説明

心不全の予防又は治療のための医薬組成物

【課題】心不全の予防若しくは治療等のための医薬組成物の提供。
【解決手段】プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルシウムチャンネルブロッカーを含有してもよい医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルチウムチャンネルブロッカーを含有してもよい、心不全の予防若しくは治療のため又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤の薬理的に有効な量を、更にカルチウムチャンネルブロッカーの薬理的に有効な量を温血動物(特に、人)に投与することにより、心不全を予防若しくは治療する方法又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発を予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プラバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害剤は、抗高脂血症剤としてよく知られた薬剤であり、市販もされている(例えば、米国特許第4,346,227号、米国特許第4,444,784号公報、米国特許第4,231,938号公報、米国特許第5,856,336号公報、米国特許第5,260,440号公報等)。
【0004】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤は、血圧降下剤としてよく知られた薬剤であり、多くの薬剤が市販されている(例えば、米国特許第5,138,069号、米国特許第5,196,444号、米国特許第5,616,599号等)。
【0005】
又、カルシウムチャンネルブロッカーも、血圧降下剤としてよく知られた薬剤であり、多くの薬剤が市販されている(例えば、米国特許第3,485,847号、米国特許第3,985,758号、米国特許第4,572,909号等)。
【0006】
これらの薬剤を組合せた薬剤としては、アンジオテンシンII受容体拮抗剤とHMG−CoA還元酵素阻害作用を有するピリジン誘導体とを組合せてなる医薬(特に、循環器系疾患、特開平9−323940号公報)、アンジオテンシンII受容体拮抗剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤からなる医薬組成物(特に、抗動脈硬化剤、特開平10−81633号公報)、アムロジピンとアトロバスタチンとからなる医薬組成物(特に、心疾患の危険因子抑制剤、国際公開99/11259号公報)、アトロバスタチンと血圧降下剤からなる医薬組成物(特に、心疾患の危険因子抑制剤、国際公開99/11260号公報)、アムロジピンとスタチン類とからなる医薬組成物(特に、心疾患の危険因子抑制剤、国際公開99/11263号公報)等が知られているが、プラバスタチン等の特定のHMG−CoA還元酵素阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなる心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及び/又はカルシウムチャンネルブロッカーからなる医薬組成物について、長年に亘り鋭意研究を行った結果、特定の薬剤からなる医薬組成物が優れた左心室肥大抑制効果を有し、心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルシウムチャンネルブロッカーを含有してもよい、心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤の薬理的に有効な量を、更にカルシウムチャンネルブロッカーの薬理的に有効な量を温血動物(特に、人)に投与することにより、心不全を予防若しくは治療する方法又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発を予防する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物は、有効成分として、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルシウムチャンネルブロッカーを含有してもよい。
【0011】
本発明の医薬組成物における有効成分の一つであるプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤は、好適には、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン又はZD−4522であり、更に好適には、プラバスタチン、シンバスタチン又はZD−4522であり、より好適には、プラバスタチン又はシンバスタチンであり、最も好適には、プラバスタチンである。
【0012】
以下に、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤の平面構造式を示す。
【0013】
【化1】

プラバスタチンは、特開昭57−2240号公報、米国特許第4,346,227号公報等に記載され、その化学名は、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[(1S,2S,6S,8S,8aR)−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(S)−2−メチルブチリルオキシ]−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフチル]へプタン酸であり、本発明のプラバスタチンは、そのラクトン閉環体又はその薬理上許容される塩(プラバスタチンナトリウム塩等)を包含する。
【0014】
シンバスタチンは、特開昭56−122375号公報、米国特許第4,444,784号公報等に記載され、その化学名は、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−3,7−ジメチル−8−[2−[(2R,4R)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル] 2,2−ジメチルブチレートであり、本発明のロバスタチンは、そのラクトン開環体又はラクトン開環体の薬理上許容される塩(ナトリウム塩等)を包含する。
