説明

悪液質治療剤

【課題】悪液質治療剤の提供。
【解決手段】副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体を有効成分として含む悪液質治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone related protein(PTHrP))とその受容体との結合を阻害する物質を有効成分として含有する悪液質治療剤に関する。具体的には、本発明は副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体を有効成分として含む悪液質治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
末期癌患者にみられる悪液質は、悪性腫瘍の随伴性症候群の一つであり、食欲不振、体重減少、貧血、水電解質の異常、免疫異常などを主症状とする全身状態の不良をきたす。癌患者にとって、悪液質の発症は、生命を脅かす終末期症状をもたらすのみならず、患者のQOL(Quality of life)を著しく損ない、患者自身はもちろん、家族や周囲の人に強い精神的、身体的、社会的影響を及ぼす。
【0003】
近年、癌悪液質の原因物質であると考えられていたカケクチンが、腫瘍壊死因子(TNF)と同一因子であることが明らかになった。その後、インターロイキン1(IL-1)やIL-6、LIF、IFNなどのサイトカインにも同様の作用が明らかになり、癌悪液質は、複数の因子による複合的に作用する病態であることが明らかになってきた。
【0004】
ヒト口腔底癌由来OCC-1細胞株は、このような癌悪液質に関連する種々の液性因子を産生することが知られており、OCC-1細胞をヌードマウスに移植すると、悪液質などの諸症状を発症させる(Kajimura N. et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 1996, 38 Suppl. pS48-52、Tanaka R. et al., Jpn. J. Clin. Oncology Apr.1996, 26(2)p88-94)。これは、ヌードマウスに移植されたOCC-1細胞株が、増殖と共に種々のサイトカイン(G-CSF、IL-6、LIF、IL-11、PTHrP など)を産生し、これらの因子が複合的に作用して、上記諸症状を発症させると考えられる。
【0005】
このように、OCC-1細胞株を移植したヌードマウスの症状は、ヒト末期癌患者の症状ときわめて共通性が高いと考えられる。しかしながら、現在に至るまでこのような悪液質に対する薬剤についての報告は知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、悪液質に対する治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる治療剤を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、副甲状腺ホルモン関連ペプチドとその受容体との結合を阻害する物質により、目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、副甲状腺ホルモン関連ペプチドとその受容体との結合を阻害する物質を有効成分として含む悪液質治療剤である。上記悪液質としては癌由来のものが挙げられる。
【0008】
すなわち本発明は、副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体を有効成分として含む悪液質治療剤に関する。
【0009】
上記副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体は、ヒト型化又はキメラ化されたものであることが好ましい。
【0010】
例えばヒト型化抗体は、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つを含むものでありうる:
(a)配列番号48〜51に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域、
(b)配列番号52〜55に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域、
(c)配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するH鎖V領域。
【0011】
またヒト型化抗体は、例えば配列番号48〜55に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域と、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含むものである。
【0012】
上記ヒト型化抗体は、さらにヒト抗体のL鎖C領域及び/又はH鎖C領域を含むものであってもよい。上記ヒト型化抗体は好ましくはヒト型化#23-57-137-1抗体である。
【0013】
上記副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体は、例えば抗体断片及び/又はその修飾物であってもよい。また上記副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体はモノクローナル抗体であってもよい。
【0014】
上記副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体は、例えば
(a)悪液質の治療に有効であり、
(b)ヒト口腔底癌OCC-1細胞の増殖には有意な影響を及ぼさない
ものを用いることもできる。
上記悪液質治療剤の対象となる悪液質は、例えば癌由来のものでありうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、副甲状腺ホルモン関連ペプチドとその受容体との結合を阻害する物質を有効成分として含有する悪液質治療剤が提供される。上記物質は、悪液質モデル動物での薬効試験において、体重減少を対照と比較して抑制し、また、生存期間の延長効果も奏することから、悪液質治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone related protein:PTHrP)とその受容体(PTHrP受容体)との結合を阻害する物質を有効成分として含む悪液質治療剤である。
【0017】
本明細書中で「PTHrP受容体」とは、例えば特表平6-506598号公報に記載されているPTHrPと結合する受容体を指し、標的器官上(例えば骨や腎臓)に存在するPTHrP受容体か否かを問わない。
【0018】
また、「PTHrPとPTHrP受容体との結合を阻害する物質」とは、PTHrPに結合することにより、PTHrPがPTHrP受容体と結合することを阻害する物質(例えば抗PTHrP抗体)、およびPTHrP受容体に結合することにより、PTHrPがPTHrP受容体と結合することを阻害する物質(例えばPTHrP受容体に対するアンタゴニスト(PTHrPアンタゴニストともいう)、具体的にはPTHrPペプチドの少なくとも一つのアミノ酸を置換、欠失したものやPTHrPペプチドの部分配列などを指す)のいずれか一方又は両方を指す。
【0019】
抗PTHrP抗体としては、例えばヒト型化抗体、ヒト抗体(WO96/33735号公報)又はキメラ抗体(特開平4-228089号公報)などの公知の抗体のほか、本発明における抗体(#23-57-137-1抗体)などが挙げられる。なお、抗体はポリクローナル抗体でもよいがモノクローナル抗体であることが好ましい。また、PTHrPアンタゴニストとしては、ポリペプチドや低分子を含むが、例えばPTHrPに対して拮抗的にPTHrP受容体に結合する物質、例えば特開平7-165790号公報、Peptides(UNITED STATES)1995, 16(6)1031-1037、Biochemistry(UNITED STATES)Apr.28 1992, 31(16)4026-4033、特表平5-509098号公報に記載のPTHrPアンタゴニスト活性を有するポリペプチドが挙げられる。また、上記例示のポリペプチドのうち、少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換、付加、挿入されたポリペプチドで、同等のPTHrPアンタゴニスト活性を有するものも本発明のPTHrPアンタゴニストに含まれる。
本発明では、「PTHrPとPTHrP受容体との結合を阻害する物質」として抗PTHrP抗体を例に説明する。
【0020】
1.抗PTHrP抗体
本発明で使用される抗PTHrP抗体は、悪液質の治療効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問うものではない。
【0021】
本発明で使用される抗PTHrP抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗PTHrP抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。この抗体はPTHrPと結合することにより、PTHrPがPTH/PTHrP受容体に結合するのを阻害してPTHrPのシグナル伝達を遮断し、PTHrPの生物学的活性を阻害する抗体である。
【0022】
このような抗体としては、ハイブリドーマクローン#23-57-137-1により産生される#23-57-137-1抗体が挙げられる。
【0023】
なお、ハイブリドーマクローン#23-57-137-1 は、mouse-mouse hybridoma #23-57-137-1 として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成8年8月15日に、FERM BP-5631としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0024】
2.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、PTHrPを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0025】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトPTHrPを、Suva, L. J. et al., Science(1987)237, 893に開示されたPTHrP遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、PTHrPをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のPTHrPタンパク質を公知の方法で精製する。
【0026】
次に、この精製PTHrPタンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、PTHrPのN末端の34個のペプチドについて、化学合成により作製することもでき、これを感作抗原として使用することもできる。
【0027】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
【0028】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
【0029】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0030】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics inMicrobiology and Immunology(1978)81, 1-7)、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D. H.et al., Cell(1976)8, 405-415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature(1978) 276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)等が好適に使用される。
【0031】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol.(1981)73, 3-46)等に準じて行うことができる。
【0032】
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0033】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1-10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0034】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000-6000程度)を通常30-60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0035】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
【0036】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでPTHrPに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、PTHrPへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるPTHrPを投与して抗PTHrP抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からPTHrPに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585 号公報、WO 93/12227 号公報、WO 92/03918 号公報、WO 94/02602 号公報参照)。
【0037】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0038】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0039】
3.組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990参照)。
【0040】
具体的には、抗PTHrP抗体を産生するハイブリドーマから、抗PTHrP抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry(1979)18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0041】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5'-AmpliFINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A.et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)等を使用することができる。
【0042】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。
【0043】
目的とする抗PTHrP抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
【0044】
本発明で使用される抗PTHrP抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
【0045】
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。
【0046】
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
【0047】
4.改変抗体
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0048】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0049】
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
【0050】
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることによりヒト型化抗体が得られる(EP 239400号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
【0051】
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., CancerRes.(1993)53, 851-856)。
【0052】
キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
【0053】
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
【0054】
