説明

心拍検出装置

【課題】被験者の体動に伴う体動信号の時系列データから心拍数の実測値を抽出することによって被験者の心拍数を検出する心拍検出装置において、被験者の心拍数として検出される値が被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になることを抑制する。
【解決手段】心拍抽出部(42)が、被験者の体動に伴う体動信号の時系列データから、被験者の心拍数の実測値を抽出する。そして、心拍決定部(43)が、心拍数の実測値の確度を判定し、心拍数の実測値の確度が高いほど心拍数の実測値に近い値を、被験者の心拍数の決定値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍数を検出するための心拍検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被験者の心拍数を検出するための心拍検出装置が知られている。特許文献1には、この種の装置として、生体信号検出装置が記載されている。
【0003】
特許文献1の生体信号検出装置は、被験者の体重が作用するエアマットと、エアマットの空気室の圧力を検出する微差圧センサと、心拍フィルタ等を有する制御装置とを備えている。この生体信号検出装置では、微差圧センサの出力信号を心拍フィルタに通すことによって心拍信号が取り出される。心拍信号は、心拍数の時間関数として整形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この種の心拍検出装置では、心拍数の検出中に被験者が動くこと等が原因で、体動検出手段の体動信号から抽出した心拍数の実測値が、被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になる場合がある。しかし、従来の心拍検出装置では、体動信号から抽出した心拍数の実測値が、特に処理されることなく、被験者の心拍数として検出されていた。このため、被験者の心拍数として検出した値が、被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被験者の体動に伴う体動信号から心拍数の実測値を抽出することによって被験者の心拍数を検出する心拍検出装置において、被験者の心拍数として検出される値が被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、被験者の体動に伴う体動信号を出力する体動検出手段(24)と、上記体動信号の時系列データから上記被験者の心拍数を検出する心拍検出手段(25)とを備えた心拍検出装置(15)を対象とする。そして、この心拍検出装置(15)の上記心拍検出手段(25)は、上記体動信号の時系列データから上記被験者の心拍数の実測値を抽出する心拍抽出手段(42)と、該心拍数の実測値の確度を判定し、該心拍数の実測値の確度が高いほど該心拍数の実測値に近い値を上記被験者の心拍数の決定値とする決定動作を行う心拍決定手段(43)とを備えている。
【0008】
第1の発明では、心拍抽出手段(42)が、体動検出手段(24)から出力された体動信号の時間変化を表す時系列データから、被験者の心拍数の実測値を抽出する。心拍決定手段(43)は、心拍抽出手段(42)によって抽出された心拍数の実測値の確度を判定する。そして、心拍決定手段(43)は、心拍数の実測値の確度が高いほど心拍数の実測値に近い値を、被験者の心拍数の決定値に決定する。このため、心拍数の実測値の確度が低い場合には、被験者の心拍数として、心拍数の実測値、又は心拍数の実測値に近い値が検出されることがない。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記心拍抽出手段(42)が、上記体動信号の時系列データ上の時間において、所定の時間間隔で上記被験者の心拍数の実測値を抽出し、上記心拍決定手段(43)は、上記心拍抽出手段(42)によって抽出された上記心拍数の実測値のそれぞれについて上記決定動作を行う一方、上記決定動作は、該決定動作の対象となっている心拍数の実測値を対象実測値とし、該対象実測値の1つ前の心拍数の実測値を対象として決定された決定値を直前心拍数として、該対象実測値の確度を判定し、該対象実測値の確度が高いほど、上記直前心拍数と該対象実測値との数値間において該対象実測値に近い値を上記決定値とする動作である。
【0010】
第2の発明では、体動信号の時系列データ上の時間における所定の時間間隔で、被験者の心拍数の実測値が抽出される。そして、心拍抽出手段(42)によって抽出された心拍数の実測値毎に、被験者の心拍数の決定値を決定する決定動作が行われる。この第2の発明では、体動信号の時系列データ上の時間における所定の時間間隔で抽出された心拍数の実測値毎の決定動作により、被験者の心拍数の決定値の時系列データが得られることになる。決定動作の対象となる対象実測値から決定値を決定する過程では、対象実測値の確度が高いほど、該対象実測値と直前心拍数との数値間において該対象実測値に近い値を、決定値としている。つまり、決定値は、対象実測値の確度が高いほど対象実測値に追随するように決定され、対象実測値の確度が低いほど直前心拍数からそれほど変化しないように決定される。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記決定動作では、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が小さいほど、該対象実測値の確度が高いと判定される。
【0012】
第3の発明では、決定動作において、対象実測値と直前心拍数との差が小さいほど、対象実測値の確度が高いと判定される。一般的に、人の心拍数は急激に変化することが少ない。このため、この第3の発明では、対象実測値と直前心拍数との差によって、対象実測値の確度が判定される。