【0015】
ロバスタチンは、特開昭57−163374号公報、米国特許第4,231,938号公報等に記載され、その化学名は、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−3,7−ジメチル−8−[2−[(2R,4R)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル] (S)−2−メチルブチレートであり、本発明のロバスタチンは、そのラクトン開環体又はラクトン開環体の薬理上許容される塩(ナトリウム塩等)を包含する。
【0016】
ピタバスタチンは、特開平1−279866号公報、米国特許第5,856,336号公報等に記載され、その化学名は、(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−3−キノリル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸であり、本発明のピタバスタチンは、そのラクトン閉環体又はその薬理上許容される塩(カルシウム塩等)を包含する。
【0017】
ZD−4522(ロスバスタチン)は、特開平5−178841号公報、米国特許第5,260,440号公報等に記載され、その化学名は、(+)−(3R,5S)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メタンスルホニルアミノ)ピリジン−5−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6(E)−ヘプタン酸であり、本発明のZD−4522(ロスバスタチン)は、そのラクトン閉環体又はその薬理上許容される塩(ナトリウム塩、カルシウム塩等)を包含する。
【0018】
本発明の医薬組成物における有効成分の一つであるアンジオテンシンII受容体拮抗剤は、代表的なものとして、例えば、米国特許第5,138,069号公報、国際公開第91/14679号公報、EP公開第433,983号公報、米国特許第5,354,766号公報、米国特許第5,196,444号公報、米国特許第5,616,599号公報、EP公開第502,314号公報等に記載されているビフェニルテトラゾール化合物又はビフェニルカルボン酸化合物であり、好適には、ビフェニルテトラゾール化合物であり、更に好適には、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン又はテルミサルタンであり、より好適には、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンであり、更により好適には、ロサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンであり、更に好適には、ロサルタン又はオルメサルタンであり、最も好適には、オルメサルタンである。
【0019】
以下に、アンジオテンシンII受容体拮抗剤の代表的なものの平面構造式を示す。
【0020】
【化2】

ロサルタン(DUP−753)は、特開昭63−23868号公報、米国特許第5,138,069号公報等に記載され、その化学名は、2−ブチル−4−クロロ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−1H−イミダゾール−5−メタノールであり、本発明のロサルタンは、その薬理上許容される塩(ロサルタン・カリウム塩等)を包含する。
【0021】
イルベサルタン(SR−47436)は、特表平4−506222号公報、国際公開91/14679号公報等に記載され、その化学名は、2−N−ブチル−4−スピロシクロペンタン−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−2−イミダゾリン−5−オンであり、本発明のイルベサルタンは、その薬理上許容される塩を包含する。
【0022】
バルサルタン(CGP−48933)は、特開平4−235149号公報、EP公開第433983号公報等に記載され、その化学名は、(S)−N−バレリル−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]バリンであり、本発明のバルサルタンは、その薬理上許容されるエステル又はその薬理上許容される塩を包含する。
【0023】
カンデサルタン(TCV−116)は、特開平4−364171号公報、米国特許第5,196,444号公報等に記載され、その化学名は、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2−エトキシ−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシレートであり、本発明のカンデサルタンは、そのカルボン酸誘導体、カルボン酸誘導体の薬理上許容されるエステル(TCV−116等)又はその薬理上許容される塩を包含する。
【0024】
オルメサルタン(CS−866)は、特開平5−78328号公報、米国特許第5,616,599号公報等に記載され、その化学名は、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル 4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]イミダゾール−5−カルボキシレートであり、本発明のオルメサルタンは、そのカルボン酸誘導体、カルボン酸誘導体の薬理上許容されるエステル(CS−866等)又はその薬理上許容される塩を包含する。
【0025】
テルミサルタン(BIBR−277)は、特開平4−346978号公報、米国特許第5,591,762号公報、EP公開第502,314号公報等に記載され、その化学名は、4’−[[2−n−プロピル−4−メチル−6−(1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−ベンズイミダゾール−1−イル]メチル]−ビフェニル−2−カルボキシレートであり、本発明のテルミサルタンは、そのカルボン酸誘導体、カルボン酸誘導体の薬理上許容されるエステル(BIBR−277等)又はその薬理上許容される塩を包含する。
