説明

微細な液−液製剤の製造方法及び微細な液−液製剤を製造するための装置

微細な液−液製剤の製造方法及び前記製剤を製造するための装置であって、前記装置が、
a)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在し、かつ場合によりさらに付加的に機械的なエネルギー導入が行われるか、又は
b)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板とからなり、その際、前記オリフィスと前記そらせ板との間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在し、及び/又は機械的なエネルギー導入が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な(feinteiliger)液−液製剤の製造方法並びに前記製剤を製造するための装置に関する。
【0002】
本発明の範囲内の液−液製剤は、全ての2相系及び多相系、例えば分散液及びエマルジョンである。公知の水中油型(O/W)並びに油中水型(W/O)エマルジョンに加えて、水中水型(W/W)エマルジョンも考慮の対象になる。多相系、いわゆる複合エマルジョン(multiple Emulsionen)は、例えば油中水中油型(O/W/O)エマルジョン並びに水中油中水型(W/O/W)エマルジョンである。
【0003】
文献においては、液体の混合及び分散のための多数の系が知られている。原則的に、ローター−ステーター−機械、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー及び膜乳化法の間では相違する。これらの常用の乳化法は、液滴の大きさを小さくすることに基づいている。
【0004】
独国特許出願公開(DE-A1)第195 42 499号明細書からは、非経口医薬製剤を製造するための方法及び装置が知られている。この医薬製剤は、均質化ノズルを経てポンプ輸送される分散によって得られる。
【0005】
欧州特許(EP-B1)第1 008 380号明細書には、特殊な混合装置を用いて液体を混合又は分散する方法が記載されている。この装置は、1つ又はそれ以上の入口ノズル、渦室及び1つ又はそれ以上の出口ノズルからなり、その際にノズルは軸方向に互いに配置されており、かつ(複数の)入口ノズルは、(複数の)出口ノズルよりも小さい口径を有する。
【0006】
できるだけ微細な液−液製剤を製造するために、乳化技術の分野では、さらに発展され、かつ新規な方法への連続的需要が存在する。そのように製造されたエマルジョンは、例えば製薬工業、食品工業及び化粧品工業において、しかしまたその他の工業分野、例えば製紙工業、繊維工業及び皮革工業並びに建築材料工業において重要である。
【0007】
故に、微細な液−液製剤を製造する選択的な方法を提供するという課題が本発明の基礎となっていた。
【0008】
前記課題は、混合装置を用いる微細な液−液製剤の製造方法によって解決され、前記混合装置は、
a)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス(Blende)及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在し、かつ場合によりさらに付加的に機械的なエネルギー導入が行われるか、又は
b)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板(Prallplatte)とからなり、その際、前記オリフィスと前記そらせ板との間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在し、及び/又は機械的なエネルギー導入が行われる。
【0009】
本発明の対象は、同様に、微細な液−液製剤を製造するための装置であって、前記装置は、
a)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在し、かつ場合によりさらに付加的に機械的なエネルギー導入が行われるか、又は
b)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板とからなり、その際、前記オリフィスと前記そらせ板との間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在し、及び/又は機械的なエネルギー導入が行われる。
【0010】
