説明

恒温恒湿器

【課題】外気温度よりも低い温度の空気が生成可能な恒温恒湿器を提供する。
【解決手段】ヒートパイプ2の一端部に設置された吸熱部3と、ヒートパイプ2の他端部に設置された、フィン7aを有する第1放熱部5と、第1放熱部5と吸熱部3との間の中間位置に設置された、ペルチェ素子8を用いて構成された第2放熱部6とを備える冷却ユニット1を構成し、該冷却ユニット1を断熱壁21を貫通させて、吸熱部3が、空調室S1の加熱器15と加湿器16との間の適所に配置され、放熱部4が熱源調整室S2に配置されるように構成した。また、第1、第2放熱部5,6を、前記断熱壁21の外壁面21a及び対向壁17に沿って上下に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的とする温湿度の空気を生成する恒温恒湿器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種半導体素子、電子回路等の信頼性評価、スクリーニング等のためにバーンイン処理を行ったり、各種物品や材料の耐熱性、耐湿性等を試験したりするために用いる恒温恒湿器が知られている。下記特許文献1には、この種の恒温恒湿器において、銅管内にアルコールを密封してなるヒートパイプを、熱媒蒸発側が空調室内に、熱媒凝縮側が空調室外に位置するように配置し、熱媒凝縮側の冷却をファンの動作により加減することにより、空調室内の温湿度を目標温湿度に設定する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第2603407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1にあっては、熱媒凝縮側の冷却をファンの動作により加減する、すなわち、外気を用いて熱媒凝縮側を冷却する構成であるため、空調室内の温度を外気温度より下げることはできない。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、外気温度よりも低い温度の空気が生成可能な恒温恒湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、試験室と、前記試験室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するために設けられた空調室と、前記試験室と空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記試験室から空調室に流入した空気を加湿するための加湿部と、前記空気を冷却するための冷却部とを備えた恒温恒湿器であって、前記冷却部は、前記空調室内に配置された吸熱部と、前記空調室外に配置された、第1の放熱部及び第2の放熱部を有する放熱部と、封入体内に封入された熱輸送部にヒートパイプ現象を生じさせて、前記吸熱部から前記放熱部に熱輸送を行うための熱輸送部とを備え、前記吸熱部及び前記第1、第2の放熱部は前記熱輸送部に熱的に接続され、前記第1の放熱部は、外気を冷却媒体として前記熱輸送部の熱を放出させるものであり、前記第2の放熱部は、前記熱輸送部の温度が外気温度よりも低温にまで下がるように前記熱輸送部の熱を放出させるものである。
【0006】
この発明によれば、加湿部及び冷却部をともに作動させた場合、加湿部により前記空調室に流入した空気が加湿され、該空気が冷却部により冷却され、さらに、加熱が必要な場合には加熱され、この空気が前記試験室に供給される。
【0007】
このような構成において、冷却部を、前記空調室内に配置された吸熱部と、前記空調室外に配置された、第1の放熱部及び第2の放熱部を有する放熱部と、封入体内に封入された作動流体にヒートパイプ現象を生じさせて、前記吸熱部から前記放熱部に熱輸送を行うための熱輸送部とを備えて構成し、前記吸熱部及び前記第1、第2の放熱部を前記熱輸送部に熱的に接続するとともに、前記第1の放熱部は、外気を冷却媒体として前記熱輸送部の熱を放出させるものとし、前記第2の放熱部は、前記熱輸送部の温度が外気温度よりも低温にまで下がるように前記熱輸送部の熱を放出させるものとしたので、従来のように第1の放熱部しか設けられていない場合に比して高い冷却性能を備えることができる。
【0008】
すなわち、本発明によれば、試験室内の空気を第1の放熱部により外気を用いて冷却するため、試験室内の空気の温度を外気温度に向けて大きな放熱量で放熱させることができる上、第2の放熱部により、さらに外気温度よりも低い温度に冷却することができる。
【0009】