【0026】
本発明の医薬組成物における有効成分の一つであるカルシウムチャンネルブロッカーは、代表的なものとして、例えば、米国特許第3,485,847号公報、米国特許第3,985,758号公報、米国特許第4,572,909号公報、米国特許第4,772,596号公報、米国特許第4,892,875号公報等に記載されているニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンであり、好適には、ニカルジピン、アムロジピン又はアゼルニジピンであり、特に好適には、アムロジピン又はアゼルニジピンである。
【0027】
以下に、カルシウムチャンネルブロッカーの代表的なものの平面構造式を示す。
【0028】
【化3】

ニフェジピンは、米国特許第3,485,847号公報等に記載され、その化学名は、2,6−ジメチル−3,5−ジメトキシカルボニル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンであり、本発明のニフェジピンは、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)を包含する。
【0029】
ニカルジピンは、米国特許第3,985,758号公報、特開昭49−108082号公報等に記載され、その化学名は、2,6−ジメチル−3−[2−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)エトキシカルボニル]−5−メトキシカルボニル−4−(3−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンであり、本発明のニカルジピンは、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)を包含する。
【0030】
アムロジピンは、米国特許第4,572,909号公報、特開昭58−167569号公報等に記載され、その化学名は、2−(2−アミノエトキシメチル)−4−(2−クロロフェニル)−3−エトキシカルボニル−5−メトキシカルボニル−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジンであり、本発明のアムロジピンは、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)を包含する。
【0031】
アゼルニジピンは、米国特許第4,772,596号公報、特開昭63−253082号公報等に記載され、その化学名は、2−アミノ−3−(1−ジフェニルメチル−3−アゼチジニルオキシカルボニル)−5−イソプロポキシカルボニル−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンであり、本発明のアゼルニジピンは、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)を包含する。
【0032】
マニジピンは、米国特許第4,892,875号公報、特開昭58−201765号公報等に記載され、その化学名は、2,6−ジメチル−3−[2−(4−ジフェニルメチル−1−ピペラジニル)エトキシカルボニル]−5−メトキシカルボニル−4−(3−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンであり、本発明のマニジピンは、その薬理上許容される塩(塩酸塩等)を包含する。
【0033】
又、上記化合物が不斉炭素を有する場合は、本発明の、特定のHMG−CoA還元酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、及び/又はカルシウムチャンネルブロッカーは、光学異性体及びそれらの異性体の混合物をも包含する。更に、上記化合物の水和物も包含する。
【0034】
本発明において、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤群から選択された1種又は2種以上の薬剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤から選択された1種又は2種以上の薬剤が組合されて使用される。更に、上記HMG−CoAリダクターゼ阻害剤群から選択された1種又は2種以上の薬剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤から選択された1種又は2種以上の薬剤との組合せに加えて、必要に応じて、カルシウムチャンネルブロッカーから選択された1種又は2種以上の薬剤が組合されて使用される。
【0035】
本発明の医薬組成物の好適な態様は、
(1)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン又はZD−4522である医薬組成物、
(2)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン又はZD−4522である医薬組成物、
(3)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン又はシンバスタチンである医薬組成物、
(4)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチンである医薬組成物、
(5)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ビフェニルテトラゾール化合物又はビフェニルカルボン酸化合物である医薬組成物、
(6)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ビフェニルテトラゾール化合物である医薬組成物、
(7)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン又はテルミサルタンである医薬組成物、
(8)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンである医薬組成物、
