説明

微細構造化基板を接着する方法

本発明は、例えば小型流体部品の製作のために、微細構造化基板を接着する方法に関する。同一平面の上部平坦領域(6)と、その間の窪みとを有する微細構造化基板(2)を接合する本発明の方法は、以下のステップを有する:基板の上部にグリッド(10)を設置するステップ;ある手段(16)を用いて、グリッドに接着剤(12)を塗布するステップであって、この手段は、前記グリッドに押し圧を加えて、グリッドを前述の領域に局部的に接触させ、そこに接着剤の小滴の膜(20)を形成するステップ;および、グリッドを除去するステップ;を有する。さらに、接着剤の小滴の膜が設置される同一平面の上部平坦領域(6)は、前記領域の接着剤に対する濡れ性が最適化されるように処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造化基板を接着する方法に関する。
【0002】
この方法は、特に、例えば50μm以下の極めて小さな寸法の孔またはパターンを有する微細構造化基板を組み立てる必要のある、小型システムの分野に利用することができる。
【0003】
本発明は、特に、ラボオンチップ(labs-on-chip)およびバイオチップ等の、生物学の分野で用いられる、例えばDNAまたはプロテインプローブのような、被解析試料と反応するように選定された生物プローブが表面に設置された微細構造の製作加工に適用することができる。
【0004】
また本発明は、微細流体構造の製作加工、特に生物学の分野におけるラボオンチップの加製作工に適用することができる上、さらに熱交換用、MEMS(機械電気小型システム)用、およびMOEMS(光MEMS)用の小型燃料電池の製作加工に利用することができる。
【背景技術】
【0005】
ラボオンチップ等の小型流体部品を生物学的用途に使用することにより、単一の部品で、生物学的手順のすべてのまたは一部のステップを実行することが可能な統合手段が提供される。
【0006】
従って、例えば試料調製手段、ならびに混成、分離および検出等の生物反応を得る手段を、この部品に統合させることができ、これは、予め調製された試料が表面に設置された生物プローブを含む、平坦部品のバイオチップとは異なる。
【0007】
小型流体部品の製作加工は、通常、基板内に微細流体孔(溝、チャンバ室またはリザーバ)を形成するステップを含み、これらの孔は、その後の組み立てステップにおいて、別の基板またはキャップによって、密閉シールされる。
【0008】
微細流体孔の幅は、通常10μmから数mmの範囲にあり、深さは、通常10μmから数500μmの範囲にある。
【0009】
これらの孔を形成するステップは、孔が形成される基板の性質に応じて、異なる技術を含んでも良い。例えば:
−シリコンを用いた、化学またはイオンエッチング、
−ガラスを用いた、化学エッチングまたは超音波もしくはレーザーによる機械加工、
−高分子を用いた、射出成形による複製化、必要なパターンを有する型からの高温スタンプ処理もしくは注入、機械加工、レーザーアブレーションまたはレーザー成長(立体写真転写)である。
【0010】
ガラス、シリコンまたは高分子基板に、ポジもしくはネガの樹脂、または被覆感光膜の写真転写技術を利用しても良い。
【0011】
同様に、使用材料に応じて、別の公知の組み立て技術を利用しても良い。
【0012】
微細流体構造の組み立ては、これらに含まれるパターンの寸法が小さいため、難しい:何もない空間(通常10μmから1mmの間の寸法である)は、この状態のまま維持する必要があり、特に、接着剤がこの空間に侵入してはならない。
【0013】
また、微細流体孔の密閉処理の間、これらの孔を壊さないように、あるいはこれらの形状が変わらないようにしなければならない。
【0014】
さらに、定められた流体の循環を妨げ、泡または化学種を捕獲するデッド空間が生じることを回避するため、組み立てステップの間、密閉基板と接する全ての表面は、密閉基板に固定されている必要がある。
【0015】
以下の文献には、組み立て材料に応じて、小型流体部品を密閉する際に利用される、各種技術に関する情報が示されている:
[1]米国特許出願第5 842 787A号(Kopf−Sillら)。
【0016】
特に、ガラスまたはシリコン基板の組立体に関する従来の技術は、極めて高温でのシール処理を利用する。この処理では、組み立てられる前に、これらの基板上にバイオプローブを形成しておくことはできない。
【0017】
以下の文献には、高分子基板の組立体に関する情報が示されている:
[2]国際公開第WO99/56954A号(Caliper Technologies社)。
