説明

急性心不全の治療のための方法および組成物

本開示は、治療の必要な被験体に治療的有効量のAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することにより、急性心不全を治療するための方法および組成物を提供する。本発明によれば、治療の必要な患者にAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することにより、急性心不全患者のための退院から再入院までの時間を増加させる方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2008年10月3日に出願された米国特許仮出願第61/102,769号に対し優先権を主張し、この出願の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
心不全は、著しい罹患率および死亡率を引き起こす多くの危険因子および心血管疾患の最終共通路を表す。全世界にわたる心不全率の増加は多大な公衆衛生問題を表す。
【0003】
心不全に起因する症例および死亡の数は、同じ期間にわたる治療の進歩および他の主な心血管疾患の減少にかかわらず増加している。現在、米国の520万人を超える患者が心不全を患い、毎年、550,000を超えるものが診断されている。毎年、心不全は12〜1500万の外来診療、650万の在院日数となっており、57,000人を超える患者が、心不全が主原因で死亡している。
【0004】
心不全は主に高齢者の病状であり、よって、広く認識されている「高齢化社会」はまた、心不全の発生率の増加の一因である。心不全の発生率は65歳以降では1000人に10人に到達し、心不全を患う入院患者の約80%が65歳を超えている。心不全は最も一般的なメディケア診断関連群(すなわち、退院診断)であり、より多くのメディケアドルが他のいずれの診断よりも心不全の診断および治療に費やされている。さらに、慢性うっ血性心不全を患う患者は、約50%の5年死亡率である。
【0005】
慢性うっ血性心不全は、心臓の血液拍出能の進行性消失により特徴付けられる。冠動脈疾患、心発作、心臓組織の炎症および心臓弁の疾患、ならびに感染症を含む様々な疾患がうっ血性心不全を引き起こし得る。衰弱した心筋では、心臓が各拍動で心室から循環へ血液を十分空にすることができないので、しばしば、心拍出が悪くなる。うっ血性心不全症状は、息切れ、浮腫、または体液貯留、および下肢および足の腫脹を含む。心臓が酸素に富む血液を体組織に分配または十分に拍出することできないことに起因するうっ血性心不全の症状は疲労および脱力ならびに食欲不振を含む。疾患が進行するにつれ、これらの症状は患者の生活の質に深刻な影響を与える可能性があり、そのため、単純作業、例えば部屋の反対側に歩いていくなどを実施する能力さえも制限される。喫煙、高コレステロール、高血圧、糖尿病および肥満などのいくつかの心臓危険因子は、生活様式の変化により制御することができるが、CHF患者のほとんどが、これらの疾患の管理を助ける追加の治療を必要としている。
【0006】
うっ血性心不全は、その多くの原因および病態生理学的起源の複雑さのために、一疾患よりも症候群として特徴付けられる。この理由のために、CHFの治療のための現在の薬剤は最適以下であり、それらには、利尿剤、変力物質、血管拡張薬、およびβ遮断薬が含まれ、それらは一般にCHFの一因である様々な経路の単一の構成要素に焦点を当てている。利尿剤は腎臓が身体から過剰の流体を除去するのを助け、これにより、血液容積および心臓の作業負荷が減少する。変力物質は心臓の拍出作用を強化する。血管拡張薬、例えばACE阻害剤は末梢動脈を拡張させ、血流をより容易にする。β遮断薬はアドレナリンの効果を遮断することにより心拍数を遅くし、血圧を減少させる。
【0007】
多くのうっ血性心不全患者は、医学療法を続けているにもかかわらず、最終的には症状の急激な低下および悪化、または代償不全を経験し、病院内で緊急治療を必要とする。この病状は急性非代謝性心不全(ADHFまたは急性心不全)と呼ばれる。悪化するうっ血性心不全に対する入院数は、1979年で約400,000から2005年で約110万と過去30年で著しく上昇した。急性心不全はメディケア患者の中で、最多入院原因でもある。
【0008】
入院となる急性非代償性心不全は、うっ血性心不全の進行の自然経過の根本的な変化を示す。この理由は明確ではないが、既存の病態生理学的過程の激化または完全に新しい病態生理学的過程が関与している可能性があり、または症状の悪化を制御するために与えられている従来の治療の有害効果を反映している可能性がある。急性心不全患者に対する入院後の年間死亡率は、入院していない患者よりも著しく高く、心不全入院は死亡率に対し最も重要な危険因子の1つである。さらに、これらの患者は特に再入院する傾向があり、再入院率は退院後6ヶ月以内で50%である。
【0009】
ADHFのための治療戦略は、主に経験的であり、完全には理解されていない症候群の複雑な病態生理により制限されている。さらに、治療戦略はADHF患者間で臨床症状が不均一であるため複雑になっている。もともとは、心不全は、患者を収縮機能障害と規定する減少した左室駆出率(一般にLVEF<35%)と関連する。しかしながら、過去10年の間、拡張機能障害により特徴づけられる、LV駆出率が保持された急性心不全患者の群が著しく増加しているとの認識が増えている。このADHF患者群は、全てのADHF患者の約半分を表すと考えられる。LV駆出率が保持された患者の大部分が女性および糖尿病患者である。
【0010】
ADHFに対する標準治療レジメンは、症状を改善するための利尿剤、血管拡張薬、および変力剤を含むが、いずれの治療もこれらの患者の治療成績(死亡率および再入院)の改善を示していない。実際には、場合によっては、これらの治療は予後を悪化させることが示されている。例えば、変力剤は左室駆出率を改善することにより証明されているように収縮機能を改善するが、心筋酸素需要(MVO)の増加により示されているように損傷を受けた心臓をより激しく機能させるため、長期治療成績の悪化の一因となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、患者のための治療成績を改善するADHFの治療を開示する。理論に縛られないが、GP−531(5−アミノ−1−β−D−(5−ベンジルアミノ-5−デオキシ−1−β−D−リボフラノシル)イミダゾール−4カルボキサミド)またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含むがそれらに限定されないAICAリボシド類似体を用いた治療は、心臓の細胞エネルギーおよびその微小循環に対処すると考えられている。AICAリボシド類似体を用いた治療は全ての範囲のADHF患者の要求に対処し、左室駆出率が減少した患者だけでなく、左室駆出率が保持された患者に対しても治療成績を改善する。
【0012】
特に、本出願は一般に、急性心不全の治療におけるAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用に関する。
【0013】
1つの態様では、本出願は式I
【化1】

またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグのAICAリボシド類似体を治療の必要な患者に投与することを含み、式中、Rは水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたシクロアルキルまたは任意で置換されたビシクロアルキルからなる群より選択され、Rは水素または任意で置換された低級アルキルであり、Rは水素または−SWであり、ここで、Wは水素、任意で置換された低級アルキル、または任意で置換されたフェニルであり、RおよびRは独立して水素、任意で置換された低級アルキル、またはアシルであり、Rは水素、ヒドロキシ、リン酸エステル、−OSONH、ハロゲン、−OCOV、−SV、−SOV、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は独立して水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから選択され、ただし、R、R、およびRが水素であり、RおよびRが水素、アシルまたはヒドロカルボキシカルボニルである場合、Rはヒドロキシ、アシルオキシまたはヒドロカルビルオキシカルボキシのいずれかでもない、急性心不全を治療するための方法に関する。
【0014】
別の態様では、本出願は、患者に式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む急性心不全患者のための退院から再入院までの時間を増加させる方法に関する。
【0015】
別の態様では、本出願は、患者に式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む急性心不全患者における心臓の包括的な心臓機能を改善するための方法に関する。
【0016】
参照による組み入れ
本明細書で言及した全ての出版物、特許および特許出願は参照により、各出版物、特許または特許出願がそれぞれ、特定的にかつ個々に参照により組み込まれるように示されている場合と同じ程度まで本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を説明する下記詳細な説明、および添付図面を参照することにより、本発明の特徴および利点の良好な理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】群I(30μg/kg/分、100μg/kg/分または300μg/kg/分でGP−531酒石酸塩投与)の被験体が、用量依存様式で、ESVの著しい減少およびLVEFの増加を有することを示す左心室(LV)収縮終期容積(mLで表したESV)およびLV駆出率(%で表したLVEF)の棒グラフである。
【図2】群II(3μg/kg/分、10μg/kg/分または30μg/kg/分でGP−531酒石酸塩投与)の被験体が、用量依存様式で、LVEFの増加を有することを示すLVEF(%)の棒グラフである。
【図3】ボーラス注入(700μg/kg)としてのGP−531酒石酸塩、続くGP−531酒石酸塩の3時間の一定注入(10μg/kg/分)で処置された被験体が、LVEFの増加を示したことを示すLVEF(%)の棒グラフである。
【図4】GP−531酒石酸塩の6時間の一定注入(10μg/kg/分)で処置された被験体が、LVEFの増加を示したことを示すLVEF(%)の棒グラフである。
【図5】ベースラインおよびGP−531酒石酸塩の投与(10μg/kg/分)後6時間での典型的な圧力−容積ループのグラフである。
【図6】等モル用量(20mg/kg)のGP−531酒石酸塩および式Va塩酸塩の化合物の経口投与後のラットにおけるGP−531の平均血漿濃度のグラフである。
【図7】等モル用量(20mg/kg)のGP−531酒石酸塩および式Va塩酸塩の化合物の経口投与後のサルにおけるGP−531の平均血漿濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
心臓は、その収縮および拡張機械的機能を支持するためにアデノシン三リン酸(ATP)の形態で相当量の化学エネルギーを必要とする。十分な心臓エネルギーを生成することができないと、心臓の機械的故障が引き起こされる。主なATP代謝産物である内因性アデノシンのレベル上昇が心不全患者において識別されており、心不全における正味のATP異化の進行が示唆される。正味のATP異性化は一般に、酸素欠乏(例えば、組織低酸素症)、免疫活性化、神経ホルモン活性化および炎症を含むがそれらに限定されない刺激により引き起こされる細胞ストレス条件下で起こる。
【0020】
アデノシンはしばしば、「報復的代謝産物」と呼ばれ、正味のATPの異化を引き起こす細胞ストレス条件の複数の経路に対処する内因性心保護物質として作用する。内因性アデノシンは虚血細胞毒性傷害の設定および心不全における天然の保護剤である。アデノシンは正常心筋中に少量存在し、高エネルギーホスフェート(ATP、ADP、およびAMP)の連続分解による細胞ストレスの症状発現中に一時的に増加する。急激な細胞エネルギー使用の過程で、例えば、発作機能活動、不整脈または血流の減少により引き起こされる病状、例えば脳卒中および心発作中、ATP異化によりアデノシンおよびイノシンが生成する。
【0021】
アデノシンの生体組織レベルは、心筋細胞、内皮、好中球および他の細胞型によるアデノシンの産生および放出により調節される。アデノシンは内皮、筋細胞または好中球上の特異的なG−タンパク質結合プリン(アデノシン)受容体と相互作用し、一酸化窒素(NO)の応答よく似ている広範囲の生理応答を誘発する。特異的なアデノシン受容体の活性化から得られる生理的効果は典型的には、アデニル酸シクラーゼ(G)を刺激しcAMPレベルを増加させることにより(A受容体)、またはアデニル酸シクラーゼ(Gi)を阻害し、cAMPレベルを減少させることにより(AおよびA受容体)伝達される。アデノシンの生理的に多様な効果は、2〜3例挙げると、G−タンパク質結合受容体および受容体後エフェクター、例えばKATPチャネル、プロテインキナーゼC(PKC)活性、ホスファチジルイノシトール−3(PI−3)キナーゼ、一酸化窒素シンターゼ、カリウムチャネルおよびナトリウム−水素交換(NHE)系に対する様々な効果と関連する。そのため、アデノシンは広範囲の効果を、心外傷に関連する主構成要素(好中球、内皮)およびコンパートメント(血管内、間質内、筋細胞)に及ぼす。
【0022】
アデノシンはまた、好中球機能の強力な阻害剤である。このため、血小板と好中球との間での協働的活性化は、筋細胞および内皮細胞への細胞ストレスを引き起こす増幅活性化に至るが、内因性アデノシンにより弱められ得る。長期冠動脈閉塞後の再灌流は、心内膜下で始まり、閉塞時間と共に外膜下まで波面パターンで広がる、危険領域内での壊死を引き起こす。前の研究では、アデノシンは(a)アデノシンが再灌流の発生時に投与された場合長期的に梗塞を減少させ(阻害対遅延)、これにより、再灌流期間を適した治療時間点として識別し、(b)危険領域での好中球の蓄積を阻害し、または少なくとも毛細血管の閉塞を減少させ、(c)内皮損傷を減少させ、(d)収縮不全に至る再灌流損傷の複雑な過程を減少させることができることが示唆されている。
【0023】
心不全では、内因性アデノシン放出は、例えばATPの分解中に起こるが、一般に、細胞ストレスの様々な刺激を克服し、心臓の機械的機能を改善するには不十分である。
【0024】
心不全患者の心臓の機械的機能を改善する1つのアプローチは、心臓エネルギー代謝を改善することを目的として、内因性アデノシンレベルを補充することである。別のアプローチはATPを保持し、または増加させることにより心臓エネルギー代謝を改善することである。
【0025】
細胞外アデノシン濃度を増加させ、またはATPを保持もしくは増加させる1つの方法は、治療的有効量の、細胞外アデノシンを増加させる作用物質、例えばアデノシン制御剤(「ARA」)の投与である。アデノシン制御剤は、アデノシン異化の阻害およびアデノシン組織濃度の増強に関連する。アデノシン制御剤、例えば、アカデシン(5−アミノ−4−イミダゾールカルボキサミドリボシド、AICAリボシド)の投与により、アデノシン組織濃度が増強され、これにより、微小循環機能が改善され、心筋損傷が減少する。ARAはATP異化条件下においてのみ内因性アデノシンの局所濃度を増強させ、正常なATP代謝を受ける組織においては薬理学的に沈黙しており、ARAは血行動態を変化させないことが示されている。アカデシンはプリンヌクレオシド類似体であるが、その代謝経路はイノシン一リン酸(IMP)を介し最終的には尿酸となり、アカデシン投与の1つの副作用は、より高いまたは長期の投与での、望ましくない尿酸および結晶尿の蓄積である。
【0026】
定義
本明細書で別記しない限り、使用した用語の定義は有機合成および薬学の分野で使用される標準定義である。
【0027】
本明細書では、「心不全」は、心臓の構造または機能に関連する問題が、身体要求を満たすのに十分な血流を供給する心臓の能力を害する病状を示す。
【0028】
本明細書では、「慢性心不全」という用語は、様々な代償機構が働き、疾患を平衡状態にするほど徐々に進行する心不全の症例を意味する。
【0029】
本明細書では、「急性心不全」または「急性慢性心不全」は、突然発症した心不全、ならびに、既知の慢性心疾患を有する患者が突然悪化症状を発症し、入院を必要とするエピソードを示す、急性の「憎悪」または「非代償性」心不全(「ADHF」)の両方を示す。このように、急性心不全患者は、医学療法を続けているにもかかわらず症状の低下および悪化を経験し、入院を必要とする慢性心不全患者、ならびに前に急性心不全と診断されていない(すなわち、突然発症した心不全で入院した)入院患者を含む。急性心不全患者に対しては、治療成績、例えば退院後死亡率または再入院を改善することが示されている治療はなく、症状を緩和するいくつかの治療は予後を悪化させると考えられている。入院後、急性心不全患者は慢性心不全患者とは異なる予後を有し、そのため、この考察のために、退院後であっても、心不全患者は「急性心不全」患者と考えられるが、すぐに入院を必要としているわけではない。急性心不全による合併症の一般的な症状としては、肺うっ血による呼吸困難または低心拍出量による心原性ショック、易疲労性(運動不耐性)、末梢性浮腫、全身浮腫(明白な全身性浮腫)、夜間多尿(夜間頻尿)、徐脈、心ブロック、高血圧、眩暈、湿疹、糖尿病、乏尿または無尿、低カリウム血症、気管支痙攣、冷汗、および喘息挙げられるが、それらに限定されない。
【0030】
本明細書では、「心血管イベント」は、心筋梗塞、不安定狭心症、心血栓、蘇生された心停止、または心臓死を示す。
【0031】
左室駆出率(「LVEF」)は、左心室の収縮機能の測定値を示す。駆出率は各心拍動で左心室から駆出される血液の割合である。50%のLVEFは左心室が収縮するたびにその容積の半分を駆出することを示す。患者によっては、正常LVEFは50%以上であり、一般にLVEF>40%は「駆出率が保持されている」と考えられる。例えば、約35%以下にLVEFが減少すると、心筋症が存在することが示される。
【0032】
「LV機械的効率」という表現は、どのくらいの効率で左心室がポンプとして働くかの測定値である。この状況での効率は、拍出のために心臓が使用するエネルギー生成であり、心筋酸素消費およびLV力発生、すなわちLVが収縮期中にその血液量を駆出する力として定量化される。
【0033】
本明細書では、「包括的な心臓機能」という表現は全体としての心臓の機能全てを示し、例えば、心臓が血液を拍出する有効性または効率を示す。包括的なLV機能は左室の機能全体を示す。全ての場合において、全体の機能は、収縮機能および拡張機能の両方を意味する。LV収縮機能の血行動態評価は、LVEF、心拍出量、1回拍出量、左室内径短縮率(fractional area of shortening)、ならびに左心室拡張終期および収縮終期容積を含む。LV拡張機能は、LV拡張終期圧、僧帽弁速度E/AおよびEi/Ai比、および僧帽弁流入E波減速時間により評価することができる。
【0034】
「拡張機能障害」は心臓(すなわち、左心室)の拡張期中の充満の異常を示す。拡張期は、心臓(すなわち、心室)が収縮していないが、弛緩しており、戻ってきた(身体から(右心室に)または肺から(左心室に)のいずれか)血液で満たされている心周期の段階である。典型的には、拡張機能障害は、より堅い心室壁を意味し、これは心室の不十分な充満、ひいては不十分な1回拍出量に至る。心室弛緩不全はまた、拡張終期圧の上昇となる。拡張機能障害は、収縮機能が保持されている場合、生理的に強度な場合を除きそれ自体明らかにならない可能性がある。患者は安静時には完全に無症状であり得るが、心拍数の増加および頻脈の突然発作に非常に敏感となる。
【0035】
「収縮機能障害」は心臓(すなわち、左心室)の室から体循環へ血液を拍出する能力の
異常を示す。収縮期は、心筋が内因性電気刺激に応じた協働様式で収縮し、血流を駆動する心蔵の室内で圧力が発生する心周期の段階である。収縮期収縮の実験および臨床測定は、しばしば駆出率および心拍出量に基づく。
【0036】
「治療」という用語は、本明細書では、生物、例えば、ヒトが挙げられるがそれに限定されない哺乳類に影響する症状または病状の寛解または減少を示す。
【0037】
本発明の方法が疾患を予防することに関する限りにおいては、「予防する」という用語は、疾患状態が完全に阻止されることを要求しないことは理解される。むしろ、本明細書では、予防という用語は、当業者が、疾患にかかりやすい個人または集団を識別し、よって、本発明の化合物を、その疾患の発症前に投与することができることを示す。この用語は疾患状態が完全に回避されることを意味しない。
【0038】
「アルキル」という用語は飽和脂肪族基を示し、直鎖、分枝および炭素環基を含む。「低級アルキル」という用語は総数1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基の両方を示し、1級、2級および3級アルキル基を含む。典型的な低級アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられる。
【0039】
「シクロアルキル」という用語は3〜6または3〜10個の原子の環状基であるアルキル基を示す。好適な環状基としてはノルボルニルおよびシクロプロピルが挙げられる。そのような基は置換され得る。
【0040】
「ビシクロアルキル」という用語は、各環が5〜8個の炭素原子を有する、共に縮合された2つの環状アルキル基を示す。
【0041】
「アリール」という用語は、約6〜14個の炭素原子を有する芳香族基を示し、フェニルおよびナフチルなどの環状芳香族系を含む。
【0042】
「アラルキル」という用語は、6〜10個の炭素原子のアリール基で置換された約1〜4個の炭素原子のアルキル基を示し、例えば、ベンジル、p−クロロベンジル、p−メチルベンジルおよび2−フェニルエチルが挙げられる。
【0043】
「低級ヒドロカルビル」という用語は、主に1〜10個の炭素原子と水素から構成される有機ラジカルを示し、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基、ならびに芳香族基、例えばアリールおよびアラルキル基ならびに飽和および不飽和結合の混合物を有する基、脂環式(炭素環またはシクロアルキル)基またはアリール(芳香族基)で置換されたそのような基、あるいはそれらの組み合わせを含み、直鎖、分枝鎖または環状構造あるいはそれらの組み合わせを有するラジカルを示し得る。
【0044】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を示す。
【0045】
「アシル」という用語は、−C(O)R’基を示し、ここでR’は低級ヒドロカルビルである。
【0046】
「アシルオキシ」という用語は、エステル基−O−C(O)R’基を示し、ここでR’は低級ヒドロカルビルである。
【0047】
「リン酸エステル」という用語は、
【化2】

基(式中、R’’は独立して水素または低級ヒドロカルビルである)、および/または少なくとも1つのそのような基を有する化合物を示し、それらの塩を含む。
【0048】
「ヒドロカルビルオキシカルボニル」という用語は、R’−O−C(O)−基を示し、ここでR’は低級ヒドロカルビルである。
【0049】
「ヒドロカルビルオキシカルボキシ」という用語は、R’−O−C(O)−O−基を示し、ここでR’は低級ヒドロカルビルである。
【0050】
「任意で置換された」基は置換されていても、されていなくてもよい。「任意で置換された」基の置換基としては、下記基:アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、オキソ、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、水素、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NO、−NH、−N、−NHCH、−N(CH、−SH、−SCH、−OH、−OCH、−OCF、−CH、−CF、−C(O)CH、−COCH、−COH、−C(O)NH、−OR’、−SR’および−NR’R’’(式中、R’およびR’’はそれぞれカルビルである)またはそれらの指定されたサブセットから独立して選択される1つ以上の置換基が挙げられるが、それらに限定されない。任意で置換された基は非置換(例えば−−CHCH)、全置換(例えば、−CFCF)、一置換(例えば、−−CHCHF)とすることができ、または全置換と一置換との間のいずれかのレベルで置換され得る(例えば−−CHCF)。
【0051】
本明細書で開示した組成物および方法で使用し得るAICAリボシド類似体は、米国特許第5,777,100号において記載されているものを含み、この特許は参照により全体が本明細書に組み込まれる。AICAリボシドの例示的な類似体は式I:
【化3】

の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含み、式中、
は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたシクロアルキルおよび任意で置換されたビシクロアルキルからなる群より選択され、
は水素または任意で置換された低級アルキルであり、
は水素または−SWであり、ここで、Wは水素、任意で置換された低級アルキル、または任意で置換されたフェニルであり、
およびRは独立して水素、任意で置換された低級アルキル、またはアシルであり、
は水素、ヒドロキシ、リン酸エステル、−OSONH、ハロゲン、−OCOV、−SV、−SOV、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択され、
ただし、R、R、およびRが水素であり、RおよびRが水素、アシルまたはヒドロカルボキシカルボニルである場合、Rはヒドロキシ、アシルオキシまたはヒドロカルビルオキシカルボキシのいずれかでもない。
【0052】
1つの実施形態では、化合物は式Iの化合物を含み、式中、
は水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、または任意で置換されたシクロアルキルからなる群より選択され、
、R、RおよびRはそれぞれ、水素であり、
は水素、ヒドロキシ、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択される。
【0053】
別の変形例では、Rは水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたシクロアルキル、または任意で置換されたアラルキルであり、Rは水素であり、Rはヒドロキシ、−NHまたはリン酸エステルである。
【0054】
別の実施形態では、化合物は式Iの化合物を含み、式中、
、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素であり、
は−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択される。
【0055】
1つの実施形態では、本明細書で開示した方法で有用な化合物は式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含み、式中、Rは任意で置換されたアラルキル基、一般に任意で置換されたベンジル基、例えば1〜3個の環置換基を有するベンジル基、または任意で置換されたシクロアルキルである。
【0056】
別の実施形態では、本明細書で開示した方法で有用な化合物は式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含み、式中、RおよびRは水素であり、Rは−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択される。別の変形例では、Vは水素であり、V’は任意で置換されたアラルキル基、一般に任意で置換されたベンジル基である。
【0057】
本明細書で開示した方法で使用することができる1つの典型的なAICAリボシド類似体は、式II:
【化4】