【0013】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記決定動作では、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が所定の第1判定値以下となる場合は、該対象実測値が該直前心拍数よりも大きくなる心拍増加の場合の対象実測値の確度と、該対象実測値が該直前心拍数よりも小さくなる心拍減少の場合の対象実測値の確度とが同じになり、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が上記第1判定値よりも大きく該第1判定値よりも大きい第2判定値以下となる場合は、上記心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が上記心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなる。
【0014】
第4の発明では、決定動作において、対象実測値と直前心拍数との差が第1判定値以下となる場合には、心拍増加の場合の対象実測値の確度と、心拍減少の場合の対象実測値の確度とが同じになる。第1判定値を例えば5(回/分)とする場合に、対象実測値から直前心拍数を引いた値が4になる場合の確度と、対象実測値から直前心拍数を引いた値が−4になる場合の確度とが、同じになる。一方、対象実測値と直前心拍数との差が第1判定値よりも大きく第2判定値以下となる場合には、心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が、心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなる。第2判定値を例えば10(回/分)とする場合に、対象実測値から直前心拍数を引いた値が6になる場合の確度の方が、対象実測値から直前心拍数を引いた値が−6になる場合の確度よりも高くなる。ここで、直前心拍数からの心拍数の変化がある程度小さい場合には、心拍数が増える場合も心拍数が減る場合も十分に有り得るのに対して、直前心拍数からの心拍数の変化がある程度大きい場合には、心拍数が増える場合はあるが、心拍数が減る場合はほとんどない。このため、対象実測値が直前心拍数から急激に減る場合に比べて、対象実測値が直前心拍数から急激に増える場合の方が、確度が高いと言える。この第4の発明では、そのような心拍数の変化の特性を考慮して、対象実測値と直前心拍数との差が所定の範囲にある場合の対象実測値の確度が判定される。
【0015】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記心拍抽出手段(42)が、上記体動信号の周波数スペクトルにおいてスペクトル強度(スペクトラム強度)が最大となる最大強度周波数を上記心拍数の実測値として抽出する一方、上記心拍決定手段(43)は、上記最大強度周波数を含む所定の範囲におけるスペクトル強度の平均値に対する、上記最大強度周波数におけるスペクトル強度の比率が大きいほど、上記心拍数の実測値の確度が高いと判定する。
【0016】
第5の発明では、体動信号の周波数スペクトルにおいて、スペクトル強度が最大となる最大強度周波数が、心拍数の実測値として抽出される。そして、最大強度周波数を含む所定の範囲におけるスペクトル強度の平均値に対する、最大強度周波数におけるスペクトル強度の比率が大きいほど、心拍数の実測値の確度が高いと判定される。つまり、最大強度周波数におけるスペクトル強度の大きさが、最大強度周波数の前後の周波数のスペクトル強度の大きさに対して際だつほど、心拍数の実測値の確度が高いと判定される。ここで、心拍数の検出中に被験者に予期せぬ動きがあったり、心拍数の検出中に振動・騒音などのノイズが発生すると、それらに起因する成分が体動信号に含まれてしまう。そのような場合は、心拍に対応するスペクトル強度が、ノイズ等に対応するスペクトル強度に埋もれてしまい、最大強度周波数が被験者の実際の心拍数にならないおそれがある。つまり、心拍に対応するスペクトル強度がノイズ等に対応するスペクトル強度に埋もてしまうような場合は、心拍数の実測値の確度が低くなる。このため、第5の発明では、最大強度周波数におけるスペクトル強度の大きさが、最大強度周波数の前後の周波数のスペクトル強度の大きさに対して際だつほど、心拍数の実測値の確度が高いと判定している。
【0017】
第6の発明は、上記第2乃至第4の何れか1つの発明において、上記決定値の時間変化に基づいて、上記被験者の心拍数の変動周期の検出する心拍周期検出手段(26)を備えている。
【0018】
第6の発明では、決定動作により得られた心拍数の実測値毎の決定値の時間変化に基づいて、被験者の心拍数の変動周期が検出される。ここで、人の心拍数は、ある程度長い時間の周期(例えば、ウルトラディアンリズム周期)で変動することが知られている。このため、所定の時間間隔で被験者の心拍数を検出すれば、被験者の心拍数の変動周期を検出することが可能である。この第6の発明では、心拍検出手段(25)によって被験者の心拍数の決定値の時系列データが得られるので、その時系列データを用いて、被験者の心拍数の変動周期が検出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、体動信号の時系列データから抽出された心拍数の実測値の確度が低い場合には、被験者の心拍数として、心拍数の実測値、又は心拍数の実測値に近い値が検出されることがないようにしている。つまり、心拍数の実測値が被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になっているおそれがある場合には、被験者の心拍数として検出される決定値が、心拍数の実測値、又は心拍数の実測値に近い値にならないようにしている。従って、被験者の心拍数として検出される決定値が被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値になることを抑制することができる。
【0020】
