説明

情報処理装置、料金収受システム、及び料金収受方法

【課題】車両の走行距離をより精度高く測定する、ことを目的とする。
【解決手段】課金エリアに入退室した車両に課金するセンター機14は、広域通信機50によって、緯度及び経度によって車両の位置を示す位置情報を、複数の車両から受信する。なお、車両の位置情報は、例えば、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて生成される。位置情報は、誤差を含んでいる場合があり、正確な車両の位置を示していない場合がある。そこで、センター機14は、走行距離算出部54によって、広域通信機50で受信した位置情報を、他の車両の位置情報を用いて平均化することによって、受信した該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、料金収受システム、及び料金収受方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両がGPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号をアンテナで受信し、受信したGPS信号に基づいて現在位置を測定する所謂GPS測位が普及している。そして、GPS測位によって測定された車両の位置に基づいて、課金が行われる対象となるエリアである課金エリアを走行する車両に対して、課金を行う技術が開発されている。
特許文献1には、GPS測位により測定された車両の現在位置と課金エリアとを対比して、課金エリアの手前で課金エリア接近を報知し、課金エリアに入ると、時間料金、移動距離等に応じて料金を支払う課金装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−213192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GPS測位の精度は、例えば、GPS衛星の見通しの悪い市内等では、誤差が大きくなる場合がある。そのため、課金エリア内を走行する車両は、実際の走行距離よりも長い距離を走行したと判断され、実際の走行距離に応じた正しい料金が課金されない可能性が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両の走行距離をより精度高く測定できる、情報処理装置、料金収受システム、及び料金収受方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の情報処理装置、料金収受システム、及び料金収受方法は以下の手段を採用する。
【0007】
すなわち、本発明に係る情報処理装置は、車両の位置を示す位置情報を、複数の車両から受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する算出手段と、を備える。
【0008】
本発明によれば、受信手段によって、車両の位置を示す位置情報が、複数の車両から受信される。
なお、車両の位置情報は、例えば、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて生成され、緯度及び経度によって車両の位置を示す。しかし、位置情報は、誤差を含んでいる場合があり、正確な車両の位置を示していない場合がある。
そこで、算出手段によって、受信手段で受信された位置情報が、他の車両の位置情報を用いて平均化されることによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離が算出される。
【0009】
従って、本発明は、受信手段で受信した位置情報を他の車両の位置情報を用いて平均化することによって、位置情報が有する誤差を小さくするので、車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0010】
また、本発明の情報処理装置は、前記受信手段によって受信された前記位置情報を、該位置情報により示される位置に対応する予め定められた領域及び車両毎に記憶した記憶手段を備え、前記算出手段が、前記受信手段によって受信された前記位置情報を、前記記憶手段に記憶されている、該位置情報に対応する前記領域における他の車両の前記位置情報を用いて平均化してもよい。
【0011】
本発明によれば、受信手段で受信された位置情報は、該位置情報により示される位置に対応する予め定められた領域及び車両毎に記憶手段に記憶される。
予め定められた領域とは、例えば、車両が走行する道路を所定の裕度を持って囲むように設定されたものであり、分岐する道路毎に該領域が設定されてもよいし、並行して敷設されている複数の道路が、一つの該領域として設定されてもよい。
そして、算出手段によって、前記受信手段で受信された位置情報が、該位置情報に対応する上記領域における他の車両の位置情報を用いて平均化される。
【0012】
従って、本発明は、道路の位置、幅、長さ等を示したマップデータに基づいて車両の位置情報を補正する、所謂マップマッチング処理を行う必要が無いため、より簡易に車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0013】
