説明

微細化促進用の気液混合ノズル装置

【課題】気液混合ノズルから噴射された霧化体を微細化させることができる微細化促進用の気液混合ノズル装置を提供する。
【解決手段】微細化促進用の気液混合ノズル装置10は、ノズル先端部から噴出する第1霧化体31を受け入れる微細化室20を備え、前記微細化室20で第1霧化体31を微細化し、当該微細化室20から第2霧化体32を流通する構成である。微細化室の側壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合(または2流体)ノズル装置に関し、より詳細には、従来の気液混合ノズル装置から噴射される霧化体を微細化することができる微細化促進用の液混合ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器(例えば、吸引機)、半導体(成膜技術)、スプレードライヤー(セラミック新素材)等の分野で液滴径がサブミクロン(1〜10μm)またはナノ(1μm未満)粒子のニーズが普及しつつある。現状の霧化技術は、気液混合式(2流体式)、超音波式、超高圧式(100〜300MPa)、蒸発式等があるが、いずれも装置コストが高く、小型化が困難である。さらに、6μm以下のサブミクロンサイズ、ナノサイズの液滴平均粒子径(MMD:マスミーディアン径)が得られる装置は少ない。
【0003】
また、微粒子ミストを生成するための噴霧ノズル装置が知られている(特許文献1)。この噴霧ノズル装置は、第1ノズル部と第2ノズル部を有し、第1ノズル部からの噴射液と第2ノズル部からの噴射液とを衝突させて、微粒子ミストを形成することができる。しかしながら、2流体ノズル部を2つ備えるため、コスト高であり、小型化にも適していない。また、2流体のそれぞれを高圧の空気圧(3kg/cm)と水道水(50cc/min)とした場合に、この噴霧ノズル装置で形成された微粒子の平均粒径は8.8μm程度であり(特許文献1、段落番号0024)、6μm以下のサブミクロンサイズの噴霧粒子を得ることができない。
【0004】
また、他の2流体ノズルとして特許文献2が知られている。特許文献2の2流体ノズルは、中心軸線に沿って液体流路20Bを設け、外周に環状の外側気体流路21Bを設け、液体流路の途中に液体分岐流路23を介設し、液体分岐流路の再合流位置に旋回手段28を配置して液体を一次微粒化させ、かつ、液体分岐流路で囲まれた中央部位に中央気体流入部25を形成し、中央気体流入部に外側気体流路より気体を導入して、旋回して環状膜となった液体の中央に気体を衝突混合で導入して、二次微粒化させながら第1混合を行わせ、さらに、再合流されて気液混合流路30となる流路周面に、外側気体流路を連通する気体流入孔15dを設けて、気液混合流路の混合流体に対して外周面より気体を衝突混合で流入して三次微粒化しながら第2混合を行わせて、噴射口16gより気液混合ミストとして噴射させている。しかしながら、ノズル内部の構造が複雑であり、コスト高である。また、噴霧流量を230〜700L/時間とした条件下において気水比100とすると、得られた噴霧液の平均粒子径が50μm程度であり、サブミクロンサイズの噴霧粒子を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−126587号公報(請求項1、段落番号0024、図1)
【特許文献2】特開2002−159889号公報(請求項1、段落番号0038、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、気液混合ノズルから噴射された霧化体を微細化させることができる微細化促進用の気液混合ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の微細化促進用の気液混合ノズル装置は、
ノズル先端部から噴出する第1霧化体を受け入れる微細化室を備え、
前記微細化室で第1霧化体を微細化し、当該微細化室から第2霧化体を流出する構成である。
【0008】
この構成によれば、気液混合ノズル装置のノズル先端部から噴出する第1霧化体を微細化室に流入させ、この微細化室で第1霧化体を微細化し、この微細化されて得られた第2霧化体を微細化室から流出する構成である。よって、気液混合ノズルによって形成された第1霧化体を、微細化室で好適に微細化(または微粒化)し、第2霧化体を形成することができる。
【0009】