(9)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンである医薬組成物、
(10)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン又はオルメサルタンである医薬組成物、
(11)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタンである医薬組成物、
(12)有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、オルメサルタンである医薬組成物、
(13)有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンである医薬組成物、
(14)有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニカルジピン、アムロジピン又はアゼルニジピンである医薬組成物又は
(15)有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、アムロジピン又はアゼルニジピンである医薬組成物
をあげることができる。
【0036】
又、有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤を(1)−(4)からなる群から選択し、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤を(5)−(12)からなる群から選択して、これらを任意に組合せて得られる医薬組成物及びこれらの医薬組成物に、更に含有してもよい有効成分のカルチウムチャンネルブロッカーを(13)−(15)からなる群から選択し、これらを任意に組合せて得られる医薬組成物も好適であり、例えば、以下のものをあげることができる。
(16)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン又はZD−4522であり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ビフェニルテトラゾール化合物であり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンである医薬組成物、
(17)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン又はZD−4522であり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ビフェニルテトラゾール化合物であり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンである医薬組成物、
(18)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン又はZD−4522であり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン又はテルミサルタンであり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンである医薬組成物、
(19)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、シンバスタチン又はZD−4522であり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンであり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン又はマニジピンである医薬組成物、
(20)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン又はシンバスタチンであり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン、カンデサルタン又はオルメサルタンであり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、ニカルジピン、アムロジピン又はアゼルニジピンである医薬組成物、
(21)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチンであり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、ロサルタン又はオルメサルタンであり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、アムロジピン又はアゼルニジピンである医薬組成物、又は
(22)有効成分のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチンであり、有効成分のアンジオテンシンII受容体拮抗剤が、オルメサルタンであり、更に含有してもよい有効成分のカルシウムチャンネルブロッカーが、アムロジピン又はアゼルニジピンである医薬組成物。
【発明の効果】
【0037】
本発明のプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルシウムチャンネルブロッカーを含有してもよい医薬組成物は、優れた左心室肥大抑制効果を有し、毒性も弱いため、温血動物(特に、人)に対する心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン及びZD−4522からなる群から選択されるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤とからなり、更にカルシウムチャンネルブロッカーを含有してもよい医薬組成物は、優れた左心室肥大抑制効果を有し、毒性も弱いため、温血動物(特に、人)に対する心不全の予防若しくは治療のための又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物として有用である。
【0039】
