説明

情報担体及びこれを用いた吸出し検知システム並びに吸出し検知方法

【課題】堤防や護岸などにおいて、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動などを迅速かつ容易に検知する。
【解決手段】地中に埋設される少なくとも1以上の情報担体と、該情報担体が備えている識別情報を地中外から無線により読取る検知装置とを備えてなる吸出し検知システムを用いて、前記情報担体を少なくとも1個以上地中に埋設し、前記吸出し検知システムにおける検知装置により当該地中に埋設されている情報担体との間で情報の送受信を行い、検知装置の判定手段が行う比較判定処理によって、各情報担体の移動状況を把握する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に空洞が発生してしまうような地中における土の移動状況を把握するシステムと方法に関する。特に、前記のような、地中における土の移動状況を把握するべく地中に埋設することに適した無線ICタグ利用の情報担体と、これを利用して、地中における土の移動状況を把握する吸出し検知システムと吸出し検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海岸等に面した堤防や護岸は、例えば、海岸等側から陸地側に向かって、消波ブロック、ケーソンと順に設置し、更に、ケーソンの陸側に裏込土を入れて構築される。このケーソンの陸側に入れられた裏込土の上が路面舗装、等されることもある。
【0003】
ところが、波浪、干満等による海岸等の水面の上下動による圧力変動その他により、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることがある。このような吸出しによってケーソンの陸側に空洞が発生すると堤防崩壊につながるおそれが高くなる。また、ケーソンの陸側に入れられた裏込土の上が路面舗装、等されて道路に形成されている場合、前記のような吸出しによってケーソンの陸側に空洞が発生すると道路の路面下(すなわち、地中)に空洞が発生し、道路陥没につながるおそれが高くなる。
【0004】
そこで、裏込土の防砂シートによる被覆や薬剤投入による固化等の対策がとられている。しかし、これらの対策によっても、波浪、干満等による海岸等の水面の上下動による圧力変動その他により、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出される現象を未然に防止することは容易ではない。このため、道路陥没などが生じることを未然に防止すべく、路面下の点検を行う必要がある。
【0005】
そこで点検作業員が目視により路面に発生する窪みやクラックの有無を調査して、裏込土流出や、空洞の発生を点検しているが、裏込土流出や空洞の発生初期を発見することは困難である。また、広域点検の必要から車上からの目視点検がほとんどであるため発見率は低いものとなっている。その上、点検作業員の確保には費用と手間を要するものの、人手による点検は一律でなく、さらに夜間の点検が困難という問題もある。
【0006】
そこで、上記欠点を解消すべく地中レーダ装置を搭載した空洞探査車による点検方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−87945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の点検方法によれば、道路上を走行しながら短時間で長距離にわたる道路下(すなわち、地中)の状況を調査点検して空洞の発生を検知することが可能になるとされている。
【0008】
しかし、空洞探査車は車道の路面下(すなわち、地中)の探査に用いるものであり、歩道下の地中の探査には手押し型の空洞検知装置を用いなければならず、そのため装置費用と探査費用とが高価となり、さらに探査後のデータ処理に多くの時間と労力を要することからリアルタイムに空洞探査をすることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、堤防や護岸などにおいて、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動や、空洞発生を迅速かつ容易に検知する技術の提供を目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明は、地中に埋設される情報担体であって、多面体の構造体と、該多面体の構造体の少なくとも一面に取り付けられる少なくとも1以上の無線ICタグとからなり、該無線ICタグは各無線ICタグを識別する識別情報を備えていることを特徴とする情報担体を提案するものである。
【0011】
