを示した。ペントース・リン酸経路および解糖のプライミング反応と解糖のエネルギー収穫段階とを接続するグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.12、Cphy2879)は、キシラン、セルロース、セロビオース、およびグルコース上で強力に誘導される。キシラン上の増殖中に上方調節される他の遺伝子は、
を含む。
【0122】
ヘキソースおよびペントースの発酵は、NAD(P)依存性アセトアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(Ald)およびNAD依存性アルコール・デヒドロゲナーゼ(Adh)を含む酵素により触媒されるアセチルcoAからエタノールへの還元で終結する。C.フィトフェルメンタンスのゲノムは、少なくとも7つのAld(ドメインPutA)、および少なくとも6つのAdh、例えばAldおよびAdhのドメインを含むCphy3925でコードされる推定タンパク質をコードする推定遺伝子を含む。4つのAldおよび3つのAdhは3つのクラスターの遺伝子:Cphy1173-1183;Cphy1411-1430;およびCphy2634-2650によりコードされる。
【0123】
プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する酵素
本明細書に記載する幾つかの態様は、プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、プロパノール生産、エタノールアミンおよび/またはプロパンジオールの代謝に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0124】
C.フィトフェルメンタンスは、C.セルロリティキュム、C.サーモセルム、C.アセトブティリキュム(C. acetobutylicum)、およびC.ベイジンリンキ(C. beijinrincki)など、他の類似のバイオテクノロジー対象の細菌で見出されないタンパク質様の微小区画(「PMC」)を含む。これらの微小区画は電子顕微鏡法により観察されてきた。炭水化物からアルコールへの変換に関与する特定の酵素はこれらの微小区画に局在し、特定経路の区画化およびより高い代謝効率を示唆する(Conrado, R. J., Mansell, T. J., Varner, J. D. & DeLisa, M. P. Stochastic reaction-diffusion simulation of enzyme compartmentalization reveals improved catalytic efficiency for a synthetic metabolic pathway. Metab. Eng. 9, 355-363 (2007))。
【0125】
C.フィトフェルメンタンスの3つの遺伝子座はタンパク質様区画に局在するタンパク質をコードする。これらのタンパク質様区画は二酸化炭素固定ならびに他の生物で見出されるエタノールアミンおよびプロパンジオールの利用に関与するタンパク質様区画に類似する。それぞれの遺伝子座は5炭糖およびアルコール・デヒドロゲナーゼから第一級アルコールに変換する酵素を含む。
【0126】
C.フィトフェルメンタンスで同定された7つのAldおよび6つのAdhのうち、4つのAldおよび3つのAdhはタンパク質様微小区画に局在する。タンパク質様微小区画に局在するAdhは、Fe-AdhまたはZn-Adhに対する配列同一性を示し、3つのクラスター、即ちCphy1173-1183、Cphy1411-1430、およびCphy2634-2650の遺伝子によりコードされる。
【0127】
タンパク質様微小区画に局在するより多くの酵素はフコースからプロパノールへの経路ならびにエタノールアミンおよびプロパンジオールの代謝に関与し得る。例えば、Cphy2634-2650のクラスターはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のエタノールアミン代謝に関与する遺伝子のオルソログを含み、Cphy1411-1430のクラスターはネズミチフス菌のプロパンジオール利用オペロンに機能的に関連し得る産物をコードする遺伝子を含む。
【0128】
その上、Cphy1173-1187のクラスターはロセブリア・イヌリノボランス(Roseburia inulinovorans)で見出される微小区画と相同な遺伝子(Scott, K. P., Martin, J. C, Campbell, G., Mayer, C. D. & Flint, H. J. Whole-genome transcription profiling reveals genes up-regulated by growth on fucose in the human gut bacterium Roseburia inulinivorans. J. Bacteriol. 188, 4340-4349 (2006))ならびにフコースおよびラムノースの利用に関与する推定酵素をコードする遺伝子を含む(図14および15を参照)。フコース上の増殖中に上方調節されると同定された追加遺伝子またはフコースの利用に関与すると予測される他の遺伝子は、Cphy3153、Cphy3154、Cphy3155、Cphy2010、Cphy2011、およびCphy2012を含む(図14)。ラムノース上の増殖中に上方調節されると同定された追加遺伝子またはラムノースの利用に関与すると予測される他の遺伝子は、Cphy0578、Cphy0579、Cphy0580、Cphy0581、Cphy0582、Cphy0583、Cphy0584、Cphy1146、Cphy1147、Cphy1148、Cphy1149を含む(図15)。
【0129】
水素生産
本明細書に記載する幾つかの態様は、水素生産に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、水素生産に関与する遺伝子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。
【0130】
水素は様々な糖の発酵から生産され得る。幾つかの態様において、ポリヌクレオチドはC.フィトフェルメンタンスで同定されたフェレドキシン・ヒドロゲナーゼをコードする核酸を含み得る。C.フィトフェルメンタンスで同定されたフェレドキシン・ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の例は、Cphy0087、Cphy0090、Cphy0092、Cphy2056、Cphy3805、Cphy3798を含む。
【0131】
マルチモジュール多糖リアーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ペクチンの加水分解に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードする遺伝子の例は遺伝子座Cphy1612の遺伝子を含み得る。Cphy1612遺伝子座は予測PL1およびPL9のドメインをコードする。PL1は、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2);エキソ-ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.9);およびペクチン・リアーゼ(EC 4.2.2.10)のドメインを含む。PL9はペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)およびエキソポリガラクツロン酸リアーゼ(EC 4.2.2.9)ドメインを含む。
【0132】
マルチモジュール・キシラナーゼおよびエステラーゼ
本明細書に記載する幾つかの態様は、キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。キシラナーゼおよびエステラーゼの活性を含む酵素/タンパク質ドメインをコードする遺伝子の例はCphy3862遺伝子座の遺伝子を含み得る。Cphy3862遺伝子座は、3つの予測ドメイン、即ち、2つのGH10ドメインおよびCE15ドメインを含み、下記の活性を有する:キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)活性をもつGH10;エンド-1,3-キシラナーゼ(EC 3.2.1.32)活性をもつGH10、ならびにグルクロニル・エステラーゼ(EC 3.1.1.-)および4-O-メチル-グルクロニル・エステラーゼ(EC 3.1.1.-)の活性をもつCE15。
【0133】
ラミナリンの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、ラミナリンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、ラミナリンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ラミナリンは褐藻類で見出される貯蔵グルカン(グルコースの多糖)である。ラミナリン上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、Cphy0857、Cphy0858、Cphy0859、Cphy0860、Cphy0861、Cphy0862、Cphy0863、Cphy0864、Cphy0865、およびCphy3388を含む(図16参照)。
【0134】
セロビオースの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、セロビオースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、セロビオースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。セロビオースはβ(1→4)結合で結合される2つのグルコース分子の縮合から誘導される二糖である。セロビオース上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、Cphy0430、Cphy2464、Cphy2465、Cphy2466、およびCphy2467を含む(図17参照)。
【0135】
セルロースの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、セルロースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。幾つかの態様は、セルロースの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。セルロース上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子またはセルロースの利用に関与すると予測される他の遺伝子の例は、
を含む。
【0136】
ペクチンの利用
本明細書に記載する幾つかの態様は、ペクチンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物に関する。他の態様は、ペクチンの利用に関与する酵素/タンパク質ドメインをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクター、および微生物を利用して燃料を生産する方法に関する。ペクチン上で増殖中に上方調節されると同定された遺伝子の例は、
を含む。
【0137】
ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子およびラムノガラクツロナン-Iのアラビノガラクタン側鎖の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy3585、Cphy3586、Cphy3587、Cphy3588、Cphy3589、およびCphy3590を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子およびラムノガラクツロナン-Iまたはラムノガラクツロナン-IIの側鎖の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy2262、Cphy2263、Cphy2264、Cphy2265、Cphy2266、Cphy2267、Cphy2268、Cphy2269、Cphy2272、Cphy2273、Cphy2274、Cphy2275、Cphy2276、Cphy1714、Cphy1715、Cphy1716、Cphy1717、Cphy1718、Cphy1719、およびCphy1720を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および糖輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy2464、Cphy2465、Cphy2466、およびCphy2467を含む。ポリガラクツロン酸の分解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0288、Cphy0289、Cphy0290、Cphy0291、Cphy0292、およびCphy0293を含む。ラムノガラクツロナン溶解および輸送に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0339、Cphy0340、Cphy0341、Cphy0342、Cphy0343を含む。ラムノースの輸送および分解に関与すると予測される遺伝子は、Cphy0578、Cphy0579、Cphy0580、Cphy0581、Cphy0582、Cphy0583、Cphy0584、Cphy1146、Cphy1147、Cphy1148、およびCphy1149を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および/またはフコースの輸送および分解に関与すると予測される遺伝子は、Cphy3153、Cphy3154、Cphy3155、Cphy2010、Cphy2011、およびCphy2012を含む。ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子ならびに/またはフコースおよびラムノースの代謝に関与すると予測される遺伝子は、Cphy1174、Cphy1175、Cphy1176、Cphy1177、Cphy1178、Cphy1179、Cphy1180、Cphy1181、Cphy1182、Cphy1183、Cphy1184、Cphy1185、Cphy1186、およびCphy1187を含む。
【0138】
ペクチン上で増殖中に上方調節される遺伝子および/またはポリガラクツロン酸の利用に関与すると予測される遺伝子は、
を含む。
【0139】
C.フィトフェルメンタンスの核酸配列の同定
本明細書に記載する幾つかの態様はC.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定する方法に関する。このような方法は、コード配列、非コード配列、調節配列、遺伝子間配列、遺伝子のオペロンまたはクラスターを含む核酸配列を同定する段階を含み得る。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定する方法はゲノム分析および/またはマイクロアレイ分析を含み得る。
【0140】
幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子は他の配列に対する遺伝子の類似性により同定され得る。類似性はポリヌクレオチド配列間またはポリペプチド配列間で決定され得る。幾つかの態様において、他の配列は他の生物に存在する配列であり得る。他の生物例は、C.ベイジェリンキ(C. beijerinckii)もしくはC.アセトブティリキュムなど、クロストリジウムの異なる種の生物;または枯草菌などの異なる属の生物を含み得る。
【0141】
