説明

心不全の処置および/または予防用のオキサゾリジノン類

本発明は、凝固因子Xaの選択的阻害剤の、特に、式(I)のオキサゾリジノン類の、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防のための使用、並びに、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の薬剤の製造のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固因子Xaの選択的阻害剤の、特に、式(I)のオキサゾリジノン類の、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防のための使用、並びに、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の薬剤の製造のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)のオキサゾリジノン類は、WO−A−01/047919から知られており、特に、凝固因子Xaの選択的阻害剤として、そして、抗凝固剤として作用する。
【0003】
式(I)のオキサゾリジノン類は、凝固因子Xaを選択的に阻害する。多数の動物モデル(U. Sinha, P. Ku, J. Malinowski, B. Yan Zhu, R.M. Scarborough, C.K. Marlowe, P.W. Wong, P. Hua Lin, S.J. Hollenbach, Antithrombotic and hemostatic capacity of factor Xa versus thrombin inhibitors in models of venous and arteriovenous thrombosis, European Journal of Pharmacology 2000, 395, 51-59; A. Betz, Recent advances in Factor Xa inhibitors, Expert Opin. Ther. Patents 2001, 11, 1007; K. Tsong Tan, A. Makin, G.Y.H. Lip, Factor X inhibitors, Exp. Opin. Investig. Drugs 2003, 12, 799; J. Ruef, H.A. Katus, New antithrombotic drugs on the horizon, Expert Opin. Investig. Drugs 2003, 12, 781; M.M. Samama, Synthetic direct and indirect factor Xa inhibitors, Thrombosis Research 2002, 106, V267; M.L. Quan, J.M. Smallheer, The race to an orally active Factor Xa inhibitor, Recent advances, J. Current Opinion in Drug Discovery & Development 2004, 7, 460-469 参照)および患者の臨床試験(The Ephesus Study, Blood 2000, 96, 490a; The Penthifra Study, Blood 2000, 96, 490a; The Pentamaks Study, Blood 2000, 96, 490a-491a; The Pentathlon Study, Blood 2000, Vol 96, 491a)で、Xa因子阻害剤の抗血栓作用を立証することが可能であった。従って、Xa因子阻害剤は、好ましくは血栓塞栓性障害の予防および/または処置用の医薬において用いることができる。
【0004】
選択的Xa因子阻害剤は、広い治療域を示す。多数の動物モデルで、選択的Xa因子阻害剤が、出血時間を延長せずに、または、わずかに延長するだけで、抗血栓作用を示すことを立証することが可能であった (RJ Leadly, Coagulationfactor Xa inhibition: biological background and rationale, Curr. Top. Med. Chem. 2001, 1, 151-159 参照)。従って、このクラスの選択的Xa因子阻害剤の抗血栓剤には、個別の投与量は不要である。
【0005】
鬱血性心不全(CHF)または心臓の不全または急性および慢性心不全の類義語である心不全は、心臓が代謝組織の要求に釣り合う速度で血液を送り出すことができないか、または、上昇した充満圧からのみ可能である、病態生理的状態である(W S Colucci, E.Braunwald. Pathophysiology of Heart Failure page 394-420 in Heart Disease, A Textbook of Cardiovascular Medicine, ed. E. Braunwald, WB Saunders Company, 5TH edition)。それは、通常、心筋の収縮の欠陥により、即ち、心筋梗塞または高血圧のために、引き起こされる。心筋の収縮性の障害または心室にかかる過剰な血行力学的負荷、またはその両方の存在下で、心臓は、そのポンプ機能の維持のために数々の適応的メカニズムに依存する。1つの重要なメカニズムは、例えば、最初の病理的事象に応答しての、心臓のリモデリング過程であり、それは、心臓機能の進行性の悪化を導き得る。
