説明

心臓弁

心臓弁は、心膜のような柔軟な材質で形成された弁本体を有する。弁本体は、外側層及び複数の弁尖を規定する内側層の2層から形成される。内側層の弁尖は、外側層に付着している。実施形態では、弁本体は、単一片の原料組織をカッティングし、内側層及び外側層を有する筒型パターンへ折り畳むことにより形成される。この複層の弁本体はステントに装着されて、患者の心臓内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年9月29日に出願された米国仮出願61/136,716号に基づく優先権を主張する。その出願のパラグラフ[00020]〜[00027]及び図1〜図8Dに記述されているように、平坦な原料材料から形成された組織ベースの弁本体の実施形態、その製造、ステントへの配置及びステントと結びついた使用についての少なくともその出願の部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、置換心臓弁に関する。詳細には、本発明は、組織又は模擬組織ベースの置換心臓弁に関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、及び三尖弁を有するヒトの心臓弁は、心臓のポンプと同調して、本質的には一方通行の弁として動作する。弁は、血液が下流方向へ流れることを許容するが、上流方向へ流れることを防止する。病気の心臓弁は、弁の狭窄又は逆流のような機能障害を示す。このような機能障害は心臓の血液ポンプの効率を悪くし、衰弱化させて生命危機の状態になりうる。例えば、弁の機能不全は、心臓肥大及び心室の拡張のような状態につながる。このように、機能不全な心臓弁を治療又は置換する方法及び装置を改善するために、多大な労力が費やされてきた。
【0004】
機能不全の心臓弁と結びついた問題を解決するために、人工装具が存在する。例えば、機能不全の生体心臓弁を置換するために、機械的な組織ベースの心臓弁の人口装具が用いられる。近年、心臓切開外科手術よりも患者に対して心的外傷が少なく装着される置換心臓弁、特に組織ベースの置換心臓弁を改善させるために、かなりの努力がなされた。置換弁は、低侵襲工程及び経皮的工程にて装着されるように設計されている。このような置換弁は、しばしば、拡張可能なステントに結合され、ついで生体の弁の環に装着される組織ベースの弁本体を有する。
【0005】
装着用にコンパクトで、制御された場所で制御可能に拡張される置換心臓弁の改善は挑戦的になされてきた。更に、特に組織ベースの置換弁についての耐久性への関心は最先端にある。例えば、組織ベースの弁は典型的には縫合された部材を有しており、特に相対的に薄い組織が用いられる場合、そのような縫い目は応力集中の源でありうる。
【発明の概要】
【0006】
従って、耐久性が向上しており、低侵襲及び/又は経皮的装着にて縮小及び制御下の拡張をもたらす組織ベースの心臓弁についての技術が要求される。
【0007】
ある実施形態では、本発明によれば、外側層及び内側層を備える弁本体を有する置換心臓弁が提供される。外側層は、筒型であると共に、長手方向軸、上流側端部及び下流側端部を備え、更に、外側層は薄型且つ柔軟な材質で形成されている。内側層は、概ね筒型であり、前記外側層に沿って概ね長手方向軸を有し、筒型の外側層の内側に配置される。前記内側層は薄型且つ柔軟な材質で形成されており、開状態と閉状態との間で作動する複数の弁尖を規定する。各々の弁尖は側端及び下流部を備える。前記内側層の隣接する弁尖は交連部によって接合されている。前記弁尖は弁尖側端に沿って前記外側層に付着しており、前記交連部は弁尖側端の少なくとも一部の外側層下流側に付着している。
【0008】
ある実施形態では、前記内側層及び外側層は、柔軟な材質の単一で切れ目の無い断片から形成されている。他の実施形態では、前記内側層及び外側層は、上流側端部で互いに相対的に折り畳まれており、前記内側層は上流側端部で前記外側層と連続的である。
【0009】
他の実施形態では、前記外側層は交連スリットを備えており、前記内側層の交連部の一端は少なくとも部分的に前記交連スリットを通して延出している。このような実施形態では、前記外側層は、弁尖側端に対応して対になっている形態の弁尖スリットを備え、前記弁尖側端は少なくとも部分的に前記弁尖スリットを通して延出している。
【0010】
別の実施形態では、前記外側層は複数の窓部を有しており、前記窓部は、弁尖が閉状態の場合、血液は前記窓部を通して流れるように配置されている。
【0011】
更なる実施形態では、置換心臓弁は、弁本体と、径方向に縮小してコンパクト状態になると共に径方向に拡張して拡張状態になる細長いステントと、を備えている。前記ステントは、長手方向軸を有し、弁本体が前記ステントに取り付けられる。
【0012】
ある実施形態では、弁本体の外側層は前記ステントの外側に接し、弁本体の内側層は前記ステントの内側に接し、これにより前記ステントは前記内側層と前記外側層との間に挟まれている。
【0013】
別の実施形態において、前記弁本体は、前記ステントが弁本体の外側面に隣接するように位置している。ある実施形態では、前記弁本体の前記外側層は前記ステントに結合し、前記弁本体の前記内側層は直接的に前記外側層に結合しているが前記ステントには直接的に結合していない。別の実施形態では、弁尖が開状態の場合、弁本体の外側層は前記開状態の弁尖と前記ステントとの間にある。
【0014】
別の実施形態では、前記ステントは縮小部を備えており、前記縮小部は、前記ステントが径方向に縮小している場合は前記縮小部は長手方向に伸張し、前記ステントが径方向に拡張している場合は前記縮小部は長手方向に縮む。
【0015】
このような縮小部を有する実施形態では、前記弁本体の少なくとも一部が前記縮小部の少なくとも一部内に配置されており、前記弁本体は前記ステントに一部分又は複数部分で結合し、その結合部分は概ね前記ステントの長手方向軸に沿って配列しており、前記ステントが縮小している間、前記ステントは、前記弁本体を長手方向に伸張させる又は破壊することなしに前記弁本体に対して相対的に長手方向に移動する。このような実施形態は、直接的に前記ステント及び前記弁本体に結合される長手方向に拡張しうる材質を付加的に備える。その柔軟な材質は、軸点から長手方向に離隔した一部又は複数の結合部で前記ステントに直接的に結合している。
【0016】
縮小部を有するステントについての他の実施形態では、前記ステントは付加的に非縮小部を備えており、前記弁本体は前記非縮小部内に配置されている。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、置換心臓弁の製造方法を提供する。この方法では、平坦で柔軟な原料材料を準備し、所定のパターンに従ってその平坦な材料をカッティングする。前記パターンは、第1及び第2のパターン端部と、スカート部と、弁尖部と、を有する。弁尖部は、複数の弁尖と、隣接する弁尖の間で延出する交連部と、各々の弁尖に備わる弁尖側端と、を有する。この方法では、前記第1及び第2のパターン端部を結合させて、前記平坦な材料からチューブを形成し、折畳線に沿って前記弁尖部を前記スカート部に対して相対的に折り畳み、前記弁尖部を概ね前記スカート部内に配置し、前記交連部を前記スカート部に付着させ、前記弁尖側端を前記スカート部に付着させる。
【0018】
別の実施形態では、弁尖形状部分を備えており、所定形状の閉状態の弁の実質的なネガ型の形状を有する型部を準備し、平坦な材料を筒型に形成すると共に交連部がスカート部に付着させ、弁を前記型部に配置させることにより、弁尖が弁尖形状部分に係合し、前記弁尖が前記弁尖形状部分に係合すると、弁尖側端がスカート部に付着する。
【0019】
更にこのような実施形態では、スカート部には弁尖スリットが形成されており、この弁尖スリットは概ね弁尖の所定曲面と対応しており、弁を前記型部に配置させることにより、弁尖が弁尖形状部分に合わさり、スカート部の弁尖スリットを通して弁尖側端が延出する。
【0020】
別の実施形態では、細長いステントが用いられ、スカート部がそのステントに付着される。
【0021】
また別の実施形態では、弁本体はステントに結合され、弁尖は実質的に左心房の中にある。他の実施形態では、弁本体はステントに結合され、弁尖の下流側端部は概ね僧帽弁輪の中に位置する。
【0022】
また別の実施形態では、本発明によれば、長手方向に伸張可能な部分に結合した複数の弁尖を規定する柔軟な筒型の弁本体が提供される。この弁本体は、長手方向に伸張可能な部分よりも、長手方向に伸張されるものではない。このような実施形態では、弁本体及び結合した長手方向に伸張可能な部分は縮小部を有するステントに装着され、ステントが縮小する場合弁本体の一部はその縮小部に重なり、長手方向に伸張可能な部分が伸び縮みすると弁本体はステントに対して長手方向に移動する。
【0023】
別の実施形態では、複数の弁尖を規定する内側層と外側層とを有する弁本体は、内側層と外側層とを分けて形成し、内側層の上流側端部を外側層に付着させ、弁尖の側端と交連タブを外側層に付着させることにより、形成される。このような実施形態では、スリットは外側層を通して形成され、1又は複数の交連タブと弁尖とは対応するスリットを通して引っ張られて、外側層に固着される。
