説明

恒温槽付水晶発振器の温度制御回路

【課題】 恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供する。
【解決手段】 差動増幅器ICの入力に電圧を出力するブリッジ回路において対局に第1のデジタルポテンショメーターRpo1と第2のデジタルポテンショメーターRpo2とを設け、第1のデジタルポテンショメーターRpo1が、恒温槽付水晶発振器における水晶振動子の頂点温度を調整するために抵抗値を可変とし、第2のデジタルポテンショメーターRpo2が、第1のデジタルポテンショメーターRpo1の温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とし、差動増幅器ICからの制御電圧によってパワートランジスタQがヒーター抵抗H1の発熱を制御する恒温槽付水晶発振器の温度制御回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高安定の発振周波数を得ることができる恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)に係り、特に、水晶の頂点温度に調整すると共に温度傾斜をキャンセルできる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
恒温槽付水晶発振器は、水晶振動子の動作温度を一定に維持することから、周波数温度特性に依存した周波数変化を引き起こすことなく、高安定の発振周波数が得られるものである。
水晶振動子は、恒温槽に収納され、恒温槽は、温度制御回路によってその槽内の温度を一定に保持するよう制御される。
【0003】
[従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路:図4]
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路について図4を参照しながら説明する。図4は、従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の回路図である。
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、図4に示すように、基本的に、サーミスタTH1と、差動増幅器(OPAMP)ICと、パワートランジスタQと、ヒーター抵抗H1とを有している。
【0004】
[接続関係]
ヒーター抵抗H1の一端には、電源電圧VCCが印加され、ヒーター抵抗H1の他端はパワートランジスタQのコレクタに接続され、パワートランジスタQのエミッタはグランド(GND)に接地されている。
【0005】
また、サーミスタTH1の一端にも、電源電圧VCCが印加され、サーミスタTH1の他端が抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端が抵抗RRの一端に接続され、抵抗RRの他端が接地されている。
【0006】
また、抵抗R2の一端にも、電源電圧VCCが印加され、抵抗R2の他端が抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端が接地されている。
また、差動増幅器ICには、電源電圧VCCが印加され、GNDにも接続している。
【0007】
そして、サーミスタTH1の他端と抵抗R1の一端との間の点が、抵抗R4を介して差動増幅器ICの一方の端子(−端子)に接続され、抵抗R2の他端と抵抗R3の一端との間の点が、差動増幅器ICの他方の端子(+端子)に接続されている。
更に、差動増幅器ICの出力端子と−端子とを、抵抗R5を介して接続している。
そして、差動増幅器ICの出力端子は、抵抗R6を介してパワートランジスタQのベースに接続されている。
【0008】
[各部]
サーミスタTH1は、温度によって抵抗値が変化する感温素子であり、水晶振動子の動作温度を検出する。
差動増幅器ICは、一方の入力端子(−端子)に、サーミスタTH1と抵抗R1との間の電圧が抵抗R4を介して入力されると共に差動増幅器ICの出力が抵抗R5を介して帰還して入力され、他方の入力端子(+端子)に、抵抗R2と抵抗R3との間の電圧が入力されて、2入力端子の電圧の差分を増幅する。
【0009】
パワートランジスタQは、ベースに差動増幅器ICの出力が抵抗R6を介して入力され、ベースへの印加電圧に応じてコレクタとエミッタとの間に電流を流すことで、ヒーター抵抗H1にも電流を流すようになっている。
ヒーター抵抗H1は、流れる電流に応じて発熱する。
ここで、パワートランジスタQとヒーター抵抗H1が熱源となっている。
【0010】
尚、上記構成は、恒温槽内の温度を一定に保つための構成であるが、槽内の温度を変化させるためには、抵抗RRの抵抗値を変化させることで対応するものである。
【0011】
[周波数温度特性]
水晶振動子の周波数温度特性は、三次の曲線になっている。OCXOは、一番安定になる頂点温度(一般的に80〜95℃)に恒温槽の温度を調整して高安定を実現している。
その頂点温度が、実際のところ約15℃程度の幅が存在するため、抵抗RRによる調整が必ず必要になる。
【0012】
OCXOは、高精度の測定器や基地局で10年、20年と長期間使用されるため、固定抵抗RRを一つ一つ実装している。
仮に、アナログ機械式の可変抵抗を使用した場合は、振動、熱又は酸化による接触面の劣化により抵抗値が変化し、恒温槽の設定温度が変化して周波数が変化してしまうと、社会的に大きな問題になるので、一般的には使用しないようになっている。
【0013】
更に、水晶振動子単体は、製造時に頂点温度は容易に分かるが、実際の発振回路に組み立てられると、発振回路及び恒温槽部分の組み立てばらつきにより、その頂点温度からずれるのが一般的であり、安易に調整できないため、一個一個外部から切替器で測定し、抵抗値を変えている。
