説明

情報処理装置、画像形成装置、およびプログラム

【課題】障害等の発生により装置の電源がオフされた後においても、電源がオフされる前の装置の動作に係わる情報を保護する。
【解決手段】制御部は、読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに演算に用いる情報を記憶する不揮発性RAMと、障害が発生した後の特殊起動の場合に、不揮発性RAMに設けられる特殊起動ではない起動の場合(通常起動)にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行するCPUとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、画像形成装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、入力手段により複写モードを入力すると、画像形成手段がその入力した複写モードに応じた画像形成を行う複写機において、画像形成手段の各部の状態を検出する状態検出手段と、この状態検出手段の各部の状態検出に基づき、画像形成手段の各部の異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段が異常を検出したときに、検出時の状態検出手段の検出内容、その検出時の複写モード、および異常検出手段で検出された異常項目をそれぞれ記憶する不揮発性記憶手段と、この不揮発性記憶手段に記憶された各内容を出力する出力手段とを備えた複写機の異常検出処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−177325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、障害等の発生により装置の電源がオフされた後においても、電源がオフされる前の装置の動作に係わる情報を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載される発明は、読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに演算に用いる情報を記憶する主記憶手段と、障害が発生した後の特殊起動の場合に、前記主記憶手段に設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する実行手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置である。
請求項2に記載される発明は、前記実行手段は、前記特殊起動の場合には、前記動作領域とは異なる前記主記憶手段に設けられ動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項3に記載される発明は、前記実行手段は、前記新たな動作領域における大きいアドレスを優先して用いることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置である。
請求項4に記載される発明は、前記実行手段は、障害が発生せずに電源断したことに関する識別情報が保持されていないことを条件に、前記動作領域とは異なる動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項5に記載される発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに少なくとも前記画像形成部の制御のための演算に用いる情報を記憶する主記憶手段と、障害が発生した後の特殊起動の場合に、当該主記憶手段に設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する実行手段と、を有して、当該画像形成部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項6に記載される発明は、前記制御部は、前記特殊起動の場合に、前記動作領域に記憶された前記動作に係わる情報を装置外部に送信することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
請求項7に記載される発明は、前記主記憶手段は、前記画像形成部における画像形成の対象となる画像情報を一時的に保持するメモリ領域である画像領域を備え、前記実行手段は、前記特殊起動の場合に、前記画像領域の少なくとも一部を動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域として用いて命令を実行することを特徴する請求項5又は6に記載の画像形成装置である。
請求項8に記載される発明は、画像を読み取る画像読み取り部を備え、前記主記憶手段は、前記画像読み取り部によって読み取った画像情報を一時的に保持する読取画像領域を備え、前記実行手段は、前記読取画像領域の少なくとも一部と前記画像領域の少なくとも一部とを、動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域として前記特殊起動毎に交互に用いて命令の実行を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
請求項9に記載される発明は、前記主記憶手段とは別の読み書き可能な記憶媒体である二次記憶装置をさらに備え、前記実行手段は、前記特殊起動の場合に、前記主記憶手段に設けられる動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置である。
請求項10に記載される発明は、コンピュータに、読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに演算に用いる情報を記憶する機能と、障害が発生した後の特殊起動の場合に、前記不揮発性メモリに設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、障害等の発生により装置の電源がオフされた後においても、電源がオフされる前の装置の動作に係わる情報を保護することが可能となる。
請求項2の発明によれば、主記憶手段以外に新たな動作領域を設ける場合と比較して、動作に係わる情報を記憶するために記憶装置を別途設ける必要がなくなる。
請求項3の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、新たな動作領域として用いるメモリ領域に既に記憶されていた情報を上書きにより消去し難くすることができる。
請求項4の発明によれば、障害が発生した後に起動を行う際に、確実に特殊起動を実行させることが可能となる。
請求項5の発明によれば、障害等の発生により画像形成装置の電源がオフされた後においても、電源がオフされる前の画像形成装置の動作に係わる情報を保護することが可能となる。
請求項6の発明によれば、特別な動作を要求することなく、障害の発生があった場合の動作領域に記憶される動作に係わる情報を外部に送信できる。
請求項7の発明によれば、障害が発生した際に用いていた動作領域を確実に避けて、特殊起動を実行することができる。
請求項8の発明によれば、特殊起動が複数回実行された際に、画像領域と読取画像領域として設けられる領域をできる限り残すことが可能となる。