の化学構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0058】
本明細書で開示した方法で使用することができる別のAICAリボシド類似体は、式III:
【化5】

の化学構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0059】
本明細書で開示した方法で使用することができるさらに別のAICAリボシド類似体は、式IV:
【化6】

の化学構造、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを有する。
【0060】
本明細書で開示した方法で使用される別のAICAリボシド類似体は、式V
【化7】

の化学構造を有するGP−531またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0061】
AICAリボシド類似体の塩およびプロドラッグの使用が本明細書で記載した方法のために企図されており、式Vの化合物、GP−531の塩およびプロドラッグが含まれる。GP−531の非制限的な例示塩はL−酒石酸塩であり、非制限的な例示プロドラッグは式Va:
【化8】

の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0062】
AICAリボシド類似体のプロドラッグは、当業者に知られている方法により調製することができ、本明細書で開示されるように急性心不全患者に投与することができる。1つの実施形態では、プロドラッグは経口バイオアベラビリティを増強させ、カルボン酸エステルを含み、特にそのようなプロドラッグはジ−O−ピバロイル誘導体、例えば式Vaで表されるものを含む。
【0063】
AICAリボシド類似体はまた、式Iの化合物の異性体を含み、特に式II、III、IVおよびVの異性体としては、
【化9】

が挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
式Iの化合物、特に式II、III、IVおよびVの化合物は、ATP異化を受けている組織においてのみ内因性アデノシン濃度を増加させる第二世代アデノシン制御剤(ARA)であり、そのようなものとして、それらの薬理活性は、イベント特異的および部位特異的である。式II、III、IVおよびVなどのAICAリボシド類似体の治療レベルは正常に代謝する組織では薬理学的に無症状であり、直接の心臓または全身血行動態効果は生じない。ARAの効果は、薬物のアデノシンへの変換により、またはアデノシン受容体での直接活性により媒介されない。特に、GP−531は、NBTI−感受性アデノシン輸送体に対するA1、A2またはA3受容体のためのリガンドであることが示されていない。
【0065】
AICAリボシド類似体、例えば式Iの化合物、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む組成物は酸付加および/または塩基塩を含むがそれらに限定されない。化合物の薬学的に許容される塩はその酸付加および塩基塩(複塩を含む)、例えばL−酒石酸塩を含む。好適な塩の例は、例えば、Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley−VCH, Weinheim, Germany (2002); and Berge et al., ”Pharmaceutical Salts,” J. of Pharmaceutical Science, 1977; 66:1−19において見出すことができる。
【0066】
本明細書で記載される化合物の薬学的に許容される酸付加塩としては、無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リンなどから誘導される非毒性塩、ならびに有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などから誘導される塩が挙げられる。したがって、そのような塩としては、本明細書で記載される化合物の酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸(ベンゼンスルホン酸)塩、重炭酸/炭酸塩、重硫酸塩、カプリル酸塩、カンシル酸(カンファースルホン酸)塩、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、エジシル酸(1,2−エタンジスルホン酸)塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、エシル酸(エタンスルホン酸)塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸/塩化物塩、臭化水素酸/臭化物塩、ヨウ化水素酸/ヨウ化物塩、イソ酪酸塩、リン酸一水素塩、イセチオン酸塩、D−乳酸塩、L−乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸(メタンスルホン酸)塩、メタリン酸塩、メチル安息香酸塩、メチル硫酸塩、2−ナプシル酸(2−ナフタレンスルホン酸)塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩(palmoate)、フェニル酢酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サッカリン酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、D−酒石酸塩、L−酒石酸塩、トシル酸(トルエンスルホン酸)塩、およびキシナホ酸塩が挙げられる。アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩などもまた企図される。
【0067】
塩基性化合物の酸付加塩は、従来の様式で、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、塩を生成させることにより調製することができる。遊離塩基形態は、従来の様式で、塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することにより再生させることができる。遊離塩基形態は個々の塩形態と特定の物理特性、例えば極性溶媒中での溶解度が幾分異なっているが、その他の点では塩は本発明の目的のためにはそれらの個々の遊離塩基と等価である。
【0068】
薬学的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミンを用いて形成させることができ、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属水酸化物、または有機アミンの塩である。カチオンとして使用される金属の例は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどである。好適なアミンの例としては、アルギニン、コリン、クロロプロカイン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジオラミン、エチレンジアミン(エタン−1,2−ジアミン)、グリシン、リシン、メグルミン、N−メチルグルカミン、オラミン、プロカイン(ベンザチン)、およびトロメタミンが挙げられる。
【0069】
酸性化合物の塩基付加塩は、従来の様式で、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、塩を生成させることにより調製することができる。遊離酸形態は、従来の様式で、塩形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することにより再生させることができる。遊離酸形態は個々の塩形態と特定の物理特性、例えば極性溶媒中での溶解度が幾分異なっているが、その他の点では塩は本発明の目的のためにはそれらの個々の遊離酸と等価である。
【0070】
1つの態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、急性心不全を治療するための方法に関する。別の態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含み、前記患者が35%を超えるLVEFを有する、急性心不全を治療するための方法に関する。また、心不全患者は40%を超えるLVEFを有する。本明細書で開示したいずれかの態様の1つの実施形態では、AICAリボシド類似体は式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであり、または、AICAリボシド類似体は式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。別の変形例では、類似体はGP531酒石酸塩である。
【0071】
1つの実施形態では、式I、例えば式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体、特に式Vの化合物またはその塩もしくはプロドラッグは、急性心不全の1つ以上の症状を軽減するのに有効な量で投与される。別の変形例では、1つ以上の症状は、呼吸困難、易疲労性、および末梢性浮腫からなる群より選択される。別の実施形態では、式I、例えば式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体、特に式Vの化合物またはその塩もしくはプロドラッグは、急性心不全患者に利尿剤、変力物質または血管拡張薬を投与する必要性を減少させるのに有効な量で投与される。1つの実施形態では、急性心不全患者により要求される利尿剤、変力物質または血管拡張薬の量が減少され、別の実施形態では、利尿剤、変力物質または血管拡張薬の投与計画が省略される。
【0072】
別の態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、急性心不全患者に対する退院から再入院までの時間を増加させる方法に関する。別の態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記患者が35%を超えるLVEFを有する、急性心不全患者に対する退院から再入院までの時間を増加させる方法に関する。また、心不全患者は40%を超えるLVEFを有する。開示した態様のいずれかの1つの実施形態では、AICAリボシド類似体は式II、III、IVもしくはVを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであり、または、AICAリボシド類似体は式Vを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。別の変形例では、類似体はGP531酒石酸塩である。開示した態様また実施形態のいずれかの別の変形例では、患者は退院後30日間再入院しない。別の変形例では、患者は退院後60日間再入院しない。別の変形例では、患者は退院後90日間再入院しない。さらに別の変形例では、患者は退院後4ヶ月間、さらには6ヶ月間再入院しない。1つの実施形態では、2回目の入院からの退院と再入院までの時間が増加し、別の実施形態では、3回目の入院からの退院再入院までの時間が増加する。別の変形例では、急性心不全患者は3回以上、急性心不全で入院している。開示した態様また実施形態のいずれかの別の変形例では、再入院は心血管イベントによるものであり、または、再入院は心不全によるものである。
【0073】
別の態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、急性心不全患者において心臓の包括的な心臓機能を改善するための方法に関する。1つの実施形態では、急性心不全患者は35%を超えるLVEFを有し、または、心不全患者は40%を超えるLVEFを有する。開示した態様のいずれかの1つの実施形態では、AICAリボシド類似体は式II、III、IVもしくはVを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであり、または、AICAリボシド類似体は式Vを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。別の変形例では、類似体はGP531酒石酸塩である。開示した態様のいずれかの1つの実施形態では、改善された包括的な心臓機能は改善された左心室機能である。1つの実施形態では、改善されたLV機能は、LV収縮機能、例えば、LVEF、心拍出量および1回拍出量のうちの1つ以上の改善を反映する。別の実施形態では、改善されたLV機能はLV拡張機能の改善を反映する。別の実施形態では、包括的な心臓機能の改善は、低血圧、頻脈または不整脈を含む有害効果なしで、患者において心収縮の効率を増加させる。いずれかの開示した態様または実施形態の別の変形例では、AICAリボシド類似体は式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば酒石酸塩または薬学的に許容されるプロドラッグ、例えば式Vaの化合物またはその塩である。
【0074】
別の態様では、本出願は、治療の必要な患者に、本明細書で開示される式IのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、心不全のために病院で急性心不全患者が費やす日数を減少させる方法に関する。1つの実施形態では、急性心不全患者は35%を超えるLVEFを有し、または、心不全患者は40%を超えるLVEFを有する。開示した態様のいずれかの1つの実施形態では、AICAリボシド類似体は式II、III、IVもしくはVを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであり、または、AICAリボシド類似体は式Vを有し、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。別の変形例では、類似体はGP531酒石酸塩である。開示した態様のいずれかの別の変形例では、入院日数は、10%、または20%、あるいはさらに30%もしくは40%減少する。一般に、急性心不全患者は病院で5〜6日費やす。式I、例えば式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体、特に式Vの化合物またはその塩もしくはプロドラッグの投与は、急性心不全患者の入院を4日さらには3日に減少させる。
【0075】
本明細書で開示した態様または実施形態のいずれかの別の変形例では、患者は以前の心筋梗塞(非虚血性心筋症)の証拠を有さない。本明細書で開示した態様のいずれかの別の実施形態では、患者は男性であり、または患者は女性である。本明細書で開示した態様のいずれかのさらに別の実施形態では、患者は65歳未満であり、または患者は65歳を超える。本明細書で開示した態様のいずれかのさらに別の実施形態では、急性心不全患者は、35%以上である、もしくは40%以上である左室駆出率を有し、または急性心不全患者は、50%以上である左室駆出率を有する。本明細書で開示したいずれかの態様または実施形態の別の変形例では、急性心不全患者は、約35%以上の左室駆出率を有し、患者は心筋梗塞を起こしたと診断されていない。1つの実施形態では、心不全は初期の非虚血性誘発影響に起因する。1つの実施形態では非虚血性誘発影響は、アミロイドーシス、心筋症、高血圧、弁膜症、感染症、心臓の神経刺激における毒素または機能障害、貧血、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、心線維症およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0076】
本明細書で開示した任意の態様の1つの実施形態では、治療薬、例えば式I、例えば式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体、特に式Vの化合物またはその塩もしくはプロドラッグは、約1μg/kg/分〜約300μg/kg/分で投与される。本明細書で開示した任意の態様の1つの実施形態では、治療薬は少なくとも24時間にわたり、約3μg/kg/分〜約300μg/kg/分、または約1μg/kg/分〜約100μg/kg/分で投与される。一般に、治療薬は約100μg/kg/分未満、約50μg/kg/分未満、約25μg/kg/分未満、さらには約10μg/kg/分未満で投与される。また、治療薬は、2μg/kg/分、約6μg/kg/分、約18μg/kg/分、約54μg/kg/分、さらには約100μg/kg/分で投与される。特に、治療薬はGP531酒石酸塩である。一般に、AICAリボシド類似体、例えばGP531またはその塩もしくはプロドラッグは、約1時間〜約24時間の間投与される。または、AICAリボシド類似体、例えばGP531またはその塩もしくはプロドラッグは約12時間〜約24時間、または約24時間〜約48時間、または約24〜約74時間の間投与される。または、AICAリボシド類似体、例えばGP531またはその塩もしくはプロドラッグは少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、さらには少なくとも約96時間の間投与される。1つの実施形態では、式I、II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約4mg/kg〜約450mg/kgで投与される。別の実施形態では、式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約4mg/kg〜約450mg/kgの量で投与され、別の変形例では、類似体は式Vの化合物の酒石酸塩であり、別の変形例では、類似体は式Vaの化合物またはその塩、例えば塩酸塩である。さらに別の実施形態では、式I、II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約1mg/kg〜約250mg/kgの量で投与される。別の実施形態では、式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約1mg/kg〜約250mg/kgの量で投与され、別の変形例では、類似体は式Vの化合物の酒石酸塩であり、別の変形例では、類似体は式Vaの化合物またはその塩、例えば塩酸塩である。治療薬は静脈内注入として、または経口用量として1日1、2、3さらには4回投与することができる。治療の必要な急性心不全患者へのGP531L−酒石酸塩の用量は一般に約1.44mg/kg/日〜約432mg/kg/日、または約1.44mg/kg/日〜約144mg/kg/日である。一般に剤形は約144mg/kg/日未満、約72mg/kg/日未満、約36mg/kg/日未満さらには約14mg/kg/日未満を提供する。また、剤形は約3mg/kg/日、約9mg/kg/日、約26mg/kg/日、約78mg/kg/日、さらには約144mg/kg/日を提供する。そのような投与は、静脈内注入により達成することができ、または投与は経口投与、または当業者に知られた他の方法を介することができ、例えば経皮投与であるがこれに限定されない。
【0077】
本明細書で開示した任意の態様の1つの実施形態では、本明細書で開示したAICAリボシド類似体静脈剤形は入院中少なくとも約24時間の間投与され、退院後、本明細書で開示したAICAリボシド類似体静脈剤形は1週間に2度、1週間に1度、1ヶ月に2度または1ヶ月に1度、例えば静脈注入を介して、約4時間にわたり、約6時間にわたり、または約8時間にわたり投与される。また、剤形は経口であり、単回投与として、または複数回投与として1日にわたり投与することができる。別の変形例では、AICAリボシド類似体は式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。また、化合物は式II、III、IVもしくはVを有し、特に式Vの化合物またはその塩もしくはプロドラッグである。別の変形例では、約4mg/kg〜約450mg/kgまたは約1mg/kg〜約250mg/kgの用量の式Vの化合物の酒石酸塩が第1日に静脈内注入として投与され、さらに、約4mg/kg〜約450mg/kgまたは約1mg/kg〜約250mg/kgの用量の式Vの化合物の酒石酸塩が第2日に静脈内注入として投与される。別の変形例では、特定の用量の式Vのプロドラッグが第1日に経口で、約4mg/kg〜約450mg/kgまたは約1mg/kg〜約250mg/kgの式Vの化合物の酒石酸塩と等価な量で投与され、さらに、特定の用量の式Vのプロドラッグが第2日に経口で、約4mg/kg〜約450mg/kgまたは約1mg/kg〜約250mg/kgの式Vの化合物の酒石酸塩と等価な量で投与される。一般に第2の用量は第1の用量の投与の翌日に投与され、または、第2の用量は第1の用量の投与の2日後、または第1の投与の3日、4日、5日、6日さらには7日後に投与される。1つの実施形態では、第1の用量は少なくとも約12時間にわたって投与され、第2の用量は少なくとも約6時間、または少なくとも約8時間、少なくとも約12時間さらには少なくとも約24時間にわたって投与される。
【0078】
別のAICAリボシド類似体、例えば、式Iの化合物、または式II、III、もしくはIVの化合物、または酒石酸塩以外の式Vの化合物の塩、あるいはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグが投与される場合、GP531酒石酸塩に対して以上で記述した用量と等価の治療的用量を薬物の分子量に基づき計算することができる。
【0079】
