説明

微細金型の製造方法およびその方法により製造した微細金型ならびに微細構造体

【課題】 製造時間が短く、反りの小さい微細金型を提供する。
【解決手段】 本発明の微細金型の製造方法は、リソグラフィにより導電性基板上に樹脂型を形成する工程と、樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、樹脂型を除去する工程とを備えることを特徴とする。リソグラフィは、X線リソグラフィが好適である。また、導電性基板は、樹脂型を形成する面に、導電性基板の構成元素より原子番号が小さい元素からなる層を有する態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細金型およびその製造方法に関する。さらに詳細には、リソグラフィと電鋳による微細金型の製造方法に関する。また、その微細金型により製造する微細構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシンなどに使用される微細金属構造体は、微細金型を利用して製造することができる。この方法は、たとえば、図5(a)に示すように、凸部を有する微細金型52を用いて、エンボス成形、反応性成形または射出成型などのモールドにより、図5(b)に示すような凹状の樹脂型53を形成する。つぎに、樹脂型53の上下を反転した後、図5(c)に示すように、導電性基板51に貼り付ける。
【0003】
つづいて、図5(d)に示すように、樹脂型53を研磨し、樹脂型53aを形成する。その後、電鋳により樹脂型53aに金属材料層55を堆積し(図5(e))、研磨または研削により厚さを調整し(図5(f))、樹脂型53aを除去し(図5(g))、導電性基板51を除去すると、図5(h)に示すような金属微細構造体が得られる。かかる方法により、精密な微細構造体を、再現性よく、一体形成することができる。また、同一の金型による大量生産が可能である。
【0004】
使用する微細金型は、微細金属構造体であり、リソグラフィと電鋳を利用した方法により製造することができる(特許文献1参照)。たとえば、図4(a)に示すように、導電性基板41上に樹脂層42を形成し、リソグラフィにより、図4(b)に示すような、樹脂層42bからなる樹脂型を形成する。つぎに、図4(c)に示すように、導電性基板41上で樹脂型に金属材料からなる層45を電鋳により形成する。その後、導電性基板41を除去し(図4(d))、樹脂型を除去すると、図4(e)に示すような微細金型を得ることができる。得られる金型は高いアスペクト比を有し、精密な構造体を、再現性よく、一体形成することができる。
【特許文献1】特開平11−337575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この微細金型においては、図4(c)に示すように、樹脂層42bからなる樹脂型の高さを超えて、さらに電鋳を行ない、樹脂型の高さを超えた部分を金型の固定部にし、機械的強度を得ている。固定部の厚さは、金型の大きさおよび使用時に金型にかかる力により異なるが、一般的には数mm〜十数mmであり、たとえば、電鋳速度が20μm/hであるとすると、金型製造に極めて長時間が必要となる。
【0006】
また、固定部は電鋳により形成するため、大きな内部応力を有し、内部応力により、数μm〜数十μmの反りが発生する。数μm〜数十μmの金型の反りは、精密な微細構造体を再現性よく製造するために使用する金型にとって、致命傷であり、大面積の金型製造の妨げのひとつなっている。
【0007】
本発明の課題は、短時間で製造することができ、反りの小さい微細金型を提供することにある。さらに、その微細金型により微細構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細金型の製造方法は、
リソグラフィにより導電性基板上に樹脂型を形成する工程と、
樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
樹脂型を除去する工程と
を備えることを特徴とする。
【0009】
リソグラフィは、X線リソグラフィが好適である。また、導電性基板は、樹脂型を形成する面に、導電性基板の構成元素より原子番号が小さい元素からなる層を有する態様が好ましい。
【0010】
リソグラフィは、ネガレジストを用いるのが好ましいが、ポジレジストを用いる場合には、
リソグラフィにより第1の導電性基板上に樹脂型を形成する工程の後に、
樹脂型の頂上部に第2の導電性基板を形成する工程と、
第1の導電性基板を除去する工程と
