説明

微生物検出方法

【課題】迅速かつ高精度に微生物を検出するための微生物検出方法を提供する。
【解決手段】以下の方法により、微生物(例えば、サルモネラ)の検出を行う。すなわち、まず、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲し(ステップS1)、捕獲した微生物を洗浄する(ステップS2)。そして、洗浄された微生物からDNAを抽出する(ステップS3)。そして、抽出されたDNAをPCR法により増幅し(ステップS4)、増幅産物であるターゲットDNAを検出する(ステップS5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒を防止するため、食品の安全面や衛生面の管理の高度化が望まれている。従来、食中毒原因菌すなわちサルモネラ等の特定微生物を検出する場合に行われている方法としては、培養法、イムノクロマト法、ELISA法、免疫磁気ビーズ法、DNA検出法等や、これらの改良技術がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、食品又は食品原料を目的微生物を増殖させる条件で培養し、得られた培養物を目的微生物を選択的に増殖させる条件で培養した後に、得られた培養物から目的微生物の持つ酵素活性を指標として目的微生物を検出する技術が公開されている。
【特許文献1】特開2003−339397号公報(第2−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の方法のうちどの方法を用いるにせよ、増菌培養が必要であり、サルモネラ等の微生物の検出結果を得るまでに長時間を要する。検出に要する時間は、方法や検出対象の微生物によって異なるが、それぞれ8時間以上を要している。このため賞味期限の短い食品の場合、検査結果を待って出荷することができない。
【0004】
また、食品中には、検出対象の微生物(例えば、サルモネラ)のみならず、他の微生物が混在する場合がある。さらに、検出対象の微生物の死菌や溶出したDNAが混入している場合もある。このため、特定の微生物(例えば、サルモネラ)の検出をDNAの検出により行う場合であっても、検出対象の微生物以外の微生物に由来するDNAによる誤判定の可能性や、死菌や溶出されているDNAの影響により生菌のみの検出、測定を行うことができない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、迅速かつ高精度に特定の微生物を検出するための微生物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲する工程と、前記捕獲した微生物を洗浄する工程と、前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程と、前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程と、増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程とを有することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微生物検出方法において、前記捕獲した微生物を洗浄する工程は、緩衝液、ポリアニオンを含んだ緩衝液、界面活性剤を含んだ緩衝液、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の微生物検出方法において、検出対象の微生物はサルモネラであることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の微生物検出方法において、前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程において増幅の対象とする遺伝子が、fimA、agfA、fliC、invA、invE、sigD、prt 、ompC、ompF、ompA、sipB、sipC、tctCの中から選択され
ることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、前記捕捉体は、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズ、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁性ナノ粒子、及び、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器のいずれか1つであることを要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、酵素標識されたレポータプローブと、前記酵素と反応する基質とを用いて、前記キャプチャープローブと、前記レポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、前記レポータプローブに標識された前記酵素と前記基質による反応により前記電極に流れる電流値を測定することにより前記ターゲットDNAを検出することを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、電気泳動法、蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法のいずれか1つにより行うことを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程は、熱抽出法により、前記捕捉体に結合した状態の微生物からDNAを抽出することを要旨とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、温度制御部と、前記電極に流れる電流値を測定する電流測定部とを備えたDNA検出装置を用い、前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程は、前記捕捉体に結合した状態の微生物を含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御して熱抽出法によりDNAを抽出し、前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程は、前記抽出されたDNAを含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御してPCR法によりターゲットDNAを増幅し、前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、酵素標識されたレポータプローブと、前記酵素と反応する基質とを用い、前記増幅産物を含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御して、前記キャプチャープローブと、前記レポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、前記電流測定部により、前記レポータプローブに標識された前記酵素と前記基質による反応により前記電極に流れる電流値を測定することにより前記ターゲットDNAを検出することを要旨とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項3〜9のいずれか1つに記載の微生物検出方法において、前記構成成分はリポポリサッカライドであり、前記構成成分と結合ずるリガンドもしくは抗体はポリミキシンBであることを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲し、捕獲した微生物を洗浄し、洗浄した微生物からDNAを抽出し、抽出されたDNAをPCR法により増幅し、増幅産物であるターゲットDNAを検出することにより、微生物の検出を行う。このため、微生物の検出を行う場合に、増菌培養を行わないため、短時間で微生物の検出を行うことができる。また、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲
