説明

情報再生方法及び情報再生装置

【課題】すべての規格の情報記録媒体を再生させるために、サーボ系、信号系の自動調整の範囲を広い範囲にして最適化すると、正常な再生信号が得られるまでに時間がかかる。また、将来の光ディスクの規格の変更等に対して、調整することは不可能である。
【解決手段】光ディスクが特性が良好なディスクである場合には、再生RF信号のジッタ特性がIで示されるものとすると、第1の最適化手段により探索範囲T1での最小ジッタ値が得られる位置を最適化位置に決定する。光ディスクが良好な特性でない場合は、再生RF信号のジッタ特性はIIやIIIで示す特性などになる。これらのジッタ特性II、IIIは、第1の最適化手段による探索範囲T1内では最小ジッタ値が得られないので、第2の最適化手段により、ジッタ特性IIの場合は探索範囲をT2に広げて、ジッタ特性IIIの場合は、探索範囲をT3で示す範囲に変更して探索を実行して最適化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報再生方法及び情報再生装置に係り、特に装置に挿脱可能なディスク状の情報記録媒体に対して、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号のオフセット、バランス、ゲインや、信号系の周波数特性の自動または手動調整等を行って、ディスク状の情報記録媒体から情報を再生する情報再生方法及び情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク状の光学的情報記録媒体(以下、光ディスクという)に対して情報を光学的に記録し、また再生する情報記録再生装置では、光ヘッドのトラッキング制御とフォーカス制御が行われ、記録時及び再生時にデータを正確に書き込み、また読み出すようにしている。かかる制御は所謂サーボ制御回路により光ヘッドを制御することにより行われている。記録可能な光ディスクの場合、記録時には光ディスクに光ビームスポットを与えるレーザの出力パワー(以下レーザパワーという)を、光ディスクにより指定されるワット数に合わせて複数段階に調節し、また、再生時には反射率が異なる数種類の光ディスクに対して、レーザパワーを複数段階に可変にしておき、再生光を適正にするためにトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号のゲインを調整し、この切換えを行う毎にこれらのエラー信号のオフセットを調整する。
【0003】
また、この際に他の装置との互換性を考慮してトラッキングエラー信号や、フォーカスエラー信号のオフセットやバランス等を媒体の屈折率の違いや厚さの違い、多層の場合には層間の厚さの違い等によって調整対象を正確に調整しなければならない。また、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号のオフセット、バランス、ゲインが一旦正確に設定されたとしても、使用環境の物理的変化、例えば経時変化や、温度、湿度、電源電圧等の変化があると、当初正確に調整されていたオフセット、バランス、ゲイン等が変化してしまい、再調整が必要となる場合がある。
【0004】
すなわち、オフセット、バランス、ゲイン等の再調整を行わないと、トラッキング制御とフォーカス制御のいずれか又は双方が制御不能となり、記録、再生が正確にできなかったり、最悪の場合は記録、再生が一切できない状態となってしまう。また、使用環境の物理的変化の他にも、ディスク自体の偏心、面振れ等の不均一性に起因しても同様の問題が生じる。
【0005】
そこで、本出願人は、光ディスクに対してデータを所定のブロック時間単位で記録、再生する情報記録再生装置におけるトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号のオフセット、バランス、ゲインを自動調整する情報記録再生装置を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1記載の情報記録再生装置は、装置自体又は光ディスクの物理的状態を検出する第1検出手段と、第1検出手段により検出された物理的状態を基準値あるいは物理的状態の時間的に前の値と比較する比較手段と、光ヘッドが光ディスクにたいて記録又は読み出し中であるか又は待機状態であるかを検出する第2検出手段と、比較手段及び第2検出手段に応答し、検出された物理的状態が基準値を超えるか、あるいは物理的状態の時間的に前の値に対して所定値以上の差を有することとなったときは、光ヘッドが待機状態のときに、光ディスクのトラッキング制御及び/又はフォーカス制御を行うサーボ制御手段における制御を最適化する手段とを有することを特徴とする。
【0007】
これにより、この従来の情報記録再生装置によれば、光ディスクの検出された物理的状態に応じて、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号のオフセット、バランス、ゲインの少なくとも一つについて再調整が必要なときは、光ヘッドが光ディスクに対して記録又は読み出し中でない待機状態のときに、サーボ制御手段における制御を最適化するよう調整するようにしているので、物理的状態の急激な変化が記録又は再生中に生じても、音声、画像等の記録/再生を中断することなく、最適化を実行でき、その後の安定した記録/再生を継続できる。
【0008】
【特許文献1】特開平8−203107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、情報再生装置に対して挿脱可能なディスク状の可搬型情報記録媒体である、ディジタル多用途ディスク(DVD:Digital versatile Disc)、ブルーレイディスク(BD)、HD−DVD等の光ディスクに記録されている情報を、装置のトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号のオフセット、バランス、ゲインや、信号系の周波数特性の自動または手動調整等により、再生ヘッドのサーボ制御機構に対する適切な制御を行って再生する情報再生装置において、再生する挿脱可能なディスク状の可搬型情報記録媒体である光ディスクとして、互換性を有して再生する場合等では、各種の光ディスクについて同様に考えることができるが、ここではDVDを例に説明すると、DVDは1996年に商品化が行われて以降、記録速度、多層化、各フォーマット、記録密度の向上により、DVD−(ビデオ、ROM、R、RW、RAM)、DVD+(R、RW)、HD−DVD等、様々な規格に対して、開発と商品化が行われており、再生装置に関してはスーパーマルチ等と呼ばれるすべての情報記録媒体を再生できることが市場の流れである。