を備える態様がより好ましい。
【0011】
本発明の微細金型は、かかる方法により製造され、本発明の微細構造体は、かかる微細金型により製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、微細金型を短時間で製造することができる。また、得られる微細金型は反りが小さいため、精密な微細構造体を再現性よく製造することができる。さらに、大面積の金型が利用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の微細金型の製造方法は、リソグラフィにより導電性基板上に樹脂型を形成する工程と、樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、樹脂型を除去する工程とを備えることを特徴とする。本発明の方法により製造する微細金型は、金型の固定部を電鋳により形成せず、電鋳時のメッキ電極である導電性基板を金型の固定部として利用する。
【0014】
このため、金型の固定部を形成するために要していた電鋳時間を省略することができる。また、導電性基板を選定することにより、固定部の大きさおよび形状が任意となり、成型機への装着が容易な微細金型を提供できるようになる。さらに、金型の固定部は、電鋳により形成するものではないため、内部応力による固定部の反りがなく、アスペクト比1以上の高精度の微細金型を提供することができ、100mm角以上の大面積の金型を設計できる。したがって、本発明の微細金型により、マイクロマシンなどに使用する精度の高い微細構造体を、安価かつ大量に提供することができる。
【0015】
本発明の微細金型の製造方法を図1に示す。まず、図1(a)に示すように、導電性基板1上に樹脂層2を形成する。導電性基板として、たとえば、銅、ニッケル、ステンレス鋼などからなる金属製基板を用いる。また、ポジレジストの場合、チタン、クロムなどの金属材料をスパッタリングしたシリコン基板などを用いる。樹脂層には、ポジレジストのほかネガレジストを用いる。たとえば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂材料、またはX線もしくは紫外線(UV)に感受性を有する化学増幅型樹脂材料などを用いる。樹脂層の厚さは、形成しようとする微細金型の厚さに合せて任意に設定することができ、たとえば50μm〜500μmとすることができる。
【0016】
つぎに、樹脂層2上にマスク3を配置し、マスク3を介してX線4またはUVなどを照射する。本発明の製造方法においては、高いアスペクト比を有する微細金型を得るため、UV(波長200nm)より短波長であるX線(波長0.4nm)を使用する態様が好ましい。また、X線の中でも指向性が高い点で、シンクロトロン放射のX線(以下、「SR」という。)を使用する態様がより好ましい。
【0017】
SRを用いるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスは、ディープなリソグラフィが可能であり、数100μmの高さの微細金型をミクロンオーダの高精度で大量に製造することができる点で有利である。X線と電鋳を組み合せた方法で製造することにより、アスペクト比が2以上の微細金型を容易に製造することができ、アスペクト比が30以上の金型の製造も可能である。
【0018】
導電性基板は、樹脂型を形成する面に、導電性基板の構成元素より原子番号が小さい元素からなる層を有する態様が好ましい。かかる態様により、X線などの照射時に、導電性基板からの2次電子の発生を抑制し、2次電子による樹脂層の剥離および樹脂型精度の劣化を回避することができる。たとえば、ニッケルまたはSUS製の導電性基板を使用するときは、樹脂層を形成する面に、厚さ0.1μm以上、より好ましくは厚さ1.0μm以上のチタン層を予め形成しておくことが好ましい。同様に、たとえば、Cu製の導電性基板を使用するときは、樹脂層を形成する面に、厚さ0.1μm以上、より好ましくは厚さ1.0μm以上のC層を予め形成しておくことが好ましい。
【0019】
マスク3は、微細金型のパターンに応じて形成したX線吸収層3aと、透光性基材3bとからなる。透光性基材3bには、窒化シリコン、シリコン、ダイヤモンド、チタンなどを用いる。また、X線吸収層3aには、金、タングステン、タンタルなどの重金属またはその化合物などを用いる。導電性基板1上の樹脂層2が、たとえば、ポジレジストである場合、X線4の照射により、樹脂層2のうち、樹脂層2aは露光され変質(分子鎖が切断)するが、樹脂層2bはX線吸収層3aにより露光されない。このため、現像により、X線4により変質した部分のみが除去され、図1(b)に示すような樹脂層2bからなる樹脂型が得られる。
