説明

情報を表示する方法およびシステム

本発明は、特に自動車や列車の運転者、船の船長、飛行機の機長、あるいはある一定の方向を凝視して、特に、たとえば自動車運転者の場合は道路のような環境を観察または監視しなければならない何らかのその他の人物の視界内において情報を表示する方法およびシステムに関する。このような情報を読むときに、環境の変化を察知する自身の能力に関して損なわれることが少なくなるような方法で情報を表示するので、特に自動車の運転の安全性をさらに高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車または列車の運転者、または船の船長、または飛行機の機長、またはある一定の方向を凝視して、特に、たとえば自動車運転者の場合は道路のような環境を観察または監視しなければならない何らかのその他の人物の視界内において情報を表示または再生する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を安全に運転するためには、運転者は、主として道路を見渡して、往来を観察するとともに、事故を回避しなければならないことは周知である。しかしながら、特に現在の自動車の運転者は、しばしば道路から目を逸らせて自動車の車内に目を向けることを求められる。たとえば、運転者は、自動車を運転することと往来を監視することとに加えて、速度計、ラジオまたはナビゲーション表示を頻繁に直接凝視(直視)することを必要とし、そこに表示される情報を読み、かつ理解するとともに、これらおよびその他の装置を操作することができなければならない。
【0003】
道路から、たとえば自動車の車内に少しでも目を逸らせることは、路上環境の変化を察知する運転者の能力が低下するため、潜在的に危険な運転状況を引き起こす。路外に目を向けることは、車線維持能力の変動性の増大、車線はみ出し、空走時間の増加および事象の見逃し等の望ましくない安全上の結果を招く。
【0004】
特許文献1に、第1の角度から第2の角度まで延在する円弧形の目盛の形態をとる図形情報と多数の数値とを示す表示装置からなる自動車操作状態指示装置が開示されている。操作状態は、前記第1の角度から第3の可変角度まで延在するとともに、前記第3および前記第2の角度間の第2の区画とは視覚的に弁別可能な状態を呈する第1の区画によって示される。さらにまた、操作状態の可読性を高めるために、各数値は、第1の標準書式と第2の拡大書式とを呈することができるように構成されており、後者は、当該操作状態付近の領域において作動せしめられる。
【0005】
この装置は、関係ある情報、たとえば自動車の速度を伝達する時間を短縮させる一方で、精度を維持するために用いられて、以って運転者は、より多くの注意を現在の運転状況に向け続けることができる。
【0006】
【特許文献1】スウェーデン特許第0201571−7号
【特許文献2】国際公開第2004/034905号パンフレット
【発明の開示】
【0007】
本発明の一般的な目的は、前記の危険性をさらに低下させることができ、かつ特に自動車の運転の安全性をさらに高めることができる方法およびシステムを提供することにある。
【0008】
特に、本発明の目的は、第1段落に記載の、自動車、飛行機、船または列車を操作する人物が、このような情報を読むときに、環境の変化を察知する自身の能力に関して損なわれることが少なくなるような方法で情報を表示または再生する方法およびシステムを提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、第1段落に記載の人物が、情報を読むために、観察されなければならない環境から目を逸らせる回数がさらに減じられる方法およびシステムを提供することにある。
【0010】
これらの目的は、請求項1に記載の方法と請求項9に記載のシステムとによって達成される。
【0011】
これらの解決策の1つの利点は、これらが、移動式の実施形態において、たとえばヘルメット取付け、バイザ取付けまたは眼鏡取付け表示装置を制御するポータブルコンピュータによって実施され得、したがって本発明にしたがったシステムを自動車、列車、飛行機または船内において定常的に設置する必要はないという事実にある。
【0012】
従属請求項には、本発明の有利な実施形態が開示されている。
【0013】