一般に、急性心不全患者に式I、例えば式II、III、IVもしくはV、特に式VのAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与すると、下記のうちの1つ以上が達成される:
(a)急性心不全患者が生存し退院している、入院からの退院後の日数の増加、
(b)急性心不全患者の再入院、例えば心不全または心血管イベントによる再入院までの期間の延長、
(c)急性心不全のために患者が病院内で費やす日数の減少、例えば、5また6日から4または3日への滞在の減少、
(d)2回以上の入院に対する、心不全のため病院で患者が費やす総日数の減少、
(e)心不全のための入院回数の減少、
(f)心不全による死亡率の減少、
(g)急性心不全患者における左室駆出率の増加、
(h)カンザスシティ心筋症アンケート、またはミネソタ心不全と共に生きるアンケートに基づく、急性心不全患者における生活の質の改善、
(i)B−型ナトリウム利尿ペプチドのレベルの減少、
(j)心筋トロポニンレベルの減少、および
(k)治療の必要な患者における心肥大の減少。
【0080】
本発明は、心臓の病状、特に急性心不全を治療するための方法および組成物を提供し、ここで、急性心不全患者は減少したLVEFまたは保持されたLVEFを有する。心臓の病状は一般に、多くの個体に影響し、例えば、慢性心疾患は先進国世界における死亡率および罹患率の主因であり、心疾患は米国では死亡の主因であり、急性心筋梗塞(AMI)は典型的には、1つ以上の冠動脈における血流を妨害する血栓に起因し、冠動脈心疾患の一般的な生命を危うくする合併症である。心不全は急性心不全(心原性ショックを含む)またはうっ血性心不全、例えば心筋症(拡張型、拘束型、または肥大型心筋症であり得る)により引き起こされるものを含み得る。本明細書で記載されるように、急性心不全患者は心不全症状を治療するために入院する必要がある。
【0081】
投与
任意の特定の患者に対する特定の用量レベルは、当業者によく理解されているように、使用した特定の化合物の活性、治療を受ける個体の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事、投与時間および経路、排泄速度、前に投与されていた他の薬物、および心不全の重篤度を含む様々な要因に依存することは理解されるであろう。ヒトにおける式I、例えば式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体の好都合な投与は、LVEFが減少した急性心不全患者、ならびにLVEFが保持された患者で、慢性使用のために利用可能である。そのような投与としては、1日に1回または1日に2回の、例えば錠剤またはカプセルとして、および静脈注入としての投与が挙げられるが、それらに限定されない。活性成分の放出速度を制御するための持続放出型調製物および連続注入薬の使用もまた採用可能である。用量は、好都合な多くの分割用量で投与され得る。
【0082】
単位剤形は、AICAリボシド類似体、例えば式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、例えばGP531酒石酸塩、または式Vaのプロドラッグもしくはその塩の1日用量または単位、1日サブ用量、またはその適切な一部を含むものとすることができる。単位用量は、経口消費のためとすることができ、例えば錠剤またはカプセル、または注入のためのものとすることができ、または本明細書で開示した他の手段により投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、または1日に4回以上投与される。他の実施形態では、用量は1週間に2回、1週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回投与される。例えば、約200μg/kg〜約100mg/kg、または約360μg/kg〜約36mg/kg、または約360μg/kg〜約3.6mg/kgの用量を1日に2回、1日に3回、または1日に4回以上投与することができる。いくつかの実施形態では、そのような用量は1週間に2回、1週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回投与される。その量は、経口消費、注入により投与され、または当業者によく知られた他の手段、例えば経皮または経粘膜により投与され得る。
【0083】
他の実施形態では、単位用量は注入液として投与されてもよく、ここで、単位用量は約3〜約300μg/kg/分で投与される。例えば、本明細書で記載した組成物は静脈内で、例えば、当業者によく知られたIV溶液、例えば、等張生理食塩水(0.9%NaCl)またはデキストロース溶液(例えば5%デキストロース)を用いた点滴により投与することができ、任意で静脈注射溶液はさらに保存剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む。例えば、約3〜約300μg/kg/分の用量を注入により、例えば点滴により1日1回、1週間に2回、1週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回投与することができる。また、単位用量は1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回以上、一定期間注入される。
【0084】
他の実施形態では、単位用量は約1〜約500mg/kg、約1〜約450mg/kg、約1〜約400mg/kg、約1〜約350mg/kg、約1〜約300mg/kg、約1〜約250mg/kg、約1〜約200mg/kg、約1〜約150mg/kg、約1〜約100mg/kg、約1〜約50mg/kg、約1〜約25mg/kg、約1〜約20mg/kg、約1〜約15mg/kg、約1〜約10mg/kg、約1〜約5mg/kg、約2〜約500mg/kg、約2〜約450mg/kg、約2〜約400mg/kg、約2〜約350mg/kg、約2〜約300mg/kg、約2〜約250mg/kg、約2〜約200mg/kg、約2〜約150mg/kg、約2〜約100mg/kg、約2〜約50mg/kg、約2〜約25mg/kg、約2〜約20mg/kg、約2〜約15mg/kg、約2〜約10mg/kg、約2〜約5mg/kg、3〜約500mg/kg、約3〜約450mg/kg、約3〜約400mg/kg、約3〜約350mg/kg、約3〜約300mg/kg、約3〜約250mg/kg、約3〜約200mg/kg、約3〜約150mg/kg、約3〜約100mg/kg、約3〜約50mg/kg、約3〜約25mg/kg、約3〜約20mg/kg、約3〜約15mg/kg、約3〜約10mg/kg、または約3〜約5mg/kgのAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。一般に、単位用量は式Vの化合物、またはその薬学的に許容される塩、例えば酒石酸塩、またはそのプロドラッグ、例えば式Vaの化合物もしくはその塩を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、単位用量は少なくとも約2μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、30μg/kg、40μg/kg、50μg/kg、60μg/kg、70μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg以上のAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。一般に、単位用量は式Vの化合物、またはその薬学的に許容される塩、例えばL−酒石酸塩、またはそのプロドラッグ、例えば式Vaの化合物もしくはその塩を含む。
【0086】
他の実施形態では、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは単位用量において、約2〜約500μg/kg/分、2〜約400μg/kg/分、2〜約300μg/kg/分、2〜約200μg/kg/分、2〜約100μg/kg/分、2〜約75μg/kg/分、2〜約50μg/kg/分、2〜約25μg/kg/分、2〜約10μg/kg/分、2〜約5μg/kg/分、2〜約3μg/kg/分、3〜約500μg/kg/分、3〜約400μg/kg/分、3〜約300μg/kg/分、3〜約100μg/kg/分、3〜約200μg/kg/分、3〜約50μg/kg/分、3〜約25μg/kg/分、3〜約10μg/kg/分、または3〜約5μg/kg/分で投与される。他の実施形態では、少なくとも約2μg/kg/分、約3μg/kg/分、約4μg/kg/分、約5μg/kg/分、約6μg/kg/分、約7μg/kg/分、約8μg/kg/分、約9μg/kg/分、約10μg/kg/分、約15μg/kg/分、約20μg/kg/分、約25μg/kg/分、約30μg/kg/分、約35μg/kg/分、約40μg/kg/分、約45μg/kg/分、約50μg/kg/分、約55μg/kg/分、約60μg/kg/分、約65μg/kg/分、約70μg/kg/分、約75μg/kg/分、約80μg/kg/分、約85μg/kg/分、約90μg/kg/分、約95μg/kg/分、約100μg/kg/分、約110μg/kg/分、約120μg/kg/分、約130μg/kg/分、約140μg/kg/分、約150μg/kg/分、約160μg/kg/分、約170μg/kg/分、約180μg/kg/分、約190μg/kg/分、約200μg/kg/分、約225μg/kg/分、約250μg/kg/分、約275μg/kg/分、約300μg/kg/分、約350μg/kg/分、約400μg/kg/分、約450μg/kg/分、約500μg/kg/分、約550μg/kg/分、約600μg/kg/分、約650μg/kg/分、約700μg/kg/分以上が単位用量により投与される。
【0087】
AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、特に式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩、例えばL−酒石酸塩、もしくはそのプロドラッグ、例えば式Vaの化合物もしくはその塩の有効量は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、120時間以上の間投与することができる。いくつかの実施形態では、その用量は、約1時間〜約72時間、約1時間〜約48時間、または約1時間〜約12時間の間投与される。また、類似体は約4時間〜約12時間、約12〜約24時間または約6時間 〜約8時間の間投与することができる。
【0088】
AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの投与は漸増用量でも実施することができる。例えば、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの第1の用量を投与し、第1の用量よりも大きい第2の用量を投与する。追加の用量、例えば第3の用量を、第3の用量が第2の用量よりも大きくなるように投与することができる。用量は同じまたは異なるAICAリボシド類似体とすることができ、例えば、第1の用量は式Vを有し、第2の用量は式IVを有し得る。また、第1および第2の用量はどちらも式V、またはその塩、例えば酒石酸塩を有し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、一般にGP−531またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ(例えばGP−531酒石酸塩)を含むボーラス、およびAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、一般にGP−531またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ(例えばGP−531酒石酸塩)を含む薬学的組成物が、急性心不全を有する被験体に、前記急性心不全を治療するのに十分な期間投与される。別の変形例では、薬学的組成物はボーラスの投与後に投与される。ボーラスは約70μg/kg〜約700μg/kgの量とすることができ、後の投与は本明細書で開示した範囲に従い、一般に約3μg/kg〜約300μg/kgである。
【0090】
ボーラスに続いて投与されるAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む薬学的組成物は、ボーラスと同じか、または異なり得る。例えば、ボーラスは式Vを有し、最初のボーラス後の特定期間投与されるAICAリボシド類似体は式IVの化合物であり得る。また、ボーラスおよびボーラス後に投与される化合物はどちらも式Vの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0091】
併用療法
本発明の予防または治療組成物はまた、従来の心不全治療薬、例えば利尿剤、変力物質、冠拡張薬およびβ遮断薬または従来の循環器疾患、例えば高血圧の治療薬(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)および/またはカルシウムチャネル遮断薬)と組み合わせて、同時に、または異なる時間に使用することができる。利尿剤は一般にうっ血症状の軽減のために使用され、腎臓が身体から過剰の流体を除去するのを助け、これにより、血液容積および心臓の作業負荷が減少する。利尿剤としては、ループ利尿剤(例えば、フロセミド、ブメタニド)、チアジド利尿剤(例えば、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、クロルチアジド)、カリウム保持性利尿剤(例えば、アミロリド)、スプロノラクトンおよびエプレレノンが挙げられるが、それらに限定されない。変力物質、例えば強心配糖体、βアドレナリン作動薬またはホスホジエステラーゼ阻害剤は心拍出量の低い患者において心臓の拍出作用を強化し、変力物質としては、ジゴキシン、ドブタミン、ミルリノン、イスタロキシム、オメカミチブメカルビル(omecamtiv mecarbil)が挙げられるが、それらに限定されない。血管拡張薬は末梢動脈を拡張させ、血流をより容易にし、血管拡張薬の例としては、ニトログリセリン、ニトロプロシド、およびネセリチドが挙げられるがそれらに限定されない。レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)および交感神経系を含む神経ホルモン系の活性化もまた、心不全の病態生理の一因である。RAASの活性化を阻害する薬物は3つの主なカテゴリに分類される:ACE阻害剤(ラミプリル、エナラプリルおよびカプトプリルが挙げられるがそれらに限定されない)、ARB(バルサルテン、カンデサルテン、イルベサルテンおよびロサルテンが挙げられるがそれらに限定されない)、およびアルドステロン受容体遮断薬(例えば、スピロノラクトンおよびエプレレノン)。β遮断薬はアドレナリンの効果を遮断することにより交感神経系の活性化の効果を無効にし、心拍数を遅くし、β遮断薬としては、カルベジロール、メトプロロール、ビソプロロール、アテノロール、プロプラノロール、チモロールおよびブシンドロールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0092】
製剤
本出願の目的のために、AICAリボシド類似体、例えば、式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグが、経口、非経口、吸入噴霧、局所、または直腸を含む様々な手段により、薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する製剤中で投与され得る。AICAリボシド類似体はまた、デポー製剤として投与することができる。活性成分を含有する薬学的組成物は対象とする投与法に好適な任意の形態にされ得る。
【0093】
本明細書で使用されるとき、非経口という用語は、様々な注入技術を用いた皮下、静脈内、筋内および動脈内注射を含む。本明細書では、動脈内および静脈内注射はカテーテルを介した投与を含む。
【0094】
活性成分を含有する薬学的組成物は対象とする投与法に好適な任意の形態とすることができる。例えば、経口用途のために使用される場合、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル、シロップまたはエリキシルが調製され得る。経口を対象とした組成物は、薬学的組成物の製造のために当該技術分野で知られている任意の方法に従い調製することができ、そのような組成物は美味な調製物を提供するために甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤を含む1つ以上の作用物質を含有し得る。錠剤製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含有する錠剤は許容される。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウムまたはナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはナトリウム;顆粒化および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;ならびに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクとすることができる。錠剤は非コートとすることができ、または、胃腸管での崩壊および吸収を遅延させ、よってより長期にわたる持続作用を提供するためにマイクロカプセル化を含む既知の技術によりコートすることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延材料を単独で、またはワックスと共に使用し得る。
【0095】
経口用途のための製剤もまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えばリン酸カルシウムまたはカオリンと混合されたハードゼラチンカプセルとして、または活性成分が水または油性媒質、例えばピーナツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合されたソフトゼラチンカプセルとして提供され得る。
【0096】
本出願の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。そのような賦形剤には、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴム、ならびに分散または湿潤剤、例えば天然ホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドの、脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導した部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が挙げられる。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えばエチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤および1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有し得る。
【0097】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油中に、または鉱物油、例えば流動パラフィン中に懸濁させることにより製剤化させることができる。経口懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含み得る。甘味剤、例えば上記で説明したもの、および香味剤を添加して美味な経口調製物を提供し得る。これらの組成物はアスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することにより保存され得る。
【0098】
水を添加することにより水性懸濁液を調製するのに好適な本出願の分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1つ以上の保存剤と混合された活性成分を提供する。好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、上記で開示したものにより例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤もまた存在し得る。
【0099】
本出願の薬学的組成物はまた、水中油エマルジョンの形態であり得る。油相は植物油、例えばオリーブ油またはラッカセイ油、鉱物油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物とし得る。好適な乳化剤としては天然ゴム、例えばアカシアゴムおよびトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されたエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレアート、およびこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートが挙げられる。エマルジョンはまた甘味剤および香味剤を含み得る。