【0024】
他の発明の実施形態及び特徴は下記に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、心臓弁本体の具体例を形成するための、平坦な原料組織をカッティングする平面パターンを示す。
【図2A】図2Aは、図1の平面パターンに従ってカッティングされ筒型に形成された組織の側面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの組立品の斜視図である。
【図3A】図3Aは、心臓弁本体に形成され、開状態としてしめされた図1の組立品の斜視図である。
【図3B】図3Bは、閉状態であり且つ下流側から見た、図3Aの心臓弁本体を示す。
【図3C】図3Cは、閉状態であり且つ上流側から見た、図3Aの心臓弁本体を示す。
【図4A】図4Aは、コンパクト状態として示される、ステントフレームの実施形態の概略図である。
【図4B】図4Bは、拡張状態として示される、図4Aのステントフレームを示す。
【図5】図5は、図1〜図3の弁本体がそこに装着された、図4A及び4Bのステントフレームの側面図である。
【図6A】図6Aは、ステントフレームに装着された組織弁本体を備える、心臓弁の別の実施形態の側面斜視図である。
【図6B】図6Bは、閉状態であり且つ下流側から見た、図6Aの心臓弁を示す。
【図6C】図6Cは、閉状態であり且つ上流側から見た、図6Aの心臓弁を示す。
【図7】図7は、弁本体の別の実施形態を形成するための平坦な原料組織をカッティングする平面パターンを示す。
【図8】図8は、図7のパターンに従ってカッティングされた組織を組み立てた弁本体の斜視図を示す。
【図9A】図9Aは、図8の弁本体の側面の拡大図である。
【図9B】図9Bは、図9Bのような拡大図であるが、他の実施形態の特徴を示す。
【図10】図10は、心臓弁本体の別の実施形態を形成するための平坦な原料組織をカッティングする平面パターンを示す。
【図11】図11は、心臓弁本体を支持するステントフレームの別の実施形態の概略側面図である。
【図12】図12は、図10のパターンに従ってカッティングされた原料組織から組み立てられた心臓弁本体がそこに装着されている、図11のステントフレームの斜視図である。
【図13】図13は、閉状態であり且つ下流側から見た、図12の心臓弁を示す。
【図14】図14は、ある実施形態に従ってヒトの心臓の僧帽弁輪に配置された図12の心臓弁を示す。
【図15】図15は、図11と同様の心臓弁ステントフレームの対向する壁を示すと共に、別の実施形態に従ってステントの上の拡張可能な織物部の配置を示す概略的な側方断面図である。
【図16A】図16Aは、心臓弁の別の実施形態の側面図であり、別の実施形態に従ってステントに装着された図8の弁本体を示す。
【図16B】図16Bは、コンパクト状態として示された図16Aの組立品の側面図である。
【図17】図17は、別の実施形態に従ってヒトの心臓の僧帽弁輪に配置された図16の心臓弁を示す。
【図18】図18は、弁本体の別の実施形態を形成するための平坦な原料組織をカッティングする平面パターンを示す。
【図19】図19は、図18のパターンから構成された心臓弁本体の斜視図を示す。
【図20】図20は、組織弁本体を構成するためのツールの実施形態の斜視図である。
【図21】図21は、図18〜図19に組織弁本体を構成するために使用された図20のツールを示す。
【図22】図22は、別の弁本体の実施形態を形成するための平坦な原料組織をカッティングする平面パターンを示す。
【図23】図23は、図22のパターンから構成されてステントに装着された弁本体を備える心臓弁の実施形態の斜視図である。
【図24】図24は、図23の組立品を使用しているステントの部分側面図である。
【図25】図25は、図24の心臓弁の鉛直断面の概略的な部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の明細書及び図面によれば、置換心臓弁及び患者の生体心臓弁を置換するように構成された部分についての複数の実施形態において、本発明の観点及び特徴が理解される。これらの実施形態は、患者の大動脈弁又は僧帽弁のような所定の弁を置換するものである。しかしながら、この所定の弁又は弁の所定の特徴を示す内容は限定的に解釈されるべきではなく、記述されている全ての実施形態の特徴は所望の他の実施形態の特徴と結合することが可能である。
【0027】
図1〜3に記載されているように、弁本体30の製造方法に従って、心臓弁本体30の構造が示されている。この実施形態では、心臓弁本体は、牛心膜のような組織ベースの媒体で形成されている。もちろん、薄型で柔軟で耐久性を有する他の天然又は人工の材質と同様に、馬心膜及び豚心膜、血管組織のような他の材質も使用することが可能である。この組織は平坦な材質であることが好ましい。
【0028】
図1は、心臓弁本体30の具体例を形成するための、平坦な原料組織をカッティングする平面パターン32を示す。詳細には、好ましくは、原料組織は平坦なフォーマットに広げられて、平面パターン32に示されるようにカッティングされる。好ましくは、組織はレーザによってカッティングされるが、他のカッティング手段及び方法を使用することも可能である。
【0029】
図1に示されるように、パターンに従ってカットされた平坦な原料組織は第1及び第2のパターン端部34,36を有する。スカート部40及び弁尖部50は、折畳線52によって分かれている。図示された弁尖部50は、互いに交連タブ部60で接続している3つの弁尖54を有する。各々の弁尖54は、好ましくは曲線状の下流端62と、概ね対向している第1及び第2弁尖側端64,66と、を有する。図示された具体例のパターン32では、隣接する弁尖54は、それらの間にカットされている隙間68によって区画されている。
【0030】
スカート部40は、平坦な原料組織をカットして形成されている開口によって規定される3つの窓70を有する。窓70は、各々、第1及び第2側端72,74を有しており、この第1及び第2窓側端72,74は、対応する弁尖54の第1及び第2側端64,66と曲線状において概ね対をなしている。スカート部40の下流リング76は、好ましくは第1パターン端部34から第2パターン端部36まで連続的に形成されている。同様に、平坦なパターン32の上流リング部78は、折畳線52に隣接して、第1パターン端部34から第2パターン端部36まで連続的に形成されている。弁尖支持部80は、隣接する窓70の間に規定されており、第1及び第2窓側端72,74と共有している。弁尖支持部80は、上流リング78から下流リング76まで延出している。図示された具体例では、第1及び第2パターン端部34,36は、スカート部40の弁尖支持部80の一つと、弁尖部50の交連タブ部60の一つとを分けるように配置されている。
【0031】
図2A及び図2Bに示されるように、原料組織からパターン32がカットされると、カットされた組織は丸められ、第1及び第2パターン端部34,36は共に接合されて、図示されているように筒型構造を形成する。図示された具体例では、第1及び第2パターン端部34,36は、好ましくは既存の縫合材料にて接合される。このように、スカート部40における縫合部82は、第1及び第2パターン端部34,36を接合して弁尖支持部80を完成させ、弁尖部50の縫合部84により交連タブ部60が完成される。
【0032】
図示された具体例では縫合がなされているが、第1及び第2端部並びに弁本体を形成する際の他の接合を形成する他の方法及び装置も使用することが可能である。例えば、他の実施形態では、接着やクリップのような手段を使用することができる。
【0033】
図3A〜3Cに示されるように、第1及び第2パターン端部34,36が結合されて筒型の構造体を形成すると、弁尖部50は、折畳線52にて折り畳まれてスカート部40の内側へ反転させられる。このように弁本体30の弁尖部50は、スカート部40の内側に位置しており、概ねスカート部40に隣接している。
【0034】
続いて図3A〜3Cを参照し、折り畳みがなされると、弁尖部50はスカート部40の内側に位置し、弁尖部50及びスカート部40は互いに付着する。詳細には、第1及び第2弁尖側端64,66は、各々、対応する弁尖支持部80の第1及び第2窓側端72,74と付着する。図示されるように、端部64,66,72,74は、好ましくは概ね揃っており、縫合によって結合されるように伝熱性である。更に、交連タブ部60はスカート部40の下流リング76に付着する。好ましくは、この付着は、縫合剤のような既存の材料を使用する既存の手法による縫い合わせにてなされる。しかしながら接着剤のような他の材料も使用可能である。更に、ある実施形態では、交連タブは、縫合に加えて又は縫合の代わりにクリップでスカート部に付着することも可能である。また他の実施形態では、例えば、弁尖部及びスカート部は、別々に形成されて上流リングにて結合されることも可能である。このような代替的手段は、ここで示されている他の実施形態及び特徴に適用される。
【0035】
