説明

情報提供システム及び情報提供方法のプログラム

【課題】推定の精度が低くなることなく、推定するための処理量を小さくすることができ、ナビゲーション装置のコストを低くすることができるようにする。
【解決手段】実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段と、判定用データに基づいて渋滞の実績を判定する実績判定処理手段と、渋滞の実績の判定に基づいて、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段とを有する。渋滞の実績が判定され、計算手法の一方が選択されるので、推定の精度が低くなることなく、推定するための処理量を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システム及び情報提供方法のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、例えば、GPS(グローバルポジショニングシステム)によって車両の現在の位置、すなわち、現在地が検出されるとともに、ジャイロセンサによって検出された車両の旋回角に基づいて、車両の方位、すなわち、自車方位が検出され、データ記録部から地図データが読み出され、表示部に地図画面が形成され、該地図画面に、現在地を表す自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位が表示されるようになっている。したがって、操作者である運転者は、前記地図画面に表示された自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位に従って車両を走行させることができる。
【0003】
また、運転者が目的地を入力し、探索条件を設定すると、該探索条件に基づいて、前記地図データに従って現在地で表される出発地から目的地までの経路が探索される。そして、探索された経路、すなわち、探索経路は前記地図画面に自車位置と共に表示される。したがって、運転者は表示された探索経路に沿って車両を走行させることができる。
【0004】
ところで、ナビゲーション装置においては、過去の交通情報の実績を表す統計データに基づいて現在地から目的地までの所要時間を推定する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−303390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のナビゲーション装置においては、統計データの中から現在の交通状況と類似した交通状況を表すものを検索するパターンマッチングの手法を採用しているので、推定の精度を高くすることができるが、推定するための処理量が大きくなり、コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、前記従来のナビゲーション装置の問題点を解決して、推定の精度が低くなることなく、推定するための処理量を小さくすることができ、ナビゲーション装置のコストを低くすることができる情報提供システム及び情報提供方法のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の情報提供システムにおいては、実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段と、前記判定用データに基づいて渋滞の実績を判定する実績判定処理手段と、前記渋滞の実績の判定に基づいて、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段とを有する。
【0008】
本発明の他の情報提供システムにおいては、さらに、前記実績判定処理手段は非渋滞の時間帯があるかどうかによって渋滞の実績を判定する。
【0009】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記計算手法選択処理手段は、非渋滞の時間帯がある場合、非渋滞の時間帯について簡易的計算手法を、非渋滞の時間帯以外の時間帯について高精度計算手法を選択する。
【0010】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記計算手法選択処理手段は、非渋滞の時間帯がない場合、すべての時間帯について高精度計算手法を選択する。
【0011】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記実績判定処理手段は、判定用データの標準偏差に基づいて実績を判定する。
【0012】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記計算手法選択処理手段は、標準偏差の平均が設定値以上である場合に簡易的計算手法を選択する。
【0013】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、現況データに基づいて渋滞の状況を判定する現況判定処理手段を有する。
【0014】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記計算手法選択処理手段は、現況データの交通情報において規制が発生した場合、高精度計算手法を選択する。
【0015】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記計算手法選択処理手段は、判定用データと現況データのリンク所要時間との偏差が設定値以下である場合、簡易的計算手法を選択し、前記偏差が設定値より大きい場合、高精度計算手法を選択する。
【0016】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得手段と、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段とを有する。
【0017】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段と、前記判定用データと現況データのリンク所要時間との偏差を算出し、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び前記判定用データをそのまま交通状況を表す推定値として推定する簡易的計算手法の一方を前記偏差に基づいて選択する計算手法選択処理手段とを有する。