本発明による方法によれば、任意の液−液製剤が製造されることができる。既に記載したように、本発明の範囲内の液−液製剤は、全ての2相系及び多相系、例えば分散液及びエマルジョンである。公知の水中油型(O/W)並びに油中水型(W/O)エマルジョンに加えて、水中水型(W/W)エマルジョンも考慮の対象になる。多相系、いわゆる複合エマルジョンは、例えば油中水中油型(O/W/O)エマルジョン並びに水中油中水型(W/O/W)エマルジョンである。もちろん、前記の液−液製剤は固体成分及びガス状成分を含有していてもよい。
【0011】
以下に、本発明による方法は、エマルジョンの製造に関して例示的に記載されるが、しかしながら、それにより、本発明はエマルジョンに限定されるものではない。
【0012】
粒度という概念は、以下に、連続相中で乳化された液滴の大きさであると理解されるべきである。
【0013】
本発明による方法に従い、前記のような混合装置が使用されることにより、粗製エマルジョンから微細なエマルジョンが製造される。本方法は、好ましくは撹拌釜中で製造される粗製エマルジョンから出発する。エマルジョンの成分が最初の大まかな混合を受けているエマルジョンを、粗製エマルジョンと呼ぶ。
【0014】
それに反して、本発明の範囲内の微細エマルジョン又は微細なエマルジョンは、粒度分布が20nm〜100μmの範囲内、好ましくは50nm〜50μmの範囲内及び特に好ましくは100nm〜20μmの範囲内であるエマルジョンであると理解される。粒子は、レーザー光回折(例えばMalvern Mastersizer 2000又はBeckmann-Coulter LS 13320)及び/又は動的光散乱、例えば光子相関分光法を用いて測定されることができる。
【0015】
微細なエマルジョンを製造するための混合装置は、少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記ノズルは軸方向に互いに配置されている。前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在する。場合により、機械的なエネルギー導入がさらに付加的に行われる。
【0016】
本発明による方法により使用可能なオリフィスは、少なくとも1つの開口部、すなわち少なくとも1つのノズルを有する。その際に、双方のオリフィスは、その都度任意の数の開口部、しかしながら好ましくはその都度5個以下の開口部、特に好ましくはその都度3個以下の開口部、極めて特に好ましくはその都度2個以下の開口部及び殊に好ましくはその都度1個以下の開口部を有していてよい。双方のオリフィスは、異なる数又は同じ数の開口部を有していてよく、好ましくは双方のオリフィスは同じ数の開口部を有する。一般的に、前記オリフィスは、少なくとも各1個の開口部を有する多孔板である。
【0017】
本発明によるこの方法の他の実施態様において、第二のオリフィスはふるいにより置き換えられている、すなわち、第二のオリフィスは多数の開口部もしくはノズルを有する。使用可能なふるいは、広範囲の孔径が全体に広がっていてよく、通例、孔径は0.1〜250μm、好ましくは0.2〜200μm、特に好ましくは0.3〜150μm及び特に0.5〜100μmである。孔径が60μmであるふるいを用いて、さらなる試験条件に応じて、200nmまでの微細なエマルジョンの粒度が発生されることができる。
【0018】
開口部もしくはノズルは、各々考えられる幾何学的な形を有していてよく、これらは、例えば円形、楕円形、場合により丸められていてもよい任意の多くの角を有する角張った形、又は星形であってもよい。好ましくは、開口部は丸い形を有する。
【0019】
開口部は、通例、0.05mm〜1cm、好ましくは0.08mm〜0.8mm、特に好ましくは0.1〜0.5mm及び特に0.2〜0.4mmの直径を有する。
【0020】
双方のオリフィスは、好ましくは、開口部もしくはノズルが軸方向に互いに配置されているように構成されている。軸方向の配置は、ノズル開口部のジオメトリーにより発生される流れ方向が双方のオリフィスで同一であると理解されるべきである。入口ノズル及び出口ノズルの開口部方向は、このためには一線上にある必要はなく、前記の説明から明らかになるように、平行にずれていてもよい。好ましくは、前記オリフィスは平行に配列されている。
【0021】
しかしながら、他のジオメトリー、特に、平行ではないオリフィス又は入口ノズルと出口ノズルとの異なる開口部方向が可能である。
【0022】
前記オリフィスの厚さは、任意であってよい。好ましくは、前記オリフィスは、0.1〜100mm、好ましくは0.5〜30mm及び特に好ましくは1〜10mmの範囲内の厚さを有する。その際、前記オリフィスの厚さ(l)は、開口部の直径(d)及び厚さ(l)からの商が1:1、好ましくは1:1.5及び特に好ましくは1:2の範囲内であるように選択される。