弁尖部50が適切にスカート部40に結合すると、弁本体30は、図3Aに示される開状態と図3B及び3Cに示される閉状態との間で作動する。図3B及び3Cに示されるように、閉状態では、弁尖54の間で上流からの血液の流れをブロックするため、弁尖54は互いに接合する。また、弁尖54は支持体80でスカート40に強固に縫合されているので、弁本体30の上流側端部78にてスカート部40と弁尖部50との間を血液は流れず、弁傍漏れを防止することができる。図示された具体例では、スカート部40の窓70は概ね弁尖54と合わさっている。このように、弁尖54が閉状態の場合、弁尖54によって血液の流れは変えられて、窓70を通して流れる。
【0036】
図3A〜3Cの弁本体30は、患者の生体弁を置換するために使用することができ、図示された弁本体30と共に説明された実施形態の特徴は、単独で又はステントフレームと共に使用されることが可能である。例えば、ある実施形態では、図3Aに示された弁本体30は、患者の生体大動脈弁の環に挿入することができる。この実施形態では、上流リング78は生体弁環に縫合又は付着され、下流リング76は環の大動脈下流に付着される。このように、弁本体30は大動脈洞に位置する。この実施形態では、弁尖54が接合する場合、血液が窓70を通して流れて、大動脈洞の枝分かれの心臓動脈に流れるので、スカート部40の窓70は特に有益である。
【0037】
次に、図4及び図5に示されるように、図3に示される心臓弁本体30は、ステント90に取り付けることが可能である。このようなステントは種々の形状及び特性を有することが可能である。例えば、このようなステントは、自己拡張型、バルーン拡張型、これらの混合型のようなものとすることが可能である。
【0038】
図4A及び4Bに示されるように、図示されたステントフレーム90の具体例は弁本体30を支持するものであり、図4Aに示されたコンパクト状態から図4Bに示された拡張状態へ広がることが可能である。図示されたステント90は、好ましくは柔軟な材料で構築された自己拡張型ステントであり、好ましくはニチノールのような形状記憶材質で構築される。自己拡張型の場合、図4Bに示されるように、緩和していると、ステント90は十分に開状態である。図示されたステント90は、好ましくは第1端部92から第2端部94まで引き延ばされており、長手方向軸96及び概ね円形断面を有する筒型である。他の実施形態として、ステントは、D型、長円形型、その他卵型の断面のような、非円形の断面を有することも可能である。図示された具体例では、間隙を介して複数の小穴98が、ステントフレーム90の第1端部92と第2端部94との両方に設けられている。他の実施形態として、この小穴98を設けないで構成することも可能である。
【0039】
図示されたステントフレーム90は、非縮小部100と縮小部110とを有する。この非縮小部100と縮小部110とは、第1端部92と第2端部94との間にある転移部112にて結合している。縮小とは、コンパクト状態から拡張状態へステントの半径が増加するにつれて、縮小部110のステント90の長さは減少することを意味する。コンパクト状態のステントフレーム90を示す図4Aに示されるように、コンパクト状態のステントフレーム90の縮小部110は、ステントフレームが図4Bに示される拡張状態の場合よりも長い。
【0040】
続いて図4Bを参照するに、図示されたステント90の非縮小部100は、周囲に膨張可能な部材である複数の列又はリング114a−cを有し、ジグザグに配置された補強部115を有する。補強部115は、膨張すると、ステント90の半径に接するように構成されている。図示された実施形態では、ステントはこのような3つのリング114a−cを有する。ステントフレームの目的を達成するならば、より多くの又はより少ないリングを形成することが可能である。図示された実施形態では、周状に波形の補強部115の各々の端部は、隣接する補強部115の各々の端部と頂点116,118にて結合している。頂点116,118は、少なくともある実施形態では、優先的に曲がる領域である。図示された実施形態では、第1リング114aと第3リング114cのジグザグパターンは概ねお互いに同調しているが、第1リングと第3リングとの間にある第2リング114bの補強部115は、概ね第1リングと第3リングのジグザグパターンと同調していない。他の実施形態において、全て又は大半のリングが互いに同調しているか、又は互いに同調していない構成とすることも可能である。
【0041】
続いて図4Bを参照するに、長手方向の補強部112が、フレーム90の第1端部92から転移部112まで、非縮小部100のリング114a−cを横切って延出している。詳細には、各々のリング114は、共通の長手方向の補強部120を共有している。長手方向の補強部120は隣接するリング114の頂点116を通って延出しており、好ましくは非縮小部100の全長にわたって延出している。好ましくは長手方向の補強部120は、非拡張性のロッド又は棒を備える。長手方向の補強部120で結合された頂点116は、“結合”頂点116とする。長手方向の補強部120で結合されていない頂点118は、“自由”頂点118とする。
【0042】
上述したように、長手方向の補強部120は、実質的には長手方向に拡張するものではない。このように、ステント90がコンパクト状態と拡張状態との間で半径を変えるにつれて、波型の補強部115は、半径が拡張した状態又はコンパクト状態のいずれでも柔軟性を示すが、一方で非縮小部100におけるステントの長手方向の長さは実質的に変化しない。他の実施形態では、長手方向の補強部は、該補強部が多少長手方向に拡張するように、拡張部分を備えることも可能である。もっとも、このように長手方向に拡張するからといって、補強部の半径が直ちに変化するというものではない。
【0043】
続いて図4A及び4Bを参照するに、図示されたステントフレームの縮小部110は、相互に接続されたセル130で形成された第1及び第2の円周リング124a,124aを有する。各々のセル130は、相互に結合された複数の補強部132を有しており、そのためステントが径方向に拡張すると、セル130は長手方向には短くなる。図示された実施形態では、各々のセル130は閉じており、概ねダイヤモンド型のパターンで配置されている。周方向の及び長手方向のセル結合部134,136は互いに隣接するセル130を結合する。第1リング124aにおける各々のセル130の上側端部140は、非縮小部100の対応する長手方向の補強部120の第2端部142と転移部112で結合している。
【0044】
図示された縮小しているセル130はダイヤモンド型のパターンに配置されているが、他の配置も可能である。例えば、他の実施形態として、縮小しているセルは概ね卵型であっても良いし、更に完全には閉じていないような形態であることも可能である。図4A及び4Bを参照して上述したように、図示されたステント90がコンパクト状態から拡張状態へ拡張する場合、ステントの縮小部110の長さが実質的に短くなる一方で、ステントの非縮小部100の長さは実質的には同じままである。
【0045】
図4A及び4Bを続いて参照するに、複数の第1アンカー150が転移部112から縮小部110へ延出している。好ましくは、各々のアンカー150は概ねステント90から外径方向へも延出しており、そのため各々の第1アンカー150の先端152はセル130から離隔している。同様に、複数の第2アンカー154が、ステントフレーム90の第2端部94で又は隣接して、縮小しているセル130から延出しており、更に、ステントから外径方向へ且つ縮小部へ延出しており、そのため各々の第2アンカー154の先端156はセル130から離隔している。ステント90がコンパクト状態の場合、第1アンカー150の先端152と対向する第2アンカー154の先端156との間は第1距離として定義され、ステント90が拡張状態の場合、第1アンカー150の先端152と対向する第2アンカー154の先端156との間は第2距離として定義される。図示されているように、第2距離は実質的に第1距離よりも短い。この配置により、縮小部110がアンカー150,154で組織に結合して所定の位置でステントを固定することが可能となる。
【0046】
より好ましい実施形態では、ステント90は心臓弁の環に用いられ、コンパクト状態の位置では、第1アンカー150の先端152と対向する第2アンカー154の先端156とは、生体弁の環の各々の反対側に配置される。ステントが拡張される場合、生体弁の環の各々の反対側を挟持してステントを所定の位置で固定するために、第1アンカーと対向する第2アンカーとが近接する。このように、生体弁の環に対して実質的な径方向の力を要することなしに、ステントは所定の位置で固定される。2009年8月27日に公開された米国特許出願2009/0216314号である本出願人の米国出願12/084,586には、アンカーを備える縮小しているステントの実施形態が記載されており、図示されたステントの実施形態の所定の観点が記載されている。この出願における縮小しているステント、特にアンカーを備える縮小しているステントの実施形態の構造及び作用の記載は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0047】
図示された実施形態では、ステントは形状記憶合金、特にニチノールで形成されている。しかしながら、金属を含有する他の材質、合金、及び非金属も適切に使用することが可能である。
