説明

情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法

【課題】フラッシュROMの書き換え処理において、アドレスマップを変更しても変更に対応した正しい書き換えプログラムによって、書き換え処理が行われるような情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法を提供する
【解決手段】フラッシュROM書換部310は、書き換えプログラムに指定されたマップ情報及び機種情報と、フラッシュROM311に記憶されたマップ情報及び機種情報とが一致しているかどうかを判断し、一致している場合には書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピュータからの指示に応じて動作する情報処理装置およびその制御方法に係り、特にフラッシュROMの書き換えを行う情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやスキャナ等のホストコンピュータと通信可能に接続された周辺機器には、印刷機構や用紙送り機構、画像読み取り機構等の各種ハードウェアの制御を行うためのファームウェアが組み込まれている。一般にファームウェアは周辺機器の内部に設けられた不揮発性のメモリであるフラッシュROM内に格納されている。
【0003】
一般に、フラッシュROMは、各種ハードウェアの制御を行うための基本プログラムであるファームウェアが格納された基本プログラム領域と、基本プログラムを更新プログラムへ書き換えるプログラムが格納された書き換えプログラム領域と、プリンタ電源投入時の状態に応じて基本プログラムまたは書き換えプログラムのいずれかをメインメモリへ読み出すIPL(Initial Program Loader)が格納されたIPL領域と、を備えている(特許文献1参照)。これらの領域は予め規定されているアドレスマップに基づいて配置された領域であって、基本プログラムを書き換える際には、ホストコンピュータからダウンロードされた更新プログラムを基本プログラム領域へ書き込むようになっている。ここでアドレスマップとは周辺機器の制御部が各種データを読み出す際に指定するアドレスの割り当て表のようなもので、どのアドレスにどんなデータが格納されているかを示すものである。
【0004】
ところで、これらの領域の配置を変更したい場合、つまりアドレスマップを変更する必要がある場合には、一度フラッシュROMに格納されたデータを全て消去したり、フラッシュROM自体を新たに交換した後、新たに規定したアドレスマップに基づいて、各領域にホストコンピュータからダウンロードした更新プログラム、書き換えプログラム及びIPLが書き込まれる。このような場合、アドレスマップを変更する毎にそれに対応した正しい書き換えプログラム及びIPLがダウンロードされなければならない。
【0005】
このように、アドレスマップを変更して、変更毎に書き換えプログラム及びIPLをホストコンピュータからダウンロードする場合には、ホストコンピュータ側には、変更前のアドレスマップに対応した書き換えプログラムやIPLプログラムが変更後もそのまま保持されていることが多い。
【0006】
【特許文献1】特開2001−51844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ホストコンピュータから変更後のアドレスマップに対応した書き換えプログラム等をダウンロードしたつもりが、誤って、変更前のアドレスマップに対応した書き換えプログラムやIPL等をダウンロードしてしまう場合が生じる。この場合、変更前のアドレスマップにしたがって書き込まれたデータの上に、変更後のアドレスマップにしたがって書き換えプログラム等が書き込まれてしまうためプログラムが破壊されてしまう。プログラムが破壊された状態では機器自体を起動させることができず再度フラッシュROMのデータを全て消去したり、交換する等の対応をとらなければならない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フラッシュROMの書き換え処理において、アドレスマップを変更しても変更に対応した正しい書き換えプログラムによって、書き換え処理が行われるような情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の手段によって達成される。
(1) 画像の印刷出力または取得を行う画像処理部と、プログラム及び前記プログラムの実行時に参照される設定値が記録されたフラッシュROMと、前記プログラムに応じて、前記画像処理部を制御する画像制御部と、を備え、ホストコンピュータからの指示に応じて動作する情報処理装置であって、
前記ホストコンピュータから書き換えプログラムを受信する受信部と、
前記書き換えプログラムに応じて、前記フラッシュROMの書き換えを実行するフラッシュROM書換部を備え、
