説明

応力腐食割れ形成装置

【課題】実際稼働中の原電または装置産業の設備で発生する応力腐食割れを、原電で実際使用している配管材に原電と類似な環境下で直接形成させ、割れの進展速度を予測することにより、実際原電または装置産業における危険度を減少させるとともに非破壊検査の技量検証に対する実効性を保障することが可能な応力腐食割れ形成装置の提供。
【解決手段】管型試片10の一側の外周面に円周方向に備えられる伝導部材、および前記伝導部材に隣接して配置された加熱コイルを備え、管の内部に蒸気圧を発生させる加熱ユニット20と、管型試片の内部に発生する蒸気圧が漏れないように、開放された両側を密閉させる両端拘束ユニット30と、加熱ユニットおよび両端拘束ユニットを制御する制御ユニットとを含んでなる、応力腐食割れ形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に原子力発電所の原子炉ヘッドまたは蒸気発生器(Steam
Generator:SG)などの装置に用いられる母材、溶接部(同種、異種)から発生する応力腐食割れ(Stress corrosion Crack)を形成させるための応力腐食割れ形成装置に係り、さらに詳しくは、実際稼働中の原電または装置産業の設備で発生する応力腐食割れを、原電で実際使用している配管材に原電と類似な環境下で直接形成させて割れの進展速度を予測することにより、実際原電または装置産業における危険度を減少させるとともに非破壊検査の技量検証に対する実効性を保障することが可能な応力腐食割れ形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、実際原子力発電所から見出される応力腐食割れの発生条件と類似な環境条件の実験装置を構成することに実質的な目的があり、蒸気発生器や原子炉圧力容器などの1次系統から発生する応力腐食割れの場合、韓国内の模写技術の不足により放射能漏れの危険性を持っている。
【0003】
したがって、原子力発電所の安全性およびNDT技術の信頼性を確保するためには、稼働中の原電から発生する実際欠陥と類似な自然割れを製作することが可能な技術の確保が非常に重要な実情である。
【0004】
このために、実際原電構造物における応力腐食割れの発生条件を模写することが可能な実験装置を構成するための本発明は、原電の信頼性および安全性を向上させ、稼働中に欠陥を診断することが可能な精密診断技術を高度化することができる。
【0005】
すなわち、原子力発電所で実際使用する配管材に対する応力腐食割れの模擬割れ製作および精密診断の源泉技術を確保すると、稼働中の検査技術を発展させると同時に、原子力構造物の安全規制および補修基準の資料として活用することができる。
【0006】
試片に応力腐食割れを形成するための方式の殆どは、次の試験方法、すなわち試片をC−ring、U−バンドの形状にしてオートクレーブに装着した後、適切な引張または圧力応力を加えた状態で腐食環境の設定、高温高圧の環境で割れを形成する方法によって応力腐食割れを製作していた。
【0007】
ところが、このような従来の応力腐食割れ形成方式によって製作された割れは、実際稼働中の原電または装置産業の設備で使用する配管材に発生するのではなく、模擬試験片を使用するため、実際割れとは大きく異なるので、非破壊検査の技量検証に対する実効性を確実に保障することができないという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するために創出されたもので、その目的とするところは、オートクレーブを用いてASTMなどの規格に従って製作された試験片を使用するのではなく、実際稼動中の原電または装置産業の設備で発生する応力腐食割れを、実際使用している配管材に、直接加熱によって配管内部の腐食環境で発生する蒸気圧を用いて原電または装置産業と類似な環境下で直接形成させ、割れの進展速度を予測することにより、実際原電または装置産業における危険度を減少させるとともに非破壊検査の技量検証に対する実効性を保障することが可能な応力腐食割れ形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、管型試片の一側の外周面に円周方向に設けられる伝導部材、および前記伝導部材に隣接して配置された加熱コイルを備え、管の内部に蒸気圧を発生させる加熱ユニットと、前記管型試片の内部に発生する蒸気圧が漏れないように、開放された両側を密閉させる両端拘束ユニットと、前記加熱ユニットおよび前記両端拘束ユニットを制御する制御ユニットとを含んでなることを特徴とする、応力腐食割れ形成装置を提供する。
【0010】
また、前記加熱ユニットは、印加された高周波電流によって磁場を形成させて発熱を誘導する誘導加熱コイル、または電源の供給を受けて発熱する発熱線を備えた直接加熱コイルであることが好ましい。
【0011】
