説明

微粒子分散液、およびこれを用いた被記録媒体

【課題】 比較的緩やかな撹拌条件下で、粒子径および粘度を所望の範囲にコントロールすることが可能で、安定して高品質なインク受容層が形成できる微粒子分散液を提供すること。また、該分散液を用いてインク受容層を形成することで、画像を記録する際に発生する刺激臭(または不快臭)、および高温高湿下における画像の滲みが抑制された被記録媒体を提供すること。
【解決手段】 水性溶媒中に無機微粒子が分散された微粒子分散液を調製する際に、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を用いる。更に、該分散液を用いてインク受容層を形成し、被記録媒体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット用被記録媒体を製造するのに適した微粒子分散液、およびこれを用いた被記録媒体に関し、特に分散性、経時安定性に優れ、かつ形成されるインク受容層の透明性や平滑性、皮膜性に優れた微粒子分散液、および画像を記録する際に、インク受容層から発生する刺激臭(または不快臭)や、高温高湿下における画像の滲みが抑制された被記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により紙等の被記録媒体に付着させると同時に、インクの溶媒成分が被記録媒体にしみ込むかまたは蒸発することで、色材成分が被記録媒体上に沈着し、画像や文字等(以下、単に「画像」と言う)の記録を行う記録方式である。また、インクジェット記録方式は、高速印字性、低騒音性および記録パターンの融通性に優れ、更に多色化を容易に行うことができ、現像および画像定着が不要であるといった特徴がある。特に、多色インクジェット方式で形成された画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることが可能で、作成部数が少ない場合には通常の印刷技術や写真技術より印刷コストが安価に済むという利点もあることから、近年、各種情報機器の画像記録装置として急速に普及している。
【0003】
このようなインクジェット記録方式において、記録の高速化、高精細化、あるいはフルカラー化といった記録特性を向上させるため、記録装置や記録方法の改良が行われてきたが、それに伴い被記録媒体にもより高度な特性が要求されるようになってきた。すなわち、銀塩写真に匹敵する高解像度で高品質の記録画像を得るために、
(1)印字ドットの濃度が高く鮮やかで明るい色調が出せること、
(2)コントラストが高いこと、
(3)印字ドットが重なってもインクが流れ出したり、滲んだりしないような高いインク吸収性を有すること、
(4)インクの横方向への拡散が必要以上に大きくならず真円に近い印字ドット形状であること、
(5)ドットの周辺が滑らかでぼやけないこと
などが求められてきた。
【0004】
これらの要求に対し、従来からいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、低サイズ原紙に表面加工用の塗料を薄く塗布し、インク吸収性を高めた一般紙タイプのインクジェット記録用紙が、特許文献2および3には、前記一般紙タイプの欠点であったドットの形状、濃度あるいは色調の再現性を改善するために、被覆層中の顔料として非晶質シリカを用いた例が開示されている。また、近年、インク受容層のインク吸収性、画像の光沢性および透明性を高めたものとして、微細なアルミナ水和物を水溶性のバインダーとともに支持体上に塗布した被記録媒体が提案されており、例えば、特許文献4〜6に開示されている。
【0005】
アルミナ水和物は正電荷を有し、インク中の染料の定着性が良いことから理想的な顔料とされるが、この長所を被記録媒体に十分に発揮させるには、アルミナ水和物が良好な分散状態に保たれた塗工液を使用してインク受容層を形成することが必要であり、そのために、一般にアルミナ水和物の水性ゾル中には解膠剤として酸が添加されている。例えば、特許文献7および8には、酢酸、蟻酸、シュウ酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、硫酸といった無機酸を添加して、良分散の透明ゾルを得る方法が開示されている。
【0006】
一方、銀塩写真並みの画像の光沢性を目的として、樹脂で被覆された紙またはフィルムなどの表面平滑性の高いものを支持体とし、その上にインク受容層を形成させた被記録媒体が主流となりつつある。しかしながら、このような支持体は耐熱性が低く、前記アルミナ水和物を含む塗工液を塗布した後、高温で乾燥できないことから、インク受容層中に解膠剤である酸が残留し、不快臭発生の原因となっていた。
【0007】
解膠剤として酸を使用する代わりに、各種界面活性剤あるいは高分子分散剤を用いて分散液を造ることでこのような不快臭の発生を回避することもできるが、界面活性剤を使用すると分散液中に泡が発生するため、これが原因となって塗工欠陥を生じることがある。また、高分子系の分散剤を使用した場合、アルミナ水和物を一次粒子まで解膠するのに、比較的強い剪断力と長時間の撹拌が必要であり、凝集物のない均一な分散液を得ることが困難なことから、安定して高品質なインク受容層を形成することができなかった。また、画像が形成された被記録媒体が高温多湿環境に曝されると、染料がマイグレーションして画像が滲むことから、一般にインク受容層中にカチオン性樹脂を添加して色材を定着させる手法がとられてきた。しかしながら、インク受容層中に残留する酸が多いと、添加されたカチオン性樹脂の効果が低下し、満足できる結果が得られない場合があった。
【特許文献1】特開昭52−53012号公報
【特許文献2】特開昭55−51583号公報
【特許文献3】特開昭64−11877号公報
【特許文献4】特開平2−276670号公報
【特許文献5】特開平7−76161号公報
【特許文献6】特開平11−34484号公報
【特許文献7】特開平4−67985号公報
【特許文献8】特開平9−24666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の実態に鑑みてなされたものであり、比較的緩やかな撹拌条件下で、粒子径および粘度を所望の範囲にコントロールすることが可能で、安定して高品質なインク受容層が形成できる微粒子分散液を提供すること。また、該分散液を用いてインク受容層を形成することで、画像を記録する際に発生する刺激臭(または不快臭)が抑制され、さらに高温高湿下における画像の滲みが効果的に防止された被記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、分散性、経時安定性に優れ、かつ透明性や平滑性、皮膜性に優れたインク受容層が形成できる微粒子分散液、および画像を記録する際の刺激臭(または不快臭)や高湿下における画像滲みが抑制された被記録媒体を得るために種々検討を重ねた結果、微粒子分散液を調製する際に、特定のポリマーと少量の酢酸を共に用いることで前述した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、水性溶媒中に無機微粒子が分散された微粒子分散液において、該分散液がアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を含むことを特徴とする微粒子分散液を提供する。上記本発明においては、前記重合物の重量平均分子量が1,000以上150,000未満の範囲であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明においては、前記無機微粒子が、アルミナおよび/またはアルミナ水和物であること;前記重合物が、下記一般式(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることが好ましい。