し洗浄することによる選択と、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの検出という2段階の選定により微生物の検出を行うため、判定の精度を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、捕獲した微生物の洗浄に、緩衝液、ポリアニオンを含んだ緩衝液、界面活性剤を含んだ緩衝液、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いる。ポリアニオンを含んだ緩衝液としては、0.5〜1.0%のポリアニオンを含んだ緩衝液を用いることが好ましい。また、界面活性剤の濃度は、0.001〜0.1%であることが好ましい。例えば、ポリアニオンを含んだ緩衝液を用いて洗浄する場合、ネガティブチャージしている微生物に対して、ポジティブチャージしている夾雑物は容易に取り除くことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、検出対象の微生物をサルモネラとすることができる。
請求項4に記載の発明によれば、抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程において増幅の対象とする遺伝子を、fimA、agfA、fliC、invA、invE、sigD、prt、ompC、ompF、ompA、sipB、sipC、tctCの中から選択することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記捕捉体は、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズ、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁性ナノ粒子、及び、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器を捕捉体として用いることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極のキャプチャープローブと、酵素標識されたレポータプローブとにターゲットDNAを結合させる。そして、レポータプローブに標識された酵素と基質による反応により電極に流れる電流値を測定することにより、増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、電気泳動法、蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法により、増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。
請求項8に記載の発明によれば、熱抽出法により、捕捉体に結合した状態の微生物からDNAを抽出することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明によれば、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、温度制御部と、前記電極に流れる電流値を測定する電流測定部とを備えたDNA検出装置を用いてサルモネラの検出を行うことができる。すなわち、捕捉体に結合した状態の微生物を含むサンプル液の温度を制御して熱抽出法によりDNAを抽出し、抽出されたDNAを含むサンプル液の温度を制御してPCR法によりターゲットDNAを増幅する。そして、酵素標識されたレポータプローブと、前記酵素と反応する基質とを用い、増幅産物を含むサンプル液の温度を制御して、前記キャプチャープローブと、前記レポータプローブとにターゲットDNAを結合させる。そして、前記レポータプローブに標識された前記酵素と前記基質による反応により前記電極に流れる電流値を測定することによりターゲットDNAを検出する。これにより、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出、PCR法による増幅、及びターゲットDNAの検出を、前記電極、前記温度制御部及び前記電流測定部を備えたDNA検出装置を用いて行うことができる。
【0022】
請求項10に記載の発明によれば、サルモネラの構成成分であるリポポリサッカライドと結合するポリミキシンBを固定化した捕捉体を用いてサルモネラを捕獲できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、迅速かつ高精度に特定の微生物を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を、図1を用いて説明する。本実施形態では、検出対象の微生物をサルモネラ属の細菌とし、迅速かつ高精度に特定の微生物(サルモネラ属の細菌)を検出するための微生物検出方法として説明する。なお、本明細書では、サルモネラ属の任意の細菌を、「サルモネラ」と総称する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態では、まず、検出対象の微生物であるサルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲する(ステップS1)。
【0026】
この工程では、検出対象の微生物であるサルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズや磁性ナノ粒子、又は、このようなリガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器を、捕捉体として用いる。そして、この捕捉体に固定化されているリガンドもしくは抗体に微生物(サルモネラ等)の構成成分が結合することにより、微生物がこの捕捉体に結合する。そして、微生物と結合した捕捉体を収集することにより、微生物を収集する(すなわち、サルモネラ等の微生物を捕獲する)。
【0027】
サルモネラの構成成分と結合するリガンド又は抗体としては、例えば、ポリミキシンBを用いる。ポリミキシンBは、サルモネラ等のグラム陰性菌の外膜の構成成分であるリポポリサッカライドと特異的に結合することが知られている。この場合、リガンドであるポリミキシンBが、サルモネラの外膜の構成成分であるリポポリサッカライドと結合することにより、サルモネラが捕捉体に結合する。なお、検出対象の微生物であるサルモネラの構成成分と結合する抗体を固定化した捕捉体を用いてもよい。この場合、微生物(サルモネラ等)の構成成分に含まれる抗原と、捕捉体に固定化された抗体とが結合することにより、微生物(サルモネラ等)が捕捉体に結合する。
【0028】
リガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズを捕捉体として用いる場合、磁石により磁気ビーズを収集することにより、微生物(サルモネラ等)を収集できる。磁性ナノ粒子としては、例えば、磁性ナノ微粒子の表層に熱応答性高分子を固定化した熱応答性磁性ナノ粒子を用いる。このような熱応答性磁性ナノ粒子は、水溶液の温度を変化させることにより急速に凝集し、磁石による分離が可能となる。このような磁性ナノ粒子にリガンドもしくは抗体を固定化させて捕捉体として用い、微生物と結合した状態で磁性ナノ粒子を収集することにより、微生物を収集する。
【0029】
また、リガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器としては、例えば、PCR処理に用いるチューブ等の内面にリガンドもしくは抗体を固定化したものが挙げられる。容器の内面にリガンドもしくは抗体を固定化して捕捉体として用いる場合、容器から反応液を除去する際に、容器内面に固定化されたリガンドもしくは抗体に微生物の構成成分が結合していることにより、容器内面に微生物が付着して残留し、微生物を収集することができる。
【0030】
次に、捕獲された微生物を洗浄する(ステップS2)。この捕獲された微生物の洗浄では、例えば、緩衝液、ポリアニオンを含んだ緩衝液(例えば、PBS)、界面活性剤を含んだ緩衝液(例えば、PBS−T)、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いる。例えば、ポリアニオンを含んだ緩衝液としては、0.5〜1.0%のポリアニオンを含有するものが好ましい。ポリアニオンとしては、例えばアルギン酸、ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸などを用いることができる。微生物がネガティブチャージしていることに着目して、このような緩衝液を用いて洗浄することで、ポジティブチャージしている夾雑物は容易に取り除くことができる。また、界面活性剤の濃度は0.
