説明

情報入力装置及び情報処理装置

【課題】人体通信のための電極を保護するとともに、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することが可能な情報入力装置及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】表示手段と、前記表示手段の表示領域上に設けられた電極層と、前記電極層の上面に設けられた絶縁性の保護層とを有する入力手段と、前記保護層の上面をタッチパネル面とし、当該タッチパネル面に接触した操作者により誘起される前記電極層の電気的変化に基づいて、この接触位置を検出する接触位置検出手段と、前記電極層を人体通信用の伝送路として用い、前記タッチパネル面に接触した前記操作者の人体を介して、当該操作者が保持する外部装置との間で人体通信を行う人体通信手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを用いた情報入力装置及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ上において操作者が接触した位置を検出するタッチパネルディスプレイが利用されている。また、従来、タッチパネル操作によるデータ入力を補うため、人体を通信媒体として利用する人体通信機能を備えたタッチパネルディスプレイが提案されている。例えば、特許文献1には、操作者が接触するタッチパネル面を人体通信用の電極板とすることで、この操作者に装着された人体通信装置からのデータ入力が可能な装置が開示されている。また、電界を介して情報を通信する人体通信システムとして特許文献2が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の装置の構成では、人体通信のための透明電極板が剥き出しの状態で保持されているため、操作者は電極板に直接接触することになり、キズや汚れによる電極板の劣化が懸念される。また、特許文献1に開示の装置の構成では、人体通信のための電極板を別途設ける必要があるため、装置構成が繁雑化するという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、人体通信のための電極を保護するとともに、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することが可能な情報入力装置及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表示手段と、前記表示手段の表示領域上に設けられた電極層と、前記電極層の上面に設けられた絶縁性の保護層とを有する入力手段と、前記保護層の上面をタッチパネル面とし、当該タッチパネル面に接触した操作者により誘起される前記電極層の電気的変化に基づいて、この接触位置を検出する接触位置検出手段と、前記電極層を人体通信用の伝送路として用い、前記タッチパネル面に接触した前記操作者の人体を介して、当該操作者が保持する外部装置との間で人体通信を行う人体通信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、表示手段と、前記表示手段の表示領域上に設けられ、第1の方向に配置された第1電極線群と前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された第2電極線群からなる電極パターンと、当該電極層の上面に設けられた絶縁性の保護層と、を有する投影型静電容量方式の入力手段と、前記保護層の上面をタッチパネル面とし、当該タッチパネル面に接触した操作者により誘起される前記電極パターンの電気的変化に基づいて、この接触位置を検出する接触位置検出手段と、前記電極パターンを人体通信用の伝送路として用い、前記タッチパネル面に接触した前記操作者の人体を介して、当該操作者が保持する外部装置との間で人体通信を行う人体通信手段と、前記接触位置検出手段により検出された接触位置又は当該接触位置近傍に配置された電極線を、前記第1電極線群及び前記第2電極線群から夫々特定し、この特定した電極線を用いて前記人体通信を行うよう前記人体通信手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人体通信のための透明電極板を保護するとともに、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することが可能な情報入力装置及び情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、図1に示した表示入力部の断面を模式的に示した図である。
【図3】図3は、図2に示した面状電極間の関係を模式的に示した図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る情報処理装置の人体通信に係る構成を模式的に示した図である。
