患者の生理的データを取得するためのシステム及び方法
本発明は、ベッドにいる患者の心肺及び/又は活動データを取得するためのシステム及び方法に関する。生理的データ、特にベッドにいる患者の心肺データ及び/又は活動データを取得するためのシンプルかつ確実な技術を提供するため、ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドを提供するステップと、前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するステップと、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するステップとを有する方法が示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生理的データを取得するためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、ベッドにいる患者の心肺及び/又は活動データを取得するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
力又は圧力センサなどの各種センサを用いたベッドにいる患者のバイタルボディサインなどの生理的データの測定は、従来技術において知られている。これらの技術の効果は、患者の体に電極を貼ることなく、又はベルトやテクスタイルなどの特殊なセンサを装着する必要なく、生理的データの測定が可能であることである。しかしながら、ベッドへのこれらのセンサの一体化は、複雑であるか、又は特別に設計されたベッドを必要とする。これらの問題点を解決するための手段が病院のベッドについて提案されてきたが、家庭で用いられる標準的なベッドについては、まだ解決手段は見つけられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ベッドにいる患者の生理的データ、特に心肺データ及び/又は活動データを取得するためのシンプルで信頼できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、上記課題は、患者の生理的データを取得する方法であって、ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドを提供するステップと、前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するステップと、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するステップとを有する方法により実現される。
【0005】
本発明の課題はまた、患者の生理的データを取得するシステムであって、ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドと、前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するよう構成される測定手段と、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析手段とを有するシステムにより実現される。
【0006】
本発明の課題はまた、ベッド構造の弾性変形可能な部材であって、当該部材は、前記ベッド構造に接続可能であり、当該部材は、ベッドにいる患者により当該部材が変形される場合、当該部材の変形データを取得するための少なくとも1つのセンサ要素を有する部材により実現される。
【0007】
本発明の課題はまた、患者の生理的データを取得するため、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、ベッドには、該ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造が設けられ、前記部材が変形される場合、前記部材の変形データが取得され、当該プログラムは、前記コンピュータにより実行されると、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するためのコンピュータ命令を有するコンピュータプログラムにより実現される。
【0008】
本発明の中核となるアイデアは、患者により引き起こされるベッド構造の弾性変形可能な部材の変形、特に湾曲を利用して、ベッドにおける心肺パフォーマンス及び/又は患者活動を取得する技術を提供することである。患者の動きが直接的な方法により、すなわち、センサ構造の変形を測定することによって測定される従来技術による手段と対照的に、本発明によると、ベッド構造の弾性変形可能な部材が変形し、いくつかのセンサがベッド構造の部材の変形を測定するのに使用される。
【0009】
本発明の主要な態様によると、患者の摂動の動きにはあまり反応しないローカルに決定される力の測定を実現するため、弾性変形可能な部材の形態及び位置と共に、センサ要素のタイプが提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様は、以下の通りである。
・ユーザの体とベッドフレームとの間には多数の力の封止が存在する。従って、感度の高いセンサが求められる。数量的な(ウェイト)測定は不可能であるか、又は所望されない。
・測定は、完全に目立たないものである。センサは、患者により気付かれない。
・測定は、ユーザのやりとりなく開始及び中止可能である。測定自体は、ベッドにおける患者の有無を検出するよう構成され、自動的に開始及び終了可能である。
・使用されるセンサは、患者に隠蔽され、他人には見えない。このことは、ベッドを見たとき、関係のない人が相違を見つけることができないことを意味する。これは、病気に対する目に見える手がかりを持つことを所望しない病人に対して重要となりうる。
・測定は、ベッドの設計に対して複雑な要求を求めない。本発明の特定の実施例では、ベッドは単にスラットを備えたベッドフレームを求めるのみである。
・さらに、この手段は、低コストにより実現可能である。特に、センサのコストと設置のコストは低い。
・センサは、別々のスラットを備えたフレームが使用される限り、ダブルベッドにも利用可能であり、より大きなベッドに一般的である。
【0011】
本発明によるベッドは、従来のベッド、病院のベッド、カウチ、従来のイス、歯医者のイス、車いす、(手術)テーブルなど、上に乗ったり座ったりするための面又は他の何れかの装置として規定される。しかしながら、本発明は、好ましくは、家庭において適用可能である。従って、ベッドは、好ましくは標準的な家庭用のベッドである。
【0012】
本発明の上記及び他の態様はさらに、従属形式の請求項に規定される以下の実施例に基づき説明される。
【0013】
本発明の方法に関して、本発明は、以下の好適な実施例を有する。本発明の好適な実施例によると、決定するステップは、患者の呼吸及び/又は心臓の活動を決定することを含む。これは、限定されることなく、変形データから呼吸数及び大きさ、脈拍数及び脈拍数のばらつきを抽出することを含む。
【0014】
本発明の他の好適な実施例によると、決定するステップは、患者の動きの活動を決定することを含む。これは、限定されることなく、患者の動き(患者の寝返りなど)、ベッドにいるかに関するデータを決定し、変形データから活動インデックスを計算することを含む。このような決定は、好ましくは、信号レベル(有無検出)と信号変化の大きさ(活動インデックス)との解析に基づき実行される。
【0015】
