説明

情報処理装置、通信制御方法、及びプログラム

【課題】表示デバイスを有するICカードと通信する際の信号の衝突を防ぐこと。
【解決手段】表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部と、前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と、前記通信部による前記ICカードとの間の通信が行われている間、前記発光部による光の供給を停止させ、前記発光部による光の供給が行われている間、前記通信部による通信を停止させる制御部と、を備える情報処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、通信制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RAMやROM、EEPROMなどの半導体メモリを組み込みことで、多量の情報を記録可能なICカードが広く用いられている。ICカードには、例えば、電子決済における残高情報、交通機関や娯楽施設における電子チケットの情報、ショッピングに利用されるクーポン情報など、様々な情報がリーダ/ライタを通して書込まれる。
【0003】
ICカードの利便性を向上させる技術開発の事例としては、次のようなものが挙げられる。例えば、下記特許文献1に記載のICカードによれば、カードの表面に設けられた電子ペーパーやLCDパネル等の表示デバイスにより、記録されている情報をユーザに表示することができる。また、例えば、下記特許文献2に記載のICカードによれば、太陽電池など光電変換によって生成された電力を利用して、リーダ/ライタから離れた状態でも表示デバイスに情報を表示させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−208582号公報
【特許文献2】特開2008−21176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICカードに表示機能を追加するためには、ICカードの一般的な機能を制御するICに表示デバイスを駆動するための回路を追加する必要がある。これに対し、ICカードで利用されるLSIの開発コストは高く、一般的にはセキュリティの要求も高いため開発期間も伸長する場合が多い。こうした弊害を避けるため、ICカード用のCPU以外に、表示デバイスを駆動させるための表示用のCPUを別途設け、表示用のCPUがICカード用のCPUからデータを読み出し、その読み出した情報を表示することとするのが有効である。しかし、そうした場合には、リーダ/ライタがICカードと通信している間に、表示用のCPUがICカード用のCPUにアクセスすると信号が衝突してしまい、ICカードに処理のエラーやデータの不整合などの不具合が生じることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、表示デバイスを有するICカードと通信する際の信号の衝突を防ぐことのできる、新規かつ改良された情報処理装置、通信制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部と、前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と、前記通信部による前記ICカードとの間の通信が行われている間、前記発光部による光の供給を停止させ、前記発光部による光の供給が行われている間、前記通信部による通信を停止させる制御部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0008】
また、前記制御部は、前記ICカードとの通信が終了した場合に、前記通信部からの信号送信を停止させた後に前記発光部による光の供給を開始させてもよい。
【0009】
また、前記制御部は、前記発光部による光の供給の開始又は停止から所定の待機時間が経過した後、前記通信部による通信を再開させてもよい。
【0010】
また、前記情報処理装置は、前記ICカードに表示された表示内容を撮像可能な撮像部と、前記ICカードに記録させた前記データが当該ICカードの表示機能に取り込まれたか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判定する画像処理部と、をさらに備え、前記制御部は、前記発光部による光の供給を開始させた後、前記データが前記ICカードの表示機能に取り込まれたと前記画像処理部により判定された場合に、前記通信部による通信を再開させてもよい。
【0011】
また、前記情報処理装置は、前記発光部から前記ICカードの前記電力生成手段に光を供給可能な位置であって、前記ICカードの表示部が外部から視認可能な位置に当該ICカードを保持するICカード保持部、をさらに備えてもよい。
【0012】
また、前記情報処理装置は、前記ICカードに表示された表示内容を撮像可能な撮像部と、前記撮像部により撮像された画像を前記ICカードに記録させた前記データと照合することにより、前記データの前記ICカードへの書込みが成功したか否かを判定する画像処理部と、をさらに備えてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部と、前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と、を備えた情報処理装置において、前記発光部による光の供給を停止させるステップと、前記通信部による前記ICカードとの間のデータ通信を行わせるステップと、前記通信部による通信を停止させるステップと、前記発光部による光の供給を開始させるステップと、を含む通信制御方法が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部を備えた情報処理装置を制御するコンピュータを、前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と、前記通信部による前記ICカードとの間の通信が行われている間、前記発光部による光の供給を停止させ、前記発光部による光の供給が行われている間、前記通信部による通信を停止させる制御部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る情報処理装置、通信制御方法、及びプログラムによれば、表示デバイスを有するICカードと通信する際の信号の衝突を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
1.一実施形態に係る情報処理装置の概要
2.本発明に関連するICカードの説明
2−1.ICカードの外観
2−2.ICカードの内部構成
2−3.データ構成例
2−4.ICカードによる表示処理
3.一実施形態に係る情報処理装置の構成
3−1.発光部
3−2.発光調整部
3−3.変調/復調部、無線通信部、及びアンテナ
3−4.制御部
4.一実施形態に係る書込み制御処理の流れ
5.変形例の説明
6.まとめ
【0018】
<1.一実施形態に係る情報処理装置の概要>
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の概要について説明する。
【0019】
図1及び図2は、それぞれ、一実施形態に係る情報処理装置10の一例について概略的に示した模式図である。また、各図には、情報処理装置10との間で通信可能なICカード20も示されている。