【図5】図5は、図1に示した制御部の動作の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、図1に示した制御部の動作の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、第2の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。
【図8】図8は、図7に示した表示入力部の断面を模式的に示した図である。
【図9】図9は、図8に示した面状電極の模式平面図である。
【図10】図10は、図7に示した表示入力部での位置検出方法を説明するための図である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。
【図12】図12は、図11に示した表示入力部の断面を模式的に示した図である。
【図13】図13は、図12に示した電極パターンの模式平面図である。
【図14】図14は、図11に示した表示入力部での位置検出方法を説明するための図である。
【図15】図15は、第3の実施形態の変形例に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る情報入力装置及び情報処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る情報処理装置は、情報入力装置としてのタッチパネル装置100と、PC(Personal Computer)等のホストコンピュータ200とを有し、通信可能に接続されている。
【0011】
タッチパネル装置100は、表示入出力部10と、ビデオI/F13と、ビデオ駆動部14と、切替部15と、接触位置検出部16と、人体通信部17と、通信I/F18とを備えている。
【0012】
表示入出力部10は、表示部11と、抵抗膜方式のタッチパネルである入出力部12とを有して構成されている。以下、図2及び図3を参照して、表示入出力部10について説明する。
【0013】
図2は、図1に示した表示入出力部10の断面を模式的に示した図である。また、図3は、図2に示した面状電極1212と面状電極1222との関係を模式的に示した図である。図2に示すように、表示入出力部10は、表示部11と、この表示部11の観察面側に配設された入出力部12とを備えている。ここで、表示部11は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネルであって、ビデオ駆動部14の制御に従って所定の画像(画面)を表示する。
【0014】
入出力部12は、ドットスペーサー123を介して対向配置された前面側基板121及び背面側基板122を有して構成されている。なお、本実施形態において、前面側基板121(基板1211)の外面側(観察面側)が、操作者が接触操作するタッチパネル面に対応する。
【0015】
前面側基板121は、ガラスやプラスチック等の絶縁性で且つ光透過性の部材から構成される基板1211を備えている。基板1211の背面側基板122との対向面には、表示部11の表示領域に対応する範囲を覆うよう光透過性の面状電極1212が設けられており、当該面状電極1212のX方向両端部に、接触位置検出部16及び人体通信部17により所定の電圧が印加される一対の抵抗膜1213(図3参照)が形成されている。
【0016】
背面側基板122は、ガラスやプラスチック等の光透過性の部材から構成される基板1221を備えている。基板1221の前面側基板121との対向面には、表示部11の表示領域に対応する範囲を覆うよう光透過性の面状電極1222が設けられており、当該面状電極1222のY方向両端部に、接触位置検出部16(及び人体通信部17)により所定の電圧が印加される一対の抵抗膜1223(図3参照)が形成されている。
【0017】
ここで、面状電極1212及び面状電極1222は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性導電膜からなり、その面内全域でほぼ均一な面抵抗を備えている。また、抵抗膜1213及び抵抗膜1223は、導電性の高い金属薄膜(例えば、金、アルミニウム等)により形成されている。なお、図3では、タッチパネルの構成を4線式の抵抗膜方式としたが、これに限らず、5線式の抵抗膜方式を用いてもよい。
【0018】
上記の構成において、操作者が前面側基板121のタッチパネル面を押下すると、面状電極1212と面状電極1222とが接触し、両面状電極間で通電が発生する。後述する接触位置検出部16では、この面状電極1222上に形成された端子部1224を通じて、面状電極1212と面状電極1222との通電位置を検出する。
【0019】
図1に戻り、ビデオI/F13は、ビデオケーブルやHDMIケーブル等の信号線を介してホストコンピュータ200に接続され、該ホストコンピュータ200から入力される画像信号を、ビデオ駆動部14に出力する。ビデオ駆動部14は、ビデオI/F13から入力される画像信号に所定の画像処理を施し、この画像信号を表示入出力部10の表示部11に出力することで、表示部11の表示画面を制御する。