また、本発明の情報処理装置は、前記位置情報が、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて生成され、前記算出手段が、平均化に用いる他の車両の前記位置情報を、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制できる、予め定められた期間内に生成された前記位置情報としてもよい。
【0014】
本発明によれば、位置情報は、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて生成され、平均化に用いる他の車両の前記位置情報が、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制できる予め定められた期間内に生成された位置情報とされる。
GPS測位による誤差は、車両から観測できるGPS衛星の数、GPS衛星の配置位置、及び電離層の状態等によって変化するGPS信号の状態に起因する。なお、車両から観測できるGPS衛星の数及びGPS衛星の配置位置は、時間と共に変化するが、異なる日でも同じ場所かつ同時刻では、略一致する。
【0015】
従って、本発明は、例えば、1日分(現在時刻から24時間前まで)の他の車両の位置情報を用いて平均化することによって、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制、すなわち誤差を小さくできる。
【0016】
また、本発明の情報処理装置は、前記位置情報は、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて生成され、前記GPS信号を受信するGPS基地局の設置位置を示すGPS基地局情報を記憶した第2記憶手段と、前記GPS基地局から送信された信号と前記第2記憶手段に記憶された前記GPS基地局情報とに基づいて差分を求め、該差分を用いて前記受信手段によって受信された前記位置情報を補正する補正手段と、を備え、前記算出手段が、補正された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出してもよい。
【0017】
本発明によれば、GPS基地局からの信号に基づいて車両の位置情報が補正されるので、車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0018】
また、本発明の情報処理装置は、前記GPS基地局が、複数の予め定められた補正領域毎に設けられており、前記補正手段が、前記補正領域に含まれる前記位置情報を、該補正領域に設けられている前記GPS基地局から送信された信号に基づいた前記差分を用いて補正してもよい。
【0019】
本発明によれば、複数の予め定められた補正領域毎に設けられているGPS基地局からの信号に基づいた差分を用いて、車両の位置情報を補正するので、車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0020】
一方、本発明に係る料金収受システムは、車両の位置を示す位置情報を生成すると共に送信し、車両に搭載される車載器と、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の情報処理装置と、を備える。
【0021】
本発明によれば、走行位置を示す位置情報を送信し、車両に搭載される車載器と、上記記載の情報処理装置と、を備えるので、車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0022】
また、本発明に係る料金収受方法は、車両に対して課金が行われる対象となるエリアを示す課金エリア情報が記憶された記憶手段と、車両の位置を示す位置情報を、複数の車両から受信する受信手段とを備えた情報処理装置の料金収受方法であって、前記受信手段によって受信された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する第1工程と、前記第1工程によって算出された走行距離と、前記記憶手段に記憶されている前記課金エリア情報とに基づいて、車両に対して課金を行う第2工程と、を含む。
【0023】
本発明によれば、受信手段で受信した位置情報を他の車両の位置情報を用いて平均化することによって、位置情報が有する誤差が小さくなるので、車両の走行距離をより精度高く測定できる。