幾つかの態様において、類似性は百分率の同一性として測定され得る。百分率の同一性は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列を比較することにより決定されるように、該配列間の関係であり得る。さらなる態様において、配列の同一性は、場合によっては、一連のポリペプチド配列間またはポリヌクレオチド配列間の一致により決定されるように、このような配列間の配列関連度であり得る。典型的には、配列同一性および配列類似性は、Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, New York (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, New York (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, New Jersey (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., ed.) Academic Press (1987); and Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY (1991)に記載されるものを含むがこれらに限定されない、公知の方法により容易に計算され得る。配列同一性を決定する方法は、試験される配列間のベストマッチを生じるように設計され得る。配列同一性および配列類似性を決定する幾つかの方法は、公的に入手可能なコンピュータ・プログラムで体系化されている。配列アラインメントおよび百分率同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイート(DNASTAR Inc., Madison, Wis.)のMegalignプログラムを用いて実施され得る。配列の多重アラインメントは、デフォルト・パラメータ(GAP PENALTY=10, GAP LENGTH PENALTY=10)とともにアラインメントのClustal法(Higgins and Sharp (1989) CABIOS. 5:151-153)を用いて実施され得る。Clustal法を用いた一対アラインメントのデフォルト・パラメータは、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WIND0W=5およびDIAGONALS SAVED=5であった。
【0142】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスの遺伝子は、当技術分野において周知のアルゴリズムを用いて核酸配列および/または推定翻訳ポリペプチド配列の遺伝子の存在を予測することにより同定され得る。例えば、GeneMark(商標)(Besemer, J., and M. Borodovsky. 2005. GeneMark: web software for gene finding in prokaryotes, eukaryotes and viruses. Nucleic Acids Res 33:W451-4)およびGlimmer(Delcher, A. L., K. A. Bratke, E. C. Powers, and S. L. Salzberg. 2007. Identifying bacterial genes and endosymbiont DNA with Glimmer. Bioinformatics 23:673-9)などのプログラムのコンピュータ・アルゴリズムが使用できる。
【0143】
幾つかの態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列はコンピュータ・アルゴリズムまたはソフトウェア・プログラムを用いて分析され得る。関連する態様において、配列分析ソフトウェアは市販されまたは独力で開発され得る。配列分析ソフトウェアの例は、プログラムBLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al, J. MoI. Biol. 215:403-410 (1990))、およびDNASTAR(DNASTAR, Inc. 1228 S. Park St. Madison, Wis. 53715 USA)のGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wis.)、ならびにSmith-Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W. R. Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994), Meeting Date 1992, 111-20. Editor(s): Suhai, Sandor. Publisher: Plenum, New York, N.Y.)を含む。典型的には、プログラムのデフォルト値、例えば最初に初期化する場合にソフトウェアとともに元々ロードされる一式の値またはパラメータ、が使用され得る。
【0144】
他の態様において、保存タンパク質ドメインおよびタンパク質ファミリーのデータベースがC.フィトフェルメンタンスの遺伝子を同定するために用いられ得る。例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の保存ドメイン・データベース(CDD)は、監督されたNCBI保存ドメイン、SMART(smart.embl-heidelberg.de/SMART)、PFAM(sanger.ac.uk/Software/Pfam/PFAMのWorld Wide Webで入手可能)、およびCOGS(完全ゲノムでコードされるタンパク質の系統発生的分類)を含む幾つかのデータベースを含む。
【0145】
幾つかの態様において、遺伝子が同定され、該遺伝子によりコードされる推定タンパク質の代謝経路が予測され得る。このような態様において、代謝経路のデータベースが使用できる。例えば、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)であり、KEGG Automatic Annotation Server(genome.jp/kegg/kaas/のWorld Wide Webで入手可能)はKEGG GENESデータベースと対照したBLAST比較を用いて同定遺伝子の機能注解を提供し得る。
【0146】
C.フィトフェルメンタンスからの核酸配列の単離
核酸配列は、当技術分野において周知の技術を用いてC.フィトフェルメンタンスのゲノムからクローニングされ得る。例えば、利用され得る組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989);およびSilhavy, T. J., Bennan, M. L. and Enquist, L. W., Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor, N.Y. (1984);およびAusubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, published by Greene Publishing Assoc, and Wiley-Interscience (1987)に記載されている。さらに、配列依存性プロトコルを用いて相同遺伝子またはオーソロガス遺伝子を単離する方法は当技術分野において周知である。配列依存性プロトコルの例は、核酸ハイブリダイゼーション法、ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR; Mullis et al., U.S. Pat. 4,683,202)、リガーゼ連鎖反応(LCR; Tabor, S. et al., Proc. Acad. Sci. USA 82, 1074, (1985))、または鎖置換増幅(SDA; Walker, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 392, (1992))など、種々の核酸増幅技術の使用により例示されるようなDNAおよびRNAの増幅法を含むがこれらに限定されない。
【0147】
通常、PCR型増幅技術において、プライマーは異なる配列を有し互いに相補的ではない。所望する試験条件に応じて、プライマーの配列は標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するために設計されるべきである。PCRプライマーの設計方法は当技術分野において普及しており周知である(Thein and Wallace, "The use of oligonucleotide as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorder", in Human Genetic Diseases: A Practical Approach, K. E. Davis Ed., (1986) pp. 33-50 IRL Press, Herndon, Va.; Rychlik, W.(1993) In White, B. A. (ed.), Methods in Molecular Biology, Vol. 15, pages 31-39, PCR Protocols: Current Methods and Applications. Humania Press, Inc., Totowa, N.J.)。
【0148】
一般に、同定配列の2つの短い分節が、DNAまたはRNAから相同な遺伝子をコードする、より長い核酸断片を増幅するためにPCRプロトコルで使用され得る。PCRはクローニングされた核酸断片のライブラリーで実施され得る。一方のプライマー配列は同定核酸配列に由来し、他方のプライマー配列は微生物の遺伝子をコードするmRNA前駆体の特徴的なポリアデニル酸域3'に由来する。あるいは、第二プライマー配列はクローニング・ベクターに由来する配列に基づき得る。例えば、RACEプロトコル(Frohman et al., PNAS USA 85:8998 (1988))は、転写産物の単一点と3'または5'末端との間の領域のコピーを増幅するためにPCRを用いてcDNAを生成する手段を提供する。3'および5'方向に向けられたプライマーは同定配列から設計され得る。市販の3'RACEまたは5'RACEシステム(BRL)を用いて、特異的な3'または5'cDNA断片が単離され得る(Ohara et al., PNAS USA 86:5673 (1989); Loh et al., Science 243:217 (1989))。
【0149】
幾つかの態様において、同定された核酸配列はDNAハイブリダイゼーション・プローブとして同定核酸の部分を用いてC.フィトフェルメンタンスDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。プローブの例は、ランダム・プライマーDNA標識、ニック翻訳、または末端標識技術などの方法により標識されるDNAプローブ、およびインビトロ転写系などの方法により産生されるRNAプローブを含み得る。その上、本配列の一部または完全長を増幅するために、特異的なオリゴヌクレオチドが設計され使用され得る。得られる増幅産物は、増幅反応中に直接標識され、または増幅反応後に標識され、適切なストリンジェンシーの条件下で完全長DNA断片を単離するためにプローブとして使用され得る。
【0150】
幾つかの態様において、単離核酸はベクターにクローニングされる。通常、ベクターは宿主微生物で複製する能力を有する。例えば、バクテリオファージ、プラスミド、ウイルス、または上記のハイブリッドなど、多数のベクターが公知である。ベクターは選択された宿主細胞におけるクローニング・ベクターまたは発現ベクターとして機能的であり得る。通常、ベクターは、単離核酸、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体組み込みを可能にする配列を含む。さらなる態様は、単離核酸の発現を促進するプロモーター配列、エンハンサー、または終結配列を含み得る。他の態様において、ベクターは、ベクター配列の染色体DNA内への組み込み後に配列の切除を可能にする配列を含み得る。例にはloxP配列またはFRT配列を含み、これらの配列はそれぞれCREリコンビナーゼおよびFLPリコンビナーゼに応答する。
【0151】
ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクター
本明細書に記載する幾つかの態様は、組み換え微生物における燃料または他の産物の生産に有用なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクターに関する。
【0152】
ポリヌクレオチド・カセットは少なくとも一つの対象となるポリヌクレオチドを含み得る。幾つかの態様において、ポリヌクレオチド・カセットは2以上の対象となるポリヌクレオチドを含み得る。例えば、ポリヌクレオチド・カセットは、本明細書に記載する対象となる2以上、3以上、または任意の数の遺伝子および/またはポリヌクレオチドを含み得る。
【0153】
幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドはC.フィトフェルメンタンスで同定された本明細書に記載の1または複数の核酸を含み得る。幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドは、C.フィトフェルメンタンスで同定された1または複数の遺伝子と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%の同一性を有し得る。他の態様において、対象となるポリヌクレオチドは、野生型タンパク質への同類置換を含む1または複数のタンパク質をコードし得る。さらなる態様において、対象となるポリヌクレオチドは燃料生産のためのタンパク質の効率を改変する置換を含む1または複数のタンパク質をコードし得る。例えば、酵素をコードするタンパク質はより効率的な触媒反応を為し得る。
【0154】
本明細書で用いられるように、発現カセットは、プロモーターなどの調節配列と機能的に連結された対象となるポリヌクレオチドであり得る。本発明に適したプロモーターは、対象となるポリヌクレオチド発現用の任意のプロモーターを含む。幾つかの態様において、プロモーターはC.フィトフェルメンタンスで同定されたプロモーター配列であり得る。幾つかの態様において、プロモーターは宿主生物で同定されたプロモーター配列であり得る。幾つかの態様において、プロモーターは、例えば、光誘導プロモーターまたは温度感受性プロモーターなどの誘導プロモーターであり得る。他の態様において、プロモーターは構成的プロモーターであり得る。幾つかの態様において、プロモーターは、宿主微生物における対象となるポリヌクレオチドの所望の発現レベルに基づいて選択され得る。幾つかの態様において、プロモーターは、その天然環境の転写開始部位からであるため、異種の転写開始部位からほぼ同じ距離で位置し得る。当技術分野において公知なように、この距離の幾らかの変動はプロモーター機能を喪失することなく適応し得る。他の態様において、発現カセットはエンハンサーおよび/または終結配列などの調節配列をさらに含み得る。
【0155】
プロモーター要素はベクター(例えばpIMPCphy)において選択され動員され得る。例えば、転写調節配列は、(例えば発現構築物において)対象となる遺伝子と機能的に連結される。プロモーターは、下流遺伝子の転写を調節するために細胞転写因子と特異的に相互作用するDNA配列の任意のアレイであり得る。特定のプロモーターの選択は、対象となるタンパク質を発現するためにどの細胞型が使用されるかに依存する。一般に、有用な転写調節配列は宿主微生物からのものである。種々の態様において、構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが宿主細胞における使用に選択される。宿主細胞に応じて、公知で且つ宿主細胞の機能を操作し得る何百もの構成的プロモーターおよび誘導プロモーターが潜在的に存在する。
【0156】
プロモーターは、下流遺伝子の転写を調節するために細胞転写因子と特異的に相互作用するDNA配列の任意のアレイであり得る。特定のプロモーターの選択は、対象となるタンパク質を発現するためにどの細胞型が使用されるかに依存する。転写調節配列は宿主微生物からのものであり得る。種々の態様において、構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが宿主細胞における使用に選択される。宿主細胞に応じて、公知で且つ宿主細胞の機能を操作し得る何百もの構成的プロモーターおよび誘導プロモーターが潜在的に存在する。
【0157】
幾つかの事例において、組み換え技術で広く利用されるプロモーター、例えば大腸菌(Escherichia coli)のlacおよびtrpオペロン、tacプロモーター、バクテリオファージpLプロモーター、バクテリオファージT7およびSP6プロモーター、β-アクチン・プロモーター、インスリン・プロモーター、バキュロウイルス・ポリヘドリンおよびp10プロモーターが利用され得る。
【0158】
他の事例において、構成的プロモーターが利用され得る。構成的プロモーターの非限定的な例は、バクテリオファージ・ラムダのintプロモーター、pBR322のβ-ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、クロストリジウムのhydAまたはthlA、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)hrdB、またはwhiE、pPR325のクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーター、ブドウ球菌(Staphylococcal)構成的プロモーターblaZなどを含む。
【0159】