本発明の他の好適な実施例によると、決定するステップは、呼吸及び/若しくは心臓のパフォーマンス(心肺パフォーマンス)並びに/又は眠りの質を評価することを含む。このような計算は、好ましくは、心臓の動きと呼吸の動きとを分離し、結果として得られる信号及び/又はそれらの周期性のスペクトルを時間領域において解析するのに適した信号フィルタリングを用いることによって実行される。
【0016】
本発明のさらなる他の好適な実施例によると、本方法はさらに、決定するステップの結果を患者及び/又はリモートアドレスに送信するステップを有する。例えば、決定するステップの結果は、コンピュータモニタ又はテレビ装置などのディスプレイを介し患者に通信可能であり、又は患者の状態を改善するためリモートの専門サービスに通信可能である。“リモート”という用語は、本発明によると、患者に関して遠隔として理解される必要がある。リモートアドレスは、例えば、近くの部屋にいる介護する人や世界の他の建物若しくは場所にいる医師チームなどとすることが可能である。
【0017】
本発明のシステムに関して、本発明は、以下の好適な実施例を有する。本発明の好適な実施例によると、弾性変形可能な部材は、ベッド構造に着脱可能に接続される。部材が着脱可能である場合、通常の標準的なベッドは、単に部材を取り外し、本発明によるいくつかのセンサを部材に設け、ベッド構造を再び組み立てることによって、心肺及び/又は活動データを取得するためのベッドに容易かつ迅速に変更可能である。あるいは、オリジナルの部材が、すでにいくつかのセンサ要素を有する代替的な部材と交換可能である。このような代替的な部材は、必要に応じて一般的なスラットを備えたベッドフレームに容易に一体化可能である。部材を交換するため、特別なスタッフは不要である。
【0018】
プライベートな家で使用されるベッドの大多数には、スラットを備えたベッドフレームが備えられているか、又はスラットを備えたベッドフレームに容易かつ低コストにより備えることができる。従って、本発明の他の好適な実施例によると、弾性変形可能な部材は、スラットを備えたベッドフレームのスラットである。スラットを備えたベッドフレームのスラットを用いることによって、ベッドの他の部分が弾性変形可能な部材として使用される対応する測定より、患者の摂動の動きにあまり反応しないローカルに決定される力の測定を可能にする弾性変形可能な部材が選択される。作業位置では、スラットは、好ましくは、両側に取り付けられ、予め圧力が加えられる。スラットを備えたベッドフレームの変わりに、他のタイプのサポートが、弾性変形可能なグリッド又はウェブなどのマットレスを支持するのに使用される場合、このタイプのサポートもまた、本発明による弾性変形可能な部材として使用されてもよい。
【0019】
本発明の他の実施例では、スラットを備えたベッドフレームのスラットの変形でなくフレーム自体の変形が測定される。すなわち、フレームは、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。例えば、フレームがベッド上でそれの4つの角により支持される場合、患者の体重(及び動き)は、フレーム構造の湾曲、特にフレームの縦方向のサポートの湾曲を生じさせる。これは、再びひずみゲージなどのセンサを用いて測定可能である。さらなる実施例では、マットレスは、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。
【0020】
本発明の他の好適な実施例によると、測定手段は、複数のセンサ要素を有する。複数のセンサ要素を使用することによって、測定の信号対ノイズ比が改善される。さらに、多数のセンサ要素が使用される場合、センサ要素は、変形データのローカルな割当てと、患者の動きのマッピングを可能にするように配置可能である。例えば、センサ要素は、患者がいる面に対して直線又はアレイの形式により配置可能である。
【0021】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は、弾性変形可能な部材に附属及び/又は一体化される。好ましくは、センサ要素は、他の着脱不可な方法により部材に接着又は接続される。このようなセンサと弾性変形可能な部材との間の密接な接続によって、極めて正確な測定が実行可能である。さらに、部材の取り扱いが、特に部材が代替的な部材である場合に改善される。
【0022】
好ましくは、心臓の動きなど患者の小さな動きさえ検出するため、極めて感度の高い力センサが使用される。このため、本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素はひずみゲージである。この場合、センサ要素は、好ましくは、スラットを備えたベッドフレームのスラットの中央に配置される。スラットの中間のセンサ要素の配置と共に、スラットの弾性は、センサ要素がベッドの他のエリアにある対応する測定よりも、患者の摂動の動きにあまり反応しないローカルに決定される力の測定を可能にする。
【0023】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は力センサである。この場合、センサ要素は、好ましくは、スラットを備えたベッドフレームのスラットの台、すなわち、スラットの左右のエンドの近くに配置される。スラットが患者の動きにより湾曲される場合(患者の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどによって)、台の力センサは、特に台に生じるスラットの動きの形式により、スラットの変形を検出する。このような台は、しばしばゴムなどから構成される。
【0024】
光学的方法、容量性の測定、誘導的な測定を含むベッドスラットの変形を測定する他の技術的アプローチは、明らかである。しかしながら、耐故障性、低コスト及び一体化の容易性に関して、ひずみゲージの設置が好まれる。
【0025】
本発明の上記及び他の態様は、以下の実施例と添付した図面を参照することにより以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明によるベッドにいる患者の概略図を示す。
【図2】図2は、本発明によるシステムの概略的なブロック図を示す。
【図3】図3は、センサ要素を備えたスラットのあるベッドフレームのスラットを示す。
【図4】図4は、図3の詳細を示す。
【図5】図5は、本発明によるベッドの平面図を示す。
【図6】図6は、図5の詳細を示す。
【図7】図7は、他のセンサ要素を備えたスラットのあるベッドフレームのスラットを示す。
【図8】図8は、図7の詳細を示す。
【図9】図9は、本発明による方法の簡略化されたフローチャートを示す。
【図10】図10は、センサ要素からの生信号によるチャートを示す。
【図11】図11は、生信号から抽出された心拍数と呼吸数とによるチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明によるベッド2にいる患者3の概略図を示す。ベッド2は、図2の概略ブロック図の形式により示されるような患者3の生理的データを取得するためのシステム1の一部である。図示された実施例では、ベッド2は、家庭用の標準的なベッドである。ベッド2は、上部にマットレス5が配置されたスラットを備えたベッドフレーム4を有するベッド構造を有する。マットレス5は、患者3が横たわる表面を形成する。スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6は、両側に設けられ、予め圧力が加えられている。いくつかのスラット6は、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。スラット6は、例えば、患者3の心臓の動き又は呼吸の動き(小さな動き)によって、又は患者3の寝返りなど(大きな動き)によって、患者3の動きにより変形可能である。すなわち、患者3がベッド2に横たわっている間、患者の動きはマットレス5に伝わり、スラットを備えたベッドフレーム4とスラット6とがこれに対応して湾曲する。