本発明に使用できるヒト型化抗体としてはヒト型化#23-57-137-1抗体が挙げられる。ヒト型化#23-57-137-1抗体は、マウス由来の#23-57-137-1抗体の相補性決定領域を、L鎖についてはヒト抗体HSU03868(GEN-BANK, Deftos Mら, Scand. J. Immunol., 39, 95-103, 1994)由来の3つのFR断片(FR1、FR2およびFR3)並びにヒト抗体S25755(NBRF-PDB)由来のFR断片(FR4)に連結したものであり、H鎖についてはヒト抗体S31679(NBRF-PDB、Cuisinier AMら, Eur. J. Immunol., 23, 110-118, 1993)のフレームワーク領域と連結し、抗原結合活性を有するようにフレームワーク領域のアミノ酸残基を一部置換したものである。
【0055】
なお、ヒト型化#23-57-137-1抗体のL鎖またはH鎖をコードするDNAを含むプラスミドを有する大腸菌は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成8年8月15日に、H鎖をコードするDNAを含むプラスミドを有する大腸菌であるEscherichia coli JM109( hMBC1HcDNA/pUC19 )についてはFERM BP-5629として、L鎖をコードするDNAを含むプラスミドを有する大腸菌であるEscherichia coli JM109( hMBC1Lqλ/pUC19)についてはFERM BP-5630として、ブダペスト条約に基づきそれぞれ国際寄託されている。
【0056】
5.抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、PTHrPに結合し、PTHrPの活性を阻害するかぎり、抗体の断片又はその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2 、Fv、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol.(1994)152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Lamoyi, E., Methods in Enzymology(1989)121, 652-663、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology(1989)121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH(1991)9, 132-137参照)。
【0057】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1988)85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0058】
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0059】
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
【0060】
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
【0061】
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗PTHrP抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0062】
6.組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
【0063】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
【0064】
SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277, 108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18, 5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
【0065】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341, 544-546;FASEB J.(1992)6, 2422-2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)により発現することができる。
【0066】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
【0067】
複製起源としては、SV 40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0068】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
【0069】
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
【0070】
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0071】
7.抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0072】
8.抗体の活性の確認
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada, A. et al., International Immunology(1993)5, 681-690)の測定には公知の手段を使用することができる。
【0073】
本発明で使用される抗PTHrP抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、PTHrP(1-34)をコーティングしたプレートに、抗PTHrP抗体を含む試料、例えば、抗PTHrP抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。本発明で使用される抗体の活性を確認するには、抗PTHrP抗体の中和活性を測定する。
【0074】
9.投与方法および製剤
本発明の治療剤は、悪液質に対する治療又は改善を目的として使用される。また、悪液質の種類は癌由来のものであるか否かを問わない。例えば、癌由来のものとして、J. Urol.(UNITED STATES)Mar 1995, 153(3 Pt 1)p854-857、Langenbecks Arch. Chir. Suppl II Verh Dtsch Ges Chir(GERMANY)1990, p261-265、Oncology(SWITZERLAND)1990, 47(1)p87-91、Int. J. Pancreatol.(UNITED STATES)Aug-Nov 1990, 7(1-3)p141-150、J. Natl. Cancer Inst.(UNITEDSTATES)Dec 19, 1990,82(24)p1922-1926などに記載の悪液質が挙げられる。
【0075】
また、癌由来でないものとして、JPEN J. Parenter. Enteral Nutr.(UNITEDSTATES)Nov-Dec 1990, 14(6)p605-609、Chest(UNITED STATES)Nov 1990, 98(5)p1091-1094、Bone Marrow Transplant.(ENGLAND)Jul 1990, 6(1)p53-57などに記載の悪液質が挙げられる。
【0076】
本発明の抗PTHrP抗体を有効成分として含有する治療剤は、経口、非経口投与のいずれでも可能であるが、好ましくは非経口投与であり、具体的には経肺剤型(例えばネフライザーなどの器具を用いた経肺投与剤)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の例としては、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mg から1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗PTHrP抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0077】
また、投与時期としては、悪液質が生ずる前後を問わず投与してもよく、あるいは体重減少が予測される時に投与してもよい。
【0078】
本発明の抗PTHrP抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0079】
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
【0080】
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗PTHrP抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【0081】
以下、参考例および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これら実施例等にその技術的範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0082】
悪液質モデル動物での薬効試験
ヒト腫瘍−ヌードマウス移植系の悪液質モデル動物を用いて、PTHrPに対するマウスモノクローナル抗体の悪液質に対する治療効果を検討した。
【0083】
モデル動物としてヒト口腔底癌OCC-1((財)実験動物中央研究所より購入)を移植したヌードマウスを用いた。ヒト口腔底癌OCC-1を移植されたヌードマウスは、腫瘍の増加に伴い血中カルシウム濃度が上昇し、体重減少や運動量の低下などの悪液質症状を発症する。ヒト口腔底癌OCC-1によって引き起こされる悪液質症状を、マウスモノクローナル抗体が改善することを、血中カルシウム濃度、体重および延命効果を指標にして評価した。
【0084】
ヒト口腔底癌OCC-1の継代は、BALB/c-nu/nuヌードマウス(日本クレア)を用いてin vivoで行った。薬効評価には、6週齢雄性BALB/c-nu/nuヌードマウス(日本クレア)を購入し、1週間の馴化の後、7週齢の動物を使用した。
【0085】
悪液質モデル動物の作製および群分けは、以下のようにして行った。すなわち、継代しているヒト口腔底癌OCC-1を摘出し、3mm角ブロックに細かく刻んだ腫瘍塊をマウスの脇腹皮下に1匹あたり1個ずつ移植した。腫瘍塊移植後、10日目に腫瘍体積が十分に大きくなったのを確認した後、血中カルシウム濃度、体重および腫瘍体積を指標として各指標が平均化するように群分けし、悪液質モデル動物とした。
【0086】
悪液質に対する治療効果の検討は、以下のようにして行った。
(1)生存期間の観察
延命効果の検討では、マウスモノクローナル抗体を週2回投与して、生存期間の観察を行った。また、既に高カルシウム血症治療薬として処方されているパミドロネート(アレディア)を、15mg/Kgの用量で尾静脈内に単回投与した。対照として、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)を0.2ml/mouseで尾静脈内に週2回投与した。その結果を図1に示す。
(2)血中カルシウム濃度の観察
上記で作製、群分けした悪液質モデル動物に、マウス1匹あたり10μgまたは100μgのPTHrPに対するマウスモノクローナル抗体を尾静脈内に2日おきに2回投与した。また、既に高カルシウム血症治療薬として処方されているパミドロネート(アレディア)を、15mg/Kgの用量で尾静脈内に単回投与した。対照として、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)を0.2ml/mouseで尾静脈内に2日おきに2回投与した。
(3)血中カルシウムの測定
マウスモノクローナル抗体投与後、1日および4日目に血中カルシウム濃度を測定し、各抗体の薬効評価を行った。血中カルシウム濃度は、眼窩よりヘマトクリット管で採血し、643自動Ca/pHアナライザー(CIBA-CORNING)を用いて全血イオン化カルシウム濃度として測定した。体重は、抗体投与後4日目まで毎日測定した。その結果を、図2および図3に示す。
(4)腫瘍重量の測定
腫瘍体積は、抗体投与後4日目に、腫瘍の長径(a mm)および短径(b mm)を測定し、ギャランの計算式ab2/2により腫瘍体積として算出した。その結果を、図4に示す。
【0087】
以上の結果より、血中カルシウム濃度については、抗体濃度10μgでは、パミドロネート投与群と差がないにも関わらず、悪性腫瘍に伴う体重減少をパミドロネート投与群又は対照群に比べて抑制した。抗体濃度100μgを投与した群では、血中カルシウム濃度の上昇をパミドロネート投与群又は対照群に比べて抑制し、体重減少もパミドロネート投与群又は対照群に比べて抑制した。また、抗PTHrP中和抗体100μgを週2回投与した群では、パミドロネート投与群又は対照群に比べて有意な生存期間の延長(p=0.0003:Log Rank test)が認められた。このことから、PTHrPに対する中和マウスモノクローナル抗体は体重減少抑制、生存期間の延長など既存の高カルシウム血症治療薬にはない効果を有する。したがって本抗体の悪性腫瘍に伴う悪液質の治療薬としての有用性が示された。
【実施例2】
【0088】
高カルシウム血症・悪液質モデル動物での薬効試験
ヒト腫瘍−ヌードマウス移植系の悪液質モデル動物を用いて、PTHrPに対するヒト型化抗体バージョンqの悪液質に対する治療効果を検討した。
【0089】
モデル動物としてヒト口腔底癌OCC-1((財)実験動物中央研究所より購入)を移植したヌードマウスを用いた。ヒト口腔底癌OCC-1を移植されたヌードマウスは、腫瘍の増加に伴い血中カルシウム濃度が上昇し、体重減少や運動量の低下などの悪液質症状を発症する。ヒト口腔底癌OCC-1によって引き起こされる悪液質症状を、ヒト型化抗体バージョンqが改善することを、血中カルシウム濃度、体重および延命効果を指標にして評価した。
【0090】
ヒト口腔底癌OCC-1の継代は、BALB/c-nu/nuヌードマウス(日本クレア)を用いてin vivoで行った。薬効評価には、6週齢雄性BALB/c-nu/nuヌードマウス(日本クレア)を購入し、1週間の馴化の後、7週齢の動物を使用した。
【0091】
悪液質モデル動物の作製および群分けは、以下のようにして行った。すなわち、継代しているヒト口腔底癌OCC-1を摘出し、3mm角ブロックに細かく刻んだ腫瘍塊をマウスの脇腹皮下に1匹あたり1個ずつ移植した。腫瘍塊移植後、10日目に腫瘍体積が十分に大きくなったのを確認した後、腫瘍体積、血中カルシウム濃度および体重を指標として各指標が平均化するように群分けし、悪液質モデル動物とした。
【0092】
悪液質に対する治療効果の検討は、以下のようにして行った。
(1)生存期間の観察
延命効果の検討では、ヒト型化抗体バージョンqを週2回尾静脈内に投与して、生存期間の観察を行った。対照として、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)を0.1ml/mouseで尾静脈内に週2回投与した。その結果を図16に示す。
(2)血中カルシウム濃度の観察
上記で作製、群分けした悪液質モデル動物に、マウス1匹あたり10μgまたは100μgのヒト型化抗体バージョンqを尾静脈内に2日あけて2回投与した。対照として、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)を0.1ml/mouseで同様に投与した。
(3)血中カルシウムの測定
ヒト型化抗体バージョンq初回投与後、1日および4日目に血中カルシウム濃度を測定し、抗体の薬効評価を行った。血中カルシウム濃度は、眼窩よりヘマトクリット管で採血し、643自動Ca/pHアナライザー(CHIRON)を用いて全血イオン化カルシウム濃度として測定した。体重は、4日目まで毎日測定した。その結果を、図17および図18に示す。
(4)腫瘍重量の測定
腫瘍体積は、初回投与時および4日目に、腫瘍の長径(amm)および短径(bmm)を測定し、ギャランの計算式ab2/2により算出した。その結果を図19に示す。
【0093】
以上の結果のように、ヒト型化抗体バージョンqを10μgあるいは100μgを投与することで、悪性腫瘍に伴う血中カルシウム濃度の上昇及び体重の減少は対照群に比べて抑制された。また、ヒト型化抗体バージョンqを100μg、週2回投与し続けた場合、対照群に比べて有意な生存期間の延長(p=0.0108:Log Rank test)が認められた。今回のヒト型化抗体バージョンqの悪性腫瘍に伴う悪液質モデル動物に対する効果は、すでに報告したマウスモノクローナル抗体の効果と同様のものであった。このことから、本抗体の悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症・悪液質の治療薬としての有用性が示された。
【0094】
[参考例1]
抗PTHrP(1−34)マウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
ヒトPTHrP(1−34)(配列番号75) に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ#23-57-154 および#23-57-137-1を、佐藤幹二らにより作製された(Sato, K. et al., J. Bone Miner. Res. 8, 849-860, 1993)。