本発明に有用なプロモーターは、特定の細胞培養条件下などの制御様式で下流遺伝子の発現を調節する誘導プロモーターでもあり得る。原核生物誘導プロモーターの例は、バクテリオファージの主要な右および左プロモーターのtrp、recA、lacZ、AraC、および大腸菌のgalプロモーター、枯草菌のα-アミラーゼ(Ulmanen Ett at., J. Bacteriol. 162:176-182, 1985)およびσ-D特異的プロモーター(Gilman et al., Gene sequence 32:11-20 (1984))、バチルスのバクテリオファージのプロモーター(Gryczan, In: The Molecular Biology of the Bacilli, Academic Press, Inc., NY (1982))、ストレプトマイセスのプロモーター(Ward et at., MoI. Gen. Genet. 203:468-478, 1986)などを含む。例示的な原核生物プロモーターは、Glick(J. Ind. Microtiot. 1 :277-282, 1987);Cenatiempo(Biochimie 68:505-516, 1986);およびGottesrnan(Ann. Rev. Genet. 18:415-442, 1984)に概説される。
【0160】
ある培養条件下で構成的に活性なプロモーターは、他の条件で不活性であり得る。例えば、クロストリジウム・アセトブティリキュムからのhydA遺伝子のプロモーターでは、環境pHにより発現が調節されることが知られている。さらに、温度調節プロモーターも公知であり利用され得る。従って、幾つかの態様において、所望の宿主細胞に応じて、pH調節または温度調節のプロモーターは本発明の発現構築物とともに利用され得る。米国特許出願第2002-0137140号で開示されるように、乳酸細菌で機能するP170など、他のpH調節可能なプロモーターが知られている。
【0161】
一般に、効率良く所望の遺伝子/ヌクレオチド配列を発現するために、例えば、遺伝子の本来のプロモーター、例えばTn5のカナマイシン耐性遺伝子、pBR322のアンピシリン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子のプロモーター、およびラムダ・ファージのプロモーター、および宿主細胞において機能的であり得る任意のプロモーターなど、種々のプロモーターが使用され得る。発現用に、他の調節要素、例えば宿主細胞で操作可能な天然および合成の配列を含むShine-Dalgarno(SD)配列ならびに(コード配列が導入され本発明の組み換え細胞を提供する)宿主細胞で操作可能な転写終結因子(任意の天然および合成の配列を含む逆位反復構造)などが上述のプロモーターとともに使用され得る。
【0162】
本発明の製品および工程で利用され得るプロモーターの例は、下記の特許文献で開示されるものを含む:US 2004/0171824、US 6,410,317、WO 2005/024019。lac(D. V. Goeddel et al., "Expression in Escherichia coli of Chemically Synthesized Genes for Human Insulin," Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 76:106-110 (1979));trp(J. D. Windass et al. "The Construction of a Synthetic Escherichia coli Trp Promoter and Its Use In the Expression of a Synthetic Interferon Gene", Nucl. Acids. Res., 10:6639-57 (1982))およびλ PLオペロン(R. Crowl et al., "Versatile Expression Vectors for High-Level Synthesis of Cloned Gene Products in Escherichia coli", Gene, 38:31-38 (1985))など、幾つかのプロモーター-オペレーター系は、大腸菌に存在し、組み換え細胞における遺伝子発現の調節用に使用されてきた。対応する調節因子は、それぞれlacリプレッサー、trpR、およびcIリプレッサーである。
【0163】
リプレッサーは特定のオペロンに特異的に結合するタンパク質分子である。例えば、lacリプレッサー分子はlacプロモーター-オペレーター系のオペレーターに結合する一方、croリプレッサーはλPRプロモーターのオペレーターに結合する。リプレッサーとオペレーターとの他の組み合わせは当技術分野において公知である。例えば、J. D. Watson et al., Molecular Biology Of The Gene, p. 373 (4th ed. 1987)を参照のこと。リプレッサーおよびオペレーターにより形成される構造は、RNAポリメラーゼと関連プロモーターの生産的相互作用を遮断することにより、転写を妨げる。誘導因子と呼ばれる他の分子はリプレッサーに結合することにより、リプレッサーがそのオペレーターに結合することを妨げる。従って、リプレッサー分子によるタンパク質発現の抑制は、リプレッサー濃度を減じることにより、またはリプレッサーを誘導因子で中和することにより、覆され得る。
【0164】
類似のプロモーター-オペレーター系および誘導因子は他の微生物で知られている。酵母では、GAL10およびGAL1プロモーターが細胞外グルコースにより抑制され、誘導因子のガラクトースの添加により活性化される。GAL80タンパク質は該系のリプレッサーであり、GAL4は転写活性因子である。ガラクトースへのGAL80の結合はGAL80のGAL4への結合を妨げる。次いで、GAL4は転写を活性化する上流活性化配列(UAS)に結合し得る。Y. Oshima, "Regulatory Circuits for Gene Expression: The Metabolisms Of Galactose And Phosphat" in The Molecular Biology Of The Yeast Sacharomyces, Metabolism And Gene Expression, J. N. Strathern et al. eds. (1982)を参照のこと。
【0165】
PHO5プロモーターの制御下での転写は、細胞外無機リン酸塩により抑制され、リン酸塩が枯渇する場合に高レベルまで誘導される。R. A. Kramer and N. Andersen, "Isolation of Yeast Genes with mRNA Levels Controlled By Phosphate Concentration,」 Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 77:6451-6545 (1980)。リン酸塩調節に関与する幾つかを含む、PHO5発現用の幾つかの調節遺伝子が同定されている。
【0166】
Matα2は酵母の温度調節プロモーター系である。リプレッサー・タンパク質、オペレーター、およびプロモーターの部位はこの系で同定されている。A. Z. Sledziewski et al., "Construction Of Temperature-Regulated Yeast Promoters Using The Matα2 Repression System,」 Bio/Technology, 6:411-16 (1988)。
【0167】
酵母におけるリプレッサー系の他の例はCUP1プロモーターであり、Cu2+イオンにより誘導され得る。CUP1プロモーターはメタロチオニン(metallothionine)タンパク質により調節される。J. A. Gorman et al., "Regulation of The Yeast Metallothionine Gene,」 Gene, 48:13-22 (1986)。
【0168】
同様に、所望の1または複数のセルラーゼ発現を得るために、高コピー数プラスミドが本発明の製品または工程で利用され得る。構築物は所望の遺伝子の染色体組み込み用に調製され得る。外来遺伝子の染色体組み込みはプラスミド系構築物に対して幾つかの利点を提供し得る。後者は商業過程に一定の制限を有する。エタノール生産遺伝子は大腸菌Bで染色体組み込みされている。Ohta et al. (1991) Appl. Environ. Microbiol. 57:893-9を参照のこと。一般に、これは、(1)抗生物質耐性遺伝子より上流の所望遺伝子および(2)標的微生物からの相同なDNA断片を含むDNA断片の精製により達成される。このDNAは連結されレプリコン無しで環を形成し形質転換用に使用され得る。従って、対象となる遺伝子は大腸菌などの異種宿主に導入され、短いランダム断片が単離され、標的遺伝子(例えば、セルラーゼ酵素をコードする遺伝子)と機能的に連結され、相同組み換えを促進し得る。
【0169】
発現ベクター
発現ベクターは、本明細書に記載する任意の発現カセットを含み、通常、宿主細胞における1または複数の対象となるポリヌクレオチドの発現に必要な全ての要素を含み得る。幾つかの態様において、対象となるポリヌクレオチドはベクター内に導入され、組み換え微生物における燃料生産のための宿主細胞の形質転換に適切な組み換え発現ベクターを生み出す。他の態様において、発現カセットはベクター内に導入され、宿主細胞の形質転換に適した組み換え発現ベクターを生み出し得る。幾つかの態様において、1または複数の発現カセットを含む発現ベクターが提供される。
【0170】
発現ベクターは自律的に複製し得る、または宿主細胞のゲノム内に挿入されることにより複製し得る。幾つかの態様において、発現カセットは宿主細胞ゲノム内に相同的に組み込まれ得る。他の態様において、遺伝子は宿主細胞ゲノム内に非相同的に組み込まれ得る。幾つかの態様において、発現カセットは二重相同組み換えを介して所望の遺伝子座内に組み込まれ得る。
【0171】
幾つかの態様において、2以上の宿主細胞で使用可能なベクターが望ましい。例えば、ベクターは大腸菌でのクローニングおよびクロストリジウム種での発現に使用され得る。このようなベクターは、通常、大腸菌の複製起点およびクロストリジウムまたは他のグラム陽性細菌に適合する起点を含む。幾つかの大腸菌およびグラム陽性のプラスミド複製起点が知られている。ベクターの追加要素は、例えば、カナマイシン耐性またはアンピシリン耐性など、所望のポリヌクレオチド配列で形質転換される細胞の検出および/または選別を可能にする選択可能なマーカーを含み得る。例示的なクロストリジウムのシャトル・ベクターは、Mauchline et al. (1999) In: Clostridia: Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology, AL Demain and JE Davies, ed. (ASM Press), pp. 475-492;およびHeap et al., J. Microbiol .Methods, 78:79-85(2009)に記載されている。
【0172】
幾つかの態様において、発現ベクターは、1または複数の遺伝子の存在および/または発現が宿主細胞の耐性を経済上関連のあるエタノール濃度まで可能にする遺伝子を含み得る。例えば、omrA、lmrA、およびlmrCDが発現ベクターに含まれ得る。ワイン乳酸菌オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)由来のOmrAおよび乳酸連鎖球菌(Lactococcus lactis)由来のそのホモログLmrAは、100倍から10,000倍までtolC(-)大腸菌の相対的耐性を増大させることが示された(Bourdineaud et al., A bacterial gene homologous to ABC transporters protect Oenococcus oeni from ethanol and other stress factors in wine. Int. J. Food Microbiol. 2004 Apr 1;92(1):1-14)。従って、宿主細胞のエタノール耐性を増大させるために、omrA、lmrA、および他のホモログを組み込むことは有益であり得る。
【0173】
幾つかの態様において、本明細書で提供するベクターは宿主生物ゲノム内への標的組み込みを促進するための1または複数のゲノム核酸分節を含み得る。標的組み込み用のゲノム核酸分節は約10ヌクレオチドから約20,000ヌクレオチドまでの長さであり得る。幾つかの態様において、標的組み込み用のゲノム核酸分節は、約1,000ヌクレオチドから約10,000ヌクレオチドまでの長さであり得る。他の態様において、標的組み込み用のゲノム核酸分節は、約1kbから約2kbの間の長さである。幾つかの態様において、核ゲノム核酸の「隣接」片は、対象となる遺伝子が隣接DNAの非コード領域内にクローニングされる場合、2つの隣接片に分割され得る。これは、二重交叉型組み換えによる細菌染色体内への介在核酸領域の組み込みを可能にする。他の態様において、隣接片は、互いに隣接していない核核酸配列の分節を含み得る。幾つかの態様において、第一隣接ゲノム核酸分節は核ゲノムの第二隣接ゲノム核酸分節から約0から約10,000塩基対離れて位置する。
【0174】
幾つかの態様において、ゲノム核酸分節は、ベクター内に導入され、本明細書に開示する任意の発現カセットを宿主生物の核ゲノム内へ標的組み込みするための骨格発現ベクターを生成し得る。核酸配列を導入するための当技術分野において知られる種々の方法のいずれかが用いられ得る。例えば、核酸分節は適切なプライマーおよびPCRを用いて単離された核ゲノム核酸から増幅され得る。次いで、増幅産物は、例えば連結により種々の適切なクローニング・ベクターのいずれかに導入され得る。幾つかの有用なベクターは、例えばpGEM13z、pGEMTおよびpGEMTEasy(Promega, Madison, WI);pSTBluel(EMD Chemicals Inc. San Diego, CA);ならびにpcDNA3.1、pCR4-TOPO、pCR-TOPO-II、pCRBlunt-II-TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、核由来の少なくとも一つの核酸分節がベクターに導入される。他の態様において、核由来の2以上の核酸分節がベクターに導入される。幾つかの態様において、2つの核酸分節はベクターで互いに隣接し得る。幾つかの態様において、ベクターに導入される2つの核酸分節は、例えば約1塩基対から30塩基対の間で離れ得る。幾つかの態様において、2つの核酸分節を隔てる配列は少なくとも一つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
【0175】
種々の態様において、調節配列が本発明のベクターに含まれ得る。幾つかの態様において、調節配列は、核ゲノムに導入される遺伝子(例えば対象となる遺伝子)の発現を調節するための核酸配列を含む。種々の態様において、調節配列は骨格発現ベクターに導入され得る。例えば、種々の調節配列が宿主微生物ゲノムから同定され得る。調節配列は、例えば核遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロン、エクソン、5'UTR、3'UTR、または前記のいずれかの任意部分を含み得る。標準的な分子生物学技術を用いて、調節配列が所望のベクターに導入され得る。幾つかの態様において、ベクターはクローニング・ベクターまたは標的組み込み用の核酸分節を含むベクターを含む。
【0176】
幾つかの態様において、核ゲノムに導入される遺伝子の発現を調節する核酸配列は、5'UTR、3'UTR、プロモーターおよび/もしくはエンハンサー、またはその部分、1または複数の核遺伝子のPCR増幅によりベクター内に導入され得る。適切なPCRサイクル条件を用いて、増幅されるべき配列に隣接するプライマーが調節配列を増幅するために使用される。幾つかの態様において、プライマーは種々の制限酵素のいずれかの認識配列を含み得ることにより、PCR増幅産物に該認識配列を導入する。PCR産物は適切な制限酵素で消化されベクターの対応部位に導入され得る。
【0177】
他の態様において、発現されるべき1または複数の遺伝子は市販のシステムまたは類似の方法を用いて微生物のゲノムに組み込まれ得る。クロストリジウムへのこれらの方法の適用性は、クロストリジウム細胞における外来遺伝子の組み込みおよび発現を含めて、証明されている(例えば、Heap et al. (2007). J. Microbiol. Methods. 70:452-464; Chen et al. (2007). Plasmid. 58:182-189を参照のこと)。
【0178】
微生物宿主
幾つかの態様は、本明細書に記載するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、または発現ベクターのいずれかを含む微生物に関する。宿主細胞は、動物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、および酵母などの真核細胞、ならびに細菌などの原核細胞を含み得るがこれらに限定されない。幾つかの態様において、宿主はC.フィトフェルメンタンスである。幾つかの態様において、潜在的な宿主生物は組み換え生物を含み得る。
【0179】