【0020】
図1を参照すると、別体に構成された情報処理部11aとICカード保持部12aとを含む据え置き型のリーダ/ライタとしての情報処理装置10aが示されている。
【0021】
情報処理装置10aにおいて、情報処理部11aには、例えば、情報処理装置10aの機能全般を制御する制御部(図示せず)などが設けられる。ICカード保持部12aは、例えば、情報処理装置10aがICカード20へ残高情報、電子チケット情報、又はクーポン情報などの任意の情報を送信して記録させ、若しくはこれら情報を読み出す際に、ICカード20を所定の位置に保持する。
【0022】
次に、図2を参照すると、一体に構成されたICカード保持部12bを含む携帯型のリーダ/ライタとしての情報処理装置10bが示されている。図2の例においても、ICカード保持部12bは、例えば、情報処理装置10bがICカード20に上述のように任意の情報を送信して記録させ、若しくはこれら情報を読み出す際に、ICカード20を所定の位置に保持する。
【0023】
なお、情報処理装置10a又は10bは、例えば、電子チケット発券機、電子決済用端末機、又は電子クーポン発券機などの任意のICカード用のリーダ/ライタであってよい。また、情報処理装置10a又は10bには、必要に応じて、情報処理装置10が外部の装置と通信するための外部通信用デバイス、又は任意の情報を紙媒体に印刷する印刷デバイス(共に図示せず)などが追加的に設けられていてもよい。以下、本明細書において特に区別する必要がない場合には、情報処理装置10a及び10bを情報処理装置10、ICカード保持部12a及び12bをICカード保持部12などと総称する。
【0024】
次に、本実施形態の前提となるICカード20について説明する。
【0025】
<2.本発明に関連するICカードの説明>
[2−1.ICカードの外観]
図3は、ICカード20の外観を示す模式図である。図3を参照すると、ICカード20は、その外観上に操作部42及び表示部60を有している。
【0026】
表示部60は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)などを用いた表示デバイスとして構成される。表示部60は、ICカード20の内部に設けられた制御部(図示せず)からの制御に基づき、ICカード20のメモリから読み出されたデータを表示する。
【0027】
操作部42は、光電変換により生ずる電位差により表示部60の表示内容を切替可能な操作手段としての役割を果たす。例えば、操作部42は、図3に示したように、セル24aからセル24hまでの8個のセルを直列接続した太陽電池の集合として構成され得る。太陽電池の1セル当たりの起電力は、負荷と受光する光量とに応じて決定される。そのため、このようなセルのいずれかをユーザが指を用いて覆い隠せば、セルごとの起電力に応じた電位差に変化が生じ、ICカード20はユーザによる操作を認識することができる。例えば、図3のセルの配置において、セル24g及びセル24hが覆い隠された場合には、ICカード20は、表示部60の表示内容をある特定の方向(例えば、「進む」など)へ切替えてもよい。また、例えば、セル24a及びセル24bが覆い隠された場合には、ICカード20は、表示部60の表示内容を逆の方向(例えば、「戻る」など)へ切替えてもよい。なお、操作部42におけるセルの配置は、かかる例に限定されない。例えば、操作部42において、上記「進む」又は「戻る」のいずれか一方向の操作のみを認識可能としてもよい。
【0028】
また、操作部42は、後にさらに説明するように、表示部60を駆動するための電力を生成する電力生成手段としての役割も果たす。
【0029】
なお、ICカード20の外観はかかる例に限定されない。例えば、操作部42又は表示部60の大きさ、位置又は向きなどは、ICカード20の利用形態に応じてどのように変更されてもよい。
【0030】
また、操作部42のセル24a〜24hの表面は、外部との接触や刺激によりキズや破砕を生じないようにするための保護フィルムにより覆われるのが好適である。その場合、保護フィルムの素材として集光性のある素材を使用することで、各セルの光電変換による起電力が上昇し、表示部60の連続表示可能時間や許容消費電力を向上させることができる。
【0031】
さらに、ICカード20は、次に説明する図4に示した内部構成を有する。
【0032】
[2−2.ICカードの内部構成]
図4は、ICカード20の構成の一例を示すブロック図である。図4を参照すると、ICカード20は、アンテナ28、ICカードモジュール30、第1電力生成部34、操作部(第2電力生成部)42、電力蓄積部44、スイッチ46、及び表示モジュール50を備える。さらに、ICカードモジュール30は、無線通信部32、変調/復調部36、カード用CPU(Central Processing Unit)38、及びカード用メモリ40を有する。また、表示モジュール50は、内部通信I/F(インタフェース)52、表示用CPU54、表示用メモリ56、デバイスドライバ58、及び表示部60を有する。
【0033】
ICカード20が信号を受信する場合、まず、アンテナ28を介して受信された電磁波は、ICカードモジュール30の無線通信部32により増幅され、変調/復調部36へ供給される。変調/復調部36は、例えば、無線通信部32から供給された変調波(ASK変調波)を包連線検波し、BPSK(Binary Phase Shift Keying)などに従って復調する。そして、変調/復調部36は、復調により得られた入力信号をカード用CPU38へ出力する。カード用CPU38は、ICカードモジュール30の動作全般を制御する。例えば、カード用CPU38は、入力信号に含まれるデータをカード用メモリ40の所定の書込み位置に記録し、又は入力信号により指定された所定のコマンドの実行結果を変調/復調部36へ出力する。カード用メモリ40は、例えばROMやフラッシュメモリなどの半導体メモリを用いて、カード用CPU38により実行されるプログラム、制御データ、及び電子チケット情報などのアプリーションデータを記録する。
【0034】
一方、ICカード20が信号を送信する場合、まず、カード用CPU38から変調/復調部36へ出力信号が出力される。出力信号には、例えば、カード用メモリ40から読み取られたデータ、又は所定のコマンドの実行結果などが含まれる。変調/復調部36は、例えば、出力信号をBPSKなどに従って変調し、さらにASK変調波を生成する。そして、変調/復調部36は、生成した変調波を無線通信部32へ出力する。無線通信部32は、変調/復調部36から入力された変調波をアンテナ28へ供給し、アンテナ28から出力信号が電磁波の輻射により送信される。
【0035】
第1電力生成部34は、例えば、アンテナ28により受信された電磁波を、アンテナ28とコンデンサ(図示せず)とにより構成されるLC回路によって共振させる。そして、第1電力生成部34は、例えば、励起した交流磁界を整流して電圧レギュレータなどで安定化させ、直流電源の電力としてICカードモジュール30へ供給する。
【0036】
一方、操作部42は、図3に関連して説明したように、光電変換により生ずる電位差に基づく操作手段であると共に、例えば太陽電池を用いた電力生成手段としての役割を有する。即ち、操作部42は、例えば、外部から受光する光(太陽光又はその他の光源から発せられる光)を光電変換して電力を生成し、生成した電力を電力蓄積部44へ供給する。