また、前記第1の放熱部を前記第2の放熱部から離間して配置することで、一方の放熱部の冷熱を他方の放熱部が奪う虞が生じるのを回避することができ、高い冷却効率を得ることができる。なお、前記ヒートパイプ現象とは、吸熱部の位置にある作動流体が該吸熱部により吸収した熱により蒸発し、その作動流体の蒸気が放熱部に移動するとともに、放熱部による放熱作用により、該放熱部の位置に到達した前記蒸気が凝縮する現象をいう。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の恒温恒湿器において、前記第2の放熱部は、前記熱輸送部の熱輸送方向において前記第1の放熱部より前記吸熱部側に設置されているものである。
【0011】
第1、第2の放熱部の設置位置が本発明の設置位置と逆の配置、すなわち、第1の放熱部を、前記熱輸送部の熱輸送方向において前記第2の放熱部より吸熱部側に設置し、第1、第2放熱部を並行的に作動させた場合において、吸熱温度が外気温度より低いとき、第1の放熱部を駆動すると、第1の放熱部において吸熱(蒸発)作用が発生することとなり、第2の放熱部の冷却性能を十分に活かすことができなくなる。
【0012】
これに対し、本発明のように、第2の放熱部を、前記熱輸送部の熱輸送方向において前記第1の放熱部より吸熱部側に設置することで、第1、第2の放熱部をともに動作させた場合に、吸熱部の位置で吸熱して放熱部側に略音速で移動した作動流体の蒸気は前記第1の放熱部により冷却され、さらに第2の放熱部により冷却されることとなる。これにより、第1の放熱部において吸熱(蒸発)作用が発生するような状況は発生せず、第2の放熱部の冷却性能を十分に活かすことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の恒温恒湿器において、前記試験室内の空気の温湿度を検出する温湿度検出部と、前記温湿度検出部の出力信号に基づいて、前記加湿部及び前記冷却部の動作を制御する制御部とを備えるものである。
【0014】
この発明によれば、温湿度検出部により検出される温湿度に応じて、目標の温湿度を有する空気を生成することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の恒温恒湿器において、前記吸熱部の温度を検出する吸熱部温度検出部を備え、前記制御部は、前記試験室内の空気を冷却させるべき期間は前記第1の放熱部を動作させ、前記吸熱部温度検出部により検出される温度が予め定められた温度まで低下すると、前記第2の放熱部の作動を開始させるものである。
【0016】
この発明によれば、前記試験室内の空気を冷却させるべき期間、常に第2の放熱部を作動させる場合に比して、第2の放熱部の動作時間を可及的に抑制することができる。したがって、第2の放熱部が電力で駆動されるものである場合には、消費電力を可及的に抑制することができる。
【0017】
また、第1の放熱部によって外気を用いた放熱量の大きな放熱動作を行った上で、第2の放熱部によって外気温度よりも低い温度まで冷却される。したがって、第2の放熱部をペルチェ素子で構成した場合、比較的低い温度からペルチェ素子を作動させることとなるため、前記試験室内の空気が高温の場合に、ペルチェ素子自体が低温化するのに多大なエネルギーを要するという状況が発生するのを回避し、第1の放熱部に比して放熱容量の小さいペルチェ素子でも確実に且つ速やかに試験室内の空気を冷却することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の恒温恒湿器において、前記第2の放熱部は、ペルチェ素子を用いて構成されているものである。
【0019】
この発明によれば、従来から利用されている部材を利用して、試験室内の空気を外気温度より低い温度まで低下することのできる恒温恒湿器を構成することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の恒温恒湿器において、前記第1の放熱部は、前記第2の放熱部より上方に配置されているものである。
【0021】
この発明によれば、前記熱輸送部内で効率よく作動流体を循環させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外気温度よりも低い温度の空気が生成可能な恒温恒湿器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る恒温恒湿器に備えられる冷却ユニットの一実施形態の機械的構成を示す側面図である。
【0024】
図1に示すように、冷却ユニット1は、前記熱輸送部の一例としてのヒートパイプ2と、ヒートパイプ2の一端部に設置された吸熱部3と、ヒートパイプ2の他端側に設置された放熱部4とを備えている。なお、冷却ユニット1は、後述の断熱壁21によって仕切られている。
【0025】