【0018】
本発明の更に他の情報提供システムにおいては、さらに、前記偏差が設定値以下である場合、簡易的計算手法を選択し、前記偏差が設定値より大きい場合、高精度計算手法を選択する。
【0019】
本発明の情報提供方法のプログラムにおいては、コンピュータを、実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段、前記判定用データに基づいて渋滞の実績を判定する実績判定処理手段、並びに前記渋滞の実績の判定に基づいて、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実績データのリンク所要時間に基づいて判定用データが作成され、該判定用データに基づいて渋滞の実績が判定され、該渋滞の実績の判定に基づいて高精度計算手法及び簡易的計算手法の一方が選択されるので、推定の精度が低くなることなく、推定するための処理量を小さくすることができ、ナビゲーション装置のコストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーションシステムを示すブロック図である。
【0023】
図において、14は情報端末、例えば、車両に搭載された車載装置としてのナビゲーション装置であり、該ナビゲーション装置14は、現在地を検出する現在地検出部としてのGPSセンサ15、地図データのほかに各種の情報が記録された情報記録部としてのデータ記録部16、各種のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能し、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種の演算処理を行うナビゲーション処理部17、自車方位を検出する方位検出部としての方位センサ18、操作者である運転者が操作することによって所定の入力を行うための第1の入力部としての操作部34、図示されない画面に表示された画像によって各種の表示を行い、運転者に通知するための第1の出力部としての表示部35、音声によって所定の入力を行うための第2の入力部としての音声入力部36、音声によって各種の表示を行い、運転者に通知するための第2の出力部としての音声出力部37、通信端末として機能する送受信部としての通信部38を備え、前記ナビゲーション処理部17に、操作部34、表示部35、音声入力部36、音声出力部37及び通信部38が接続される。また、前記ナビゲーション処理部17には、車速検出部としての車速センサ41も接続される。
【0024】
前記GPSセンサ15は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することによって地球上における現在地を検出し、併せて時刻を検出する。本実施の形態においては、現在地検出部としてGPSセンサ15が使用されるが、該GPSセンサ15に代えて図示されない距離センサ、ステアリングセンサ、高度計等を単独で、又は組み合わせて使用することもできる。また、前記方位センサ18としてジャイロセンサ、地磁気センサ等を使用することができる。
【0025】
前記データ記録部16は、地図データファイルから成る地図データベースを備え、該地図データベースに地図データが記録される。なお、前記データ記録部16には、所定の情報を音声出力部37によって出力するためのデータも記録される。また、前記地図データには、交差点に関する交差点データ、ノードに関するノードデータ、道路リンクに関する道路データ、探索用に加工された探索データ、施設に関する施設データ等が含まれる。
【0026】
前記ナビゲーション処理部17は、ナビゲーション装置14の全体の制御を行う制御装置としてのCPU31、該CPU31が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用される第1の記録媒体としてのRAM32、制御用のプログラムのほか、目的地までの経路の探索、経路案内等を行うための各種のプログラムが記録された第2の記録媒体としてのROM33、各種のデータ、プログラム等を記録するために使用される第3の記録媒体としての図示されないフラッシュメモリを備える。なお、前記制御装置として、CPU31に代えてMPU等を使用することもできる。
【0027】
また、前記データ記録部16は、前記各種のデータを記録するために、第4の記録媒体としてのハードディスク、CD、DVD、光ディスク等の図示されないディスクを備えるほかに、各種のデータを読み出したり、書き込んだりするための読出・書込ヘッド等の図示されないヘッドを備える。なお、前記データ記録部16に第5の記録媒体としてメモリカード等を使用することができる。
【0028】
ところで、前記ROM33に各種のプログラムを記録し、前記データ記録部16に各種のデータを記録することができるが、プログラム、データ等をハードディスク等に記録することもできる。この場合、ハードディスク等から前記プログラム、データ等を読み出してフラッシュメモリに書き込むことができる。したがって、ハードディスク等を交換することによって前記プログラム、データ等を更新することができる。また、車両に搭載された図示されない自動変速機の制御を行うために自動変速機制御装置が搭載されている場合には、該自動変速機制御装置の制御用のプログラム、データ等も前記ハードディスク等に記録することができる。さらに、通信部38を介して前記プログラム、データ等を受信し、フラッシュメモリに書き込むこともできる。
【0029】
前記操作部34は、運転者が操作することによって、走行開始時の現在地を修正したり、出発地及び目的地を入力したり、通過点を入力したり、通信部38を作動させたりするためのものであり、表示部35とは独立に配設されたキーボード、マウス等を使用することができる。また、前記操作部34として、前記表示部35に形成された画面に画像で表示された各種のキー、スイッチ、ボタン等の画像操作部をタッチ又はクリックすることによって、所定の入力操作を行うことができるようにしたタッチパネルを使用することができる。
【0030】
前記表示部35としてはディスプレイを使用することができる。そして、表示部35に形成された各種の画面に、現在地を表す自車位置、地図、探索経路、該探索経路に沿った案内情報、交通情報等を表示したり、探索経路における次の交差点までの距離、次の交差点における進行方向を表示したりすることができるだけでなく、前記画像操作部、操作部34、音声入力部36等の操作案内、操作メニュー、キーの案内を表示したり、FM多重放送の番組等を表示したりすることができる。