【0018】
この文献には、熱溶接技術が示されている。しかしながら、これらの技術では、限られた一部の使用材料しか、相互に溶接することができない。また得られる組立体は、耐熱性が悪く、さらにこれらの技術は、組み立てられる表面に生物プローブを設置する技術と両立させることが難しい。
【0019】
別の従来技術として、注入器を用いて、自動で接着剤を塗布する方法がある。しかしながら、これらの技術は、50μmから100μmまたはこれ未満の、極めて薄いパターンを含む構造の組み立てには適さない。
【0020】
接着剤は、デッド空間の形成や空気泡のトラッピングを回避するため、できるだけパターンの端部に塗布する必要があるが、その一方で、孔が閉塞したり、孔の体積が変化したりすることを防ぐため、接着剤は、これらの構造部に設置される孔の内部に流出しないようにする必要がある。
【0021】
現在使用されている接着技術は、生物種が塗布されていることを考慮したものではなく、あるいは微細流体構造に対して十分に最適化されていない。
【0022】
従って、小型流体部品に生物プローブを設置する必要がある場合、最初に部品を組み立ててから、溶液を用いてプローブを形成することになる。プローブは、その後、部品の全表面上に設置されるが、この方法では、ある場合には光検出の点で弊害が生じる可能性がある。
【0023】
またそのような技術では、バイオチップのような開放平坦部品の場合は可能であっても、
同じ部品に多数のプローブを設置することや、プローブが付与される領域を幾何学的に配置することは不可能である。
【0024】
異なるバイオプローブが設置されたドットマトリクスを形成する、論理制御器も公知であるが、これらの論理制御器では、小滴が分散するため、自由表面以外に利用することはできない。従ってこれらの論理制御器は、小型流体部品が密閉された後は、利用することができない。
【0025】
ローラーとパッドの印刷処理を利用したコーティング等の、基板に凝集した膜を転写する接触コーティング技術も公知である。
【0026】
以下の文献には、この技術に関する情報が示されている:
[3]国際公開第WO00/77509A号(Merck Patent Gmbhら)。
【0027】
しかしながら、これらの従来のコーティング技術の解像度は、極めて低く、特に例えば、ラボオンチップ等の小型流体部品に用いられる微細構造化基板を接着するには、低すぎる。
【0028】
より正確には、そのような技術を使用しても、転写手段(ローラーまたはパッド)からの接着剤の凝集した(別の言い方をすれば、連続)膜を、極めて微細な孔の表面から分離することはできない。そのため、この孔は、この接着剤の膜で完全に被覆されてしまう。
【特許文献1】米国特許出願第5 842 787A号明細書
【特許文献2】国際公開第WO99/56954A号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO00/77509A号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の課題は、前述の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
特に、本発明の課題は、上部同一平面領域と、該同一平面領域間に凹部とを有する、少なくとも一つの微細構造化基板を、前記上部同一平面領域に設置される接着剤によって、接着する方法であって、当該方法は、
前記基板上にグリッドを設置するステップと、
前記グリッドに押し圧を加え、該グリッドを局部的に、上部同一平面領域に接触させる手段を用いて、前記グリッドに接着剤を塗布するステップであって、接着剤の小滴の膜が、前記上部同一平面領域に設置されるステップと、
前記グリッドを除去するステップと、
を有し、
上部同一平面領域は、接着剤の小滴の膜が設置される前に、処理され、該処理は、前記上部同一平面領域の接着剤に対する濡れ性を最適化するように定められることを特徴とする方法によって解決される。
【0031】
すなわち接着剤の設置位置をより正確に定めるため、ある手段によって、接着剤の小滴の膜がグリッドを介して設置され、これらの小滴は、相互に連結して、接着される表面には凝集した接着剤の膜(別の言い方をすれば、連続した接着剤の膜)が形成される。
【0032】
この場合、解像度は、小滴の寸法によって定まるため、解像度が改善される。
【0033】
グリッド内の孔の寸法、グリッドの高さおよびグリッド表面と基板の平面領域の濡れ性は、最適な結果が得られるように適合される。
【0034】