【0010】
上記のそれぞれの規格は規格書にて管理されているが、実際に市場に流通する情報記録媒体においては、規格のすべての項目の値を満足するものは少なく、すべての規格の情報記録媒体を再生させるためには、サーボ系、信号系の自動調整の範囲を広い範囲にして最適化しなければ起動できない。このためには、起動時間に数十秒を要し、ユーザーは少ない確率で存在する規格を満足しない媒体を再生するために広範囲な調整範囲にわたって長時間の調整を行うため、情報記録媒体に記録されている映画等の最初の読み出しまでに時間を要する問題がある。
【0011】
また、前述した特許文献1記載の情報記録再生装置は、MDやPC変化型ディスクに適用されるものであるが、その技術をDVD、BD、HD−DVDなどに適用したとしても、特許文献1の方法では将来の情報記録媒体のばらつきや規格の変更に対して、情報再生装置がそれを想定して、調整することは不可能であり、再生できない情報記録媒体が多く発生する。
【0012】
また、規格が決まっていても市場の立ち上がりの頃(量産初期)の光ディスクのばらつきが大きく、量産により製造方法が修練されてくると規格の範囲内に安定化することが一般に知られているが、特に、DVDのように、先進国から発展途上国へ遅延を伴って普及が伝搬する規格の光ディスクでは、発展途上国製のDVDでは、現在も規格の範囲外のものが存在するので、再生できない場合がある。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、装置に挿脱可能なディスク状の情報記録媒体を、特性の良くない場合であっても高い確率で再生し得る情報再生方法及び情報再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、可搬型の情報記録媒体に記録されている情報信号を、ピックアップ装置を用いて再生する情報再生方法において、ピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から、予め定められた第1の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第1のステップと、第1のステップにより最適化処理された状態でピックアップ装置を用いて再生動作を開始する第2のステップと、第2のステップの再生開始後、再生信号が正常に得られないと判断したときに、第1の探索範囲よりも範囲を拡大又は変更した第2の探索範囲で、ピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
この発明では、情報記録媒体が規格の少なくとも重要な部分の値を満足している、特性が良好な情報記録媒体の場合には、第1の探索範囲で探索した情報に基づいて第1の最適化処理を行うことにより、ピックアップ装置からは正常に再生信号が得られるが、正常に再生信号が得られないときには、情報記録媒体が規格の重要な部分の値を満足していない、特性が良好でない情報記録媒体であると判断し、第1の探索範囲よりも拡大又は変更した第2の探索範囲により探索した情報に基づいて第2の最適化処理を行うことで再生信号を得るようにする。
【0016】
ここで、上記の第3のステップは、第2の探索範囲でピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から探索する情報として、予め定めた複数のパラメータの中から任意に選択した1つ以上のパラメータに対応した情報を探索して、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする。
【0017】
また、上記の第3のステップは、情報記録媒体から再生した、情報記録媒体の製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報及び製造地域情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする。
【0018】
また、上記の第3のステップは、情報記録媒体から再生した、情報記録媒体の記録履歴情報、記録フォーマット情報、記録装置情報、記録時期情報、物理特性情報、記録地域情報及び記録条件情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする。情報記録媒体が書き換え可能な情報記録媒体の場合は、記録履歴情報、記録フォーマット情報、記録装置情報、記録時期情報、物理特性情報、記録地域情報及び記録条件情報が情報記録媒体に記録されているので、それを利用して、情報記録媒体の特性を判断して最適化処理を行う。
【0019】
また、上記の第3のステップは、電気通信回線を通じて情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせるステップと、問い合わせに応答したサーバからの情報記録媒体の再生を行うための情報を、電気通信回線を通じて受信するステップと、受信した情報記録媒体の再生を行うための情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うステップとからなることを特徴とする。この発明では、情報記録媒体や装置に記録されていない情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせて、取得することができる。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、可搬型の情報記録媒体に記録されている情報信号を、ピックアップ装置を用いて再生する情報再生装置において、ピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から、予め定められた第1の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第1の最適化手段と、第1の最適化手段により最適化処理された状態でピックアップ装置を用いて再生動作を開始する再生開始手段と、再生開始手段による再生開始後、再生信号が正常に得られないと判断したときに、第1の探索範囲よりも範囲を拡大又は変更した第2の探索範囲で、ピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第2の最適化手段とを有することを特徴とする。
【0021】