【0100】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトールまたはスクロースを用いて製剤化し得る。そのような製剤はまた、鎮痛剤、保存剤、香味剤または着色剤を含み得る。
【0101】
本出願の薬学的組成物は、滅菌注射調製物、例えば滅菌注射水性または油性懸濁液の形態とすることができる。この懸濁液は、上記で言及したそれらの好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して既知の技術により製剤化され得る。滅菌注射調製物はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタン−ジオール溶液とすることができ、または凍結乾燥粉末として調製され得る。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発油が溶媒または懸濁媒質として通常使用され得る。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無菌性不揮発油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が同様に注射剤の調製において使用され得る。
【0102】
組成物は静脈内に、またはカテーテルに基づく技術により、あるいはそれらの組み合わせにより、結合された送達装置(すなわち、ポンプ)を用いて、またはそれなしで投与することができる。例えば、治療薬は、心停止液中で、または心停止液と関連させて、移植片または天然動脈への直接注射を含む局所送達手順を介して、および灌流支援技術を介して静脈内投与することができる。本発明の組成物は、他の治療的に活性な作用物質を標的器官に選択的に送達させながら、静脈内注入することができ、あるいは治療薬両方を静脈内または筋内選択投与のいずれかにより送達させることができる。
【0103】
上記のように、経口投与に好適な本出願の製剤は、別々の単位、例えばそれぞれが所定の量の活性成分を含有するカプセル、カシェまたは錠剤として、粉末もしくは顆粒として、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油液体エマルジョンもしくは油中水液体エマルジョンとして提供され得る。活性成分はまたボーラス、舐剤またはペーストとして投与され得る。
【0104】
錠剤は、圧縮または成形により、任意で1つ以上の補助成分を用いて製造され得る。圧縮錠剤は、好適な機械内で、自由に流れる形態、例えば粉末または顆粒の活性成分を、任意で結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性または分散剤と混合して圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、好適な機械内で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することにより製造され得る。錠剤は任意で、コートし、または切れ目をつけることができ、所望の放出プロファイルを提供するように様々な割合で、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、その中の活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化することができる。錠剤は任意で、胃以外の腸の部分で放出されるように、腸溶コーティングが提供され得る。
【0105】
本明細書で記載した組成物は、即時放出型製剤とすることができる。様々な既知の方法および材料を使用して即時放出させることができる。例えば、作用物質を錠剤の外部に沿って配置する(例えば、作用物質で外側をコートするまたは作用物質と共に外層を製剤化する)および/または低い圧縮を用いて粉末を圧縮することにより錠剤を形成するのと組み合わせると、組成物から作用物質の即時放出が可能となる。組成物はまた制御放出形態とすることができる。組成物はまた持続放出形態とすることができる。
【0106】
そのため、組成物は、体内からの急速な排除に対して作用物質を保護する1つ以上の担体、例えば持続放出製剤またはコーティングを含むことができる。そのような担体としては制御放出製剤、例えば、マイクロカプセル化送達システムが挙げられる。式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは薬学的に許容される担体中に、個体を治療するのに十分な量で含められ得る。制御放出形態は、作用物質が身体から急速に排除されないように保護する、または持続放出または投与を提供するのに十分な量で存在することができ、例えば、約1μg/kg/分〜約300μg/kg/分、または約3μg/kg/分〜約300μg/kg/分である。一般に剤形は100μg/kg/分未満、50μg/kg/分未満さらには10μg/kg/分未満を提供する。
【0107】
ある実施形態では、組成物は経口剤形の形態であり、制御放出材料を含むマトリクスを有する。ある実施形態では、マトリクスは錠剤に圧縮可能であり、任意で、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの、組成物からの放出を制御することができるコーティングでオーバーコートすることができる。この実施形態では、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、長期にわたり治療範囲内で維持される。ある別の実施形態では、マトリクスはカプセル化されている。
【0108】
本発明の組成物を含有する錠剤またはカプセルは、長期作用の利点を提供する剤形を提供するようにコートすることができ、またはそうでなければ配合させることができる。例えば、錠剤またはカプセルは内部投与成分および外部投与成分を含有することができ、後者は前者上のエンベロープの形態である。2つの成分は、胃での崩壊に耐えるように作用し、内部成分を完全なまま十二指腸に送り込み、またはその放出を遅延させるようにする腸溶層により分離することができる。制御された長期放出のために、カプセルにはまた、微小な穴を開けることができる。
【0109】
最初の用量または第1の用量のAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを即時放出型で含むコーティングは、第2の用量のAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む制御放出錠剤コアの外側に加え、最終剤形を生成させることができる。そのようなコーティングは、第1の用量をポリビニルピロリドン(PVP)29/32またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)および水/イソプロピルアルコールおよびトリエチルアセテートと混合することにより調製することができる。そのような即時放出コーティングは錠剤コア上に噴霧コートすることができる。即時放出コーティングはまた、80重量%のプロメタジンならびに20重量%のラクトースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース型2910からなるブレンドを用いプレスコーティング法を使用して塗布することができる。プレスコーティング技術は当該技術分野において知られている。
【0110】
本発明の即時放出または制御放出剤形はまた、多層錠剤、例えば第1の層および第2の層を有する2層錠剤の形態をとることができる。2層錠剤の別の態様では、第1の層は即時放出層であり、および/または第2の層は制御放出層である。例えば、多層錠剤は、特定量の式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む少なくとも1つの即時放出層および特定量のAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む少なくとも1つの制御放出層を含むことができる。制御放出層は、AICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの、一定期間持続放出を提供し得る。また、即時放出層および制御放出層はAICAリボシド類似体、例えば式I、または特に式II、III、IVもしくはVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの持続放出を提供することができるが、投与量が異なっている。1つの実施形態では、第1の層および第2の層はどちらも、式Vの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、例えばGP−531酒石酸塩または式Vaの化合物もしくはその塩を含む。
【0111】
本発明の即時放出または制御放出剤形はまた、高圧ホモジナイゼーション、湿式または乾式ボールミリング、または小粒子沈殿を含むが、それらに限定されない様々な方法により製造された薬剤粒子の形態をとることができる。好適な粉末製剤を製造するための他の方法は、活性成分と賦形剤の溶液の調製、続く沈殿、濾過、微粉化、または続く凍結乾燥による溶媒の除去、続く粉末の所望の粒子サイズへの微粉化である。これらの剤形は即時放出粒子を制御放出粒子と、所望の用量の活性作用物質の送達に十分有用な比で組み合わせて含むことができる。
【0112】
本発明の別の態様では、成分は少なくとも第1の層と、第2の層と、第3の層とを含む多層錠剤から放出される。ここで、治療上活性な作用物質を含有する層は任意で1つ以上の不活性材料層により分離することができる。1つの実施形態では、1つの作用物質を含有する層は同様の放出速度を有し、例えば、全てが即時放出であり、あるいは全てが制御放出である。別の実施形態では、層は異なる放出速度を有する。この態様では、少なくとも1つの層が即時放出層であり、少なくとも1つの層が制御放出層である。
【0113】
非経口投与に好適な製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、および製剤を対象のレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量または複数回用量の密封容器、例えばアンプルおよびバイアルで提供することができ、使用直前に滅菌液担体、例えば注射用の水の添加のみが必要となる凍結乾燥状態で保存することができる。注射溶液および懸濁液は、前に記載した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0114】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール、など、ならびに金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0115】
口内での局所投与に好適な製剤としては、香味基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントゴム中に活性成分を含むロゼンジ、不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含むトローチ、ならびに好適な液体担体中に活性成分を含む洗口液が挙げられる。
【0116】
直腸投与のための製剤は、例えばココアバターまたはサリチレートを含む好適な基剤を有する坐剤として提供され得る。
【0117】
膣内投与に好適な製剤は、活性成分の他に適切であることが当該技術分野で知られている担体を含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡または噴霧製剤として提供され得る。
【0118】
経皮吸収のために徐々に活性成分を放出する接着ディスクまたはパッチとして製造される経皮送達系が使用され得る。このために、活性作用物質の経皮浸透を促進するために透過増強剤が使用され得る。例えば、経皮投与のために、本明細書化合物は、皮膚の化合物に対する浸透性を増加させ、化合物を皮膚を通して浸透させ、血流に入れるのを可能にする皮膚浸透増強剤、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプロパノール、エタノール、オレイン酸、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどと組み合わされ得る。本明細書の化合物はまた、ポリマ物質、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン/ビニルアセテート、ポリビニルピロリドンなどと組み合わされ、ジェル形態の組成物を提供することができ、これは溶媒、例えば塩化メチレン中に溶解され、所望の粘度まで蒸発され、その後裏当て材に塗布されることができ、パッチが提供される。化合物は経皮投与することができ、特定の局所濃度の活性作用物質が達成され、または活性作用物質の全身投与が達成される。
【0119】
一般的に言えば、経皮薬物送達系は、一般にリザーバ型またはマトリクス型装置である。どちらの型の装置も、最終経皮装置の外面を形成し、使用中に環境に曝露される裏当て層、および内面を形成し、装置を使用者の皮膚または粘膜に固定するための接着手段を被覆する剥離ライナーまたは保護層を含む。剥離ライナーまたは保護層は適用前に除去され、典型的には感圧接着剤である接着手段が曝露される。活性作用物質は剥離ライナーと裏当て層との間に配置され、普通溶媒または担体組成物中に可溶化され、または分散されている。いくつかの実施形態では、経皮装置(例えば、パッチ)の外面は第2の構成要素、例えば加熱コンパートメント(例えば、制御された一貫した温度増加を提供するための電気的または化学的手段)と結合するように適合される。
【実施例】
【0120】
実施例
実施例1:動物モデル
体重が20〜30kgの繁殖用の健康で条件付けされた雑種犬において研究を実施した。研究はヘンリーフォード保健制度動物実験委員会(Henry Ford Health System Institutional Animal Care and Use Committee)から認可され、国立衛生研究所「実験動物の使用ためのガイドおよび世話(Guide and Care for Use of Laboratory Animals)」および「実験動物使用に対する米国心臓協会の立場(Position of the American Heart Association on Research Animal Use)」に適合された(Position of the American Heart Association on Research Animal Use. Circulation 1985; 71;49A−50A)。
【0121】
慢性LV機能障害および不全を、ポリスチレンラテックスによる複数の連続する冠動脈内閉塞により発生させ、全身麻酔および滅菌条件下での心臓カテーテル法中に冠動脈微小塞栓術を実施した(Sabbah HN, et al. Am J Physiol (1991) 260:H1379−84; Sabbah HN, et al. Circulation (1994) 89:2852−9; Sabbah HN, et al. Am J Cardiol 99:41 A−46A, (2007))。麻酔は、オキシモルホン塩酸塩(0.22mg/kg)およびジアゼパム(0.2〜0.6mg/kg)静脈内注射の組み合わせを用いて誘導した。麻酔レベルは1%〜2%のイソフルランを用いて研究を通して維持した。左および右心臓カテーテル法を、大腿部動脈切開および静脈切開を介して実施した。血管造影法によって決定したLV駆出率が約25%となった時に冠動脈微小塞栓術を中断した。最後の微小塞栓術後2週間の期間を割り当て、最後の微小塞栓術により生成した梗塞が完全に治癒し、研究を始める前に心不全が確立されるようにした。
【0122】
実施例2:進行性心不全を有するイヌにおける慢性左心室(LV)機能障害:用量漸増研究
実施例1で記載した8匹の心不全イヌを使用した。8匹のイヌのうち7匹が2つの研究、活性薬物GP−531酒石酸塩を用いたものおよびビヒクル(プラセボ)を用いたもの、を受け、8匹のイヌのうち1匹が活性薬物GP−531研究のみを受けた。活性薬物とプラセボの順はランダムとし、約1週間離して実施した。8匹のイヌのうちの6匹において、ベースライン血行動態および心室造影測定後、連続静脈注入として1時間ビヒクルを投与した。1時間の終わりに、活性薬物GP−531酒石酸を、各用量を1時間維持して3漸増用量の連続静脈内注入で投与した。最後の薬物用量の終わりに、注入を中止し、1時間の休薬期間を設けた。ビヒクル研究を実施した場合、用量間で同じ注入速度および時間を使用した。各時間の終わりに、血行動態および血管造影測定を実施した。静脈血液試料をベースラインおよび各用量後1時間で入手した。血液試料(少なくとも10mL)を3000rpmで10分間遠心分離し、血漿を回収し、低温保存管に入れ、将来使用するために−20℃で直立で保存した。8匹のイヌのうち2匹において、下記で示すように、活性薬物をボーラスとして、続いて3時間の一定注入として投与した。
【0123】
活性薬物をイヌ群において下記のように使用した:
1.8匹のイヌ中3匹において、30、100および300μg/kg/分のGP−531酒石酸塩の漸増用量を使用した(群I)。
2.8匹のイヌ中別の3匹において、3、10および30μg/kg/分のGP−531酒石酸塩の漸増用量を使用した(群II)。
3.8匹のイヌ中1匹において、活性薬物を700μg/kgのGP−531酒石酸塩ボーラスとして投与し、続いて10μg/kg/分のGP−531酒石酸の一定注入を3時間実施した。
4.8匹中別の1匹において、2つの活性薬物研究を実施した。1つの研究では、活性薬物を70μg/kgボーラスとして投与し、続いて1.0μg/kg/分の一定注入を4時間実施し、第2の研究では、活性薬物を210μg/kgボーラスとして投与し、続いて3.0μg/kg/分の一定注入を4時間実施した。
【0124】
研究主要エンドポイントは、(1)心室造影により測定したLV駆出率の変化および(2)心室造影から決定したLV収縮終期および拡張終期容積の変化とした。
【0125】
血行動態測定はすべて、各特定の研究時間点で、麻酔したイヌにおいて左および右心カテーテル法中に実施した。心拍数(HR)、平均大動脈圧(mAoP)、LV拡張終期圧(LVEDP)、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)および全身血管抵抗(SVR)を各研究時間点で測定した。左室造影を心カテーテル法中、血行動態測定の完了後に実施した。左室造影図を、20mlの造影剤注射(RENO−M−60 Squibb,Princeton,NJ)中に、イヌをその右側において入手し、デジタル記録した。LVのレベルで配置した放射線不透過性グリッドを用いて、画像拡大のための較正を実施した。LV収縮終期(ESV)および拡張終期容積(EDV)を、エリアレングス法(Dodge HT, et al. Am J Cardiol. (1966) 18:10−24)を用いて血管造影シルエットから計算した。期外収縮および期外収縮後収縮は分析から排除した。LV駆出率(EF)を、拡張終期容積と収縮終期容積の差の、拡張終期容積に対する割合×100として計算した(Sabbah HN, et al. Am J Physiol (1991) 260:H1379−84; Sabbah HN, et al., Circulation (1994) 89:2852−9; Sabbah HN, et al, Am J Cardiol 99:41 A−46A, (2007))。
【0126】
血漿バイオマーカーを群IおよびIIで測定した。トロポニンI(TnI)を血漿中で、二重抗体サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(Hirano, T., et al., Immunol Today 1990, 11:443−449)の原理に基づき、n−末端脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT−pro−BNP)を競合ELISA(Bonow, R. O. Circulation 1996, 93:1946−1950)に基づき決定した。どちらのバイオマーカーも市販のアッセイキットを用いてアッセイした。NT proBNPおよびTnIのためのキットをALPCO Diagnostics,Salem,NHから購入した。標準曲線およびソフトウエアを使用して、各バイオマーカーの濃度をTnIに対してはng/mlとして、NT−proBNPに対してはfmol/mlとして表した。
【0127】
群内で、0.05にαを設定して反復測定分散分析(ANOVA)を用いて血行動態および血管造影データを分析した。全体のANOVAが有意である場合、ベースラインと薬物またはプラセボ用量/時間点の間の一対比較を、スチューデント・ニューマン・クール検定を用いて実施した。この検定では、0.05未満のp値は有意であると考えた。全てのデータを平均±SEMとして報告した。
【0128】
結果:研究に参加したイヌはいずれも、急性代償不全を発症せず、死亡しなかった。さらに、どのイヌも活性薬物注入またはビヒクル注入中におけるいずれの時点でも、新規洞性頻脈または低血圧を発症しなかった。
【0129】
対照イヌにおける所見:研究に参加した8匹のイヌのうち7匹についてはまた、3時間の生理食塩水の注入、続く1時間の休薬期間の間も研究した。生理食塩水注入はHR、mAoP、LVEDP、SV、CO、およびSVRに影響しなかった(表1)。同様に、生理食塩水注入はEDV、ESVまたはEFに影響しなかった(表1、図1)。
【表1】