【0048】
好ましい実施形態では、ステントフレームは断面が円形のニチノールチューブで形成されている。このチューブは、補強部やセル等に対応するパターンに従ってレーザカットされる。カットされたチューブは好ましくは電気化学的に研磨されてラフエッジが除去される。カットされ研磨されたニチノールチューブは、アンカーを外径方向へ延出させるように、所定の手法に従って仕上げられ、ニチノールステントフレームは形状記憶を確保すると共に所定の弾性的性質を得るために熱処理される。
【0049】
次に図5を参照するに、置換心臓弁160の実施形態が図示されており、図1〜3の弁本体30が図4のステントフレーム90に配置されている。この実施形態において、弁本体30のスカート部40はステント90の外側に配置されており、弁尖部50はステント90の内側に配置されている。下流リング76及び弁尖支持部80は、ステント90に付着している。アンカー150,154に対応する開口部162がスカート部40に設けられている。アンカー150,154と開口部162とは対応するように配置されているので、ステント90がコンパクト状態の場合、アンカーは依然として開口部を通して延出している。詳細には、ステント90がコンパクト状態で縮小部110が長い場合、アンカー150,154は対応する開口部162の中で移動するが、アンカーの先端152,156は開口部162から飛び出さない。
【0050】
ある実施形態では、形成過程において、弁尖部50の一部がスカート部40に付着する前に、スカート部40がステント90に付着する。またある実施形態では、弁尖部50が折り畳まれる前に、スカート部40はステント90にフィットする。また他の実施形態では、弁尖部とスカート部とが折り畳まれた後に、弁尖部とスカート部との間をステントがスライドする。ステント90が弁尖部50とスカート部40との間に挟まれた後、弁尖54は弁尖支持部80に付着し、交連タブ部60は下流リング76に付着する。またある実施形態では、このような付着は、ステントが縮小している間、弁本体の少なくとも一部がステントに対して相対的に移動するように形成される。
【0051】
他の実施形態では、弁本体30のスカート部40はステント90の外側に付着し、弁尖部50がスカート部40に対して相対的に折り畳まれることなしに、ステントと弁本体とはコンパクト状態へ圧縮される。このように、弁尖部50は、ステント50に対して接触していないか又は直接的に結合していない。患者に置換心臓弁を取り付ける過程において、部分的に完成した組立品が所定位置に配置され、ステントが拡張されることによりアンカーが患者の生体弁の環を挟持する。ついで心臓弁の弁尖部50は重なってステント90の中へ折り畳まれて、所定の位置でスカート部40に付着する。
【0052】
次に図6A〜6Bを参照するに、ステントフレーム290が弁本体230の内側層250と外側層240との間に挟まれている、心臓弁200の別の実施形態が記載されている。好ましい実施形態において、弁本体230はステント290を被覆する単一の組織で形成されている。そのため、スカート部240は外側層であり、ステントフレーム290の外側に付着している。弁尖部250は内側層である。弁尖部250はステント290の内側に位置しており、スカート部240に付着している。図示された実施形態では、弁尖254の第1及び第2側端264,266は、各々、弁尖支持部280の第1及び第2側端272,274にしっかりと縫合されている。弁尖部250の交連タブ260は、スカート部240の下流リング276に付着している。この構成により、弁尖部250とスカート部240との間の結合部分がステント290を固持しており、リークをも防止する。更に、交連タブ260に付着している下流リング276は、弁が閉状態の間、交連タブにかかる応力を分散させる。
【0053】
図6A〜6Cに記載された実施形態におけるステントアンカー250,254は、弁本体230の上流リング278における開口部262を通して延出している。図示された実施形態において、ステントアンカー250,254は、その先端部へ向かう幅広部285を有している。このように、アンカー250,254が互いに引き離されているステント290の縮小部210が伸張する間、アンカーの拡張部285により組織弁本体230からアンカーが外れることを防止する。より詳細には、開口部262を通してアンカーの先端252,256が外れることを防止する。
【0054】
別の実施形態では、図6A〜6C又は図1〜4に記載された弁本体230,30は、拡張部を縮小させないステントフレームに取り付けられることも可能である。上述の実施形態では、スカート部40,240はステントフレームの外側に配置されており、弁尖部50,250は反転してステントフレームの内側に位置するようにスカート部に沿って折り畳まれる。そして、弁尖部とスカート部とは共に縫合されて、ステントの少なくとも一部はその縫合部で挟まれる。好ましくは、弁本体の材質は、心臓弁の上流側端部での又そこに隣接している、スカート部と弁尖部との間の折畳線で連続的なものであり、これにより、弁傍漏れの可能性を減少させることができる。
【0055】
次に図7〜9Aを参照するに、弁本体330の別の実施形態が記載されている。図7には、弁本体に組み立てられる平坦な原料組織をカッティングする平面パターン332を示す。図示された弁本体のパターン332は第1及び第2の端部334,336を有しており、スカート部340と弁尖部350とを規定している。弁尖部350は3つの弁尖354を有しており、各々の弁尖は下流弁尖端362と、対向する第1及び第2の弁尖側端364,366とを有している。隣接する弁尖354の間で隙間368がカッティングされており、組織がカッティングされることで弁尖354が規定される。
【0056】
各々の弁尖354は、対向する第1及び第2の交連タブ部360,361を有している。図示された平面パターン332では、隣接する弁尖354の交連タブ部360,361は、最初は、隣接する弁尖間の結合部363としてまとまって形成される。平面パターンに従ったカッティングの間に、隣接する弁尖354の間のこの交連結合部363はカッティングされ、これにより隣接する弁尖の第1及び第2の交連タブ360,361を規定する。第1及び第2の交連タブ360,361は、各々、第1及び第2の切断端部370,371を有する。図示された実施形態では、比較的小さなジョグ又はオフセット374が、各々の弁尖側端364,366と隣接する交連タブ360,361との間でカットされる。
【0057】
続いて図7を参照するに、弁本体330のスカート部340は好ましくは連続的であり、図1〜4の弁本体の窓のように大きく切断されていない。スカート部340は、下流端376を有しており、折畳線352で弁尖部350に結合している。スカート部340では、心臓弁のパターンの第1及び第2端部334,336は、折畳線352に対して相対的に斜めにカットされている。好ましくは、下流端376は折畳線352に対して平行である。図示された実施形態では、交連スリット380がスカート部340にカッティングされている。交連スリット380は、隣接する第1及び第2の交連タブ360,361の切断端部370,371と概ね揃っている。
【0058】
次に図8を参照するに、弁尖部350に対してスカート部340を折畳線352に沿って折り畳み、スカート部340の斜めの端部334,336を共に合わせて弁本体330の筒型を形成することにより、弁本体330が組み立てられる。この配置では、スカート部340の内側面382は、弁尖354の外側面384に面しており、弁本体330の内部386は、スカート部340の内側面382によって規定される。隣接する弁尖354の第1及び第2の交連タブ部360,361の内側面は互いに結合しており、その結合したタブ360,361は、対応するスカート部340の交連スリット380から飛び出ている。スカート部の外側からの拡大図である図9Aをも参照するに、結合した第1及び第2の交連タブ部360,361は、その切断端部370,371が概ね半径方向且つ外側方向へ向いており、スカート部340の外側面390に隣接している。
【0059】
結合された交連タブ部360,361は、好ましくは縫合により互いに結合している。スリット380周辺にあるスリット端部394は、交連タブ360,361の外側面396を結合することにより形成され、交連タブ部360,361の切断端部370,371と同様に、スリット380の切断端397は半径方向且つ外側方向へ向いている。ついで、図9Aに示されるように、スリット端部394と結合された交連タブ360,361とは全て一緒に縫合される。
【0060】
図示された実施形態では、スリット端部394におけるスカート部340の内側面382は、交連タブ360,361の外側面を結合する。また他の実施形態では、結合した交連タブ360,361は最初はスカート部340の外側で一緒に縫合され、ついで一緒に縫合された交連タブ360,361はスリット380周辺にある組織の上に縫合される。他の実施形態では、結合した交連タブ360,361は互いに縫合されない。代わりに、各々のタブは切断端部370,371に隣接して折り畳まれ、スリット380に隣接してスカート部340の外側面390を結合し、そしてスカート部に縫合される。この他の実施形態では、交連タブ360,361の結合部は一緒に縫合されることも可能であり、またクリップのようなもので固定されることも可能である。