【0014】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2011−004382号公報「恒温型の水晶発振器」(日本電波工業株式会社)[特許文献1]、特開平07−240628号公報「恒温槽の制御回路及びこれを用いた水晶発振器」(日本電波工業株式会社)[特許文献2]、特開2000−183649号公報「高安定圧電発振器」(東洋通信機株式会社)[特許文献3]がある。
【0015】
特許文献1には、恒温槽方水晶発振器の温度制御回路において、オペアンプ(差動増幅器)14の入力端子(+端子)に入力される基準電圧を、リニア抵抗12と抵抗13Bで分圧された電圧とし、リニア抵抗12は周辺温度に応じて抵抗値を変化させることが示されている。
【0016】
特許文献2には、恒温槽の制御回路において、差動増幅回路7に入力端子(−端子)に入力される電圧を、サーミスタ10とデジタル制御可変抵抗器(デジタルポテンショメーター:DPM)18で分圧された電圧とし、DPM18が外部からの信号によって抵抗値が設定されることが示されている。
【0017】
特許文献3には、高安定水晶発振器の温度制御部において、ヒーターH1,H2を動作させるトランジスタTr2のゲートに入力される電圧を、サーミスタThと、トランジスタTr3及びデジタル可変抵抗ICRv1で分圧された電圧とし、Rv1の抵抗値を外部から設定できるようにしたことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−004382号公報
【特許文献2】特開平07−240628号公報
【特許文献3】特開2000−183649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来の恒温槽付水晶発振器では、回路組み立て後に、水晶振動子の頂点温度がずれることに対して、外部から抵抗値を変える作業を行うようにしているので、製造工程における準備や測定に時間が掛かかっていたという問題点があった。
【0020】
それに、幅約15℃の調整をチップ抵抗器で行う場合には、実際のチップ抵抗は、24数列若しくは96数列が一般的で、本来ならば水晶振動子の頂点温度に合わせた抵抗値を有する抵抗を実装することが望ましいが、必ずしも頂点になる抵抗が選ばれるとは限らないといった問題点があった。
【0021】
また、頂点温度を調整する抵抗をポテンショメーターに変更した場合に、ポテンショメーターは+100〜800ppm/℃の温度傾斜を持つため、高安定化できないという問題点があった。
【0022】
更に、図4に示した従来の温度制御回路では、槽内の温度を一定に保つように動作しているが、実際には極小だが温度特性を持っている。そのため、温度特性による変化を補正するために、抵抗RRの代わりにダイオードを設けて調整するが考えられる。
ダイオードは、順方向電圧に温度依存性があり、温度特性による変化を補正することができる。
【0023】
しかしながら、その順方向電圧は、0.7Vであり、一個補正で0.7V、二個補正で1.4Vと電圧が固定されてしまうため、昨今の主流の3.3Vや2.5Vといった低電圧の場合に、使いづらい、または使えないということが発生していた。
【0024】
それを解決するために、特許文献1の補正方法が考案されており、これは、低電圧でも使用できるようになっている。
しかしながら、上述のように、OCXOは、周波数偏差10^-9(ppb)といった高い安定度を有すること、更に恒温槽構造の複雑性から、一個一個に固有の温度特性を持つことがあるため、特許文献1の補正方法を用いても、機械的に個々に調整する必要があり、従来と同様に工程時間が掛かるという場合があった。
【0025】
更に、特許文献1の補正方法は、一方向にしか補正できないという欠点があった。その補正をすべき方向は、複数の要素が関与し、机上の設計のみでは分からず試作により判明し、調整するため試作に時間が掛かるということがあった。
【0026】
また、特許文献2では、差動増幅器に入力される電圧を、サーミスタとデジタルポテンショメーターによって分圧された電圧とすることで、デジタルポテンショメーターにおける抵抗値を外部から可変にすることで、発振周波数の設定作業を容易に行うことが記載されているが、ポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできるものとはなっていない。
【0027】
また、特許文献3では、ヒーターを動作するトランジスタのゲートへの入力電圧を、サーミスタとトランジスタ及びデジタル可変抵抗ICで分圧された電圧とすることで、恒温槽の温度を低くして、電子部品の劣化を軽減することが記載されているが、デジタル可変抵抗ICの温度傾斜をキャンセルできるものとはなっていない。
【0028】
尚、特許文献1では、オペアンプに入力される基準電圧に対して、周辺温度によって抵抗値が変化するリニア抵抗を設けて、温度変化に対して基準電圧の安定化を図っているが、ポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルすることについては開示されていない。
【0029】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給され、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を他端に出力するサーミスタと、サーミスタの他端に一端が接続する第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、抵抗値をデジタル制御で可変にする第1のデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給され、抵抗値をデジタル制御で可変にする第2のデジタルポテンショメーターと、第2のデジタルポテンショメーターの他端に一端が接続し、他端が接地する第2の抵抗と、サーミスタの他端と第1の抵抗の一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2のデジタルポテンショメーターの他端と第2の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第3の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタとを有することを特徴とする。