例えば、市販の多種の気液混合ノズルにおいて、空気圧力0.02〜0.5MPa、噴霧流量1〜1000mL/minの条件化で、気液混合ノズルから噴霧された第1霧化体の平均粒子径が10〜200μmの広範囲であった。そして、気液混合ノズルから噴出された第1霧化体中の粒子径の大きい霧(例えば、湿った霧)は、気液混合ノズルからの噴出方向に対し大きな角度で広がって噴出する傾向にある(図1、「飛沫」参照)。粒子径の小さい霧(例えば、乾いた霧、煙霧)は、気液混合ノズルからの噴出方向軸上に噴出する傾向にある(図1、霧化体参照)。例えば、図1の気液混合ノズルのスプレー半角が15°の場合に飛沫の噴出半角は約55°であって、飛沫粒子の平均粒子径(MMD)が50〜100μmであり、スプレー半角15°部分の粒子の平均粒子径(MMD)が10〜20μmであった。
【0010】
そして、微細化室に流入した粒子径の大きい霧(例えば、湿った霧)は、微細化室壁面(側面、天面等)に衝突(または接触)し、微細化室壁面に付着し、大きな液滴に成長すると思われる。また、微細化室に流入した粒子径の小さい霧(例えば、乾いた霧)は、微細化室流入の際に微細化すると思われる。また、微細化室に流入した粒子径のより小さい霧(例えば、乾いた霧、煙霧)は、微細化室壁面に接触または衝突しても付着することなく空気中に浮遊する傾向にある。したがって、微細化室の機能によって、第1霧化体中の大きい粒子径の霧(例えば、湿った霧)は、液滴に成長し、また粒子径の小さい霧(例えば、乾いた霧、その中でも粒子径の大きい霧)は、微細化されるため、第1霧化体よりも平均粒子径が小さい第2霧化体を好適に生成することができる。
【0011】
気液混合ノズルとしては、公知の気液混合ノズル(2流体ノズル)を用いることができ、これに微細化室を備えることで、微細化促進用の気液混合ノズル装置を好適に構成できるため、低コスト、かつ小型化が可能である。気液混合ノズルは、例えば、金属製、プラスチック製、ゴム製、それらが混在したもの等が挙げられる。気液混合ノズル装置に供給される「気体」は、特に制限されず、例えば、空気、清浄空気、高酸素濃度空気、不活性ガス等の気体が挙げられる。また、気液混合ノズル装置に供給される「液体」は、特に制限されないが、水、イオン化水、化粧水等の化粧薬液、医薬液、殺菌液、除菌液等の薬液、塗料、コーティング剤、溶剤、樹脂等が挙げられる。
【0012】
また、気液混合ノズルで形成され噴出される第1霧化体の平均粒子径(MMD)は大きく(例えば、6μmより大きく)、粒度分布において粒子径が大きくなる方向に分布が広くなる傾向であるが、微細化室で微細化された第2霧化体の平均粒子径(MMD)は小さく(例えば、6μm以下)、粒度分布の分布幅も小さく、粒子径が略そろった霧となる。
【0013】
微細化室は、例えば、金属製、プラスチック製、ゴム製、それらが混在したもの等が挙げられる。霧化体の液体に応じて、微細化室内壁の濡れ性(固体面と液体との付着性)を考慮した材料設計をすることが好ましい。また、微細化室内面にコーティング剤をコーティングし、微細化を促進させることができる。第1霧化体中の大きい粒子径の霧(例えば、湿った霧、乾いた霧中の大きい粒子径の霧)を微細化室の壁面に付着させて液滴に成長させることで、第1霧化体全体の微細化を行って第2霧化体を形成することができる。また、飛沫として噴出するような大きい粒子径の霧を微細化室壁面に接触または衝突するように微細化室を構成して、大きい霧を液滴に成長させることが好ましい。
【0014】
微細化室の形状は、特に制限されず、例えば、筒状、錐状(円錐、円錐台、多角錘、錐台も含む概念であって以下同じ。)、ラッパ状、多角柱、球状、多面体、これらの組み合わせ形状等が挙げられ、第1霧化体の噴出方向に平行な筒状、円錐台状、ラッパ状等が好ましい。また、微細化室の室内部空間サイズは、特に制限されず、例えば、気液混合ノズルとの連結構造、第2霧化体を形成するための仕様に応じて設定可能である。微細化室のサイズは、小型の気液混合ノズルと同程度に設計することができ、よって気液混合ノズル装置を小型にできる。微細化室と気液混合ノズルとの連結構造は、特に制限されず、例えば、微細化室の一方開口部をノズル先端部に直接固定する構造、微細化室とノズル先端部との間に連結部を介在させる構造等が挙げられる。連結部は、例えばフレキシブルチューブ、管等が挙げられる。
【0015】