【0061】
続いて図7〜9Aを参照するに、第1及び第2の弁尖側端364,366もまたスカート部340に縫合される。このように、弁尖354とスカート部340との間で良好な密封がなされるので、心臓弁が動作している間、その部分における血液の漏洩を防止できる。図9A及び9Bには、第1及び第2の弁尖側端364,366に沿って弁尖354をスカート部に付着させている第1及び第2縫い目398,399が記載されている。
【0062】
弁尖側端364,366とタブ360,361との間のオフセット374は、交連スリット380を通して延出するタブとスカート部340の内側面382に縫合されている弁尖側端との間のきれいな移行を促進する。好ましくはオフセット374における弁尖端部もまたスカート部を結合する。
【0063】
弁本体330は、数通りの方法で綴じられる。他の実施形態では、弁尖部350をスカート部340に対して折り畳む際に、交連スリット380はガイドとして使用され、使用者は弁尖391が適切に揃っているかを注意深く確認することができる。別の実施形態では、折り畳んだ後、弁本体を筒型に形成する前に、少なくとも一つの、又は好ましくは二つの弁尖354がスカート部340に縫いつけられる。平坦な状態において、スカート部への弁尖の縫いつけはより簡便である。この方法により、弁尖354をスカート部340に対して正しい位置に配置させることができ、縫いつけの間、弁尖を正しい位置に維持させることができる。第1及び第2のスカート部の端部334,336を結合することにより、弁本体330を筒型へ形成する前に、少なくとも一つの弁尖を所定位置へ縫い合わせるので、その既に結合させた弁尖が、残りの弁尖を縫い合わせるにあたり、ガイド及び適切位置への参照として機能する。
【0064】
もちろん、他の実施形態において、折り畳み前及び/又はスカート部340に弁尖350を付着させる前に、弁本体330を筒型に丸めることも可能である。例えば、他の実施形態において、弁本体330が筒型に丸められると、交連タブ360,361が正しい位置に付着される。正しい位置に固定されると、弁尖354がスカート部340に付着する間、タブ360,361は弁尖354が正しい位置にあるようにガイドとして機能する。
【0065】
図7では隣接する弁尖354の間の交連結合部363は切断されて、対向する交連タブ360,361を形成するが、他の実施形態において、隣接する弁尖354の間の交連結合部363は切断されずに、隣接する弁尖354を結合する交連タブ363のままである以外は、弁本体330は、図7及び図8の弁本体の構造と実質的に同じである。このような実施形態では実質的には上述のように組み立てられるが、しかしながら、第1及び第2の端部334,336での交連タブ360,361のみが、図Aに示されるように切断端部370,371を有する。
【0066】
図9を参照するに、弁尖354の間の交連タブ363が連続的である実施形態では、各々のタブ363は好ましくは折り畳まれており、それゆえタブ363の内側面は結合している。折り畳まれたタブ363は、対応する交連スリット380から飛び出ている。好ましくは上記の実施形態と同様に、各々の折り畳まれた交連タブ363はスカート部340に縫合されている。
【0067】
次に図10を参照するに、平坦な原料組織から弁本体430をカッティングする平面パターン432の別の実施形態が示される。この実施形態においては、弁本体430はスカート部440と弁尖部450とに分割される。弁尖部450は3つの弁尖454を有しており、各々の弁尖は、曲線状の下流弁尖端462と、曲線状の第1及び第2側端464,466と、を有する。対向する第1及び第2の交連タブ部460,461もまた各々の弁尖454に規定される。図示されたパターンでは、交連タブ部460,461と側端464,466とは、隣接する弁尖の隣接する第1及び第2のタブ部の間を含む、弁尖454間の組織を除去することにより形成される。他の実施形態では単にスリットにカッティングするのに対して、図示された実施形態のスロット480は、組織の一部をカッティングして取り除くことにより形成される。原料組織からカットされると、図7〜図9の弁本体330と同様に、弁本体430は組み立てられる。
【0068】
次に図11を参照するに、ステントフレーム500の別の実施形態が示される。図示された実施形態では、ステントフレーム500は非縮小部510と縮小部520とを有する。非縮小部510は、互いに頂点526,528で結合している周状に拡張しうる波形の補強部524を構成する3つのリング522a〜522cを有する。長手方向の補強部530は第1及び第2の端部532,534を有しており、ステント500の第1端部538から第2端部539の方向へ延出しているが、非縮小部510から縮小部520への転移部540まで延出するにとどまる。長手方向の補強部530と交差する頂点は“結合”頂点526とされ、結合頂点526間の頂点は“自由”頂点528とされる。
【0069】
図示された実施形態において、第1リング522aはステントの第1端部538に隣接して配置されており、第2リング522bはその第1リング522aに隣接して配置される。一組の第1小穴544が、第2リング522bの結合頂点526に形成される。一組の第2小穴546もまた各々の長手方向の補強部530の第2端部534に形成される。第2端部534は、図示された実施形態では転移部540でもある。第3リング522cでは、自由頂点528は各々そこから延出している突起550を有しており、その突起は頂点アンカー550とも定義される。好ましくは第3リング522cにおける補強部524は予め形作られており、ステントフレーム500が図11に示される拡張状態になる場合、直ちに外側に広がる。
【0070】
続いて図11を参照するに、図示されたステントフレーム500の縮小部520は、互いに結合部556で結合している概ねダイヤモンド型のセル555のリング552を有する。各々のセル555の第1端部560は、第2小穴546にて非縮小部510に結合している。上述の実施形態では、ステントフレーム500が径方向にコンパクトである場合は、ステントの縮小部520は長手方向に長くなり、ステントフレームが径方向に拡張している場合は、縮小部520は長手方向に短くなるように、縮小部のセル555は構成されている。
【0071】
縮小部520における各々のセル555の第2端部562は、概ね半径方向且つ外側方向へ延出しており更にステントの第1端部538へ延出しているアンカー570に付着している。アンカー小穴572は各々のアンカー570に形成されており、好ましくは各々のアンカー570の基端574と先端576との間に形成されている。用いる際には、示されている他の実施形態と矛盾することなく、コンパクト状態のステント500が生体心臓弁の環に置かれると、最初、生体心臓弁の環が頂点アンカー550とアンカー先端576との間に配置される。ついでステント500が拡張すると、縮小を促進して、アンカー先端576は頂点アンカー550に近接し、これらの間に生体心臓弁の環を挟持する。図示された実施形態では、頂点アンカー550と端部のアンカー570とは線上に揃ってはいない。
【0072】
図12及び図13を参照するに、実施形態に係る置換心臓弁600は、図11に示されたステントフレーム500に付着した図7〜図9に示された弁本体330を有している。しかしながら、この実施形態では、弁本体330の全てがステント500の中に配置されている。より詳細には、図12に示されるように、弁本体330のスカート部340はステントの第1小穴544に縫い合わされている。図示された実施形態では、弁本体330の折畳線352は取り囲まれており、縫い目610のステッチ606は、ステント500の非縮小部510における第1小穴54を結合している。この実施形態では、取り囲まれた折畳線352は弁本体330の上流側端部612になる。
【0073】
図12及び図13を続いて参照するに、柔軟で長手方向に伸張可能な織物の伸張した筒型部620が、図示された実施形態におけるスカート部340の下流側端部376に付着している。詳細には、織物622の第1端部は、下流側縫い目624によってスカート部の周辺にてスカート部の下流側端部376に縫いつけられている。好ましくは織物620スカート部340の外側表面にも結合しており、またステントフレーム500の第2小穴546にも縫いつけられている。好ましくは織物620は、結合ステッチ626にて縮小しているセル555にも数カ所縫いつけられている。
【0074】
図示された実施形態では、織物620は、ステントフレーム500の第2端部539の周りで湾曲しており、概ね下流側アンカー570の曲面に続いている。織物部620の第2端部628はアンカー小穴572に縫いつけられている。好ましくは織物部620は十分に伸張可能であるので、ステント500がコンパクト状態と展開し拡張した状態との間で動く際、縮小部520と共に動く。このように図示された実施形態では、組織弁本体330はステントの非縮小部510に制限されており、柔軟な織物620はステントの縮小部520にわたっている。このように組織弁本体330は長手方向に拡張されるものではなく、ステント500と共に縮小する。