【0037】
また、操作部42は、図3に示した個々のセル24a〜24hごとの起電力に応じた電位差を検知し、ユーザによる操作を認識する。そして、操作部42は、検知した操作の内容を表す操作信号を表示用CPU54へ出力する。なお、操作信号とは、例えば、表示部60の表示内容を切替える方向として「進む」又は「戻る」を指定する信号などであってよい。
【0038】
電力蓄積部44は、例えばコンデンサなどを用いて、操作部(第2電力生成部)42から供給される電力を蓄積する。そして、電力蓄積部44は、蓄積した電力を表示モジュール50に供給し、表示モジュール50を駆動させる。さらに、電力蓄積部44は、蓄積した電力をスイッチ46に供給する。
【0039】
スイッチ46は、表示モジュール50からのICカードモジュール30へのアクセスと外部(ICカード20の外部)からのICカードモジュール30へのアクセスとを切替えるために使用され得る。但し、スイッチ46を用いた場合にも、表示モジュール50からのアクセスとICカード20の外部からのアクセスによりICカードモジュール30において信号の衝突が発生することを完全に防ぐことは困難である。一方、後に詳しく述べる本発明の一実施形態に係る通信制御方法を用いることで、ICカード20のスイッチ46を省略してコストを低減することが可能となる。
【0040】
表示モジュール50の表示用CPU54は、例えばROM(図示せず)などに記憶されているプログラムを実行し、表示モジュール50の動作全般を制御する。例えば、表示用CPU54は、内部通信I/F52を介してICカードモジュール30にアクセスし、カード用メモリ40に記録されているデータを取得する。また、表示用CPU54は、取得したデータを表示用メモリ56に表示用データとして記録させる。また、例えば、表示用CPU54は、表示モジュール50の起動時などの所定のタイミングで表示用メモリ56から表示用データを取得し、取得した表示用データを表示部60に表示させる。
【0041】
内部通信I/F52は、例えば、ICカードモジュール30が外部の装置に提供するコマンドと同等の擬似的な信号を生成することにより、表示用CPU54からICカードモジュール30へのアクセスを実現する。それにより、表示用CPU54は、カード用メモリ40に記録されているデータを取得することが可能となる。
【0042】
表示用メモリ56は、例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリを用いて、制御データ、及び表示用CPU54がカード用メモリ40から取得した表示用データなどを記録する。なお、表示用メモリ56に記録されるデータの内容については、後にさらに具体的に説明する。
【0043】
デバイスドライバ58は、表示用CPU54による制御に応じて、ICカード20に設けられた表示デバイスである表示部60を駆動する。
【0044】
表示部60は、図3に関連して説明したように、LCDなどを用いた表示デバイスとして構成される。表示部60は、例えば、表示用CPU54により表示用メモリ56から取得された表示用データを画面に表示する。
【0045】
ここまで、図3及び図4を用いて、本発明の一実施形態の前提となるICカード20の外観及び内部構成について説明した。ここでの説明から理解されるように、ICカード20のICカードモジュール30は、アンテナ28が受信した電磁波から生成された電力の供給を受けて駆動する。一方、ICカード20の表示モジュール50は、例えば図1に示した情報処理装置10などのリーダ/ライタから離れた場所にICカード20が位置していても、電力蓄積部44に蓄積された電力を利用して表示部60にデータを表示することができる。
【0046】
ここで、ICカード20において、表示モジュール50は独自のアンテナを有しない。これは、ICカード20に2つのアンテナ(即ち2つのコイル)を設けると、アンテナ間の相互作用によりICカード20の周囲に部分的に無反応点が発生し、ICカード20の通信機能に支障が生じるためである。そのため、表示モジュール50は、上述したように、外部から受信される信号と同等の擬似的な信号を内部通信I/F52を介してICカードモジュール30に与えることにより、ICカードモジュール30との通信を行う。このとき、表示モジュール50から入力される信号と外部装置からアンテナ28を介して入力される信号とが衝突すると、ICカードモジュール30において処理のエラーやデータの不整合などの不具合が生じるおそれがある。そこで、後に詳しく説明するように、リーダ/ライタとしての役割を果たす情報処理装置10に、ICカード20内での信号の衝突を回避する仕組みを設けることとする。
【0047】
なお、ここではICカード20が非接触型ICカードである例について説明したが、ICカード20は、非接触型ICカードでなくてもよい。ICカード20が接触型のICカードであった場合には、例えば、アンテナ28及び無線通信部32の代わりに、端子及び通信部がICカード20に設けられ得る。
【0048】
[2−3.データ構成例]
次に、ICカード20のカード用メモリ40及び表示用メモリ56に記録されるデータのうち、本実施形態と関連のあるデータの構成について説明する。
【0049】
(1)カード用メモリのデータ構成例
図5は、図4に示したカード用メモリ40に記録されるデータの部分的なデータ構成の一例を示す説明図である。
【0050】
図5を参照すると、カード用メモリ40のアドレスX0〜X5には表示要求データ、アドレスX6には応答制御データ、アドレスY0〜Y5以降にはアプリケーションデータ1〜アプリケーションデータMが記録されている。
【0051】
表示要求データとは、ICカードモジュール30(又は外部装置)が表示モジュール50に表示を要求するデータである。ICカードモジュール30のカード用CPU38は、外部装置からの指示に応じて、例えば、電子チケットや電子クーポンなどの任意のアプリケーションに関連する表示要求データをアドレスX0〜X5に書き込む。なお、表示要求データは、例えばテキストデータ、ビットマップデータなど、表示モジュール50の表示部60により表示可能な任意のデータであってよい。
【0052】
応答制御データとは、ICカードモジュール30から表示モジュール50への表示要求と応答とを制御するためのデータである。例えば、ICカードモジュール30のカード用CPU38は、外部装置からの指示に応じて、表示を要求するデータを表示要求データに書き込むと共に、表示モジュール50による表示要求データの取得を指示する所定のビット列を応答制御データに書き込む。また、例えば、表示モジュール50の表示用CPU54は、表示要求データの取得に成功した場合に、表示要求データの取得に成功したことを表す所定のビット列を応答制御データに書き込む。さらに、例えば、表示用CPU54は、表示要求データの取得に失敗した場合には、表示要求データの取得に失敗したことを表す所定のビット列(エラーコード)を応答制御データに書き込む。なお、例えば、エラーコードの値によってエラーの種類(データ長の不正、コマンドの不正など)を識別可能としてもよい。
【0053】