【0006】
心不全の病態生理的特徴には、血栓塞栓症の素因となる慢性の凝固促進性(procoagulant)の血液状態が含まれる。臨床試験により、CHFの対象における静脈および動脈血栓症の発生率の増加が立証された[White RH. The epidemiology of venous thromboembolism. Circulation 2003; 107 (23 suppl 1):14-18]。過凝固状態および血栓性事象のマーカーの上昇と、患者における有害事象、および、罹患率と死亡率の上昇を関連づける良い証拠がある。活性化された凝固活性は、TNF、トロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)、D−ダイマー、プロトロンビンフラグメントF1+2、フィブリノペプチドA、IL−6の上昇により証明される(Garg RK et al. Prog Cardiovasc Dis. 1998; 41:225-236. Davis CJ et al. Int J Cardiol 2000; 75:15-21)。
【0007】
過凝固状態、例えば、肺栓塞症(PE)、心筋梗塞、卒中を含む静脈および動脈血栓症は、心臓の機能を悪化させ得、代償不全を引き起こし得、そして、CHFを有する個体の他の器官および組織を損傷し得、かくして、罹患率および死亡率を高める。加えて、CHFは、血栓症およびPEの患者の臨床成績に影響し得、両方の症状が成績を悪くさせる。
【0008】
過凝固状態および血栓症を導く凝固系の活性化におけるそれらの重要な役割に加えて、Xa因子およびトロンビンは、異なる多面的作用を示すことが知られている。かくして、それらは、増殖を誘導する強力な分裂促進因子である。それらは、血管収縮を誘導および/または増強する。トロンビンによるシグナル伝達は、炎症性サイトカインの放出を導く。FXa阻害剤による処置は、それらの血液凝固の阻害に加えて、FXaおよびトロンビンの有糸分裂、血管収縮および炎症刺激を抑制し得、後者は、トロンビンの生成の阻害によるものである。
【0009】
アスピリンまたはワルファリンによる抗血栓治療は、抗血栓薬を受けていない対象と比較して、臨床事象の割合の減少をもたらした。ワルファリン治療による抗凝固は、CHFによる入院の割合も減少させたが、大出血の割合の増加を代償とした。アスピリンの使用は、CHFによる入院のリスクを高め得る。[1) Dunkman WB, Johnson GR, Carson PE, Bhat G, Farrell L, Cohn JN. Incidence of thromboembolic events in congestive heart failure. The V-HEFT VA Cooperative Studies Group. Circulation 1993; 87 (6 Suppl): V194-V1101. 2) Loh E, Sutton MS, Wun CC, et al. Ventricular dysfunction and risk of stroke after myocardial infarction. N Engl J Med 1997; 336; 251-257. 3) The CONSENSUS Trial Study Group. Effect of enalapril on mortility in severe congestive heart rate. Results of Cooperative North Scandinavian Enalapril Survival Study (CONSENSUS). N Engl J Med 1987, 316:1429-1435. 4) Dries DL, Rosenberg YD, Waclawiw MA, Domanski MJ. Ejection fraction and risk of thromboembolic events in patients with systolic dysfunction and sinus rhythm: evidence for gender differences in the studies of left ventricular dysfunction trials. J Am Coll Cardiol 1997; 29: 1074-1080]。
【発明の概要】
【0010】
この度、驚くべきことに、凝固因子Xaの選択的阻害剤、特に式(I)のオキサゾリジノン類が、心不全および/または心不全に関連する障害の予防および/または処置にも適することが見出された。
【0011】
従って、本発明は、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の医薬または医薬組成物の製造のための、選択的Xa因子阻害剤の使用に関する。
【0012】
従って、本発明は、特に、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の医薬または医薬組成物の製造のための、式(I)
【化1】

