説明

微粒子検出装置

【課題】顕微鏡において得られる画像信号を鮮明なものとし、微細管内で高効率に分離される所望微粒子の全数検出を安定的に実施することができる微粒子検出装置を提供すること。
【解決手段】微細管4の両端面4a、4bを溶液21a、21bに浸し、微粒子20を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより、微粒子20を検出する微粒子検出装置において、微細管4の一方の端面から微細管4内を軸方向に撮影する顕微鏡カメラ3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細管電気泳動を用いて、検体試料中に存在する微粒子を検出する微粒子検出装置に関し、特に、各種微粒子(本明細書において、「微生物」を含む。)の全数を迅速かつ高感度に分離検出することができる微粒子検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細管電気泳動により物質を分離検出する技術が開発されており、各種化学物質やそのイオン、さらにはDNAやタンパクに代表される生体関連物質等、多岐に亘る物質の迅速かつ高感度な分析技術を提供している。
この微細管電気泳動に用いられている検出器は、目的に応じて紫外可視分光器や蛍光検出器が採用されており、微細管の検出を必要とする位置に配置し使用される。
電気泳動用の微細管の内径サイズとしては、泳動液の通液の都合から通常50μm以上のものが用いられる場合が多く、また微細管電気泳動に特徴的な高分離効率を確保するために100μm以下が望ましいことが知られている。
【0003】
この微細管電気泳動では、上述の微細管サイズの範囲以下に含まれる微粒子の分離・解析にも利用することが可能であり、実際に紫外可視吸収や散乱ならびに蛍光を、フォトマルやフォトダイオードに代表される検出器により微粒子の泳動挙動の観察がなされている(非特許文献1参照)。
また、この場合の検出手段としてビデオ顕微鏡に代表される対象拡大観察装置が、微粒子の色情報を含む分光学的特性だけでなく形状や数を同時に確認できる画像情報が得られるといった点でその検出の有効な手段となっている(非特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来の対象拡大観察による微粒子検出装置では、可視部に受光性能を有する検出器としてのカメラは、図5に示すように、微細管に対して略直角方向に向けられている。
したがって、当該カメラを搭載した蛍光顕微鏡により微粒子を検出する場合、微細管の奥行きに対するすべての領域に渡って焦点を合わせることはできず、どうしてもピントがぼけた画像しか得られないという問題があった(特許文献1、非特許文献2参照)。
また、本来、微細管の直角方向から光を照射して検出するため、光路長を稼ぐことができないゆえ高感度検出できない微細管電気泳動において、高感度検出する目的で微細管の軸方向に向かって光を照射する吸光検出ならびに蛍光検出型の微細管電気泳動方法が提案されているが、微細管の内径全域をカメラで捕らえる技術ではない(特許文献2参照)。
【0005】
一方、サイトメトリー解析は、粒子1個1個をカウントしながら画像を捕らえるハイスループットな微粒子解析技術として、微生物細胞などの微粒子解析においても発展してきた(非特許文献3及び非特許文献4参照)。
サイトメトリー解析を行う装置であるフローサイトメーターは、蛍光強度を測定してさまざまな解析を行う装置が一般的で、画像観察を伴わないものが主流であったが、イメージングフローサイトメーターと呼ばれる装置が開示されている(特許文献3参照)。
このイメージングフローサイトメーターは、微粒子の色情報だけでなく形やサイズを観察できる点で優れているが、シースフローと呼ばれるガイド流体によりカメラのフォーカス範囲に細胞などの粒子が移動するように高度な調整をはかる必要があるため、蛍光検出のための光学系を含め大掛かりで高価な分析装置となる。
【特許文献1】特開平5−52810号公報
【特許文献2】特開平4−363655号公報
【特許文献3】特開平5−119035号公報
【非特許文献1】鳥村政基、「キャピラリー電気泳動法による微生物の分離検出法」、月刊フードケミカル、2005年2月、p.45−48
【非特許文献2】Video Microscopy, The Fundamentals, Shinya Inoue, Kenneth Spring, Second Edition Plenum Press. New York, (1997)