本発明のさらに他の詳細、特徴および利点は、図面を参照して、以下の本発明の好適かつ例証的な実施形態の説明において開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明によれば、特に自動車の運転者(または本明細書の冒頭部分に記載の何らかのその他の人物)は、自身の凝視が車内表示装置またはヘッドアップディスプレイに、またはこれらの近辺に向けられていないときに、周辺視覚によって情報を読むことまたは認識することが可能になる。前記情報は、表示装置によって、運転者の目を情報画像(すなわち情報の表示または再生)の方へと移動させることと、然る後に前記情報画像を直視することとを必要としないような方法で表示される。前記情報は、道路から目を逸らせる必要なしに判読可能または認識可能である。前記情報は、周辺視覚により情報を取得することができる程度に単純に、かつ大きく表示される。
【0015】
これを達成するためには、以下の考察を行なわなければならない。
【0016】
人間の眼の視力は、人物が見ている凝視点(視角0°方向または凝視方向として定義される)および前記凝視点を中心として約3°(偏心角)にわたる領域において最大となることは、周知である。この最大限の視力の領域は、中心視領域または中心窩と呼ばれる。この中心視領域を取り巻く領域は、視角0°または凝視方向からの角度(または偏心角)が増加するにつれて視力が低下する周辺視領域と呼ばれる。3°〜10°の領域は、傍中心窩とも呼ばれる。
【0017】
この視力の低下または減少の近似は、フィンドレイおよびジルクライストの「能動視覚」、オックスフォード2003年(Findlay and Gilchrist: “Active Vision”, Oxford 2003)に開示されている下式(1)によって与えられる:
(1) V=V/(1+E/E
ここで、Vは、偏心角Eにおける視力であり、Vは、中心窩における視力であり、Eは、換算定数である(格子視力の場合は、前記定数は、約2.5°である)。
【0018】
図1(フィンドレイおよびジルクライストから引用、上記参照)に、こうした人間の眼の網膜上の鼻および側頭(すなわち、こめかみ)側の、度を単位とする角方向(横軸)Rにおける相対視力V(縦軸)の線図が示されており、0°は、凝視方向を示す。網膜上の盲点は、黒塗り部分によって示される。
【0019】
通常的に、情報は、運転者が自身の周辺視覚ではなしに中心視覚によってのみ認識することができるような方法(特にその文字または符号の大きさおよび/または濃さおよび/または内容の複雑さおよび量に関して)で、運転者に対して表示される。これは、運転者がこうした情報を読みたいと思う度毎に自身の視線を道路から逸らせるとともに、情報が表示または再生される表示装置上に向けなければならないという結果をもたらす。
【0020】
視線を路上に向けているときに周辺視覚により判読可能になるためには、特に表示または再生される情報のテキストおよび行のサイズといったような情報のサイズを拡大し、かつ単純化して、周辺視覚における視力の低下を補償しなければならない。このような拡大および単純化の量は、図1にしたがって、凝視方向に対して情報が表示される偏心角に従属して増加する。情報の拡大および単純化のための法則は、試行錯誤によるか、または前記の既存の随伴事項の知識から判断されうる。
【0021】
上式(1)を単純化する際に、回帰線を代替として用いて、この拡大を判断することができる。視力低下に最も適合する回帰線は、下式(2)であることが、アンスティス(Anstis)(1974年、フィンドレイおよびジルクライストに記載、上記参照)によって発見された:
(2) y=0.046x−0.031度
ここで、yは、文字がかろうじて認識されうる、度を単位とする閾値文字高さであり、xは、度を単位とする網膜偏心角である。
【0022】
このように、視角の1度毎に、識別可能な最小サイズは、約2.5分の弧度だけ大きくなる。図2に、10倍刺激閾サイズにおいて前記式(2)に基づいて均等に拡大された文字が示されている。見る人の凝視が中心点に向けられると、この点を取り巻く文字は、略等しく「良好」に判読可能である。
【0023】
図3に、自動車を運転している運転者Dを有する自動車の車室C内の側面図が示されるとともに、本発明にしたがった、情報を表示または再生するシステムの第1の実施形態が示されている。
【0024】
このシステムの主要な構成要素は、運転者Dに対して表示される情報データを受けるとともに、これらのデータを処理して、表示装置21、22、23の少なくとも1つが制御されて、運転者Dに対して前記情報データが表示または再生されうるようにする制御装置10である。
【0025】