かかる応答制御データの使用により、ICカードモジュール30と表示モジュール50との間のデータ連携の状況が、外部装置と共有される。それにより、例えば、表示モジュール50による表示要求データの取得が完了するまで外部装置からの新たなデータの書込みを禁止し、ICカードモジュール30と表示モジュール50との間のデータの不整合を未然に防ぐことができる。
【0054】
アプリケーションデータ1〜アプリケーションデータMは、ICカード20により提供される様々なアプリケーションに関連する任意のデータである。アプリケーションデータ1〜アプリケーションデータMには、前述したように、例えば残高情報、電子チケット情報、又はクーポン情報などが含まれ得る。
【0055】
なお、複数のアプリケーションにより共通的に使用される可能性のある残高情報は、図5の例によらず、アプリケーションデータ1〜アプリケーションデータMとは異なる特別なアドレスに保持されていてもよい。また、カード用メモリ40には、図5に示したデータ以外のどのようなデータが保持されていてもよい。
【0056】
(2)表示用メモリのデータ構成例
次に、図6は、図4に示した表示用メモリ56に記録されるデータのデータ構成の一例を示す説明図である。
【0057】
図6を参照すると、表示用メモリ56のアドレス01にはカード識別子、アドレス02には表示制御データ、アドレス03には表示順テーブル、及びアドレスK0〜K5以降には表示用データ1〜表示用データNが記録されている。
【0058】
カード識別子は、表示モジュール50がアクセスするICカードモジュール30の個体を識別するための識別子である。通常、ICカードに外部装置がアクセスする際には、外部装置からポーリングコマンドが発行され、その応答によってカード識別子が取得される。それにより、外部装置は複数のICカードから通信相手とするICカードを識別することができる。これに対し、本実施形態では、ICカード20に搭載されるICカードモジュール30と表示モジュール50の組合せは変化しない。そこで、予め表示用メモリ56にICカードモジュール30の個体を識別するカード識別子を記録させておくことにより、ポーリング処理を省略してICカード20の消費電力の低減と処理時間の短縮を図ることができる。なお、カード識別子は、表示モジュール50がICカード20に組み込まれた後の初回の起動時にポーリングコマンドによって取得されてもよく、又は製造時に製造装置により書き込まれてもよい。
【0059】
表示制御データは、表示モジュール50による表示処理を制御するためのデータである。例えば、表示制御データには、ICカードモジュール30のカード用メモリ40内の応答制御データが格納されているメモリアドレスなどのアドレスデータが含まれ得る。
【0060】
表示順テーブルは、アドレスK0〜K5以降の表示用データ1〜表示用データNをどのような順序で表示部60に表示させるかを定義する。表示順テーブルは、例えば、表示部60に表示させる順に表示用データ1〜表示用データNのアドレス(又はブロック番号など)を列記したデータであってもよい。また、表示順テーブルに、メモリ順、日付順といった表示順の種類を定義するデータが含まれていてもよい。また、表示順テーブルには、表示部60に最初に表示させる初期表示用データのアドレスが含まれていてもよい。さらに、表示用メモリ56には、複数の表示順テーブルが記録されてもよい。その場合には、例えば表示順テーブルにシリアル番号を付しておき、表示部60へのデータの表示順を複数のパターンの中から適宜選択することができる。
【0061】
表示用データ1〜表示用データNは、それぞれ表示部60に表示され得るデータである。上述したように、表示用CPU54は、ICカードモジュール30のカード用メモリ40から取得した表示要求データを、表示用データとして表示用データ1〜表示用データNのいずれかのメモリ位置に記録させる。そして、表示用データは、表示順テーブルに従った順序で表示用CPU54に読み出され、表示部60に表示される。
【0062】
ここまで、図5及び図6を用いて、ICカード20のカード用メモリ40及び表示用メモリ56に記録され得るデータのデータ構成の一例について説明した。次に、かかるICカード20により実行される表示処理について説明する。
【0063】
[2−4.ICカードによる表示処理]
図7は、ICカード20による表示処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図7には、リーダ/ライタなどの外部装置からICカード20へデータが書込まれる書込み段階(S110)、及びICカード20の表示部60にデータが表示される表示段階(S120)を含む処理が示されている。
【0064】
図7を参照すると、まず、書込み段階S110において、外部装置は、ICカードモジュール30のカード用メモリ40から応答制御データを取得し、未だ表示モジュール50に取込まれていない表示要求データが残っていないかを確認する(S112)。ここで、未取込みの表示要求データが残っていることが応答制御データにより示されていれば、外部装置はその後の処理をキャンセルする。一方、未取込みの表示要求データが残っていなければ、外部装置からの指示に応じて、ICカードモジュール30のカード用メモリ40に表示要求データが書込まれる(S114)。なお、処理を効率的に行うためには、表示要求データに対応するアプリケーションデータをカード用メモリ40に同時に書き込むこととするのが好適である。さらに、外部装置は、カード用メモリ40の応答制御データを、表示モジュール50によるデータ取得を指示する所定のビット列に更新する(S116)。
【0065】
その後、表示段階S120に移り、ICカードの操作部(第2電力生成部)42が光を受光して表示モジュール50を駆動可能な電力が電力蓄積部44に蓄積されると、表示モジュール50が起動する(S121)。そうすると、表示モジュール50の表示用CPU54は、ICカードモジュール30にアクセスしてカード用メモリ40に記録されている応答制御データを取得する(S122)。次に、表示用CPU54は、応答制御データのビット列を参照して新しい表示要求データが書込まれているか否かを判定する(S124)。ここで、新しい表示要求データが書込まれていなければ、後続のS126及びS128の処理はスキップされる。一方、新しい表示要求データが書込まれていれば、表示用CPU54は、ICカードモジュール30にアクセスしてカード用メモリ40に記録されている表示要求データを取得し、表示用メモリ56へ書き込む(S126)。さらに、表示用CPU54は、表示要求データの取得に成功すると、カード用メモリ40の応答制御データを、表示要求データの取得に成功したことを表す所定のビット列に更新する(S128)。そして、表示用CPU54は、表示用メモリ56から表示順テーブルを読み出し(S130)、表示順テーブルに従って表示用データ1〜Nを順次表示部60に表示させる(S132)。このとき、さらに操作部42を介して表示内容の切替えを指示する操作が行われたことを検知した場合には、表示用CPU54は、表示部60に表示させている表示用データを他の表示用データに切替える。
【0066】
なお、表示モジュール50によるS122からS128までの通信処理と比較して、S130以降の表示処理には高速な処理速度は求められない。例えば、通信処理の処理速度は数十MHz程度である一方、表示処理の処理速度は数十kHz程度でよい。そのため、表示モジュール50は、S122からS128の間にのみ処理クロックを一時的に高速化することで、電力消費を節約してもよい。ICカード20は、このようにして、外部装置から書込まれたデータをユーザに表示させることができる。