【0095】
免疫原として使用するために、PTHrP(1−34)(Peninsula 製)とキャリアータンパクであるサイログロブリンをカルボジイミド(Dojinn)を用いて結合した。サイログロブリンと結合したPTHrP(1−34)を透析し、タンパク濃度として2μg/mlとなるように調製した後、フロイントアジュバント(Difco)と1:1で混合し、エマルジョン作製後、16匹の雌性BALB/Cマウスの背部皮下又は腹腔内に動物あたり100 μgを11回免疫した。初回免疫は、フロイント完全アジュバントを用い、二回目以降の追加免疫にはフロイント不完全アジュバントを使用した。
【0096】
免疫したマウスの血清中の抗体価の測定は、以下の方法で行った。すなわち、マウス尾静脈より採血し、血清分離後RIAバッファーで希釈した抗血清と125I標識PTHrP(1−34)を混合し、結合活性を測定した。抗体価の上昇したマウスの腹腔に、キャリアータンパクを結合していないPTHrP(1−34)を動物あたり50μgを最終免疫した。
【0097】
最終免疫3日目にマウスを屠殺し、脾臓を摘出後、脾臓細胞とマウスミエローマ細胞株P3x63Ag8U.1 を50%ポリエチレングリコール4000を用いる常法にしたがって細胞融合した。細胞融合した細胞を2×104/ウェルの細胞数で85枚の96穴プレートに蒔き込んだ。ハイブリドーマの選別はHAT培地を用いて行った。
【0098】
ハイブリドーマのスクリーニングは、HAT培地中で生育の認められた穴の培養上清を固相化RIA法にてPTHrP認識抗体の有無を測定し選択することにより行った。抗体との結合能の認められた穴からハイブリドーマを回収し、15%FCSを含むRPMI-1640 培地にOPI-supplement(Sigma)を添加した培地に懸濁し、限界希釈法にてハイブリドーマの単一化を実施した。PTHrP(1−34)との結合能の強いクローン#23-57-154 および#23-57-137-1を得た。
【0099】
なお、ハイブリドーマクローン#23-57-137-1は、mouse-mouse hybridoma #23-57-137-1として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成8年8月15日に、FERM BP-5631としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0100】
[参考例2]
ヒトPTHrP(1−34)に対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニング
ヒトPTHrP(1−34)に対するマウスモノクローナル抗体#23-57-137-1の可変領域をコードするDNAを次の様にしてクローニングした。
(1) mRNAの調製
ハイブリドーマ#23-57-137-1からのmRNAをQuick Prep mRNA PurificationKit(Pharmacia Biotech社) を用いて調製した。ハイブリドーマ#23-57-137-1の細胞をExtraction Buffer で完全にホモジナイズし、キット添付の処方に従い、oligo(dT)-Cellulose Spun Column にてmRNAを精製し、エタノール沈殿をおこなった。mRNA沈殿物をElution Bufferに溶解した。
【0101】
(2) マウスH鎖V領域をコードする遺伝子のcDNAの作製および増幅
(i) #23-57-137-1抗体H鎖V領域cDNAのクローニング
ヒトPTHrPに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5'−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002, 1988; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. 17, 2919-2932, 1989) により行った。5'−RACE法には5'-Ampli FINDER RACE kit (CLONETECH社) を用い、操作はキット添付の処方にしたがって行った。cDNA合成に使用するプライマーは、マウスH鎖定常領域(C領域)とハイブリダイズするMHC2プライマー(配列番号1)を用いた。前記のようにして調製したmRNA約2μgを鋳型としてMHC2プライマー10pmole を加え、逆転写酵素と52℃、30分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。
【0102】
6N NaOH でRNAを加水分解(65℃、30分間)した後、エタノール沈殿によりcDNAを精製した。T4RNAリガーゼで37℃で6時間、室温で16時間反応することにより、合成したcDNAの5'末端にAmpli FINDER Anchor(配列番号42)を連結した。これを鋳型としてPCRにより増幅するためのプライマーとしてAnchorプライマー(配列番号2)およびMHC−G1プライマー(配列番号3)(S.T.Jones,et al.,Biotechnology,9,88,1991) を使用した。
【0103】
PCR溶液は、その50μl中に10mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、0.25mM dNTPs(dATP, dGTP, dCTP, dTTP)、1.5 mM MgCl2、2.5 ユニットのTaKaRa Taq(宝酒造)、10pmole のアンカー(Anchor)プライマー、並びにMHC−G1プライマー及びAmpli FINDER Anchor を連結したcDNAの反応混合物1μlを含有する。この溶液に50μlの鉱油を上層した。PCRはThermal Cycler Mode 1480J(Perkin Elmer) を用い、94℃にて45秒間、60℃にて45秒間、72℃にて2分間の温度サイクルで30回行った。
【0104】
(ii) #23-57-137-1 抗体L鎖V領域のcDNAのクローニング
ヒトPTHrPに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子のクローニングは、5'−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 8998-9002, 1988 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. 17, 2919-2932, 1989)により行った。5'-RACE法には5'-AmpliFinder RACE Kit(Clonetech)を用い、操作は添付の処方に従った。cDNA合成に使用するプライマーは、oligo-dTプライマーを用いた。前記のように調製したmRNA約2μgを鋳型としてoligo-dTプライマーを加え、逆転写酵素と52℃、30分間反応させることによりcDNAへの逆転写を行った。6N NaOHでRNAを加水分解(65℃、30分間)した後、エタノール沈殿によりcDNAを精製した。合成したcDNAの5'末端に前記Ampli FINDER Anchor をT4RNAリガーゼで37℃で6時間、室温で16時間反応させることにより連結した。
【0105】
マウスL鎖λ鎖定常領域の保存配列からPCRプライマーMLC(配列番号4)を設計し、394 DNA/RNA シンセサイザー (ABI 社)を用いて合成した。PCR溶液は、その100 μl中に10 mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、0.25mM dNTPs(dATP, dGTP,dCTP,dTTP)、1.5mM MgCl2 、2.5 ユニットの AmpliTaq (PERKIN ELMER)、50pmole のAnchorプライマー(配列番号2)、並びにMLC(配列番号4)およびAmpli FINDER Anchor を連結したcDNAの反応混合物1μlを含有する。この溶液に50μlの鉱油を上層した。PCRはThermal Cycler Model480J(Perkin Elmer)を用い、94℃にて45秒間、60℃にて45秒間、72℃にて2分間の温度サイクルで35回行った。
【0106】
(3) PCR生成物の精製および断片化
前記のようにしてPCR法により増幅したDNA断片を3%Nu Sieve GTGアガロース(FMC Bio. Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。H鎖V領域として約550bp 長、L鎖V領域として約550bp 長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEAN II Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、10mM Tris-HCl(pH7.4) 、1mM EDTA 溶液20μlに溶解した。得られたDNA溶液1μlを制限酵素XmaI(New England Biolabs)により37℃で1時間消化し、次いで制限酵素EcoRI (宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿によりDNAを回収した。
【0107】
こうして、5'−末端にEcoRI 認識配列を有し、3'−末端にXmaI認識配列を有するマウスH鎖V領域およびL鎖V領域をコードする遺伝子を含むDNA断片を得た。
【0108】
上記のようにして調製したマウスH鎖V領域およびL鎖V領域をコードする遺伝子を含むEcoRI-XmaI DNA断片とEcoRI 及びXmaIで消化することにより調製したpUC19 ベクターをDNAライゲーションキットver.2 (宝酒造)を用い、添付の処方に従い16℃で1時間反応させ連結した。次に10μlの上記連結混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)100μlに加え、この細胞を氷上で15分間、42℃にて1分間、さらに氷上で1分間静置した。次いで300 μlのSOC培地(Molecular Cloning: A Labgoratory Manual, Sambrook,et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)を加え37℃にて30分間インキュベートした後、100μg/ml又は50μg/mlのアンピシリン、0.1mM のIPTG、20μg/mlのX−galを含むLB寒天培地または2xYT寒天培地(Molecular Cloning: A Labgoratory Manual, Sambrook,et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
【0109】
この形質転換体を100 μg/ml又は50μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地または2×YT培地2mlで37℃にて一夜培養し、菌体画分からプラスミド抽出機PI-100Σ(クラボウ)又はQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製し、塩基配列の決定を行った。
【0110】
(4) マウス抗体V領域をコードする遺伝子の塩基配列決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing kit(Perkin-Elmer) を用い、DNA Sequencer 373A (ABI社Perkin-Elmer)により決定した。配列決定用プライマーとしてM13 Primer M4 (宝酒造)(配列番号5)及びM13 Primer RV (宝酒造)(配列番号6)を用い、両方向の塩基配列を確認することにより配列を決定した。
【0111】
こうして得られたハイブリドーマ#23-57-137-1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをMBC1H04 、L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをMBC1L24 と命名した。プラスミドMBC1H04 およびMBC1L24 に含まれるマウス#23-57-137-1抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列(対応するアミノ酸配列を含む)をそれぞれ配列番号57、65に示す。H鎖V領域及びL鎖V領域断片のポリペプチドは、ともに配列番号57、65で表される塩基配列の第58番目(グルタミンをコードする)から開始されている。これらのアミノ酸配列を、H鎖V領域の断片については配列番号46、L鎖V領域の断片については配列番号45に示す。
【0112】
なお、前記プラスミドMBC1H04 およびMBC1L24 を有する大腸菌はEscherichiacoli JM109(MBC1H04 )およびEscherichia coli JM109(MBC1L24 )として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成8年8月15日に、Escherichia coli JM109 (MBC1H04)についてはFERM BP-5628、Escherichia coli JM109 (MBC1L24)についてはFERM BP-5627としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0113】
(5) ヒトPTHrPに対するマウスモノクローナル抗体#23-57-137-1のCDRの決定
H鎖V領域およびL鎖V領域の全般の構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク部分が3つの超可変領域、すなわち相補性決定領域(CDR)により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的よく保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.et al., 「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983) 。
【0114】
このような事実に基づき、ヒトPTHrPに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベースにあてはめて、相同性を調べることによりCDR領域を表1に示すごとく決定した。
【0115】
なお、L鎖V領域のCDR1〜3のアミノ酸配列についてはそれぞれ配列番号59〜61に示し、H鎖V領域のCDR1〜3のアミノ酸配列についてはそれぞれ配列番号62〜64に示した。
【0116】
【表1】

【0117】
[参考例3]
キメラ抗体の構築
(1) キメラ抗体H鎖の構築
(i) H鎖V領域の構築
ヒトH鎖C領域Cγ1のゲノムDNAを含む発現ベクターに連結するために、クローニングしたマウスH鎖V領域をPCR法により修飾した。後方プライマーMBC1−S1(配列番号7)はV領域のリーダー配列の5'−側をコードするDNAにハイブリダイズし且つKozak コンセンサス配列(Kozak, M. et al., J. Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)及び制限酵素Hind IIIの認識配列を有するように設計した。前方プライマーMBC1−a(配列番号8)はJ領域の3'−側をコードするDNA配列にハイブリダイズし、且つ、スプライスドナー配列及び制限酵素BamHIの認識配列を有するように設計した。PCRは、TaKaRa Ex Taq (宝酒造)を用い、50μlの反応混合液に鋳型DNAとして0.07μgのプラスミドMBC1H04 、プライマーとしてMBC1-aおよびMBC1-S1 をそれぞれ50pmole 、2.5UのTaKaRa Ex Taq 、0.25mMのdNTP含む条件で添付緩衝液を使用して50μlの鉱油を上層し、94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて2分間の温度サイクルで30回行った。PCR法により増幅したDNA断片を3%Nu Sieve GTGアガロース(FMC Bio. Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0118】
437bp 長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEAN II Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノール沈殿で回収した後、10mM Tris-HCl (pH7.4) 、1mM EDTA 溶液20μlに溶解した。得られたDNA溶液1μlを制限酵素BamHI、Hind III(宝酒造)により37℃1時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿によりDNAを回収した。
【0119】