本発明によれば、プラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤が組合せられ、更に、必要に応じて、カルチウムチャンネルブロッカーが組合せられて、使用されることにより各々単剤及びプラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤を含まない併用剤と比べ、優れた効果を示す。このような効果は、必ずしも、各系統の薬剤が同時に体内に存在しなくてももたらされる。
【0040】
即ち、各系統薬剤が同時にある程度以上の血中濃度を有さなくても効果を示すのである。推測によれば、本発明に使用される各系統の薬剤は、共に、生体内に取り込まれて受容体に到達すれば、生体内の「スイッチ」を入れる作用を果たし、従って、投与後の経過時間につれてもはやその血中濃度では作用を示さないように見えても、実際は「スイッチ」はすでに入っており、一方の系統の物質が有する心不全の予防若しくは治療効果又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防効果が奏される。この状態において、他方の系統の薬剤が投与されると、その薬剤が有する心不全の予防若しくは治療効果又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防効果に加えて、先に投与された薬剤の効果が合さり、優れた効果が得られる。無論、臨床上は、各系統の薬剤が同時に投与されることが便宜であり、それ故、プラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤とアンジオテンシンII受容体拮抗剤、更に、必要に応じて、カルシウムチャンネルブロッカーが加えられた配合剤の形態で投与することができる。製剤技術上、各薬剤を物理的に同時に混合することが好ましくない場合等は、それぞれの単剤又はある単剤と他の合剤を同時に投与することもできる。また、前述のとおり、各系統の薬剤は同時に投与しなくても優れた効果を奏するので、それぞれの単剤又はある単剤と他の合剤を適当な間隔を置いて相前後して投与することもできる。かかる各系統の薬剤によりもたらされる優れた効果が達成されるのに許容され最大限の各系統薬剤の投与間隔は、臨床上又は動物実験により確認することができる。
【0041】
本発明において使用されるプラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及びカルシウムチャンネルブロッカーは、一般的に経口ルートである。従って、各系統の薬剤は、それぞれ単独で別々の単位投与形態に、又は混合して物理的に1個の単位投与形態に調製することができる。かかる単位投与形態は、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等であり得、通常の製剤技術により調製することができる。
【0042】
これらの製剤は、必要に応じて、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤等を用いて周知の方法で製造することができる。
【0043】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤:及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤から選択される賦形剤を単独又は2以上のものを組み合わせて使用することができ、好適には、糖誘導体であり、特に好適には乳糖である。
【0044】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;脂肪酸ナトリウム塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体から選択される滑沢剤を単独又は2以上のものを組み合わせて使用することができ、好適には、ステアリン酸金属塩であり、特に好適にはステアリン酸マグネシウムである。
【0045】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物から選択される結合剤を単独又は2以上のものを組み合わせて使用することができ、好適には、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0046】
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類から選択される崩壊剤を単独又は2以上のものを組み合わせて使用することができ、好適には、セルロース誘導体であり、特に好適には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0047】
更に必要に応じて、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸から選択されるものを単独又は2以上のものを組み合わせて使用することができる。)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)、希釈剤等の添加剤を配合してもよい。
【0048】
本発明において使用されるプラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及びカルシウムチャンネルブロッカーの投与量と投与比率は、個々の薬剤の活性、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により大幅に変化し得る。例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗剤に例をとると、ロサルタンとオルメサルタンとでは、高血圧ラットを用いたイン・ビボ(in vivo)の活性は異なるので、これら2薬剤の投与量は理論的には1桁かそれ以上異なり得る。又、プラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤は、本来的な用途である抗高脂血症剤としての用量よりも、本発明の心不全の予防若しくは治療又は虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防の用途の場合はそれらの用量は低めになり得、又、アンジオテンシンII受容体拮抗剤との併用、更にカルシウムブロッカーを組合せた3剤併用による優れた効果によって、それらの用量は更に低下し得る。例えば、プラバスタチンとオルメサルタンを本発明の目的で使用する場合は、その本来的な用途である抗高脂血症剤及び血圧降下剤としての用量(mg薬量/日)である約5−100mg及び0.1−200mgと比べて低く、それぞれ約1−80mg(好適には、10−40mg)及び0.05−100mg(好適には、10−40mg)であり得る。
