応力がかかった薄膜島
開口部を決定する支持体、および前記開口部をふさぐように配置された引張応力がかかった薄膜であって、当該薄膜が前記支持体の少なくとも一部分に接触する薄膜を含む、構造物。前記応力がかかった膜には、前記膜の最小の大きさの1/2よりも大きく前記最小の大きさの10倍よりも小さい特徴的な亀裂スペースを有する材料が含まれる。最小の開口の大きさを有する開口部を決定する支持体と、前記開口部をふさぐように配置された圧縮応力がかかった薄膜であって、前記膜が前記し自体の少なくとも一部分に接触する膜を含む、構造体。前記の応力が掛かった膜には、前記の開口部の最小の大きさの1/2と前記膜の厚さの比よりも大きいゆがみの臨界縦横比を有する膜材料を含み、前記のゆがみの臨床縦横比が前記の開口部の最小の大きさの10倍と前記膜の厚さの比がよりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本願明細書は、その開示全体を本願明細書に引用することによって援用される2003年9月23日に提出された米国仮出願第60/595,547号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本願発明は、一般的には応力がかかった膜であって、具体的には応力がかかった薄膜であって前記膜の両面に流体の接触が必要となる薄膜に関連する。
【0003】
発明の背景
多くの商用アプリケーションでは、膜を用いて、例えば気体または液体など2種類の流体を分離する必要がある。その膜は、2種類の流体の接触を媒介するように選択される。たとえば、水素精製システムでは、その膜は水素を多く含む高圧ストリームと純水素の低圧ストリームの接触を媒介することができる。この例では、その膜は、水素を多く含むストリーム中の水素以外の成分よりも、水素を高速に拡散する材料からつくることができる。別の例では、燃料電池の膜は酸素含有流体と燃料含有流体の接触を媒介することができる。燃料電池の膜は、多層膜であって、1種類以上のイオンがその膜を通過して燃料を酸化し、その一方でその反応によって電気エネルギーを抽出することができるような多層膜を含んでいてよい。
【0004】
性能を向上させシステムの大きさを縮小するために、膜を含むシステムの小型化が望ましいことが多い。しかし、容易に小型化して製造できるような材料は、膜の機能性に最適な材料と適合性があるとは限らない。これら2種類のセットを合わせようとすると、膜に相当な応力がかかる結果になりかねない。応力は、たとえば膜と支持構造の熱膨張率の違いによって生じることがある。
【0005】
小型化に必要なものの具体的な例は、バッテリおよび燃料電池の分野にみつけることができる。携帯電話およびラップトップ型コンピュータなどの携帯用電子機器の普及によって、バッテリなどの電力貯蔵デバイスの需要が高まっている。燃料電池を使用すると、バッテリと比較して使用可能な貯蔵電力を増やすことができる。しかし、燃料電池システムは、既存のバッテリの小型フォームファクタ内におさまるように小型化しなければならない。燃料電池の一種のある例は固体電解質型燃料電池で、高性能であることが知られている。ある一般的な小型化技術では、シリコン(Si)基板と集積回路製造技術を利用する。シリコンは約4μm/m/℃の速度で拡大する。従来の固体電解質型燃料電池には拡大速度が約10μm/m/℃の材料を使用しており、約800℃で作動する。従来の固体電解質型燃料電池の膜と、従来のシリコン製造ステップを組み合わせると、約0.5%の有意な拡大ミスマッチが生じることがあり、その結果、膜に高い応力がかかる。その応力に寄与するさらなる因子には、溶着したままの状態の薄膜の固有応力、焼着またはその他の熱的処理によって生じる引張または圧縮応力、および化学修飾により生じる引張または圧縮応力が含まれてよい。薄膜の応力が高いと薄膜に機械的損傷が生じ、応力レベルが材料の特性を不適切に変化させることがある。
【0006】
Si基板上のイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などの燃料電池膜のデザインには、直径1mm乃至1cmに引き延ばすために独立のYSZ薄膜を要することがある。これらの薄膜は曲がりやすかったり坐屈しやすかったりすることがあり、機能性を失うこともある。さらに、YSZ膜は冷却時に亀裂の拡大のために引張状態になり、機能性を失うこともある。
【0007】
概要
本願発明は応力がかかった薄膜の形成であって、実質的に亀裂がなく、前記膜の両面に流体を接触させることが可能なようにつくられた、薄膜の形成に関連する。
【0008】
とくに硬い支持体に完全に結合された引張応力がかかった薄膜の場合、クモの巣様のチャンネル構造または亀裂が前記薄膜に形成されることがある。隣接する亀裂の間の距離は、無作為ではなく、特徴的な亀裂スペースの近くに集まるようになっているのが認められる。この現象は薄膜破壊力学の分野ではよく知られている。
【0009】
引張応力がかかった薄膜のこの特徴的な亀裂スペースより下の側面の面積を減らすと、薄膜の亀裂を防ぐ一助となる。応力をかけられた材料の使用可能な面積を大きくするために、応力をかけられた薄膜の島のアレイを形成してもよい。
【0010】
島形成の既存の技術は、引張応力がかかった膜、つまり薄膜の両面に流体を接触させることができる膜構造をつくる場合には容易に適用できない。流体を接触させる必要があるということは、応力のかかった膜を固体支持構造に取り付けることができないことを意味する。
【0011】
圧縮応力がかけられた膜のある場合では、支持構造がないと膜が膨張してゆがむ場合がある。このゆがみは様々な用途において不適切であり、前記膜の亀裂も生じかねない。
【0012】
結合エネルギーが、応力がかかった材料のエネルギーよりも大きくなるように基板に接着させることができれば、圧力による不具合を防ぐ一助となるかもしれない。しかし、この既存の改良された接着の技術は、応力がかかった膜の形成に容易に適用することができない。
【0013】
本願発明にしたがった構造は、引張応力がかかった小さい膜であって、支持構造、つまり支持格子との重なりがわずかしかない膜である。応力がかかった材料の独立している部分と結合している部分の面積を含む合計面積は、膜が張力によって壊れにくくなるように十分小さくデザインされている。引張応力がかかった膜の許容面積は、特徴的な亀裂スペースによって決まる。結合面の材料、つまり支持格子は、特徴的な亀裂スペースに影響を与え、したがって膜の許容面積にも影響を与える。
【0014】
ある実施態様では、前記の使用可能な領域は、島と島の間のスペースが比較的小さくなるように並べられた島の作製によって増える。この実施態様は、意図的につくられたスペースとスペースをつくらなかった場合に形成される亀裂とが似ていることから、薄膜の「前亀裂」と呼ぶこともできる。前記支持構造は、前記の応力がかけられた薄膜との重なりが小さいスペースの下に並べられた支持格子であってよい。支持構造の面積は、前記膜に張力による亀裂が生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0015】
本願発明による別の構造は、前記支持材料に結合された圧縮応力がかかった小型の膜である。前記薄膜の独立領域の許容可能な面積は、前記膜に圧力によるゆがみが生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0016】
ある実施態様では、前記膜が結合できるような支持格子を提供し、前記膜の外縁部に適切な密閉部が形成されるような方法を提供する。シリコンリッチな窒化シリコンなどの材料を含む前記支持格子は、前記膜構造に固さを提供するのに役立つとともに、ゆがみの生じる可能性を低減する。応力をかけた薄膜材料の小さい島は、前記島の外縁部に近い環上の支持材料にしっかり結合する。前記薄膜全体に位置するさらなる領域も結合してもよい。
【0017】
ある実施態様では、前記使用可能な領域は、膜と膜のスペースが比較的小さくなるように配置された圧縮応力がかかった膜の作製によって増える。隣接する膜は薄膜材料の連続する部分から形成されてよい。前記支持構造の面積は、前記膜に圧力によるゆがみが生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0018】
本願発明による第3の構造は、上述の2種類の構造の特徴を合わせて、様々な操作条件、時間、または場所における引張および圧縮応力下にありうる膜を収容する。この構造は、支持構造、つまり支持格子との重なりがわずかしかない応力のかかった小型の膜である。応力のかかった材料の独立領域および結合領域も含めた合計面積は、後述の張力デザイン規則に従って、前記膜が張力によって壊れにくくなるように十分に小さくなるようにデザインされる。前記支持体の開口部の許容可能な大きさは、後述の圧力デザイン規則を用いて計算された大きさを元にする。結合面、すなわち支持格子の材料は、前記の特徴的な亀裂スペースに影響を与え、したがって前記膜の許容可能な面積にも影響を与える。
【0019】
本願発明の膜は、熱サイクルの繰り返しにも耐えるようにデザインされてよい。これらの膜は、たとえば微小電気機械システム(MEMS)を用いた固体電解質型燃料電池であってよい。
【0020】
ある局面では、本願発明は第1の開口部を決定する支持体、および第1の開口部をふさぐように配置された第1の引張応力がかかった薄膜を含む構造物であって、前記支持体の少なくとも第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった膜を含む、構造物を特徴とする。前記第1の引張応力がかかった薄膜には、前記第1の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さな特徴的な亀裂スペースを有する膜材料が含まれる。
【0021】
1つ以上の後述の特徴が含まれてよい。前記支持体は前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物は前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の引張応力がかかった薄膜であって、少なくとも前記支持体の第2の部分に接触する前記2の応力がかかった薄膜も含む。前記第2の引張応力がかかった薄膜には前記膜材料が含まれ、および前記の特徴的な亀裂スペースは前記第1の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さい。前記第1と第2の開口部の間の距離は、各開口部の最小の大きさよりも小さくてよい。
【0022】
前記膜はアレイ状に配置されていてよく、前記アレイには複数の応力がかかった薄膜および開口部が含まれてよい。前記開口部の形状は六角形、正方形、三角形または円形であってよい。前記支持体の断面部分は、第1の棚と伸長部を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第1の部分に接触してよい。前記支持体の断面部は、前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第2の棚の部分に接触してよい。前記の特徴的な亀裂スペースは、1mm未満であってよい。前記の応力がかかった薄膜は、たとえば固体電解質型燃料電池などの電気化学的システム、または膜を用いた水素分離システムに配置されてよい。
【0023】
前記の応力がかかった薄膜には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化物、および/またはそれらの組み合わせなどの材料が含まれてよい。前記酸化物は、たとえばアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物であってよい。
【0024】
別の局面では、本願発明は最小限の大きさを有する第1の開口部を決定する支持体、および前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧力と応力がかかった薄膜を含む構造物であって、前記1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった薄膜を含む構造物を特徴とする。前記の第1の圧縮応力がかかった薄膜には膜材料が含まれており、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、前記の第1の開口部の最小面積の1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも大きく、ゆがみの臨界縦横比は前記の第1の開口部の最小面積の10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。
【0025】
後述の特徴の1つ以上が含まれてよい。前記支持体は、前記の第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、第2の圧縮応力がかかった薄膜は前記第2の開口部をふさぐように配置されてよく、前記第2の応力がかかった膜は少なくとも前記支持体の第2の部分に接触していてよい。前記第2の圧縮応力がかかった薄膜には前記膜材料が含まれていてよく、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、前記応力がかかった薄膜の厚さに対する前記の第2の開口部の最小面積の半分との比よりも大きくてよく、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、ゆがみに関する臨界縦横比は前記の応力がかかった薄膜の厚さに対する前記の第2の開口部の最小面積の10倍との比よりも小さくてよい。
【0026】
前記第1および第2の開口部の間の距離は、各開口部の最小の大きさよりも小さくてよい。
【0027】
前記膜はアレイ状に配置されてよく、前記アレイには複数の第1の応力がかかった薄膜および開口部が含まれてよく、前記アレイのゆがみに関する臨界縦横比は、前記アレイの最小の大きさとアレイの有効厚さとの比よりも小さい。前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は40:1未満であってよい。前記開口部の形状は、たとえば六角形、正方形、三角形または円形であってよい。前記支持体の断面部分は第1の棚および伸長部を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第1の棚の一部分に接触してよい。前記支持体の断面部分は前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第2の棚の一部分と接触してよい。
【0028】
前記の特徴的な亀裂スペースは1mm未満であってよい。前記の応力がかかった薄膜はたとえば固体電解質型燃料電池などの電気化学システムまたは膜を用いた水素分離システムに配置されてよい。
【0029】
前記の応力がかかった薄膜には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化物、および/またはそれらの組み合わせなどの材料が含まれてよい。前記酸化物は、たとえばアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物であってよい。
【0030】
別の局面では、本願発明は、第1の開口部を決定する支持体、および前記第1の開口部をふさぐように配置された膜材料を含む第1の応力がかかった薄膜が含まれる構造物であって、前記1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった薄膜を含む構造物を特徴とする。第1の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜には引張応力がかかっており、前記膜材料は前記第1の力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂スペースを有する。第2の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜には圧縮応力がかかっており、ゆがみに関する臨界縦横比は前記第1の開口部の最小の大きさの10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。
【0031】
別の局面では、本願発明は上述の構造物を形成する方法であって、開口部を決定する支持体を形成するステップと、前記開口部をふさぐ応力がかかった薄膜を形成するステップを含む、方法を特徴とする。
【0032】
後述の特徴の1つ以上が含まれてよい。基板が提供されてよく、前記支持体を形成するステップには基板の少なくとも一領域に前記支持体を形成するステップが含まれ、前記の応力がかかった薄膜は前記支持体と前記基板の両方に接触している。前記基板の少なくとも一部分は取り除かれてよい。さらなる材料が応力がかかった薄膜上に配置されてもよい。
【0033】
前記支持体を形成するステップには前記基板上に犠牲層を形成するステップと、前記基板と前記犠牲層で空間を決定するステップと、少なくとも部分的に支持体材料で前記空間を充填するステップと、前記犠牲層の少なくとも一部分を取り除いて前記支持体材料の表面の少なくとも一部分を露出させるステップが含まれてよい。
【0034】
本願発明の前記およびその他の特徴および利点、および前記発明自体は、以下の説明および図面からより完全に理解されるであろう。
【0035】
発明の詳細な説明
応力がかかった薄膜構造物は、以下の工程フローにしたがって形成することができる。図1では、基板10には、両面研磨シリコンなどの半導体材料が含まれてよく、たとえば約100mmの直径(表示せず)、および例えば約50乃至500μmの厚さを有してよい。犠牲層20は、基板10上に形成させる。前記犠牲層には二酸化ケイ素(SiO2)などの誘電物質が含まれてよい。ある実施態様では、前記犠牲層20は、たとえば水蒸気酸化などによって、基板10の表面12および裏面14の両面に成長させてよい。水蒸気酸化は、たとえばTystar社(カリフォルニア州トランス)から入手可能な加熱炉などの中で、1050℃の水蒸気環境で行うことができる。前記犠牲層20は、あとで形成する圧力がかかった薄膜190(たとえば図8参照)の厚さに少なくとも等しい高さを有するリブ120(たとえば図8参照)を形成するのに十分な厚さt1を有してよい。前記犠牲層の厚さt1は、たとえば約2μmであってよい。