第1の表示装置は、たとえば、情報データをたとえば自動車のフロントガラス上のある一定の位置またはダッシュボード上に投影するために用いられ、かつ配設されるレーザー投射器21である。第2の表示装置は、たとえば、ダッシュボードに取り付けられる通常のスクリーン22であり、第3の表示装置は、たとえば、運転者に情報データを表示するヘッドダウンディスプレイ23(またはヘッドアップディスプレイ)である。
【0026】
「表示装置」という用語は、本開示においては、運転者に対する視覚情報表示のあらゆる源を指すために用いられる。表示装置の例には、GPSに基づくナビゲーションおよび地図情報を表示するために用いられる従来のコンピュータ表示装置、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)または同様のもの、またはその他の電子装置、インストルメントパネル内の表示装置、ヘッドアップディスプレイ、発光ダイオード(LED)およびその他の投射表示装置が含まれる。ヘルメット取付け、バイザ取付け、眼鏡取付け表示装置も用いられうる。
【0027】
投射表示装置の一例は、カラー画像刺激を生じしめることができる、市販のダイオードレーザー(たとえば、www.lasershow.seを参照されたい)である。画像刺激は、像の印象が生じしめられるほど迅速に動き回る単一のレーザービームによって構成される。このビームは、モータ軸上において小型の鏡を有する2個の小型電磁モータ(xおよびy軸)によって制御される。赤色および/または青色および/または緑色レーザーを含めて、多数の異なるレーザーを用いることが有利である。しかしながら、多くの用途においては、講堂での発表のためのポインティング装置として一般に用いられるレーザー等の単純な低価格レーザーを使用すれば十分であり、自動車用等級のレーザーも用いられうる。
【0028】
さらにまた、前記システムは、前記システムを「周辺視覚情報オン」状態と「中心視覚情報オン」状態との間において切り換えるために運転者Dにより操作される、インストルメントパネルまたはステアリングホイール上の押しボタンまたはスイッチ30を含む。
【0029】
この前記システムの第1の実施形態において、運転者Dの凝視位置は、検出および評価されない。このシステムは、運転者Dが前記押しボタンまたはスイッチ30を操作することによって、情報が周辺視覚または中心視覚により認識されるようになるような方法で前記表示装置21、22、23の1個によって表示または再生されるか否かを決定することができるような態様に設計される。
【0030】
前記制御装置10は、前記表示装置21、22、23を制御して、「中心視覚情報オン」状態において、情報が運転者の中心視覚用に表示または再生され、「周辺視覚情報オン」状態において、情報が運転者の周辺視覚用に表示または再生されるようにするために設けられる。運転者により認識可能とするためには、周辺情報の表示または再生サイズは、前記に説明されたように、中心視覚表示または再生と比較して拡大され、かつおそらくは単純化されなければならない。
【0031】
好ましくは、周辺情報の表示/再生のための倍率および単純化は、いずれも道路中心に対する偏心率に基づいて固定値として予め定められるとともに、予め設定される。これらの値を評価するためには、前記式(1)または(2)を用いてもよく、または前記値は試行錯誤により評価される。
【0032】
「中心視覚情報オン」状態において、情報は、たとえば運転者Dの中心視領域内にある位置においてフロントガラス上に関連像を投射することにより、視力の向上にしたがったより小さいサイズで表示される。
【0033】
好ましくは、運転者Dは、さらにまた、自身の中心視および/または自身の周辺視のいずれにおいても自身が選択して表示させたい情報の種類を選択することができる。
【0034】
さらにまた、情報の周辺表示/再生は、路上に目を向けているときに判読可能となるように拡大(かつおそらくは単純化)された状態または通常の態様、すなわち運転者が自身の目を路上から逸らせて関連表示装置上に向けているときにのみ読むことができるように全く拡大されない状態のいずれでも行なわれうる。
【0035】
このような選択は、特に、周辺に示される情報が大きいサイズで表示されるため、情報を表示する領域が限られるという理由で行なわれうる。
【0036】
代案として、前記選択は、情報の重要性に基づいて行なわれうる。たとえば、安全または衝突警告のような最重要な情報は、中心視で表示または再生され、ナビゲーション情報のようなより重要性の低い情報は、周辺に表示または再生されるとともに、拡大かつ単純化されて周辺視で認識され、全てのその他の情報もまた周辺に、ただし標準サイズで表示または再生されて、該情報に目を向けたときにのみ認識される。