また、上記の本発明の実施形態として、微細化室の側壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部を形成する構成がある。この構成によれば、微細化室の側壁面に形成された流通部から第2霧化体がその外に流通する。流通部は、1以上の貫通孔またはスリット状である。壁面に対し、垂直に貫通孔またはスリットを形成すれば、壁面に対し略垂直に第2霧化体が流出する。また、壁面に対し、所定の角度で貫通孔またはスリットを形成すれば、壁面に対し、その所定の角度方向に第2霧化体が流出する。これにより流出方向を規制することができる。
【0016】
また、上記の本発明の実施形態として、ノズル先端から噴出する第1霧化体の噴出方向軸上に微細化室が配置される構成がある。この構成によれば、第1霧化体の噴出方向軸上に微細化室が配置されているため、第1霧化体を微細化室にスムーズに送りこめる。
【0017】
また、上記の本発明の実施形態として、微細化室の外側に、流通部から流出する第2霧化体の流出方向を規制する開口部を有する放出壁をさらに備える構成がある。この構成によれば、流通部から流通した第2霧化体の放出方向を好適に規制できる。放出壁は、少なくとも流通部周辺に設置されていればよく、放出壁を、流通部周辺に固定された管で構成することができる。また、放出壁を、微細化室の外周を取り囲み、流通部から放出される第2霧化体の放出方向を、放出壁の開口部方向に規制するように構成できる(図2、3参照)。
【0018】
また、上記の本発明の他の実施形態として、
前記微細化室内に第1霧化体の噴出方向軸に、当該霧化体と接触する接触部を設け、微細化室の天井壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部を形成する構成がある(図4参照)。この構成によれば、第1霧化体中の大きい粒子径の霧は、接触部に接触して液滴に成長し、小さい粒子径の霧は、接触部に接触しても霧のまま空気中に浮遊しながら、流通部から放出する(図4参照)。
【0019】
また、上記の本発明の実施形態として、微細化室に液体の排出部を設ける構成がある。この構成によれば、微細化室で液滴に成長した液体を微細化室外部に好適に排出することができ、ノズル先端部に液体(排出液)が溜まって第1霧化体の噴出を邪魔することがない。また、ノズル先端部を凸状に形成することで、液体の逆流を抑制するように構成することが好ましい。
【0020】
また、上記の実施形態において、排出部から排出された液体を溜める液溜部と、液溜部の液体を、気液混合ノズル装置に供給する吸込部とを備える構成が好ましい。この構成によれば、微細化室で液滴に成長した液体を排出部から排出し、排出された液体を液溜部に貯留することができ、液体による微細化作用の低減を好適に抑制できる。排出部と貯留部は直接連結されてもよく配管等の連結管で連結してもよい。液滴が自重で落下して(または壁面を流れて)排出部から排出され、そのまま液溜部に流れる構成が好ましい。また、液溜部の液体を、気液混合ノズル装置に供給する吸込部を備えているので、液溜部内の液体(排出液)を吸込部によって吸引し、気液混合ノズルの液体送給管に供給して、液体を再利用することができる。吸引は、例えば、供給液体の送給(水流による負圧作用)による吸引作用が挙げられる。
【0021】
また、上記の本発明の他の実施形態において、微細化室に気体を流入する気体流入部を形成する構成がある。この構成によれば、微細化室内部の気圧バランスを調節できるため、ノズルから噴射される第1霧化体の噴射速度や噴射量を微調整できて微細化作用を調整し、微細化室から流出される第2霧化体の流出速度を調整できるため好ましい。微細化室に形成される気体流入部は、1以上の孔、またはスリットで構成できる。気体流入部は、気液混合ノズル先端部の高さ位置と略同じ位置に形成されるのが好ましい(図8(b)参照)。また、微細化室の外側を覆う外壁が存在する場合、この外壁にも気体流入部を形成することが好ましい。微細化室に形成された第1気体流入部または外壁に形成された第2気体流入部の開口サイズを調整することで、微細化室に流入される気体量を調節できる。ここでの「気体」は、特に制限されず、例えば、空気、清浄空気、高酸素濃度空気、不活性ガス等の気体が挙げられる。
【0022】