ヒートパイプ2は、当該ヒートパイプ2の前記一端部において前記吸熱部3により吸収された熱を受け取り前記他端側に輸送するものであり、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成されたパイプ状のケース2aと、真空状態の該ケース2aの内部に封入された水やアルコール等の作動流体とを備えて構成されている。
【0026】
吸熱部3は、冷却対象(後述する試験室内の空気)の熱を吸収し、該熱を前記作動流体に伝達するためのものであり、例えば、ケース2aに嵌合する図略の基部と、該基部の外周面適所に複数立設されたフィン3aとを有する。基部及びフィン3aは、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成されている。フィン3aは、試験室内の空気から熱を吸収し、吸収した熱を前記基部に伝達するものである。基部は、ヒートパイプ2に対して熱的に接触し、フィン3aで吸収された熱を、前記ケース2aを介して作動流体に伝達するものである。なお、吸熱部3の構造は前述のものに限られず、例えばフィン3aを省略したものでもよい。ただし、フィン3aは、当該フィン3aが設けられていない場合に比して試験室内の空気と接触する接触面積を増大させ、吸熱部3の吸熱効率を高めるから、フィン3aが省略されたものに比べてフィン3aを有するものの方がより吸熱効率を向上することができる。
【0027】
放熱部4は、ヒートパイプ2の前記一端部において熱を吸収した作動流体(蒸発した作動流体)が当該放熱部4の部位に移動したときに、該作動流体からその熱を放出させる(作動流体を凝縮させる)ためのものであり、ヒートパイプ2の他端部に設置された第1放熱部5と、前記第1放熱部5と吸熱部3との間の中間位置に設置された第2放熱部6とを有して構成されている。
【0028】
第1放熱部5は、ケース2aに嵌合する図略の基部及び該基部の外周面に複数立設されたフィン7aを備えたヒートシンク7を有する。ヒートシンク7は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成されており、ヒートパイプ2に対して熱的に接触し、作動流体からケース2aを介して伝達された熱をフィン7aに伝達する。フィン7aは、前記基部から熱を吸収し、吸収した熱を外部に放出するものである。なお、吸熱部3の構造は前述の構成に限られるものではなく、例えばフィン7aを省略したものでもよい。ただし、フィン7aは、当該フィン7aが設けられてない場合に比してヒートシンク7が外気と接触する接触面積を増大させ、第1放熱部5の放熱効率を高めるものであるから、フィン7aが省略されたものに比してフィン7aを有するものの方がより放熱効率を向上することができる。また、第1放熱部5は必ずしもヒートシンク7を備える必要はなく、例えば、ヒートシンク7を介在させることなくフィン7aを直接ヒートパイプ2に設置する態様も採用可能である。また、なお、第1放熱部5を構成するものとして、前記ヒートシンク7の他、外気により温度設定された常温の水を封入したジャケットでもよい。
【0029】
第2放熱部6は、例えばペルチェ素子8を用いて構成されている。ペルチェ素子8は、周知の構成であるので詳細な説明は行わないが、例えば、P型半導体とN型半導体とが交互に並列に並べられ、各半導体の一方の端部を基板(以下、第1の基板という)に接合するとともに、隣接する2つの半導体を1組として、各組ごとに、半導体の他方の端部をそれぞれ前記第1の基板と異なる基板(以下、第2の基板という)に接合した構成を有しており、各半導体及び基板により構成される直列回路に直流電流を供給することにより、前記第1、第2の基板のうち一方の基板が発熱側として、他方の基板が吸熱側としてそれぞれ作用するものである。ペルチェ素子8は、比較的高い熱伝導性を有する金属製の取付部材9を介してケース2aに取り付けられている。なお、第2放熱部6を構成するものとして、前記ペルチェ素子8の他に、前記常温の水より低温の冷却水を冷却媒体とする周知の水冷式冷却器や、周知の蒸気圧縮式冷却器等も採用可能である。
【0030】
ファン10は、ペルチェ素子8の放熱側の基板に向けて送風動作を行うものであり、該基板による放熱効率を高めるためのものである。なお、基板による放熱効率を高めるためのものとしては、前記ファン10だけでなく、ヒートシンクや水冷ジャケットも採用可能である。
【0031】
このような構成を有する冷却ユニット1においては、吸熱部3が設置されたヒートパイプ2の一端側(以下、吸熱側という)に位置する作動流体が、吸熱部3及びヒートパイプ2のケース2aを介して試験室内の空気から熱(潜熱、気化熱)を吸収し、該作動流体が蒸発する。