【0020】
切替部15は、入出力部12の接続先を、接触位置検出部16と人体通信部17との間で切り替える。具体的に、切替部15は、図3に示す抵抗膜1213、抵抗膜1223及び端子部1224と接触位置検出部16との間の接続と、抵抗膜1213又は抵抗膜1223と人体通信部17との間の接続を、時分割で切り替えることにより、接触位置検出部16及び人体通信部17の何れか一方が入出力部12に接続されるよう制御する。以下、入出力部12と接触位置検出部16とが接続された状態を、接触位置検出部16がアクティブといい、入出力部12と人体通信部17とが接続された状態を人体通信部17がアクティブという。
【0021】
接触位置検出部16は、入出力部12のタッチパネル面での操作者の接触位置を検出し、この検出位置を通信I/F18を介してホストコンピュータ200に通知する。具体的に、接触位置検出部16は、上述した構成の入出力部12において、端子部1224を介して面状電極1212と面状電極1222との間の通電位置を検出し、この通電位置を操作者の接触位置としてホストコンピュータ200に通知する。なお、通電位置の検出については、抵抗膜方式に係る公知・公用の技術を用いることが可能である。
【0022】
人体通信部17は、電圧(電界)方式による人体通信を行うための機能部であって、図2及び図3に示した面状電極1212又は面状電極1222を人体通信用の伝送路として利用する。以下、図4を参照して、人体通信に係る構成について説明する。なお、本実施形態では、面状電極1212を人体通信用の伝送路として利用する例について説明する。
【0023】
図4は、タッチパネル装置100の人体通信に係る構成を模式的に示した図である。同図に示すように、人体通信部17は、通信I/F18から入力される通信情報に応じた人体通信用の電圧(交流電圧)を面状電極1212に印加し、該面状電極1212の近傍にある操作者U、即ちタッチパネル面に接触した操作者Uの人体周りに交流電界を誘起させる信号送信部171と、面状電極1212に作用する電界の電界強度変化を検出する信号受信部172と、信号受信部172が検出した電界強度の変化を受信信号として通信I/F18に出力する受信処理部173と、空気等を媒体として大地グラウンドGに接続される接地電極174とを備えている。
【0024】
一方、送受信装置300は、タッチパネル装置100の操作者Uが保持する携帯電話器等の携帯情報端末であって、送信用の通信情報を生成するデータ処理部31と、人体との伝送路となる電極32と、通信情報に対応する人体通信用の電圧(交流電圧)を電極32に印加し、操作者Uの人体周りに交流電界を誘起させる信号送信部33と、電極32に作用する電界の電界強度変化を検出する信号受信部34と、信号受信部34が検出した電界強度の変化を受信信号として所定の処理を施す受信処理部35と、空気等を媒体として大地グラウンドGに接続される接地電極36とを備えている。
【0025】
上記の構成において、送受信装置300を身に着けた操作者Uが、タッチパネル装置100のタッチパネル面に接触すると、操作者Uの人体が通信媒体として作用し、人体通信部17と送受信装置300との間で通信経路が確立される。これにより、人体通信部17は、操作者Uの人体を介して、送受信装置300との間で情報の授受を行うことが可能となる。なお、人体通信用の電圧の生成方法及び電界強度変化の検出方法は、例えば、特許第4088896号公報等に開示された技術等、公知・公用の技術を用いることが可能である。
【0026】
図1に戻り、通信I/F18は、ホストコンピュータ200との間で各種の情報の授受を行うためのインタフェースである。具体的に、通信I/F18は、接触位置検出部16から入力される接触位置を、ホストコンピュータ200へ送信する。また、通信I/F18は、ホストコンピュータ200から受信した通信情報を、人体通信部17の信号送信部171に出力し、受信処理部173から入力される受信信号を、ホストコンピュータ200へ送信する。なお、通信I/F18としては、RS232CやUSB等を用いることができる。
【0027】
ホストコンピュータ200は、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD等の記憶装置を備え、CPUと記憶装置に記憶されたプログラムとの協働により所定の処理(動作)を実現する。
【0028】
具体的に、ホストコンピュータ200では、タッチパネル装置100に画像信号を出力するとともに、タッチパネル面での接触位置に応じて、タッチパネル装置100との間で各種情報の授受を行う。以下、図5及び図6を参照して、ホストコンピュータ200の動作について説明する。ここで、図5及び図6は、ホストコンピュータ200の動作の一例を説明するための図であって、表示部11に表示された表示画面の一例を示している。
【0029】