【0028】
ベッド2に加えて、システム1はさらに、スラット6の変形の場合にスラット6の変形データを取得するよう構成される測定手段7を有する。測定手段7は、いくつかの選択されたスラット6に附属されるいくつかのセンサ要素を有する。測定手段7はさらに、センサ要素を互いに接続するため、及び/又はセンサ要素をシステム1の他の部分に接続するため必要となるすべての配線を有する。センサ要素が、以下でより詳細に説明される。
【0029】
システム1はさらに、変形データを利用して患者3の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析モジュール8を有する。データ処理解析モジュール8は、結果の決定及び評価と共に、測定されたデータを計算するすべてのタスクを実行するよう構成される処理ユニット9を有する。これは、本発明によると、処理ユニット9においてソフトウェアが実行されるとき、本発明の方法の各ステップを実行するよう構成されるコンピュータ命令を有するコンピュータソフトウェアにより実現される。
【0030】
弾性変形可能な部材として機能するスラット6は、スラットを備えたベッドフレーム4に着脱可能に接続される。従って、通常の標準的なベッドは、単にいくつかのオリジナルスラットをすでにセンサ要素を有したいくつかの代替的なスラット6と交換することによって、容易かつ迅速に変更可能である。
【0031】
図3及び4に示される実施例では、ひずみゲージがセンサ要素として用いられる。ひずみゲージ11は、スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6の中央に配置される。図示された実施例によると、ひずみゲージのグリッド11,11’は、(例えば)木製のスラット6の表面に接着され、配線される。好ましくは、各ひずみゲージグリッドは、スラット6の上側に2つの第1ひずみゲージ11と、スラット6の反対側(下側)に他の2つのひずみゲージ11’とを備えたフルブリッジとして実現される。図4では、スラット6の下側のひずみゲージ11’は、破線により示される。この特定のセットアップは、信号対ノイズ比が最適化され、信号が体の位置の変化の影響をあまり受けないという効果を有する。しかしながら、他のセンサ配置がまた利用可能である。一般に、1つのひずみゲージ11が、本発明による方法を実行するのに十分である。
【0032】
ひずみゲージ11,11’は、容易に個別に取り扱うことが可能な一体化されたスラット部を構成するように、スラット6に接着される。このようなひずみゲージ11,11’とスラット6との間の密接な接続によって、極めて正確な測定が実行可能となる。さらに、スラット6の扱いは、特にスラット6の置換の場合に向上する。代替的なスラット6の構成及び表面は、オリジナルのスラットの構成及び表面と異なっていない。
【0033】
スラット6は、例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなど、患者3の湾曲方向13への動きにより湾曲する場合、ひずみゲージ11は、基本的にはスラット6の湾曲方向に対応する、特に検知方向14への結果として生じるスラットの動きの形式によるスラット6の変形を検出する。
【0034】
図5は、本発明によるベッド2の平面図を示す。多数のスラット6が概略的に示されている。例えば、6つのスラット6にはひずみゲージグリッドが設けられ、図6に示されるように、患者3の実際の寝ている位置に関係なく、最適な信号が抽出可能である。本実施例では、24個の上側のひずみゲージ11と、24個の下側のひずみゲージ11’とが、患者の胸が通常あるスラットを備えたベッドフレーム4の上方領域16においてベッド2の中心線15に対称的に配置されるように利用される。これは、患者の心臓と肺の動きに対する感度を向上させるためである。さらに、測定結果の信号対ノイズ比が向上する。
【0035】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は力センサ21である。図8は、この場合破線により概略的に示される力センサ21を有するスラットを備えたベッドフレーム4のスラット6を示す。力センサ21は、スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6のゴム製の台22の内側に配置される。このため、力センサ22は、スラット6の左右のエンド23と接触している。スラット6が、例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどにより、患者3の動きにより湾曲方向13に湾曲する場合、台22の力センサ21は、検知方向24への台22の結果としてのスラットの動きの形式により、スラット6の変形を検出する。ここでは、検知方向24は、基本的に湾曲方向13に直交する。
【0036】
ここで、本発明の方法がより詳細に説明される。図9は、本発明による方法の簡略化されたフローチャートを示す。まず、ベッド2には、上述されたような少なくとも1つのスラット6を有するベッド構造が設けられる(ステップ110)。例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどにより、患者3の動きによるスラット6の変形の場合、スラット6の変形データが、次のステップ120において、特にひずみゲージ11及び/又は力センサ21などのセンサ要素などの測定手段7により取得される。その後、患者3の生理的データは、次のステップ130において、当該変形データを利用して、データ処理解析モジュール8と上述したコンピュータプログラムにより決定される。
【0037】
図10において、マットレス5の下方においてベッドスラット6に搭載されたひずみゲージ11からの典型的な生信号25によるチャートが示される。生信号25は、上述したセットアップを用いて測定されたものである。このチャートでは、呼吸活動が明らかに観察できる。2つの呼吸サイクル26が示される。心拍(心臓パルス)に寄与する周期的パターン27が重乗される。
【0038】
判定ステップ130は、データ処理解析モジュール8による生信号25の処理を有する。生信号25の処理は、呼吸数と心拍数とを区別するための適切なフィルタリングを含む。その後、結果として得られる信号は、データ処理解析モジュール8によって患者3のために又は一般開業医などの専門家などの他人のために有意義な情報に変換される。好ましくは、患者3の心肺活動がステップ130において決定される。これは、以下に限定するものでないが、生信号25から呼吸数及び大きさ、脈拍数並びに脈拍数のばらつきを抽出することを含む。
【0039】
患者3の心肺活動の決定に加えて又はその代わりに、患者3の全体的な動作活動が決定される。例えば、データ処理解析モジュール8によって、より大きな患者の動き(患者の寝返りなど)が解析され、及び/又は活動インデックスが計算される。判定ステップ130はさらに、患者の心肺パフォーマンス及び/又は眠りの質を評価することを含むものであってもよい。
【0040】
最後に、ステップ140において、判定ステップ130の結果が患者3及び/又はリモートアドレスに送信される。例えば、判定ステップ130の結果は、図1に参照されるように、テレビ装置17などのディスプレイなどを介し、データ処理解析モジュール8から患者3に通信可能である。このため、データ処理解析モジュール8は、テレビ装置17の受信機19と通信するよう構成された送信機18を有する。