幾つかの態様において、組み換え微生物は、セルロース分解または糖分解性の微生物であり得る。ある態様において、微生物は、クロストリジウム・セルロヴォランス、クロストリジウム・セルロリティキュム、クロストリジウム・サーモセルム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・パピロソルベンス、クロストリジウム・セロビオパルム、クロストリジウム・フンガテイ、クロストリジウム・セルロシ、クロストリジウム・ステルコラリウム、クロストリジウム・テルミティディス、クロストリジウム・サーモコプリエ、クロストリジウム・セレレクレセンス、クロストリジウム・ポリサッカロリティキュム、クロストリジウム・ポプレティ、クロストリジウム・レントセルム、クロストリジウム・チャルタタビデュム、クロストリジウム・アルドリチ、クロストリジウム・ヘルビヴォランス、アセチヴィブリオ・セルロリティクス、バクテロイデス・セルロソルベンス、カルディセルロシルプトル・サッカロリティキュム、ルミノコッカス・アルブス、ルミノコッカス・フラヴェファシエンス、フィブロバクター・スクシノゲネス、イウバクテリウム・セルロソルベンス、ブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンス、アナエロセルム・サーモフィルム、ハロセラ・セルロリティカ、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリティキュムまたはサーモアナエロバクテリウム・サッカロリティキュムであり得る。
【0180】
幾つかの態様において、宿主微生物は、例えば、キサントモナス(Xanthomonas)種などのグラム陰性細菌、ならびにB.プミルス(B. pumilus)、枯草菌およびB.コアグランス(B. coagulans)などのバチルス属;例えばC.アセトブティリキュム、C.アエロトレランス(C. aerotolerans)、C.サーモセルム、C.サーモヒドロスルフリキュム(C. thermohydrosulfuricum)、およびC.サーモサッカロリティキュムなどのクロストリジウム;セルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda)などのセルロモナス種;およびブティリヴィブリオ・フィブリソルヴェンスのメンバーを含むグラム陽性細菌のより広範なカテゴリーから選択され得る。大腸菌に加えて、例えば、E.クリサンゼミ(E. chrysanthemi)などのエルヴィニア属;ならびにK.プランチコラ(K. planticola)およびK.オキシトカ(K. oxytoca)などのクレブシエラ(Klebsiella)の他の腸内細菌が用いられ得る。幾つかの態様において、宿主微生物はザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)であり得る。同様に許容される宿主生物は種々の酵母であり、Cr.アルビジュス(Cr. albidus)などのクリプトコッカス種、モニラ(Monilia)、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)およびプルラリア・プルランス(Pullularia pullulans)の種、および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae);ならびにバクテロイデス・スシノゲネス(Bacteroides succinogenes)、T.エタノリキュス(T. ethanolicus)などのサーモアナエロバクテル種、T.ブロキイ(T. brockii)などのサーモアナエロビウム(Thermoanaerobium)種、T.アセトエチリキュスなどのサーモバクテロイデス種、およびルミノコッカス(例えば、R.フラベファシエンス(R. flavefaciens))、サーモノスポラ(Thermonospora)(T.フスカ(T. fusca)など)およびアセチヴィブリオ(例えばA.セルロリティキュス(A. cellulolyticus))の属の種を含むがこれらに限定されない他のオリゴ糖代謝細菌により例示される。幾つかの態様において、宿主生物は、例えばアモフォラ(Amphora)、アナバエナ(Anabaena)、アニクストロデスミス(Anikstrodesmis)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、チャエトセロス(Chaetoceros)、クロレラ(Chlorella)、クロロコッカム(Chlorococcum)、シクロテラ(Cyclotella)、シリンドロゼカ(Cylindrotheca)、デュナリエラ(Dunaliella)、ユーグレナ(Euglena)、ヘマトコッカス(Hematococcus)、イソクリシス(Isochrysis)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannnochloropsis)、ナヴィキュラ(Navicula)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、ノデュラリア(Nodularia)、ノストク(Nostoc)、オオクロモナス(Oochromonas)、オオシスティス(Oocystis)、オスシラルトリア(Oscillartoria)、パヴロヴァ(Pavlova)、ファエオダクティルム(Phaeodactylum)、プレイトモナス(Playtmonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、ポリラ(Porhyra)、シュードアナバエナ(Pseudoanabaena)、ピラミモナス(Pyramimonas)、スティココッカス(Stichococcus)、シネココッカス(Synechococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、ザラシオシラ(Thalassiosira)、トリコデスミウム(Trichodesmium)などの藻類から選択され得る。本基準を満たす微生物に関する文献は、例えばBiely, Trends in Biotech. 3: 286-90 (1985)、Robsen et al., Enzyme Microb. Technol. 11 : 626-44 (1989)およびBeguin Ann. Rev. Microbiol. 44: 219-48 (1990)に示されており、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられる。適切な形質転換方法論は、これらの異なる種類の宿主のそれぞれで利用でき、以下に詳細に記載する。例えば、出芽酵母におけるキシロース・イソメラーゼの発現を開示するBrat et al. Appl. Env. Microbiol. 29; 75:2304-2311も参照のこと。
【0181】
幾つかの態様において、宿主微生物は、例えばオリゴ糖を細胞内に輸送するのに必要なタンパク質を産生する能力、および該オリゴ糖を代謝する酵素の細胞内濃度により選択され得る。このような微生物の例は、E.クリサンゼミおよび他のエルヴィニア、ならびに天然でβ-キシロシダーゼを産生するK.オキシトカおよびK.プランチコラなどのクレブシエラ種などの腸内細菌を含む。ある大腸菌は、セロビオース、マルトースおよび/またはマルトトリオースを輸送および代謝するため、魅力ある宿主である。例えば、Hall et al., J. Bacteriol. 169: 2713-17 (1987)を参照のこと。
【0182】
幾つかの態様において、宿主微生物は、試験微生物がオリゴ糖を輸送および代謝するか否かを決定するためのスクリーニングにより選別され得る。このようなスクリーニングは種々の方法で達成され得る。例えば、微生物は、いずれが適切なオリゴ糖基質上で増殖するかを決定するためにスクリーニングされ得る。スクリーニングは細胞内に単量体のみを輸送しない微生物を選別するよう設計される。例えば、前出のHall et al.(1987)を参照のこと。あるいは、微生物は、適切な細胞内酵素活性、例えばβ-キシロシダーゼ活性について検定され得る。潜在的な宿主微生物の増殖は、エタノール耐性、塩耐性、および温度耐性について更にスクリーニングされ得る。Alterhum et al., Appl. Environ. Microbiol. 55: 1943-48 (1989); Beall et al., Biotechnol. & Bioeng. 38: 296-303 (1991)を参照のこと。
【0183】
幾つかの態様において、宿主微生物は一つまたは複数の下記の特徴を示し得る:1%エタノールを超えるエタノール濃度で増殖する能力、例えば0.3モルの塩濃度に耐える能力、例えば0.2モルの酢酸塩濃度に耐える能力、および例えば40℃の温度に耐える能力、ならびに最小のプロテアーゼ活性でセルロース、ヘミセルロースおよびペクチンの脱重合に有用な高濃度の酵素を産生する能力。幾つかの態様において、宿主微生物は天然のキシラナーゼまたはセルラーゼも含み得る。幾つかの態様において、燃料生産のための発現ベクターの導入後、宿主は上記の1または複数の有用な特徴を保持しつつ90%を上回る理論的収率で試験される種々の糖からエタノールを生産し得る。
【0184】
宿主細胞の形質転換
幾つかの態様は、宿主微生物の細胞内に本明細書に記載するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、および発現ベクターのいずれかを導入する方法に関する。それにより、このような態様は、種々の発酵条件下で培養される場合に燃料を生産できる組み換え微生物を産生する。細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、電気穿孔法、リポフェクション、トランスフェクション、接合、化学形質転換、注入、粒子流入銃射撃(particle infloe gun bombardment)、および磁気泳動(magnetophoresis)を含み得る。磁気泳動は、細胞内に核酸を導入するために磁気泳動およびマイクロサイズ線形磁石のナノ技術製造を用いる(Kuehnle et al., U.S. Patent No. 6,706,394; 2004; Kuehnle et al., U.S. Patent No. 5,516,670; 1996)。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス内へのメチル化プラスミドの電気形質転換は、Mermelsteinにより開発されたプロトコルに従って実施され得る(Mermelstein, et al. Bio/Technology 10:190-195 (1992))。より多くの方法は接合による形質転換を含み得る。他の態様において、陽性の形質転換体は適切な抗生物質が補足された寒天で固めたCGM上で単離され得る。
【0185】
種々の態様において、形質転換法は、1または複数の微生物への核酸導入の可視化または定量化のための1または複数の方法と併用され得る。さらに、これは、例えば増殖、蛍光、炭素代謝、イソプレノイド流動、または脂肪酸含量において、未改変表現型と統計的差異を示す任意系列の同定と併用され得ることが教示される。形質転換法は導入核酸の発現に起因する産物の可視化または定量化とも併用され得る。
【0186】
通常、C.フィトフェルメンタンスへの形質転換前に、プラスミドDNAを含むベクターはクロストリジウムのエンドヌクレアーゼによる制限を防ぐためにメチル化され得る(Mermelstein and Papoutsakis. Appl. Environ. Microbiol. 59: 1077-1081 (1993))。幾つかの態様において、メチル化はphi3TIメチルトランスフェラーゼにより達成され得る。更なる態様において、プラスミドDNAは、phi3TIメチルトランスフェラーゼ遺伝子の活性コピーを運ぶpDHKMベクターを含むDH10β大腸菌内に形質転換され得る(Zhao, et al. Appl. Environ. Microbiol. 69: 2831-41 (2003))。
【0187】
一般に、C.フィトフェルメンタンス株は、40μg/mlエリスロマイシン/クロラムフェニコールまたは25μg/mlチアンフェニコールなどの適切な抗生物質を補足した37℃のクロストリジウム増殖培地(CGM)で嫌気的に増殖し得る(Hartmanis and Gatenbeck. Appl. Environ. Microbiol. 47: 1277-83 (1984))。加えて、C.フィトフェルメンタンス株は、FORMA SCIENTIFIC(商標)嫌気性チャンバー(THERMO FORMA(商標)、オハイオ州マリエッタ)において37℃で適切な抗生物質を補足した100ml CGMのクローズド・キャップ・バッチ発酵で培養され得る。
【0188】
他の態様において、C.フィトフェルメンタンスは、Hungateの技術に従って培養され得る(Hungate, R. E. (1969). A roll tube method for cultivation of strict anaerobes. Methods Microbiol 3B, 117-132)。GS-2C培地は、C.フィトフェルメンタンス株の濃縮、単離およびルーチン培養に使用でき、ならびにJohnson et alのGS-2から得られ得る(Johnson, E. A., Madia, A. & Demain, A. L. (1981). Chemically defined minimal medium for growth of the anaerobic cellulolytic thermophile Clostridium thermocellum. Appl Environ Microbiol 41, 1060-1062)。GS-2Cは下記を含み得る:6.0 g/lボールミル粉砕セルロース(Leschine, S. B. & Canale-Parola, E. (1983). Mesophilic cellulolytic Clostridia from freshwater environments. Appl Environ Microbiol 46, 728-737);6.0g/l酵母抽出物;2.1g/l尿素;2.9g/l K2HPO4;1.5g/l KH2PO4;10.0g/l MOPS;3.0g/lクエン酸三ナトリウム二水和物;2.0g/l塩酸システイン;0.001g/lレザズリン;pHを7.0に調整。ブロス培養は30℃でO2を含まないN2の環境でインキュベートされ得る。寒天培地のプレート上での培養は嫌気性チャンバー(Coy Laboratory Products)のN 2/CO2/H2 (83:10:7)の環境において室温でインキュベートされ得る。
【0189】
増殖、発現および燃料生産
幾つかの態様は本明細書に記載する任意の組み換え微生物を利用した燃料生産に関する。幾つかの態様において、1または複数の異なる組み換え微生物が燃料を生産するために組み合わせて用いられ得る。このような組み合わせは単一発酵反応において2以上の異なる種類の組み換え微生物を含み得る。他の組み合わせは、バイオマスから燃料を生産する工程の逐次段階で用いられる1または複数の異なる種類の組み換え微生物を含み得る。幾つかの態様において、一つの組み換え微生物がバイオマスから燃料を生産するために用いられ得る。幾つかの態様において、組み換え微生物は、リグノセルロースおよび他の基質から糖および多糖などの産物の生産を触媒するために用いられ得る。
【0190】
幾つかの態様において、組み換え微生物はその中に含まれる発現カセットから遺伝子発現に適した条件下で燃料生産用に培養され得る。ある態様において、インキュベーション条件は用いられる宿主微生物に応じて変化し得る。幾つかの態様において、インキュベーション条件は発現カセットに関連し得る調節要素の種類に従って変化し得る。例えば、核酸に連結される誘導プロモーターを含む発現カセットを含む組み換え生物は、核酸発現用の培養培地への特定剤の添加を必要とし得る。
【0191】
他の態様において、組み換え微生物は、2008年2月28日に出願された同時係属中の米国特許出願第2007/0178569号および米国仮特許出願第61/032,048号に記載するように、高い効率で広域スペクトルの物質を燃料に発酵するために利用されるC.フィトフェルメンタンスの株であり得る。両参照文献は本明細書により全体として明確に組み入れられる。幾つかの態様において、C.フィトフェルメンタンス株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション700394Tであり得る。
【0192】