[式中、
は、塩素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルの群からのラジカルにより5位で置換されている2−チオフェンであり、
は、D−A−である
{ここで、ラジカル「A」はフェニレンであり
(ここで、基「A」は、オキサゾリジノンへの結合に対してメタ位で、フッ素、塩素、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル、メチルまたはシアノの群からの1個または2個のラジカルにより置換されていることもある)、
ラジカル「D」は、窒素原子を介して「A」に結合しており、結合している窒素原子に隣接してカルボニル基を有し、そして、環内炭素員が、S、NおよびOの群からのヘテロ原子により置き換えられていてもよい、飽和の5員または6員の複素環である}]
の化合物、並びに、それらの医薬的に許容し得る塩、溶媒和物および塩の溶媒和物の使用に関する。
【0013】
ことさら特に好ましいのは、同様に、心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の医薬または医薬組成物の製造のための、次の式
【化2】

を有する化合物5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(リバロキサバン;実施例1)並びにその医薬的に許容し得る塩、溶媒和物および塩の溶媒和物の使用である。
【0014】
今日まで、オキサゾリジノン類は本質的に抗生物質としてのみ記載され、少数の場合でMAO阻害剤およびフィブリノーゲンアンタゴニストとしても記載され(総説:B. Riedl, R. Endermann, Exp. Opin. Ther. Patents 1999, 9, 625)、小さい5−[アシルアミノメチル]基(好ましくは5−[アセチルアミノメチル])が抗菌効果に必須であると思われる。
【0015】
一置換または多置換フェニルラジカルがオキサゾリジノン環のN原子に結合していてもよく、非置換N−メチル−2−チオフェンカルボキサミド残基をオキサゾリジノン環の5位に有していてもよい置換アリール−およびヘテロアリールフェニルオキサゾリジノン類、および、抗菌活性を有する物質としてのそれらの使用は、米国特許US−A−5929248、US−A−5801246、US−A−5756732、US−A−5654435、US−A−5654428およびUS−A−5565571に開示されている。
【0016】
加えて、ベンズアミジンを含有するオキサゾリジノン類は、Xa因子阻害剤またはフィブリノーゲンアンタゴニスト類の合成の合成中間体として知られている(WO−A−99/31092、EP−A−623615)。
【0017】
本発明による化合物は、式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述する式の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、および、式(I)に包含される実施例として後述する化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である(式(I)に包含される後述する化合物が、まだ塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではない場合)。
【0018】
それらの構造次第で、本発明による化合物は、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在できる。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に均一な成分を既知方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できる限り、本発明は、全ての互変異性体を包含する。
【0019】
本発明に関するとして、本発明による化合物の生理的に無害な塩が好ましい。それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も包含される。
【0020】
本発明による化合物の生理的に無害な塩には、無機酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0021】
本発明による化合物の生理的に無害な塩には、通常の塩基の塩、例えば、そして、好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個のC原子を有する有機アミン(例えば、そして、好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩も含まれる。
【0022】
本発明に関して、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態は、溶媒和物と記載される。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。水和物は、本発明に関する溶媒和物として好ましい。
【0023】
加えて、本発明は、本発明の化合物のプロドラッグも包含する。用語「プロドラッグ」には、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらの体内残存時間中に(例えば、代謝または加水分解により)本発明による化合物に変換される化合物が含まれる。
【0024】
本発明に関して、置換基は、断りのない限り、以下の意味を有する:
窒素原子を介して「A」に結合しており、結合している窒素原子に隣接してカルボニル基を有し、環内炭素員が、S、NおよびOの群からのヘテロ原子により置き換えられていてもよい、飽和の5員または6員の複素環は、例えば、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−ピペリジン−1−イル、2−オキソ−ピペラジン−1−イル、2−オキソ−モルホリン−1−イル、3−オキソ−チオモルホリン−4−イル、2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサジナン−1−イル、2−オキソ−イミダゾリジン−1−イルおよび2−オキソ−テトラヒドロピリミジン−1−イルとして言及し得る。
【0025】
式(I)の化合物は、変法
[A]一般式(II)
【化3】

(式中、ラジカルRは上記の意味を有する)
の化合物を、一般式(III)
【化4】

(式中、ラジカルRは上記の意味を有する)
のカルボン酸と、または、対応するハロゲン化カルボニル、好ましくは塩化カルボニルと、または、上記の一般式(III)のカルボン酸の対応する対称または混合カルボン酸無水物と、
不活性溶媒中、必要に応じて活性化剤またはカップリング剤および/または塩基の存在下で反応させ、一般式(I)の化合物を得る、
【0026】
または、変法
[B]一般式(IV)
【化5】

(式中、ラジカルRは上記の意味を有する)
の化合物を、適する選択的酸化剤を用いて、不活性溶媒中、一般式(V)
【化6】

(式中、ラジカルRは上記の意味を有する)
の対応するエポキシドに変換し、
そして、不活性溶媒中、必要に応じて触媒の存在下、一般式(VI)
−NH (VI)
(式中、ラジカルRは上記の意味を有する)
のアミンと反応させ、先ず、一般式(VII)
【化7】

