説明

情報処理装置および情報処理装置の起動方法

【課題】低温環境下においてバッテリ動作により起動可能な情報処理装置および情報処理装置の起動方法を提供する。
【解決手段】電源スイッチ107は、電源スイッチ101がONにされた後に、第1の温度検出部108により補助記憶装置105の温度を検出し、補助記憶装置105の温度が所定の第1判定温度T1未満の場合に、ヒータユニット102の電源をONにして補助記憶装置105の加熱を開始する。そして、ヒータユニット102の電源をONにした後に、第1の温度検出部108により検出された補助記憶装置105の温度が第1判定温度T1以上で、かつ、第2の温度検出部109により検出されたバッテリ103の温度が所定の第2判定温度T2以上の場合に、ヒータユニット102を除いてCPU104を含むシステムへの電力の供給を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および情報処理装置の起動方法に関する。さらに詳しくは、低温環境下で起動可能な情報処理装置および低温環境下で情報処理装置を起動する情報処理装置の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、携帯型ノートパソコン等では、充電を繰り返しながら利用できる電池が格納されるバッテリパックを備え、AC(Alternating Current)電源のない場所であってもバッテリから電力を供給することで、システム本体を動作させている。
【0003】
ここで、上記携帯型ノートパソコン等の情報処理装置を寒冷地等の低温環境下で使用する場合、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置、バッテリ、およびCPU(Central Processing Unit)をはじめとする内部機器の温度の低下が原因となって、低温起動不良が生じる場合がある。例えば、一般的なHDDは、0度を下回るような低温環境での動作は保証されていない。また、バッテリは、低温環境下では内部抵抗が上昇する。そのため、バッテリは、出力できる電力が低下し、それ以上の電力を要求されると電圧がドロップするため、起動することができない。かかる現象は、バッテリの残量が少ないほど陥りやすい。このため、寒冷地仕様の携帯型ノートパソコン等の中にはヒータユニットを搭載し、電源スイッチをONにすると同時にヒータユニットを起動させ、これにより補助記憶装置であるHDDやバッテリ、CPU等を加熱する機構が採用されている。
【0004】
図4は、従来の情報処理装置の低温環境下における起動方法の一例を示している。図4に示されるように、従来の起動方法によれば、電源スイッチがONにされた後に(ステップS201)、システムが起動される(ステップS202)。その後、HDDの温度を検出し(ステップS203)、所定の温度(図4では5℃の場合を例示)未満の場合に(ステップS203)、ヒータユニットがONに制御される(ステップS204)。すなわち、HDDの温度を検出する前に、BIOS(Basic Input/Output System)等のシステムやCPUや液晶ディスプレイ等の起動が同時に開始される。そのため、十分加熱されていない低温状態のバッテリから消費される電力は大きいものとなる。この場合、図5に示されるように、バッテリの電圧がドロップして、HDDに保存されているオペレーティングシステム(OS)を起動できない事態が生じる。もっとも、従来の携帯型ノートパソコン等は、現在求められる性能よりも低い性能であったため、システム起動時に要する電力等が現在のものよりも格段に低い。そのため、かかる起動方法であっても問題を生じない場合があった。しかしながら、携帯型ノートパソコン等の性能の向上により、その内部装置が要する電力等が増加したため、かかる起動方法では、充分にオペレーティングシステムを低温環境下で起動することが困難となりつつある。
【0005】
そこで、特許文献1には、温度限界が低い装置の電源を最初に投入し、装置内の温度が温度限界の最も高い装置の動作可能温度になったと判定された後に、温度限界の最も高い装置の電源を投入する情報処理装置の低温起動方式が開示されている。また、特許文献2には、電池温度が所定の値以下の場合は、電源制御部にて補助記憶装置とバックライトを除く各部に電力を供給し、次に補助記憶装置に電源を供給し、スピンアップした後にバックライトに電力を供給する携帯情報処理装置が開示されている。このように、低温環境下では一部の装置の電力を制限することによって情報処理装置の起動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−68820号公報