(式中、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基を示す。R、R、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。またR、RおよびR、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは水素またはメチル基を表し、Rは枝分かれしていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、RおよびRは互いに独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は各々の炭素数が1〜8のアルキル基、アリールアルキル基または脂環アルキル基を表す。Aは−COO−または−CONH−を示す。X−は、無機系、有機系の陰イオンを示す。nは重合度を示す整数である。)
【0012】
また、本発明は、支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を設けた被記録媒体において、該インク受容層が前記本発明の微粒子分散液を用いて形成されていることを特徴とする被記録媒体を提供する。
上記被記録媒体においては、前記インク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度をC(ppm)、該インク受容層を形成する際に用いた微粒子分散液(A)の粘度をη(mPa・s)とし、さらにアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物のいずれの重合物も含まずに酢酸を用いて製造したアルミナ分散液(C)の粘度をη(mPa・s)、該微粒子分散液(C)を用いて形成したインク受容層に、前記と同様の画像を形成した場合に発生する酢酸濃度をC(ppm)としたとき、下記式(1)〜式(3)の関係を同時に満たすことが好ましい。
式(1) 1<η≦300
式(2) η=η
式(3) C<C
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記の構成とすることで、分散性や経時安定性に優れ、かつ透明性や平滑性、皮膜性に優れたインク受容層が形成できる微粒子分散液、および画像を記録する際に発生する刺激臭(または不快臭)や高温高湿下における画像の滲みが抑制された被記録媒体を製造することが可能である。
すなわち、微粒子分散液を調製する際に、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物(以降「一般式(1)〜(4)で表されるポリマー」と記す)および酢酸を用いることで、比較的緩やかな撹拌条件で、粒子径および粘度が所望の範囲にコントロールされた微粒子分散液を提供することができた。また、該分散液を用いてインク受容層を形成することで、画像を記録する際に発生する刺激臭(または不快臭)が抑制され、さらに高温高湿下における画像の滲みが効果的に防止された被記録媒体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明において使用する無機微粒子は、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な微粒子であることが好ましい。このような無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナ水和物、合成非晶質シリカ、コロイダルシ
リカ、リトポン、ゼオライトなどを挙げることができ、これらを単独あるいは複数種併用することができる。
【0015】
本発明において使用する無機微粒子の形態としては、高光沢かつ透明性の高いインク受容層を得るために、平均粒径が100nm〜500nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは100nm〜300nmの範囲である。無機微粒子の平均粒径が100nmより小さい場合、インク吸収性が著しく低下し、吐出量の多いプリンターで印字した際にインクの滲みやビーディングが発生する。一方、平均粒径が500nmより大きい場合は、インク受容層の透明性が低下するとともに、画像の印字濃度や光沢が低下する場合がある。なお、本発明でいう平均粒径は動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、あるいはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めることができる。
【0016】
また、上記無機微粒子のBET比表面積は50〜500m /gであることが好ましい。BET比表面積が50m /g未満の場合、粒子が大きいためにインク受容層の透明性が損なわれ、画像濃度が低下し、印字物が白くモヤのかかったような画像になりやすい。また、BET比表面積が500m /gを超えた場合では、アルミナ微粒子を解膠するのに多量の酸が必要となる。より好ましいのは50〜250m /gの範囲であり、インク吸収性やビーディング(インクを吸収できずに粒状の濃度ムラとなる現象)、平滑性などに優れる。
【0017】
尚、本発明においては、前述した無機微粒子の中で、アルミナ、アルミナ水和物等のアルミナ微粒子が好ましく使用でき、さらに、形成するインク受容層の透明性や平滑性が優れ、より微細な空隙を形成できるという点で、ベーマイト構造または擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物がより好ましく使用できる。
【0018】