【0130】
群Iおよび群IIのイヌにおける所見:群Iのイヌ(n=3)は30、100および300μg/kg/分のGP−531酒石酸塩の漸増用量を受けた。この群では、ベースライン測定値と、1時間の生理食塩水注入(ビヒクル)の間に得られた測定値との間で差はなかった。これらの用量後、GP−531酒石酸塩はHRまたはmAoPに影響しなかった(表2)。GP−531酒石酸塩は著しくLVEDPを減少させた。GP−531酒石酸塩はEDVの減少に穏やかな、統計学的に有意ではない効果しか有さなかったが、用量依存様式でESVを著しく減少させ、EFを増加させた(表2、図1)。観察された改善は、SV、COの著しい増加およびSVRの減少と関連した(表2)。GP−531酒石酸塩注入の中止1時間後、血行動態および心室造影的な利点は減少したが、多くの場合において、ベースライン値よりも著しく良好なままであった(表2)。
【表2】

【0131】
群IIのイヌ(n=3)は3、10および30μg/kg/分の漸増用量のGP−531酒石酸を受けた。この群では、ベースライン測定値と、1時間の生理食塩水注入(ビヒクル)の間に得られた測定値との間で差はなかった。これらの用量では、GP−531酒石酸塩はHRまたはmAoPに影響しなかった(表2)が、著しくLVEDPを減少させた(表3)。GP−531酒石酸塩はEDVに影響しなかったが、用量依存様式で、著しくESVを減少させ、EFを増加させた(表3、図2)。これらの用量では、GP−531酒石酸塩はSVおよびCOを穏やかに増加させ、SVRを穏やかに減少させたが、これらの変化はいずれも、ベースラインと比べ統計学的有意には到達しなかった(表3)。GP−531酒石酸塩注入の中止1時間後、血行動態および心室造影的な利点は減少したが、多くの場合において、ベースライン値よりも著しく良好なままであり(表3)、用量効果に加えて一時的な効果が示唆された。
【表3】

【0132】
群IおよびIIにおける血漿バイオマーカー:群Iのイヌでは、ベースラインと比較して、NT−pro−BNPおよびTnIの血漿レベルは著しく減少し、投与した全てのGP−531酒石酸用量でほとんど同じ大きさとなった。
【0133】
群IIのイヌでは、NT−pro−BNPはまた、GP−531酒石酸の漸増用量と共に減少する傾向を示したが、最も高い30μg/kg/分の用量でのみ有意に到達した(表4)。この群では、TnIはまた、使用した最も高いGP−531酒石酸用量で減少する傾向を示したが、この減少は統計学的有意に到達しなかった(表4)。
【表4】