【0037】
また他のスイッチ(図示せず)が、好ましくは設けられて、これらの情報の種類が選択されうる。
【0038】
図4および5に、運転者Dの凝視位置または凝視方向が検出され、かつ評価される、本発明の第2の実施形態が示されている。
【0039】
図4にも、自動車を運転している運転者Dを有する自動車の車室C内の側面図が示されている。この本発明にしたがった情報表示システムの第2の実施形態も、運転者Dに対して表示される情報データの受信と、図5を参照して以下に説明される、これらのデータの処理とを行なう制御装置10を含む。
【0040】
このシステムは、図3を参照して説明されたところの表示装置21、22、23の少なくとも1個を含む。さらにまた、これもまた前記制御装置10により制御されて運転者Dに対して情報を表示する、バイザまたは頭部取付け表示装置(図示せず)が用いられうる。最後に、本システムは、たとえばダッシュボードに取り付けられるカメラである視標追跡用目視行動センサ40、または頭部に取り付けられて運転者Dの凝視方向または凝視位置を検出するとともに、制御装置10に接続されるまた他のセンサを含む。
【0041】
この第2の実施形態は、凝視随伴周辺視覚情報表示システムとも呼ばれうる。
【0042】
図5に、制御装置10内において行なわれる実質的な方法の段階のブロック図が示されている。第1段階11において、凝視位置データまたは凝視方向データがセンサ40から受信される。
【0043】
第2段階12において、これらのデータが評価されて、運転者Dの凝視方向または凝視位置に関する情報が得られるようになる。この凝視位置または凝視方向データに依存して、前記凝視方向または凝視点に対して1個以上の表示装置21〜23により表示または再生される画像の位置に基づいて、この画像が運転者の中心視覚領域または周辺視覚領域にあるかが計算され、かつ判断される。
【0044】
第3段階13において、少なくとも1個の表示装置21〜23が然るべく制御され、かつ/または適合せしめられて、前記画像が、運転者Dが自身の目を前記画像上に向ける中心視覚領域内にある場合は、前記画像は、中心視における視力の向上にしたがって標準サイズで表示または再生される(表示装置の中心視状態)。前記画像が、運転者Dが自身の目を、たとえば路上または環境に向ける周辺視覚領域内にある場合は、前記画像は、拡大サイズで、かつおそらくは単純化されて表示されて(表示装置の周辺視状態)、前記運転者は、自身の周辺視覚で前記画像を認識することができるようになる。
【0045】
図4に関連してすでに述べたように、この第2の実施形態のシステムもまた、運転者Dが、情報が自身の周辺視覚によって認識されるべきである場合に、然るべく拡大され、かつおそらくは単純化された態様で表示させたい情報を選択(たとえばスイッチを操作することにより)することができる。
【0046】
第1段階11にしたがった運転者の凝視位置または凝視方向の即時検出は、たとえば2003年10月15日出願の特許文献2に開示されているようなシステムによって行なわれ得、前記特許は、参照により、本開示の一部分とされる。
【0047】
この第2の実施形態では、以下の情報表示の選択肢が用いられうる:
【0048】
第1に、表示装置21〜23は、制御装置10により、第2段階12における凝視位置または凝視方向データの評価に基づいて2つの情報表示/再生モード間、すなわち中心視状態(状態1)または周辺視状態(状態2)のいずれかに自動的に切り換えられうる。
【0049】
中心視状態においては、情報は、表示装置21〜23の少なくとも1個により、一般的な周知の表示装置において見受けられる標準形式で表示される。
【0050】
周辺視状態においては、情報は、表示装置21〜23の少なくとも1個により、運転者が自身の周辺視覚により判読可能または認識可能となるような方法で表示される。これを達成するために、拡大倍率は、運転者の凝視方向、すなわち本発明の第1の実施形態に関連して前記に説明されたように運転者が路上に目を向けていることに対する情報の(周辺)結像位置の実際の偏心率に依存して予め定められる単一値に設定される。
【0051】
この周辺または中心視状態のいずれかの二元オンオフ計算は、単純かつ頑健なシステムを用いて実現されうるという利点を有する。
【0052】