前記フラッシュROMには、該フラッシュROM内のデータの記憶パターンを示すマップ情報が記憶されており、
前記フラッシュROM書換部は、前記書き換えプログラムに指定されたマップ情報と、前記フラッシュROMに記憶されたマップ情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする情報処理装置。
(2) 前記フラッシュROMには、前記情報処理装置の機種を示す機種情報が記憶されており、
前記フラッシュROM書換部は、前記書き換えプログラムに指定された機種情報と前記フラッシュROMに記憶された機種情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする(1)に記載の情報処理装置。
(3) 画像の印刷出力または取得を行う画像処理部と、プログラム及び前記プログラムの実行時に参照される設定値が記録され、内部のデータの記憶パターンを示すマップ情報を備えたフラッシュROMと、前記プログラムに応じて、前記画像処理部を制御する画像制御部と、を備え、ホストコンピュータからの指示に応じて動作する情報処理装置のフラッシュROM書換方法であって、
前記ホストコンピュータから書き換えプログラムを受信し、
前記書き換えプログラムに指定されたマップ情報と、前記フラッシュROMに記憶されたマップ情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする情報処理装置のフラッシュROM書換方法。
(4) 前記フラッシュROMには、前記情報処理装置の機種を示す機種情報が記憶されており、
前記書き換えプログラムに指定された機種情報と前記フラッシュROMに記憶された機種情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする(3)に記載の情報処理装置のフラッシュROM書換方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法によれば、フラッシュROM内に記憶されたマップ情報と、書き換えプログラムに指定されたマップ情報とが一致した場合にのみフラッシュROM書換部が書き換え処理を行うように構成されている。したがって、情報処理装置のマップ変更があった場合でも、ホストコンピュータから送信された書き換えプログラムが変更後のマップに対応しているかどうかをマップ情報の一致不一致によって判断することができる。一致しない場合は、書き換え処理を行わないので間違った書き換えプログラムによってフラッシュROMが書き換えられることがなく、プログラムが破壊される虞がない。
【0011】
また、本発明の情報処理装置及び情報処理装置のフラッシュROM書換方法によれば、フラッシュROM内に記憶されたマップ情報及び機種情報の少なくとも何れか一方と、書き換えプログラムに指定された情報とが一致した場合にフラッシュROM書換部が書き換え処理を行うように構成されている。したがって、ホストコンピュータに複数機種の情報処理装置の書き換えプログラムが保持されている場合でも、異なる機種の書き換えプログラムによってフラッシュROMが書き換えられることなく、プログラムが破壊されないので書き換え処理後も情報処理装置を正常に起動させることが可能である。また、ホストコンピュータと複数機種の情報処理装置が接続された状態で各情報処理装置のマップが変更された場合でも、夫々の情報処理装置はマップ情報と機種情報が一致しない限り書き換え処理を行わないので、複雑なネットワーク環境下においても正確に個々の情報処理装置の書き換え処理を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる情報処理装置の実施形態の一例としてプリンタを挙げて詳細に説明する。なお、本実施形態のプリンタ240は、ホストコンピュータ220とネットワークを介して通信可能に接続され、ホストコンピュータ220から送信される制御コマンドまたは印刷データに応じて印刷を行うインクジェット式のプリンタである。
【0013】
図1は、本実施形態のプリンタの内部処理を示した機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ240は画像の印刷を行う画像処理部307と、ファームウェア(プログラム)及びファームウェアの実行時に参照される各種設定値が記録されたフラッシュROM311と、ファームウェアに従って、画像処理部307を制御する画像制御部306と、を備えている。
【0014】
またホストコンピュータ220は、図示していないが、CPUと、不揮発性メモリであるROMと、揮発性メモリであるRAMと、大規模記憶装置としてのHDDと、入力装置と、通信インタフェースとを備えている。ホストコンピュータ220は、CPUがHDDに記憶されたオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行しながら、通信インタフェースを介してプリンタ240に各種コマンドや印刷データを出力することにより、プリンタ240を制御する。