【特許文献2】特開2000−222081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の起動方式は、単に各装置が起動できる温度になったときに順次起動するだけのものであり、バッテリの状態を考慮したものではない。従って、低温状態のバッテリでは、各装置から要求される電力に対応できない場合も考えられる。また、特許文献2の情報処理装置では、バッテリが動作可能になった時点で、補助記憶装置に電力を供給する。そのため、補助記憶装置が動作可能温度に達していない場合には、補助記憶装置がスピンアップする際に故障する恐れがあり、また故障しない場合でも、補助記憶装置に保存されているオペレーティングシステムを起動できない、という問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、低温環境下においてバッテリ動作により起動可能な情報処理装置および、低温環境下においてバッテリ動作により情報処理装置を起動することができる情報処理装置の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報処理装置は、電源スイッチと、ヒータユニットと、バッテリと、CPUと、補助記憶装置と、電源コントローラとを備えた情報処理装置であって、補助記憶装置の温度を検出する第1の温度検出部と、バッテリの温度を検出する第2の温度検出部と、を備え、電源コントローラは、電源スイッチにより当該情報処理装置の電源がONにされた後に、第1の温度検出部により検出された補助記憶装置の温度が所定の第1判定温度T1未満の場合に、ヒータユニットの電源をONにして補助記憶装置の加熱を開始させ、ヒータユニットの電源をONにした後に、第1の温度検出部により検出された補助記憶装置の温度が第1判定温度T1以上で、かつ、第2の温度検出部により検出されたバッテリの温度が所定の第2判定温度T2以上となる場合に、ヒータユニットを除いてCPUを含むシステムへの電力の供給を開始する。
【0010】
本発明は、かかる構成を採用することにより、低温環境下においてバッテリ動作により起動可能な情報処理装置を提供することができる。
【0011】
上記電源コントローラは、さらに、第1の温度検出部により検出された補助記憶装置の温度が第1判定温度T1以上で、かつ、第2の温度検出部により検出されたバッテリの温度が第2判定温度T2以上の場合に、システムへの電力の供給を開始する前に、ヒータユニットの電源をOFFにすることが好ましい。
【0012】
本発明は、かかる構成を採用することにより、バッテリが起動可能であるか適切に判断することができるとともに、システムに電力を供給する前にヒータユニットの電源をOFFにすることにより、余分な電力の消費を阻止することができる。また、ヒータユニットをONし補助記憶装置を加熱していく際の放熱を有効に利用することで、低温環境においてもオペレーティングシステムを起動することができる。
【0013】
上記電源コントローラは、さらに、システムへの電力の供給の開始後、第2の温度検出部により検出されたバッテリの温度が所定の第3判定温度T3未満、あるいは、第1の温度検出部により検出された補助記憶装置の温度が所定の第4判定温度T4未満の場合に、ヒータユニットの電源をONにすることが好ましい。
【0014】
本発明は、かかる構成を採用することにより、必要に応じてヒータユニットを再起動することができ、仮にバッテリ等の内部機器が再度低温となった場合に加熱することができる。そのため、バッテリの電圧等がドロップすることがなく、安定にオペレーティングシステムを起動することができる。
【0015】
また、上記ヒータユニットは、起動電圧が互いに異なる複数のヒータを備え、上記電源コントローラは、バッテリまたは補助記憶装置の加熱を行う場合に、複数のヒータの中で、起動電圧が低い側のヒータを選択して電源をONにすることが好ましい。
【0016】
かかる構成を採用することにより、起動電圧の低いヒータのみを起動して、起動時に要する電圧を最小限としながら補助記憶装置等を効率よく加熱することができる。
【0017】
また、上記電源コントローラは、上記CPUの動作周波数と液晶ディスプレイのバックライト輝度の少なくとも一方を制限することが好ましい。
【0018】
かかる構成を採用することにより、効率よくバッテリの放電を促し、自己発熱によるバッテリの温度上昇を効率よく行うことができる。
【0019】
また、上記ヒータユニットの電源がONにされていることをユーザに報知する報知部を備えることが好ましい。
【0020】
かかる構成を採用することにより、補助記憶装置等の内部機器を加熱している状態であることが判別しやすくなる。
【0021】