この発明では、情報記録媒体が規格の少なくとも重要な部分の値を満足している、特性が良好な情報記録媒体の場合には、第1の探索範囲で探索した情報に基づいて第1の最適化処理を行うことにより、ピックアップ装置からは正常に再生信号が得られるが、正常に再生信号が得られないときには、情報記録媒体が規格の重要な部分の値を満足していない、特性が良好でない情報記録媒体であると判断し、第1の探索範囲よりも拡大又は変更した第2の探索範囲により探索した情報に基づいて第2の最適化処理を行うことで再生信号を得るようにする。
【0022】
ここで、上記の第2の最適化手段は、第2の探索範囲でピックアップ装置による情報記録媒体の再生信号又は再生信号に関連した制御情報から探索する情報として、予め定めた複数のパラメータの中から任意に選択した1つ以上のパラメータに対応した情報を探索して、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする。
【0023】
また、上記の第2の最適化手段は、情報記録媒体から再生した、情報記録媒体の製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報及び製造地域情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うようにしてもよく、情報記録媒体から再生した、情報記録媒体の記録履歴情報、記録フォーマット情報、記録装置情報、記録時期情報、物理特性情報、記録地域情報及び記録条件情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うようにしてもよい。
【0024】
更には、上記の第2の最適化手段は、電気通信回線を通じて情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせる問い合わせ手段と、問い合わせに応答したサーバからの情報記録媒体の再生を行うための情報を、電気通信回線を通じて受信する受信手段と、受信した情報記録媒体の再生を行うための情報に基づいて第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、ピックアップ装置による情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う処理手段とからなることを特徴とする。この発明では、情報記録媒体や装置に記録されていない情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせて、取得することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、特性が良好な情報記録媒体の場合には、第1の探索範囲で探索した情報に基づいて第1の最適化処理を行うことにより、ピックアップ装置からは正常に再生信号が得られるが、正常に再生信号が得られないときには、情報記録媒体が特性が良好でない情報記録媒体であると判断し、第1の探索範囲よりも拡大又は変更した第2の探索範囲により探索した情報に基づいて第2の最適化処理を行うようにしたため、従来は再生ができなかった特性が良好でない情報記録媒体に対しても、正常に再生ができる確率を高めることができ、また、特性が良好な情報記録媒体に対しては、狭い探索範囲により最適化が短時間にできるため、情報記録媒体から迅速に再生情報を得ることができる。
【0026】
また、本発明によれば、再生できないときには、探索範囲を拡大又は変更して最適化処理を行うようにしたため、将来の情報記録媒体のばらつきや規格の変更に対しても、再生できる確率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる情報再生装置の一実施の形態のブロック図を示す。この実施の形態は、再生機能だけでなく記録機能も有する光ディスク装置である。同図において、DVD等の光ディスク1に対して、光ピックアップ2はレーザビームスポットを与えることにより、所定のフォーマットの書誌情報、音声情報、映像情報が光学的に記録又は再生する。この光ディスク1から光ピックアップ2により読み出されて再生された信号に基づいて、ブロック9のサーボ回路でサーボ制御が行われ、光ディスク1はスピンドルモータ3及びモータドライバ/トラッキング・フォーカス制御回路4によりCLV(線速度一定)で回転される。
【0028】
光ピックアップ2は重畳器5を有し、また、トラバースモータ6にて光ディスク1の半径方向に移動可能とされている。光ピックアップ2は、内蔵のレーザダイオードから出射したレーザビームを光ディスク1に集光照射して、光ディスク1にレーザビームスポットを形成し、その反射光を内蔵の光検出器で受光して光電変換し、光ディスク1に記録された光学的情報を再生した信号RFを出力したり、例えば公知の非点収差法の4種類のフォーカスエラー信号検出用信号A〜Dと、公知の3ビーム法の2種類のトラッキングエラー信号検出用信号E、Fを演算して出力する。
【0029】
これらの信号RF、A〜Fはヘッドアンプ7によりその周波数に対応して周波数特性が切り換えられて増幅され、検出・調整手段として動作するプリアンプ8に出力される。また、プリアンプ8からヘッドアンプ7に対しては、光ピックアップ2内のレーザダイオードを駆動するための信号LDが印加される。
【0030】
また、光ピックアップ2の近傍位置には、光ディスク1の近傍の雰囲気温度を測定するための温度センサ13が設けられている。その出力信号はマイクロコンピュータ(以下、マイコン)11のA/D変換器11aに入力される。温度センサ13により、リアルタイムで光ディスク1付近の温度が検出され、順次RAM11cに書き込まれているものとする。また、かかる測定温度は、基準値と比較されるか、あるいは時間的に前の測定温度と比較されるものとする。測定温度が所定値以上のときに、後述する最適化処理を行うようにしてもよい。かかる処理は、マイコン11内のCPU11eの制御で行われる。
【0031】
プリアンプ8はメモリコントローラ・8−16変復調MPEG エンコーダ/デコーダ(ENC/DEC)・エラー訂正・サーボ回路からなるブロック9に対して、再生した符号化データと、フォーカスエラー信号FEOとトラッキングエラー信号TEO等を出力する。なお、このブロック9内のサーボ回路は例えばDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)で構成されている。
【0032】
また、256MBのダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)10は、記録、再生時のデータの圧縮、伸長の際に、一時的にデータを保存するものであり、マイコン11の指示を受けたブロック9内のメモリコントローラにより書き込み、読み出しが制御される。上記のブロック9は、記録時には記録データを内部のMPEG ENCにてMPEG方式による符号化信号に変調し、プリアンプ8及びヘッドアンプ7を介して光ピックアップ2に出力する。