【0020】
つぎに、電鋳を行ない、図1(c)に示すように、樹脂型に金属材料層5を堆積する。電鋳とは、金属イオン溶液を用いて導電性基板上に金属材料からなる層を形成することをいう。導電性基板1をめっき電極として電鋳を行なうことにより、樹脂型に金属材料層5を堆積することができる。本発明においては、樹脂型の空孔部が埋まる程度に金属材料を堆積すれば足りる。金属材料には、ニッケル、銅、またはそれらの合金などを用いるが、微細金型の耐摩耗性を高める点で、ニッケルまたはニッケルマンガンなどのニッケル合金が好ましい。
【0021】
電鋳後、必要に応じて、研磨または研削により所定の厚さに揃えてから、ウエットエッチングまたはプラズマアッシングにより樹脂型を除去すると、図1(d)に示すような本発明の微細金型が得られる。この微細金型は、固定部を電鋳により形成することなく、電鋳時のメッキ電極である導電性基板を固定部として利用するため、金型の固定部を形成するために要していた電鋳時間を省略することができる。また、金型の固定部は、電鋳により形成するものではないため、内部応力による固定部の反りがない。
【0022】
本発明の微細金型の製造方法では、リソグラフィにより導電性基板上に樹脂型を形成する工程において、ネガレジストを使用する態様が好ましい。図1では、樹脂層2としてポジレジストを使用する態様を例示する。一方、図2には、樹脂層22として、ネガレジストを使用する態様を例示する。
【0023】
ネガレジストを用いて本発明の微細金型を製造する場合は、たとえば、図2(a)に示すように、導電性基板21上に、ネガレジストからなる樹脂層22を形成する。つぎに、樹脂層22上にマスク23を配置し、同様にリソグラフィを行なう。露光により、樹脂層22のうち、樹脂層22aは露光され変質(硬化)するが、樹脂層22bは露光されない。このため、現像により、樹脂層22bのみを除去し、図2(b)に示すような樹脂層22aからなる樹脂型が得られる。
【0024】
つぎに、電鋳を行ない、図2(c)に示すように、樹脂型に金属材料層25を堆積する。電鋳後、必要に応じて、研磨または研削により所定の厚さに揃えてから、ウエットエッチングまたはプラズマアッシングにより樹脂型を除去すると、図2(d)に示すような本発明の微細金型が得られる。この微細金型は、固定部を電鋳により形成しないため、固定部を形成するための電鋳時間を省略することができる。また、固定部は、電鋳により形成するものではないため、内部応力による固定部の反りがない。
【0025】
さらに、得られる微細金型は、リソグラフィに際して生じる光の回折により、図2(d)に示すように、モールドする方向に0.1°程度の正テーパを有する。したがって、この金型を用いると、アスペクト比が4を超える金型であっても容易にモールドすることができ、モールド後の金型の取り外し(抜き)も容易となり、微細金型の破損および磨耗を低減することができる。
【0026】
本発明の微細金型の製造方法において樹脂層にポジレジストを用いる場合には、リソグラフィにより第1の導電性基板上に樹脂型を形成する工程と、樹脂型の頂上部に第2の導電性基板を形成する工程と、第1の導電性基板を除去する工程と、樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、樹脂型を除去する工程とを備える態様が好ましい。
【0027】
この製造方法は、まず、図3(a)に示すように、第1の導電性基板31上に、ポジレジストからなる樹脂層32を形成する。つぎに、樹脂層32上にマスク33を配置し、前述と同様にリソグラフィを行なう。露光により、樹脂層32のうち、樹脂層32aは露光され変質(分子鎖が切断)するが、樹脂層32bは露光されない。このため、現像により、露光により変質した部分のみが除去され、図3(b)に示すような樹脂層32bからなる樹脂型が得られる。
【0028】
つぎに、図3(c)に示すように、樹脂層32bの頂上部に、第1の導電性基板31aと同様の第2の導電性基板31bを形成した後、第1の導電性基板31aを除去する(図3(d))。つぎに、電鋳を行ない、図3(e)に示すように、第2の導電性基板31bをメッキ電極として、樹脂型に金属材料層35を堆積する。電鋳後、必要に応じて、研磨または研削により所定の厚さに揃えてから、ウエットエッチングまたはプラズマアッシングにより樹脂型を除去すると、図3(f)に示すような本発明の微細金型が得られる。
【0029】
