説明

情報担体及び取引指標判定方法

【課題】金融取引を行う際の生体認証において、本人であることが確実であると判断されるような高い整合率が得られなかった場合でも、他の方法による認証を加えて本人であることの確実性を高め、取引を許可する。
【解決手段】ICカード10は、カード所持者の身体的特徴の撮像データから生成された生体情報を外部の装置から受信し、当該ICカード10の備える記憶手段から読み出した生体情報と照合して整合率を計算する。ICカード10は、算出された整合率を確認し、認証成功のしきい値以上である場合には、取引を承認する。また、整合率が認証成功のしきい値より低く、認証保留のしきい値以上である場合、さらに他の認証アルゴリズムによる認証を行わせ、その認証が成功した場合に取引を承認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報担体及び取引指標判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融決済取引機能を装備した従来のIC(Integrated Circuit)カードでは、カード所持者が登録した暗証番号(PIN:Personal Identification Number)を使用して本人確認を行っていた。しかし、PINは他人に知られてしまった場合に、成りすましができてしまう。また、多くのカード所持者は、誕生日や電話番号などの覚えやすい数字をPINとして使用しているため、ICカードが悪意を持った他の人に渡った場合に、簡単にPINを推測され、不正使用されることがあった。決済取引の正当性を確認する条件はいくつかあるが、カード所持者の確認としては通常、PINデータの照合を行っており、上記の理由から、カード所持者が本人であることを確認するまでには至らなかった。また、本人確認としてサインの確認を実施することもあるが、カードが偽造された場合には、本人に成りすました者が署名欄に署名することにより、成りすましが可能であった。
【0003】
そこで、カード所持者の生体情報を本人確認に使用する生体認証を行うことにより、このような成りすましを防ぎ、本人以外によるカード使用を困難にすることが可能となる。生体情報とは、生体から得られた情報で示されるその生体固有の特徴点をそれぞれのアルゴリズムに従って抽出したデータである。生体認証は、PINデータの照合のように完全に一致しなくても、生体情報の整合率が予め設定されたしきい値を超えれば本人と認証するものであり、つまり、整合度合いにより判断する方法である。
特許文献1には、生体認証の整合率に対して複数のしきい値を定めておき、そのしきい値に対応した金額での決済処理を許可することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−207948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体認証においては、整合率のしきい値を高く設定すると、本人でありながらなかなか認証成功に至らないこともあり、決済取引に生体認証を用いた場合、何度も生体認証を試みなければならず、取引時間も長くかかってしまうことがあった。特許文献1の技術では、生体認証の整合率が低かった場合は、整合率が高い場合よりも低い金額の取引が許可される。しかし、通常、取引したい金額には変更がないことが想定されるため、整合率が低いために取引したい金額より小額の取引のみが許可されることでは、不足金額分の取引を改めて行わなければならず、不便であることに加え、結局は取引時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金融取引を行う際の生体認証において、本人であることが確実であると判断されるような高い整合率が得られなかった場合でも、他の方法による認証を加えて本人であることの確実性を高め、取引を許可することのできる情報担体及び取引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、データメモリ部と、このデータメモリ部に対してアクセスを行うための制御部とを有し、外部端末との間でデータを送受信して、決済取引処理を行う機能を有する可搬の情報担体において、外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報とにより認証を行う生体認証部と、前記生体認証部による認証結果によって、決済取引の許可または拒否、あるいは、さらに他の認証が成功した場合に決済取引を許可のいずれかの取引指標を決定する指標判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報担体であって、前記生体認証部は、前記情報担体が外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報の整合率に応じて認証度合いを段階的に分割し、前記指標判定部は、前記生