幾つかの態様において、基質(例えば、リグノセルロース原料)を発酵させるために利用される工程は、(1)植物多糖を含む前処理されたバイオマス由来物質を提供する段階(前処理は、切断、細断、粉砕などであり得る);(2)酸素の存在下でセルロース分解性嫌気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第一培養物を前処理されたバイオマス由来物質に植菌し好気性ブロスを生成する段階であって、嫌気性微生物が少なくとも部分的に植物多糖を加水分解できる段階;および(3)植物多糖の一部がエタノールに変換されるまで植菌された嫌気性ブロスを発酵させる段階を含み得る。他の態様において、基質を発酵させるために利用される工程は、(1)植物多糖を含む前処理されたバイオマス由来物質を提供する段階(前処理は、切断、細断、粉砕などであり得る);(2)酸素の存在下でセルロース分解性好気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第一培養物を前処理されたバイオマス由来物質に植菌し好気性ブロスを生成する段階であって、好気性微生物が少なくとも部分的に植物多糖を加水分解できる段階;(3)セルロース分解性好気性微生物が少なくとも一部の酸素を消費し少なくとも一部の植物多糖を加水分解するまで好気性ブロスをインキュベートすることにより、好気性ブロスを、発酵性糖を含む加水分解物を含む嫌気性ブロスに変換する段階;(4)発酵性糖をエタノールに変換できる嫌気性微生物(例えば本明細書に開示する微生物)を含む第二培養物を嫌気性ブロスに植菌する段階;および(5)発酵性糖の一部がエタノールに変換されるまで植菌された嫌気性ブロスを発酵させる段階を含み得る。
【0193】
発酵効率は種々の方法で測定され、例えば効率変化は野生型生物と比較して測定され得る。また、効率変化は、組み換え生物と野生型生物間の単位時間当たりのセルロースなどの基質からの燃料生産の割合として測定され得る。幾つかの態様において、組み換え生物と野生型生物間の効率変化は、1%よりも大きく、5%よりも大きく、10%よりも大きく、15%よりも大きく、20%よりも大きく、25%よりも大きく、30%よりも大きく、35%よりも大きく、40%よりも大きく、45%よりも大きく、50%よりも大きく、55%よりも大きく、60%よりも大きく、65%よりも大きく、70%よりも大きく、75%よりも大きく、80%よりも大きく、85%よりも大きく、90%よりも大きく、95%よりも大きく、100%よりも大きく、および200%よりも大きくあり得る。
【0194】
種々の微生物を増殖するための様々な培地が当技術分野において公知である。増殖培地は最小および/もしくは規定、または完全および/もしくは複合であり得る。発酵炭素源は、おがくず、木粉、木材パルプ、紙パルプ、紙パルプ廃棄蒸気、スイッチグラスなどの草、ハマナなどのバイオマス植物および作物、藻類、もみ殻、バガス、ジュート、葉、刈り取った草、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ粉、蒸留粒、およびペクチンなどのセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグノセルロース物質を含む前処理または未処理の原料を含み得る。
【0195】
アミノ酸、タンパク質、加水分解されたタンパク質、アンモニア、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、大豆、大豆誘導体、カゼイン、カゼイン誘導体、粉乳、牛乳誘導体、乳清、酵母抽出物、加水分解酵母、自己消化酵母、トウモロコシ浸出液、トウモロコシ浸出固体、グルタミン酸ナトリウムなどの窒素含有化合物、および/または他の発酵窒素源、ビタミン、および/またはミネラル補給剤を含む、さらなる栄養素が発酵反応において存在し得る。幾つかの態様において、グルコース、スクロース、マルトース、コーンシロップ、乳酸などの1または複数の更なる低分子量炭素源が添加または存在し得る。幾つかの態様において、増殖培地の可能な一形態は、Miller J. H. (1992)により記載される改変Luria-Bertani(LB)ブロス(1リットル当たり10g Difcoトリプトン、5g Difco酵母抽出物、および5g塩化ナトリウム)であり得る。
【0196】
燃料を生産する能力がある宿主細胞が本明細書に記載する発現ベクターで形質転換され、組み換え微生物が適切な条件下で増殖した後に、燃料の生産増加が観察され得る。燃料の生産増加は当業者に知られる標準的方法により観察され得る。
【0197】
幾つかの態様において、本明細書に開示する組み換え微生物の増殖および生産は、標準的なバッチ発酵、流加バッチ発酵または連続発酵で実施され得る。ある態様において、ある宿主に関しては還元酸素下または嫌気性条件下で発酵を実施することが望ましい。他の態様において、燃料生産は、好気性生物が増殖するのに十分な酸素濃度で、および任意でエアリフト(air-lift)もしくは等価な発酵槽を用いて実施され得る。幾つかの態様において、組み換え微生物はバッチ培養を用いて増殖する。幾つかの態様において、組み換え微生物はバイオリアクター発酵を用いて増殖する。幾つかの態様において、組み換え微生物が増殖する増殖培地は交換されることにより、燃料生産のレベルを増大し得る。培地交換の数は変化し得る。
【0198】
発酵のpHは増殖および宿主による燃料生産に十分な高さであり得る。発酵ブロスのpHの調整は炭酸カルシウムまたは水酸化物などの中和剤を用いて実施され得る。上記発酵方法のいずれかの選択および取り込みは利用する宿主の株および下流工程に極めて依存する。
【0199】
幾つかの態様において、有機溶媒は種々の手段によりC.フィトフェルメンタンスを用いて発酵させたバイオマスから精製され得る。ある態様において、有機溶媒は蒸留により精製される。例示的態様において、約96%のエタノールが発酵混合物から蒸留され得る。さらなる態様において、燃料用エタノール、即ち約99〜100%のエタノールが、約96%エタノールの共沸蒸留により得られ得る。共沸蒸留は、約96%エタノールにベンゼンを添加後、混合物を再蒸留することにより達成され得る。あるいは、約96%エタノールは水を取り除くため分子篩を通過し得る。
【0200】
幾つかの態様において、燃料を生産する方法は、本明細書に記載する任意の微生物を培養する段階、および本明細書に記載するC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子をコードする任意の核酸を含むポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド・カセット、発現カセット、発現ベクターにより発現するタンパク質を培養培地に供給する段階を含み得る。特定の態様において、核酸はヒドロラーゼをコードし得る。ある態様において、単離タンパク質が培養培地に供給され得る。
【0201】
下記の実施例は説明目的であって限定目的ではない。
【実施例】
【0202】
実施例1:C.フィトフェルメンタンスのDNA配列の同定
挿入ライブラリーの構築、単離および配列決定
ゲノムDNAは従来の全ゲノム・ショットガン戦略を用いて配列決定した。簡潔には、2〜3kbのランダムなDNA断片が機械的剪断後に単離された。これらのゲル抽出断片を濃縮し、末端修復し、pUC18にクローニングした。両端プラスミド配列決定反応はPE BigDye(商標)Terminator chemistry (Perkin Elmer)を用いて実施し、配列決定ラダーはPE 3700自動DNAシーケンサーで決定した。一回(xリード)の小挿入ライブラリー配列決定が行われ、x倍の冗長性を生じた。
【0203】
配列組み立ておよびギャップ埋め
配列トレースは、Phrap(P. Green, University of Washington, Seattle, Washington, USA)を用いた組み立ておよびConsed45を用いた可視化の前に、ベース呼び出しおよびデータ品質の評価のためPhred43、44を用いて処理した。
【0204】
配列分析および注釈
遺伝子モデリングは、Critica47、Glimmer48およびGeneration(compbio.ornl.gov/generation/index.shtml)モデリング・パッケージを用いて行い、結果をまとめ、GenBank非冗長データベース(NR)と対比した翻訳のベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール・フォ・プロテインズ(BLASTP)調査を行った。最良NRマッチと対比した各遺伝子モデルのN末端のアラインメントは遺伝子モデルを選定するために使用した。BLASTマッチが選出されなかった場合、Criticaモデルが留保された。それらの長さの10%よりも多く重複する遺伝子モデルは通知され、BLASTマッチで遺伝子に優先度を与えた。修正された遺伝子/タンパク質セットは、BLASTP対NRに加えて、KEGG GENES、InterPro(incorporating Pfam, TIGRFams, SmartHMM, PROSITE, PRINTS and ProDom)およびクラスターズ・オブ・オーソロガス・グループス・オブ・プロテインズ(COG)データベースに対して調査した。これらの結果から、カテゴリー化はKEGGおよびCOGの階層を用いて開発された。自動機能割当の初期基準は、パターン法またはプロファイル法からの符合する証拠に加えて、BLASTPアラインメントの一致する長さの80%を超える最小50%残基同一性を要した。推定割当は、長さの80%を上回って30%まで下がった同一性について為された。
【0205】
BLASTPを用いて、C.フィトフェルメンタンスの各遺伝子を配列決定ゲノムからの全遺伝子と対照して調査し、各予測タンパク質の第一ブラストが抽出された。理論上の細胞内局在性およびシグナルペプチド切断部位の分析はPSORT(psort.hgc.jp/form.html)を用いて実施した。CAZyドメインはCAzy(炭水化物活性酵素、www.cazy.org)により注釈が施された。輸送体はTransportDB(www.membranetransport.org)を用いて注釈が施された。C.フィトフェルメンタンスの完全配列は2007年8月に入手可能となった(アクセッション番号NC_010001)。
【0206】
実施例2:C.フィトフェルメンタンスにおけるDNA配列の発現分析
マイクロアレイ設計
C.フィトフェルメンタンスのカスタムAffymetrixマイクロアレイ設計(図3)は、全ての同定されたオープン・リーディング・フレーム(ORF)の発現レベルの測定、mRNAの5'および3'非翻訳領域の推定、オペロンの決定、tRNAの発見、ならびに代替遺伝子モデル間の識別(主に開始コドンの選択において異なる)を可能にする。
【0207】
推定タンパク質をコードする配列は、GeneMark(商標)(Besemer, J., and M. Borodovsky. 2005. GeneMark: web software for gene finding in prokaryotes, eukaryotes and viruses. Nucleic Acids Res 33:W451-4)およびGlimmer(Delcher, A. L., K. A. Bratke, E. C. Powers, and S. L. Salzberg. 2007. Identifying bacterial genes and endosymbiont DNA with Glimmer. Bioinformatics 23:673-9)の予測プログラムを用いて同定した。これらの2つの予測の和集合を発現セットとして用いた。2つのタンパク質がそれらのN末端領域で異なった場合、2つのタンパク質の小さい方を転写分析に使用したが、伸長領域は実際のN末端を規定するためにプローブによって表した。このアレイ設計は、GenBank記録に表された全タンパク質を包含し、GenBank記録で見出されない更なるORFを含んだ。クロス・ハイブリダイゼーションを最小限にするため、各プローブが固有であることを保証する標準的なAffymetrixアレイ設計プロトコルに従った。アレイ設計は11μ機能を備えた49-5241フォーマットAffymetrix GeneChip(商標)アレイで実行した。
【0208】
細胞培養増殖およびRNA単離
C.フィトフェルメンタンスは、14の特定炭素源(グルコース;キシラン;セロビオース;セルロース;D-アラビノース;L-アラビノース;フコース;ガラクトース;ラミナリン;マンノース;ペクチン;ラムノース;キシロース;または酵母抽出物)の一つと0.3%(wt/vol)で補足されたGS2培地において100% N2下30℃で管または500ml Erlenmeyerフラスコで培養した。増殖は660nmで光学密度の変化を観測することにより分光光度法で測定した。
【0209】
RNAを中間指数期の培養物(OD660=0.5)から精製した。1mlの試料を液体窒素に浸漬することにより急速冷凍した。4℃で5分間8,000rpmで遠心分離することにより細胞を収集し、Qiagen RNeasy(商標)Mini Kitを用いて全RNAを単離し、RNAseを含まないDNase Iで処理した。RNA濃度はNanodrop(商標)分光光度計を用いて260/280nmの吸光度により決定した。
【0210】
マイクロアレイ処理
cDNA合成、アレイ・ハイブリダイゼーションおよび画像化は、マサチューセッツ大学医療センターのゲノム核施設で実施した。各試料からの10μgの全RNAを鋳型として使用しAffymetrix GeneChip(商標)DNA Labeling Reagent Kitsを用いて標識cDNAを合成した。標識cDNA試料は、Affymetrix社のガイドラインに従って、Affymetrix GeneChip(商標)Arraysとハイブリダイズした。ハイブリダイズしたアレイはGeneChip(商標)Scanner 3000でスキャンした。得られる未処理の点画像データファイルは、Microarray Suite version 5.0(MAS 5.0)を用いてピボット、品質報告、および正規化プローブ強度ファイルに処理した。発現値はGCRMA法を実装するカスタム・ソフトウェア・パッケージを用いて計算した。
【0211】
マイクロアレイ・データの品質は、BioConductor(Gentleman, R. C, V. J. Carey, D. M. Bates, B. Bolstad, M. Dettling, S. Dudoit, B. Ellis, L. Gautier, Y. Ge, J. Gentry, K. Hornik, T. Hothorn, W. Huber, S. Iacus, R. Irizarry, F. Leisch, C. Li, M. Maechler, A. J. Rossini, G. Sawitzki, C. Smith, G. Smyth, L. Tierney, J. Y. Yang, and J. Zhang. 2004. Bioconductor: open software development for computational biology and bioinformatics. Genome Biol 5: R80)のaffyPLMパッケージ(Bolstad, B. M., F. Collin, J. Brettschneider, K. Simpson, L. Cope, R. Irizarray, and T. P. Speed. 2005. Quality Assessment of Affymetrix GeneChip Data, p. 33-47. In R. Gentleman, V. Carey, W. Huber, and S. Dutoit (ed.), Bioinformatics and Computational Biology Solutions Using R and Bioconductor. Springer, Heidelberg.)により提供されるプローブ-レベル・モデリング手順を用いて分析した。アレイの製造または処理による画像アーチファクトは観察されなかった。34(グルコース)、32(セロビオース)、30(キシロース)および34(セルロース)のマイクロアレイ・バックグラウンド値はAffymetrixアレイについての典型的な20〜100平均バックグラウンド値内であった。C.フィトフェルメンタンスにおける使用に適合させた手順の品質管理チェック、即ち、RNA精製、cDNA合成、標識およびハイブリダイゼーションは高品質のデータを示した。
【0212】
mRNA転写産物境界の推定
推定プロモーター配列を同定するために、mRNA転写産物の長さは+/-24塩基の誤差で試算した。ORFに隣接する遺伝子間領域およびORF内の領域の発現レベルは特異的プローブを用いて比較した(図4)。1000A.U.を超える示度数は、特異的プローブが発現領域の一部を表すことを示した。逆に、250A.U.未満の示度数は、プローブと発現領域との間に特異的なハイブリダイゼーションはないことを示した。推定発現領域を示すプローブは、平均(遺伝子1)-stdev(遺伝子1)または平均(遺伝子2)-stdev(遺伝子2)より大きい示度数を有した。
【0213】
単一プローブからの誤差を回避するために、少なくとも2つの連続プローブからの示度数を用いて発現領域を示した。しかしながら、幾つかのプローブは無反応にさせる性質を有し得るため、無反応なプローブの上流および下流の連続プローブが基準を満たす場合、閾値未満の示度数の単一プローブはマッピング発現領域に含まれた。これは、低い発現レベルの遺伝子の転写産物境界のより優れた定量化を可能にし、隣接発現した遺伝子間領域の需要を確固たるものとした。