ここで、前記多面体の構造体は六面体、例えば、正六面体とすることができる。
【0012】
また、この発明が提案する吸出し検知システムは、地中に埋設される少なくとも1以上の情報担体と、該情報担体が備えている識別情報を地中外から無線により読取る検知装置とを備えてなるものであって、前記情報担体は前記本発明のいずれかの情報担体からなり、前記検知装置は、前記情報担体と各種情報の送受信を行う送受信手段及びアンテナと、前記情報担体が備えている識別情報を記録する情報担体識別情報記録手段と、前記送受信手段により受信した前記情報担体が備えている識別情報と情報担体識別情報記録手段に記録されている前記識別情報との比較判定を行う判定手段を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
そして、この発明が提案する吸出し検知方法は、前記本発明の吸出し検知システムを用いて行なうものであって、前記本発明のいずれかの情報担体を少なくとも1個以上地中に埋設し、前記本発明の吸出し検知システムにおける検知装置により当該地中に埋設されている情報担体との間で情報の送受信を行い、前記検知装置の前記判定手段が行う比較判定処理によって、各情報担体の移動状況を把握することにより、地中における土の移動状況を把握することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の情報担体は、前述したように、多面体の構造体と、該多面体の構造体の少なくとも一面に取り付けられる少なくとも1以上の無線ICタグとからなり、該無線ICタグは各無線ICタグを識別する識別情報を備えている。例えば、三角錐のような四面体の各面の中の少なくとも一面や、直方体のような六面体の各面の中の少なくとも一面、立方体のような正六面体の各面の中の少なくとも一面に、それぞれ、一個の無線ICタグが配備されている。そして、各無線ICタグは各無線ICタグを識別する識別情報を備えている。
【0015】
この情報担体を、堤防や護岸などにおいて、ケーソンの陸側に入れられている裏込土の中に埋設しておくと、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動や、空洞発生に応じて、情報担体も沈降、回動、等する。そこで、地中外、例えば、地上に存在している無線ICタグ読取装置(リーダ/ライタ)により、多面体の構造体の少なくとも一面に取り付けられていて、それぞれ、各無線ICタグを識別する識別情報を備えている前記の無線ICタグから読取る識別情報の変動により、前記の情報担体の沈降、回動などの移動状況を把握し、これによって、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動や、空洞発生を迅速かつ容易に検知することが可能になる。
【0016】
ケーソンの陸側に入れられている裏込土の中に埋設しておき、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動や、空洞発生に応じて情報担体が沈降、回動、等した時に、情報担体を構成する多面体の一つの面に取り付けられている無線ICタグから読取る識別情報の変動により、情報担体の沈降、回動などの移動状況を把握するものであるので、無線ICタグは、多面体の少なくとも一面に取り付けられている必要があるが、読取装置による識別情報の読取に死角が生じるのを抑えるとともに、情報担体のより正確な移動状況を把握するために、多面体の各面に、それぞれ、少なくとも一個の無線ICタグ(すなわち、それぞれ、各無線ICタグを識別する識別情報を備えている無線ICタグ)が配備されている形態にすることが望ましい。
【0017】
なお、前記無線ICタグは、従来公知の無線ICタグのように、無線ICタグ読取装置(リーダ/ライタ)との間で各種情報の送受信を行う送受信部を備えており、当該送受信部で受信した電磁波により生じる誘導電流より、無線ICタグの各部に電力を供給する電源供給部を備えている形態にすることができる。このようにすると、無線ICタグ読取装置(リーダ/ライタ)から送信される電磁波を受信することにより電力を発生させ、無線ICタグに電池を備える必要がなく、また電源ケーブルの埋設も不要となる。
【0018】
本発明の吸出し検知方法は、前記のように、識別情報を記録した無線ICタグが取り付けられている多面体の構造体からなる情報担体を1個以上、地中に埋設し、地中外(例えば、地上)から、検知装置により前記の識別情報を読取り、検知装置の情報担体記録手段にあらかじめ記録されている識別情報との比較判定を行うことで、情報担体の位置の変動、情報担体の移動、情報担体の傾きの変化、等々を把握することにより、当該情報担体の位置の変動、情報担体の移動、情報担体の傾きの変化、等々を引き起こす、地中における土の移動状況を検知するものである。