【0033】
ブロック9内のサーボ回路はまた、再生時にはプリアンプ8からのフォーカスエラー信号FEOとトラッキングエラー信号TEOに基づいて、光ピックアップ2が光ディスク1のトラックに対してトラッキング及びフォーカシングするようにモータドライバ/トラッキング・フォーカス制御回路4を介して制御する。すなわち、周知のように、ブロック9内のフォーカスサーボ回路により、光ピックアップ2内の対物レンズを、光ディスク1に入射するレーザビームの光軸方向に移動制御して光ディスク1上の光スポット径が最小となるように制御し、ブロック9内のトラッキングサーボ回路により、光ピックアップ2内の対物レンズを、光ディスク1上の光スポットがトラック幅方向(ディスク半径方向)に移動するように変位制御して、光スポットを光ディスク1上のトラックに追従走査させる。
【0034】
また、マイコン11は書き込み時には光ピックアップ2をディスク1の最内周付近(TOC:Table Of Contents及びUTOC:User Table Of Contents)に移動させて必要なID情報を読み出し、トラッキングエラー信号TEOのオフセットとバランス等を調整する。
【0035】
マイコン11はプリアンプ8からの各種信号A〜F、FEO、TEO等を取り込むA/D変換器11aと、光ピックアップ2内のレーザダイオードを例えば12ビットのパルス幅変調(PWM)信号に応じた信号で駆動して上記レーザダイオードの出力パワーを制御等するためのPWM部11bと、ワークエリア等用のランダム・アクセス・メモリ(RAM)11cと、プログラム等用のリード・オンリ・メモリ(ROM)11dと、中央処理装置(CPU)11e等を有し、これらの回路11a〜11eはバス11fを介して互いに接続されている。更に、マイコン11はインターネット17を介して外部と通信可能とされている。
【0036】
また、RAM11cはCPU11eが後述する調整を行うためにトラッキングエラー信号の上下のピーク値等を記憶するためのエリアを有する。PWM部11bからのPWM信号は低域フィルタ(LPF)12によりDC電圧に変換され、プリアンプ8、ヘッドアンプ7を介して光ピックアップ2内のレーザダイオードを駆動する。マイコン11には、入力手段15と表示手段16がそれぞれ接続され、入力手段15によりユーザからの指示を受け、表示手段16に記録、再生の状態や、制御状態等を表示する。
【0037】
また、本実施の形態では、再生モードのときにマイコン11により最適化処理が行われる。この最適化処理では、まず、スピンドルモータ3に対する回転制御において、通常はブロック9内のサーボ回路に含まれるPLL回路が動作してフィードバック制御が行われるが、このPLL回路をオフとし、サーボ回路からは固定値をモータドライバ/トラッキング・フォーカス制御回路4に与えて、スピンドルモータ3を所定回転数で回転させる。
【0038】
また、トラッキングとフォーカスのサーボ制御をオフとし、光ピックアップ2内のレーザダイオードのパワーをオフとする。この状態で、トラッキングエラー信号TEOとフォーカスエラー信号FEOをマイコン11のA/D変換器11aを介してCPU11eに取り込み、それらの電圧値を測定する。この二つの電圧値の基準電圧との差をそれぞれ0とするようなトラッキングオフセット電圧TOFSとフォーカスオフセット電圧FOFSがマイコン11から出力される。
【0039】
次に、光ピックアップ2内のレーザダイオードをオンとし、トラッキングとフォーカスのサーボ制御をオンとし、フォーカスバランスを調整するために光ピックアップ2により再生されたEFM信号のエンベロープEFMENVをマイコン11のA/D変換器11aを介してCPU11eに取り込み、その電圧値を測定する。この電圧値を用いてフォーカス位置を光軸方向に動かしてフォーカスの最適化制御が行われる。
【0040】
すなわち、マイコン11から重畳器5へフォーカス加振信号が供給され、重畳器5でフォーカスエラー信号とフォーカス加振信号とが重畳された信号が光ピックアップ2内の図示しない対物レンズを光軸方向に変位駆動するフォーカス駆動部に印加されて、対物レンズをフォーカスサーボの範囲内でフォーカス加振信号の周期で光軸方向に往復変位させる。この結果、フォーカス位置が周期的に変化する。このようにフォーカス位置が変化すると、再生RF信号(EFM信号)の振幅が変化し、また、EFM信号のジッタが変化する。再生されたEFM信号はヘッドアンプ7、プリアンプ8を経てマイコン11に加振信号に同期して取り込まれる。
【0041】
ここで、上記のEFM信号の取り込みは、例えばプリアンプ8内で絶対値をとり、かつ、低周波数成分を取り出すフィルタリングを行ってエンベロープEFMENVを取り出し、それをA/D変換器11aでA/D変換して取り込む。ここで、A/D変換による信号の取り込みは、光ディスク1の欠陥、面振れ、偏心、記録信号の相違などの影響を低減して測定精度を上げるため、例えば、1回の加振で256回のサンプリングを行うと共に、加振を例えば16回行うようにする。そして、フォーカス変位方向が中心より正方向のときと負方向のときのそれぞれについて上記のサンプリング結果を分けて加算平均し、得られた2つの測定値を比較して、それらの差が所定の範囲内で、EFM信号の振幅が最大の位置、又はEFM信号のジッタが最小の位置を最適位置として検出する。
【0042】
次に、トラッキングバランスを調整するためにトラッキングサーボをオフにし、トラッキングエラー信号TEOのSカーブにおける上下のピーク値を測定し、これらの絶対値が等しくなるように、同様にトラッキングバランス信号TBALによってトラッキングバランスを制御する。またこれらのピーク値を用いて、トラッキングゲイン信号TGによってトラッキングゲインを制御する。トラッキングサーボがオンとされた後、さらにEFM信号のエンベロープを用いて、プリアンプ8内の情報再生信号出力回路におけるEFM信号のゲインを適切に調整する。またフォーカスゲインについてもフォーカスゲイン信号FGにより同様な制御が行われる。
【0043】
以上の動作自体は従来から知られている一般的な動作であるが、本発明は、マイコン11による上記の最適化処理の方法に特徴があり、以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態では、光ディスク1がDVDの規格の少なくとも重要な部分の値(例えば、ディスクの厚さ、屈折率、ジッタ、エラーレートなど)を満足したディスクである場合には、前述したフォーカスエラー信号の加振信号に基づき測定される再生RF信号のジッタ特性が図2にIで示す特性が得られるものとすると、第1の最適化手段により図2に示す探索範囲T1での最小ジッタ値(最大RF信号値)が得られる位置を最適化位置に決定する。