【0067】
ここで、例えば書込み段階S110において、表示モジュール50からICカードモジュール30へアクセスがあった場合には、表示モジュール50からの入力信号と外部装置からの入力信号がICカードモジュール30において衝突する可能性がある。同様に、例えば表示段階S120において、外部装置から電磁波が輻射された場合にも、外部装置からの入力信号と表示モジュール50からの入力信号とがICカードモジュール30において衝突する可能性がある。このような信号の衝突を避けるために、次節より説明する本発明の一実施形態に係る情報処理装置10を外部装置として用いて、ICカード20へのデータの書込みを行う。
【0068】
<3.一実施形態に係る情報処理装置の構成>
図8は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0069】
図8を参照すると、情報処理装置10は、発光部110、発光調整部112、変調/復調部114、無線通信部116、アンテナ118、制御部120、及びメモリ122を備える。
【0070】
[3−1.発光部]
発光部110は、ICカード保持部12に保持されるICカード20に設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に、光を供給する。ここでのICカード20の電力生成手段とは、例えば図3及び図4を用いて説明したICカード20の操作部(第2電力生成部)42などに相当する。即ち、発光部110は、例えばICカード保持部12に保持されるICカード20の操作部42に光を照射可能な、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子、又は蛍光管若しくは電球などの発光器を有する。そして、発光部110は、後述する発光調整部112からの制御に応じて、ICカードの電力生成手段に光を照射し、ICカードの表示モジュールを駆動する。
【0071】
また、例えば、発光部110は、ICカードの表示部を駆動させる第1の発光パターン、及びICカードの表示部の表示内容を切替える第2の発光パターンにより、前記電力生成手段に光を供給可能であってもよい。
【0072】
図9は、情報処理装置10のICカード保持部12にICカード20が保持されている様子を示す模式図である。
【0073】
図9を参照すると、情報処理装置10のICカード保持部12にICカード20が挿入されている。このとき、ICカード20の位置は、情報処理装置10を使用するユーザにより表示部60を視認可能であって、かつ操作部42に外部からの光が届かない位置に調整されている。
【0074】
図10は、図9の方向AからICカード保持部12の内部を見た状態を示す模式図である。
【0075】
図10を参照すると、情報処理装置10のICカード保持部12に保持されているICカード20が、操作部42の配置された面(以下、操作面という)を上にして示されている。
【0076】
図10において、操作部42は、3つ操作区画42a、42b及び42cに分けられている。このうち、第1の操作区画42aは、例えば図3に示した操作部42のセル24g及びセル24hに対応する。第2の操作区画42bは、例えば図3に示した操作部42のセル24c〜セル24fに対応する。第3の操作区画42cは、例えば図3に示した操作部42のセル24a及びセル24bに対応する。
【0077】
一方、情報処理装置10のICカード保持部12の内側の、ICカード20の操作面に相対する面には、発光部110の有する複数の発光素子が配置されている。これら発光素子は、仕切り18a及び18bによって、3つの発光区画111a、111b及び111cに分けられている。このうち、第1の発光区画111aは、ICカード20の第1の操作区画42aに相対している。第2の発光区画111bは、ICカード20の第2の操作区画42bに相対している。第3の発光区画111cは、ICカード20の第3の操作区画42cに相対している。
【0078】
発光部110は、このような3つの発光区画111a、111b及び111cを有することにより、ICカード20の操作部42に所定の発光パターンで光を照射して、ICカード20の表示部60に表示される内容を切替えることができる。
【0079】
なお、図10において、仕切り18aは、第1の発光区画111aからの光が第2の操作区画42bに、及び第2の発光区画111bからの光が第1の操作区画42aにそれぞれ届かないようにする役割を果たす。同様に、仕切り18bは、第2の発光区画111bからの光が第3の操作区画42cに、及び第3の発光区画111cからの光が第2の操作区画42bにそれぞれ届かないようにする役割を果たす。
【0080】
図11は、発光部110による発光パターンと、ICカード20の操作部42により検知される操作の内容の関係について示す説明図である。
【0081】
図11を参照すると、発光パターンA〜Dの4つの発光パターンが定義されている。そのうち、発光パターンAは、第1の発光区画111a、第2の発光区画111b及び第3の発光区画111cがいずれも点灯している状態を表す。このとき、ICカード20の操作部42の全ての操作区画42a〜cに光が照射されるため、ICカード20は、操作部42により生成された電力を使用して表示部60を駆動することができる。
【0082】
次に、発光パターンBは、第1の発光区画111aが消灯し、第2の発光区画111b及び第3の発光区画111cが点灯している状態を表す。このとき、ICカード20の操作部42の第1の操作区画42aには光が照射されず、第2の操作区画42b及び第3の操作区画42cに光が照射される。即ち、ICカード20の操作部42において、セル24g及びセル24hが覆い隠されたのと同じ状態となり、ICカード20は、表示部60の表示内容を、例えば「進む」方向へ切替える。
【0083】
次に、発光パターンCは、第1の発光区画111a及び第2の発光区画111bが点灯し、第3の発光区画111cが消灯している状態を表す。このとき、ICカード20の操作部42の第1の操作区画42a及び第2の操作区画42bに光が照射され、第3の操作区画42cには光が照射されない。即ち、ICカード20の操作部42において、セル24a及びセル24bが覆い隠されたのと同じ状態となり、ICカード20は、表示部60の表示内容を、例えば「戻る」方向へ切替える。
【0084】
次に、発光パターンDは、第1の発光区画111a、第2の発光区画111b及び第3の発光区画111cがいずれも消灯している状態を表す。このとき、ICカード20の操作部42の全ての操作区画42a〜cに光は照射されない。そのため、ICカード20は、例えば電力蓄積部44に蓄積された電力が残っていなければ、表示部60を駆動することができない。
【0085】
なお、図11では、発光部110の有する発光素子を発光区画ごとに点灯又は消灯することでICカード20への光の供給が制御される例について説明した。しかしながら、ICカード20への光の供給を制御する方法は、かかる例に限定されない。例えば、各発光区画の前面にシャッターを設け、当該シャッターを開閉することにより、ICカード20への光の供給が制御されてもよい。
【0086】