そのため、本発明は、課金が行われる対象となるエリアを走行した車両に対する課金をより正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両の走行距離をより精度高く測定できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車載器の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るセンター機の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る平均化対象エリアを示す模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車両位置履歴記憶部に記憶されている車両位置履歴情報を示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る平均化プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態に係る平均化プログラムの処理の説明に要する模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るセンター機の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る情報処理装置、料金収受システム、及び料金収受方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る料金収受システム10の全体構成図である。
図1に示すように、料金収受システム10は、情報処理装置であるセンター機14を有する設備16を備え、課金(ロードプライシング(道路課金))が行われる対象となるエリアである課金エリアAを走行する車両12に対して、センター機14が課金を行う。なお、センター機14を備えた設備16は、課金エリアA外に設けられていてもよい。
【0028】
図2は、本第1実施形態に係る車両12に搭載される車載器20の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車載器20は、車両電源22及び内蔵電池24に接続される電源回路26、センター機14との間で各種情報を送受信する広域通信機28、複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信するGPS受信機30、種々の情報を記憶する車載器記憶装置32、制御部34、表示部38、ブザー、LED(Light Emitting Diode)などの報知部40、IC(Integrated Circuit)カードが挿入されるICカード挿入部42、ICカード挿入部42に設けられるICカードインターフェース(図2では「ICカードI/F」として示す。)44、及び通信ポート46を備えている。
【0029】
図2において、GPS受信機30等の各種構成要素は必ずしも車載器20内に内蔵されていなくてもよい。例えば、各構成要素が情報の授受が可能な状態で構成されていれば良い。一例としては、GPS機能を有する携帯端末装置を外部端子を介して接続し、この携帯端末装置が備えるGPS機能をGPS受信機30として利用するような構成態様をとることが可能である。
そして、制御部34は、複数のGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて現在位置を測定する所謂GPS測位によって、車両12の現在の位置を示す位置情報を生成する。なお、位置情報は、車両12の位置を緯度及び経度で示したものであり、位置情報が生成された日時も付加される。
【0030】
電源回路26は主に車両電源22から供給される電圧を車載器20に適した電圧に制御し、車載器20を構成する各部に供給する。内蔵電池24は、車両電源22からの電源供給が遮断された場合でも、通信を行う程度の電力が確保できるよう設けられている。
【0031】
広域通信機28は、外部の装置と無線通信を行うものであり、例えば、センター機14と通信可能とされている。
【0032】
車載器記憶装置32には、車両12の所有者情報、車種情報、車両ID等を含む車両情報、車両12の位置情報、車載器の識別情報、並びにICカードから読み出された残高情報及びカード情報等、各種情報が記憶されている。
【0033】
ICカード挿入部42に挿入されるICカードは、例えば、接触型のICカードであり、フラッシュメモリやMPU(Micro Processing Unit)などが搭載されたICチップを内蔵している。このICカードには、カードID番号等のカード情報の他、残高、使用履歴等が記憶されている。ICカードに記録されている情報は、ICカードインターフェース44を介して、制御部34による読み出し、書き込みが可能とされている。
【0034】
このような車載器20において、ICカード挿入部42にICカードが挿入されると、制御部34は、ICカードインターフェース44を介してICカードに記録されているICカード情報及び残高を読み出して車載器記憶装置32に書き込むとともに、残高を表示部38に一定時間(例えば、10秒程度)、表示させる。また、制御部34は、ICカードから正常に情報を読み取ることができた場合には、正常動作をユーザに知らせるために報知部40を作動させる。これにより、例えば、報知部40がブザーであった場合には、ブザーがなり、また、LEDなどであれば、点灯することで正常である旨を報知する。
一方、制御部34は、ICカードから情報を読み取れなかった場合には、エラーである旨を表示部38に表示させるとともに、報知部40を作動させることにより、エラーである旨をユーザに報知し、ICカードの再挿入などを促す。なお、報知部40による報知の態様は、正常時と異常時とで異なる。
【0035】