本発明に使用される前記手段は、ドクターブレードであることが好ましい。
【0035】
本発明のある実施例では、前記処理は、上部同一平面領域での接着剤の小滴の広がりを制御するように定められる。
【0036】
また本発明は、接着剤が本発明による上部同一平面領域に設置されてから、微細構造化基板が密閉基板で密閉され、該密閉基板は、上部同一平面領域に設置された接着剤によって、上部同一平面領域に固定される接着方法に関する。
【0037】
微細構造化基板の凹部は、生物プローブが設置される領域を有しても良い。
【0038】
密閉基板は、生物プローブが設置される領域を有し、該領域は、微細構造化基板が密閉されたとき、該微細構造化基板の凹部と面するように定められても良い。
【0039】
微細構造化基板と密閉基板の間に導入される材料は、生物であっても、生物でなくても良く、乾燥状態でもウェット状態でも良い。
【0040】
また、密閉基板は、流体を微細構造化基板の凹部に添加する際に使用される開口を有しても良い。
【0041】
本発明による方法の第1の特定の実施例では、微細構造化基板組は、予め同一基板にまとめて製作され、全ての微細構造化基板の上部平面領域は、同一平面にあり、接着剤の小滴の膜は、全ての上部平面領域に設置され、全ての微細構造化基板が、同一の密閉基板によって密閉されることにより、密閉された微細構造化基板は、相互に分離される。
【0042】
第2の特定の実施例では、微細構造化基板組は、予め同一基板にまとめて製作され、全ての微細構造化基板の上部平面領域は、同一平面にあり、密閉基板組は、予め別の基板にまとめて製作され、各微細構造化基板の上部同一平面領域に接着剤の小滴の膜が設置されてから、微細構造化基板と密閉基板の各々が、相互に分離され、微細構造化基板は、密閉基板によって密閉される。
【0043】
各基板は、ガラス、シリコンおよび高分子の中から選定される材料であっても良い。
【0044】
本発明は、以下の添付図面を参照して、実施例の説明を精読することによって明らかとなろう。ただし図面は、例示のために示されているに過ぎず、限定解釈されるものではない
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明では、極めて小さな(約5μmから50μm)微細機械加工構造または微細孔を有する小型流体部品を得るため、形状が変化せず、いかなるデッド空間も生じず、微細孔を閉塞させない状態でそのような部品の密閉を行うことを可能にする。部品を密閉する基板上、または部品(微細構造化基板)の凹部には、生物プローブのマトリクスが予め形成されていても良い。
【0046】
本発明では、これはスクリーン印刷技術を用いて、微細孔を有する基板に接着剤を塗布することにより行われる。
【0047】
一般に用いられる、大きなパターン(少なくとも300μm)の定形に限られる方法とは異なり、本発明に用いられるスクリーン印刷法では、マスクは不要であり、基板の表面エネルギーの制御によって、基板に形成された微細パターンにうまく合致したコーティングを得ることができ、これらの微細パターンの中で最も小さなパターンも閉塞されることはない。
【0048】
凝集した膜を基板に転写する、別の接触コーティング技術(例えば、パッド印刷法またはローラーによるコーティング法)(前述の[3]の文献参照)とは異なり、本発明では、まず最初に、スクリーン印刷法を用いた接触技術によって、基板の上部同一平面部に設置された、小滴の配列が得られる。
【0049】
次に、これらの小滴は、基板上の接着剤の濡れ性を最適化することによって、相互に連結される。すなわちこれらの小滴は、基板の表面エネルギーによって「引き寄せ」られ、基板の微細構造部と正確に合致した、凝集した(別の言い方をすれば連続の)膜が形成される。
【0050】
本発明の処理ステップの一例は、図1A乃至1Cに概略的に示されており、微細構造化基板2には、2段階のスクリーン印刷法によって、接着剤が塗布される。すなわち(a)接着剤の小滴の配列を設置するステップと、(b)基板構造と合致した凝集した接着剤の膜を形成するステップである。
【0051】
図1Aには、微細構造化基板2を示す。この基板は、上部同一平面領域6と、これらの領域の間の凹部8を有する。これらの凹部は、流体を収容する微細孔を形成する。
【0052】
グリッド10(マスクなし)は、基板の上部に設置され、領域6に接着することの可能な接着剤の容積体12が、このグリッドの一端に設置される。
【0053】