【0036】
図2A乃至2Dでは、格子パターン30は、たとえば光リソグラフィおよびエッチングなどによって、犠牲層20および基質10に決定される。フォトレジスト層40を犠牲層20上にスピン、露出させ、現像する。前記フォトレジスト層は、さらなる加工に十分耐えられる厚さt2であって、たとえばt2は約2μmであってよい。最初、フォトレジスト層40にパターン形成されることによって決定されていた前記格子パターン30には、たとえば約1.5μmなどの幅w1を有する開口部45が含まれてよい。前記開口部45の前記幅w1は、後に定義する支持格子構造物90(たとえば図11Aを参照)が膜190(たとえば図11Aを参照)の有用領域を劇的に減少させることなく十分な硬さを提供するように選択される。
【0037】
前記格子パターン30は、格子マスクを用いることによって、フォトレジスト層40をパターン形成するように決定される。前記格子マスク46には複数のセル48を決定するマスク格子パターン47が含まれる。前記マスク格子パターンはたとえば約750μmなどの長さl0、および例えば約750μmなどの高さh0を有してよい。各セルは、後述のデザイン規則に従って、幾何学的な形状、つまり六角形であって、各辺がたとえば10乃至40μmであって平行な辺同士の間の距離がd0である六角形であってよい。複数のセルが、前記マスク格子パターンによって決定されたハチの巣パターンを形成してよい。前記格子マスクは、たとえば約10mmなどの高さh1および長さl1を有する立方体を決定してよい。
【0038】
図3でも、前記フォトレジスト層40を決定してから、前記フォトレジスト層40の開口部45によって露光された前記犠牲層20の部分50を、たとえばドライエッチングなどによって取り除く。ドライエッチングは、例えばAMT 8100システム(カリフォルニア州サンタクララ、アプライド・マテリアルズ社製)などのエッチングシステムの反応性イオンエッチング(RIE)などによって、たとえば酸化物エッチングn法などの、前記犠牲層の組成物に適切なエッチング法で行ってよい。このエッチングは、たとえば約1.5μmなど、w1にほぼ等しい幅w2を有する犠牲層20の複数の開口部60を決定する、異方性エッチングであってよい。
【0039】
図4では、犠牲層20のエッチング後、等方性エッチングを行い、基板10まで伸展して複数の凹部70を形成する。前記基板がSiで形成されている実施態様では、この等方性エッチングは六フッ化硫黄(SF6)エッチングであってよく、たとえばマルチプレックスシステム(サーフェイス・テクノロジー・システムズ社製、英国ウェールズ)によって約60乃至300秒行ってよい。このエッチングステップは基板の凹部70を決定し、前記凹部はたとえば約3乃至4μmなどの深さd1および約8μmの幅w3を有する。深さd1および幅w3は、後に凹部70(図11A参照)の一部に形成される支持格子90が、後に形成される応力がかかった薄膜190の有用領域を過剰に減少させることなく、前記膜190を十分に支持するように選択される。
【0040】
図5では、基板10に等方的にエッチングし、続いて非等方的なエッチングで凹部70の複数の伸長部80を決定する。伸長部80は前記基板に決定される溝であってよい。前記伸長部は、たとえばマルチプレックス・システムなどのシステムでの非等方的なエッチングによって形成されてもよい。基板10がケイ素を含有するある実施態様では、適切なエッチングはSF6およびオクタフルオロシクロブタン(C4F8)化学を用いた方法であってよい。ケイ素に非等方的にエッチングする方法は、たとえば米国特許第5,501893号に説明されている。伸展部80はそれぞれ、たとえば約30乃至40μmなどの深さd2であってよい。伸展部80の深さd2は、後述の圧力と応力を同時にかけた薄膜用のデザイン規則を用いて、後に伸展部80に沈着させる材料(後述)が、後に形成する応力がかかった薄膜への十分な支持を提供するが、前記膜への気流が阻害されない程度に十分浅くなるように選択する。引張応力がかかった薄膜のある実施例では、前記伸展部は必要ない場合もある。これらのエッチングステップの後、フォトレジスト層40を剥がす。それから、前記基板10をたとえばRCAクリーンで洗浄してから、800℃で1時間の酸化ステップを施して、残留するポリマーを除去する。最初にフォトレジスト層40で決定されていた前記格子パターン30は、今度は開口部60、凹部70、および伸展部80で決定される。
【0041】
図6では、支持格子90は、たとえば、犠牲層20上のケイ素を多く含有する窒化ケイ素、またはTiO2などの誘電体であってよく、開口部60、凹部70、および伸長部80を含む格子パターン30になってよい、支持材料100の沈着によって、決定される。支持材料100は、たとえば低圧CVD(LPCVD)またはプラズマ増強CVD(PECVD)などの化学蒸着(CVD)などによって沈着してよい。前記支持材料100は、たとえば300MPa未満などの低応力下であってよく、厚さt3はたとえば約2μmであってよい。前記支持材料100の圧力のかかった応力は、後述の圧力デザインルールにしたがって、ゆがみが生じない程度に十分低くなければならない。前記張力のかかった応力は、前記支持材料100の張力によって制限される。前記支持格子90は、たとえば燃料電池の実施態様などの最終構造において、電気的なショートを防止するために誘電材料で形成されてよい。
【0042】
図6および7では、支持材料100の表面部分105は、AMT8100システムの窒化物エッチングなどの、ドライエッチングなどによって除去する。除去終了点は目視の検出が用いられてよく、約5%のオーバーエッチングが終了点である。
【0043】
図7および8では、支持材料100の表面部分105の除去によって、犠牲層20の部分110を露出する。前記犠牲層はたとえばウエットエッチングなどによって、選択的に取り除いてよい。たとえば、前記犠牲層が酸化物を含むある実施態様では、フッ酸、フッ化アンモニア、および水を含む緩衝酸化物エッチング(BOE)などの酸化物エッチングによって取り除いてよい。前記犠牲層の除去の後に、SC-1(NH4OH:H2O)洗浄ステップ、またはRCAクリーンの後に800℃で1時間湿式酸化させるステップなどの洗浄ステップを施してよい。前記犠牲層20の除去によって、支持格子90が部分的に露出される。この露出された部分には、犠牲層20の開口部60に支持材料100を沈着させることによって形成されたリブ120が含まれる。前記リブ120は一般に、たとえば複数の六角形など、マスク47によって最初に決定されていたものと同一のパターンを決定する。前記リブは、たとえば約2μmなどの犠牲層の最初の厚さt2とほぼ等しい高さh2を有する。支持格子90の露出された部分が棚125を形成する。
【0044】
図9では、応力がかかった薄膜層130は、前記リブ120、基板10の前面12の露出部分および特に支持物質100が充填されている凹部70上の支持格子90上に形成する。前記の応力がかかった薄膜層は、電子ビーム蒸発などによって沈着されてもよい。前記の応力がかかった薄膜層には、たとえばYSZなどの電解物質として機能する膜材料が含まれてよく、ニッケル/イットリウム安定化ジルコニア複合物などの電極として働く膜物質が含まれてもよい。YSZは固体電解質型燃料電池の中で電極として使用するのに特に好適な物質である。それは酸素のさまざまな分圧の酸素イオンを選択的に透過する物質だからである。まとめると、応力がかかった薄膜層を形成するための膜材料として使用してよい材料には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、およびアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物などの酸化物などが含まれる。前記の応力がかかった薄膜層130は約2μmなどの厚さt4であってよい。
【0045】
応力がかかった薄膜層130を前記リブ120に沈着させると、前記リブ120に隣接した応力がかかった薄膜層130に意図的に形成した断絶135が形成されることがある。この意図的な断絶は、前記リブ上の応力がかかった薄膜層のステップ範囲によって決定されてよい。より具体的には、応力がかかった薄膜層130による非等角コーティングによって断絶が形成される。意図的な断絶は、応力がかかった薄膜層の応力を緩和して、意図的ではない亀裂の形成を防止する一助となる。
【0046】
図10Aおよび10Bでは、リリースフォトレジストパターン140を基板10の裏面14上に決定する。リリースマスク150で決定されたとおり、前記リリースフォトレジストパターン140には、たとえば長さl2および高さh2がそれぞれ約10mmの立方体160を含んでよい。前記立方体の中心部分は、長さl3がたとえば約12mmなどの辺を有する正方形165を決定してよい。マスク150を用いることで、フォトレジストパターン140が支持格子90の反対側に正方形の開口部170を決定するように基板の裏面14上にフォトレジストをパターン形成する。
【0047】
リリースフォトレジストパターンの決定後、支持材料100および犠牲層20の露光部分を取り除く。100、20の両層とも、AMT8100システム(アプライドマテリアルズ社製)のドライエッチングなどによって取り除いてよい。
【0048】
図11Aおよび11Bでは、前記基板10の露光部分をたとえばウェットエッチングなどによって取り除く。前記基質にケイ素が含まれる実施態様では、好適なウェットエッチングは水酸化カリウム(KOH)エッチングであってよい。この組成物は、選択的に特定の平面に沿ったケイ素をエッチングし、フレーム200を底面が正方形で頂上部分が平坦なピラミッド型が得られる。つまり、このエッチングによってつくられた開口部201は、基板10の裏面14の底部分202の方が広く、前記支持格子90に隣接する頂上部分204の方が狭くなる。たとえば、リリースマスク150で決定された前記開口部170の辺が、たとえばそれぞれ約12mmなどの長さl3を有する場合、前記支持格子90に隣接する開口部は、たとえば約500μmなどの長さl4を有するだろう。フレーム200は、たとえばケイ素など、基板10と同一の材料でできており、例えば約500μmなどの厚さt0を有するフレーム壁205が含まれる。
【0049】
図11A乃至11Fでは、上述の加工ステップの結果得られたものは、複数の開口部180を決定する支持格子90を有する、複合的な応力がかかった薄膜構造175である。各開口部180は、六角形、正方形、三角形または円形であってよい。第1および第2の隣接する開口部180aおよび180bの間の距離d20は、各開口部の最小の大きさd30よりも小さくてよい。
【0050】
応力がかかった薄膜層130は、前記開口部180をふさぐように配置された、たとえば電極層などの、複数の応力がかかった薄膜190を決定する。複数の応力がかかった薄膜190には、少なくとも、第1の開口部180aをふさぐために配置された第1の引張応力がかかった薄膜190a、および第2の開口部180bをふさぐために配置された第2の引張応力がかかった薄膜190bが含まれてよい。代替的には、複数の応力がかかった薄膜190には、少なくとも、第1の開口部180aをふさぐために配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜190a、および第2の開口部180bをふさぐために配置された第2の圧縮応力がかかった薄膜190bが含まれてよい。前記の応力がかかった薄膜(タイルともよぶ)はそれぞれ、少なくとも前記支持格子90の一部分に接している。前記第1の張力または圧縮応力がかかった薄膜は、少なくとも前記支持体の第1の部分195aに接していてよく、前記第2の張力または圧縮応力がかかった薄膜は、少なくとも前記支持体の第2の部分195bに接していてよい。前記応力がかかった薄膜が接している前記支持格子90の前記部分は、少なくとも棚125の一部分であってよい。
【0051】
前記の臨界亀裂スペースおよびゆがみの臨界縦横比は、亀裂またはゆがみによる不具合の確率が、亀裂またはゆがみが生じない確率とだいたい等しくなるような幾何学的数値である。多くの実用的な用途において、不具合が生じない確率が非常に高いことが好ましい。これらの場合、前記幾何学に安全因子を加えることが有益であるかもしれない。たとえば、前記臨界亀裂スペースは、前記の応力がかかった薄膜の最小の大きさの2倍までであってよい。代替的には、前記臨界亀裂スペースは、前記の応力がかかった薄膜の最小の大きさの10倍までであってよい。圧力がかかった薄膜の場合、ゆがみの臨界縦横比は、開口部の最小の大きさと前記応力がかかった薄膜の厚さとの比の2倍までであってよい。代替的には、ゆがみの臨界縦横比は、開口部の最小の大きさと前記応力がかかった薄膜の厚さとの比の10倍までであってよい。
【0052】
これらの事項を膜材料および幾何学を決定する際に考慮に入れてもよい。ある実施態様では、引張応力がかかった各薄膜には、前記膜の最小の大きさの半分よりも大きく、前記最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂スペースを有する膜材料が含まれる。この関係性は、以下のようにも表すことができる。前記膜の最小の大きさは前記の特徴的な亀裂スペースの2倍乃至1/10である。前記膜の最小の大きさは、前記膜で決定された形の2辺の間の最小距離によって決定される。たとえば、応力がかかった各薄膜は、格子マスク46のセル48によって決定されるとおり(図2Bおよび2C)、たとえば約20μmなどの平行な辺の間の距離d0と等しい、最小の大きさを有する六角形であってよい。特徴的な亀裂スペースのさらなる考察は、後述の前記デザイン規則の考察で提供する。
【0053】
前記膜の最大の大きさも、臨界ゆがみ長よりも小さくてよい。圧縮応力がかかった薄膜には、前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも大きいゆがみの臨界縦横比を有する膜材料が含まれてよく、前記のゆがみの臨界縦横比は、前記第1の開口部の最小の大きさの10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。この関係性は以下のようにも表すことができる。前記開口部の最小の大きさと応力がかかった薄膜の厚さとの比は、前記のゆがみの臨界縦横比の2倍乃至1/10であってよい。
【0054】
ゆがみを防止するためのデザイン規則についてのさらなる考察は、後述の「圧縮応力のデザイン規則の概要」というタイトルの節に提供する。
【0055】
ある実施態様では、前記の応力がかかった薄膜は第1の作動条件において引張応力がかかっていてよく、前記膜材料は前記第1の応力がかかった膜の最小の大きさの半分よりも大きい特徴的な亀裂スペースを有してよい。第2の作動条件下において、前記第1の応力がかかった薄膜は圧縮応力がかかっていてよく、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比は前記第1の開口部の最小の大きさの1/2よりも大きくてよい。
【0056】
図11Bおよび11Gでは、圧縮応力がかかった薄膜構造175は基板10全体に繰り返し形成されてよく、その結果、2つの入れ子状で繰り返しの格子構造、つまり、支持格子90上に配置された前記応力がかかった薄膜190を含む小さめの格子状の複合の応力がかかった薄膜構造175、およびフレーム200上の複合の応力がかかった薄膜175を含む大きめの格子構造220からなる応力がかかった薄膜アレイが作られる。
【0057】
上述の支持格子は「†」形を有する支持体をつくる。代替的な実施態様では、リブは、前記リブが除去されるように支持材料100の頂上部分105の除去を拡大することによって、前記の複合的な応力のかかった薄膜構造から取り除いてよい。したがって、この実施態様では、前記支持格子は「T」形であってよい。
【0058】
当業者には、前記支持格子はさまざまな十字形であってよいということが明らかであろう。前記格子は、好ましくは前記応力がかかった薄膜を取り付けるための表面を提供する。図12では、前記支持格子90の断面部分は第1の棚300および伸長部310を決定してよく、引張または圧縮応力がかかった薄膜190は前記第1の棚の一部分300aに接触してよい。前記支持体の前記断面部分はまた、前記第1の棚に平行に配置された第2の棚320を決定し、前記応力がかかった薄膜は前記第2の棚の一部分320aに接触してよい。たとえば圧縮薄膜を有するような実施態様では、前記格子は好ましくは、以下に提供される圧縮デザイン規則にしたがった前記膜に硬さを提供するのに十分な大きさを有する。より深い格子ほど幅の広い格子よりも大きな硬さを提供することがわかっている。圧縮応力がかかった薄膜の好ましい実施例では、前記格子の深さと幅の広さの比は10よりも大きい。たとえば引張応力がかかった薄膜を有するものなどの実施態様では、前記格子は有意な硬さを提供しないかもしれない。たとえば、前記格子は、ある応力がかかった薄膜から隣接する応力がかかった薄膜まで広がる平坦な薄膜であってよい。特に圧縮応力がかかった膜のその他の実施態様では、前記膜の断絶は必要ない場合もあり、たとえば2つ以上の開口部が1つの膜でふさがれるなど、1つの膜が1つ以上の開口部をふさいでよい。
【0059】
本願発明のある実施態様では、前記格子は誘電体を含む。たとえば、燃料電池の実施態様では、前記格子は、陽極と陰極がショートすることを防ぐために非導電性になるように選択されてよい。本願発明のある実施例では、前記格子は拡散障壁を含む。たとえば、水素精製の実施態様では、前記格子は気体の拡散係数が低い材料から選択してよい。
【0060】
図13aおよび13bでは、使用時に、前記応力がかかった薄膜190は電気化学システム400に配置されてよい。電気化学システムには、少なくとも第1の電極410、第2の電極420、および電解質430が含まれ、電極間を電流が流れると化学反応が起きるように配置される。前記電解質は、前記応力がかかった薄膜190によって決定されてよい。前記化学種と前記電極の相互作用によって、前記電極間に電圧も発生する。たとえば、電気化学システムは、燃料電池などに電力を発生させるために用いることができる。その他の用途では、電気化学システムは様々な化学種の存在または濃度を感知するために用いることができる。本願発明は特に、前記第1および第2の電極410、420を電解質430ならびにそれぞれ第1の流体440および第2の流体450と連通させるような電気化学システムに有用である。