001〜0.1%であることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、TritonX(トラ
イトンX)、SDS等を用いることができる。
【0031】
次に、洗浄された微生物からDNAを抽出する(ステップS3)。この工程におけるDNAの抽出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱抽出法等の公知の方法を用いることができる。
【0032】
そして、抽出されたDNAをPCR法(ポリメラーゼチェイン反応:Polymerase ChainReaction)により増幅する(ステップS4)。すなわち、PCR法、又は、PCR法の
改良技術により、検出対象の微生物(サルモネラ)の2本鎖のDNAの特定領域を挟むようにして設計された2種類のプライマーを用いて、この特定領域を含むDNA断片を増幅する。
【0033】
具体的には、サルモネラの検出の場合、例えば、サルモネラ属の細菌に特徴的な以下の遺伝子を標的遺伝子(DNA増幅の対象となる特定領域)としてDNA断片の増幅を行う。すなわち、サルモネラの検出の場合、例えば、fimA<major type 1 subunit fimbrin (繊毛タンパク質)>、agfA<fimbrin(繊毛タンパク質)>、fliC<filament structural protein; flagellin (鞭毛タンパク質)>、invA<invasion protein A(侵入性タンパク質)
>、invE<invasion protein E(侵入性タンパク質)>、sigD<cell invasion protein(
細胞侵入性タンパク質)>、prt<paratose synthase(菌体のK抗原決定基であるparatose合成酵素)>、ompC<outer membrane protein precursor C(細胞膜タンパク質前駆体
)>、ompF<outer membrane protein precursor F(細胞膜タンパク質前駆体)>,ompA<outer membrane protein precursor A(細胞膜タンパク質前駆体)>、sipB<invasion
control protein(侵入制御タンパク質)、sipC<invasion control protein(侵入制御タンパク質)>、tctC<tricarboxylate-binding protein(トリカルボン酸結合タンパク質)>の中から選択される遺伝子を、標的遺伝子(DNA増幅の対象となる特定領域)とする。なお、上記においては、「標的遺伝子(領域名)<機能>」のように示している。なお、サルモネラの検出において、DNA増幅の対象となる特定領域としての上記の標的遺伝子は例示であって、DNA増幅の対象となる特定領域は、これに限定されるものではない。
【0034】
なお、この特定領域を含むDNA断片のPCR法による増幅のための処理に関する具体例は、後述する。
そして、増幅産物である、検出対象の微生物(サルモネラ)の特定のDNA(ターゲットDNA)を検出する(ステップS5)。すなわち、検出対象の微生物(サルモネラ)が捕獲された場合、この微生物(サルモネラ)から抽出されたDNAの特定領域を含むDNA断片が増幅されており、このDNA断片が検出される。この工程におけるDNAの検出方法は、特に限定されないが、電気泳動法、蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法、DNAプローブを用いた電気化学的検出方法等を用いることができる。
【0035】
電気泳動法によるDNAの検出は、公知の技術により行うことができる。
蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法としては、例えば、リアルタイムPCR法が挙げられる。このリアルタイムPCR法は、PCRの増幅量をリアルタイムでモニタし解析する方法である。すなわち、このリアルタイムPCR法を用いる場合、上記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程(ステップS4)と、増幅産物である特定のDNAを検出する工程(ステップS5)とを、このリアルタイムPCR法により行うこととなる。通常、リアルタイムPCRのモニタは蛍光発光により行う。この蛍光発光のモニタ方法としては、例えば、公知の方法として、インカレーター法、TaqManプローブ法、サイクリングプローブ法等がある。
【0036】
DNAプローブを用いた電気化学的検出方法では、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極のキャプチャープローブと、酵素標識されたレポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、レポータプローブに標識された酵素と基質による反応により電極に流れる電流値を測定することにより、増幅産物であるターゲットDNAを検出する。このようなDNAプローブを用いた電気化学的検出方法で用いる電極について以下に詳述する。
【0037】
このDNAプローブを用いた電気化学的検出方法で用いる電極は、導電体上にメディエータが積層されて構成されていてもよい。
導電体としては、通常、電極として用いられるものであればどのような材料でも使用することができる。例えば、グラファイト、カーボン、カーボンファブリック等;アルミニウム、銅、金、白金、銀等の金属又は合金、SnO2、In23、WO3、TiO2等、導
電性酸化物等種々の材料の単層又は2種以上の積層構造が挙げられる。電極の膜厚、大きさ及び形状等は特に限定されるものではなく、使用するメディエータ、酵素等の種類、得ようとするバイオセンサの性能等によって適宜調整することができる。例えば、厚み0.1〜5mm程度、1〜10000mm2程度の面積の矩形形状であることが適当である。
【0038】
メディエータとしては、電極と酵素との間で電子を授受し得る電子移動媒体として機能するもので、酵素反応に悪影響を与えないものであれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、フェロセン、フェリシアン化アルカリ金属(フェリシアン化カリウム、フェリシアン化リチウム、フェリシアン化ナトリウム等)又はこれらのアルキル置換体(メチル置換体、エチル置換体、プロピル置換体等)、フェナジンメトサルフェート、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、メチレンブルー、β−ナフトキノン−4−スルホン酸カリウム、フェナジンエトサルフェート、ビタミンK、ビオローゲン等の酸化還元性の有機又は無機化合物の1種あるいは2種以上の組み合わせが挙げられる。なかでも、水や水溶性有機溶媒(低級アルコール等)に溶解し、取り扱いが容易であるもの、電子移動媒体としての機能が安定しているものが好ましく、例えば、フェロセン、フェリシアン化カリウム等が好適に用いられる。
【0039】
導電体上に積層されるメディエータの膜厚は、特に限定されるものではなく、導電体の大きさ、用いるメディエータの種類、レポータプローブに標識された酵素の種類等によって適宜調整することができる。例えば、0.1μm〜1000μm程度が挙げられる。なお、メディエータを導電体上に積層する方法は、メディエータの種類によって、適当なものを適宜選択することができる。例えば、メディエータをその機能を阻害しない溶媒、例えば、水又は水溶性有機溶媒等に溶解させ、塗布、乾燥する方法、メディエータを適当な担体、例えば、樹脂、タンパク等の高分子化合物等に混合及び分散させ、担体を薄膜状に形成する方法、交互積層法(現代化学、1997年1月、p20〜25参照)等、当該分野で公知の薄膜形成法のすべてを利用することができる。なかでも、後述する交互積層法が好ましい。
【0040】
このDNA測定装置の電極では、上述したメディエータが、高分子担体とともに層状で積層されているものもある。ここで用いることができる高分子担体としては、電荷を有すること、ポリマーであること及び水溶性であることのいずれか1種、好ましくは全ての性質を満足するものが適当である。電荷は正及び負のいずれでもよい。高分子担体は、例えば、各種タンパク質(例えば、酵素、抗体、レセプタータンパク等)、ポリペプチド(例えば、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等)、水溶性合成高分子化合物(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド等)、天然高分子(アルギン酸及びその塩類、トラガントガム等)が挙げられる。