【0214】
BLASTは、C.フィトフェルメンタンスのゲノムと対照して全ての検出されたプローブについてBLASTを実行することにより、潜在的なクロス-ハイブリダイゼーション源を同定するために使用した。0.01より低いE値の任意のマッチについて、BLASTマッチに対応するアレイ上のプローブについて強度を測定した。マッチのいずれかが問題のプローブより高い発現値を示した場合、プローブはクロス-ハイブリダイゼーションの可能な源として標識された。それぞれの推定発現領域について、陽性プローブの数および可能なクロス-ハイブリダイゼーションであると見なされるこれらの陽性プローブの数が報告された。それぞれの予測グリコシド・ヒドロラーゼ関連タンパク質および推定アルコール・デヒドロゲナーゼについての転写産物境界が報告された。
【0215】
グルコース上の増殖と比較してD-アラビノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表10に提示される。
【0216】
(表10)D-アラビノース上の発現
【0217】
グルコース上の増殖と比較してL-アラビノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表11に提示される。
【0218】
(表11)L-アラビノース上の発現
【0219】
グルコース上の増殖と比較してセロビオース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表12に提示される。
【0220】
(表12)セロビオース上の発現
【0221】
グルコース上の増殖と比較してセルロース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表13に提示される。
【0222】
(表13)セルロース上の発現
【0223】
グルコース上の増殖と比較してフコース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表14に提示される。
【0224】
(表14)フコース上の発現
【0225】
グルコース上の増殖と比較してガラクトース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表15に提示される。
【0226】
(表15)ガラクトース上の発現
【0227】
グルコース上の増殖と比較してラミナリン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表16に提示される。
【0228】
(表16)ラミナリン上の発現
【0229】
グルコース上の増殖と比較してマンノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表17に提示される。
【0230】
(表17)マンノース上の発現
【0231】
グルコース上の増殖と比較してペクチン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表18に提示される。
【0232】
(表18)ペクチン上の発現
【0233】
グルコース上の増殖と比較してラムノース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表19に提示される。
【0234】
(表19)ラムノース上の発現
【0235】
グルコース上の増殖と比較してキシラン上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表20に提示される。
【0236】
(表20)キシラン上の発現
【0237】
グルコース上の増殖と比較してキシロース上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表21に提示される。
【0238】
(表21)キシロース上の発現
【0239】
グルコース上の増殖と比較して酵母抽出物上の増殖中に4倍を超える示差発現が観察される転写産物に対応する遺伝子は、表22に提示される。
【0240】
(表22)酵母抽出物上の発現
【0241】
実施例3:C.フィトフェルメンタンス・ゲノムのゲノム精査
ゲノム構成
C.フィトフェルメンタンスのISDg ATCC700394は、4,847,594bpの単環状染色体を有し、プラスミドを保有しない。染色体の複製起点はGCスキューの転移点の位置および特徴的な複製タンパク質dnaAの存在を用いて規定した(図5)。G+C含量は35.3%である。ゲノムの位置関数として1kbウィンドウのG+C含量をプロットすることにより(図6)、より高いG+C含量を有する幾つかの単離されたゲノム島を示す。6つの具体的な島の位置は平均G+C含量>50%の1kb領域として規定され、図6に示した。これらのゲノム島におけるいずれかの遺伝子または該島のそれぞれを取り囲む遺伝子が同定された(表23)。
【0242】
(表23)C.フィトフェルメンタンスのゲノムの一般的特徴
【0243】
概して、これらの高G+C島は低い遺伝子密度を有するようである。6ゲノム島を構成するG+C含量>50%を有する16個の1Kb領域のうち、12個の領域が遺伝子を含まない。高G+C島内で見出される遺伝子は、2つの要素系(ヒスチジン・キナーゼおよび応答調節因子)および推定コラーゲン三重らせん反復を有するタンパク質のみである。これらの高G+C領域を取り囲む遺伝子の大半は未知機能である。領域Vに隣接する遺伝子の一つはファージ・タンパク質をコードする(図6)。ゲノムは3,926の予測コード配列(CDS)をコードする(表23)。
【0244】
クロストリジウムのゲノムは通常強力なコード・バイアスを示すが、C.フィトフェルメンタンスにおいては、CDSはリーディング(52%)鎖およびラギング(48%)鎖に等しくコードされる(Seedorf, H. et al. The genome of Clostridium kluyveri, a strict anaerobe with unique metabolic features. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 105, 2128-2133 (2008))。CDSの73パーセントは推定機能を割り当てられた一方、11%は未知機能の遺伝子に類似性を有し、16%はC.フィトフェルメンタンスに固有のものであった。
【0245】
61のtRNA遺伝子が20のアミノ酸を網羅するゲノムで予測される(表23、表24)。
【0246】
(表24)C.フィトフェルメンタンスのtRNA遺伝子
【0247】
8つのリボソーム・オペロンは、その内3つがリーディング鎖上に置かれ5つがラギング鎖上に置かれており、一般に複製起点に近接してクラスター化されている(表23)。C.フィトフェルメンタンスに豊富なrRNAオペロンは、より多くの数のオペロンをもつ細菌に好ましい増殖条件に迅速に応答する能力の強化により示唆されるように、進化的適応であり、変動増殖条件を経験する生物に有利であり得る(Schmidt, T. M. in Bacterial genomes: physical structure and analysis. 221 (Chapman and Hall Co., New York, N.Y., 1997); Klappenbach, J. A., Dunbar, J. M. & Schmidt, T. M. rRNA operon copy number reflects ecological strategies of bacteria. Appl. Environ. Microbiol. 66, 1328-1333 (2000); Condon, C., Liveris, D., Squires, C., Schwartz, I. & Squires, C. L. rRNA operon multiplicity in Escherichia coli and the physiological implications of rrn inactivation. J. Bacteriol. 177, 4152-4156 (1995))。
【0248】
クラスター化されたファージ関連遺伝子の存在により示されるゲノムにおいて、推定プロファージが存在するようである。ファージ-クラスターは約39kbに及び40個の遺伝子を含む(Cphy2953〜2993)。頭部および尾部の構造要素ならびにアセンブリーに関与する15個の遺伝子は、クロストリジウム・ディフィシレ(difficile)ファージΦC2の遺伝子に相同である(Goh, S., Ong, P. F., Song, K. P., Riley, T. V. & Chang, B. J. The complete genome sequence of Clostridium difficile phage phiC2 and comparisons to phiCD119 and inducible prophages of CD630. Microbiology 153, 676-685 (2007))。ファージが、その生活環、即ち、DNAパッケージング、尾部組み立て、細胞溶解、溶原性制御ならびにDNAの複製、組み換え、および修飾を完了するために必要な機能的に等価な遺伝子がゲノムに存在するか否か不明である(Id)。近縁のゲノムより少ない27個の挿入配列に関連する遺伝子(トランスポゼース)が存在する(表25)。
【0249】
(表25)クロストリジウム・ゲノムの比較
【0250】
C.フィトフェルメンタンスは植物リターに関連する土壌微生物と進化的に関係する
C.フィトフェルメンタンスと未配列決定ゲノムを含むクロストリジウム綱の他のメンバーとの系統発生関係を解明するために、分離株および最も近縁のメンバーの16S rRNA遺伝子配列(1,611bp)を近隣結合分析に用いた。ISDg株はヒト/ラット/ニワトリの腸内微生物の大半から成るクラスターXIVaのメンバーであり、且つ多数の病原菌およびソルベントジェニック(solventogenic)のクロストリジウム・アセトブティリキュムを含むクラスターI、ならびにクロストリジウム・セルロリティキュムおよびクロストリジウム・サーモセルムなどのセルロース分解性細菌を含むクラスターIIIと遠縁でしかないことを系統発生により確認した(図7)(Warnick, T. A., Methe, B. A. & Leschine, S. B. Clostridium phytofermentans sp. nov., a cellulolytic mesophile from forest soil. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 52, 1155-1160 (2002); Collins, M. D. et al. The phylogeny of the genus Clostridium: proposal of five new genera and eleven new species combinations. Int. J. Syst. Bacteriol. 44, 812-826 (1994))。クラスターXIVa内で、C.フィトフェルメンタンスは、無酸素性水田土壌、メタン生成埋め立て浸出液のバイオリアクター(93.7〜93.8%類似性)(Burrell, P. C., O'Sullivan, C., Song, H., Clarke, W. P. & Blackall, L. L. Identification, detection, and spatial resolution of Clostridium populations responsible for cellulose degradation in a methanogenic landfill leachate bioreactor. Appl. Environ. Microbiol. 70, 2414-2419 (2004); Hengstmann, U., Chin, K. J., Janssen, P. H. & Liesack, W. Comparative phylogenetic assignment of environmental sequences of genes encoding 16S rRNA and numerically abundant culturable bacteria from an anoxic rice paddy soil. Appl. Environ. Microbiol. 65, 5050-5058 (1999))、クロストリジウム・アミノヴァレリキュム(aminovalericum)種(92.4%類似性)、および腸内微生物分岐群(89.7%類似性)から分岐したクロストリジウム・ジェジュエンセ(jejuense)(92.2%類似性)、のからのメタゲノム分析から導き出された未培養細菌を含む分岐群の一部である(図7)。
【0251】
rRNA分析に基づくクロストリジウム綱内のC.フィトフェルメンタンスの分類は、BLASTPを用いて他の完全配列決定されたゲノムの遺伝子に対する類似性に従ってCDS C.フィトフェルメンタンス遺伝子の全体分布と一致する。CDSの38パーセントはXIVaクラスターに最も類似し、続いて10%がIクラスター、7%がIIIクラスターであった(図8)。しかしながら、有意な割合のCDS(14%)がクロストリジウム綱で明らかな相同性を有さず、系統発生学的に遠い株でCDSに最高レベルの類似性を示した。これは、C.フィトフェルメンタンスのゲノムが水平遺伝子伝播により獲得された多数の遺伝子を含み得ることを示唆する。これらの散在する遺伝子の起源は、クロストリジウム属の異質性および配列決定されたゲノム間でC.フィトフェルメンタンスの特有性を強調する。
【0252】
多様な起源に由来するGHの固有なセットの組み立て
C.フィトフェルメンタンスなどの単一ゲノムにおけるこのような無数の機能とグリコシル・ヒドロラーゼ(GH)との同時存在は注目に値する。多糖利用のための微生物系の組織的多様性にもかかわらず、基本構成要素は顕著な均一性を示す。多糖を分解する酵素で見出される触媒ドメインは、それらの一次配列および折り畳みトポロジーによりファミリーに体系化され得る。これらのファミリーの代表は多数の多様な細菌および真核微生物の間で見出され得る。他の細菌のGH触媒ドメインにおける類似性または差異ならびに遺伝子からゲノム・レベルへの組織化を定量化することにより、本発明者らはそれらの機能をより良く理解しまたはC.フィトフェルメンタンスの特有性を測定しようと努める。
【0253】
BLASTPを用いて他の配列決定された細菌の酵素と比較する場合、C.フィトフェルメンタンスのGHは幅広い多様な細菌と類似し、6つの門および46の種を表す。C.フィトフェルメンタンスにおける全遺伝子の分布から予測されるより多く遠縁の細菌に類似するGH遺伝子が存在する(カイ二乗検定、P=0.0004998)(図9)。予測の14%と比較してGHの約50%がクロストリジウム綱外の種とより類似する(図9)。GHの約18%がバチルスとより類似し、続いて17%がセルロース分解性細菌のクラスターIIIとより類似する(図9)。これは、水平遺伝子伝播がC.フィトフェルメンタンスの植物分解能の進化および非常に異なる起源からのGHの固有なセットの組み立てにおいて重要な役割を果たしたことを示唆する。
【0254】
ゲノム上にクラスター化されたデンプン分解遺伝子を除いて(Cphy2304〜2352)、概して、ヘミセルラーゼまたはセルラーゼの遺伝子の共局在化はほとんどない。これは、後者が独立した水平遺伝子伝播を通して獲得したという仮説を支持する。しかしながら、関連機能を備える遺伝子のタンデム例は、β-グルコシダーゼCphy3009(GH3)、エンド-キシラナーゼCphy3010(GH10)およびアラビノフラノシダーゼCphy3011(GH43)を備えたキシランを分解するクラスターである。このタンデムはC.フィトフェルメンタンスに固有のように見える。さらに、2つの主要なセルラーゼをコードする遺伝子であるCphy3367(GH9)およびCphy3368(GH48)はゲノム上で連続している。これは、細菌においてこれまで知られる全てのセルラーゼ酵素系に存在する細菌セルラーゼGH48およびGH9で観察された高い相乗効果と一致する(Riedel, K., Ritter, J. & Bronnenmeier, K. Synergistic interaction of the Clostridium stercorarium cellulases Avicelase I (CeIZ) and Avicelase II (CeIY) in the degradation of microcrystalline cellulose. FEMS Microbiol. Lett. 147, 239 (1997))。
【0255】