また、上記第2の発明では、各対象実測値に対して決定される被験者の心拍数の決定値が、対象実測値の確度が高いほど対象実測値に追随するように決定され、対象実測値の確度が低いほど直前心拍数からそれほど変化しないように決定される。ここで、人の心拍数は、ある程度長い時間の周期で変動することが知られている。この心拍数の変動周期を検出するにあたって、まず、従来の心拍検出装置を用いることを考えてみると、従来の心拍検出装置では、上述したように、被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値が検出される場合がある。そのような場合、検出される心拍数の変動周期は、被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値によって、大きく乱されてしまうおそれがある。例えば、実際の心拍数のリズムはそれほど変化していないのに、被験者の実際の心拍数とはかけ離れた値が心拍数のリズムの変化と認識される場合に、検出される心拍の変動周期が大きく乱される。それに対して、この第2の発明では、各対象実測値に対して決定される被験者の心拍数の決定値が、対象実測値の確度が高い場合には対象実測値に追随するが、対象実測値の確度が低い場合には直前心拍数からそれほど変化しない。このため、確度が低い心拍数の実測値が得られる場合に、心拍数が急激に変化することがない。従って、心拍数の変動周期を検出する場合に、確度が低い心拍数の実測値によって心拍数の変動周期が乱されることを抑制することができる。
【0021】
また、上記第4の発明では、対象実測値が直前心拍数から急激に増える場合はあり得るのに対して、対象実測値が直前心拍数から急激に減る場合はほとんど有り得ないので、決定動作において、対象実測値と直前心拍数との差が所定の範囲にある場合において、心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が、心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなるようにしている。この第4の発明によれば、心拍数の変化の特性が考慮されているので、対象実測値の確度を適切に判定することができる。
【0022】
また、上記第6の発明では、心拍検出手段(25)によって検出された被験者の心拍数の決定値の時系列データを用いて、被験者の心拍数の変動周期が検出される。ここで、第2の発明において説明したように、心拍検出手段(25)によって検出された被験者の心拍数の決定値の時系列データは、確度が低い心拍数の実測値が得られる場合であっても、検出される心拍数が急激に変化することがない。このため、被験者の心拍数の変動周期の検出において、確度が低い心拍数の実測値によって、被験者の心拍数の変動周期が乱されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施形態に係る空調制御システムの斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る本体ユニットの斜視図である。
【図3】図3は、回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、体動信号の周波数スペクトルの一例を示す図表である。
【図5】図5は、回路ユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、回路ユニットの制御動作を説明するための図であり、(a)は就寝者の心拍数の決定値を示し、(b)はウルトラディアンリズム周期を示し、(c)は空調機の設定温度の変更を示すものである。
【図7】図7は、体動信号の周波数スペクトルの別の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
本実施形態は、本発明に係る心拍検出装置(15)を備えた空調制御システム(1)である。この空調制御システム(1)は、寝室(5)内に設置された空調機(10)の空調能力の制御を行う。空調機(10)は、寝室(5)内の空気を調和する空調手段を構成している。
【0026】
図1に示すように、上記空調機(10)は、例えば壁掛け式のエアコンにより構成されている。空調機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えており、熱交換器(図示省略)内の冷媒により冷却または加熱した空気を寝室(5)内へ供給する。つまり、空調機(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うように構成されている。
【0027】
また、上記空調機(10)は、寝室(5)内の温度を検出する温度センサ(図示省略)を有している。また、空調機(10)は、ユーザー等が希望する寝室(5)内の温度を設定温度として入力する温度設定部(図示省略)を有している。空調機(10)の運転時には、この設定温度が空調機(10)の制御目標の温度となる。つまり、空調機(10)の運転時には、温度センサで検出される室内温度が、設定温度としての制御目標温度に近づくように空調能力が制御される。
【0028】
図1および図2に示すように、空調制御システム(1)は、感圧ユニット(20)と本体ユニット(30)とを備えている。本体ユニット(30)には、図3に示す回路ユニット(40)が設けられている。回路ユニット(40)には、心拍検出部(25)と心拍周期検出部(26)と判定部(45)と空調制御部(49)とが設けられている。本実施形態では、感圧ユニット(20)と後述する受圧部(33)と心拍検出部(25)と心拍周期検出部(26)とにより、心拍検出装置(15)が構成されている。なお、本実施形態の心拍検出装置(15)は、本発明の心拍検出装置(15)の一例である。
【0029】
感圧ユニット(20)は、被験者となる就寝者から生起する体動を本体ユニット(30)へ伝達するためのものである。感圧ユニット(20)は、感圧部(21)と圧力伝達部(22)とを備えている。感圧部(21)は、一端が閉塞して他端が開口する細長で中空状のチューブにより構成されている。感圧部(21)は、寝室(5)のベッド等の寝具(6)内に敷設されている。圧力伝達部(22)は、両端が開口する細長で中空状のチューブにより構成されている。圧力伝達部(22)は、感圧部(21)よりも小径となっている。圧力伝達部(22)は、一端が感圧部(21)の開口部(23)に接続され、他端が本体ユニット(30)に接続されている。
【0030】