【0041】
メディエータ等を高分子担体とともに積層する方法としては、特に限定されるものではなく、メディエータ等を高分子担体に分散、あるいは高分子担体とともに適当溶媒(水、緩衝液、水溶性有機溶媒等)に溶解又は分散し、塗布、乾燥する方法でもよいし、交互積層法を利用してもよい。
【0042】
メディエータを積層する交互積層法(ここでは、各層を順次積層する方法)は、例えば、以下のように行うことができる。
まず、導電体表面を活性化することにより、正又は負に帯電させる。次いで、メディエータを構成する分子、あるいはメディエータを分散/メディエータと結合した高分子担体を負又は正に帯電させ、これを導電体表面に接触させることにより、正と負との電荷の間の相互作用を通してメディエータを導電体表面に積層する。なお、このような1回の正負の相互作用によって、必要なメディエータ量を確保することができれば、上述のような積層は1層のみでよいが、さらに多量のメディエータを導電体表面に積層したい場合は、上述の相互作用を複数回行うことによって、メディエータ層を複数層、例えば、2〜20層程度積層してもよい。この場合、積層されたメディエータ上に、これと反対の電荷を有する担体(例えば、上述した高分子担体)又はメディエータ等を積層し、再度、メディエータを構成する分子等を、この高分子担体等の上に積層するという一連の操作を繰り返すことによって、多数層のメディエータの積層を実現することができる。
【0043】
この電極には、DNA断片を固定させておく。このDNA断片は、DNAの相補性を利用して、検出及び/又は定量目的のDNA(以下「ターゲットDNA」と記す)と対合させるためのキャプチャープローブである。
【0044】
そして、別のDNA断片(ターゲットDNA及びレポータプローブ)を加えて、キャプチャープローブ、ターゲットDNA、レポータプローブがこの順にメディエータを介して電極に結合させられ、ターゲットDNAの検出及び/又は定量を行う。つまり、電極上で、いわゆるターゲットDNAのハイブリダイゼーションを行わせる。そして、ターゲットDNA及びレポータプローブが結合された電極を用いて、メディエータを介する間接的な電子授受を、例えば、電流値として測定することによって、ターゲットDNAの検出及び/又は定量を行うことができる。
【0045】
ターゲットDNAは、DNAの相補性を利用して、このキャプチャープローブと対合させられる検出及び/又は定量目的のDNA断片である。なお、このターゲットDNAは、本発明の微生物検出方法においては、捕獲され洗浄された微生物(サルモネラ等)から抽出されたDNAが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅されて用いられる。レポータプローブは、DNAの相補性を利用してターゲットDNAと対合して、ターゲットDNAの検出及び/又は定量するために酵素が標識されている。
【0046】
電極上にキャプチャープローブを固定する方法としては、当該分野で公知の方法の全て及びそれらに準じた方法を利用することができる。例えば、電極上にストレプトアビジンを積層し、キャプチャープローブの5’末端をビオチン修飾し、アビジン−ビオチンの相互作用により固定する方法又はこれに準じた方法が挙げられる。
【0047】
なお、DNA断片を用いる方法、つまりDNAプローブ法、DNAハイブリダイゼーション自体は当該分野で公知の方法の全て及びそれらに準じた方法を利用することができる。この際に利用するDNA断片は、市販されているいずれを用いてもよい。例えば、サルモネラのプローブ(Rahn K., S. A. De Grandis, R. C. Clarke, S. A. McEwen, J. E. Galan, C. Ginocchio, R. Curtiss and C.L. Gyles, Mol. Cell. Probes, 6, 271-279 (1992)参照)、タカラバイオケミカルス、赤痢菌および腸管侵入性大腸菌(EIEC)invE遺伝
子検出用Primer Set INV-1& 2、赤痢菌および腸管侵入性大腸菌(EIEC)ipaH遺伝子検出
用Primer Set IPA-1& 2、コレラ毒素遺伝子検出用Primer Set VCT-1 & 2(いずれも(株
)島津製作所製)等が挙げられる。
【0048】
上記のようにして作成された電極は、通常、対電極と、これらの電極及び対電極とを収容し、基質を含有する溶液を収容することができる反応器内に配置され、さらにこの反応器内に、両電極がほぼ完全に浸漬する程度に溶液で充填されたバイオセンサにおいて、利用されることが適当である。このようなバイオセンサにおいては、サイクリックボルタンメトリを利用することによって、例えば、両電極に所定の電位差を有する定電位を与え、酵素の反応に起因して発生する電流値を、例えば、限界酸化電流値として測定して、判定を行うことができる。電流値の検出は、例えば、ポテンショスタット、電流計等の電流検出部によって行うことができる。このDNAプローブを用いた電気化学的検出方法においては、このようなバイオセンサを用いて電流値を測定することによりDNAの検出を行う。
【0049】
以上のように、上記ステップS1〜ステップS5の各工程を、順次、実行することにより、特定の微生物(サルモネラ)の検出を行うことができる。
例えば、サルモネラの検出を行う場合に、サルモネラを捕獲する際に、ポリミキシンBを固定化した捕捉体を用いた場合、ポリミキシンBと結合するリポポリサッカライドを外膜の構成成分に有するグラム陰性菌が捕獲される。そして、捕獲された微生物を洗浄し、この微生物のDNAを抽出してPCR法によるDNAの増幅を経てターゲットDNAを検出するため、捕獲された微生物(この場合は、グラム陰性菌)に由来するDNAから増幅された増幅産物のみを対象として、サルモネラのDNAの検出が行われる。
【0050】
また、検出対象の微生物(サルモネラ)の構成成分である抗原と結合する抗体を固定化した捕捉体を用いる場合、この抗原を有する微生物のみが捕獲される。そして、捕獲された微生物を洗浄し、この微生物のDNAを抽出してPCR法によるDNAの増幅を経てターゲットDNAを検出するため、捕獲された微生物(この場合は、捕捉体に固定化された抗体に結合する抗原を有する微生物)に由来するDNAから増幅された増幅産物のみを対象として、検出対象の微生物(サルモネラ)のDNAの検出が行われる。
【0051】
このように、本実施形態の微生物検出方法では、微生物を捕獲し洗浄することによる第1段階の選択と、捕獲され洗浄された微生物から抽出されたDNAを増幅し、増幅産物であるターゲットDNAを検出する第2段階の選択との、2段階の選択が行われる。
【0052】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1) 上記実施形態では、サルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲し、捕獲した微生物を洗浄し、洗浄した微生物からDNAを抽出し、抽出されたDNAをPCR法により増幅し、増幅産物であるターゲットDNAを検出することにより、サルモネラの検出を行う。このため、サルモネラの検出を行う場合に、増菌培養を行わないため、短時間でサルモネラの検出を行うことができる。また、サルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲し洗浄することによる選択と、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの検出という2段階の選定によりサルモネラの検出を行うため、判定の精度を向上させることができる。また、まずサルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲し洗浄することにより微生物の選択を行った後に、DNAの検出を行うため、捕捉体に固定化されたリガンドもしくは抗体と結合する構成成分を有さない微生物のDNAや、死菌や微生物の死滅により溶出されているDNAによる影響を受けることなく、検出対象の微生物(サルモネラ)を検出できる。
【0053】
(2) 上記実施形態では、捕獲された微生物の洗浄に、緩衝液、ポリアニオンを含ん