体認証部により分割された認証度合いの段階によって取引指標を決定する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の情報担体であって、前記生体認証部は、前記データメモリ部へしきい値のデータの書き込みを行うとともに、前記データメモリ部から読み出したしきい値と整合率とを比較することによって認証度合いを段階的に分割する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の情報担体であって、前記指標判定部は、前記生体認証部により分割された認証度合いの段階と、決済取引の取引金額とに応じて取引指標を決定する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、データメモリ部と、このデータメモリ部に対してアクセスを行うための制御部とを有し、外部端末との間でデータを送受信して、決済取引処理を行う機能を有する可搬の情報担体における取引指標判定方法であって、前記情報担体が、外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報とにより認証を行う生体認証過程と、前記生体認証過程における認証結果によって、決済取引の許可または拒否、あるいは、さらに他の認証が成功した場合に決済取引を許可のいずれかの取引指標を決定する指標判定過程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び5の発明によれば、高い認識率の生体情報の取得が難しいカード所持者についても、ある程度の生体認証の整合率と、他の方法での認証の組み合わせにより取引を可能とすることができるため、セキュリティを確保しながら、何度も取引に失敗する場合に比べて取引時間を短縮するここともできる。
請求項2の発明によれば、整合率に応じて決済の取引指標を段階的に分けることにより、必要に応じてPIN照合やサイン確認を実施させ、整合度合いをカバーして本人確認を強固にすることができる。
請求項3の発明によれば、整合率のしきい値を変更可能としたことにより、運用セキュリティにあった設定が可能となり、柔軟なサービスを提供することができる。
請求項4の発明によれば、小額決済取引や高額決済取引など、金額によって整合率のしきい値を分けることが可能となり、取引の重要度に応じた認証処理が実行可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の情報担体の動作概要を示す図である。情報担体は、例えば、IC(Integrated Circuit)カードなどの可搬のIC付き情報担体を用いることができる。以下では、情報担体を、ICカード10として説明する。
ICカード10は、予め内部のメモリに生体認証を行うときに用いる生体情報を記録している。生体認証は、人間の身体的特徴、例えば、指紋のパターン、虹彩のパターン、網膜のパターン、指や手のひらの静脈等の血管の配置パターン、顔の特徴などを用いた認証であり、生体情報とは、このような指紋、虹彩、網膜、血管の配置、顔などのパターンの特徴的な部分をデータ化したものである。なお、ここで用いられる生体認証の技術は、現在広く一般に使用されているものであり、その詳しい説明は省略するが、一般的に、生体認証では、怪我等による身体的特徴の変化や、身体的特徴を読み取る時の角度等によって整合率が変化する。例えば、指紋での認証の場合、個人によっては指紋の凹凸が浅いため認識しづらかったり、皮膚の乾燥によって情報の取得が難しかったりする場合がある。
【0013】
ICカード10は、スキャナやカメラなどで読み込んだカード所持者の身体的特徴、例えば、指紋、虹彩、網膜、血管の配置、顔などの撮像データから生成された生体情報を外部の装置から受信する。ICカード10は、既存の生体認証アルゴリズムにより、当該ICカード10の備えるメモリから読み出した生体情報と、受信した生体情報との整合率Xを計算する(ステップS1)。
【0014】
ICカード10は、算出された整合率Xを確認し(ステップS2)、認証成功のしきい値以上、例えば、95%以上である場合には(ステップS3)、本人認証が成功であると判断する(ステップS4)。一方、整合率Xが認証成功のしきい値より低く、認証保留のしきい値以上である場合、例えば、80%以上90%未満である場合には(ステップS5)、認証を一旦保留し(ステップS6)、さらに他の認証アルゴリズムによる認証を行わせ、その認証が成功した場合に認証成功と判断する(ステップS7)。また、整合率Xが認証保留のしきい値未満である場合、例えば、80%未満である場合には(ステップS8)、認証失敗と判断する(ステップS9)。
【0015】
図2は、ICカード10の構成を示すブロック図であり、本発明と関係する機能ブロックのみ抽出して示してある。このICカード10は、例えば、キャッシュカードなど、金融取引に用いられるICカードであるとする。