図5において、操作領域A1、A2及びA3は、予め定められた処理内容を指示するための操作領域を表しており、操作者は入出力部12を介して各操作領域に触れることで当該操作領域に予め定められた処理内容を、ホストコンピュータ200へ指示することが可能となっている。なお、各操作領域は、アイコン画像等を用いることで、視覚的に判別可能な状態で表示されることが好ましい。
【0030】
ここで、操作領域A1が、例えば、所定の情報A11の表示を指示するものであるとすると、ホストコンピュータ200は、接触位置検出部16のアクティブ時に、当該接触位置検出部16から接触位置として入力される操作領域A1への接触操作に応じて、図6に示すように情報A11の表示を行う。なお、同図では、情報A11を吹き出し状に表示する形態としたが、これに限らないものとする。
【0031】
また、操作領域A2が、例えば、所定の情報の入力を指示するものであるとすると、ホストコンピュータ200は、接触位置検出部16のアクティブ時に、接触位置検出部16から接触位置として入力される操作領域A2への接触操作に応じて、タッチパネル装置100(人体通信部17)から情報の入力が行われることを検知する。そして、ホストコンピュータ200は、次の人体通信部17のアクティブ時に、当該人体通信部17から通知された受信信号を受け付け、この受信信号に応じた所定の処理を実行する。
【0032】
また、操作領域A3が、例えば、所定の情報の出力を指示するものであるとすると、ホストコンピュータ200は、接触位置検出部16のアクティブ時に、接触位置検出部16から接触位置として入力される操作領域A3への接触操作に応じて、タッチパネル装置100(人体通信部17)に情報を出力することが指示されたことを検知する。この場合、ホストコンピュータ200は、出力対象の情報を通信情報として人体通信部17に送信することで、次の人体通信部17のアクティブ時に、人体通信により送受信装置300へと送信される。
【0033】
以上のように、本実施形態のタッチパネル装置100によれば、接触位置検出のための面状電極1212を人体通信用の伝送路として用いることで、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することができる。また、面状電極1212が基板1211で覆われているため、操作者が面状電極1212に直接接触することを防止することが可能であり、キズや汚れによる面状電極1212の劣化を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、人体通信による情報の入力及び出力以外の処理として、情報を表示する形態を説明したが、この例に限らないものとする。また、本実施形態では、同一の画面内に情報の入力と、出力とを行うための操作領域を夫々設けた例を説明したが、この例に限らず、例えば、情報入力のための操作領域又は情報出力のための操作領域のみを表示する形態としてもよい。また、情報入力及び/又は情報出力のための操作領域を複数個表示する形態としてもよい。
【0035】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、表面型(Surface Capacitive)静電容量方式のタッチパネルを用いた構成について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、同じ符号を付与し説明を省略する。
【0036】
図7は、第2の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る情報処理装置は、情報入力装置としてのタッチパネル装置400と、ホストコンピュータ200とを有する。
【0037】
タッチパネル装置400は、図1に示したタッチパネル装置100の表示入出力部10、切替部15、接触位置検出部16及び人体通信部17に代えて、表示入出力部40、切替部42、接触位置検出部43及び人体通信部44を備えている。
【0038】
表示入出力部40は、表示部11と、表面型静電容量方式のタッチパネルである入出力部41を有して構成されている。以下、図8〜図10を参照して、表示入出力部40について説明する。
【0039】
図8は、図7に示した表示入出力部40の断面を模式的に示した図である。また、図9は、図8に示した面状電極412の模式平面図である。また、図10は、表示入出力部40での位置検出方法を説明するための図である。なお、図10では、表示部11の図示を省略している。
【0040】
図8に示すように、表示入出力部40は、表示部11と、表示部11の観察面側に設けられた入出力部41とを備えている。ここで、入出力部41は、ガラスやプラスチック等の光透過性の部材により形成された基板411と、表示部11の表示領域に対応する範囲を覆うよう設けられた光透過性の面状電極412と、ガラスやプラスチック等の絶縁性で且つ光透過性の部材により形成されたカバー層413とを有して構成されている。なお、本実施形態において、カバー層413の外面側(観察面側)が、操作者が接触操作するタッチパネル面に対応する。
【0041】