本発明において使用する無機微粒子は、多量の酸を用いることで容易に解膠され、均一な分散液となり得る。解膠剤として一般に知られている酸の中で、酢酸は化学安全性や腐食性といった問題が少なく、比較的取り扱いが容易なことから理想的な解膠剤と言えるが、形成されるインク受容層中の酢酸残留量を低減し、画像を記録する際に発生する酢酸臭を抑制するために使用量を削減すると、分散液の粘度および分散液中の無機微粒子の粒径は増大してしまう。そこで、本発明においては、一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を併用し、無機微粒子を分散解膠することで微粒子分散液を製造する。一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物を併用することで、酢酸の使用量を減らしても、低粘度で、かつ分散性や経時安定性に優れた微粒子分散液を調製することが可能である。
【0019】
分散液中の無機微粒子の濃度としては、分散液全質量に対し5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。無機微粒子の濃度が低いと、最終的に調製する塗工液の固形分濃度が下がり、塗布後の乾燥に多くの時間とエネルギーを要することから生産効率が悪化する。また、無機微粒子の濃度が高すぎると分散液の粘度が高くなり、後工程でのハンドリングに負荷が掛かるため好ましくない。
【0020】
本発明の微粒子分散液における酢酸の使用量は、無機微粒子の粒子径および比表面積によって異なるが、水溶性溶媒中で微粒子を解膠するのに最低限必要な量であれば良く、アルミナ微粒子に対して好ましくは5.0質量%、未満、より好ましくは0.5〜3.0質量%の範囲が望ましい。使用量が0.1質量%に満たない場合、経時的に分散液の粘度が上昇することがあるので好ましくない。逆に使用量が10質量%を超えた場合では、分散効果はそれ以上増大することはなく、塗工および乾燥工程において、酢酸特有の臭いや乾燥に要するエネルギーが増大するといった問題を生じる。
【0021】
本発明において使用される下記一般式(1)〜(4)で示されるポリマーは、それぞれ単独あるいは複数種併用することができる。







式中、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基、シクロヘキサン環を有する1級または2級脂環式アミン残基を示す。
、R、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。またR、RおよびR、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは水素またはメチル基を表し、Rは枝分かれしていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、RおよびRは互いに独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は各々の炭素数が1〜8のアルキル基、アリールアルキル基または脂環アルキル基を表す。Aは−COO−または−CONH−を示す。X−は、無機系、有機系の陰イオンである。これらは、特に限定されるものではないが、例えば、無機系陰イオンとしては、Cl、Br、I、硝酸イオン、亜硝酸イオン、燐酸イオン、硫酸イオン、有機系陰イオンとしては、スルホン酸アニオン、アルキルスルホン酸アニオン、アルキルカルボン酸アニオンや、蟻酸、酢酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸等の有機酸由来の陰イオンを表す。nは重合度を示す整数である。
【0022】
上記一般式(1)〜(4)で表されるポリマーの重量平均分子量としては1,000以上150,000未満の範囲、より好ましくは1,000以上100,000以下の範囲、さらに好ましくは1,000以上60,000以下の範囲が望ましい。重量平均分子量が低い場合は泡が発生しやすく、これが原因で塗工欠陥を生じることがある。また、重量平均分子量が高いと微粒子分散液の粘度が高くなり分散性が悪化するので好ましくない。
【0023】
上記一般式(1)〜(4)で表されるポリマーの使用量は、併用する酢酸の量に依存するが、多量に用いた場合、微粒子分散液および該分散液にバインダーを添加した塗工液の粘度が高くなり、液自体の保存性や塗工適性が低下することから、微量添加することが好ましい。従って、本発明の微粒子分散液におけるポリマーの使用量は、アルミナ水和物に対し0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%の範囲で、前記酢酸の使用量より少ないことが望ましい。例えば、一般式(1)〜(4)で表される重合物と酢酸の使用質量比率としては、1:100〜99:100の範囲が好ましく、より好ましくは1:50〜75:100の範囲である。
【0024】
本発明の微粒子分散液における水溶性溶媒としては、水、または水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であればよく、水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
【0025】
本発明の微粒子分散液は、前記水溶性溶媒中に一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を溶解し、これに無機微粒子を添加して分散することで得られるが、分散液の調製方法はこれに限定されることはなく、例えば、水溶性溶媒中に一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物、酢酸および無機微粒子を同時に添加して分散する方法:水溶性溶媒中に一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物を溶解し、次いで無機微粒子を添加して分散した後、酢酸を添加する方法:水溶性溶媒中に酢酸を溶解し、次いで無機微粒子を添加して分散した後一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物を添加する方法:水溶性溶媒中に無機微粒子を分散し、その後一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物と酢酸を添加する方法などが選択できる。また、水溶性溶媒中に一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸の少なくとも一方を適量添加し、これに無機微粒子を分散した後、一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸をさらに添加して所望の粒子径および粘度にコントロールすることもできる。
【0026】
水溶性溶媒或いは一般式(1)〜(4)で表されるポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物や酢酸を含む水溶性溶媒への無機微粒子の分散方法としては、連続式、あるいはバッチ式の何れの方法も使用できる。また、分散機としては、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機など、公知の分散機を使用することができる。