【0019】
例えば、埋込土の上面に形成されている道路の下の埋込土内に、無線ICタグを取り付けた構造体からなる情報担体を上下に所定間隔で埋設することで、埋込土の流出や、空洞の発生により生じる情報担体の位置変動を容易に検知することができる。埋設する情報担体の個数は、流出するおそれのある裏込土の深さに応じて適宜定めることができる。複数個埋設することで部分的に生じる初期の空洞発生、等による位置変動を簡単かつ正確に検知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、堤防や護岸などにおいて、裏込土がケーソンの下から海岸等に吸い出されることによって生じる路面下(即ち、地中)における土の移動や、空洞発生を迅速かつ容易に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0022】
図2に示すように情報担体1は、地中に埋設されるものであって、多面体の構造体2と、当該多面体の構造体2の少なくとも一面に取り付けられる、少なくとも1個以上の無線ICタグ3とからなる。図示の実施形態では、正六面体、すなわち立方体形状の構造体2の各表面にそれぞれ1個の無線ICタグ3が貼着されている。
【0023】
構造体2は、地中に埋設されても変形しない程度の強度と耐腐食性を備えているもので、例えば、コンクリートブロック製、あるいは、合成樹脂製とすることができる。
【0024】
なお、図示の実施形態では、この無線ICタグ3を上側から覆うように、柔軟性を有する保護シート5を無線ICタグ3の上から正六面体の表面に貼着している。この保護シート5は、無線ICタグ3を地中の土石等による損傷から保護するものであり、図2図示のように、無線ICタグを覆う程度の広がりを有するものであればよく、構造体2の各面全体を覆う必要はない。
【0025】
構造体2の六面に貼着されている各無線ICタグ3に記録されている識別情報は、後述するように、貼着されている構造体2を識別するためのコード番号と、各無線ICタグ3を同一の構造体2の他の面に貼着されている無線ICタグ3と識別するためのID番号とを含んでいる。すなわち、図2図示の例では、図中、右側面に貼着されている無線ICタグ3、図中、表側面に貼着されている無線ICタグ3、図中、上側面に貼着されている無線ICタグ3は、それぞれ、図2に図示されている構造体2を識別するためのコード番号と、各無線ICタグ3に付与されているID番号とを識別情報として備えている。そして、図中、右側面に貼着されている無線ICタグ3が備えているID番号、図中、表側面に貼着されている無線ICタグ3が備えているID番号、図中、上側面に貼着されている無線ICタグ3が備えているID番号は、それぞれ、異なるものになっていて、これにより、各無線ICタグ3を識別可能になっている。
【0026】
次に、図2で説明した情報担体1と、当該情報担体1を構成する構造体2の各面に取り付けられている無線ICタグ3に記録されている識別情報を、地中外、例えば、地上から無線により読取る検知装置6とを備えてなる吸出し検知システムについて、図1の概略構成図を参照して説明する。
【0027】
図1に示すように、構造体2の六面にそれぞれ取り付けられている六個の無線ICタグ3のうち、紙面の都合上、2個の無線ICタグ3a、3bと、検知装置6とで説明する。また無線ICタグ3a、3bはその構造上、それぞれ、同一であり、記録されているID番号が唯一異なるものである。よって無線ICタグ3a、3bの構成部分は全て同じ数字を用いる。
【0028】
無線ICタグ3aは、検知装置6と無線により情報の送受信を行うアンテナ11と、各種回路からなるICチップ12とを備えている。アンテナ11は、データとしての情報の送受信のほか、後述するように検知装置6から発信される電磁波を受信し、電磁誘導により生じる電流から電源としての電力を発生させるように、コイル形状のものを使用することができる。
【0029】
図示の実施形態では、ICチップ12は、送受信回路13、記録回路15、電源供給回路16、制御回路17を備えている。送受信回路13は、検知装置6と情報を送受信するものである。記録回路15は、無線ICタグ3aの識別情報(無線ICタグ3aが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号と、無線ICタグ3aを同一の構造体2の他の面に貼着されている無線ICタグ3と識別するためのID番号)を記録するものである。電源供給回路16は、アンテナ11で受信した電磁波から電磁誘導により生じた誘導電流を整流して電源用の電力とするものである。制御回路17は、これら各回路を制御するものである。
【0030】