【0023】
双方のオリフィスの間のスペースは、任意の長さであってよく、通例、前記スペースの長さは1〜500mm、好ましくは10〜300mm及び特に好ましくは20〜100mmである。
【0024】
前記オリフィスの間のスペース中に、本発明によれば、双方のオリフィスの間の区間を完全にか又は部分的に占めていてよいスタティックミキサーが存在する。好ましくは、前記スタティックミキサーは双方のオリフィスの間のスペースの全長に亘って延在する。スタティックミキサーは当業者に知られている。これらは、例えば、バルブミキサーであってよいか、又は穴を有するか、波形付きの薄板(geriffelten Lamellen)からなるか又は相互にかみ合ったブリッジ(ineinandergreifenden Stegen)からなるスタティックミキサーであってよい。さらに、らせん形又はN形のスタティックミキサー又は加熱可能又は冷却可能な混合エレメントを備えたそのようなスタティックミキサーであってよい。
【0025】
エマルジョンの性質、例えば安定性及びレオロジー挙動は、エマルジョン中の粒度分布の影響を特に受ける。例えば2相エマルジョンの安定性は、狭くなる粒度分布と共に上昇する。エマルジョンの製造の際の特別な注意は、それに応じて、粒度分布及びその結果として平均粒度直径に向けられる。
【0026】
双方のオリフィスの間のスペース中へのスタティックミキサーの取り付けにより、得られる微粒状エマルジョンの粒子の安定性はかなり改善される。
【0027】
スタティックミキサーに加えて、双方のオリフィスの間のスペース中で、さらに機械的なエネルギー導入が行われることができる。前記エネルギーは、例えば、機械的振動、超音波又は回転エネルギーの形で導入されることができる。それにより、粒子がスペース中で凝集しなくする乱流が発生される。
【0028】
この第一の変法に選択的に、前記混合装置は、少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板とからなっていてよく、その際、前記オリフィスと前記そらせ板との間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在する。スタティックミキサーに選択的に又はスタティックミキサーに加えて、前記スペース中に機械的なエネルギー導入が行われることができる。
【0029】
入口ノズルを備えたオリフィス、スタティックミキサーを備えたスペース及び機械的なエネルギー導入については、上記のことが当てはまる。
【0030】
この変法において、第二のオリフィスはそらせ板により置き換えられる。前記そらせ板は、通例、そらせ板が取り付けられている位置での管直径よりも、0.5〜20%、好ましくは1〜10%小さい直径を有する。
【0031】
一般的に、前記そらせ板は、各々幾何学的な形を有していてよく、好ましくは円板の形であるので、前方上面図で環状スリットが見えうる。例えばスリット又はチャネルの形も可能である。
【0032】
この変法により得られる微細なエマルジョンは、通例、約150nmの平均粒度直径を有する。
【0033】
前記そらせ板は、前記の変法の場合の第二のオリフィスに類似して、第一のオリフィスとは異なる距離で取り付けられていてよい。それにより、前記オリフィスと前記そらせ板との間のスペースは任意の長さであり、通例、前記スペースの長さは1〜500mm、好ましくは10〜300mm及び特に好ましくは20〜100mmである。
【0034】
調節可能なさらなる試験条件に応じて、本発明による方法により、選択された変法から独立して、20nm〜100μm、好ましくは50nm〜50μm及び特に好ましくは100nm〜20μmの粒度分布が得ることができる。粒子は、レーザー光回折(例えばMalvern Mastersizer 2000又はBeckmann-Coulter LS 13320)及び/又は動的光散乱、例えば光子相関分光法を用いて測定されることができる。
【0035】
本発明による方法は、技術水準から知られたそれらの方法に対して幾つかの利点を有する、それというのも、卓越した安定性により示される特に微細なエマルジョンが得られるからである。
【0036】
公知方法によれば、特に微細な分散液を得るために、エマルジョンは均質化ユニットを何度も通過しなければならない。本発明による方法によれば、目下、粗製エマルジョンが均質化ユニットを一度通過するだけで十分である。このようにして、特に微細であり、かつ所望の粒度を有するエマルジョンが得られる。
【0037】