また、上記の本発明の気液混合ノズル装置は、気液混合ノズル装置に供給される気体(空気)圧力を0.01MPa以上0.1MPa以下の条件で、全噴射液(水)量を0.3ml/min以上1.5mL/min以下、有効霧化率を8%以上17%以下に構成できる。また、装置外部に放出された霧(第2霧化体)の平均粒子径(MMD)を、1.0μm以上6.0μm以下に、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下に、さらに好ましくは1.0μm以上4.0μm以下に構成できる。すなわち、気体圧力を小さくできるため、本発明の気液混合ノズル装置の気体送給に必要な駆動源(例えば、エアポンプ、電源、圧縮空気ボンベ、手動の空気送給機構)を小型化できる。
【0023】
有効霧化率は、(全噴射液(水)量−液体(水)付着量)/全噴射液(水)量×100(%)で算出される。液体(水)付着量は、排出部から排出された液(水)量を測定して得られる。全噴射液(水)量は、所定時間に対する噴射液量を予め測定することで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】気液混合ノズルから噴出された霧化体の一例の写真を示す図である。
【図2】実施形態1の微細化促進用の気液混合ノズル装置の例を示す模式図である。
【図3】実施形態2の微細化促進用の気液混合ノズル装置の例を示す模式図である。
【図4】実施形態3の微細化促進用の気液混合ノズル装置の例を示す模式図である。
【図5】微細化室の例を示す模式図である。
【図6】微細化室の例を示す模式図である。
【図7】実施例の粒度分布を示す図である。
【図8】実施形態4の微細化促進用の気液混合ノズル装置の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
以下に、実施形態1の微細化促進用の気液混合ノズル装置について図2を用いて説明する。図2の気液混合ノズル装置10は、ノズル先端部から噴出する第1霧化体31を受け入れる微細化室20を備える。気液混合ノズル装置10は、公知の構造であり図2はその模式図である(以下の実施形態においても同様である。)。液体は、液体送給管11を通って送給され、気体は、気体送給管12を通って送給される。図2(a)の微細化室20は、噴出方向軸上のノズル先端部に連結固定され、第1霧化体31を受け入れる。微細化室20の噴出方向前方部分に、4つの孔の流通部21が形成され、微細化室20で微細化された第2霧化体32がその微細化室20外部に流出する。微細化室20のノズル先端部に近い位置に、第1霧化体中の霧が液滴に成長して形成された液体を排出するための排出部22が形成されている。微細化室20は、図2において筒形状であるが、排出部壁面を他の壁面よりも窪んだ壁面として液体の排出を容易にするように構成してもよい。また、気液混合ノズル先端部を凸形状にして液体がノズル内部に逆流するのを防ぐように構成することもできる(以下の実施形態でも同様である)。
【0026】
また、図2(b)のように、微細化室20の外周に、半径方向に拡張した開口部24aを有する円錐台24を連結固定し、放出壁24bおよび開口部24aによって、流通部21から流出する第2霧化体32の流出方向を規制する。なお、微細化室20と円錐台24を一体構造に構成することもできる。
【0027】
また、図2(c)のように、第2霧化体32の放出方向を切り換え、第2霧化体32の粒子を滞留させて霧化体の単位時間あたりの放出量を均一に提供できる、フード部40を配置することができる。フード部40の先端に放出部41が形成されている。また、排出部22から伸びる排管26をフード部40の外部に導かれる構成とする。この配管26は、液体の送給部(不図示)または液体送給管11に導くようにして、液体を再利用することができる。排出部22は、孔であるが、その数、サイズは、排出液の量に応じて設計できる。
【0028】
また、図2(d)は、図2(c)の気液混合ノズル装置を、第2霧化体32の放出方向が上向きになるようにした図である。また、図2(e)は、図2(c)の気液混合ノズル装置を、第2霧化体32の放出方向が下向きになるようにした図である。この場合、液体の排出部22は、微細化室20の底面に形成され、この排出部22から伸びる排管26がフード部40の外部に導される構成である。
【0029】
また、ノズル先端部に微細化室20やフード部40を着脱可能な構造(例えば、ネジ式、勘合式等)で取り付けることで、微細化室20、フード部40、ノズル先端部等の清掃、メンテナンスを容易に行なえ、微細化室20やフード部40を使い捨てにすることもできる(以下の実施形態においても同様である)。円推台24においても同様に着脱可能に構成できる。