検知装置6は、無線ICタグ読取装置(リーダ/ライタ)としての役割を果たすものであり、図示の形態では、アンテナ21、送受信手段22、ICタグ情報記録手段23、判定手段25、表示手段26、制御手段27を備えている。
【0031】
送受信手段22は、アンテナ21を介して情報担体1と各種情報の送受信を行う、すなわち、無線ICタグ3a、3bと各種情報の送受信を行うものである。
【0032】
ICタグ情報記録手段23は、情報担体1が備えている識別情報、すなわち、各無線ICタグ3aが備えている前記の識別情報(無線ICタグ3aが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号と、無線ICタグ3aを同一の構造体2の他の面に貼着されている無線ICタグ3と識別するためのID番号)を記録する情報担体識別情報記録手段としての役割を果たすものである。
【0033】
ICタグ情報記録手段23には、各情報担体1に備えられている識別情報、例えば、後述するように、本発明の吸出し検知方法を実施するに当たって、最初に、各情報担体1を地中に埋設した時点における、各情報担体1に取り付けられている各無線ICタグ3a、3bが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号及び、各無線ICタグ3a、3bを同一の構造体2の他の面に貼着されている他の無線ICタグ3と識別するためのID番号が記録されている。
【0034】
判定手段25は、送受信手段22により受信した情報担体1が備えている識別情報、すなわち、各無線ICタグ3aが備えている前記の識別情報(無線ICタグ3aが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号と、無線ICタグ3aを同一の構造体2の他の面に貼着されている無線ICタグ3と識別するためのID番号)と、情報担体識別情報記録手段(ICタグ情報記録手段23)に記録されている前記識別情報との比較判定を行うものである。
【0035】
情報担体1と検知装置6との間で、すなわち、各無線ICタグ3a、3bと検知装置6との間で、前記のアンテナ11、送受信回路13、アンテナ21、送受信手段22を介して情報の送受信を行い、各無線ICタグ3a、3bから前記の識別情報を受信し、これを、ICタグ情報記録手段23に記録されている、前記の、本発明の吸出し検知方法を実施するに当たって、最初に、各情報担体1を地中に埋設した時点における、各情報担体1に取り付けられている各無線ICタグ3a、3bが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号及び、各無線ICタグ3a、3bを同一の構造体2の他の面に貼着されている他の無線ICタグ3と識別するためのID番号と比較し、各無線ICタグ3a、3bが取り付けられている情報担体1が、後述する本発明の吸出し検知方法を実施するに当たって、最初に、各情報担体1を地中に埋設した位置から移動しているか否か、判定するものである。
【0036】
こうして判定手段25が行った判定結果が、表示手段26に表示される。
【0037】
制御手段27はこれらの各手段が行う前述した処理動作を制御するものである。
【0038】
検知装置6は用途に応じて車載型、携帯型のいずれの形態にすることもできる。
【0039】
また上記の表示手段26は液晶画面のディスプレイの他、紙面に印刷表示するものでもよい。
【0040】
前述した検知装置6は、アンテナ21に、ICタグ情報記録手段23としてのフラッシュメモリ、判定手段25、送受信手段22、そして制御手段27としてのCPU、RAM、ROM等から構成され、ROM等に記録された所定のプログラムを作動させることで上記各手段の機能を発揮させるものとすることができる。
【0041】
次に、本発明の吸出し検知システムの動作である本発明の吸出し検知方法の実施形態について、その一例を、図3〜図6を参照して説明する。
【0042】
本発明の吸出し検知方法を実施するに当たっては、まず、裏込土33内に情報担体1を埋設する。例えば、図4図示のように、海岸31に面した護岸32の陸地側に裏込土33を構築し、ここに縦坑36を掘削し、縦坑36を利用して、裏込土33中に、鉛直方向に所定の間隔をあけて複数個(図示の例では5個)の情報担体1を埋設する。また、海岸31に面した護岸32の陸地側に裏込土33を構築する際に、図4図示のように、鉛直方向に所定の間隔をあけて複数個(図示の例では5個)の情報担体1を埋設することもできる。この構築された裏込土33の上には道路などが形成されるが、図示の例では、アスファルト等により舗装された道路35が形成されている。
【0043】