本発明による方法により微細なエマルジョンへの粗製エマルジョンの乳化が行われる温度は、通例−50〜350℃、好ましくは0〜300℃、特に好ましくは20〜200℃及び極めて特に好ましくは50〜150℃である。その際、前記装置中で使用される全ての均質化ユニットは温度調節可能でありうる。
【0038】
均質化もしくは乳化は、通例、大気圧を上回る圧力、すなわち>1barで実施される。しかしながら、その場合に、圧力は、10 000barの値を上回らないので、好ましくは均質化圧は>1bar〜10 000bar、好ましくは5〜2 000bar及び特に好ましくは10〜1500barに調節される。
【0039】
本発明による方法により得られる微細な液−液製剤は、20℃の温度でBrookfield粘度計を用いて測定された、0.01mPas〜100 000mPas、好ましくは0.1mPas〜10 000mPasの粘度を有する。液−液製剤は、製剤の全質量を基準として、0.1〜95質量%の分散相割合を有する。
【0040】
当該方法は、一般的に、幅広く多様な工業的に関連性のあるエマルジョンに適している。典型的には、これらのエマルジョンは、2相エマルジョン、例えば油、有機及び無機の溶融物が水溶液中で分散された水中油型エマルジョンである。油中水型エマルジョンが同様に可能である。既に前記のように、各々の種類のエマルジョンは、幅広く、とりわけ製薬工業、食品工業及び化粧品工業において、しかしまたその他の工業分野、例えば製紙工業、繊維工業及び皮革工業、建築材料工業、植物保護工業又は写真工業において使用される。故に、この点で、エマルジョンの限定は行われるべきではない。
【0041】
2つの相に加えて、前記エマルジョンはさらに異なる成分、特に界面を安定化させる化合物、例えば乳化剤、界面活性剤及び/又は保護コロイドを含有していてもよい。これらは当業者に知られている。
【0042】
別の成分、特に界面活性化合物は、液−液製剤、特にエマルジョンに、任意の時点に及びついで任意の場所に添加されることができる。特に、そのような成分は前記スペース中へも少なくとも部分的に計量供給されることができる。
【0043】
本発明による方法の場合に、入口ノズルを備えたオリフィスの前及び出口ノズルを備えたオリフィスの後に、別の混合エレメント、例えばフィルター、膜等が存在していてよい。本発明による混合装置は繰り返して互いに並べられていてもよいので、本発明による複数のスペースがもたらされる。
【0044】
本発明の対象は、同様に、微細な液−液製剤を製造するための装置である。
【0045】
その場合に、装置がそれらの実際の取扱い性に基づいて、固定されていないことは特に有利である。すなわち、成分の乳化は、使用のその場所で直接行われることもできる(いわゆるオンサイト乳化)。このことは、長距離に亘って高い液体割合(例えば水)を有するエマルジョンが輸送されなければならない場合に、特に有利である。この場合に、乳化すべき成分は、例えば固体として輸送されることもでき、かつオンサイトで直接はじめて乳化されることができる。このことは、以下に例の場合に関してより詳細に説明される。
【0046】
製紙工業において、多数の添加剤はエマルジョン又は分散液の形で使用される。歩留まり向上剤及び固定剤に加えて、反応性サイズ剤も使用される。市販の水性の反応性サイズ剤分散液は、相対的に少ない固体割合(約25質量%)を有するに過ぎないので、そのために大量の水を最終消費者に輸送することが強いられている。
【0047】
そのような反応性サイズ剤は、例えば、C14−〜C22−アルキルジケテン(AKD、アルケニルジケテン)、C12−〜C30−アルキルコハク酸無水物(ASA)、C12−〜C30−アルケニルコハク酸無水物又は挙げられた化合物の混合物の群から選択されている。脂肪アルキルジケテンの例は、テトラデシルジケテン、オレイルジケテン、パルミチルジケテン、ステアリルジケテン及びベヘニルジケテンである。そのうえ、異なるアルキル基を有するジケテン、例えばステアリルパルミチルジケテン、ベヘニルステアリルジケテン、ベヘニルオレイルジケテン又はパルミチルベヘニルジケテンが適している。好ましくは、ステアリルジケテン、パルミチルジケテン、ベヘニルジケテン及びこれらのジケテンの混合物、並びにステアリルパルミチルジケテン、ベヘニルステアリルジケテン及びパルミチルベヘニルジケテンが使用される。
【0048】