(式中、ラジカルRおよびRは上記の意味を有する)
の化合物を製造し、
そして、続いて、不活性溶媒中、ホスゲンまたはカルボニルジイミダゾール(CDI)などのホスゲン等価物の存在下で環化し、一般式(I)の化合物を得る、
のいずれかにより製造できる。
【0027】
上記の方法に適する溶媒は、これらの場合、反応条件下で不活性である有機溶媒である。これらには、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエチレンまたはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサンまたはシクロヘキサンなどの炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ピリジン、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたは水が含まれる。
上述の溶媒からなる溶媒混合物を用いることも同様に可能である。
【0028】
上記の方法に適する活性化剤またはカップリング剤は、これらの場合では、これらの目的で通常使用される物質、例えば、N'−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド・HCl、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール・HOなどである。
【0029】
適する塩基は、通常の無機または有機塩基である。これらには、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムまたはカリウム、または、アルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムまたはカリウム、または、ナトリウムまたはカリウムメタラートまたはナトリウムまたはカリウムエタノラートまたはカリウムtert−ブトキシド、または、アミド類、例えば、ソーダミド、リチウムビス−(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド、または、アミン類、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、4−N,N−ジメチルアミノピリジンまたはピリジンが含まれる。
塩基は、これらの場合、一般式(II)の化合物1molを基準として、1ないし5mol、好ましくは1ないし2molの量で用いることができる。
【0030】
これらの反応は、一般的に、−78℃ないし還流温度の温度範囲で、好ましくは0℃ないし還流温度の範囲で行う。
これらの反応は、大気圧、加圧または減圧下(例えば、0.5ないし5barの範囲)で、一般的に大気圧下で、実施できる。
【0031】
エポキシドの製造および場合により実施するスルホン、スルホキシドまたはN−オキシドへの酸化の両方に適する選択的酸化剤は、例えば、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、N−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)、モノペルオキシフタル酸または四酸化オスミウムである。
エポキシドの製造に使用する条件は、これらの製造に常套のものである。
【0032】
必要に応じて実施するスルホン、スルホキシドまたはN−オキシドへの酸化工程の詳細な条件について、以下の文献:M.R. Barbachyn et al. J. Med. Chem. 1996, 39, 680 およびWOA97/10223を参照し得る。
【0033】
式(II)、(III)、(IV)および(VI)の化合物は、それ自体当業者に知られているか、または、常套の方法により製造できる。オキサゾリジノン類について、特に、必要とされる5−(アミノメチル)−2−オキソオキサゾリジン類について、WO−A−98/01446;WO−A−93/23384;WO−A−97/03072;J.A. Tucker et al. J. Med. Chem. 1998, 41, 3727; S.J. Brickner et al. J. Med. Chem. 1996, 39, 673; W.A. Gregory et al. J. Med. Chem. 1989, 32, 1673 参照。
一般式(I)の化合物の合成方法は、WO−A−01/047919に詳細に記載されている。
【0034】
本発明の目的上、「心不全(heart failure)」には、特に、心臓の不全(cardiac failure)、慢性心不全、鬱血性心不全、鬱血性の心臓の不全、急性心不全、急性非代償性心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、右心不全、左心不全、心機能不全(heart insufficiency)、心臓の機能不全(cardiac insufficiency)、慢性の心臓の機能不全、心代償不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全、心筋症、拡張型心筋症および肥大型心筋症などの深刻な障害が含まれる。
【0035】
本発明の目的上、「心不全に関連する障害」には、特に、心臓の機能の進行性の悪化、心臓の代償不全、およびそれによる他の器官および組織の損傷、過凝固状態、動脈および静脈の血栓塞栓性事象、肺塞栓症(PE)、心筋梗塞および卒中が含まれる。
【0036】
さらに、本発明は、選択的Xa因子阻害剤の、または、少なくとも1種の選択的Xa因子阻害剤を1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤または賦形剤と共に含む医薬の有効量を使用する、ヒトまたは動物の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法に関する。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物の、または、少なくとも1種の式(I)の化合物を1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤または賦形剤と共に含む医薬の有効量を使用する、ヒトまたは動物の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法に関する。