また、本発明の情報処理装置の起動方法は、低温で情報処理装置を起動する、電源スイッチとCPUと補助記憶装置とバッテリとヒータユニットとを備えた情報処理装置の起動方法であって、電源スイッチがONにされた後に、補助記憶装置の温度が所定の第1判定温度T1未満の場合に、ヒータユニットの電源をONにして補助記憶装置の加熱を開始するステップと、ヒータユニットの電源をONにした後に、補助記憶装置の温度が第1判定温度T1以上で且つバッテリの温度が所定の第2判定温度T2以上の場合に、ヒータユニットを除いてCPUを含むシステムへの電力の供給を開始するステップとを実行する。
【0022】
本発明は、かかる構成を採用することにより、低温環境下においてバッテリ動作により情報処理装置を起動することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低温環境下においてバッテリ動作により起動可能な情報処理装置および、低温環境下においてバッテリ動作により情報処理装置を起動することができる情報処理装置の起動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態(第1の実施の形態)にかかる情報処理装置の構成を示す模式図
【図2】本発明の一実施形態(第1の実施の形態)にかかる情報処理装置の起動方法を示すフローチャート
【図3】本発明の一実施形態(第1の実施の形態)にかかる情報処理装置を−20℃雰囲気において、起動した場合の電流および電圧の経時変化を説明するグラフ
【図4】従来の情報処理装置の起動方法示すフローチャート
【図5】従来の情報処理装置を−20℃雰囲気において、起動した場合の電流および電圧の経時変化を説明するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、本実施の形態にかかる情報処理装置100を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態にかかる情報処理装置100の構成を示す模式図である。図2は、本実施の形態にかかる情報処理装置100の起動方法を示すフローチャートである。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態にかかる情報処理装置100は、電源スイッチ101と、ヒータユニット102と、バッテリ103と、CPU104と、ヒータユニット102により加熱される補助記憶装置であるHDD105と、液晶ディスプレイ106と、電源コントローラ107と、第1の温度検出部108と、第2の温度検出部109とを備える。なお、図1において図示を省略しているが、情報処理装置100には、主記憶装置(例えば、揮発性のメモリ)が設けられている。補助記憶装置は、例えば不揮発性のメモリであり、主記憶装置よりもデータの読み書きの速度が遅く、バックアップなど補助的に使用される。図1に示されるように、電源コントローラ107は、ヒータユニット102、HDD105、バッテリ103、CPU104、液晶ディスプレイ106、第1の温度検出部108、第2の温度検出部109に接続されている。以下、各構成について説明する。
【0027】
<電源スイッチ101について>
電源スイッチ101について説明する。電源スイッチ101は、本実施の形態にかかる情報処理装置100を起動するためのスイッチである。電源スイッチ101をONにすると情報処理装置100が起動し、電源スイッチ101をOFFにすると情報処理装置100が停止する。電源スイッチ101には、従来公知のスイッチ機構を採用することができる。
【0028】
<バッテリ103について>
バッテリ103について説明する。バッテリ103は、情報処理装置100を駆動するための駆動用電源として機能する。バッテリ103としては、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などの水溶液系電池のほかに、急速充電が可能で体積エネルギー密度および重量エネルギー密度が共に高いリチウム二次電池等の非水電解液電池を採用することができる。バッテリ103の数としては特に制限されない。情報処理装置100が、複数のバッテリ103を備えていてもよい。また、情報処理装置100が複数のバッテリ103を備える場合には、これら複数のバッテリ103を同時に使用する方式を採用してもよいし、1つのバッテリ103を主バッテリとして使用し、他のバッテリ103を予備バッテリとして使用する方式を採用してもよい。また、バッテリ103は、HDD105の近傍に設けられている。これにより、HDD105を加熱するためのヒータユニット102からの放出される熱を利用して、バッテリ103の温度も上げることができる。また、図示しないが、バッテリ103は、充電・放電時に適切な監視・制御が必要であるため、バッテリ制御基板と接続して利用される。