紙用の紙料サイズ剤としての、長鎖のアルキル基又はアルケニル基で置換されている無水コハク酸の使用は同様に知られている(欧州特許(EP-A)第0 609 879号明細書、欧州特許(EP-A)第0 593 075号明細書、米国特許(US)第3,102,064号明細書)。アルケニルコハク酸無水物は、アルケニル基中に、少なくとも6個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくはC14−〜C24−α−オレフィン基を有する。置換無水コハク酸の例は、デセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物及びn−ヘキサデセニルコハク酸無水物である。紙用のサイズ剤として考慮に値する置換無水コハク酸は、好ましくは保護コロイドとしてのカチオンデンプンと共に水中に乳化される。
【0049】
本発明による方法によれば、目下、好ましくはAKDをベースとする、反応性サイズ剤のアニオン性に調節された水性分散液が製造されることができる。アニオン分散剤として、例えば、
・ ナフタレンスルホン酸及びホルムアルデヒド、
・ フェノール、フェノールスルホン酸及びホルムアルデヒド、
・ ナフタレンスルホン酸、ホルムアルデヒド及び尿素、
・ フェノール、フェノールスルホン酸、ホルムアルデヒド及び尿素
からなる縮合生成物が考慮に値する。アニオン分散剤は、遊離酸、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩の形で存在していてよい。アンモニウム塩は、アンモニア並びに第一級、第二級及び第三級のアミンの形で誘導されることができ、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのアンモニウム塩が適している。前記の縮合生成物は知られており、かつ商業的に入手可能である。これらの縮合生成物は挙げられた成分の縮合により製造され、その際に、遊離酸の代わりに、相応するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩が使用されることもできる。縮合の際の触媒として、例えば酸、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸及びリン酸が適している。ナフタレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩は、ホルムアルデヒドと、好ましくは1:0.1〜1:2のモル比で及びたいてい1:0.5〜1:1のモル比で縮合される。フェノール、フェノールスルホン酸及びホルムアルデヒドの縮合についてのモル比は、同様に前記の範囲内であり、その際、ナフタレンスルホン酸の代わりのフェノール及びフェノールスルホン酸とホルムアルデヒドとの任意の混合物が使用される。フェノールスルホン酸の代わりに、フェノールスルホン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩も使用されることができる。前記の出発物質の縮合は、場合によりさらに付加的に尿素の存在で実施されることができる。
【0050】
挙げられた縮合生成物は通例、800〜100 000g/mol、好ましくは1 000〜30 000g/mol及び特に4 000〜25 000g/molの範囲内のモル質量を有する。好ましくは、アニオン分散剤として、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで又はアンモニアでの縮合生成物の中和により得られる塩が使用される。
【0051】
炭素原子10〜20個の炭素鎖及びEO基3〜30個を有するエトキシル化脂肪酸がさらに適している。
【0052】
適した別のアニオン分散剤は、リグニンスルホン酸及びその塩、例えばリグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム又はリグニンスルホン酸カルシウム塩である。
【0053】
本発明による方法によれば、目下、アニオン分散剤の溶液は装入され、AKDをベースとする反応性サイズ剤は溶融され、粗製エマルジョンへ乳化され、かつ本発明による装置中でオンサイトで微細なエマルジョンへ乳化される。
【0054】
AKDエマルジョンの製造の際の本発明による方法の特別な利点は、粗製エマルジョンが、微細なエマルジョンへと加工されるために、均質化ユニットを一度だけ通過する必要があることである。このことは、特にAKDのような反応性物質のエマルジョンの場合に重要である、それというのも、この場合にAKDは、サイズ剤としてのその使用前に既に反応し得ないからである。
【0055】
そのような反応性サイズ剤は、製紙工業において紙、板紙及び厚紙の製造に使用される。
【0056】
実施例
例1