【非特許文献3】Alvarez-Barrientos et al., 2000 Applications of flow cytometry to clinical microbiology. Clinical Microbiology Reviews. 13: 167-195
【非特許文献4】Davey et al., 1996 Flow cytometry and cell sorting of heterogeneous microbial populations: the importance of single-cell analysis. Microbiological Reviews. 60: 641-696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の微細管内微粒子の検出装置が有する問題点に鑑み、顕微鏡において得られる画像信号を鮮明なものとし、微細管内で高効率に分離される所望微粒子の全数検出を安定的に実施することができる微粒子検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本第1発明の微粒子検出装置は、微細管の両端面を溶液に浸し、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより、微粒子を検出する微粒子検出装置において、微細管の一方の端面から微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡を設けたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、泳動液中の微粒子を予め蛍光染色し、微細管の検出窓より微粒子に励起光を照射し、微粒子から発生する蛍光を検出するようにすることができる。
【0009】
また、本第2発明の微粒子検出装置は、微細管の両端面を溶液に浸し、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより、微粒子を検出する微粒子検出装置において、微細管の一部を略直角に折曲し、該折曲部から微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡を設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、泳動液中の微粒子を予め蛍光染色し、微細管の折曲部で微粒子に励起光を照射し、微粒子から発生する蛍光を検出するようにすることができる。
【0011】
また、顕微鏡からの検出信号を画像処理する画像処理装置を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本第1、第2発明の微粒子検出装置によれば、微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡を設けることから、微細管中を高効率に泳動分離される微粒子の画像取得において、焦点深度(被写界深度)が浅い高倍率の対物レンズを搭載した顕微鏡カメラであっても、微細管内のすべての微粒子に対して十分焦点を合わせることが可能となり、すべての微粒子を見逃すことなく全数検出することができる効果を有する。
【0013】
この場合において、泳動液中の微粒子を予め蛍光染色し、微細管の微粒子に励起光を照射して、微粒子から発生する蛍光を検出することにより、微粒子の種類に応じて選択的に結合する蛍光染色を利用して、微粒子の検出や識別を容易にすることができる。
【0014】
また、顕微鏡からの検出信号を画像処理する画像処理装置を設けることにより、検出した微粒子の数や形状、色、大きさなどを精度良く検出できると同時に、それらのデータを微粒子検出制御装置内に保存することも可能となる。
また、電気泳動時間に対して記録・解析する微粒子検出信号を画像の輝度、画像の面積又は微粒子の数とすることにより、その微粒子の検出結果の詳細データが明確となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の微粒子検出装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
本発明の微粒子検出装置は、泳動液を用いた微細管電気泳動法を利用することにより、試料中に種々含まれる複数種類の微粒子を高い分離能をもってかつ再現性良く分離する。