請求項9の発明によれば、主記憶手段に記憶される情報を全て保護した状態で特殊起動を実行することができる。
請求項10の発明によれば、障害等の発生により装置の電源がオフされた後においても、電源がオフされる前の装置の動作に係わる情報を保護するプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】画像形成システムの構成を示す図である。
【図2】制御部の内部構成を示すハードウェア構成図である。
【図3】CPUの内部構成を示すハードウェア構成図である。
【図4】不揮発性RAMにおけるメモリ・マップを説明するための図である。
【図5】制御部が実現する解析用データ保護機能に関する機能ブロック図である。
【図6】実施形態1が適用される画像形成装置の起動動作のフローチャートである。
【図7】実施形態2が適用される不揮発性RAMにおけるメモリ・マップを説明するための図である。
【図8】実施形態2が適用される画像形成装置の起動動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<実施形態1>
図1は、本実施形態が適用される画像形成システムの構成を示す図である。
画像形成システムは、スキャン機能、プリント機能、コピー機能およびファクシミリ機能を備えたいわゆる複合機として動作する画像形成装置1と、画像形成装置1に接続されるネットワーク2と、ネットワーク2に接続される端末装置3と、ネットワーク2に接続されるファクシミリ装置4と、ネットワーク2に接続されるサーバ装置5とを有している。
【0009】
ここで、ネットワーク2は、インターネット回線や電話回線等によって構成されている。また、端末装置3は、ネットワーク2を介して、画像形成装置1に画像の形成等を指示するものであり、例えばPC(Personal Computer)で構成される。さらに、ファクシミリ装置4は、ネットワーク2を介して、画像形成装置1との間でファクシミリを送受信する。さらにまた、サーバ装置5は、ネットワーク2を介して、画像形成装置1との間でデータ(プログラムを含む)を送受信する。
【0010】
また、画像形成装置1は、紙等の記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取部10と、紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成部20と、ユーザから電源のオン/オフ、スキャン機能、プリント機能、コピー機能およびファクシミリ機能を用いた動作に関連する指示を受け付けるとともに、ユーザに対してメッセージを表示するユーザインタフェース(UI)30と、ネットワーク2を介して端末装置3、ファクシミリ装置4およびサーバ装置5との間でデータの送受信を行う送受信部40と、これら画像読取部10、画像形成部20、UI30および送受信部40の動作を制御する制御部50とを備えている。
【0011】
そして、この画像形成装置1では、画像読取部10によってスキャン機能が実現され、画像形成部20によってプリント機能が実現され、画像読取部10および画像形成部20によってコピー機能が実現され、画像読取部10、画像形成部20および送受信部40によってファクシミリ機能が実現される。なお、送受信部40は、例えばインターネット回線用のものと電話回線用のものとを、別々に設けるようにしても構わない。
【0012】
図2は、制御部50の内部構成を示すハードウェア構成図である。
情報処理装置の一例としての制御部50は、種々の演算を実行することによって画像形成装置1の各部を制御する実行手段の一例としてのCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)51と、CPU51に接続され、CPU51との間で各種データのやりとりを行うバスブリッジ52とを備えている。制御部50において、バスブリッジ52には、第1のクロックでデータのやりとりを行うメモリバス53と、第1のクロックよりも周波数が低い第2のクロックでデータのやりとりを行うPCI(Peripheral Component Interconnect)バス54とが接続されている。
【0013】
また、制御部50は、ROM(Read Only Memory)55と、不揮発性RAM(Random Access Memory)56とを備えている。そして、これらROM55、不揮発性RAM56は、それぞれ、メモリバス53に接続されている。
なお、以下の説明では、メモリバス53に接続されるROM55および不揮発性RAM56をメインメモリと呼ぶ。
【0014】
さらに、制御部50は、UI30を制御するためのUIインタフェース回路(UIIF)61と、画像形成部20を制御するためのプリントインタフェース回路(プリントIF)62と、例えば画像形成が行われた記録媒体に後処理を施す後処理部70など、画像形成装置1に後付けで装着されるオプションユニットを制御するためのオプションインタフェース回路(オプションIF)63と、送受信部40を制御するためのネットワークインタフェース回路(ネットワークIF)64と、USB(Universal Serial Bus)デバイスを制御するためのUSBインタフェース回路(USBIF)65と、HDD(Hard Disk Drive)装置90を制御するためのインタフェース回路(HDDIF)66とを備えている。そして、これらUIIF61、プリントIF62、オプションIF63、ネットワークIF64、USBIF65およびHDDIF66は、それぞれ、PCIバス54に接続されている。また、本実施の形態では、USBIF65に対し、画像読取部10が接続されている。なお、USBIF65には、例えば、装着されたメモリカード81に対しデータを読み書きするカードリーダ80が接続されることもある。
【0015】
そして、制御部50は、制御部50を構成する各部(CPU51等)が動作するクロックの基準となる基準クロックを生成するクロックジェネレータ58と、CPU51等の動作に伴って計時を行うタイマ59とをさらに備えている。
【0016】
本実施の形態における制御部50は、例えば、1チップのマイクロコントローラによって構成されている。ただし、制御部50を、複数のチップで構成しても構わない。
【0017】
また、本実施の形態の制御部50において、CPU51は、ROM55及び不揮発性RAM56に直接アクセスすることが可能となっている。
【0018】
ここで、ROM55は、いわゆるマスクROM、各種PROM(Programmable ROM:例えばOTP ROM (One Time Programmable ROM)、UV−EPROM(Ultra-Violet Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM))、フラッシュメモリなどで構成されている。なお、この例では、ROM55として、フラッシュメモリが用いられている。
【0019】