【0027】
本発明の微粒子分散液の粘度については、分散液自体の保存安定性が良好で、後工程のハンドリングに負荷を掛かけない程度であればよく、好ましくは1〜300mPa・s、より好ましくは1〜100mPa・sであることが望ましい。また、本発明の微粒子分散液の粘度をη、および本発明の微粒子分散液からアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物を除いた微粒子分散液の粘度をηとしたとき、η<ηであることが好ましく、〔0.005×η〕<η<ηの範囲であればより好ましい。
【0028】
本発明は、支持体上に前記微粒子分散液を用いてインク受容層を形成することで被記録媒体が得られる。支持体としては、適度のサイジングが施された紙、無サイズ紙、コート紙、キヤストコート紙、紙の片面あるいは両面がポリオレフィン等の樹脂で被覆された樹脂被覆紙(以下レジンコート紙と記す)などの紙類からなるもの:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂フィルム:無機物の充填または微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など):さらにはガラスまたは金属などからなるシートなどが挙げられる。また、これら支持体とインク受理層との接着強度を向上させるため、支持体表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
【0029】
なお、本発明においては、支持体上に形成されるインク受容層の光沢性を高めるという観点から、非吸水性で平滑性の高いフィルムおよびレジンコート紙を用いるのが好ましく、少なくともインク受理層を形成する面が、JIS−B0601による10点平均粗さが0.5μm以下であり、且つJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度が25〜75%である支持体がより好ましく使用できる。
【0030】
支持体の厚さには特に制限はないが、25μm〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは50μm〜300μmの範囲である。支持体の厚さが25μmより薄い場合は剛性が低く、手にした時の感触や質感あるいは不透明性が不十分となるので不都合が生じる。逆に、500μmより厚い場合には、得られた被記録媒体が剛直となり、プリンターの給紙走行に支障を来すことがある。また、支持体の重さについても特に制限はなく、おおよそ25g/m〜500g/mの範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明の被記録媒体を製造するにあたり、インク受容層を形成するために調製される塗工液には、本発明の微粒子分散液とともに、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂等のバインダ−が使用される。本発明で使用する水溶性樹脂および/または水分散性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびそれらの変性物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはその変性物(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性など)、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体、ポリエステル系樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、およびこれらの各種重合体ラテックスにカチオン性基またはアニオン性基を付与した官能基変性重合体ラテックス類などが挙げられる。好ましいのは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールであり、平均重合度が300〜5,000のものである。また、ケン化度は70〜100%未満のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。また、これら
の水溶性または水分散性樹脂は単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0032】
上記バインダーの使用量(B)は、無機微粒子(A)に対する混合質量比でB/A=1/30〜1/1が好ましく、より好ましくはB/A=1/20〜1/3の範囲である。バインダーの量がこれらの範囲内であれば、形成されたインク受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなり、インク吸収性も良い。また、本発明の微粒子分散液とバインダーの混合方法については特に限定はしないが、好ましいのは、予め必要に応じた量の水性媒体に水溶性または水分散性樹脂を溶解し、これを微粒子分散液と混合する方法であり、バッチ式あるいは連続式の何れの方法でも混合可能である。
【0033】
水性媒体としては、水、または水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であれば特に制限はなく、水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
【0034】
また、本発明の被記録媒体において、無機微粒子、および水溶性または水分散性樹脂によって形成される皮膜の造膜性、耐水性および皮膜強度を改善するために、インク受容層中に硬膜剤を添加してもよい。一般に、硬膜剤は使用するポリマーが持つ反応性基の種類によって様々なものが選択され、例えば、ポリビニルアルコール系の樹脂であれば、エポキシ系硬膜剤や、ホウ酸あるいは水溶性アルミニウム塩などの無機系硬膜剤などが挙げられるが、本発明で使用する硬膜剤としては、ホウ素原子を中心とした酸素酸またはその塩などのホウ素化合物、具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が好ましく使用できる。
【0035】
ホウ素化合物の使用量は、バインダーとして用いる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の量によって変化するが、概ね水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対して0.1〜30質量%の割合で添加するとよい。ホウ素化合物の含有量が、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対し0.1質量%に満たないと、造膜性が低下し十分な耐水性が得られない。逆に、30質量%を超える場合では、塗工液粘度の経時変化が大きくなり、塗工安定性が低下することがある。