また、前記両端拘束ユニットは、前記管型試片の両端を遮蔽させるアッパープレートおよびロアープレートと、前記アッパープレートと前記ロアープレート間の間隔を調節するもので、油空圧を作動圧とする油空圧シリンダー、または電源供給によってロッドを出没させるアクチュエータとして提供されるテンションバーとを含んでなることが好ましい。
【0012】
また、前記制御ユニットは、前記管型試片の内部に設けられて蒸気温度を測定する蒸気温度測定センサー、腐食液の温度を測定する腐食液温度測定センサー、および管型試片の内部圧力を測定する圧力測定センサーに電気的に連結されて検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて選択的に前記加熱ユニットと前記両端拘束ユニットに制御信号を出力することが好ましい。
【0013】
また、前記圧力測定センサーの使用における正確性と安全性を確保するために、前記内部試片の内部蒸気の温度を冷却させることが可能な要素として、ロアープレート側に連結されて一定の長さ以上を通過することにより水の状態に相変態させて蒸気の温度を低める耐腐食性材質の単純コイルを備えた冷却ユニットが構成されることが好ましい。
【0014】
本発明の特徴および利点は、添付図面に基づいた次の詳細な説明からさらに明白になるであろう。これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的で辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者がその自分の発明を最善の方法によって説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合される意味と概念で解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る応力腐食割れ形成装置は、実際稼動中の原電または装置産業の設備で発生する応力腐食割れを、実際原電環境と類似な条件で使用されている管型試片に蒸気圧を用いて形成させることにより、実際発生する応力腐食割れの特性分析に対する正確度を高めることができ、その結果、原電または装置産業の信頼度を向上させ、非破壊検査の技量検証に対する実効性を保障することができるので、産業上非常に有用な効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上述した本発明の目的、特徴および利点は次の詳細な説明によってさらに明確になるであろう。
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例に係る応力腐食割れ形成装置について詳細に説明する。
【0018】
まず、図面中の同一の構成要素または部品は出来る限り同一の参照符号で示していることに留意すべきである。本発明を説明するにおいて、関連した公知の機能或いは構成に対する具体的な説明は本発明の要旨を乱さないようにするために省略する。
【0019】
図1は本発明に係る応力腐食割れ形成装置の加熱ユニットの構成を示す部分斜視図、図2は本発明に係る応力腐食割れ形成装置の主要構成を説明するための構成図である。図3は本発明の応力腐食割れ形成装置の動作を説明するための模式図、図4は本発明の加熱ユニットの構成を説明するための模式図、図5は本発明の管型試片に形成されるノッチの位置およびパターンを説明するための図である。
【0020】
図示のように、本発明の好適な一実施例に係る応力腐食割れ形成装置1は、管状からなる試片(以下、「管型試片10」という)に隣接して配置された直接加熱および誘導加熱コイルを備えた加熱ユニット20と、加熱によって発生した蒸気圧を維持させるための両端拘束ユニット30と、蒸気圧を冷却させるための冷却ユニットおよび圧力測定のための測定ユニットとを含んでなる。
【0021】
加熱ユニット20は、管型試片10の一側の外周面に所定の熱を印加することにより、管型試片10の応力腐食割れの形成に要求される温度および圧力の印加環境を造成するものである。ここで、前記管型試片10は、例えばSTS
304、STS 316、STS321、STS 347、STS 308、STS 309、Inconel 600、Inconel 690、Inconel 800、Inconel
X750、Inconel 718などのように、実際原電または装置産業の配管に用いられる材質からなり、原電で使用される同種、異種溶接部を含む。
【0022】
一方、前記加熱ユニット20は、管型試片10の一側の外周面に円周方向に取り付けられた磁性体材質の伝導部材、およびこの伝導部材から離隔した誘導コイルまたは直接加熱が可能な加熱コイルを備える。
【0023】
ここで、前記誘導コイルには外部の高周波電流供給部が連結され、高周波電流供給部から誘導コイルに高周波電流が印加されると、前記誘導コイルには高周波磁場が形成され、この高周波磁場によって、誘導コイルに隣接する伝導部材側には渦電流の損失またはヒステリシス損失により熱が発生し、その結果、伝導部材が取り付けられている管型試片10の一側の外周面は所定の温度で加熱される。