【0029】
<CPU104について>
CPU104について説明する。CPU104は、情報処理装置100のHDD105にあるオペレーティングシステムを含むプログラムを順に読み込んで解釈・実行するために設けられている。電源コントローラ107の制御に基づきCPU104が起動されることにより、BIOS等のシステムの起動、オペレーティングシステムの起動等が制御される。
【0030】
CPU104は、動作周波数により消費する電圧が大きく異なるため、後述する電源コントローラ107により、必要時に動作周波数が増減されるよう制御される。これにより、動作周波数が制限された状態において、バッテリ103の放熱に使用できる電圧の割合を増加させること等が可能となる。
【0031】
<ヒータユニット102について>
ヒータユニット102について説明する。ヒータユニット102は、図1に示されるように、HDD105の近傍に設けられている。ヒータユニット102は、バッテリ103とCPU104とHDD105と電源コントローラ107とが配置されるケーシングの内部空間を加熱する。ヒータユニット102は、1または複数のヒータから構成することができる。本実施の形態では、ヒータユニット102が1つのヒータから構成される場合を例に説明する。ヒータとしては、たとえばチタン酸バリウムに添加物を加えるなどしたセラミック系のPTCヒータ、低融点のポリマー中にカーボンブラックやニッケル等の導電性粒子を分散させたポリマー系のPTCヒータなどを採用することができる。ヒータユニット102は、後述する電源コントローラ107により起動が制御され、HDD105およびバッテリ103の加熱が必要な際に、これらを加熱するよう制御される。
【0032】
<第1の温度検出部108について>
第1の温度検出部108について説明する。第1の温度検出部108は、HDD105の温度を検出するために設けられている。第1の温度検出部108としては、たとえばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを使用することができる。なお、第1の温度検出部108は、サーミスタを用いた温度センサに限られず、たとえば熱電対等、他の方式の温度センサであってもよい。第1の温度検出部108は、HDD105の温度を随時検出し、検出した温度情報を後述する電源コントローラ107にフィードバックする。電源コントローラ107は、フィードバックされた温度情報を参照し、たとえばヒータユニット102の電源をONにする制御、ヒータユニット102に印加する電圧を増減する制御等を行う。
【0033】
<第2の温度検出部109について>
第2の温度検出部109について説明する。第2の温度検出部109は、バッテリ103の温度を検出するために設けられている。第2の温度検出部109としては、第1の温度検出部108と同様に、たとえばNTCサーミスタを使用することができる。なお、第2の温度検出部109は、サーミスタを用いた温度センサに限られず、たとえば熱電対等、他の方式の温度センサであってもよい。第2の温度検出部109は、バッテリ103の温度を随時検出し、検出した温度情報を後述する電源コントローラ107にフィードバックする。電源コントローラ107は、フィードバックされた温度情報を参照し、たとえばヒータユニット102の電源のONとOFFとを切り替える制御等を行う。
【0034】
<液晶ディスプレイ106について>
液晶ディスプレイ106について説明する。液晶ディスプレイ106は、システムの起動状態等を表示するために設けられている。液晶ディスプレイ106としては、従来公知のディスプレイを採用することができ、たとえば透過型液晶ディスプレイ106等を使用することができる。透過型液晶ディスプレイ106は、バックライトと呼ばれる面状照明装置(面状光源)を備え、そのバックライトからの照明光を液晶パネルによって空間変調して画像を形成する。
【0035】
<電源コントローラ107について>
電源コントローラ107について説明する。電源コントローラ107は、たとえば後述する図2に示されるフローチャートに沿って、電源スイッチ101がONにされた後に、情報処理装置100に備えられる内部機器の起動を制御するために設けられている。電源コントローラ107は、図2に示されるフローチャートを実行するようプログラムが組まれている。電源コントローラ107は、LSIなどの集積回路や、専用の信号処理回路を用いて1チップ化したものによって実現される。なお、本実施の形態では、LSIと記載しているが、LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法は、LSIに限定されるものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSIの製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【0036】