【0075】
図示された実施形態では、弁本体330の組織部は、上流側端部612のみにてステントフレーム500に直接的に縫いつけられている。スカート部340の下流端376は織物620に付着しており、この織物は下流側縫い目624を介して第2小穴546にてステント500に直接的に縫いつけられている。他の実施形態では、織物620をスカート部340に結合させる同じ縫い目624は、スカート部340を第2小穴546に結合させる。
【0076】
続いて図7〜図9及び図11〜図13を参照するに、実施形態に係る組み立てられた心臓弁600は、2層の組織を有しており、好ましくは単一の連続した組織片から形成された1層の組織を有している。弁尖354を有する弁の弁尖部350は、直接的にスカート部340にのみ縫いつけられている。このように、弁が開状態と閉状態との間で作動する間、弁尖部350、特に弁尖354は、直接的にスカート部340にのみ結合する。一方、スカート部340は、ステント500及び下流側織物部620のような他の材質に付着して相互作用する。
【0077】
他の実施形態では、図12及び図13の実施形態において織物部620として示されたものの一部又は全ては、組織弁部分のより長いスカート部にて置き換えることが可能である。また他の実施形態において、図示された弁本体330は縮小しないステントとともに使用されることが可能である。
【0078】
次に図14を参照するに、図12及び図13と合わせて上述した心臓弁600がヒトの心臓に組み込まれている略図が示される。心臓は断面図で示されており、左心房752及び左心室760を有する典型的な生体構造を示す。左心房760は筋肉壁762にて区画される。左心房752と左心室760とは僧帽弁輪770を通して互いに連通している。僧帽弁前尖774の下流側端部を左心室760の筋肉壁762に結合させる腱索776を有する生体僧帽弁前尖774も図14に示されている。左心室流出路778が左心室760の上部へ延出している。
【0079】
図14に示されるように、既述したステント500の調整及び配置の方法に従って、僧帽弁輪770がアンカー570と頂点アンカー550との間で挟持されるように、図12〜図13の弁600が配置されている。このようにステント500の全て又は大半は左心房へ延出している。環770の上流に配置されたステント500の部分は、上流環に位置するとされる。概ね環770内の部分は内側環に位置するとされる。環の下流部分は、サブ環に位置するとされる。図示された実施形態では、縮小部の一部のみが内側環又はサブ環に位置しており、ステント500の他の部分は上流環に位置している。
【0080】
図示された実施形態では、僧帽弁前尖774は置換弁600を配置する前に取り除かれていない。好ましくは僧帽弁後尖(図示しない)も置換弁を配置する前に取り除かれていない。しかしながら、他の実施形態では、これらの生体弁の弁尖の一つ又は両方は、置換弁を配置する前に取り除かれることも可能である。
【0081】
左心房752内のほとんど上流環にステント500を配置することで、ポンピングの間、ステント500は左心室の機能を妨害しない。詳細には、ステント500は、流出路778を経由しての左心室760からの血液流を妨害しないし、またポンピングの間に筋肉壁762が収縮する際、左心室760の変形を妨害しない。図示された実施形態において、弁の下流端が概ね僧帽弁輪770内にあるように、弁本体330はステント500に付着している。これは、弁本体330の内側環配置とされる。
【0082】
次に図15を参照するに、ステント500aの一部及び他の実施形態の織物部620aを示す垂直断面図が記載されている。この実施形態は、織物部620aがアンカー小穴572aをこえてアンカー先端576aまで延出していることを除いて、図12及び図13に記載されたものと同じである。好ましくは織物部620aはアンカー先端576aあたりで覆われ、織物部620aの周囲の縫い目にて密封されており、そのためアンカー570aの先端576aにて概ね連続的な帯を形成している。このように各々のアンカー570aは織物部620aを通して生体弁の環に接している。
【0083】
図16Aを参照するに、心臓弁600aの他の実施形態が記載されている。図示された心臓弁600aは、図7〜図9と関連して説明したステント500bに装着されている弁本体330を用いる。このステント500bは図11〜図13のステント500とほとんど同じである。図16Aに示されているように、ステント500bは、ステント500とほとんど同じであり、ほとんど同じ構造を有し、同じ参照番号を使用する。この構造は、上記のステント500での記述と結びついて説明される。
【0084】
図示されたステント500bでは、複数の末端小穴800がステント500bの下流側端部539に設けられており、その下流側端部539はステント500bの縮小部520におけるセル555の第2端部562でもある。この実施形態において、スカート部340の下流端376が縫合のようなもので下流小穴800に結合するように、弁本体330はステント500bに付着している。このように、弁尖354、特に弁尖354の下流端362は、ステント500bの第2端部539に隣接して、又はある実施形態ではその第2端部539の下流側に配置されている。
【0085】
続いて図16Aを参照するに、対向する第1及び第2端部812,814を有している細長い筒型の柔軟部810が弁本体330に付着している。詳細には、柔軟部810の第2端部814は、スカート部340の上流側端部352に付着しており、好ましくは周状のステッチ818にて付着している。柔軟部810の第1端部812は、第1小穴544にてステント500bに付着している。好ましくは、弁本体330の上流側端部352はステント500bに直接的には付着していないが、代わりにステント500bに付着している柔軟部810にのみ付着している。
【0086】
径方向の縮小及び拡張の間の収縮に起因してステント500bの長さが伸び縮みする際に、柔軟部810は、長さが伸び縮みできる柔軟な材質で構成されていることが望ましい。弁本体330もまた、柔軟であるが実質的に長手方向に伸張されない、心膜のような材質で構成されていることが好ましい。ステント500bの長さが伸びる際に柔軟部810が弁本体330よりも長手方向に伸びるように、好ましくは柔軟部810が弁本体330よりも長手方向に伸張されるような伸張性の材料で、弁本体が形成される。
【0087】
図16Bを付加的に参照するに、図示された実施形態では、弁本体330の一部がステントの縮小部520にわたって設けられている。しかしながら、長手方向に伸張可能な柔軟部810は、ステント500bの非縮小部510に配置されている。組み立てられた弁600aが図16Aに示された拡張状態から図16Bに示されたコンパクト状態へコンパクトになると、縮小部500はより長くなる。弁本体330は実質的に伸びず代わりに柔軟部810が実質的に伸びるので、ステント500bは弁本体330に対して相対的に長手方向に移動する。このような“流動的弁本体”の形態により、伸び縮みする間に弁の縮小部が長くなる際に弁本体を伸張させることなしに、ステント500bの縮小部520の少なくとも一部に対して弁本体を配置することが可能となる。
【0088】
図16A及び図16Bに示された実施形態では、スカート部340の少なくとも一部が、好ましくは上流側端部にて又は隣接して、ステント500bの長手方向の補強部530に、1以上のゆるやかなステッチ820により緩やかに1以上付着している。そのため、伸び縮みの際にステント500bに対して弁本体330が流動的で長手方向に移動する。他の実施形態では、このようなゆるやかなステッチ820は弁本体に隣接した柔軟部に設けられる。ステント500bがコンパクト状態と拡張状態との間を動く際に、各々のステッチ820は対応する長手方向の補強部530に対して長手方向にスライドするように、ステッチ820は相対的にゆるやかであることが好ましい。このようなステッチ820は、ステッチが滞りなくスライドするような経路を有するように戦略的に配置される。
【0089】
図示された実施形態において、柔軟部810は、十分にゆるやかな織物、及び/又は、コンパクト状態の間は長手方向に伸張し、拡張状態の間はステントが縮小するようにたるむ材質にて形成される。もっとも他の形態の材質及び構成も柔軟部に使用されることが可能である。例えば、他の実施形態では、心膜の細長い筒型部により柔軟部が形成される。この実施形態では、拡張してステントが縮むと、アコーディオンのように折り畳まれるように、心膜には折り目がついている。他の実施形態では、柔軟部は複数の穿孔を有する心膜セグメントを有しており、その穿孔は、心膜に対して長手方向の張力がかかると、心膜セグメントが長手方向に伸張できるように戦略的に配置されたスリットである。しかしながら、ステントが拡張して短くなると、心膜はもとの形状にもどる。弁が配置された後に、時間が経過すると、成長した組織によりその穿孔は閉じる。また他の実施形態では、別の構成が用いられる。例えば、柔軟部は、筒型の柔軟部ではなく、弁がコンパクト状態では長手方向に伸張し弁が拡張状態ではたるむような、弁本体330の上流側端部に付着する複数の弾性コードからなる列を有することが可能である。また、図示された実施形態は2層の弁本体330を用いているが、他の実施形態として、柔軟部に結合して縮小部を有するステントに備え付けられた単層の弁を用いることも可能である。