【0038】
さらに、本発明は、少なくとも化合物5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド、または、少なくとも化合物5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミドを1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤または賦形剤と共に含む医薬の有効量を使用する、ヒトまたは動物の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法に関する。
【0039】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による式(I)の化合物を、1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤または賦形剤と共に含む医薬および医薬組成物を提供し、その医薬および医薬組成物は、上記の適応症に使用できる。
【0040】
ある実施態様では、本発明は、微小血管系および大血管系(macrovasculature)における血栓形成の防止方法を提供し、その方法は、哺乳動物に長期的に治療的有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物、例えばリバロキサバンを投与することを含む。
【0041】
他の実施態様では、この方法は、哺乳動物で起こる生存の改善を提供し、その方法は、哺乳動物に長期的に治療的有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物、例えばリバロキサバンを投与する段階を含み、ここで、先に特定された事象の発生頻度は、認定された標準的治療により確立される発生頻度と比較して、低減される。
【0042】
他の実施態様では、式(I)の化合物は、心不全を有する広い範囲の個体(人工心臓弁を有する、および有さない心不全の患者、心房細動、冠動脈心疾患の患者、彼らの病気のために入院している患者(医学的に病気の患者)も意味する)について、罹患率と死亡率を改善するのに適する。
【0043】
他の実施態様では、リバロキサバンは、心不全を有する広い範囲の個体(人工心臓弁を有する、および有さない心不全の患者、心房細動、冠動脈心疾患の患者、彼らの病気のために入院している患者(医学的に病気の患者)も意味する)について、罹患率と死亡率を改善するのに適する。
【0044】
他の実施態様では、この方法は、個体の処置に必要とされる入院回数の低減を提供し、この方法は、哺乳動物に長期的に治療的有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物、例えばリバロキサバンを投与する段階を含み、ここで、先に特定された事象の発生頻度は、認定された標準的治療により確立される発生頻度と比較して、低減される。
【0045】
他の実施態様では、この方法は、現行のガイドラインに基づく標準的な処置を代表する他の抗凝固および抗血小板療法の、哺乳動物における補充療法を提供し、その方法は、哺乳動物に長期的に治療的有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物、例えばリバロキサバンを投与する段階を含む。哺乳動物で観察される事象の発生頻度は、補充される認定された標準的治療により確立される発生頻度と比較して、同等であるか、または低減される。
【0046】
他の実施態様では、本発明は、また、
A)式(I)の化合物と、
B)他の医薬の薬剤、特に、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、線維素溶解薬、抗高脂血症薬、冠血管治療剤および/または血管拡張剤、
の組み合わせに関する。
【0047】
本願の文脈における「組み合わせ」は、全ての成分を含む投与形(いわゆる固定された用量の組み合わせ)、および、全ての成分を相互に分離させておく組み合わせパッケージのみならず、それらが同じ疾患の予防および/または処置に使用されるならば、同時または一時的にずらして投与される成分でもある。さらに、2種またはそれ以上の薬剤を共に組み合わせることも可能であり、それらは、各々、二成分または多成分の組み合わせである。
組み合わせの個々の薬剤は、文献から知られており、殆どは購入できる。
【0048】
血小板凝集阻害剤は、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリンなど)、チクロピジン(チクリド(Ticlid))およびクロピドグレル(プラビックス)、または、インテグリンアンタゴニスト、例えば、糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン(lamifiban)、レフラダフィバン(lefradafiban)およびフラダフィバン(fradafiban)である。
【0049】
抗凝固剤は、例えば、ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)、例えば、チンザパリン、セルトパリン(certoparin)、パルナパリン、ナドロパリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、ダルテパリン、ダナパロイド、および、直接的トロンビン阻害剤(DTI)である。
【0050】
直接的トロンビン阻害剤は、例えば、以下のものである:
・エクサンタ(Exanta)(キシメラガトラン)
【化8】