<その他の内部機器について>
なお、本実施の形態にかかる情報処理装置100には、上記内部機器以外にも、その他の内部機器としてDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ等の情報記憶媒体の読取装置、グラフィックボード、冷却ファン等を設けることができる。
【0037】
以下、本実施の形態の情報処理装置100の起動方法について説明する。本実施の形態にかかる情報処理装置100は、図2に示されるように、電源スイッチ101がONにされると(ステップS101)、ステップS102においてHDD105の温度が所定の第1判定温度T1未満であるか否かが判定される。ステップS102では、電源コントローラ107が、第1の温度検出部108を制御する。第1の温度検出部108は、HDD105の温度を検出する。そして、第1の温度検出部108により検出された温度(第1の検出温度)が第1判定温度T1未満の場合に電源コントローラ107は、ヒータユニット102の電源をONにする(ステップS103)。第1判定温度T1は、たとえばHDD105の動作保証温度の下限値(例えば、5℃)である。続いて、第1の検出温度が第1判定温度T1未満と判定された結果、ヒータユニット102の電源がONに設定されている第1加熱期間は、ヒータユニット102によりHDD105が加熱されていることがユーザに判るよう、情報処理装置100の筺体表面にユーザに視認可能に設けられた報知部(表示部)(図示せず)においてLEDが点灯する(ステップS104)。報知部はLEDに限定されない。報知部には、各種照明装置を採用することができる。報知部は、バッテリ103をヒータユニット102によって加熱するための第2加熱期間(後述)と区別するために、点滅周期にバリエーションを設けたり、点灯する色光を変更したりしてもよい。つまり、第1加熱期間と第2加熱期間とで、報知部の点滅周期を異ならせてもよいし、報知部が発光する光の色を異ならせてもよい。
【0038】
第1の温度検出部108は、経時的にHDD105の温度を検出し、電源コントローラ107に温度情報(第1の検出温度)をフィードバックする。電源コントローラ107は、フィードバックされた温度情報としての第1の検出温度が第1判定温度T1以上の場合に、ステップS105へ移行し、バッテリ103の温度が所定の第2判定温度T2未満であるか否かを判定する。ステップS105では、電源コントローラ107により第2の温度検出部109が制御される。第2の温度検出部109は、バッテリ103の温度を検出する。第2の温度検出部109により検出された温度(第2の検出温度)が第2判定温度T2未満の場合、電源コントローラ107はヒータユニット102の電源をONに維持する(ステップS106)。第2判定温度T2は、たとえばバッテリ103の動作保証温度の下限値(−15℃)である。続いて、ステップS105の判定の結果、ヒータユニット102の電源がONに設定されている第2加熱期間は、ヒータユニット102によりバッテリ103が加熱されていることがユーザに判るよう、情報処理装置100の筺体表面にユーザに視認可能に設けられた報知部(表示部)においてLEDが点灯する(ステップS107)。報知部は、LEDに限定されない。報知部には、各種照明装置を採用することができる。報知部は、上記したHDD105をヒータユニット102が加熱している第1加熱期間と区別するために、点滅周期にバリエーションを設けたり、点灯する色光を変更したりしてもよい。なお、本実施の形態では、第1加熱期間と第2加熱期間とで同じ報知部を使用しているが、第1加熱期間に使用する第1の報知部が設けられている箇所とは異なる箇所に、第2加熱期間に使用する第2の報知部を設けてもよい。
【0039】