上記のようにして調製したマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含むHind III-BamHI DNA断片をHind IIIおよびBamHIで消化することにより調製したpUC19ベクターにサブクローニングした。このプラスミドの塩基配列を確認するためプライマーM13 Primer M4 およびM13 Primer RV をプライマーとして、Dye Terminator Cycle Sequencing kit(Perkin-Elmer) を用い、DNA Sequencer 373A (Perkin-Elmer)により塩基配列を決定した。正しい塩基配列を有するハイブリドーマ#23-57-137-1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5'−側にHind III認識配列及びKozak 配列、3'−側にBamHI認識配列を持つプラスミドをMBC1H/pUC19 と命名した。
【0120】
(ii)cDNAタイプのマウス−ヒトキメラH鎖の作製のためのH鎖V領域の構築
ヒトH鎖C領域Cγ1のcDNAと連結するために、上記のようにして構築したマウスH鎖V領域をPCR法により修飾した。H鎖V領域のための後方プライマーMBC1HVS2(配列番号9)はV領域のリーダー配列の最初をコードする配列の2番のアスパラギンをグリシンに変換し、且つKozak コンセンサス配列(Kozak, M.et al., J. Mol. Biol., 196, 947-950, 1987)並びにHind IIIおよびEcoRI 認識配列を有するように設計した。H鎖V領域のための前方プライマーMBC1HVR2(配列番号10)はJ領域の3'−側をコードするDNA配列にハイブリダイズし、且つ、C領域の5'−側の配列をコードしApaIおよびSmaI認識配列を有するように設計した。
【0121】
PCRはTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を用い、50μlの反応混合液に鋳型DNAとして0.6 μgのプラスミドMBC1H/pUC19 、プライマーとしてMBC1HVS2およびMBC1HVR2をそれぞれ50pmole 、TaKaRa Ex Taq を2.5U、0.25mMのdNTP含む条件で添付の緩衝液を使用して50μlの鉱油を上層して94℃1分間、55℃1分間、72℃1分間の温度サイクルで30回行った。PCR法により増幅したDNA断片を1%Sea Kem GTG アガロース(FMC Bio.Products) を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。456bp 長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEAN II Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノール沈殿させた後、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mM EDTA 溶液20μlに溶解した。
【0122】
得られたDNA溶液1μlを制限酵素EcoRI およびSmaI(宝酒造)により37℃で1時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿によりDNAを回収した。上記のようにして調製したマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含むEcoRI-SmaI DNA断片をEcoRI およびSmaIで消化することにより調製したpUC19 ベクターにサブクローニングした。このプラスミドの塩基配列を確認するため、プライマーM13 Primer M4 及びM13 Primer RV をプライマーとして、Dye Terminator Cycle Sequencing kit(Perkin-Elmer) を用い、DNA Sequencer 373A(Perkin-Elmer)により塩基配列を決定した。正しい塩基配列を有するハイブリドーマ#23-57-137-1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5'−側にEcoRI およびHind III認識配列及びKozak 配列、3'−側にApaIおよびSmaI認識配列を持つプラスミドをMBC1Hv/pUC19と命名した。
【0123】
(iii) キメラ抗体H鎖の発現ベクターの構築
ヒト抗体H鎖C領域Cγ1を含むcDNAは、以下のようにして調製した。すなわち、ヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体H鎖C領域IgG1のゲノムDNA(N. Takahashi, et al., Cell 29, 671-679 1982)をコードする発現ベクターDHFR-△E-RVh-PM-1-f(WO92/19759参照)と、ヒト型化PM1抗体L鎖V領域およびヒト抗体L鎖κ鎖C領域のゲノムDNAをコードする発現ベクターRV1-PM1a(WO92/19759参照)とを導入したCHO細胞よりmRNAを調製し、RT−PCR法でヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体C領域Cγ1を含むcDNAをクローニングし、pUC19 のHind IIIとBamHI部位にサブクローニングした。塩基配列を確認した後、正しい配列を持つプラスミドをpRVh-PM1f-cDNAと命名した。
【0124】
DHFR-△E-RVh-PM-1-f上のSV40プロモーターとDHFR遺伝子との間にあるHind III部位、およびEF−1αプロモーターとヒト型化PM1抗体H鎖V領域との間にあるEcoRI 部位を欠失した発現ベクターを作製し、ヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体C領域Cγ1を含むcDNAの発現ベクターの構築のために使用した。
【0125】
pRVh-PM1f-cDNAをBamHIで消化した後、Klenowフラグメントで平滑化し、さらにHind IIIで消化し、Hind III-BamHI平滑化断片を調製した。このHind III-BamHI平滑化断片を、上記のHind III部位およびEcoRI 部位が欠失したDHFR-△E-RVh-PM1-f をHind IIIおよびSmaIで消化することにより調製した発現ベクターに連結し、ヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体C領域Cγ1をコードするcDNAを含む発現ベクターRVh-PM1f−cDNAを構築した。
【0126】
ヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体C領域Cγ1をコードするcDNAを含む発現ベクターRVh-PM1f−cDNAをApaIおよびBamHIで消化した後、H鎖C領域を含むDNA断片を回収し、ApaIおよびBamHIで消化することにより調製したMBC1Hv/pUC19に導入した。こうして作製したプラスミドをMBC1HcDNA /pUC19 と命名した。このプラスミドはマウス抗体のH鎖V領域およびヒト抗体C領域Cγ1をコードするcDNAを含み、5'-末端にEcoRI およびHind III認識配列、3'-末端にBamHI認識配列を持つ。
【0127】
プラスミドMBC1HcDNA/pUC19 をEcoRI およびBamHIで消化し、得られたキメラ抗体のH鎖をコードする塩基配列を含むDNA断片を、EcoRI およびBamHIで消化することにより調製した発現ベクターpCOS1に導入した。こうして得られたキメラ抗体の発現プラスミドをMBC1HcDNA/pCOS1と命名した。なお、発現ベクターpCOS1は、HEF-PMh-gγ1(WO92/19759参照)から、EcoRI およびSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI-NotI-BamHI Adaptor(宝酒造)を連結することにより構築した。
【0128】
さらにCHO細胞での発現に用いるためのプラスミドを作製するため、プラスミドMBC1HcDNA/pUC19 をEcoRI およびBamHIで消化し、得られたキメラ抗体H鎖配列を含むDNA断片を、EcoRI およびBamHIで消化することにより調製した発現プラスミドpCHO1に導入した。こうして得られたキメラ抗体の発現プラスミドをMBC1HcDNA/pCHO1 と命名した。なお、発現ベクターpCHO1は、DHFR- △E-rvH-PM1-f(WO92/19759参照)から、EcoRI およびSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI-NotI-BamHI Adaptor(宝酒造)を連結することにより構築した。
【0129】
(2) ヒトL鎖定常領域の構築
(i) クローニングベクターの作製
ヒトL鎖定常領域を含むpUC19 ベクターを構築するために、Hind III部位欠失pUC19 ベクターを作製した。pUC19 ベクター2μgを20mM Tris-HCl(pH8.5 )、10mM MgCl2、1mM DTT、100 mM KCl、8Uの Hind III (宝酒造)を含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。消化混合液をフェノールおよびクロロホルムで抽出し、DNAをエタノール沈殿により回収した。回収したDNAを50mM Tris-HCl (pH7.5)、10mM MgCl2、1mM DTT、100mM NaCl、0.5mM dNTP、6Uのクレノウ(Klenow)フラグメント(GIBCO BRL)を含有する50μlの反応混合液中で室温にて20分間反応させ、末端を平滑化させた。反応混合液をフェノールおよびクロロホルムで抽出し、ベクターDNAをエタノール沈殿により回収した。
【0130】
回収したベクターDNAを50mM Tris-HCl (pH7.6)、 10mM MgCl2 、1mM ATP、1mM DTT、5%(v/v) ポリエチレングリコール-8000 、0.5 UのT4 DNAリガーゼ(GIBCO BRL)を含有する反応混合液10μl中で16℃で2時間反応させ、自己連結させた。反応混合液5μlを大腸菌JM109 コンピテント細胞(ニッポンジーン)100 μlに加え、氷上で30分間静置した後、42℃にて1分間、さらに氷上で1分間静置した。SOC培地500 μlを加えて、37℃で1時間インキュベーションした後、X-gal とIPTGを表面に塗布した2×YT寒天培地(50μg/mlアンピシリン含有)(Molecular Cloning: A Labgoratory Manual, Sambrook,et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)にまき、37℃で一夜培養して形質転換体を得た。
【0131】
形質転換体を、50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地20mlで37℃一夜培養し、菌体画分からPlasmid Mini Kit(QIAGEN)を用いて、添付の処方に従ってプラスミドDNAを精製した。精製したプラスミドをHind IIIで消化し、Hind III部位が欠失していることを確認したプラスミドをpUC19ΔHind IIIと命名した。
【0132】
(ii)ヒトL鎖λ鎖定常領域をコードする遺伝子の構築
ヒト抗体L鎖λ鎖C領域は、Mcg+ Ke+ Oz- 、Mcg- Ke- Oz- 、Mcg- Ke- Oz+ 、Mcg- Ke+ Oz- の少なくとも4種類のアイソタイプが知られている(P.Dariavach,et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,9074-9078,1987) 。#23-57-137-1マウスL鎖λ鎖C領域と相同性を有するヒト抗体L鎖λ鎖C領域をEMBLデータベースで検索した結果、アイソタイプがMcg+ Ke+ Oz- (accession No.X57819)(P. Dariavach, et al., Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 84, 9074-9078, 1987)のヒト抗体L鎖λ鎖が最も高い相同性を示し、#23-57-137-1マウスL鎖λ鎖C領域との相同性はアミノ酸配列で64.4%、塩基配列で73.4%であった。
【0133】
そこで、このヒト抗体L鎖λ鎖C領域をコードする遺伝子の構築をPCR法を用いて行った。各プライマーの合成は、394 DNA/RNA 合成機(ABI社) を用いて行った。HLAMB1(配列番号11)およびHLAMB3(配列番号13)はセンスDNA配列を有し、HLAMB2(配列番号12)およびHLAMB4(配列番号14)はアンチセンスDNA配列を有し、それぞれのプライマーの両端に20から23bpの相補的配列を有する。
【0134】
外部プライマーHLAMBS(配列番号15)、HLAMBR(配列番号16)はHLAMB1、HLAMB4とそれぞれ相同な配列を有しており、またHLAMBSはEcoRI 、Hind III、BlnI認識配列を、HLAMBRはEcoRI 認識配列をそれぞれ含んでいる。第一PCRでHLAMB1-HLAMB2 とHLAMB3-HLAMB4 の反応を行った。反応後、それらを等量混合し、第二PCRでアセンブリを行った。さらに外部プライマーHLAMBSおよびHLAMBRを添加し、第三PCRにより全長DNAを増幅させた。
【0135】
PCRはTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を使い、添付の処方に従って行った。第一PCRでは、5pmole のHLAMB1および 0.5pmole のHLAMB2と5UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)とを含有する100 μlの反応混合液、あるいは0.5pmoleのHLAMB3および5pmole のHLAMB4と5UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)とを含有する100 μlの反応混合液を用い、50μlの鉱油を上層して94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行った。
【0136】
第二PCR は、反応液を50μlずつ混合し、50μlの鉱油を上層して94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで3回行った。
【0137】
第三PCRは、反応液に外部プライマーHLAMBSおよびHLAMBRを各50pmole ずつ添加し、94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
【0138】
第三PCR産物のDNA断片を3%低融点アガロースゲル(NuSieve GTG Agarose, FMC) で電気泳動した後、GENECLEANII Kit(BIO101) を用い、添付の処方に従ってゲルから回収、精製した。
【0139】
得られたDNA断片を50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM DTT、 100mM NaCl 、8UのEcoRI (宝酒造)を含有する20μlの反応混合液中で37℃にて1時間消化した。消化混合液をフェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿で回収した後、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mM EDTA 溶液8μlに溶解した。
【0140】
プラスミドpUC19ΔHind III 0.8μgを同様にEcoRI で消化し、フェノールおよびクロロホルムで抽出、エタノール沈殿により回収した。消化したプラスミドpUC19ΔHind IIIを50 mM Tris-HCl(pH9.0)、1mM MgCl2、アルカリホスファターゼ(E.coli C75, 宝酒造)を含有する反応混合液50μl中で37℃、30分間反応させ脱リン酸処理(BAP処理)した。反応液をフェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿により回収した後、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mMEDTA溶液10μlに溶解した。
【0141】
上記のBAP処理したプラスミドpUC19 ΔHind III1μlと先のPCR産物4μlをDNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造)を用いて連結し、大腸菌JM109 コンピテント細胞に形質転換した。得られた形質転換体を50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN) を用いてプラスミドを精製した。
【0142】
上記プラスミドについて、クローニングされたDNAの塩基配列の確認を行った。塩基配列の決定には373A DNA シークエンサー (ABI 社) を用い、プライマーにはM13 Primer M4 およびM13 Pricer RV (宝酒造)を用いた。その結果、クローニングされたDNAの内部に12bpの欠失があることが判明した。このDNAを含むプラスミドをCλΔ/pUC19 と命名した。そこで、その部分を補うためのプライマーHCLMS (配列番号17)、 HCLMR(配列番号18)を新たに合成し、PCRで再度正しいDNAの構築を行った。
【0143】