【0031】
また、音声入力部36は、図示されないマイクロホン等によって構成され、音声によって必要な情報を入力することができる。さらに、音声出力部37は、図示されない音声合成装置及びスピーカを備え、音声出力部37から、前記探索経路、案内情報、交通情報等が、例えば、音声合成装置によって合成された音声で出力される。
【0032】
前記通信部38は、第1の情報提供者としてのVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の図示されない道路交通情報センタから送信された各種の情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するためのビーコンレシーバ、FM放送局を介してFM多重放送として受信するためのFM受信機等を備える。そして、前記ビーコンレシーバによって、渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況情報等の交通情報を受信したり、前記FM受信機によって前記交通情報のほかに、ニュース、天気予報等の一般情報をFM多重情報として受信したりすることができる。なお、前記ビーコンレシーバ及びFM受信機は、ユニット化されてVICSレシーバとして配設されるようになっているが、別々に配設することもできる。
【0033】
前記交通情報は、情報の種別を表す情報種別データ、メッシュとしての2次メッシュを特定するための2次メッシュX、Yデータ、二つの地点(例えば、交差点)間を連結する道路リンクを特定し、かつ、上り/下りの別を表すリンク番号データ、該リンク番号データに対応させて提供される情報の内容を表すリンク情報を含み、該リンク情報は、例えば、前記道路リンクの始点から渋滞の先頭までの距離を表す渋滞先頭データ、渋滞の度合いを表す渋滞度、渋滞区間を前記渋滞の先頭から渋滞の末尾までの距離を表す渋滞長、各道路リンクの所要時間であるリンク所要時間等から成る。
【0034】
また、通信部38は、第2の情報提供者としての情報センタ51から交通情報、一般情報等の各種の情報を受信することもできる。そのために、前記通信部38と情報センタ51とはネットワーク43を介して接続される。
【0035】
前記ナビゲーション装置14、道路交通情報センタ、情報センタ51、ネットワーク43等によってナビゲーションシステムが構成され、前記通信部38と情報センタ51の通信部57との間で各種の情報の送受信が行われる。
【0036】
また、前記ネットワーク43として、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等の通信回線網等を使用することができる。
【0037】
前記情報センタ51は、サーバ53、該サーバ53に接続された通信部57及び情報記録部としてのデータベース(DB)58等を備え、前記サーバ53は、演算装置及び制御装置としてのCPU54、RAM55、ROM56等を備え、所定のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。また、前記データベース58に前記データ記録部16に記録された各種のデータと同様のデータを記録することができる。なお、前記サーバ53及びナビゲーション処理部17によってコンピュータを構成することもできる。また、CPU54に代えてMPU等を使用することができる。
【0038】
ところで、本実施の形態においては、前記データ記録部16に、前記地図データベースのほかに、統計データファイルから成る統計データベース、走行履歴データファイルから成る走行履歴データベース等が形成され、前記統計データファイルに第1の実績データとしての統計データが、前記走行履歴データファイルに第2の実績データとしての走行履歴データが記録される。
【0039】
前記統計データは、過去に提供された渋滞情報等の交通情報の実績、すなわち、履歴を表す履歴情報であり、前記道路交通情報センタ等によって提供された交通情報、及び国土交通省によって提供された道路交通センサスによる交通量を表すデータ(以下「道路交通センサス情報」という。)を組み合わせて使用し、加工し、統計処理を施すことによって作成される。
【0040】
また、前記統計データは、必要に応じて、国土交通省によって提供された道路時刻表情報、及び情報センタ51が複数の車両から収集した走行履歴データであるプローブデータを組み合わせて使用し、加工し、統計処理を施すことによって作成することもできる。
【0041】
なお、前記統計データにおいて、前記履歴情報に、渋滞状況を予測する渋滞予測情報等を加えることもできる。その場合、前記統計データを作成するに当たり、履歴情報に、日時、曜日、天候、各種イベント、季節、施設の情報(デパート、スーパーマーケット等の大型の施設の有無)等の詳細な条件が加えられる。
【0042】
前記統計データのデータ項目は、過去に車両が走行した経路、すなわち、各走行経路を構成する各道路リンクLi(i=1、2、…、N)についてのリンク番号データ(ID)、走行方向を表す方向フラグ、道路交通情報センタ等によって提供された交通情報であるか、又は道路交通センサス情報であるかを表す情報種別、所定のタイミングtごと、本実施の形態においては、15〔分〕が経過するごとの渋滞の度合いを表す渋滞度SJi(t)(i=1、2、…、N)、前記各道路リンクLiを走行したときの、所定のタイミングtごと、本実施の形態においては、15〔分〕が経過するごとの所要時間を表すリンク所要時間STi(t)(i=1、2、…、N)、該リンク所要時間STi(t)の各曜日ごとの平均的なデータ、すなわち、曜日平均データτi(t)(i=1、2、…、N)等から成る。
【0043】
なお、本実施の形態において、渋滞度SJi(t)は、渋滞の度合いを表す渋滞指標として使用され、渋滞、混雑及び非渋滞の別で表され、道路リンクLi及び時間に対応させて形成されたマトリックスから成る渋滞度テーブルとして統計データベースに記録される。該統計データベースには、前記渋滞度SJi(t)が算出されたときに、各道路リンクLiについての道路種別に基づいて車速Svi(t)(i=1、2、…、N)を算出することができるように車速テーブルが形成される。また、統計データベースには、車速Svi(t)及び各道路リンクLiのリンク長に基づいて算出されたリンク所要時間STi(t)が、道路リンクLi及び時間に対応させて形成されたマトリックスから成るリンク所要時間テーブルとして統計データベースに記録される。また、前記曜日平均データτi(t)は、前記リンク所要時間STi(t)の所定の期間分、本実施の形態においては、12箇月分の値の平均値から成り、曜日平均テーブルとして統計データベースに記録される。