ICカード10は、制御部11、データメモリ部12、通信部13、処理部14を備え、これらはICチップにより実現される。制御部11は、CPU(central processing unit)及び各種メモリから構成され、各部の制御や、データの一時的な格納や、データの転送等を行う。データメモリ部12は、カード番号などのICカードに関する情報を示すカード情報、ICカードの認証に用いられるカード認証情報、各取引に用いる認証アルゴリズム及びその認証アルゴリズムによる認証結果に応じた取引指標を示す認証方法リスト、生体認証において認証成功、認証保留、認証失敗の判断の基準として用いられるしきい値とそのしきい値を特定するためのしきい値コード、生体認証に用いる生体情報、生体認証以外の他の認証アルゴリズムに用いる認証情報などが記録されている。例えば、カード情報、カード認証情報、認証方法リスト、生体情報、生体認証以外の他の認証アルゴリズムに用いる認証情報は、データメモリ部12内の書き換えができない領域に、しきい値とそのしきい値を特定するためのしきい値コードについては、データメモリ部12内の書き換えが可能な領域に記録する。なお、認証方法リストや前述の他の情報を、書き換えが可能な領域に記憶することでもよい。ここでは、他の認証アルゴリズムに用いられる認証情報として、PIN(personal identification number)のデータを記憶するものとする。また、ICカード10の発行時に書き込まれるカード認証情報は、例えば、当該ICカード10に固有のカード番号(クレジット番号)や有効期限を所定の暗号鍵で暗号化して生成したものを用いることができる。通信部13は、外部装置とのデータの送受信を行う。なお、データを暗号化して送受信することが望ましい。
【0016】
処理部14は、決済取引等の金融決済処理を行う取引アプリケーションを実行し、指標判定部15、生体認証部16、PIN照合部17を備える。指標判定部15は、認証方法リストを参照して、取引に対応した認証アルゴリズムを選択するとともに、選択した認証アルゴリズムに対応した認証部(生体認証部16、PIN照合部17)における認証結果に応じて取引指標を決定する。生体認証部16は、所定の生体認証アルゴリズムにより、データメモリ部12内に記憶されている生体情報と、外部から受信した生体情報とを用いた整合率を計算する。PIN照合部17は、データメモリ部12内に記憶されているPINのデータと、外部から受信したPINのデータとを用い、これらのPINが一致するかにより認証を行う。
【0017】
次に、ICカード10のデータメモリ部12が記憶する認証方法リストについて説明する。認証方法リストは、取引の種類に対応した、実行すべき認証アルゴリズムの順番と、認証アルゴリズムが認証成功、認証保留、認証失敗であった場合の取引指標とを示す。取引指標は、(1)取引承認、(2)取引拒絶、(3)次に実行すべき認証アルゴリズムのいずれかを示す。また、認証アルゴリズムが生体認証である場合には、認証成功、認証保留、認証失敗を判断するときに用いられるしきい値を特定するためのしきい値コードがさらに認証方法リストに含まれる。
【0018】
なお、認証方法リスト自体には直接しきい値が記述されておらず、しきい値コード(例えば、しきい値コードA1、A2、等)を使用しており、しきい値コードに対応したしきい値のデータは認証方法リストとは別のデータとして記憶しているため(例えば、しきい値コードA1=しきい値95%、しきい値コードA2=しきい値80%、等)、しきい値を変更したい場合は、しきい値コードに対応したしきい値の情報を書き変えるのみでよい。つまり、ICカード10の制御部11は、通信部13を介してICカードリーダライタから、しきい値コードとしきい値のデータを受信し、受信したしきい値コードに対応したデータメモリ部12内のしきい値のデータを、受信したしきい値のデータに書き換える。なお、認証方法リスト自体に直接しきい値を記述してもよいが、その場合、認証方法リスト内に記述されているしきい値の情報を、書き換えることになる。またなお、ICカード10の発行時に、カード所持者毎、あるいは、発行者毎に、設定するしきい値を変えて書き込むことでもよく、ICカード10の発行後に書き換えることも可能である。
【0019】
図3は、認証方法リストで示される取引指標について説明する図であり、ここでは、決済取引の取引指標を示している。
同図に示すように、決済取引では、最初に実行すべき認証アルゴリズムは生体認証であり、整合率95%以上の場合は、データメモリ部12内の認証情報と、外部から受信した生体情報とが同一生体関連情報であると判断し、取引承認を示す取引指標を外部装置へ出力する。また、整合率95%未満80%以上の場合は、データメモリ部12内の認証情報と、外部から受信した生体情報とがほぼ同一生体関連情報であると判断し、他の認証処理、例えば、オフラインPIN照合、オンラインPIN照合、他の生体認証、サイン等の他の認証アルゴリズムをさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨の取引指標を外部装置へ出力する。整合率80%未満の場合は、オンライン認証をさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨を示す、あるいは、取引拒絶を示す取引指標を外部装置へ出力する。