また、面状電極412の四隅には、図9に示すように、接触位置検出部43及び人体通信部44により所定の電圧が印加される電極414が形成されている。ここで、面状電極412は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性導電膜からなり、その面内全域でほぼ均一な面抵抗を備えている。また、電極414は、導電性の高い金属薄膜(例えば、金、アルミニウム等)により形成されている。
【0042】
切替部42は、入出力部41の接続先を、接触位置検出部43と人体通信部44との間で切り替える。具体的に、切替部42は、図11に示すように、電極414と接触位置検出部43との間の接続と、電極414と人体通信部44との間の接続を、時分割で切り替えることにより、接触位置検出部43及び人体通信部44の何れか一方が入出力部41に接続されるよう制御する。
【0043】
接触位置検出部43は、入出力部41のタッチパネル面での操作者の接触位置を検出し、この検出位置を通信I/F18を介してホストコンピュータ200に通知する。具体的には、操作者の指が入出力部41のタッチパネル面に接触すると、図10に示すように、操作者の指と面状電極412との間で容量結合が生じ、四隅の電極414から指を経由して電流が流れる。接触位置検出部43は、この四隅の電極414から流れた電流の比率を測定することで、操作者の指が接触した接触位置を検出し、通信I/F18を介してホストコンピュータ200へ通知する。なお、通電位置の検出については、表面型静電容量方式のタッチパネルに係る公知・公用の技術を用いることが可能である。
【0044】
人体通信部44は、人体通信部17と同様、電圧(電界)方式による人体通信を行うための機能部であって、切替部42により入出力部41の電極414と接続されることで、面状電極412を人体通信用の伝送路として利用する。
【0045】
上記の構成において、図4に示す送受信装置300を身に着けた操作者が、入出力部41のタッチパネル面に接触すると、この操作者の人体が通信媒体として作用し、人体通信部44と送受信装置300との間で通信経路が確立される。これにより、人体通信部44は、操作者の人体を介して、送受信装置300との間で情報の授受を行うことが可能となる。
【0046】
以上のように、本実施形態のタッチパネル装置400によれば、接触位置検出のための面状電極412を人体通信用の伝送路として用いることで、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することができる。また、面状電極412がカバー層413で覆われているため、操作者が面状電極412に直接接触することを防止することが可能であり、キズや汚れによる面状電極412の劣化を抑制することができる。
【0047】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態として、投影型(Projected Capacitive)静電容量方式のタッチパネルを用いた構成について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、同じ符号を付与し説明を省略する。
【0048】
図11は、第3の実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る情報処理装置は、タッチパネル装置500とホストコンピュータ200とを有する。
【0049】
タッチパネル装置500は、図1に示したタッチパネル装置100の表示入出力部10、切替部15、接触位置検出部16及び人体通信部17に代えて、表示入出力部50、切替部52、接触位置検出部53及び人体通信部54を備えている。
【0050】
表示入出力部50は、表示部11と、投影型静電容量方式のタッチパネルである入出力部41を有して構成されている。以下、図12〜図14を参照して、表示入出力部50について説明する。
【0051】
図12は、図11に示した表示入出力部50の断面を模式的に示した図である。また、図13は、図12に示した電極パターン513の模式平面図である。また、図14は、表示入出力部50での位置検出方法を説明するための図である。なお、図14では、表示部11の図示を省略している。
【0052】
図12に示すように、表示入出力部50は、表示部11と、この表示部11の観察面側に設けられた入出力部51とを備えている。ここで、入出力部51は、ガラスやプラスチック等の絶縁性で且つ光透過性の部材から構成される基板511及び基板512と、表示部11の表示領域に対応する範囲で且つ、基板511と基板512との間に設けられた電極パターン513とを有して構成されている。なお、本実施形態において、基板512の外面側(観察面側)が、操作者が接触操作するタッチパネル面に対応する。
【0053】