この微細金型は、導電性基板を金型の固定部として利用するため、固定部を形成するために要していた電鋳時間を省略することができる。また、固定部は、電鋳により形成するものではないため、内部応力による金型の反りがない。また、得られる微細金型は、モールドする方向に0.1°程度の正テーパを有するため、アスペクト比が4を超える金型であっても容易にモールドすることができ、モールド後の金型の取り外しも容易となり、微細金型の破損および磨耗を低減することができる。
【0030】
実施例1
本実施例の微細金型の製造方法を図1に示す。まず、導電性基板1として、厚さ5mm、直径3インチの純ニッケル基板上に、厚さ0.3μmのチタン層(図示していない。)をスッパタリングにより形成した(図1(a))。つぎに、ポジレジストとして、厚さ130μmのアクリル樹脂層2を形成し、樹脂層2上にマスク3を配置し、マスク3を介してX線4を照射した。マスク3は、30μm×30μmの透光領域が縦横50μmピッチで描かれ、透光性基材3bが厚さ2μmの窒化珪素、X線吸収層3aが厚さ3μmの窒化タングステンからなるものを用いた。また、X線4はSRを使用し、50mm×50mmの範囲でリソグラフィを行なった。
【0031】
つぎに、メチルイソブチルケトンにより現像し、イソプロパノールによりリンス処理した後、純水で洗浄すると、樹脂層2のうち、露光された樹脂層2aのみが除去され、図1(b)に示すような樹脂層2bからなる樹脂型が得られた。つづいて、樹脂型の底部にあるチタン層を、フッ酸と過酸化水素水の混合液により除去し、硫酸系のメッキ前処理液でニッケル基板の露出部を活性化した。
【0032】
つぎに、電鋳を行ない、図1(c)に示すように、樹脂型に金属材料層5を堆積した。電鋳は、スルファミン酸ニッケルメッキ浴(スルファミン酸ニッケル600g/L、ph4.0、温度50℃)に浸漬し、導電性基板1を負極として行ない、樹脂型の空孔部が埋まる程度に金属材料層5を堆積した。電鋳後、研磨により所定の厚さに揃えてから、酸素プラズマによりアッシングし、樹脂型を除去し、図1(d)に示すような本発明の微細金型を得た。
【0033】
この微細金型には、縦30μm×横30μm×高さ100μm(アスペクト比3.3)の角柱が50mm×50mmの範囲に林立し、各角柱は0.1°の逆テーパを有していた。また、金型の高低差は、基板の厚み精度と同じ2μmであり、従来の金型の高低差の1/50であり、非常に精度の高いものであった。さらに、金型の固定部を電鋳により形成しなかったため、固定部を形成するために要していた電鋳時間を省略することができた。得られた微細金型を射出成型機に取付け、成型を行なったところ、2000ショットを超えても金型が破損することはなかった。
【0034】
実施例2
実施例1と同様の導電性基板を用いて、図2(a)に示すように、導電性基板21上に、ネガレジストからなる樹脂層22を形成した。ネガレジストは、東洋合成化学工業製TG−P−H300を用い、厚さ230μm形成した。つぎに、樹脂層22上にマスク23を配置し、リソグラフィを行なった。マスクは、実施例1のマスクと同じパターンで、白黒反転したものを用いた。
【0035】
プリベーク後、専用の現像液とリンス液を用いて現像すると、露光しなかった樹脂層22bのみが除去され、図2(b)に示すような樹脂層22aからなる樹脂型が得られた。その後は実施例1と同様に、電鋳を行ない、図2(c)に示すように、樹脂型に金属材料層25を堆積し、研磨により所定の厚さに揃えてから、アッシングにより樹脂型を除去し、図2(d)に示すような本発明の微細金型を得た。
【0036】
この微細金型は、縦30μm×横30μm×高さ200μm(アスペクト比6.7)の角柱が50mm×50mmの範囲に林立し、各角柱の垂直度は0.2°の正テーパを有していた。また、固定部を電鋳により形成しなかったため、電鋳に要する時間を大幅に短縮することができ、内部応力による反りがなく、金型の高低差は1.5μmと高精度であった。
【0037】
得られた微細金型をRIM成型機に取付けて、成型を行なった。成型後、金型を抜くために必要な力は、実施例1の金型では、角柱の高さが100μmと低いにも拘わらず、平均9800N以上であった。これに対して、本実施例の金型では、角柱の高さが200μmと高いにも拘わらず、平均4900Nで抜くことができ、500ショットを超えても金型および成型後の樹脂型に生じる破損はなかった。
【0038】
実施例3
本実施例では、実施例1と同様の導電性基板とポジレジストを用い、図3(a)に示すように、第1の導電性基板31a上に、樹脂層32を形成した。つぎに、樹脂層32上にマスク33を配置し、同様にリソグラフィを行ない、現像により、図3(b)に示すような樹脂層32bからなる樹脂型を得た。