【0051】
・レンディックス(Rendix)(ダビガトラン)
【化9】

【0052】
・AZD−0837[[AstraZeneca Annual Report 2006, March 19th, 2007]
【化10】

【0053】
・SSR−182289A[J. Lorrain et al. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2003, 304, 567-574; J.-M. Altenburger et al. Bioorg.Med.Chem. 2004, 12, 1713-1730]
【化11】

・TGN−167[S. Combe et al. Blood 2005, 106, abstract 1863 (ASH 2005)]
【0054】
・N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−フェニルアラニル−N−[(1R)−1−(ジヒドロキシボラニル)−4−メトキシブチル]−L−プロリンアミド[WO2005/084685]
【化12】

【0055】
・ソフィガトラン(Sofigatran)[WHO Drug Information 2007, 21, 77]
【化13】

・MCC−977[Mitsubishi Pharma website pipeline 2006, July 25th, 2006]
・MPC−0920[Press Release: "Myriad Genetics Begins Phase 1 Trial of Anti-Thrombin Drug MPC-0920", Myriad Genetics Inc, May 2nd, 2006]
【0056】
プラスミノーゲン活性化因子(血栓溶解剤/線維素溶解剤)は、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、ストレプトキナーゼ、レテプラーゼおよびウロキナーゼである。
【0057】
抗高脂血症薬は、特に、HMG−CoA−(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA)レダクターゼ阻害剤、例えば、ロバスタチン(メバコル(Mevacor);US4,231,938)、シンバスタチン(ゾコル(Zocor);US4,444,784)、プラバスタチン(プラバコール(Pravachol);US4,346,227)、フルバスタチン(レスコール(Lescol);US5,354,772)およびアトルバスタチン(リピトール;US5,273,995)。
【0058】
冠血管治療剤/血管拡張剤は、特に、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えば、カプトプリル、リシノプリル、エナラプリル、ラミプリル、シラザプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、キナプリルおよびペリンドプリル、または、AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト、例えば、エンブサルタン(embusartan)(US5,863,930)、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタンおよびテミサルタン(temisartan)、または、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、例えば、カルベジロール、アルプレノロール、ビソプロロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、カルテオロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール(propanolol)およびチモロール、または、アルファ1アドレナリン受容体アンタゴニスト、例えば、プラゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシンおよびテラゾシン、または、利尿剤、例えば、ヒドロクロロチアジド、フロセミド、ブメタニド、ピレタニド、トラセミド、アミロライドおよびジヒドララジン、または、アルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンおよびエプレレノン、または、陽性変力作用薬、例えば、ジゴキシン、カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ベラパミルおよびジルチアゼム、または、ジヒドロピリジン誘導体、例えば、ニフェジピン(アダラート)およびニトレンジピン(バイオテンシン(Bayotensin))、または、一酸化窒素のドナー、例えば、5−一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビドおよび三硝酸グリセリン、または、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の増加をもたらす化合物、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤(WO98/16223、WO98/16507、WO98/23619、WO00/06567、WO00/06568、WO00/06569、WO00/21954、WO00/66582、WO01/17998、WO01/19776、WO01/19355、WO01/19780、WO01/19778、WO07/045366、WO07/045367、WO07/045369、WO07/045370、WO07/045433)である。
【0059】
さらに、本発明は、少なくとも1種の本発明による化合物を、1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含む薬剤、および、上述の目的でのそれらの使用に関する。
【0060】
さらに、本発明は、少なくとも1種の本発明による化合物を、1種またはそれ以上の上記の併用薬と共に含む、特に上述の疾患の予防および/または処置に使用するための薬剤に関する。
【0061】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、耳経路で、または、インプラントもしくはステントとして、投与できる。
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適する投与形で投与できる。
【0062】
経口投与には、先行技術に準じて機能し、本発明による化合物を迅速に、かつ/または、改変された様式で放出し、本発明による化合物を結晶形および/または無定形および/または溶解形で含有する投与形、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、胃液耐性、遅延溶解または不溶性の被覆を有し、本発明による化合物の放出を制御するもの)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、または、フィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤が適する。
【0063】
非経腸投与は、吸収段階を含めずに(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内投与)、または、吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内投与)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形には、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤の形態の注射および点滴用製剤が含まれる。
【0064】
他の投与経路には、例えば、吸入用製剤(粉末吸入器、噴霧器を含む)、点鼻薬、液またはスプレー、舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、経口または眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、プラスター)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントが適する。
【0065】
経口または非経腸投与、特に、経口および静脈内投与が好ましい。
【0066】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性の、医薬的に適する添加物と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの添加物には、担体(例えば結晶セルロース、ラクトースまたはマンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味または臭気の矯正剤が含まれる。
【0067】
一般に、非経腸投与で有効な結果を達成するために、約0.001ないし30mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし1mg/体重kgの量を投与するのが有利であると見出された。経口投与では、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし30mg/体重kg、ことさら特に好ましくは1ないし30mg/体重kgである。
【0068】
それにも拘わらず、上述の量から逸脱することが必要なことがある。即ち、体重、投与経路、活性物質に対する個体の応答、製剤の性質および投与を行う時間または間隔に応じる。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方、上述の上限を超えなければならない場合もある。大量投与の場合、これらを1日に亘る複数の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0069】
以下の実施例により、本発明を例示説明する;しかしながら、これらの実施例は、本発明をどのようにも限定することを意味しない。
以下の試験および実施例における百分率は、断りの無い限り、重量による;部は、重量による。液体/液体溶液について報告される溶媒比、希釈比および濃度は、各々体積に基づく。
【実施例】
【0070】
実施例
A. 製造例
出発物質
出発物質の合成は、WO−A−01/047919に詳細に記載されている。
【0071】
合成の実施例
【化14】