図13に示すように、電極パターン513は、X方向に配設された複数の電極線5131と、Y方向に配説された複数の電極線5132とから構成され、基板511の観察面側の面上において格子状にパターニングされている。この電極パターン513(電極線5131及び電極線5132)には接触位置検出部53及び人体通信部54により所定の電圧が印加される。なお、電極線5131及び電極線5132は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性を有した導電線により形成されており、互いに短絡しないよう絶縁膜等により離間されている。
【0054】
切替部52は、入出力部51の接続先を、接触位置検出部53と人体通信部54との間で切り替える。具体的に、切替部52は、図11に示すように、電極パターン513と接触位置検出部53との間の接続と、電極パターン513と人体通信部54との間の接続を、時分割で切り替えることにより、接触位置検出部53及び人体通信部54の何れか一方が入出力部51に接続されるよう制御する。
【0055】
接触位置検出部53は、入出力部51のタッチパネル面での操作者の接触位置を検出し、この検出位置を通信I/F18を介してホストコンピュータ200に通知する。具体的には、操作者の指が入出力部51のタッチパネル面に接触すると、図14に示すように、操作者の指と面状電極412との間で容量結合が生じる。接触位置検出部53は、この接近により生じた電極線間の静電容量の変化から、操作者の指が接触した接触位置を検出し、通信I/F18を介してホストコンピュータ200へ通知する。なお、接触位置の検出については、投影型静電容量方式のタッチパネルに係る公知・公用の技術を用いることが可能である。
【0056】
人体通信部54は、人体通信部17と同様、電圧(電界)方式による人体通信を行うための機能部であって、切替部52により入出力部51の電極パターン513と接続されることで、電極パターン513を人体通信用の伝送路として利用する。なお、人体通信部54は、電極パターン513を構成する電極線5131及び電極線5132の両方に接続されるものとするが、何れか一方にのみ接続される形態としてもよい。
【0057】
上記の構成において、図4に示す送受信装置300を身に着けた操作者が、入出力部51のタッチパネル面に接触すると、操作者の人体が通信媒体として作用し、人体通信部54と送受信装置300との間で通信経路が確立される。これにより、人体通信部54は、操作者の人体を介して、送受信装置300との間で情報の授受を行うことが可能となる。
【0058】
以上のように、本実施形態のタッチパネル装置500によれば、接触位置検出のための電極パターン513を人体通信用の伝送路として用いることで、人体通信機能とタッチパネル機能とをより簡易な構成で実現することができる。また、電極パターン513が基板512で覆われているため、操作者が電極パターン513に直接接触することを防止することが可能であり、キズや汚れによる電極パターン513の劣化を抑制することができる。
【0059】
ところで、投影型静電容量方式のタッチパネルの場合、2点以上の接触(マルチタッチ)を検出することが可能である。一の操作者によりマルチタップ操作が行われた場合、接触位置検出部53は複数の接触位置を同時に検出するため、ホストコンピュータ200は、各接触位置に応じた複数の処理を行うことになる。例えば、マルチタップ操作により、各接触位置に応じた複数の異なる情報を操作者に送出することが指示された場合、ホストコンピュータ200は、各接触位置に応じた全ての情報を操作者に送出するよう人体通信部54を制御する。
【0060】
また、マルチタップ操作の場合、操作者は一人とは限らず、複数人の操作者が同じタッチパネル面を同時に操作することが想定される。この場合、操作者毎、即ち操作位置毎に各位置に応じた情報を個別に送信することがセキュリティ上好ましい。以下、本実施形態の変形例として、接触位置毎に送信を行う情報を制御することが可能な構成について説明する。
【0061】
図15は、本実施形態の変形例に係る情報処理装置の構成を模式的に示した図である。同図に示すように、本実施形態の変形例に係る情報処理装置は、タッチパネル装置600とホストコンピュータ700とを有する。
【0062】
タッチパネル装置600は、上述したタッチパネル装置500の人体通信部54に代えて、人体通信部61を備えている。なお、図15では、表示入出力部50のうち、電極パターン513のみを図示している。また、ビデオI/F13の図示を省略している。
【0063】
図15において、電極パターン513は、電極線5131はX0〜X6の計7本電極線により構成され、電極線5132はY0〜Y6の計7本の電極線により構成されている。ここで、X0〜X6及びY0〜Y6は、各電極線を識別するための識別子である。
【0064】
また、ホストコンピュータ700は、CPUと記憶装置(何れも図示せず)に記憶されたプログラムとの協働により実現される制御手段として、制御部71を備えている。制御部71は、接触位置検出部53により同時に検出された複数の接触位置について、当該接触位置の各々で人体通信により送信される情報が個別となるよう、タッチパネル装置600への情報出力を制御する。