次に図1Bに示すように、接着剤の小滴の配列14が、領域6に設置される。すなわち、グリッド上に配置され、グリッドに局部的に押し圧を加えて、グリッドを領域6に接触させるドクターブレード16のような手段を用いて、グリッド10に接着剤を付与することによって、配列14が構成される。従ってグリッドは、予め定められた柔軟性を有する必要がある。
【0054】
微細孔8の上部の領域18では、未だグリッド上に接着剤が残留しており、次にこのグリッドが除去される。
【0055】
図1Cには、既に設置されている配列14から小滴が広がることによって、領域6に合致した連続する接着剤膜20が形成される状況を示す。
【0056】
本発明では、2段階コーティングを行うことで、微細な孔の表面では(例えばパッド印刷またはローラーコーティングの場合)、転写された凝集した接着剤の膜は広がることができず、従ってこの接着剤の膜で被覆されるため、微細な孔を封止することができるという利点がある。
【0057】
接着剤膜とこの基板との接着力が、転写支持体との接着力よりも大きい場合、転写支持体(例えばパッドまたはローラー)から基板への接着剤の転写が可能となる。
【0058】
ここで、基板の表面に形成された孔であって、この表面と平行に測定された所定の表面積を有する孔を考える。
【0059】
凝集した接着剤の膜が転写される場合、所定の表面積を有する転写支持体とこの膜の接着力または密着力は、孔の端部でこの膜を切断するため、接着剤膜の表面張力よりも大きくなる必要がある。
【0060】
孔に相当する表面積が十分に大きな状態で、この条件が満たされても、この表面積が極めて小さくなると、条件を満足しなくなる。従って膜は、壊れず凝集したまま残存し、孔を被覆してしまう。
【0061】
一方本発明では、小滴の配列が転写される場合、転写支持体(すなわちグリッド)との接着力は、グリッドと接する基板表面に設置された小滴の表面積にのみ依存し、極めて小さな孔が被覆されることはない。
【0062】
図2Aには、これを概略的に示す。この図から、微細構造化基板22は、極めて小さな孔24を有することがわかる。
【0063】
グリッド30を用いてスクリーン印刷法によって設置された接着剤の小滴28の配列は、基板の上部表面に転写される。接着剤は、孔24内には浸透しない。
【0064】
小滴28の寸法は、最小の孔の寸法と同程度である。
【0065】
次に、小滴は相互に統合され、基板表面には、連続した接着剤の膜32が形成される(図2B)。
【0066】
形成される接着剤の膜4の厚さは、以下のパラメータによって定めることができる:
−選定するスクリーン印刷グリッドによって定めることができる、小滴の体積、および設置された小滴配列の密度、
−塗布される支持体のエネルギーおよび表面張力、接着剤の粘度、
−ドクターブレード処理のパラメータ、すなわちドクターブレードの材質および硬度、ドクターブレード処理速度および荷重、ならびにグリッドと基板間の距離である。
【0067】
小滴の寸法は、基板に存在する最小の中空パターン(孔)に適合される。
【0068】
ユーザーの要望に応じて、接着剤膜の厚さは、0.1μmから100μmの範囲で選定しても良い。
【0069】
2つの基板のうちの少なくとも一方に、径が20μm以下の孔が設置されている場合、膜の厚さは、0.5μmから2μmの間とする。
【0070】
本発明は、以下の利点を有する:
−本発明では、幅が50μm以下の、極めて微細な寸法の孔を有する構造化基板の組立体であって、これらの孔が接着剤膜で閉塞されず、あるいは被覆されない組立体を得ることができる。
−本発明は、組み立て前に、基板に局部的に多数の生物プローブを形成する方法と、共存し得る接着技術である。
−本発明は、例えば高温挙動や、接着剤に含まれる成分など、各種機能的な使用に適した特徴を有する多くの接着剤に適用することができる。例えば、シリコン系、アクリル系、エポキシ系、または陽イオン接着剤、熱、紫外線または湿度によって重合化する接着剤、1または2以上の成分を含む接着剤等を用いることが可能である。
−本発明は、半導体ウェハ上のチップをまとめて密閉することに利用することができ、この技術では、いかなる基板寸法に対しても極めて高精度に適合することができる(スクリーン印刷法の場合、1m2以上のスクリーンが用いられる)。
−また本発明は、部品を個々に密閉することに用いることもできる。
【0071】
微細流体孔は、シリコン基板またはガラス基板のエッチングによって形成されても良く、あるいは高分子材料を用いて、高温スタンプ法、射出成形、プラズマエッチングまたはレーザーエッチングによって形成されても良く、感光性樹脂の層を用いて形成されても良い。
【0072】