代案として、前記二元オンオフ手法に対して、漸変表示を用いることも可能である。この第2の代案において、表示装置21〜23により表示または再生される像と凝視位置または凝視方向との間における距離は、連続的に判断され、表示特性は、特に図2または式(1)または(2)を参照して前記に説明されたように、偏心率の増加に伴う視力低下の増大に基づいて、より固有的かつ個別的な態様でその特定の距離に合わせて調節される。
【0053】
たとえば、テキストのサイズは、運転者の目の凝視点と少なくとも1個の表示装置21〜23により生じしめられる像の位置との間における正確な距離または角度に従属して拡大または縮小されうる。
【0054】
その結果として、この第2の代案にしたがって、表示される情報が、図2に示されるように、視角とともに連続的にサイズを増す場合は、拡大サイズは、視角の増加とともに増大する視力低下と直接関連付けられる。
【0055】
図6A〜Dに、第1の種類の表示、すなわち第1の表示装置50におけるたとえば自動車の状態(速度計)の数値表示と、たとえばナビゲーションシステムにより制御される第2の表示装置51における矢印表示とを用いて情報を表示する、このような凝視随伴周辺視覚システムの例が示されている。
【0056】
図6〜9において、運転者の実際の凝視点Gは、十字形により示されている。
【0057】
図6Aによれば、凝視は、真っ直ぐに路上に向けられている。第1の表示装置50における数値表示と第2の表示装置51における矢印表示との各表示が凝視点Gから同じ距離を有すると仮定すると、いずれの表示も中形サイズ形式で表示または再生される。
【0058】
凝視が、図6Bにしたがって、第1の表示装置50における数値表示に向けられると、この表示の表示サイズは、運転者の中心視における視力の向上にしたがって縮小され、第2の表示装置51における矢印表示のサイズおよび/または濃さは、その時点で凝視点Gと第2の表示装置51における矢印表示との間における距離が図6Aと比較して増加しているため、拡大せしめられる。
【0059】
図6Cによれば、運転者は、道路から遠く離れた環境に目を向けている。この場合は、第1の表示装置50における数値表示の表示サイズ(およびおそらくは濃さも)は、該表示が運転者により周辺視で読まれうるような程度に拡大される。この場合は、凝視点Gと第1の表示装置50における数値表示との間の距離が大きいことにより、顕著な拡大が必要になる。同時に、第2の表示装置51における矢印表示は、図6Cにおける凝視点Gは、第2の表示装置51における矢印表示から実質的に図6Aの場合と同じ距離を有するため、実質的に図6Aの場合と同じサイズおよび/または濃さで表示される。
【0060】
最後に、図6Dに示される例において、運転者は、ナビゲーションシステムの第2の表示装置51における矢印表示を凝視している。この場合は、この第2の表示装置51における矢印表示は、該運転者の中心視覚内にあるため、標準(小形)サイズで再生される。しかしながら、第1の表示装置50における数値表示は、この場合もまた、運転者が自身の周辺視で認識することができるように中形サイズで表示される。
【0061】
図7A〜Dに、図6にしたがった第1の表示装置50における数値表示の代わりにアナログ目盛表示を有する第1の表示装置60が設けられる、第2の表示技術を用いた凝視随伴周辺視覚システムの例が示されている。加えて、たとえばナビゲーションシステムにより制御される、矢印表示を有する第2の表示装置61が設けられており、運転者の凝視点Gは、この場合も十字形により表示される。
【0062】
凝視が、図7Aにしたがって真っ直ぐ路上に向けられている場合は、いずれの表示装置60、61におけるいずれの表示も、前記凝視点から両表示装置60、61までの距離が実質的に同じであるため、同様に中形サイズを有する。
【0063】
図7Bによれば、運転者は、第1の表示装置60におけるアナログ表示を直視しているため、前記表示のサイズは、運転者の中心視の視力が高いことにより縮小される一方で、第2の表示装置61における矢印表示のサイズおよび/または濃さは、凝視点Gから該表示までの距離の増加にしたがって増加せしめられる。
【0064】
図7Cに再び、運転者が道路から遠く離れた環境に目を向けているため、第1の表示装置60におけるアナログ表示の像は、凝視点Gと該表示との間における距離が大きいことにより大幅に拡大されなければならない一方で、第2の表示装置61における矢印表示は、凝視点Gと該表示との間における距離が小さくなるため、図7Aの場合より減じられたサイズおよび/濃さを有することが示されている。
【0065】
