説明

微生物計測方法およびシステム

【課題】 試料水に多量の夾雑物が混入していても、検出対象微生物の誤カウントを低減し、検出対象微生物を容易に高精度で検出、計数することができる微生物計測方法およびシステムを提供する。
【解決手段】 濁度計11で、試料水1中の濁度を測定するとともに、分離濃縮装置13で、試料水1中の検出対象微生物を分離濃縮して、測定試料3を調製し、この測定試料3を、希釈装置15で希釈した後、フローサイトメータ19で測定試料中に含まれる検出対象微生物を計測する際、フローサイトメータ19における計測可能な粒子の個数濃度の上限値を求めるとともに、試料水1の濁度と測定試料3中に含まれる粒子の個数濃度との相関関係から、測定した試料水1の濁度に基づいて、測定試料3の粒子個数濃度が前記上限値以下になるように、希釈装置において測定試料3の希釈を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物計測方法およびシステムに関し、詳しくは、河川および湖沼などの環境水や上下水道の各処理プロセスの処理水など水中に存在する原虫、細菌、ウイルスといった水系感染性微生物を計測する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には多種多様な化学物質が存在するため、水道原水となる河川や湖沼などの環境水も様々な化学物質で汚染されていると考えられる。しかし、このような水環境の水質問題のほかにクリプトスポリジウムなどの原虫類、腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌などの細菌、ウイルスなどによる水系感染症の発生が大きな社会問題となっている。
【0003】
これらの水系感染症の集団発生を防ぐためには、水処理プロセスにおける原因微生物を高頻度にモニタリングすることが必要不可欠である。そして、その測定結果を処理プロセスにフィードバックして、環境中に存在する水系感染性微生物を適切に除去あるいは消毒殺菌する必要がある。
【0004】
測定の高頻度化、自動化、省力化においては検出対象微生物に選択的に蛍光標識し、試料をフローサイトメータに連続的に送液し、粒子の蛍光強度から検出対象微生物を検出する方法が用いられる(例えば、特許文献1)。検出対象微生物を蛍光標識する手段には、検出対象微生物に選択的に結合し、かつ蛍光物質が結合した抗体が用いられる。フローサイトメータは粒子の蛍光強度および粒子の粒径を示す前方散乱光強度、粒子の内部構造を示す側方散乱光強度を測定する分析装置である。蛍光標識した検出対象微生物を検出するときには、検出対象微生物が含まれる、検出対象微生物の蛍光強度および粒径を示す前方散乱光強度の領域をあらかじめ設定しておき、測定した粒子がこの領域に含まれるときには検出対象微生物としてカウントすることで測定できる。さらに、検出精度を高めるには前述の領域に加え、夾雑物特有の蛍光強度よりも小さいという判定基準を設定することが有効である。
【特許文献1】特開平7−140148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量の試料水を効率良く測定するため、試料水中の検出対象微生物を分離、濃縮し、これにより調製した測定試料を、フローサイトメータにより測定することが行われている。一方、環境水中には、地域の特性や降雨などの天候により大きく変動するが、ウイルス、細菌、線虫などの微生物や藻類、フミン酸などの土壌有機物、砂などの無機物といった夾雑物が大量に存在する。この夾雑物の多くは、前記の分離濃縮により、検出対象微生物と同様に濃縮されてしまう。フローサイトメータでは、測定試料中の粒子(検出対象微生物および夾雑物)の個数濃度が高くなると、測定対象微生物が夾雑物と重なる確率が高くなり、カウント漏れが発生する恐れがある。また、夾雑物を検出対象微生物として誤ってカウントする恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、試料水に多量の夾雑物が混入していても、フローサイトメータにおける検出対象微生物の誤カウントを低減し、検出対象微生物を容易に高精度で検出、計数することができる微生物計測方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る試料水中に含まれる検出対象微生物を計測する方法は、前記試料水中の濁度を測定する工程と、前記試料水中の検出対象微生物を分離、濃縮して、測定試料を調製する工程と、前記測定試料を希釈する工程と、前記希釈した測定試料中の検出対象微生物を、フローサイトメトリ法により計測する工程とを含み、前記微生物計測工程における計測可能な粒子の個数濃度の上限値を求めるとともに、前記試料水の濁度と前記測定試料中に含まれる粒子の個数濃度との相関関係から、前記濁度測定工程で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるように、前記希釈工程において前記測定試料の希釈を行うことを特徴とする。