これらの微細流体孔の溝の幅は、通常10μmから100μmの間にあり、これらの孔のチャンバ室およびリザーバの幅は、通常2mmから10μmの間にあり、エッチング深さは、40μmから500μmの間にある。
【0073】
ある好適実施例では、基板表面は、例えばプラズマ、紫外線、オゾン、HMDS処理、またはシラン化によって、選択した接着剤に対する表面の濡れ性が最適化されるように調製される。撥水性または親水性処理によって、設置された小滴の広がり方を制御しても良い。
【0074】
孔を密閉する第2の基板またはキャップは、例えば、シリカ、高分子またはシリコンウェハである。
【0075】
接着剤は、例えばポリエステル、ポリアミド、またはスチールファイバースクリーンを用いた、スクリーン印刷法によって塗布される。接着剤としては、ポリエステルスクリーンを使用することが好ましい。この場合、1または2つの成分を有する、液体高分子を含むいかなる種類の接着剤も使用することができ、紫外線、熱または空気によって、交差結合されるかどうかに制約されることもない。
【0076】
接着剤(この用語は、広義の意味では、液体高分子を含む)は、組み立てられる基板の材料に適合される。これらの基板は、ガラス、シリコン、高分子および金属等の異なる材料で構成されても良い(ハイブリッド接着)。
【0077】
接着剤は、製作される小型流体部品の用途を限定して、(微細構造化基板とキャップの間に)形成されるシールの特徴と適合するように選定されても良い。例えば、可撓性または剛性のある、電気もしくは熱伝導性もしくは絶縁性を有するシールが要求される。このシールは、定められ制御された厚さを有し(スペーサを有する接着剤の使用)、定められた光学特性(例えば透過性、蛍光性)を有し、熱または化学抵抗性を有するようにしても良い。
【0078】
使用される接着剤は、異なる選定基準を満足する必要がある。すなわち主に、キャップ上に設置されるプローブおよび液体試料との生物学的互換性、生物プローブを崩壊させない重合化方法(120℃以下の温度または紫外線からの隔離)である。
【0079】
粘度は幅広い範囲で使用することができる。例えば3000mPa・s(極めて液体状態)から50000 mPa・s(ペースト状態)の間である。
【0080】
本発明では、コーティングは、構造化基板上に設置され、スクリーン印刷用のスクリーンは、接着剤が設置される領域を定めるパターンを含まない(型板とは異なる)。
【0081】
次に接着剤は、上部同一平面構造上にのみ設置され、この面は、ドクターブレード処理の間、この接着剤と接する。従って接着剤は、微細流体孔(溝、チャンバ室またはリザーバ)の底部には塗布されない。
【0082】
ある例では、基板は、スクリーン印刷スクリーンの底部に、位置合わせされずに、0.5mmから2mmの距離で設置される。接着剤のストリップは、スクリーン上に設置され、このストリップの長さは、基板の幅と同等か、これより若干大きい。次に接着剤は、硬いゴム製のドクターブレードを用いて押し付けられ、基板の全長にわたって直線配置が設置される。
【0083】
基板に設置された接着剤膜の厚さは、スクリーン印刷スクリーンの種類(材質、単位cm当たりの配線数、配線径、メッシュサイズ)、使用接着剤の性質(粘性、表面張力)、および基板材料(例えば、シリコンまたは高分子)によって定まる。
【0084】
ある場合には、粗い型板を定めることが好ましい。この場合、パターン寸法は、小型流体構造の寸法よりも十分に大きくなり、不要接着剤が広い領域に塗布されることを回避することができる(例えば基板の周囲で切断することができ、あるいは切断経路を定めることができる)。この粗い型板には、いかなる正確な位置合わせステップも追加する必要はない。
【0085】
次に(基板を密閉する)キャップが、機械的アライメント(2つの基板を誘導する機械的部分を用いて)または光学的アライメント(小型電子「ウェハ接合」または「マスクアライナ」のような小型電子位置合わせ装置)を用いて、接着剤の付与された構造化基板に設置され、生物プローブが設置された領域の位置が、小型流体のチャンバ室と対向するようになる。
【0086】
次に2つの基板の間に荷重が付与され、これにより位置が合わされる。これらの2つの基板の間に、幾分真空状態が形成されるようにして、接着剤の接合部の気密性を減少させ得る空気泡を除去することが好ましい。
【0087】
次に接着剤は、この接着剤に適した処理方法を用いて重合化される。乾燥炉内での熱による重合化および/または紫外線による照射を利用しても良い。
【0088】
図3には、キャップ34によって密閉された、微細構造化基板32の概略図を示す。このキャップは、本発明により基板に形成された接着剤膜36によって基板に固定される。