だ緩衝液、界面活性剤を含んだ緩衝液、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いる。例えば、ポリアニオンを含んだ緩衝液を用いて洗浄する場合、ネガティブチャージしている微生物に対して、ポジティブチャージしている夾雑物は容易に取り除くことができる。
【0054】
(3) 上記実施形態では、サルモネラの構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した、磁気ビーズ、磁性ナノ粒子、容器内面を捕捉体として用いることができる。このため、容易にサルモネラを捕獲できる。
【0055】
(4) 上記実施形態では、電気泳動法により、増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。このため、増幅産物であるターゲットDNAの検出を、より少ないコストで簡易に行うことができる。
【0056】
(5) 上記実施形態では、蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法により、増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。このため、より短時間かつ高感度で増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。
【0057】
(6) 上記実施形態では、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極のキャプチャープローブと、酵素標識されたレポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、レポータプローブに標識された酵素と基質による反応により電極に流れる電流値を測定することにより、増幅産物であるターゲットDNAを検出することができる。これにより、増幅産物であるターゲットDNAの検出を、より簡易、簡便かつ高感度に行うことができる。
【0058】
(7) 上記実施形態では、熱抽出法により、捕捉体に結合した状態の微生物からDNAを抽出することができる。これにより、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出を簡易な操作により行うことができる。
【0059】
(DNAプローブを用いた電気化学的検出方法によるDNA検出装置を用いた具体例)
次に、上記のような微生物検出方法において、DNAプローブを用いた電気化学的検出方法によるDNA検出装置を用いた具体例について、図2〜図7を用いて説明する。このDNA検出装置は、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、温度制御部と、前記電極に流れる電流値を測定する電流測定部とを備えている。そして、このDNA検出装置を用いて、上記ステップS3〜ステップS4の各工程を実行する。
【0060】
なお、上記ステップS1については、例えば、検出対象の微生物(サルモネラ)の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズや磁性ナノ粒子、又は、このようなリガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器(例えば、チューブ)を用いて、検出対象の微生物(サルモネラ)の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲する。そして、捕獲された微生物を洗浄する工程(ステップS2)では、例えば、緩衝液(例えば、PBS)、ポリアニオンを含んだ緩衝液、界面活性剤を含んだ緩衝液(例えば、PBS−T)、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いて洗浄を行う。
【0061】
そして、次の工程、すなわち、洗浄された微生物からDNAを抽出する工程(ステップS3)では、このようにして捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出を、このDNA検出装置を用いて行い、さらに、このDNA検出装置を用いて、抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程(ステップS4)と、増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程(ステップS5)を実行する。
【0062】
次に、DNA検出装置について説明する。
図2に示すように、DNA検出装置30の上面には、測定部31が備えられている。この測定部31には、電極部(バイオセンサ)32(図3参照)が備えられており、この電極部32を移動させるための電極移動用ツマミ33が、この測定部31の上面に備えられている。この測定部31は、蓋状になっており、上下方向に開閉可能となっている。
【0063】
この測定部31を持ち上げた状態において、それぞれ2つのスタンバイステーション34、ハイブリッドステーション35及び測定ステーション36が露出する。スタンバイステーション34は、PCRの実行時に電極部32を退避させておくために用いられる。ハイブリッドステーション35は、捕獲され洗浄された微生物を入れたサンプルチューブ101をセットして、DNAの熱抽出及び抽出されたDNAを用いたPCRを実行し、PCR処理後に電極部32を挿入して、ハイブリダイゼーションを行わせるために用いられる。測定ステーション36は、判定液を注入した判定液チューブ102をセットし、ハイブリッドステーション35から取り出した電極部32を挿入して、電流を測定するために用いられる。
【0064】
DNA検出装置30の上面には、さらに、電源スイッチ(電源SW)41、スタートスイッチ(スタートSW)42、ストップスイッチ(ストップSW)43が備えられている。
【0065】
DNA検出装置30の正面下部には、設定用ロータリースイッチ(設定用ロータリーSW)44及びUSBコネクタ45が備えられている。この設定用ロータリーSW44の上側には、制御される温度の推移を示す温度制御パターンが示されており、PCR、ハイブリダイゼーション、測定の各処理の各段階について、それぞれ、温度及び時間を設定するスイッチを対応付けて表示している。この設定用ロータリーSW44では、これらの各段階での温度及び時間、PCRサイクルの回数、及び測定電圧の設定入力が行われる。USBコネクタ45は、測定データの転送のためにパソコンと接続する場合に用いられる。
【0066】
DNA検出装置30の正面上部には、LCD表示部51が設けられている。また、DNA検出装置30の両側の側面には、冷却用ファンモータ52及び排熱口53が、それぞれ備えられている。また、このDNA検出装置30の背面には、図示しないが、冷却用ファンモータ、ヒューズホルダ及び電源入力部が設けられている。
【0067】
次に、図3を用いて、DNA検出装置30のブロック構成を説明する。
図3に示すように、DNA検出装置30は、CPU61を備えている。CPU61は、スイッチ制御機能(SW制御機能)62、設定数値変換機能63、時間制御機能64、PCRステップ制御機能65を備えている。さらに、CPU61は、温度制御機能66、温度検出・PID演算機能67、温度制御機能68、温度検出・PID演算機能69を備えている。
【0068】
SW制御機能62は、スタートSW42、ストップSW43がそれぞれ押下されると、時間制御機能64、PCRステップ制御機能65をそれぞれ制御することにより、処理を開始又は中断する機能である。設定数値変換機能63は、設定用ロータリーSW44により設定入力された温度、時間、PCRサイクルの回数、及び測定電圧の数値に関するデータ変換を行い、各設定値を、時間制御機能64、PCRステップ制御機能65、温度制御機能66,68、測定電圧発生回路91に対してそれぞれ指示する機能である。
【0069】
時間制御機能64は、各処理の処理時間を制御するとともに、時間制御に関する情報をLCD表示部51に表示させる機能である。PCRステップ制御機能65は、PCRステップの回数を制御するとともに、PCRステップ制御に関する情報をLCD表示部51に
表示させる機能である。
【0070】
温度制御機能66及び温度検出・PID演算機能67は、PCR及びハイブリダイゼーションに関する温度の設定値に基づいて、PCRブロック70における温度制御を行う機能である。
【0071】