【0065】
具体的に、制御部71は、人体通信による情報の送信時において、接触位置検出部53から操作者の接触位置を受け付けると、この接触位置又は当該接触位置近傍に位置する電極線5131及び電極線5132を特定する。例えば、図15に示したT1及びT2の接触位置が接触位置検出部53から通知された場合、制御部71は、接触位置T1について(X1、Y1)を特定し、接触位置T2について(X5、Y1)を特定する。
【0066】
また、制御部71は、各接触位置に対応する送信対象の情報(以下、生成元情報という)を図示しない記憶部等から読み出すと、この生成元情報毎に新たな二つの情報(以下、第1情報、第2情報という)を生成する。
【0067】
ここで、第1情報及び第2情報は、当該第1情報及び第2情報の生成元となった生成元情報を復元することが可能な情報の組である。例えば、生成元情報を復元可能な方式で2分割することで得られる2つの情報の組や、生成元情報を所定の暗号方式で暗号化することで得られる暗号化済みの生成元情報と、その復号鍵との組等が挙げられる。なお、暗号化により第1情報及び第2情報を生成する場合には、生成元情報毎に異なる復号鍵が乱数等により生成されるものとする。
【0068】
また、制御部71は、各接触位置について生成した第1情報及び第2情報の組と、当該接触位置について特定した電極線の識別子とを関連付け、通信情報として人体通信部61に出力する。例えば、接触位置T1への接触操作により生成元情報D1を送信するような場合、制御部71は、生成元情報D1から生成した第1情報D11及び第2情報D12の組を、この接触位置T1に対応する電極線の識別子(X1、Y1)と関連付けて、タッチパネル装置600(人体通信部61)に送信する。また、接触位置T2への接触操作により生成元情報D2を送信するような場合、制御部71は、生成元情報D2から生成した第1情報D21及び第2情報D22の組を、この接触位置T2に対応する電極線の識別子(X5、Y1)と関連付けて、タッチパネル装置600(人体通信部61)に送信する。
【0069】
一方、人体通信部61は、電極線5131及び電極線5132の各々に対し、個別的に電圧を供給可能な構成を有し、人体通信による情報の送信時に、以下に説明する固有の動作を行う。具体的に、人体通信部61は、通信I/F18を介し、ホストコンピュータ700(制御部71)から送信対象となる通信情報を受け付けると、この通信情報に含まれた識別子に対応する各電極線に、当該通信情報に含まれた第1情報及び第2情報に応じた人体通信用の電圧を夫々印加する。
【0070】
例えば、上述した図15の例の場合、人体通信部61は、識別子X1の電極線5131に第1情報D11応じた電圧を印加し、識別子X5の電極線5131に第1情報D21応じた電圧を印加する。また、人体通信部61は、識別子Y1の電極線5132に第2情報D12及びD22に応じた電圧を印加する。
【0071】
この場合、接触位置T1に接触した操作者の送受信装置300では、第1情報D11、第1情報D21及び第2情報D12を受信することになるため、これらの情報のうち対となる第1情報D11及び第2情報D12から、生成元情報D1を復元することができる。また、同様に、接触位置T2に接触した操作者の送受信装置300では、第1情報D11、第1情報D21及び第2情報D22を受信することになるため、これらの情報のうち対となる第1情報D21及び第2情報D22から、生成元情報D2を復元することができる。
【0072】
このように、本変形例に係る情報処理装置によれば、タッチパネル装置600について、タッチパネル装置500と同様の効果を奏するとともに、マルチタップ操作が行われた場合においても、接触位置毎に送信する情報を個別に制御することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係る情報入力装置及び情報処理装置は、タッチパネルを備えた情報入力装置及び情報処理装置に有用であり、特に、タッチパネル面に接触した人体を用いて人体通信を行う場合に適している。
【符号の説明】
【0075】
100 情報処理装置
10 表示入力部
11 表示部
12 入力部
121 前面側基板
1211 基板
1212 面状電極
1213 抵抗膜
122 背面側基板
1221 基板
1222 面状電極
1223 抵抗膜
1224 端子部
123 ドットスペーサー
13 ビデオI/F
14 ビデオ駆動部
15 切替部
16 接触位置検出部
17 人体通信部
171 信号送信部
172 信号受信部
173 受信処理部
174 接地電極
18 通信I/F
200 ホストコンピュータ
300 送受信装置
31 データ処理部
32 電極
33 信号送信部
34 信号受信部
35 受信処理部
36 接地電極
400 タッチパネル装置
40 表示入出力部
41 入出力部
411 基板
412 面状電極
413 カバー層
414 電極
42 切替部
43 接触位置検出部
44 人体通信部
500 タッチパネル装置
50 表示入出力部