【0031】
本発明は、上記温度制御回路において、第1のデジタルポテンショメーターが、恒温槽付水晶発振器における水晶振動子の頂点温度を調整するために抵抗値を可変とし、第2のデジタルポテンショメーターが、第1のデジタルポテンショメーターの温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とすることを特徴とする。
【0032】
本発明は、上記温度制御回路において、第2のデジタルポテンショメーターの抵抗値を第1のデジタルポテンショメーターの抵抗値より大きくしたことを特徴とする。
【0033】
本発明は、上記温度制御回路において、電源電圧と第2のデジタルポテンショメーターの一端との間に直列に第4の抵抗を設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明は、上記温度制御回路において、第2のデジタルポテンショメーターに並列に第5の抵抗を設けたことを特徴とする。
【0035】
本発明は、上記温度制御回路において、サーミスタの他端と第1の抵抗の一端との間の電圧が、第6の抵抗を介して差動増幅器の一方の入力端子に入力され、差動増幅器の出力が、第7の抵抗を介してパワートランジスタのベースに入力されることを特徴とする。
【0036】
本発明は、恒温槽付水晶発振器において、上記温度制御回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ヒーター抵抗が発熱し、サーミスタが温度に応じた電圧を出力し、サーミスタの他端に第1の抵抗と第1のデジタルポテンショメーターが直列に接続されて接地され、電源電圧に第2のデジタルポテンショメーターと第2の抵抗が直列に接続されて接地され、サーミスタの他端と第1の抵抗の一端との間の電圧が、差動増幅器の一方の入力端子に入力されると共に、第2のデジタルポテンショメーターの他端と第2の抵抗の一端との間の電圧が、差動増幅器の他方の入力端子に入力され、出力が第3の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧を出力し、パワートランジスタのコレクタがヒーター抵抗に接続し、ベースが差動増幅器の出力を入力し、エミッタが接地して、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御する恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路としているので、恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る第2の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第3の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
【図4】従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、差動増幅器の入力に電圧を出力するブリッジ回路において対局に第1のデジタルポテンショメーターと第2のデジタルポテンショメーターとを設け、第1のデジタルポテンショメーターが、恒温槽付水晶発振器における水晶振動子の頂点温度を調整するために抵抗値を可変とし、第2のデジタルポテンショメーターが、第1のデジタルポテンショメーターの温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とし、差動増幅器からの制御電圧によってパワートランジスタがヒーター抵抗の発熱を制御するものであり、恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできるものである。
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器は、上記温度制御回路を組み込んだ構成である。
【0040】
[恒温槽付水晶発振器の温度制御回路:図1]
本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路(第1の回路)は、図1に示すように、基本的に、サーミスタTH1と、差動増幅器(OPAMP)ICと、パワートランジスタQと、ヒーター抵抗H1とを有している。
【0041】
[第1の回路の接続関係]
ヒーター抵抗H1の一端には、電源電圧VCCが印加され、ヒーター抵抗H1の他端はパワートランジスタQのコレクタに接続され、パワートランジスタQのエミッタはグランド(GND)に接地されている。
【0042】
また、サーミスタTH1の一端にも、電源電圧VCCが印加され、サーミスタTH1の他端が抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端がデジタルポテンショメーターRpo1の一端に接続され、デジタルポテンショメーターRpo1の他端が接地されている。
【0043】
また、デジタルポテンショメーターRpo2の一端にも、電源電圧VCCが印加され、デジタルポテンショメーターRpo2の他端が抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端が接地されている。尚、抵抗R3は請求項における第2の抵抗に相当している。
また、差動増幅器ICには、電源電圧VCCが印加され、GNDに接続している。
【0044】
そして、サーミスタTH1の他端と抵抗R1の一端との間の点が、抵抗R4を介して差動増幅器ICの一方の入力端子(−端子)に接続され、デジタルポテンショメーターRpo2の他端と抵抗R3の一端との間の点が、差動増幅器ICの他方の入力端子(+端子)に接続されている。
更に、差動増幅器ICの出力端子と入力端子(−端子)とを、抵抗R5を介して帰還して接続している。尚、抵抗R5は請求項における第3の抵抗に相当している。