【0032】
ここで、冷却ユニット1を適切な設置態様で設置することで、吸熱側で吸熱した作動流体の蒸気は放熱側に略音速で移動する。放熱側に移動した作動流体の蒸気は、第1,第2放熱部5,6の作用により熱を放出する結果、再び液化し、この液化した作動流体は再び吸熱側に還流する。冷却ユニット1は、このような作動流体の相変化や移動によって熱の移動を行う。
【0033】
次に、このような冷却ユニット1を利用した恒温恒湿器100について説明する。図2は、恒温恒湿器100の構成を示す断面図である。
【0034】
図2に示すように、恒温恒湿器100は、例えば各種物品や材料の耐熱性や耐湿性等の試験を行うための試験室R1と、試験室R1内の空気(雰囲気)の温湿度を目標値に維持するためのスペースとしての空調室S1と、空調室S1とは区画された熱源調整室S2とを有して構成されている。試験室R1及び空調室S1は、断熱壁21で囲まれたスペースの適所に設置された仕切壁13により、上下でそれぞれ連通部11,12を有する態様で仕切られてなる。
【0035】
空調室S1の適所(例えば空調室S1の上部)には、送風動作を行うファン14が設置されており、該ファン14は、断熱壁21で囲まれた試験室R1内及び空調室S1内の空気を所定の方向(図2では、矢印Xの方向)に循環させるためのものである。
【0036】
空調室S1のうち前記ファン14より上流側の適所には、空気を加熱するための加熱器15が設置されており、さらにその上流側には、加湿器16が設置されている。加湿器16は、収容している水(加湿用の水)を電気ヒータ25を用いて加熱することで蒸発させて、試験室R1から流入してくる空気に対して加湿するものである。これにより、飽和空気を生成することができ、恒温恒湿器100は、この飽和空気を前記加熱器15により加熱することで所望の湿度に調整する。
【0037】
熱源調整室S2は、断熱壁21の一外壁面に沿って空調室S1に隣接した態様で形成されており、前述した冷却ユニット1が、複数本、熱源調整室S2と空調室S1とに跨って配設されている。すなわち、図1では、ケース2aが直線状に形成されたものを説明したが、ここでは、ケース2aが前記吸熱部3と放熱部4との間の適所で略直角に曲折されており、冷却ユニット1が断熱壁21を貫通し、吸熱部3が、空調室S1の加熱器15と加湿器16との間の適所に配置されている一方、放熱部4が熱源調整室S2に配置されている。なお、図2では、ケース2aが前記吸熱部3と放熱部4との間の適所で曲折された形態を示しているが、これに限らず、ケース2aが別の部位で曲折されたものでもよいし、曲折個所が複数存在してもよいし、或いは直線状に形成されたものでもよい。
【0038】
熱源調整室S2は、前記断熱壁21の一外壁面21aと、該外壁面21aに対向する対向壁17と、該対向壁17の各端部と断熱壁21の外壁面21aとの間に設置された、複数の孔を有するフィルタ18,19とを備えて構成されており、第1、第2放熱部5,6は、前記断熱壁21の外壁面21a及び対向壁17に沿って上下に一定の距離を介して配置されている。第1放熱部5を第2放熱部6より上方に配置することにより、ケース2a内の作動流体が効率よく循環される。
【0039】
対向壁17には複数の孔(図示せず:前記排気口の一例)が形成されているとともに、前記対向壁17のうち第1放熱部5と対向する位置には、送風動作を行うファン20が設置されており、このファン20と第2放熱部6に備えられるファン10との作動により、熱源調整室S2の内部と外部との間で空気が循環する循環構造が構成されている。すなわち、ファン10,20が作動すると、熱源調整室S2内の空気が対向壁17に形成された孔から外部に排出され、この排出により発生する負圧により、熱源調整室S2の外部から前記フィルタ18,19を介して熱源調整室S2の内部に外気が取り込まれることで、熱源調整室S2の内部と外部との間で空気が循環する。循環する空気は、第1放熱部5のヒートシンク7及び第2放熱部6のペルチェ素子8の放熱側の基板を通過し、これらの部材による放熱効率を高める。
【0040】
図3は、恒温恒湿器100の電気的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、恒温恒湿器100は、図1に示す冷却ユニット1と、雰囲気温湿度センサ101と、外気温度センサ102と、吸熱部温度センサ103と、ペルチェ温度センサ104と、入力操作部105と、制御部106とを備える。
【0041】
雰囲気温湿度センサ101は、試験室R1内の空気(雰囲気)の温度及び湿度を検出するものであり、例えば、空調室S1から試験室R1に空気が流出する側の連通部11よりやや下流側の位置(図2の点Aで示す位置)に設置される。なお、雰囲気温湿度センサ101の設置位置は、前述の位置に限らず、例えば試験室R1から空調室S1に空気が流出する側の連通部11よりやや上流側の位置(図2の点Bで示す位置)等に設置してもよい。