【0024】
このような方式の誘導コイルを用いた発熱構造は公知の多様な技術によって実現されても構わないので、詳細な説明は省略する。
【0025】
前記加熱コイルに一般な220V交流を流すことにより、コイルが巻き付けられている管型試片10の一側の外周面は所定の温度で加熱される。このような加熱コイルの構成は公知の技術によってもよい。
【0026】
一方、前記管型試片10の内径面には、旋盤加工などの機械的加工および化学的加工などによって、応力腐食割れの形成を所望する位置に、応力腐食割れの形成を助けるためのノッチ(notch)nが形成できる。前記ノッチnの幅は0.5〜50mm以内にし、前記ノッチnの形状は図5の(a)、(b)、(c)に示すように断面が「U字形状」、「コの字形状」、「V字形状」などの様々な形にすることができる。このように管型試片10の内径面に一定の部分ノッチnを形成した場合は、ノッチのない場合と比較して、応力腐食割れの発生位置を制御し且つ応力腐食割れの発生時間を短縮させることができる。
【0027】
両端拘束ユニット30は、前記加熱ユニット20によって管型試片10の内部で発生する蒸気圧を安定的に維持させるためのものである。このような両端拘束ユニット30は、前記管型試片10の両端部を安定的に遮蔽させて内部の蒸気圧を安定的に維持させる構造的な特徴を持つものであれば、多様な形態の部材が適用できるであろう。
【0028】
本発明では、前記両端拘束ユニット30の好適な実施例として、図示のように、前記管型試片10の両端部に備えられるアッパープレート31、ロアープレート32、並びにこれらのアッパープレート31とロアープレート32とを弾力的に連結するテンションバー33から構成されている。
【0029】
この際、前記アッパープレート31と前記ロアープレート32は、前記管型試片10の両端にそれぞれ機械的に締結されることにより、或いは油・空圧機器などを用いて締結されることにより、前記管型試片10の両端を堅く拘束させることができる。このような締結方式は公知の多様な技術によって実施できる。
【0030】
冷却ユニット50は、前記管型試片10の内部蒸気圧の温度を冷却させるための要素であって、圧力測定センサーの使用における正確性および安全性を確保するように前記内部試片の内部蒸気の温度を冷却させるためにロアープレート32側に連結され、蒸気状態から水状態への相変態が起こるように、温度を低めることが可能な一定の長さ以上を蒸気が通過することにより温度を低める、耐腐食性材質の単純コイルを備えた冷却ユニットから構成される。
【0031】
制御ユニット40は、上述した加熱ユニット20を用いて管型試片をON/OFF制御によって速く加熱させ、施行しようとする圧力に到達する前にPWM制御に変換させ、加熱された管型試片の内部腐食液の温度増加により発生する蒸気の温度を制御する要素であって、蒸気温度を約10℃以下に制御することにより、蒸気圧を170〜180barに持続的に維持させることができるように助ける構成を持つ。
【0032】
このような制御ユニット40は、図6に示すように、前記管型試片10の内部に設けられて蒸気温度を測定する蒸気温度測定センサー41と、前記管型試片10内の腐食液の温度を測定する腐食液温度測定センサー43と、前記管型試片10の内部圧力を測定する圧力測定センサー45と、圧力測定センサー45に電気的に連結されて検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて選択的に前記加熱ユニット20に制御信号を出力するマイコンまたはコンピュータなどからなる制御器47とを含んでなる。
【0033】
ここで、前記制御ユニット40を構成する各センサーと制御器は公知の技術によって実施できるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
以下、このように構成される応力腐食割れ形成装置を用いた実験について説明する。
【0035】
[実験例1]
本実験に用いられた試片は、原電の構造材として広く用いられるSTS 304(0.D:89mm、t:7.7mm、降伏強度:41.8kg/mm)を適用した。
【0036】
この試片は、長さLを500mmとし、割れの発生位置を制御するために人為的なノッチを試片の円周方向の位置に対して0.5mmの深さに旋盤加工した。
【0037】
応力腐食割れの発生条件を作るために、管型試片10の内部に2moLのNaOHと1moLのNa2Sを仕込んだ後、加熱ユニット20と制御ユニット40を用いて、実際原電に応力腐食割れが発生する条件である温度350℃を維持した。
【0038】
また、350℃における管型試片10に対して降伏応力値以上を与えるために、170〜180barを持続的に維持させた。このように実験装置に対する維持を450hr行った後、割れの形成部位を切断し、走査電子顕微鏡SEMとEDSを用いて、破断された割れ部位を観察した。
【0039】