PCRブロック70の各側面及び底面には、ペルチェ素子71が設けられている。また、PCRブロック70の両側側面及び背面には、冷却用ファン72が設けられている。さらに、温度センサ73がPCRブロック70に備えられている。そして、このPCRブロック70には、前述のハイブリッドステーション35が設けられている。
【0072】
ペルチェ素子71は、ペルチェ効果を利用した素子であって、PCRブロック70の温度サイクルを調整する。冷却用ファン72は、放熱を行うために用いられる。温度センサ73は、PCRブロック70の温度の測定を行う。
【0073】
温度制御機能66は、PCRブロック70の温度制御を行うための制御信号を、加熱/冷却切替回路75に出力する機能である。温度検出・PID演算機能67は、温度センサ73によって測定されたPCRブロック70における温度を検出し、検出された温度と、温度制御機能66から指示された設定温度とに基づいて、PID演算を行う機能である。そして、算出された値に関する信号を電流制御回路74に出力する。
【0074】
電流制御回路74は、温度検出・PID演算機能67により出力された信号に従って、熱制御電源60からの熱制御電源電圧に基づく制御電流を加熱/冷却切替回路75に出力する。
【0075】
加熱/冷却切替回路75は、加熱/冷却の切替を指示する信号をペルチェ素子71に出力する。そして、ペルチェ素子71により、PCRブロック70の温度サイクルの調整を行う。
【0076】
温度制御機能68及び温度検出・PID演算機能69は、測定部ブロック80における温度制御を行う機能である。
測定部ブロック80は、加熱ヒータ81により加熱される。また、温度センサ82が測定部ブロック80に備えられている。そして、この測定部ブロック80には、前述の測定ステーション36が設けられている。
【0077】
温度制御機能68は、測定部ブロック80の設定温度に関するデータを温度検出・PID演算機能69に指示する機能である。
温度検出・PID演算機能69は、温度センサ82によって測定された測定部ブロック80における温度を検出し、検出された温度と、温度制御機能68から指示された設定温度とに基づいて、PID演算を行う機能である。そして、算出された値に関する信号を電流制御回路83に出力する。
【0078】
電流制御回路83は、温度検出・PID演算機能69により出力された信号に従って、熱制御電源60からの熱制御電源電圧に基づく制御電流を加熱ヒータ81に出力する。そして、加熱ヒータ81により、測定部ブロック80の温度が調整される。
【0079】
測定電圧発生回路91は、測定電圧を発生させ、この測定電圧をワーク電流測定ヘッドアンプ92に出力する。ワーク電流測定ヘッドアンプ92には、電極部32が接続されている。電極部32は、電極32a、参照電極32b、及び対電極32cを備えている(図5参照)。
【0080】
ワーク電流測定ヘッドアンプ92は、測定電流をA/D変換回路93に出力する。A/D変換回路93は、測定電流についてA/D変換を行い、測定電流をLCD表示部51に表示させる。
【0081】
このDNA検出装置30において、温度制御機能66、温度検出・PID演算機能67、電流制御回路74、加熱/冷却切替回路75、ペルチェ素子71、冷却用ファン72及び温度センサ73が、特許請求の範囲に記載の温度制御部を構成する。また、ワーク電流測定ヘッドアンプ92、A/D変換回路93及び測定電圧発生回路91が、特許請求の範囲に記載の電流測定部を構成する。
【0082】
次に、上述のステップS3〜ステップS5の各工程について説明する。ここで、PCR処理及び測定処理における温度制御及び電極移動についての説明では、図4及び図5を用いる。図4は、PCR処理及び測定処理における温度制御の説明図である。なお、PCR繰り返し回数は設定変更可能であるが、図4においては、PCR繰り返し回数を3回とした場合の温度遷移例を示す。図5は、電極移動の説明図である。
【0083】
まず、捕獲され洗浄された微生物からDNAを抽出する工程(ステップS3)、及び、PCR法によりDNAを増幅する工程(ステップS4)について説明する。
捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出においては、捕捉体に結合した状態の微生物からDNAを抽出する。具体的には、まず、捕捉体に結合した状態の微生物を含有する溶液をサンプルチューブ101に入れる。ここで、例えば、検出対象の微生物(サルモネラ)の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズや磁性ナノ粒子を捕捉体として用い、微生物が結合した状態の磁気ビーズや磁性ナノ粒子をサンプルチューブ101に投入する。なお、このようなリガンドもしくは抗体をサンプルチューブ101の内面に固定化して捕捉体として用いてもよい。この場合、サンプルチューブ101の内面に微生物が付着した状態で、サンプルチューブ101内の溶液の入れ替えを行う。なお、サンプルチューブ101に入れる溶液は、ここでは、後述するサンプル液のように調製する。
【0084】
この捕捉体に結合した状態の微生物を含む溶液(サンプル液)を入れたサンプルチューブ101を用いてDNAの熱抽出が行われる。なお、ここでは、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出は、PCR処理における高温時に、微生物からDNAが抽出されることにより行う。これについては後述する。
【0085】
図4に示すように、PCRにおいては、高温(TH)、中温(TM)、低温(TL)の温度サイクルを繰り返す。この温度サイクルにおける高温(TH)、中温(TM)、低温(TL)のそれぞれにおける温度及び時間は、設定用ロータリーSW44を用いて設定される。
【0086】
具体的には、高温(TH)は84〜99℃、中温(TM)は67〜82℃、低温(TL)は45〜60℃の範囲でそれぞれ設定可能となっている。PCR繰り返し時の各温度の維持時間は、高温維持時間(tH)は23〜38秒、中温維持時間(tM)は23〜38秒、低温維持時間(tL)は1〜16秒の範囲でそれぞれ設定可能となっている。
【0087】
また、PCR繰り返し回数も設定用ロータリーSW44を用いて設定される。ここでは、中温−高温−低温を1回として、1〜48回の範囲で設定可能であり、3回を1つの単位として繰り返し回数を設定することができる。
【0088】
PCR後において行うハイブリダイゼーションにおける温度及び時間についても、設定
用ロータリーSW44を用いて設定される。
具体的には、ハイブリッド時について、高温(THR)は84〜99℃、中温(TMR)は67〜82℃の範囲でそれぞれ設定可能となっている。なお、図4においては、ハイブリッド時の中温(TMR)として、PCRサイクルにおける中温(TM)より高い温度を設定している。ハイブリッド時の各温度の維持時間は、高温維持時間(tHR)は0.5〜8.0分、中温維持時間(tMR)は0〜150秒の範囲でそれぞれ設定可能となっている。
【0089】
さらに測定ステーション36における測定温度、測定時間、及び測定ワーク電圧についても、設定用ロータリーSW44を用いて設定される。測定温度は、30〜45℃の範囲で設定可能となっている。また、測定時間は、0.5分〜8.0分の範囲で設定可能となっている。また、測定ワーク電圧については、50〜800mVの範囲で設定可能となっている。
【0090】
図4に示すように、電源投入により、DNA検出装置30は、ハイブリッドステーション35についてウォーミングアップ温度(30℃)を維持するように作動する。また、DNA検出装置30は、測定ステーション36について測定設定温度を維持するように作動する。なお、それぞれ、ウォーミングアップ温度及び測定設定温度になるまで(ウォーミングアップ中)は、スタートSW42のスタートランプを点滅させ、それぞれの温度で安定すると(ウォーミングアップが完了すると)、スタートランプを静止点灯させる。そして、DNA検出装置30は、LCD表示部51に、「サンプルをセットし、スタートSWを押して下さい」というメッセージを表示させる。
【0091】
これにより、利用者は、図5に示すように、捕獲され洗浄された微生物を含むサンプル液を入れたサンプルチューブ101をハイブリッドステーション35にセットするとともに、判定液を注入した判定液チューブ102を測定ステーション36にセットする。なお、捕獲された微生物は、上述のように、捕捉体に結合した状態となっている。
【0092】