【0042】
外気温度センサ102は、第1放熱部5による放熱動作で利用する外気の温度を検出するものであり、例えば、フィルタ19よりやや下流側の位置(図2の点Cで示す位置)に設置される。吸熱部温度センサ103は、吸熱部3近傍の位置において空調室S1内の空気の温度を検出するものである。ペルチェ温度センサ104は、ペルチェ素子8の温度を検出するものであり、例えば、ペルチェ素子8の表面温度を検出する熱電対や測温低抗体が採用される。なお、ペルチェ温度センサ104は、前述の熱電対や測温低抗体に限定されず、前記表面温度を非接触方式で検出するものでもよい。ペルチェ温度センサ104の検出温度は、ペルチェ素子8の劣化や故障を防止するため、該ペルチェ素子8の温度が予め定められた温度を超えた場合に該ペルチェ素子8の駆動を停止するために設けられたセンサである。
【0043】
入力操作部105は、恒温恒湿器100の動作を開始又は終了させるための開始/終了ボタンや、試験室R1内の空気の目標温湿度を設定するための設定ボタン等、機械的なボタンやスイッチ、或いはタッチパネルディスプレイで構成される仮想的なボタン等を含むものである。
【0044】
制御部106は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAM等が内蔵されたマイクロコンピュータからなり、前記制御プログラムにより、機能的に、第1ファン駆動制御部1061と、第2ファン駆動制御部1062と、ペルチェ駆動制御部1063と、加湿制御部1064と、加熱制御部1065とを有する。
【0045】
第1ファン駆動制御部1061は、空調室S1に設置されたファン14の駆動を制御するものであり、本実施形態においては、試験室R1内の空気の温湿度を調整する必要がある期間は、常時ファン14を作動させる。第2ファン駆動制御部1062は、前記各温度センサ101〜103による検出温湿度と目標温湿度とに基づいて、熱源調整室S2に設置されたファン20の駆動を制御するものである。ペルチェ駆動制御部1063は、前記各温度センサ101〜104による検出温湿度と目標温湿度とに基づいて、第2放熱部6を構成するペルチェ素子8の駆動及びファン10の駆動を制御するものである。加湿制御部1064は、前記各温度センサ101〜104による検出温湿度と目標温湿度とに基づいて、加湿器16による加湿動作を制御するものである。加熱制御部1065は、前記各温度センサ101〜104による検出温湿度と目標温湿度とに基づいて、加熱器15による加熱動作を制御するものである。
【0046】
第1ファン駆動制御部1061は、空調室S1内のファン14を作動させることで、試験室R1と空調室S1との間で空気を循環させる。雰囲気温湿度センサ101により検出される試験室R1の雰囲気温度が、設定された目標温湿度により決定する露点温度(以下、設定露点温度という)より高い場合には、加湿制御部1064は、加湿器16による加湿動作を停止し、第2ファン駆動制御部1062とペルチェ駆動制御部1063とのうち少なくとも一方によって、冷却ユニット1に冷却動作(放熱動作)を行わせる。なお、第2ファン駆動制御部1062及びペルチェ駆動制御部1063により行われる制御内容については、後述する。
【0047】
これにより、冷却ユニット1による冷却前の空気に含まれていた水蒸気の量が、冷却後の空気の温度に対応する飽和水蒸気量より多い場合には、その多い分だけ結露して除湿動作が行われることとなり、その結果、冷却ユニット1の吸熱部3を通過前後の空気を比較すると、吸熱部3を通過後の空気は、吸熱部3を通過前の空気に比べて露点温度が低下することとなる。
【0048】
その後、加熱制御部1065は、加熱器15に加熱動作を行わせ、除湿後の空気の温度を上昇させた空気がファン14の作動により試験室R1に供給される。このような空気の循環が行われるうちに、試験室R1内の空気の温湿度が目標温湿度に近づく。
【0049】
図4は、恒温恒湿器100における制御部106の処理を示すフローチャートである。
【0050】
図4に示すように、恒温恒湿器100の図略の電源がONされ(ステップ♯1でYES)、入力操作部105により目標温湿度が設定された後(ステップ♯2でYES)、動作開始指示が入力操作部105により行われると(ステップ♯3でYES)、制御部106は、前記冷却ユニット1、加熱器15及び加湿器16を用いて前記試験室R1の雰囲気について温湿度の制御を実行する(ステップ♯4)。
【0051】