分子系統発生において、C.フィトフェルメンタンスの触媒ドメインであるGH9およびGH48(図10および11を参照)は、好熱性のセルロース分解性およびキシナロリティック(xynalolytic)のクロストリジウム・ステルコラリウムから得られるエンドグルカナーゼZ前駆体(アヴィセラーゼI(Avicelase I))(Jauris, S. et al. Sequence analysis of the Clostridium stercorarium celZ gene encoding a thermoactive cellulase (Avicelase I): identification of catalytic and cellulose-binding domains. MoI. Gen. Genet. 223, 258-267 (1990))およびセロデキストリノヒドロラーゼ(アヴィセラーゼII)(Bronnenmeier, K., Rucknagel, K. P. & Staudenbauer, W. L. Purification and properties of a novel type of exo-1,4-beta-glucanase (avicelase II) from the cellulolytic thermophile Clostridium stercorarium . Eur. J. Biochem. 200, 379-385 (1991))にそれぞれ最も類似する。C.ステルコラリウムにおいて、GH9およびGH48は近接でもある(Schwarz, W. H., Zverlov, V. V. & Bahl, H. Extracellular glycosyl hydrolases from Clostridia. Adv. Appl. Microbiol. 56, 215-261 (2004))。これは好熱性C.サッカロリティキュス(saccharolyticus)で更により極端であり、GH9およびGH48がC.フィトフェルメンタンスおよびC.ステルコラリウムのそれらと高度に類似する場合、単一のタンパク質に融合される。これらの観察は、これら3つの細菌におけるこれらの重要な酵素の共通起源および相乗的機能を示唆する。
【0256】
所与のGHファミリーは非常に広範囲の公知な活性をもつ酵素を含むため、ファミリーの余剰性は機能の余剰性を反映するのか、または触媒ドメインの特異性の欠如を反映するのかが問われ得る。植物細胞壁分解についての対象となるGHファミリーのより詳細な分子研究は、これらの関連するが同一でない遺伝子の配列において頻繁に変異が存在することを示す。傑出した数のGH9(16)、GH48(2)、GH5(11)セルラーゼをもち、そのセルロース分解の特化を反映するセルロース専門のC.サーモセルムと比べて、C.フィトフェルメンタンスは、概して、1ファミリー当たりの余剰性に乏しいが、そのより多面的な生態を反映する広範囲のGHファミリーを有することに言及すべきである(図9)。それでもなお、C.フィトフェルメンタンスの幾つかのGHファミリーは依然かなりの数の遺伝子を含む。これは、GH3グルコシダーゼ、GH5セルラーゼ、およびGH10、GH26、GH43のキシラン分解酵素の例である。C.フィトフェルメンタンスから得られるGH5セルラーゼ(pfam00150)の分子系統発生は、それらが多様であり、2つのサブクラスターに分類されることを示した(図11)。クラスターBは真菌のセルラーゼを含む。この例は、水平遺伝子伝播がどのようにしてGHの進化に影響を及ぼしたかを強固にする。より具体的には、異なる界に属する微生物間の遺伝子伝播の重要性を強調し、更により重要な界内の遺伝子伝播の役割を憶測する。C.フィトフェルメンタンスの6つのGH10ドメインの系統発生は、C.フィトフェルメンタンスにおける広範囲の変動性および恐らく機能を示唆する。Cphy2108(GH10)はC.ステルコラリウムXyn10Cのマルチモジュール・キシラナーゼ、熱安定性細胞結合性でセルロースおよびキシラン結合性のタンパク質に非常に類似し、従って、細胞を基質に結合する(Ali, M. K., Kimura, T., Sakka, K. & Ohmiya, K. The multidomain xylanase XynlOB as a cellulose-binding protein in Clostridium stercorarium. FEMS Microbiol. Lett. 198, 79-83 (2001))。2つの固有だが近縁のGH10ドメインが、CEドメインと融合した単一酵素で見出され、重複事象後の融合および分岐を示唆する。単一タンパク質上での触媒機能のこの特異的な配置はC.フィトフェルメンタンスに固有である。
【0257】
重複、続いて融合および再配置、ならびに配列分岐は、C.フィトフェルメンタンスのマルチモジュール酵素の基質特異性および動態特性において変動する該酵素の膨大なアレイを生じた。しかし、概して、C.フィトフェルメンタンスの顕著な特徴は、ニッチ群落の他のメンバーからこのような複雑な遺伝子のアレイおよび遺伝子クラスターの獲得を認めた水平遺伝子伝播の重要性である。
【0258】
セルロゾームを用いない植物細胞壁分解
C.フィトフェルメンタンスはセルロゾームを産生する細菌と類似する生態を共有する。しかしながら、この細菌においてセルロゾームの産生について生化学的にも遺伝学的にも証拠が存在しない(ドッケリン(dockerin)、コヒーシン、またはアンカリン・ドメインはない)。セルロゾーム複合体は、植物細胞壁多糖の種々の結合を切断するために必要な基質特異性のアレイを表す高濃度タンパク質の保留用に細菌細胞表面機構を提供するため;異なる酵素触媒特異性と結合特異性との間の化学量論および相乗効果を潜在的に最小限にするため;ならびに細胞膜と基質との間に特殊な環境を提供することにより細胞から離れて分解産物の拡散を制限する助けになり得るため、植物細胞壁の分解に関与すると信じられている(Flint, H. J., Bayer, E. A., Rincon, M. T., Lamed, R. & White, B. A. Polysaccharide utilization by gut bacteria: potential for new insights from genomic analysis. Nat. Rev. Microbiol. 6, 121-131 (2008))。C.フィトフェルメンタンスがセルロゾームなしで植物細胞壁の効率的な分解および産物の取り込みに従事する戦略は不明である。
【0259】
第一に、全てのセルラーゼのGH5、GH9およびGH48について、セルロゾームへのタンパク質の所属に従った系統樹の分類が存在しないことは驚くべきことである。これは、複合体にタンパク質を固定するドッケリン・ドメインが失われたか独立して何度も獲得されたかを示唆する(図10および11)。GH、CE、PLおよび炭水化物結合モジュール(CBM)の多様なファミリーから得られる多重ドメインが単一のタンパク質上で融合するセルロゾーム・タンパク質の顕著なマルチモジュール特性は、C.フィトフェルメンタンスで保存されている。C.フィトフェルメンタンスは19のモジュールGHタンパク質を有し、全GHの約17%を表す。非セルロース分解性細菌において、対応するGHは主に単一ドメイン・ポリペプチド上で見出される(Flint, H. J., Bayer, E. A., Rincon, M. T., Lamed, R. & White, B. A. Polysaccharide utilization by gut bacteria: potential for new insights from genomic analysis. Nat. Rev. Microbiol. 6, 121-131 (2008))。これは、遺伝子産物の異なる細胞位置、およびより小さな可溶性炭水化物基質に作用するという事実を反映し得る(Id)。この仮説に従って、セルロース分解性の種から得られる酵素に特徴的であるように見えるマルチモジュール機構は、主として植物細胞壁などの異種不溶性基質の細胞外プロセシングについて保存され得る(Id)。
【0260】
セルロゾームの不存在下において、CBMは植物細胞壁に酵素を堅く固定しうるため、それらの基質の近辺に保つことができる。15のCAZyファミリーを表す35の推定CBMが同定された(表5)。CBM2、CBM3、CBM4、CBM6およびCBM46はセルロースに結合することを示した(表5)。CBM2、CBM4、CBM6、CBM13、CBM22、CBM35およびCBM36はキシランに結合することが証明された(表5)。触媒ドメインの特異性と一致しない特異性をもつCBMドメインの種々の組み合わせの存在は、複数の多糖の種類が架橋する植物細胞壁の異なるトポロジーに対する作用に利点を与え得る。セルロースに結合するCBMとキシラナーゼは、C.フィトフェルメンタンスがセルロース線維に付着するのを助ける一方で架橋したキシランを分解し得る。触媒ドメインと無関係なCBMの存在は、一部の例では示されてきた熱安定作用によっても説明され得る。他の種類のX2ドメインは、触媒ドメインとCBMドメインとの間で、またはC.フィトフェルメンタンスの一つのマンナナーゼおよび3つのセルラーゼのCBMドメイン間で見出され得る(表6)。細菌の細胞外酵素におけるX2の機能については、ほとんど情報が入手できない。それらは、タンパク質-タンパク質相互作用のため、または潜在的な炭水化物結合ドメインとして、触媒モジュールと基質結合モジュールとの間で最適に相互作用できるスペーサーまたはリンカーとして役立つことを前提とし得る。
【0261】
多糖との結合に加えて、幾つかの酵素は細胞結合性であるらしく、細胞がその基質の近くに留まる。分泌されると予測される(シグナルペプチドを有するおよび/または細胞外と予測される)31のGH酵素の内、膜貫通らせん、TonBボックス(COG0810およびPS00430)、SORTドメインおよび/または細胞壁結合の再予測は、これらの酵素が膜または細胞壁と結合し得ることを示唆する(表6)。これらのタンパク質の内、8つのGH酵素は、分解された基質への細胞の物理的近接を潜在的に達成するため、CBMも細胞付着能も有することが予測される。最後に、特異な遺伝子のCphy1775(SLH-GH*-CBM32-CBM32)は、細胞壁に固定するための、また2つの免疫グロブリン様折り畳み(CBM32)のための予測SLHドメイン(pfam00395)と一致し、細胞をその基質に結合するCBMドメインの様に振る舞い得る。他のGH酵素は依然他の未知の機構により細胞表面に固定され得る。細胞はpfam07705(CARDB、細菌の細胞接着ドメイン)およびpfam01391(コラーゲン、コラーゲン三重らせん反復)などの異なるドメインを通して共に接着し得る。バイオフィルム形成は植物細胞壁多糖の分解の編成にも役割を果たし得る。
【0262】
取り込みと連動した分解および広範囲の誘導性ABC輸送体によるリン酸化反応
一つのホスホエノールピルビン酸(PEP)依存性ホスホトランスフェラーゼ系がゲノムで見出されたが、予備発現プロファイル・データは、細胞がキシラン、セルロース、セロビオース、またはグルコースなどの植物細胞壁の主要な要素のいずれかで増殖させた場合に該系は発現し得ないことを示唆する。むしろ、ゲノムにABC_tran(pfam00005)ドメインをもつ著しい数(137)のタンパク質は、ATP結合カセット(ABC)輸送体を介した炭水化物の取り込みと一致する。クロストリジウム綱内のその近縁と比較して(表25)、C.フィトフェルメンタンスは一貫して非常に多い数(21)の溶質結合ドメイン(SBP_bac_1, pfam01547)を有し、該ドメインは典型的には取り込みABC輸送体と関連し、異なる溶質の特異的結合を可能にする。これは、様々な種類の溶質に対する親和性の必要性を示唆し、C.フィトフェルメンタンスが種々のオリゴ糖を取り込むことができるという仮説と一致する。最後に、多糖ABC輸送体Lplb(COG4209)ドメイン、幾つかのABC輸送体のサブ要素パーミアーゼ型は、クロストリジウム綱の他の細菌と比較して、C.フィトフェルメンタンスで過剰表現される(20)(表25)。
【0263】
このドメインの数および多様性は広範囲のオリゴ糖の取り込みを可能にし得る(表25)。C.フィトフェルメンタンスがこの機能に専念するその遺伝子の0.5%を有する一方で、多面的でもあるC.サッカロリティキュスは0.2%しか有さず、C.サッカロリティキュスがより均一な種類の糖を取り込むことを示唆する。他の顕著な特徴は、調節因子と共に41のABC型輸送体に隣接するGH(109のうち53)の存在であり、連動する取り込みおよび分解ならびに特異的調節を示唆する(表7)。GH94(セロビオース・ホスホリラーゼ/セロデキストリン・ホスホリラーゼ)およびGH65(マルトース・ホスホリラーゼ)(表25)の傑出した数および多様性は、広範囲のオリゴ糖の種類が細胞に入るという仮説と一致する。ABC輸送体に隣接する5つのセロビオース/セロデキストリン・ホスホリラーゼGH94膜結合タンパク質のうち4つの存在がABCタンパク質を介するセロビオースおよびセロデキストリンの輸送と一致し、これはC.セルロリティキュムの事例でもある(Desvaux, M., Guedon, E. & Petitdemange, H. Cellulose catabolism by Clostridium cellulolyticum growing in batch culture on defined medium. Appl. Environ. Microbiol. 66, 2461-2470 (2000))。
【0264】
セロビオースまたはキシロビオースに対して活性を有し得る多数のβ-グルコシダーゼ(8つのGH3)も存在する。C.フィトフェルメンタンスは、セロビオース/セロデキストリン・ホスホリラーゼを介したエネルギー的に起こりやすいリン酸化により、またはエネルギーを浪費する加水分解β-グルコシダーゼ作用により、オリゴ糖をその異化に供給し得る。セロデキストリン濃度および他の増殖基質(例えば、セルロースまたはセロビオース)の可用性は、セロデキストリン密度、ならびに加リン酸分解および加水分解切断の相対的重要性を決定するのに関与するらしい。セルロース分解性微生物におけるセロデキストリン代謝のための加リン酸分解経路および加水分解経路の広範な存在を鑑みると、この明白な余剰性が淘汰値である可能性がある。これらの2経路を介する相対的流動の調節は、微生物が環境因子(例えば基質の可用性)に応答してATPの割合を調整することを可能にし得る。C.フィトフェルメンタンスは、9つのXylFの存在により証明されるように、キシロースなどの単糖を取り込むこともでき、キシロースを取り込むことも予測される(表25)。
【0265】
炭水化物代謝の微細に調整された調節
クロストリジウムの近縁と比較して、C.フィトフェルメンタンスは豊富なAraC(70)およびPurR(23)転写調節因子を有する(表25)。原核転写調節因子は配列類似性ならびに構造的および機能的基準に基づいてファミリーに分類される。AraC調節因子は、通常、炭素代謝、ストレス応答および病因に関与する遺伝子の転写を活性化する(Ramos, J. L. et al., "The TetR family of transcriptional repressors,) Microbiol. Mol. Biol. Rev. 69, 326-356 (2005))。PurRはラクトース・リプレッサー・ファミリー(lac)に属し、該遺伝子産物は、生理学的濃度のリガンドがPurR-DNA複合体の解離を惹起する場合に通常リプレッサーとして作用する(Id)。豊富なこれらの調節因子は多種多様な基質利用および複雑な調節ネットワークと一致する。
【0266】
PurRに有意な類似性を有する23の遺伝子のうち、8つがGH酵素でクラスター化されたABC輸送体に隣接する。AraCに有意な類似性を有する70遺伝子のうち、20はGH酵素にクラスター化されたABC輸送体に近接することが見出される。GH酵素でクラスター化されることが見出される41のABC輸送体のうち、20は一つのAraCに隣接し、8つはPurRに近接する。これらの観察に基づいて、本発明者らは、それらがそれぞれのゲノム領域の発現を調節するという仮説を立てる(表7)。
【0267】
実施例4:ヒドロラーゼ活性の試験
予測ヒドロラーゼの生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、ヒドロラーゼをコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、予測ヒドロラーゼの基質を形質転換された微生物に供給し、基質の枯渇および加水分解産物の増加を測定し、ならびにこの活性レベルを未形質転換対照微生物の活性と比較することにより測定される。幾つかの態様において、発現ベクターは予測ヒドロラーゼの細胞外発現用に設計される。基質の加水分解の増加は予測ヒドロラーゼが実際にヒドロラーゼであることを示し得る。
【0268】
実施例5:ABC輸送体の活性の試験
予測ABC輸送体の生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、ABC輸送体をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、予測ABC輸送体の基質を形質転換された微生物に供給し、基質の細胞内への輸送を測定し、ならびにこの取り込みレベルを未形質転換対照微生物の取り込みと比較することにより測定される。取り込みの増加は予測ABC輸送体がABC輸送体であることを示し得る。
【0269】
実施例6:転写調節因子の活性の試験