【0030】
また、微細化室20の排出部22と同様に、円錐台24またはフード部40の壁面に霧が付着する場合には、付着した液体を排出するための排出部(不図示)が円錐台24、フード部40に形成される構成もある。
【0031】
また、図2(f)に示すように、微細化室20およびフード部40に外気を流入するための吸気孔71(気体流入部に相当する)を形成し、微細化室内の気圧を調節して、微細化作用を微調整し、形成される第2霧化体の放出速度を調節することができる。
【0032】
(微細化室)
図5(a)に示すように、微細化室20の流出部21は4つの孔(2つは不図示)として構成できる。孔は4つに限定されず、1つでもよく、2つ以上でもよい。また、孔のサイズは、すべて同じでなくてもよく、大小の混在した複数の孔で流通部21を構成してもよい。また、図5(b)に示すように、流通部21はスリットとして構成できる。スリットは、2重、3重に構成されていてもよく、周上に分断した複数のスリットとして構成してもよい。また、流通部21を孔とスリットの両方で構成することもできる。
【0033】
図6(a)の微細化室20は、筒状である。図6(b)、(c)の微細化室は、円錐台である。図6(d)の微細化室20は、先端半球の筒状である。なお、微細化室の形状は、図6に制限されない。
【0034】
実施形態1によれば、微細化室20で、第1霧化体31を好適に微細化することができる。また、円錐台24またはフード部40(後段微細化室の機能に相当する)で第2段階目の微細化を行うこともできる。
【0035】
(実施例)
図2(b)の気液混合ノズル装置を用い、空気圧の変化に応じた有効霧化率の結果を表1に示す。ノズル先端部のオリフィスの直径が0.45mmである。液体として、タンクに貯めた水道水を用いた。エアポンプを用いて空気圧(MPa)を変えたときの有効霧化率(%)を算出した。表1において、実施例3から5、実施例8から10、実施例11から13は、同じ空気圧値における実施結果を示し、それらの平均の有効霧化率を算出している。
【0036】
【表1】

【0037】
気液混合ノズル装置に供給される空気圧を0.01MPa以上0.09MPa以下の条件とした場合、水全噴射量が0.3ml/min以上1.5mL/min以下であり、有効霧化率が8%以上17%以下であった。
【0038】
また、表1の実施例8の場合の第2霧化体(32)の粒度分布(粒子径ヒストグラム(個数分布および質量分布))を図7に示す。第2霧化体(32)の噴出位置(円錐台24の開口部24a)から距離7mmの位置でレーザー測定した結果である。レーザー測定の方法として、位相差ドップラー式レーザー粒子解析(PDPA)方法を用いた。測定結果は、第2霧化体(32)の測定粒子数941個において、算術平均径が2.21μm(最大6.0μm)、ザウター平均径が3.68μm、平均粒子径(MMD)が4.18μmであった。また、微細化室(20)を取り付けていない状態の第1霧化体(31)の平均粒子径(MMD)は6.96μであった。
【0039】
また、比較例として、市販の超音波式霧化装置について測定した結果、算術平均径が2.48μm(最大8.0μm)、平均粒子径(MMD)が5.37μmであった。すなわち、超音波霧化装置よりも平均粒子径の小さい霧化体を形成できたことを確認できた。
【0040】
また、表1や実施例8の粒度分布からわかるように、平均粒子径(MMD)6.96μの第1霧化体(31)を平均粒子径(MMD)4.18μmの第2霧化体(32)に好適に微細化できたことを確認できた。また、供給する空気圧(またはエアポンプ性能)を小さくしても有効霧化率を8%以上にできることを確認できた。
【0041】
(実施形態2)
以下に、実施形態2の微細化促進用の気液混合ノズル装置について図3を用いて説明する。図3の気液混合ノズル装置10は、ノズル先端部から噴出する第1霧化体31を受け入れる微細化室20を備える。微細化室20のノズル先端部に近い位置に、第1霧化体31中の霧が液滴に成長して形成された液体を排出するための排出部22が形成されている。また、図3(a)で示すように、微細化室20の外周に、半径方向に拡張した開口部24aを有する円錐台24が、実施形態1と異なる方向に連結固定されている。実施形態1と同様に、放出壁24bおよび開口部24aによって、流通部21から流出する第2霧化体32の流出方向を規制する。また、図3(b)は、開口部24aが、尻すぼみになる形状の一例を示す図である。