最後に、運転者が第2の表示装置61における矢印表示を凝視している図7Dの場合には、前記表示のサイズおよび/または濃さは、運転者の中心視の視力向上により減じられる一方で、第1の表示装置60におけるアナログ表示は、図7Aにおける該表示と、該表示から凝視点Gまでの距離が実質的に同じであるため、同等の中形サイズを有する。
【0066】
図6および7における表示の表示または再生サイズおよび/または濃さの増加および低下は、凝視点Gと第1および第2の表示装置50、51;60、61における関連の表示との間における実距離に依存して連続的に行なわれる。
【0067】
図8に、情報が表示装置、たとえばレーザー投射器21によって自動車のダッシュボード上に投射されるか、または情報がバイザまたは頭部取付け表示装置上に投射される第3の種類の表示を用いて情報を表示する凝視随伴周辺視覚システムのまた他の例が示されている。例証的に、運転者が真っ直ぐ前方の路上を見ている場合のみが示されている。このことは、この場合も凝視点Gを示す十字形によって示される。
【0068】
図8A、Bには、凝視点Gからテキスト列の文字までの距離が増加すると、表示または再生される情報が、サイズと濃さとに関して連続的に拡大せしめられるテキスト列である状態が示されている。図8Bにおいては、たとえばナビゲーションシステムの矢印が、追加的に、拡大されたサイズを有して結像せしめられており、ナビゲーションシステムの関連テキスト列の文字もまた漸増するサイズを有して投射されている。
【0069】
図9には、頭部取付け表示装置の形態をとる投射表示装置の一例の詳細が示されている。
【0070】
図9Aは、「text message(テキストメッセージ)」が運転者の凝視点Gに対して、頭部取付け表示装置においてどのように表示されるかを三次元図で示す略図である。図9Bには、運転者が、この場合も凝視点Gで示される真っ直ぐ前方の路上を見ていると仮定して、この頭部取付け表示装置を用いた運転者の視界が示されている。
【0071】
本発明の第3の実施形態によれば、情報の表示は、さらにまた、凝視位置または凝視方向に追随しうる。たとえば、情報は、運転者がどこを見ているかに係わりなく、投射により、またはバイザ表示装置上において、常にある一定の視角(たとえば凝視方向または凝視点から7度下)で表示されうる。この場合は、情報の表示/再生のサイズおよび/または濃さの連続的増加または低下が実施される必要はない。むしろ、像のサイズおよび/または濃さは、前記において図1および2を参照して説明されたところの偏心率の増加に伴う視力の低下に鑑みて、凝視方向に対する像の視角に従属するある一定の値に固定される。
【0072】
本実施形態の1つの利点は、運転者の中心視は、いかなる情報の表示または再生もない状態に維持されるが、情報が、運転者の一層の注意を得ることができる程度に十分に中心視に近い位置において結像せしめられうるところにある。
【0073】
この第3の実施形態のまた他の実施方法は、たとえばダイオードレーザーのようなプロジェクターの形態をとる表示装置を用いて、たとえばダッシュボードの上部において常に20〜30度斜め下方に情報を投射することである。
【0074】
表示または再生されうる情報の種類の例は、現在速度、ナビゲーション情報、テキストメッセージまたはギア情報である。技術的必要条件(特にトランスポンダ、標識認識のためのカメラに基づく画像処理、GPSに基づく情報満載のデジタル地図またはその他のナビゲーションシステムのような)がある場合は、交通情報を運転者に対して判読可能な周辺視形式で表示することができる。このような交通情報の例は、現在の速度制限、交通信号灯、現在の道路標識に示されている字句および絵柄、近づきつつある危険に関する情報等である。
【0075】
警告信号は、前記のように、凝視点または凝視方向に合わせて調整されうる。たとえば、参照により本開示の一部分とされる国際特許第03/070093号に記載の注意散漫警告等の、徐々に道路中央の方へと導く移動点または光を含む注意散漫警告は、最も好ましくは、運転者の凝視点が位置する位置を始点として配置されうる。
【0076】
視覚的注意散漫警告、認知的注意散漫警告、衝突警告および車線逸脱警告は、いずれも運転者の凝視位置または凝視方向に合わせて調整されうる。最終的に、どのような情報を表示させるかの選択は、運転者によって行なわれうる。しかしながら、周辺視で読取り可能または認識可能ないかなる情報も表示されうる。
【0077】
最後に、本発明にしたがった前記方法およびシステムの好適な実施形態の選択肢は、以下のように要約される:
【0078】