【0041】
図11において、例えば、データ処理解析モジュール8からリモートの開業医に送信される生信号25から抽出される心拍数と呼吸数とが示される。ここでは、上述されたひずみゲージ11を用いて測定されたデータから計算された呼吸数28と心拍数29とが示される。この場合、ひずみゲージ信号は、約5分間記録されたものである。この5分間に、患者3は横たわったままである。図11は、より頻繁な心拍数の推定の平均である60秒毎に心拍数の値29を示す。
【0042】
すべての装置は、上述されるような本発明による方法を実行するよう構成される。ベッド2、スラット6を備えたベッドフレーム4、センサ11,21及びデータ処理解析モジュール8などのすべての装置は、データ取得及び処理手順が本発明の方法に従って実行されるように構成及びプログラムされる。
【0043】
データ処理解析モジュール8の処理ユニット9は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせの形式により実現される機能モジュール又はユニットを有してもよい。本発明により必要な技術的効果は、本発明によるコンピュータプログラムの命令に基づき実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、CD−ROM又はDVDなどのキャリアに格納可能であるか、又はインターネットや他のコンピュータネットワークを介し利用可能である。実行前、コンピュータプログラムは、例えば、CD−ROMやDVDプレーヤーを用いて又はインターネットからなど、キャリアからコンピュータプログラムを読み込み、これをコンピュータのメモリに格納することによって、コンピュータにロードされる。コンピュータは、特に中央プロセッサユニット(CPU)、バスシステム、RAMやROMなどのメモリ手段、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクユニットなどのストレージ手段、入出力ユニットを有する。あるいは、本発明の方法は、1以上の集積回路などを用いてハードウェアにより実現可能である。
【0044】
本発明が上述した例示的な実施例の詳細に限定されるものでなく、その趣旨又は実質的な寄与から逸脱することなく他の特定の形式により実現可能であることは、当業者に明らかであろう。従って、本実施例は、例示的なものであって、限定的なものでないと考えられるべきであり、本発明の範囲は、上記説明によってでなく添付した請求項により規定されるものであり、請求項の均等の意味及び範囲内のすべての変更は、それに含まれるものとする。さらに、“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものでなく、“ある”という用語は、複数を排除するものでなく、コンピュータシステム又は他のユニットなどの単一の要素が、請求項に記載される複数の手段の各機能を実現可能であることは明らかであろう。請求項の参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるものでない。
【符号の説明】
【0045】
1 システム
2 ベッド
3 患者
4 スラットを備えたベッドフレーム
5 マットレス
6 スラット
7 測定手段
8 データ処理解析モジュール
9 処理ユニット
10 (フリー)
11 ひずみゲージ
12 スラット中心
13 湾曲方向
14 検知方向
15 中心線
16 上方領域
17 テレビ装置
18 送信機
19 受信機
20 (フリー)
21 力センサ
22 台
23 スラットエンド
24 検知方向
25 生信号
26 呼吸サイクル
27 心拍パターン
28 呼吸数
29 心拍数
110〜130 方法ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生理的データを取得するためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、ベッドにいる患者の心肺及び/又は活動データを取得するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
力又は圧力センサなどの各種センサを用いたベッドにいる患者のバイタルボディサインなどの生理的データの測定は、従来技術において知られている。これらの技術の効果は、患者の体に電極を貼ることなく、又はベルトやテクスタイルなどの特殊なセンサを装着する必要なく、生理的データの測定が可能であることである。しかしながら、ベッドへのこれらのセンサの一体化は、複雑であるか、又は特別に設計されたベッドを必要とする。これらの問題点を解決するための手段が病院のベッドについて提案されてきたが、家庭で用いられる標準的なベッドについては、まだ解決手段は見つけられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ベッドにいる患者の生理的データ、特に心肺データ及び/又は活動データを取得するためのシンプルで信頼できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、上記課題は、患者の生理的データを取得する方法であって、ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドを提供するステップと、前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するステップと、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するステップとを有する方法により実現される。
【0005】
本発明の課題はまた、患者の生理的データを取得するシステムであって、ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドと、前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するよう構成される測定手段と、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析手段とを有するシステムにより実現される。
【0006】
本発明の課題はまた、ベッド構造の弾性変形可能な部材であって、当該部材は、前記ベッド構造に接続可能であり、当該部材は、ベッドにいる患者により当該部材が変形される場合、当該部材の変形データを取得するための少なくとも1つのセンサ要素を有する部材により実現される。
【0007】
本発明の課題はまた、患者の生理的データを取得するため、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、ベッドには、該ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造が設けられ、前記部材が変形される場合、前記部材の変形データが取得され、当該プログラムは、前記コンピュータにより実行されると、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するためのコンピュータ命令を有するコンピュータプログラムにより実現される。
【0008】