ここで、サンプル液には、一般的なPCR処理で用いられる構成成分を含有させる。具体的には、このサンプル液は、2種類のプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、Mg2+、及び、捕獲され洗浄された微生物を構成成分として含有する。なお、各構成成分の濃度については、一般的な場合に準じるが、反応条件に応じて変更する必要がある。判定液は、例えばトリス塩酸緩衝液中に、後述する基質を含有する溶液を用いる。
【0093】
そして、利用者は、電極部32を測定部31に装着し、測定部31をステーション34,35,36の上に下ろす。そして、図5のステップ1のように、電極移動用ツマミ33をスタンバイステーション34の位置にスライドさせて、スタンバイステーション34にセットされたサンプルチューブ101内に電極部32を挿入する。
【0094】
ここで、スタートSW42を押下すると、DNA検出装置30は、上記の設定温度、設定時間及びPCR繰り返し回数に従って、温度サイクルの制御を行う。なお、図4に示すように、スタート時は、高温(TH)まで、温度を上昇させる。そして、設定されたPCR繰り返し回数に従って、温度サイクルを繰り返す。ここで、最初の高温(TH)時において、微生物からDNAが抽出されるとともに、2本鎖DNAが1本鎖DNAに解離させられる。
【0095】
PCR繰り返しにおいては、高温(TH)時の変成ステップ、低温(TL)時のアニーリングステップ、中温(TM)時の伸長ステップが繰り返される。変成ステップにおいては、2本鎖DNAを1本鎖DNAに解離させる。アニーリングステップにおいては、解離したDNAに相補的な配列をもつ2種類のプライマーが水素結合によって部分的に2本鎖
を形成する。伸長ステップにおいては、DNAポリメラーゼにより、2種類のプライマーのそれぞれをDNA合成の開始点として、相補正をもつもう一本のDNAが合成される。
【0096】
PCR繰り返しの最後のサイクルでは、高温維持時間(tH)を経ずに、ハイブリダイゼーションの処理に移行する。そして、ハイブリッド高温(THR)をハイブリッド高温維持時間(tHR)だけ維持する。
【0097】
そして、ハイブリッド高温維持時間(tHR)の終了後、ハイブリッド中温(TMR)に制御してハイブリッド中温維持時間(tMR)維持するとともに、その間ブザーを鳴動し、電極部32をハイブリッドステーション35にスライドさせることを促す表示を行う。具体的には、LCD表示部51には、「電極をハイブリッドステーションに移動し、スタートSWを押して下さい」と表示する。また、このとき、スタートランプを点滅させ、この間、tMR時間の進行を停止する。
【0098】
以下、増幅産物であるDNA(ターゲットDNA)を検出する工程(ステップS4)について説明する。
利用者は、指示に従って、図5のステップ2のように、電極部32をハイブリッドステーション35に移動し、サンプルチューブ101に挿入する。ここで、電極部32がサンプルチューブ101に挿入されると、凍結乾燥させた状態の、酵素26が標識されたレポータプローブ28cが、DNA検出装置30に備えられた供給手段により、サンプルチューブ101内に添加されるようになっている。本実施形態では、凍結乾燥させた状態の、酵素26が標識されたレポータプローブ28cが、電極32aの表面に付着している。このため、電極32aを含む電極部32がサンプルチューブ101に挿入されると、酵素26が標識されたレポータプローブ28cが、サンプルチューブ101内に供給される。
【0099】
電極部32の電極32aは、図7に示すように、導電体であるカーボン電極21上にメディエータ22の表面に、ターゲットDNA28bと相補的にハイブリダイズするキャプチャープローブ28aが固定されている。
【0100】
スタートSW42が押下されると、DNA検出装置30は、スタートSW42のスタートランプを静止点灯させ、tMR時間の進行を開始する。
そして、このtMR時間中に、図7に示すように、キャプチャープローブ28a、1本鎖のターゲットDNA28b及びレポータプローブ28cがアニールさせられる。ここで、検出対象のDNAが得られている場合には、PCRにより増幅されたDNAが、1本鎖のターゲットDNA28bに相当する。従って、サンプル液中に検出対象のDNAが含まれている場合に、キャプチャープローブ28a、1本鎖のターゲットDNA28b及びレポータプローブ28cがアニールさせられることとなる。
【0101】
tMR時間完了後、DNA検出装置30は、ハイブリッドステーション35を測定温度に移行させ、この測定温度に達すると、再度ブザーを鳴動し、電極部32を測定ステーション36にスライドさせることを促す表示を行う。具体的には、LCD表示部51には、「電極を測定ステーションに移動し、スタートSWを押して下さい」と表示する。また、このとき、スタートSW42のスタートランプを点滅させ、この間、測定時間の進行を停止する。利用者は、この指示に従って、図5のステップ3のように、電極部32を測定ステーション36に移動する。
【0102】
ここで、サンプル液中に検出対象のDNAが含まれていた場合には、電極部32の電極32a上には、キャプチャープローブ28a、ターゲットDNA28b、レポータプローブ28cが、この順で結合されている。なお、レポータプローブ28cには、酵素26が結合されている。
【0103】
そして、スタートSW42が押下されると、DNA検出装置30は、スタートランプを静止点灯させ、測定時間の進行を開始する。
電流値の測定は、電極部32の電極32aに、参照電極32bを基準として+500mVの電位を印加し、電極32aに流れる電流を測定することにより行う。
【0104】
ここで、電極部32の電極32aに電位を印加すると、判定液中の基質と酵素が反応し、メディエータを介して電子の授受が行われる。具体的には、図7に示すように、酵素26が基質25と反応して酸化体基質27を生成する際に生じた電子の授受を、メディエータ22を介してカーボン電極21に伝達させる。そして、DNA検出装置30は、電極32aのカーボン電極21に流れる電流(限界酸化電流)の電流値を測定する。
【0105】
なお、電解質溶液のみを用い、酵素反応が起こらない場合であっても、ベースとなる電流が発生するが、酵素反応が起こった場合の酸化還元反応の電子の移動を、このベース電流に比較してより大きな値として測定することができる。
【0106】
このように、酵素反応に基づく酵素−電極間の電子伝達をモニタする、つまり、一連の電子移動を電流として捕らえることにより、ターゲットDNAの有無又は濃度を検知することができる。このため、ターゲットDNAを捕捉するキャプチャープローブ及びキャプチャーしたターゲットDNAにさらに結合し、信号を得るためのレポータプローブを用いるサンドイッチハイブリダイゼーションアッセイによりDNAの検出を行うことが可能となる。
【0107】
測定中は、DNA検出装置30は、所定の間隔(例えば、1秒毎)で、テキストファイル形式の測定データをパーソナルコンピュータに送信する。
また、測定中においては、LCD表示部51に、図6に示す測定状態に関する表示画面120が表示される。
【0108】
図6に示すように、表示画面120には、測定数値表示欄121及び測定結果グラフ表示欄122が設けられている。測定数値表示欄121には、測定チューブ実温度、測定時間設定(分)、測定ワーク電圧(mV)、測定残り時間(sec)、測定実データ(nA)が表示される。測定結果グラフ表示欄122には、測定結果がグラフ描画される。このグラフにおいて、X軸は測定時間であり、Y軸は測定データ(電流値)である。
【0109】
以上、本実施形態によれば、上記(1)〜(3),(6),(7)の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(8) 上記実施形態では、導電体(カーボン電極21)の表面にキャプチャープローブ28aが結合してなる電極32aと、温度制御部と、電極32aに流れる電流値を測定する電流測定部とを備えたDNA検出装置30を用いて特定の微生物(サルモネラ)の検出を行うことができる。すなわち、捕捉体に結合した状態の微生物を含むサンプル液の温度を制御して熱抽出法によりDNAを抽出し、抽出されたDNAを含むサンプル液の温度を制御してPCR法によりターゲットDNA28bを増幅する。そして、酵素26により標識されたレポータプローブ28cと、酵素26と反応する基質25とを用い、増幅産物を含むサンプル液の温度を制御して、キャプチャープローブ28aと、レポータプローブ28cとにターゲットDNA28bを結合させる。そして、レポータプローブ28cに標識された酵素26と基質25による反応により電極32aに流れる電流値を測定することによりターゲットDNA28bを検出する。これにより、捕獲され洗浄された微生物からのDNAの抽出、PCR法による増幅、及びターゲットDNAの検出を、DNA検出装置30を用いて行うことができる。このため、より簡易、簡便かつ高感度にターゲットDNAを検出できる。従って、より簡易、簡便かつ高感度にサルモネラの検出を行うことがで