1)運転者が周辺視状態をオンオフ切換えするスイッチ(全ての種類の表示に用いられる)を用いる二元法(中心視状態または周辺視状態)。表示は、中心視状態において標準サイズを有し、運転者が周辺視状態に切り換えると、表示には、単純化拡大情報が表示される。これらの表示は、凝視位置によって状態変化するわけではない(運転者は、周辺視状態で表示を直接見ることができる)ため、この実施形態は、視標追跡装置を用いることなしに機能する。
【0079】
2)視標追跡センサ(全ての種類の表示に用いられる)を用いる二元法(中心視状態または周辺視状態)。生の凝視データを用いて、周辺視状態と中心視状態との間における表示が計算され、かつ切り換えられる。運転者が道路に目を向けているときは、表示は周辺視状態であり、運転者が道路から目を逸らせると、表示は中心視状態に設定される。これらの表示は、漸変情報を表示するものではく、単に前記2つの状態を有するにすぎない。
【0080】
3)情報のサイズが各表示と現行凝視位置との間における視角と関連づけられる、視標追跡と図6および7に示されるところの既存の表示技術とを用いる漸変情報表示法。
【0081】
4)情報のサイズが各表示と現行凝視位置との間における視角と関連づけられる、視標追跡とレーザー投射または頭部取付け表示装置とを用いる漸変情報表示法。図8および9に、例証的な実施形態が示されている。
【0082】
5)凝視位置に追随して、表示される情報が常に凝視位置から特定の視角に配置されるようになる周辺適応情報表示法。たとえば、速度または標識は、常に凝視位置の真下15度の位置に維持されて表示されうる。このことは、運転者が左側のミラーに目を向けたときに、前記速度または標識が該ミラーの真下15度の位置に配置されること、または運転者がラジオに目を向けると、前記速度または標識がラジオの真下15度の位置に配置されることを意味する。この表示技術には、プロジェクターまたは頭部取付け表示装置を用いなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】人間の眼の相対視力を示す線図である。
【図2】10倍刺激閾サイズにおいて均等に拡大された文字の図である。
【図3】本発明にしたがったシステムの第1の実施形態の略図である。
【図4】本発明にしたがったシステムの第2の実施形態の略図である。
【図5】図4にしたがったシステムにおけるデータ処理方法の段階を示すブロック図である。
【図6】第1の種類の表示を用いた、本発明にしたがった凝視随伴周辺視覚情報表示の例を示す図である。
【図7】第2の種類の表示を用いた、本発明にしたがった凝視随伴周辺視覚情報表示の例を示す図である。
【図8】第3の種類の表示を用いた、本発明にしたがった凝視随伴周辺視覚情報表示の例を示す図である。
【図9】図8にしたがった第3の種類の表示の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の表示装置によって、人物の視界内において情報を表示または再生する方法において、前記表示または再生される前記情報は、前記情報が前記人物の中心視により認識されるか、または周辺視により認識されるかによって、適合せしめられる方法。
【請求項2】
前記表示または再生される前記情報は、その大きさ、サイズ、コントラストおよび/または強さに関して、周辺視における偏心率の増加に伴う前記人物の視力の低下にしたがって連続的に適合せしめられる方法。
【請求項3】
前記表示または再生される前記情報は、前記人物により選択されて、中心視または周辺視により認識され得る請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記人物の凝視方向または凝視点が検出され、前記情報は、前記凝視点または前記凝視方向と前記表示される前記情報の位置との間における偏心率によって、中心視または周辺視により認識可能となるように表示または再生される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表示または再生される前記情報は、それぞれ前記凝視方向または前記凝視点と前記表示または再生される前記情報の位置との間における角度および/または距離のそれぞれ増加または減少によって、連続的に拡大または縮小される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記人物の凝視方向または凝視点が検出され、前記情報は、前記凝視方向または前記凝視点に対して所定の一定視角かつ所定の一定倍率で表示または再生されて、前記表示または再生される前記情報が、前記人物の前記凝視方向または前記凝視点に追随するようになる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