制御部34は、広域通信機28を介して、センター機14から要求信号を取得すると、車載器記憶装置32に格納されている車載器20の識別情報、車両12の位置情報、カード情報等を読み出すとともに、これらを要求信号に対する応答信号としてセンター機14に出力する。
【0036】
通信ポート46は、外部の装置と通信を行うためのインタフェースであり、例えば、無線または有線の通信媒体と接続可能とされている。
【0037】
図3は、本第1実施形態に係るセンター機14の概略構成を示すブロック図である。
センター機14は、車両12が搭載する車載器20と無線通信を行う広域通信機50、センター機14全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)52、車両12の走行経路及び走行距離を算出する走行距離算出部54、広域通信機50が受信した車両12の位置情報を逐次記憶する車両位置履歴記憶部55、課金エリアAを緯度及び経度で示した課金エリア情報を記憶している課金エリア情報記憶部56、課金エリアAを走行する車両12に対する課金額を決定する課金額決定部58、車両12に対する課金額を課金テーブル情報として記憶している課金テーブル記憶部60、及び他の情報処理装置との間で情報の送受信を行う通信部62を備えている。
【0038】
CPU52は、広域通信機50に車両12に対して要求信号を送信させる一方、広域通信機50によって受信された車載器20からの応答信号が入力され、該応答信号のうち車両12の位置情報を走行距離算出部54へ出力する。
【0039】
走行距離算出部54は、CPU52から入力された車両12の位置情報、及び車両位置履歴記憶部55に記憶されている位置情報に基づいて、該車両12の走行経路及び走行距離を算出する。
【0040】
車両位置履歴記憶部55は、受信された位置情報を、該位置情報により示される位置に対応する予め定められた平均化対象エリア及び車両12毎に、例えばテーブル形式の情報(以下、「車両位置履歴情報」という。)として記憶する。
なお、平均化対象エリアとは、課金エリアAを車両12が走行する道路を基準にして、複数に分割した領域であり、車両12の位置情報により示される緯度及び経度から、同一の平均化対象エリアを走行した車両12の走行距離の平均が算出される。
【0041】
図4は、平均化対象エリアの模式図であり、車両12が走行する道路(実線で囲まれた領域)を所定の裕度(例えば、2m)を持って囲むように平均化対象エリアが設定される。また、平均化対象エリアは、分岐する道路毎に設定されてもよいし、並行して敷設されている複数の道路を一つの平均化対象エリアとして設定されてもよい。
【0042】
また、図5は、車両位置履歴記憶部55に記憶されている車両位置履歴情報を示す模式図である。図5に示されるように、各平均化対象エリアは、緯度及び経度で特定され、車両12毎に平均化対象エリアを走行した際の位置情報が時系列で記憶される。
なお、平均化対象エリアから外れた車両12の位置情報(図4の△で示される位置の一部)は、車両位置履歴情報として記憶されないこととなる。
【0043】
そして、CPU52は、走行距離算出部54で算出された走行経路に基づく車両12の位置と、課金エリア情報記憶部56に記憶されている課金エリア情報に基づいて、車両12の課金エリアAに対する入退室の有無を検出する。その後、CPU52は、課金エリアAに対する入退室を検出した車両12の走行距離、及び課金エリアAへの入退室の日時を示す情報を入退室情報として課金額決定部58へ出力する。
【0044】
なお、課金エリア情報記憶部56に記憶されている課金エリア情報は、道路の整備状況及び車両12の混雑状況等に応じて課金エリアAが変更された場合に適宜更新される。
【0045】
課金額決定部58は、入力された車両12の入退室情報と課金テーブル記憶部60に記憶されている課金テーブル情報とに基づいて、該車両12に対する課金額を決定する。なお、課金テーブル情報は、車両12が課金エリアAへ入った場合の課金額、車両12の課金エリアA内の走行距離に応じた課金額等を示した情報である。そして、課金額決定部58は、応答信号と共に決定した課金額を示す課金額情報を広域通信機50及び通信部62へ出力する。
【0046】
広域通信機50は、応答信号に含まれる車載器20の識別情報により特定される車載器20へ課金額情報を送信する。車載器20は、課金額情報を受信すると、該課金額情報により示される課金額を報知する。
一方、通信部62は、応答信号に含まれるカード情報により示される金融機関の口座番号の口座から、課金額情報により示される課金額が引き落とされるように、他の情報処理装置(金融機関が有する情報処理装置)へ口座番号及び課金額を示す情報を送信する。
【0047】
ここで、GPS測位の精度は、例えば、GPS衛星の見通しの悪い市内等では、誤差が大きくなる場合がある。そのため、本第1実施形態に係る走行距離算出部54では、広域通信機50によって受信された応答信号に含まれる位置情報を、他の車両12の位置情報で平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両12の走行経路及び走行距離を算出する平均化処理を行い、位置情報の誤差を小さくする。
【0048】