本発明の中核となるアイデアは、患者により引き起こされるベッド構造の弾性変形可能な部材の変形、特に湾曲を利用して、ベッドにおける心肺パフォーマンス及び/又は患者活動を取得する技術を提供することである。患者の動きが直接的な方法により、すなわち、センサ構造の変形を測定することによって測定される従来技術による手段と対照的に、本発明によると、ベッド構造の弾性変形可能な部材が変形し、いくつかのセンサがベッド構造の部材の変形を測定するのに使用される。
【0009】
本発明の主要な態様によると、患者の摂動の動きにはあまり反応しないローカルに決定される力の測定を実現するため、弾性変形可能な部材の形態及び位置と共に、センサ要素のタイプが提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様は、以下の通りである。
・ユーザの体とベッドフレームとの間には多数の力の封止が存在する。従って、感度の高いセンサが求められる。数量的な(ウェイト)測定は不可能であるか、又は所望されない。
・測定は、完全に目立たないものである。センサは、患者により気付かれない。
・測定は、ユーザのやりとりなく開始及び中止可能である。測定自体は、ベッドにおける患者の有無を検出するよう構成され、自動的に開始及び終了可能である。
・使用されるセンサは、患者に隠蔽され、他人には見えない。このことは、ベッドを見たとき、関係のない人が相違を見つけることができないことを意味する。これは、病気に対する目に見える手がかりを持つことを所望しない病人に対して重要となりうる。
・測定は、ベッドの設計に対して複雑な要求を求めない。本発明の特定の実施例では、ベッドは単にスラットを備えたベッドフレームを求めるのみである。
・さらに、この手段は、低コストにより実現可能である。特に、センサのコストと設置のコストは低い。
・センサは、別々のスラットを備えたフレームが使用される限り、ダブルベッドにも利用可能であり、より大きなベッドに一般的である。
【0011】
本発明によるベッドは、従来のベッド、病院のベッド、カウチ、従来のイス、歯医者のイス、車いす、(手術)テーブルなど、上に乗ったり座ったりするための面又は他の何れかの装置として規定される。しかしながら、本発明は、好ましくは、家庭において適用可能である。従って、ベッドは、好ましくは標準的な家庭用のベッドである。
【0012】
本発明の上記及び他の態様はさらに、従属形式の請求項に規定される以下の実施例に基づき説明される。
【0013】
本発明の方法に関して、本発明は、以下の好適な実施例を有する。本発明の好適な実施例によると、決定するステップは、患者の呼吸及び/又は心臓の活動を決定することを含む。これは、限定されることなく、変形データから呼吸数及び大きさ、脈拍数及び脈拍数のばらつきを抽出することを含む。
【0014】
本発明の他の好適な実施例によると、決定するステップは、患者の動きの活動を決定することを含む。これは、限定されることなく、患者の動き(患者の寝返りなど)、ベッドにいるかに関するデータを決定し、変形データから活動インデックスを計算することを含む。このような決定は、好ましくは、信号レベル(有無検出)と信号変化の大きさ(活動インデックス)との解析に基づき実行される。
【0015】
本発明の他の好適な実施例によると、決定するステップは、呼吸及び/若しくは心臓のパフォーマンス(心肺パフォーマンス)並びに/又は眠りの質を評価することを含む。このような計算は、好ましくは、心臓の動きと呼吸の動きとを分離し、結果として得られる信号及び/又はそれらの周期性のスペクトルを時間領域において解析するのに適した信号フィルタリングを用いることによって実行される。
【0016】
本発明のさらなる他の好適な実施例によると、本方法はさらに、決定するステップの結果を患者及び/又はリモートアドレスに送信するステップを有する。例えば、決定するステップの結果は、コンピュータモニタ又はテレビ装置などのディスプレイを介し患者に通信可能であり、又は患者の状態を改善するためリモートの専門サービスに通信可能である。“リモート”という用語は、本発明によると、患者に関して遠隔として理解される必要がある。リモートアドレスは、例えば、近くの部屋にいる介護する人や世界の他の建物若しくは場所にいる医師チームなどとすることが可能である。
【0017】
本発明のシステムに関して、本発明は、以下の好適な実施例を有する。本発明の好適な実施例によると、弾性変形可能な部材は、ベッド構造に着脱可能に接続される。部材が着脱可能である場合、通常の標準的なベッドは、単に部材を取り外し、本発明によるいくつかのセンサを部材に設け、ベッド構造を再び組み立てることによって、心肺及び/又は活動データを取得するためのベッドに容易かつ迅速に変更可能である。あるいは、オリジナルの部材が、すでにいくつかのセンサ要素を有する代替的な部材と交換可能である。このような代替的な部材は、必要に応じて一般的なスラットを備えたベッドフレームに容易に一体化可能である。部材を交換するため、特別なスタッフは不要である。
【0018】
プライベートな家で使用されるベッドの大多数には、スラットを備えたベッドフレームが備えられているか、又はスラットを備えたベッドフレームに容易かつ低コストにより備えることができる。従って、本発明の他の好適な実施例によると、弾性変形可能な部材は、スラットを備えたベッドフレームのスラットである。スラットを備えたベッドフレームのスラットを用いることによって、ベッドの他の部分が弾性変形可能な部材として使用される対応する測定より、患者の摂動の動きにあまり反応しないローカルに決定される力の測定を可能にする弾性変形可能な部材が選択される。作業位置では、スラットは、好ましくは、両側に取り付けられ、予め圧力が加えられる。スラットを備えたベッドフレームの変わりに、他のタイプのサポートが、弾性変形可能なグリッド又はウェブなどのマットレスを支持するのに使用される場合、このタイプのサポートもまた、本発明による弾性変形可能な部材として使用されてもよい。
【0019】
本発明の他の実施例では、スラットを備えたベッドフレームのスラットの変形でなくフレーム自体の変形が測定される。すなわち、フレームは、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。例えば、フレームがベッド上でそれの4つの角により支持される場合、患者の体重(及び動き)は、フレーム構造の湾曲、特にフレームの縦方向のサポートの湾曲を生じさせる。これは、再びひずみゲージなどのセンサを用いて測定可能である。さらなる実施例では、マットレスは、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。
【0020】
本発明の他の好適な実施例によると、測定手段は、複数のセンサ要素を有する。複数のセンサ要素を使用することによって、測定の信号対ノイズ比が改善される。さらに、多数のセンサ要素が使用される場合、センサ要素は、変形データのローカルな割当てと、患者の動きのマッピングを可能にするように配置可能である。例えば、センサ要素は、患者がいる面に対して直線又はアレイの形式により配置可能である。
【0021】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は、弾性変形可能な部材に附属及び/又は一体化される。好ましくは、センサ要素は、他の着脱不可な方法により部材に接着又は接続される。このようなセンサと弾性変形可能な部材との間の密接な接続によって、極めて正確な測定が実行可能である。さらに、部材の取り扱いが、特に部材が代替的な部材である場合に改善される。
【0022】