【0044】
本実施の形態においては、マトリックスにおける時間は、8:00、8:15、…等のような瞬間的な時刻で表されるようになっているが、8:00〜8:15、8:15〜8:30、…等のような時間帯で表すこともできる。なお、本実施の形態において、道路種別は、高速道路、都市高速道路及び一般道路から成る。
【0045】
また、走行履歴データは、車両の走行の実績、すなわち、走行経路における走行実績を表すデータ(走行データ)に基づいて算出され、蓄積される。そして、前記走行履歴データのデータ項目は、各道路リンクLiを走行したときの、所定の周期ごと、本実施の形態においては、15〔分〕が経過するごとの所要時間を表すリンク所要時間ATi(t)(i=1、2、…、N)、各道路リンクLiを走行したときの、所定のタイミングtごと、本実施の形態においては、15〔分〕が経過するごとの渋滞度AJi(t)(i=1、2、…、N)等から成り、前記リンク所要時間ATi(t)は、道路リンクLi及び参照用の時刻(以下「参照時刻」という。)である時間に対応させて形成されたマトリックスから成るリンク所要時間テーブルとして走行履歴データベースに記録される。なお、前記渋滞度AJi(t)は、所定の渋滞度算出表を参照して算出され、渋滞度SJi(t)と同様に道路リンクLi及び時間に対応させて形成されたマトリックスから成る渋滞度テーブルとして走行履歴データベースに記録される。
【0046】
なお、本実施の形態においては、前記データ記録部16に、前記地図データベース、統計データベース、走行履歴データベース等が配設されるようになっているが、情報センタ51において、前記地図データベース、統計データベース、走行履歴データベース等を配設することもできる。
【0047】
次に、前記構成のナビゲーションシステムを情報提供システムとして使用したときの基本動作について説明する。
【0048】
まず、運転者によって操作部34が操作され、ナビゲーション装置14が起動されると、CPU31の図示されないナビ初期化処理手段は、ナビ初期化処理を行い、GPSセンサ15によって検出された現在地、及び方位センサ18によって検出された自車方位を読み込むとともに、各種のデータを初期化する。なお、前記CPU31の図示されないマッチング処理手段は、マッチング処理を行い、読み込まれた現在地の軌跡、及び現在地の周辺の道路を構成する各道路リンクLiの形状、配列等に基づいて、現在地がいずれの道路リンクLi上に位置するかの判定を行うことによって、現在地を特定する。
【0049】
続いて、CPU31の図示されない情報取得処理手段は、情報取得処理を行い、前記地図データをデータ記録部16から読み出して取得するか、又は通信部38を介して情報センタ51等から受信して取得する。なお、情報センタ51から取得する場合、前記情報取得処理手段は、受信したナビデータをフラッシュメモリにダウンロードする。また、ナビデータを通信部38を介して取得する際にプログラムを併せて取得することもできる。
【0050】
そして、前記CPU31の図示されない表示処理手段は、表示処理を行い、前記表示部35に各種の画面を形成する。例えば、表示処理手段の道路地図表示処理手段は、道路地図表示処理を行い、表示部35に地図画面を形成し、該地図画面に自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位を表示する。したがって、運転者は、前記自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位に従って車両を走行させることができる。この場合、前記地図画面には、所定の地点について文字、記号等から成る表示アイテムが表示される。なお、前記地図画面によって道路地図画面が構成され、前記地図によって道路地図が構成される。
【0051】
また、運転者が操作部34を操作して目的地を入力すると、CPU31の図示されない目的地設定処理手段は、目的地設定処理を行い、目的地を設定する。なお、必要に応じて出発地を入力し、設定することもできる。また、あらかじめ所定の地点を登録しておき、登録された地点を目的地として入力することができる。
【0052】
そして、目的地が設定されると、CPU31の図示されない経路探索処理手段は、経路探索処理を行い、前記現在地、目的地等を読み込むとともに、データ記録部16から探索データ等を読み出し、現在地、目的地及び探索データに基づいて、現在地で表される出発地から目的地までの経路を所定の探索条件で探索し、探索経路を表す経路データを出力する。この場合、各道路リンクLiごとに付与されたリンクコストの合計が最も小さい経路が探索経路とされる。
【0053】
続いて、前記CPU31の図示されない案内処理手段は、案内処理を行い、運転者に探索経路の案内、すなわち、経路案内を行う。そのために、前記案内処理手段の経路表示処理手段は、経路表示処理を行い、前記経路データを読み込み、該経路データに従って前記地図画面に探索経路を表示する。この場合、必要に応じて、前記案内処理手段の音声出力処理手段は、音声出力処理を行い、音声出力部37から探索経路を音声で出力して経路案内を行う。
【0054】
なお、情報センタ51において経路探索処理を行うことができる。その場合、CPU31は現在地、目的地等を情報センタ51に送信する。該情報センタ51は、現在地、目的地を受信すると、CPU54の図示されない経路探索処理手段は、CPU31と同様の経路探索処理を行い、データベース58から探索データ等を読み出し、現在地、目的地及び探索データに基づいて、出発地から目的地までの経路を探索し、探索経路を表す経路データを出力する。続いて、CPU54の図示されない送信処理手段は、送信処理を行い、前記経路データをナビゲーション装置14に送信する。したがって、ナビゲーション装置14において、前記情報取得処理手段が情報センタ51からの経路データを受信すると、前記案内処理手段は、前述されたような経路案内を行う。
【0055】