きる。
【0110】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・ 上記実施形態では、検出対象の微生物をサルモネラとしたが、本発明の微生物検出方法により検出する微生物は、これに限定されるものではない。なお、特定の微生物の検出を行う場合、検出対象の微生物に応じて、微生物を捕獲する場合に用いる捕捉体に固定化されたリガンドもしくは抗体を、検出対象の微生物の構成成分と結合するものとする。また、検出対象の微生物に応じて、DNAのPCR法による増幅及び増幅産物であるターゲットDNAの検出において対象となるDNA領域を、検出対象の微生物に特徴的なものとする。これにより、特定の微生物の検出を、迅速かつ高精度に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の微生物検出方法は、医療分野及び食品分野のほか、環境計測用などの幅広い分野で、微生物の検出に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の微生物検出方法の処理手順の説明図。
【図2】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置の斜視図。
【図3】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置の回路構成を示すブロック図。
【図4】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置の温度制御の説明図。
【図5】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置における電極移動の説明図。
【図6】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置の表示画面の説明図。
【図7】本発明の一実施形態で用いられるDNA検出装置の電極における反応の説明図。
【符号の説明】
【0113】
21…カーボン電極(導電体)、22…メディエータ、25…基質、26…酵素、27…酸化体基質、28a…キャプチャープローブ、28b…ターゲットDNA、28c…レポータプローブ、30…DNA検出装置、32…電極部(バイオセンサ)、32a…電極、32b…参照電極、32c…対電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕獲する工程と、前記捕獲した微生物を洗浄する工程と、前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程と、前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程と、増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程とを有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項2】
前記捕獲した微生物を洗浄する工程は、緩衝液、ポリアニオンを含んだ緩衝液、界面活性剤を含んだ緩衝液、界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の中から選択される液体を用いることを特徴とする請求項1に記載の微生物検出方法。
【請求項3】
検出対象の微生物はサルモネラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物検出方法。
【請求項4】
前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程において増幅の対象とする遺伝子が、fimA、agfA、fliC、invA、invE、sigD、prt、ompC、ompF、ompA、sipB、sipC、tctC
の中から選択されることを特徴とする請求項3に記載の微生物検出方法。
【請求項5】
前記捕捉体は、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁気ビーズ、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を固定化した磁性ナノ粒子、及び、微生物の構成成分と結合するリガンドもしくは抗体を内面に固定化した容器のいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の微生物検出方法。
【請求項6】
前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、酵素標識されたレポータプローブと、前記酵素と反応する基質とを用いて、前記キャプチャープローブと、前記レポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、前記レポータプローブに標識された前記酵素と前記基質による反応により前記電極に流れる電流値を測定することにより前記ターゲットDNAを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法。
【請求項7】
前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、電気泳動法、蛍光発光を利用してターゲットDNAの増幅を検出する方法のいずれか1つにより行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法。
【請求項8】
前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程は、熱抽出法により、前記捕捉体に結合した状態の微生物からDNAを抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の微生物検出方法。
【請求項9】
導電体表面にキャプチャープローブが結合してなる電極と、温度制御部と、前記電極に流れる電流値を測定する電流測定部とを備えたDNA検出装置を用い、
前記洗浄した微生物からDNAを抽出する工程は、前記捕捉体に結合した状態の微生物を含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御して熱抽出法によりDNAを抽出し、
前記抽出されたDNAをPCR法により増幅する工程は、前記抽出されたDNAを含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御してPCR法によりターゲットDNAを増幅し、
前記増幅産物であるターゲットDNAを検出する工程は、酵素標識されたレポータプローブと、前記酵素と反応する基質とを用い、前記増幅産物を含むサンプル液の温度を前記温度制御部により制御して、前記キャプチャープローブと、前記レポータプローブとにターゲットDNAを結合させ、前記電流測定部により、前記レポータプローブに標識された
前記酵素と前記基質による反応により前記電極に流れる電流値を測定することにより前記ターゲットDNAを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の微生物検出方法。
【請求項10】
前記構成成分はリポポリサッカライドであり、前記構成成分と結合ずるリガンドもしくは抗体はポリミキシンBであることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1つに記載の微生物検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−97551(P2007−97551A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295703(P2005−295703)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】