また、主記憶手段の一例としての不揮発性RAM56は、MRAM(Magneto resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistance RAM)など、電源を供給しなくても記憶している情報を保持することが可能な不揮発性のメモリによって構成されている。また、本実施形態では、不揮発性RAM56は、第1のクロックでデータの読み書きを行う。なお、本実施形態では、不揮発性RAM56として、ROM55として用いられるフラッシュメモリよりも高速にデータの読み書きが可能なMRAMが用いられている。
【0020】
図3は、CPU51の内部構成を示すハードウェア構成図である。
本実施の形態のCPU51は、制御部50に設けられたバスブリッジ52と接続され、バスブリッジ52との間で各種データのやりとりを行うバスコントロールユニット511と、バスコントロールユニット511に接続され、CPU51内において上述した第1のクロックよりも周波数が高い第3のクロックで各種データのやりとりを行うCPU内部バス512とを備えている。またCPU51は、CPU51内の各部を制御する制御ユニット513と、読み出したプログラムにしたがって各種演算を実行する演算ユニット514と、演算ユニット514が実行するプログラムが格納されたアドレスの保持、演算ユニット514による演算結果の保持、さらにはメインメモリとの間でデータのやりとりを行う際のアドレスの保持を行うための各種レジスタを備えたレジスタ群515と、演算ユニット514による演算結果を一時的に保持するキャッシュメモリ516と、CPU51が要求するメモリアクセスを処理するメモリ管理ユニット517とを備えている。
【0021】
ここで、レジスタ群515は、演算ユニット514が次に実行するべき命令を格納するメインメモリ上のアドレスを保持するプログラムカウンタ(PC)515aと、一時的にデータを退避しておくために用意するスタック領域のアドレスを保持するスタックポインタ(SP)515bと、CPU51の状態や演算の状態などを保持するステータスレジスタ(SR)515cと、演算やデータ転送の一次記憶などに使用されるアキュムレータ、メインメモリ上のデータにアクセスするためのアドレスを保持するアドレスレジスタ、さらにはCPU51の動作設定の情報を保持するコントロールレジスタ等として機能する汎用レジスタ515dとを含んでいる。
【0022】
そして、レジスタ群515およびキャッシュメモリ516は、ともに、電源を供給しないと、記憶している情報を保持することができない揮発性メモリによって構成されている。なお、この例では、レジスタ群515およびキャッシュメモリ516として、DRAMよりも高速にデータの読み書きが可能なSRAMが用いられている。
【0023】
ところで、従来の画像形成装置では、メインメモリとしてDRAM等の揮発性のメモリを用いている。このような従来の画像形成装置において、CPUやシステムメモリ等のハードウェアの不具合やソフトウェアの不具合によって画像形成装置が停止し、画像形成装置の電源をオフする再起動を実施しない限り復旧できない状態(いわゆるハングアップ)が発生する場合があった。そして、その場合において電源をオフすると、電源が供給されないことによって揮発性のメモリに格納されていた情報は消えてしまうため、不具合が発生したときのCPU(画像形成装置)の動作に係わる情報(ワーク情報やログ情報)を取得することができなかった。
【0024】
また、従来の画像形成装置のように、メインメモリとしてDRAM等の揮発性のメモリを用いている場合において、例えば停電や電源コードの引き抜きなどが発生すると、揮発性のメモリが保持していた、画像形成に関する作業に関してどこまで完了していたかといったCPU(画像形成装置)の動作に係わる情報を取得することができない。さらに、電源がオフする前に揮発性のメモリに保持されていた画像データも消えてしまい、利用することができなかった。
【0025】
そこで、本実施形態の画像形成装置1では、上述のように電源オフを実行しなければ復帰することができない障害(いわゆるハングアップ)が発生に伴った再起動、および停電や意図しないタイミングでの電源コードの引き抜きなど障害そのものによる再起動(以下、「特殊起動」とよぶ。)の後においても、再起動前に不揮発性RAM56に記憶されたCPU(画像形成装置)の動作に係わる情報を解析等で利用するために保護する機能(解析用データ保護機能)を有している。
なお、前回の電源オフの際に画像形成装置1が正常に動作し、通常通りに電源のオフが行われた後に、通常通りに行う起動を「通常起動」と呼ぶ。
【0026】
そして、本実施形態の画像形成装置1では、通常起動と特殊起動という2つの起動動作を備え、それぞれの起動に対応するメモリ・マップに基づいて起動動作を行うことによって、解析用データ保護機能を実現している。
【0027】
図4は、不揮発性RAM56におけるメモリ・マップを説明するための図である。なお、図4(a)は通常起動におけるメモリ・マップを示し、図4(b)は特殊起動におけるメモリ・マップを示す。
まず、図4(a)に示すように、通常起動におけるメモリ・マップについて説明する。
不揮発性RAM56には、第1領域A1(アドレス0x00000000〜)、第2領域A2(アドレス0x10000000〜)、第3領域A3(アドレス0x20000000〜)、第4領域A4(アドレス0x30000000〜)および第5領域A5(アドレス0x40000000〜)が設定される。
【0028】
[第1領域A1/通常起動]
第1領域A1は、図4(a)に示すように、プログラム/変数を格納する領域である。本実施形態では、第1領域A1には、画像形成装置1を起動するにあたり、制御部50においてCPU51が実行するプログラムであるイニシャル・プログラム・ローダ(Initial Program Loader:IPL)が格納される。なお、本実施形態では、IPLは、通常起動と特殊起動の両方の起動を実行する共用のプログラムとして設定されている。
さらに、第1領域A1には、本実施形態の画像形成装置1に実装され得る各構成(上述した画像読取部10、画像形成部20、UI30、送受信部40、後処理部70、カードリーダ80等)を動作させるためのプログラムが格納される。
【0029】
[第2領域A2/通常起動]
第2領域A2は、図4(a)に示すように、後述するフラグのオフ/オン(“1”/“0”)の情報を格納する領域である。第2領域A2は、例えば起動の初期化によっては上書きされず、起動の前にフラグが格納されていたフラグの情報が消えないようになっている。
【0030】
[第3領域A3/通常起動]
第3領域A3は、図4(a)に示すように、CPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を格納する領域である。動作に係わる情報は、ワーク情報およびログ情報を含んでいる。ワーク情報は、CPU51が命令を実行する際に一時的に記憶させる情報である。また、ログ情報は、CPU51の命令の実行に伴って蓄積される、各構成(上述した画像読取部10、画像形成部20、UI30、送受信部40、後処理部70、カードリーダ80等)の動作の履歴である。ログ情報は、画像形成装置1が受けた指示内容に関する情報、画像形成装置1の各構成の状態(ステータス)情報、発生したエラーに関する情報などを含んで構成される。
【0031】