また、この微細管電気泳動法において、検出手段として顕微鏡カメラを利用することにより、目的の微粒子を高感度に全数検出できること、また、これにより、さらに一層高い分離能でもって精度良く所望の微粒子を検出することができる。
さらに、試料中に混在する微粒子が単に検出できるだけでなく、絶対定量的に検出することができる。
【0016】
なお、本発明でいう分析とは、試料中に含まれる所望微粒子の濃縮、分離、検出(定性的分析)、同定、定量、スクリーニング、生死判別を包含するものである。また、本発明でいう微粒子とは、哺乳動物細胞、血液細胞、バクテリア細胞、細胞オルガネラ及びウイルスを含むいずれかの生物微粒子及び非生物微粒子をいう。
具体的には、例えば、下記の一部又は全部を構成要件として備えた微粒子検出装置である。
(1)微粒子を含む試料を、泳動液を用いて微細管電気泳動する。
(2)微粒子を含む試料を微粒子に選択的に結合するように蛍光染色し、これを微細管電気泳動に供して、蛍光染色された微粒子を蛍光検出する。
(3)微細管電気泳動を用いて微粒子を検出する装置であって、泳動液を含む水槽、泳動液片端に注入された微粒子を濃縮分離する微細管、又は濃縮された微粒子を画像検出するための検出手段を備えている。
(4)検出手段として、微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡カメラを備えており、蛍光染色した微粒子の場合には励起光照射し、蛍光染色された微粒子から発光された蛍光を光学系を用いて蛍光画像検出し、その画像信号から微粒子を検出する。
(5)特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタを、蛍光検出器の前方に設け、各フィルタを通過した微粒子の蛍光を、蛍光検出器の検出素子に結像させるようにしている。
(6)また、光学系で蛍光検出した画像信号を記録する画像信号記録装置、画像信号から微粒子を検出した微粒子検出信号を記録する微粒子検出制御装置を有する。
(7)さらには、微粒子検出信号は、画像の色と輝度、規定した色と規定した輝度以上の信号を有する画像の面積、画像を空間的、時間的に特徴付けて検出した微粒子の数等とする。
(8)微細管内拡大観察用の対物レンズ(最小1μm程度の微粒子を拡大して粒子の形状が観察できる程度の倍率が必要なため、40倍以上)。
(9)対物レンズで観察した画像を受光結像するカメラ(カメラはビジコンカメラなどの走査理光電検出器でも、CCDなどの二次元検出器でもよい)。
(10)微粒子検出器からの検出信号を画像処理する画像処理装置。
【実施例1】
【0017】
図1に、本発明の微粒子検出装置の基本的構成を一実施例として示す。
この微粒子検出装置1は、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより微粒子を検出するもので、微細管4の両端面4a、4bを溶液21a、21bに浸し、微細管4内を泳動する微粒子20を、微細管4の一方の端面4bにおける溶液21b内において、微細管4の軸方向から顕微鏡カメラ3により検出するようにしている。
また、この微粒子検出装置1は、泳動液中の微粒子20を予め蛍光染色し、微細管4の端面4bの近傍に設けた検出窓5から、微粒子20に対して励起光7を照射し、微粒子20より発する蛍光を検出するようにしている。
顕微鏡カメラ3からの検出信号は、画像処理装置14により画像処理され、微粒子検出制御装置6に記録される。
なお、顕微鏡カメラの撮影を溶液21b内で行うことにより、光の屈折を低減することができる。
【0018】
なお、図1において、2はダイオード等の励起光発光器、2aは励起光集光部、10は対物レンズ、11は接眼レンズ、12はCCDカメラからなる蛍光検出器、13はカメラの観察画像領域、22は高圧電源、22a、22bは電極、30は検体溶液を示している。
【0019】
一般に、顕微分光カメラにおいて、観察光の波長をλとした場合、分解能δと、ピントの合う範囲すなわち焦点深度(被写界深度)dの間には、対物レンズの開口数をNAとすると、
式1:δ=λ/(2・NA)
式2:d=λ/(2・NA・NA)
したがって
式3:δ=(λ/2)・d
の関係がある。
すなわち、分解能を高く(δを小さくする)する程、焦点深度(被写界深度)dが浅く(dが小さく)なる。