【0042】
また、図3(c)に示すように、実施形態1と同様の機能構成であるフード部40が配置される。また、図3(d)は、円錐台24がない状態でフード部40が配置される例を示す。フード部40の壁面40aが放出壁の機能を実現し、開口部41から第2霧化体32が放出される。実施形態1と同様に、液体の排出部22から伸びる排管26がフード部40の外部に導かれる構成である。
【0043】
また、微細化室20およびフード部40に外気を流入するための吸気孔(気体流入部に相当する)を形成し、微細化室内の気圧を調節して、微細化作用を微調整し、形成される第2霧化体の放出速度を調節することができる。
【0044】
実施形態2によれば、微細化室20で、第1霧化体31を好適に微細化することができる。また、円錐台24またはフード部40(後段微細化室の機能に相当する)で第2段階目の微細化を行うこともできる。
【0045】
(実施形態3)
以下に、実施形態3の微細化促進用の気液混合ノズル装置について図4を用いて説明する。図4の気液混合ノズル装置10は、ノズル先端部から噴出する第1霧化体31を受け入れる微細化室20を備える。図4(a)に示すように、この微細化室20内の第1霧化体31の噴出方向軸に、第1霧化体31と接触する接触部28が設けられ、微細化室20の天井壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部21が形成されている。
【0046】
また、図4(b)に示すように、実施形態1と同様の機能構成であるフード部40が配置される。また、図4(c)は、図4(b)の気液混合ノズル装置を、第2霧化体32の放出方向が上向きになるようにした図である。また、図4(d)は、図4(b)の気液混合ノズル装置を、第2霧化体32の放出方向が下向きになるようにした図である。実施形態1と同様に、液体の排出部22は、微細化室20の底面に形成され、この排出部22から伸びる排管26がフード部40の外部に導かれる構成である。
【0047】
また、図4(e)に示すように、微細化室20およびフード部40に外気を流入するための吸気孔71(気体流入部に相当する)を形成し、微細化室内の気圧を調節して、微細化作用を微調整し、形成される第2霧化体の放出速度を調節することができる。
【0048】
(実施形態4)
以下に、実施形態4の微細化促進用の気液混合ノズル装置について図8を用いて説明する。図8(a)、(b)の気液混合ノズル装置10は、ノズル先端部から噴出する第1霧化体31を受け入れる微細化室20を備える。この微細化室20は、第1霧化体31の噴出方向軸上に設置される。流通部21は、上記の実施形態と同様である。気液混合ノズルの外観形状を断面6角(6角に制限されず、断面多角形状でもよい)にし、微細化室20の一方開口部直径を6角の対角長に合わせて嵌め込むように構成できる。この場合、6角の各辺上と微細化室20内壁面との間に隙間ができる。この隙間を排出部22として機能させる。排出部22から排出された液滴(液体)は、液溜部50と気液混合ノズルとの間の隙間50aから液溜部50内部に流入される。液溜部50を筒状とし、微細化室20と同様に気液混合ノズルに嵌め込むように構成して隙間50aを形成できる。また、別実施形態として、ノズルの外壁面に溝またはノズル内部に配管を形成して液滴(液体)を液溜部50に流入するように構成することもできる。
【0049】
液溜部50内部に吸込管51(吸込部に相当する)が配置され、この吸込管51によって、液溜部50内に溜まった液体を気液混合ノズルの液体送給管11に送り込み再利用することができる。吸い込み作用としては、例えば、液体送給による負圧作用を用いることができる。
【0050】
図8(a)、(b)では、微細化室20と放出壁24bが一体構造となっている。微細化室20で微細化された第2霧化体は流通部21から流出し、放出壁24bで案内されて開口部24aから流出し、そしてフード部40に導かれて、放出部41から放出される。
【0051】
符号60は、ノズル台であり、本装置を固定等するために用いられる。図8において、液溜部50とノズル台60とが連結されているが、これに制限されず、ノズル台60とフード部40が連結されていてもよい。また、液溜部50とフード部40とが連結されているが、これに制限されず、フード部40と微細化室20または気液混合ノズルとが連結されていてもよい。なおこの場合、排液の流通路が確保されるように構成される。