【0049】
上述のとおり、本発明において使用されるプラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及び/又はカルシウムチャンネルブロッカーの用量は大幅に変わり得るが、一般的に言って、それらの用量は(mg薬量/日)は、それぞれ、約1−80mg、0.05−100mg及び0.1−100mgであり得る。
【0050】
これら各系統の薬剤の投与量の比率も、また、大幅に変わり得るが、一般的に言って、プラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及び/又はカルシウムチャンネルブロッカーの投与量比率は、重量率で、それぞれ、1:500:500ないし500:1:1の範囲内であり得る。
【0051】
本発明において使用されるプラバスタチン等の特定のHMG−CoAリダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及び/又はカルシウムチャンネルブロッカーは、それぞれ上記投与量を1日1回、または数回に分割して、それぞれを同時に、又は時間を異にして、別々に、投与される。
【0052】
以下に、実施例、製剤例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
左心室肥大抑制効果
3回の測定の平均血圧が、拡張期にて95−115mmHg(DBP)、収縮期にて160−200mmHg(SBP)であり、かつ血漿中総コレステロール値が240mg/dl以上である患者40名を20名ずつ2群に分け、第1−I群(患者の平均年齢、身長及び体重は、それぞれ、61歳、166cm及び65kgであり、男女比は、14/6であった。)、第1−II群(患者の平均年齢、身長及び体重は、それぞれ、64歳、164cm及び64kgであり、男女比は、14/6であった。)とし、上記範囲の血圧を示し、血漿中総コレステロール値が正常範囲である患者20名を第1−III群(患者の平均年齢、身長及び体重は、それぞれ、62歳、165cm及び66kgであり、男女比は、15/5であった。)とした。更に、左心室サイズの正常標準値を得るべく、正常血圧(〉140/90mmHg)であり、かつ正常な血漿総コレステロール値を示す健常人10名をコントロール群(患者の平均年齢、身長及び体重は、それぞれ、60歳、168cm及び70kgであり、男女比は、7/3であった。)として選択した。
【0054】
プラバスタチン(10mg)、ロサルタン(50mg)及びアムロジピン(5mg)を第1−I群の患者に1日1回、6ヶ月併用投与し、第1−II群の患者にはプラバスタチン投与に代わり食餌療法を施しつつ、ロサルタン(50mg)及びアムロジピン(5mg)を第1−II群の患者に1日1回、6ヶ月併用投与し、更に、ロサルタン(50mg)及びアムロジピン(5mg)を第1−III群の患者に1日1回、6ヶ月併用投与した。
【0055】
これら患者の左心室重量(LV mass、g)及び左心室重量指標(LV mass Index)は、2次元心エコカージオグラフィ(ヒューレットパッカード、ソノス2000型)を用いドップラーカラーフローマッピング法にて、
左心室拡張期直径(LV end−diastolic dimension:EDD)、心室隔壁の厚み(ventricular septum thickness:VS)及び心室背部壁面の厚み(poterior wall thickness:PW)の各パラメーターを測定し、以下の式に従って、算出した。
【0056】
LV mass(g)=0.80 x {1.04 x
[(EDD+VS+PW)−EDD]}+0.6
LV mass Index=LV mass/体表面積(g/m
得られた左心室重量指標(LV mass Index)の値を表1に示す。
尚、コントロール群の左心室重量指標(LV mass Index)は、
83±10g/mであった。
【0057】
(表1)

群 左心室重量指標(LV mass Index)g/m
治療前 治療後
第1−I群 143±12 107±13
第1−II群 142±18 122±11
第1−III群 142±18 122±11
本結果より、治療前に比べた治療後のLV mass退縮度は、それぞれ、第1−I群(プラバスタチン、ロサルタン及びアムロジピン治療群)では、24%退縮であり、第1−II群(食餌療法、ロサルタン及びアムロジピン治療群)では、13%退縮であり、第1−III群(ロサルタン及びアムロジピン治療群)では、13%退縮であり、第1−I群(ププラバスタチン、ロサルタン及びアムロジピン治療群)が優れたLV mass 退縮度を示した。
【0058】
実施例1と同様にして、プラバスタチン10mg及びロサルタン50mg治療群及びプラバスタチン10mg及びオルメサルタン5mg治療群は優れたLV mass 退縮度を示す。
【0059】
又、ラット圧負荷左心室肥大モデルを用いる系において、プラバスタチン及びオルメサルタン又はシンバスタチン及びオルメサルタンを組合せて投与すると、優れた左心室肥大抑制効果が得られる。
実施例2
梗塞隣接領域の心室細胞の肥大抑制効果
(モデルの作成)
体重250〜300 gの雄性ウィスター系ラット(血中コレステロール値は正常)を使用し、試験前より0.32wt%のナトリウムを含有する正常ナトリウム食を与え、飲水は自由に摂取させた。動物は1ケージに5匹を入れ、安定な気温(22±1℃)と湿度の下、標準的な明暗サイクルで管理した部屋で飼育した。左冠動脈前下行枝の結紮手術の24時間後(この日をDay 0とする)に経食道的心エコーを施行し、1群10匹からなる次の4群に動物を無作為に振り分けた:コントロール群(溶媒投与群)、第2−I群(プラバスタチン投与群:飲水中5 mg/kg/day)、第2−II群(CS-866投与群:2 mg/kg/day)、第2−III群(プラバスタチン+CS-866併用群:各5 mg/kg/day、2 mg/kg/day)。