図6は、センター機14が平均化処理を行う場合に走行距離算出部54によって実行される平均化プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、該平均化プログラムは不図示のROM(Read Only Memory)等の所定領域に予め記憶されている。なお、平均化プログラムは、センター機14が動作を開始すると共にその動作を開始し、センター機14が動作を終了すると共にその動作を終了する。
【0049】
まず、ステップ100では、CPU52から新たな位置情報が入力されるまで待ち状態となり、新たな位置情報が入力されるとステップ102へ移行する。
【0050】
ステップ102では、車両位置履歴記憶部55から、入力された位置情報により示される車両12の位置に対応する平均化対象エリアに含まれる、他の車両12の位置情報を読み出す。
【0051】
次のステップ104では、受信した位置情報を、ステップ102で読み出した他の車両の位置情報を用いて平均化する。
より具体的には、ステップ104では、ステップ100で入力された車両12の位置情報から、該車両12の平均化対象エリアで走行した走行経路(例えば、図7に示される模式図における○の車両12)、及び該車両12と同一の平均化対象エリアを同一の方向へ走行した他の車両12(例えば、図7に示される模式図における●、△の車両12)の走行経路を算出する。なお、車両12の走行方向は、位置情報に付加されている日時情報に基づいて判断できる。
そして、ステップ104は、ステップ100で入力された車両12の走行経路と他の車両12の走行経路とを平均化し(図7に示される太線が平均化後の走行経路)、平均化した走行経路をステップ100で入力された車両12の走行経路とし、平均化した走行経路から該車両12の走行距離を算出する。
【0052】
なお、平均化対象エリアから外れた車両12の位置情報(図7の△で示される位置の一部)は、車両位置履歴情報として記憶されないため、平均化には用いられない。従って、GPS測位の誤差が大きい位置情報は、平均化に用いられないこととなるため、平均化の精度が向上する。すなわち、平均化対象エリアは、道路を所定の裕度を持って囲んだ領域であるが、該裕度は、位置情報が有する誤差のうち、許容できる誤差の範囲を示すこととなる。
【0053】
さらに、ステップ104では、平均化のために用いる他の車両12の位置情報として、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制できる予め定められた期間内に、生成された位置情報を用いる。
【0054】
GPS測位による誤差は、車両12から観測できるGPS衛星の数、GPS衛星の配置位置、及び電離層の状態等によって変化するGPS信号の状態に起因する。車両12から観測できるGPS衛星の数及びGPS衛星の配置位置は、時間と共に変化するが、異なる日でも、同じ場所かつ同時刻では、略一致する。すなわち、本第1実施形態に係る平均化処理は、1日分(現在時刻から24時間前まで)の他の車両12の位置情報を用いて平均化することによって、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制、すなわち誤差を小さくできる。
また、平均化対象エリアを走行した1日分の他の車両12が、予め定められた台数(例えば、50台)以下の場合は、該予め定められた台数を満たす、複数日分の他の車両12の位置情報を用いて平均化してもよい。
【0055】
次のステップ106では、ステップ100で入力された位置情報を、車両位置履歴情報に含ませることで、車両位置履歴記憶部55に記憶させると共に、ステップ104で算出した、車両12の走行距離をCPU52へ出力し、ステップ100へ戻り、センター機14が動作を終了するまで、ステップ100からステップ106を繰り返す。
【0056】
以上説明したように、本第1実施形態に係るセンター機14は、課金エリアに入退室した車両に課金する情報処理装置であり、広域通信機50によって、緯度及び経度によって車両の位置を示す位置情報を、複数の車両12から受信し、走行距離算出部54によって、広域通信機50で受信した位置情報を、他の車両12の位置情報を用いて平均化することによって、受信した該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する。
【0057】
従って、本第1実施形態に係るセンター機14は、車両12の走行距離をより精度高く測定できる。
【0058】
また、本第1実施形態に係るセンター機14は、広域通信機50で受信した位置情報を、該位置情報により示される位置に対応する平均化対象エリア及び車両12毎に位置情報記憶部53に記憶する。そして、走行距離算出部54は、広域通信機50で受信された位置情報を、該位置情報に対応する平均化対象エリアにおける他の車両12の位置情報を用いて平均化する。
【0059】
従って、本第1実施形態に係るセンター機14は、道路の位置、幅、長さ等を示したマップデータに基づいて車両の位置情報を補正する、所謂マップマッチング処理を行う必要が無いため、より簡易に車両の走行距離をより精度高く測定できる。
【0060】