好ましくは、心臓の動きなど患者の小さな動きさえ検出するため、極めて感度の高い力センサが使用される。このため、本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素はひずみゲージである。この場合、センサ要素は、好ましくは、スラットを備えたベッドフレームのスラットの中央に配置される。スラットの中間のセンサ要素の配置と共に、スラットの弾性は、センサ要素がベッドの他のエリアにある対応する測定よりも、患者の摂動の動きにあまり反応しないローカルに決定される力の測定を可能にする。
【0023】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は力センサである。この場合、センサ要素は、好ましくは、スラットを備えたベッドフレームのスラットの台、すなわち、スラットの左右のエンドの近くに配置される。スラットが患者の動きにより湾曲される場合(患者の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどによって)、台の力センサは、特に台に生じるスラットの動きの形式により、スラットの変形を検出する。このような台は、しばしばゴムなどから構成される。
【0024】
光学的方法、容量性の測定、誘導的な測定を含むベッドスラットの変形を測定する他の技術的アプローチは、明らかである。しかしながら、耐故障性、低コスト及び一体化の容易性に関して、ひずみゲージの設置が好まれる。
【0025】
本発明の上記及び他の態様は、以下の実施例と添付した図面を参照することにより以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明によるベッドにいる患者の概略図を示す。
【図2】図2は、本発明によるシステムの概略的なブロック図を示す。
【図3】図3は、センサ要素を備えたスラットのあるベッドフレームのスラットを示す。
【図4】図4は、図3の詳細を示す。
【図5】図5は、本発明によるベッドの平面図を示す。
【図6】図6は、図5の詳細を示す。
【図7】図7は、他のセンサ要素を備えたスラットのあるベッドフレームのスラットを示す。
【図8】図8は、図7の詳細を示す。
【図9】図9は、本発明による方法の簡略化されたフローチャートを示す。
【図10】図10は、センサ要素からの生信号によるチャートを示す。
【図11】図11は、生信号から抽出された心拍数と呼吸数とによるチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明によるベッド2にいる患者3の概略図を示す。ベッド2は、図2の概略ブロック図の形式により示されるような患者3の生理的データを取得するためのシステム1の一部である。図示された実施例では、ベッド2は、家庭用の標準的なベッドである。ベッド2は、上部にマットレス5が配置されたスラットを備えたベッドフレーム4を有するベッド構造を有する。マットレス5は、患者3が横たわる表面を形成する。スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6は、両側に設けられ、予め圧力が加えられている。いくつかのスラット6は、本発明による弾性変形可能な部材として機能する。スラット6は、例えば、患者3の心臓の動き又は呼吸の動き(小さな動き)によって、又は患者3の寝返りなど(大きな動き)によって、患者3の動きにより変形可能である。すなわち、患者3がベッド2に横たわっている間、患者の動きはマットレス5に伝わり、スラットを備えたベッドフレーム4とスラット6とがこれに対応して湾曲する。
【0028】
ベッド2に加えて、システム1はさらに、スラット6の変形の場合にスラット6の変形データを取得するよう構成される測定手段7を有する。測定手段7は、いくつかの選択されたスラット6に附属されるいくつかのセンサ要素を有する。測定手段7はさらに、センサ要素を互いに接続するため、及び/又はセンサ要素をシステム1の他の部分に接続するため必要となるすべての配線を有する。センサ要素が、以下でより詳細に説明される。
【0029】
システム1はさらに、変形データを利用して患者3の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析モジュール8を有する。データ処理解析モジュール8は、結果の決定及び評価と共に、測定されたデータを計算するすべてのタスクを実行するよう構成される処理ユニット9を有する。これは、本発明によると、処理ユニット9においてソフトウェアが実行されるとき、本発明の方法の各ステップを実行するよう構成されるコンピュータ命令を有するコンピュータソフトウェアにより実現される。
【0030】
弾性変形可能な部材として機能するスラット6は、スラットを備えたベッドフレーム4に着脱可能に接続される。従って、通常の標準的なベッドは、単にいくつかのオリジナルスラットをすでにセンサ要素を有したいくつかの代替的なスラット6と交換することによって、容易かつ迅速に変更可能である。
【0031】
図3及び4に示される実施例では、ひずみゲージがセンサ要素として用いられる。ひずみゲージ11は、スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6の中央に配置される。図示された実施例によると、ひずみゲージのグリッド11,11’は、(例えば)木製のスラット6の表面に接着され、配線される。好ましくは、各ひずみゲージグリッドは、スラット6の上側に2つの第1ひずみゲージ11と、スラット6の反対側(下側)に他の2つのひずみゲージ11’とを備えたフルブリッジとして実現される。図4では、スラット6の下側のひずみゲージ11’は、破線により示される。この特定のセットアップは、信号対ノイズ比が最適化され、信号が体の位置の変化の影響をあまり受けないという効果を有する。しかしながら、他のセンサ配置がまた利用可能である。一般に、1つのひずみゲージ11が、本発明による方法を実行するのに十分である。
【0032】
ひずみゲージ11,11’は、容易に個別に取り扱うことが可能な一体化されたスラット部を構成するように、スラット6に接着される。このようなひずみゲージ11,11’とスラット6との間の密接な接続によって、極めて正確な測定が実行可能となる。さらに、スラット6の扱いは、特にスラット6の置換の場合に向上する。代替的なスラット6の構成及び表面は、オリジナルのスラットの構成及び表面と異なっていない。
【0033】
スラット6は、例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなど、患者3の湾曲方向13への動きにより湾曲する場合、ひずみゲージ11は、基本的にはスラット6の湾曲方向に対応する、特に検知方向14への結果として生じるスラットの動きの形式によるスラット6の変形を検出する。
【0034】
図5は、本発明によるベッド2の平面図を示す。多数のスラット6が概略的に示されている。例えば、6つのスラット6にはひずみゲージグリッドが設けられ、図6に示されるように、患者3の実際の寝ている位置に関係なく、最適な信号が抽出可能である。本実施例では、24個の上側のひずみゲージ11と、24個の下側のひずみゲージ11’とが、患者の胸が通常あるスラットを備えたベッドフレーム4の上方領域16においてベッド2の中心線15に対称的に配置されるように利用される。これは、患者の心臓と肺の動きに対する感度を向上させるためである。さらに、測定結果の信号対ノイズ比が向上する。
【0035】