ところで、前記ナビゲーション装置14は、前記道路交通情報センタ、情報センタ51からリアルタイムに供給された交通情報、一般情報等を前記通信部38を介して受信することができるようになっている。そのために、前記情報取得処理手段の付加情報取得処理手段は、付加情報取得処理を行い、前記交通情報、一般情報等を付加情報として受信して取得する。
【0056】
そして、前記表示処理手段は、前記地図画面に付加情報を表示することができる。そのために、前記表示処理手段の渋滞指標表示処理手段は、渋滞指標表示処理を行い、交通情報のうちの渋滞情報を、例えば、渋滞が発生している道路の上り/下りの別及び渋滞箇所を表す渋滞指標としての渋滞帯に変換し、該渋滞帯を前記地図画面上の道路に沿って表示する。この場合、渋滞の度合いに応じて前記道路、渋滞帯等の色が、赤、橙(だいだい)等に変更される。なお、前記渋滞指標として渋滞帯に代えて渋滞矢印を表示することができる。
【0057】
このようにして、運転者は、車両を走行させる予定の経路、探索経路等における渋滞状況を知ることができる。また、前記案内処理手段は、前記経路データ、統計データ、走行履歴データ、交通情報等に基づいて出発地から目的地までの全所要時間を算出したり、目的地の到着時間を算出したりすることができる。
【0058】
次に、前記全所要時間を算出するためのCPU31の動作について説明する。
【0059】
ところで、経路の探索及び経路案内の対象となる各道路のうちの、前記道路交通情報センタ等によって提供された過去の交通情報、及び前記道路交通センサス情報の対象となる道路については、統計データベースの統計データを利用することができ、前記各道路のうちの走行実績がある道路については、走行履歴データベースの走行履歴データを利用することができる。
【0060】
そこで、本実施の形態においては、経路の探索及び経路案内の対象となる各道路のうちの、統計データ及び走行履歴データのうちのいずれも利用することができない道路をナビ標準道路とし、統計データ及び走行履歴データのうちの統計データだけを利用することができる道路を統計利用道路とし、統計データ及び走行履歴データのうちの少なくとも走行履歴データを利用することができる道路を走行履歴利用道路とする。
【0061】
そして、前記全所要時間を算出するに当たり、CPU31の図示されない全所要時間算出処理手段は、全所要時間算出処理を行い、ナビ標準道路の区間については、各道路リンクLiについて、固定された車速、及びリンク長に基づいて、リンク所要時間を算出して利用する。また、前記全所要時間算出処理手段は、統計利用道路の区間については、統計データベースに記録されているリンク所要時間STi(t)を読み出して利用する。さらに、前記全所要時間算出処理手段は、走行履歴利用道路の区間については、走行履歴データベースに記録されているリンク所要時間ATi(t)を読み出して利用する。
【0062】
なお、通信部38は道路交通情報センタから送信された現況データの交通情報を常時取得しているので、前記現況データの交通情報を利用することができる道路を走行している場合、現況データの交通情報におけるリンク所要時間PTi(t)(i=1、2、…、N)を利用する。
【0063】
ところで、前記経路探索処理による探索経路に沿って車両を走行させる場合、リンク所要時間STi(t)は、365日分記録されているので、リンク所要時間STi(t)の中から現況の交通状況と類似した交通状況を表すものを検索し、検索結果に基づいて、所定の時間帯、例えば、現在以降の交通状況を推定しようとすると、処理量が大きくなり、ナビゲーション装置14のコストが高くなってしまう。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、前記CPU31の図示されない交通状況推定処理手段は、交通状況推定処理を行い、前記リンク所要時間STi(t)に基づいて、処理量が大きいが精度高く交通状況を推定することができる高精度計算手法、及び精度が低くなることがあるが、処理量が小さい交通状況を推定することができる簡易的計算手法を選択し、選択された計算手法に基づいて現在以降の交通状況を推定するようにしている。
【0065】
そのために、各道路リンクLiごとに、発生する渋滞のパターンに基づいて計算手法が登録される。
【0066】
図2は本発明の第1の実施の形態における計算手法登録処理の動作を示すフローチャート、図3は本発明の第1の実施の形態におけるリンク所要時間の例を示す図である。
【0067】
まず、交通状況推定処理手段の計算手法登録処理手段は、計算手法登録処理を行い、過去のリンク所要時間STi(t)の傾向に基づいて、現在以降の交通状況を推定するための計算手法を選択し、登録する。そのために、前記計算手法登録処理手段の判定用データ取得処理手段は、判定用データ取得処理を行い、道路リンクLiのうちのn個目の道路リンクについて、曜日平均データテーブルを参照し、曜日平均データτi(t)を渋滞の実績を表す判定用データとして読み出して取得する。なお、図3は火曜日における各タイミングtごとの曜日平均データτi(t)の推移を表す。本実施の形態においては、前記曜日平均データτi(t)は、あらかじめ算出されて曜日平均テーブルとして統計データベースに記録されるようになっているが、リンク所要時間STi(t)に基づいて算出することができる。
【0068】
続いて、前記計算手法登録処理手段の判定値算出処理手段は、判定値算出処理を行い、各曜日ごとに、各タイミングtごとの現況の交通情報におけるリンク所要時間PTi(t)と曜日平均データτi(t)との標準偏差σi(t)(i=1、2、…、N)を判定値として算出する。
【0069】
次に、前記計算手法登録処理手段の第1の実績判定処理手段は、第1の実績判定処理を行い、標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上であるかどうかを判断することによって渋滞の実績を判定し、標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上である場合、計算手法登録処理手段の道路リンク登録処理手段は、道路リンク登録処理を行い、n個目の道路リンクを簡易的計算手法の対象に登録する。
【0070】
また、標準偏差σi(t)の平均値が設定値より小さい場合、前記計算手法登録処理手段の第2の実績判定処理手段は、第2の実績判定処理を行い、前記曜日平均データτi(t)において非渋滞の時間帯を曜日ごとに検索する。例えば、図3の曜日平均データτi(t)においては、火曜日の0時〜13時が非渋滞の時間帯であると分かる。
【0071】