本体ユニット(30)は、ケーシング(31)と取付部(32)と受圧部(33)とを有している。
【0031】
ケーシング(31)は、扁平な箱状に形成されており、例えば寝室(5)内の床面に設置される。ケーシング(31)の内部には、上述の回路ユニット(40)が内蔵されている。取付部(32)は、ケーシング(31)の側面に形成されている。取付部(32)は、内方に向かって凹んだ略円環状の凹部(32a)と、該凹部(32a)内から外方へ突出する凸部(32b)とを有している。凸部(32b)には、その軸方向に貫通穴(32c)が形成されている。そして、凸部(32b)には、圧力伝達部(22)の他端部が外嵌する。これにより、感圧部(21)の内部と貫通穴(32c)が、圧力伝達部(22)を介して連通する。
【0032】
受圧部(33)は、貫通穴(32c)に設けられている。受圧部(33)は、マイクロフォンにより構成されている。なお、受圧部(33)は、圧力センサにより構成してもよい。寝具(6)上の就寝者から体動が生起すると、この体動が感圧部(21)に作用する。すなわち、感圧部(21)の内圧は、圧力伝達部(22)および貫通穴(32c)を介して受圧部(33)に作用する。受圧部(33)は、この内圧を電気的な信号(以下、「体動信号」という。)に変換し、回路ユニット(40)へ出力する。
【0033】
本実施形態では、感圧ユニット(20)および受圧部(33)が、就寝者の体動に伴う体動信号を出力する体動検出手段(24)を構成している。なお、体動信号には、就寝者の心拍に伴う体動に起因する信号と、就寝者の呼吸に伴う体動に起因する信号と、就寝者の寝返り等の粗体動に起因する信号などが含まれている。体動信号には、就寝者の心拍数の実測値が含まれていることになる。
【0034】
心拍検出部(25)は、体動信号の時系列データから就寝者の心拍数を検出する心拍検出手段(25)を構成している。心拍検出部(25)は、信号処理部(41)と心拍抽出部(42)と心拍決定部(43)とを備えている。
【0035】
信号処理部(41)は、受圧部(33)から出力された体動信号を所定の周波数帯域の体動信号に変調して出力するように構成されている。信号処理部(41)の出力信号は、心拍抽出部(42)と判定部(45)とに入力される。
【0036】
心拍抽出部(42)は、体動信号の時系列データ上の時間において所定の時間間隔で、体動信号の時系列データから就寝者の心拍数の実測値を抽出するように構成されている。心拍抽出部(42)では、体動信号の時系列データ上において所定の時間間隔の抽出時刻毎に、心拍数の実測値が抽出される。なお、本実施形態の心拍抽出部(42)は、体動信号の時系列データから心拍数の実測値を抽出する動作を所定の時間間隔で行う。つまり、心拍抽出部(42)は、リアルタイムで心拍数の実測値を抽出する。
【0037】
具体的に、心拍抽出部(42)は、信号処理部(41)から出力された体動信号を包絡線検波し、包絡線検波後の体動信号を高速フーリエ変換(FFT)する。心拍抽出部(42)では、測定開始から1分間隔の抽出時刻毎に、体動信号の周波数スペクトルが作成される。体動信号の周波数スペクトルは、抽出時刻の直前1分間の体動信号の時系列データにより作成される。
【0038】
そして、心拍抽出部(42)は、抽出時刻毎に、該抽出時刻の直前1分間の体動信号により作成された体動信号の周波数スペクトルにおいて、スペクトル強度(スペクトラム強度)が最大となる最大強度周波数を、該抽出時刻における心拍数の実測値として抽出する。例えば、抽出時刻の直前1分間の体動信号により作成された体動信号のスペクトルが図4のようになる場合には、図4に示す最大強度周波数Aが、心拍数の実測値として抽出される。心拍抽出部(42)では、体動信号の時系列データ上の時間において1分間隔で、心拍数の実測値が抽出される。心拍抽出部(42)は、抽出した心拍数の実測値を心拍決定部(43)に出力する。なお、心拍数の実測値の抽出方法は他の方法であってもよい。
【0039】
心拍決定部(43)は、心拍抽出部(42)によって心拍数の実測値が抽出された時系列データ上の抽出時刻毎に、就寝者の心拍数を決定する決定動作を行うように構成されている。つまり、心拍決定部(43)は、心拍抽出部(42)によって抽出された心拍数の実測値のそれぞれについて決定動作を行う。決定動作で決定された就寝者の心拍数は、決定値を構成する。決定値は、時系列データ上の抽出時刻毎に決定される。
【0040】
具体的に、心拍決定部(43)は、心拍抽出部(42)で心拍数の実測値が抽出される度に、該心拍数の実測値が抽出された抽出時刻の決定値を決める動作として、決定動作を行う。決定動作では、決定値を決定する対象の抽出時刻(以下、「対象抽出時刻」という。)の心拍数の実測値(以下、「対象実測値」という。)の確度が判定され、その判定結果に応じて決定値が決定される。また、決定動作では、対象抽出時刻の1つ前の抽出時刻の決定値(以下、「直前心拍数」という。)が用いられる。また、決定動作では、下記の式1及び式2を用いて、決定値が決定される。決定動作では、指数関数を用いた漸近式により、決定値が決定される。
【0041】
式1:Y=(1−w)×Yn−1+w×Y
式2:τ=dt/w
上記式1において、Yは決定値(回/分)、Yn−1は直前心拍数(回/分)、Yは対象実測値(回/分)、wは重みをそれぞれ表している。また、上記式2において、dtは抽出時刻の間隔(dt=1分)、τは時定数をそれぞれ表している。
【0042】
決定動作では、まず、対象実測値の確度が判定される。対象実測値の確度の判定では、対象実測値が直前心拍数から増加する心拍増加の場合と、対象実測値が直前心拍数から減少する心拍減少の場合とのそれぞれについて、直前心拍数と対象実測値との差が小さいほど、対象実測値の確度が高いと判定される。具体的に、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、−5以上+5以下になるという第1条件が成立すれば、対象実測値は、就寝者の実際の心拍数として確かな値(正しい値)であると判定される。その場合、対象実測値が決定値となるように、時定数τが1(分)に決定される。また、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、+5より大きく+10以下になるという第2条件が成立すれば、第1条件が成立する場合に比べて対象実測値の確度が低いと判定される。その場合、時定数τが3(分)に決定される。また、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、−5未満になる、又は+10よりも大きくなるという第3条件が成立すれば、第2条件が成立する場合に比べて対象実測値の確度が低いと判定される。その場合、時定数τが5(分)に決定される。決定動作では、対象実測値の確度が高いほど、時定数τが短い時間に決定される。