また、発光部110の発光区画の数、形状及び位置、並びに仕切りの数は、ICカード20の操作部42の操作区画の数、形状及び位置等の仕様に応じて定められ得る。例えば、操作部42において「進む」操作のみを認識可能である場合には、発光部110の発光区画の数を2つ、仕切りの数を1つとしてもよい。また、例えば、情報処理装置10において、複数の異なるICカードの使用に対応するために、1つの操作について複数の発光パターンが用意されてもよい。
【0087】
図8へ戻り、情報処理装置10の論理的な構成の一例の説明を継続する。
【0088】
[3−2.発光調整部]
発光調整部112は、後述する制御部120が変調/復調部114、無線通信部116、及びアンテナ118を介してICカード20に記録させたデータを、発光部110による発光回数又は発光パターンを調整してICカード20の表示部60に表示させる。即ち、発光調整部112は、制御部120がICカード20に任意のデータを記録させた後、制御部120からICカード20のメモリ上での当該データの書込み位置(に関する情報)を取得する。次に、発光調整部112は、取得した当該書込み位置に応じて発光部110による発光回数又は発光パターンを決定する。そして、発光調整部112は、決定した発光回数又は発光パターンにより発光部110からICカード20へ光を供給させる。その結果、ICカード20の表示部60に表示される内容は、制御部120がICカード20に記録させたデータに切替えられる。それにより、ユーザは、ICカード20に書き込んだデータを、あらためて情報処理装置10からICカード20を取り出して操作することなく、ICカード20の表示部60を見て確認することができる。なお、ここで述べた発光調整部112の機能を、制御部120が直接実行してもよい。
【0089】
[3−3.変調/復調部、無線通信部、及びアンテナ]
変調/復調部114、無線通信部116、及びアンテナ118は、情報処理装置10がICカード20に所定のコマンドを送信し、及び情報処理装置10がICカード20から応答を受信するための通信モジュールの役割を果たす。
【0090】
例えば、情報処理装置10がICカード20にデータを書き込む場合、まず、制御部120から変調/復調部114へデータの書込みを指示するコマンドとデータとを含む出力信号が出力される。変調/復調部114は、例えば、出力信号をBPSKなどに従って変調し、さらにASK変調波を生成する。そして、変調/復調部114は、生成した変調波を無線通信部116へ出力する。無線通信部116は、変調/復調部114から入力された変調波をアンテナ118へ供給し、アンテナ118から出力信号が電磁波の輻射により送信される。
【0091】
また、情報処理装置10がICカード20からデータを読み取る場合、上述したデータの書込みの場合と同様に、まず、データの読み取りを指示するコマンドがICカード20に送信される。そうすると、ICカード20から所定のデータを含む応答信号が返信され、アンテナ118により受信される。そして、アンテナ118により受信された応答信号(ASK変調波)は、無線通信部116により増幅され、変調/復調部114へ供給される。変調/復調部114は、例えば、無線通信部116から供給された変調波を包連線検波し、BPSKなどに従って復調する。そして、変調/復調部114は、復調された応答信号を制御部120へ出力する。
【0092】
[3−4.制御部]
制御部120は、CPUやMPUなどの演算装置を用いて、例えばメモリ122に記録されているプログラムを実行することにより、情報処理装置10の動作全般を制御する。
【0093】
例えば、制御部120は、図7に示した書込み段階S110において、所定のデータ書込みコマンドを、変調/復調部114、無線通信部116及びアンテナ118を介してICカード20へ送信する。また、例えば、制御部120は、図7に示した表示段階S120において、発光調整部112を介して発光部110からICカード20へ光を供給させ、ICカード20の表示モジュール50を駆動する。
【0094】
ここで、制御部120は、例えば、変調/復調部114、無線通信部116及びアンテナ118を介したICカード20との間の通信が行われている間、発光部110によるICカード20への光の供給を停止させる。また、制御部120は、例えば、発光部110によるICカード20への光の供給が行われている間、変調/復調部114、無線通信部116及びアンテナ118を介したICカード20との間の通信を停止させる。また、制御部120は、例えば、ICカード20に表示要求データなどを書き込む場合には、ICカード20よるデータの記録が終了した後、まずICカード20への信号送信を停止させ、その後発光部110による光の供給を開始させる。こうした制御部120による書込み制御処理により、ICカード20内で信号が衝突して処理のエラーやデータの不整合が生じることが防がれる。
【0095】
ここで、制御部120には、ICカード20内での表示モジュール50へのデータの取込みの完了を待ってICカード20との間の通信を再開することが求められる。しかし、制御部120は、表示モジュール50へのデータの取込みを待っている間、ICカード20のカード用メモリ40の応答制御データを確認することができない。応答制御データの読み取りを指示するコマンドが信号の衝突を引き起こすことを避けるためである。そこで、制御部120は、発光部110による光の供給の開始又は停止から、例えば予め与えられる所定の待機時間が経過した後、ICカード20との間の通信を再開させる。ここでの待機時間は、例えばICカード20の表示モジュール50によるデータ取込みと表示の切替えが終了するのに十分な時間として、予め実験などにより定めることができる。また、制御部120は、後述するように、発光部110による光の供給を開始させた後、追加的に設けられる撮像手段により撮像された画像に基づいて、ICカード20との間の通信を再開させるタイミングを決定してもよい。
【0096】
メモリ122は、例えばROMやフラッシュメモリなどの半導体メモリを用いて、制御部120により実行されるプログラム、又は制御データなどを記録している。
【0097】
ここまで、図8〜図11を用いて、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成について説明した。次に、かかる構成により実行される書込み制御処理の流れの一例について説明する。
【0098】
<4.一実施形態に係る書込み制御処理の流れ>
図12は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10による書込み制御処の流れの一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、一例として、ICカード20が電子チケット情報を表示させる機能を有しており、ユーザが、リーダ/ライタである情報処理装置10を用いてICカード20に新たな電子チケットを発行する場合を想定して説明する。
【0099】
図12において、まず、例えばICカード20へのデータ書込みの指示がユーザから入力されると、制御部120は、発光調整部112に、発光部110の全ての発光素子を消灯してICカード20への光の供給を停止することを指示する(S202)。
【0100】