例えば、550μmの波長の場合で計算すると、例えば4倍の対物レンズの場合は焦点深度(被写界深度)dは27.5μm(分解能は2.75μm)、10倍の対物レンズの場合は焦点深度(被写界深度)dは2.69μm(分解能は0.86μm)、20倍の対物レンズの場合は焦点深度(被写界深度)dは1.72μm(分解能は0.69μm)、また、40倍の対物レンズの場合は、焦点深度(被写界深度)dは0.65μm(分解能は0.42μm)と極端に浅くなる。
したがって、検出しようとする微粒子の大きさ、微細管の内径の大きさ、励起光の集光特性に合わせて最適倍率の蛍光顕微鏡を使用することができる。
【0020】
検出対象物である微粒子、例えば、微生物は、予め所望の微生物とのみ選択的に結合するように蛍光染色しておき、例えば、キャピラリー等の微細管4の内部に、その端面に設置した溶液21aより注入する。
そして、電極22a、22bにより微細管4の両端に高圧電源を印加する。高電圧の供給において、その電圧の大きさ、印加時間等は、例えば、パソコン等の微粒子検出制御装置6より制御する。
【0021】
励起光発光器2から発した励起光は、励起フィルタ、スリット、シリンドリカルレンズなどの組み合わせで構成される励起光集光部2aで、対物レンズの焦点深度(被写界深度)dに近づけるよう十分集光してCCDカメラのピントの合う位置に、励起光7として選択的に照射され、蛍光染色された微粒子20がその位置を通過する時に照射される。
【0022】
蛍光染色された微粒子20は蛍光を発光し、対物レンズ10より顕微鏡本体内に入射し、図示しない蛍光フィルタなどを透過し、その蛍光は蛍光検出器(CCDカメラ)12に結像する。
このとき、微粒子の種類に応じて結合する蛍光染色の特性に基づき、発する蛍光は種々の波長を有する。
例えば、LIVE/DEAD試薬(Invitrogen社製)で蛍光染色した微生物に対して、青色の励起光を微生物に照射した場合、生菌の場合緑色の蛍光を発し、死菌の場合赤色の蛍光を発する。
【0023】
これらの蛍光は、CCDカメラ等で構成される蛍光検出器12の直前に設置した図示しないフィルタを通過した後、蛍光検出器12に結像し、その画像信号は微粒子検出制御装置6に送られ、検出処理される。
この検出画像信号は、微粒子検出制御装置6の画像信号記録装置に記録される。
【0024】
図2は、CCDカメラ等で構成される蛍光検出器12で観察される微粒子20と微細管4の画像である。
この画像中には、溶液30中に存在する蛍光微粒子が焦点深度(被写界深度)d内に存在しピントが合った場合の微粒子20aと、焦点深度(被写界深度)dの範囲外のピントが合わない微粒子20bとが映っている。
本実施例の微粒子検出装置では、溶液21a側から導入された微粒子20は、電気泳動により経時的に、まず焦点深度(被写界深度)d外のピントの合わない微粒子として現れ始め、次にピントが合った画像に変化し、再び焦点深度(被写界深度)d範囲外のピントの合わない微粒子画像へと変化した後、画面から消失する。
【0025】
また、焦点深度(被写界深度)dの範囲外のピントが合わない微粒子画像の発現を極力抑えることは、正確な解析にとって重要であり、その際に励起光集光部2aは必要不可欠である。
ここで、目的微粒子だけを選択的に観察する場合には、蛍光を蛍光検出器(CCDカメラ)12に結像させる時、蛍光検出器(CCDカメラ)12の直前に設けたフィルタ(図示省略)を所望の波長の蛍光のみを通過させるような特性に構成すれば、所望の特性の蛍光のみを選択的に取得できる。取得した画像の処理内容に関しては、詳細を後述する。
【0026】
なお、一般に画像情報は大量のデータとなるため、画像処理装置14は例えばDVDレコーダなど単に画像情報を保存するのみとし、パソコンなどで構成する微粒子検出制御装置6内に送られてきた画像情報から微粒子の数や形状、大きさなどを精度良く演算し、その演算結果のデータのみを微粒子検出制御装置6内に保存するようにしてもよい。
【実施例2】
【0027】
図3に、本発明の微粒子検出装置の第2実施例を示す。
この微粒子検出装置1は、微細管4の両端面4a、4bを溶液21a、21bに浸し、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより微粒子を検出するものであり、微細管4の一部を略直角に折曲し、該折曲部8から微細管4内を軸方向に撮影する顕微鏡カメラ3を設けている。
この場合、微細管4の折曲部8の直角部分を挟む位置近傍を、検出窓8a、8bとしている。
また、この微粒子検出装置は、泳動液中の微粒子20を予め蛍光染色し、微細管4の折曲部8で微粒子20に励起光7を照射し、微粒子20から発生する蛍光を検出するようにしている。