【0043】
本実施形態では、第1条件の上限値及び下限値の絶対値が第1判定値を構成し、第2条件の上限値が第2判定値を構成する。決定動作において、対象実測値と直前心拍数との差が第1判定値以下になる場合には、心拍増加の場合も心拍減少の場合も、第1条件が成立する。従って、心拍増加の場合の対象実測値の確度と、心拍減少の場合の対象実測値の確度とが同じになる。一方、対象実測値と直前心拍数との差が第1判定値よりも大きく第2判定値以下となる場合には、第2条件が成立する心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が、第3条件が成立する心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなる。
【0044】
決定動作では、対象実測値の確度の判定が終了すると、式1及び式2を用いて決定値が算出される。決定値の算出では、対象実測値の確度の判定で決定された時定数τが式2に代入されて、重みwが算出される。そして、式2により算出された重みwが式1に代入されて、対象実測値と直前心拍数とから、就寝者の心拍数として決定値が算出される。心拍決定部(43)は、時系列データ上の抽出時刻毎の決定値を心拍周期検出部(26)へ出力する。
【0045】
心拍周期検出部(26)は、心拍決定部(43)から出力される決定値の時系列データから、就寝者の心拍数の変動周期として、ウルトラディアンリズムに対応した周期成分(以下、「ウルトラディアンリズム周期」という。)を抽出するように構成されている。心拍周期検出部(26)は、決定値の時系列データから周期的に検出される信号を、ゼロ位相フィルタによってウルトラディアンリズム周期として抽出する。
【0046】
なお、ウルトラディアンリズムとは、睡眠中のレム期とノンレム期のサイクルに代表される人体の生体リズムである。人体では、心拍数がウルトラディアンリズムに同期して変化する。ウルトラディアンリズムは、一般的に約90分周期であるが、個人差がある。
【0047】
判定部(45)は、信号処理部(41)で変調された体動信号に基づいて、就寝者が入眠したか否かを判定する。具体的に、判定部(45)は、在床判定部(46)と睡眠判定部(47)とを備えている。
【0048】
在床判定部(46)は、就寝者が寝具(6)に在床しているか、寝具(6)から離床しているかを判定するものである。この在床判定部(46)による判定は、信号処理部(41)で変調した体動信号と、予め設定された判定閾値(在床判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的には、在床判定部(46)では、体動信号が在床判定閾値を下回る場合、就寝者から体動が生起していないとみなされるので、この場合には「離床」と判定される。一方、在床判定部(46)では、体動信号が所定時間以上継続して在床判定閾値を上回る場合、就寝者から体動が生起しているとみなされるので、この場合には「在床」と判定される。
【0049】
睡眠判定部(47)は、在床判定部(46)により「在床」と判定された後、就寝者が入眠したか否かを判定するものである。この睡眠判定部(47)による判定は、信号処理部(41)で変調した体動信号と、予め設定された判定閾値(睡眠判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的には、睡眠判定部(47)では、初めて体動信号が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を下回る場合、在床中の就寝者から体動がさほど生起していないとみなされるので、この場合には「入眠」と判定される。また、睡眠判定部(47)では、「入眠」と判定された後において、体動信号が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を上回る場合、就寝者から体動が生起しているとみなされるので、「覚醒」と判定される。
【0050】
空調制御部(49)は、空調機(10)と有線または無線を介して、信号の入出力が可能に構成されている。そして、空調制御部(49)は、睡眠判定部(47)により「入眠」と判定されてから所定時間(本実施形態では、90分)が経過した後に、心拍周期検出部(26)で検出されたウルトラディアンリズム周期に応じて空調機(10)の設定温度Test(=ベース温度Tbase+ΔT)を増減制御するものである。この空調制御部(49)は、演算部(50)と温度変更部(51)を備えている。
【0051】
演算部(50)は、心拍周期検出部(26)により検出されたウルトラディアンリズム周期の微分値を導出するように構成されている。つまり、演算部(50)は、ウルトラディアンリズム周期の正方向変化の勾配および負方向変化の勾配を導出する。
【0052】
温度変更部(51)は、演算部(50)により導出されたウルトラディアンリズム周期の微分値が極大となるときに、空調機(10)の設定温度Testを増加させるように構成されている。即ち、温度変更部(51)は、ウルトラディアンリズム周期の正方向変化の勾配が最大となるときに、空調機(10)の設定温度Testを所定量だけ増加させる。具体的には、例えばΔT=1℃とし、設定温度Testを1℃だけ増加させる。つまり、設定温度Testがベース温度Tbaseよりも1℃だけ高くなる。
【0053】