【0061】
前記応力がかかった薄膜は、固体電解質型燃料電池に配置してよい。図13bでは、前記第1の流体440は燃料であって、前記2の流体450は酸化剤であってよい。前記1の電極410は陰極であってよく、前記2の電極は陽極であってよく、前記電解質430は応力がかかった薄膜190によって決定された固体電解質型燃料電池の電解質であってよい。
【0062】
図14では、代替的に、前記応力がかかった薄膜190は膜を用いた水素分離システム500に配置してよい。膜を用いた水素分離システムには、少なくとも第1の流体510、前記膜190、および第2の流体520が含まれてよく、前記膜が前記第1および第2の流体を分離していてよい。前記第1の流体510には、水素濃度と第1の希釈剤の濃度が第1の比である、水素および少なくとも前記第1の希釈剤が含まれてよい。前記膜190には、前記第1の希釈剤よりも水素透過性が高くなるように選択された材料が含まれてよい。この選択的透過性によって、前記第2の流体520が、前記第1の比よりも高い水素と前記第1の希釈剤の第2の比を有するようになる。非常に高い選択性を有する膜の場合、前記水素を前記膜から運び去るために、第2の希釈剤を前記第2の流体に加える。
【0063】
デザイン規則
多くの実施態様では、複合的な応力のかかった薄膜構造は、作動中、ある範囲の応力がかかってよい。たとえば、前記応力が、応力がかかった薄膜と支持格子の間、または複合的な応力がかかった薄膜アレイとフレームの間の熱膨張ミスマッチによって部分的に生じた場合、前記応力は温度によって変化するだろう。別の実施態様では、前記応力は経時的に変化するだろう。
【0064】
複合的な応力がかかった薄膜構造のデザインは、前記構造が前記の潜在的な応力範囲全体にわたって安定になるように提供される。一般的に、前記構造が前記応力の範囲の両端において頑強になるようにデザインするのに十分である。熱膨張ミスマッチによる応力の実施態様では、前記の両端の状況は、一般に最高および最低な作動温度において生じる。本願発明のある目的は、圧縮力および引張力の両方において頑強である膜を作製することである。
【0065】
過剰な応力下における複合的な応力がかかった薄膜構造は、たとえば曲がる(つまり、ゆがむ)または亀裂するなど故障を来すことがある。故障は、高温におけるたとえばシリコン上のYSZ膜の場合などにおける膜のゆがみの結果として形成される亀裂によって生じる場合がある。また、機能不全は引張力による亀裂の形成によって生じることもある。応力がかかったYSZ薄膜とシリコンフレームの実施態様では、一般に最初は、高温下の圧縮における湾曲による故障ほうが、引張における亀裂による故障よりも生じやすいことがある。しかし、この実施態様では、低温における引張力の亀裂は、高温における応力緩和のために、装置の操作から長時間経過後に生じやすい場合もある。
【0066】
前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、YSZ膜など応力がかかった薄膜の引張および圧縮応力に対する頑強さを増すことができる2つの特徴を有する。少なくとも1つのリブ(代替的には「レール」または「隆線」とも呼ばれる)および薄膜の断絶を含む実施態様は、応力緩和ジョイントのように働くことによって、新たな亀裂が形成される可能性を低くし、同時に、ある応力がかかった薄膜から隣接する応力がかかった薄膜へと亀裂が跳ぶことを防ぐことができる。したがって、形成されたいずれの亀裂も個別の応力がかかった薄膜に隔離され、複合的な応力がかかった薄膜構造が故障することを防ぐ。前記支持格子は前記の複合的な応力がかかった薄膜構造に硬さを与える。ある実施態様では、このさらなる硬さによって、圧縮応力下における、応力がかかった薄膜および前記の複合的な応力がかかった薄膜構造がゆがむのを防ぐか、またはそのゆがみを減らすこともできる。
【0067】
特に圧縮応力がかかった薄膜のある実施態様では、亀裂のリスクを減らすための薄膜の断絶は必要ない場合がある。したがって、1枚の膜がたとえば1つ以上の開口部をふさいでもよく、たとえば1枚の膜で2つ以上の開口部をふさいでもよい。
【0068】
本当に頑強な複合的な応力がかかった薄膜構造は、ゆがみおよび亀裂の発生を防ぐことを目的とした幾何学的デザイン規則を適用することによって実現することができる。多くの幾何学に適用できるこれらのデザイン規則は、リブ、支持格子、および複数の応力がかかった薄膜を有する複合的な応力がかかった薄膜構造から実験的に得られた知見の統合に基づいて開発された。
【0069】
これらのデザイン規則は、たとえば、本願明細書に記載の関係性を考慮に入れずに作製された膜よりも、熱サイクルに耐えることができる膜などの、より頑強な膜を作製することに有用である。
【0070】
前記フレームとは異なる熱膨張率を有する膜の実施態様では、前記応力がかかった薄膜の熱サイクルは、前記膜の圧縮および引張の状態を変化させることがある。たとえば、基板がSiでつくられており前記応力がかかった薄膜がYSZでつくられている実施態様では、熱膨張計数(CTE)は顕著に異なる。YSZのCTEは約10μm/m/℃であるが、SiおよびSiリッチ窒化ケイ素のCTEは約4μm/m/℃である。YSZの熱膨張計数はSiおよびSiリッチ窒化ケイ素の熱膨張計数の約3倍なので、高温のYSZ膜は比較的固定された支持格子およびSiフレームの制約に対して膨張し、圧縮状態になる。反対に、作動温度において緩和した状態から冷却された膜は、前記支持格子およびSi支持フレームによって引き延ばされて引張状態になるだろう。
【0071】
室温(30℃)と作動温度800℃の間の応力差は、
応力= E(αX(T2-T1)
− αY(T2-T1) ) (0)
= E(αYSZ(800 -
30) − αSi(800 - 30) )
≒ 1200メガパスカル(MPa)
ここで E = 膜のヤング率
α = 熱膨張計数
T = 温度
【0072】
ある実施態様では、前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、前記応力がかかった薄膜の応力状態の2000MPaの変化に、機能不全にならずに耐えることができる。ある実施態様では、前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、最高800MPaまでの引張応力に耐えることができる。さらに他の実施態様では、前記の複合的な膜構造は、最高1200MPaまでの圧縮状態にある場合にも湾曲しない状態が維持される。
【0073】
上述のとおり、前記の応力がかかった薄膜構造には、前記応力のかかった薄膜に十分な剛性または強度を提供するために、少なくとも2つの入れ子状の繰り返し格子複合構造が含まれてよい。前記の2つの入れ子状構造は、連続する作製ステップによって決定された、異なる長さ、異なる材料および材料厚さにつくられてよい。
【0074】
繰り返し距離または前記の2つの格子の小さい方の直径は、10乃至40μmであってよく、最小の繰り返し単位は「セル」である。前記セルは、六角形であってよく、独立したYSZ薄膜板または「タイル」(「応力のかかった薄膜」ともよぶ)および機械的フレームまたは支持格子が含まれる。YSZ薄膜は典型的には厚さ0.25乃至2μmである。前記支持格子はYSZタイルを支える機械的な支持構造物である。前記セルの壁、つまり前記支持格子の一部分はケイ素リッチな窒化ケイ素などの誘電体でできていてよく、幅1乃至3μmおよび深さ30乃至150μmであってよい。また前記支持格子には、幅1乃至5μmであってよい棚が含まれる。前記のケイ素リッチな窒化ケイ素格子は、平滑で開放されたハチの巣構造であって、前記薄膜YSZで密封された各セルの側面、すなわち表面を有する構造を形成してよい。
【0075】
前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、前記応力がかかった薄膜の細密2次元セルアレイであってよい。それは、より大きな構造、つまり複合的な応力がかかった薄膜アレイの最小の繰り返し単位である。前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイは直径がたとえば5乃至100mmであって、複合的な応力がかかった各薄膜は直径が200μm乃至2mmであってよい。前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイには、それ自体の複合的な応力がかかった薄膜と、間に介入するさらなる機械的構造、「膜壁」フレームが含まれる。ある実施態様では、前記フレームは厚さ50乃至500μmのケイ素からできていてもよい。前記のより厚いフレーム壁は、前記セルおよびセル壁、つまり前記膜および支持格子の形成とは別の、たとえばエッチングステップなどの加工ステップによって決定される。
【0076】
たとえばYSZなどの応力がかかった薄膜タイル材料の厚さ、たとえばケイ素リッチな窒化シリコンなどのセル壁の厚さと深さ、セルの直径、前記膜壁の厚さと深さ、ならびに前記複合膜の直径の間の有利な大きさの関係性を決定するために、2つの方法論がある。第1の関係性は、著しい引張応力をかける実施態様に用いられる。第2の関係性は著しい圧縮応力をかける実施態様に用いられる。著しい圧縮応力、引張応力、または圧縮および引張応力の両方の場合に適用できる関係性を用いることによって、ゆがみや亀裂が実質的に無い応力がかかった薄膜および複合的な応力がかかった薄膜アレイを形成することができる。
【0077】
引張応力のデザイン規則の概要
引張応力がかかった薄膜が亀裂を有しない最大の大きさは、前記薄膜の特徴的な亀裂スペースによって決まる。本願明細書では、引張応力がかかった薄膜は、前記薄膜の側面の大きさが十分に大きい場合に自然に亀裂が生じるであろう薄膜として定義する。亀裂の発生は、たとえば前記薄膜の内部応力状態、前記薄膜の厚さ、前記薄膜の各表面の粗さ、前記薄膜の前記基板への接着、組成、薄膜欠損の頻度および特徴による。
【0078】
引張応力がかかった薄膜に亀裂ができると、前記薄膜の局所的な応力が部分的に緩和され、前記の第1の亀裂の近くにさらなる亀裂ができる確率が低くなる。一般に、全体が亀裂を生じやすくなる傾向と、亀裂によって得られる局所応力の緩和の作用が合わさって、実質的に平行な亀裂同士のすき間が特徴的な亀裂スペースのまわりに集まり、一部はランダムプロセスによってその特徴的な亀裂スペースのまわりに散らばる。この亀裂の形成は、乾燥して亀裂が入っているが比較的均一な大きさの無亀裂の領域もある湖底のような外観をしている。
【0079】
ある実施態様では、前記の特徴的な亀裂スペースは非等方的であってよく、ある方向には他の方向よりも高頻度で亀裂が生じている。方向性のある特徴的な亀裂スペースを定量化するある技術は、
(A) たとえば暗視野光学顕微鏡などによって前記薄膜の顕微鏡写真を得る。
(B) 前記薄膜の見本とするのに十分大きいサンプリング領域を選択する。その領域は、少なくとも各方向に亀裂スペースが少なくとも10個分、好ましくは少なくとも100個分広がっていてよい。
(C) 前記サンプリング領域に別の亀裂で終了しない亀裂、つまり自由端を有する亀裂がある場合には、ペンでその亀裂が別の亀裂と交差するまで延長する。
(D) 薄膜の各島の重心を見つける。島は、亀裂(およびCの亀裂の延長)で囲まれていて、亀裂を含まない薄膜の領域として決定される。重心を見つけるために、ある技術では、各島を直線でその線の両側の面積が等しくなるように二等分する。もう一度、垂直な線で二等分する。2本の二等分線が交わったところが、その島の重心である。
(E) 各島の絶対配置が維持されるように、各島に均一な座標のラベルを付ける。前記島を独立に動かせるように、前記の顕微鏡写真をすべての前記亀裂に沿って区切る。各島の絶対配置を維持しながら、各薄膜の重心を並べて薄膜のすべての島を重ね合わせる。
(F) 各方向において、前記の特徴的な亀裂スペースは、特定の軸に沿って島の直径を平均することによって得ることもできる。標準偏差も前記軸に沿って得ることができる。
【0080】
好ましくは、例えば応力がかかった薄膜など、前記島の直径はすべての方向において前記亀裂スペースの2倍よりも小さい。より好ましくは、前記セルの直径はすべての方向において前記亀裂スペースの半分よりも小さい。
【0081】
引張応力がかかった薄膜の大きさは、前記膜の縁部によって決定される。前記縁部は不均一な領域全体の応力の移動を防ぐかまたは実質的に低減する、前記膜の意図的な不均一性によって決定される。最も好ましくは、前記縁部は前記応力がかかった薄膜材料の断絶によって決定される。代替的には、前記縁部は応力緩和ジョイント、または亀裂に誘導された形であってよい。
【0082】
本願発明は好ましくは、各島の亀裂形成の頻度を減らし、隣接する島の間に亀裂が広がる頻度をへらすように、各島を分離している。
【0083】
本願発明にしたがったある構造には、不連続な、応力がかかった薄膜の島が含まれる。隣接する島の間の距離は、作動中に少なくとも一定の時間中に前記島が接触しないように選択される。隣接する島の間の空間は、ある実施態様では光パターン形成またはエッチングによって形成してよい。別の実施態様では、前記空間はたとえば低応力の窒化ケイ素など、別の材料を充填してもよい。別の実施態様では、前記空間は、前記支持格子上にレールを含むステップと、前記応力がかかった薄膜の沈着中にステップカバレージ(段差被覆)を除去し、前記レール上に不連続な薄膜を得るステップによって、形成してよい。
【0084】
本願発明による別の構造には、隣接する島同士の間の応力緩和ジョイントが含まれる。ある実施態様では、ジョイントはU字形であってよく、そのUの腕部分を一緒に動かすか、または話すことによって応力を緩和することができる。別の実施態様では、前記ジョイントは応力がかかった薄膜以外の材料からできていてもよい。
【0085】
本願発明による第3の構造には、前記応力がかかった薄膜の管理された位置に分岐を生じるようにデザインされた特徴が含まれる。ある実施態様では、前記薄膜は段差(ステップ)の特徴上に連続的に沈着してもよい。亀裂は、好ましくは前記段差に平行に、前記薄膜の厚さとほぼ等しい段差からの距離の範囲内に形成されるだろう。
【0086】
好ましくは、前記複合的な応力がかかった薄膜には、各島における亀裂の形成の頻度を減らし、隣接する島の間に亀裂が広がる頻度を減らすための、各島を分離する構造物が含まれる。
【0087】
圧縮応力のためのデザイン規則の概要
応力がかかった薄膜材料がゆがまない最大の大きさは、薄板のゆがみに関するオイラーの公式(後述の式1参照)を用いて決定してよい。この式から、応力がかかった薄膜の厚さ(t)、応力がかかった薄膜の長さ(正方形のセルの場合はL)、および最大耐容圧縮応力(σ)の関係性が得られる。この規則は、確実に応力がかかった薄膜にゆがみのない状態を維持する、つまりゆがまないようにすることを目的とする。
【0088】
ある実施態様では、応力がかかった薄膜は正方形で、その縁部だけで支えられている。本願明細書では、ゆがみの臨界縦横比、つまりゆがみが起きる前に耐えることができる長さ対厚さの最小の比は、たとえば式1などのオイラーの公式を用いて計算してよい。
【0089】
【数1】
であって、当該式において
L = 正方形の長さ
t = 薄膜の厚さ
ν = 薄膜のポアソン比
σ = 薄膜の圧縮応力
E = 薄膜のヤング率
【0090】
この公式は、タイルおよび膜が頻回に少なくとも部分的にその縁部を固定される場合にも、比較的保存される。固定された縁部の臨界縦横比は大きくなり、したがってこのL/t比は下限値であるとみなされてよい。
【0091】
このオイラーの公式は正方形を前提としている。六角形などのその他の形の臨界縦横比はいくらか変化するが、この値の30%以内であると考えられる。
【0092】
ゆがみを避けるため、前記の規則を簡略化し、セルの直径と薄膜の厚さの比は一般に20を超えてはならないとしてよい。この値は、応力がかかった薄膜のほとんどの内部応力は1GPa未満であって、脆弱な薄膜のヤング率のほとんどは約150GPaであって、ほとんどのポアソン比は約0.25であるという仮定に基づく。ある場合では、前記比は40までであってよい。
【0093】
複合的な応力がかかった薄膜の場合、最大の大きさも複合薄板のゆがみに関するオイラーの公式によって決定することができる。以下の式1を、検討中の構造に関する効果的な変数を用いて使用することができる。前記式は、前記膜の曲げ剛性(前記セル材料、つまり前記壁およびタイルの硬さと有効な厚さ)、前記膜の直径、および最大耐容圧縮応力の関係性を提供する。この規則は、確実に前記の複合的な応力がかかった薄膜がゆがまないようにすることを目的とする。前記の膜の有効な厚さおよび係数は、主に、ケイ素リッチな窒化ケイ素セル壁の大きさによって決定される。前記の成分材料のパラメータと膜の有効な厚さおよび係数の比を決定する3つの因子は、支持格子の幅、支持格子の深さ、およびセルの直径である。
【0094】
前記のセルの支持格子は、前記応力がかかった薄膜の平面連続性を破るために、特定の高さまたはトポグラフィ(たとえばリブなど)でデザインされてよい。前記リブの目的は、前記応力がかかった薄膜の応力をいくらか緩和させ、前記応力がかかった薄膜材料に偶然生じた亀裂の終了点として働く、前記応力がかかった薄膜層の断絶を生じさせることである。この高さは、たとえば2μmなど、薄膜の厚さに類似するように選択される。
【0095】
圧縮応力がかかった薄膜アレイの場合、たとえばケイ素壁などのフレームの大きさは、オイラーの公式の別の用法によって決定することができる。再度、各複合膜の形を許容して、式1を用いる。この式は、前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイの曲げ剛性(すべての膜、格子、およびフレーム材料の有効な厚さ)、前記の複合的な応力がかかった薄膜の完全なアレイの直径、および最大耐容圧縮応力の関係性を提供する。この規則は、確実に、前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイが曲がらない、つまりゆがまないことを目的とする。比較的高い収率を確実に得るために、この縦横比は、前記第1の開口部の最小の大きさの2倍対前記膜厚さより小さくてよい。前記のアレイの有効な厚さおよび係数は、主に、前記膜壁の大きさによって決定される。前記成分材料のパラメータと前記の有効なアレイの厚さおよび係数との比を決定する3つの因子は、膜壁の幅、膜壁の厚さ、および膜の直径である。