【0008】
前記微生物計測工程は、前記測定試料の周囲にシース液を流して計測する工程であって、この微生物計測工程に用いた測定試料とシース液との混合液を、再び、その周囲に別のシース液を流して計測する繰り返し微生物計測工程を更に含み、また、前記希釈工程は、シース液により測定試料を希釈する工程であって、前記濁度測定工程で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるまで、前記繰り返し微生物計測工程を少なくとも1回以上行うことが好ましい。
【0009】
本発明に係る試料水中に含まれる検出対象微生物を計測するシステムは、前記試料水中の濁度を測定する濁度計と、前記試料水中の検出対象微生物を分離、濃縮して、測定試料を調製する分離濃縮装置と、前記測定試料中の検出対象微生物を、フローサイトメトリ法により計測する微生物計測装置と、前記微生物計測装置において計測可能な粒子の個数濃度の上限値を求めるとともに、前記試料水の濁度と前記測定試料中に含まれる粒子の個数濃度との相関関係から、前記濁度計で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるように、前記測定試料を希釈する制御を行う制御装置とを備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0010】
このように、試料水の濁度と、試料水を分離濃縮した測定試料中の粒子の個数濃度とには相関関係があることから、試料水の濁度を測定し、この濁度に基づいて、測定試料中の粒子の個数濃度が、微生物計測装置において計測可能な粒子の個数濃度の上限値以下になるように、測定試料の希釈を行うことで、夾雑物由来のノイズ成分を排除でき、検出対象微生物を高精度で検出し、計数することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る微生物検出システムの一実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る微生物検出システムの一実施の形態を示す模式図である。なお、微生物としてクリプトスポリジウムを検出する場合について説明するが、本発明は、クリプトスポリジウムに限定されず、微生物全般について適用することができ、微生物の中でも特に、粒径が0.3〜40μmの範囲の微生物に対して適用することが好ましい。0.3〜40μmの粒径は、フローサイトメーターで好適に測定することができる。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の微生物検出システムは、試料水1の濁度を測定する濁度計11と、試料水1中に混入しているクリプトスポリジウムを分離、濃縮して測定試料3を調製する分離濃縮装置13と、この測定試料3に希釈液を加えて、測定試料の濃度を下げる希釈装置15と、濁度計で測定した濁度7に基づき、希釈装置における測定試料3の希釈倍率を演算する制御装置17と、希釈した測定試料に標識抗体5を添加し、蛍光標識したクリプトスポリジウムの個数を測定する蛍光微粒子計測器19とを備えている。
【0013】
濁度計11は、環境測定において通常使用されている水の濁度を測定する装置を用いることができる。水の濁度を測定する方式には、例えば、透視比濁法、光電光度法、表面散乱光方式、粒子数計測法がある。
【0014】
透視比濁法は、水中を透過する光が分散粒子によって反射または散乱して透過量が減少する度合いを肉眼で比較測定するものである。通常、透視比濁度用暗箱と濁度標準液を使用して測定する。
【0015】
光電光度法は、試料水に照射した光の透過光、散乱または反射光の光度あるいはそれらの比率を測定するもので、さらに透過光測定法、散乱(反射)光測定法、積分球方式に大別される。透過光測定法は、光が水中のにごりの粒子により透過光量が減少することを測定する。散乱(反射)光方式は、水中の濁りの粒子に光を当てそこに発生する散乱光の強度から濁度を求める。積分球方式は、水中の濁質によって起こる散乱光と透過光の比を求め、この値を濁度標準液が示す散乱光と透過光の比と比較して濁度を求める方法である。
【0016】
表面散乱光方式は、液槽に試料を連続的に流して溢れさせ、その試料水面に光を照射し、表面近くの濁りの粒子から散乱した散乱光を測定するものである。
【0017】