そして、制御部106は、動作停止指示がなされるまで(ステップ♯5でNO)、ステップ♯4の処理を実行し、動作停止指示がなされると(ステップ♯5でYES)、温湿度の制御を停止する(ステップ♯6)。さらに、制御部106は、電源がOFFされたか否かを判断し(ステップ♯7)、電源がOFFされていないと判断した場合には(ステップ♯7でNO)、ステップ♯2に戻り、電源がOFFされたものと判断した場合には(ステップ♯7でYES)、一連の処理を終了する。
【0052】
次に、図4に示すフローチャートのステップ♯4における温湿度の制御について詳細に説明する。図5は、この温湿度制御を示す動作マトリックスを表した図である。図5(a)は、温度を横軸、湿度を縦軸として、目標に設定され得る温湿度の範囲を示したグラフであり、点線で示す範囲が目標に設定され得る温湿度の範囲を示している。また、その範囲を、(1)高温高湿領域、(2)高温低湿領域、(3)中温高湿領域、(4)中温低湿領域及び(5)低温高湿領域の5つの領域に分割したとき、本実施形態では、制御部106(第2ファン駆動制御部1062及びペルチェ駆動制御部1063)は、各温湿度領域(1)〜(5)で、第1、第2放熱部5,6の動作を図5(b)に示すように動作させる。なお、図5(b)において、「中温」とは外気温度よりもやや高い温度であり、「低温」とは外気温度よりも低い温度である。また、試験室R1内の空気の初期温度は外気温度と略同一温度であり、また、初期湿度は、図5(b)における「高湿」と「低湿」との間の湿度であるものとする。
【0053】
制御部106は、(1)高温高湿領域では、第1放熱部5も第2放熱部6も作動を停止させる。これは、目標温湿度が高いため、第1、第2放熱部5,6に冷却動作を行わせる必要がないためであり、目標温度が特に高い場合には、加熱器15による加熱動作に加えて、第2放熱部6のペルチェ素子8に冷却動作を行わせる場合と逆向きの直流電流を供給することで該ペルチェ素子8に加熱動作を行わせるようにしてもよい。
【0054】
また、制御部106は、(2)高温低湿領域では、第1放熱部5を作動させる一方、第2放熱部6の作動を停止させる。なお、この場合、第1放熱部5により冷却動作を行う分、加熱器15による加熱動作で補って目標温度の空気を得る。なお、この領域では、第1放熱部5の作動を停止させて、第2放熱部6に加熱動作を行わせるようにしてもよい。
【0055】
制御部106は、(3)中温高湿領域では、加湿器16で露点温度の飽和空気を生成し、この飽和空気を冷却するために第1放熱部5を作動させる一方、第2放熱部6の作動を停止させる。また、制御部106は、(4)中温低湿領域では、(3)中温高湿領域の場合と同様、第1放熱部5を作動させる一方、第2放熱部6の作動を停止させる。これは、冷却ユニット1に流れてきた空気に対して除湿を行う必要があるため、第1放熱部5を作動させている。なお、この場合、第1放熱部5により冷却動作を行う分、加熱器15による加熱動作で補って目標温度の空気を得る。また、制御部106は、(5)低温高湿領域では、第1放熱部5の作動を停止させる一方、第2放熱部6に冷却動作を行わせる。
【0056】
また、試験室R1内の空気の初期温度が外気温度と略同一温度であることを前提としたが、試験室R1内の空気の初期温度が外気温度と異なる温度である場合において、試験室R1内の空気を冷却する必要があるときには、制御部106は、次のような温湿度制御を行うとよい。
【0057】
すなわち、制御部106は、目標温度が外気温度以上の場合と外気温度より低い場合とで異なる制御を行う。具体的には、図5に示すように、制御部106は、試験室R1内の空気を外気温度以上の目標温度まで冷却させる場合には、第1放熱部5を動作させる一方、第2放熱部6を停止させる。これは、第1放熱部5による放熱動作だけで、試験室R1内の空気を速やかに目標温度まで冷却することができるからである。
【0058】
また、制御部106は、試験室R1内の空気を、外気温度を下回る目標温度まで冷却させる場合には、第1、第2放熱部5,6のうち少なくとも第2放熱部6に冷却動作を行わせる。なお、第1放熱部5の作動の有無は、試験室R1内の空気の初期温度の大小に応じて決定するとよい。すなわち、試験室R1内の空気の初期温度が比較的高い場合には、第1放熱部5も作動させる一方、試験室R1内の空気の初期温度が比較的低い(外気温度に近い)場合には、第1放熱部5は作動を停止させる。
【0059】
さらに、目標温度が外気温度より低い場合において、第1放熱部5及び第2放熱部6をともに作動させるときには、次のように制御するのが好ましい。
【0060】