【0096】
式1を応力がかかったYSZ薄膜に適用するために、以下の概数を用いてよい:
E = 160 GPa
ν = 0.23
σ = 1 GPa
【0097】
上述の式1を用いて、ゆがみが生じる前に用いてよい前記の臨界縦横比、つまり最大長さと最大厚さの比は、
L/t = 23.6
したがって、応力がかかった薄膜の厚さが2μmである実施態様では、ゆがんでいない最大幅47μmのタイルを形成してよい。
【0098】
前記の複合的な応力がかかった薄膜(多数のタイル)の場合、不具合が生じる前の可能な限り最大の大きさの計算はより困難である。なぜなら、前記膜は材料の固体片ではないからである。式1の実際の材料パラメータは、前記複合的な応力がかかった薄膜の成分の幾何学、応力、および材料のパラメータを含む、有効なパラメータで置換されなければならない。たとえば、六角形ハチの巣構造の有効ヤング率は
【0099】
【数2】
であって、当該式において
w = 壁の幅
a = 各壁の長さ
である。
Cellular Solids by L.J. Gibson and M.F. Ashby (Second Edition, 1997)を参照。
【0100】
前記の有効な圧縮応力は、前記膜の厚さによっても減少するだろう。
【0101】
【数3】
であって当該式において
b = YSZの厚さ
t = ハチの巣構造の厚さ
である。
【0102】
この式は、YSZタイルまたは「棚」からの膜の強度への寄与が含まれない場合には比較的保存される。しかし、前記応力は主に前記膜の上部にかかってゆがみを促進しがちだということを考慮していない。
【0103】
特徴的な六角形の膜は、以下の特性を有する。
E = 160 GPa
ν = 0.25
σ = 1 GPa
t = 40 μm
w = 1.5 μm
b = 2 μm
a = 20 μm/sqrt(12) = 5.8μm (この因子によって、六角形の直径が辺の長さに転換される)
→ σ* = 50 MPa
→ E* = 6.45 GPa
【0104】
*印をつけた数値を式1に代入すると、
→ L/t = 21.3
→ L = 0.85 mm
【0105】
注:たとえば三角形のセルなどのその他のハチの巣配置は、非常に異なる有効ヤング率を有することがある。例として、三角形のセルの有効ヤング係数の式は、
【0106】
【数4】
【0107】
Cellular Solids参照。三角形セルの実施態様では、YSZ膜の場合、E* = 52 GPa、L/t = 68で最大の大きさL = 3.4
mmが得られる。
【0108】
ゆがみが生じる前の大きさが六角形よりも大きい三角形が提供する可能性にもかかわらず、六角形の応力がかかった薄膜の方が好ましいと考えられる。後者は、支持格子面積に対する有効面積の比が、三角形セルのハチの巣構造のものよりも高い。
【0109】
上述の方法に従った応力がかかった薄膜を作製したところ、最高800℃の熱サイクルにかけられた膜の場合、収率が約80%上昇したことを特記する。
【0110】
組成物が特定の要素を有する、含む、もしくは包含すると記載されているか、または過程が特定のステップを有する、含む、もしくは包含すると記載されている本願明細書全体において、本願発明の組成物も、基本的に列挙される成分からなるか、もしくは構成され、本願発明の過程も、基本的に列挙される成分からなるか、もしくは構成されることを意図する。
【0111】
本願発明が作動可能である限り、ステップの順番、または特定の行動を行うための順番は重要ではない。さらに、2つ以上のステップまたは行動を同時に行ってもよい。
【0112】
本願発明は、そのスプリットまたは本質的な特徴から離れなければその他の特定の形式で具体化されてもよい。したがって上述の実施態様は、あらゆる点で具体例であって、本願明細書に記載の発明を制限するものではない。
【0113】
本願明細書に開示される特許文書および科学出版物はそれぞれ、あらゆる目的のために本願明細書に引用を持って援用される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本願明細書は、その開示全体を本願明細書に引用することによって援用される2003年9月23日に提出された米国仮出願第60/595,547号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本願発明は、一般的には応力がかかった膜であって、具体的には応力がかかった薄膜であって前記膜の両面に流体の接触が必要となる薄膜に関連する。
【0003】
発明の背景
多くの商用アプリケーションでは、膜を用いて、例えば気体または液体など2種類の流体を分離する必要がある。その膜は、2種類の流体の接触を媒介するように選択される。たとえば、水素精製システムでは、その膜は水素を多く含む高圧ストリームと純水素の低圧ストリームの接触を媒介することができる。この例では、その膜は、水素を多く含むストリーム中の水素以外の成分よりも、水素を高速に拡散する材料からつくることができる。別の例では、燃料電池の膜は酸素含有流体と燃料含有流体の接触を媒介することができる。燃料電池の膜は、多層膜であって、1種類以上のイオンがその膜を通過して燃料を酸化し、その一方でその反応によって電気エネルギーを抽出することができるような多層膜を含んでいてよい。
【0004】
性能を向上させシステムの大きさを縮小するために、膜を含むシステムの小型化が望ましいことが多い。しかし、容易に小型化して製造できるような材料は、膜の機能性に最適な材料と適合性があるとは限らない。これら2種類のセットを合わせようとすると、膜に相当な応力がかかる結果になりかねない。応力は、たとえば膜と支持構造の熱膨張率の違いによって生じることがある。
【0005】
小型化に必要なものの具体的な例は、バッテリおよび燃料電池の分野にみつけることができる。携帯電話およびラップトップ型コンピュータなどの携帯用電子機器の普及によって、バッテリなどの電力貯蔵デバイスの需要が高まっている。燃料電池を使用すると、バッテリと比較して使用可能な貯蔵電力を増やすことができる。しかし、燃料電池システムは、既存のバッテリの小型フォームファクタ内におさまるように小型化しなければならない。燃料電池の一種のある例は固体電解質型燃料電池で、高性能であることが知られている。ある一般的な小型化技術では、シリコン(Si)基板と集積回路製造技術を利用する。シリコンは約4μm/m/℃の速度で拡大する。従来の固体電解質型燃料電池には拡大速度が約10μm/m/℃の材料を使用しており、約800℃で作動する。従来の固体電解質型燃料電池の膜と、従来のシリコン製造ステップを組み合わせると、約0.5%の有意な拡大ミスマッチが生じることがあり、その結果、膜に高い応力がかかる。その応力に寄与するさらなる因子には、溶着したままの状態の薄膜の固有応力、焼着またはその他の熱的処理によって生じる引張または圧縮応力、および化学修飾により生じる引張または圧縮応力が含まれてよい。薄膜の応力が高いと薄膜に機械的損傷が生じ、応力レベルが材料の特性を不適切に変化させることがある。
【0006】
Si基板上のイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などの燃料電池膜のデザインには、直径1mm乃至1cmに引き延ばすために独立のYSZ薄膜を要することがある。これらの薄膜は曲がりやすかったり坐屈しやすかったりすることがあり、機能性を失うこともある。さらに、YSZ膜は冷却時に亀裂の拡大のために引張状態になり、機能性を失うこともある。
【0007】
概要
本願発明は応力がかかった薄膜の形成であって、実質的に亀裂がなく、前記膜の両面に流体を接触させることが可能なようにつくられた、薄膜の形成に関連する。
【0008】
とくに硬い支持体に完全に結合された引張応力がかかった薄膜の場合、クモの巣様のチャンネル構造または亀裂が前記薄膜に形成されることがある。隣接する亀裂の間の距離は、無作為ではなく、特徴的な亀裂スペースの近くに集まるようになっているのが認められる。この現象は薄膜破壊力学の分野ではよく知られている。
【0009】
引張応力がかかった薄膜のこの特徴的な亀裂スペースより下の側面の面積を減らすと、薄膜の亀裂を防ぐ一助となる。応力をかけられた材料の使用可能な面積を大きくするために、応力をかけられた薄膜の島のアレイを形成してもよい。
【0010】
島形成の既存の技術は、引張応力がかかった膜、つまり薄膜の両面に流体を接触させることができる膜構造をつくる場合には容易に適用できない。流体を接触させる必要があるということは、応力のかかった膜を固体支持構造に取り付けることができないことを意味する。
【0011】
圧縮応力がかけられた膜のある場合では、支持構造がないと膜が膨張してゆがむ場合がある。このゆがみは様々な用途において不適切であり、前記膜の亀裂も生じかねない。
【0012】
結合エネルギーが、応力がかかった材料のエネルギーよりも大きくなるように基板に接着させることができれば、圧力による不具合を防ぐ一助となるかもしれない。しかし、この既存の改良された接着の技術は、応力がかかった膜の形成に容易に適用することができない。
【0013】
本願発明にしたがった構造は、引張応力がかかった小さい膜であって、支持構造、つまり支持格子との重なりがわずかしかない膜である。応力がかかった材料の独立している部分と結合している部分の面積を含む合計面積は、膜が張力によって壊れにくくなるように十分小さくデザインされている。引張応力がかかった膜の許容面積は、特徴的な亀裂スペースによって決まる。結合面の材料、つまり支持格子は、特徴的な亀裂スペースに影響を与え、したがって膜の許容面積にも影響を与える。
【0014】
ある実施態様では、前記の使用可能な領域は、島と島の間のスペースが比較的小さくなるように並べられた島の作製によって増える。この実施態様は、意図的につくられたスペースとスペースをつくらなかった場合に形成される亀裂とが似ていることから、薄膜の「前亀裂」と呼ぶこともできる。前記支持構造は、前記の応力がかけられた薄膜との重なりが小さいスペースの下に並べられた支持格子であってよい。支持構造の面積は、前記膜に張力による亀裂が生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0015】
本願発明による別の構造は、前記支持材料に結合された圧縮応力がかかった小型の膜である。前記薄膜の独立領域の許容可能な面積は、前記膜に圧力によるゆがみが生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0016】
ある実施態様では、前記膜が結合できるような支持格子を提供し、前記膜の外縁部に適切な密閉部が形成されるような方法を提供する。シリコンリッチな窒化シリコンなどの材料を含む前記支持格子は、前記膜構造に固さを提供するのに役立つとともに、ゆがみの生じる可能性を低減する。応力をかけた薄膜材料の小さい島は、前記島の外縁部に近い環上の支持材料にしっかり結合する。前記薄膜全体に位置するさらなる領域も結合してもよい。
【0017】
ある実施態様では、前記使用可能な領域は、膜と膜のスペースが比較的小さくなるように配置された圧縮応力がかかった膜の作製によって増える。隣接する膜は薄膜材料の連続する部分から形成されてよい。前記支持構造の面積は、前記膜に圧力によるゆがみが生じにくいように、以下に提示されたデザイン規則に従ってデザインされる。
【0018】
本願発明による第3の構造は、上述の2種類の構造の特徴を合わせて、様々な操作条件、時間、または場所における引張および圧縮応力下にありうる膜を収容する。この構造は、支持構造、つまり支持格子との重なりがわずかしかない応力のかかった小型の膜である。応力のかかった材料の独立領域および結合領域も含めた合計面積は、後述の張力デザイン規則に従って、前記膜が張力によって壊れにくくなるように十分に小さくなるようにデザインされる。前記支持体の開口部の許容可能な大きさは、後述の圧力デザイン規則を用いて計算された大きさを元にする。結合面、すなわち支持格子の材料は、前記の特徴的な亀裂スペースに影響を与え、したがって前記膜の許容可能な面積にも影響を与える。
【0019】
本願発明の膜は、熱サイクルの繰り返しにも耐えるようにデザインされてよい。これらの膜は、たとえば微小電気機械システム(MEMS)を用いた固体電解質型燃料電池であってよい。
【0020】
ある局面では、本願発明は第1の開口部を決定する支持体、および第1の開口部をふさぐように配置された第1の引張応力がかかった薄膜を含む構造物であって、前記支持体の少なくとも第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった膜を含む、構造物を特徴とする。前記第1の引張応力がかかった薄膜には、前記第1の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さな特徴的な亀裂スペースを有する膜材料が含まれる。
【0021】
1つ以上の後述の特徴が含まれてよい。前記支持体は前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物は前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の引張応力がかかった薄膜であって、少なくとも前記支持体の第2の部分に接触する前記2の応力がかかった薄膜も含む。前記第2の引張応力がかかった薄膜には前記膜材料が含まれ、および前記の特徴的な亀裂スペースは前記第1の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さい。前記第1と第2の開口部の間の距離は、各開口部の最小の大きさよりも小さくてよい。
【0022】
前記膜はアレイ状に配置されていてよく、前記アレイには複数の応力がかかった薄膜および開口部が含まれてよい。前記開口部の形状は六角形、正方形、三角形または円形であってよい。前記支持体の断面部分は、第1の棚と伸長部を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第1の部分に接触してよい。前記支持体の断面部は、前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第2の棚の部分に接触してよい。前記の特徴的な亀裂スペースは、1mm未満であってよい。前記の応力がかかった薄膜は、たとえば固体電解質型燃料電池などの電気化学的システム、または膜を用いた水素分離システムに配置されてよい。
【0023】
前記の応力がかかった薄膜には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化物、および/またはそれらの組み合わせなどの材料が含まれてよい。前記酸化物は、たとえばアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物であってよい。
【0024】
別の局面では、本願発明は最小限の大きさを有する第1の開口部を決定する支持体、および前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧力と応力がかかった薄膜を含む構造物であって、前記1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった薄膜を含む構造物を特徴とする。前記の第1の圧縮応力がかかった薄膜には膜材料が含まれており、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、前記の第1の開口部の最小面積の1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも大きく、ゆがみの臨界縦横比は前記の第1の開口部の最小面積の10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。
【0025】
後述の特徴の1つ以上が含まれてよい。前記支持体は、前記の第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、第2の圧縮応力がかかった薄膜は前記第2の開口部をふさぐように配置されてよく、前記第2の応力がかかった膜は少なくとも前記支持体の第2の部分に接触していてよい。前記第2の圧縮応力がかかった薄膜には前記膜材料が含まれていてよく、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、前記応力がかかった薄膜の厚さに対する前記の第2の開口部の最小面積の半分との比よりも大きくてよく、前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は、ゆがみに関する臨界縦横比は前記の応力がかかった薄膜の厚さに対する前記の第2の開口部の最小面積の10倍との比よりも小さくてよい。
【0026】
前記第1および第2の開口部の間の距離は、各開口部の最小の大きさよりも小さくてよい。
【0027】
前記膜はアレイ状に配置されてよく、前記アレイには複数の第1の応力がかかった薄膜および開口部が含まれてよく、前記アレイのゆがみに関する臨界縦横比は、前記アレイの最小の大きさとアレイの有効厚さとの比よりも小さい。前記膜材料のゆがみに関する臨界縦横比は40:1未満であってよい。前記開口部の形状は、たとえば六角形、正方形、三角形または円形であってよい。前記支持体の断面部分は第1の棚および伸長部を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第1の棚の一部分に接触してよい。前記支持体の断面部分は前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定してよく、前記の応力がかかった薄膜は前記第2の棚の一部分と接触してよい。
【0028】
前記の特徴的な亀裂スペースは1mm未満であってよい。前記の応力がかかった薄膜はたとえば固体電解質型燃料電池などの電気化学システムまたは膜を用いた水素分離システムに配置されてよい。
【0029】
前記の応力がかかった薄膜には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化物、および/またはそれらの組み合わせなどの材料が含まれてよい。前記酸化物は、たとえばアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物であってよい。