液−液製剤として、水中大豆油型エマルジョン(分散相割合30質量%)を使用し、これを、全エマルジョンを基準として、乳化剤としてのBASF AktiengesellschaftのLutensol(登録商標) TO 10 3質量%と混合した。
【0057】
このエマルジョンを、本発明による方法の多様な変法により均質化した。比較例として、前記エマルジョンを欧州特許(EP-B1)第1 008 380号明細書によっても均質化した。
【0058】
図1は、圧力損失に依存した本発明による方法により製造された異なる液−液製剤の粒度分布のザウター(Sauter)直径を示す。ザウター直径は、考察される液滴集団と同じ体積対表面積比を有する平均直径である。
【0059】
それに応じて、本発明による方法により、比較可能な技術水準(欧州特許(EP-B1)第1 008 380号明細書)よりも、粒度分布のより小さいザウター直径が得られる。スタティックミキサーを有する0.4オリフィス及び引き続き0.4オリフィスの使用は単に、欧州特許(EP-B1)第1 008 380号明細書に記載されたのと類似の結果を達成するにすぎない。しかしながら、欧州特許(EP-B1)第1 008 380号明細書は、口径が入口ノズルの口径よりも大きい出口ノズルの使用を教示する。
【0060】
例2
Uvinul(登録商標) 3008−モノマー−ミニエマルジョンの製造
Uvinul 3008 9.3kgを、メタクリル酸メチル28.5kg及びGlissopal(登録商標) 1000 1.5kgからなる混合物中に室温で15分かけて溶解させ、ついで撹拌しながら15%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液1.2kg(Steinapol NLS)及び完全脱塩水56.58kgを添加する。この撹拌されたマクロエマルジョンを、乳化過程の間に撹拌した。混合物をついで170barで、その後のそらせ板を有する3つの0.5mmノズル(全て平らな金属板上)の配置により乳化させ、2パスで乳化させた。1パス後の生じるミニエマルジョンは、202nmの平均の液滴の大きさを有しており(Malvern社のHigh Performance Particle Sizerを用いた測定のメディアン値)、かつ第二パス後に、171nmの平均の液滴の大きさを有していた。ミニエマルジョンは数日間、貯蔵安定であった。
【0061】
例3
AKD−モノマー−ミニエマルジョンの製造
C16/C18-AKD 26.2g(Basoplast 88konz.、BASF AG)を、スチレン52.3g、n−ブチルアクリラート26.2g及びt−ブチルアクリラート26.2g中に溶解させ、15%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液6.9g及び完全脱塩水516.3gと混合する。このプレエマルジョンを800barの圧力で、その後のそらせ板を有する0.4mmノズルの配置により2回乳化する。生じるミニエマルジョンは、第一パス後に133nmの平均の液滴の大きさ及び第二パス後に104nmの平均の液滴の大きさを有していた(Coulter 230LS、Beckmann社を用いた測定のメディアン値)。
【0062】
例4
自動化された乳化設備の説明
AKDの乳化のために、機械的な撹拌機及び電気加熱されるジャケットを備えた溶融釜(1)(300L)、溶融配量ポンプ(2)、完全脱塩水用のポンプ(3)及び加熱(4)、助剤、例えば乳化剤、保護コロイド、溶解されたポリマー又はポリマー分散液用の配量ポンプ(5)、偏心スクリューポンプ(6)、後接続された穴あきオリフィスを備えた高圧ポンプ(7)、ポンプ循環路(8)、冷却用のプレート式熱交換器(9)及び分散液貯蔵タンク(10)からなる自動化された設備を使用した。
【0063】
例4.1:負に帯電したAKD分散液
パレタイズした(Pastelliertes)AKD 200kgを溶融容器中に満たし、80℃で撹拌しながら溶融させた。完全脱塩(VE)水を60℃に加熱し、Tamol NN2901の計量供給を、助剤ポンプ(5)を介して行った。ポンプの配量速度を、12/1/87のAKD/Tamol NN2901/水比が達成されるように選択した。乳化を、270barで110L/hの処理量で行い、ポンプ循環路から64L/hを取り出した。分散液をプレート式熱交換器を介して25℃に冷却した。分散液は0.7μmの平均粒度分布を有していた(動的光散乱、Coulter LS 130)。pH 8での電気泳動移動度は−8.0(μm/s)/(V/cm)であり、AKD粒子のゼータ電位は−102.4mVであった(pH 8)。
【0064】
例4.2:正に帯電したAKD分散液