そして、第3領域A3は、ワーク情報を格納するワーク領域として機能し、ログ情報を格納するログ領域として機能する。なお、ワーク情報およびログ情報というCPU51の動作に係わる情報すなわち画像形成装置1の動作に係わる情報を格納する領域を「動作領域」と呼ぶ。そして、通常起動の場合、第3領域A3が動作領域として機能する。
【0032】
[第4領域A4/通常起動]
第4領域A4は、図4(a)に示すように、送受信部40がネットワーク2を介して端末装置3やファクシミリ装置4などから受信した画像形成部20による画像形成の対象となる画像データを格納する領域(プリントバッファ)として用いられる。また、第4領域A4は、例えばレンダリング処理などの画像処理の作業領域としても用いられる。
【0033】
[第5領域A5/通常起動]
第5領域A5は、画像形成部20により読み取った読み取り画像データを格納する領域(スキャンバッファ)として用いられる。
【0034】
なお、上述の各領域において、特段の定めがないかぎり、小さいアドレスから大きいアドレスに向けて情報が記憶される。即ち、例えば、第4領域A4が空の状態において、画像形成装置1が印刷指示を受けて画像データを受け取った際には、第4領域A4における先頭のアドレスからその画像データを記憶させていく。
【0035】
ここで、不揮発性RAM56の第1領域A1に記憶されているプログラムは、ROM55に保持されている。そして、不揮発性RAM56における第1領域A1が空の状態(例えば工場出荷時や初回起動時など)にて、ROM55から不揮発性RAM56の第1領域A1へとロードされる。不揮発性RAM56は、画像形成装置1の電源をオフしても、記憶している情報を保持する。従って、本実施形態では、不揮発性RAM56の第1領域A1にプログラムを一度ロードした後は、起動の度にROM55からプログラムをロードすることはせず、既に不揮発性RAM56の第1領域A1に保持されたプログラムをCPU51が参照して命令を実行する。
【0036】
本実施形態のようにシステムメモリとして不揮発性RAM56を用いる場合は、例えばDRAMなどの不揮発性RAMを用いる場合と異なり、起動の度にROM55からプログラムをロードすることが必須とはならない。このように、本実施形態の画像形成装置1では、起動の度にROM55からプログラムをロードする時間を省き、起動に要する時間の短縮を図っている。ただし、例えば不揮発性RAM56が保持するプログラム自体にエラー(異常)が発生した場合には、ROM55から不揮発性RAM56にプログラムを再ロードするようにしている。なお、エラーチェックの手法としては、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)が挙げられる。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、特殊起動の際のメモリ・マップについて説明する。
[第1領域A1/特殊起動]
特殊起動の場合の第1領域A1は、図4(b)に示すように、プログラムを格納する領域である。なお、本実施形態の画像形成装置1では、起動の度に不揮発性RAM56を初期化して既に記憶される情報の消去は行わない。従って、この第1領域A1には、通常起動の場合と同じプログラムがそのまま存在する。
[第2領域A2/特殊起動]
第2領域A2は、図4(b)に示すように、フラグ情報を記憶する領域である。通常起動において記憶されたフラグ情報は、特殊起動が実行された場合にもこの第2領域A2にそのまま存在する。また、特殊起動において、フラグ情報の変更があれば、この第2領域A2に格納される。
【0038】
[第3領域A3/特殊起動]
第3領域A3は、図4(b)に示すように、特殊起動の場合には使用しない領域である不使用領域として設定される。なお、第3領域A3は、通常起動の場合において、動作領域として用いられていた領域である(図4(a)参照)。そして、特殊起動の場合に、第3領域A3に格納されている動作に係わる情報は、特殊起動が実行されてもそのまま残っている。
【0039】
[第4領域A4/特殊起動]
第4領域A4は、図4(b)に示すように、特殊起動の場合において、CPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を格納する領域である。つまり、特殊起動の場合には、第4領域A4が動作領域として機能する。なお、第4領域A4は、通常起動の場合においては画像形成の対象となる画像データを格納する領域(プリントバッファ)として用いられていた領域である(図4(a)参照)。したがって、既に第4領域A4に画像データが格納されていた場合、その画像データには、特殊起動における動作に係わる情報が上書きされる。
【0040】
[第5領域A5/特殊起動]
第5領域A5は、図4(b)に示すように、特殊起動の場合には使用しない領域である不使用領域として設定される。
【0041】
なお、図4(b)に示すように、実施形態1が適用される特殊起動の場合、画像形成の対象となる画像データを格納する領域(プリントバッファ)、および読み取った読み取り画像データを格納する領域(スキャンバッファ)は設定されない。これは、実施形態1の特殊起動は、再起動前の画像形成装置の動作に係わる情報を取り出して、解析に用いることを目的としており、画像形成機能や画像読取り機能などの画像形成装置1としての使用を想定していないためである。
【0042】
図5は、制御部50が実現する解析用データ保護機能に関する機能ブロック図である。
図5に示すように、制御部50は、フラグ付与部110、ブート種類判定部120、ブート実行部130、解析用データ送信部140を備える。
本実施形態では、フラグ付与部110は、予め定められた条件に基づいて、不揮発性RAM56の第2領域A2にフラグのオン/オフ情報として、“1”/“0”の情報を記憶する(図4(a)参照)。実施形態1のフラグ付与部110は、画像形成装置1の電源がオフされる際に、通常通りに電源オフの処理が実行された場合には、不揮発性RAM56の第2領域A2(図4(a)参照)に“1”を記憶して、フラグをオンの状態にする。また、実施形態1では、フラグ付与部110は、後述するようにブート種類判定部120からブート種類の判定が完了したという情報を受信した場合に、不揮発性RAM56の第2領域A2に“0”を記憶してフラグをオフする(フラグのリセット)。
【0043】
また、フラグ付与部110は、エラーなどが発生した場合や、通常通りに画像形成装置1の電源オフの処理が実行されない場合には、不揮発性RAM56の第2領域A2(図4(a)参照)に“0”を記憶してフラグをオフの状態にする。もっとも、ハングアップの発生や、停電や電源コードの引き抜きなどが生じると、フラグ付与部110によるフラグのオン/オフの制御が実行される間もなく、画像形成装置1の電源がオフになる。この場合、上述のとおりフラグはリセットされてオフの状態になっているため、そのままフラグはオフの状態で画像形成装置1の電源がオフすることになる。
【0044】
ブート種類判定部120は、制御部50が画像形成装置1に対する起動の指示を受け付けた際に、通常起動によって起動を実行するか、特殊起動によって起動を実行するかを判定する。