【0134】
GP−531のボーラス注入、続いて一定注入により処置したイヌにおける所見
8匹のうち1匹において、GP−531酒石酸を700μg/kgボーラス、続いて10μg/kg/分の3時間の一定注入として投与した。この注入プロトコルにより、HRまたはmAoPにおいて穏やかな減少、LVEDPの実質的な降下が得られた。3時間の注入の終わりに、EDVでほぼ10%の減少、ESVで20%の減少、およびEFで30%の増加があった(図3)。これらの改善は時間依存であると考えられた。これはSV、COおよびSVRの最小のまたは穏やかな変化を伴った。
【0135】
8匹のイヌのうちの別の1匹において2つのGP−531研究を実施した。1つの研究では、GP−531酒石酸を70μg/kgボーラス、続いて1.0μg/kg/分の4時間の一定注入として投与した。この用量では、GP−531はLV機能の血行動態または心室造影測定値のいずれにも影響しなかった。第2の研究では、GP−531酒石酸を210μg/kgボーラス、続いて3.0μg/kg/分の4時間の一定注入として投与した。この注入プロトコルにより、HR、mAoPおよびLVEDPの穏やかな減少が得られた。4時間の注入の終わりで、EDVは本質的に変化せず、ESVで20%の減少、およびEFで44%の増加があった。これらの改善は時間依存であると考えられた。これはSV、COおよびSVRの最小のまたは穏やかな変化を伴った。
【0136】
結果は、少なくとも1時間の期間にわたり投与された3〜300μg/kg/分の範囲の用量の静脈内GP−531酒石酸は進行性慢性心不全を有するイヌにおいてLV収縮機能を改善することができることを示す。LV収縮機能の改善は、NT−proBNPおよびTnIの血漿レベルの減少と関連した。これらの改善は有害陽性変時効果のいずれとも関連しなかった。GP−531は、低血圧を誘発せず、新規心室性不整脈を誘発せずにその利点を引き出した。LV機能への利点は、3〜4時間の期間にわたるGP−531の一定注入中、維持される可能性がある。LV収縮機能に対するGP−531の有利な効果は4時間ではまだピークに達していなかった。
【0137】
実施例3:進行性心不全を有するイヌにおける左心室機能に対するGP−531酒石酸の急速静脈注入の効果:単回投与、6時間注入研究
実施例1で記載した6匹の心不全のイヌを使用した。活性薬物およびプラセボを使用した研究を各イヌにおいてランダムな順序で最低1週間離して実施した。ベースライン血行動態、血管造影および心エコー測定後、GP−531酒石酸またはプラセボを連続一定静脈内注入として6時間投与した。GP−531酒石酸の用量は10μg/kg/分とした。ベースライン中、ならびに薬物注入開始後1、2、3、4、5および6時間に完全な血行動態、血管造影および心エコー測定を実施した。さらに、心筋酸素消費量(MVO)をベースラインならびに薬物または生理食塩水注入開始後4および6時間で測定した。LV圧力−容積関係(P−Vループ)もまた、ベースラインおよび薬物または生理食塩水注入開始後6時間で測定し、負荷依存収縮および弛緩を評価した。静脈血液試料をベースラインおよびその後1時間毎に入手した。血液試料(少なくともランプ(lamp))を3000rpmで10分間遠心分離し、血漿を取り出し、寒冷保存管に入れ、直立させて−20℃で必要とされるまで保存した。静脈血液試料を使用してトロポニン−Iの血漿レベルおよびn−末端脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT−pro−BNP)の血漿レベルを評価した。
【0138】
6時間の一定注入研究完了時に、非選択的アデノシン拮抗薬8−p−スルホフェニルテオフィリン(8−SPT)の存在下でのGP−531の効果を評価するために、第2の研究を3匹の心不全のイヌで実施した。ベースライン血行動態および心室造影測定後、8−SPTを10mg/kg静脈内ボーラス、続いて10mg/kg/時間の3時間の一定注入として投与した。GP−531酒石酸の注入は、10μg/kg/時間の用量の8−SPTの注入と同時に開始し、3時間維持した。血行動態および心室造影測定を1、2および3時間で実施した。
【0139】
研究主要エンドポイントは、(1)心室造影により決定したLV駆出率の変化、(2)心室造影により決定したLV収縮終期および拡張終期容積の変化、(3)MVOの変化、および(4)LV収縮終期および拡張終期P−V関係の勾配の変化とした。
【0140】
血行動態測定はすべて、各特定の研究時間点で、麻酔したイヌにおいて左および右心カテーテル法中に実施した。心拍数(HR)、平均大動脈圧(mAoP)、LV拡張終期圧(LVEDP)、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)および全身血管抵抗(SVR)を各研究時間点で測定した。左室造影を心カテーテル法中、血行動態測定の完了後に実施した。左室造影図を、20mlの造影剤注射(RENO−M−60 Squibb、Princeton、NJ)中に、イヌをその右側において入手し、デジタル記録した。LVのレベルで配置した放射線不透過性グリッドを用いて、画像拡大のための較正を実施した。LV収縮終期(ESV)および拡張終期容積(EDV)を、エリアレングス法(Dodge HT, et al. Am J Cardiol. (1966) 18:10−24)を用いて血管造影シルエットから計算した。期外収縮および期外収縮後収縮は分析から排除した。LV駆出率(EF)を、上記のように、収縮終期容積と拡張終期容積の差の、拡張収縮体積に対する割合×100として計算した
【0141】
3.5 MHZトランスデューサーを有するVIVID 7超音波システム(General Electric)を用いて、全ての特定した研究時間点で、全てのイヌにおいて心エコーおよびドップラー研究を実施した。全ての心エコー測定は、右側臥位で配置して実施し、その後のオフライン分析のためにPanasonic 6300 VHSレコーダーで記録した。LV左室内径短縮率(FAS)、LV収縮機能測定値を、乳頭筋のレベルでの短軸像から測定した。LV長半径および短半径を測定し、LV拡張終期周囲壁応力の計算に使用した。壁応力は下記のように:
EDWS=Pb/h(1−h/2b)(1−hb/2a2)
計算し、式中、PはLV拡張終期圧、aはLV長半径であり、bはLV短半径であり、hはLV壁厚である。
【0142】
僧帽弁流入速度を、パルス波ドップラー心エコーにより測定し、LV拡張機能を評価した。速度波形を使用して(1)拡張早期におけるピーク僧帽弁流速(PE)、(2)LA収縮中のピーク僧帽弁流入速度(PA)、(3)PEのPAに対する比(PE/PA)、(4)充満早期を表す僧帽弁流入速度波形の時間−速度積分(Ei)、(5)LA収縮を表す時間−速度積分(Ai)、(6)Ei/Ai比、および(7)早期僧帽弁流入速度の減速時間(DCT)を計算した。
【0143】
心電図の誘導−IIを、研究を通して観察し、全ての特定した研究時間点で記録した。心電図の連続記録は、新規心室性不整脈が発症した場合にのみ計画した。不整脈が生命を脅かすものとなり、血行動態虚脱と関連した場合にのみ、薬物注入の中止を計画した。
【0144】
心筋酸素消費量(MVO)は、前に詳細に記載されているように測定した(Chandler MP, et al., Circ Res 91:278−280, 2002)。MVO測定は、ベースライン、薬物注入前に実施し、6時間の薬物注入の終わりに繰り返した。冠動脈血流速度は、第1の縁枝より遠位の冠動脈回旋枝の近位部分内に配置したドップラー流速カテーテル(フローワイヤ)を用いて測定した。血流は、冠血管造影を用いてカテーテル先端部位の冠動脈回旋枝の断面積を計算することにより推定した。総LV冠血流を、回旋動脈で測定したものの2倍として推定した。MVOは下記:
(MVO)=(総冠血流)×(大動脈〜冠静脈洞O差)
のように決定した。大動脈および冠静脈洞血液中の酸素量は、AVOXimeter 1000(A−VOX Systems,Inc)を用いて測定した。
【0145】
左心室圧−容積ループ(「P−V」)を、LV腔内に配置した圧力コンダクタンスカテーテルと共にMillar Instruments MPVS Ultraシステムを用いて測定した。下大静脈の一時的なバルーン閉塞中に作成されたP−Vループを使用して、収縮終期圧容積関係(ESPVR)の勾配および拡張終期圧容積関係(EDPVR)の勾配を評価した。
【0146】
血漿バイオマーカーを全てのイヌにおいて、全ての時間点で測定した。トロポニンI(TnI)を血漿中で、二重抗体サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(Hirano, T., et al., Immunol Today 1990, 11:443−449)に基づき、NT−pro−BNPを競合ELISA(Bonow, R. O. Circulation 1996, 93:1946−1950)に基づき決定した。どちらのバイオマーカーも市販のアッセイキットを用いてアッセイした。NT−proBNPおよびTnIのためのキットをALPCO Diagnostics,Salem,NHから購入した。標準曲線およびソフトウエアを使用して、各バイオマーカーの濃度をTnIに対してはng/mlとして、NT−proBNPに対してはfmol/mlとして表した。
【0147】
群内で、0.05にαを設定して反復測定分散分析(ANOVA)を用いて血行動態および血管造影データを分析した。全体のANOVAが有意である場合、ベースラインと薬物またはプラセボ用量/時間点の間の一対比較を、スチューデント・ニューマン・クール検定を用いて実施した。この検定では、0.05未満のp値は有意であると考えた。全てのデータを平均±SEMとして報告した。
【0148】
結果:研究用のイヌはいずれも、急性代償不全を発症せず、死亡しなかった。さらに、どのイヌも活性薬物注入またはビヒクル注入中におけるいずれの時点でも、新規心室性もしくは心房性不整脈、洞性頻脈または低血圧を発症しなかった。
【0149】
生理食塩水(対照)注入中の所見:生理食塩水注入はHR、mAoP、LVEDP、SV、CO、およびSVRに影響しなかった(表5)。同様に、生理食塩水注入はEDV、ESVまたはEFに影響せず、LV拡張機能の指標のいずれにも影響しなかった(表5、図4)。生理食塩水注入は、ESPVRの勾配およびEDPVRの勾配に影響せず、MVOに影響しなかった(表5)
【表5】

【0150】
GP−531酒石酸注入中の所見:GP−531酒石酸注入は心室性または心房性不整脈を誘起しなかった。GP−531で処置したイヌはいずれも、急性代償不全を発症せず、死亡しなかった。GP−531酒石酸注入はHRまたはmAoPに影響しなかった(表6)。GP−531は時間依存様式でLVEDPを著しく減少させ、5時間で有意に到達した。GP−531はピーク+dP/dtまたはピーク−dP/dtに有意の影響を有さなかった。EDVの減少に穏やかであるが統計学的に有意の効果を有し、著しくESVを減少させ、EF(図4)およびFASを増加させた。これらの改善は薬物注入開始後1〜3時間で起きた。観察された改善はSV、COの有意の増加およびSVRの減少と関連した(表6)。GP−531は著しくESPVRの勾配を増加させた。LV収縮機能におけるこれらの改善は、MVOの変化無しで起きた(表6)。
【0151】
GP−531酒石酸注入は、LV拡張機能の指標の有利な効果を有した。PE/PAおよびEi/Ai比のどちらも、時間依存様式で著しく増加した(表6)。DCTは増加し、EDWSは著しく減少し、これもまた時間依存様式であった。EDPVRの勾配は6時間で減少する傾向を示したが、減少は統計学的有意に到達しなかった(表6)。
【0152】
ベースラインおよびGP−531酒石酸投与後6時間での典型的なP−Vループを図5に示す。収縮終期圧容積関係の勾配の著しい増加は、GP−531が負荷非依存様式でLV収縮機能を改善する、すなわち、固有心筋収縮力を改善することを示す。拡張終期圧容積関係の勾配の減少は、GP−531の改善が負荷非依存様式でのLV拡張機能の改善における傾向を示し、すなわち、固有心臓弛緩の改善の傾向を示す。
【表6】

【0153】
血漿バイオマーカー:生理食塩水(対照)注入はNT−proBNPおよびトロポニン−Iの血漿レベルに影響しなかった。対照的に、GP−531を用いた処置では、NT−proBNPおよびトロポニン−I両方の血漿レベルが著しく減少した(表7)。
【表7】

【0154】
8−SPT注入中の所見:GP−531酒石酸は、8−SPT、非選択的アデノシン受容体拮抗薬と同時に投与した場合、HR、mAoP、LVEDP、EDV、ESV、EF、SV、CO、およびSVRに影響しなかった(表8)。
【表8】