【0015】
フラッシュROM書き換え処理の観点では、入力装置を介して書き換え処理が指示されると、CPUがHDDから書き換え指示に応じた書き換えプログラムを読み出し、通信インタフェースを介してプリンタ240へ書き換えプログラムを送信する。
【0016】
(フラッシュROMの書換処理の構成)
本実施形態のプリンタ240は、ホストコンピュータ220から書き換えプログラムを受信すると、受信した書き換えプログラムによって正常な書き換えを行うことができるかを判断し、正常な書き換えを行うことができると判断したときに、フラッシュROM311の書き換えを行うように構成されている。
【0017】
以下では、正常な書き換えを行うことができるかどうかを、プリンタ240がどのように判断してフラッシュROM311の書き換えを行うかを説明する。
プリンタ240内には、ホストコンピュータ220から送信される各種コマンドや印刷データを受信する受信部301と、受信部301が受信した各種コマンドや印刷データを一時的に保持する受信バッファ302が設けられている。受信バッファ302によって受信されたデータは、コマンド解析部303によって解析され、制御コマンドの場合は制御コマンドバッファ304に、印刷データの場合には印刷バッファ305にDMA転送等により転送される。
【0018】
印刷バッファ305に一時保存された印刷データは、データ展開処理が行われてデータ変換され、最終的には図示せぬ印刷ヘッドのノズル列に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファ305に記憶される。一方、制御コマンドバッファ304に一時保存された制御コマンドデータは、主制御部308によって読み出されて、当該制御コマンドに応じた処理が実行される。
【0019】
画像処理部307は、印刷ヘッドや用紙搬送機構等の画像印刷を行う際に駆動される機械的構成部分である。主制御部308によって印刷コマンドが読み出されると、用紙搬送機構によって用紙を搬送しながら、印刷ヘッドのノズル列から印刷バッファに保存されたドットパターンデータに応じたインクが吐出される。
【0020】
画像制御部306は、主制御部308によって印刷コマンドが読み出されると、フラッシュROM311に記憶されたファームウェアにしたがって、画像処理部307を駆動させる。
【0021】
フラッシュROM311は、書き換え可能な不揮発性メモリである。本実施形態では、フラッシュROM311内のデータの記憶パターンを示すマップ情報とプリンタの機種を示す機種情報が記憶されている。ここでマップとは、プリンタ240内の主制御部308が各種データを読み出す際に指定するアドレスの割り当て表のようなもので、どのアドレスにどんなデータが記憶されるかを示すものである。そして、マップ情報とはマップ毎に定められた名称のようなものである。具体的なマップ情報及び機種情報については後ほど説明する。
【0022】
フラッシュROM書換部310は、ホストコンピュータ220から書き換えプログラムを受信することによって構成される制御部であって、ホストコンピュータ220から送信された書き換えプログラムに応じてフラッシュROM311の書換処理を実行する。また、書き換えプログラムを受信したときに、フラッシュROM311に記憶されているマップ情報及び機種情報に基づいて、フラッシュROM311を書き換えてもよいかどうかを判断する。
【0023】
次に、図2を参照して、プリンタ240におけるフラッシュROM書換処理について詳細に説明する。図2はプリンタ240により構成されるフラッシュROM書換処理を説明するためのフローチャートである。
本実施形態では、ホストコンピュータ220から送信されたコマンドがコマンド解析部303により書き換えコマンド(書き換えプログラム)であると解析されると(ステップS11)、フラッシュROM書換部310が構成される。フラッシュROM書換部310は、書き換えプログラムに指定されたマップ情報及び機種情報と、フラッシュROM311に記憶されたマップ情報及び機種情報とが一致しているかどうかを判断する(ステップS12)。
【0024】
ここで、具体的なマップ情報及び機種情報について説明する。マップ情報のフォーマットは"MAP"+ASCII2桁数字、ASCII2桁数字は"01"〜"FF"まで有効とし、例えばマップ毎に"MAP01", "MAP02"・・・として設定されている。機種情報はプリンタ240の具体的な機種名、例えば"XX-R600", "XX-R100"等である。
【0025】
フラッシュROM書換部310は、書き換えプログラムに指定されたマップ情報"MAP01"及び機種情報" XX-R600"と、フラッシュROMに記憶されたマップ情報"MAP01"及び機種情報" XX-R600"とが一致している場合には書き換えプログラムに応じて書き換えを実行する(ステップS12:Yes)。一方、書き換えプログラムに指定されたマップ情報"MAP01"及び機種情報" XX-R600"と、フラッシュROMに記憶されたマップ情報"MAP02"及び機種情報" XX-R100"と一致していない場合には書き換えを行うことなく終了する(ステップS12:No)