【0030】
別の局面では、本願発明は、第1の開口部を決定する支持体、および前記第1の開口部をふさぐように配置された膜材料を含む第1の応力がかかった薄膜が含まれる構造物であって、前記1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分に接触する前記第1の応力がかかった薄膜を含む構造物を特徴とする。第1の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜には引張応力がかかっており、前記膜材料は前記第1の力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂スペースを有する。第2の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜には圧縮応力がかかっており、ゆがみに関する臨界縦横比は前記第1の開口部の最小の大きさの10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。
【0031】
別の局面では、本願発明は上述の構造物を形成する方法であって、開口部を決定する支持体を形成するステップと、前記開口部をふさぐ応力がかかった薄膜を形成するステップを含む、方法を特徴とする。
【0032】
後述の特徴の1つ以上が含まれてよい。基板が提供されてよく、前記支持体を形成するステップには基板の少なくとも一領域に前記支持体を形成するステップが含まれ、前記の応力がかかった薄膜は前記支持体と前記基板の両方に接触している。前記基板の少なくとも一部分は取り除かれてよい。さらなる材料が応力がかかった薄膜上に配置されてもよい。
【0033】
前記支持体を形成するステップには前記基板上に犠牲層を形成するステップと、前記基板と前記犠牲層で空間を決定するステップと、少なくとも部分的に支持体材料で前記空間を充填するステップと、前記犠牲層の少なくとも一部分を取り除いて前記支持体材料の表面の少なくとも一部分を露出させるステップが含まれてよい。
【0034】
本願発明の前記およびその他の特徴および利点、および前記発明自体は、以下の説明および図面からより完全に理解されるであろう。
【0035】
発明の詳細な説明
応力がかかった薄膜構造物は、以下の工程フローにしたがって形成することができる。図1では、基板10には、両面研磨シリコンなどの半導体材料が含まれてよく、たとえば約100mmの直径(表示せず)、および例えば約50乃至500μmの厚さを有してよい。犠牲層20は、基板10上に形成させる。前記犠牲層には二酸化ケイ素(SiO2)などの誘電物質が含まれてよい。ある実施態様では、前記犠牲層20は、たとえば水蒸気酸化などによって、基板10の表面12および裏面14の両面に成長させてよい。水蒸気酸化は、たとえばTystar社(カリフォルニア州トランス)から入手可能な加熱炉などの中で、1050℃の水蒸気環境で行うことができる。前記犠牲層20は、あとで形成する圧力がかかった薄膜190(たとえば図8参照)の厚さに少なくとも等しい高さを有するリブ120(たとえば図8参照)を形成するのに十分な厚さt1を有してよい。前記犠牲層の厚さt1は、たとえば約2μmであってよい。
【0036】
図2A乃至2Dでは、格子パターン30は、たとえば光リソグラフィおよびエッチングなどによって、犠牲層20および基質10に決定される。フォトレジスト層40を犠牲層20上にスピン、露出させ、現像する。前記フォトレジスト層は、さらなる加工に十分耐えられる厚さt2であって、たとえばt2は約2μmであってよい。最初、フォトレジスト層40にパターン形成されることによって決定されていた前記格子パターン30には、たとえば約1.5μmなどの幅w1を有する開口部45が含まれてよい。前記開口部45の前記幅w1は、後に定義する支持格子構造物90(たとえば図11Aを参照)が膜190(たとえば図11Aを参照)の有用領域を劇的に減少させることなく十分な硬さを提供するように選択される。
【0037】
前記格子パターン30は、格子マスクを用いることによって、フォトレジスト層40をパターン形成するように決定される。前記格子マスク46には複数のセル48を決定するマスク格子パターン47が含まれる。前記マスク格子パターンはたとえば約750μmなどの長さl0、および例えば約750μmなどの高さh0を有してよい。各セルは、後述のデザイン規則に従って、幾何学的な形状、つまり六角形であって、各辺がたとえば10乃至40μmであって平行な辺同士の間の距離がd0である六角形であってよい。複数のセルが、前記マスク格子パターンによって決定されたハチの巣パターンを形成してよい。前記格子マスクは、たとえば約10mmなどの高さh1および長さl1を有する立方体を決定してよい。
【0038】
図3でも、前記フォトレジスト層40を決定してから、前記フォトレジスト層40の開口部45によって露光された前記犠牲層20の部分50を、たとえばドライエッチングなどによって取り除く。ドライエッチングは、例えばAMT 8100システム(カリフォルニア州サンタクララ、アプライド・マテリアルズ社製)などのエッチングシステムの反応性イオンエッチング(RIE)などによって、たとえば酸化物エッチングn法などの、前記犠牲層の組成物に適切なエッチング法で行ってよい。このエッチングは、たとえば約1.5μmなど、w1にほぼ等しい幅w2を有する犠牲層20の複数の開口部60を決定する、異方性エッチングであってよい。
【0039】
図4では、犠牲層20のエッチング後、等方性エッチングを行い、基板10まで伸展して複数の凹部70を形成する。前記基板がSiで形成されている実施態様では、この等方性エッチングは六フッ化硫黄(SF6)エッチングであってよく、たとえばマルチプレックスシステム(サーフェイス・テクノロジー・システムズ社製、英国ウェールズ)によって約60乃至300秒行ってよい。このエッチングステップは基板の凹部70を決定し、前記凹部はたとえば約3乃至4μmなどの深さd1および約8μmの幅w3を有する。深さd1および幅w3は、後に凹部70(図11A参照)の一部に形成される支持格子90が、後に形成される応力がかかった薄膜190の有用領域を過剰に減少させることなく、前記膜190を十分に支持するように選択される。
【0040】
図5では、基板10に等方的にエッチングし、続いて非等方的なエッチングで凹部70の複数の伸長部80を決定する。伸長部80は前記基板に決定される溝であってよい。前記伸長部は、たとえばマルチプレックス・システムなどのシステムでの非等方的なエッチングによって形成されてもよい。基板10がケイ素を含有するある実施態様では、適切なエッチングはSF6およびオクタフルオロシクロブタン(C4F8)化学を用いた方法であってよい。ケイ素に非等方的にエッチングする方法は、たとえば米国特許第5,501893号に説明されている。伸展部80はそれぞれ、たとえば約30乃至40μmなどの深さd2であってよい。伸展部80の深さd2は、後述の圧力と応力を同時にかけた薄膜用のデザイン規則を用いて、後に伸展部80に沈着させる材料(後述)が、後に形成する応力がかかった薄膜への十分な支持を提供するが、前記膜への気流が阻害されない程度に十分浅くなるように選択する。引張応力がかかった薄膜のある実施例では、前記伸展部は必要ない場合もある。これらのエッチングステップの後、フォトレジスト層40を剥がす。それから、前記基板10をたとえばRCAクリーンで洗浄してから、800℃で1時間の酸化ステップを施して、残留するポリマーを除去する。最初にフォトレジスト層40で決定されていた前記格子パターン30は、今度は開口部60、凹部70、および伸展部80で決定される。
【0041】
図6では、支持格子90は、たとえば、犠牲層20上のケイ素を多く含有する窒化ケイ素、またはTiO2などの誘電体であってよく、開口部60、凹部70、および伸長部80を含む格子パターン30になってよい、支持材料100の沈着によって、決定される。支持材料100は、たとえば低圧CVD(LPCVD)またはプラズマ増強CVD(PECVD)などの化学蒸着(CVD)などによって沈着してよい。前記支持材料100は、たとえば300MPa未満などの低応力下であってよく、厚さt3はたとえば約2μmであってよい。前記支持材料100の圧力のかかった応力は、後述の圧力デザインルールにしたがって、ゆがみが生じない程度に十分低くなければならない。前記張力のかかった応力は、前記支持材料100の張力によって制限される。前記支持格子90は、たとえば燃料電池の実施態様などの最終構造において、電気的なショートを防止するために誘電材料で形成されてよい。
【0042】
図6および7では、支持材料100の表面部分105は、AMT8100システムの窒化物エッチングなどの、ドライエッチングなどによって除去する。除去終了点は目視の検出が用いられてよく、約5%のオーバーエッチングが終了点である。
【0043】
図7および8では、支持材料100の表面部分105の除去によって、犠牲層20の部分110を露出する。前記犠牲層はたとえばウエットエッチングなどによって、選択的に取り除いてよい。たとえば、前記犠牲層が酸化物を含むある実施態様では、フッ酸、フッ化アンモニア、および水を含む緩衝酸化物エッチング(BOE)などの酸化物エッチングによって取り除いてよい。前記犠牲層の除去の後に、SC-1(NH4OH:H2O)洗浄ステップ、またはRCAクリーンの後に800℃で1時間湿式酸化させるステップなどの洗浄ステップを施してよい。前記犠牲層20の除去によって、支持格子90が部分的に露出される。この露出された部分には、犠牲層20の開口部60に支持材料100を沈着させることによって形成されたリブ120が含まれる。前記リブ120は一般に、たとえば複数の六角形など、マスク47によって最初に決定されていたものと同一のパターンを決定する。前記リブは、たとえば約2μmなどの犠牲層の最初の厚さt2とほぼ等しい高さh2を有する。支持格子90の露出された部分が棚125を形成する。
【0044】
図9では、応力がかかった薄膜層130は、前記リブ120、基板10の前面12の露出部分および特に支持物質100が充填されている凹部70上の支持格子90上に形成する。前記の応力がかかった薄膜層は、電子ビーム蒸発などによって沈着されてもよい。前記の応力がかかった薄膜層には、たとえばYSZなどの電解物質として機能する膜材料が含まれてよく、ニッケル/イットリウム安定化ジルコニア複合物などの電極として働く膜物質が含まれてもよい。YSZは固体電解質型燃料電池の中で電極として使用するのに特に好適な物質である。それは酸素のさまざまな分圧の酸素イオンを選択的に透過する物質だからである。まとめると、応力がかかった薄膜層を形成するための膜材料として使用してよい材料には、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、およびアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタン、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジム、および/またはそれらの組み合わせの酸化物などの酸化物などが含まれる。前記の応力がかかった薄膜層130は約2μmなどの厚さt4であってよい。
【0045】
応力がかかった薄膜層130を前記リブ120に沈着させると、前記リブ120に隣接した応力がかかった薄膜層130に意図的に形成した断絶135が形成されることがある。この意図的な断絶は、前記リブ上の応力がかかった薄膜層のステップ範囲によって決定されてよい。より具体的には、応力がかかった薄膜層130による非等角コーティングによって断絶が形成される。意図的な断絶は、応力がかかった薄膜層の応力を緩和して、意図的ではない亀裂の形成を防止する一助となる。
【0046】
図10Aおよび10Bでは、リリースフォトレジストパターン140を基板10の裏面14上に決定する。リリースマスク150で決定されたとおり、前記リリースフォトレジストパターン140には、たとえば長さl2および高さh2がそれぞれ約10mmの立方体160を含んでよい。前記立方体の中心部分は、長さl3がたとえば約12mmなどの辺を有する正方形165を決定してよい。マスク150を用いることで、フォトレジストパターン140が支持格子90の反対側に正方形の開口部170を決定するように基板の裏面14上にフォトレジストをパターン形成する。
【0047】
リリースフォトレジストパターンの決定後、支持材料100および犠牲層20の露光部分を取り除く。100、20の両層とも、AMT8100システム(アプライドマテリアルズ社製)のドライエッチングなどによって取り除いてよい。
【0048】
図11Aおよび11Bでは、前記基板10の露光部分をたとえばウェットエッチングなどによって取り除く。前記基質にケイ素が含まれる実施態様では、好適なウェットエッチングは水酸化カリウム(KOH)エッチングであってよい。この組成物は、選択的に特定の平面に沿ったケイ素をエッチングし、フレーム200を底面が正方形で頂上部分が平坦なピラミッド型が得られる。つまり、このエッチングによってつくられた開口部201は、基板10の裏面14の底部分202の方が広く、前記支持格子90に隣接する頂上部分204の方が狭くなる。たとえば、リリースマスク150で決定された前記開口部170の辺が、たとえばそれぞれ約12mmなどの長さl3を有する場合、前記支持格子90に隣接する開口部は、たとえば約500μmなどの長さl4を有するだろう。フレーム200は、たとえばケイ素など、基板10と同一の材料でできており、例えば約500μmなどの厚さt0を有するフレーム壁205が含まれる。
【0049】
図11A乃至11Fでは、上述の加工ステップの結果得られたものは、複数の開口部180を決定する支持格子90を有する、複合的な応力がかかった薄膜構造175である。各開口部180は、六角形、正方形、三角形または円形であってよい。第1および第2の隣接する開口部180aおよび180bの間の距離d20は、各開口部の最小の大きさd30よりも小さくてよい。
【0050】
応力がかかった薄膜層130は、前記開口部180をふさぐように配置された、たとえば電極層などの、複数の応力がかかった薄膜190を決定する。複数の応力がかかった薄膜190には、少なくとも、第1の開口部180aをふさぐために配置された第1の引張応力がかかった薄膜190a、および第2の開口部180bをふさぐために配置された第2の引張応力がかかった薄膜190bが含まれてよい。代替的には、複数の応力がかかった薄膜190には、少なくとも、第1の開口部180aをふさぐために配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜190a、および第2の開口部180bをふさぐために配置された第2の圧縮応力がかかった薄膜190bが含まれてよい。前記の応力がかかった薄膜(タイルともよぶ)はそれぞれ、少なくとも前記支持格子90の一部分に接している。前記第1の張力または圧縮応力がかかった薄膜は、少なくとも前記支持体の第1の部分195aに接していてよく、前記第2の張力または圧縮応力がかかった薄膜は、少なくとも前記支持体の第2の部分195bに接していてよい。前記応力がかかった薄膜が接している前記支持格子90の前記部分は、少なくとも棚125の一部分であってよい。
【0051】
前記の臨界亀裂スペースおよびゆがみの臨界縦横比は、亀裂またはゆがみによる不具合の確率が、亀裂またはゆがみが生じない確率とだいたい等しくなるような幾何学的数値である。多くの実用的な用途において、不具合が生じない確率が非常に高いことが好ましい。これらの場合、前記幾何学に安全因子を加えることが有益であるかもしれない。たとえば、前記臨界亀裂スペースは、前記の応力がかかった薄膜の最小の大きさの2倍までであってよい。代替的には、前記臨界亀裂スペースは、前記の応力がかかった薄膜の最小の大きさの10倍までであってよい。圧力がかかった薄膜の場合、ゆがみの臨界縦横比は、開口部の最小の大きさと前記応力がかかった薄膜の厚さとの比の2倍までであってよい。代替的には、ゆがみの臨界縦横比は、開口部の最小の大きさと前記応力がかかった薄膜の厚さとの比の10倍までであってよい。
【0052】
これらの事項を膜材料および幾何学を決定する際に考慮に入れてもよい。ある実施態様では、引張応力がかかった各薄膜には、前記膜の最小の大きさの半分よりも大きく、前記最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂スペースを有する膜材料が含まれる。この関係性は、以下のようにも表すことができる。前記膜の最小の大きさは前記の特徴的な亀裂スペースの2倍乃至1/10である。前記膜の最小の大きさは、前記膜で決定された形の2辺の間の最小距離によって決定される。たとえば、応力がかかった各薄膜は、格子マスク46のセル48によって決定されるとおり(図2Bおよび2C)、たとえば約20μmなどの平行な辺の間の距離d0と等しい、最小の大きさを有する六角形であってよい。特徴的な亀裂スペースのさらなる考察は、後述の前記デザイン規則の考察で提供する。
【0053】
前記膜の最大の大きさも、臨界ゆがみ長よりも小さくてよい。圧縮応力がかかった薄膜には、前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも大きいゆがみの臨界縦横比を有する膜材料が含まれてよく、前記のゆがみの臨界縦横比は、前記第1の開口部の最小の大きさの10倍と前記の応力がかかった薄膜の厚さとの比よりも小さい。この関係性は以下のようにも表すことができる。前記開口部の最小の大きさと応力がかかった薄膜の厚さとの比は、前記のゆがみの臨界縦横比の2倍乃至1/10であってよい。
【0054】
ゆがみを防止するためのデザイン規則についてのさらなる考察は、後述の「圧縮応力のデザイン規則の概要」というタイトルの節に提供する。
【0055】
ある実施態様では、前記の応力がかかった薄膜は第1の作動条件において引張応力がかかっていてよく、前記膜材料は前記第1の応力がかかった膜の最小の大きさの半分よりも大きい特徴的な亀裂スペースを有してよい。第2の作動条件下において、前記第1の応力がかかった薄膜は圧縮応力がかかっていてよく、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比は前記第1の開口部の最小の大きさの1/2よりも大きくてよい。
【0056】