【0089】
キャップ34は、流体注入用の開口38を含んでも良く、含まなくても良い。
【0090】
またキャップには、基板32上の孔42に対向して、生物プローブ40の配列が設けられる。
【0091】
本発明は、流体チップをまとめて密閉することに利用することができる。これらのチップは、シリコン、ガラスまたは高分子基板上に、まとめて形成されても良く、例えば、SU8という名称で市販されている、厚い樹脂の写真転写処理ステップによって得られる、リザーバまたはチャンバ室を形成するための領域を有しても良い。
【0092】
接着剤は、本発明のマスクを使用しないスクリーン印刷法によって、この目的のためチップ組上に設けられた領域に塗布される。次にこのチップ組は、接着剤の塗布領域に設置されたプラスチック、ガラスまたはシリコンで構成されたキャップによって、まとめて密閉される。
【0093】
基板とキャップの位置は、機械的に予め設置された位置合わせ部分を用いて、または2枚のシリコンウェハを相互に固定するために使用される、光学的な小型電子位置合わせ装置を用いて、揃えられても良い。
【0094】
接着剤が塗布された基板にキャップが設置された後、必要であればキャップが設置された基板を真空処理することによって、キャップをこの基板と接触させても良い。
【0095】
次に、構造化ウェハ、接着剤およびまとめて密閉されたキャップによって形成される組立体は、個々のチップに切断される。
【0096】
本発明のある好適実施例では、組み立ての前に、(例えばKarl Suss社から市販されているような)スポットロボットを用いて、キャップ上に生物プローブ止めが形成され、さらには全てが異なる点状プローブのマトリクスが形成され、これにより同じ部品で同じ液体試料の混成、多重基準解析を同時に実施することが可能になる。
【0097】
生物プローブのマトリクスの形成領域は、組み立て後に、これらの領域が、構造化基板の孔(チャンバ室)と対向するように配置される。
【0098】
必要であれば、形成された部品の液体経路に液体試料の注入ができるように、キャップに開口を設けても良い。
【0099】
ある実施例では、構造化基板は、2つの隣接する流体チャンバ室を分離することのできる、通常幅が20μmの狭小の領域(バッフル部)を有する。
【0100】
本発明の組立体の形成は、設置された生物プローブを劣化させることはなく、狭小領域を閉塞したり、被覆したりすることもない。
【0101】
100mm径の基板にエッチング加工された構成部品組をまとめて、組立を行っても良いが、スクリーン印刷技術では、より大きな寸法(200mmまたはこれ以上の径)の基板を動かす手段が提供される。グリッドの寸法は、限定されないからである。
【0102】
本発明では、異なる種類の接着剤(特に高分子樹脂)を用いて、接合を行っても良い。例えば:
−可撓性のあるエポキシ接着剤(例えば、ジュポン1891として市販されている)、
−陽イオン接着剤(例えば、デロカチオボンド(Delo Katiobond)45952市販されている)、
−シリコン接着剤(例えば、東芝GE TSE 399またはTSE 397として市販されている)、
−シリコン接着剤(例えば、ダウコーニング社(Dow Coring)からDC866として市販されている)、
−PDMS(例えば、ダウコーニング社からSylgard 184として市販されている)。
【0103】
本発明の別の特定の実施例では、生物プローブが設置された、構造化基板およびキャップは、組み立て前にチップに切断される。接着剤塗布は、同じスクリーン印刷法を用いて行われるが、これは、切断後に、チップ毎に行われる。位置合わせおよび接触は、ピンクアンドプレース(転写アーム)型の機器を用いて実施され、その後接着剤は、使用方法に応じて、紫外線照射、熱または空気乾燥によって、重合化される。
【0104】
別の好適実施例では、微細構造化基板は、高分子(例えば、PMMA、COC、ポリカーボネート、TPX、PMMI)の複製化、射出成形、高温スタンプ技術によって形成され、あるいは例えばシリコン、ガラス、石英、またはシリカで構成される基板への、厚い感光性樹脂(例えばEPON、SU8またはMicroChemとして市販されている)の写真転写技術によって形成される。以降の全体の処理工程は、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】本発明による特定の処理の実施例におけるステップの概略図である。
【図1B】本発明による特定の処理の実施例におけるステップの概略図である。