具体的には、ブート種類判定部120は、不揮発性RAM56の第2領域A2を参照してフラグがオンであれば、通常起動によって起動を実行すると判定する。そして、ブート種類判定部120は、ブート実行部130に対し、通常実行の指示を送信する。一方、ブート種類判定部120は、不揮発性RAM56の第2領域A2を参照して、フラグがオフであれば、特殊起動によって起動を実行すると判定する。そして、ブート種類判定部120は、ブート実行部130に対し、特殊起動の指示を送信する。
また、ブート種類判定部120は、起動の種類の判定が完了したという情報をフラグ付与部110に送信する。
【0045】
なお、本実施形態では、ブート種類判定部120は、上述したとおりフラグ付与部110によって付与されたフラグ情報(オン/オフ)に基づいて起動の種類を判定しているが、これに限定されるものではない。例えば、ブート種類判定部120は、画像形成装置1に設けられた「電源スイッチ」のみが押下されるという通常の操作が行われた場合には通常起動であると判定し、通常起動の指示をブート実行部130に送信する。一方、ブート種類判定部120は、例えばUI30に設けられる「テンキー」が押下されながら、「電源スイッチ」が押下されるという操作が行われた場合には、特殊起動によって起動を実行すると判定し、特殊起動の指示をブート実行部130に送信するように構成しても良い。
【0046】
そして、ブート実行部130は、ブート種類判定部120から通常起動の指示を受信した場合には、図4(a)に示すメモリ・マップに基づいて設定されるアドレスに従ってプログラムを実行する。
また、ブート実行部130は、プログラムを実行する際に用いるワーク情報の記憶や、プログラムの実行に従って生成するログ情報の記憶を、本実施形態では不揮発性RAM56の第3領域A3にアクセスし第3領域A3を用いて行うようにする。
さらにまた、ブート実行部130は、必要に応じた画像形成装置1の各構成の初期化を実行し、必要な構成部を使用可能な状態にする。
【0047】
一方で、ブート実行部130は、ブート種類判定部120から特殊起動の指示を受信した場合には、図4(b)に示すメモリ・マップに基づいて設定されるアドレスに従ってプログラムを実行する。また、プログラムを実行する際に用いるワーク情報の記憶や、プログラムの実行に従って生成するログ情報の記憶を、本実施形態では不揮発性RAM56の第4領域A4を用いて行う。
【0048】
なお、実施形態1における特殊起動は、エラー原因の解析に利用するために、動作に係わる情報を画像形成装置1の外部に送信することを目的としている。そのため、実施形態1では、画像形成機能や画像読み取り機能などの通常の画像形成装置における機能の利用は停止するようにしている。従って、実施形態1が適用されるブート実行部130は、特殊起動において、少なくとも送受信部40の初期化を実行し、送受信部40を使用可能な状態にする。
【0049】
(解析用データ送信部140)
解析用データ送信部140は、特殊起動による起動動作が実行された際に、不揮発性RAM56の動作領域(本実施形態では第3領域A3(図4(a)参照))に記憶される、電源のオフが行われる前のCPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を、送受信部40を介して外部に送信する。
また、解析用データ送信部140は、動作に係わる情報を外部に送信完了したという情報をフラグ付与部110に送る。
【0050】
図6は、実施形態1が適用される画像形成装置1の起動動作のフローチャートである。
画像形成装置1の電源が投入されると(ステップ101)、IPLが実行される。そして、不揮発性RAM56の第2領域A2を参照して、フラグがオンか否かを判断する(ステップ102)。
そして、ステップ102においてフラグがオンであることに基づいて通常起動であると判定された場合には(ステップ102:Y)、フラグをオフにするリセットを行い(ステップ103)、通常起動を実行する(ステップ104)。通常起動においては、CPU51は、不揮発性RAM56の第1領域A1に記憶されるプログラムを読み出して命令を実行するとともに、その際に不揮発性RAM56の第3領域A3を動作領域(ワーク領域)として用いる。
【0051】
そして、各構成の初期化が完了し、各構成の使用可能な状態になると、画像形成装置1が受け付けた指示等に基づいて各構成の各機能を実行する(ステップ105)。なお、画像形成装置1が受けた指示内容、各構成の状態、エラーなどの情報は、ログ情報として不揮発性RAM56の第3領域A3に記憶される。
【0052】
その後、例えばユーザによる画像形成装置1の利用が終了し、正常終了する場合には(ステップ106:Y)、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグをオンにして、電源オフの動作を実行する(ステップ107)。
【0053】
一方で、画像形成装置1において、何らかの要因によってハングアップが発生するなどして、正常に終了しなければ(ステップ106:N)には、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグがオフのまま、画像形成装置1の電源がオフする(ステップ108)。
その後に、再起動が行われ(再びステップ101)、ステップ102において、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグがオフであると判定されると(ステップ102:N)、特殊起動を実行する(ステップ109)。特殊起動では、CPU51は、不揮発性RAM56の第4領域A4を動作領域として用いながら、不揮発性RAM56の第1領域A1に記憶されるプログラムを読み出して命令を実行する。そして、実施形態1では、送受信部40の起動を行い、送受信部40を使用可能な状態にする(ステップ110)。なお、実施形態1では、画像読み取り機能および画像形成機能は使用しないので、画像読取部10および画像形成部20の初期化などは実施しない。
【0054】
その後、送受信部40を介して、不揮発性RAM56の第3領域A3に格納されている情報を外部に送信する(ステップ111)。この第3領域A3に格納される情報は、前回の画像形成装置1の起動から異常終了時までのCPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報である。そして、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグをオンにして、電源をオフする(ステップ112)。
【0055】
以上のように、例えば画像形成装置1が異常終了して再起動を行う場合、異常終了した再起動前の状態において用いていた不揮発性RAM56の動作領域を避け、その動作領域とは異なるメモリ領域を動作領域(ワーク領域)として用いて再起動を実行する。このように、本実施形態では、通常起動の場合のメモリ・マップと特殊起動の場合のメモリ・マップとを切り替えることで、簡易にかつ確実に異常終了した再起動前の画像形成装置1の動作に係わる情報を消去することなく画像形成装置1を起動することができる。そして、不揮発性RAM56から再起動前の画像形成装置1の動作に係わる情報を取り出すことを可能にする。