第2の温度検出部109は、経時的にバッテリ103の温度を検出し、電源コントローラ107に温度情報(第2の検出温度)をフィードバックする。電源コントローラ107は、フィードバックされた温度情報としての第2の検出温度が第2判定温度T2以上の場合に、ステップS108へ移行し、ヒータユニット102の電源をOFFとするよう、ヒータユニット102のヒータ電源制御部(図示省略)を制御する。すなわち、バッテリ103の温度が第2判定温度T2以上に加熱された場合には、バッテリ103はバッテリ103そのものによる放熱や、すでに加熱されたHDD105からの放熱により、BIOS等のシステムを起動するために充分な温度雰囲気となっていると考えられる。そのため、ヒータユニット102の電源をOFFとする。この場合、電源コントローラ107により、ヒータユニット102を除きCPU104を含むシステム(CPU104を用いて情報処理を行うシステムなど)の電源がONにされ(ステップS109)、CPU104が動作を開始する。本実施の形態では、ステップS108においてヒータユニット102の電源をOFFにするため、ステップS109においてシステムの電源をONにする時点で、ヒータユニット102の電源がONになっていない。よって、システムの起動時の消費電力が過大となるおそれが少なく、システムの起動が正常に行われないおそれを低減させることができる。さらに、液晶ディスプレイ106には、たとえばウェイトメッセージが表示される(ステップS110)。なお、ステップS109において電源がONにされるシステムには、HDD105を含んでいてもよいし、HDD105を含んでいなくてもよい。
【0040】
本実施の形態における情報処理装置100は、特に低温の環境下で起動する場合には、第2の温度検出部109を用いてバッテリ103の温度が第2判定温度T2以上であると検出され、液晶ディスプレイ106にウェイトメッセージを表示された後であっても、再度HDD105の温度が第1判定温度T1未満に低下したり、バッテリ103の温度が第2判定温度T2未満に低下したりする可能性がある。その場合、第2の温度検出部109は、経時的にバッテリ103の温度を検出して、検出した温度情報を電源コントローラ107にフィードバックする。この場合、第2の温度検出部109により検出された温度が所定の第3判定温度T3未満の場合(ステップS111)、電源コントローラ107は、そのヒータ再起動部によりヒータユニット102の電源を再度ONにする(ステップS112)。第3判定温度T3としては、たとえば−12℃である。ヒータユニット102の電源がONにされた場合、上記の通り、報知部においてLEDが点灯する(ステップS113)。その後、第1の温度検出部108は、経時的にHDD105の温度を検出し、検出したHDD105の温度が所定の第4判定温度T4未満であるか否かが検出される。第4判定温度T4は、たとえば、第1判定温度T1と同じ5℃である。第1の温度検出部108により検出された温度が第4判定温度T4未満の場合には(ステップS114)、ヒータユニット102の電源をONにし続けるとともに(ステップS115)、報知部においてLEDが点灯する。
【0041】
一方、第1の温度検出部108により検出された温度が第4判定温度T4以上の場合には、かかる温度情報が電源コントローラ107にフィードバックされるとともに、ステップS111へ移行し、電源コントローラ107は、第2の温度検出部109からバッテリ103の温度情報のフィードバックを受ける。
【0042】
その結果、バッテリ103の温度が第3判定温度T3以上になるまで再度加熱された場合には、ヒータユニット102の電源はOFFにされるとともに(ステップS116)、報知部には起動準備が完了したことを報知するよう、S116よりも以前の準備段階での点灯方法とは異なる方法によりLEDが点灯される(ステップS117)。CPU104は、その後、オペレーションシステム(OS)の起動を開始する(ステップS118)。
【0043】
図3は、−20℃雰囲気において、本実施の形態の情報処理装置100を起動した場合の電流および電圧の経時変化を説明するグラフである。図3に示されるように、本実施の形態にかかる情報処理装置100においては、ヒータユニット102のみをONとし、その後、上記システム、OSを起動した場合であっても、バッテリ103の電圧はドロップしないことが判る。
【0044】
本実施の形態にかかる情報処理装置100において、電源コントローラ107は、CPU104の動作開始する際に、CPU制御部104aによりCPU104の動作周波数を制限してもよい。例えば、電源コントローラ107は、ステップS109における上記システムの電源をONにした時点から、ステップS118におけるOS起動開始の時点まで、CPU104の動作周波数の制限を行う(具体的には、情報処理装置100の起動時にヒータユニット102を起動しない場合に比べて低い動作周波数に設定する)。また、電源コントローラ107は、ディスプレイにウェイトメッセージ等が表示される際に、液晶ディスプレイ制御部106aによりディスプレイのバックライト輝度を制限してもよい。例えば、電源コントローラ107は、ステップS110における上記ウェイトメッセージ等の表示を開始した時点から、ステップS117における通常のLED表示を開始する時点まで、バックライト輝度の制限を行う(具体的には、情報処理装置100の起動時にヒータユニット102を起動しない場合に比べて低いバックライト輝度に設定する)。