【0028】
溶液21a、21bは、図1と同様に微細管4の両端面4a、4bに浸しているが、顕微鏡カメラ3の観察画像領域13は別の溶液23に浸す構成とし、合わせて検出窓8aの軸方向と平行に、すなわち検出窓8bとは略直角になる方向から観察画像が対物レンズ10に入光するように構成する。
この場合、溶液21bは、溶液23とは分離しているので、電気泳動の工程に合わせて自由に変更することのできる効果がある。
なお、溶液23は、光の屈折を低減するために用いている。
【0029】
また、励起光発光器2から発した励起光は、励起フィルタ、スリット、シリンドリカルレンズなどの組み合わせで構成される励起光集光部2aで、対物レンズの焦点深度(被写界深度)dに近づけるよう十分集光して、CCDカメラのピントの合う位置に、励起光7として選択的に照射され、蛍光染色された微粒子20がその位置を通過する時に照射される。
蛍光染色された微粒子20は蛍光を発光し、対物レンズ10より顕微鏡本体内に入射し、図示しない蛍光フィルタなどを透過し、その蛍光は蛍光検出器(CCDカメラ)12に結像する。
なお、その他の作用効果は、図1と同様であるのでその説明を省略する。
【0030】
図4は、画像処理装置14により画像処理した結果を示す図である。主なキーには、40開始キー、41中止キー、44終了キー等がある。
開始キー40をクリックして微粒子の検出動作を開始すると、状態表示45は検出中となり、経過時間は46に表示し、コメント欄47には異常の有無(ここでは正常)をそれぞれ表示する。
検出途中で検出動作を中止する場合は中止キー41を、検出動作を終了する場合は終了キー44をクリックする。
CCDカメラの出力画像は画像領域50に表示される。
ここで、画像51は微細管の管壁を、その間の画像52は泳動溶液部の画像を示しており、蛍光色素で標識された微粒子を検出すると、例えば、53のように表示される。
【0031】
これらの検出画像の輝度、形状、面積、空間的位置などを表示するとともに、検出した検出微粒子53に固有の番号を付す。この実施例では1個の微粒子を検出した場合の例を示す。
複数個検出した場合は、各検出した微粒子に対して、固有の番号を付すとよい。
なお、微粒子53aはピントの合う前のピンぼけ画像を示しており、ピントが合った時点で微粒子としてカウントすると同時に固有の番号を付す。その後は再びピントの合わない画像となり、この両面から消失することとなる。
【0032】
ピントの合う条件は、各微粒子画像のエッジ条件の確認により、また、新しい微粒子の出現はピントが合った時の画像の位置、大きさとその色と輝度の確認、すなわち画像処理技術におけるトラッキング技術の適用により判定できる。
また、泳動溶液部の画像52において、検出する微粒子の画像色・輝度やその面積等は、励起光7の強さ、対象とする微粒子の種類により変化する。
そこで、画像処理により検出する画像輝度値のレベル調整は、輝度値キー60の▽をクリックすることにより変更する。また、検出する画像面積の調整は、面積キー61の▽をクリックすることにより変更する。このような画像処理による微粒子検出技術は既存の技術であり容易に実現可能である。
【0033】
さらに、本実施例では検出した輝度の合計値62、検出した微粒子の面積の総和63、検出した微粒子数の瞬時値64、及び検出動作開始後に検出した微粒子の総和65をそれぞれ表示している。
これにより、画像処理が正常に動作していることの確認ができる。
また、得られたデータは、微粒子検出制御装置6に内蔵するメモリ等に保存する。
【0034】
かくして、木実施例の微粒子検出装置によれば、微細管内を電気泳動するすべての微粒子に対して励起光を照射できるとともに、蛍光顕微鏡により微粒子の蛍光発生により得られる画像に対して十分焦点を合わせて検出できることから、安定的に所望微粒子の検出を行うことができる。
【0035】
なお、図5は、従来の微粒子検出装置の要部を示したものである。本実施例と同じ機能を有するものには同一記号を付した。
本実施例と相違する点は、顕微鏡カメラ3を微細管の検出窓9に対して略垂直としている点にある。
通常、微細管の内径は20〜100μm程度となるので、蛍光顕微鏡による焦点深度(被写界深度)dを20〜100μmなどと深くすることは原理的に難しい。したがって、微細管内を微粒子が通過しても全く観察されないか、あるいはピントの合わないぼけた画像しか蛍光顕微鏡で処理できない。
【0036】