本発明の他の好適な実施例によると、センサ要素は力センサ21である。図8は、この場合破線により概略的に示される力センサ21を有するスラットを備えたベッドフレーム4のスラット6を示す。力センサ21は、スラットを備えたベッドフレーム4のスラット6のゴム製の台22の内側に配置される。このため、力センサ22は、スラット6の左右のエンド23と接触している。スラット6が、例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどにより、患者3の動きにより湾曲方向13に湾曲する場合、台22の力センサ21は、検知方向24への台22の結果としてのスラットの動きの形式により、スラット6の変形を検出する。ここでは、検知方向24は、基本的に湾曲方向13に直交する。
【0036】
ここで、本発明の方法がより詳細に説明される。図9は、本発明による方法の簡略化されたフローチャートを示す。まず、ベッド2には、上述されたような少なくとも1つのスラット6を有するベッド構造が設けられる(ステップ110)。例えば、患者3の心臓若しくは呼吸の動き又は寝返りなどにより、患者3の動きによるスラット6の変形の場合、スラット6の変形データが、次のステップ120において、特にひずみゲージ11及び/又は力センサ21などのセンサ要素などの測定手段7により取得される。その後、患者3の生理的データは、次のステップ130において、当該変形データを利用して、データ処理解析モジュール8と上述したコンピュータプログラムにより決定される。
【0037】
図10において、マットレス5の下方においてベッドスラット6に搭載されたひずみゲージ11からの典型的な生信号25によるチャートが示される。生信号25は、上述したセットアップを用いて測定されたものである。このチャートでは、呼吸活動が明らかに観察できる。2つの呼吸サイクル26が示される。心拍(心臓パルス)に寄与する周期的パターン27が重乗される。
【0038】
判定ステップ130は、データ処理解析モジュール8による生信号25の処理を有する。生信号25の処理は、呼吸数と心拍数とを区別するための適切なフィルタリングを含む。その後、結果として得られる信号は、データ処理解析モジュール8によって患者3のために又は一般開業医などの専門家などの他人のために有意義な情報に変換される。好ましくは、患者3の心肺活動がステップ130において決定される。これは、以下に限定するものでないが、生信号25から呼吸数及び大きさ、脈拍数並びに脈拍数のばらつきを抽出することを含む。
【0039】
患者3の心肺活動の決定に加えて又はその代わりに、患者3の全体的な動作活動が決定される。例えば、データ処理解析モジュール8によって、より大きな患者の動き(患者の寝返りなど)が解析され、及び/又は活動インデックスが計算される。判定ステップ130はさらに、患者の心肺パフォーマンス及び/又は眠りの質を評価することを含むものであってもよい。
【0040】
最後に、ステップ140において、判定ステップ130の結果が患者3及び/又はリモートアドレスに送信される。例えば、判定ステップ130の結果は、図1に参照されるように、テレビ装置17などのディスプレイなどを介し、データ処理解析モジュール8から患者3に通信可能である。このため、データ処理解析モジュール8は、テレビ装置17の受信機19と通信するよう構成された送信機18を有する。
【0041】
図11において、例えば、データ処理解析モジュール8からリモートの開業医に送信される生信号25から抽出される心拍数と呼吸数とが示される。ここでは、上述されたひずみゲージ11を用いて測定されたデータから計算された呼吸数28と心拍数29とが示される。この場合、ひずみゲージ信号は、約5分間記録されたものである。この5分間に、患者3は横たわったままである。図11は、より頻繁な心拍数の推定の平均である60秒毎に心拍数の値29を示す。
【0042】
すべての装置は、上述されるような本発明による方法を実行するよう構成される。ベッド2、スラット6を備えたベッドフレーム4、センサ11,21及びデータ処理解析モジュール8などのすべての装置は、データ取得及び処理手順が本発明の方法に従って実行されるように構成及びプログラムされる。
【0043】
データ処理解析モジュール8の処理ユニット9は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせの形式により実現される機能モジュール又はユニットを有してもよい。本発明により必要な技術的効果は、本発明によるコンピュータプログラムの命令に基づき実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、CD−ROM又はDVDなどのキャリアに格納可能であるか、又はインターネットや他のコンピュータネットワークを介し利用可能である。実行前、コンピュータプログラムは、例えば、CD−ROMやDVDプレーヤーを用いて又はインターネットからなど、キャリアからコンピュータプログラムを読み込み、これをコンピュータのメモリに格納することによって、コンピュータにロードされる。コンピュータは、特に中央プロセッサユニット(CPU)、バスシステム、RAMやROMなどのメモリ手段、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクユニットなどのストレージ手段、入出力ユニットを有する。あるいは、本発明の方法は、1以上の集積回路などを用いてハードウェアにより実現可能である。
【0044】
本発明が上述した例示的な実施例の詳細に限定されるものでなく、その趣旨又は実質的な寄与から逸脱することなく他の特定の形式により実現可能であることは、当業者に明らかであろう。従って、本実施例は、例示的なものであって、限定的なものでないと考えられるべきであり、本発明の範囲は、上記説明によってでなく添付した請求項により規定されるものであり、請求項の均等の意味及び範囲内のすべての変更は、それに含まれるものとする。さらに、“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものでなく、“ある”という用語は、複数を排除するものでなく、コンピュータシステム又は他のユニットなどの単一の要素が、請求項に記載される複数の手段の各機能を実現可能であることは明らかであろう。請求項の参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるものでない。
【符号の説明】
【0045】
1 システム
2 ベッド
3 患者
4 スラットを備えたベッドフレーム
5 マットレス
6 スラット
7 測定手段
8 データ処理解析モジュール
9 処理ユニット
10 (フリー)
11 ひずみゲージ
12 スラット中心
13 湾曲方向
14 検知方向
15 中心線
16 上方領域
17 テレビ装置
18 送信機
19 受信機
20 (フリー)
21 力センサ
22 台
23 スラットエンド
24 検知方向
25 生信号
26 呼吸サイクル
27 心拍パターン
28 呼吸数
29 心拍数
110〜130 方法ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生理的データを取得する方法であって、
ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドを提供するステップと、
前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するステップと、