次に、制御部120は、ICカード20にコマンドを送信し、ICカード20のカード用メモリ40からメモリの内容を取得する(S204)。ここでのメモリの内容には、例えば、それまでに記録されている電子チケット情報、及び未取込みの表示要求データが残っていないことを確認するための応答制御データ(図7のS112参照)などが含まれる。
【0101】
次に、制御部120は、取得した電子チケット情報の内容に基づいて、新たな電子チケット情報を書き込むカード用メモリ40上の書込み位置を決定する(S206)。ここでの書込み位置は、例えば、カード用メモリ40の電子チケット情報格納領域の中の任意の空き領域を示す位置であってよい。なお、本ステップの前にカード用メモリ40に未取り込みの表示要求データが残っていた場合には、後に説明するS212〜S2216を先に実行してICカード20の表示モジュール50にデータの取り込みを完了させた後、本ステップを実行するのが好適である。また、S212〜S2216を実行しても取り込みが完了しない場合には、そのICカードは不良カードとして処理される。
【0102】
次に、制御部120は、ICカード20にコマンドを送信し、S206で決定したカード用メモリ40上の所定の書込み位置に新たな電子チケット情報を書き込む(S208)。このとき、ICカード20からは、新たな電子チケット情報の書込みが成功したか否かのステータスを含む応答が返される。
【0103】
次に、制御部120は、電子チケット情報の書込みに成功すると、ICカード20のカード用メモリ40に、発行した電子チケット情報に関して表示させたいデータを表示要求データとして書き込むと共に、応答制御データを所定のビット列に更新する(S210)。なお、本フローチャートのS210は、図7を用いて説明したICカード20による表示処理のうちS114及びS116に相当する。そして、制御部120は、変調/復調部114、無線通信部116、及びアンテナ118からICカード20への信号送信を停止させる(S212)。
【0104】
その後、制御部120は、発光調整部112に、ICカード20への光の供給を指示する(S214)。このとき、発光調整部112は、制御部120から取得した新たな電子チケット情報の書込み位置に応じて発光回数と発光パターンとを決定し、その発光回数と発光パターンとに応じて、発光部110からICカード20へ光を供給させる。例えば、カード用メモリ40上の電子チケット情報書込み領域の中のm番目の位置が書込み位置であって、ICカード20の表示モジュール50は電子チケット情報を単純にメモリ順に表示させるものと仮定する。その場合、発光調整部112は、例えば図11に示した発光パターンAによる発光の後、発光パターンBと発光パターンAによる発光を交互にm回繰り返す。なお、発光調整部112は、例えば制御部120がICカード20から取得した表示順テーブルの内容を取得し、当該表示順テーブルの内容に応じて発光回数と発光パターンとを決定してもよい。
【0105】
ICカード20への光の供給が開始されると、ICカード20の電力蓄積部44に電力が蓄積され、表示モジュール50が起動される。そして、表示用CPU54により、カード用メモリ40の表示要求データが表示用メモリ56に取込まれる。さらに、ICカード20の表示部60には、ICカード20に書き込まれたデータが表示される。そして、ユーザは、ICカード20の表示モジュール50に新たな電子チケット情報が正常に取込まれていることをICカード20の表示部60を見て確認する。
【0106】
その後、制御部120は、例えば予め実験などにより定められた所定の待機時間が経過すると、ICカード20との間の通信を再開する(S216)。それにより、例えば、制御部120は、ICカード20のカード用メモリ40の応答制御データを読み取って、ICカード20の表示モジュール50によるデータの取込みが正常に終了したか否かを確認することができる。
【0107】
なお、S216において、例えばICカード20の操作部42における電位差のサンプリングの遅延などを原因として、ICカード20の表示部60の表示内容が適切な回数だけ切替えられないというエラーが生じる可能性もある。その場合に備えて、例えば情報処理装置10に設けられるキーボードやボタン、スイッチなどのユーザインタフェースを介して、ユーザがさらに所定の発光パターンでの発光部110からの光の供給を指示可能なように情報処理装置10が構成されてもよい。そうすることにより、上記のようなエラーが生じた場合にも、ユーザは、補助的な指示を行って、ICカード20を情報処理装置10から取り出すことなく、データの書込み結果を確認することができる。
【0108】
<5.変形例の説明>
本実施形態に係る情報処理装置10は、例えば、以下に説明する変形例のように構成されてもよい。
【0109】
図13は、本実施形態に係る情報処理装置10の一変形例の構成を示すブロック図である。図13を参照すると、情報処理装置10は、図8に示した全てのブロックに加えて、撮像部130及び画像処理部132を備える。
【0110】
撮像部130は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を用いて、ICカード20の表示部60に表示された表示内容を撮像することができる。また、撮像部130は、撮像により得た画像を画像処理部132へ出力する。
【0111】
画像処理部132は、撮像部130から入力された画像を情報処理装置10がICカード20に記録させたデータと照合することにより、ICカード20へのデータの書込みが成功したか否かを判定する。例えば、画像処理部132は、ICカード20に書き込んだデータから生成した画像イメージと撮像画像との間の一致/不一致をパターンマッチングにより判定してもよい。また、例えば、画像処理部132は、撮像画像から抽出した文字情報とICカード20に書き込んだデータとを比較して一致/不一致を判定してもよい。画像処理部132による上記判定の結果は、例えば、図1又は図2に示した情報処理装置10の画面に表示されることができる。それにより、データ書込み結果のユーザによる目視での確認が不要となり、ユーザにとっての利便性は向上する。
【0112】
また、画像処理部132は、撮像部130により撮像された画像に基づいて、制御部120がICカード20に記録させたデータの表示モジュール50への取り込みが終了したか否かを判定してもよい。例えば、画像処理部132は、ICカード20の表示部60の表示内容が変化したことを、時系列で撮像された複数の画像を比較することにより判定することができる。そして、制御部120は、画像処理部132により表示モジュール50へのデータの取り込みが終了したと判定された後に、待機させていたICカード20との間の通信を再開させてもよい。そうすることで、通信の待機時間を予め実験などにより定めておくことが不要となる。
【0113】
<6.まとめ>
ここまで、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10について説明した。本実施形態に係る情報処理装置10の主な特徴は次の通りである。
【0114】
本実施形態によれば、情報処理装置10は、ICカード20と通信可能な通信部(変調/復調部114、無線通信部116、及びアンテナ118)と、ICカード20の操作部42に光を供給可能な発光部110とを備える。そして、情報処理装置10の制御部120は、ICカード20との間の通信が行われている間、発光部110からの光の供給を停止させる。また、制御部120は、ICカード20に発光部110から光が供給されている間、ICカード20への信号送信を停止させる。それにより、ICカードモジュール30に表示モジュール50と情報処理装置10が同時にアクセスしてICカード20による処理のエラーやデータの不整合が生じることを防ぐことができる。