第一PCRで欠失DNAを含むプラスミドCλΔ/pUC19 を鋳型とし、プライマーHLAMBSとHCLMR 、HCLMS とHLAMB4で反応を行った。PCR産物をそれぞれ精製し、第二PCRでアセンブリを行った。さらに外部プライマーHLAMBSおよびHLAMB4を添加し、第三PCRにより全長DNAを増幅させた。
【0144】
第一PCRでは、鋳型としてCλΔ/pUC19 0.1μg、プライマーHLAMBSおよびHCLMR 各50pmole 、あるいはHCLMS およびHLAMB4各50pmole 、5UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を含有する100 μlの反応混合液を用い、50μlの鉱油を上層して94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。
【0145】
PCR産物HLAMBS-HCLMR(236bp) 、HCLMS-HLAMB4(147bp) をそれぞれ3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製した。第二PCRでは精製DNA断片各40ng、1UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を含有する20μlの反応混合液を用い、25μlの鉱油を上層して94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルを5回行った。
【0146】
第三PCRでは、第二PCR反応液2μl、外部プライマーHLAMBS、HLAMB4各50pmole 、5UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を含有する100 μlの反応混合液を用い、50μlの鉱油を上層した。PCRは、94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。第三PCR産物である357bp のDNA断片を3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製した。
【0147】
得られたDNA断片0.1μgをEcoRI で消化した後、BAP処理したプラスミド pUC19ΔHind IIIにサブクローニングした。大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。
【0148】
精製したプラスミドについて塩基配列をM13 Primer M4 、M13 Primer RV (宝酒造)を用い、373A DNAシークエンサー(ABI社)にて決定した。欠失のない正しい塩基配列を有していることが確認されたプラスミドをCλ/pUC19 とした。
【0149】
(iii) ヒトL鎖κ鎖定常領域をコードする遺伝子の構築
プラスミドHEF-PM1k-gk (WO92/19759)からL鎖κ鎖C領域をコードするDNA断片をPCR法を用いてクローニングした。394 DNA/RNA 合成機(ABI社)を用いて合成した前方プライマーHKAPS (配列番号19)はEcoRI 、Hind III、BlnI認識配列を、後方プライマーHKAPA (配列番号20)はEcoRI 認識配列を有するように設計した。
【0150】
鋳型となるプラスミドHEF-PM1k-gk 0.1 μg、プライマーHKAPS 、HKAPA 各50pmole 、5UのTaKaRa Ex Taq (宝酒造)を含有する100 μlの反応混合液を用い、50μlの鉱油を上層した。94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間の反応を30サイクル行った。360bp のPCR産物を3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製した。
【0151】
得られたDNA断片をEcoRI で消化した後、BAP処理したプラスミドpUC19 ΔHind IIIにクローニングした。大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。精製したプラスミドの塩基配列をM13 Primer M4 、M13 Primer RV (宝酒造)を用い、373A DNAシークエンサー(ABI社)にて決定した。正しい塩基配列を有していることが確認されたプラスミドをCκ/pUC19 とした。
【0152】
(3) キメラ抗体L鎖発現ベクターの構築
キメラ#23-57-137-1抗体L鎖発現ベクターを構築した。プラスミドCλ/pUC19 、Cκ/pUC19 のヒト抗体定常領域の直前にあるHind III、BlnI部位に、#23-57-137-1L鎖V領域をコードする遺伝子を連結することによって、それぞれキメラ#23-57-137-1抗体L鎖V領域およびL鎖λ鎖またはL鎖κ鎖定常領域をコードするpUC19 ベクターを作製した。EcoRI 消化によってキメラ抗体L鎖遺伝子を切り出し、HEF発現ベクターへサブクローニングを行った。
【0153】
すなわち、プラスミドMBC1L24 から#23-57-137-1抗体L鎖V領域をPCR法を用いてクローニングした。各プライマーの合成は、394 DNA/RNA 合成機(ABI社)を用いて行った。後方プライマーMBCCHL1 (配列番号21)はHind III認識配列とKozak 配列(Kozak,M.et al.,J.Mol.Biol.196,947-950,1987) を、前方プライマーMBCCHL3 (配列番号22)はBglII 、EcoRI 認識配列を有するように設計した。
【0154】
PCRは、10mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2 、0.2mM dNTP、0.1 μgのMBC1L24 、プライマーとしてMBCCHL1 およびMBCCHL3 を各50pmole 、1μlの AmpliTaq(PERKIN ELMER) を含有する100μlの反応混合液を用い、50μlの鉱油を上層して94℃にて45秒間、60℃にて45秒間、72℃にて2分間の温度サイクルで30回行った。
【0155】
444bpのPCR産物を3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEAN II kit(BIO101)を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris-HCl (pH7.4) 、1mM EDTA 溶液20μlに溶解した。PCR産物1μlをそれぞれ10mM Tris-HCl (pH7.5)、10mM MgCl2、1mM DTT、50mM NaCl 、8UのHind III(宝酒造)および8UのEcoRI (宝酒造)を含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。消化混合液をフェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿で回収し、10mM Tris-HCl (pH7.4)、1mM EDTA 溶液8μlに溶解した。
【0156】
プラスミドpUC191μgを同様にHind IIIおよびEcoRIで消化し、フェノールおよびクロロホルムで抽出、エタノール沈殿により回収し、アルカリホスファターゼ(E.coli C75 ,宝酒造)でBAP処理した。反応液をフェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿で回収した後、10mM Tris-HCl (pH7.4)、1mM EDTA 溶液10μlに溶解した。
【0157】
BAP処理したプラスミドpUC19 1μlと先のPCR産物4μlをDNA LigationKit Ver.2 (宝酒造)を用いて連結し、大腸菌JM109コンピテント細胞(ニッポンジーン)に前述と同様に形質転換した。これを50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT寒天培地にまき、37℃で一夜培養した。得られた形質転換体を、50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで37℃で一夜培養した。菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。塩基配列を決定後、正しい塩基配列を有するプラスミドをCHL/pUC19 とした。
【0158】
プラスミドCλ/pUC19 、Cκ/pUC19 各1μgをそれぞれ20mM Tris-HCl(pH8.5)、10mM MgCl2、1mM DTT、100mM KCl、8Uの Hind III(宝酒造)および2UのBlnI(宝酒造)を含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。消化混合液をフェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿で回収した後、37℃で30分間BAP処理を行った。反応液をフェノールおよびクロロホルムで抽出し、DNAをエタノール沈殿で回収し、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mM EDTA 溶液10μlに溶解した。
【0159】
#23-57-137-1L鎖V領域を含むプラスミドCHL/pUC19 から8μgを同様にHindIIIおよびBlnIで消化した。得られた409bp のDNA断片を3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mM EDTA 溶液10μlに溶解した。
【0160】
このL鎖V領域DNA 4μlをBAP処理したプラスミドCλ/pUC19 またはCκ/pUC19 各1μlにサブクローニングし、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地3mlで一夜培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN) を用いてプラスミドを精製した。これらをそれぞれプラスミドMBC1L(λ)/pUC19 、MBC1L(κ)/pUC19 とした。
【0161】
プラスミドMBC1L(λ)/pUC19 およびMBC1L(κ)/pUC19 をそれぞれEcoRI で消化し、3%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、743bp のDNA断片をGENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mMEDTA溶液10μlに溶解した。
【0162】
発現ベクターとしてプラスミドHEF-PM1k-gk 2.7 μgをEcoRI で消化し、フェノールおよびクロロホルムで抽出、DNAをエタノール沈殿で回収した。回収したDNA断片をBAP処理した後、1%低融点アガロースゲルで電気泳動し、6561bpのDNA断片をGENECLEANII Kit(BIO101) を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris-HCl(pH7.4)、1mM EDTA 溶液10μlに溶解した。
【0163】
BAP処理したHEFベクター2μlを上記プラスミドMBC1L(λ) またはMBC1L(κ) EcoRI 断片各3μlと連結し、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで培養し、菌体画分からQIAprep Spin Plasmid Kit (QIAGEN) を用いてプラスミドを精製した。
【0164】
精製したプラスミドを、20mM Tris-HCl (pH8.5) 、10mM MgCl2、1mM DTT、100mM KCl 、8UのHind III(宝酒造)および2UのPvuI(宝酒造)を含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。断片が正しい方向に挿入されていれば5104/2195bp 、逆方向に挿入されていれば4378/2926bp の消化断片が生じることより、正しい方向に挿入されていたプラスミドをそれぞれMBC1L(λ)/neo 、MBC1L(κ)/neo とした。
【0165】
(4) COS−7細胞のトランスフェクション
キメラ抗体の抗原結合活性および中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞で一過性に発現させた。
【0166】
すなわちキメラ抗体の一過性発現は、プラスミドMBC1HcDNA/pCOS1とMBC1L(λ)/neoまたはMBC1HcDNA/pCOS1とMBC1L(κ)/neoの組み合わせで、GenePulser装置(BioRad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に同時形質導入した。PBS(−)中に1x107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.8mlに、各プラスミドDNA10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を2%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培地(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。72時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、ELISAの試料に供した。 また、COS−7細胞の培養上清からのキメラ抗体の精製は、AffiGel Protein A MAPSIIキット(BioRad)を用いてキット添付の処方に従って行った。
【0167】
(5) ELISA
(i) 抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴を固相化バッファー(0.1M NaHCO3 、0.02% NaN3 )で1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlで固相化し、200μlの希釈バッファー(50mM Tris-HCl、1mM MgCl2 、0.1M NaCl 、0.05% Tween20、0.02% NaN3 、1% 牛血清アルブミン(BSA)、pH7.2 )でブロッキングの後、キメラ抗体を発現させたCOS細胞の培養上清あるいは精製キメラ抗体を段階希釈して各穴に加えた。1時間室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄の後、1mg/mlの基質溶液(Sigma104、p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を加え、次に405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(BioRad)で測定した。濃度測定のスタンダードとして、Hu IgG1λ Purified(The Binding Site)を用いた。
【0168】
(ii)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのElISAプレートでは、次のようにして調製した。ELISA用96穴プレートの各穴を固相化バッファーで1μg/mlの濃度に調製したヒトPTHrP(1−34)(ペプチド研究所)100μlで固相化した。200μlの希釈バッファーでブロッキングの後、キメラ抗体を発現させたCOS細胞の培養上清あるいは精製キメラ抗体を段階希釈して各穴に加えた。室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlを加えた。室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄の後、1mg/mlの基質溶液(Sigma104、p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を加え、次に405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(BioRad)で測定した。その結果、キメラ抗体は、ヒトPTHrP(1−34)に対する結合能を有しており、クローニングしたマウス抗体V領域の正しい構造を有することが示された(図5)。また、キメラ抗体においてL鎖C領域がλ鎖あるいはκ鎖のいずれであっても抗体のPTHrP(1−34)に対する結合能は変化しないことから、ヒト型化抗体のL鎖C領域は、ヒト型化抗体L鎖λ鎖を用いて構築した。
【0169】
(6) CHO安定産生細胞株の樹立
キメラ抗体の安定産生細胞株を樹立するため、前記発現プラスミドをCHO細胞(DXB11)に導入した。
【0170】