【0052】
また、別実施形態として図8(b)に示すように、微細化室20の外周に吸気筒70を形成する構成がある。吸気筒70は微細化室20と一体構造に構成でき、またはそれぞれ別体に構成して固着してもよく、着脱自在に取り付けてもよい。そして、微細化室20、吸気筒70、液溜部50およびフード部40を共に貫通する吸気孔71(気体流入部に相当する)が形成される。図8(b)では、吸気孔71を一つ図示しているが、断面視で十字になるような4つの吸気孔が形成されていてもよい。なお、吸気孔71は、1つ以上であればよい。これによって、吸気孔71から外気が流入して、微細化室20内の気圧を調節でき、形成される第2霧化体の放出速度を調節することができる。また、吸気孔71の最外壁のフード部40を軸方向に回転スライドさせることで、吸気孔71の開口サイズを調節でき、外気流入量を調節して、微細化作用、第2霧化体の放出速度を調整することができる。
【0053】
また、吸気筒70には、図面上の上から下に貫通するは排液孔(不図示)を形成している。フード部40で霧から液滴に成長した液体をこの排液孔を通して下部の液溜部50に流し込むことができる。排液孔は、1つ以上形成されていればよい。
【0054】
また、微細化室20、吸気筒70、フード部40、液溜部50、ノズル台60を着脱可能な構造(例えば、ネジ式、勘合式等)で取り付けることで、各部材、ノズル先端部等の清掃、メンテナンスを容易に行なえ、各部材を使い捨てにすることもできる。
【符号の説明】
【0055】
10 気液混合ノズル
20 微細化室
21 流通部
22 排出部
24 円錐台
24a 開口部
24b 放出壁
31 第1霧化体
32 第2霧化体
40 フード部
41 開口部
50 液溜部
51 吸込管
71 吸気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル先端部から噴出する第1霧化体を受け入れる微細化室を備え、
前記微細化室で第1霧化体を微細化し、当該微細化室から第2霧化体を流出する、微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項2】
前記微細化室の側壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部を形成する請求項1に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項3】
前記ノズル先端から噴出する第1霧化体の噴出方向軸上に前記微細化室が配置される請求項1または2に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項4】
前記微細化室の外側に、前記流通部から流出する第2霧化体の流出方向を規制する開口部を有する放出壁をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項5】
前記微細化室内に前記第1霧化体の噴出方向軸に、当該第1霧化体と接触する接触部を設け、前記微細化室の天井壁面に1以上の貫通孔または1以上のスリット状の流通部を形成する請求項1に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項6】
前記微細化室に液体の排出部を設ける請求項1から5のいずれか1項に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項7】
前記排出部から排出された液体を溜める液溜部と、
前記液溜部の液体を、気液混合ノズル装置に供給する吸込部とを備える請求項6に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。
【請求項8】
前記微細化室に気体を流入する気体流入部を形成する請求項1から7のいずれか1項に記載の微細化促進用の気液混合ノズル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247106(P2010−247106A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100674(P2009−100674)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(503045038)ノズルネットワーク株式会社 (18)
【Fターム(参考)】