そして、差動増幅器ICの出力端子は、抵抗R6を介してパワートランジスタQのベースに接続されている。
【0045】
[第1の回路の各部]
[サーミスタTH1]
サーミスタTH1は、温度によって抵抗値が変化する感温素子であり、水晶振動子の動作温度を検出する。
[差動増幅器IC]
差動増幅器ICは、一方の入力端子(−端子)に、サーミスタTH1と抵抗R1との間の電圧が抵抗R4を介して入力されると共に差動増幅器ICの出力が抵抗R5を介して帰還して入力され、他方の入力端子(+端子)に、デジタルポテンショメーターRpo2と抵抗R3との間の電圧が入力されて、2入力端子の電圧の差分を増幅する。
【0046】
[パワートランジスタQ]
パワートランジスタQは、ベースに差動増幅器ICの出力が抵抗R6を介して入力され、ベースへの印加電圧に応じてコレクタとエミッタとの間に電流を流すことで、ヒーター抵抗H1にも電流を流すようになっている。
[ヒーター抵抗H1]
ヒーター抵抗H1は、流れる電流に応じて発熱する。
ここで、パワートランジスタQとヒーター抵抗H1が熱源となっている。
【0047】
[デジタルポテンショメーターRpo1,Rpo2]
デジタルポテンショメーターRpo1,Rpo2は、I2C(Inter Integrated Circuit)又はSPI(Serial Peripheral Interface)で外部との通信を行い、デジタル調整によって抵抗値を可変にできるようになっている。これにより、調整部品のハンダ付けが不要になる。
また、デジタルポテンショメーターRpo1,Rpo2は、長期に安定な不揮発性のものを使用する。そして、デジタルポテンショメーターの抵抗値は、例えば、+100〜800ppm/℃程度の温度傾斜を持っている。
【0048】
そして、デジタルポテンショメーターは、最適な抵抗値への設定の分解能が高く、例えば、8bit(254分割)で、抵抗値10kΩ品で考えてみると、約3.9Ωステップで可変にできる。
従来のチップ抵抗では、24数列で数百Ωステップ、96数列でも数十Ωステップと粗いものであったが、本回路では、抵抗値設定の分解能が高いため、水晶振動子の頂点温度からずれることなく、周波数温度特性を改善できる。
【0049】
[デジタルポテンショメーターRpo1の役割]
次に、デジタルポテンショメーターRpo1の役割について説明する。
デジタルポテンショメーターRpo1は、OCXOの組み立て後に、水晶振動子の頂点温度に調整するために、抵抗値を可変として調整し、最適な抵抗値に設定する。
【0050】
[デジタルポテンショメーターRpo2の役割]
次に、デジタルポテンショメーターRpo2の役割について説明する。
デジタルポテンショメーターRpo2は、デジタルポテンショメーターが抵抗値の温度傾斜を持っているため、その温度傾斜をキャンセルするために抵抗値の調整を行う。
【0051】
つまり、デジタルポテンショメーターRpo2は、デジタルポテンショメーターRpo1の温度傾斜を打ち消すために、ブリッジ回路(サーミスタTH1、抵抗R1、デジタルポテンショメーターRpo1、デジタルポテンショメーターRpo2、抵抗R3で構成される回路)の対局に設けられている。
【0052】
[デジタルポテンショメーターRpo1,Rpo2の効果]
抵抗R1とデジタルポテンショメーターRpo1の抵抗値(R1+Rpo1)とデジタルポテンショメーターRpo2の抵抗値(Rpo2)が等しくなるように設定しておけば、各々のデジタルポテンショメーターが持つ温度傾斜をキャンセルできる。
従って、デジタルポテンショメーターRpo1の抵抗値(Rpo1)よりデジタルポテンショメーターRpo2の抵抗値(Rpo2)を大きく設定する(抵抗値(Rpo2)>抵抗値(Rpo1))。
【0053】
また、デジタルポテンショメーターの温度傾斜はリニアであるから、温度特性の変化に対して扱い易く、補正回路として適している。
更に、デジタルポテンショメーターRpo1とデジタルポテンショメーターRpo2の両方を調整することにより、プラス方向でもマイナス方向でも補正可能となる。これにより、従来にない高安定のOCXOを実現できる。
【0054】
デジタルポテンショメーターは、ハイブリッドIC製造時に実装されるため、従来の回路のように抵抗をハンダで後付けして洗浄するといったことがなくなり、工程の短縮、品質の向上を実現できる。
【0055】
また、デジタルポテンショメーターは、PC(Personal Computer)のみで制御できるため、従来の回路のように、抵抗切替装置が不要となり、頂点温度を検出し、抵抗値を設定する工程を自動化できる。
【0056】
更に、デジタルポテンショメーターは、長期信頼性に優れた不揮発性の製品を使用するため、アナログのポテンショメーターで問題となっていた機械的衝撃、または長期使用による接点の劣化等を回避することができる。
【0057】
[第2の回路:図2]
次に、本発明の実施の形態に係る第2の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路(第2の回路)について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る第2の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
第2の回路は、図2に示すように、電源電圧VCCが接続するデジタルポテンショメーターRpo2の一端側に直列に抵抗R7を設けた構成であり、その他の構成は、第1の回路と同様である。
【0058】
デジタルポテンショメーターRpo2に直列に抵抗R7を設けることで、デジタルポテンショメーターRpo2の感度を鈍くすることができ、それにより抵抗値の調整がし易くなる効果がある。
【0059】
[第3の回路:図3]
次に、本発明の実施の形態に係る第3の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路(第3の回路)について図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る第3の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成ブロック図である。