続いて、前記第2の実績判定処理手段は、非渋滞の時間帯があるかどうかを判断することによって渋滞の実績を判定し、非渋滞の時間帯がある場合、前記道路リンク登録処理手段は、曜日ごとに非渋滞の時間帯についてn個目の道路リンクを簡易的計算手法の対象に登録する。また、前記道路リンク登録処理手段は、曜日ごとに非渋滞の時間帯以外の時間帯についてn個目の道路リンクを高精度計算手法の対象に登録する。そして、非渋滞の時間帯がない場合、道路リンク登録処理手段は、すべての時間帯について道路リンクLiを高精度計算手法の対象として登録する。
【0072】
このようにして、各道路リンクLiごとに、発生する渋滞のパターンに基づいて計算手法が登録される。
【0073】
本実施の形態においては、各道路リンクLiごとに計算手法が登録されるようになっているが、連続する複数の道路リンクLiから成る道路リンク列ごとに計算手法を登録することができる。
【0074】
また、本実施の形態においては、第1の実績判定処理において標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上であるかどうかを判断し、第2の実績判定処理手段において非渋滞の時間帯があるかどうかを判断するようになっているが、第1の実績判定処理を行うことなく、第2の実績判定処理手段だけを行うことができる。
【0075】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 n個目の道路リンクについて曜日平均データτi(t)を取得する。
ステップS2 曜日平均データτi(t)の標準偏差σi(t)を算出する。
ステップS3 標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上であるかどうかを判断する。標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上である場合はステップS4に、標準偏差σi(t)の平均値が設定値より小さい場合はステップS5に進む。
ステップS4 道路リンクLiを簡易的計算手法の対象として登録し、ステップS9に進む。
ステップS5 非渋滞の時間帯を曜日ごとに検索する。
ステップS6 非渋滞の時間帯があるかどうかを判断する。非渋滞の時間帯がある場合はステップS8に、ない場合はステップS7に進む。
ステップS7 すべての時間帯について道路リンクLiを高精度計算手法の対象として登録し、ステップS9に進む。
ステップS8 曜日ごとに非渋滞の時間帯について道路リンクLiを簡易的計算手法の対象として登録する。
ステップS9 値nと値Nとが等しいかどうかを判断する。値nと値Nとが等しい場合は処理を終了し、等しくない場合はステップS10に進む。
ステップS10 値nをインクリメントし、ステップS1に戻る。
【0076】
このようにして、各道路リンクLiごとに、発生する渋滞のパターンに基づいて計算手法が登録されると、交通状況推定処理手段の計算手法選択処理手段は、計算手法選択処理を行い、各道路リンクLiごとに、登録された計算手法を選択し、交通状況を推定する。
【0077】
図4は本発明の第1の実施の形態における計算手法選択処理の動作を示すフローチャート、図5は本発明の第1の実施の形態における高精度計算手法推定処理を説明する図、図6は本発明の第1の実施の形態における簡易的計算手法推定処理を説明する第1の図、図7は本発明の第1の実施の形態における簡易的計算手法推定処理を説明する第2の図である。
【0078】
まず、計算手法選択処理手段の現況判定処理手段は、現況判定処理を行い、現況の交通情報を取得し、現況の交通情報において、n個目の道路リンクに片側通行、通行止め等の規制が発生しているかどうかを判断し、n個目の道路リンクに規制が発生している場合、計算手法選択処理手段の高精度計算手法推定処理手段は、高精度計算手法推定処理を行い、高精度計算手法で交通状況を推定する。
【0079】
ところで、図5において、L1はn個目の道路リンクについての、現況の交通情報におけるリンク所要時間PTi(t)を表す線、L2〜L4は、統計データによる所定の第1〜第3の日におけるリンク所要時間STi(t)を表す線である。
【0080】
前記高精度計算手法推定処理手段は、まず、現在のタイミングがt1である場合、所定の時間だけ前のタイミングt0からタイミングt1までの時間を所定の検索時間TXとし、検索時間TXにおける現況のリンク所要時間PTi(t)のパターンと過去の所定の日におけるリンク所要時間STi(t)のパターンとをパターンマッチングによって比較し、リンク所要時間PTi(t)、STi(t)の各パターンが類似しているかどうかを判断し、リンク所要時間PTi(t)、STi(t)の各パターンが類似している場合、該当する日のリンク所要時間PTi(t)のパターンでタイミングt1以降の交通状況を推定する。
【0081】
この場合、例えば、各タイミングtにおけるリンク所要時間PTi(t)、STi(t)の偏差の合計が閾(しきい)値以下であるかどうかを判断し、偏差の合計が閾値以下である場合に各パターンが類似していると判断する。
【0082】
本実施の形態においては、リンク所要時間PTi(t)のパターンと第1の日におけるリンク所要時間STi(t)のパターンとが類似しているので、線L2のリンク所要時間STi(t)のパターンでタイミングt1以降の交通状況を、線L5で表されるリンク所要時間PTi(t)のパターンのとおり推定する。
【0083】
また、n個目の道路リンクに規制が発生していない場合、計算手法選択処理手段の計算手法判定処理手段は、計算手法判定処理を行い、n個目の道路リンクについて簡易的計算手法が登録されているかどうかを判断し、簡易的計算手法が登録されていない場合、前記高精度計算手法推定処理手段は、前述された高精度計算手法で交通状況を推定する。一方、n個目の道路リンクについて簡易的計算手法が登録されている場合、計算手法選択処理手段の乖(かい)離判定処理手段は、乖離判定処理を行い、統計データベースから曜日平均データτi(t)を読み出すとともに、現況のリンク所要時間PTi(t)を読み込み、リンク所要時間PTi(t)と当該日の曜日の曜日平均データτi(t)との乖離を表す偏差δi(t)
δi(t)=|PTi(t)−τi(t)|
を算出する。続いて、前記乖離判定処理手段は、偏差δi(t)が前記標準偏差σi(t)以下であるかどうかを判断し、偏差δi(t)が標準偏差σi(t)以下である場合、計算手法選択処理手段の簡易的計算手法推定処理手段は、簡易的計算手法推定処理を行い、簡易的計算手法で交通状況を推定する。