【0036】
架橋剤をインク受容層に添加する方法については、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液に直接架橋剤を添加してバッチ方式で塗布を行う方法、架橋剤を予め微粒子分散液に添加しておき、塗布直前にバインダーと連続的に混合しながら塗布を行う方法、架橋剤を別の水性媒体に溶解しておき、塗布直前に微粒子分散液とバインダーを含む塗工液へインライン添加する方法、更には、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液の塗布前後に、架橋剤を含む溶液を塗布する方法などがあり、何れの方法も利用できる。
【0037】
インク受容層を形成するための塗工液中の固形分濃度は、支持体上にインク受容層を形成できる程度の粘度であれば特に制限はないが、塗工液全質量に対して5〜50質量%が好ましい。固形分濃度が5質量%未満の場合は、インク受容層の膜厚を厚くするのに塗工量を増やす必要があり、乾燥に多くの時間とエネルギーを必要とすることから非経済的となる場合がある。また、50質量%を越えると塗工液の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。
【0038】
また前記塗工液には、本発明の効果を妨げない範囲内で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、浸透剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(退色防止剤)等を挙げることができる。
【0039】
調製された塗工液を支持体上に塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、ゲートロールコート法、バーコート法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ロッドブレードコート法、リップコート法、スリットダイコート法など、従来より公知の塗工方法を用いことができる。その後、熱風乾燥機、熱ドラム、遠赤外線乾燥機等の乾燥装置を用いて乾燥することで、インク受理層を形成することができる。尚、本発明の被記録媒体におけるインク受理層は、前記無機微粒子とバインダーおよびその他の添加剤の組成比を変更して多層形成してもよく、支持体の片面もしくは両面に形成することが可能である。また必要に応じて、塗工後にカレンダーロールなどを用いてインク受容層表面の平滑性を向上させることも可能である。
【0040】
塗工液の支持体上への塗工量として好ましい範囲は、固形分換算で0.5〜60g/mであり、より好ましい範囲は5〜55g/mである。塗工量が0.5g/m未満の場合は、形成されたインク受容層がインクの水分を十分に吸収できず、インクが流れたり、画像が滲んだりする場合があり、60g/mを超えると、乾燥時にカールが発生したり、印字性能に期待されるほど顕著な効果が現れない場合がある。
【0041】
このようにして得られた本発明の被記録媒体は、一般式(1)〜(4)で表されるポリマーのいずれの重合物も含まない本発明の微粒子分散液と同粘度の微粒子分散液を用いた場合に比べ、酢酸の添加量を低く抑えられることから、インク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度を効果的に抑制できる。つまり、インク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度としては、本発明の被記録媒体に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度をC(ppm)、一般式(1)〜(4)で表されるポリマーのいずれの重合物も含まずに製造した本発明の微粒子分散液と同粘度の微粒子分散液を用いて形成したインク受容層に、前記と同様の画像を形成した場合に発生する酢酸濃度をC(ppm)としたとき、C<Cであり、C<0.5×Cの範囲であれば酢酸臭がより削減されるので好ましい。なお、ここで扱う酢酸濃度とは、一定塗工量のインク受容層に画像を形成した後、23℃で10分間静置した場合に、インク受容層から一定の体積に放出される酢酸
の濃度である。また、一般式(1)〜(4)で表されるポリマーのいずれの重合物も含まない本発明の微粒子分散液と同粘度の微粒子分散液とは、本発明の微粒子分散液との粘度差が±5%以内の分散液を指す。
【0042】
また、インク受容層に残留する酢酸濃度を抑制するには、前記乾燥工程において設定温度を高くするか、あるいは、支持体の耐熱温度が低い場合には、乾燥時間でコントロールすることもできるが、塗布後連続して乾燥する場合、特に乾燥機を置くスペースに制約を受け、乾燥が十分に行えない場合には、本発明の微粒子分散液を用いて被記録媒体を製造した方が有利である。
【0043】
なお、本発明の被記録媒体に記録する際に使用するインクは特に限定されないが、色材として染料または顔料を使用し、媒体として水と水溶性有機溶剤との混合物を使用し、該媒体に染料または顔料を溶解または分散させた一般的なインクジェット記録用の水性インクの使用が好ましい。
【0044】
前記被記録媒体に上記インクを付与して画像形成を行う方法としては、インクジェット記録方法が特に好適であり、このインクジェット記録方法としてはインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であれば如何なる方法でもよい。特に特開昭54−59936号公報等に記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式は有効に使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例中、「部」および「%」は特に記載が無い限り重量基準である。
【0046】
<アルミナ水和物の製造>
米国特許明細書第4242271号に記載された方法で、アルミニウムドデキシドを製造した。次に米国特許明細書第4202870号に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーを、アルミナ水和物固形分が7.7%になるまで水を加え、オートクレーブ中で、熟成温度:150℃、熟成時間:6時間にて熟成を行ないコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを入口温度87℃でスプレードライしてアルミナ水和物粉末としたが、得られた粉末は粒子形状が平板状で、X線回折による測定では、結晶構造がベーマイト構造であるアルミナ水和物を示していた。また、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティックスASAP2400、(株)島津製作所社製)を用いて、得られた粉末のBET比表面積を測定したところ140.5m2/gであった。