第3の回路は、図3に示すように、デジタルポテンショメーターRpo2に並列に抵抗R8を接続した構成であり、その他の構成は、第1の回路と同様である。
【0060】
デジタルポテンショメーターRpo2に並列に抵抗R8を設けることで、デジタルポテンショメーターRpo2での抵抗値をより微調整できる効果がある。
【0061】
[実施の形態の効果]
本回路によれば、差動増幅器ICの入力に電圧を出力するブリッジ回路において対局に第1のデジタルポテンショメーターRpo1と第2のデジタルポテンショメーターRpo2とを設け、第1のデジタルポテンショメーターRpo1が、恒温槽付水晶発振器における水晶振動子の頂点温度を調整するために抵抗値を可変とし、第2のデジタルポテンショメーターRpo2が、第1のデジタルポテンショメーターRpo1の温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とし、差動増幅器ICからの制御電圧によってパワートランジスタQがヒーター抵抗H1の発熱を制御するものであり、恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできる効果がある。
【0062】
尚、本回路を恒温槽付水晶発振器に組み込んだ構成とすることで、高安定な発振器を実電できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、恒温槽付水晶発振器の水晶振動子の頂点温度に調整すると共にポテンショメーターの温度傾斜をキャンセルできる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に好適である。
【符号の説明】
【0064】
H1...ヒーター抵抗、 IC...差動増幅器、 R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,RR...抵抗、 Rpo1,Rpo2...デジタルポテンショメーター、 TH1...サーミスタ、 Q...パワートランジスタ、 VCC...電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、
電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、
電源電圧が一端に供給され、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を他端に出力するサーミスタと、
前記サーミスタの他端に一端が接続する第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、抵抗値をデジタル制御で可変にする第1のデジタルポテンショメーターと、
電源電圧が一端に供給され、抵抗値をデジタル制御で可変にする第2のデジタルポテンショメーターと、
前記第2のデジタルポテンショメーターの他端に一端が接続し、他端が接地する第2の抵抗と、
前記サーミスタの他端と前記第1の抵抗の一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、前記第2のデジタルポテンショメーターの他端と前記第2の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第3の抵抗を介して前記一方の入力端子に帰還して、前記他方の入力端子に入力される電圧と前記一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、
前記ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、前記差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、前記差動増幅器からの制御電圧によって前記ヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタとを有することを特徴とする温度制御回路。
【請求項2】
第1のデジタルポテンショメーターは、恒温槽付水晶発振器における水晶振動子の頂点温度を調整するために抵抗値を可変とし、
第2のデジタルポテンショメーターは、前記第1のデジタルポテンショメーターの温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とすることを特徴とする請求項1記載の温度制御回路。
【請求項3】
第2のデジタルポテンショメーターの抵抗値を第1のデジタルポテンショメーターの抵抗値より大きくしたことを特徴とする請求項1又は2記載の温度制御回路。
【請求項4】
電源電圧と第2のデジタルポテンショメーターの一端との間に直列に第4の抵抗を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の温度制御回路。
【請求項5】
第2のデジタルポテンショメーターに並列に第5の抵抗を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の温度制御回路。
【請求項6】
サーミスタの他端と第1の抵抗の一端との間の電圧が、第6の抵抗を介して差動増幅器の一方の入力端子に入力され、
前記差動増幅器の出力が、第7の抵抗を介してパワートランジスタのベースに入力されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の温度制御回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか記載の温度制御回路を備えたことを特徴とする恒温槽付水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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