51 入出力部
511 基板
512 基板
513 電極パターン
5131 電極線
5132 電極線
52 切替部
53 接触位置検出部
54 人体通信部
600 タッチパネル装置
61 人体通信部
700 ホストコンピュータ
71 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2006−318067号公報
【特許文献2】特許第4088896号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段と、
前記表示手段の表示領域上に設けられた電極層と、前記電極層の上面に設けられた絶縁性の保護層とを有する入力手段と、
前記保護層の上面をタッチパネル面とし、当該タッチパネル面に接触した操作者により誘起される前記電極層の電気的変化に基づいて、この接触位置を検出する接触位置検出手段と、
前記電極層を人体通信用の伝送路として用い、前記タッチパネル面に接触した前記操作者の人体を介して、当該操作者が保持する外部装置との間で人体通信を行う人体通信手段と、
を備えたことを特徴とする情報入力装置。
【請求項2】
前記電極層の接続先を、前記接触位置検出手段と前記人体通信手段との間で切り替える切替手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記切替手段は、前記接触位置検出手段と前記人体通信手段との切り替えを、時分割で行うことを特徴とする請求項2に記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記入力手段は、前記電極層として、所定の間隙をもって対向配置された一対の面上電極を有する抵抗膜方式のタッチパネルであって、
前記人体通信手段は、前記面上電極の何れか一方を前記人体通信用の伝送路として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の情報入力装置。
【請求項5】
前記入力手段は、前記電極層として一の面上電極を有する表面型静電容量方式のタッチパネルであって、
前記人体通信手段は、前記面上電極を前記人体通信用の伝送路として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の情報入力装置。
【請求項6】
前記入力手段は、前記電極層として、所定の間隙をもって配置された複数の電極線からなる電極パターンを有する投影型静電容量方式のタッチパネルであって、
前記人体通信手段は、前記電極パターンを前記人体通信用の伝送路として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の情報入力装置。
【請求項7】
表示手段と、
前記表示手段の表示領域上に設けられ、第1の方向に配置された第1電極線群と前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された第2電極線群からなる電極パターンと、当該電極層の上面に設けられた絶縁性の保護層と、を有する投影型静電容量方式の入力手段と、
前記保護層の上面をタッチパネル面とし、当該タッチパネル面に接触した操作者により誘起される前記電極パターンの電気的変化に基づいて、この接触位置を検出する接触位置検出手段と、
前記電極パターンを人体通信用の伝送路として用い、前記タッチパネル面に接触した前記操作者の人体を介して、当該操作者が保持する外部装置との間で人体通信を行う人体通信手段と、
前記接触位置検出手段により検出された接触位置又は当該接触位置近傍に配置された電極線を、前記第1電極線群及び前記第2電極線群から夫々特定し、この特定した電極線を用いて前記人体通信を行うよう前記人体通信手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記人体通信により前記外部装置に情報の送信を行う場合、送信対象の情報から当該情報を復元可能な第1情報と第2情報とを生成し、この第1情報と第2情報とに応じた人体通信用の各電圧を、前記特定した電極線の夫々に印加するよう前記人体通信手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記電極パターンの接続先を、前記接触位置検出手段と前記人体通信手段との間で切り替える切替手段を更に備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記切替手段は、前記接触位置検出手段と前記人体通信手段との切り替えを、時分割で行うことを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−286895(P2010−286895A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138301(P2009−138301)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】