例えば、50μmの内径を有する微細管の直角奥行き方向から40倍の対物レンズを用いて観察できる微粒子が、従来は、その奥行き方向のごく一部(具体的にはピントの合う数μm程度といった一部分(内径50μmのわずか10%))しか観察できなかった状況に対し、本実施例では、微細管電気泳動で泳動してくるすべての微粒子にピントを合わせて観察することができる。
【0037】
以上、本発明の微粒子検出装置に関して、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の微粒子検出装置は、各種微粒子を迅速かつ高感度に分離検出するという特性を有していることから、例えば、環境、食品及び医療分野等において、検体試料中の微粒子量を精度良く又は一斉分析する用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の微粒子検出装置の第1実施例を示す概略構成図である。
【図2】同微粒子検出装置における微粒子の検出画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の微粒子検出装置の第2実施例を示す概略構成図である。
【図4】同微粒子検出装置の微粒子検出制御装置において画像処理結果を表示した画面を示す図である。
【図5】従来の微粒子検出装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1 微粒子検出装置本体
2 励起光発光器
2a 励起光集光部
3 顕微鏡カメラ(顕微鏡)
4 微細管
4a 微細管端面
4b 微細管端面
5 検出窓
6 微粒子検出制御装置
7 励起光
8 折曲部
8a 検出窓
8b 検出窓
9 検出窓
10 対物レンズ
11 接眼レンズ
12 蛍光検出器(CCDカメラ)
13 カメラの観察画像領域
14 画像処理装置
20 微粒子
20a 焦点の合った微粒子
20b 焦点の合う前の微粒子
21a、21b 溶液
22 高圧電源
22a、22b 電極
23 溶液
30 検体溶液
40 開始キー
41 中止キー
44 終了キー
45 状態表示
46 経過時間
47 コメント欄
50 画像領域
51 微細管の管壁
52 泳動溶液部の画像
53 微粒子画像
53a 焦点の合う前の微粒子画像
60 輝度値調整キー
61 面積調整キー
62 輝度合計値
63 微粒子の面積総和
64 微粒子数の瞬時値
65 微粒子数の総和
d 焦点深度(被写界深度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細管の両端面を溶液に浸し、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより、微粒子を検出する微粒子検出装置において、微細管の一方の端面から微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡を設けたことを特徴とする微粒子検出装置。
【請求項2】
泳動液中の微粒子を予め蛍光染色し、微細管の検出窓より微粒子に励起光を照射し、微粒子から発生する蛍光を検出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の微粒子検出装置。
【請求項3】
微細管の両端面を溶液に浸し、微粒子を含む試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより、微粒子を検出する微粒子検出装置において、微細管の一部を略直角に折曲し、該折曲部から微細管内を軸方向に撮影する顕微鏡を設けたことを特徴とする微粒子検出装置。
【請求項4】
泳動液中の微粒子を予め蛍光染色し、微細管の折曲部で微粒子に励起光を照射し、微粒子から発生する蛍光を検出するようにしたことを特徴とする請求項3記載の微粒子検出装置。
【請求項5】
顕微鏡からの検出信号を画像処理する画像処理装置を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の微粒子検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−116422(P2008−116422A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302499(P2006−302499)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】