次に、本発明の吸出し検知方法においては、前記のように地中に埋められた情報担体1の無線ICタグ3に記録されている識別情報の読取りが行われる(S1)。
【0044】
図4の埋設状態では、情報担体1は所定間隔を置いて下から順に5個埋設されているので、正常状態の識別情報として、埋設後すぐに検知装置6で検知したときの各情報担体1から読取りした識別情報をそれぞれICタグ情報記録手段23に記録しておく。
【0045】
次に、あらかじめ定めた所定の期間が経過した定期検査時や、豪雨などがあって、緊急点検を行うときなどに、検知装置6を用い、前述したように、地中に埋設されている情報担体1と検知装置6との間で、すなわち、各情報担体1に取り付けられている各無線ICタグ3a、3bと検知装置6との間で、前記のアンテナ11、送受信回路13、アンテナ21、送受信手段22を介して情報の送受信を行い、各無線ICタグ3a、3bからの識別情報を受信し、これを、ICタグ情報記録手段23に記録されている、前記の、本発明の吸出し検知方法を実施するに当たって、最初に、各情報担体1を地中に埋設した時点における、各情報担体1に取り付けられている各無線ICタグ3a、3bが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号及び、各無線ICタグ3a、3bを同一の構造体2の他の面に貼着されている他の無線ICタグ3と識別するためのID番号と比較する(S2)。
【0046】
情報担体1に取り付けられている無線ICタグ3に記録されている識別情報は、各無線ICタグ3が取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号及び、各無線ICタグ3を同一の構造体2の他の面に貼着されている他の無線ICタグ3と識別するためのID番号とを含むものである。
【0047】
図5図示のように裏込土が吸い出され、地中に空洞が発生したことなどにより、情報担体1が流出、移動、あるいは回動したときは、地中外から読取った識別情報は、ICタグ情報記録手段23に記録されている、本発明の吸出し検知方法を実施するに当たって、最初に、各情報担体1を地中に埋設した時点における、各情報担体1に取り付けられている各無線ICタグ3a、3bが取り付けられている構造体2を識別するためのコード番号及び、各無線ICタグ3a、3bを同一の構造体2の他の面に貼着されている他の無線ICタグ3と識別するためのID番号と異なる結果となる。
【0048】
そこで、これによって、図5図示のように裏込土の吸出し、流出などが発生していることを簡単かつ正確に把握でいる。
【0049】
その結果、同一地点における予めICタグ情報記録手段23に記録した識別情報と、検知により受信した識別情報との間に相違があったときは、判定手段25は予め定めた判定基準に従い、裏込土の吸出し、流出、等の空洞発生の判定を行う(S3)。そしてこの判定結果は検知装置6の表示手段26に表示されることになる。
【0050】
判定基準は実験や過去のデータ等に基づいて作成されるもので、比較する識別情報の相違の程度によって、裏込土の吸出し、流出の程度や、状況、空洞発生初期、空洞発生の規模等が判定可能となるように定めることができる。
【0051】
図5は、裏込土の吸出し、流出によって空洞37が発生した状態の一例を説明する断面図である。干満や海況状況の変動によって生じる海面38の上昇・下降による圧力変動、その他の要因によって、裏込土33が海岸側に吸い出され、その結果、地中に空洞37が発生した状況の一例を説明するものである。
【0052】
裏込土33が海岸側に吸い出され、空洞37が発生したことにより、図4図示のように裏込土33内に埋設されていた複数の情報担体1が流出したり、移動したりする。そこで、この状態で、地中外から検知装置6で無線ICタグ3を読取って受信する識別情報は、図4の埋設状態で正常状態の識別情報としてICタグ情報記録手段23に記録されていた識別情報とは異なるものになる。
【0053】
そこで、これを利用して、判定手段25により、裏込土の吸出し、流出、等の空洞発生の判定を行うことができる。
【0054】
また、図4の埋設状態では、図6(a)図示のように、情報担体1から識別情報を取得できるが、図5図示のように裏込土の吸出し、流出が生じると、情報担体1は図6(b)図示のように、回転したりする。このように、図6(a)に図示されている正常時(図4の埋設状態)と、図5図示のように、裏込土の吸出し、流出が生じた状態(例えば、図6(b)図示の状態)とでは、読取対象の無線IDタグ3が相違することになり、これによって、識別番号の相違を判定し、裏込土の移動状態、流出状態などを把握することができる。
【0055】