【0047】
<実施例1>
イオン交換水100部に、アリルアミン系重合物としてPAA-HCl-05(40%水溶液、重量平均分子量:約5,000、日東紡績(株)社製)0.065部(アルミナ水和物に対して0.1%)、および6%−酢酸水溶液4.35部(アルミナ水和物に対して1%)を添加し、スリーワンモータ(BL600、定格トルク:5kgf・cm、撹拌翼:タービン型、新東科学(株)社製)を用いて150rpmで10分間撹拌して分散溶媒を調
製した。その後、分散溶媒の液温が25℃になるように低温恒温水槽中で調整しながら前記アルミナ水和物26.1部を添加し、前記スリーワンモータの回転数を350rpmに調整して10分間撹拌することで、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%のアルミナ分散液を得た。このようにして得られたアルミナ分散液について、下記評価1、2のテストを行った。結果を表1に示す。
【0048】
得られたアルミナ分散液の諸物性について、下記の要領で評価を行った。
<評価1:アルミナ分散液の粘度>
アルミナ分散液を、25℃に設定した低温恒温水槽中で15分間静置し、その後、B型粘度計(BM形式、(株)東京計器社製)を用いて粘度を測定した。
<評価2:アルミナ微粒子の粒径>
レーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子(株)社製)を用いて、アルミナ分散液中のアルミナ微粒子の平均粒径を測定した。
【0049】
<実施例2>
実施例1において、アリルアミン系重合物の量を0.653部(アルミナ水和物に対して1%)、酢酸水溶液の量を8.70部(アルミナ水和物に対して2%)とし、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0050】
<実施例3>
実施例1において、アリルアミン系重合物をPAA-HCl-01(42.0%水溶液、重量平均分子量:約1,000、日東紡績(株)社製)0.621部(アルミナ水和物に対して1%)に変更し、酢酸水溶液の量を8.70部(アルミナ水和物に対して2%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0051】
<実施例4>
実施例1において、アリルアミン系重合物をPAA-CH3COOH-L(25.0%水溶液、重量平均分子量:約15,000、日東紡績(株)社製)0.104部(アルミナ水和物に対して0.1%)に変更し、酢酸水溶液の量を5.44部(アルミナ水和物に対して1.25%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0052】
<実施例5>
実施例1において、アリルアミン系重合物をPAA-H-HCl(20.0%水溶液、重量平均分子量:約60,000、日東紡績(株)社製)0.131部(アルミナ水和物に対して0.1%)に変更し、酢酸水溶液の量を5.44部(アルミナ水和物に対して1.25%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0053】
<実施例6>
実施例1において、アリルアミン系重合物に代わりアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物である試作品(52.3%水溶液、分子量:6,000、第一工業製薬(株)社製)0.499部(アルミナ水和物に対して1%)に変更し、酢酸水溶液の量を8.70部(アルミナ水和物に対して2%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0054】
<実施例7>
実施例1において、アリルアミン系重合物に代わりジシアンジアミド系重合物としてパルセットJK-230(68.0%水溶液、分子量:3,000〜5,000、明成化学工業(株)社製)0.384部(アルミナ水和物に対して1%)に変更し、酢酸水溶液の量を8.70部(アルミナ水和物に対して2%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に示す。
【0055】
<実施例8>
実施例1において、アリルアミン系重合物に代わりアクリル系重合物としてシャロールDM-283P(91.6%白色顆粒、分子量:約28,000、第一工業製薬(株)社製)0.028部(アルミナ水和物に対して0.1%)に変更し、酢酸水溶液の量を5.44部(アルミナ水和物に対して1.25%)とし、また、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。その結果を表1に
示す。
【0056】
<比較例1〜3>
実施例1において、アリルアミン系重合物を用いず、酢酸水溶液の量を4.35部、5.44部、8.70部(アルミナ水和物に対して1%、1.25%、2%)とし、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を作製し、評価1、2のテストを行った。結果を表1に示す。尚、酢酸添加量をアルミナ水和物に対し1%および1.25%としたアルミナ分散液は粘度が高く、これにホウ酸およびポリビニルアルコールを加えて塗工液を調製した際に、かなり強力な撹拌を要した。
【0057】
<比較例4>
実施例1において、酢酸水溶液を用いず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液を調製し、評価1、2のテストを行った。しかし、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0058】
<比較例5>
実施例2において、酢酸水溶液を添加せず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例2と同様にしてアルミナ分散液を調整した。しかし、調製後約15分で分散液が2層に分離し始めたことから、評価1のテストは実施しなかった。また、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0059】
<比較例6>
実施例4において、酢酸水溶液を用いず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例4と同様にしてアルミナ分散液を調製し、評価1、2のテストを行った。しかし、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0060】
<比較例7>
実施例6において、酢酸水溶液を添加せず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例6と同様にしてアルミナ分散液を調製した。しかし、調製後約15分で分散液が2層に分離し始めたことから、評価1のテストは実施しなかった。また、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0061】