予測転写調節の生物活性を試験するための種々の方法が利用され得る。一例において、転写調節因子をコードするC.フィトフェルメンタンスで同定された予測遺伝子は単離され発現ベクターにクローニングされる。発現ベクターは、例えば大腸菌などの微生物に形質転換される。発現遺伝子の活性は、転写調節因子およびリポーター遺伝子の標的ヌクレオチド配列を含むプラスミドを用いて形質転換された生物を共トランスフェクションすることにより測定される。リポーター遺伝子の活性が測定され、対照微生物における同一リポーター遺伝子の活性レベルと比較される。リポーター遺伝子活性の増加は予測転写調節因子が転写調節因子であり得ることを示す。
【0270】
実施例7:大腸菌におけるセロビオース利用の操作
大腸菌の大半の実験室株および天然分離株はセロビオース利用の機能遺伝子を発現しないが、典型的には染色体上に潜在性のセロビオース利用遺伝子を含む(Hall et al., J Bacteriol., 1987 June; 169: 2713-2717)。大腸菌は、ABC輸送体をコードするCphy2464〜2466、ならびにセロビオースをグルコースおよびグルコース-1-リン酸に変換するセロビオース・ホスホリラーゼをコードするCphy0430の発現により、セロビオースを利用するように操作される。Cphy2464〜2466およびCphy0430遺伝子はプラスミド上の構成的プロモーターから発現する。Cphy2466のシグナル配列は、ペリプラズムにおけるタンパク質の発現を指令するために、内因性の大腸菌ABC輸送体ペリプラズム結合タンパク質のシグナル配列と置換される。操作された大腸菌は唯一の炭素源としてセロビオースを用いて増殖できる。
【0271】
実施例8:出芽酵母における改良されたペクチン分解の操作
Cphy1714、Cphy1720、およびCphy3586は、大腸菌-出芽酵母シャトル・ベクターにクローニングし、出芽酵母のプラスミドから異種発現する。遺伝子産物の分泌を可能にするために、シグナル配列は出芽酵母タンパク質由来のシグナル配列と置換される。操作された酵母は改良されたペクチン分解を示す。
【0272】
実施例9:微生物の改変
pIMPCphy
pIMPCphyベクターはC.フィトフェルメンタンス用のシャトル・ベクターとして構築された。大腸菌の選別および複製のためにアンピシリン耐性カセットおよび複製起点(ori)を有する。C.フィトフェルメンタンスでプラスミドの複製を可能にするグラム陽性複製起点を含む。プラスミドの存在を選定するために、pIMPCphyベクターはCphy1029遺伝子のC.フィトフェルメンタンス・プロモーターの制御下でエリスロマイシン耐性の遺伝子を運ぶ。このプラスミドは、例えばpRK2030などの可動化プラスミドを有する大腸菌株を用いて、電気穿孔法により、またはトランスコンジュゲーション(transconjugation)により、C.フィトフェルメンタンスに移入される。pIMPCphyのプラスミドマップは図18に描かれる。
【0273】
構成的プロモーター
第一段階において、全ての増殖段階でおよび異なる基質上で対応する遺伝子の高い発現を示すC.フィトフェルメンタンスから得られる幾つかのプロモーターが選択された。プロモーター要素は、構成的経路に必ず関与し得る重要な遺伝子(例えば、リボソーム遺伝子、またはエタノール生産用にアルコール・デヒドロゲナーゼ遺伝子)を選定することにより選択され得る。このような遺伝子からのプロモーターの例は、
Cphy_1029:鉄含有アルコール・デヒドロゲナーゼ
Cphy_3510:Igドメインを含むタンパク質
Cphy_3925:二官能性アセトアルデヒド-CoA/アルコール・デヒドロゲナーゼ
を含むがこれらに限定されない。
【0274】
プロモーターのクローニング
遺伝子の上流領域における異なるプロモーターはPCRにより増幅した。このPCR反応用のプライマーは、プロモーター領域を含むが下流遺伝子のリボソーム結合部位を含まない方法で選択された。プライマーは、pIMPCphyの多重クローニング部位に存在するが他の方法でそれ自体プロモーター領域に存在しない制限部位、例えばSalI、BamHI、XmaI、SmaI、EcoRIなどをプロモーター断片の末端に導入するよう設計された。
【0275】
PCR反応は、市販のPCRキットであるGoTaq(商標) Green Master Mix (Promega)を用いて、製造業者の条件に従って実施した。反応は、熱循環装置のGene Amp System 24 (Perkin Elmer)で行った。PCR産物はGenElute(商標) PCR Clean-Up Kit (Sigma)で精製した。次いで精製PCR産物もpIMPCphyプラスミドも製造業者の条件に従って適量で対応する酵素で消化した(New England Biolabs and Promegaの制限酵素)。次いでPCR産物およびプラスミドを分析し、Recovery FlashGel(商標)(Lonza)でゲル精製した。その後、PCR産物は、Quick Ligation Kit (New England Biolabs)を用いてプラスミドに連結され、大腸菌のコンピテント細胞(DH5α)は連結混合物で形質転換され、1μg/mlアンピシリンを含むLBプレート上に播種される。プレートは37℃で一晩インキュベートする。
【0276】
アンピシリン耐性大腸菌コロニーをプレートから選別し、新しい選択プレート上に再度画線付けした。37℃で増殖後、1μg/mlアンピシリンを含む液体LB培地を単一コロニーで植菌して37℃で一晩増殖させた。プラスミドはGene Elute Plasmid単離キットを用いて液体培養から単離した。
【0277】
少量調製キット
プラスミドは、PCR反応および制限消化により、それぞれ適切なプライマーを用いておよび制限酵素により、正しい挿入物について確認した。配列完全性を保証するために、挿入物はこの段階で配列決定される。
【0278】
セルラーゼ遺伝子のクローニング
1または複数のセルラーゼ遺伝子は、各遺伝子自体のリボソーム結合部位を含み得、PCRにより増幅され、続いて「プロモーターのクローニング」で前述したように適切な酵素で消化される。得られるプラスミドも対応する制限酵素で処理され、増幅遺伝子は標準的な連結を通してプラスミドに動員される。pCphyP3510-3367プラスミド(図19;SEQ ID NO:1)はCphy_3510プロモーターの下流でCphy_3367を連結することにより創出される。大腸菌はプラスミドで形質転換され、正しい挿入物は選択プレート上で選別された形質転換体から検証される。
【0279】
トランスコンジュゲーション
pRK2030ヘルパー・プラスミドとともにDH5α大腸菌は上記で論議した異なるプラスミドを用いて形質転換する。前述のプラスミドの両方を用いた大腸菌コロニーは、37℃で一晩培養後、1μg/mlアンピシリンおよび50μg/mlカナマイシンを含むLBプレート上で選別する。37℃で選択プレート上に再度画線付け後、単一コロニーが得られる。大腸菌用の培養培地(例えば、LBまたは1%グルコースおよび1%セロビオースで補足されたLB)を単一コロニーで植菌し、37℃で好気的に或いは35℃で嫌気的に一晩増殖させる。新鮮な増殖培地を、一晩培養した培養物と1:1で接種し、中間対数期まで増殖させる。C.フィトフェルメンタンス株も中間対数まで同じ培地で増殖させる。
【0280】
次いで、pRK2030およびプラスミドの一つを有するC.フィトフェルメンタンスおよび大腸菌の2つの異なる培養物は、異なる割合で、例えば1:10、1:1、1:10、1:1、10:1、1:1、10:1で混合される。接合は、液体培地で、プレート上で、または25 mm Nucleopore(商標) Track-Etch Membrane (Whatman)上のいずれかで35℃で実施される。時間は2時間から24時間の間で変更し、接合培地は接合前に培養物が増殖する同じ増殖培地である。接合手順の後、細菌混合物は、プレート上に直接塗るかまたはまず液体培地で6時間から18時間増殖させた後プレートに広げる。プレートは、C.フィトフェルメンタンスの選択剤としての10μg/mlエリスロマイシン、ならびに大腸菌の対抗選択媒質としての10μg/mlトリメトプリム、150μg/mlシクロスポリン、および1μg/mlナリジクス酸を含む。
【0281】
35℃で3日から5日インキュベーション後、エリスロマイシン耐性コロニーをプレートから選別し、新鮮な選択プレート上に再度画線付けする。単一コロニーを選別し、プラスミドの存在をPCR反応により確認する。
【0282】
セルラーゼ遺伝子の発現
次いで、異なるプラスミド上のセルラーゼ遺伝子の発現を、染色体遺伝子座から対応遺伝子がほとんどまたは全く発現しない条件下で試験する。陽性候補はクローニングされたセルラーゼの構成的発現を示す。
【0283】
SEQ ID NO:1
プラスミドpCphyP3510-3367
【0284】
他の態様
上記記載は本発明の幾つかの方法および物質を開示する。この発明は、方法および物質の改良、ならびに製造方法および設備の変更を受け入れる余地がある。このような改良は、この開示の熟考または本明細書に開示する本発明の実践から当業者に明白になるであろう。その結果として、この発明が本明細書に開示する特定の態様に限られることを意図しないが、添付の特許請求の範囲に具現化されるような本発明の範囲および精神に入る全ての改良および代替手段を網羅する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマス、該バイオマスの直接加水分解および発酵ができる微生物を含む、バイオ燃料を生産するための製品であって、該微生物が、1または複数のセルラーゼの増強された活性を提供するために改変されている、製品。
【請求項2】
微生物が、5炭糖および6炭糖の直接発酵ができる、請求項1記載の製品。
【請求項3】
微生物が細菌である、請求項2記載の製品。
【請求項4】
微生物がクロストリジウムの種である、請求項1記載の製品。
【請求項5】
微生物がクロストリジウム・フィトフェルメンタンスである、請求項1記載の製品。
【請求項6】
微生物が非組み換え体または組み換え体である、請求項1記載の製品。
【請求項7】
微生物が、1または複数のセルラーゼの活性を増強する1または複数の異種ポリヌクレオチドを含む、請求項2記載の製品。
【請求項8】
炭素質バイオマス、該バイオマスの直接加水分解および発酵ができる微生物を含む、バイオ燃料を生産するための製品であって、該微生物が、1または複数のセルラーゼの増強された活性を提供するために改変されている、製品。
【請求項9】
微生物が発酵最終産物を生産でき、その実質的部分がエタノールである、請求項8記載の製品。
【請求項10】
微生物が、乳酸、酢酸、およびギ酸を含む発酵最終産物を生産できる、請求項8記載の製品。
【請求項11】
微生物が1または複数の複合糖質を取り込むことができる、請求項8記載の製品。
【請求項12】
バイオマスが、単量体炭水化物と比較してより高濃度のオリゴマー炭水化物を含む、請求項8記載の製品。
【請求項13】
1または複数のセルラーゼが、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163からなる群より選択される、請求項8記載の製品。
【請求項14】
1または複数のセルラーゼがCphy3367である、請求項8記載の製品。
【請求項15】
バイオ燃料の生産方法であって、(a)炭素質バイオマスと該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物とを接触させる段階であって、微生物が、一つまたは複数のセルラーゼ酵素の活性を増強するために改変されている、段階;ならびに、(b)バイオ燃料を生産するために該加水分解および発酵のための時間を十分に取る段階、を含む方法。
【請求項16】
1または複数のセルラーゼ酵素が、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
微生物が1または複数の複合糖質を取り込むことができる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
バイオマスが、単量体炭水化物と比較してより高濃度のオリゴマー炭水化物を含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
加水分解が、単量体炭水化物と比較してより高濃度のセロビオースおよび/またはより大きなオリゴマーをもたらす、請求項18記載の方法。
【請求項20】
1または複数のセルラーゼがCphy3367である、請求項15記載の製品。
【請求項21】
SEQ ID NO:1に記載の単離されたヌクレオチド。
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマス、該バイオマスの直接加水分解および発酵ができる微生物を含む、バイオ燃料を生産するための製品であって、該微生物が、1または複数のセルラーゼの増強された活性を提供するために改変されている、製品。
【請求項2】
微生物が、5炭糖および6炭糖の直接発酵ができる、請求項1記載の製品。
【請求項3】
微生物が細菌である、請求項2記載の製品。
【請求項4】
微生物がクロストリジウムの種である、請求項1記載の製品。
【請求項5】
微生物がクロストリジウム・フィトフェルメンタンスである、請求項1記載の製品。
【請求項6】
微生物が非組み換え体または組み換え体である、請求項1記載の製品。
【請求項7】
微生物が、1または複数のセルラーゼの活性を増強する1または複数の異種ポリヌクレオチドを含む、請求項2記載の製品。
【請求項8】
炭素質バイオマス、該バイオマスの直接加水分解および発酵ができる微生物を含む、バイオ燃料を生産するための製品であって、該微生物が、1または複数のセルラーゼの増強された活性を提供するために改変されている、製品。
【請求項9】
微生物が発酵最終産物を生産でき、その実質的部分がエタノールである、請求項8記載の製品。
【請求項10】
微生物が、乳酸、酢酸、およびギ酸を含む発酵最終産物を生産できる、請求項8記載の製品。
【請求項11】
微生物が1または複数の複合糖質を取り込むことができる、請求項8記載の製品。
【請求項12】
バイオマスが、単量体炭水化物と比較してより高濃度のオリゴマー炭水化物を含む、請求項8記載の製品。
【請求項13】
1または複数のセルラーゼが、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163からなる群より選択される、請求項8記載の製品。
【請求項14】
1または複数のセルラーゼがCphy3367である、請求項8記載の製品。
【請求項15】
バイオ燃料の生産方法であって、(a)炭素質バイオマスと該バイオマスを直接加水分解および発酵できる微生物とを接触させる段階であって、微生物が、一つまたは複数のセルラーゼ酵素の活性を増強するために改変されている、段階;ならびに、(b)バイオ燃料を生産するために該加水分解および発酵のための時間を十分に取る段階、を含む方法。
【請求項16】
1または複数のセルラーゼ酵素が、Cphy3367、Cphy3368、Cphy0218、Cphy3207、Cphy2058、およびCphy1163からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
微生物が1または複数の複合糖質を取り込むことができる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
バイオマスが、単量体炭水化物と比較してより高濃度のオリゴマー炭水化物を含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
加水分解が、単量体炭水化物と比較してより高濃度のセロビオースおよび/またはより大きなオリゴマーをもたらす、請求項18記載の方法。
【請求項20】
1または複数のセルラーゼがCphy3367である、請求項15記載の製品。
【請求項21】
SEQ ID NO:1に記載の単離されたヌクレオチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−529345(P2011−529345A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521253(P2011−521253)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/051993
【国際公開番号】WO2010/014632
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【出願人】(511023967)キューテロス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/051993
【国際公開番号】WO2010/014632
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【出願人】(511023967)キューテロス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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