前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記決定するステップは、前記患者の呼吸及び/又は心臓活動を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記決定するステップは、前記患者の動き活動を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記決定するステップは、呼吸及び/若しくは心臓パフォーマンス並びに/又は眠りの質を評価することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記決定するステップの結果を前記患者及び/又はリモートアドレスに送信するステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者の生理的データを取得するシステムであって、
ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドと、
前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するよう構成される測定手段と、
前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析手段と、
を有するシステム。
【請求項7】
前記弾性変形可能な部材は、前記ベッド構造に着脱可能に接続される、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記弾性変形可能な部材は、スラットを備えたベッドフレームのスラットである、請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記測定手段は、いくつかのセンサ要素を有する、請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記センサ要素は、前記弾性変形可能な部材に附属又は一体化される、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ要素は、ひずみゲージである、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記センサ要素は、力センサである、請求項9記載のシステム。
【請求項13】
ベッド構造の弾性変形可能な部材であって、
当該部材は、前記ベッド構造に接続可能であり、
当該部材は、ベッドにいる患者により当該部材が変形される場合、当該部材の変形データを取得するための少なくとも1つのセンサ要素を有する部材。
【請求項14】
患者の生理的データを取得するため、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
ベッドには、該ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造が設けられ、
前記部材が変形される場合、前記部材の変形データが取得され、
当該プログラムは、前記コンピュータにより実行されると、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するためのコンピュータ命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項1】
患者の生理的データを取得する方法であって、
ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドを提供するステップと、
前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するステップと、
前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記決定するステップは、前記患者の呼吸及び/又は心臓活動を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記決定するステップは、前記患者の動き活動を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記決定するステップは、呼吸及び/若しくは心臓パフォーマンス並びに/又は眠りの質を評価することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記決定するステップの結果を前記患者及び/又はリモートアドレスに送信するステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者の生理的データを取得するシステムであって、
ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造を有するベッドと、
前記部材が変形する場合、前記部材の変形データを取得するよう構成される測定手段と、
前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するよう構成されるデータ処理解析手段と、
を有するシステム。
【請求項7】
前記弾性変形可能な部材は、前記ベッド構造に着脱可能に接続される、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記弾性変形可能な部材は、スラットを備えたベッドフレームのスラットである、請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記測定手段は、いくつかのセンサ要素を有する、請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記センサ要素は、前記弾性変形可能な部材に附属又は一体化される、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ要素は、ひずみゲージである、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記センサ要素は、力センサである、請求項9記載のシステム。
【請求項13】
ベッド構造の弾性変形可能な部材であって、
当該部材は、前記ベッド構造に接続可能であり、
当該部材は、ベッドにいる患者により当該部材が変形される場合、当該部材の変形データを取得するための少なくとも1つのセンサ要素を有する部材。
【請求項14】
患者の生理的データを取得するため、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
ベッドには、該ベッドにいる患者により変形可能な少なくとも1つの弾性変形可能な部材を有するベッド構造が設けられ、
前記部材が変形される場合、前記部材の変形データが取得され、
当該プログラムは、前記コンピュータにより実行されると、前記変形データを利用して前記患者の生理的データを決定するためのコンピュータ命令を有するコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−519948(P2010−519948A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551294(P2009−551294)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050664
【国際公開番号】WO2008/104918
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050664
【国際公開番号】WO2008/104918
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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