【0026】
なお、本実施形態ではマップ情報及び機種情報から書き換え可能かどうかを判断しているが、何れか一方の情報のみから判断してもよい。また、本実施形態ではマップ情報および機種情報をそれぞれ別個の情報としてフラッシュROM311の所定の領域に記憶されているが、マップ情報及び機種情報とを一つの情報として記憶させて、書き換えプログラムにマップ情報及び機種情報を指定させるように構成することも可能である。
【0027】
このように、本実施形態ではホストコンピュータから書き換えプログラムを受信する毎に書き換えプログラムがマップ情報及び機種情報と一致しているかを判断するので、誤ったマップにしたがって書き換えプログラムが書き込まれることがなく、また異なる機種の書き換えプログラムが誤って書き込まれることがないのでフラッシュROM311に書き込まれたデータが破壊されることを防止することが可能である。さらに、実際にフラッシュROM書換部310が書き換えを行う前にマップ情報及び機種情報を照らし合わせるだけで、書き込み可能かを判断するので複雑な判断を必要としない。したがって、書き換え時間を短縮することができ、書き換え途中の電源断等によるリスクを小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態のプリンタの内部処理を示した機能ブロック図である。
【図2】本実施形態のプリンタにより構成されるフラッシュROM書換処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
220 ホストコンピュータ
240 プリンタ(情報処理装置)
301 受信部
306 画像制御部
307 画像処理部
310 フラッシュROM書換部
311 フラッシュROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の印刷出力または取得を行う画像処理部と、プログラム及び前記プログラムの実行時に参照される設定値が記録されたフラッシュROMと、前記プログラムに応じて、前記画像処理部を制御する画像制御部と、を備え、ホストコンピュータからの指示に応じて動作する情報処理装置であって、
前記ホストコンピュータから書き換えプログラムを受信する受信部と、
前記書き換えプログラムに応じて、前記フラッシュROMの書き換えを実行するフラッシュROM書換部を備え、
前記フラッシュROMには、該フラッシュROM内のデータの記憶パターンを示すマップ情報が記憶されており、
前記フラッシュROM書換部は、前記書き換えプログラムに指定されたマップ情報と、前記フラッシュROMに記憶されたマップ情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記フラッシュROMには、前記情報処理装置の機種を示す機種情報が記憶されており、
前記フラッシュROM書換部は、前記書き換えプログラムに指定された機種情報と前記フラッシュROMに記憶された機種情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
画像の印刷出力または取得を行う画像処理部と、プログラム及び前記プログラムの実行時に参照される設定値が記録され、内部のデータの記憶パターンを示すマップ情報を備えたフラッシュROMと、前記プログラムに応じて、前記画像処理部を制御する画像制御部と、を備え、ホストコンピュータからの指示に応じて動作する情報処理装置のフラッシュROM書換方法であって、
前記ホストコンピュータから書き換えプログラムを受信し、
前記書き換えプログラムに指定されたマップ情報と、前記フラッシュROMに記憶されたマップ情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする情報処理装置のフラッシュROM書換方法。
【請求項4】
前記フラッシュROMには、前記情報処理装置の機種を示す機種情報が記憶されており、
前記書き換えプログラムに指定された機種情報と前記フラッシュROMに記憶された機種情報とが一致している場合には前記書き換えプログラムに応じて書き換えを実行し、一致していない場合には書き換えを行わないことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置のフラッシュROM書換方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−200156(P2007−200156A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19876(P2006−19876)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】