図7では本発明に係る管型試片10における、応力が集中し且つ腐食液が接触する部位に現れた管型試片の長手方向への割れを示す。図8および図9は割れが試片の外表面まで伝播されて貫通した部分のEDSおよびSEM写真を示す。すなわち、図8および図9におけるEDS分析の結果、Na
原子数(atomic)%が上部から下部に行くほど低くなることを確認することができる。これは応力、および腐食環境で発生した蒸気によって管型試片の上部位置で先に割れが発生したものと判断される。
【0040】
一方、本発明は、適用部位として管型試片を例としたが、記載された実施例に限定されるものではなく、適用部位を変更して使用することが可能である。本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な修正および変形を加え得るのは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明なことである。したがって、それらの変形例または修正例も本発明の特許請求の範囲に属すると理解すべきであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る応力腐食割れ形成装置の加熱ユニットの構成を示す部分斜視図である。
【図2】本発明に係る応力腐食割れ形成装置の主要構成を説明するための構成図である。
【図3】本発明の応力腐食割れ形成装置の動作を説明するための模式図である。
【図4】本発明の加熱ユニットの構成を説明するための模式図である。
【図5】本発明の管型試片に形成されるノッチの位置およびパターンを説明するための図である。
【図6】本発明の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図7】本発明の実施例によって得た応力腐食割れをSEMで撮影した写真である。
【図8】貫通した管型試片の最も上部位置におけるEDS分析結果である。
【図9】貫通した管型試片の下部位置におけるEDS分析結果である。
【符号の説明】
【0042】
1 応力腐食割れ形成装置
10 管型試片
20 加熱ユニット
30 両端拘束ユニット
40 制御ユニット
41 蒸気温度測定センサー
43 腐食液温度測定センサー
45 圧力測定センサー
47 制御器
50 冷却ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管型試片の一側の外周面に円周方向に備えられる伝導部材、および前記伝導部材に隣接して配置された加熱コイルを備え、管の内部に蒸気圧を発生させる加熱ユニットと、
前記管型試片の内部に発生する蒸気圧が漏れないように、開放された両側を密閉させる両端拘束ユニットと、
前記加熱ユニットおよび前記両端拘束ユニットを制御する制御ユニットと、を含んでなることを特徴とする、応力腐食割れ形成装置。
【請求項2】
前記加熱ユニットは、印加された高周波電流によって磁場を形成させて発熱を誘導する誘導加熱コイル、または電源の供給を受けて発熱する発熱線を備えた直接加熱コイルであることを特徴とする、請求項1に記載の応力腐食割れ形成装置。
【請求項3】
前記両端拘束ユニットは、
前記管型試片の両端を遮蔽させるアッパープレートおよびロアープレートと、
前記アッパープレートと前記ロアープレート間の間隔を調節するもので、油空圧を作動圧とする油空圧シリンダー、または電源供給によってロッドを出没させるアクチュエータとして提供されるテンションバーとを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の応力腐食割れ形成装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記管型試片の内部に設けられて蒸気温度を測定する蒸気温度測定センサーと、腐食液の温度を測定する腐食液温度測定センサーと、前記管型試片の内部圧力を測定する圧力測定センサーと、前記圧力測定センサーに電気的に連結されて検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて選択的に前記加熱ユニットに制御信号を出力する制御器とを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の応力腐食割れ形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−91543(P2010−91543A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296960(P2008−296960)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508345519)インダストリー−ユニバーシティー コオペレーション ファウンデーション ハンクック アビエーション ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】