すなわち、ペルチェ駆動制御部1063は、図6に示すように、ファン20の動作により低下していく、前記吸熱部温度センサ103により検出される温度(以下、検出吸熱部温度という)が前記検出外気温度より所定温度αだけ高い温度(以下、判定温度という)に達するまでペルチェ素子8の駆動を待機し、前記検出吸熱部温度が前記判定温度に達すると、ペルチェ素子8の駆動を行う。
【0061】
ペルチェ素子8の駆動開始タイミングを、検出吸熱部温度が前記検出外気温度より所定温度αだけ高い温度に達したタイミングに設定しているのは、次の理由に因る。すなわち、検出吸熱部温度が前記検出外気温度に達したタイミングでペルチェ素子8の駆動を開始すると、ペルチェ素子8の吸熱量が小さいため、該ペルチェ素子8をはじめとする第2放熱部6の構成部品自体の温度が、前記検出外気温度まで低下するのに所要の時間がかかる場合があり、この場合、前記所要の時間によって冷却スピードが一時的に低下することとなる。また、ファン20の動作のみでも速やかに外気温度の近傍まで冷却することができる。
【0062】
以上のことから、ペルチェ素子8の駆動開始タイミングを、検出吸熱部温度が前記検出外気温度より所定温度αだけ高い温度に達したタイミングに設定することで、ファン20によって検出吸熱部温度を前記検出外気温度まで低下させるまでの間に、第2放熱部6の構成部品自体の温度を前記検出外気温度まで低下させることができ、冷却スピードの一時的な低下を防止又は抑制することができるとともに、節電を図ることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態では、従来のような外気を用いて熱媒凝縮側を冷却する構成(第1放熱部5)だけでなく、前述の第2放熱部6を設けたので、試験室R1内の空気の温度を外気温度に向けて大きな放熱量で冷却することができる上、第2放熱部6によって外気温度よりも低い温度に冷却することができる。
【0064】
また、冷却ユニット1の吸熱部3を露点温度付近に制御することができるため、従来のような圧縮式冷却器等のように試験室R1から流入してきた空気を過度に冷却する(露点温度より大幅に低い温度まで冷却する)ことがない。これにより、冷却ユニット1(吸熱部3)の表面に結露する水の量が少なく、吸熱部3を始めとする冷却ユニット1の構成部品の腐食を抑制することができるとともに、従来に比して生成すべき水蒸気の量を抑制できるから、加湿器16に備える水(加湿用の水)の量を従来に比して低減することができる。
【0065】
また、第1放熱部5を、ヒートパイプ2の他端部に設置し、第2放熱部6を、第1放熱部5と吸熱部3との間の中間位置に設置したので、第2放熱部6の冷却性能を十分に活かした冷却動作を行うことができる。
【0066】
すなわち、吸熱部3の位置で吸熱した作動流体の蒸気は第1放熱部5側に略音速で移動し、第1、第2放熱部5,6をともに動作させた場合、その作動流体は第1放熱部5により冷却され、さらに第2の放熱部6により冷却される。
【0067】
ここで、第1放熱部5がケース2aの熱輸送方向において第2放熱部6より吸熱部3側に設置して、第1、第2放熱部5,6を並行的に作動させた場合において、吸熱温度が外気温度より低いとき、第1放熱部5を駆動すると、第1放熱部5において吸熱(蒸発)作用が発生することとなり、第2放熱部6の冷却性能を十分に活かすことができなくなる。
【0068】
これに対し、本実施形態では、第2放熱部6を第1の放熱部5より吸熱部3側に設置することで、第1放熱部5において吸熱(蒸発)作用が発生するような状況は発生せず、第2放熱部6の冷却性能を十分に活かすことができる。
【0069】
また、第2放熱部6をペルチェ素子8で構成した場合、第1放熱部5によって外気温度の近傍まで冷却した上で、ペルチェ素子8による冷却動作を行うから、比較的低い温度からペルチェ素子8を作動させることとなる。したがって、前記試験室R1内の空気が高温の場合に、ペルチェ素子8自体が低温化するのに多大なエネルギーを要するという状況が発生するのを回避し、第1放熱部5に比して放熱容量の小さいペルチェ素子8でも速やかに試験室R1内の空気を冷却することができる。
【0070】
なお、本件は、前記実施形態の内容に加えて、またはそれに代えて次の実施形態も採用可能である。
【0071】
(1)前記実施形態では、第1放熱部5のヒートシンク7に通気させるファン20を設置したが、本件は、ファン20を必須とするものではなく、ヒートシンク7のみで自然冷却させる構成も含む。
【0072】