【図1C】本発明による特定の処理の実施例におけるステップの概略図である。
【図2A】接着剤小滴の配列を形成した後、本発明の凝集した接着剤の膜を形成する過程を概略的に示した図である。
【図2B】接着剤の小滴の配列を形成した後、本発明の凝集した接着剤の膜を形成するステップを概略的に示した図である。
【図3】本発明のキャップによって、微細構造化基板を密閉するステップを概略的に示した図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部同一平面領域と、該同一平面領域間に凹部とを有する、少なくとも一つの微細構造化基板を、前記上部同一平面領域に設置される接着剤によって、接着する方法であって、当該方法は、
前記基板上にグリッドを設置するステップと、
前記グリッドに押し圧を加え、該グリッドを局部的に、上部同一平面領域に接触させる手段を用いて、前記グリッドに接着剤を塗布するステップであって、接着剤の小滴の膜が、前記上部同一平面領域に設置されるステップと、
前記グリッドを除去するステップと、
を有し、
上部同一平面領域は、接着剤の小滴の膜が設置される前に、処理され、該処理は、前記上部同一平面領域の接着剤に対する濡れ性を最適化するように定められることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記手段は、ドクターブレードであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理は、上部同一平面領域での接着剤の小滴の広がりを制御するように定められることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
微細構造化基板は、密閉基板で密閉され、該密閉基板は、上部同一平面領域に設置された接着剤によって、上部同一平面領域に固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
微細構造化基板の凹部は、生物プローブが設置される領域を有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記密閉基板は、生物プローブが設置される領域を有し、該領域は、微細構造化基板が密閉されたとき、該微細構造化基板の凹部と面するように定められることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉基板は、流体を微細構造化基板の凹部に添加する際に使用される開口を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
微細構造化基板組は、予め同一基板にまとめて製作され、全ての微細構造化基板の上部平面領域は、同一平面にあり、接着剤の小滴の膜は、全ての上部平面領域に設置され、全ての微細構造化基板が、同一の密閉基板によって密閉されることにより、密閉された微細構造化基板は、相互に分離されることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
微細構造化基板組は、予め同一基板にまとめて製作され、全ての微細構造化基板の上部平面領域は、同一平面にあり、密閉基板組は、予め別の基板にまとめて製作され、各微細構造化基板の上部同一平面領域に接着剤の小滴の膜が設置されてから、微細構造化基板と密閉基板の各々が、相互に分離され、微細構造化基板は、密閉基板によって密閉されることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
各基板は、ガラス、シリコンおよび高分子の中から選定される材料であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一つに記載の方法。

【図3】
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【公表番号】特表2007−527505(P2007−527505A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516348(P2006−516348)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050274
【国際公開番号】WO2004/112961
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500106374)
【出願人】(505463401)
【Fターム(参考)】