【0115】
なお、本明細書にて説明した上記以外の情報処理装置10の特徴も、本実施形態に係る情報処理装置10により提供される処理の安全性の向上や利便性の向上などのメリットに寄与していることは言うまでもない。
【0116】
また、本明細書において説明した情報処理装置10又はICカード20による一連の処理は、ハードウェアで実現されてもよく、又はソフトウェアで実現されてもよい。一連の処理又はその一部をソフトウェアで実行させる場合には、例えば、ソフトウェアを構成するプログラムが予めROMに格納され、実行時にRAMに読み込まれてCPUにより実行される。
【0117】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0118】
例えば、図12を用いて説明した一実施形態に係る書込み制御処理を、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って実行しなくてもよい。各処理ステップは、並列的あるいは個別に独立して実行される処理を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】一実施形態に係る情報処理装置の一例を概略的に示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る情報処理装置の他の例を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明に関連するICカードの外観の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に関連するICカードの構成の一例を示すブロック図である。
【図5】カード用メモリに記録されるデータの部分的なデータ構成の一例を示す説明図である
【図6】表示用メモリに記録されるデータのデータ構成の一例を示す説明図である。
【図7】本発明に関連するICカードによる表示処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【図8】一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】一実施形態に係る情報処理装置にICカードが保持されている様子を示す模式図である。
【図10】ICカードが保持されている様子を図9の方向Aから見た模式図である。
【図11】発光部の発光パターンについて説明するための説明図である。
【図12】一実施形態に係る情報処理装置による書込み制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】一変形例に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0120】
10 情報処理装置
12 ICカード保持部
18a,18b 仕切り
110 発光部
111a〜111c 発光区画
112 発光調整部
116 無線通信部
120 制御部
130 撮像部
132 画像処理部
20 ICカード
24a〜24h セル
42 操作部
42a〜42c 操作区画
60 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部と;
前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と;
前記通信部による前記ICカードとの間の通信が行われている間、前記発光部による光の供給を停止させ、前記発光部による光の供給が行われている間、前記通信部による通信を停止させる制御部と;
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ICカードとの通信が終了した場合に、前記通信部からの信号送信を停止させた後に前記発光部による光の供給を開始させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発光部による光の供給の開始又は停止から所定の待機時間が経過した後、前記通信部による通信を再開させる、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報処理装置は、
前記ICカードに表示された表示内容を撮像可能な撮像部と、
前記ICカードに記録させた前記データが当該ICカードの表示機能に取り込まれたか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判定する画像処理部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記発光部による光の供給を開始させた後、前記データが前記ICカードの表示機能に取り込まれたと前記画像処理部により判定された場合に、前記通信部による通信を再開させる、
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、
前記発光部から前記ICカードの前記電力生成手段に光を供給可能な位置であって、前記ICカードの表示部が外部から視認可能な位置に当該ICカードを保持するICカード保持部、
をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記ICカードに表示された表示内容を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を前記ICカードに記録させた前記データと照合することにより、前記データの前記ICカードへの書込みが成功したか否かを判定する画像処理部と、
をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部と、前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と、を備えた情報処理装置において:
前記発光部による光の供給を停止させるステップと;
前記通信部による前記ICカードとの間のデータ通信を行わせるステップと;
前記通信部による通信を停止させるステップと;
前記発光部による光の供給を開始させるステップと;
を含む、通信制御方法。
【請求項8】
表示機能を有するICカードに設けられた電力生成手段であって光電変換により電力を生成する当該電力生成手段に光を供給する発光部を備えた情報処理装置を制御するコンピュータを:
前記ICカードとの間でデータを送受信する通信部と;
前記通信部による前記ICカードとの間の通信が行われている間、前記発光部による光の供給を停止させ、前記発光部による光の供給が行われている間、前記通信部による通信を停止させる制御部と;
として機能させるための、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−140185(P2010−140185A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314798(P2008−314798)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】