【表1】

合成実施例の合成は、WO−A−01/047919に記載されている。
【0072】
B. 生理的活性の評価
1. 式(I)の化合物の生理的活性
式(I)の化合物は、特に凝固因子Xaの選択的阻害剤として作用し、プラスミンまたはトリプシンなどの他のセリンプロテアーゼを阻害しないか、または、顕著に高い濃度でのみ阻害する。
【0073】
凝固因子Xaの阻害剤は、Xa因子阻害のIC50値が、他のセリンプロテアーゼ、特にプラスミンおよびトリプシンの阻害のIC50値よりも、100倍、好ましくは500倍、特に1000倍小さいとき、「選択的」と呼ばれ、選択性の試験方法に関して、下記の実施例A.a.1)およびA.a.2)の試験方法を参照する。
【0074】
式(I)の化合物の特に有利な生物学的特性は、以下の方法により確認できる。
a)試験の説明(インビトロ)
a.1)Xa因子阻害の測定
ヒトXa因子(FXa)の酵素活性を、FXa特異的発色基質の変換により測定した。この場合、Xa因子は、発色基質からp−ニトロアニリンを除去する。測定は、マイクロタイタープレートで以下の通りに実施した。
【0075】
試験物質を様々な濃度でDMSOに溶解し、ヒトFXa(0.5nmol/l、50mmol/lトリスバッファー[C,C,C−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、150mmol/l NaCl、0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)、pH=8.3に溶解)と、25℃で10分間インキュベートした。純粋なDMSOは対照として役立つ。次いで、発色基質(150μmol/l Pefachrome(登録商標) FXa、Pentapharm より)を添加した。25℃で20分間のインキュベーションの後、405nmの吸光度を測定した。試験物質を含む試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照混合物と比較し、そこからIC50値を算出した。
【0076】
a.2)選択性の測定
トリプシン、プラスミンなどの他のヒトセリンプロテアーゼの試験物質による阻害を調べることにより、選択的FXa阻害を立証した。トリプシン(500mU/ml)およびプラスミン(3.2nmol/l)の酵素活性を、これらの酵素をトリスバッファー(100mmol/l、20mmol/l CaCl、pH=8.0)に溶解し、試験物質または溶媒と10分間インキュベートすることにより測定した。次いで、適切な特異的発色基質(Boehringer Mannheim の Chromozym Trypsin(登録商標)、Boehringer Mannheim の Chromozym Plasmin(登録商標))の添加により酵素反応を開始し、20分後に吸光度を405nmで測定した。全ての測定は37℃で実行した。試験物質を含む試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照サンプルと比較し、そこからIC50値を算出した。
【0077】
a.3)抗凝固作用の測定
試験物質の抗凝固作用をヒトの血漿においてインビトロで測定した。この目的で、クエン酸ナトリウム/血液の混合比1/9で、0.11モル濃度クエン酸ナトリウム溶液中にヒトの血液を採取した。採取後に血液を徹底的に混合し、約2000gで10分間遠心分離した。上清をピペットで取り出した。市販の試験キット(Boehringer Mannheim の Neoplastin(登録商標))を使用して、プロトロンビン時間(PT、同義語:クイック試験(Quick's test))を様々な濃度の試験物質または適する溶媒の存在下で測定した。試験化合物を血漿と37℃で10分間インキュベートした。次いで、トロンボプラスチンの添加により凝固を誘導し、凝固の開始時間を測定した。プロトロンビン時間の倍増をもたらす試験物質の濃度を見出した。
【0078】
b)抗血栓作用の測定(インビボ)
b)動静脈シャントモデル(ラット)
絶食している体重200−250gのオスのラット(系統:HSD CPB:WU)を、Rompun/Ketavet 溶液(12mg/kg/50mg/kg)で麻酔した。Christopher N. Berry et al., Br. J. Pharmacol. (1994), 113, 1209-1214 により記載されたものに基づく方法により、動静脈シャントで血栓形成を誘導した。この目的で、左頸静脈および右頸動脈を露出させた。長さ10cmのポリエチレンチューブ(PE60)を使用して2本の血管の間に体外シャントを形成させた。このポリエチレンチューブを、血栓生成性表面をもたらすループを形成している粗いナイロン糸を含む長さ3cmのポリエチレンチューブ(PE160)に結ぶことにより、中央で固定した。体外循環を15分間維持した。次いでシャントを除去し、血栓を伴うナイロン糸の重さを直ちに測定した。ナイロン糸の空重量は、実験開始前に見出しておいた。体外循環を設置する前に、試験物質を、尾静脈を介して静脈内に、または、胃管栄養により経口で、覚醒している動物に投与した。
【0079】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明による化合物は、以下の通りに医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明による化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF Co., Ludwigshafen, Germany)10mg、および、ステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明による化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%濃度PVP水溶液(w/w)で造粒する。乾燥後、顆粒をステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を通常の打錠機で打錠する(錠剤の形状:上記参照)。ガイドラインとして、15kNの打錠力を打錠に使用する。
【0080】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明による化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMC Co., Pennsylvania, USA のキサンタンガム)400mgおよび水99g。
経口懸濁剤10mlは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明による化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。混合物を、Rhodigel の膨潤の完了まで、約6時間撹拌する。
【0081】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明による化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明による化合物を、ポリエチレングリコールとポリソルベートの混合物中に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物の完全な溶解まで、撹拌過程を継続する。
【0082】
i.v.液剤:
本発明による化合物を、生理的に適合する溶媒(例えば、等張塩化ナトリウム溶液、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に、飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防用の医薬または医薬組成物を製造するための、式(I)
【化1】