【0044】
ここで、ジッタは一般には、再生信号から位相同期ループ(PLL)回路で生成したクロックと、再生信号を2値化した信号の、クロックに対する立ち上がりと立下りの両エッジの差を積分し、平均化した値を、クロック周期で除算した値に100を乗じた値(単位%)であり、ジッタの値が小さいほど良好な再生状態であるといえる。フォーカスエラーが大きくなると、光ディスク状のスポット形状が広がりを持ち、光学的に劣化するので、再生信号のS/Nが劣化し、再生RF信号の振幅が低下すると共に上記のジッタの値が大きくなったり、ピークが得られなくなる。
【0045】
従って、光ディスク1がDVD規格の重要な部分の値(例えば、ディスクの厚さ、屈折率、ジッタ、エラーレートなど)を満足していないディスクの場合は、フォーカスエラー信号を加振すると、前述した再生RF信号のジッタ特性は図2にIIやIIIで示す特性などになる。これらのジッタ特性II、IIIは、第1の最適化手段による探索範囲T1内では最小ジッタ値が得られないので、第2の最適化手段により、ジッタ特性IIの場合は探索範囲をT2に広げて再度検索する。通常の状態で探索範囲T2とすると、調整時間に多くの時間を要するので、通常は探索範囲をT1とする。また、ジッタ特性IIIが得られる場合は、第2の最適化手段による探索範囲を図2にT3で示す範囲に変更する。
【0046】
ここで、探索範囲T2、T3を選択する方法としては、探索範囲T1を検索した結果のデータを用いて、次の探索範囲を設定する。例えば、探索範囲T1の結果として両方向の変化が所定値より少ない場合は探索範囲を広げる。また、探索範囲T1の結果として+方向に最小点があると判断した場合は探索範囲をT3のようにシフトする。
【0047】
次に、上記の実施の形態の動作を実現する方法について、図3乃至図5と共に説明する。図3及び図4は本発明になる情報再生装置の一実施の形態の最適化処理時の動作説明用フローチャートを示す。マイコン11のCPU11eは、製造時点又は光ディスク1を再生するときの起動時のいずれかにおいて、まず最適化処理の対象のフォーカスの探索範囲及び初期値を設定する(図3のステップS1)。なお、製造時点でのフォーカスの最適値はマイコン11内のROM11dに書き込んでおく。ここで、光ディスク1がDVDの規格に適合したディスクである場合は、光ピックアップ2をフォーカス方向に移動したときの再生RF信号のジッタは図2にIで示す特性となり、初期の探索範囲は規格に適合した図2にT1で示す範囲であるものとする。この探索範囲は比較的狭い。
【0048】
次に、CPU11eはプリアンプ8を介して入力される光ディスク1から再生されたRF信号(EFM信号)のエンベロープRFENVをA/D変換器11aを介してサンプリングして測定し、記憶する(図3のステップS2)。ここで、測定したエンベロープRFENVのサンプリング値がピーク値であるかどうか判定し(図3のステップS3)、前回までのピーク値より値が大きいときはピーク値であると判定して、その測定値をピーク値として更新した後(図3のステップS4)、また、前回までのピーク値以下の値のときは更新することなく、ステップS5に進んで、その測定値がピークの両側で本来のピーク値Pから値aを差し引いた値(すなわち(P−a))より下の値かどうか判定する(図3のステップS5)。
【0049】
すなわち、上記のエンベロープRFENVが図5(A)に実線の曲線で示すものである場合、最初は探索範囲の丸数字1で示す点での測定値が得られるが、この測定値は(P−a)より上の値であるので、CPU11eはステップS1で設定した探索範囲が終了したかどうかチェックし、探索範囲が終了していない場合は、探索値を1つインクリメントして(図3のステップS7)、再びエンベロープRFENVをA/D変換器11aを介してサンプリングして測定し、記憶する(図3のステップS2)。
【0050】
ここで、探索値が1つインクリメントされると、光ピックアップ2内の対物レンズは前回より光軸方向上逆方向に移動されるようにされており、図5(A)に丸数字2で示す点での測定値が得られる。この測定値は図5(A)に示すように、(P−a)より上の値であるので、CPU11eはステップS1で設定した探索範囲が終了したかどうかチェックし、探索範囲が終了していない場合は、探索値を1つインクリメントして(図3のステップS7)、再びエンベロープRFENVをA/D変換器11aを介してサンプリングして測定し、記憶する(図3のステップS2)。
【0051】
前述したように、探索値が1つインクリメントされると、光ピックアップ2内の対物レンズは前回より光軸方向上逆方向に移動されるようにされているので、今度は図5(A)に丸数字3で示す点での測定値が得られる。この測定値は図5(A)に示すように、(P−a)より上の値である。以下、上記と同様の動作が加振信号に同期して行われ、図5(A)に丸数字3、4、5、・・・で示す順番で探索値が更新され、その探索値でのエンベロープRFENVの測定値が(P−a)より下の値となった時点で、そのときの最大値(ピーク値)を決定して最適化処理を終了する(図3のステップS8)。なお、上記の最大値は図5(A)では探索範囲内のPであり、これは図2のジッタ特性Iの最小ジッタ値に対応しており、図2の探索範囲T1で得られる。
【0052】
以上は光ディスク1がDVDの規格の少なくとも重要な部分の値(例えば、ディスクの厚さ、屈折率、ジッタ、エラーレートなど)を満足したディスクである場合であるが、DVD規格の重要な部分の値を満足していないディスクの場合は、ステップS6で探索範囲終了と判定されたときでも、エンベロープRFENVの測定値が(P−a)より下の値が得られない。この場合は、エラー終了となる(図3のステップS9)。
【0053】
情報再生装置は、ステップS8又はS9の処理が終わると、再生動作を開始する。しかし、ステップS8で最大値が得られた場合は再生出力が正常に得られるが、ステップS9でエラー終了した場合は、最適なフォーカス位置が分からないので、再生出力が正常に得られない。そこで、ステップS9でエラー終了した場合は、それまでのエンベロープRFENVの測定結果を分析し(図4のステップS11)、その分析結果に基づいて、スタート初期値、探索範囲、測定順(サンプリング順)を決定する(図4のステップS12)。その後、図3のステップS1に戻り、今度は第2の最適化手段による最適化処理を再び開始する。
【0054】