【0090】
次に図17を参照するに、ヒトの心臓に備え付けられた図16A及び図16Bの弁600aが図示されている。図示された実施形態では、ステント500bは、図14に示されたステント500と実質的に同様に備え付けられている。しかしながら、弁本体330はステントに対してより下流側に位置しているので、弁尖354は概ね僧帽弁輪770内に位置し、その位置は内側環又は部分的内側環とされ、弁尖354の下流端362は環の下流に位置してサブ環とされる。他の実施形態において、弁本体は、上流環、内側環、サブ環、又はこれらの組み合わせのステントに対して装着されうる。
【0091】
次に図18及び図19を参照するに、弁本体630の別の実施形態が示される。図18は、平坦な原料組織から弁本体630をカッティングする平面パターン632を示す。図示されているように、パターン632は、スカート部640と弁尖部650とを有する。弁尖部640は3つの弁尖654を有しており、各々の弁尖654は、下流端662と、対向している第1及び第2側端664,666と、を有する。各々の弁尖654は、対向している第1及び第2の交連タブ部660,661を有する。オフセット674は、各々の弁尖側端664,666と隣接する交連タブ660,661との間に設けられる。
【0092】
スカート部640において、3つの交連スリット680が、概ね交連タブ660,661に沿っているようにカッティングされている。第1及び第2の弁尖端スリット694,696もまた、対応する第1及び第2の弁尖側端664,666の曲線と概ね揃っているように、スカート部640にカッティングされている。図示された実施形態において、各々の交連タブ660,661の部分700は、弁尖下流端662の少なくとも一部を超えて下流側の方向に延出している。
【0093】
図18及び図19を続いて参照するに、このパターン632に従ってカットされた平坦な組織から弁本体630を構成するため、カットされた組織は折り畳まれて、第1及び第2の弁尖側端664,666は各々対応する第1及び第2の弁尖スリット694,696に対して押し込まれる。弁尖スリット694,696におけるスカート部640の端は曲げられることにより、スリット694,696におけるスカート部640の内側面は、弁尖654の内側面及び外側面と結合する。そして弁尖切断端部704と対向するスリット切断端部706,708は、径方向且つ外側方向に面する。ついで弁尖切断端部704とスリット切断端部706,708とは共に縫い合わされる。このように、弁尖側端664,666をスカート部640に結合させる縫合は、概ねスカート部640の外側703に保持されており、弁本体630内の弁尖654の一部は概ねその縫合と結合していない。同様に、他の実施形態においても、隣接する弁尖654の第1及び第2の交連タブ部660,661は互いに向かい合うように嵌め込まれ、スリット680を通して延出し、互いにスリット端にてスカート部640に対して縫い合わされる。
【0094】
また他の実施形態において、弁尖側端664,666は、対応する折り畳まれたスリット694,696を通して延出し、スカート部640の外側面703と組み付けられてそこで縫い合わされる。
【0095】
図示された実施形態において、交連タブ部660,661の下流部分700は、交連タブ部を所定位置に縫い合わされるための表面領域として機能し、製造工程において材料を固持する。ある実施形態では、全ての交連タブ部660,661はスカート部640に縫い合わされる。別の実施形態では、交連タブの一部が所定位置で縫い合わされ、各々の交連タブの使用されていない残りは取り除かれて廃棄される。
【0096】
次に図20を参照するに、図18及び図19の弁本体630を組み立てるのを手助けするツール830が示される。このツール830は、基部ハンドル部832と、その末端にある型部840又はモールドと、を有している。好ましくは、型部840は、弁尖654が閉状態にて接合した場合における、弁本体630の下流部分の形状のネガ型に形成されている。図示された型部840は、停止面844と、第1及び第2の側端854,856を有している複数の弁尖嵌込面850と、を有する。
【0097】
付加的に図21を参照するに、弁本体630を形成途中におけるツール830が示される。好ましい実施形態では、弁本体630は上述のようにパターン632に従ってカッティングされ、ついで筒型に形成され、交連タブ660,661にて結合される。好ましくは、最初は交連タブ660,661は所定位置にて仮とめされ、ついで部分的に組み立てられた弁本体630の型部840に対する位置合わせとして機能する。ついで部分的に組み立てられた弁本体630の下流側端部が型部840に配置される。これにより、スカート部640が型部の周状の外側表面860に嵌め込まれ、弁尖654が対応する弁尖嵌込面850に嵌め込まれ、更に弁尖654の第1及び第2側端664,666が概ね弁尖嵌込面850の第1及び第2側端854,856とそろう。好ましくは、弁尖654の下流端662は、型部850の停止面844にあるか又は隣接した位置にある。
【0098】
好ましい実施形態において、使用者は正しく型部840に弁本体630を配置させ、好ましくは弁尖嵌込面の側端854,856に沿って、弁尖654の側端664,666をスカート部640の対応する弁尖スリット694,696を通して引っ張る。この手法では、部分的に組み立てられた弁本体630は型部840と組み込まれてその型部の形状になっていき、弁尖は前述の閉状態に配置される。このように、弁本体630は、最適な弁の性能を正確に発揮するような構成にて組み立てられる。弁尖側端664,666が対応する弁尖スリット694,696を通して引っ張られた状態で、弁本体630が型部840に適切に配置されると、上記の方法を含む全ての許容な方法で、弁尖側端664,666はスリット694,696に沿って弁本体630に縫い合わされるか又は付着される。更に、交連タブが最初は所定位置に仮とめのみされる実施形態では、次に交連タブは所定位置に十分に固定される。
【0099】
上記した弁組立ツール830を使用することにより、比較的早くに弁本体を一貫して理想の形状に組み立てることが可能となる。ある実施形態では、臨床医が患者自身心膜のような患者自身の組織を摘出し、均一な原料組織を平坦にし、所定の心臓弁パターンに従ってそれをカッティングし、そして弁本体組立ツール830を使用して弁本体を組み立てるようにして、均一な組織弁本体が組み立てられる。好ましくは、作製された弁は臨床医によって手術室にて単一の工程にて移植される。
【0100】
次に図22を参照するに、複数の腱索932,934が各々の弁尖354の下流端362から延出することを除いて、図7〜図9と共に上述された組立とほとんど同じパターン及び方法を使用して、別の実施形態の弁本体930が形成される。図示された実施形態では、中央及び二つの端にある腱索932,934が設けられる。好ましくは中央の腱索932は端にある腱索934よりも長い。他の実施形態では、より多くの又はより少ない腱索が設けられる。図示された実施形態では、腱索932,934はパターンの一部としてカッティングされ、弁尖354と連続的である。好ましくは、装着タブ936は各々のコード932,934の先端に設けられている。装着タブ936は、好ましくは、縫合やクリップのような取付媒体938を収容する空間を提供する半径増加領域を有する。
【0101】
図23は、ステント902に付着した弁本体930を用いる置換弁900の略図である。好ましくは、腱索932,934は、図23に示される閉状態の弁本体の下流側でステント902に付着している。生体の腱索では、腱索932,934は十分に長いので、殆ど又は全く妨害されることなしに弁尖354は十分に接合されるが、心室のポンピングの際には血圧の力は分配されることにもなる。簡単に述べれば、腱索は、弁尖への血圧の力をフレーム902へ連絡させる。
【0102】
付加的に図24を参照するに、弁本体930及び腱索932,934を支持するために使用されるステント902の一部が示される。図示されたステントは上記のステント500と同様である。好ましくは、複数の末端小穴940が、ステントの端部539にて又は隣接して形成されている。図示された実施形態では、各々の末端小穴940は、概ね平坦な接触面944を有する横方向に伸張された穴942を有する。取付小穴950は長手方向の補強部530に設けられており、好ましくは頂点アンカー550を有するリング522cに設けられている。
【0103】