所定の種類の情報が表示または再生されて、前記人物の中心視および/または周辺視により認識される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
安全関連の情報が表示または再生されて、前記人物の中心視および/または周辺視により認識される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
人物の視界内において情報を表示または再生するシステムであって、特に請求項1乃至8の少なくとも一つに記載の方法を実行するシステムにおいて、少なくとも1個の表示装置(21、22、23)と、前記少なくとも1個の表示装置(21、22、23)を制御して、前記情報が前記人物の中心視により認識されるか、または周辺視により認識されるかによって、前記表示または再生される前記情報を適合せしめる少なくとも1個の表示装置(21、22、23)を制御するための制御装置(10)とからなるシステム。
【請求項10】
前記表示または再生される前記情報を、その大きさおよび/またはサイズおよび/またはコントラストおよび/または強さに関して、周辺視における偏心率の増加に伴う前記人物の視力の低下にしたがって連続的に適合せしめる制御装置(10)とからなる請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記人物の凝視位置および/または凝視方向を検出するセンサ(40)からなる請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置(10)は、前記人物の凝視位置および/または凝視方向に基づいて、前記表示または再生される前記情報の位置が人物の中心視または周辺視により決定するために備えられる請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記表示装置は、スクリーン(22)および/またはレーザー投射器(21)および/またはヘッドアップまたはヘッドダウンディスプレイ(23)および/または頭部取付けバイザ表示装置である請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1個の表示装置(21、22、23)を制御して、前記人物の中心視により認識されるか、または周辺視により認識されるかによって、少なくとも1個の表示装置(21、22、23)によって情報を表示または再生する請求項9に記載のシステムのための制御装置(10)。
【請求項15】
人物の凝視方向および/または凝視点を検出するセンサ(40)の出力信号によって、かつそれぞれ前記凝視方向または前記凝視点と前記表示または再生される前記情報の位置との間における角度または距離によって、前記表示または再生される前記情報を、その大きさ、サイズ、コントラストおよび/または強さに関して適合させて、人物の周辺視において認識させるように設けられた請求項14に記載の制御装置。
【請求項16】
プログラム可能なマイクロコンピュータにおいて実行されると、請求項1乃至8の少なくとも1項に記載の方法を実行するようになっているコンピュータプログラム・コード手段からなるコンピュータプログラム。
【請求項17】
インターネットに接続されるコンピュータにおいて実行されると、請求項9に記載のシステムまたは該システムの1個の構成要素にダウンロードされるようになっている、請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータ読取り可能媒体上に記憶されるコンピュータプログラム製品であって、請求項16に記載のコンピュータプログラム・コード手段からなるコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−512582(P2007−512582A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541881(P2006−541881)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013631
【国際公開番号】WO2005/054786
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(502196511)ボルボ テクノロジー コーポレイション (52)
【Fターム(参考)】