【0020】
なお、オフラインPIN照合とは、ICカード10が、カード所持者により外部端末に入力されたPINのデータと、データメモリ部12内のPINのデータとを用いてPIN照合を行う認証処理である。また、オンラインPIN照合とは、外部端末が、ネットワークを介して接続しているデータベースに記憶しているカード番号及びPINのデータと、カード所持者により外部端末に入力されたPINのデータ、及び、ICカード10から読み出したカード番号とを用いてPIN照合を行う認証である。
【0021】
図4は、ICカード10の動作フローを示す図である。なお、ここでは、外部端末として、ATM(Automatic Teller Machine)などの金融取引端末を想定する。
同図において、カード所持者が金融取引端末へICカード10を挿入する。金融取引端末は、所定の取引、あるいは、複数の提供可能な取引の中からカード所持者が選択して入力した取引のトランザクション処理を開始する。さらに、金融取引端末は、開始された取引に対応したアプリケーションの起動をICカード10へ指示する。ここでは、決済取引が選択されたものとする。ICカード10の制御部11は、金融取引端末から指示に応じて、処理部14による決済アプリケーションを起動する(ステップS105)。
【0022】
ICカード10の制御部11は、データメモリ部12からカード情報、及び、カード認証情報を読み出し、通信部13を介して金融取引端末へ送信する(ステップS110)。金融取引端末は、カード情報で示されるカード番号に対応した、認証に必要な情報を、当該金融取引端末とネットワークを介して接続されるデータベースから読み出す。金融取引端末は、ICカード10の発行時にカード認証情報が生成されたときと同様の方法により、カード情報内の情報(カード番号や有効期限等)からカード認証情報を生成し、生成したカード認証情報と、ICカード10から受信したカード認証情報とを照合して認証を行う。さらには、データベースから受信した情報で示される有効期限や、取引停止対象であるか否かなどの情報により、ICカードの正当性を確認し、ICカード10へ認証結果を通知する(ステップS115)。
【0023】
カード認証が成功であった場合、ICカード10の指標判定部15は、データメモリ部12内の認証方法リストから、取引の種類(ここでは、取引の種類は決済取引)に対応した最初の認証アルゴリズムと、認証成功、認証保留、認証失敗であった場合の取引指標とを読み出す。読み出した最初の認証アルゴリズムが生体認証を示しているため、指標判定部15は、生体認証部16へ生体認証の実行を指示する。生体認証部16は、取引の種類及び最初の認証アルゴリズムに対応した、認証成功、認証保留、認証失敗を判断する場合に用いられるしきい値を特定するしきい値コードをデータメモリ部12から読み出す(ステップS120)。
【0024】
ICカード10が、生体認証実行を金融取引端末へ通知すると、金融取引端末は、カード所持者の身体的特徴をスキャナあるいはカメラで読込み、読み込んだデータから生体情報を生成してICカード10へ出力する。ICカード10の制御部11は、通信部13を介して受信した生体情報を生体認証部16へ通知する。ICカード10の生体認証部16は、データメモリ部12内に記憶されている生体情報と、金融取引端末から受信した生体情報とを用いて整合率Xを計算する(ステップS125)。
【0025】
生体認証部16は、認証成功を判断するためのしきい値コードに対応したしきい値95%をデータメモリ部12から読み出し、算出した整合率Xが95%以上であるか否かを判断する(ステップS130)。整合率Xが95%以上である場合(ステップS130:YES)、生体認証部16は、所持者認証に成功したと判断し、指標判定部15へ認証成功を通知する(ステップS135)。指標判定部15は、認証成功であった場合の取引指標、すなわち、取引承認を示す取引指標を通知データに設定し(ステップS140)、通信部13を介して金融取引装置へ送信する(ステップS145)。金融取引装置は、取引承認を示す取引指標が設定された通知データを受信すると、ICカード10の処理部14が実行する取引アプリケーションと協働し、決済取引のトランザクション処理を継続して実行する。
【0026】