図11Bおよび11Gでは、圧縮応力がかかった薄膜構造175は基板10全体に繰り返し形成されてよく、その結果、2つの入れ子状で繰り返しの格子構造、つまり、支持格子90上に配置された前記応力がかかった薄膜190を含む小さめの格子状の複合の応力がかかった薄膜構造175、およびフレーム200上の複合の応力がかかった薄膜175を含む大きめの格子構造220からなる応力がかかった薄膜アレイが作られる。
【0057】
上述の支持格子は「†」形を有する支持体をつくる。代替的な実施態様では、リブは、前記リブが除去されるように支持材料100の頂上部分105の除去を拡大することによって、前記の複合的な応力のかかった薄膜構造から取り除いてよい。したがって、この実施態様では、前記支持格子は「T」形であってよい。
【0058】
当業者には、前記支持格子はさまざまな十字形であってよいということが明らかであろう。前記格子は、好ましくは前記応力がかかった薄膜を取り付けるための表面を提供する。図12では、前記支持格子90の断面部分は第1の棚300および伸長部310を決定してよく、引張または圧縮応力がかかった薄膜190は前記第1の棚の一部分300aに接触してよい。前記支持体の前記断面部分はまた、前記第1の棚に平行に配置された第2の棚320を決定し、前記応力がかかった薄膜は前記第2の棚の一部分320aに接触してよい。たとえば圧縮薄膜を有するような実施態様では、前記格子は好ましくは、以下に提供される圧縮デザイン規則にしたがった前記膜に硬さを提供するのに十分な大きさを有する。より深い格子ほど幅の広い格子よりも大きな硬さを提供することがわかっている。圧縮応力がかかった薄膜の好ましい実施例では、前記格子の深さと幅の広さの比は10よりも大きい。たとえば引張応力がかかった薄膜を有するものなどの実施態様では、前記格子は有意な硬さを提供しないかもしれない。たとえば、前記格子は、ある応力がかかった薄膜から隣接する応力がかかった薄膜まで広がる平坦な薄膜であってよい。特に圧縮応力がかかった膜のその他の実施態様では、前記膜の断絶は必要ない場合もあり、たとえば2つ以上の開口部が1つの膜でふさがれるなど、1つの膜が1つ以上の開口部をふさいでよい。
【0059】
本願発明のある実施態様では、前記格子は誘電体を含む。たとえば、燃料電池の実施態様では、前記格子は、陽極と陰極がショートすることを防ぐために非導電性になるように選択されてよい。本願発明のある実施例では、前記格子は拡散障壁を含む。たとえば、水素精製の実施態様では、前記格子は気体の拡散係数が低い材料から選択してよい。
【0060】
図13aおよび13bでは、使用時に、前記応力がかかった薄膜190は電気化学システム400に配置されてよい。電気化学システムには、少なくとも第1の電極410、第2の電極420、および電解質430が含まれ、電極間を電流が流れると化学反応が起きるように配置される。前記電解質は、前記応力がかかった薄膜190によって決定されてよい。前記化学種と前記電極の相互作用によって、前記電極間に電圧も発生する。たとえば、電気化学システムは、燃料電池などに電力を発生させるために用いることができる。その他の用途では、電気化学システムは様々な化学種の存在または濃度を感知するために用いることができる。本願発明は特に、前記第1および第2の電極410、420を電解質430ならびにそれぞれ第1の流体440および第2の流体450と連通させるような電気化学システムに有用である。
【0061】
前記応力がかかった薄膜は、固体電解質型燃料電池に配置してよい。図13bでは、前記第1の流体440は燃料であって、前記2の流体450は酸化剤であってよい。前記1の電極410は陰極であってよく、前記2の電極は陽極であってよく、前記電解質430は応力がかかった薄膜190によって決定された固体電解質型燃料電池の電解質であってよい。
【0062】
図14では、代替的に、前記応力がかかった薄膜190は膜を用いた水素分離システム500に配置してよい。膜を用いた水素分離システムには、少なくとも第1の流体510、前記膜190、および第2の流体520が含まれてよく、前記膜が前記第1および第2の流体を分離していてよい。前記第1の流体510には、水素濃度と第1の希釈剤の濃度が第1の比である、水素および少なくとも前記第1の希釈剤が含まれてよい。前記膜190には、前記第1の希釈剤よりも水素透過性が高くなるように選択された材料が含まれてよい。この選択的透過性によって、前記第2の流体520が、前記第1の比よりも高い水素と前記第1の希釈剤の第2の比を有するようになる。非常に高い選択性を有する膜の場合、前記水素を前記膜から運び去るために、第2の希釈剤を前記第2の流体に加える。
【0063】
デザイン規則
多くの実施態様では、複合的な応力のかかった薄膜構造は、作動中、ある範囲の応力がかかってよい。たとえば、前記応力が、応力がかかった薄膜と支持格子の間、または複合的な応力がかかった薄膜アレイとフレームの間の熱膨張ミスマッチによって部分的に生じた場合、前記応力は温度によって変化するだろう。別の実施態様では、前記応力は経時的に変化するだろう。
【0064】
複合的な応力がかかった薄膜構造のデザインは、前記構造が前記の潜在的な応力範囲全体にわたって安定になるように提供される。一般的に、前記構造が前記応力の範囲の両端において頑強になるようにデザインするのに十分である。熱膨張ミスマッチによる応力の実施態様では、前記の両端の状況は、一般に最高および最低な作動温度において生じる。本願発明のある目的は、圧縮力および引張力の両方において頑強である膜を作製することである。
【0065】
過剰な応力下における複合的な応力がかかった薄膜構造は、たとえば曲がる(つまり、ゆがむ)または亀裂するなど故障を来すことがある。故障は、高温におけるたとえばシリコン上のYSZ膜の場合などにおける膜のゆがみの結果として形成される亀裂によって生じる場合がある。また、機能不全は引張力による亀裂の形成によって生じることもある。応力がかかったYSZ薄膜とシリコンフレームの実施態様では、一般に最初は、高温下の圧縮における湾曲による故障ほうが、引張における亀裂による故障よりも生じやすいことがある。しかし、この実施態様では、低温における引張力の亀裂は、高温における応力緩和のために、装置の操作から長時間経過後に生じやすい場合もある。
【0066】
前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、YSZ膜など応力がかかった薄膜の引張および圧縮応力に対する頑強さを増すことができる2つの特徴を有する。少なくとも1つのリブ(代替的には「レール」または「隆線」とも呼ばれる)および薄膜の断絶を含む実施態様は、応力緩和ジョイントのように働くことによって、新たな亀裂が形成される可能性を低くし、同時に、ある応力がかかった薄膜から隣接する応力がかかった薄膜へと亀裂が跳ぶことを防ぐことができる。したがって、形成されたいずれの亀裂も個別の応力がかかった薄膜に隔離され、複合的な応力がかかった薄膜構造が故障することを防ぐ。前記支持格子は前記の複合的な応力がかかった薄膜構造に硬さを与える。ある実施態様では、このさらなる硬さによって、圧縮応力下における、応力がかかった薄膜および前記の複合的な応力がかかった薄膜構造がゆがむのを防ぐか、またはそのゆがみを減らすこともできる。
【0067】
特に圧縮応力がかかった薄膜のある実施態様では、亀裂のリスクを減らすための薄膜の断絶は必要ない場合がある。したがって、1枚の膜がたとえば1つ以上の開口部をふさいでもよく、たとえば1枚の膜で2つ以上の開口部をふさいでもよい。
【0068】
本当に頑強な複合的な応力がかかった薄膜構造は、ゆがみおよび亀裂の発生を防ぐことを目的とした幾何学的デザイン規則を適用することによって実現することができる。多くの幾何学に適用できるこれらのデザイン規則は、リブ、支持格子、および複数の応力がかかった薄膜を有する複合的な応力がかかった薄膜構造から実験的に得られた知見の統合に基づいて開発された。
【0069】
これらのデザイン規則は、たとえば、本願明細書に記載の関係性を考慮に入れずに作製された膜よりも、熱サイクルに耐えることができる膜などの、より頑強な膜を作製することに有用である。
【0070】
前記フレームとは異なる熱膨張率を有する膜の実施態様では、前記応力がかかった薄膜の熱サイクルは、前記膜の圧縮および引張の状態を変化させることがある。たとえば、基板がSiでつくられており前記応力がかかった薄膜がYSZでつくられている実施態様では、熱膨張計数(CTE)は顕著に異なる。YSZのCTEは約10μm/m/℃であるが、SiおよびSiリッチ窒化ケイ素のCTEは約4μm/m/℃である。YSZの熱膨張計数はSiおよびSiリッチ窒化ケイ素の熱膨張計数の約3倍なので、高温のYSZ膜は比較的固定された支持格子およびSiフレームの制約に対して膨張し、圧縮状態になる。反対に、作動温度において緩和した状態から冷却された膜は、前記支持格子およびSi支持フレームによって引き延ばされて引張状態になるだろう。
【0071】
室温(30℃)と作動温度800℃の間の応力差は、
応力= E(αX(T2-T1)
− αY(T2-T1) ) (0)
= E(αYSZ(800 -
30) − αSi(800 - 30) )
≒ 1200メガパスカル(MPa)
ここで E = 膜のヤング率
α = 熱膨張計数
T = 温度
【0072】
ある実施態様では、前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、前記応力がかかった薄膜の応力状態の2000MPaの変化に、機能不全にならずに耐えることができる。ある実施態様では、前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、最高800MPaまでの引張応力に耐えることができる。さらに他の実施態様では、前記の複合的な膜構造は、最高1200MPaまでの圧縮状態にある場合にも湾曲しない状態が維持される。
【0073】
上述のとおり、前記の応力がかかった薄膜構造には、前記応力のかかった薄膜に十分な剛性または強度を提供するために、少なくとも2つの入れ子状の繰り返し格子複合構造が含まれてよい。前記の2つの入れ子状構造は、連続する作製ステップによって決定された、異なる長さ、異なる材料および材料厚さにつくられてよい。
【0074】
繰り返し距離または前記の2つの格子の小さい方の直径は、10乃至40μmであってよく、最小の繰り返し単位は「セル」である。前記セルは、六角形であってよく、独立したYSZ薄膜板または「タイル」(「応力のかかった薄膜」ともよぶ)および機械的フレームまたは支持格子が含まれる。YSZ薄膜は典型的には厚さ0.25乃至2μmである。前記支持格子はYSZタイルを支える機械的な支持構造物である。前記セルの壁、つまり前記支持格子の一部分はケイ素リッチな窒化ケイ素などの誘電体でできていてよく、幅1乃至3μmおよび深さ30乃至150μmであってよい。また前記支持格子には、幅1乃至5μmであってよい棚が含まれる。前記のケイ素リッチな窒化ケイ素格子は、平滑で開放されたハチの巣構造であって、前記薄膜YSZで密封された各セルの側面、すなわち表面を有する構造を形成してよい。
【0075】
前記の複合的な応力がかかった薄膜構造は、前記応力がかかった薄膜の細密2次元セルアレイであってよい。それは、より大きな構造、つまり複合的な応力がかかった薄膜アレイの最小の繰り返し単位である。前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイは直径がたとえば5乃至100mmであって、複合的な応力がかかった各薄膜は直径が200μm乃至2mmであってよい。前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイには、それ自体の複合的な応力がかかった薄膜と、間に介入するさらなる機械的構造、「膜壁」フレームが含まれる。ある実施態様では、前記フレームは厚さ50乃至500μmのケイ素からできていてもよい。前記のより厚いフレーム壁は、前記セルおよびセル壁、つまり前記膜および支持格子の形成とは別の、たとえばエッチングステップなどの加工ステップによって決定される。
【0076】
たとえばYSZなどの応力がかかった薄膜タイル材料の厚さ、たとえばケイ素リッチな窒化シリコンなどのセル壁の厚さと深さ、セルの直径、前記膜壁の厚さと深さ、ならびに前記複合膜の直径の間の有利な大きさの関係性を決定するために、2つの方法論がある。第1の関係性は、著しい引張応力をかける実施態様に用いられる。第2の関係性は著しい圧縮応力をかける実施態様に用いられる。著しい圧縮応力、引張応力、または圧縮および引張応力の両方の場合に適用できる関係性を用いることによって、ゆがみや亀裂が実質的に無い応力がかかった薄膜および複合的な応力がかかった薄膜アレイを形成することができる。
【0077】
引張応力のデザイン規則の概要
引張応力がかかった薄膜が亀裂を有しない最大の大きさは、前記薄膜の特徴的な亀裂スペースによって決まる。本願明細書では、引張応力がかかった薄膜は、前記薄膜の側面の大きさが十分に大きい場合に自然に亀裂が生じるであろう薄膜として定義する。亀裂の発生は、たとえば前記薄膜の内部応力状態、前記薄膜の厚さ、前記薄膜の各表面の粗さ、前記薄膜の前記基板への接着、組成、薄膜欠損の頻度および特徴による。
【0078】
引張応力がかかった薄膜に亀裂ができると、前記薄膜の局所的な応力が部分的に緩和され、前記の第1の亀裂の近くにさらなる亀裂ができる確率が低くなる。一般に、全体が亀裂を生じやすくなる傾向と、亀裂によって得られる局所応力の緩和の作用が合わさって、実質的に平行な亀裂同士のすき間が特徴的な亀裂スペースのまわりに集まり、一部はランダムプロセスによってその特徴的な亀裂スペースのまわりに散らばる。この亀裂の形成は、乾燥して亀裂が入っているが比較的均一な大きさの無亀裂の領域もある湖底のような外観をしている。
【0079】
ある実施態様では、前記の特徴的な亀裂スペースは非等方的であってよく、ある方向には他の方向よりも高頻度で亀裂が生じている。方向性のある特徴的な亀裂スペースを定量化するある技術は、
(A) たとえば暗視野光学顕微鏡などによって前記薄膜の顕微鏡写真を得る。
(B) 前記薄膜の見本とするのに十分大きいサンプリング領域を選択する。その領域は、少なくとも各方向に亀裂スペースが少なくとも10個分、好ましくは少なくとも100個分広がっていてよい。
(C) 前記サンプリング領域に別の亀裂で終了しない亀裂、つまり自由端を有する亀裂がある場合には、ペンでその亀裂が別の亀裂と交差するまで延長する。
(D) 薄膜の各島の重心を見つける。島は、亀裂(およびCの亀裂の延長)で囲まれていて、亀裂を含まない薄膜の領域として決定される。重心を見つけるために、ある技術では、各島を直線でその線の両側の面積が等しくなるように二等分する。もう一度、垂直な線で二等分する。2本の二等分線が交わったところが、その島の重心である。
(E) 各島の絶対配置が維持されるように、各島に均一な座標のラベルを付ける。前記島を独立に動かせるように、前記の顕微鏡写真をすべての前記亀裂に沿って区切る。各島の絶対配置を維持しながら、各薄膜の重心を並べて薄膜のすべての島を重ね合わせる。
(F) 各方向において、前記の特徴的な亀裂スペースは、特定の軸に沿って島の直径を平均することによって得ることもできる。標準偏差も前記軸に沿って得ることができる。
【0080】
好ましくは、例えば応力がかかった薄膜など、前記島の直径はすべての方向において前記亀裂スペースの2倍よりも小さい。より好ましくは、前記セルの直径はすべての方向において前記亀裂スペースの半分よりも小さい。
【0081】
引張応力がかかった薄膜の大きさは、前記膜の縁部によって決定される。前記縁部は不均一な領域全体の応力の移動を防ぐかまたは実質的に低減する、前記膜の意図的な不均一性によって決定される。最も好ましくは、前記縁部は前記応力がかかった薄膜材料の断絶によって決定される。代替的には、前記縁部は応力緩和ジョイント、または亀裂に誘導された形であってよい。
【0082】
本願発明は好ましくは、各島の亀裂形成の頻度を減らし、隣接する島の間に亀裂が広がる頻度をへらすように、各島を分離している。
【0083】
本願発明にしたがったある構造には、不連続な、応力がかかった薄膜の島が含まれる。隣接する島の間の距離は、作動中に少なくとも一定の時間中に前記島が接触しないように選択される。隣接する島の間の空間は、ある実施態様では光パターン形成またはエッチングによって形成してよい。別の実施態様では、前記空間はたとえば低応力の窒化ケイ素など、別の材料を充填してもよい。別の実施態様では、前記空間は、前記支持格子上にレールを含むステップと、前記応力がかかった薄膜の沈着中にステップカバレージ(段差被覆)を除去し、前記レール上に不連続な薄膜を得るステップによって、形成してよい。
【0084】
本願発明による別の構造には、隣接する島同士の間の応力緩和ジョイントが含まれる。ある実施態様では、ジョイントはU字形であってよく、そのUの腕部分を一緒に動かすか、または話すことによって応力を緩和することができる。別の実施態様では、前記ジョイントは応力がかかった薄膜以外の材料からできていてもよい。
【0085】
本願発明による第3の構造には、前記応力がかかった薄膜の管理された位置に分岐を生じるようにデザインされた特徴が含まれる。ある実施態様では、前記薄膜は段差(ステップ)の特徴上に連続的に沈着してもよい。亀裂は、好ましくは前記段差に平行に、前記薄膜の厚さとほぼ等しい段差からの距離の範囲内に形成されるだろう。
【0086】
好ましくは、前記複合的な応力がかかった薄膜には、各島における亀裂の形成の頻度を減らし、隣接する島の間に亀裂が広がる頻度を減らすための、各島を分離する構造物が含まれる。
【0087】
圧縮応力のためのデザイン規則の概要
応力がかかった薄膜材料がゆがまない最大の大きさは、薄板のゆがみに関するオイラーの公式(後述の式1参照)を用いて決定してよい。この式から、応力がかかった薄膜の厚さ(t)、応力がかかった薄膜の長さ(正方形のセルの場合はL)、および最大耐容圧縮応力(σ)の関係性が得られる。この規則は、確実に応力がかかった薄膜にゆがみのない状態を維持する、つまりゆがまないようにすることを目的とする。
【0088】
ある実施態様では、応力がかかった薄膜は正方形で、その縁部だけで支えられている。本願明細書では、ゆがみの臨界縦横比、つまりゆがみが起きる前に耐えることができる長さ対厚さの最小の比は、たとえば式1などのオイラーの公式を用いて計算してよい。