特に、本実施形態では、電源をオフしない限り復旧させることができないエラーが画像形成装置1に発生した場合において、CPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を確実に残すことができる。そして、エラーが発生したときのワーク領域の情報や、エラー発生を含めたログ情報など動作に係わる情報を、解析に利用するために保護することができる。
【0056】
<実施形態2>
続いて、実施形態2が適用される画像形成装置1について説明する。
実施形態2が適用される画像形成装置1は、例えば異常終了により再起動を行った後において、起動前の動作に係わる情報を保護しつつ、画像形成装置1を通常通りに使用できるように構成したものである。なお、以下の説明では、異常終了に伴う再起動が複数回(本実施形態では例えば4回)発生する場合を例に説明する。
また、実施形態2において、実施形態1にて説明したものと同様のものについては同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
図7は、実施形態2が適用される不揮発性RAM56におけるメモリ・マップを説明するための図である。なお、図7(a)は通常起動におけるメモリ・マップを示し、図7(b)は特殊起動におけるメモリ・マップを示す。
図7(a)に示すように、通常起動におけるメモリ・マップについて説明する。
実施形態2が適用される不揮発性RAM56には、第1領域A1(アドレス0x00000000〜)、第2領域A2(アドレス0x10000000〜)、第3領域A3(アドレス0x20000000〜)、第4領域A4(アドレス0x30000000〜)および第5領域A5(アドレス0x40000000〜)が設定されている。
【0058】
[第1領域A1〜第5領域A5/通常起動]
図7(a)に示すように、第1領域A1は、プログラムを格納する領域である。第2領域A2は、フラグ情報を格納する領域である。第3領域A3は、CPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を格納する領域(動作領域)である。第4領域A4は、画像形成部20による画像形成の対象となる画像データを格納する領域(プリントバッファ)として用いられる。第5領域A5は、画像形成部20により読み取った読み取り画像データを格納する領域(スキャンバッファ)として用いられる。
【0059】
続いて、図7(b)に示すように、特殊起動の際のメモリ・マップについて説明する。
[第1領域A1〜第2領域A2/特殊起動]
特殊起動の場合の第1領域A1は、図7(b)に示すように、通常起動の場合と同じく、プログラムを格納する領域である。また、第2領域A2も、通常起動の場合と同じく、フラグ情報を記憶する領域である。
【0060】
[第3領域A3/特殊起動]
そして、実施形態2においても、第3領域A3は、図7(b)に示すように、特殊起動の場合には使用しない領域である不使用領域として設定される。なお、第3領域A3は、通常起動の場合には、動作領域として用いられていた領域である(図7(a)参照)。本実施形態では、起動の度に不揮発性RAM56を初期化して既に記憶されていた情報を消すことはしない。そのため、第3領域A3に格納されている動作に係わる情報は、特殊起動が実行されてもそのまま残った状態となる。
【0061】
[第4領域A4/特殊起動]
特殊起動の場合における第4領域A4は、図7(b)に示すように、通常起動の場合と同様に、画像形成部20による画像形成の対象となる画像データを格納する領域(プリントバッファ)として用いられる。さらに、第4領域A4は、CPU51(画像形成装置1)の動作に係わる情報を格納する動作領域としても利用される。具体的には、小さいアドレスの部分に画像形成の対象となる画像データを格納する小領域A41(アドレス0x30000000〜)が設けられ、大きいアドレス部分に動作に係わる情報を格納する小領域A42(アドレス0x3E000000〜)および小領域A43(アドレス0x3F000000〜)が設けられる。そして、図7(b)に示すように、第4領域A4における最後(最もアドレスが大きい)の部分となる小領域A43に、1回目の特殊起動の動作に係わる情報を格納するように設定する。また、小領域A43よりも小さいアドレスの部分となる小領域A42に、3回目の特殊起動の動作に係わる情報を格納するように設定する。
【0062】
[第5領域A5/特殊起動]
特殊起動の場合における第5領域A5は、図7(b)に示すように、通常起動の場合と同様に、スキャンバッファを格納する領域として用いられる。さらに、第5領域A5は、動作に係わる情報を格納する領域としても指定される。具体的には、小さいアドレス部分にスキャンバッファを格納する小領域A51(アドレス0x40000000〜)が設けられ、大きいアドレス部分に動作に係わる情報を格納する小領域A52(アドレス0x4E000000〜)および小領域A53(アドレス0x4F000000〜)が設けられる。そして、図7(b)に示すように、第5領域A5における最後の部分となる小領域A53に、2回目の特殊起動の動作に係わる情報を格納するように設定する。また、小領域A53よりも小さいアドレスの部分となる小領域A52に、4回目の特殊起動の動作に係わる情報を格納するように設定する。
【0063】
そして、実際に特殊起動が実行される度に、第4領域A4においてプリントバッファとして画像形成の対象となる画像データを格納する領域(小領域41)、第5領域A5においてスキャンバッファとして読み取った読み取り画像データを格納する領域(小領域51)から予め定められたアドレス範囲の領域が削られ、動作領域のための複数の領域(小領域A42、小領域A43、小領域A52および小領域A53)が順次設定される。
【0064】
図8は、実施形態2が適用される画像形成装置1の起動動作のフローチャートである。
画像形成装置1の電源が投入されると(ステップ201)、IPLが実行される。そして、不揮発性RAM56の第2領域A2を参照して、フラグがオンであるか否かを判断する(ステップ202)。そして、ステップ202においてフラグがオンである場合には(ステップ202:Y)、不揮発性RAM56の第2領域A2におけるフラグをオフにするリセットを実行し(ステップ203)、通常起動を実行する(ステップ204)。
【0065】
ステップ204の通常起動において、CPU51は、不揮発性RAM56の第3領域A3を動作領域として用いることで命令の実行を行う。また、実施形態2では、画像形成装置1の各構成の初期化を実行し、各構成を使用可能な状態にする。起動後においては、画像形成装置1が受けた指示内容、各構成の状態、エラーなどの情報はログ情報として不揮発性RAM56の第3領域A3に記憶される。
【0066】
そして、例えばユーザによる画像形成装置1の使用が終了したり、また、ハングアップなどの発生によって画像形成装置1の電源を強制的にオフしたりして、結果として画像形成装置1の電源がオフされる。このとき、正常終了するか否かを判断する(ステップ205)。正常終了であれば(ステップ205:Y)、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグをオンにして、電源オフの動作を実行する(ステップ206)。