[式中、
は、塩素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルの群からのラジカルにより5位で置換されている2−チオフェンであり、
は、D−A−である
{ここで、ラジカル「A」はフェニレンであり
(ここで、基「A」は、オキサゾリジノンへの結合に対してメタ位で、フッ素、塩素、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル、メチルまたはシアノの群からの1個または2個のラジカルにより置換されていることもある)、
ラジカル「D」は、窒素原子を介して「A」に結合しており、結合している窒素原子に隣接してカルボニル基を有し、そして、環内炭素員が、S、NおよびOの群からのヘテロ原子により置き換えられていてもよい、飽和の5員または6員の複素環である}]
の化合物、または、その医薬的に許容し得る塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物の使用。
【請求項2】
式(I)の化合物が、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
【化2】

または、その医薬的に許容し得る塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
心不全が、心臓の不全、慢性心不全、鬱血性心不全、鬱血性の心臓の不全、急性心不全、急性非代償性心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、右心不全、左心不全、心機能不全、心臓の機能不全、慢性の心臓の機能不全、心代償不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全、心筋症、拡張型心筋症および/または肥大型心筋症であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項4】
心不全に関連する障害が、心臓の機能の進行性の悪化、心臓の代償不全、または、それによる他の器官または組織の損傷、過凝固状態、動脈または静脈の血栓塞栓性事象、肺塞栓症(PE)、心筋梗塞および/または卒中であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
心不全に関連する障害が、心臓の機能の進行性の悪化、心臓の代償不全、または、それによる他の器官および組織の損傷および/または過凝固状態であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
少なくとも1種の請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物の、または、少なくとも1種の請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物を1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤または賦形剤と共に含む医薬の有効量を使用する、ヒトまたは動物の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法。
【請求項7】
心不全が、心臓の不全、慢性心不全、鬱血性心不全、鬱血性の心臓の不全、急性心不全、急性非代償性心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、右心不全、左心不全、心機能不全、心臓の機能不全、慢性の心臓の機能不全、心代償不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全、心筋症、拡張型心筋症および/または肥大型心筋症であることを特徴とする、請求項6に記載の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法。
【請求項8】
心不全に関連する障害が、心臓の機能の進行性の悪化、心臓の代償不全、または、それによる他の器官または組織の損傷、過凝固状態、動脈または静脈の血栓塞栓性事象、肺塞栓症(PE)、心筋梗塞および/または卒中であることを特徴とする、請求項6に記載の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法。
【請求項9】
心不全に関連する障害が、心臓の機能の進行性の悪化、心臓の代償不全、または、それによる他の器官および組織の損傷および/または過凝固状態であることを特徴とする、請求項6に記載の心不全および/または心不全に関連する障害の処置および/または予防方法。

【公表番号】特表2011−506363(P2011−506363A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537292(P2010−537292)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010211
【国際公開番号】WO2009/074249
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【出願人】(397060175)ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー. (28)
【Fターム(参考)】