また、温度変更部(51)は、演算部(50)により導出されたウルトラディアンリズム周期の微分値が極小となるときに、空調機(10)の設定温度Testを減少させるように構成されている。即ち、温度変更部(51)は、ウルトラディアンリズム周期の負方向変化の勾配が最小となるときに、空調機(10)の設定温度Testを所定量だけ減少させる。具体的には、例えばΔT=0℃とし、設定温度Testをベース温度Tbaseそのものにする。つまり、上記の微分値が極大となるときの設定温度Testよりも1℃だけ低くなる。
【0054】
−空調制御システムの動作−
上記空調制御システム(1)による空調機(10)の制御動作について説明する。
【0055】
空調機(10)では、コントローラ等によって「冷房運転」と「暖房運転」とが選択可能となっている。また、空調機(10)では、コントローラ等によってベース温度Tbaseが入力可能となっている。通常の冷房運転や暖房運転では、ユーザーが設定したベース温度TbaseにΔTを加えた温度(ベース温度Tbase+ΔT)を設定温度Testとして空調機(10)の空調能力が制御される。
【0056】
本実施形態の空調制御システム(1)では、就寝者の安眠を促すための空調機(10)の運転モードとして「おやすみ制御」の運転が可能となっている。ユーザーが就寝前にコントローラ等によって空調機(10)をONして「おやすみ制御」を選択することで、図5のフローチャートに基づく制御動作が行われる。
【0057】
先ず、ステップST1では、感圧ユニット(20)によって就寝者の体動が測定され、その体動信号が回路ユニット(40)の信号処理部(41)に出力される。信号処理部(41)は、体動信号を所定の周波数帯域に変調して心拍抽出部(42)と判定部(45)とに出力する。
【0058】
心拍抽出部(42)では、心拍抽出部(42)が、測定開始から1分毎に、信号処理部(41)の出力信号から、就寝者の心拍数の実測値を抽出する。続いて、心拍決定部(43)が、心拍抽出部(42)によって心拍数の実測値が抽出される度に、就寝者の心拍数の決定値を決定する。心拍決定部(43)では、1分間毎に心拍数の決定値が図6(a)のように導出される。
【0059】
ステップST2では、在床判定部(46)によって就寝者の在床/離床判定が行われ、「在床」と判定されるとステップST3へ移行する。ステップST3では、睡眠判定部(47)によって就寝者の入眠判定が行われ、「入眠」と判定されるとステップST4へ移行する。
【0060】
ステップST4では、判定部(45)において中途覚醒フラグが連続して3分間ONしているか否かが判定される。具体的には、睡眠判定部(47)で「覚醒」と判定されると中途覚醒フラグがONされる。そして、中途覚醒フラグが連続して3分間ONされるとステップST5へ移行し、そうでないとステップST6へ移行する。
【0061】
ステップST6では、心拍周期検出部(26)が、心拍決定部(43)から出力された決定値の時系列データを用いて、ゼロ位相フィルタ(本実施形態では、逆フーリエフィルタ)によりフィルタ処理をして、ウルトラディアンリズム周期を抽出する(図6(b)参照)。このウルトラディアンリズム周期は、一般的な周期である90分周期で抽出されている。なお、ウルトラディアンリズム周期は、個人差があり30分から120分の周期で現れる場合もある。
【0062】
続くステップST7では、先ず、空調制御部(49)において、睡眠判定部(47)により「入眠」と判定されてから所定時間(90分)が経過したか否かが判定される。そして所定時間が経過していると、演算部(50)が心拍周期検出部(26)のウルトラディアンリズム周期の微分値を導出していく。つまり、演算部(50)は、図6に示す制御対象区間のウルトラディアンリズム周期を対象として微分値を導出していく。続くステップST8では、温度変更部(51)が演算部(50)の導出した微分値が極大であるか極小であるかを検出する。
【0063】
そして、温度変更部(51)は、微分値の極大を検出すると(図6(b)のXt)、ステップST9においてΔTを1℃に設定する。これにより、図6(c)に示すように、空調機(10)の設定温度Testがベース温度Tbaseよりも1℃高い値に設定される。この設定温度Testは空調機(10)へ信号出力される(ステップST11参照)。そうすると、冷房運転の場合は冷房能力が低下し、暖房運転の場合は暖房能力が増大し、寝室(5)の温度が上昇する。
【0064】
続くステップST12では、空調制御部(49)が、空調機(10)へ設定温度Testの信号が出力されてから3分経過したか否かを判定する。3分が経過すると、ステップST4へ戻り上述した制御が同様に行われる。このように、3分間待機することにより、空調機(10)の設定温度Testが過剰に変更されるのを避けることができる。
【0065】
そして、ステップST8において、温度変更部(51)がウルトラディアンリズム周期の微分値の極小を検出する(図6(b)のYt)。そうすると、温度変更部(51)はステップST10においてΔTを0℃に設定する。これにより、図6(c)に示すように、空調機(10)の設定温度Testがベース温度Tbaseと同じとなる。この設定温度Testは空調機(10)へ信号出力される(ステップST11参照)。そうすると、冷房運転の場合は冷房能力が増大し、暖房運転の場合は暖房能力が低下し、寝室(5)の温度が低下する。その後、上記と同様に、ステップST12からステップST4へ戻り、この制御が繰り返される。
【0066】
このように、空調機(10)の設定温度Testは、図6(c)に示すように、ウルトラディアンリズム周期の微分値が極大となるときに増加し、その後微分値が極小となるときに減少する。そして、この設定温度Testの増減がウルトラディアンリズムの周期ごとに繰り返される。
【0067】
ここで、ウルトラディアンリズム周期の微分値が極大となるときは、就寝者の心拍数が最も急激に上昇し就寝者の体温が上昇する時間帯である。そして、ウルトラディアンリズム周期の微分値が極小となるときは、就寝者の心拍数が最も急激に低下し就寝者の体温が低下する時間帯である。このように、就寝者は、体温が上昇して低下することにより体温勾配が形成され、深い睡眠を得ることができる。本実施形態では、上述したように、就寝者の心拍数が急上昇するタイミングで空調機(10)の設定温度Testが増加するため、寝室(5)の温度が上昇して就寝者の体温上昇が促進される。また、本実施形態では、上述したように、就寝者の心拍数が急低下するタイミングで空調機(10)の設定温度Testが減少するため、寝室(5)の温度が低下して就寝者の体温低下が促進される。