ここで、上記のステップS11における測定結果分析処理について更に説明する。この測定結果分析処理を行う場合は、例えば以下の3つのエラーケースのいずれかが発生した場合である。第1のエラーケースは、前記エンベロープRFENVが図5(B)に実線の曲線で示すように、第1の最適化手段による探索範囲内でピーク値P1が得られるが、目標値(P−a)が第1の最適化手段による探索範囲内で得られず、探索範囲をIVで示すように拡大すると、目標値(P−a)より小さなエンベロープ値が得られる場合である。
【0055】
この場合は、P−xの測定値に対して目標値(P−a)との差(又は比)に相当する値を探索範囲の拡大値として、ピーク値が得られた検索値を中心値及び初期値として設定する。測定サンプリングステップは丸数字の2、1、3・・・の逐次比較とする。
【0056】
第2のエラーケースは、ピーク値が明確ではない場合で、前記エンベロープRFENVが図5(C)に実線の曲線で示すように、第1の最適化手段による探索範囲内でピーク値P2が得られ、またピーク値P2に対して、左側の探索範囲内でP2−(a/2)や目標値(P−a)は得られるが、右側の探索範囲内ではP2−(a/2)や目標値(P−a)が得られない場合である。この場合は、探索範囲内の測定(サンプリング)点間の傾き(差分)を計算し、ピーク値P2付近の傾きが小さい場合(所定値以下)には、P2を中心とする探索範囲Vに変更し、逐次比較する。
【0057】
第3のエラーケースは、ピーク値が探索範囲に存在しない場合である。すなわち、前記エンベロープRFENVが図5(D)に示すように、第1の最適化手段による探索範囲内ではほぼ直線的に変化する場合であり、この場合にはピーク値が検出できないので、その探索範囲内でのピーク値P3を、スタート点として探索範囲を複数のエンベロープRFENVの測定値からなる直線の傾きの高い方へ図5(D)にVIで示すように移動し、逐次比較でなく、片方向に測定(サンプリング)する。ピークがどこにあるか不明であり、また傾きの低い方の探索範囲外の領域での測定を行うことのメリットがないためである。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、フォーカスエラー信号を加振したとき再生RF信号のジッタ特性が図2にIIやIIIで示す特性などとなり、あるいは再生RF信号のエンベロープが図5(B)〜(D)に示すようになる、光ディスク1がDVD規格の重要な部分の値(例えば、ディスクの厚さ、屈折率、ジッタ、エラーレートなど)を満足していない特性が良好でないディスクの場合でも、探索範囲を広げたり、あるいは探索範囲をシフトすることで、フォーカスサーボ回路の最適化ができ、これにより、特性が良好でない光ディスクに対しても正常に再生ができ、再生画像や再生音声を得ることができる。また、特性が良好な光ディスクに対しては、狭い探索範囲によりフォーカスサーボ回路の最適化が短時間にできるため、光ディスクから迅速に再生画像や再生音声を得ることができる。
【0059】
なお、上記の実施の形態では、マイコン11が3つのエラーケースのいずれかの場合、それを判断して、第2の最適化手段により探索範囲を第1の最適化手段の探索範囲とは異ならせて、最適化処理を自動的に行うようにしたが、再生等の動作をした後に、時間が所定時間以上経過しても画像が出ない、あるいは画像が乱れる等の状況をユーザが見て判断して、ユーザが第2の最適化手段による最適化処理を行うように手動で指示することも可能である。
【0060】
また、エラーケースには、再生RF信号のジッタが所定値(例えば8%)以下にならない場合なども含まれる。なお、ジッタは前述した計算により求めるものに限られず、本明細書ではジッタにはPLLクロックタイミングでサンプリングした振幅誤差の平均値も含まれるものである。また、上記の実施の形態はフォーカスサーボの最適化処理であるが、トラッキングサーボの最適化処理も上記のフォーカスサーボの最適化処理と同様にしてできる。また、再生RF信号を最大振幅とするような再生RF信号の最適化処理も、上記と同様にできる。
【0061】
このように、本明細書における第1及び第2の最適化手段はいずれもサーボ制御手段における制御を最適化するよう再調整する処理を行うものであり、具体的にはフォーカスサーボ回路(フォーカシング制御手段)のオフセット、ゲイン、バランス、トラッキングサーボ回路(トラッキング制御手段)のオフセット、ゲイン、バランス、再生手段の周波数特性、応答特性、ゲイン特性の少なくとも一以上の特性を最適化するものであるが、第1の最適化手段で最適化ができなかったときに、第1の最適化手段で使用した最適化の探索範囲を変更又は拡大して第2の最適化手段で最適化を行うものである。
【0062】
なお、上記の第2の最適化手段は図3のステップS1などで設定された初期値に基づいて行われるものであるが、この初期値の設定に際しては、ユーザが複数のパラメータのうちから一つのパラメータを選択することで設定することができる。
【0063】
例えば、図6に示すように、本発明の情報再生装置の一実施の形態であるDVDプレーヤ31の本体に備えられた再生モードセレクトスイッチ33、あるいは、リモートコントロール装置(以下、リモコン)41に備えられた再生モードセレクトスイッチ43を操作することで、DVDプレーヤ31本体内のマイコン11に再生モードを設定できる。上記のパラメータとしての再生モードは、例えば、「フォーカス最適」、「トラッキング最適」、「再生信号最適」などである。なお、図6中、DVDプレーヤ31には従来と同様にDVDの挿脱部32なども設けられており、リモコン41には各種の操作用キー42も備えられている。
【0064】
また、ユーザが第2の最適化手段のパラメータあるいは再生モードの設定を行う場合は、再生しようとする光ディスクがA国製、B社製、又はC社の2005年頃の媒体である、D社のE工場製である、Fレーベルであること等などや、それぞれの品質情報を判断基準として選択することができる。勿論、ユーザが設定可能な複数のパラメータあるいは複数の再生モードの中からランダムに自由に設定することもできる。
【0065】
また、再生しようとする光ディスクの状況によって、「キズあり」、「偏心」、「面振れ」等をパラメータとして再生モードを設定することもできる。これらについてはユーザは光ディスクの状況を視認して品質情報に基づいて選択することができ、また、ランダムに自由にモードを設定することができる。
【0066】
上記のそれぞれの再生モードでの情報再生装置側の対応は、再生モード「フォーカス最適」が設定されたときは、図2〜図5と共に説明した方法でフォーカス最適位置探索の範囲を広げて最良点を検索する。また、フォーカスサーボ回路のループゲイン調整を行い最適なフォーカスサーボゲインにする。ループゲイン調整の具体的な方法は、例えば特開平10−11774号公報等にて開示された公知の方法を用い得る。