【0084】
ところで、図6及び7において、L6は当該日の曜日の曜日平均データτi(t)を表す線、p1は所定のタイミング、本実施の形態においては、現在のタイミングt1における現況の交通情報のリンク所要時間PTi(t1)である。そして、前記現在のタイミングt1における偏差δi(t1)が標準偏差σi(t1)以下である場合、タイミングt1から数時間先まで偏差δi(t)が一定であると仮定し、タイミングt1以降の交通状況をリンク所要時間PTi(t)
PTi(t)=τi(t)−δi(t1)
で推定する。
【0085】
また、現在のタイミングt1における曜日平均データτi(t1)に対するリンク所要時間PTi(t1)の比が一定であると仮定し、タイミングt1以降の交通状況をリンク所要時間PTi(t)
PTi(t)=τi(t)・{PTi(t1)/τi(t1)}
で推定することもできる。
【0086】
さらに、曜日平均データτi(t)をそのままタイミングt1以降の交通状況とし、リンク所要時間PTi(t)
PTi(t)=τi(t)
で推定することもできる。
【0087】
一方、偏差δi(t)が標準偏差σi(t)より大きい場合、前記高精度計算手法推定処理手段は、前述された高精度計算手法で交通状況を推定する。
【0088】
このようにして、各道路リンクLiについて、高精度計算手法又は簡易的計算手法で交通状況が推定される。
【0089】
このように、本実施の形態においては、高精度計算手法が登録されている場合は高精度計算手法で、簡易的計算手法が登録されている場合は簡易的計算手法で交通状況が推定されるので、交通状況の推定の精度が低くなることなく、推定するための処理量を小さくすることができ、ナビゲーション装置14のコストを低くすることができる。
【0090】
また、標準偏差σi(t)の平均値が設定値以上であり、規則性のある定型的な渋滞が発生する路線に沿って車両を走行させる場合、曜日ごとの非渋滞の時間帯がなく、例えば、連休中に渋滞が頻繁に発生する路線に沿って車両を走行させる場合等に、高精度計算手法で交通状況を推定することができるので、交通状況の推定の精度が低くなるのを防止することができる。
【0091】
そして、簡易的計算手法で交通状況が推定されている間に、現況の交通情報において規制が発生した場合、現況のリンク所要時間PTi(t)と当該日の曜日の曜日平均データτi(t)との乖離が大きい場合等には、高精度計算手法で交通状況が推定されるので、交通状況の推定の精度が低くなるのを防止することができる。
【0092】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 n個目の道路リンクに規制が発生しているかどうかを判断する。n個目の道路リンクに規制が発生している場合はステップS14に進み、発生していない場合はステップS12に進む。
ステップS12 n個目の道路リンクについて簡易的計算手法が登録されているかどうかを判断する。n個目の道路リンクについて簡易的計算手法が登録されている場合はステップS13に進み、登録されていない場合はステップS14に進む。
ステップS13 偏差δi(t)が標準偏差σi(t)以下であるかどうかを判断する。偏差δi(t)が標準偏差σi(t)以下である場合はステップS15に、偏差δi(t)が標準偏差σi(t)より大きい場合はステップS14に進む。
ステップS14 高精度計算手法推定処理を行い、ステップS16に進む。
ステップS15 簡易的計算手法推定処理を行う。
ステップS16 値nと値Nとが等しいかどうかを判断する。値nと値Nとが等しい場合は処理を終了し、等しくない場合はステップS17に進む。
ステップS17 値nをインクリメントし、ステップS11に戻る。
【0093】
図8は本発明の第2の実施の形態における交通状況推定処理手段の動作を示すフローチャートである。
【0094】
まず、交通状況推定処理手段は、過去のリンク所要時間STi(t)の傾向に基づいて、現在以降の交通状況を推定するための計算手法を選択する。そのために、前記交通状況推定処理手段の判定用データ取得処理手段は、判定用データ取得処理を行い、道路リンクLiのうちのn個目の道路リンクについて、曜日平均データテーブルを参照し、第1の実施の形態と同様に、曜日平均データτi(t)を渋滞の実績を表す判定用データとして読み出して取得する。
【0095】
次に、前記交通状況推定処理手段の計算手法選択処理手段は、前記現況データ及び曜日平均データτi(t)に基づいて計算手法を選択する。そのために、計算手法選択処理手段の乖離判定処理手段は、乖離判定処理を行い、現況のリンク所要時間PTi(t)を読み込み、リンク所要時間PTi(t)と当該日の曜日の曜日平均データτi(t)との乖離を表す偏差δi(t)
δi(t)=|PTi(t)−τi(t)|
を算出する。続いて、前記乖離判定処理手段は、偏差δi(t)が設定値δth以下であるかどうかを判断し、偏差δi(t)が設定値δth以下である場合、計算手法選択処理手段の簡易的計算手法推定処理手段は、簡易的計算手法推定処理を行い、第1の実施の形態と同様の簡易的計算手法で交通状況を推定する。
【0096】
一方、偏差δi(t)が設定値δthより大きい場合、前記高精度計算手法推定処理手段は、第1の実施の形態と同様の高精度計算手法で交通状況を推定する。
【0097】
このようにして、各道路リンクLiについて、高精度計算手法又は簡易的計算手法で交通状況が推定される。
【0098】
このように、本実施の形態においては、現況のリンク所要時間PTi(t)と当該日の曜日の曜日平均データτi(t)との乖離が小さい場合には、簡易的計算手法で交通状況が推定されるので、推定するための処理量を小さくすることができ、ナビゲーション装置14(図1)のコストを低くすることができる。また、前記乖離が大きい場合には、高精度計算手法で交通状況が推定されるので、交通状況の推定の精度が低くなるのを防止することができる。
【0099】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS21 n個目の道路リンクについて曜日平均データを取得する。
ステップS22 偏差δi(t)が設定値δth以下であるかどうかを判断する。偏差δi(t)が設定値δth以下である場合はステップS23に、偏差δi(t)が設定値δthより大きい場合はステップS24に進む。