粒子数計測法は、光源にレーザー光を用い、セルを透過するときに濁りの粒子で散乱することを検出器で感知することにより粒子数を計測して濁度に変換する方法であり、レーザー微粒子カウント方式とレーザー緩衝縞カウント方式に大別される。レーザー微粒子カウント方式は、一定流量でセルに流れる試料水にレーザー光を照射し、生じる前方または側方散乱光のみをレンズ系で集光し、フォトダイオード等を用いた検出器で電気信号に変換するものである。電気信号は粒子系に応じた波高のパルス信号となるので閾値を設定して粒子系区分ごとの粒子数を計測する。この粒子数と個々の粒子が粒子計ごとに生じさせる散乱光量に一定の関係があることからその総和を濁度に換算するものである。レーザー緩衝縞カウント方式は、試料水を通過させるセルに対してレーザー光を照射し、発生する前方散乱光をフォトダイオードアレイ検出器に導き、粒子がセルを通過するときにレーザー光が前方散乱することにより緩衝縞を検出器に生じることをパルス信号に変換するものである。より低濃度の場合は離散パルスとなり検出粒子数量を濁度に変換する。より高濃度では連続したパルス信号となるので必要に応じて緩衝縞投影面積にあわせて計測し濁度換算するものである。
【0018】
河川や湖沼といった環境水などの原水の濁度測定には、一般的に、光電光度法や表面散乱光方式を用いた原水用の濁度計を使用することが好ましい。一方、浄水場における濾過水といった濁度の低い試料の濁度測定には、粒子計測法を用いた高感度濁度計を使用することが好ましい。
【0019】
分離濃縮装置13は、環境測定で通常行われる水中微生物の分離濃縮ができる装置を用いることができる。このような分離濃縮装置13としては、例えば、フィルタ、遠心分離、誘電泳動または凝集沈殿などを用いた装置があるが、これらに限定されない。フィルタを用いる装置の場合、フィルタは、試料水1中の検出対象微生物であるクリプトスポリジウムの粒径よりも小さい孔径を有する。このフィルタにより試料水1を濾過することにより、クリプトスポリジウムを含む粒子の個数濃度が濃縮された測定試料3を得ることができる。このようなフィルタとしては、例えば、商品名ヌクレポアフィルタ(ワットマン社)や商品名アイソポアフィルタ(ミリポア社)がある。また、測定試料3の調製には、フィルタによる濾過に加えて、洗浄、逆洗、攪拌、再濾過などの任意の操作を行うことができる。例えば、以下の第1工程から第5工程を行い得られた分散液を、測定試料とすることが好ましい。
【0020】
先ず、第1工程では、検出対象微生物であるクリプトスポリジウムの粒径よりも小さい孔径を有し、親水性かつ表面が平滑な平膜で試料水を濾過する。
第2工程では、第1工程で試料水を濾過した膜の濾液側から濾過面側に洗浄液を逆流させ、膜の微細孔に詰まった夾雑物を膜上に捕捉された検出対象微生物とともに再分散させる。
第3工程では、第2工程で膜の濾過面側に溜まった洗浄液を、物理的撹拌手段を用いて撹拌し、上記膜の表面に付着した夾雑物および検出対象微生物を逆流させた洗浄液に浮遊させ、凝集した夾雑物を細かく分散させる。
第4工程では、試料を再度濾過し、微細化した夾雑物を排出する。このとき、さらに夾雑物の個数濃度を低減するため、第2工程から第4工程を複数回、繰返し行うことが望ましい。
第5工程では、膜表面に残留した検出対象微生物を、洗浄液を膜の濾液側から濾過面側に逆流させ、その洗浄液を物理的撹拌手段で撹拌し、膜表面に残留した検出対象微生物を膜表面から剥離させてその分散液を回収する。
この第1〜第5工程を含む分離濃縮操作によって、夾雑物の回収率を高く維持したまま、夾雑物の個数濃度を低減することができる。
【0021】
希釈装置15は、測定試料3を、所定の希釈倍率に希釈できる装置を用いることができる。希釈に用いる希釈液としては、クリプトスポリジウムの検出に影響を与えないように、清浄水を用いることが好ましい。清浄水としては、例えば、純水、超純水、分散液(0.02%ピロリン酸ナトリウム、0.03%EDTA−3Na、0.01%Tween80)等を用いることができる。
【0022】
制御装置17は、少なくとも濁度計11および希釈装置15と通信可能に接続されており、濁度計11から受信した濁度7のデータに基づき、測定試料3の希釈倍率を演算し、この希釈倍率のデータを希釈装置15に送信するコンピュータを用いることができる。詳細な制御の内容は後述する。
【0023】
蛍光微粒子計測器19は、フローサイトメトリ法を用いて蛍光微粒子を計測する装置を用いることができる。フローサイトメトリ法は、微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する手法である。
【0024】
蛍光微粒子計測器19での計測前に測定試料3に添加しておく標識抗体5としては、検出対象微生物であるクリプトスポリジウムと選択的に結合して蛍光標識するものが好ましい。このような蛍光標識抗体として、例えば、商品名イージーステインFITC(和光純薬工業社から入手可能)がある。