【0067】
また、再生モード「トラッキング最適」が設定されたときは、上記のフォーカス最適位置探索と同様にして、トラッキング最適位置探索を行う。また、再生モード「再生信号最適」が設定されたときは、再生系のイコライザ特性の調整を行う。その調整には再生RF信号の周波数特性の帯域の変更を行うと共に、高域のブースト量の制御を行う。具体的には最高周波数3Tの周波数付近のゲインを0から10dB程度持ち上げて、先程の再生信号の周波数特性の帯域の変更と共に、ジッタが最小になる点を見付け出す。必ず最小点が存在する。
【0068】
また、「キズあり」が設定されたときは、フォーカスサーボ回路のループゲインを最適点から、ゲインを下げる方向に、例えば3dB落とす。また、これと並行して、あるいはこの替わりに、トラッキングサーボ回路のループゲインを最適点から、ゲインを下げる方向に、例えば3dB落とす。また、「偏心」が設定されたときは、トラッキングサーボ回路のループゲインを最適点から例えば3dB上げる。更に、「面振れ」が設定されたときは、フォーカスサーボ回路のループゲインを最適点から、例えば3dB上げる。
【0069】
なお、上記の第2の最適化手段のパラメータあるいは再生モードの設定は、ユーザが行うのではなく、再生しようとする光ディスクに記録されている、製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報、製造地域情報などを装置が再生して、その中のいずれかの情報を用いて行うこともできる。この場合には、使用する情報と関連して予め装置に記録してある第2の最適化手段のパラメータを用いて最適化処理を行う。
【0070】
例えば、日本における光ディスクは1996年以降良い品質を維持しているが、A国では2000年頃出荷が開始され品質が良くなかったが、徐々に改善し2004年頃までには品質が良くなったものとした場合、その品質が光ディスク媒体の厚さむらとしたときには、A国製の光ディスクでは、製造年月日を参照することにより、フォーカスの最良点の探索範囲等を変更して、最適化の調整を行う。
【0071】
この場合、特に、製造者情報によって媒体の品質が異なる場合には、これに応じて場合分けする。光ディスクにおいては、設計情報、製造情報、物理特性情報を所定領域に予め記録しているものが考えられるので、この情報に基づいてもサーボや信号処理のパラメータを用いて再生を行う。
【0072】
なお、情報記録媒体の製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報、製造地域情報は、光ディスクのリードイン領域に記録されていることが多い。この場合に、リードイン領域がデータ領域と同じ記録密度の場合は、リードイン領域の情報自体が読めない可能性もある。すなわち、データ領域が読めない場合はリードイン領域も読めないので、リードイン領域からデータ領域を読み出すための上記の各種の情報を再生することができない。
【0073】
しかしながら、DVD−RAM、HD−DVD等においては、下位互換性を維持するためにリードイン領域がデータ領域よりも低い記録密度なので、データ領域が読めなくてもリードイン領域のみの情報を読み出すことが可能であり、これにより、上記の各種の情報を読み出して、その中の情報を用いて上記の最適化処理が可能である。その結果、データ領域が読み出し可能となり、再生情報を得ることもできる。
【0074】
また、光ディスクが記録可能な光ディスクの場合には、記録履歴情報(媒体を何回重ね書きをしてきたか等)、記録フォーマット情報(どのようなフォーマットで記録しているか)、記録装置情報(どのような装置でどの場所を記録してきたか、)、記録時期情報(いつ)、物理特性情報(記録膜の特性や記録パワー、消去パワー等の記録特性)、記録地域情報(どこで、)、記録条件情報(装置の記録時のレーザ波長、対物レンズの開口数(NA:例0.6)、記録パワー、消去パワー等、記録温度条件を含む)も光ディスクの所定領域に記録されているので、その所定領域から上記の情報を再生して、その再生情報のいずれかを用いて、第2の最適化手段による最適化を行うこともできる。
【0075】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。図7は本発明になる情報再生装置の他の実施の形態を用いたシステム構成図を示す。同図において、DVDプレーヤ51は図1に示した情報再生装置と同様の構成の再生装置で、リモコン52により操作可能とされており、また再生情報をテレビジョン(TV)装置53に供給して画像表示させ、更にインターネット等のネットワーク54(図1のネットワーク17に相当)を介してサーバ55と双方向の通信可能な構成とされている。
【0076】
この実施の形態では、DVDプレーヤ51が電気通信回線であるネットワーク54を通じてサーバ55に、再生しようとするDVDの情報を問い合わせる。その問い合わせ情報は、ユーザがTV装置53に接続されたGUI(Graphical User Interface)を介して入力した、再生しようとするDVDのメーカー名、品番、シリアル番号、ロット名、生産国等からなる。
【0077】
サーバ55は、受信した問い合わせ情報に基づいて、問い合わせ情報に対応したDVDプレーヤ51に適合した調整情報を取得して、その調整情報をネットワーク54を介して送信元のDVDプレーヤ51に返信する。上記の調整情報は、DVDプレーヤ51内に予め記録されていない調整のための情報である。DVDプレーヤ51はサーバ55からの調整情報を受信し、その調整情報に基づいて第2の最適化手段による最適化処理を行う。
【0078】
なお、以上では光ディスクの再生装置について説明したが、本発明は再生の性能を向上するための発明であり、本発明の情報再生装置により再生する可搬型情報記録媒体としては光ディスクに限らず、磁気記録再生媒体、ホログラムメモリ、固体半導体メモリでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の情報再生装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】フォーカスエラー信号を加振したときの、再生信号のジッタ特性の各例を示す図である。
【図3】本発明の情報再生方法の一実施の形態の動作説明用フローチャート(その1)である。
【図4】本発明の情報再生方法の一実施の形態の動作説明用フローチャート(その2)である。
【図5】再生RF信号と探索範囲の関係及び3つのエラーケースの説明図である。
【図6】本発明の情報再生装置に対して再生モードの設定方法の一例を説明する図である。