すなわちキメラ抗体の安定産生細胞株樹立は、CHO細胞用発現プラスミドMBC1HcDNA/pCHO1とMBC1L(λ)/neoまたはMBC1HcDNA/pCHO1とMBC1L(κ)/neoの組み合わせで、GenePulser装置(BioRad)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞に同時形質導入した。それぞれの発現ベクターを制限酵素PvuIで切断して直鎖DNAにし、フェノールおよびクロロホルム抽出後、エタノール沈殿でDNAを回収してエレクトロポレーションに用いた。PBS(−)中に1×107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCHO細胞0.8ml に、各プラスミドDNA 10μgを加え、1,500 V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を10%ウシ胎児血清(GIBCO)を添加したMEM−α培地(GIBCO)に懸濁し、3枚の96穴プレート(Falcon)を用いてCO2インキュベーターにて培養した。培養開始翌日に、10%ウシ胎児血清(GIBCO)および500mg/mlのGENETICIN(G418Sulfate、GIBCO)添加、リボヌクレオシドおよびデオキリボヌクレオシド不含MEMーα培地(GIBCO)の選択培地を交換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。選択培地交換後、2週間前後に顕微鏡下で細胞を観察し、順調な細胞増殖が認められた後に、上記抗体濃度測定ELISAにて抗体産生量を測定し、抗体産生量の多い細胞を選別した。
【0171】
樹立した抗体の安定産生細胞株の培養を拡大し、ローラーボトルにて2%のUltra Low IgGウシ胎児血清添加、リボヌクレオシドおよびデオキリボヌクレオシド不含MEM培地を用いて、大量培養を行った。培養3ないし4日目に培養上清を回収し、0.2μmのフィルター(Millipore)により細胞破片を除去した。
【0172】
CHO細胞の培養上清からのキメラ抗体の精製は、POROSプロテインAカラム(PerSeptive Biosystems)を用いて、ConSep LC100(Millipore)にて添付の処方に従って行い、中和活性の測定および高カルシウム血症モデル動物での薬効試験に供した。得られた精製キメラ抗体の濃度および抗原結合活性は、上記ELISA系にて測定した。
【0173】
[参考例4]
ヒト型化抗体の構築
(1) ヒト型化抗体H鎖の構築
(i) ヒト型化H鎖V領域の構築
ヒト型化#23-57-137-1抗体H鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体S31679(NBRF−PDB、Cuisinier A.M.ら、Eur.J.Immunol.,23,110−118,1993)由来のFRを有するヒト型化#23-57-137-1抗体H鎖(バージョン"a")の作製のために6個のPCRプライマーを使用した。CDR−グラフティングプライマーMBC1HGP1(配列番号23)及びMBC1HGP3(配列番号24)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーMBC1HGP2(配列番号25)及びMBC1HGP4(配列番号26)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に15から21bpの相補的配列を有する。外部プライマーMBC1HVS1(配列番号27)及びMBC1HVR1(配列番号28)はCDRグラフティングプライマーMBC1HGP1及びMBC1HGP4とホモロジーを有する。
【0174】
CDR−グラフティングプライマーMBC1HGP1、MBC1HGP2、MBC1HGP3およびMBC1HGP4は尿素変性ポリアクリルアミドゲルを用いて分離し(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、ゲルからの抽出はcrush andsoak法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)にて行った。
【0175】
すなわち、それぞれ1nmoleのCDR−グラフティングプライマーを6%変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、目的の大きさのDNA断片の同定をシリカゲル薄層板上で紫外線を照射して行い、crush and soak法にてゲルから回収し20μlの10mM Tris−HCl(pH7.4),1mMEDTA溶液に溶解した。PCRは、TaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用い、100μlの反応混合液に上記の様に調製したCDR−グラフティングプライマーMBC1HGP1、MBC1HGP2、MBC1HGP3およびMBC1HGP4をそれぞれ1μl、0.25mMのdNTP、2.5UのTaKaRaEx Taqを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、さらに50pmoleの外部プライマーMBC1HVS1及びMBC1HVR1を加え、同じ温度サイクルを30回行った。PCR法により増幅したDNA断片を4%Nu SieveGTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0176】
421bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEANII Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、10mM Tris−HCl(pH7.4),1mM EDTA溶液20μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をBamHIおよびHindIIIで消化することにより調製したpUC19にサブクローニングし、塩基配列を決定した。正しい配列を有するプラスミドをhMBCHv/pUC19と命名した。
【0177】
(ii) ヒト型化H鎖cDNAのためのH鎖V領域の構築
ヒトH鎖C領域Cγ1のcDNAと連結するために、上記のようにして構築したヒト型化H鎖V領域をPCR法により修飾した。後方プライマーMBC1HVS2はV領域のリーダー配列の5'−側をコードする配列とハイブリダイズし、且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M,ら、J.Mol.Biol.196,947−950,1987)、HindIIIおよびEcoRI認識配列を有するように設計した。H鎖V領域のための前方プライマーMBC1HVR2はJ領域の3'−側をコードするDNA配列にハイブリダイズし且つC領域の5'−側の配列をコードしApaIおよびSmaI認識配列を有するように設計した。
【0178】
PCRはTaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用い、鋳型DNAとして0.4μgのhMBCHv/pUC19を用い、プライマーとしてMBC1HVS2およびMBC1HVR2をそれぞれ50pmole、2.5UのTaKaRa ExTaq、0.25mMのdNTPを含む条件で添付緩衝液を使用し、94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。PCR法により増幅したDNA断片を3%NuSieveGTGアガロース(FMCBio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0179】
456bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEANII Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。精製したDNAをエタノールで沈殿させた後、10mM Tris−HCl(pH7.4),1mM EDTA溶液20μlに溶解した。得られたPCR反応混合物をEcoRIおよびSmaIで消化することで調製したpUC19にサブクローニングし、塩基配列を決定した。こうして得られたハイブリドーマ#23-57-137-1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有し、5'−側にEcoRIおよびHindIII認識配列及びKozak配列、3'−側にApaIおよびSmaI認識配列を持つプラスミドをhMBC1Hv/pUC19と命名した。
【0180】
(2)ヒト型化抗体H鎖の発現ベクターの構築
hPM1抗体H鎖cDNAの配列を含むプラスミドRVh−PM1f−cDNAをApaIおよびBamHIにて消化し、H鎖C領域を含むDNA断片を回収し、ApaIおよびBamHIで消化することにより調製したhMBC1Hv/pUC19に導入した。こうして作製したプラスミドをhMBC1HcDNA/pUC19と命名した。このプラスミドはヒト型化#23-57-137-1抗体のH鎖V領域及びヒトH鎖C領域Cγ1を含み、5'-末端にEcoRIおよびHindIII認識配列、3'-末端にBamHI認識配列を持つ。プラスミドhMBC1HcDNA/pUC19に含まれるヒト型化H鎖バージョン"a"の塩基配列および対応するアミノ酸配列を配列番号58に示す。また、バージョンaのアミノ酸配列を配列番号56に示す。
【0181】
hMBC1HcDNA/pUC19をEcoRIおよびBamHIで消化し、得られたH鎖配列を含むDNA断片をEcoRIおよびBamHIで消化することにより調製した発現プラスミドpCOS1に導入した。こうして得られたヒト型化抗体の発現プラスミドをhMBC1HcDNA/pCOS1と命名した。
【0182】
さらにCHO細胞での発現に用いるためのプラスミドを作製するためhMBC1HcDNA/pUC19をEcoRIおよびBamHIで消化し、得られたH鎖配列を含むDNA断片をEcoRIおよびBamHIで消化することにより調製した発現プラスミドpCHO1に導入した。こうして得られたヒト型化抗体の発現プラスミドをhMBC1HcDNA/pCHO1と命名した。
【0183】
(3)L鎖ハイブリッド可変領域の構築
(i) FR1,2/FR3,4ハイブリッド抗体の作製
ヒト型化抗体とマウス(キメラ)抗体のFR領域を組み換えたL鎖遺伝子を構築し、ヒト型化のための各領域の評価を行った。CDR2内にある制限酵素AflII切断部位を利用することによって、FR1及び2はヒト抗体由来、FR3及び4はマウス抗体由来とするハイブリッド抗体を作製した。
【0184】
プラスミドMBC1L(λ)/neo及びhMBC1L(λ)/neo各10μgを10mMTris−HCl(pH7.5),10mM MgCl2,1mMDTT,50mMNaCl,0.01%(w/v)BSA,AflII(宝酒造)10Uを含有する反応混合液100μl中で37℃にて1時間消化した。反応液を2%低融点アガロースゲルで電気泳動し、プラスミドMBC1L(λ)/neoから6282bpの断片(c1とする)および1022bpの断片(c2とする)、プラスミドhMBC1L(λ)/neoから6282bpの断片(h1とする)および1022bpの断片(h2とする)を、GENECLEANIIKit(BIO101)を用いてゲルから回収、精製した。
【0185】
回収したc1、h1断片各1μgについてBAP処理を行った。DNAをフェノールおよびクロロホルムで抽出、エタノール沈殿で回収した後、10mM Tris−HCl(pH7.4),1mM EDTA溶液10μlに溶解した。BAP処理したc1及びh1断片1μlをそれぞれh2、c2断片4μlに連結し(4℃、一夜)、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで培養し、菌体画分からQIAprepSpinPlasmidKit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。
【0186】
精製したプラスミドを、10mMTris−HCl(pH7.5),10mMMgCl2 ,1mMDTT,ApaLI(宝酒造)2U、またはBamHI(宝酒造)8U,HindIII(宝酒造)8Uを含有する反応混合液20μl中で37℃、1時間消化した。c1-h2が正しく連結されていれば、ApaLIで5560/1246/498bp、BamHI/HindIIIで7134/269bpの消化断片が生じることにより、プラスミドの確認を行った。
【0187】
これをヒトFR1,2/マウスFR3,4ハイブリッド抗体L鎖をコードする発現ベクターをh/mMBC1L(λ)/neoとした。一方、h1-c2のクローンが得られなかったので、pUCベクター上で組換えてからHEFベクターにクローニングした。その際、アミノ酸置換のないヒト型化抗体L鎖V領域を含むプラスミドhMBC1Laλ/pUC19、及びFR3内の91位(Kabatの規定によるアミノ酸番号87位)のチロシンをイソロイシンに置換したヒト型化抗体L鎖V領域を含むプラスミドhMBC1Ldλ/pUC19を鋳型として用いた。
【0188】
プラスミドMBC1L(λ)/pUC19、hMBC1Laλ/pUC19及びhMBC1Ldλ/pUC19の各10μgを10mMTris−HCl(pH7.5),10mMMgCl2,1mMDTT,50mMNaCl,0.01%(w/v)BSA,HindIII16U,AflII4Uを含有する反応混合液30μl中で37℃、1時間消化した。反応液を2%低融点アガロースゲルで電気泳動し、プラスミドMBC1L(λ)/pUC19から215bp(c2')、プラスミドhMBC1Laλ/pUC19およびhMBC1Ldλ/pUC19からそれぞれ3218bp(ha1',hd1')のDNA断片をGENECLEANII Kit(BIO101)を用いてゲルから回収、精製した。
【0189】
ha1'、hd1'断片をそれぞれc2'断片に連結し、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで培養し、菌体画分からQIAprepSpinPlasmidKit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。これらをそれぞれプラスミドm/hMBC1Laλ/pUC19、m/hMBC1Ldλ/pUC19とした。
【0190】
得られたプラスミドm/hMBC1Laλ/pUC19,m/hMBC1Ldλ/pUC19をEcoRIで消化した。それぞれ743bpのDNA断片を2%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、GENECLEANIIKit(BIO101)を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris−HCl(pH7.4),1mM EDTA溶液20μlに溶解した。
【0191】
各DNA断片4μlを前述のBAP処理したHEFベクター1μlに連結し、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで培養し、菌体画分からQIAprepSpinPlasmidKit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。
【0192】
精製した各プラスミドを、20mMTris−HCl(pH8.5),10mM MgCl2,1mMDTT,100mMKCl,HindIII(宝酒造)8U,PvuI(宝酒造)2Uを含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。断片が正しい方向に挿入されていれば5104/2195bp、逆方向に挿入されていれば4378/2926bpの消化断片が生じることより、プラスミドの確認を行った。これらをそれぞれマウスFR1,2/ヒトFR3,4ハイブリッド抗体L鎖をコードする発現ベクターをm/hMBC1Laλ/neo、m/hMBC1Ldλ/neoとした。
【0193】
(ii)FR1/FR2ハイブリッド抗体の作製
CDR1内にあるSnaBI切断部位を利用することによって、同様にFR1とFR2のハイブリッド抗体を作製した。
【0194】
プラスミドMBC1L(λ)/neo及びh/mMBC1L(λ)/neoの各10μgを10mM Tris−HCl(pH7.9),10mM MgCl2,1mM DTT,50mM NaCl,0.01%(w/v)BSA,SnaBI(宝酒造)6Uを含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。次に20mMTris−HCl(pH8.5),10mM MgCl2,1mMDTT,100mM KCl,0.01%(w/v)BSA,PvuI6Uを含有する反応混合液50μl中で37℃にて1時間消化した。
【0195】
反応液を1.5%低融点アガロースゲルで電気泳動した後、プラスミドMBC1L(λ)/neoから4955bp(m1)および2349bp(m2)、プラスミドh/mMBC1L(λ)/neoから4955bp(hm1)および2349bp(hm2)の各DNA断片をGENECLEANII Kit(BIO101)を用いてゲルから回収、精製し、10mM Tris−HCl(pH7.4),1mM EDTA溶液40μlに溶解した。
【0196】
m1、hm1断片1μlをそれぞれhm2、m2断片4μlに連結し、大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換した。50μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地2mlで培養し、菌体画分からQIAprepSpinPlasmidKit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。
【0197】
精製した各プラスミドを、10mMTris−HCl(pH7.5),10mM MgCl2,1mMDTT,ApaI(宝酒造)8U、またはApaLI(宝酒造)2Uを含有する反応混合液20μl中で37℃にて1時間消化した。
【0198】