【0089】
【数1】
であって、当該式において
L = 正方形の長さ
t = 薄膜の厚さ
ν = 薄膜のポアソン比
σ = 薄膜の圧縮応力
E = 薄膜のヤング率
【0090】
この公式は、タイルおよび膜が頻回に少なくとも部分的にその縁部を固定される場合にも、比較的保存される。固定された縁部の臨界縦横比は大きくなり、したがってこのL/t比は下限値であるとみなされてよい。
【0091】
このオイラーの公式は正方形を前提としている。六角形などのその他の形の臨界縦横比はいくらか変化するが、この値の30%以内であると考えられる。
【0092】
ゆがみを避けるため、前記の規則を簡略化し、セルの直径と薄膜の厚さの比は一般に20を超えてはならないとしてよい。この値は、応力がかかった薄膜のほとんどの内部応力は1GPa未満であって、脆弱な薄膜のヤング率のほとんどは約150GPaであって、ほとんどのポアソン比は約0.25であるという仮定に基づく。ある場合では、前記比は40までであってよい。
【0093】
複合的な応力がかかった薄膜の場合、最大の大きさも複合薄板のゆがみに関するオイラーの公式によって決定することができる。以下の式1を、検討中の構造に関する効果的な変数を用いて使用することができる。前記式は、前記膜の曲げ剛性(前記セル材料、つまり前記壁およびタイルの硬さと有効な厚さ)、前記膜の直径、および最大耐容圧縮応力の関係性を提供する。この規則は、確実に前記の複合的な応力がかかった薄膜がゆがまないようにすることを目的とする。前記の膜の有効な厚さおよび係数は、主に、ケイ素リッチな窒化ケイ素セル壁の大きさによって決定される。前記の成分材料のパラメータと膜の有効な厚さおよび係数の比を決定する3つの因子は、支持格子の幅、支持格子の深さ、およびセルの直径である。
【0094】
前記のセルの支持格子は、前記応力がかかった薄膜の平面連続性を破るために、特定の高さまたはトポグラフィ(たとえばリブなど)でデザインされてよい。前記リブの目的は、前記応力がかかった薄膜の応力をいくらか緩和させ、前記応力がかかった薄膜材料に偶然生じた亀裂の終了点として働く、前記応力がかかった薄膜層の断絶を生じさせることである。この高さは、たとえば2μmなど、薄膜の厚さに類似するように選択される。
【0095】
圧縮応力がかかった薄膜アレイの場合、たとえばケイ素壁などのフレームの大きさは、オイラーの公式の別の用法によって決定することができる。再度、各複合膜の形を許容して、式1を用いる。この式は、前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイの曲げ剛性(すべての膜、格子、およびフレーム材料の有効な厚さ)、前記の複合的な応力がかかった薄膜の完全なアレイの直径、および最大耐容圧縮応力の関係性を提供する。この規則は、確実に、前記の複合的な応力がかかった薄膜アレイが曲がらない、つまりゆがまないことを目的とする。比較的高い収率を確実に得るために、この縦横比は、前記第1の開口部の最小の大きさの2倍対前記膜厚さより小さくてよい。前記のアレイの有効な厚さおよび係数は、主に、前記膜壁の大きさによって決定される。前記成分材料のパラメータと前記の有効なアレイの厚さおよび係数との比を決定する3つの因子は、膜壁の幅、膜壁の厚さ、および膜の直径である。
【0096】
式1を応力がかかったYSZ薄膜に適用するために、以下の概数を用いてよい:
E = 160 GPa
ν = 0.23
σ = 1 GPa
【0097】
上述の式1を用いて、ゆがみが生じる前に用いてよい前記の臨界縦横比、つまり最大長さと最大厚さの比は、
L/t = 23.6
したがって、応力がかかった薄膜の厚さが2μmである実施態様では、ゆがんでいない最大幅47μmのタイルを形成してよい。
【0098】
前記の複合的な応力がかかった薄膜(多数のタイル)の場合、不具合が生じる前の可能な限り最大の大きさの計算はより困難である。なぜなら、前記膜は材料の固体片ではないからである。式1の実際の材料パラメータは、前記複合的な応力がかかった薄膜の成分の幾何学、応力、および材料のパラメータを含む、有効なパラメータで置換されなければならない。たとえば、六角形ハチの巣構造の有効ヤング率は
【0099】
【数2】
であって、当該式において
w = 壁の幅
a = 各壁の長さ
である。
Cellular Solids by L.J. Gibson and M.F. Ashby (Second Edition, 1997)を参照。
【0100】
前記の有効な圧縮応力は、前記膜の厚さによっても減少するだろう。
【0101】
【数3】
であって当該式において
b = YSZの厚さ
t = ハチの巣構造の厚さ
である。
【0102】
この式は、YSZタイルまたは「棚」からの膜の強度への寄与が含まれない場合には比較的保存される。しかし、前記応力は主に前記膜の上部にかかってゆがみを促進しがちだということを考慮していない。
【0103】
特徴的な六角形の膜は、以下の特性を有する。
E = 160 GPa
ν = 0.25
σ = 1 GPa
t = 40 μm
w = 1.5 μm
b = 2 μm
a = 20 μm/sqrt(12) = 5.8μm (この因子によって、六角形の直径が辺の長さに転換される)
→ σ* = 50 MPa
→ E* = 6.45 GPa
【0104】
*印をつけた数値を式1に代入すると、
→ L/t = 21.3
→ L = 0.85 mm
【0105】
注:たとえば三角形のセルなどのその他のハチの巣配置は、非常に異なる有効ヤング率を有することがある。例として、三角形のセルの有効ヤング係数の式は、
【0106】
【数4】
【0107】
Cellular Solids参照。三角形セルの実施態様では、YSZ膜の場合、E* = 52 GPa、L/t = 68で最大の大きさL = 3.4
mmが得られる。
【0108】
ゆがみが生じる前の大きさが六角形よりも大きい三角形が提供する可能性にもかかわらず、六角形の応力がかかった薄膜の方が好ましいと考えられる。後者は、支持格子面積に対する有効面積の比が、三角形セルのハチの巣構造のものよりも高い。
【0109】
上述の方法に従った応力がかかった薄膜を作製したところ、最高800℃の熱サイクルにかけられた膜の場合、収率が約80%上昇したことを特記する。
【0110】
組成物が特定の要素を有する、含む、もしくは包含すると記載されているか、または過程が特定のステップを有する、含む、もしくは包含すると記載されている本願明細書全体において、本願発明の組成物も、基本的に列挙される成分からなるか、もしくは構成され、本願発明の過程も、基本的に列挙される成分からなるか、もしくは構成されることを意図する。
【0111】
本願発明が作動可能である限り、ステップの順番、または特定の行動を行うための順番は重要ではない。さらに、2つ以上のステップまたは行動を同時に行ってもよい。
【0112】
本願発明は、そのスプリットまたは本質的な特徴から離れなければその他の特定の形式で具体化されてもよい。したがって上述の実施態様は、あらゆる点で具体例であって、本願明細書に記載の発明を制限するものではない。
【0113】
本願明細書に開示される特許文書および科学出版物はそれぞれ、あらゆる目的のために本願明細書に引用を持って援用される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物であって、第1の開口部を決定する支持体と、前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の引張応力がかかった薄膜であって、当該の第1の引張応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分を含有する第1の引張圧力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、前記1の引張圧力がかかった薄膜が、前記第1の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂空間を有する膜材料を含む、
構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体が前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物がさらに、前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の引張応力がかかった薄膜であって、前記薄膜が少なくとも前記支持体の第2の部分を含有する前記第2の応力がかかった薄膜を含み、
当該構造物において、前記第2の引張応力がかかった薄膜が前記膜材料を含み、前記の特徴的な亀裂スペースが前記第2の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記第2の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの10倍よりも小さい、
構造物。
【請求項3】
請求項2に記載の構造物であって、当該構造物において、前記第1と第2の開口部の間の距離が、各開口部の最小の大きさよりも小さい、構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記膜がアレイ状に配置され、前記アレイが複数の応力がかかった薄膜と開口部を含む、構造物。
【請求項5】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記開口部の形状が、六角形、正方形、三角形、および円形からなるグループから選択される、構造物。
【請求項6】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が第1の棚と伸長部を決定し、前記応力がかかった薄膜が前記第1の棚の一部分に接触する、構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定し、前記応力がかかった薄膜が前記第2の棚の一部分に接触する、構造物。
【請求項8】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の特徴的な亀裂スペースが1mm未満である、構造物。
【請求項9】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が電気化学システムに配置される、構造物。
【請求項10】
請求項9に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が固体電解質型燃料電池に配置される、構造物。
【請求項11】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が膜を用いた水素分離システムに配置される、構造物。
【請求項12】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ならびにその酸化物および組み合わせからなるグループから選択された材料を含む、構造物。
【請求項13】
請求項12に記載の構造物であって、前記酸化物がアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタニウム、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジウム、およびその組みあわせからなるグループから選択される、構造物。
【請求項14】
構造物であって、
開口部の大きさが最小の第1の開口部を決定する支持体と、
前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分と接触している第1の応力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、前記第1の圧縮応力がかかった薄膜が膜材料を含み、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記第1の応力がかかった薄膜の厚の比よりも大きく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の厚さの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項15】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記支持体が前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物がさらに、
前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第2の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第2の部分に接触している、第2の圧縮応力がかかった薄膜を含み、
当該構造物において、前記の第2の圧縮応力がかかった薄膜が膜材料を含み、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第2の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚の比よりも大きく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の厚さの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第2の開口部の最小の大きさの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項16】
請求項15に記載の構造物であって、前記構造物において前記第1および第2の開口部の間の距離が各開口部の最小の大きさよりも小さい、構造物。
【請求項17】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記膜がアレイ状に配置され、前記アレイには複数の第1の応力がかかった薄膜と開口部が含まれ、前記アレイのゆがみの臨界縦横比が前記アレイの最小の大きさと前記アレイの有効厚さとの比よりも小さい、構造物。
【請求項18】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が40:1よりも小さい、構造物。
【請求項19】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記開口部の形状が六角形、正方形、三角形および円形からなるグループから選択される、構造物。
【請求項20】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が第1の棚および伸長部を決定し、前記の応力がかかった薄膜が前記第1の棚に一部分に接触する、構造物。
【請求項21】
請求項20に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の前記断面部分が前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定し、前記の応力がかかった薄膜が前記第2の棚の一部分と接触する、構造物。
【請求項22】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の特徴的な亀裂スペースが1mm未満である、構造物。
【請求項23】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の応力がかかった薄膜が電気化学システムに配置される、構造物。
【請求項24】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記応力がかかった薄膜が固体電解質型燃料電池に配置される、構造物。
【請求項25】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、当該構造物において、前記応力がかかった薄膜は膜を用いた水素分離システムに配置される、構造物。
【請求項26】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ならびにその酸化物および組み合わせからなるグループから選択された材料を含む、構造物。
【請求項27】
請求項26に記載の構造物であって、前記酸化物がアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタニウム、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジウム、およびその組みあわせからなるグループから選択される、構造物。
【請求項28】
構造物であって、
開口部の大きさが最小の第1の開口部を決定する支持体と、
前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分と接触している第1の応力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、第1の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜に引張応力がかかっており、前記膜材料には前記第1の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく前記最小の大きさの10倍よりも小さい特徴的な亀裂スペースを有し、第2の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜に圧縮応力がかかっており、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも大きく前記のゆがみの縦横比が前記第1の最小の大きさの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項29】
請求項1、14、または28に記載の構造物を形成する方法であって、当該方法が、
開口部を決定する支持体を形成するステップと、
前記開口部を房部応力がかかった薄膜を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、さらに、
基板を提供するステップであって、当該ステップにおいて前記支持体を形成するステップが少なくとも基板の領域を形成するステップを含み、前記の応力がかかった薄膜が前記支持体と基板の両方に接触する、ステップと、