(2)ペルチェ素子8への電流供給を停止してもしばらくの間は、第2放熱部6の各構成部品が低温の状態が続くことで、第2放熱部6により作動流体の冷却(吸熱)が行われ、これにより、試験室R1内の空気の温度が目標温度よりさらに低温側に移行することが考えられる。これに鑑みて、試験室R1内の空気が目標温度に達すると、ペルチェ素子8に供給する直流電流の向きを逆向きにして、吸熱側及び放熱側として機能する基板を切り替えることで、試験室R1内の空気の温度が目標温度よりさらに低温側に移行するのを防止又は抑制し、試験室R1内の空気の温度が目標温度に維持されるようにするとよい。また、冷却ユニット1の運転を停止する際にも、前述と同様にペルチェ素子8に逆向きの直流電流を供給して作動流体を外気温度に速やかに戻すようにしても良い。なお、ペルチェ素子8に供給する直流電流の向きの切替えは、自動的に(制御で)行うようにしてもよいし、或いは、操作ボタンを設けて手動で行われるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る恒温恒湿器に備えられる冷却ユニットの一実施形態の機械的構成を示す図である。
【図2】恒温恒湿器の構成を示す断面図である。
【図3】恒温恒湿器の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】冷却装置における制御部の処理を示すフローチャートである。
【図5】ファン及びペルチェ素子の動作を示す動作マトリックスを示す図である。
【図6】目標温度が外気温度より低い場合における第1、第2放熱部の作動態様を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1 冷却ユニット
2 ヒートパイプ
3 吸熱部
4 放熱部
5,6 第1,第2放熱部
7 ヒートシンク
8 ペルチェ素子
10,14,20 ファン
11,12 連通部
13 仕切壁
15 加熱器
16 加湿器
17 対向壁
18,19 フィルタ
21 断熱壁
21a 外壁面
100 恒温恒湿器
101 雰囲気温湿度センサ
102 外気温度センサ
103 吸熱部温度センサ
104 ペルチェ温度センサ
105 入力操作部
106 制御部
1061,1062 第1、第2ファン駆動制御部
1063 ペルチェ駆動制御部
1064 加湿制御部
1065 加熱制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室と、前記試験室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するために設けられた空調室と、前記試験室と空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記試験室から空調室に流入した空気を加湿するための加湿部と、前記空気を冷却するための冷却部とを備えた恒温恒湿器であって、
前記冷却部は、
前記空調室内に配置された吸熱部と、
前記空調室外に配置された、第1の放熱部及び第2の放熱部を有する放熱部と、
封入体内に封入された作動流体にヒートパイプ現象を生じさせて、前記吸熱部から前記放熱部に熱輸送を行うための熱輸送部とを備え、
前記吸熱部及び前記第1、第2の放熱部は前記熱輸送部に熱的に接続され、
前記第1の放熱部は、外気を冷却媒体として前記熱輸送部の熱を放出させるものであり、
前記第2の放熱部は、前記熱輸送部の温度が外気温度よりも低温にまで下がるように前記熱輸送部の熱を放出させるものである恒温恒湿器。
【請求項2】
前記第2の放熱部は、前記熱輸送部の熱輸送方向において前記第1の放熱部より前記吸熱部側に設置されている請求項1に記載の恒温恒湿器。
【請求項3】
前記試験室内の空気の温湿度を検出する温湿度検出部と、
前記温湿度検出部の出力信号に基づいて、前記加湿部及び前記冷却部の動作を制御する制御部と
を備える請求項1または2に記載の恒温恒湿器。
【請求項4】
前記吸熱部の温度を検出する吸熱部温度検出部を備え、
前記制御部は、前記試験室内の空気を冷却させるべき期間は前記第1の放熱部を動作させ、前記吸熱部温度検出部により検出される温度が予め定められた温度まで低下すると、前記第2の放熱部の作動を開始させる請求項3に記載の恒温恒湿器。
【請求項5】
前記第2の放熱部は、ペルチェ素子を用いて構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の恒温恒湿器。
【請求項6】
前記第1の放熱部は、前記第2の放熱部より上方に配置されている請求項1ないし5のいずれかに記載の恒温恒湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−203211(P2008−203211A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42632(P2007−42632)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】