【0025】
以上の構成の微生物検出システムにおいて、先ず、濁度計11により試料水1の濁度を測定する。測定した濁度7のデータを制御装置17に送信する。次に、この試料水1を用いて、分離濃縮装置13で測定試料3を調製する。この試料水1の濁度と、測定試料3中の粒子の個数濃度とは、図2に示すように、相関関係がある。図2の縦軸は、試料水の濁度であり、PSL(ポリスチレンラテックス)濁度に換算したものである。図2の横軸は、測定試料中の粒子の個数濃度(個/mL)である。図2中の実線は測定値の近似曲線である。このように、試料水の濁度と測定試料中の粒子の個数濃度とには、正の比例関係があることがわかる。
【0026】
この相関関係によれば、濁度計11で試料水1の濁度を測定することで、分離濃縮装置13で分離濃縮した測定試料3中の粒子の個数濃度を予測することができる。例えば、試料水1の濁度が10度−PSLであれば、測定試料3中の粒子の個数濃度は約4×106個/mLと予測することができる。
【0027】
一方、蛍光微粒子計測器19では、測定試料3中の粒子の個数濃度が高いとクリプトスポリジウムが夾雑物と重なる確率が高くなり、カウント漏れが発生する恐れがある。また、夾雑物を検出対象微生物として誤ってカウントする恐れがある。図3は、フローサイトメトリ法を用いた蛍光微粒子計測器での測定結果である。PSL濁度標準液(和光純薬工業社から入手可能)を模擬的に希釈し、粒子の個数濃度で1×103個/mLから1×107個/mLに調整した測定試料を調整した。これに蛍光標識したクリプトスポリジウムの代替として、蛍光標識したクリプトスポリジウムと同等の蛍光強度をもつ蛍光粒子を20mL当たり平均40.5個の蛍光粒子を添加し、20mLの測定試料を蛍光微粒子測定器で測定した。図3の縦軸は、その蛍光微粒子測定器での蛍光粒子の個数の測定値である。図3の横軸は、模擬的に希釈した測定試料中の粒子の個数濃度である。実線は近似曲線である。
【0028】
図3に示すように、測定試料中の粒子の個数濃度が1×106個/mLを超えると、蛍光微粒子計測器の測定値は、添加した蛍光粒子の個数に比べて大きく低下した。すなわち、測定試料中の粒子がこの個数濃度を超えると、蛍光微粒子計測器で誤カウントが発生することがわかった。よって、蛍光微粒子計測器における計測可能な粒子の個数濃度の上限値は、1×106個/mLである。また、図2の相関関係から、この上限値は、試料水の濁度で2度−PSLと換算できる。
【0029】
したがって、濁度計11で測定した濁度7から、測定試料3の希釈の要否を判断するとともに、希釈が必要な場合は、希釈装置15において、測定試料3の粒子の個数濃度が上記の上限値以下になるような希釈倍率で、測定試料3を希釈する。例えば、濁度計11で試料水1の濁度が20度−PSLと測定された場合、測定試料3中の粒子の個数濃度は8×106個/mLになると予想される。よって、希釈装置15において測定試料3を8倍以上の希釈倍率で希釈することで、粒子の個数濃度を上限値である1×106個/mL以下にすることができる。また、試料水1の濁度が30度−PSLと測定された場合、測定試料3中の粒子の個数濃度は1.4×107個/mLになると予想される。よって、希釈装置15で14倍以上の希釈倍率で希釈することで、粒子の個数濃度を上限値である1×106個/mL以下にすることができる。この希釈倍率の演算は、制御装置17で行う。
【0030】
このように希釈装置15で希釈した測定試料に標識抗体5を添加し、クリプトスポリジウムを蛍光標識した後、蛍光微粒子計測器19で測定を行う。その結果の測定値9であるクリプトスポリジウムの個数は、当初の試料水1中に混入しているクリプトスポリジウムの個数として表示する。
【0031】
図1の実施の形態では、希釈装置15において所定の希釈倍率で希釈液によって測定試料3を希釈してから、蛍光微粒子計測器19で測定する方法を示したが、本発明はこの方法に限定されず、多様な希釈方法を採用することができる。
【0032】
例えば、図4に、本発明に係る微生物計測システムの別の実施の形態の模式図を示す。図4に示すように、本実施の形態では、希釈装置15を特別に設けてはおらず、蛍光微粒子計測器19で、測定試料3を繰り返して測定することを行う。蛍光微粒子計測器19は、図5に示すように、シース液57が供給されるシース液流管50と、このシース液流管50内の中心軸に、標識された測定試料56が供給されるサンプル液流管51と、シース液流管50の下流側に、管の断面積が絞り込まれたフローセル52とを備えている。フローセル52では、測定試料56の周囲にシース液57を流すことで、粒子をほぼ一列に整列し、レーザービーム55を照射することにより、粒子がクリプトスポリジウムであるかを検出する。