即ち、左冠動脈前下行枝の結紮手術は以下のように行なわれた:ラットはケタミン(90 mg/kg)の腹腔内投与により麻酔した。麻酔後、ラットは14ゲージのポリエチレンカテーテルを介し、小動物用人工呼吸器(Model 683, Harvard Apparatus, Boston, MA)により空気を人工呼吸した。左開胸下、心臓を露出させ、肺動脈分岐と左心房の間で前下行枝を6-0の絹糸にて結紮した。筋肉と皮膚をそれぞれ縫い合わせ閉胸した。正常群ラットでは、糸を冠動脈に通した後に抜き取る操作を行ったが、その他は上と同じ操作を施した。薬剤の投与は群分けの日から4週間実施した。
(梗塞隣接領域の心室細胞の測定)
ラットにヘパリンをした後、心臓を摘出し、37℃で保温し、改変ランゲンドルフ法にて8 ml/minの一定流量で灌流した。心筋細胞と非心筋細胞は、既報に記述した方法(Stewartら, 1994)に従い、コラゲナーゼを用い酵素的に分離した。灌流液には、138 mmol NaCl、4.7 mmol KCl、1.5 mmol CaCl2、1.2 mmol MgCl2、10.0 mmolブドウ糖、10.0 mmolピルビン酸、5 mmol HEPES、20 U/lインスリンを含有する酸素通気したクレブス-ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)緩衝液(pH 7.4)を使用した。5分間灌流し平衡化させた後、灌流液をCa2+非含有のクレブス-ヘンゼライト液に交換し、さらに5分間灌流した。そこで、灌流液に1 mg/mlのコラゲナーゼ-B(Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, IN, USA)を添加した。コラゲナーゼでの灌流を10から15分行った後、心臓からカニューレをはずし、未消化の梗塞部位を除去した。心室中隔を含む左心室を回収し、70 mmol グルタミン酸、25 mmol KCl、10 mmol K2HPO4、10 mmolシュウ酸、10 mmolタウリン、11 mmolブドウ糖、2 mmolピルビン酸、2 mmol ATP、2 mmol クレアチンリン酸、10 mmol HEPES、5 mmol MgCl2を含有する酸素通気したクラフト-ブルレ(Kraft-Brule)緩衝液(pH 7.2)の中で細かく切り刻んだ。得られた細胞分散液は、組織塊を除去するためにフィルターを通した。梗塞隣接領域の心室細胞の大きさを位相差顕微鏡下でトレースし測定した。得られた梗塞隣接領域の心室細胞の大きさの値を表2に示す。
【0060】
(表2)

群 梗塞隣接領域の心室細胞の大きさ(μm2)

正常群 2737
コントロール群 3812
第2−I群 3053
第2−II群 2940
第2−III群 2442
本結果より、治療前に比べた治療後の心臓内の梗塞隣接領域の心室細胞の大きさを、それぞれ、第2−I群(プラバスタチン投与群)では、760μm2退縮させ、第2−II群(オルメサルタン投与群)では、872μm2退縮させ、第2−III群(プラバスタチン及びオルメサルタン投与群)では、1370μm2退縮させ、第2−III群(プラバスタチン及びオルメサルタン投与群)が優れた抑制効果を示した。即ち、オルメサルタンとプラバスタチンを投与した場合、各々の薬剤を単剤投与した場合よりも有意に細胞の大きさを退縮させたことに加え、正常群よりも細胞の大きさを退縮させた。
製剤例1
錠剤
ロサルタン 50.0mg
プラバスタチンナトリウム塩 10.0mg
アムロジピン 5.0mg
乳糖 108.0mg
トウモロコシデンプン 25.0mg
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
200 mg
上記処方の粉末を混合し、打錠機により打錠して、1錠200mgの錠剤とする。
製剤例2
錠剤
ロサルタン 50.0mg
プラバスタチンナトリウム塩 10.0mg
乳糖 113.0mg
トウモロコシデンプン 25.0mg
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
200 mg
上記処方の粉末を混合し、打錠機により打錠して、1錠200mgの錠剤とする。
製剤例3
錠剤
オルメサルタン 5.0mg
プラバスタチンナトリウム塩 10.0mg
乳糖 158.0mg
トウモロコシデンプン 25.0mg
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
200 mg
上記処方の粉末を混合し、打錠機により打錠して、1錠200mgの錠剤とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤からなる心不全の予防又は治療のための医薬組成物。
【請求項2】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤が、オルメサルタンである請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤からなる虚血性冠動脈心疾患の発症若しくは再発の予防のための医薬組成物。
【請求項4】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤が、オルメサルタンである請求項3記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2009−120619(P2009−120619A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56082(P2009−56082)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【分割の表示】特願2001−259399(P2001−259399)の分割
【原出願日】平成13年8月29日(2001.8.29)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】