<比較例8>
実施例7において、酢酸水溶液を添加せず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例7と同様にしてアルミナ分散液を調製した。しかし、調製後約15分で分散液が2層に分離し始めたことから、評価1のテストは実施しなかった。また、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0062】
<比較例9>
実施例8において、酢酸水溶液を用いず、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例8と同様にしてアルミナ分散液を調製し、評価1のテスト行った。また、凝集物が多く、評価2のテストは実施できなかった。
【0063】
表1



*1:アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる重合物のアルミナ微粒子に対する質量%
*2:アルミナ微粒子に対する質量%
評価1:アルミナ分散液の粘度(mPa・s)
評価2:アルミナ微粒子の平均粒径(nm)
【0064】
表1から明らかなように、酢酸添加量が同じ場合、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を用いて調製した本発明のアルミナ分散液は、上記の重合物を含まない分散液より低粘度であった。(実施例1と比較例1の比較、実施例2、3、6、7と比較例3の比較、実施例4、5、8と比較例2の比較より)。また、酢酸
添加量が低い領域(特に1.25質量%以下の領域)では、本発明のアルミナ分散液の方が平均粒径が小さく、アルミナ微粒子が効率よく解膠されていることがわかる(実施例1と比較例1の比較、実施例4、5、8と比較例2の比較より)。なお、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物のみで調製したアルミナ分散液(比較例4〜9)は凝集物が多く、同じ撹拌条件では解膠できなかった。
【0065】
<実施例9>
実施例1で調製したアルミナ分散液100部に、それぞれ3%−ホウ酸水溶液10.0部(ポリビニルアルコールに対して15%)を混合し、これにイオン交換水45部にポリビニルアルコール(PVA−224、(株)クラレ社製)5部を溶解したもの20.0部(アルミナ水和物に対して10%)を加えて塗工液を調製した。さらに、支持体としてポリエチレン被覆紙(厚さ:224μm、坪量:234g/m2、JIS−Z−8741による60度鏡面光沢度:64%、王子製紙(株)社製、特注品)を用い、その上に先程調製した塗工液を乾燥塗工量が35g/m2となるようワイヤーバーで塗工し、送風定温乾燥器((株)東洋製作所社製、FC−610)で110℃、20分間乾燥して被記録媒体を作製した。得られた被記録媒体について下記評価3,4を行った。結果を表2に示す。
【0066】
<評価3:印刷された被記録媒体から発生する酢酸濃度>
A4サイズ(210×297mm)の被記録媒体1枚を23℃、50%RHで12時間放置した後、該被記録媒体のインク受容層にインクジェットプリンタ(BJ F900、キヤノン(株)社製)を用いて、下記方法にて混色ブラックの全面印刷を行なった。この印刷物を、ガス検知管用のゴム管を付設した密閉可能な容器(内容積:4L)に、印刷終了後10秒以内に、印字面が容器の内壁に密接しないように挿入し密閉した。10分後、酢酸検知菅(No.81L、(株)ガステック社製)にて容器内の酢酸濃度を測定し、読み取った数値を温度(基準:20℃)および気圧(基準:1013hPa)で補正した。
【0067】
<酢酸濃度測定用印刷画像の作成方法>
グラフィック作成ツール(フォトショップVersion4.0.1J、アドビ社製)を用いて、以下の条件でTIFF形式の画像を作製した。
・画像サイズ:210×297mm
・画像モード:RGBカラー(8bits/チャンネル)
・塗りつぶし:ブラック(R=0、G=0、B=0)
<印刷方法>
プリンタのプロパティ画面において、以下の設定を変更した以外は標準設定のまま全面印刷を行なった。
基本設定:用紙の種類・・・プロフォトペーパー
印刷品質・・・きれい
色調整・・・マニュアル調整
マッチング方法・・・グラフィックス用
ページ設定:用紙サイズ・・・A4(210×297mm)
印刷の種類・・・ふちなし全面印刷
ハミダシ量・・・最大
【0068】
<評価4:高湿下における画像滲み(耐マイグレーション)についての評価方法>
インクジェット記録装置(BJ F870、キヤノン(株)製)を用いて、ブラック(Bk)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インクおよびイエロー(Y)インクの単色によるベタ印字(インク量100%)を行った被記録媒体を、30℃、80%RHの環境下に1週間暴露し、画像が滲む度合いを目視にて評価した。各色とも滲みが起きていないものを「〇」、いずれかの色で僅かに滲みが起きているものを「△」、いずれかの色で大きく滲みが起きているものを「×」とした。
【0069】
<実施例10〜12>
実施例9において、アルミナ分散液を、実施例2、実施例6および実施例7で調製したアルミナ分散液に変更した以外は、実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3,4のテストを行った。結果を表2に示す。
【0070】
<実施例13>
実施例4において、アリルアミン系重合物の量を1.044部(アルミナ水和物に対して1%)、酢酸水溶液の量を13.05部(アルミナ水和物に対して3%)とし、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例4と同様にしてアルミナ分散液(X)を作製し、評価1のテストを行った。また、実施例9において、アルミナ分散液をアルミナ分散液(X)に変更した以外は実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3,4のテストを行った。結果を表2に示す。
【0071】
<比較例10>
実施例9において、アルミナ分散液を比較例3で調整したものに変更した以外は、実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3、4のテストを行った。その結果を表2に示す。
【0072】
<比較例11>
実施例1において、アリルアミン系重合物を用いず、酢酸水溶液の量を21.75部(アルミナ水和物に対して5%)とし、全アルミナ分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にしてアルミナ分散液(Y)を調製し、評価1のテストを行った。また、実施例9において、アルミナ分散液をアルミナ分散液(Y)に変更した以外は実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3,4のテストを行った。結果を表2に示す。