各断片が正しく連結されていれば、ApaIで7304bp、ApaLIで5560/1246/498bp(m1-hm2)、ApaIで6538/766bp、ApaLIで3535/2025/1246/498bp(hm1-m2)の消化断片が生じることにより、プラスミドの確認を行った。これらをそれぞれヒトFR1/マウスFR2,3,4ハイブリッド抗体L鎖をコードする発現ベクターをhmmMBC1L(λ)/neo、マウスFR1/ヒトFR2/マウスFR3,4ハイブリッド抗体L鎖をコードする発現ベクターをmhmMBC1L(λ)/neoとした。
【0199】
(4)ヒト型化抗体L鎖の構築
ヒト型化#23-57-137-1抗体L鎖を、PCR法によるCDR−グラフティングにより作製した。ヒト抗体HSU03868(GEN-BANK、Deftos Mら,Scand.J.Immunol.,39,95−103,1994)由来のFR1、FR2およびFR3、並びにヒト抗体S25755(NBRF-PDB)由来のFR4を有するヒト型化#23-57-137-1抗体L鎖(バージョン"a")の作製のために6個のPCRプライマーを使用した。
【0200】
CDR−グラフティングプライマーMBC1LGP1(配列番号29)及びMBC1LGP3(配列番号30)はセンスDNA配列を有し、そしてCDRグラフティングプライマーMBC1LGP2(配列番号31)及びMBC1LGP4(配列番号32)はアンチセンスDNA配列を有し、そしてそれぞれプライマーの両端に15から21bpの相補的配列を有する。外部プライマーMBC1LVS1(配列番号33)及びMBC1LVR1(配列番号34)はCDRグラフティングプライマーMBC1LGP1及びMBC1LGP4とホモロジーを有する。
【0201】
CDR−グラフティングプライマーMBC1LGP1、MBC1LGP2、MBC1LGP3およびMBC1LGP4は尿素変性ポリアクリルアミドゲルを用いて分離し(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、ゲルからの抽出はcrush andsoak法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)にて行った。
【0202】
すなわち、それぞれ1nmoleのCDR−グラフティングプライマーを6%変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、目的の大きさのDNA断片の同定をシリカゲル薄層板上で紫外線を照射して行い、crush and soak法にてゲルから回収し20μlの10mM Tris−HCl(pH7.4),1mMEDTA溶液に溶解した。
【0203】
PCRは、TaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用い、100μlの反応混合液に上記の様に調製したCDR−グラフティングプライマーMBC1LGP1、MBC1LGP2、MBC1LGP3およびMBC1LGP4をそれぞれ1μl、0.25mMのdNTP、2.5UのTaKaRa Ex Taqを含む条件で添付緩衝液を使用して94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで5回行い、この反応混合液に50pmoleの外部プライマーMBC1LVS1及びMBC1LVR1を加え、さらに同じ温度サイクルで30回反応させた。PCR法により増幅したDNA断片を3%Nu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0204】
421bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEANII Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。得られたPCR反応混合物をBamHIおよびHindIIIで消化することにより調製したpUC19にサブクローニングし、塩基配列を決定した。こうして得られたプラスミドをhMBCL/pUC19と命名した。しかしながらCDR4の104位(Kabatの規定によるアミノ酸番号96位)のアミノ酸がアルギニンになっていたため、これをチロシンに修正するための修正プライマーMBC1LGP10R(配列番号35)を設計し、合成した。PCRはTaKaRa Taq(宝酒造)を用い、100μlの反応混合液に鋳型DNAとして0.6μgのプラスミドhMBCL/pUC19、プライマーとしてMBC1LVS1及びMBC1LGP10Rをそれぞれ50pmole、2.5UのTaKaRa Ex Taq(宝酒造)0.25mMのdNTPを含む条件で添付の緩衝液を使用して50μlの鉱油を上層して94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1分間の温度サイクルで30回行った。PCR法により増幅したDNA断片を3%Nu Sieve GTGアガロース(FMC Bio.Products)を用いたアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0205】
421bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切取り、GENECLEANII Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。得られたPCR反応混合物をBamHIおよびHindIIIで消化することにより調製したpUC19にサブクローニングした。
【0206】
M13 Primer M4プライマー及びM13 Primer RVプライマーを用いて塩基配列を決定した結果、正しい配列を得ることができたので、このプラスミドをHindIIIおよびBlnIで消化し、416bpの断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離した。GENECLEANII Kit(BIO101)を用い、キット添付の処方に従いDNA断片を精製した。得られたPCR反応混合物をHindIIIおよびBlnIで消化することにより調製したプラスミドCλ/pUC19に導入し、プラスミドhMBC1Laλ/pUC19と命名した。このプラスミドをEcoRI消化し、ヒト型化L鎖をコードする配列を含む配列をプラスミドpCOS1に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをhMBC1Laλ/pCOS1と命名した。ヒト型化L鎖バージョン"a"の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)を配列番号66に示す。また、バージョンaのアミノ酸配列を配列番号47に示す。
【0207】
バージョン"b"をPCR法による変異導入を用いて作製した。バージョン"b"では43位(Kabatの規定によるアミノ酸番号43位)のグリシンをプロリンに、49位(Kabatの規定によるアミノ酸番号49位)のリジンをアスパラギン酸に変更するように設計した。変異原プライマーMBC1LGP5R(配列番号36)とプライマーMBC1LVS1によりプラスミドhMBC1Laλ/pUC19を鋳型としてPCRを行い、得られたDNA断片をBamHIおよびHindIIIで消化し、pUC19のBamHI,HindIII部位にサブクローニングした。塩基配列決定後、制限酵素HindIIIおよびAflIIで消化し、HindIIIおよびAflIIで消化したhMBC1Laλ/pUC19と連結した。
【0208】
こうして得られたプラスミドをhMBC1Lbλ/pUC19とし、このプラスミドをEcoRIで消化し、ヒト型化L鎖をコードするDNAを含む断片をプラスミドpCOS1に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをhMBC1Lbλ/pCOS1と命名した。
【0209】
バージョン"c"をPCR法による変異導入を用いて作製した。バージョン"c"では84位(Kabatの規定によるアミノ酸番号80位)のセリンをプロリンに変更するように設計した。変異原プライマーMBC1LGP6S(配列番号37)とプライマーM13 Primer RVによりプラスミドhMBC1Laλ/pUC19を鋳型としてPCRを行い、得られたDNA断片をBamHIおよびHindIIIで消化し、BamHIおよびHindIIIで消化することにより調製したpUC19にサブクローニングした。
【0210】
塩基配列決定後、制限酵素BstPIおよびAor51HIで消化し、BstPIおよびAor51HIで消化したhMBC1Laλ/pUC19と連結した。こうして得られたプラスミドをhMBC1Lcλ/pUC19とし、このプラスミドを制限酵素EcoRI消化し、ヒト型化L鎖をコードする配列を含む配列をプラスミドpCOS1のEcoRI部位に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをhMBC1Lcλ/pCOS1と命名した。
【0211】
バージョン"d" 、"e" 及び"f" をPCR法による変異導入を用いて作製した。各バージョンとも順に"a" 、"b" 、"c" バージョンの91位(Kabatの規定によるアミノ酸番号87位)のチロシンをイソロイシンに変更するように設計した。変異原プライマーMBC1LGP11R(配列番号38)とプライマーM-S1(配列番号44)によりそれぞれhMBC1Laλ/pCOS1,hMBC1Lbλ/pCOS1,hMBC1Lcλ/pCOS1を鋳型としてPCRを行い、得られたDNA断片をBamHIおよびHindIIIで消化し、BamHIおよびHindIIIで消化することにより調製したpUC19にサブクローニングした。塩基配列決定後、HindIIIおよびBlnIで消化し、HindIIIおよびBlnIで消化することより調製したCλ/pUC19と連結した。
【0212】
こうして得られたプラスミドを順にhMBC1Ldλ/pUC19、hMBC1Leλ/pUC19、hMBC1Lfλ/pUC19とした。これらのプラスミドをEcoRI消化し、ヒト型化L鎖をコードする配列を含む配列をプラスミドpCOS1のEcoRI部位に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをそれぞれ順にhMBC1Ldλ/pCOS1、hMBC1Leλ/pCOS1、hMBC1Lfλ/pCOS1と命名した。
【0213】
バージョン"g" 及び"h" をPCR法による変異導入を用いて作製した。各バージョンとも順に"a" 、"d" バージョンの36位(Kabatの規定によるアミノ酸番号36位)のヒスチジンをチロシンに変更するように設計した。変異原プライマーMBC1LGP9R(配列番号39)およびM13 Primer RVをプライマーとして用いて、hMBC1Laλ/pUC19を鋳型としてPCRを行い、得られたPCR産物とM13 Primer M4をプライマーとして用いて、プラスミドhMBC1Laλ/pUC19を鋳型としてさらにPCRを行った。得られたDNA断片をHindIIIおよびBlnIで消化し、HindIIIおよびBlnIで消化することで調製したプラスミドCλ/pUC19にサブクローニングした。このプラスミドを鋳型として、プライマーMBC1LGP13R(配列番号40)とMBC1LVS1をプライマーとしたPCRを行った。得られたPCR断片をApaIおよびHindIIでI消化し、ApaIおよびHindIIIで消化したプラスミドhMBC1Laλ/pUC19およびhMBC1Ldλ/pUC19に導入した。塩基配列を決定し、正しい配列を含むプラスミドを順にhMBC1Lgλ/pUC19およびhMBC1Lhλ/pUC19とし、これらのプラスミドを制限酵素EcoRI消化し、ヒト型化L鎖をコードする配列を含む配列をプラスミドpCOS1のEcoRI部位に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをそれぞれ順にhMBC1Lgλ/pCOS1およびhMBC1Lhλ/pCOS1と命名した。
【0214】
バージョン"i" 、"j" 、"k" 、"l" 、"m" 、"n" および"o" をPCR法による変異導入を用いて作製した。変異原プライマーMBC1LGP14S(配列番号41)とプライマーVlRV(λ)(配列番号43)によりプラスミドhMBC1Laλ/pUC19を鋳型としてPCRを行い、得られたDNA断片をApaIおよびBlnIで消化し、ApaIおよびBlnIで消化することにより調製したプラスミドhMBC1Lgλ/pUC19にサブクローニングした。塩基配列決定を行い、それぞれのバージョンに対応した変異が導入されたクローンを選択した。こうして得られたプラスミドをhMBC1Lxλ/pUC19(x=i,j,k,l,m,n,o)とし、このプラスミドをEcoRI消化し、ヒト型化L鎖をコードする配列を含む配列をプラスミドpCOS1のEcoRI部位に導入し、EF1αプロモーターの下流にヒト型化L鎖の開始コドンが位置するようにした。こうして得られたプラスミドをhMBC1Lxλ/pCOS1(x=i,j,k,l,m,n,o)と命名した。バージョン"j" 、"l" 、"m" および"o" の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)をそれぞれ配列番号67、68、69、70に示す。また、これらの各バージョンのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号48、49、50、51に示す。
【0215】
バージョン"p" 、"q" 、"r" 、"s" および"t" は、バージョン"i" 、"j" 、"m" 、"l" または"o" のアミノ酸配列の87位のチロシンをイソロイシンに置換したバージョンであり、FR3内にある制限酵素Aor51MI切断部位を利用して、バージョン"h" を、各バージョン"i" 、"j" 、"m" 、"l"または"o" とつなぎ換えることにより作製したものである。すなわち、発現プラスミドhMBC1Lxλ/pCOS1(x=i,j,m,l,o)中、CDR3並びにFR3の一部及びFR4を含むAor51HI断片514bpを除き、ここに発現プラスミドhMBC1Lhλ/pCOS1中、CDR3並びにFR3の一部及びFR4を含むAor51HI断片514bpをつなぐことにより91位(Kabatの規定によるアミノ酸番号87位)のチロシンがイソロイシンとなるようにした。塩基配列決定を行い、各バージョン"i" 、"j" 、"m" 、"l" および"o" の91位(Kabatの規定によるアミノ酸番号87位)のチロシンがイソロイシンに置換されたクローンを選択し、対応するバージョンをそれぞれ"p"、"q" 、"s" 、"r" および"t" とし、得られたプラスミドをhMBC1Lxλ/pCOS1(x=p,q,s,r,t)と命名した。バージョン"q" 、"r"、"s" および"t" の塩基配列(対応するアミノ酸を含む)をそれぞれ配列番号71、72、73、74に示す。また、これらの各バージョンのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号52、53、54、55に示す。
【0216】
プラスミドhMBC1Lqλ/pCOS1をHindIIIおよびEcoRIで消化し、HindIIIおよびEcoRIで消化したプラスミドpUC19にサブクローニングし、プラスミドhMBC1Lqλ/pUC19と命名した。ヒト型化L鎖の各バージョンにおける置換アミノ酸の位置を表2に示す。
【0217】
【表2】

【0218】
表中、Yはチロシン、Pはプロリン、Kはリジン、Vはバリン、Dはアスパラギン酸、Iはイソロイシンを示す。
【0219】
なお、前記プラスミドhMBC1HcDNA/pUC19およびhMBC1Lqλ/pUC19を有する大腸菌はEscherichia coli JM109(hMBC1HcDNA/pUC19)および Escherichiacoli JM109(hMBC1Lqλ/pUC19)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成8年8月15日に、Escherichia coli JM109(hMBC1HcDNA/pUC19)についてはFERM BP−5629、Escherichia coli JM109(hMBC1Lqλ/pUC19)についてはFERM BP−5630としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0220】
(5)COS−7細胞へのトランスフェクション
ハイブリッド抗体およびヒト型化#23-57-137-1抗体の抗原結合活性および中和活性を評価するため、前記発現プラスミドをCOS−7細胞で一過性に発現させた。すなわちL鎖ハイブリッド抗体の一過性発現では、プラスミドhMBC1HcDNA/pCOS1とh/mMBC1L(λ)/neo、hMBC1HcDNA/pCOS1とm/hMBC1Laλ/neo、hMBC1HcDNA/pCOS1とm/hMBC1Ldλ/neo、hMBC1HcDNA/pCOS1とhmmMBC1L(λ)/neo、またはhMBC1HcDNA/pCOS1とmhmMBC1L(λ)/neoとの組み合わせを、GenePulser装置(BioRad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に同時形質導入した。PBS(−)中に1×107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCOS−7細胞0.8mlに、各プラスミドDNA10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を2%のUltra Low IgGウシ胎児血清(GIBCO)を含有するDMEM培養液(GIBCO)に懸濁し、10cm培養皿を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。72時間の培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、ELISAの試料に供した。