ステップS130において、整合率Xが95%未満であると判断した場合(ステップS130:NO)、生体認証部16は、認証保留を判断するためのしきい値コードに対応したしきい値80%をデータメモリ部12から読み出し、整合率Xが80%以上であるか否かを判断する(ステップS150)。整合率Xが80%以上であると判断した場合(ステップS150:YES)、生体認証部16は認証保留を指標判定部15へ通知する。指標判定部15は、認証保留に対応した取引指標から2番目に実行すべき認証アルゴリズムを取得し、データメモリ部12内の認証方法リストから、2番目に実行すべき認証アルゴリズムが認証成功、認証保留、認証失敗であった場合の取引指標を読み出す。ここでは、次の認証アルゴリズムがオフラインPIN照合であり、認証成功と認証失敗のみに対応した取引指標が認証方法リストから読み出される(ステップS155)。
【0027】
指標判定部15は、PIN照合部17へオフラインPIN照合を指示するとともに、オフラインPIN照合の実行を金融取引端末へ通知する。金融取引端末は、カード所持者からPINの入力を受け、入力されたPINのデータをICカード10へ出力する。ICカード10の制御部11は、通信部13を介して受信したPINのデータをPIN照合部17へ通知する。PIN照合部17は、データメモリ部12内に記憶されているPINのデータと、金融取引端末から受信したPINのデータとを用いてPINを照合する(ステップS160)。指標判定部15は、PIN照合部17から照合結果を受信し、照合が成功したか否かを判断する(ステップS165)。照合成功である場合(ステップS165:YES)、指標判定部15は、所持者認証に成功したと判断する(ステップS135)。指標判定部15は、オフラインPIN照合の認証成功に対応した取引指標、すなわち、取引承認を示す取引指標を通知データに設定して金融取引装置へ送信し、金融取引装置は、ICカード10の処理部14が実行する取引アプリケーションと協働し、決済取引のトランザクション処理を継続して実行する(ステップS140、S145)。
【0028】
ステップS165において、照合失敗と判断した場合(ステップS160:NO)、指標判定部15は、所持者認証の判断を保留する(ステップS170)。そして、指標判定部15は、オフラインPIN照合の認証失敗に対応した取引指標、すなわち、オンライン認証を要求する取引指標を通知データに設定して金融取引装置へ送信する(ステップS140、S145)。金融取引装置は、オンライン認証を実行し、認証が成功した場合に、ICカード10の処理部14が実行する取引アプリケーションと協働し、決済取引のトランザクション処理を継続して実行する。
【0029】
一方、ステップS180において、整合率Xが80%未満であると判断した場合(ステップS150:NO)、生体認証部16は、所持者認証に失敗したと判断し、認証失敗を指標判定部15へ通知する(ステップS180)。指標判定部15は、生体認証の認証失敗に対応した取引指標、すなわち、決済取引を拒絶する旨を示す取引指標を通知データに設定して金融取引装置へ送信し、金融取引装置は、決済取引のトランザクション処理を中止する(ステップS180、S145)。
【0030】
なお、取引の種類に加え、取引金額に応じてしきい値を変更することも可能である。この場合、ICカード10は、取引の種類及び取引金額に対応した、実行すべき認証アルゴリズムの順番と、認証アルゴリズムが認証成功、認証保留、認証失敗であった場合の取引指標と、認証アルゴリズムが生体認証である場合に用いられるしきい値を特定するためのしきい値コードとを示す認証方法リストを保持するものとする。そして、図4のステップS120において認証を実行する前までに、カード所持者へ金融取引装置に取引金額の情報を入力させ、入力された取引金額の情報をICカード10へ通知する。そして、指標判定部15はデータメモリ部12内の認証方法リストから、取引の種類及び取引金額に対応した最初の認証アルゴリズムと、認証成功、認証保留、認証失敗であった場合の取引指標とを読み出す。また、生体認証部16は、取引の種類及び取引金額に対応した、認証成功、認証保留、認証失敗を判断する場合に用いられるしきい値を特定するしきい値コードをデータメモリ部12から読み出す。ステップS125以降の処理は、図4と同様である。
【0031】
図5は、取引金額をさらに考慮した認証方法リストで示される取引指標について説明する図であり、ここでは、決済取引の取引指標を示している。
同図に示すように、5千円未満の小額の決済取引では、最初に実行すべき認証アルゴリズムは生体認証であり、整合率90%以上の場合は、取引承認を示す取引指標を出力する。また、整合率90%未満70%以上の場合は、他の認証処理、または、PIN照合をさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨の取引指標を出力する。整合率70%未満の場合は、オンライン認証をさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨の、あるいは、取引拒絶を示す取引指標を出力する。