ステップS23 簡易的計算手法推定処理を行い、ステップS25に進む。
ステップS24 高精度計算手法推定処理を行い、ステップS26に進む。
ステップS25 値nと値Nとが等しいかどうかを判断する。値nと値Nとが等しい場合は処理を終了し、等しくない場合はステップS26に進む。
ステップS26 値nをインクリメントし、ステップS21に戻る。
【0100】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーションシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における計算手法登録処理の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるリンク所要時間の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における計算手法選択処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における高精度計算手法推定処理を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における簡易的計算手法推定処理を説明する第1の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における簡易的計算手法推定処理を説明する第2の図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における交通状況推定処理手段の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
14 ナビゲーション装置
17 ナビゲーション処理部
31 CPU
43 ネットワーク
51 情報センタ
53 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段と、前記判定用データに基づいて渋滞の実績を判定する実績判定処理手段と、前記渋滞の実績の判定に基づいて、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段とを有することを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記実績判定処理手段は非渋滞の時間帯があるかどうかによって渋滞の実績を判定する請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記計算手法選択処理手段は、非渋滞の時間帯がある場合、非渋滞の時間帯について簡易的計算手法を、非渋滞の時間帯以外の時間帯について高精度計算手法を選択する請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記計算手法選択処理手段は、非渋滞の時間帯がない場合、すべての時間帯について高精度計算手法を選択する請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記実績判定処理手段は、判定用データの標準偏差に基づいて実績を判定する請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記計算手法選択処理手段は、標準偏差の平均が設定値以上である場合に簡易的計算手法を選択する請求項5に記載の情報提供システム。
【請求項7】
現況データに基づいて渋滞の状況を判定する現況判定処理手段を有する請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記計算手法選択処理手段は、現況データの交通情報において規制が発生した場合、高精度計算手法を選択する請求項7に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記計算手法選択処理手段は、判定用データと現況データのリンク所要時間との偏差が設定値以下である場合、簡易的計算手法を選択し、前記偏差が設定値より大きい場合、高精度計算手法を選択する請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項10】
実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得手段と、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段とを有することを特徴とする情報提供システム。
【請求項11】
実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段と、前記判定用データと現況データのリンク所要時間との偏差を算出し、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び前記判定用データをそのまま交通状況を表す推定値として推定する簡易的計算手法の一方を前記偏差に基づいて選択する計算手法選択処理手段とを有することを特徴とする情報提供システム。
【請求項12】
前記偏差が設定値以下である場合、簡易的計算手法を選択し、前記偏差が設定値より大きい場合、高精度計算手法を選択する請求項11に記載の情報提供システム。
【請求項13】
コンピュータを、実績データのリンク所要時間に基づいて作成され、渋滞の実績を表す判定用データを取得する判定用データ取得処理手段、前記判定用データに基づいて渋滞の実績を判定する実績判定処理手段、並びに前記渋滞の実績の判定に基づいて、所定の検索時間における現況データのリンク所要時間のパターンと判定用データのパターンとに基づいて交通状況を推定する高精度計算手法、及び所定のタイミングにおける現況データのリンク所要時間と判定用データとの偏差に基づいて交通状況を推定する簡易的計算手法の一方を選択する計算手法選択処理手段として機能させることを特徴とする情報提供方法のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−48346(P2006−48346A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227998(P2004−227998)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】