【0039】
つぎに、図3(c)に示すように、樹脂層32bの頂上部に、第1の導電性基板31aと同様の第2の導電性基板31bを形成した。第2の導電性基板31bの形成は、第2の導電性基板31b上に、厚さ1μmのアクリル系接着剤を塗布して、樹脂層32bに貼り付けて行なった。その後、第2の導電性基板31bを樹脂テープでマスキングし、塩酸浴に浸漬し、第1の導電性基板31aを陽極とする電解除去を行ない、第1の導電性基板31aを除去した(図3(d))。
【0040】
つづいて、フッ酸と過酸化水素水の混合液を用いて、第2の導電性基板上のチタン層を除去した後、実施例1と同様に電鋳を行ない、図3(e)に示すように、樹脂型に金属材料層35を堆積した。電鋳後、研磨により所定の厚さに揃えてから、プラズマアッシングにより樹脂型を除去し、図3(f)に示すような微細金型を得た。
【0041】
この微細金型は、縦30μm×横30μm×高さ100μm(アスペクト比3.3)の角柱が50mm×50mmの範囲に林立し、各角柱の垂直度は0.1°の正テーパを有し、実施例1の金型のテーパと逆であった。また、固定部を電鋳により形成しなかったため、電鋳に要する時間を大幅に短縮することができ、固定部の内部応力による反りがなく、金型の高低差は2μmと高精度であった。
【0042】
得られた微細金型をRIM成型機に取付けて、成型を行なった。成型後、金型を抜くために必要な力は、実施例1の金型では平均9800N以上であったのに対して、本実施例の金型では平均1760Nで抜くことができ、500ショットを超えても金型および成型後の樹脂型に生じる破損はなかった。
【0043】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の微細金型により、マイクロマシンなどに使用する精度の高い微細構造体を、安価にかつ大量に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1における微細金型についての本発明の製造方法を示す工程図である。
【図2】実施例2における微細金型についての本発明の製造方法を示す工程図である。
【図3】実施例3における微細金型についての本発明の製造方法を示す工程図である。
【図4】微細金型の従来の製造方法を示す工程図である。
【図5】微細金型を利用する微細構造体の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0046】
1 導電性基板、2 樹脂層、3 マスク、4 X線、5 金属材料層、31a 第1の導電性基板、31b 第2の導電性基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィにより導電性基板上に樹脂型を形成する工程と、
前記樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
前記樹脂型を除去する工程と
を備えることを特徴とする微細金型の製造方法。
【請求項2】
前記リソグラフィは、X線リソグラフィである請求項1に記載の微細金型の製造方法。
【請求項3】
前記導電性基板は、樹脂型を形成する面に、導電性基板の構成元素より原子番号が小さい元素からなる層を有する請求項1または2に記載の微細金型の製造方法。
【請求項4】
前記リソグラフィは、ネガレジストを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の微細金型の製造方法。
【請求項5】
前記リソグラフィは、ポジレジストを用いる微細金型の製造方法であって、
リソグラフィにより第1の導電性基板上に樹脂型を形成する前記工程の後に、
樹脂型の頂上部に第2の導電性基板を形成する工程と、
第1の導電性基板を除去する工程と
を備える請求項1から3のいずれかに記載の微細金型の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造した微細金型。
【請求項7】
請求項6に記載の微細金型により製造する微細構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−137092(P2006−137092A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328981(P2004−328981)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】