【0073】
<比較例12>
比較例11と同様にして調製したアルミナ分散液(Y)100部に、3%−ホウ酸水溶液10.0部(ポリビニルアルコールに対して15%)、PAA-HCl-05(アリルアミン系重合物の40%水溶液、重量平均分子量:約5,000、日東紡績(株)社製)を0.653部(アルミナ水和物に対して1%)混合し、これにイオン交換水45部にポリビニルアルコール(PVA−224、(株)クラレ社製)5部を溶解したもの20.0部(アルミナ水和物に対して10%)を加えて塗工液(A)を調製した。次いで、実施例9において、塗工液を塗工液(A)に変更した以外は実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3,4のテストを行った。結果を表2に示す。
【0074】
<比較例13>
比較例12において、アリルアミン系重合物をPAA-CH3COOH-L(25.0%水溶液、重量平均分子量:約15,000、日東紡績(株)社製)1.044部(アルミナ水和物に対して1%)に変更した以外は、比較例12と同様にして塗工液(B)を調製した。次いで、実施例9において、塗工液を塗工液(B)に変更した以外は実施例9と同様にして被記録媒体を作製し、評価3,4のテストを行った。結果を表2に示す。
【0075】
表2

*1:アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる重合物のアルミナ微粒子に対する質量%
*2:アルミナ微粒子に対する質量%
評価1:アルミナ分散液の粘度(mPa・s)
評価3:酢酸濃度(ppm)
評価4:耐マイグレーション
【0076】
表2から明らかなように、アルミナ分散液の粘度が同じ場合、本発明のアルミナ分散液を用いて作製した被記録媒体は、そのインク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度が、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物のいずれの重合物も含まないアルミナ分散液を用いて形成したインク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度より低く、印刷時の酢酸臭が抑制されていた。(実施例9と比較例10の比較、および実施例10〜13と比較例11の比較より)また、アルミナ分散液の粘度が同じ場合、本発明のアルミナ分散液を用いて作製した被記録媒体は、高湿下における画像滲みにおいて、上記重合物を含まないアルミナ分散液を用いて作製した被記録媒体より優れた特性を示していた。(実施例9と比較例10の比較、および実施例10〜13と比較例11の比較より)さらに、本発明のアルミナ分散液を用いて作製した被記録媒体は、上記重合物を含まないアルミナ分散液を用いて作製された、インク受容層中の酢酸残留量が多く(印刷時の酢酸発生量が多い)且つインク受容層中に本発明の被記録媒体と等量の重合物を含有する被記録媒体より、高湿下における画像滲みが抑制されていた。(実施例10と比較例12、実施例13と比較例13の比較より)
【0077】
本発明によれば、微粒子分散液を調製する際に、アルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を用いることで、比較的緩やかな撹拌条件下で、粒子径および粘度が所望の範囲にコントロールされた微粒子分散液を提供することすることができた。また、該分散液を用いてインク受容層を形成することで、画像を記録する際に発生する刺激臭(または不快臭)と高温高湿下における画像滲みが抑制された被記録媒体を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒中に無機微粒子が分散された微粒子分散液において、該分散液がアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物から選ばれる少なくとも1種の重合物および酢酸を含むことを特徴とする微粒子分散液。
【請求項2】
前記重合物の重量平均分子量が1,000以上150,000未満の範囲である請求項1に記載の微粒子分散液。
【請求項3】
前記無機微粒子が、アルミナおよび/またはアルミナ水和物である請求項1または2に記載の微粒子分散液。
【請求項4】
前記重合物が、下記一般式(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子分散液。






(式中、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基を示す。R、R、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。またR、RおよびR、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは水素またはメチル基を表し、Rは枝分かれしていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、RおよびRは互いに独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は各々の炭素数が1〜8のアルキル基、アリールアルキル基または脂環アルキル基を表す。Aは−COO−または−CONH−を示す。X−は、無機系、有機系の陰イオンを示す。nは重合度を示す整数である。)
【請求項5】
支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を設けた被記録媒体において、該インク受容層が請求項1に記載の微粒子分散液を用いて形成されていることを特徴とする被記録媒体。
【請求項6】
前記インク受容層に画像を形成した場合に発生する酢酸濃度をC(ppm)、該インク受容層を形成する際に用いた微粒子分散液(A)の粘度をη(mPa・s)とし、更にアルキルアミン・エピハロヒドリン共重合物、ジシアンジアミド系、アリルアミン系、もしくはアクリル系重合物のいずれの重合物も含まずに酢酸を用いて製造した微粒子分散液(C)の粘度をη(mPa・s)、該微粒子分散液(C)を用いて形成したインク受容層に、前記と同様の画像を形成した場合に発生する酢酸濃度C(ppm)としたとき、
下記式(1)〜式(3)の関係を同時に満たす請求項5に記載の被記録媒体。
式(1) 1<η≦300
式(2) η=η
式(3) C<C




















【公開番号】特開2007−16208(P2007−16208A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122987(P2006−122987)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】