【0221】
ヒト型化#23-57-137-1抗体の一過性発現では、プラスミドhMBC1HcDNA/pCOS1とhMBC1Lxλ/pCOS1(x=a〜t)のいずれかの組み合わせをGenePulser装置(BioRad)を用いて、前記ハイブリッド抗体の場合と同様の方法によりCOS−7細胞にトランスフェクションし、得られた培養上清をELISAに供した。
【0222】
また、COS−7細胞の培養上清からのハイブリッド抗体またはヒト型化抗体の精製は、AffiGel Protein A MAPSIIキット(BioRad)を用いて、キット添付の処方に従って行った。
【0223】
(6)ELISA
(i) 抗体濃度の測定
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製した。ELISA用96穴プレート(Maxisorp,NUNC)の各穴を固相化バッファー(0.1M NaHCO3 、0.02% NaN3 )で1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlで固相化し、200μlの希釈バッファー(50mM Tris−HCl、1mM MgCl2 、0.1M NaCl、0.05% Tween20、0.02% NaN3 、1% 牛血清アルブミン(BSA)、pH7.2)でブロッキングの後、ハイブリッド抗体またはヒト型化抗体を発現させたCOS−7細胞の培養上清あるいは精製ハイブリッド抗体またはヒト型化抗体を段階希釈して各穴に加えた。1時間室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlを加えた。1時間室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄の後、1mg/mlの基質溶液(Sigma104、p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を加え、次に405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(BioRad)で測定した。濃度測定のスタンダードとして、Hu IgG1λ Purified(TheBinding Site)を用いた。
【0224】
(ii)抗原結合能の測定
抗原結合測定のためのELISAプレートを、次のようにして調製した。ELISA用96穴プレートの各穴を固相化バッファーで1μg/mlの濃度に調製したヒトPTHrP(1−34)100μlで固相化した。200μlの希釈バッファーでブロッキングの後、ハイブリッド抗体またはヒト型化抗体を発現させたCOSー7細胞の培養上清あるいは精製ハイブリッド抗体またはヒト型化抗体を段階希釈して各穴に加えた。室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO)100μlを加えた。室温にてインキュベートしPBS−Tween20で洗浄の後、1mg/mlの基質溶液(Sigma104、p−ニトロフェニルリン酸、SIGMA)を加え、次に405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(BioRad)で測定した。
【0225】
(7)活性確認
(i) ヒト型化H鎖の評価
ヒト型化H鎖バージョン"a"とキメラL鎖を組み合わせた抗体は、キメラ抗体とPTHrP結合能が同等であった(図6)。この結果は、H鎖V領域のヒト型化はバージョン"a"で十分なことを示す。以下、ヒト型化H鎖バージョン"a"をヒト型化抗体のH鎖として供した。
【0226】
(ii)ハイブリッド抗体の活性
(ii-a) FR1,2/FR3,4ハイブリッド抗体
L鎖がh/mMBC1L(λ)の場合、活性は全く認められなかったが、m/hMBC1Laλあるいはm/hMBC1Ldλの場合はいずれもキメラ#23-57-137-1抗体と同等の結合活性を示した(図7)。これらの結果は、FR3,4はヒト型化抗体として問題ないが、FR1,2内に置換すべきアミノ酸残基が存在することを示唆する。
【0227】
(ii-b)FR1/FR2ハイブリッド抗体
L鎖がmhmMBC1L(λ)の場合、活性は全く認められなかったが、hmmMBC1L(λ)の場合はキメラ#23-57-137-1抗体と同等の結合活性を示した(図8)。これらの結果は、FR1,2のうちFR1はヒト型化抗体として問題ないが、FR2内に置換すべきアミノ酸残基が存在することを示唆する。
【0228】
(iii) ヒト型化抗体の活性
L鎖としてバージョン"a" から"t" の各々一つを用いたヒト型化抗体について、抗原結合活性を測定した。その結果、L鎖バージョン"j" 、"l" 、" m"、"o" 、"q" 、"r" 、"s" 、"t" を有するヒト型化抗体はキメラ抗体と同等のPTHrP結合能を示した(図9〜12)。
【0229】
(8)CHO安定産生細胞株の樹立
ヒト型化抗体の安定産生細胞株を樹立するため、前記発現プラスミドをCHO細胞(DXB11)に導入した。
【0230】
すなわちヒト型化抗体の安定産生細胞株樹立は、CHO細胞用発現プラスミドhMBC1HcDNA/pCHO1とhMBC1Lmλ/pCOS1またはhMBC1HcDNA/pCHO1とhMBC1Lqλ/pCOS1あるいはhMBC1HcDNA/pCHO1とhMBC1Lrλ/pCOS1の組み合わせで、GenePulser装置(BioRad)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞に同時形質導入した。それぞれの発現ベクターを制限酵素PvuIで切断して直鎖DNAにし、フェノールおよびクロロホルム抽出後、エタノール沈殿でDNAを回収し、エレクトロポレーションに用いた。PBS(−)中に1×107細胞/mlの細胞濃度で懸濁されているCHO細胞0.8mlに、各プラスミドDNA10μgを加え、1,500V,25μFの静電容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を10%ウシ胎児血清(GIBCO)添加、MEM−α培地(GIBCO)に懸濁し、96穴プレート(Falcon)を用いてCO2 インキュベーターにて培養した。培養開始翌日に、10%ウシ胎児血清(GIBCO)および500mg/mlのGENETICIN(G418Sulfate、GIBCO)添加、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシド不含MEM−α培地(GIBCO)の選択培地に交換し、抗体遺伝子の導入された細胞を選択した。選択培地交換後、2週間前後に顕微鏡下で細胞を観察し、順調な細胞増殖が認められた後に、上記抗体濃度測定ELISAにて抗体産生量を測定し、抗体産生能の高い細胞を選別した。
【0231】
樹立した抗体の安定産生細胞株の培養を拡大し、ローラーボトルにて2%のUltra Low IgGウシ胎児血清添加、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシド不含MEM−α培地を用いて、大量培養を行った。培養3ないし4日目に培養上清を回収し、0.2μmのフィルター(Millipore)により細胞破片を除去した。CHO細胞の培養上清からのヒト型化抗体の精製は、POROSプロテインAカラム(PerSeptive Biosystems)を用いて、ConSepLC100(Millipore)にて添付の処方に従って行い、中和活性の測定および高カルシウム血症モデル動物での薬効試験に供した。得られた精製ヒト型化抗体の濃度および抗原結合活性は、上記ELISA系にて測定した。
【0232】
[参考例5]
中和活性の測定
マウス抗体、キメラ抗体およびヒト型化抗体の中和活性の測定は、ラット骨肉腫細胞株ROS17/2.8-5細胞を用いて行った。すなわち、ROS17/2.8-5細胞を、10%牛胎児血清(GIBCO)を含むHam'SF-12培地(GIBCO)中にて、CO2 インキュベーターで培養した。ROS17/2.8-5細胞を96穴プレートに104 細胞/100μl/穴で蒔込み1日間培養し、4mMのヒドロコルチゾンと10%牛胎児血清を含むHam'SF-12培地(GIBCO)に交換する。さらに3ないし4日間培養した後、260μlのHam'SF-12培地(GIBCO)にて洗浄し、1mMのイソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX、SIGMA)および10%の牛胎児血清と10mMのHEPESを含む80μlのHam' sF-12を加え、30分間37℃でインキュベートした。
【0233】
中和活性を測定するマウス抗体、キメラ抗体またはヒト型化抗体を、あらかじめ10μg/ml、3.3μg/ml、1.1μg/mlおよび0.37μg/mlの群、10μg/ml、2μg/ml、0.5μg/mlおよび0.01μg/mlの群、または10μg/ml、5μg/ml、1.25μg/ml、0.63μg/mlおよび0.31μg/mlの群に段階希釈し、4ng/mlに調製したPTHrP(1−34)と等量混合し、各抗体とPTHrP(1−34)の混合液80μlを各穴に添加した。各抗体の最終濃度は、上記抗体濃度の4分の1になり、PTHrP(1−34)の濃度は、1ng/mlになる。10分間室温にて処理した後、培養上清を捨て、PBSにて3回洗浄したした後、100μlの0.3%塩酸95%エタノールにて細胞内のcAMPを抽出する。水流アスピレーターにて塩酸エタノールを蒸発させ、cAMP EIA kit(CAYMANCHEMICAL'S)付属のEIAバッファー120μlを添加しcAMPを抽出後、cAMP EIA kit(CAYMANCHEMICAL'S)添付の処方に従ってcAMPを測定した。その結果、キメラ抗体と同等の抗原結合を有するL鎖バージョンのうち、91位のチロシンをイソロイシンに置換したバージョン"q"、"r"、"s"、"t"を有するヒト型化抗体がキメラ抗体に近い中和能を示し、その中でも、バージョン"q"がもっとも強い中和能を示した(図13〜15)。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明により、副甲状腺ホルモン関連ペプチドとその受容体との結合を阻害する物質を有効成分として含有する悪液質治療剤が提供される。
【0235】
上記物質は、悪液質モデル動物での薬効試験において、体重減少を対照と比較して抑制し、また、生存期間の延長効果も奏することから、悪液質治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】抗PTHrP抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図2】抗PTHrP抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図3】抗PTHrP抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図4】抗PTHrP抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図5】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図6】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図7】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図8】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図9】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図10】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図11】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図12】抗体結合活性の測定結果を示す図である。
【図13】ヒト型化抗体の中和活性を示す図である。
【図14】ヒト型化抗体の中和活性を示す図である。
【図15】ヒト型化抗体の中和活性を示す図である。
【図16】ヒト型化抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図17】ヒト型化抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図18】ヒト型化抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【図19】ヒト型化抗体の悪液質に対する治療効果を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0237】
配列番号1〜44:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体を有効成分として含む悪液質治療剤。
【請求項2】
副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体がヒト型化又はキメラ化されたものである、請求項1記載の悪液質治療剤。
【請求項3】
ヒト型化抗体が、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つを含むものである、請求項2記載の悪液質治療剤。
(a)配列番号48〜51に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域、
(b)配列番号52〜55に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域、
(c)配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するH鎖V領域
【請求項4】
ヒト型化抗体が、配列番号48〜51に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域を含むものである、請求項2又は3記載の悪液質治療剤。
【請求項5】
ヒト型化抗体が、配列番号52〜55に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域を含むものである、請求項2又は3記載の悪液質治療剤。
【請求項6】
ヒト型化抗体が、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含むものである、請求項2又は3記載の悪液質治療剤。
【請求項7】
ヒト型化抗体が、配列番号48〜55に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを有するL鎖V領域と、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含むものである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項8】
ヒト型化抗体が、さらにヒト抗体のL鎖C領域及び/又はH鎖C領域を含むものである、請求項2〜7のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項9】
ヒト型化抗体がヒト型化#23-57-137-1抗体である、請求項2〜8のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項10】
副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体が、抗体断片及び/又はその修飾物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項11】
副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項12】
副甲状腺ホルモン関連ペプチドに対する抗体が
(a)悪液質の治療に有効であり、
(b)ヒト口腔底癌OCC-1細胞の増殖には有意な影響を及ぼさない
ものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。
【請求項13】
悪液質が癌由来のものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の悪液質治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−306895(P2006−306895A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214233(P2006−214233)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【分割の表示】特願平10−130715の分割
【原出願日】平成10年5月13日(1998.5.13)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】