パレタイズしたAKD 200kgを融成物容器中に満たし、80℃で撹拌しながら溶融させた。完全脱塩(VE)水を60℃に加熱した。18%ポリビニルアミン溶液(Catiofast PR8212、加水分解度70%、K値45)を、ギ酸(水中85%)でpH=3にし、助剤ポンプ(5)を介して計量供給した。ポンプの配量速度を、12/22/66のAKD/Catiofast PR8121/水比が達成されるように選択した。乳化を260barで100L/hの処理量で行い、ポンプ循環路から50L/hを取り出した。分散液をプレート式熱交換器を介して25℃に冷却した。平均粒度分布は0.9μmであった(動的光散乱、Coulter LS 130)。pH 8での電気泳動移動度は+3.0(μm/s)/(V/cm)であり、AKD粒子のゼータ電位は38.4mVであった(pH 8)。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】圧力損失に依存した本発明による方法により製造された異なる液−液製剤の粒度分布のザウター直径を示す図。
【図2】本発明によるAKDの乳化のための自動化された設備を示す略図。
【符号の説明】
【0066】
1 溶融釜、 2 溶融配量ポンプ、 3 完全脱塩水用のポンプ、 4 加熱、 5 配量ポンプ、 6 偏心スクリューポンプ、 7 高圧ポンプ、 8 ポンプ循環路、 9 プレート式熱交換器、 10 分散液貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在し、かつ場合によりさらに付加的に機械的なエネルギー導入が行われるか、又は
b)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板とからなり、その際、前記オリフィスと前記そらせ板の間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在し、及び/又は機械的なエネルギー導入が行われる
混合装置を用いて、微細な液−液製剤を製造する方法。
【請求項2】
液−液製剤が2相又は多相のエマルジョンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
紙、板紙及び厚紙の製造用の水性のアニオン性の反応性サイズ剤分散液であり、かつ反応性サイズ剤が、C14−〜C22−アルキルジケテン、C12−〜C30−アルキルコハク酸無水物及びC12−〜C30−アルケニルコハク酸無水物から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
液−液製剤の粒度分布が20nm〜100μmの範囲内である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
微細な液−液製剤が0.01mPas〜100 000mPasの範囲内の粘度を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
a)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィス及び少なくとも1つの出口ノズルを備えたオリフィスからなり、その際、前記オリフィスの間のスペース中にスタティックミキサーが存在し、かつ場合によりさらに付加的に機械的なエネルギー導入が行われるか、又は
b)少なくとも1つの入口ノズルを備えたオリフィスと、そらせ板とからなり、その際、前記オリフィスと前記そらせ板の間のスペース中に場合によりスタティックミキサーが存在し、及び/又は機械的なエネルギー導入が行われる、
微細な液−液製剤を製造するための装置。
【請求項8】
製薬工業、食品工業及び化粧品工業における並びに製紙工業、繊維工業及び皮革工業、建築材料工業並びに植物保護工業又は写真工業における、請求項1から6までのいずれか1項に従い製造された液−液製剤の使用。
【請求項9】
紙、板紙及び厚紙を製造するための製紙工業における反応性サイズ剤としての、請求項4に従い製造された液−液製剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−520417(P2008−520417A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541770(P2007−541770)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012233
【国際公開番号】WO2006/053712
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】