【0068】
なお、ステップST4からステップST5へ移行すると、温度変更部(51)がΔTを0℃に設定する。したがって、空調機(10)の設定温度Testはベース温度Tbaseと同じとなる。つまり、3分間連続して中途覚醒フラグがONし続けた場合、就寝者は完全に覚醒したとみなされるので、体温上昇のために寝室(5)の温度を上昇させる必要がない。
【0069】
−実施形態の効果−
本実施形態では、体動信号の時系列データから抽出された心拍数の実測値の確度が低い場合には、就寝者の心拍数として、心拍数の実測値、又は心拍数の実測値に近い値が検出されることがないようにしている。つまり、心拍数の実測値が就寝者の実際の心拍数とはかけ離れた値になっているおそれがある場合には、就寝者の心拍数として検出される決定値が、心拍数の実測値、又は心拍数の実測値に近い値にならないようにしている。ここで、就寝者の睡眠時に例えば横向きの姿勢になる場合は、就寝者の心拍に伴う体動が、体幹を介して感圧ユニット(20)に作用する。そのような場合、心拍に伴う体動が、体幹を伝搬する過程で波形の立ち上がりが遅れ、一旦立ち上がると速やかに収束せずに緩やかに振動しながら減衰してゆく波形として観測され、心拍数の検出が困難になる。就寝者の心拍に起因する信号が、呼吸周波数の高調波成分や、体幹固有振動数(4−10Hz)に妨げられ、就寝者の心拍数として誤った値を検出する場合がある。また、上述したように、心拍数の検出中に就寝者に予期せぬ動き(祖体動)があったり、心拍数の検出中に振動・騒音などのノイズが発生すると、それらに起因する成分が体動信号に含まれ、就寝者の心拍数として誤った値を検出する場合がある。本実施形態では、このような確度の低い心拍数の実測値をそのまま就寝者の心拍数として検出しないようにしている。従って、就寝者の心拍数として検出される決定値が就寝者の実際の心拍数とはかけ離れた値になることを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、各抽出時刻において就寝者の心拍数として検出される決定値が、対象実測値の確度が高いほど対象実測値に追随するように決定され、対象実測値の確度が低いほど直前心拍数からそれほど変化しないように決定される。このため、確度が低い心拍数の実測値が得られる場合に、心拍数が急激に変化することがない。従って、確度が低い心拍数の実測値によって、心拍数の変動周期としてのウルトラディアンリズム周期が乱されることを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、対象実測値が直前心拍数から急激に増える場合はあり得るのに対して、対象実測値が直前心拍数から急激に減る場合はほとんど有り得ないので、決定動作において、対象実測値と直前心拍数との差が所定の範囲(5よりも大きく10以下となる範囲)にある場合において、心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が、心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなるようにしている。本実施形態によれば、心拍数の変化の特性が考慮されているので、対象実測値の確度を適切に判定することができる。
【0072】
−実施形態の変形例1−
この変形例1では、決定動作が上記実施形態とは異なっている。この変形例1では、重み付き移動平均を用いて、決定値が決定される。決定値は、対象抽出時刻の1つ前の決定値(直前心拍数)から、対象抽出時刻の5つ前の決定値までの直近の5分間(n=5)の決定値を用いて、決定される。
【0073】
この変形例1では、対象実測値の確度の判定において、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、−5以上+5以下になるという第1条件が成立する場合は、重みwが1に決定される。また、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、−5よりも小さく−10以上になる、又は+5より大きく+10以下になるという第2条件が成立する場合は、重みwが0.5に決定される。また、対象実測値から直前心拍数を引いた値が、−10未満になる、又は+10よりも大きくなるという第3条件が成立する場合は、重みwが0.25に決定される。重み付き移動平均では、対象実測値の確度の判定で決定された重みを用いて、直近の5分間の5つの決定値から、決定値が決定される。なお、重み付き移動平均では、直近の3分間から5分間の決定値を用いる(n=3以上5以下とする)と好適である。
【0074】
なお、重み付き移動平均に代えて、重み付き回帰(1次回帰、2次回帰、3次回帰)を用いて決定値を決定してもよい。この場合は、直近の3分間から10分間の決定値を用いる(n=3以上10以下とする)と好適である。例えばn=5とする直線回帰(1次回帰)により決定値を決定してもよいし、n=10とする3次回帰により決定値を決定してもよい。
【0075】
−実施形態の変形例2−
この変形例2では、対象実測値の確度の判定方法が上記実施形態とは異なっている。この変形例2では、体動信号の周波数スペクトルに基づいて、対象実測値の確度が判定される。
【0076】
具体的に、心拍決定部(43)は、抽出時刻毎の体動信号の周波数スペクトルに対して、最大強度周波数Aを含む所定の対象範囲におけるスペクトル強度の平均値を算出する。この変形例2では、図7に示すように、最大強度周波数Aよりも15小さい周波数以上で、最大強度周波数Aよりも15大きい周波数以下の範囲を対象範囲として、スペクトル強度の平均値が算出される。
【0077】