【0155】
この研究の結果は、10μg/kg/分の用量で6時間投与した静脈内GP−531酒石酸は、進行性慢性心不全を有するイヌにおいてLV収縮機能および拡張機能の両方を改善することができることを示す。LV機能の改善はNT−proBNPおよびTnIの血漿レベルの減少と関連した。これらの改善はいずれの有害陽性変時効果、低血圧とも、あるいは新規心室性もしくは心房性不整脈の発症と関連しなかった。LV機能の改善はまた、心筋酸素消費量の増加なしで生じた。GP−531により誘発された利点は、8−SPT、非選択的アデノシン受容体拮抗薬と共に投与された場合、消失し、アデノシン受容体結合の保持が獲得される利点を提供するのを助けることが示唆される。
【0156】
実施例4:GP−531−ジ−O−ピバロイルプロドラッグ
GP−531(ヒトにおいて約10%)の経口バイオアベイラビリティを増強させるために、ラットおよびサルにおいてジ−O−ピバロイルプロドラッグの評価を実施した。
【化10】

【0157】
後にGP531に加水分解される、より良好に吸収されるより親油性のプロドラッグを投与すると、GP531の全身アベイラビリティの増加が達成される。GP531は吸収に対し好ましくないオクタノール:水分配係数(logP=−0.91)を有するが、一方、プロドラッグ式Vaは親油性の非常に著しい増加を示した(logP=3.31)。
【0158】
ラットにおいて、式Vaの遊離塩基および/または水溶性塩酸塩を用いて2つの別個の研究を実施した。第1の研究では、等モル用量のGP531(20mg/kg)を水溶液中で別個のラットの群(n=3)に、GP531酒石酸塩または式Va塩酸塩として経口投与した。GP531の血漿濃度を両方の動物群で決定し、平均データを図6に示した。プロドラッグの投与後GP531のCmaxおよびAUC両方が著しく増加することがわかる。Cmaxは6倍増加し、AUCは0〜4時間にわたって4倍増加した。その後の研究において、同じ等モル用量のGP531酒石酸塩およびプロドラッグを使用し、GP531の相対バイオアベイラビリティを、投与後尿中に排泄されたGp531の量を比較することによりラット(n=4)の群で推定した。(前の研究では、GP531は代謝されず、尿中にほとんど完全に無傷なまま除去される)。プロドラッグの投与後GP531の排泄が約3倍増加した尿排泄データは、血漿AUCデータに基づく前に観察されたバイオアベイラビリティの増加を支持した。尿排泄データは、プロドラッグの投与後のGP531の絶対経口アベイラビリティが約40%であったことを示した。プロドラッグの遊離塩基または塩酸塩のいずれを投与したかに関係なく、GP531のバイオアベイラビリティに有意の差はなかった。
【0159】
サル(n=4)において、式Va塩酸塩をプロドラッグとして使用して予備研究も実施した。GP531で得られた血漿レベルデータを、等モル用量のGP531酒石酸塩を経口投与されたサルの別の群から得られたファイル上の前のデータと比較した。プロドラッグの投与後0〜8時間にわたり、平均Cmaxにおいて3倍の増加、AUCにおいて2倍を超える増加があったことが、図7でわかる。
【0160】
実施例5:臨床試験
心不全の悪化で入院している患者、すなわち急性心不全患者において、GP531酒石酸塩の安全性、耐容性、血行動態および心エコー効果を評価するための、多施設無作為二重盲検プラセボ制御第2相安全性および用量漸増試験。
【0161】
総数150の被験体を5つのコホート、プラセボ(生理食塩水および0.1mg/mLメタ重亜硫酸ナトリウム)および、2μg/kg/分の用量から開始し、その後、用量を6μg/kg/分、18μg/kg/分、54μg/kg/分および100μg/kg/分と漸増させ、静脈内注射として約24時間にわたり投与するGP531酒石酸塩(生理食塩水および0.1mg/mLメタ重亜硫酸ナトリウム中100mg/mL)の各々にランダムに分ける。30被験体をプラセボに、120を処置にランダムに割り当てる。有効性を、下記:
a.1)左心室機能
2)左心室拡張機能および血行動態
3)肺動脈収縮圧
4)僧帽弁および三尖弁逆流グレードにより評価される弁機能
を含む、ベースラインからの心エコーによる処置群と対照群との間の血行動態測定値の変化の比較、
b.1)約24時間での自己投与7点リッカート呼吸困難尺度による評価される呼吸困難、
2)ベースライン〜約24時間の自己投与視覚的アナログ尺度により評価される臨床状態の変化、
3)ベースライン〜約24時間、48時間、72時間、96時間(または96時間前であれば退院時)の体重変化
を含む徴候および症状における処置群と対照群との間の比較、
c.ベースライン〜約24時間、48時間、72時間、96時間(または96時間前であれば退院時)およびランダム化8日後のBNPおよびトロポニンIの処置群と対照群との間の変化の比較、
d.1)心不全による再入院、
2)心血管イベントによる再入院、
3)心血管イベントによる死亡率、
4)総死亡率
のランダム化後30日および60日での発生率の処置群と対照群との間の差の比較
により評価する。
【0162】
一般に、治療の必要な急性心不全患者に、式I、または式II、III、IVもしくはVのAICAリボシド類似体、特にGP531、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与すると、下記:
(a)心不全による第2または第3の入院までの時間の延長、
(b)心不全のために患者が病院で費やす日数の減少、
(c)心不全のための入院数の減少、
(d)心血管イベントのための入院数の減少、
(e)心不全による死亡率の減少、
(f)心血管イベントによる死亡率の減少、
(g)心拍出量の改善、
(h)拡張機能の改善、
(i)左室駆出率の改善、
(j)B型ナトリウム利尿ペプチドのレベルの減少、
(k)心筋トロポニンレベルの減少、および
(l)うっ血の減少に起因する呼吸困難の減少
の1つ以上が達成される。
【0163】
本明細書で列挙した特許および出版物は当該技術分野における一般技術を記載し、全ての目的のために、各々が特定的に、かつ個々に参照により組み込まれることが示されるのと同じ程度まで、その全体が参照により組み込まれる。引用文献と本明細書の間に何らかの矛盾がある場合、本明細書が制御する。本出願の実施形態の記載では、明確にするために特定の専門用語が使用されている。しかしながら、本発明のそのように選択された特定の専門用語に限定されない。本明細書中のいずれも、本発明の範囲を制限するものと考えられるべきではない。示した例は全て代表的なものであり、制限するものではない。上記実施形態は、上記教示を鑑みれば当業者により認識されるように、本発明から逸脱せずに改変または変更され得る。そのため、本発明は特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で、特定的に記載されているものとは別の方法で実施され得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の必要な患者に、式I:
【化11】

のAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含み、式中、
は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたシクロアルキルまたは任意で置換されたビシクロアルキルからなる群より選択され、
は水素または任意で置換された低級アルキルであり、
は水素または−SWであり、ここで、Wは水素、任意で置換された低級アルキル、または任意で置換されたフェニルであり、
およびRは独立して水素、任意で置換された低級アルキル、またはアシルであり、
は水素、ヒドロキシ、リン酸エステル、−OSONH、ハロゲン、−OCOV、−SV、−SOV、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択され、
ただし、R、R、およびRが水素であり、RおよびRが水素、アシルまたはヒドロカルボキシカルボニルである場合、Rはヒドロキシ、アシルオキシまたはヒドロカルビルオキシカルボキシのいずれかでもない、急性心不全を治療するための方法。
【請求項2】
は水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたシクロアルキルまたは任意で置換されたアリールアルキルであり、
、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、
は水素、ヒドロキシ、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記AICAリボシド類似体は、式V:
【化12】

の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記AICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約3μg/kg/分〜約300μg/kg/分で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記患者は約35%を超える左室駆出率を有し、前記患者は心筋梗塞を起こしたと診断されていない、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、100μg/kg/分未満で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約1時間〜約24時間の間投与される、請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、少なくとも約8時間投与される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、少なくとも約24時間投与される、請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約4mg/kg〜約450mg/kgの量で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は酒石酸塩である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は第1日に静脈内注射により投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
静脈内注射により、式Vの化合物の酒石酸塩を約4mg/kg〜約450mg/kgの量で第2日に投与することをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1日の前記静脈内注射は、少なくとも約12時間にわたり投与され、前記第2日の前記静脈内注射は少なくとも約6時間にわたり投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記式Vの化合物の酒石酸塩は、約3mg/kg、約9mg/kg、約26mg/kg、約78mg/kgまたは約144mg/kgの量で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、急性心不全の症状を軽減させるのに有効な量で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項17】
前記症状は、呼吸困難、易疲労性および末梢性浮腫からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、利尿剤、変力物質または血管拡張薬の前記患者への投与の必要性を減少させるのに有効な量で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項19】
治療の必要な患者に、式I:
【化13】

のAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含み、式中、
は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたシクロアルキルおよび任意で置換されたビシクロアルキルからなる群より選択され、
は水素または任意で置換された低級アルキルであり、
は水素または−SWであり、ここで、Wは水素、任意で置換された低級アルキル、または任意で置換されたフェニルであり、
およびRは独立して水素、任意で置換された低級アルキル、またはアシルであり、
は水素、ヒドロキシ、リン酸エステル、−OSONH、ハロゲン、−OCOV、−SV、−SOV、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択され、
ただし、R、R、およびRが水素であり、RおよびRが水素、アシルまたはヒドロカルボキシカルボニルである場合、Rはヒドロキシ、アシルオキシまたはヒドロカルビルオキシカルボキシのいずれかでもない、急性心不全患者のための退院から再入院までの時間を増加させる方法。
【請求項20】
は水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたシクロアルキルまたは任意で置換されたアリールアルキルであり、
、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、
は水素、ヒドロキシ、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記AICAリボシド類似体は、式V:
【化14】

の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
急性心不全による2回目の入院からの退院と心不全または心血管イベントによる再入院との間の時間が増加される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記AICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約3μg/kg/分〜約300μg/kg/分で投与される、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記再入院は心血管イベントまたは心不全による、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは100μg/kg/分未満で投与される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約1時間〜約24時間投与される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも約8時間投与される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも約24時間投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記患者は約35%を超える左室駆出率を有し、前記患者は心筋梗塞を起こしたと診断されていない、請求項19記載の方法。
【請求項30】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約4mg/kg〜約450mg/kgの量で投与される、請求項21記載の方法。
【請求項31】
前記化合物は酒石酸塩である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記式Vの化合物の酒石酸塩は、約3mg/kg、約9mg/kg、約26mg/kg、約78mg/kgまたは約144mg/kgの量で投与される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
治療の必要な患者に、式I:
【化15】

のAICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含み、式中、
は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたシクロアルキルおよび任意で置換されたビシクロアルキルからなる群より選択され、
は水素または任意で置換された低級アルキルであり、
は水素または−SWであり、ここで、Wは水素、任意で置換された低級アルキル、または任意で置換されたフェニルであり、
およびRは独立して水素、任意で置換された低級アルキル、またはアシルであり、
は水素、ヒドロキシ、リン酸エステル、−OSONH、ハロゲン、−OCOV、−SV、−SOV、−N、または−NVV’であり、ここで、VおよびV’は水素、任意で置換されたアリール、任意で置換された低級アルキル、および任意で置換されたCH−フェニルから独立して選択され、
ただし、R、R、およびRが水素であり、RおよびRが水素、アシルまたはヒドロカルボキシカルボニルである場合、Rはヒドロキシ、アシルオキシまたはヒドロカルビルオキシカルボキシのいずれかでもない、急性心不全患者における心臓の包括的な心臓機能を改善するための方法。
【請求項34】
前記AICAリボシド類似体は、式V:
【化16】

の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記患者は約35%を超える左室駆出率を有し、前記患者は心筋梗塞を起こしたと診断されていない、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記AICAリボシド類似体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約3μg/kg/分〜約300μg/kg/分で投与される、請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、100μg/kg/分未満で投与される、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、約4mg/kg〜約450mg/kgの量で投与される、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記化合物は酒石酸塩である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記式Vの化合物の酒石酸塩は、約3mg/kg、約9mg/kg、約26mg/kg、約78mg/kgまたは約144mg/kgの量で投与される、請求項34記載の方法。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504656(P2012−504656A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530281(P2011−530281)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059454
【国際公開番号】WO2010/040110
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(507322447)ペリコー セラピューティクス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】