また、5千円以上の高額の決済取引では、最初に実行すべき認証アルゴリズムは生体認証であり、整合率95%以上の場合は、取引承認を示す取引指標を出力する。また、整合率95%未満80%以上の場合は、他の認証処理、または、PIN照合をさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨の取引指標を出力する。整合率80%未満の場合は、オンライン認証をさらに行い、それが成功した場合に取引承認とする旨の、あるいは、取引拒絶を示す取引指標を出力する。
【0032】
上記実施形態によれば、それぞれの生体認証方法毎にシステムで要求される整合率を設定できるため、より管理者の認証要求に合った本人認証を実施することができる。また、生体情報の取得が難しいカード所持者についてある程度の整合率と、他の方法での認証の組み合わせにより取引を可能とすることができるため、何度も取引に失敗する場合に比べて、セキュリティを確保しながら取引時間が短縮される。
また、整合率のしきい値を変更可能としたことにより、運用セキュリティにあった設定が可能となり、柔軟なサービスが提供できる。
【0033】
上述した情報担体の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われるものであってもよい。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものである。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態による情報担体の動作概要を示す図である。
【図2】同実施形態による情報担体としてのICカードのブロック図である。
【図3】同実施形態による取引指標選択方法を示す図である。
【図4】同実施形態によるICカードの処理フローを示す図である。
【図5】同実施形態による取引金額を考慮した取引指標選択方法を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10…ICカード(情報担体)
11…制御部
12…データメモリ部
13…通信部
14…処理部
15…指標判定部
16…生体認証部
17…PIN照合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データメモリ部と、このデータメモリ部に対してアクセスを行うための制御部とを有し、外部端末との間でデータを送受信して、決済取引処理を行う機能を有する可搬の情報担体において、
外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報とにより認証を行う生体認証部と、
前記生体認証部による認証結果によって、決済取引の許可または拒否、あるいは、さらに他の認証が成功した場合に決済取引を許可のいずれかの取引指標を決定する指標判定部と、
を備えることを特徴とする情報担体。
【請求項2】
前記生体認証部は、前記情報担体が外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報の整合率に応じて認証度合いを段階的に分割し、
前記指標判定部は、前記生体認証部により分割された認証度合いの段階によって取引指標を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報担体。
【請求項3】
前記生体認証部は、前記データメモリ部へしきい値のデータの書き込みを行うとともに、前記データメモリ部から読み出したしきい値と整合率とを比較することによって認証度合いを段階的に分割する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報担体。
【請求項4】
前記指標判定部は、前記生体認証部により分割された認証度合いの段階と、決済取引の取引金額とに応じて取引指標を決定する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の情報担体。
【請求項5】
データメモリ部と、このデータメモリ部に対してアクセスを行うための制御部とを有し、外部端末との間でデータを送受信して、決済取引処理を行う機能を有する可搬の情報担体における取引指標判定方法であって、
前記情報担体が、外部端末から受信した生体関連情報と、前記データメモリ部に予め登録された生体関連情報とにより認証を行う生体認証過程と、
前記生体認証過程における認証結果によって、決済取引の許可または拒否、あるいは、さらに他の認証が成功した場合に決済取引を許可のいずれかの取引指標を決定する指標判定過程と、
を有することを特徴とする取引指標判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−80771(P2009−80771A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251374(P2007−251374)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】