なお、画像形成装置1に正常に動作し、正常終了をする限りは上記のフロー(ステップ201〜ステップ206)が繰り返される。この繰り返しにおいて、CPU51は、不揮発性RAM56の第3領域A3を動作領域として用いることで命令の実行を行う。即ち、正常終了した画像形成装置1の動作に係わる情報は、その後の通常起動における画像形成装置1の動作に係わる情報によって上書きされる。
【0067】
一方、ハングアップなどの発生によって画像形成装置1の電源を強制的にオフされるなどの異常終了が発生すると(ステップ205:N)、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグはオフのままでの電源オフが行われる(ステップ207)。
【0068】
そして、例えばステップ207の後に再起動が行われる場合(再びステップ201)、ステップ202においてフラグがオフであると判断される(ステップ202:N)。この場合は、特殊起動を実行する(ステップ208)。そして、ステップ208の特殊起動において、CPU51は、前回用いていた動作領域とは異なるメモリ領域を用いて起動を行う。この例では、起動前において不揮発性RAM56の第3領域A3を動作領域としていたので、ステップ208では、第4領域A4の小領域43を動作領域に用いて起動を実行する。また、起動後においては、画像形成装置1が受けた指示内容、各構成の状態、エラーなどの情報はログ情報として不揮発性RAM56の第4領域A4の小領域43に記憶される。一方、1回目の特殊起動の前のエラーが発生していた画像形成装置1の動作に係わる情報が記憶されている不揮発性RAM56の第3領域A3が保護される。
【0069】
その後、画像形成装置1の使用が終了し、このとき正常終了するか否かを判断する(ステップ209)。正常終了であれば(ステップ209:Y)、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグをオンにして、電源オフの動作を実行する(ステップ210)。
また、画像形成装置1が正常に動作し、正常終了をする限りは上記のフロー(ステップ201〜ステップ206)が繰り返される。この繰り返しにおいて、CPU51は、不揮発性RAM56の第3領域A3を動作領域として用いることで命令の実行を行う。即ち、正常終了した画像形成装置1の動作に係わる情報(第4領域A4の小領域43)は、その後の通常起動における画像形成装置1の動作に係わる情報によって上書きされる。
【0070】
一方、ハングアップなどの発生によって画像形成装置1の電源を強制的にオフされるなどの異常終了が発生すると(ステップ209:N)、不揮発性RAM56の第2領域A2のフラグはオフのままでの電源がオフする(ステップ211)。
そして、例えばステップ211の後に再起動が行われる場合(再びステップ201)、ステップ202においてフラグがオフであると判断される(ステップ202:N)。この場合は、特殊起動を実行する(ステップ208)。そして、ステップ208の特殊起動(2回目の特殊起動)において、CPU51は、前回用いていた動作領域とは異なるメモリ領域を用いて起動を行う。この例では、起動前において不揮発性RAM56の第4領域A4の小領域43を動作領域としていたので、ステップ208では、第5領域A5の小領域A53を動作領域に用いて起動を実行する。また、起動後においては、画像形成装置1が受けた指示内容、各構成の状態、エラーなどの情報はログ情報として不揮発性RAM56の第5領域A5の小領域A53に記憶される。一方、2回目の特殊起動の前のエラーが発生していた画像形成装置1の動作に係わる情報が記憶されている不揮発性RAM56の第4領域A4の小領域A43が保護される。
【0071】
なお、さらに異常終了が発生すると、3回目の特殊起動が実行される。図7(b)に示すように、CPU51は、第4領域A4の小領域A42を3回目の特殊起動の動作領域として用いて起動を行う。結果として、第5領域A5の小領域A53に格納される3回目の特殊起動の前の起動における動作に係わる情報が保護される。
また、さらに異常終了が発生すると、4回目の特殊起動が実行される。そして、図7(b)に示すように、CPU51は、第5領域A5の小領域A52を4回目の特殊起動の動作領域として用いて起動を行う。これにより、第4領域A4の小領域A42に格納される4回目の特殊起動の前の起動における動作に係わる情報が保護される。
【0072】
以上のようにして、通常起動の実行(ステップ204)や特殊起動の実行(ステップ208)を経たいずれの起動後において、ハングアップなどのエラーが発生することで、異常終了する度(ステップ205:N、ステップ209:N)に、エラーが発生した際における動作領域とは別のメモリ領域をCPU51の動作領域として用いて命令を実行し、さらにログ領域として用いることにより、複数回の異常終了に対応することが可能となる。
【0073】
なお、解析用データ送信部140によって、それまでに不揮発性RAM56の第3領域A3、第4領域A4および第5領域A5にそれぞれ格納されていた動作に係わる情報が外部に送信されたことを条件として、図7(a)に示すように、当初に設定されていた第3領域A3を動作領域として改めて設定する。そして、その後に、通常起動が実行されると、CPU51は、第3領域A3を動作領域として用いて起動を行う。
【0074】
以上のようにして、複数回実施される特殊起動の度に、CPU51が特殊起動の前に用いられていた動作領域とは異なる領域を用いて起動を実行することによって、複数回の異常終了に終わった画像形成装置1の動作に係わる情報をそれぞれ保護している。
【0075】
また、実施形態2では、当初はプリントバッファとして機能していた小領域A41あるいは当初はスキャンバッファとして機能していた小領域A51の一部を動作領域として設定する際に、小領域A41と小領域A51とにおいて動作領域を設定する対象を特殊起動の度に交互に変更させる。このように、複数の動作領域の設定先を分散させることによって、本実施形態では、異常終了が度重なって発生した場合などにおいて、例えば一方の格納領域だけが動作領域として占められて、本来その一方の格納領域を利用する機能が損なわれないようにしている。
【0076】
さらに、本実施形態では、動作領域として一定のアドレス範囲によって区分けされた小領域を複数設定している。そして、大きいアドレスが割り振られた小領域から優先的に用い、小さいアドレスが割り振られた小領域に向かうようにしている。
本実施形態では、画像形成の対象となる画像データや読み取った読み取り画像データを小領域A41や小領域A51等のメモリ領域に格納する際には、小さいアドレスから大きいアドレスに向けてデータを格納するようにしている。そこで、上記の小領域A41や小領域A51等のメモリ領域の一部を動作領域に変更する際に、動作領域を設ける部分は、逆側の大きいアドレスが割り振られる領域から優先して設定するようにしている。そして、画像形成の機能や画像読み取りの機能ができる限り損なわれないようにしている。
【0077】
<実施形態3>
続いて、実施形態3が適用される画像形成装置1について説明する。
なお、実施形態3において、実施形態1にて説明したものと同様のものについては同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0078】