判定の正確を期すため、検知装置6での読取は、通常、複数地点で行うこととし、ICタグ情報記録手段23に記録する識別情報も対応する複数地点で予め記録した正常時の識別情報が記録されている(S4)。例えば、道路面(図4の上側)の他に、海側(図4の左側)からの計測、検知も行うものとする。
【0056】
このように無線ICタグ3を少なくとも一面に取り付けた多面体の構造体を備えてなる識別担体1を、1個以上地中に埋設し、無線ICタグ3に記録された識別情報を読取り、その変動により地中の変動、即ち、裏込土の移動状態、吸出し、流出状態、空洞発生を検知することができるので、人手による空洞発生検知に比べてより客観的なデータを取得できる。また夜間での探知も可能であり、さらに検知装置を車載式や携帯式等、必要に応じて使用できる。
【0057】
また、検知装置にGPS計測装置を併用し、情報担体の埋設時、即ち正常時での識別情報取得位置を関連付けて記録すると共に、検知時にもGPS計測装置を併用すれば同じ位置での識別情報を容易に取得することができる。
【0058】
更に、無線ICタグは受信した電磁波により誘導電流を発生させてこれを電力とするが、ICタグに電池を備え、常時所定時間毎に識別情報を送信する形式にすることもできる。また圧力センサ、温度センサ等を情報担体に設置し、無線ICタグからこれらのセンサが計測したデータを送信するようにしてもよい。さらにこの送信データを受信する読取装置を現地に設置し、警報等を発生するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の吸出し検知システムの一例の概略構成を説明する図。
【図2】本発明の情報担体の一例を説明する斜視図。
【図3】本発明の吸出し検知方法の一例の概略を説明する流れ図。
【図4】本発明の吸出し検知方法を実施するにあたり、本発明の情報担体を複数個裏込土の中に埋設する状態の一例を説明する断面図。
【図5】図4のように本発明の情報担体が埋設されていた裏込土に裏込土の吸出し、流出、等の事態が生じた場合の一例を説明する断面図。
【図6】(a)図4のように本発明の情報担体が埋設されている状態における識別情報読取状態を説明する図、(b)図5図示の状態になった場合における識別情報読取状態の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0060】
1 情報担体
2 構造体
3、3a、3b 無線ICタグ
6 検知装置
11 アンテナ
12 ICチップ
13 送受信回路
15 記録回路
16 電源供給回路
17 制御回路
21 アンテナ
22 送受信手段
23 ICタグ情報記録手段
25 判定手段
26 表示手段
27 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される情報担体であって、多面体の構造体と、該多面体の構造体の少なくとも一面に取り付けられる少なくとも1以上の無線ICタグとからなり、該無線ICタグは各無線ICタグを識別する識別情報を備えていることを特徴とする情報担体。
【請求項2】
前記多面体の構造体は六面体であることを特徴とする請求項1に記載の情報担体。
【請求項3】
地中に埋設される少なくとも1以上の情報担体と、該情報担体が備えている識別情報を地中外から無線により読取る検知装置とを備えてなる吸出し検知システムであって、
前記情報担体は請求項1又は2記載の情報担体からなり、
前記検知装置は、前記情報担体と各種情報の送受信を行う送受信手段及びアンテナと、前記情報担体が備えている識別情報を記録する情報担体識別情報記録手段と、前記送受信手段により受信した前記情報担体が備えている識別情報と情報担体識別情報記録手段に記録されている前記識別情報との比較判定を行う判定手段を備えていることを特徴とする吸出し検知システム。
【請求項4】
請求項3記載の吸出し検知システムを用いて行なう吸出し検知方法であって、
少なくとも1個以上の請求項1又は2記載の情報担体を地中に埋設し、
前記検知装置により当該地中に埋設されている情報担体との間で情報の送受信を行い、前記検知装置の前記判定手段が行う比較判定処理によって、各情報担体の移動状況を把握することにより、地中における土の移動状況を把握することを特徴とする吸出し検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−214896(P2008−214896A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51069(P2007−51069)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(301010607)国土交通省近畿地方整備局長 (7)
【出願人】(591063486)財団法人先端建設技術センター (4)
【Fターム(参考)】