【図7】本発明の情報再生装置の他の実施の形態を備えたシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1 光ディスク
2 光ピックアップ
4 モータドライバ/トラッキング・フォーカス制御回路
5 重畳器
7 ヘッドアンプ
8 プリアンプ
9 ブロック
11 マイクロコンピュータ(マイコン)
31、51 DVDプレーヤ
32、43 再生モードセレクトスイッチ
41、52 リモートコントロール装置(リモコン)
53 TV装置
54 ネットワーク
55 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の情報記録媒体に記録されている情報信号を、ピックアップ装置を用いて再生する情報再生方法において、
前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から、予め定められた第1の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第1のステップと、
前記第1のステップにより最適化処理された状態で前記ピックアップ装置を用いて再生動作を開始する第2のステップと、
前記第2のステップの再生開始後、再生信号が正常に得られないと判断したときに、前記第1の探索範囲よりも範囲を拡大又は変更した第2の探索範囲で、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第3のステップと
を含むことを特徴とする情報再生方法。
【請求項2】
前記第3のステップは、前記第2の探索範囲で前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から探索する情報として、予め定めた複数のパラメータの中から任意に選択した1つ以上のパラメータに対応した情報を探索して、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項1記載の情報再生方法。
【請求項3】
前記第3のステップは、前記情報記録媒体から再生した、該情報記録媒体の製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報及び製造地域情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項1記載の情報再生方法。
【請求項4】
前記第3のステップは、前記情報記録媒体から再生した、該情報記録媒体の記録履歴情報、記録フォーマット情報、記録装置情報、記録時期情報、物理特性情報、記録地域情報及び記録条件情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項1記載の情報再生方法。
【請求項5】
前記第3のステップは、
電気通信回線を通じて前記情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせるステップと、前記問い合わせに応答した前記サーバからの前記情報記録媒体の再生を行うための情報を、前記電気通信回線を通じて受信するステップと、受信した前記情報記録媒体の再生を行うための情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うステップとからなることを特徴とする請求項1記載の情報再生方法。
【請求項6】
可搬型の情報記録媒体に記録されている情報信号を、ピックアップ装置を用いて再生する情報再生装置において、
前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から、予め定められた第1の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第1の最適化手段と、
前記第1の最適化手段により最適化処理された状態で前記ピックアップ装置を用いて再生動作を開始する再生開始手段と、
前記再生開始手段による再生開始後、再生信号が正常に得られないと判断したときに、前記第1の探索範囲よりも範囲を拡大又は変更した第2の探索範囲で、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う第2の最適化手段と
を有することを特徴とする情報再生装置。
【請求項7】
前記第2の最適化手段は、前記第2の探索範囲で前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体の再生信号又は該再生信号に関連した制御情報から探索する情報として、予め定めた複数のパラメータの中から任意に選択した1つ以上のパラメータに対応した情報を探索して、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項6記載の情報再生装置。
【請求項8】
前記第2の最適化手段は、前記情報記録媒体から再生した、該情報記録媒体の製造者情報、設計情報、製造情報、物理特性情報、製造時期情報及び製造地域情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項6記載の情報再生装置。
【請求項9】
前記第2の最適化手段は、前記情報記録媒体から再生した、該情報記録媒体の記録履歴情報、記録フォーマット情報、記録装置情報、記録時期情報、物理特性情報、記録地域情報及び記録条件情報のうち、少なくとも一以上の情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行うことを特徴とする請求項6記載の情報再生装置。
【請求項10】
前記第2の最適化手段は、
電気通信回線を通じて前記情報記録媒体の再生を行うための情報をサーバに問い合わせる問い合わせ手段と、前記問い合わせに応答した前記サーバからの前記情報記録媒体の再生を行うための情報を、前記電気通信回線を通じて受信する受信手段と、受信した前記情報記録媒体の再生を行うための情報に基づいて前記第2の探索範囲を決定し、その第2の探索範囲で探索して得た情報に基づいて、前記ピックアップ装置による前記情報記録媒体に対する再生動作を最適化するための処理を行う処理手段とからなることを特徴とする請求項6記載の情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−133920(P2007−133920A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323042(P2005−323042)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】