また、本第1実施形態に係るセンター機14は、平均化に用いる他の車両12の位置情報を、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制できる、予め定められた期間内に生成された位置情報とするので、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差を小さくできる。
【0061】
本第1実施形態では、車両12がGPS衛星からの電波を用いて現在位置を検出する形態について説明したが、これに限定されず、車両12が、所謂Wi−Fi(Wireless Fidelity)と呼ばれる無線LAN(Local Area Network)による主にインターネット接続を目的として設置された無線LANアクセスポイントが送信する電波を用いて、現在位置を検出する形態としてもよい。
【0062】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0063】
図8は、本第2実施形態に係る料金収受システム10の構成を示す。なお、図8における図1と同一の構成部分については図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
本第2実施形態に係る課金エリアAには、GPS基地局70が設置されており、GPS基地局70は、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいた緯度及び経度を示す信号(以下、「受信情報」という。)をセンター機14へ送信する。なお、本第2実施形態に係るGPS基地局70は、センター機14を有する設備16に設けられているが、これに限らず、課金エリアA内の他の位置に設けられてもよい。
【0064】
図9は、本第2実施形態に係るセンター機14の構成を示す。なお、図9における図3と同一の構成部分については図3と同一の符号を付して、その説明を省略する。
本第2実施形態に係るセンター機14は、GPS基地局情報を記憶したGPS基地局情報記憶部80、及びGPS基地局情報に基づいて車両12の位置情報を補正するGPS補正部82を備える。GPS基地局情報は、GPS基地局の設置位置を示す情報であり、GPS基地局から送信された受信情報とGPS基地局の設置位置を対応付け、その差分を求めるために用いられる。
【0065】
GPS補正部82は、広域通信機50によって受信された車両12の位置情報及びGPS基地局70の受信情報がCPU52を介して入力される。そして、GPS補正部82は、GPS基地局70から送信された受信情報とGPS基地局情報記憶部80に記憶されたGPS基地局情報とに基づいて、広域通信機50によって受信した車両12の位置情報を補正する。
【0066】
具体的には、GPS補正部82は、GPS基地局情報記憶部80に記憶されているGPS基地局情報により示される設置位置の緯度及び経度と、GPS基地局から送信された受信情報により示される緯度及び経度を比較し、その差分を求める。そして、GPS補正部82は、求めた差分を用いて車両12の位置情報を補正(減算)し、補正後の位置情報を走行距離算出部54へ出力する。
【0067】
走行距離算出部54は、補正された位置情報を、他の車両12の位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する。
【0068】
従って、本第2実施形態に係る料金収受システム10は、GPS基地局70からの信号に基づいて車両12の位置情報を補正するので、車両12の走行距離をより精度高く測定できる。
【0069】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0070】
図10は、本第3実施形態に係る料金収受システム10の構成を示す。なお、図10における図8と同一の構成部分については図10と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
また、本第3実施形態に係る料金収受システム10は、図10に示すように、複数のGPS基地局70が課金エリアA内の補正エリアB毎に設けられている。
補正エリアBは、課金エリアA内の地理的条件、例えば、建築物の密度及び高さ、並びに山の位置等に応じて予め定められた領域である。すなわち、補正エリアBとして定められる領域は、地理的条件によって、GPS測位に生じる誤差が大きくなる領域である。
【0072】
そして、GPS基地局情報記憶部80に記憶されるGPS基地局情報は、各GPS基地局70毎の設置位置の緯度及び経度、並びにGPS基地局に対応する補正エリアBの範囲を示す。
【0073】
GPS補正部82は、補正エリアBに含まれる位置情報を、該補正エリアBに設けられているGPS基地局70から送信された受信情報に基づいた差分を用いて補正する。
【0074】
具体的には、GPS補正部82は、受信した位置情報とGPS基地局情報記憶部80に記憶されているGPS基地局情報とから、位置情報を送信した車両12が位置する補正エリアBを判別する。そして、判別した補正エリアBに対応するGPS基地局70の設置位置の緯度及び経度をGPS基地局情報記憶部80から読み出し、読み出した設置位置の緯度及び経度と、GPS基地局70から送信された受信情報により示される緯度及び経度とを比較し、その差分を求める。