少なくとも前記基板の一部分を取り除くステップと、
を含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、さらに、
さらなる材料を前記の応力がかかった薄膜上に配置するステップを含む、
方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、当該方法において、前記支持体を形成するステップが、
前記基板上に犠牲層を形成するステップと、
前記基板および前記犠牲層に空洞を決定するステップと、
支持体材料の空洞を少なくとも部分的に充填するステップと、
前記犠牲層の少なくとも一部分を取り除いて前記支持体材料の表面の少なくとも一部分を露出させるステップと、
を含む、
方法。
【請求項1】
構造物であって、第1の開口部を決定する支持体と、前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の引張応力がかかった薄膜であって、当該の第1の引張応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分を含有する第1の引張圧力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、前記1の引張圧力がかかった薄膜が、前記第1の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記の最小の大きさの10倍よりも小さい、特徴的な亀裂空間を有する膜材料を含む、
構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体が前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物がさらに、前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の引張応力がかかった薄膜であって、前記薄膜が少なくとも前記支持体の第2の部分を含有する前記第2の応力がかかった薄膜を含み、
当該構造物において、前記第2の引張応力がかかった薄膜が前記膜材料を含み、前記の特徴的な亀裂スペースが前記第2の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく、前記第2の引張応力がかかった薄膜の最小の大きさの10倍よりも小さい、
構造物。
【請求項3】
請求項2に記載の構造物であって、当該構造物において、前記第1と第2の開口部の間の距離が、各開口部の最小の大きさよりも小さい、構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記膜がアレイ状に配置され、前記アレイが複数の応力がかかった薄膜と開口部を含む、構造物。
【請求項5】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記開口部の形状が、六角形、正方形、三角形、および円形からなるグループから選択される、構造物。
【請求項6】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が第1の棚と伸長部を決定し、前記応力がかかった薄膜が前記第1の棚の一部分に接触する、構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定し、前記応力がかかった薄膜が前記第2の棚の一部分に接触する、構造物。
【請求項8】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の特徴的な亀裂スペースが1mm未満である、構造物。
【請求項9】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が電気化学システムに配置される、構造物。
【請求項10】
請求項9に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が固体電解質型燃料電池に配置される、構造物。
【請求項11】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が膜を用いた水素分離システムに配置される、構造物。
【請求項12】
請求項1に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ならびにその酸化物および組み合わせからなるグループから選択された材料を含む、構造物。
【請求項13】
請求項12に記載の構造物であって、前記酸化物がアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタニウム、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジウム、およびその組みあわせからなるグループから選択される、構造物。
【請求項14】
構造物であって、
開口部の大きさが最小の第1の開口部を決定する支持体と、
前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分と接触している第1の応力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、前記第1の圧縮応力がかかった薄膜が膜材料を含み、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記第1の応力がかかった薄膜の厚の比よりも大きく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の厚さの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項15】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記支持体が前記第1の開口部に隣接する第2の開口部を決定し、前記構造物がさらに、
前記第2の開口部をふさぐように配置された第2の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第2の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第2の部分に接触している、第2の圧縮応力がかかった薄膜を含み、
当該構造物において、前記の第2の圧縮応力がかかった薄膜が膜材料を含み、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第2の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚の比よりも大きく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の厚さの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さく、前記のゆがみの臨界縦横比が前記第2の開口部の最小の大きさの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項16】
請求項15に記載の構造物であって、前記構造物において前記第1および第2の開口部の間の距離が各開口部の最小の大きさよりも小さい、構造物。
【請求項17】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記膜がアレイ状に配置され、前記アレイには複数の第1の応力がかかった薄膜と開口部が含まれ、前記アレイのゆがみの臨界縦横比が前記アレイの最小の大きさと前記アレイの有効厚さとの比よりも小さい、構造物。
【請求項18】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が40:1よりも小さい、構造物。
【請求項19】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記開口部の形状が六角形、正方形、三角形および円形からなるグループから選択される、構造物。
【請求項20】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の断面部分が第1の棚および伸長部を決定し、前記の応力がかかった薄膜が前記第1の棚に一部分に接触する、構造物。
【請求項21】
請求項20に記載の構造物であって、当該構造物において、前記支持体の前記断面部分が前記第1の棚に平行に配置された第2の棚を決定し、前記の応力がかかった薄膜が前記第2の棚の一部分と接触する、構造物。
【請求項22】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の特徴的な亀裂スペースが1mm未満である、構造物。
【請求項23】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記の応力がかかった薄膜が電気化学システムに配置される、構造物。
【請求項24】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、前記応力がかかった薄膜が固体電解質型燃料電池に配置される、構造物。
【請求項25】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において、当該構造物において、前記応力がかかった薄膜は膜を用いた水素分離システムに配置される、構造物。
【請求項26】
請求項14に記載の構造物であって、当該構造物において前記の応力がかかった薄膜が、銅、ニッケル、パラジウム、白金、レニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ならびにその酸化物および組み合わせからなるグループから選択された材料を含む、構造物。
【請求項27】
請求項26に記載の構造物であって、前記酸化物がアルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ストロンチウム、チタニウム、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウム、プラセオジウム、およびその組みあわせからなるグループから選択される、構造物。
【請求項28】
構造物であって、
開口部の大きさが最小の第1の開口部を決定する支持体と、
前記第1の開口部をふさぐように配置された第1の圧縮応力がかかった薄膜であって、前記第1の応力がかかった薄膜が少なくとも前記支持体の第1の部分と接触している第1の応力がかかった薄膜と、を含み、
当該構造物において、第1の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜に引張応力がかかっており、前記膜材料には前記第1の応力がかかった薄膜の最小の大きさの1/2よりも大きく前記最小の大きさの10倍よりも小さい特徴的な亀裂スペースを有し、第2の作動条件において、前記第1の応力がかかった薄膜に圧縮応力がかかっており、前記膜材料のゆがみの臨界縦横比が前記第1の開口部の最小の大きさの1/2と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも大きく前記のゆがみの縦横比が前記第1の最小の大きさの10倍と前記応力がかかった薄膜の厚さの比よりも小さい、
構造物。
【請求項29】
請求項1、14、または28に記載の構造物を形成する方法であって、当該方法が、
開口部を決定する支持体を形成するステップと、
前記開口部を房部応力がかかった薄膜を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、さらに、
基板を提供するステップであって、当該ステップにおいて前記支持体を形成するステップが少なくとも基板の領域を形成するステップを含み、前記の応力がかかった薄膜が前記支持体と基板の両方に接触する、ステップと、
少なくとも前記基板の一部分を取り除くステップと、
を含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、さらに、
さらなる材料を前記の応力がかかった薄膜上に配置するステップを含む、
方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、当該方法において、前記支持体を形成するステップが、
前記基板上に犠牲層を形成するステップと、
前記基板および前記犠牲層に空洞を決定するステップと、
支持体材料の空洞を少なくとも部分的に充填するステップと、
前記犠牲層の少なくとも一部分を取り除いて前記支持体材料の表面の少なくとも一部分を露出させるステップと、
を含む、
方法。
【図1】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図2】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図3】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図4】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図5】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図6】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図7】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図8】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図9】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図10】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図11】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図12】本願発明の実施態様の断面の概略図。
【図13】図13aおよび図13bは、電気化学システムおよび固体電解質型燃料電池で使用される本願発明の実施態様の概略図。
【図14】水素分離システムで用いられる本願発明の実施態様の概略図。 図面は縮尺されたものである必要はなく、一般に本願発明の原理の図説を強調したものである。本願発明の利点は、付属する図面とともに説明を参照することによってよりよく理解できる。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図2】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図3】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図4】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図5】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図6】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図7】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図8】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図9】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図10】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図11】本願発明の実施態様の制作物の断面および上面の概略図、ならびにそこで使用されたマスクの上面の概略図。
【図12】本願発明の実施態様の断面の概略図。
【図13】図13aおよび図13bは、電気化学システムおよび固体電解質型燃料電池で使用される本願発明の実施態様の概略図。
【図14】水素分離システムで用いられる本願発明の実施態様の概略図。 図面は縮尺されたものである必要はなく、一般に本願発明の原理の図説を強調したものである。本願発明の利点は、付属する図面とともに説明を参照することによってよりよく理解できる。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公表番号】特表2007−506549(P2007−506549A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528173(P2006−528173)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031283
【国際公開番号】WO2005/030376
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506095951)リリピューシャン システムズ, インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】LILLIPUTIAN SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】3−HGill Street, Suite 200, Woburn, MA 01801 (US).
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031283
【国際公開番号】WO2005/030376
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506095951)リリピューシャン システムズ, インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】LILLIPUTIAN SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】3−HGill Street, Suite 200, Woburn, MA 01801 (US).
【Fターム(参考)】
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