実施形態3が適用される画像形成装置1において、特殊起動を実行する際には、CPUU51は、不揮発性RAM56をシステムメモリとして使用せず、不揮発性RAM56とは別の二次記憶装置をシステムメモリとして用いる。二次記憶装置としては、図2に示すように、読み書き可能な記憶媒体としてメモリカード81やHDD装置90を用いる。
【0079】
また、実施形態3が適用される画像形成装置1では、例えばUI30に設けられる「テンキー」を押下しながら「電源スイッチ」を押下するという操作が行われた場合には、特殊起動を実行するように設定されている。
そして、実際に上記の操作が実行されると、CPU51は、ROM55からプログラムの読み出しを行い、メモリカード81やHDD装置90の初期化を実行する。そして、画像形成装置1のうち例えば少なくとも送受信部40を起動する。即ち、実施形態3が適用される画像形成装置1では、CPU51は、メモリカード81やHDD装置90などの二次記憶装置を動作領域として用いて命令を実行する。
そして、CPU51は、例えば送受信部40を介して、不揮発性RAM56が記憶する全ての情報を外部に送信させる。
【0080】
以上のように、実施形態3が適用される画像形成装置1では、特殊起動において、不揮発性RAM56のメモリ領域を用いることなく起動を実行することができ、さらに、不揮発性RAM56が記憶する情報を全て保護する。これによって、例えば、再起動を行う前の画像形成装置1の動作に係わる情報の他に、画像形成部20による画像形成の対象となる画像データや画像読取部10において読み取った読み取り画像データなどの情報も含めて全ての情報をエラーの解析のために利用することができる。
【0081】
また、実施形態3においては、FAXデータ受信直後であって印刷出力等が完了していないうちに、停電の発生や電源コードが抜かれて電源のオフが生じた場合などに、再起動前の動作に係わる情報が保護されていることで、どこまで印刷が完了していたかが判る。さらに、実施形態3が適用される画像形成装置1では、FAXにて受信したデータがプリントバッファに残されているため、FAXにて受信が完了したもの未出力の画像データを再起動後に印刷することができる。
【0082】
上述した実施形態では、CPU51が動作領域として用いるメモリ領域を不揮発性RAM56によって構成している。これによって、CPU51の動作に係わる情報状態やログ情報は、特別な操作を行うことなく不揮発性RAM56に保持される。
これに対して、CPU51が動作領域として用いるメモリ領域を揮発性のメモリによって構成した場合には、動作に係わる情報をHDD装置90などの不揮発性のメモリに待避させるためには特別の操作が必要となる。その待避には一定の時間を要するため、電源オフの動作に間に合わない場合もある。
また、特にMRAMのように読み書き速度が比較的高い不揮発性RAM56を動作領域として用いるメモリに利用することができるため、例えばフラッシュメモリのように比較的読み書き速度が低いメモリと用いる場合と比較して、CPU51による処理のパフォーマンスを低下させることなく作業を実行することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…画像形成装置、51…CPU、56…不揮発性RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに演算に用いる情報を記憶する主記憶手段と、
障害が発生した後の特殊起動の場合に、前記主記憶手段に設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する実行手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記実行手段は、前記特殊起動の場合には、前記動作領域とは異なる前記主記憶手段に設けられ動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記実行手段は、前記新たな動作領域における大きいアドレスを優先して用いることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記実行手段は、障害が発生せずに電源断したことに関する識別情報が保持されていないことを条件に、前記動作領域とは異なる動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに少なくとも前記画像形成部の制御のための演算に用いる情報を記憶する主記憶手段と、障害が発生した後の特殊起動の場合に、当該主記憶手段に設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する実行手段と、を有して、当該画像形成部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記特殊起動の場合に、前記動作領域に記憶された前記動作に係わる情報を装置外部に送信することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記主記憶手段は、前記画像形成部における画像形成の対象となる画像情報を一時的に保持するメモリ領域である画像領域を備え、
前記実行手段は、前記特殊起動の場合に、前記画像領域の少なくとも一部を動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域として用いて命令を実行することを特徴する請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像を読み取る画像読み取り部を備え、
前記主記憶手段は、前記画像読み取り部によって読み取った画像情報を一時的に保持する読取画像領域を備え、
前記実行手段は、前記読取画像領域の少なくとも一部と前記画像領域の少なくとも一部とを、動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域として前記特殊起動毎に交互に用いて命令の実行を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記主記憶手段とは別の読み書き可能な記憶媒体である二次記憶装置をさらに備え、
前記実行手段は、前記特殊起動の場合に、前記主記憶手段に設けられる動作に係わる情報を記憶する新たな動作領域を用いて命令を実行することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
コンピュータに、
読み書き可能であって記憶している情報を保持することが電源を供給しなくても可能な不揮発性メモリに演算に用いる情報を記憶する機能と、
障害が発生した後の特殊起動の場合に、前記不揮発性メモリに設けられる当該特殊起動ではない起動の場合にて動作に係わる情報を記憶する動作領域を用いないで命令を実行する機能と、
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3984(P2013−3984A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136793(P2011−136793)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】