このように、制御回路が内部機器を制御することにより、効率よくバッテリ103の放電を促し、自己発熱によるバッテリ103の温度上昇を効率よく行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、1つのヒータを備えるヒータユニット102において、または、複数のヒータを備えるヒータユニット102においてすべてのヒータの電源を同時にONまたはOFFにする場合を例に説明した。しかし、ヒータユニット102の制御は、本実施の形態に限定されない。たとえば、複数のヒータを備えるヒータユニット102において、複数のヒータのうちの1つを、起動時に最初に電源をONにするヒータとして制御してもよい。これにより、起動時に要する電圧を低く維持しながらHDD105等を効率よく加熱することができる。特に、複数のヒータを備えるヒータユニット102において、起動電圧が互いに異なるヒータが存在する場合は、電源コントローラ107により制御されるヒータユニット102のヒータ起動制御部により、起動電圧の低いヒータのみをONにするように制御すれば、起動時に要する電圧を最小限とすることができ、より効率的である。
【0046】
また、本実施の形態では、バッテリ103が起動可能であるか適切に判断することができるとともに、ヒータユニット102の電源をOFFにすることにより余分な電力を消費することがなく、すでにHDD105が充分に加熱されている場合には、HDD105からの放熱を有効に利用してオペレーティングシステムを起動することができる観点から、HDD105の温度が第1判定温度T1未満であるかどうかを判定した後に、第1判定温度T1以上の場合にバッテリ103の温度を第2の温度検出部109が検出する場合について説明した。しかし、本実施の形態はこれに限定されない。たとえば、電源スイッチ101がONにされた後に、まず、バッテリ103の温度が第2判定温度T2未満であるかどうかを第2の温度検出部109により検出し、第2判定温度T2以上の場合にHDD105の温度を検出してもよい。
【0047】
また、液晶ディスプレイ106にウェイトメッセージを表示した後に、再度バッテリ103温度が第3判定温度T3未満に低下した場合と、HDD105の温度が第4判定温度T4未満に低下した場合に、ヒータユニット102の電源を再度ONにする場合を例に説明した。しかし、かかる構成は必須ではなく、上記システムがONにされたと同時にOSの起動を開始してもよい。
【0048】
このように、HDD105が最初に動作可能温度に達するようにすることにより、HDD105の故障を防ぎ、HDD105に記憶されているOSを起動させることができ、結果的に、低温環境下でのシステムの起動時間を短縮することができる。
【0049】
上記実施形態において、第1判定温度および第4の判定温度は、HDD105の動作保証温度の下限値を基準に決定した値であればよく、その下限値に対して、例えばプラスマイナス5℃の範囲の値を使用できる。また、第2判定温度は、バッテリ103の動作保証温度の下限値を基準に決定した値であればよく、その下限値に対して、例えばプラスマイナス5℃の範囲の値を使用できる。なお、第3判定温度は、第2判定温度以上の温度であればよいし、第4判定温度は、第1判定温度以上の温度であればよい。
【0050】
以上、本実施の形態にかかる情報処理装置100によれば、低温環境下においてバッテリ103動作により起動可能な情報処理装置100を提供することができる。
【0051】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の情報処理装置および情報処理装置の起動方法によれば、低温環境下においてバッテリ動作により起動可能な情報処理装置を提供することができるため、たとえば、寒冷地で使用されることを想定した携帯型ノートパソコン等の分野で好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 情報処理装置
101 電源スイッチ
102 ヒータユニット
103 バッテリ
104 CPU
104a CPU制御部
105 HDD(補助記憶装置)
106 液晶ディスプレイ
106a 液晶ディスプレイ制御部
107 電源コントローラ
108 第1の温度検出部
109 第2の温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源スイッチと、ヒータユニットと、バッテリと、CPUと、補助記憶装置と、電源コントローラとを備えた情報処理装置であって、
前記補助記憶装置の温度を検出する第1の温度検出部と、