そして、心拍決定部(43)は、上記スペクトル強度の平均値に対する、上記最大強度周波数Aにおけるスペクトル強度の比率(以下、「スペクトル比」という。)が大きいほど、対象実測値の確度が高いと判定する。例えば、スペクトル比が4以上になるという第1’条件が成立すれば、対象実測値は、就寝者の実際の心拍数として確かな値(正しい値)であると判定される。その場合、時定数τが0(分)に決定される。また、スペクトル比が、2以上4未満になるという第2’条件が成立すれば、第1’条件が成立する場合に比べて対象実測値の確度が低いと判定される。その場合、時定数τが3(分)に決定される。また、スペクトル比が、2未満になるという第3’条件が成立すれば、第2’条件が成立する場合に比べて対象実測値の確度が低いと判定される。その場合、時定数τが5(分)に決定される。この変形例2では、スペクトル比が大きいほど、対象実測値の確度が高いと判定される。
【0078】
なお、抽出時刻の直前1分間の体動信号の時系列データにより作成された体動信号のスペクトルが図4のようになる場合は、最大強度周波数Aにおけるスペクトル強度の大きさが、前後の周波数におけるスペクトル強度の大きさに比べて際だっている。このような場合は、心拍数の実測値の確度が高いと判定される。また、抽出時刻の直前1分間の体動信号の時系列データにより作成された体動信号のスペクトルが図7のようになる場合は、最大強度周波数Aにおけるスペクトル強度の大きさが、前後の周波数におけるスペクトル強度の大きさに比べて、それほど際だっていない。このような場合は、心拍数の実測値の確度が低いと判定される。
【0079】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0080】
上記実施形態では、時間の進行方向に被験者の心拍数の決定値を決めているが、被験者の体動信号を一定時間に亘って記憶した後に被験者の心拍数の決定値を決める場合には、時間の進行方向とは逆方向に被験者の心拍数の決定値を決めることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明は、心拍数を検出するための心拍検出装置について有用である。
【符号の説明】
【0082】
15 心拍検出装置
24 体動検出手段
25 心拍検出部(心拍検出手段)
26 心拍周期検出部(心拍周期検出手段)
33 受圧部
40 回路ユニット
41 信号処理部
42 心拍抽出部(心拍抽出手段)
43 心拍決定部(心拍決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体動に伴う体動信号を出力する体動検出手段(24)と、
上記体動信号の時系列データから上記被験者の心拍数を検出する心拍検出手段(25)とを備えた心拍検出装置であって、
上記心拍検出手段(25)は、上記体動信号の時系列データから上記被験者の心拍数の実測値を抽出する心拍抽出手段(42)と、該心拍数の実測値の確度を判定し、該心拍数の実測値の確度が高いほど該心拍数の実測値に近い値を上記被験者の心拍数の決定値とする決定動作を行う心拍決定手段(43)とを備えていることを特徴とする心拍検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記心拍抽出手段(42)は、上記体動信号の時系列データ上の時間において、所定の時間間隔で上記被験者の心拍数の実測値を抽出し、
上記心拍決定手段(43)は、上記心拍抽出手段(42)によって抽出された上記心拍数の実測値のそれぞれについて上記決定動作を行う一方、
上記決定動作は、該決定動作の対象となっている心拍数の実測値を対象実測値とし、該対象実測値の1つ前の心拍数の実測値を対象として決定された決定値を直前心拍数として、該対象実測値の確度を判定し、該対象実測値の確度が高いほど、上記直前心拍数と該対象実測値との数値間において該対象実測値に近い値を上記決定値とする動作であることを特徴とする心拍検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記決定動作では、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が小さいほど、該対象実測値の確度が高いと判定されることを特徴とする心拍検出装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記決定動作では、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が所定の第1判定値以下となる場合は、該対象実測値が該直前心拍数よりも大きくなる心拍増加の場合の対象実測値の確度と、該対象実測値が該直前心拍数よりも小さくなる心拍減少の場合の対象実測値の確度とが同じになり、上記対象実測値と上記直前心拍数との差が上記第1判定値よりも大きく該第1判定値よりも大きい第2判定値以下となる場合は、上記心拍増加の場合の対象実測値の確度の方が上記心拍減少の場合の対象実測値の確度よりも高くなることを特徴とする心拍検出装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、
上記心拍抽出手段(42)は、上記体動信号の周波数スペクトルにおいてスペクトル強度が最大となる最大強度周波数を上記心拍数の実測値として抽出する一方、
上記心拍決定手段(43)は、上記最大強度周波数を含む所定の範囲におけるスペクトル強度の平均値に対する、上記最大強度周波数におけるスペクトル強度の比率が大きいほど、上記心拍数の実測値の確度が高いと判定することを特徴とする心拍検出装置。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れか1つにおいて、
上記決定値の時間変化に基づいて、上記被験者の心拍数の変動周期の検出する心拍周期検出手段(26)を備えていることを特徴とする心拍検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−268833(P2010−268833A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120732(P2009−120732)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】