その後、GPS補正部82は、補正エリアBに含まれる車両12の位置情報を、上記差分を用いて該位置情報を補正(減算)し、補正後の位置情報を走行距離算出部54へ出力する。
なお、入力された車両12の位置情報に対応する補正エリアBが無い場合は、GPS補正部82は、入力された位置情報を補正することなく、走行距離算出部54へ出力する。または、GPS補正部82が、入力された位置情報を、代表位置(設備16)に設けられたGPS基地局70から送信された受信情報を用いて補正し、走行距離算出部54へ出力する。
【0075】
従って、本第3実施形態に係る料金収受システム10は、複数の補正領域B毎に設けられているGPS基地局70からの信号に基づいて、車両12の位置情報を補正するので、車両12の走行距離をより精度高く測定できる。
【0076】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 料金収受システム
12 車両
14 センター機
20 車載器
50 広域通信機
52 CPU
54 走行距離算出部
55 車両位置履歴記憶部
70 GPS基地局
80 GPS基地局情報記憶部
82 GPS補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を示す位置情報を、複数の車両から受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する算出手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記受信手段によって受信された前記位置情報を、該位置情報により示される位置に対応する予め定められた領域及び車両毎に記憶した記憶手段を備え、
前記算出手段は、前記受信手段によって受信された前記位置情報を、前記記憶手段に記憶されている、該位置情報に対応する前記領域における他の車両の前記位置情報を用いて平均化する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記位置情報は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号に基づいて生成され、
前記算出手段は、平均化に用いる他の車両の前記位置情報を、GPS衛星から送信されるGPS信号の状態に起因する誤差の影響を抑制できる、予め定められた期間内に生成された前記位置情報とする請求項1又は請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記位置情報は、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて生成され、
前記GPS信号を受信するGPS基地局の設置位置を示すGPS基地局情報を記憶した第2記憶手段と、
前記GPS基地局から送信された信号と前記第2記憶手段に記憶された前記GPS基地局情報とに基づいて差分を求め、該差分を用いて前記受信手段によって受信された前記位置情報を補正する補正手段と、
を備え、
前記算出手段は、補正された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する請求項1から請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記GPS基地局は、複数の予め定められた補正領域毎に設けられており、
前記補正手段は、前記補正領域に含まれる前記位置情報を、該補正領域に設けられている前記GPS基地局から送信された信号に基づいた前記差分を用いて補正する請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
車両の位置を示す位置情報を生成すると共に送信し、車両に搭載される車載器と、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の情報処理装置と、
を備えた料金収受システム。
【請求項7】
車両に対して課金が行われる対象となるエリアを示す課金エリア情報が記憶された記憶手段と、車両の位置を示す位置情報を、複数の車両から受信する受信手段とを備えた情報処理装置の料金収受方法であって、
前記受信手段によって受信された前記位置情報を、他の車両の前記位置情報を用いて平均化することによって、受信された該位置情報に対応する車両の走行経路及び走行距離を算出する第1工程と、
前記第1工程によって算出された走行距離と、前記記憶手段に記憶されている前記課金エリア情報とに基づいて、車両に対して課金を行う第2工程と、
を含む料金収受方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−133644(P2012−133644A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286136(P2010−286136)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】