前記バッテリの温度を検出する第2の温度検出部と、を備え、
前記電源コントローラは、前記電源スイッチにより当該情報処理装置の電源がONにされた後に、前記第1の温度検出部により検出された前記補助記憶装置の温度が所定の第1判定温度T1未満の場合に、前記ヒータユニットの電源をONにして前記補助記憶装置の加熱を開始させ、前記ヒータユニットの電源をONにした後に、前記第1の温度検出部により検出された前記補助記憶装置の温度が前記第1判定温度T1以上で、かつ、前記第2の温度検出部により検出された前記バッテリの温度が所定の第2判定温度T2以上となる場合に、前記ヒータユニットを除いて前記CPUを含むシステムへの電力の供給を開始することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記電源コントローラは、さらに、前記第1の温度検出部により検出された前記補助記憶装置の温度が前記第1判定温度T1以上で、かつ、前記第2の温度検出部により検出された前記バッテリの温度が前記第2判定温度T2以上の場合に、前記システムへの電力の供給を開始する前に、前記ヒータユニットの電源をOFFにすることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記電源コントローラは、さらに、前記システムへの電力の供給の開始後、前記第2の温度検出部により検出された前記バッテリの温度が所定の第3判定温度T3未満、あるいは、前記第1の温度検出部により検出された前記補助記憶装置の温度が所定の第4判定温度T4未満の場合に、前記ヒータユニットの電源をONにすることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ヒータユニットは、起動電圧が互いに異なる複数のヒータを備え、
前記電源コントローラは、前記バッテリまたは前記補助記憶装置の加熱を行う場合に、複数のヒータの中で、起動電圧が低い側のヒータを選択して電源をONにすることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記電源コントローラは、前記CPUの動作周波数と液晶ディスプレイのバックライト輝度の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ヒータユニットの電源がONにされていることをユーザに報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
電源スイッチとCPUと補助記憶装置とバッテリとヒータユニットとを備えた情報処理装置の起動方法であって、
前記電源スイッチがONにされた後に、前記補助記憶装置の温度が所定の第1判定温度T1未満の場合に、前記ヒータユニットの電源をONにして前記補助記憶装置の加熱を開始するステップと、
前記ヒータユニットの電源をONにした後に、前記補助記憶装置の温度が前記第1判定温度T1以上で、かつ、前記バッテリの温度が所定の第2判定温度T2以上の場合に、前記ヒータユニットを除いて前記CPUを含むシステムへの電力の供給を開始するステップとを実行することを特徴とする情報処理装置の起動方法。
【請求項8】
前記補助記憶装置の温度が前記第1判定温度T1以上で且つ前記バッテリの温度が前記第2判定温度T2以上の場合に、前記システムへの電力の供給を開始するステップを実行する前に、前記ヒータユニットの電源をOFFにするステップを実行することを特徴とする請求項7記載の情報処理装置の起動方法。
【請求項9】
前記システムへの電力の供給の開始後、前記バッテリの温度が所定の第3判定温度T3未満、あるいは前記補助記憶装置の温度が所定の第4判定温度T4未満の場合に、前記ヒータユニットの電源をONにするヒータ再起動ステップを実行することを特徴とする請求項7記載の情報処理装置の起動方法。
【請求項10】
前記ヒータユニットは、起動電圧が互いに異なる複数のヒータを備え、
前記バッテリまたは前記補助記憶装置の加熱を行う場合に、複数のヒータの中で、起動電圧が低い側のヒータを選択して電源をONにすることを特徴とする請求項7記載の情報処理装置の起動方法。
【請求項11】
前記CPUの動作周波数と液晶ディスプレイのバックライト輝度の少なくとも一方を制限するステップを実行することを特徴とする請求項7記載の情報処理装置の起動方法。
【請求項12】
前記ヒータユニットの電源がONにされていることをユーザに報知するステップを実行することを特徴とする請求項7記載の情報処理装置の起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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