図25を参照するに、弁本体930、ステント902、及び腱索932の一部が断面図にて示されている。図示のように、上記の実施形態と同様に、好ましくは弁本体の下流側端部は、縫合を介して第2小穴546に付着している。弁本体の弁尖354は、閉状態にて、仮想線で概略的に示されている。図示された実施形態では、腱索932は、弁尖から下流小穴940を通して延出している。ある実施形態では、腱索は下流小穴940に縫い合わされる。しかしながら、図示された実施形態では、腱索は、小穴を通して延出し、接触面944と組み合って、反対側へもどり、取付小穴950へ延出している。好ましくは、腱索932の装着タブ936は、例えば縫い目938にて、取付小穴950に付着している。この方法では、血圧による応力が閉じた弁の接合した弁尖を押圧すると、腱索が、この応力をステントの縮小部の下流側端部に分散させ、更にステントの縮小部の上流側端部にも分散させる。これにより、弁尖からの応力を分散させるのみならず、ステントアンカー550,570を生体弁の環を確実に挟持させることになる。もちろん、他の領域にて腱索を付着させることも可能である。
【0104】
本発明は、所定の好ましい実施形態及び具体例にて開示されたが、当業者によれば、本発明は、特定の開示された実施形態を超えて、発明の他の代替的な実施形態及び/又は使用並びに明らかな改変及び均等物へ拡張される。更に、多数のバリエーションの発明が詳細に示され記述されたが、本発明の範囲内にあるならば、本明細書の開示に基づいて他の改変も当業者に明白である。実際、ここで開示された特定の実施形態は、多数の実施形態にて使用されうる発明の特徴を記述する手段として使用される。このように、実施形態の特定の特徴及観点の種々の組み合わせ又はサブコンビネーションが可能であり、それは本発明の範囲内にあると考えられる。例えば、図7〜図9の弁本体は、隣接する交連タブがカッティングされている実施形態(図9A参照)にて記述されており、更に弁尖間の交連結合部がカッティングされていない実施形態(図9B参照)にて記述されている。しかしながら、図10の弁本体の実施形態と結びついた記述は、弁尖間の交連結合部がカッティングされていない実施形態を明確に説明するものではない。出願人は記述された実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は置換を意図するものであるから、出願人は、カッティングされていない交連結合部を用いる図10の弁本体のバリエーションも意図すると理解されるべきである。この具体例は、所定の実施形態において記載された全ての特徴に適用される。従って、開示された実施形態の種々の特徴及び観点は、互いに組み合わされ又は置換されて、開示された発明の形態を変えるものと理解されるべきである。このように、ここに開示された本発明の範囲は、上記された特定の開示された実施形態によって限定されるべきではなく、以下に記載された発明の公平な解釈によってのみ決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層及び内側層を備える弁本体を有し、
前記弁本体は、筒型であると共に、長手方向軸、上流側端部及び下流側端部を備え、更に、前記外側層は薄型且つ柔軟な材質で形成されており、
前記内側層は、概ね筒型であり、前記外側層に沿って概ね長手方向軸を有し、前記外側層の内側に配置され、前記内側層は薄型且つ柔軟な材質で形成されており、開状態と閉状態との間で作動する複数の弁尖を規定し、各々の弁尖は弁尖側端及び下流部を備え、前記内側層の隣接する弁尖は交連部によって接合されている、置換心臓弁であって、
前記弁尖は弁尖側端に沿って前記外側層に付着しており、前記交連部は弁尖側端の少なくとも一部の外側層下流側に付着していることを特徴とする置換心臓弁。
【請求項2】
前記内側層及び外側層は、柔軟な材質の単一で切れ目の無い断片から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項3】
前記内側層及び外側層は、上流側端部で互いに相対的に折り畳まれており、前記内側層は上流側端部で前記外側層と連続的に隣り合っていることを特徴とする請求項2に記載の置換心臓弁。
【請求項4】
前記外側層は交連スリットを備えており、前記内側層の交連部の一端は少なくとも部分的に前記交連スリットを通して延出していることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項5】
前記外側層は、弁尖側端に対応して対になっている形態の弁尖スリットを備え、前記弁尖側端は少なくとも部分的に前記弁尖スリットを通して延出していることを特徴とする請求項4に記載の置換心臓弁。
【請求項6】
前記外側層は複数の窓部を有しており、前記窓部は、弁尖が閉状態の場合、血液は前記窓部を通して流れるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項7】
径方向に縮小してコンパクト状態になると共に径方向に拡張して拡張状態になる細長いステントを付加的に備えており、前記ステントは長手方向軸を有し、弁本体が前記ステントに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項8】
前記外側層は前記ステントの外側に接し、前記内側層は前記ステントの内側に接し、これにより前記ステントは前記内側層と前記外側層との間に挟まれていることを特徴とする請求項7に記載の置換心臓弁。
【請求項9】
前記弁本体は、前記ステントが前記外側層の外側表面に隣接するように位置していることを特徴とする請求項7に記載の置換心臓弁。
【請求項10】
前記弁本体の前記外側層は前記ステントに結合し、前記弁本体の前記内側層は直接的に前記内側層に結合しているが前記ステントには直接的に結合していないことを特徴とする請求項9に記載の置換心臓弁。
【請求項11】
弁尖が開状態の場合、前記外側層は前記開状態の弁尖と前記ステントとの間にあることを特徴とする請求項9に記載の置換心臓弁。
【請求項12】
前記ステントは縮小部を備えており、前記縮小部は、前記ステントが径方向に縮小している場合は前記縮小部は長手方向に伸張し、前記ステントが径方向に拡張している場合は前記縮小部は長手方向に縮むように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の置換心臓弁。
【請求項13】
前記弁本体の少なくとも一部が前記縮小部の少なくとも一部内に配置されており、前記弁本体は前記ステントに一部分又は複数部分で結合し、その結合部分は概ね前記ステントの長手方向軸に沿って配列しており、前記ステントが縮小している間、前記ステントは、前記弁本体を長手方向に伸張させる又は破壊することなしに前記弁本体に対して相対的に移動することを特徴とする請求項12に記載の置換心臓弁。
【請求項14】
直接的に前記ステント及び前記弁本体に結合される長手方向に拡張しうる材質を付加的に備えており、その柔軟な材質は、軸点から長手方向に離隔した一部又は複数の結合部で前記ステントに直接的に結合していることを特徴とする請求項13に記載の置換心臓弁。
【請求項15】
前記ステントは付加的に非縮小部を備えており、前記弁本体は前記非縮小部内に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の置換心臓弁。
【請求項16】
置換心臓弁の製造方法であって、
平坦で柔軟な原料材料を準備し、
所定のパターンに従ってその平坦な材料をカッティングし、前記パターンは、第1及び第2のパターン端部と、スカート部と、複数の弁尖からなる弁尖部と、隣接する弁尖の間で延出する交連部と、各々弁尖に備わる弁尖側端と、を有しており、
前記第1及び第2のパターン端部を結合させて、前記平坦な材料からチューブを形成し、
折畳線に沿って前記弁尖部を前記スカート部に対して相対的に折り畳み、前記弁尖部を概ね前記スカート部内に配置し、
前記交連部を前記スカート部に付着させ、
前記弁尖側端を前記スカート部に付着させる、ことを特徴とする。
【請求項17】
請求項16記載の置換心臓弁の製造方法であって、
弁尖形状部分を備えており、所定形状の閉状態の弁の実質的なネガ型の形状を有する型部を準備し、
平坦な材料を筒型に形成すると共に交連部がスカート部に付着し、
弁を前記型部に配置させることにより、弁尖が弁尖形状部分に係合し、
前記弁尖が前記弁尖形状部分に係合すると、弁尖側端がスカート部に付着される、ことを特徴とする。
【請求項18】
請求項17記載の置換心臓弁の製造方法であって、
スカート部には、弁尖の所定曲面と概ね対応する弁尖スリットが形成されており、
弁を前記型部に配置させることにより、弁尖が弁尖形状部分に合わさり、スカート部の弁尖スリットを通して弁尖側端が延出する、ことを特徴とする。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−504031(P2012−504031A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529377(P2011−529377)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/058893
【国際公開番号】WO2010/037141
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(511080432)カルディアック バルブ テクノロジーズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】