【0033】
フローセル52の下流側には、測定した測定試料56とシース液57を回収する回収容器53が設置されている。測定試料56の測定が終了した後、この回収した測定試料56とシース液57の混合液58を、ポンプ(図示省略)を用いて、サンプル液流管51に供給する。2回目の測定では、1回目と同様にシース液流管50にはシース液57を供給するが、サンプル液流管51には、測定試料56とシース液57の混合液58を供給する。すなわち、2回目の測定では、測定試料56はシース液57により希釈されている。
【0034】
よって、濁度計11により測定した試料水1の濁度から、測定試料3の希釈の要否を判断するとともに、希釈が必要な場合は、蛍光微粒子計測器19で、測定試料3を繰り返し測定することで、測定試料56とシース液57の混合液58中の粒子の個数濃度を、上限値である1×106個/mL以下にすることができ、クリプトスポリジウムの個数を精度高く測定することができる。なお、1回の蛍光微粒子計測で測定試料56が希釈される倍率は、1回の蛍光微粒子計測で使用されるシース液の容量により求められる。よって、濁度計11で測定した濁度7から、蛍光微粒子計測器19で必要な測定の繰り返し回数を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る微生物計測システムの一実施の形態を示す模式図である。
【図2】試料水の濁度と測定試料中の粒子の個数濃度との関係を示すグラフである。
【図3】測定試料中の検出対象微生物の測定値と粒子の個数濃度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る微生物計測システムの別の実施の形態を示す模式図である。
【図5】蛍光微粒子計測器の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 試料水
3 測定試料
5 標識抗体
7 濁度
9 測定値
11 濁度計
13 分離濃縮装置
15 希釈装置
17 制御装置
19 蛍光微粒子計測器
50 シース液流管
51 サンプル液流管
52 フローセル
53 回収容器
55 レーザービーム
56 測定試料
57 シース液
58 混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水中に含まれる検出対象微生物を計測する方法であって、
前記試料水中の濁度を測定する工程と、
前記試料水中の検出対象微生物を分離、濃縮して、測定試料を調製する工程と、
前記測定試料を希釈する工程と、
前記希釈した測定試料中の検出対象微生物を、フローサイトメトリ法により計測する工程と
を含み、前記微生物計測工程における計測可能な粒子の個数濃度の上限値を求めるとともに、前記試料水の濁度と前記測定試料中に含まれる粒子の個数濃度との相関関係から、前記濁度測定工程で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるように、前記希釈工程において前記測定試料の希釈を行う微生物計測方法。
【請求項2】
前記微生物計測工程が、前記測定試料の周囲にシース液を流して計測する工程であって、この微生物計測工程に用いた測定試料とシース液との混合液を、再び、その周囲に別のシース液を流して計測する繰り返し微生物計測工程を更に含み、
前記希釈工程が、シース液により測定試料を希釈する工程であって、前記濁度測定工程で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるまで、前記繰り返し微生物計測工程を少なくとも1回以上行う請求項1に記載の粒子計測方法。
【請求項3】
試料水中に含まれる検出対象微生物を計測するシステムであって、
前記試料水中の濁度を測定する濁度計と、
前記試料水中の検出対象微生物を分離、濃縮して、測定試料を調製する分離濃縮装置と、
前記測定試料中の検出対象微生物を、フローサイトメトリ法により計測する微生物計測装置と、
前記微生物計測装置において計測可能な粒子の個数濃度の上限値を求めるとともに、前記試料水の濁度と前記測定試料中に含まれる粒子の個数濃度との相関関係から、前記濁度計で測定した濁度に基づいて、前記測定試料の粒子個数濃度が前記上限値以下になるように、前記測定試料を希釈する制御を行う制御装置と
を備えた微生物計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−222566(P2009−222566A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67564(P2008−67564)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】